会長「音が紡ぐ笑顔の魔法」

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143 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 04:35:21.41 ID:KyHuQLq+O
幽霊部員「男君は人気者っすね」

幼馴染「でも……隣町に引っ越してからは聞いてないわね、男の歌。今度久しぶりに聞かせてもらおうかしら」

副部長「あっ!じゃあ……今度さ、皆でカラオケ行こうよ!」

幽霊部員「いいっすね〜!大部屋でパーリーピーポーっす!」

副部長「自由天文部の皆で……素敵ですね」 

幼馴染「……」

幼馴染「話を戻すけど」

幼馴染「この勝負の勝敗関係無しに……残った僅かな時間。そうね、精々8ヶ月あるかないかで自由天文部はどうなると思う?」

幽霊部員「そっすね、部長達にこれからの自由天文部とか言われてもピンとこないのが正直な話っすね」

副部長「ごめんね、もっと練習してれば……」

幼馴染「気にしないで、あれは練習どうこうじゃないもの」

幽霊部員「僕的には惜しかったと思ってるっす!」

幼馴染「あんたの感性はホントに分からない……」

副会長「私は……」



副会長「諦めたくない」ボソッ




144 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 04:36:44.40 ID:KyHuQLq+O




男「よいしょっと……」ギュイーン

ロリ「女装して人前に立つ感想はいかがかにょ?」

男「えっ?」

男「うーん……」

と言われてもな、俺はこの舞台とは比べ物にならない人の前に立ってきた訳だから緊張をする筈がないし恥じらう筈もない。

メイクだってソニアの物とは違う。よって、ソニアバレを心配する必要がない。

男「べつに何も……」

ロリ「少しは恥ずかしがらないとつまらないにょ〜」

会長「うぅむ、堂々としているな」

不良「認めろよ」

男「何をだよ」
145 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 04:42:29.84 ID:KyHuQLq+O





「えっ?あれ本当に男?」

友「男だよ」

「いや流石にあれは女子だろ、綺羅星ソニアちゃん並に可愛いぞ」

「ばっか、言いすぎだろ」

友「男は綺羅星ソニア並みに可愛いから言い過ぎでもない」

「でもあのバンドのギターって男だったろ?」

友「だから男だって」

「助っ人じゃね?あいつこの前ギターは始めたばっかりとか言ってたし」

友「何回言えばわかるの?男だって」

「そっか、部長のバンドと競うから初心者はいらないって事か」

友「だから男だって、耳ついてる?」

友(あの肉付き……顔の特徴は男。メイクも男の個性を出している)

友(俺……私……は男のせいで……もっと分からなくなったよ……)



146 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 04:45:12.66 ID:KyHuQLq+O






不良「そう言えばさ〜リハで男のギターを聞いたけど、かなりやるようになったよなお前」

ロリ「私がマンツーマンで教えてた頃が懐かしいにょ」

男「最近の上達は作詞先輩のお陰ですね」

会長「そうか」

ロリ(へぇ……あの子が後輩に…………)

ロリ(そっか、うん)

男「で、会長。また顔を隠すんですか?」

会長「こればかりは仕方が無い。これでも進歩したんだ」

会長は自信に満ちた笑みを零す。
そんな得意気に俺を見ても困るな、仮面で顔が下の半分しか見えないから地味に怖い。

不良「どこが?」

あの酷いメイクよりは全然良いと思うけど。

不良「隠してんのは顔の上半分だけ、これじゃあまるでダブルフェイスだな」

ダブルフェイスが隠すのはは右か左のどちらかだよ。

ロリ「会長ならダブルフェイスでもやっていけそうだにょ!」

会長「いや、私は……」

男「ははっ」

あそこは何よりも性格がキツくないとやっていけないからなぁ、幼馴染なんて可愛い方だよ。
147 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 04:46:49.25 ID:KyHuQLq+O

不良「あのグループ、アイドルの中でもすっごいキャピキャピしてるからな、会長じゃあ難しいだろ」

会長「少しは詳しい様子だが、好きなのか?」

不良「昔の連れがな」

会長「それは残念だ」

不良「残念?」

男「でも、歌は負けてないと思いますよ。ダブルフェイスの歌って加工ですし」

ロリ「え、マジかにょ?」

会長「え?加工?」

でもね会長、貴女の歌で人を笑顔にするのは難しい。そう、魔法、奇跡でも無い限り。

俺は踊り、演出、歌、媚び、アイドルとしての全てでようやく笑顔を見ることが出来た。が、それは俺が求めてきた物では無かったんだ。

それでも会長なら俺が見たかった物を見れるかもしれない。

会長「聞いてるか?私はダブルフェイスのファンなんだ、加工だなんて聞き捨てならないな…………本当に?」

ロリ「会長が……意外だにょ」

男「ガッツリと加工ですね」

本音では先を越されたくない、悔しいから……酷いかな?
148 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 04:48:14.93 ID:KyHuQLq+O

不良「おーい、早くしようぜー」

男「オッケー」

不良「手ぇ抜くなよ」

ロリ「な〜にを言うかと思ったら……私は皆の味方だから安心するにょ」ドヤァ

不良「うぜぇ……」

ロリ「何を〜!?」

男「あ、俺のソロからか」

エルボーカットを軽く叩いてリズムを作る。
作詞先輩から教わった事の一つ、案外と浸れるし音にも入り込めるのが個人的には新鮮だった。

ロリ(成長したなぁ……)

不良「……」

不良「さってと、始めますか」

続いてベースとドラムが世界観を創造する。

男「……」
149 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 04:50:17.88 ID:KyHuQLq+O

部長のバンドが演奏する曲は正直言って好きな人間でないと分からない奇抜な物が多い。

だったら、こちらは王道で攻めてしまえば良いっていうのが今回の作戦だ。

会長「LAAAAAAA――」





友「うわ、好きな歌だ」

「前より上手くなってね?」

「ってかあの仮面、前回の覆面と同じ人だよな?」

友「え?そうなの?」

「……」

「なんか見覚えあるんだよな」



150 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 04:56:59.02 ID:KyHuQLq+O





幼馴染「ずっる……皆が知ってる曲じゃないこれ」

作曲「私の……私の曲は?」

作詞「わた……わたしの……詩?あれ?」

副部長「きっと!きっとアンコールされたら演奏するよ!うん!」

副会長「ええ、副部長の言う通りですよ!」

幽霊部員「男君、うまくなったんすね」

部長「あーこりゃ完敗だわ。会長の野郎、まだ成長すんのな」










受付「まあまあやるようになったじゃないか」

アルバイト「ほら!会長ちゃんですよ!か〜わ〜いい〜〜〜〜!」パシャパシャ

受付「ふん!たかが学校行事で写真なんか……」パシャパシャ



151 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 04:58:34.74 ID:KyHuQLq+O






??「久しぶりだな……ここの近くに来るの」

「おらバイト!人様の敷地に勝手に入るんじゃねえ!」

??「あっ……はい。ご、ごめ、ん……なさ……い……」

「ちっ、つまんねーやつ」

??「……」ブツブツ






152 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 05:03:23.56 ID:KyHuQLq+O





演奏終了と共に割れんばかりの歓声が学校全体を埋め尽くす。
これは勝ったな、そう、アイドル時代にはこういった本物の歓声を何度も聞いてきたのだから確信がある。

男「――ふぅ」

そしてなによりも……

なんとか弾き切る事が出来た。

会長「ふふっ……」

会長は身を震わせながら不吉な笑みを浮かべる。一体この人はどうしてしまったと言うのか。

不良「どうしたの?」

会長「先生とのレッスンが功を奏しているのが嬉しくてな、つい……」

ロリ「会長らしい理由だにょ」

不良「うーんこうなるともう投票とか面倒臭いな」

男「は?」
153 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 05:06:02.76 ID:KyHuQLq+O

不良は勝手に会長のマイクを奪ってこう叫んだ。

ロリ「嫌な予感……」

不良「はいはい、だまってー」

未だに興奮が冷めやまぬ様子の観客に対して言う言葉ではない、もし生徒たちの気分を害して票を入れてもらえなかったらどうするつもりだ。

不良「投票とかさ、面倒臭いから一人一人のアンコールを一票として数えさせてもらうわ」

「え?」

「まじで?」

不良「先輩たち、馬鹿が多いからさ、圧勝しても文句言われかねねーんだ」

「あはは」

「確かに部長の馬鹿なら言いかねねーな」

不良「だからこうして分かりやすい形でケリをつけようって訳」

不良「因みにアンコールしてくれたらこの時の為に作った新曲も演奏する予定だから、明らかに全員がアンコールしてくれたら全力でやるよ」

男「あいつ、まじかよ」

不良「部長達のバンドよりも私達のバンドが良かったと思ったらアンコールを頼むよ」

ロリ「手慣れてるにょ〜」

不良「だからほら……アンコール!!!!」スッ

不良は高々とアンコールを叫び、マイクを会場の全員に向けた。

こいつは中学の時人気者だっんだろうな、なんだか羨ましい。

「「アンコール!」」

不良「小さい!!」

「「「アンコール!!!」」」
154 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 05:09:49.20 ID:KyHuQLq+O





作詞・作曲「「アンコール!アンコール!!!」」

副部長「よかったね〜」

副会長「はぁ……」

幼馴染「アホらし……」

幽霊部員「アンコール!アンコール!」ピョンピョンッ

部長「ここまで来るとすげーとしか言えねえ……」







アルバイト「アンコール!アンコール!!ほら!先生も!!」

受付「ったく……あんこーる……あんこーる…………」




155 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 05:14:20.14 ID:KyHuQLq+O






不良「小せえ!聞きたくね―のか!?」

「アンコール!」「アンコール!」「アンコール!!」

「「「「アンコール!!!アンコール!!!!!」」」」

会場が一体となり、熱が辺りに蔓延する。

きっと部長派だった人間も周りの人間に流されてしまったのだろが、こればかりは仕方がない。

不良「はい勝ったーこれで文句なし〜」

男「ははっ……」

会長「こんなに楽しいのは初めてだ」

不良「中学の時よりもすげーよ」

会長「よし、歌うか」

この日は俺が今まで過ごしてきたどんな日にも勝る、とても楽しい一日だった。

きっと、会長にとっても不良にとっても。
156 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 06:43:16.51 ID:KyHuQLq+O





アンコールも無事に終え、それなりに楽しかった文化祭はあっという間に終わりを迎えた。

作詞「終わったね、全部」

作曲「結局、会長たちの圧勝……」

部長「え〜〜この度私達は……」

自由天文部はと言うと打ち上げでカラオケボックスに集まっていた。

ロリ「謝れ〜謝れ〜」

不良「あんたが煽ってどうすんだよ……」

副部長「本来励まなければならない部活動を蔑ろにし……」

部長バンドの全員が部員の前に立ち、謝罪を行っている真っ最中だ。

副会長「ライジングロックでの失態を招きました」

本当は早く謝りたかったからあんな勝負を挑んだのだろうをしたのだろう。

今となっては誰も見向きもしない投票箱の中にも仕切りが設けられており、部長たちにはどうやっても票が入らないように作られていたのだから。

それにしても余計なお世話だな、どっちにしろ俺らの勝ちだし。

幼馴染「そう言えばアンタ、投票箱知らない?」

男「さあね」

これ以上は無粋だろう?

