廃墟と化した鎮守府の夜明け

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398 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/22(土) 01:48:27.95 ID:qx7bPAFX0
中将「ふん……安心しろ。お前たちはそうではない」

吹雪「えっ?」

阿武隈「どういうこと……?」

中将「ここでの研究によって作り出されたのは、いわば艦娘の原型。艦娘という形態を確立するための試作品」

中将「しかし人間を器にする形式では量産性・安定性共に難があった……」

中将「その問題が解決し、最終的に艦娘が国家に承認され量産に至ったのは、人間に代わる器――『開発資材』と呼ばれている代替品が開発されたことが決め手になった」

中将「人間に限りなく近い人工の器。安価で大量生産でき、尚且つ安定性も高いそれは、まさに画期的な発明だった」

中将「それが出来たことで艦娘を作るのにわざわざ人間の器を使う必要は無くなった」

夕立「じゃあ、それがもっと早くあれば……!」

中将「もっと早くあれば、ここでの犠牲は必要なかった。が、ここでの犠牲が無ければ開発資材もまた生まれなかった……皮肉なものだ」

夕立「……」

中将「開発資材の導入により、今いるほぼ全ての艦娘は開発資材によって生み出された。人間を器に生成された艦娘は初期に生産された十数体ほどだ」

中将「その殆どは既に喪失している。今となっては僅かな記録と私の記憶に残るのみ……歴史の闇に、というやつだろうな」

不知火「っ!」ギリッ

時雨「……そうはさせないさ」ボソッ
399 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/22(土) 01:53:14.30 ID:qx7bPAFX0
訂正>>398

中将「開発資材の導入により、今いるほぼ全ての艦娘は開発資材によって生み出された。人間を器に生成された艦娘は初期に生産された十数体ほどだ」 ×

中将「開発資材の導入により、今いるほぼ全ての艦娘は開発資材によって生み出された。人間を器に生成された完成品といえる艦娘は初期に生産された十数体ほどだ」 ○
400 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/22(土) 01:58:40.26 ID:qx7bPAFX0
中将「やがて完成した艦娘は人類側の希望として大々的に公表され、本格的な配備が始まった」

中将「だが、同時にこの施設の存在と行われてきた非人道的な実験の数々は、決して表には出せない国家の暗部になった」

中将「国民に広く周知され、希望として持て囃されるようになった艦娘という存在は清廉潔白でなければならない」

中将「その為に払われた犠牲と経緯は、国家が喧伝する希望のイメージに相応しくない……そんな理由で、艦娘に関わる闇は徹底して隠蔽されることになったのだ」

初霜「っ、身勝手過ぎますッ!」

中将「ここを管轄していた大本営は、証拠隠滅の為に施設と研究にまつわる資料の全てを破棄することを考えたようだが……結果的には貴重な研究施設と記録の数々を捨てることを惜しみ、残すことを決めた」

中将「これだけの事をして……自ら暗部と認めてもなお、悔悟するどころかまだ利用価値があると打算し、そしてまた繰り返す……。人間の浅ましさ、愚かさ、ここに極まれりだ」

不知火「……くっ」プルプル

中将「そこから先はお前が推理した通り……。地上の施設は鎮守府へと改装され、地下施設は残したまま存在のみが隠蔽された」

中将「そして施設の職員だった私は秘密を守る管理人の役目を帯び、提督という肩書を与えられた」

中将「これが、この施設と……お前たち艦娘の真実だ」

吹雪「そんな……」

時雨「……」
401 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/22(土) 02:12:32.56 ID:qx7bPAFX0
阿武隈「……1つ、聞いてもいい?」

中将「……何だ?」

阿武隈「あなたは……実験に使われた子供や、ここにいた艦娘を……どう思っていたの?」

中将「……なに?」

時雨「阿武隈さん?」

阿武隈「時雨ちゃんの話と、今あなたが言った話の通りなら……あなたは、ここで艦娘開発用に集めた子供たちと指揮下の艦娘に実験を行っていた当事者だった」

阿武隈「でも、地上で見つけた艦娘たちの記述の中でのあなたは、どれも艦娘想いで優しい人。ってものだったわ」

阿武隈「入渠ドックの中にあった数々の娯楽施設だってそう。あれはあなたが艦娘の為に用意した設備……そうでしょう?」

中将「……」

阿武隈「あたしは、あなたが艦娘の前で見せていたっていう優しい顔が演技だったとは思えない……少なくとも、最初の頃は」

阿武隈「なのに……あなたは、艦娘たちを深海棲艦を根絶やしにする為って理由で実験に使い、殺した……」

阿武隈「あなたは本当はどう思っていたの? どれがあなたの本心なの?」

中将「フッ……フフ、フハハハハ!」

阿武隈「!」

時雨「!」
402 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/22(土) 02:14:17.50 ID:qx7bPAFX0
中将「本心……本心か……フッ、フフフフ」

中将「先ほどお前は……私があの少将と同じように、艦娘たちを道具のように思っているに違いないと言ったな」ギロッ

不知火「!」ビクッ

中将「あんな俗物と私を一緒にするなッ! あの若造は艦娘を道具として見ていたが、私は違う! 愛していたさ! 兵器や道具としてではなく、艦娘という人と変わらぬ存在としてな!」

中将「子供たちも同じだ。理不尽に未来のない者と決めつけられ、大義の為と言って本当に未来を奪われた、罪なき……哀れな子供たち……」

不知火「なにを今更……それを奪ったのは、あなたでしょう!」

中将「黙れッ! ……っ、分かっているさ、私の罪くらい……決して許されない罪を犯してしまったことくらいな。しかし私は……やらなければならなかったのだ!」

不知火「!」

中将「お前などに分かるものか……私の気持ちが……私を信頼する子たちを裏切り、手にかける気持ちが……」

吹雪「じゃあどうして……どうしてそんなことをしたんですか!?」

中将「確かに愛していた……子供たちも、艦娘たちも……心の底からな」

中将「だが、それ以上に、私には大切な存在が居る。その為に私は……他の全てを切り捨て、犠牲にしたのだ!」

中将「電……私の、愛しい愛しい電……この子の為に私は、他の全てを捨てた」


電「――――」コポッ


中将「この子を守る為なら……他の全ての艦娘……いや、人類の命であろうと、私にとっては軽いッ!」
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/22(土) 02:57:05.80 ID:ZZ4R+3f10
まさか電は…中将の…
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/22(土) 09:58:05.11 ID:BaC8jJm40
気になる
405 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 08:26:31.97 ID:9gQXKZzr0
時雨「電のため……?」

夕立「っ! そんな……電ちゃん1人の為……それだけの為に、他のみんなを!?」

中将「それだけ……しかし、私にとってはそれが全てだった! 電以上に大切なものなど存在しない!」

中将「それにこれは、お前たちにとっても無関係という訳ではない。むしろ私の研究こそ、お前たちの希望なのだ」

阿武隈「あたしたちの……」

初霜「希望、ですって……?」

時雨「僕もそれだけが分からない。あなたが狂気に駆られた理由……艦隊運用に異変が起こり、大本営からの解任決議に至るきっかけになったのであろう出来事」

時雨「あなたはいったい、何を知ったんだ?」

中将「……私が、罪なき子供たちを手にかけ、膨大な犠牲の果てに生み出された人類の希望、艦娘」

中将「私は信じていた……信じていたからこそ、あのような実験に手を染め……完成させたのだ……しかし、裏切られた」

時雨「裏切られた?」

中将「無駄だったのだよ……全て……。艦娘は、深海棲艦との戦いを終わらせる希望などではなかったのだ!」
406 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 08:34:55.89 ID:9gQXKZzr0
中将「きっかけは開戦直後、人類初の大規模反攻作戦となった戦いで確認された新型の深海棲艦」

中将「人型で高い戦闘力に人語を話す程の知能を持った姫級と呼称される新型の敵……それは、時が経つにつれ次々と出現が報告されるようになった」

中将「それと同じくして、艦娘にも弱点というべき部分があることが判明した。激しい戦闘の中で撃破され、轟沈する事例が挙がり始めたのだ」

中将「私はこの2つに奇妙な因果関係があることに気付いた。半信半疑のまま、奴ら深海の細胞を採取し調べた……。そして、身の毛もよだつような事実が判明したのさ」

阿武隈「……」ゴクッ

時雨「……何が、分かったの?」

中将「同じだったのだよ。奴らと艦娘、この2つには共通するDNAが存在したのだ。艦娘と深海棲艦にしかない、未知のDNAが」

時雨「なっ!?」

中将「そして私は気付いた。なぜ在りし日の戦船の魂という存在が深海棲艦にとって有効なのかということ……戦船の魂も深海棲艦も、同じ海から現れた存在であることにね」

中将「2つは同じだったのだ。日を浴びて育った植物と浴びずに育った植物が異なる姿となるように……」

中将「艦娘と深海棲艦。2つは姿こそ違えど本質は同じ……同一の存在同士なのだ」
407 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 08:49:47.78 ID:9gQXKZzr0
阿武隈「あたしたちと深海棲艦が……同じ……?」

