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【ガルパン】西住みほ「あの……私、戦車道、やめます……」【劇場版】
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272 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/02(水) 21:07:21.23 ID:rISphW2T0
杏「準優勝には価値がない、と?せめて廃校を先延ばしにすることもできないんですか」
辻「価値がない、とまでは言いません。優秀な選手の育成に成功したと思いますよ。その優秀さを、転校先で存分に発揮していただければ幸いです」
しほ「彼女たちの能力は大洗の環境だからこそ最大限に発揮できるものです。他校の戦車道の下では活きるとは思えません」
辻「各校の戦車道、ですか。そんなものの存在自体が非合理的です。戦車道は勝利がすべて。西住流でもそう教えているのではないですか?」
しほ「西住流は勝利をすべてとする流派、それが文部科学省の考えだと?」
辻「違うのですか?」
273 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/02(水) 21:09:31.26 ID:rISphW2T0
しほ「全くもって違います。『何があっても前へ進む。強きこと、勝つことを尊ぶ』。それは勝利を尊い目標として、それに向かって突き進む教え。勝利はあくまでひたむきに全力を尽くした結果でしかない。実力の不足による失敗は仕方がない、でもそのひたむきさが足りないことは許されない。それが西住流です」
辻「勝利なくしては何も得られない。それは大洗の現状が証明しているではありませんか」
杏「確かに私たちは黒森峰に敗北しました。だけど、負けたら何も得られないというのは違うと思います。……実際、こうして家元や戦った高校は大洗のために協力してくれます。何も得られなかったなんてことはありません」
辻「詭弁です。そのような姿勢では世界で勝利できる、国の威信を示せるチームは育成できない」
しほ「戦車道はあくまで婦女子の人格形成のための競技。国の威信などを云々言うようなものではありません。これだけ隔たりがあったのでは、プロリーグの設営委員会の委員長を務めるのも難しいでしょうね」
274 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/02(水) 21:10:29.32 ID:rISphW2T0
辻「脅迫する気ですか?今年度中にプロリーグを設営しないと大会の誘致が出来なくなるのはご存知でしょう?」
しほ「しかし、これだけの結果を出したチームを廃校にするのは文科省が掲げるスポーツ振興にも反します」
辻「それは、戦車道連盟の総意と考えてよろしいのですか?」
しほ「ご自由に、どうぞ」
辻「……大洗は優勝できなかった。その大洗のためにそこまでの肩入れをして世界大会の誘致を台無しにすることが連盟全ての賛同を得られるとは思いません。そうであれば、違う方の推薦をお願いするだけです」
しほ「……そうですか。この議論を続けても平行線のようですね」
辻「可能な限り善処したんです……ご理解ください。各生徒には、通知後早急に転校先へと向かってもらうことになります」
275 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/02(水) 21:11:23.99 ID:rISphW2T0
杏「待ってください。まだ廃校の話を進めるのは早すぎます!みんなだってまだ廃校の現実を受け止めきれていません」
辻「それはそちらの事情です。こちらは説明をしておくように、と伝えました。納得させるのは君の仕事で、我々は廃校に向けて行程を進めますよ」
杏「……いいえ。そうはいきません。これを見てください!」
辻「これは?」
杏「皆が集めた署名と、大洗女子学園の経営改善案です」
辻「こんなものを今さら提出されても、決定は覆りませんよ」
杏「確かにこれだけでは覆らないでしょう。ですので、これを正式な陳情として提出させていただきます。これだけの数の有権者の署名と、具体的な改善案。まさかないがしろにはできないですよね?」
276 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/02(水) 21:12:30.33 ID:rISphW2T0
辻「……こんな、急場しのぎのでっちあげを……」
杏「でっち上げかどうかは内容を見て判断してください。これは正式な陳情なんですから、内容を精査したうえでの正式な回答をお願いします。それまでは、廃校のプロセスを進めることはできないはずです」
辻「……わかりました。内容を吟味して、正式な回答を約束します」
杏「回答は二週間後、これでどうですか?」
辻「二週間、それでは長すぎる。こちらにも計画があるんですよ」
杏「それは、そちらの都合では?」
辻「一週間。この程度、それだけあれば十分です」
杏「……わかりました。前向きな回答を期待して待ちます」
辻「一週間後に回答を用意させていただきます。……とりあえず、今日のところはお引き取りいただけますでしょうか」
277 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/02(水) 21:13:39.31 ID:rISphW2T0
〜〜〜〜