幽霊部員「本当に反省をしています」

「「「「「ごめんなさい!」」」」」

ロリ「それじゃあ歌うにょ〜!」
157 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 06:46:32.55 ID:KyHuQLq+O

作詞「あっけらかんとしているね、でもそれがロリの良い所であり私達は昔からロリ特有のテンポに着いて来たのだからそれに関して異論を挟む余地はなく、寧ろ助けられていると言うべきか……」

副部長「じゃあ歌いまーす!」

副会長「さっそくデュエットですか!?ってこれは、私も?」

副部長「ほら!副会長も早く!」

副会長「もう……」

この二人はよく一緒に歌うらしい、やっぱり仲が良いんだな。

幽霊部員「歌え―!」

会長「私は何を歌えば……」

不良「ほら、入れてやるから歌えよ」ピピピ

会長「なっ!勝手に!」

ロリ「私も歌うかにょ〜」

部長「最近の曲で頼むぜ」

幼馴染「あっ!私の曲まで勝手に……」

男「メチャクチャだな」

幼馴染「あんた、何歌う?」

男「適当に入れてくれよ、カラオケならこなせるし」

幼馴染「こなすって……そうさせてもらうわ」

副会長「ぷーりきゅー○ー」

部長「ギャハハ!!」

副部長「○リキュアー!」
158 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 06:48:27.28 ID:KyHuQLq+O

会長「そう言えば男、話とは何の用だ?」

男「……」

カラオケで皆が騒いでいる中なら耳元で話しても気付かれ無いだろう。

会長の耳元に話しかける。

会長「!」ビクッ

男「ファンである貴女に言いたくはないですが」ボソッ

会長「……」コクッ

男「俺の秘密を知っている以上、話させてもらいます」ヒソヒソ

副部長「プーリキュー○ー」

男「幼馴染の奴はダブルフェイスのセンター、ツンデレなんですよ」ヒソヒソ

会長「……」カタカタッ

会長「驚きを超えて……」

会長「サインもらっても良いか?」

男「駄目に決まってんだろ」

会長「ずっとサインを頼もうとしてたんだ」

男「分かりましたから、家にあるグッズあげますよ」

会長「改めて、男は本当に綺羅星ソニアなんだな」ヒソヒソ

男「何を今更。で、本題ですが……」ヒソヒソ

男「ツンデレはガチレズで、綺羅星ソニアがおかしいほどに大好き。正体は俺、ましてや大事なペアネックレスを無くしたとなると……」ヒソヒソ

会長「最低だな、私も腹が立つ」

男「去勢されかねない」

会長「法治国家だぞここ」

男「とにかく正体がバレないように手伝ってください」

会長「可愛い後輩のためだ、任せてくれ」

男「先輩……!」

幼馴染「あんた何話してんの?」

会長「ひゃっ!ひゃい!」

会長は分かりやすく声を裏返して動揺している。初恋の乙女かあんたは。

男「言わなきゃよかった……」
159 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 07:56:15.61 ID:KyHuQLq+O













人には何かを変える力があり、それを介するのもまた人である。

この出会いは、歪で、偶然、はたまた奇跡と呼ぶのか。

軌跡が導いた出会いは今までの挫折者に何を与えるのか。

幽霊部員「カラオケ楽しかったっす!」

副会長「そうだね、皆揃うと楽しいね」

部長「また行くか!」

副部長「うん!」

作曲「……人、倒れてる」

作詞「そこは救急車だね、うん。素晴らしきかな、私達には行政がある」

夜、街灯の下には全てのきっかけが倒れていた。

??「ご……ごはん……」

部長「腹減ってるらしいぞ」

副会長「男君達が居たら収集がつくのに……」

副部長「男君とかすぐに警察呼びそうだよね!」

??「行政はやめ……」

純粋な青春の名残が、後悔を呼び。

幽霊部員「なんか見覚えあるような……うーん……」

幽霊部員「とりあえず家が近いから運ぶっす!」

新しい絆が全てに立ち向かう。

部長「は!?運ぶの!?」

副会長「もうやだこの子……」

過去の楔が絆を重ね、重ねた絆は奇跡を起こす。











to be continued
160 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/20(水) 08:06:02.81 ID:KyHuQLq+O
第二章 笑顔の魔法 完

このシリーズも2周年です。本当にありがとうございます。

最近は多忙な事もあり、更新が滞っていますがしっかり生きています。

次が最終章でございます。このペースでは何年かかる事やら……

最終章のアナウンスは出来るだけこのスレで行いたいと思います。

いつも支援のレスありがとうございます。大変励みになっております。

何か質問があればお答えします。
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/22(金) 21:15:18.95 ID:ErG6FqELo
おお、やっと一区切り付いたか
部内でのgdgdが片付くの待ってたのにもう最終章!?
間に何章か入れようず
162 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2017/12/25(月) 00:16:26.39 ID:VM6GviWNO
>>161
最初から三部構成だったのでお許しください。
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/29(金) 15:51:32.16 ID:LA75qJ1Eo
おつおつ
次回もまってる
164 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/01/31(水) 08:34:11.11 ID:wZW44q1SO
ちょっとした短編かつ番外編

その1恥ずかしくないの?


男「この部活のライブって結構人が集まりますよね」

ロリ「そうだにょ〜」

男「俺は平気ですけど、大人数を前にして歌うって恥ずかしくないですか?」

ロリ「私は慣れたにょ」

あれだけ留年してたらそうなりますよね。

作詞「私は……人前に立つ事が多かったからね、そこまで気にしないよ」

この人が人前に立って何をするんだ?過去にスポーツでもやってたのかな?

作曲「私は……絶対に無理」

幽霊部員「僕はそんなの気にした事ないっすね」

考える事があるのか?

会長「顔さえ隠せばなんとかなる」

この人はなんでアイドルをやっていたんだろう。

幼馴染「慣れてるわ」

俺が思うにお前の神経はそこらのアイドルより図太いからな、学校如きのライブで緊張する訳がないよ。

部長「俺はガヤがウザかったなー」

副会長「殆どが部長と副部長の友達ですよね…!?ガヤも観客も……!」

副部長「あはは……やっぱりライブは盛り上げないとね!」

部長「あいつらって頼んでもいねぇのに毎回人集めんだよな」

ロリ「部長と副部長の友達にはいつも助けてもらってるにょ〜」

作詞「観客はライブの命だからね、彼らが居ないと成り立たないけど……うん。うるさいよね」

不良「盛り上がった方が面白いじゃん」ニッ

男「目立ちたがりだな、ほんとに」ハァ
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/31(水) 20:39:55.09 ID:fq9m7hbNo
雰囲気いいな
166 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/02/03(土) 11:04:55.19 ID:pbR6XZD1O
その2 不良家

自由天文部が終わるといつも歩くのが遅くなる。

不良「はぁ……」

ハッキリ言って私は自分の家が嫌いだ。

理由は……まぁ色々とある。

不良「もう着いちまった……」

ガチャッ

そんなこんなで家に帰るといつも最初にする事がある。

不良「……気付いてないな」コソコソ

ガチャッ

見られる前にヘアピンとワックスでセットした髪を治す為、シャワーを浴びる。

ジャ-ッ

不良「なんか、最近大きくなってる気がする……」

私からすれば身体を洗うのはそのついでだ。

ガチャッ

不良「ふーっ、スッキリした……」

着替えも済ませた事だし今日はもう寝よう。

ガチャッ

不良「あっ……」

不良母「きゃー♡私の可愛い可愛い不良ちゃんが帰ってきたわ!!」

こんなのをみんなに知られたら全て終わりだ。

不良母「ご飯出来てるわよ♡今日も学校であった事を聞かせてね!お手伝いさんと私で作ったのよ〜」

不良母「あっ、パパが不良ちゃんと私にお揃いの時計を買った来たわよ〜☆あの人ったら……///」

またよく分からない物に私の名前が刻印されている。

不良「えへへ!早くご飯食べたいなぁ!」

不良母「嬉しいわー♡早くこっちに来て♡」

不良「……うん」

不良「ママ!!」

私はこの家が嫌いだ。








男「会長、この豪邸本当に大きいですよね」

会長「昔からこの近所で一番目立つ家だな」

男「不良の家だったりして……」

会長「まさか」ハハッ
167 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/02/04(日) 17:09:38.73 ID:5sL8hWADO
その3 プロ目線 文化祭の帰り道にて

会長「男」

男「なんですか」

会長「男」

男「なんですか」

会長「呼んでみただけだ」

なんだこいつ。

会長「ソニア」

男「……嫌がらせですか?」

周りに人が居ないとは言え、この人は何を言っているんだ。

会長「文化祭、私達は綺羅星ソニアから見てどうだった」

男「あぁ……へぇ、うん」

男「意外とせっかちですね」

会長「……っ」

俺の意見か、うーん。

幼馴染と同意見になるのかな、あいつとは見ている視点が違うのか。

正真正銘、ソロとしてアイドル業界の1位を取った俺から言わせてもらえば……

男「んー……ごほんっ」

どうだ、こんな声だったか?

なんて忘れる筈がない。

ソニア「そうだね〜☆」

ソニアとして答えて差し上げよう。

ソニア「お遊戯会……かな?」

会長「ははっ……そう、だとは分かってた……けど」

会長「まだまだ先は遠いな」

ソニア「でもね」

会長「っ!」

ソニア「あと少しでお遊戯よりも上、バンドになれるよ」

会長「ソニア……」

男「俺も含めて」

男「それに………………」

男「いや、何でもないです」

会長「言うならハッキリとして欲しいが、嫌なら仕方ない」

会長「ありがとう、気になってたんだ」

男「しょっちゅうソニアを呼ばれたら困りますけどね」アハハ

会長「また呼ばせてくれ」ドヤッ

男「やめてくださいよ」ウゲェ

本音を言うと。

男「まぁ……会長以外の話ですけど」ボソッ

嫉妬でおかしくなってしまいそうだ。
168 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/02/08(木) 00:15:07.34 ID:Z6D616I8o
……どうしてソニアとして答えてしまったんだろうな。

分からない。

ライバル視?まさか。

ソニアと会長にはまだ大きな差が存在する。

でも、それでも、いつかは……

この人、この人は……会長はどこまで行くのだろうか。

理想のままに俺が居た位置にでも立ちたいのか?