中将「艦娘と深海棲艦の関係……それはコインの表と裏に等しい」

中将「表が艦娘という面とするなら、深海棲艦は裏……。同一である2つの存在は、同時に2つの面を持つ表裏一体の関係にある」

中将「これが意味することが分かるかね?」

時雨「……表裏一体」

時雨「じゃあ……僕たちが沈むということは……」

中将「そう。2つの面は常に隣り合わせ。それが逆転するきっかけになるのは、深海棲艦が持つ固有の『負の力』という存在」

吹雪「負の力……?」

中将「生への未練、執着、無念といった、死の淵に立つ生物が抱く負の感情。それこそが深海棲艦を形作る最大の要素であると私は考えている。それを抱くのは艦娘も同じ。それが艦娘と深海棲艦を分けるのだ」

中将「戦いの中で沈んだ艦娘……彼女たちが死に際に抱く死への恐れ、生きたいという想い。自らの境遇と運命を恨み、憎む怨嗟……それらが暗く深い海の中で増幅され、負の力となって艦娘を呑む」

阿武隈「ま、まさか……」

中将「そして生まれ変わるのさ。艦娘は深海棲艦に……これがこの戦争の本当の姿だ」
408 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 08:57:02.54 ID:9gQXKZzr0
吹雪「嘘……」

不知火「馬鹿な……そんなこと……あるはず……」

中将「……信じられぬなら、この子の姿を見るがいい。この中で今も眠る電……その姿が何よりの証拠だ」

夕立「!」

中将「厳密に言えばこの子がこんな姿になってしまったのは違う理由だが……。しかし、艦娘が深海棲艦になるという例を証明するのに、これ以上の証拠はあるまい」

阿武隈「それじゃあ……本当に……」

中将「そう。これが真実だ。初めからこの戦争に我らの勝利という形での終わりは存在しない……いくら深海棲艦を倒しても、戦いの中で艦娘が沈めば、彼女たちは深海棲艦になって帰ってくる」

中将「人間との絆が強ければ強いほど……最期に抱く無念や執着が強いほど、沈んだ艦娘は、より強力な深海棲艦となって人類の前に現れる」

中将「繰り返される輪廻の如く戦いは続くのだ。やがて人類の力が尽きるとき、ようやく戦いは終わる。人類の敗北と滅亡という形の終焉がな」
409 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 09:17:20.90 ID:9gQXKZzr0
時雨「でも……それが事実なら、逆のパターンも考えられるはずだ」

初霜「逆?」

時雨「艦娘と深海棲艦が表裏一体……艦娘が負の力の影響で深海化するなら、逆に深海棲艦が艦娘に転生するってことも、あり得るはず」

不知火「!」

中将「確かにその通りだ。艦娘が深海棲艦になるように、深海棲艦が艦娘に生まれ変わるということも当然起きる」

中将「お前たちが海域に出撃し、深海棲艦を倒した際に新たな艦娘と邂逅する現象……あれは正に、深海棲艦を形作っていた負の力の呪縛から解かれ、艦娘に生まれ変わることで起きているのさ」

初霜「なら……!」

中将「解けるかね? 全ての深海棲艦の呪縛を。艦娘の数は分かっていても、海の底にいる深海棲艦がどれだけの規模なのか……いや、このメカニズムが果たして全て正しいのかすら、我々には分かっていないというのに」

初霜「そ、それは……」

時雨「……くっ」

中将「だから不可能なのだ。この戦争で我々が正攻法で勝つ事など……今までお前たちが必死で戦ってきた奮闘も、勝利も、全て無駄な足掻きに過ぎないのだ」

吹雪「そ、そんな……」

不知火「なら……私たちは……私たちは、いったい……何の為に……」

阿武隈「っ! みんな、しっかりして! あの人に呑まれちゃ駄目っ!」

時雨「あなたは、それを知ってしまったから……だから、急に艦隊運用が消極的になったのか」

時雨「……!」

時雨「じゃあ、その直後に大本営があなたの解任に向け動き出したのは…………まさか、大本営も……」

中将「……私はこの事実に辿り着いた後、すぐに大本営にもこのことを知らせた」

中将「しかしこの国は……その事実すらも、自分たちの保身の為に握り潰したのだ!!」

410 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 09:23:50.65 ID:9gQXKZzr0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『現状維持!? いったいどういうことですか!!』

『……慎重に協議した上での結論だ。当面、深海棲艦に対する新たな対応策が見つかるまで、現状のまま艦娘は運用し続ける』

『っ! 艦娘の存在が……彼女たちが戦いに身を投じ倒れていく限り、深海棲艦は現れ続けます! 我々は方向を間違えていたんです。艦娘は戦争を終わらせる希望などではなかった!』

『……』

『すぐにでも再度の検討を! このまま艦娘の運用を続けても、戦況の打開など不可能です。それどころか、さらに混迷を深めること――』

『もういい。黙りたまえ』

『!』

『君の話は全て推測だ。そのような話で、今や国防の要となっている艦娘の運用を止めろというのかね?』

『し、しかし……現にDNAの一致や実例の確認も……!』

『艦娘は希望でなくてはならないのだ。莫大な資金を投じ……あんな暗部を作ってまで開発し、国民にも鳴り物入りで喧伝した存在が……今更、使い物になりませんでした。で済むと思うかね』

『っ、ですが!』

『使わねばならんだろう。たとえ君の言う通り、艦娘が使い物にならない存在だったとしても……作ってしまった以上、使わねば国家と軍の沽券に関わる』

『無論、我々もただでは済まない……。それは艦娘開発計画を主導した君も同じだ。そのことをしっかりと認識してから口を開きたまえ』

『っ!』

『とにかく、この事は決して口外してはならん。もし外部にでも漏れれば、軍や国家への重大な影響は避けられんだろう』

『……しかし、艦娘に替わる新たな対策の研究も秘密裏に進めておくべきだな。それまでは今まで通り艦娘を使い、国民には戦局は好転していると信じさせるのだ』

『では、彼女たちは……今も戦場で真実を知らずに、戦争を終わらせる為に命がけで戦っている艦娘たちは……犬死にではないですか!』

『……だからどうした?』

『!?』

『希望になり得ぬ役立たずだったのなら、せめて奮闘しているというパフォーマンスでもやってもらわねば割に合わんだろう』

『何よりあれは、人ではなく兵器。多少金の掛かった消耗品を合理的に活用するのに、何を躊躇う必要があるのかね?』

『……ッ!』


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

411 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 09:28:54.00 ID:9gQXKZzr0
中将「だから私は始めたのだ! 己が保身とくだらぬ体面の為に真実を隠し、今も自分たちの都合で艦娘たちを要らぬ死地へと送っている大本営に代わってな!」

中将「本当にこの戦争を終わらせるには、奴らを根源から絶てばいい! それしかない!」

中将「敵を1匹残らず全て滅ぼし! 根絶やせば!! 戦争は終わるッ!!!」

吹雪「ひっ……」ゾクッ

中将「そして作り上げたのさ! 深海棲艦共を細胞の根源から破壊し、消滅させる最高の兵器を……! この力を以てようやく戦いは終わるのだ!」

中将「これを世界各地の海底に存在するであろう深海棲艦の本拠地に向けて放ち! 奴らの全てを消滅させれば、この戦争を終結させられる!」

阿武隈「!?」

中将「フッ、フフフフ……フハハハハハ!!アッハハハハハハハハハ!!!!」

中将「間もなくだ! もう間もなく、私の大望が……遂に成就する! ようやくこの子を、この狂った連鎖の中から救い出すことが出来るのだ!」

中将「そしてこの戦争に! 世界に! 新たな道が拓かれる! 私が拓くのだ! この終わりなき戦いに終止符を打つために!!」
412 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 09:43:06.72 ID:9gQXKZzr0
中将「お前たちは運がいい。全くの部外者だというのに、自力でこの隠された場所を探しあて、今この場に居合わせている」

中将「特に駆逐艦時雨。お前の頭脳には脱帽だ。ここに辿り着くだけでなく、この地の秘密まで暴くとは……今からでも私の元に置きたいくらいだ」

時雨「あり得ないね」

中将「フフ……まあいい。その勇気と頭脳に敬意を表し、これから始まる歴史的瞬間に立ち会うことを許してやろう」

時雨「!」

中将「完成したγ-13号弾。これの最終実験を今より行う。お前たちは、戦争を終わらせる真の希望が誕生する瞬間に立ち会うのだ!」

中将「最後の実験は、海上の敵に向けた使用を想定した空中炸裂実験。もし今地上にいれば跡形もなく消滅していただろう……本当にお前たちは運がいい」

阿武隈「!?」ゾクッ

中将「邪魔さえしなければ殺さずにおいてやる。そのまま大人しく見届けるがいい」
413 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 09:49:30.26 ID:9gQXKZzr0
時雨「地上にいたら跡形もなく……ってことは、やはりその兵器は深海棲艦以外にも影響を及ぼすのか」