杏「なんとか首の皮一枚つながったってところかな。それじゃ、説明してもらえるかな。『文科省の目論見』ってやつをさ」
アッサム「順を追って説明しますわ。まず、文科省の進めようとしている『戦車道の振興』。この方針について二つの対立する意見がありました」
しほ「戦車道チームを有する各校への支援を通じ、競技の裾野を広げるという意見と、国の統制下に最強の一チームを作り、国際試合で勝利することを最優先とする意見ね」
杏「そんなのがあったんですね……でも、勝ったのは前者じゃないんですか?」
しほ「そうよ。戦車道連盟の反対もあって、各校への支援を中心とした振興策が取られたのはあなたも知っての通り」
278 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/02(水) 21:15:20.93 ID:rISphW2T0
アッサム「ええ。ですが、今回の全国大会の結果でまた風向きが変わってしまいました。各校に支援を与えたにもかかわらず上位は今まで通り強豪校が独占、唯一勝ち進んだ大洗も決勝で敗北、優勝は結局黒森峰のもの。経営不振の学校の中には戦車道に対する補助金を運営費に回すところも少なくなかった。『分散した支援は無駄ではないか?』という意見が強まったのです」
杏「……耳の痛い言葉だね。うちが優勝できなかったことがそんな事態を起こしてたなんて」
しほ「だから、大洗を廃校にしようというわけね」
アッサム「大洗を廃校にすれば莫大な財源が生まれます。その資金と各校へ与えていた補助金を元手に最高の戦車を有し、戦車道に特化した、そして国の完全な統制下にある新設校を陸上に設立する。これが文科省の目論見と、我々は考えています」
杏「待ってよ、戦車はそれで揃えられるとしても、メンバーはどうするのさ?」
279 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/02(水) 21:16:43.84 ID:rISphW2T0
しほ「引き抜き……かしら」
アッサム「その通りです。支援なくしてはチームの維持どころか経営すら危うい高校は数多い。そうした学校から優秀なメンバーを転校させるのです。……運営に必要な最低限の援助金と引き換えに」
杏「それじゃ、引き抜かれた高校は……」
しほ「チームの維持は不可能でしょうね。だけど、それまでバラバラの思想で戦車道をしていたメンバーを集めたところでチームとして機能するとは思えないわ」
アッサム「ええ。ある程度規格の近い西側の戦車に絞った運用と、統一した戦術思想を浸透させることで補おうとしていたようですが、時間短縮のためのもっと手早い方法を考えついたようです」
280 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/02(水) 21:17:56.24 ID:rISphW2T0
しほ「向こうにも時間的な余裕は少ない……それが大洗の廃校繰り上げの理由」
アッサム「あらかじめ核が存在すれば、一つのチームとして機能するまでの時間は短縮できる。……つまり、文科省は」
杏「『廃校』ってのは建前。狙いは経営陣の総入れ替えと、戦車道チームの新設校への取り込み、か」
アッサム「その通りです。当然、経費の無駄になるその他の生徒はお払い箱でしょうね」
杏「そんなの、素直に従うもんか」
アッサム「サボタージュに対しては全体への厳罰を持って臨む。そうされたときに、あなたはそれでも逆らえるかしら?」
杏「それは……」
281 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/02(水) 21:18:26.51 ID:rISphW2T0
しほ「そして新設されたチームの圧倒的な強さを見せつけ、更なる工作を続けることで各校の戦車道チームを維持できなくしていく。文科省の統制下に入らなくては戦車道を続けられない状況を作る」
杏「それが文科省の目論む、高校戦車道体制の破壊……」
しほ「そのようなこと、断じて許すわけにはいかないわ」
アッサム「我々も同じ思いです。……手は、すでに用意してあります。稼いでくれた時間があれば、この策が間に合います」
282 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/02(水) 21:19:14.58 ID:rISphW2T0
〜〜〜〜
辻「まったく、こんなものまで用意してくるとは……」
『少しはご機嫌をとっておいたほうが良いのではありませんか?彼女を抱き込んでおけば、戦車道チームの引き入れもスムーズに進むのでは?』
辻「そんな必要はありません。こういうのは最初に思い切りわからせることが重要なんです。こっちが圧倒的に上位にある、と。そうしてから手を差し伸べてやれば、彼女も理解するでしょう。我々に従うしかないということを」
『あらあら。文科省のやることはずいぶんと高圧的なんですね。でも、一辺倒では足をすくわれることもあるかもしれませんよ?やはり何事も、変幻自在でなくては』
辻「なるほど。心に留めておきましょう……なにせ、これから日本の戦車道を牽引していくことになる島田流の教えですから」
千代『文科省にもご理解をいただき、感謝の念に堪えません』
辻「一週間後の話し合い……向こうは西住流の家元を引っ張り出してきました。専門的な話になればいささか分が悪い。ご同席、お願いできますか」
千代『……学園艦教育局長のたっての頼みともあれば、断るわけにもいきませんね』