反吐が出るね、酷いじゃないかそんなの。

俺よりもずっと下に居たはずなのに。
169 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/02/09(金) 08:22:32.92 ID:RKmEnffZO
その4 会長

会長「ただいま」

会長父「ああ、お帰り」

会長「今日はどうだった?」

会長父「ああ、今日はね」

会長父「久しぶりに来たんだよ……って覚えてないか」

会長「久しぶり?」

会長父「ああ、会長が小さい頃には凄い音楽一家が居てね」

会長父「よくうちのホールに来てたんだ」

会長「へぇ……」

普通の家、だけど。

この普通はとても大切な物だ。

普通のあり方にもよるが、今は普通の方が貴重なのだから。
170 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/02/10(土) 08:15:01.05 ID:UG7EutatO
その5 部長 ライジングロックの帰り道

部長「……」

ロリ先輩は帰ったのか。

また一人で泣いているのか、今の俺にかける言葉無い。

先輩の夢、叶えてあげたかったなぁ。

副会長「何か手立てがある筈です。このままでは本当に廃部してしまいます」

幽霊部員「副会長……」

部長「廃部だよ」

どうしてもっと練習をしなかったのか、やる気が無かった?時間が合わなかった?どれも違う、きっと無理だって気付いていたんだよ。

部長「俺が悪かった」

どうして気付けなかった。例え報われなかったとしても、しなければならない努力がある事に――

パンッ

部長「っ!」

副部長「最低……!」

優しい平手打ちだった。
171 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/02/10(土) 18:49:01.50 ID:cZ95xm5hO
副部長「どうして、自分だけのせいにするの!?」

副部長「皆だよ!皆!!副会長は何でもかんでも激しく叩くし、ロリちゃんは私達を置いて新しく作ったバンドに夢中、幽霊部員なんか部活にすら顔を出さない、部長は率先して練習をしない、私は……は……私は凄く下手っぴだ…………から」グスンッ

昔は何をやっても人並み以上にこなす事が出来た。

副部長「まだ……諦めちゃ駄目だよ!」ポロポロ

歌だってその例外ではない。

副部長「学校にだって掛け合って……」グスッ

副会長「作詞先輩が何回も掛け合いましたよ」

そんな俺が惹かれたのはチェロという楽器。

幽霊部員「副部長ちゃん……」

親に何度も無理を言ってやらせてもらった。

副部長「嫌だよ……新しく部員が入ったのに……」ポロポロ

そんな俺は周りよりも上達が早く、何度もコンクールに出て、気付けば……周りに追い越されていた。

才能?感覚?クソ食らえよ。

副部長「男君と不良ちゃんが可哀想だよ……」グスッ

俺には才能が無いとでも言うのか?器用貧乏?

俺に才能があったら自由天文部になんか……

「お疲れ様!!打ち上げにでも行くかにょ?」

部長「!」

副部長「ロリ……ちゃん」

副会長「……」

幽霊部員「いたたまれないっすよ……」ボソッ

部長「あ……あ……っ……あぁ……」ガクッ

自由天文部になんか……

ロリ「ごめんね……私のわがままで辛い思いをさせて」

部長「ロリ……先輩……ごめんなさい……!俺!!自由天文部を……自由天文部を……!」

ロリ「土下座しないで……私が悪いのに……ほら、涙拭いて」ナデナデ
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/11(日) 04:20:23.95 ID:OcTB4Gt2o
ロリはみんなのお母さん
173 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/02/19(月) 21:47:25.10 ID:qaWYH822o
その6 ロリ ライジングロックの帰り道



部長「ごめんなさい……ごめんなさい……」

この子も器ではなかった。

それだけの話。

むしろこの状況の中、最も重圧がかかるポジションをよくこなしてくれたとも思っている。

二年前の今、自由天文部の部長をやっていたドラムをこの子は慕っていたと思う。

この子はドラムのようになりたかったのか私には分からない。

それとも……

ロリ「立派だったよ」

私のようになりたかったのか。

ロリ「ほら、立ってよ」

最初は「モテたいから」と言って入部した彼が「この部活を残したい」と言ってくれたのには本当に驚いた。

本人が綺麗な言葉で飾ろうとも燻った感情を募らせている子だとは分かっていた。そんな癖のある子だからこそ奇跡を起こすと信じた私が自由天文部の代表に相応しいと思ったからこそ部長に指名したのだ。

そんな子に対してトラウマを更に積み重ねてしまった私は人として最低だろう。

「モテたい」というのは嘘で何かを残したい事も分かっていた癖に……

先輩ならどうしていたのかな、もう分からないよ。

ロリ「まずはたくさん休んで……それから」

ロリ「文化祭があるから、それには出よう」

ロリ「最後の思い出だからね」

先輩、ごめんなさい。

私は貴女の夢を叶える事が出来なかった。
174 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/02/26(月) 19:33:59.37 ID:N89DNej0O
第三章 ロリ「絆の奇跡」 始まり



男「話しって?」

打ち上げの帰り、俺は友に呼び出された。

場所は俺の家の前。

祖父と祖母にいらぬ誤解でもされたらどうするつもりなのか……

友「俺……いや、私は」

男「文化祭でテンションでも上がったのか?変な事言うなよ」

友は正直に言ってかなり変な奴だ、いつも男のように振舞っている。

学校に1人は居る痛い奴なのかと思えば普通に会話も出来るし、むしろ上手だ。

友「男が分からないんだ」

男「その言葉そっくりお返しするわ」

友「ほら、男って女として美しいけど、男として美しくもあるだろ?」

男「心外だけど、否定しないよ」

友「だからさ、そんな男を見てると俺……私はどうしたらいいのかなって……」

男「結局は何が言いたい?もっと男らしくしろとでも?」

友「ごめん、違う。俺の話なんだ。俺がどう振る舞えば良いのか……」

友「初めてなんだよ、俺と同じような人を見たのが……絶対に同類だし、仲良くなれると思ってる。だから出来るだけ男が俺と一緒に居て心地良い風にしたいんだ」

男「趣味悪いなお前」

こいつ、俺と全く同じ事を考えて居たのか。

間違いなく同類だな、だからこそ言ってやらなければならない。

曖昧な発言で友を狂わせてはならない。

男「あのさ、女なんだから女らしくしろよ。折角の高校生活、楽しまなきゃ損だぜ」

友「……わかった」

綺羅星ソニアだった時も俺が男であるように、友も女であるべきなんだ。

男「はぁ……仕方ない。ちょっと上がれよ」

友「ふぇっ!?」

こいつには俺の事を教えてもいいと思った。例え軽蔑されたとしても、友ならば良いとすら思えたのだ。
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/04(日) 00:30:12.56 ID:uhszVFXUo
きたか!
176 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/03/05(月) 08:30:27.07 ID:vgr83SUvO
友「おっ、おお、おっ、お邪魔しますぅ……」

男「今日は誰も居ないな」

最近はこういう事が多い、二人揃って何をしているのやら。

友「誰も居ない!?」

友「……」

友「そうか」

男「……」

男「目が据わってるけど……」

友「気のせいだよ」

男「やっぱりお前おかしいって」

男「まぁいいや……」

男「こっち来て」

昔使っていた部屋に案内する。

友はよろめくような足取りで着い来た。
177 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/03/17(土) 19:47:52.41 ID:XY49X/HFO
>>176

友はよろめくような足取りで着い来た


友はよろめくような足取りで着いて来た。
178 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/03/19(月) 19:06:42.54 ID:XrCQ6Rq9O
男「この部屋」

アイドル時代に使っていた部屋だ、ここで一人夜な夜なとレッスンや化粧の勉強とかしたっけな。

まぁ、化粧はマネージャーか社長が全部やってくれたから意味無かったけどな。

友「え、女物の服ばかりじゃん」

男「昔着てたんだよ」

友「?」

友「お前……マジで?」

男「違うって」

友「でも……」

男「ほら見て」ズポッ

ソニア時代のウィッグを被る。

友「!」

男「お前には知られても良いって、思ったんだ」

友「マジでぇ……?」






男「そう……俺が綺羅星ソニアだよ」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/23(金) 20:14:50.01 ID:IoVsUnOPo
めっちゃ期待
180 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/03/24(土) 22:18:10.63 ID:cYWoAi95O
友は頭が追いつかないのか、当時着ていた衣装、超ミニのスカートをずっと握りしめている。

この衣装は着ているだけでハラハラするスカートだったな。

男「その衣装売ったら100万くらいするから」

友「ひゃっ!ひゃくまんっ!?」

テンプレートの反応ありがとうございます、ん?この衣装に不自然なシワがあるな、祖母が触ったのか?

友「あばば……」

俺の格好が男子高校生そのものであるにも関わらず、ウィッグだけでも気付いてしまう親友。

男「やっぱりわかる奴にはウィッグだけでも分かるんだな」

友「き、き、き、綺羅星ソニアさんだったんでつね……」

ここまで恐縮しなくたって良いじゃないか、遠い存在な訳では無いだろう?

男「もう辞めたけどな」

181 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/03/24(土) 22:22:52.07 ID:cYWoAi95O
友「トップ中のトップアイドル様がどうして……?」

男「稼ぎ過ぎたのと単純に新しい道を模索したかったんだ」

友「引退したアイドルが俳優を志すのと似ている……」

男「簡単に言えばそうかもな、俺は学生生活なんて微塵も興味無いけどさ」

友「綺羅星ソニアならギターをやるにしても沢山レッスンを……」

男「おばあちゃんがさ、普通の高校生活をして欲しいってうるさいんだよ」

友「あっ、凄いほっこりする」

男「俺自身もメディアとかプロの枠に囚われない表現を実現してみたかった。てのはある」

男「そしたらさ、身近には凄い人が居るんだよな」

友「会長さんの事?」

男「そう、あの人は天才なんて言葉じゃあ測れない」

友「そんなに凄いの?」

182 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/03/24(土) 22:24:28.49 ID:cYWoAi95O
友は会長の並外れた才能を理解していない。
同じ学生と言うフィルターが評価を落としているのか、そもそも音楽に興味が無いのか。

男「綺羅星ソニア並さ」

下手すれば越えられるかも。

友「自画自賛?」

男「とんでもない。ソニアは俺であって俺ではない」

男「俺が生み出したキャラクターだよ」

実際に綺羅星ソニアを演じている時は本当に別の人間になったかのような、夢を見ているかのような……そんな感覚なんだ。

友「キャラクター……」

友「あのさ……誰かに男の秘密をバラ撒くとかそんな気は一切無いし、墓まで持っていくつもりなんだけどさ」ガシッ

友は急に俺の手を持ってどうするつもりなのか、すごく嫌な予感がする。

友「今一信じられないから……実際に綺羅星ソニアの歌を歌って踊ってみて欲しい……………な」

凄い上目遣いでお願いをされてしまった。
183 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/03/24(土) 22:25:42.28 ID:cYWoAi95O

男「嫌だ」

友「それが嫌だ!」

男「しつこいなぁ、嫌な物は……」

友「……」

友「だったら……」

『だったら?』
秘密をばら撒くつもりか?
友にばら撒かれるのなら許せるけど、少し残念だな……

友「絶対に!ここをどかない!」

間を空けて言う事がそれ?