中将「……そうだ。やはり深海棲艦と同一の存在である艦娘。そして人間を含む生物への影響だけは改善のしようがなかったからな」

時雨「そんな物を使ったら深海棲艦だけじゃない! 人間も艦娘も……生きる物すべてに甚大な被害が出てしまう!」

初霜「!」

中将「戦争を終わらせる為だ。多少の犠牲はやむを得ない」

吹雪「そ、そんな……」

時雨「っ! それじゃあ、あなたも……艦娘を生み出す為に子供たちを犠牲にした大本営と、彼らと同じじゃないか!」

中将「ふん……初めにそうしたのは奴らだろう! 己の都合で他者の命を弄び、大義の為にとそれを奪う! それこそ奴らが、人が示し進んできた道ではないか!」

中将「だから今度は奴らが犠牲になるのだ! 私と電の為に……嘗て奴らがそうしたようにな!!」

初霜「大本営の人たち以外にも……全く無関係の人々を多く巻き込んでも、それでもあなたは! そう言うのですか!?」

中将「言ったはずだ。私にとって大切なのは電のみ! 電以外の存在など全て等しく無価値! どうなろうと知ったことではない!」

初霜「っ!」
414 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 09:54:26.00 ID:9gQXKZzr0
阿武隈「あなたは狂ってる……あたしには、あなたの考えなんて微塵も理解出来ないわ」

中将「……」

時雨「僕もだ。あなたの考えに全く共感なんて出来ないし、したくもない」

不知火「不知火も同じです」

初霜「あなたの境遇に関しては僅かに理解出来るところもあります。けど……あなたのやろうとしている事を、許すわけにはいきません!」

中将「……理解出来ぬというのか。お前たちが救われる唯一の方策だというのに、なぜそれが分からない!?」

吹雪「……わかりませんよ」

夕立「ぽいっ」

中将「……お前たちも所詮その程度か。そしてお前たちも、私の邪魔をするのか」


中将「ならば貴様らは全員、私の敵だ」ギロッ

415 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 10:00:21.06 ID:9gQXKZzr0
時雨「っ!」ゾワッ

不知火「いくら弾薬がないとはいえ、不知火たちが人間のあなたに後れを取るとでも?」

中将「本来なら、侵入者に備えて独房の中で待機させていた怪物どもを使う予定だったが……ここに辿り着いたという事は、奴らは既に倒されてしまったか」

中将「……予定より少し早いが、仕方ない」カチッ


ピピーッ ピピーッ ピピーッ

ガチャン!


時雨「!」

阿武隈「この音……! あの機械から!?」

吹雪「み、見てください! 電ちゃんの入ったカプセルが……!」


電「――――」コポポッ…


中将「もう1度……私の為に力を貸しておくれ。私の可愛い、電よ」


電「――――!」パチッ

416 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 10:03:58.05 ID:9gQXKZzr0
夕立「電ちゃんの目が!」

時雨「っ、僕としたことが……! さっき機械を操作してたのは……」

中将「フフ…ハハハハ! 成功だ! 再び電が……私の元に帰ってきてくれた!!」


電「――――」スッ


ピシッ… ピシピシッ…


阿武隈「! カプセルが……!」


電「――――!」


ガシャァンッ!


時雨「うわっ!」

初霜「きゃっ」


電「――――」

電「――――」ジッ…

417 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 10:08:37.28 ID:9gQXKZzr0
中将「おお……! 電……私が分かるか?」

電「――――」


吹雪「電……ちゃん?」

時雨「……!」


中将「あぁ……やはりまだ言葉は……自我もはっきりとしないか……。だが、再びお前は、私の元に帰ってきてくれた……」

中将「必ず取り戻してるからな……昔のお前を……この角も、髪も、目の色も、肌もすべて、私が必ず元通りにして見せる」

中将「……しかし、その前に」ギロッ

中将「私たちの邪魔をする愚か者共を、綺麗に片付けておくれ」

電「――――」ギロッ

418 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 10:11:29.05 ID:FbM38fL/0
あっ……(察し
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 10:13:22.48 ID:+je0/NNC0
このパターンはなぁ…
420 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 10:44:59.22 ID:9gQXKZzr0
初霜「っ! 電さん!」

時雨「駄目だ……あの電はもう、電じゃない」

吹雪「そ、そんな……」


中将「さあ、電……強化したお前の力を見せておくれ」

中将「ただしあの駆逐艦――時雨は生かして捕えるんだ。あの頭の切れはとても興味深い……薬で自我を消せば、いくらでも有効に活用出来る」

中将「あとはどうでもいい。皆殺しにして構わない」

電「――――!」ダッ


不知火「!? 早――」

夕立「! 不知火ちゃん!」バッ


バキィッ!


電「――――!」ググッ

夕立「ぐっ……凄い力……っぽいぃ!」ググッ…


吹雪「夕立ちゃん!」

時雨「駄目だ! 夕立っ!」


電「――――」シュルッ

夕立「うわっと!?」バッ


阿武隈「夕立ちゃん!?」

初霜「あれって……尻尾?」

時雨「尾の先に刃が付いてる……深海化の影響であんな物まで……」


夕立「……不意打ちとか、危なかったっぽい」

電「――――」シュルルッ

421 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 11:08:10.95 ID:9gQXKZzr0
夕立「でも、不意打ちなら夕立も得意っぽい――!」ダッ


時雨「夕立! 今の電とまともに戦うのは無茶だ! 戻って!!」


夕立「ふっ――!」シュッ

電「――」シュルルッ…

電「――!?」ピタッ

夕立「残念。正面はフェイク。脇腹がお留守っぽい!」シュッ

電「――!」

ドスッ!

電「――――」

夕立「……あれ?」

電「――――!」シュルッ

夕立「うぐっ……!」


吹雪「夕立ちゃん!?」

422 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 11:16:14.85 ID:9gQXKZzr0
夕立「ど、どうして……確かに脇腹に1発……手ごたえもあったっぽいのに」

電「――――」


時雨「っ! 強化された電の耐久が高過ぎるんだ、いくら夕立でも素手じゃ勝ち目はない……!」

時雨「早く電と距離を取って! 逃げて夕立!!」


電「――――」シュルッ

夕立「っ……!」ダッ

電「――! ――――っ!」ダダッ!


吹雪「夕立ちゃんを追ってくる!」

不知火「ど、どうすれば……!?」

時雨「今の僕等に勝ち目はない……逃げるしかない!」

阿武隈「み、みんな逃げてっ!」

423 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 11:24:56.57 ID:9gQXKZzr0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


時雨「っ……はぁ……はっ……」

時雨「はぁっ……はっ……! しまった、みんなと逸れたか……」

時雨(……広い実験場内だけど、色々な機械やガラクタが積まれてて……まるで迷路のようだ)

時雨(近くに電はいないみたいだけど……この状況じゃいつ鉢合わせになってもおかしくない……)

時雨「……っ、何とかみんなと……合流しないと」





時雨「……」コツ…コツ…

時雨「……!」ピタッ

時雨(この先から何か……気配がする……。阿武隈さんたち……? それとも……)

時雨(くっ、薄暗くてよく見えないけど……)

時雨(あれは……)



行動安価>>426

時雨が出会ったのは?

1阿武隈
2吹雪
3不知火
4初潮
5夕立

424 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 11:27:13.63 ID:9gQXKZzr0
知らない子がいたので訂正


行動安価>>427

時雨が出会ったのは?

1阿武隈
2吹雪
3不知火
4初霜
5夕立
425 : ◆QlCglYLW8I [saga]:2017/07/24(月) 11:34:02.35 ID:1XbLRcUsO
ドシリアスな展開の中で初潮に吹いたw
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 11:34:31.85 ID:1XbLRcUsO
消し忘れました、逝ってきます……
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 11:44:04.51 ID:VD8PDxjNo
初霜
428 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 12:28:55.26 ID:9gQXKZzr0
初霜「時雨さん!」

時雨「初霜! よかった、無事だったんだね」

初霜「時雨さんこそ……他の皆さんは?」

時雨「僕もわからない……。どうやら散り散りになってしまったみたいだね」

初霜「じゃあ、一刻も早く皆さんを探さないと」

時雨「うん。バラバラになってしまった状況で、もし電と遭遇してしまったら……急がないと」

初霜「でも……皆さんと合流出来た後、あの電さんをどうすれば……」

時雨「……今はとにかく逃げるしかない。みんなと合流した後は、すぐにここから脱出するしか」

初霜「そうですね……っ!?」

初霜「時雨さん! 危ないっ!」

時雨「!?」


ザクッ!