辻「ええ。お願いします」
283 :
◆8DlJds//22
[sage]:2016/11/02(水) 21:20:29.20 ID:rISphW2T0
本日は以上です。
更新が遅くてすみません……
あんこう祭りまでにはなんとか終わらせたいです……
284 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/02(水) 22:11:37.62 ID:8if/XhHv0
乙
285 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/02(水) 22:22:44.61 ID:5TWhLe/Ko
乙
島田さんが唐突に悪役にされると
面白く無いと感じる人も出てくるのが懸念です。
286 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/02(水) 23:11:17.80 ID:FNp8xKaTO
まあ文科省が間違いってのも強豪校側からの見方だし
ルクレールさんとか引き抜かれた方が幸せかも
287 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/02(水) 23:52:39.26 ID:AyIJEL0TO
乙です。
文科省が感じる不満も一理あるな…。
支援しても強豪が勝てないならば、チーム再編の大鉈を振るうしかないからな。
>>286
「ルクレール」だと史実のフランス自由軍の戦車乗りになりまっせ。
マジノ女学院の隊長は「エクレール」ですね。
288 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/02(水) 23:59:37.08 ID:Rk/Tk1sUO
ガルパン的には戦車喫茶だな>ルクレール
289 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/03(木) 00:20:36.67 ID:pzEStUrA0
>>287
「強豪しか勝てない」の間違い?
290 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/03(木) 02:49:41.35 ID:teQqkK/ko
乙です
291 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/03(木) 17:50:38.65 ID:w/gCRuVvO
>>289
強豪しか勝てないの間違いですね。
292 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/04(金) 10:35:25.29 ID:kYm/XttQ0
乙です。
文科省の言い分にも納得できるような理由付けがされてるSSは珍しいね
293 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/04(金) 22:37:54.70 ID:jSEHh19SO
よし、みほの出番だな
294 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/04(金) 23:47:35.23 ID:TJtPcdszO
>>293
いやみほが出てもどうにもならんでしょ
295 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/06(日) 00:08:05.91 ID:zRUwJCeY0
〜〜〜〜
――一週間後――
ダージリン「準備はいいかしら?」
まほ「問題ない」
蝶野「二人とも、グッジョブ!大舞台なんだから胸を張りなさい!」
ダージリン「それでは、行きましょうか。私たちの戦車道を守る戦いにね」
296 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/06(日) 00:09:14.41 ID:zRUwJCeY0
〜〜〜〜
――学園艦教育局――
辻「それでは、そちらより陳情のあった大洗女子学園の廃校撤回についての正式な回答を伝えさせていただきます」
杏「……お願いします」
辻「戦車道の専門的な話になる可能性が高いと考えられましたので、大学戦車道連盟で理事を務められております島田流家元、島田千代さんにアドバイザーとして同席いただきますが、よろしいですね?」
しほ「……ええ」
千代「お久しぶりですね。家元襲名、おめでとうございます」
しほ「ありがとうございます。それで、回答をいただけるでしょうか?」
辻「まあもうお分かりかと思いますが、陳情を容れるわけにはいきません。大洗女子学園は廃校です」
297 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/06(日) 00:11:01.48 ID:zRUwJCeY0
杏「理由を、聞かせてください」
辻「頂いた再建案を読ませていただきましたが、どうも数字が客観的でない。大洗女子学園にとって最大限に楽観的に見積もった数字でしかない、そう見受けられました」
杏「資料請求、学校見学の申し込み、どれも前年度に比べて圧倒的に増加していますから、それに伴って入学申し込みも増える見込みです。それは客観的な数字とは言えないんでしょうか」