男「ふふっ……あははっ……!」

なんだか馬鹿らしくなった。

友は俺が思っている以上に良い奴だ。

俺に見せて差し上げよう。

男「良いよ、聞かせてやるし………」

男「見せちゃうよ――」

男「――」




ソニア「私のステージ!!」




友「うおおおおお!!!!」

ソニア「と、その前に☆」

ソニア「お着替えしなくちゃ♡」

友「あ、はいっ。早めでお願いします」


184 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/03/25(日) 07:43:22.91 ID:uHH4384aO

ソニア「では、改めましてっ☆」

私、ソニアは本来ならば大勢の観客の前以外ではステージなんて行わない。

こんなにも規模が小さなステージなんてデビューした時すら無かった。

そもそもで言えばアイドルなんて引退しているけど……
唯一の親友に披露する限定ステージなら話は違うよね、うん。

ソニア「友ちゃーん!今日はありがとー!」

友「きゃあああああ!!!!」

ふーんっ。
友ってこんな表情もするんだね!

ソニア「じゃあ、1曲だけ歌うよ?……」

CD再生、ポチッとな。

友「シュール……」

うん、聞こえてきたよ。
凄く激しい曲で、ダンスも過激だったからレッスンは大変だったな〜懐かしいっ!

ソニア「……っと」

そう、最初のステップが急だったね。

友「パンツ見えてる!見えてる!!」





185 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/03/25(日) 07:45:57.70 ID:uHH4384aO




ソニア「今日はありがとっ!」

友「アンコール!!アンコール!!」

ソニア「もうっ、だめだよー?」スポッ

これ以上踊るつもりは無いので、ウィッグを外すと……

男「めちゃくちゃ疲れたから……これ以上は無理……」

まぁ、男に戻る訳だ。

多重人格とかそんな大層な物ではなく、ただキャラクターを演じ分けているだけなのさ。

友「残念……けど、ウィッグを取っても女みたいだ……ね」

男「見た目だけな。ようやく分かってもらえたと思うけどさ、俺はれっきとした男なの」

男「だからお前も男のように振る舞う必要は無いんだよ、わかった?」

友「分かったよ……」

男「女なんだから、ソッチでも無い限り女の格好をしなきゃ勿体無いよ。折角の女子高生生活を変に楽しんでも勿体無いだろ?」

友「うん、分かった。これからは女らしくするよ」

これだけ真剣に見つめてくれるのならばもう彼女の事を心配する必要は無いだろう。

友「でもさ、えいっ」

スポッ

男「……」

友は綺羅星ソニアの物とは違う、普通のウィッグを俺に被せた。

友「どうみても女だよな」

男「もっと男らしく産まれたかったけど……この顔に産まれて感謝してるよ、おかげで金には困らない」

友「そう言えば……どうしてアイドルになったの?」

男「きっかけはスカウトだけど……思いっきり勝ちたかった……いや、勝ちたいんだ……“あいつら”に」

思い出すだけでも腹立たしい、胸を締め付ける、涙が出そうになる、悔しい、殺してやりたい、勝ちたい、勝ちたい、勝ちたい、み……

友「“あいつら”?」キョトン

男「両親と姉に……勝ちたいんだ……子供染みてるけどさ、復讐してやるためにアイドルを始めたんだ」

友「どうしてそんな……」

男「……」

男「それは……教えられないな」
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/26(月) 05:35:27.15 ID:BWVOUd95o
むっちゃ気になる
187 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/03/30(金) 08:19:25.91 ID:ndijAR7dO
友「話したくない事なの?」

男「まぁ……うん」

友「そっか……」

男「…………」





――6年前

「下手」

「もう一度歌いなさい」

男「う、うん!」ニコニコ

「……」

男「La 〜♪」

母「もういいわ」

父「次は姉が歌いなさい」
188 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/04/04(水) 08:34:14.11 ID:JC88S2aqO
近所のホールでいつものように練習、憂鬱な時間だった。

男「ごめんなさい……」

父「……」

姉「〜♪」

俺はこの家で1番の出来損ないだった。

物心が付いた頃から“適正”を見る為に一通りの楽器、更には歌までも練習させられる。
ギター、ベース、ドラム等の俗に言う大衆向きは“低俗”だそうで、それを扱うジャンルは聞かせてすら貰えなかった。

傍から見たら狂っているのだろう、それに気付いた頃には全てが遅かったが。

父「うん、良い」

母「同じ兄弟なのにどうしてかしら……」

父「声が高過ぎるのか?」

母「まだ子供だから?」

父「それは姉もそうだ、更に言うと男はいつも自由に歌う癖がある」

母「そうね……どうしたらいいのかしら?この子は私達が思い描く方向と逆に行くもの」

男「……」

両親は俺の事でいつも討論する。

それを見られるのも嫌だった。
189 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/04/06(金) 11:12:51.23 ID:sanDJTSlO
「……」ジッ

男「うっ……」

「どうしたの?」

男「なんでもないよ……」

「おうた、じょうずなんだね!」

男「う、うん」

母「男!聞いてるの!?」

男「ご、ごめんなさい!」

「……」

母「この子は……もう」

最初から両親が求める物を持っていなかったのだろう。

結果的には……ある日の事だった。

いつものように家へ帰ると……

男「ただいまー」

男「あれ?お母さん?お父さん?お姉ちゃん?」

祖母「……」

祖父「男……あのな」

祖母「いい、私が言うから……」

祖母「聞いて、男」

祖母「お母さんとお父さんとお姉ちゃんはね、引越ししちゃったの」
190 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/04/08(日) 23:40:45.94 ID:eId9HoRhO
男「引越し……?」

祖母「少し忙しいから……」

祖母「ほんの少しだけ引っ越してるだけだから」

男「いつまで!?」

女のような奇声をあげて叫ぶ。

男「いつまでなの!?」

何度も何度も叫んだが、意味は無かった。

祖母「……」

男「教えてよ!」

子供ながらにして捨てられたって事は分かっていたが、認めたくなかった。

男「じょうずに歌うからぁ………っ………!」

その時の俺は昨日出場した歌のコンクールで起きた出来事を思い出していた。

――――

パチパチパチ

男「……」ペコッ

「では、〜〜番の男君。歌ってください」

男(自由に歌いたい……な)

男(いいよね?どうせコンクールは何回もやるし……)

男(本当はもっと上手に歌えるって……お父さんとお母さんに認めてもらわなきゃ)

「男君?」

男「ごっ、ごめんなさい。歌います」

「はい、緊張しないでね」

男「La〜♪」

父「……」

母「どうしてこうなのかしら……」ハァ

「おお、凄い上手だな……」

「子供でこの表現力は……」

母と父は単純に率直に歌えば満足なことに対し俺はタメやアレンジを加えてしまう。

どちらも決して間違ってはいないが――

――

男「あのコンクールがきっかけだ……帰り道だって一言も……うわあぁぁぁ……!!」

祖母「ごめんね……私がもう少しまともに……!」

祖父「あの馬鹿は……」

そして……







あの頃から人として緩やかに死んでいくだけだった俺の事を……あの人が救ってくれた。

191 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/04/08(日) 23:55:39.94 ID:bJTzmZT9O
中学生になったばかりの頃だった。

「ああ……また誰もスカウトできなかった」ウルウル

男「……」

「あっ、凄い美少女だけど……ボーイッシュだな」

たまたま繁華街を歩いていた時に出会った運命の人、俺の事を変えてくれた人。

「ねぇねぇ、貴女」

男「……?」

「――アイドルになってみない?」

――現在

男「……」

友「おーい?」

男「ごめん、物思いに耽ってた」

友「絶対に昔の事思い出してたろ」

男「ふふっ……そうかもな」

友「教えてくれたっていいのに……もうっ」

男「両親からひどい扱いを受けてきたってだけだよ」

男「ほんとにそれだけ」

完膚無きまで俺の実力を見せつけてやって、姉よりも優れてるって見せつけて……謝らせて……それで……

男「許してはあげたいから」

友「そっか、うん!そうだよな!それでこそ男だ!」
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/11(水) 23:47:49.15 ID:tsX8qE2To
重いな
おつおつ
193 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/04/21(土) 10:18:50.33 ID:rGIivKQtO
友は何ともやるせない表情、捨てられた子犬を見るかのような目で俺を見る。

友「凄く仲が良くないのは分かったけどさ、そんな両親と一緒の家に居辛いとかは無いの?」

男「両親は家に居ないからさ」

友「え?」

ん?急に雰囲気変わったな。

友「じゃ、じゃあ普段は……どうして?」

男「普通におじいちゃんとおばあちゃんが居るよ」

友「はぁ……今日泊まっていい?」

男「自然な流れで泊まろうとすんな」

何が目的なんだか。

友「じゃあさ……あのさ……」ドキドキドキ

友の表情、素振り、雰囲気が急に女性らしく、今までの友を知っている俺からしたら違和感しかない。

友「好きな人とか……居るの?」

友は前髪に人差し指を絡め、すじりもじりと身体を動かしている。そこまで恥ずかしがるような質問なのか……

まぁ答えてやろう。

男「居るよ」

友「誰誰誰!!??」

友は鬼気迫る表情で俺の両手を突然掴んでから引き寄せる。
密接した状態、少し前に顔を出せば唇と唇が触れてしまうだろう。

男「ソニア時代のマネージャー」

ここまで言わされてしまったか、うん。
親友だからと言っても、限度があるのではないか?
194 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/04/24(火) 12:23:46.38 ID:b2q9pkw9O
友「……」

友「えっ?」

友は呆気に取られ、俺が何を言っているのか今一理解出来ていなかった。

男「本当だよ、うん。だってさだってさ、凄く可愛らしいんだよ」

友「歳……いくつなの、その人」

男「21……」

友「ほぼ6歳差!無理だよ!!」

この女、男のように振る舞う割にはまともな事を抜かしやがる。

男「ワンチャンあるかも知れないだろ!」

友「諦めて!!」

男「いやだよ!」
195 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/04/29(日) 09:57:57.69 ID:83Qcb0RoO
友と他愛も無い口論を数十分も続けた後、家に返した。

帰りたくないと喚いていたのだが、文化祭の帰りに女子を家に泊めるのは問題しかない。

男「ギターもしたかったし……」

リビングにはお父さんとお母さんが座っている。
今日は何があったのか話してあげないと、とっても楽しかったって。

男「うん……そうだよ、友がね、とっても面白くってさ」

男「可愛い女の子なのに男のように振舞おうとしているんだよ。でも、それは僕に合わせようとしているだけでさ、本当は人と違う訳じゃないんだって」

男「話聞いてる?え?」

男「歌え?どうして?」

男「いやだよ?もう歌わなくて良いって、無理矢理歌わせてごめんって、謝ってくれたよね!?」

男「……」

仕方なく歌った。

精一杯、下手くそなりに……




下手くそ?

どこが?