429 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 12:35:03.87 ID:9gQXKZzr0
初霜「っ……く……」ポタ…ポタッ

時雨「初霜っ!?」

時雨「っ!」バッ


電「――――」シュルルッ


時雨「電……いつの間に……っ!」

時雨「初霜……! しっかりして、初霜!」

初霜「だ、大丈夫です……お腹を少し掠っただけで……それより、時雨さんは……?」ハァ…ハァ…

時雨「僕は大丈夫だったけど……っ! ごめん、初霜……っ!」


電「――――」コツ…コツ…


時雨「くっ……」

初霜「は……早く……私を置いて……逃げてください」

時雨「駄目だよ! そんなこと絶対に!」

初霜「早く……このままじゃ、時雨さんも……」ハァハァ…

時雨(このままじゃ……このままじゃ、2人ともやられる!)

時雨(何か手は……何でもいい、何か…………)

時雨(……あれは!)
430 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 12:38:06.86 ID:9gQXKZzr0


電「――――」コツッ…


時雨「……一か八か。やってみるか」ボソッ

初霜「……時雨、さん?」

時雨「……初霜、少しの間目を瞑ってて」

初霜「は……はい……?」

時雨「……」


電「――――?」


時雨「っ!」ダッ


電「――――!」


時雨「よし……取れた!」ギュッ

時雨「これでも……くらえっ!」シュッ


電「――――!」


時雨(お願いだ……佐世保の時雨と言われた幸運……今こそ、力を発揮してくれ……!)


電「――――」シュルッ ガキンッ!

電「!?」ピカッ!

431 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/24(月) 12:42:54.13 ID:9gQXKZzr0
初霜「っ!? きゃっ!」

時雨「目を瞑ったまま! 開けちゃ駄目だよ!」


電「――!? ――っ――っ!?」フラフラ…


時雨「……よし、光が治まった。今のうちに逃げるよ!」

初霜「時雨さん……いったい何を……?」

時雨「閃光弾さ。近くに偶然積まれていたのを咄嗟に見つけたんだ」

初霜「閃光弾……?」

時雨「たぶんここで作っていた試作品か何かだろうけど……正直、使い物になってくれるかは賭けだったよ」

時雨「でも……まだまだ僕たちには、運が味方をしてくれるみたいだ」


時雨(これで少しは電を足止め出来るはず。その間に何とか逃げながら、他のみんなを探さないと)

時雨(掠り傷って言ってたけど、初霜の様子も……あまり悠長なことは言っていられない)

時雨(お願いだ……僕の運。もう少しだけ味方してくれ……)



行動安価>>433

時雨たちが次に出会ったのは?

1阿武隈
2吹雪
3不知火
4夕立

432 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 12:44:23.58 ID:p6DemnRJ0
2
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 12:45:38.35 ID:VD8PDxjNo
もしかして順番重要だったりするかな…
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 12:46:07.20 ID:VD8PDxjNo
ごめん安価下で
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 13:23:27.57 ID:mUL+HmFmO
2
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 13:29:48.08 ID:7LRqVp6vO
4
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 14:50:29.69 ID:RhXJERKDO
いよいよクライマックスか
438 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 03:00:24.31 ID:JmASTJOw0
時雨「しっかり……頑張って、初霜」

初霜「すみません……急いで逃げなくてはいけないのに……肩を借りてしまって」

時雨「元はといえば僕が油断したせいだ……ごめん、初霜」

時雨「……!」ピクッ

初霜「……時雨さん?」

時雨「しっ、この先に誰かいる……」

初霜「!」

時雨「……誰? そこにいるのは」


?「その声……時雨ちゃん?」


時雨「! 吹雪?」

吹雪「時雨ちゃん! それに初霜ちゃんも!」

初霜「吹雪さん……無事でよかった」ハァ…ハァ…

吹雪「初霜ちゃん!? その血……大丈夫!?」

時雨「僕を庇って、電にやられたんだ……。掠り傷みたいだけど、あまり余裕も言ってられない」
439 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 03:05:58.45 ID:JmASTJOw0


ガシャァァァンッ!!


時雨「!」

吹雪「!?」

初霜「この音……後ろの方から……まさか」ハァハァ…

時雨「っ! まずい……急いでここから離れないと! 吹雪、手を貸して!」

吹雪「う、うん!」

初霜「……! 時雨さん、吹雪さん!」

時雨・吹雪「「!!」」


電「――――!」タッ…タタタタッ


吹雪「電ちゃん!? は、早い……!?」

時雨「くっ……こっちは走る余裕はないって言うのに……」

初霜「……時雨さ――」

時雨「置いて行かないよ、絶対に! 吹雪、左側から初霜を。2人で左右から抱える形なら――」

初霜「もう、間に合いません……早く、私を捨てて、ください……」ハァハァ…

時雨「駄目だって言ってるでしょ!」

吹雪「っ! 時雨ちゃん……初霜ちゃんを連れて先に行って」

吹雪「電ちゃんは、私が食い止める」

時雨「吹雪!?」
440 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 03:10:18.58 ID:JmASTJOw0
時雨「無茶だ! 1人でなんて……! 夕立でも敵わなかったんだよ!?」

吹雪「……みんなをお願い。時雨ちゃん!」ダッ

時雨「吹雪っ!」


電「――――!」

吹雪「うわあぁぁぁぁぁぁっ!!」ドカッ!

電「――――!?」ググッ

吹雪(弾薬もない……私は夕立ちゃんみたいに素手で戦うとかも出来ないけど……)

電「――」キッ!

吹雪(せめて……時雨ちゃんたちが逃げられる時間稼ぎだけでも……!)

吹雪「私がみんなを……護――」

電「――――!」シュルルッ!

吹雪「っ!?」
441 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 03:15:06.20 ID:JmASTJOw0
電「――――」グググ

吹雪「……あ……が、っ」メキメキッ


時雨「吹雪っ!?」


電「――――」グイッ

吹雪「ぐっ……しぐ……にげ……ぎゃ……ぁっ」ベキッ、バキッ!

吹雪「……ぁ」プラン…プラン…


初霜「吹雪……さ……」ガクガク

時雨「あぁ……そん、な……」

442 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 03:20:34.74 ID:JmASTJOw0
中将「まずは1人。よくやった、電」コツ…コツ…


時雨「っ!」


中将「……愚かな選択をしたな。私の邪魔をしなければ、生かしてやったものを」

中将「ここまで辿り着くほどの知恵と勇気、それに運も持ち合わせていた稀有な存在だというのに……実に残念だ」

中将「……ん?」


吹雪「……ぁ……ぅ」


中将「ほう……尾で絞め上げられ全身を潰されても、まだ微かに息があるか。このままでもすぐ死ぬだろうが……」

中将「せめてもの情けだ。止めを刺して楽にしてあげなさい」


電「――――」グッ!

ゴキンッ!

電「――――」シュルッ

吹雪「」ドシャッ


時雨「ふ……ぶき……」

初霜「あ、あぁぁ……」ガクガク


中将「さあ、次はそこの2人……ただし時雨は殺さず、逃げられぬよう足を折る程度に止めておくれ」

電「――――」ジロッ


時雨「ぐっ……」

時雨(負傷した初霜を抱えたこの状況じゃ……さすがに逃げ切れない)

時雨(さっきのような手も……2度は……)

時雨(これまで、か……)

443 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 03:23:04.12 ID:JmASTJOw0
(あれ……?)

(目の前が……真っ暗だ……。ああ、そうか……私は、電ちゃんに……)

(結局……護れなかったんだ……時雨ちゃんたちも……司令官との、約束も……)

(ごめんね……みんな…………)

(ごめんなさい……司令官……)

(…………)

(……?)

(なに……この感覚……胸の辺り、暖かい……)

(……! 光……? 小さな光が……だんだん、大きく……)


ピカッ!

444 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 03:26:13.15 ID:JmASTJOw0
電「――――?」

中将「何だ……?」


「2人に手を……出すなぁぁぁぁっ!!」ドカッ!


電「――――ッ!?」ヨロッ…

ガシャァァァンッ!!

中将「電!?」


時雨「……えっ?」

初霜「な、何……? いったい、何が……」


吹雪「……っ、時雨ちゃん、初霜ちゃん!」


時雨「ふ、吹雪!?」

初霜「吹雪さん……! いったい、どうして……」

吹雪「私にもよくわからないけど……気が付いたら、意識が戻ってきて……身体も元通りに」

初霜「! 吹雪さん、そのお守り……」

時雨「お守りが光を……吹雪、それ……」

吹雪「これって……」

女神妖精 ( ^ー゚)bグッ
445 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 03:30:21.73 ID:JmASTJOw0
吹雪「応急修理女神……これがお守りの中に?」

初霜「そのお守り……確か……提督に……頂いたもの、ですよね?」

時雨「なるほど。確かに、最高のお守りだ」

吹雪「司令官……」ギュッ


ガララッ… ガシャァン!