辻「なるほど、大いに結構なことでしょう。……ただ、それも大会で結果を出した今年度限りとなる可能性が非常に高いわけです。この再建案は大洗が『戦車道の名門』として来年度以降も勝ち続けることが前提となっているように思えます」
しほ「大洗は曲がりなりにもプラウダやサンダースを破って決勝まで進んでいます。決して不可能なことだとは思えませんが」
辻「しかし、あれらはまぐれで勝利したようなものでは」
しほ「戦車道にまぐれなし、あるのは実力のみ!」
辻「…………っ!」
298 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/06(日) 00:12:20.12 ID:zRUwJCeY0
千代「あらあら。西住流の家元はお怖いですね。『戦車道にまぐれなし』。確かにそうかもしれません。ですが、『勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし』とも言うではありませんか。負けた側に油断や慢心など、より多くの理由があっての勝利だとも言えるのではないですか?」
しほ「大洗の戦車道はかなりのレベルに達しています。実際に、決勝戦では黒森峰と対等に戦ってみせました」
千代「なるほど、個々の乗員のレベルは他校に比べて遜色ないと言えるでしょう。しかしだからこそ、より優れた環境で戦車道を学ぶほうが当人たちのためと言えるのではないでしょうか」
杏「……そのために、皆を、今ある居場所を捨てろって言うんですか?」
辻「何のことでしょうか?」
杏「文科省が新設する予定だという、新しい高校の話です」
辻「さあ、何を言っているのか」
杏「ボンプル、マジノ経営陣との交渉、パーシングやセンチュリオンの買い付け計画、旧演習場の再開発……これでもまだしらを切りますか?」
299 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/06(日) 00:13:16.13 ID:zRUwJCeY0
辻「誤解ですよ、それらはあくまでプロリーグのための……」
千代「そう。そこまで調べていたのね。やるじゃない」
辻「家元!」
千代「いいではありませんか。どうやったのかは知りませんが、ここまで具体的に調べてきているのです。今更知らないふりをする意味はありません」
しほ「……やはり、本当だったと。島田流はそのような企みに手を貸してまで西住流を追い落としたいということでしょうか」
千代「西住流を追い落とすために企みに手を貸す?あなたは誤解なされているようですね、西住家元。私は純粋に戦車道の未来を考えてこの計画に参加しているのです」
しほ「他のチームを完全に駆逐して、国の統制下に競技を置くことで得られる未来?そんなものはありはしないわ」
300 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/06(日) 00:14:17.57 ID:zRUwJCeY0
千代「いいえ。そもそも今の高校戦車道はあまりにも非合理的です。『伝統』の名のもとの硬直した戦術への執着、チーム編成に入るOG会の横槍、目を覆うほどの予算不足。優秀な指揮官や乗員がそんな中にいるのは、大きな損失ではありませんか?」
杏「だから、そこから引き抜いて救済すると?」
千代「その通りよ。優れた選手に優れた環境、優れた教育を与えて、その素質を最大限に伸ばし選手として大成させてあげること。これこそが戦車道を教えるものとしての使命。そう考えるからこそ島田流はこの計画に参加しているのです」
しほ「あなたの言うことは一面では正しいのかもしれません。ですが、そこで選ばれなかった人間はどうなるのです」
千代「……実力のない人間は、どうせどこかの段階で戦車道から離れることになる。だったら、早いうちに引導を渡してあげるのも優しさではないでしょうか?」
しほ「戦車道はあくまで礼節のある、凛々しい婦女子を育成するための武芸。競技の裾野を広げ、より多くの少女たちが戦車道を学べるようにすること。それが戦車道を教えるものとしての使命です」
301 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/06(日) 00:15:35.43 ID:zRUwJCeY0
千代「その結果が高校戦車道の現状ですか?国の強権でチームを統制すれば、無用なしがらみから優秀な選手を解放できます。島田流の教えなら、彼女たちをより優れた選手に育成できます」
しほ「そのために多数を切り捨てるという考えには賛同できません。それだけではありません。競争なくして強いチームの育成など不可能です」
千代「二位争いを『競争』と言えるのですか?」
しほ「少なくとも、黒森峰はどのような相手の挑戦に対しても堂々と応じます。小細工を用いて相手の戦車道そのものを破壊するような行いはしていません」
千代「あなたと話していてもらちが明かないようですね。……そちらの生徒会長さんと直接交渉をさせてもらってもよろしいかしら?」
しほ「……どうぞ」
302 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/06(日) 00:16:33.29 ID:zRUwJCeY0
千代「ねえ、会長さん。私はあなたの有能さを高く評価しています。私たちは争うことなく、互いにもっと有益な関係を築けると思うのだけれど」
杏「……と、いうと?」
千代「残念だけど、廃校そのものを取り消すことはできないわ。でも今いる生徒のうち、そうね……半数を新設校で引き取ります。戦車道関連の生徒以外の新規募集はしないけれど、引き取った生徒には卒業までの在籍を許すわ。その代わり、あなたは戦車道チームを取りまとめて私たちに協力する。どうかしら?」