男「ははっ……」

笑いがこみ上げてくる、これはたまらなく痛快な喜劇だ

男「あっははははは!!」
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 20:08:11.44 ID:qLx/p7wLo
こわい
197 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/05/05(土) 18:59:26.03 ID:DdI/X0cAO
おとうさんとおかあさんはそれでも下手糞と、期待外れと、心のない一言が僕を、私を、俺を傷つける。

男「うるせぇよ!!」

男「下手糞はてめぇら、あんた達だろ!!」

男「俺の何がいけなかった!?」

何も答えない。

男「表現は自由だろ!?」

男「どう聞いたって俺の歌は上手だろ!!??」

男「お姉ちゃんよりも!!ずっと、ずっと!!」

俺の方がずっと魅力的に歌えると子供の頃から今までずっと思ってきた。それでも2人は姉を選ぶ。

男「俺を“こうした”のは誰だ?男性として歌えなくしたのは誰だ?」

男「女物のウィッグを被らなければ歌えなくしたのは誰だよ!?」

友に被せられたウィッグをまだ被っていたから歌えているだけだ、綺羅星ソニアの姿なら歌えるってだけではない。

男で無ければ歌えるのだ。

男「女に扮する事でしかまともに歌えないって……馬鹿みたいじゃん」

それでも……それでも……

男「歌えるのならそれでいいや」

男「あははは、きゃはははは!」

奇声のような笑い声は女性そのものだった。
198 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/05/06(日) 00:09:22.50 ID:oAmXNntKO

同時刻

近所では少しだけ名が知られている会員制のレストラン。本日のメインとして招待された若手のジャズバンドが小気味よい即興演奏を行い場を湧かせる最中、ある1つのテーブルでは場違いとでも言わんばかりに聞いていても心地の良くない会話が繰り広げられていた。

周囲の目も憚らず、テーブルには男の両親と姉、祖父母が一堂に会している。

母「お母さんとお父さん、良い音よ。これを家族で聞く為に今日は集まった筈でしょ?」

父「お義母さんとお義父さん、良い音ですよ。いやー今日は記念すべき日ですね。こうしてまた集まれた」

祖母「あなた達にお母さんと言われる筋合いはありません」

祖父「2人揃ってお母さんとお父さんなんて気持ち悪い、どうした?言いたい事は何も無いのか?」

祖父母が出す険悪な雰囲気に対して父と母は何処吹く風だ。
最初からまともに取り合う気も無いかのように。

姉「……」

祖母「どうして今更顔を出したの?」

母「実はね、姉は今度行われるフェスに出場する事になったの」

祖母「フェス……よく分からないけど、凄いのかしら?」

父「ええ、ジャンルを問わずにインディーズの若手実力派が集まります」

祖父「いんでぃーず?」

父「ふっ……まぁ、プロではない若手ミュージシャンの祭典と言ったらわかりやすいかと」

祖父を小馬鹿にした態度をほんの一瞬、わかりやすく出してしまう。

これが父という人間のほん一端、決して悪気があわる訳では無い。

祖父「あ?今鼻で笑ったか?」

母「気のせいよお父さん」

祖父「お前は黙ってろ!」

祖母「やめてよこんな所で……」

祖父「ちっ……」

父「私のツテで参加出来るようになりまして……」

母「この子の実力だって立派よ、きっと良い結果を残すわ」

祖父「そうか、それは良くやったな」

祖母「おめでとう」

祖父母の言葉は心からの本心、姉だって可愛い孫の1人なのだから。

姉「……」エッヘン

が、どうしても気になる事がある。

祖母「……」

聞いても録な事が無いだろう。
このレストランに来てから2時間弱、本当に話すべき事を話さずにずっと無言の食事をしていたのだから。

祖母「男は……気にならないの?」

母・父「……!」

父「あ、あぁ、男は元気にしてますか?」

母「ずっと気になってたの、しっかりご飯食べてるかしら」

祖母・祖父「……」

2人は年の功なのか、人の親としてなのか、今の反応だけでこの2人と男が再び笑い合える日が来る事は二度と無いと理解した。

今日、この場に男を連れて来なくて本当に良かった。

あまりにも惨い。

祖母「姉に対する愛情を少しだけでもいいから男に分けてやれなかったの?」ボソッ

祖父「……」

呪詛のように小さく呟かれた言葉が祖父以外に届く事は無かった。
199 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/05/10(木) 13:58:23.03 ID:/nY1i46xO
姉「男に会いたい……」

母「……そうね」

母「音のセンスがなくたって男は私達の……」

母「家族だから」

父「だな……」

母は真っ直ぐな瞳で祖母を見据える。
母の言葉は常識でこそあるが、心からの嘘偽り無く望んでいる事ではない。
普通の人間なら2人と男を近付けたくもないだろう、せめて父と母の覚悟を推し量る為にも1度は突き放すだろう。
祖母は理解していた。
試しに突き放したとしても父と母が食い下がる事は無いと。
『はい、そうですか』と待っていましたとでも言わんばかりの反応を取り、自分達が悪者ではない、むしろ普通の人間である事を体良く表現するのが目的だと。
今は会いたくても会えない、それならば昔は?どうして?
祖母は考える事すらも馬鹿らしくなり、仮にも腹を痛めて産んだ筈の子を小さく鼻で笑ってやった。

祖母「……」

祖母「綺羅星ソニアって知ってる?」

こんな茶番を繰り広げるよりも別の事を話した方が良い、自分の娘で無ければ思い付く限りの罵倒雑言を浴びせてやりたかった。

母「えぇ、有名ね」

父「アイドルとは思えない歌唱力ですが、どうして?今はそれどころでは……」

祖母「……」

あの時の事は少し行き過ぎた教育だと思っていた。
男に対する情熱が間違えた方向に行ってしまっているだけだと、祖母はひどい勘違いをしていた。
目の前で座っている2人は男を道具かなにかと勘違いしていたのだ。
その結果、男は屈折した感情を今でも持ち続けている、理由は言うまでもない。

祖母「気づくわけない……か」
200 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/05/14(月) 20:07:00.39 ID:n6/G/YMiO
これで分かった。

この二人は男の親ではない。

分かってはいた。

言うまでもない。

それでもやりきれない。

祖母「姉は今幸せかな?」

綺羅星ソニアが男だと分かっていたのなら、ほんの僅かな可能性があったのかも知れない。

姉「はい、とっても」

祖母「お父さんと、お母さんみたいになっては駄目よ?」

何も期待出来なかった。

ジャズバンドの演奏が終わると同時に言い放つ。

祖母「あんた達と男は会わせないよ」

パチパチパチパチ

その声が拍手と共に掻き消されていたとしても関係無い。

お代だけを置いて祖父とレストランを後にした。
201 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/05/17(木) 08:41:19.29 ID:ny5dU8viO
同時刻。

「あはは……ごめんね、たくさん食べちゃって」

幽霊部員の家には部長、作詞、作曲、副会長、副部長までもがお邪魔していた。

幽霊部員「いいっすよーそれくらい」

副会長「この人、常識と言う物が……」ピクッピクッ

名も知らぬ女性は幽霊部員の家にある炊飯器を全て平らげる。
その行いは副会長の琴線に触れるのに充分だった。
空腹で倒れていたとは言え、マナーが無いと副会長は考えていたのだ。

しかし、気にしていたのは副会長だけであり、他の部員達はその事を気にしてすらいなかった。

作詞「君は相変わらずだね、副会長」

副会長「かいちょ、作詞先輩……しかしですね」

作詞「そう、この女性の行いは明らかに非常識。しかし、それをもってしても余りある空腹が彼女を苦しめていたのだろう。本来ならば限界を迎えてしまったであろう人間を助けたと言う事実こそが今の私達に」
副部長「どうしてご飯も何も食べずにあんな所で倒れていたんですか!!??」

作詞「必要であり……」

部長「珍しく折れたな」

作曲「眠い……」

「お金が無いから、です」

「うん、そう、お金が無い、から……あはは」

この女は感情が無いのかどうなのか、口は笑っても目が笑っておらず、どうしても心象が悪い。

一言で言うと気持ちが悪いのだ。

副会長「……お名前は?」
202 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/05/18(金) 23:00:56.68 ID:kfQdpLGcO
作詞「折れた訳では無いよ、副部長の
無神経にほとほと呆れ果て……」

幽霊部員「作詞ちゃんうるせーっす」

幽霊部員の言葉はシンプルに作詞の言葉を遮った。

作詞は静かに腕を組み、横目で幽霊部員を見ながら笑っている。
この状況では仕方が無いと言った様子だ。

「その前に、聞いて……いい?」

部長「あぁ、どうぞ」

質問を質問で返しても気にする素振りは無く、あっけらかんとした様子だ。

部長「……」

部長は静かに目の前の女性を分析していた。

前髪は口元、襟足は腰までの好き放題に伸びきった髪の毛を無理して金髪にしたからなのか、髪は痛みきっている。

人として常識の無い姿に隠してはいるが、嫌悪感を抱いている。
その全てをひっくるめて気持ち悪いと言うのが彼の素直な気持ちだった。

そう、部長の見る目は正しくもないが間違ってもいない。
目の前で座っている女は人として死んでいると言うのが正しい。

「……あのさ」

痛みきった髪を指先で弄りながら質問する。

「――自由天文部なの?」
203 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/05/21(月) 08:42:45.33 ID:lfhakcVzO
前髪の隙間から覗く、暗く淀んだ目で部長の事を見据える。

部長「え?あ、そうっすけど……」

「楽器持ってるからね……そうかなって」

小さな声でぽつりぽつりと語り出す。
耳を凝らさなければ聞こえない。

「OG……だから……君たちの学校にも通ってたし」

部長「え?マジすか?」

作詞「!」

幽霊部員「どっかで見た事ある気がしたんすよねー!」ドヤッ

「毎日のように……ううん、サボってばかりだったけどね」

作曲「あ……でも……」

「まだ潰れてないのが不思議なくらいだよ」
204 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/05/24(木) 01:48:56.87 ID:oNBvphcjo
作曲「違います……」

作曲「三学期中に廃部します……」

「……そっか」

静かにタバコを取り出し、火をつける。

「ごめんね、ちょっとだけ」

幽霊部員「お姉ちゃんも吸うから良いっすよ」

「お姉……ちゃん……そっか、一緒に……住んでる……の?」

自信の無い掠れた声で質問する。
ここに居る全員が彼女の声を聞き取るのに必死だった。

幽霊部員「そうっすよ!今はイギリスでホームステイしてるっす!」

「そっか」ニチヤァ

口角だけを上げた気持ちの悪い笑みを浮かべる、不自然かつ気味が悪い。  
誰から見ても彼女が人とまともに会話をしてこなかったの事が伺えたのだった。

部長「なぁなぁ……」ヒソヒソ

部長は幽霊部員の部屋に立て掛けられていた写真をこっそりと副部長と作詞に見せる。

副部長「んー?」

写真には過去の自由天文部が写っていた。

部長「これって昔の自由天文部だよな?」

作詞「そうだね。見た所によると写真の隅に立っているのがロリ先輩で、中央でピースをしているのが自由天文部を作った伝説の先輩だろう。幽霊部員の姉も写っている」

「私は女……です……」

幽霊部員「女……聞いたことないっすね」

女「サボってばかりだったから……」

二人の会話を横目にして話は盛り上がる。

副部長「うーん、女さんは顔が隠れてるから誰か分からないや」

部長「だよなー世代違いか?」

作詞「どうだろう?幽霊部員のお姉さんを知っていた素振りはあったからね、私からはこの写真に女先輩は居ないとしか言えないな」
205 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/05/25(金) 08:28:44.79 ID:kYP2e3HmO
幽霊部員「ちなみに今住んでる家はあるんすか?」