電「――――っ」スクッ


吹雪「!」

時雨「安心してる場合じゃなかった。この状況をどうにかしないと」

初霜「吹雪さん……女神の力で、甦ったなら……弾薬も」

時雨「そうか! その手が――」

吹雪「だけど……私が装備してるのは魚雷だけで、砲系統の艤装は……!」


中将「貴様……よくも……よくも、電を……!」

中将「許さんぞ……貴様はより惨く殺してやる! 四肢を削ぎ! 臓物を撒き散らして殺してやるッ!」

中将「殺せ電っ! お前を痛めつけたゴミ屑を、誰かも解らぬほどバラバラに引き裂いてやれッ!」


電「――――!」ダッ


時雨「っ、また来る!」

吹雪「……やるしかない!」

吹雪「時雨ちゃん、初霜ちゃんと一緒に伏せてて!」ダッ

時雨「! 吹雪っ!?」

446 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 03:33:02.86 ID:JmASTJOw0
中将「愚か者が! 馬鹿の一つ覚えの如くまた体当たりか!」

中将「今度こそ仕留めてやれ! 電!」


電「――――!」シュルルッ

吹雪(っ! 尻尾の攻撃……これさえ避けられれば!)

電「――」シュッ

吹雪「っ!」

吹雪(避けられた! このまま巻き付かれないように……!)

電「――――!」シュルッ!


時雨「後ろだっ!!」

447 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 03:37:45.62 ID:JmASTJOw0
吹雪「っ!」

吹雪(避けた尻尾の先が、こっちを……!)


中将「終わりだ! そのまま刺し殺してしまえッ!」


電「――――」シュルッ

吹雪「……でも、ここまで近づけば十分」ガチャン!

電「――!」


中将「っ! 馬鹿が、陸では使えもしない魚雷だけで何が――」

中将「!?」


時雨「ま、まさか……」


電「――!?」

吹雪「確かに魚雷は海でないと使えない……けど」

吹雪「信管を作動させて、直接当てれば――」

吹雪(チャンスは1度だけ……全ての魚雷を、ゼロ距離で叩き込む!)


試製61cm六連装(酸素)魚雷 カッ!
61cm五連装(酸素)魚雷   カッ!
61cm五連装(酸素)魚雷   カッ!


電「!?」

吹雪「お願い、当たってください!」


チュドオォォォォンッ!!

448 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 03:40:28.05 ID:JmASTJOw0
時雨「っ!!」

初霜「きゃっ!」

時雨「……! 吹雪っ!?」


ドサッ! ドザザッ


吹雪「……っ、ぐ……っ」


初霜「吹雪さん……!?」

時雨「吹雪!」ダッ

時雨「しっかり……! 吹雪っ!」

吹雪「時雨ちゃ……」ゲホッ

時雨「! 吹雪!」

時雨「なんて……なんて馬鹿なこと……っ!」

吹雪「ぁはは……それより……電ちゃん、は……?」

時雨「!」バッ


中将「電!? 電ぁっ!?」


電「――ッ、――」フラフラ…


初霜「!」

時雨「!? 炎の中から……ダメージは入ったみたいだけど、まだ動けるのか」


電「――――っ」

電「――ァ」ヨロッ…

電「」ドシャッ!


中将「い、電……!?」

中将「あ……あぁ……いなず……電っ!?」

449 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 03:42:06.69 ID:JmASTJOw0
初霜「!」

時雨「やった……やったみたいだ、吹雪!」

吹雪「よ……かった……」


タッタッタッタッ…


時雨「……!」


阿武隈「今の爆発は……! 時雨ちゃん!」

時雨「阿武隈さん! それに、不知火と夕立も……!」

不知火「夕立と合流した後、阿武隈さんとも合流を……それより、吹雪さんと初霜さんは」

夕立「吹雪ちゃん!」

時雨「2人とも負傷してる。すぐに命に係わる心配は無さそうだけど……特に吹雪は、電を倒すためにゼロ距離で魚雷の爆発を受けたから……」

不知火「!」

阿武隈「なんて無茶なこと……っ!」

夕立「吹雪ちゃん……」

吹雪「そんな顔しないで……大丈夫、だから」
450 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 03:43:32.11 ID:JmASTJOw0
不知火「それじゃあ、電は……?」

時雨「……」


中将「あぁ……電…………電ぁ……!」

電「――ガ…――グ」プルプル

中将「大丈夫だ……電…………私が治す。治すからな……また、私が……おぉぉ、電ぁ……」

電「――ッ」


阿武隈「電ちゃんに寄り添って泣いてる……どうしてあの人は、あそこまで電ちゃんに……?」

時雨「……」


ドオンッ!


時雨「!?」

451 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 03:44:43.30 ID:JmASTJOw0

ドカンッ…ドンッ! チュドンッ!!


不知火「炎と爆発が……広まってる!?」

時雨「! さっきの爆発の炎が、近くの兵器や弾薬に誘爆し始めたのか!?」

阿武隈「嘘でしょ!? 作りかけの兵器とか弾の他にも、燃料とかもたくさん置かれてるのに……!」

時雨「それだけじゃない……ここには、深海棲艦を絶滅させる為の兵器もあるのに!」

不知火「!!」

時雨「ここに居たらまずい。すぐに逃げないと!」

阿武隈「っ! 時雨ちゃんと夕立ちゃんは吹雪ちゃんを、不知火ちゃんはあたしと一緒に初霜ちゃんに手を貸してあげて!」

不知火「了解しました」

夕立「吹雪ちゃん、私たちに掴まって」

吹雪「……ごめん……夕立ちゃん、不知火ちゃん」

時雨「しっかり掴まってて……夕立、君は左側からお願い」

夕立「ぽいっ!」
452 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 03:50:33.67 ID:JmASTJOw0
阿武隈「初霜ちゃんも、肩に手を回して」

初霜「阿武隈さん……電さんたち、を……」

阿武隈「……!」

不知火「何を……」

初霜「……見捨てていくなんて……あの2人も……一緒に、脱出を」

阿武隈「初霜ちゃん……」


ドカンッ! ボオッ…!


時雨「……火の回りが早い! 阿武隈さん、早く!」

阿武隈「っ! 不知火ちゃん、初霜ちゃんをお願い!」

不知火「まさか……正気ですか!?」

阿武隈「見殺しには出来ないわ。あたしが2人を連れていくから、みんなは先に出口を――」

阿武隈「っ!」ボウッ!

阿武隈「……! そんな! あの2人の周りが、炎に……!?」

不知火「っ! もう無理です! このままだと阿武隈さんまで炎に……!」

阿武隈「でもっ……!」

不知火「早くっ! このままだと全員死んでしまいます!」

阿武隈「……っ!」ダッ


メラメラ… ボオッ!


中将「電……私の愛しい……電……」

中将「もう1度……見せておくれ……私の大切な……この世で、たった1人の…………私の……」

電「――――ッ」

電「――ォ…ト……」ツー


グラッ… ガシャァァァンッ!!

453 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 10:57:01.19 ID:JmASTJOw0
不知火「っ! 出口は……出口はどこ!?」

阿武隈「電ちゃんたちから逃げ回ったせいで、来た道すら分からない……。炎もどんどん広まってるし、このままじゃ……」

時雨「……! この機械……見覚えがある。あっちだ!」

夕立「吹雪ちゃん、もう少しだから頑張って!」

吹雪「うん……」

阿武隈「初霜ちゃんも、頑張って!」

初霜「申し訳ありません……2人とも……」

時雨「……! 見えた、出口だ!」

阿武隈「みんな、急いで!」

吹雪「…………」


『――の――――――――っ―……そ――――に』


吹雪「……!」

夕立「吹雪ちゃん、出口が見えたっぽい! もうすぐだからね!」

吹雪「……うん…………」

454 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 11:07:32.26 ID:JmASTJOw0
-地下施設 地下実験場〜階段間の通路-

不知火「何とか……炎からは逃れられましたね」ハァハァ

時雨「でも、まだ安全って訳じゃない。あの兵器が誘爆してしまう前に、早くここから脱出して出来るだけ離れないと……!」

阿武隈「とにかく階段のところに! 地上に上がって、そのまますぐこの島から海に出ましょう!」



不知火「分岐が見えました!」

時雨「よし……。あそこを左に曲がって階段を上れば……」

時雨「……!?」

不知火「か、階段が……」

阿武隈「塞がってる……!? 天井の部分が崩れて……階段が……っ!?」

時雨「さっきの爆発のせいか……っ!」

不知火「ど、どうすれば……地上に出るには、この階段を上がるしかないのに!」

時雨「くっ……」



自由安価>>456

※※実現不可能なことや、あまりに話から外れた内容の場合は再安価と致します。

455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/26(水) 12:39:49.82 ID:DqJqwKqIO
確か海に通じる出口みたいなのがあったはずだったからそこに
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/26(水) 12:54:05.84 ID:bj7PbJp8o
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/26(水) 19:14:38.11 ID:pF7we9H60
これ、このスレでの選択肢次第でもエンディングの分岐がありそうだな。
458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/26(水) 20:13:18.65 ID:X5ppCLuCo
スーパータイラントならぬスーパー電くるか?
459 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 21:40:20.68 ID:JmASTJOw0
吹雪「……!」

吹雪「みんな……、あそこに……あそこから、海に……」

夕立「吹雪ちゃん?」

時雨「海? あそこからって、いったいどこに……?」

吹雪「地下の……っ、『出撃ドック』。あそこから、海に……出られるかも」

阿武隈「!」

初霜「……そういえば、私と夕立さんも……最初に目覚めたとき……あの場所に」ハァ…ハァ…

時雨「! そうか、出撃ドック……あそこは外――海と繋がってるのか!」

夕立「じゃあ……!」

時雨「時間もない……一か八か、行ってみよう」

阿武隈「でも、よく気付いたね。出撃ドックのこと」

吹雪「声が……聞こえたんです。さっき……誰かの声が……その声が、『出撃ドックから海に』って……」

阿武隈「声?」

吹雪「よくわからないけど……確かに聞こえた気がするの。女の子の声が……頭の中に」

時雨「女の子の声……」


ズズンッ…


時雨「!」

阿武隈「っ、今は考えてる場合じゃないわ! 早く出撃ドックに向かおう!」

460 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 21:52:58.91 ID:JmASTJOw0
-地下出撃ドック-

不知火「潮の匂い……! ドックに着きました!」

阿武隈「ここは電気が点いてないから全貌が分からないけど……どこかに、外に出れる場所があるはずだわ」

阿武隈「みんな、艤装のライトで辺りを照らして!」ピカッ

不知火「っ!」ピカッ

時雨「……」ピカッ

夕立「何もない……っていうか、向こう側は完全に冠水しちゃってるっぽい……?」

不知火「っ、そんな……ここまで来て……!」

初霜「でも……私と夕立さんが、海からここへ……流れ、着いたのなら……」

時雨「まだ外には繋がってる……? この水の先にさえ行ければ……」

阿武隈「でも、どうやって……!?」

時雨「……泳いでいくしかないね」
461 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 22:03:22.81 ID:JmASTJOw0
夕立「ぽいぃ!?」

阿武隈「泳ぐって……潜水艦でもないあたしたちが艤装を抱えたまま水の中になんて入ったら……!」

不知火「たちまち水没して……水死するのが関の山。さすがに、それは……何か別の方法を」

時雨「残念だけど他に方法はない。あったとしても、今からそれを探してるような時間はない」

時雨「それに、ここに流れ着いた初霜たちがこうして生きている事や、艤装にも問題が発生していない所を見ると――」


ズズンッ! ドォォンッ!


阿武隈「爆音がすぐ近くにまで……! それに、何かが崩れる音も……!」

時雨「地下が崩落し始めたんだ……迷ってる時間はない。行こう、みんな!」

不知火「〜〜っ! 分かりました。迷いながら瓦礫で圧死するくらいなら……ここからの脱出に賭けましょう」

夕立「でも、怪我してる吹雪ちゃんや初霜ちゃんは……!?」

吹雪「……っ」

初霜「……」ハァ…ハァ…

阿武隈「このままあたしたちで支えて、みんなで一緒に行くよ。見捨てていくなんて、絶対にイヤ!」

不知火「1人でも欠けて自分だけ生き残るくらいなら……皆で一緒に死んだほうがマシです」

時雨「そうだね。みんなで一緒に行こう」
462 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 22:12:29.42 ID:JmASTJOw0
阿武隈「じゃあ、みんな……準備はいい?」

不知火「初霜さん、傷口に水が障って辛いでしょうが……何とか頑張ってください」

初霜「はい……ごめんなさい、よろしく……お願いします」

時雨「水の中に入って少し泳いだら、とにかく上を……海上を目指そう」

夕立「吹雪ちゃん、水の中に入ったら頑張って息を止めて。出来るだけ早く、外に出るから……!」

吹雪「うん……」

阿武隈「じゃあ……いくよ!」ザバッ

初霜「――っ!」ズキッ

不知火「初霜さん、頑張って……。では時雨さん、不知火たちが先に潜り先導します」

時雨「うん。光もない、本当に手探りになるだろうけど……何とか頑張って海上を目指そう」

阿武隈「いくよ、不知火ちゃん」

不知火「はい……っ!」スゥッ

ザバッ!

時雨「僕たちも行くよ。夕立、吹雪をしっかり抱えて」

夕立「ぽいっ!」

時雨「よし……いくよ!」ザバッ

夕立「っ!」ザバッ

463 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/26(水) 22:31:43.84 ID:JmASTJOw0


コポッ……コポポッ


時雨「――――」

夕立「――――」


吹雪(真っ暗で……暗くて……寒い……)

吹雪(これが暗い海の中……光の無い……世界……)


ズキッ!


吹雪「――――ッ!?」


吹雪(身体が……っ、どんどん……冷たく、なって……)

吹雪(……そうか……これが、あの人が言っていた……これが……深海棲艦の……)


夕立「――――っ、――!」

時雨「――――!」


吹雪(あぁ……そうか……わたし……)

吹雪(ごめん……夕立ちゃん……わたし……眠く…………)

吹雪(だめ……意識が……また…………)


『―――――』


吹雪(…………?)


『―――――――――、―――――― ――――――――――――……』



コポポッ…!



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


464 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/27(木) 01:00:28.85 ID:pwqOUEe30
吹雪「…………ん……」

吹雪「……あれ……ここは……?」

夕立「……! 吹雪ちゃんが起きたっぽい!」

吹雪「その声……夕立ちゃん?」

吹雪「ここ……ベッドの上……?」

吹雪「っ!」ガバッ

夕立「おはよう。吹雪ちゃん」

吹雪「夕立ちゃん! どうしてベッドの上に? 阿武隈さんや他のみんなは? それにここは……!?」

夕立「吹雪ちゃん、少し落ち着いて」

吹雪「私……どうして、あの地下施設から脱出して……それから……記憶が……」

初霜「私たちは助かったんですよ、吹雪さん」

吹雪「! 初霜ちゃんも、無事だったんだね!」

初霜「ええ。他の皆さんも……入院しているのは私たち3人だけなので今ここにはいませんが、全員無事ですよ」

吹雪「入院……それに助かったって……じゃあ、ここは……」

夕立「ここは鎮守府の病院棟だよ」

初霜「無事に帰れたんですよ、私たちの鎮守府に」

465 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/27(木) 01:03:54.76 ID:pwqOUEe30
吹雪(それからしばらくの間、私は状況が掴めなかったけど……初霜ちゃんたちの話を聞いてようやく理解することが出来た)

吹雪(私たちがあの廃墟と化した鎮守府に迷い込み、地下施設からの脱出を図ってから、なんと3日も経っていた)

吹雪(あの地下のドックから海上を目指した私たちは、幸運にも水没することなく全員無事に海上に浮上出来たらしい)

吹雪(私は水の中に潜った直後気を失い、夕立ちゃんと時雨ちゃんの支えで何とか海上へと辿り着いた。けどその後もずっと気絶したままだったらしい)

吹雪(海上に上がった私たちは、すぐにあの島を脱出し、その後、私たちの捜索に出ていた味方の艦隊を発見し合流を果たした)

吹雪(そうして私たちは、無事に鎮守府へと帰還することが出来たのだ)

吹雪(負傷していた私と初霜ちゃん、怪物に襲われた夕立ちゃんは帰還後すぐに入院。幸いみんな命に別状はなかったものの、大事を取り1週間は入院生活を言い渡されたという)

吹雪(私はついさっき目を覚ますまで、3日間も眠ったままだったらしい……)



吹雪「私が眠っていた間に、そんなことが……」

初霜「入院している私たちの代わりに、阿武隈さんや時雨さんたちが提督に事情を説明しているそうです」

夕立「昨日もお見舞いに来てくれたけど、色々大変そうっぽい」

吹雪「……でも、私たち……帰ってこれたんだね」

初霜「……はい。帰ってこれたんです。皆さんの元に……私たちの、居場所に」
466 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/27(木) 01:07:33.98 ID:pwqOUEe30
吹雪「あれ? そういえば、この花瓶の花……私たち全員の横に置かれてるけど」