副会長「幽霊部員!こんな所でお人好しを発揮してどうするの!?」

部長「でた、幽霊部員にだけタメ口」

女「無い……追い出された」

女「荷物もなにもかも……うん」

女「家賃未払いだからって荷物まで没収は酷い……よね?ははっ」

副会長「それだけで済んで感謝する所でしょう……」ハァ

女「とり、あえずはお金を稼いで……未払い分の家賃を払わなきゃ……」

作曲「逞しい……意外」

幽霊部員「それまでうちに泊まるっすか?」

副会長「幽霊部員!!」

部長「あいつ、本当に何考えてるかわかんねーわ」

作詞「ふふっ……」

副部長「本当に変な子だなー」

幽霊部員「どうするっす?お姉ちゃんが帰ってくるまでの間っすけど」

女「……お言葉に……甘えて……」

幽霊部員「決まりっす!ちゃちゃん!」

女「本当に似ている……」ボソッ

部長「じゃっ、帰るか。また来週」
206 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/05/25(金) 08:39:27.62 ID:kYP2e3HmO
そして、平等に夜が更けていく。











3日後

ロリ「夏休みぃぃぃ!!」

幽霊部員「あと少しで夏休みっすよ!」

男「どうします?俺達が狙えるとしたらこのフェスが……」

会長「そうだな、うまくいけば……」

副会長「会長を中心に据えていくのは当然として」

月曜日の放課後、全員が部室に集まっている。

自由天文部は新たなスタートを切った。
207 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/05/27(日) 00:11:06.43 ID:D+XqGNx9O
>>206訂正




そして、夜は平等に更けていく。











3日後

副部長「夏休み!!!!」

幽霊部員「あと少しで夏休みっすよ!」

男「どうします?俺達が狙えるとしたらこのフェスが……」

会長「そうだな、うまくいけば……」

副会長「会長を中心に据えていくのは当然として」

月曜日の放課後、全員が部室に集まっている。

自由天文部は新たなスタートを切った。
208 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/05/27(日) 00:24:20.20 ID:D+XqGNx9O
部長「そう言えばうちのOGに会ったぜ」

不良「ふーん、どんな人だったの?」

部長「うーん……口では表しにくいな」

作曲「暗い……人」

部長「お前がそれ言う?」

幽霊部員「頑なにパートを教えてくれないんすよね、センスありそうなのに」

幼馴染「サボってばかりだから言えないんじゃないの?」

部長「お前もそれ言う?」

副部長「ねぇねぇ知ってる!?ダブルフェイスのツンデレちゃんが脱退だって!!」

男「ごはぁっ!!!?」ブ-ッ

どういう事だ?現状で言えばトップアイドルだったのに自らそれを捨てるか!?

会長「本当か!?残念……だな」

作詞「驚くのは結構だが……かかっているんだよね、男君が飲んでいたジュース」ピクッピクッ
209 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/05/31(木) 08:29:48.00 ID:FgwfDCqSO
男「あっ……」

男「ご、ごめんなさい……」

咄嗟にタオルを取り出し、濡れてしまった作詞先輩に手渡した。 

シャツにコーラがかかり、若干ではあるものの透けてしまった……なるべく作詞先輩の事を見ないように務める。

作詞「うん……困ったね。これでは恥ずかしいよ」

部長「俺のTシャツ貸してやろうか?」

作詞「すまない。今日は制汗剤を持っていないからね、部長の体臭は耐えられそうにないよ」

部長「風邪引いちまえ」

作詞「男君。なにか肌着でもいいから持ってるかな?」

作詞先輩はくすみがかった銀髪を結ってから身を乗り出すと、テーブルの向かい側で座る俺の眼前まで顔を近づける。

作詞「濡らした君が責任を取るべきだよね」

人差し指と親指を使い、俺の顎を掴む。
挑発するかのような仕草は俺の事をからかう為だろう。

会長「む」

男「あっ、あー……バッグに入ってますね。待ってください」ゴソゴソ

衣替えが始まってしまったからなぁ、夏服になってから着替えも持ち歩かなくなったけど……

確かスクールバッグの中に……あ、あった。

不良(こいつ、どうしてカツラを持ち歩いて……私にしか見えていないよな?これ)

男「着てない体操着の上、ありましたよ」

作詞「ありがとう。着替えてくるかよ」

作詞先輩は俺の体操服を持ち、どこかへと着替えに行ったのだった。
どうせトイレ辺りだろう。

副部長「貸そうと思ってたのに行っちゃった」

幼馴染「ソニアの顔面プリントTはキツいと思う、私でもね」
210 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/05/31(木) 19:17:28.15 ID:fTSKDSqZO
>>209
作詞「ありがとう。着替えてくるかよ」

作詞「ありがとう。着替えてくるよ」
211 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/05/31(木) 19:28:52.70 ID:fTSKDSqZO
男「気になってましたけど」

男「ツンデレ脱退てマジですか」

話が脱線していたが、どうしても気になっている。先程からぐわんぐわんと頭が揺れ、冷や汗が止まらない。

作詞先輩が席を外しても変調が続くという事は、口に含んでいたジュースを作詞先輩にかけてしまったのが変調の原因ではないと言う事だ。

幼馴染「馴れ馴れしいわね」

男「アイドルくらい呼び捨てさせろよ」

幼馴染「先輩の言う事を聞かないなんて……いつからここまでひねくれたのかしら」

この女……白々しいな。

幼馴染「芸能活動自体も休止らしいよ」

男「芸能活動まで!?」
212 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/06/04(月) 21:41:29.03 ID:+w0TtT1YO
幼馴染「……」

幼馴染「なによ、アンタ……そこまでアイドルに興味があるの?」

男「あっ……いや、その……」

幼馴染は怪訝な表情で俺を見据える。
なんと説明をすれば良いのやら、幼馴染はやはり面倒だ。
疑い、興味、洞察をこの部活の中ではしっかりと持っている部類の人間。

副部長「男君はソニアちゃんが大好きだからね!」

副部長「入部したばかりの頃もソニアちゃんに関するすごーい考察を聞かせてくれたもん!」

副部長ナイスです!やっぱり持つべきはファンですね!
考え方がどうかしているけれど。

幼馴染「えっ?そうなの?てっきり興味が無いとばかり思ってたわ」

男「まぁ、存在がミステリアスだからな……正体不明のアイドル」

男「テレビにも良く出ていたし」

会長「しかし、正体は不明のままだった」

男「気になっちゃうだろ、そんな煽り見たら」

幼馴染「……私だってソニアの正体は気になるわ」

毎日のように約束を取り付けようとするぐらいだからな。
返事をするこっちの身にもなって欲しい。

男「……」

副部長「わたしも……だね」

そもそも、会長、俺、幼馴染の正体が明らかにならない事が奇跡だろう。

3人共顔が割れないような売り方をしているのも共通している。

会長は別としても、だ。
そもそもあの人だけ無名な癖に才能だけは人並み外れているのが気に食わない。

会長がアイドルとして成功しなかったのは巡り合わせ次第ではあると分かっている。

おっと、嫉妬になってしまったな。
早く俺が活きる道を切り開かなければ。
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/04(月) 22:47:02.54 ID:im3dM/DEo
辛いな
214 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/06/09(土) 08:36:58.39 ID:delpFlFDO


そう、幼馴染がどうしようが俺には関係ない。

男「そんな事よりも……この部について考えよう」

幼馴染「そうね、そっちの方がずっと大事」

幼馴染「アイドルの事なんて今はどうでもいいでしょ?」

会長「そうだな……どちらにせよ今のままでは……うむ」

副部長「あっ、そうだ!」

副部長「動画サイトに配信してみない!?」

部長「YouTu〇er的なノリだな」

会長「学校の許可さえ貰う事が出来たら可能だが……」

男「話題作りか」

副部長「うん!これでTVや雑誌の取材が来たら学校側もうちの部活の事を放っておけないよね!」

作詞「何かしらの成果には当てはまりそうだね」

会長「人前に出る訳では……うん」 

不良「さっさと許可取ってやろうぜ」

作曲「出来ることは、全部……」
215 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/06/22(金) 08:30:37.04 ID:x5TB1cP5O
部長「勿論却下な」

男・幼馴染「「同じく」」

副部長「えー!?どうして!?」

不良「どーしてだよー」

不良は顔を膨らせて不満を露わにする。

会長は俺と幼馴染の発言待ちといった所だろう。

作詞「方向性は悪くないけれども、動画メインはよろしくないかな」

作曲「……」

作曲先輩はじっと作詞先輩を見つめる。ついさっきまで話に乗っかっていただろうにと言った表情。

作詞「そんな目で見ないで欲しいな、今から100万再生なんて目指すのはいささか現実離れしている。自分達で配信するのにも」

幼馴染「機材ね、揃わないでしょ」 

作詞「……」

また話を切られたなこの人。

会長「素人をメインに取り上げている配信者に取り上げてもらうのが無難だな」

男「そうですね」

俺と幼馴染が考えている事は全く同じだろう、動画配信はテレビと違うハードルがある。

中でもコメントが厄介なのだが……これ以上はもういいか。

部長「フェスで結果を残す。そう決めただろ?」

副会長「その通りです」

部長「ロリも反対する……と思うし」

副部長「ねぇねぇ……部長ってさロリちゃんの事……」コソコソ

幼馴染「放っておきなさいよ」ハァ
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/22(金) 10:39:17.34 ID:ChahlElDO
蘭子「混沌電波第173幕!(ちゃおラジ第173回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1529353171/
217 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/06/23(土) 09:07:24.61 ID:wfFZ79r0O
男「ちょっといいですか」

次に出るフェスの目星はついているだろう。
審査性のイベントともなれば数は絞られる。

重要なのはそこでどのような結果を残すか。

男「少し考えました」

男「自由天文部に足りないのって歌とか演奏力とかでは無く、本番慣れだと思います」

幼馴染「……」

幽霊部員「ぶっつけでは限界があるってことっすね?」

男「あー文化祭や学内での催しはやってますけど……」

そんな学生行事は本番の内に入らないって言ったら怒られるかなぁ……なんて言ってやろうか。

幼馴染「結局うちの学生は味方でしょ?雰囲気が温いのよ」

不良「箱でやんのか?」

作曲「ライブハウス……」

作詞「周りが他人と言う環境の中、実質敵地とも言えるであろう場所で僕達はどのように演奏出来るのか?実力がため」

幽霊部員「ずーっとやってみたいと思ってたんすよ!盛り上がってキター!ぴゅーぴゅーぴゆーぴゅるるるる!」

作曲「お金は?」

不良「チケット代だよな、私は友達すくねぇからなぁ……」

部長「何度も呼べるかは自信ないけど、任せろよ」

副部長「同じく!」

会長「では、これからどうするかを改めて確認しよう」

会長「私達が目指すフェスの目星もついた」

副会長「8月20日のロック・スターと呼ばれるフェスです」

副会長「若手実力派インディーズバンドの祭典ですが、学生もそれなりに出場しています」

会長「それでいてなおかつ学生も入賞している」

副会長「しかし……私が見た所によるとライジングロックよりハードルが高いと思います」
218 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/06/23(土) 16:40:45.87 ID:CjGPrmuFO
副会長「私達よりもずっと歳上の実力派も出ているのが厄介です」

副会長「演奏力がもう若手とは比べ物になりません」

副会長「若手もこれから台頭する事を目指している方ばかり」

不良「不足はねーな」

副部長「大丈夫かな?また駄目だったら……」

会長「副会長、一番大事な事を」

副会長「あっ……」

会長「いい、私が言う」

副会長「すみません」

会長「このフェスはな、ジャンルを問わない」

部長「はぁ!?」

副部長「なんでもありって事?」

会長「そうだ、正確には音楽のジャンルを問わない」

幼馴染「あ……だから私達にもある意味チャンスがあると」

会長「暗黙ではあるけれど学生バンド枠もある」

作詞「これは驚いたね」

男「ちょっと悩みましたけどこれしかないですよ、学校としての成果を認めてくれそうな所」

会長「私と男と副会長で決めた。You○uberを目指すよりは現実的だと思う」

周りを見ても満場一致だった。
ロリ先輩を除いては。

部長「決まりだな、ロック・スターを目指していく」

副会長「その為には沢山歌う、弾く。特に本番で」

幼馴染「あれ?ロリは?」

部長「……今日は体調不良だってさ」

副部長「最近多くない?大丈夫?」

作詞「……」

作曲「……大丈夫」
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/24(日) 22:47:18.85 ID:sivIg2Kko
おつおつ
220 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/06/28(木) 19:41:57.57 ID:1xWDZ/KaO
メモリ~キミトワタシノ~♪

幼馴染「っ」ピクッ

男「……」

ツンデレと期間限定ユニットを組んだ時に歌った曲『memory』これって凄く売れたんだよな、特に女性層の受けが……

副部長「あ、ロリちゃんから電話だ」

やっぱり副部長の着信音だったのか

部長「出なくていい」

作詞「そうだね、どうせ他愛もないくだらない話だから」

作曲「出なくていい……」

不良「気色悪ぃな、今決めたことをロリに言わなくてもいいのかよ?」

副会長「不良さんの言う通りです、ロリさんがあってこその自由天文部です」

男「そうですね、何をするにしてもあの人の確認を取ってからにしないと」

会長「出て欲しい」

副部長「もしもしー!?」

部長「おいっ!」

部長が本気で叫んだ所を初めて見たかも知れない、ロリ先輩と喧嘩でもしたのか?

作詞「部長、やめよう。そうさ、全員が知るべきなんだ」








221 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/06/28(木) 21:13:24.91 ID:3/g1EWveo
  
   




ロリ「あっ……」

ここは?

どこ?

なんて惚けて見せたけど

ロリ「んー」

どうせ病院のベッドだろう。

ロリ「もう卒業は確定だから良いけど……」

ロリ「◯回も留年するハメになった割には呆気なかったなぁ」

色々な子と出会ってきた、全員を泣かしてしまった。

私だけが変わらない思い出を見ると本当に申し訳がないと思う。

最後の世代には悪い事をした。

トラウマにならなければ良いけど。

先輩『もう諦めんの?まだやれるっしょ』

月日が経つ毎に頻度を増す先輩のまぼろし。

ロリ「もう……無理だよ」

先輩『そっか………』

先輩『でもさ、ありがとう。ロリ』

先輩『ロリのおかげでここまで自由天文部が存続したんだ!』

私の身体が危うくなっていく程、色濃く映る先輩。

もう居ない先輩。

聞こえが良い言葉、私が望む言葉をかけてくれる。

先輩『でもさ、まだやれるでしょ?』

私は知っている、先輩はそんな事を言わない。

先輩『どうせ死ぬなら、全力を出してから!って相場は決まってるでしょー』

私が留年している間に医学は進歩しているらしく、外国で手術を受けたらまだ助かる見込みがあるらしい。

ロリ「そうだね……」

もう限界だろう。

ロリ「……」

可愛い後輩達は私が留年を繰り返していると知っても、距離を置かずに接してくれる。

素晴らしい部だ。

先輩が作った自由天文部は如何なる状況に置かれても、それぞれの年代が色褪せることなくも素晴らしい。

揺れる視界の中でまどろむ私は、今の自由天文部では唯一私の身体について知っている3年生達に連絡する。

もう、無理だと伝えるつもりだ。

私は先にリタイアをする。

もう、十分がんばったよね?

皆。

ロリ「……」

何度目だろうか、あの時を思い出すのは――




222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 23:55:22.73 ID:UlRu7lNbo
ロリあきらめるな
おつ
223 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/06/30(土) 17:44:55.12 ID:fY5velzQO
◯年前、私は1人だった。

幼い頃から友達も居ないし、喋らない。長くは生きられないと告げられてからは以前よりも増して人と関わらなくなってしまった。

外見も人より優れ中でも勉強はずっと1番、体が弱いから積極的に取り組もうとはしないものの運動だってその気になれば簡単にこなすことが出来た。
そのせいか私の人生は退屈かつ簡単、どのようして死ぬか考えなかった日は無い。

ただ、音楽は少しだけ好き。
初めて両親に頼んで買ってもらったのはベースという楽器で、1番難しそうと言うのが購入の理由。

だが、すぐに上達してしまった。

死ぬまでには完璧になっているのかなと思うと少し寂しい、そもそも私は簡単に出来てしまう物なんて求めていなかった。

高校2年生になった時、また1歩死に近づいたと思うとどうしようもない不安が体の芯から外へぶわっと広がっていく。

ロリ「このバンド、ちよっと下手くそ」

私は毎日のように中庭の隅で座って音楽を聴いている。

ロリ「男子は沢山走るなぁ……」

無邪気に走れる人が1番羨ましい、この時の私は全力で走る事さえ出来なくなってしまっていた。

ロリ(1人で過ごす休み時間は特に楽しい)

「ねぇ、君は今何してるの?」

そして事件が起きた。

ロリ「え?」

224 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/06/30(土) 20:12:54.44 ID:fY5velzQO
「いっつもイヤホンしてるよね?」

「音楽聞いてるよね?」

「何年生?私3年生!!」

ロリ「イヤホンは挿してるだけ」

ロリ「……2年生、です」

「え?うそだ!めっちゃ、音漏れてるよ!?」

ロリ「っ!」ビクッ

「はーん、ひっかかったね?」

ロリ「……」

正直な第一印象は私と正反対。

不意に現れた見ず知らずの人は太陽を背にしているからなのかとても眩しく見えたが、それ以上に鬱陶しかった。

「ねね、やろうよ」

ロリ「なにを?」

「バンド!!」

茶色混じりの金髪が太陽の光に当たり、ただでさえも鬱陶しく、眩しく見えた先輩はさらに眩しく感じた。

この時にはもう鬱陶しいとは思っていなかったかも。
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 02:50:27.33 ID:H5d5G4gjo
こういう展開凄く好き
おつ
226 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/07/02(月) 20:19:29.20 ID:P6SUzcOCO
ロリ「お断りします」

「即答!?」ビクッ

この時にはもう人と関わるつもりが微塵も無かった。

ロリ「どうして私を……」

「へ?音楽が好きそうだから?あと、タメ口でいーよー堅苦しいの嫌いなんだよねーーー!!!」

ロリ「……」

「私の名前は△〇☆▽!!君は!?」

ロリ「……ロリ」

「じゃあロリだ!!私の事も名前で呼んでよ!!」

ロリ「……先輩で」

先輩「たはーっ!!壁を感じるぅー!」

キーボード「くるくるー、何してるの?」

ドラム「誰このガキ?」

ロリ「ガキ……?」ピクッ

ロリ「凄く失礼……」
227 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/07/02(月) 20:28:30.75 ID:P6SUzcOCO
初めて先輩とキーボードとドラムに出会った時、私の人生、いや、違う。
青春は大きく変わり始めた。

キーボード「あっ!ぴっっこーん!!!進入部員だよこれきっと!」

ロリ「違う!」

ドラム「えっ!?マジ!?もう人数揃うの!?」

先輩「天文部活動も忘れんなよー」

ロリ「天文部?」

ドラム「どーせ結果残せなきゃ廃部だろ!?」

先輩「ざんねーん、天文部としては結果残せてますー」

キーボード「ぴるぴる。ライジングロックで入賞しなきゃどうせ廃部だよ?」

先輩「あはは!難しいよねー!!」

ロリ「何部ですか?」

先輩「それはねー」




先輩「自由天文部!!」
228 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/07/02(月) 20:51:19.79 ID:P6SUzcOCO
興味本位で案内された部室には賞状が綺麗に飾られ、星の本?等が机の上に沢山積まれていた。

先輩「元々はふっつーの天文部なんだけどね、部員が一人だけだったから私がこの学校に存在しない軽音楽部も兼任させたの」

先輩「やっぱり軽音楽部はやってみたい人が居るみたいでさ、簡単にアホが釣れた訳よ!」アハハ

ロリ「……」

果たして、私もアホの一員なのだろうか。

先輩「まぁ、ホントの事を言うとさ」

先輩「最初は普通の天文部としてやっていくつもりだったんだけど……元々居た一人の部員も卒業してね、このままじゃあ同好会以下になってしまう」

先輩「という訳で!!!」

ロリ「」ビクッ

先輩「軽音楽部やってみました!!」

先輩「あはは!!」

ドラム「こいつが最アホな」
229 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/07/02(月) 21:16:52.28 ID:P6SUzcOCO
キーボード「トゥンク……元から居た先輩が好きだから天文部に入った癖にー」 

先輩「はぁ!?好きじゃないし!!あんな陰キャ別になんとも思ってないから!!」

ロリ「好きな先輩がきっかけ……」

先輩「ちがうっての!!」

ドラム「頭おかしいよな、こいつ」

ドラム「好きなだけでそこまでやるかよ」

キーボード「じーーーーーーっ」

ドラム「な、なんだよっ」

キーボード「べつにっ」

先輩「こほんっ……まぁ、どうしていつも一人なのか分からないけどさ……良かったら私達と無理難題に挑戦しよーよ」

ドラム「ライジングロック入賞!」

キーボード「確かに無理難題だよねー」

先輩「音楽の魔法、見せてやる!」

ロリ「!」

凄く、心惹かれる言葉だった。

ロリ「……良かったら何か演奏してみて」

先輩「勿論!」

私は心を踊らせて先輩達の演奏に耳を傾けた。
自分の中で変わりつつある何かに、今まで感じたことの無い何を知るために――

ギュイ-ン

バンバン

ギィギィギギギ

ポン……ポンチャ-ンッ

現実は厳しい。








ロリ「下手過ぎ!!!」ガ-ンッ
230 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/07/02(月) 21:39:02.39 ID:P6SUzcOCO
ロリ「ここもっと強く弦を押さえて!!」

先輩「弦とは?」

ロリ「はぁ!?」

ロリ「もっと優しく叩いてよ!」

ドラム「は?全力だろ何事も」

ロリ「脳味噌筋肉なの?馬鹿なの?猿なの?」

ロリ「楽譜からやろう、多分すぐ覚える……と思う」

キーボード「ピンポーン、りょーかいっ!」

ドラム「扱い違くね?」

先輩「ほんとね、おかしいよこれ」

ロリ「こいつら……」

先輩「歌は負けないからな!」

そう言えば誰も歌っていなかった事を思い出す。
先輩が歌う様子だが、あの演奏を聞く限り私は期待なんか出来なかった。

先輩「じゃあ適当にあの歌で」スゥッ

ドラム「やったれ!」
231 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/07/07(土) 21:42:34.42 ID:dnR3G5R3O
なんて言えば良いのだろうか、素晴らしい?上手?凄い?いい声?素人にしては?