初霜「ああ、それは青葉さんがお見舞いに持ってきてくれた物なんですよ」

吹雪「青葉さんが?」

初霜「私たちが帰還して入院した後、わざわざ全員の分を持ってお見舞いに来てくれたんです」

吹雪「青葉さんが……なんか、珍しいって言うか……以外って言うか」

夕立「でも、その代わりに色んなこと根掘り葉掘り聞かれたっぽい」

初霜「質問攻めにされて、最後は『これでいい記事が書けます!』って感謝されましたね。途中からはお見舞いというより、完全に取材になってましたね……」

吹雪「あはは……やっぱりいつもの青葉さんだ」

吹雪「……でもこの花、とても綺麗。ピンク色の……えーと、なんていう花だろう?」

初霜「ガーベラ、だったと思います」

夕立「夕立的には食べ物の方が嬉しかったっぽい」

初霜「……夕立さん」

夕立「うそうそ! 冗談っぽい」
467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/27(木) 01:09:07.20 ID:+CphB0M0o
実はこれbadendでは?
468 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/27(木) 01:14:34.37 ID:pwqOUEe30

コンコン


初霜「はい。どなたですか?」

白雪「白雪です。吹雪ちゃんのお見舞いに。深雪ちゃんと初雪ちゃんも一緒に」

初霜「ちょうどよかった。ついさっき吹雪さんが目を覚ましたところで――」



吹雪(何はともあれ、私たちは全員無事に……私たちの鎮守府に帰ってくることが出来た)

吹雪(でも、私たちがあの鎮守府で知ったこと――知ってしまったことは、この先大きな混乱に繋がってしまう。そんな予感を感じていた)

吹雪(私たちの行く末……この先に待っているのは、いったいどんな未来なのか?)

吹雪(それはまだ分からない……でも、きっと方法はあるはず)

吹雪(私たちと深海棲艦……終わることの無いというこの戦争を、どちらかを滅ぼさずとも終結させる方法が……)



吹雪(そういえば……あの鎮守府を脱出するとき……水の中で、また……あの声が聞こえた気がする)

吹雪(あれはいったい……誰の声だったんだろう。あの声は、どうして……)

吹雪(どうして私に、謝ったんだろう……)









――巻き込んでしまって ごめんなさい  と   を許してあげて……―――









【Good End】
469 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/07/27(木) 01:22:51.90 ID:pwqOUEe30
ようやく終わりが見えました
気が付いたら半年以上ずるずると続けてしまい本当に申し訳ないです

近日中に最後の話を書いて、それでこのSSは完結となる予定です

お付き合いありがとうございました
470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/27(木) 01:42:10.84 ID:80CcWx8Wo
おつおつ♪
471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/27(木) 01:52:56.93 ID:3+uw6cQk0
乙です

待ったかいがあったぜ
472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/27(木) 02:00:30.13 ID:KT/TYDZbo
乙!

出来ればでいいからtrue endも書いて欲しい。
473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/27(木) 02:10:16.07 ID:LcdQbGBzo
やっぱどこかにtrueにつながる鍵があるんだな
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/27(木) 02:12:32.44 ID:pvC6cE8No
乙乙
ガーベラの花言葉は希望とかだっけか
......青葉には似合わんな
475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/27(木) 05:24:52.53 ID:YTCmbR6+0
おっつおっつ

最後のは『おとうさんを許してあげて』かな
あと爆発で冷凍庫の保冷機能停まったら怪物復活するんじゃ…
ネメシス少将爆誕フラグ?
476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/27(木) 09:44:30.50 ID:B21AA15sO
お守りマジか・・・
って事はあの時阿武隈が持ってたままだと阿武隈と先に合流しないとやられてたパターンっぽかった?
477 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/27(木) 12:24:35.71 ID:6O2nxwLnO
やっぱり潜水艦じゃない彼女たちは泳ぐことができないんだよな
478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/27(木) 12:26:12.53 ID:6O2nxwLnO
あの2人と救うのがベストエンドなのかな
479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/27(木) 12:36:09.07 ID:QB4ji1SDO
ガーベラの花言葉は希望・前進。
ピンク色のガーベラだと思いやり・崇高美・感謝・童心に帰る。
なんか意味深だな・・・
わざわざ色まで描写してるし
480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/31(月) 01:57:47.11 ID:Q4tm9MZE0
これ完全完結後に最初からどのルートをどう選択したらどうなるのか全部欲しいな。
しかしこれ、RPGツクールとかでプレイしてみたい
481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/01(火) 04:02:31.25 ID:6AjFNNR+O
言い出しっぺの法則というモノがあってな…
482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/05(土) 01:27:42.51 ID:6qXeEAO+o
機種変してログ消えたからすっかり忘れていた間に続き来ていたのか
やっぱり主人公さんが主人公なのか
483 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/08/06(日) 00:57:12.81 ID:GU5W5Tx40
〜事件から1週間後〜


-柱島鎮守府 執務室-


コンコン


時雨「提督、入るよ」

提督「やあ時雨。せっかく休養しているところ呼び出してすまない。調子はどうだ?」

時雨「僕は平気だよ。それに僕も提督と話したかったし」

提督「とはいえ皆が帰還してから検査や聴取の連続。特に時雨たちには何度も話を聞く為に呼び出しているからな」

提督「本来ならゆっくり休ませたいところなんだが……」

時雨「仕方ないさ。それより、吹雪たちの退院が決まったって聞いたけど?」

提督「ああ。負傷していた吹雪と初霜、それと怪物に襲われたという夕立も、明石の精密検査の結果特に異常は見られず、命に別状もないとのことだ」

提督「唯一意識が戻らなかった吹雪も数日前に目を覚ましたし、夕立もそろそろ入院生活に退屈し始めたようだからな。予定より早く退院の許可を出した」

時雨「……よかった。阿武隈さんと不知火は?」

提督「あの2人も帰還後しばらくは聴取続きにしてしまったからな。今はゆっくり休ませてる。2人共姉妹達と一緒に過ごしているようだ」
484 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/08/06(日) 01:25:20.19 ID:GU5W5Tx40
時雨「……それで提督。僕をここに呼んだのは、やっぱり」

提督「ん、ちょっと待ってくれ。もうすぐ――」

コンコン

大淀「失礼します。提督――あら、もう時雨さんが来られてましたか」

提督「いや、良いタイミングだ。これで役者も揃った」

時雨「大淀さん……?」

大淀「遅れて申し訳ありません。時雨ちゃんもお休み中にごめんなさい……疲れとかは大丈夫ですか?」

時雨「大丈夫だよ。大淀さんこそ色々大変みたいだね。中央は今、大変な騒ぎになっているみたいだし」

提督「……大本営の中央人事を中心に一部現役の元帥。さらには政府関係者まで、一斉に告発と調査の手が入ったからな」

大淀「ええ。大規模な調査が入ったことで中央の機能は停止状態です」

大淀「幸い戦線に関しては、前以て行っていた根回しが功を奏し、各主力鎮守府の迅速な対応で戦線の維持に問題はありませんが。やはり各所は大混乱ですね」

提督「彼らが長年隠蔽し続けてきた事……それが白日のもとに曝されたのだから、そうなるのも仕方がない」

提督「しかし、だからと言って真実を有耶無耶にする訳にはいかない。我々は向き合わなければならないんだ」

提督「人間が作り出した闇にも、この戦いの真実にも、な」

時雨「……」
485 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/08/06(日) 01:33:45.08 ID:GU5W5Tx40
時雨「やっぱり……知っていたんだね」

提督「……!」

時雨「僕たちがあの廃墟と化した鎮守府を発見し、そして持ち帰ったあの資料……」

時雨「ここに帰って来て提督に渡した『証拠の書類』。あれが大本営を告発する為の弾丸になったのは想像が付く」

時雨「でも、それにしても手際が良すぎるよね?」

提督「……」

時雨「僕たちが帰ってきてからまだ1週間。こんな短期間で国家と大本営という大きな存在を相手にする準備を整えるのは、ちょっと不自然だ」

時雨「大淀さんが言っていたように、事前に根回しでもされてなければね」

大淀「……」

提督「……」

時雨「提督は、あの鎮守府の存在を知っていた……そうだよね?」
486 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/08/06(日) 01:43:21.40 ID:GU5W5Tx40
大淀「提督……」