違う。

先輩の歌を表現する言葉は見つからないけれど、これだけは言える。

魅了された。

ロリ「うん、歌は通用するかも」

4人だけしか居ない部室で聞いた歌は私の考えを変えた。

先輩「凄いだろ?お母さんから昔教わってたんだよ」

ドラム「こいつとカラオケ行くとさ、しらけんだよなーうますぎて」

キーボード「ぽっぽっぺー、これで練習したらそこそこいいとこ目指せそうな気がするよー?」

ロリ「でも……楽器が初心者だと……」

先輩「……」

ロリ「どちらにしたって」







先輩「ねぇ、知ってる?」

ロリ「……?」
232 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/07/07(土) 22:08:02.48 ID:dnR3G5R3O

先輩「音楽にはね、魔法があるんだよ」

先程も先輩が言っていた言葉。

どうしてか分からないけれど私が惹かれた言葉。

音楽の魔法。

ロリ「魔法?」

そう、音楽の魔法。

魔法とはそもそも人知の及ばぬ事を表していたり、子供向けの言葉であったり、定義が曖昧な事象を……

先輩「教えてあげよっか?」

指すのだが……

でも、知りたい。

ロリ「教えて欲しい」

本当にあるのなら。

先輩「どうしようかな〜?」

どうしても知りたい。

ロリ「酷いと思う」

こうして人をからかう人間なのだろう、私としては凄く腹立たしい。

先輩「あはは、ごめんごめん、教えてあげる」

先輩「……音楽にはね」

ロリ「……」





先輩「――人を笑顔にする魔法があるんだよ」   
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/09(月) 00:35:40.38 ID:R/7qGhzUo
きた!
234 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/07/11(水) 22:06:31.41 ID:OFkSezKmO
ロリ「人を笑顔にする魔法、ふーん」

先輩「私の先輩は笑顔になったよ!うん!」

ロリ「音楽で笑顔になった事は無いから私には分からない」

先輩「私もさ!音楽なんて退屈でくだらないって思っていた……けど」

ロリ「けど?」

先輩「私の先輩はさ、私の歌を聞いて笑顔になってくれたんだ」

ロリ「馬鹿にされたとか?」

あの歌を馬鹿にするなんて、そうそう出来る事ではないと分かっているけど。

先輩「私の先輩はさ、私の歌になら天文部を任せられるって言ってくれたんだ」

先輩「いつも無表情だった先輩が――」

先輩「だから、奇跡は起きるって!!ね!?」

ロリ「ふーん……うん?」

ロリ「それって音楽じゃなくて、歌の魔法では?」

先輩「あ゛!!」

ドラム「俺不要だな、これ」

キーボード「プシュン、ほんとそれー」

先輩「違う!違う!先輩如きじゃ足りないでしょ!?」

ロリ「如きって……」

どのような関係性なのだろうか。

先輩「足りないって思ったんだ、私1人じゃ先輩1人しか笑顔にできないし……」

先輩「歌も含めて音楽にしたらもっと
多くの人を笑顔……というか。奇跡が起きる気がしたんだ」
235 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/07/12(木) 20:06:37.71 ID:bJND8/v/O
ロリ「言い訳としてはかなり苦しいけれど……話半分で聞いておく」

先輩「いつかわかる時が来るから!!いつか」

ロリ「……」

先輩「〇〇年後とか!」

ロリ「そう……」

その時には死んでいるかなぁ、きっとこの世に居ないだろう。

ドラム「信じてやってくれよ、あいつアホだから失言ばっかなんだよな」

先輩「アホじゃないし!卒業はギリギリ?出来るから……たぶん、きっと……」

キーボード「ひとはーそれをーアホと呼ぶ〜イエーイ!」

ロリ「はぁ……いいよ、やってみよう」

先輩「!」パアァァァ

ドラム「よっしゃ!」グッ

キーボード「テレレレッテレーッ!」ピョンッ

私もアホ……なのかな?
236 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/07/21(土) 17:38:36.31 ID:7YRgBPOWO







朧気な意識。
そうか、私は寝ていたのか。

また眠ればあの時の事を思い出せそうだ。

だけど、その前にやる事がある。

ロリ「……」

3年生にこれからどうするのかを伝えよう。

ロリ「メッセージだけでいいかな……」

途中で打ち上げを抜けていたからか、自由天文部の面々からは沢山のメッセージが送られている。
皆には心配をかけてしまったなぁ。

ロリ「……よし」

3年生のグループチャットにメッセージを残す。
今日も倒れてしまった事、これから私はどうするかをはっきりと伝えた。

ロリ「先輩……」

もう一度眠りにつく。

次はどこまでかな。
237 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/07/21(土) 17:53:22.33 ID:7YRgBPOWO
先輩「いえええええええい!!!!」

ロリ「!」

初めてのライブだ。

寝る間も惜しんだ甲斐があり、初心者ばかりが集まったこのバンドも著しく成長した。

先輩「みんな!これからも“Starry sky”をよろしくね!!」

先輩のゴリ押しで決まったバンド名、安直だしセンスもカルチャーも無い。

ナンテイミ-?

先輩「星空!!!!」

ヘ--

先輩「リアクション!!」

ドラム「そりゃどうでもいいわ」

ドッ

キーボード「早く次の曲いこーよ」

場を沸かすドラムと周りに興味が無い二人は私の目からは対照的に映る。
そんな二人の上達は目覚しい物があった、本当に向いているのだろう。
238 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/07/21(土) 18:29:37.67 ID:7YRgBPOWO
先輩のギターは……まぁそれなりにまともになったかな。

先輩「じゃあ私のソロから……」

ソロなんか10年早いけれど。

ドラム「やめろ」

キーボード「それだけはない」





 
「てかこいつら下手糞じゃね」



はーいるよね、こういう人はどこにでも。
学生だからしかたないかな。
ムカつくけど。

ドラム「あ?」

キーボード「テンテンテン……ちょっと向きにならないでよーー」

キーボード「って、あ!」

先輩「なに?私が何かした?」

「は?」

先輩は誰よりも早く心無い言葉を放った張本人の元へ駆け寄っていた。

誰よりも感情的な人だった。

キーボード「あちゃー……止めてよドラムー」

ドラム「あいつキレるとめんどくせーから嫌なんだよ」

先輩「馬鹿にするなよ、こっちは本気なんだから」

「うっぜ、てか痛いんだけど。恥ずかしくねーの?」

先輩「ふざけるな!」

ゴンッ

「おごっ」

ドラム「あっ、金的」

先輩「お前に先輩の何が分かる!」ゲシッゲシッ

 「ごめん!ごめん!ほんとごめん!」

先輩「じゃあいいよ」ニコッ

「えっ、あっうん」

先輩「君も良かったら自由天文部においでよ」

「え……そんな……」

先輩「よーし!演奏再開!」

「……///」

すごくモテるらしい。
239 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/07/21(土) 22:47:16.24 ID:eIBQKX15O
“あの子”は先輩の事が好きだったのだろうか。

まだ分からない。




先輩「みんな゛っ!!」バンッ

ロリ「わっ……!」

ドラム「まさか……」

一悶着もあったが初めてのライブは無事に成功を収めた私達は勢いのままライジングロック予選に参加する事が出来た。

先輩「はぁーっ……はぁーっ」ゼェゼェ

先輩は勢い良く部室の扉を開けて私達の前に現れた。
走ってきたのだろう、息が荒く今にも倒れてしまいそうだった。
そんな先輩の様子から察するに、ライジングロックの結果が出たのだろう間違い無い。

演奏レベルでは負けていると分かっているけれど、先輩の歌はそんな私達の演奏も押し上げてくれる。

だから信じてる。

私も……ドラムとキーボードだって。



240 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/07/21(土) 22:54:40.85 ID:eIBQKX15O





先輩「ライジングロックの予選……通過ああああああ゛あ゛あ゛!!!」

ドラム「よっしゃあああああああああ!!!!」

キーボード「きゃーーーー!!やったよーーーー!!!」

ロリ「あはは……夢みたい……」

先輩「〜♪〜♪〜♪」

ロリ「歓喜の歌……こんなのも歌うんだ…… 」

叫んだから?先輩の声が掠れているような?

先輩「歌は゛さ……お母さ゛んから無理矢理叩き込まれたんだ」

先輩「昔ば……お母さんのぜい゛…で…歌が嫌いだったけど……今じゃ……感謝してる……よ゛……」

ドラム「まてよ、お前声が……」

先輩「あ゛はは……声出しすぎたね」

キーボード「病院……行ってよね……これ、おかしいよ」

先輩「え゛、練習しなき……ゃ゛」

ロリ「今すぐ行って!!」

先輩「!」ビクッ

私がこんなにも声を荒らげたのは初めてだった。
明らかに先輩の喉は酷使されていた、毎日のように練習していたのだろう。

もし、先輩の喉に大事があるのならライジングロックも辞退しなければならない。

嫌な予感がする。

先輩「……分かった」
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/23(月) 00:55:38.78 ID:tYeshYsFo
怖いな
おつ
242 : ◆MOhabd2xa8mX [saga]:2018/07/29(日) 19:33:22.83 ID:RXK2QqszO
先輩に何が起こっているのかはその日の内に分かった。

ドラム「あいつの喉大丈夫かな……」

キーボード「ピコピコ……ライジングロック本番は1週間後だから心配だなー」

ドラム「軽い風邪ならいいんだけどな」

今一身が入らない部活動を終えた後、自由天文部共通の帰り道の中央で先輩は立ち尽くしていた。

住宅街の路地とは言え道の中央で立っているのは危険だ、車が来たらどうするつもりなのか。

ロリ「先輩……」

先輩「……」

ロリ「……!」ハッ

喜怒哀楽のどれにも当てはまらない。
無表情、どこを見ているのかも分からない。

鼓動が早くなる。
嫌な予感――

先輩「大丈夫!」ニッ

ギュッ

先輩は満面の笑みで私達全員を抱き締めた。

先輩「入賞……しようね」

ロリ「先輩……良かった」

キーボード「できる」

ドラム「ちっ、少しは弱い所を見せろよ」

先輩は先輩という物語の主人公だと私は思い込んでいた。
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