提督「……」コクッ

提督「時雨の言う通り、私はあの鎮守府の存在について知っていた。いや、気付いていたと言うべきか」

時雨「やっぱり……。そうだったんだね」

提督「今日、時雨をここに呼んだのはそのことを話すためだ。1からあの地のことを突き止めた君は知りたいだろうと思ってな」

提督「それにあの施設で行われていた研究や中将氏のことについて。その後の調査で新たに判明したことも出てきたからな」

時雨「!」

提督「だから今、あの鎮守府について私が知る全ての事を……君に話そう」
487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/06(日) 05:16:21.23 ID:+zPj8EJio
乙。
うーん。
488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/06(日) 11:07:00.05 ID:csSuSIyao
乙カレー
489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/16(水) 08:48:11.60 ID:hQAFmrRA0
わっふるわっふる
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/20(日) 23:15:13.07 ID:uKbfrXvvo
残りにも期待乙
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/04(月) 17:31:50.60 ID:+FDtqkBxO
支援
492 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/09/10(日) 01:43:28.55 ID:FtlCc3g90
提督「きっかけは2年前。ある海域で任務中の我が艦隊が、単艦で海上を彷徨う所属不明の艦娘を発見し保護する出来事があった」

提督「初めは艦隊から逸れた他の鎮守府の艦娘だと思ったが……回復したその艦娘の話を聞いて事態は一変した」

時雨「まさか、その艦娘って……」

提督「あの鎮守府に所属していた艦娘。その唯一の生き残りだ」

時雨「! 驚いたね……生き残った艦娘がいたのか……」

提督「彼女の証言によって、我々は知られざる謎の鎮守府が存在すること。そこで起きたという惨事と、その地にまつわる重大な秘密……その疑惑を知った」

提督「だが、事が事だけに迂闊に動くことも出来なかった」

大淀「それが事実なら背景には大本営――いえ、国家そのものが関わっているのは明白でした。真相を探るにしても慎重にならざるを得ません」

大淀「下手をすれば私たち自身に危害が及ぶ可能性も十分にあり得えます。国がその気になれば、我々の口を封じることぐらい造作もないでしょうから」

時雨「……口封じ」

大淀「そこで提督は、信頼できる他の提督や軍警察の監査機関などと秘かに連絡を取り、秘密裏に調査を進めていたんです」

提督「同業の提督内でも、大本営に関して疑念や不信感を抱く者は少なからずいたからな……私も含めてね」
493 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/09/10(日) 01:46:20.28 ID:FtlCc3g90
提督「疑惑を知った私は彼らと連携して調査を始めた……だが、いくら調べても核心に迫れるような情報は一向に見つからなかった」

時雨「そうだろうね。島ごと一般の海域図から消して存在を隠蔽するくらい、大本営もあそこの隠滅には徹底していたみたいだし」

提督「ああ……。それに協力を仰いだ軍警察も大元は軍の一部。中央の息がかからず本当に信頼できる人間はごく少数に限られた為、彼らの力にも限界があった」

提督「そんな中で分かったのは、過去に国の主導で何処かの孤島に極秘の研究施設が設けられ、そこで軍関係の機密に纏わる研究が行われていたという事実だった」

提督「我々は生き残った艦娘からの情報と照らし合わせ、彼女の証言にあった『鎮守府』とその『研究施設』が同一の物である可能性に着目した」

時雨「やっぱりそこに気が付くよね……」

提督「といっても当時は確証もなく、ただの仮説に過ぎなかった。これが正しかったと証明されたのは、時雨たちからの報告を受けてからのことだ」

大淀「ですがその施設に関する情報は少なく、そこを糸口に調査を進めていくのは困難を極めました」

大淀「当時そこで研究に関わったとされる職員の何人かにまで辿り着けても、その多くは既に死んでいるか消息不明という有り様でしたから」
494 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/09/10(日) 01:49:25.29 ID:FtlCc3g90
時雨「それって……」

提督「偶然の可能性もあるが、口を封じられたと見るのが妥当だろう」

時雨「……絶対に漏らすわけにはいかない秘密なら、それを知る者自体を最小限に止めるのは定石。ってわけか」

提督「唯一生き残っている可能性があったのは、その施設の主任だったという人物」

提督「その男は後に軍籍を得て海軍所属となり、開戦と共に何処かの鎮守府に司令官として赴任した。追うことが出来たのはそこまでだった」

提督「我々は2つの施設が同一という仮説に基づき、その男が施設を閉じたあと跡地に作られた鎮守府に司令として着任し、秘密を守る役割を担っていたのでは?と考えた」

時雨「それがあの人……中将提督だね」

提督「そう。彼こそが唯一の生き証人であり、一連の疑惑の確たる証拠になり得る人物」

提督「生き残った艦娘の証言によれば、今も生存している可能性があるとのことだった」

大淀「ですがその方の居場所もまた鎮守府と共に謎のまま……。事実上、私たちは八方塞がりの状況に陥ってしまったんです」
495 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/09/10(日) 01:50:45.24 ID:FtlCc3g90
提督「そんな状況下で残されていたのは、生き残った艦娘の証言だ。彼女の証言を基に大本営を告発し、暗部を暴く突破口に出来ないかと考えた」

提督「だが彼女の情報だけでは、全容解明に至るには決め手に欠けた」

大淀「国家と大本営が秘密裏に行っていたという研究。それを裏付ける証拠も一切得られていませんでしたからね」

時雨「その生き残った艦娘から、あの島の所在を聞き出すことは出来なかったの?」

提督「無論、私も最初にそれを考えたさ。しかし彼女は自分が所属していた鎮守府の場所や詳細に関して、一切のことを知らなかったんだ」

時雨「知らなかった?」

提督「恐らく艦娘の脱走などが起こった場合を想定して、予め所属する艦娘たちには鎮守府に関する情報が伏せられていたんだろう」

時雨「……そういえば、あの鎮守府で見つけた艦娘たちの痕跡の中に、自分たちの鎮守府や他の鎮守府に関する話はあまり出てこなかったけど」

時雨「なるほど……そう考えれば、確かに辻褄は合うね」

大淀「それに加えて、生き残った艦娘は記憶の一部を失っており……それも私達にとって不利に働きました」

大淀「曖昧な部分のある証言では証拠としての信憑性は失われます。とても大本営を告発するための証拠にはなり得ませんでした」

提督「詰まる所、我々は大本営が隠す鎮守府の存在と疑惑について、ある程度の所までは辿り付いていた」

提督「だがその鎮守府自体も、その存在を証明するための証拠も得ることができず……それ以上の動きが取れない状態になっていた訳だ」

時雨「そんな時に偶然、僕たちがあの廃墟と化した鎮守府に迷い込んだ……」

提督「私も帰ってきた君たちに話を聞いた時は驚いたよ。……あるいは偶然ではなく、何らかの必然だったのかもしれない。と思うくらいにね」
496 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/09/10(日) 01:53:48.46 ID:FtlCc3g90
提督「時雨たちから話を聞き、すぐに廃鎮守府の場所を特定し、調査の為に艦隊を派遣した」

提督「しかし、調査隊が島に到着した時には、鎮守府――時雨たちが見たというそれは、既に存在していなかった」

時雨「えっ」

時雨「存在していないって……まさか、そんな……」

提督「報告では僅かに人工物の痕跡は確認できたようだ」

提督「だが、島の一部が不自然に大きく崩落し、港湾や建物の類はそれに呑み込まれたかのように跡形もなかったそうだ」

時雨「! それって……」

提督「おそらく時雨の言っていた……」

時雨「地下の崩落……それに、あの地下施設に準備されていたあの兵器……」

大淀「その影響と思われます。現に調査隊が確認した島の状態は、科学的汚染はみられないものの草木の一切が枯れ果て、周辺には生物の気配すら感じられない惨憺たる状態とのことでした」

提督「中将氏が作っていたという深海棲艦を根絶やしにする為の兵器……。島の惨状は、報告にあったその効能にも合致する」

提督「今となってはその兵器の全容は不明のままだが、どうやらその効力は本物だったようだな」

時雨(もし僕たちがあの島から逃げ遅れていたら、今頃は……)ゾクッ
497 : ◆Paxl0Q5Mlk [saga]:2017/09/10(日) 01:54:46.89 ID:FtlCc3g90
提督「……結局、中将氏も鎮守府も纏めて消滅してしまった」

提督「時雨があの資料を持ち帰ってくれていなければ、今頃全ては闇の中に葬られていただろう」

時雨「それじゃあ、やっぱり……あれは役に立ったんだね」

提督「役に立つどころか、最大の証拠品といっても過言ではない代物。我々が探し求めていた物だったよ」

大淀「あの書類には、施設で行われていた実験の数々。艦娘開発の為に行われた人体実験や、その為に国家が行った非合法な行為に関する記述が残されていました」

大淀「中には当時計画に関わっていた大本営や政府の人間――今は軍令部次席や元帥、政府高官に出世している方の名前まではっきりと」

大淀「大本営と国家の犯した罪を裏付けるには、これ以上ない証拠です」

時雨「それが決め手になり、提督たちは大本営の告発に踏み切った……。ってことだね?」

提督「その通りだ」
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