辻「島田家元、何を……」
千代「もちろん、この提案にかかる費用は島田流で責任を持ちます。私は彼女たちを救いたいのです。彼女たちには素質があって、島田流を学べばもっと強くなれる。無理やり協力させるよりも、自分の意志でこちらに付いてくれるのならばそれが最善です。……さあ、どうかしら?半数だけでも居場所を守れる。悪い話ではないでしょう?」
しほ「…………」
303 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/06(日) 00:17:32.29 ID:zRUwJCeY0
杏「お断りします。半分だけじゃ意味がない。みんなの居場所を、みんなで守るって決めたんです。そのためにここまで来たんです。……それに、あなたの言うことは間違っていると思います」
千代「間違っている?なぜそう思うのかしら?」
杏「確かに、どこもそれぞれの問題を抱えてると思います。でも、アンツィオも、聖グロリアーナも、知波単も、皆自分たちの戦車道に誇りを持ってるんです。自分たちの戦車道で強くなりたいんです。勝ちたいんです。だから、それぞれの戦車道を壊すようなやり方に協力するわけにはいきません」
千代「あなた一人でそれを決めてしまうのは、横暴ではなくって?」
杏「いいんです。横暴は、生徒会に許された特権ですから」
304 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/06(日) 00:18:20.85 ID:zRUwJCeY0
辻「お話は以上でよろしいですね?では、大洗はやはり廃校ということに……」
〜〜♪♪♪
辻「何です?」
杏「ああ、すいません。マナーモードにするのを忘れちゃってました。メールの内容、確認してもいいですか?」
辻「……好きにしたまえ」
杏「では、失礼します……そうそう。失礼ついでに、テレビを見させてもらってもいいですか?」
辻「テレビだと?君はこの場をなんだと思っているんだ」
杏「廃校にするんですよね?せめてそれくらいの無理は聞いてくれてもいいじゃないですか。それに、お二人にも関係のある番組ですよ?」
千代「私たちに?……ええ、いいでしょう。見せてもらえるかしら」
305 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/06(日) 00:19:36.51 ID:zRUwJCeY0
〜〜〜〜
蝶野「皆さん、本日は突然の発表にもかかわらず会見の場にお越しいただき、ありがとうございます」
記者「蝶野一尉!戦車道連盟よりの発表とは一体何なのでしょうか?」
蝶野「はい。プロリーグ創設や世界選手権の開催、そして国際的な戦車道活性化の波に乗り遅れないためにも、高校戦車道連盟はここに、高校選抜チームの結成を発表いたします」
記者「『高校選抜チーム』……チーム編成はどのようになるのですか?」
蝶野「大隊長に黒森峰・西住まほ選手、その下に副隊長としてプラウダ・カチューシャ選手、聖グロリアーナ・ダージリン選手、大洗・河嶋桃選手など、今年度の全国大会の結果を参考に編成を行っています」
306 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/06(日) 00:21:43.53 ID:zRUwJCeY0
記者「なるほど……では、大隊長である西住選手に質問したいと思います。この編成では、強豪校への優遇になっているのではありませんか?」
まほ「確かに、現在の編成では強豪校優遇と取られても仕方ありません。ですが我々高校選抜チームは、全国大会で思うような成績を残せなかった選手や強襲戦車競技で優れた能力を見せた選手などにも、常に門戸を開き続けます」
記者「最後に一つ。大隊長として、どのようなチームにしたいとお考えですか?」
まほ「あきらめない。どんな状況でも逃げ出さない。……そして、私たちを支える各々の戦車道を互いに尊重しあう。そういうチームにしていきたいと思います」
ダージリン「我々は呼びかけに答えてくれた学校に対してのチームの共同維持、合同訓練などを通して高校戦車道全体のレベルの向上にも貢献していきたいと考えています。また、国際試合もすでにいくつか計画中です。大学選抜にも勝るとも劣らない、素晴らしいチームの活躍をお見せできるかと思います」
307 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/06(日) 00:22:44.38 ID:zRUwJCeY0
〜〜〜〜
辻「……なんですか、これは」
杏「高校選抜チームの結成会見みたいですね」
辻「バカな。文科省は許可していない。高校戦車道連盟の独断専行だ」
しほ「高校戦車道のことは我々の管轄事項です。どこに問題があるのでしょうか?」
辻「認められません、こんなもの」
しほ「なぜです?」
辻「……くっ」
杏(『各々の戦車道の尊重』なんて掲げるチームが国を代表するものとして認知されれば文科省の進める計画には大きな邪魔になる。国際試合でこっちが結果を出せば、方針そのものの誤りを突き付けられることになる。そりゃ認められるはずがないよね)
308 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/06(日) 00:56:46.06 ID:zRUwJCeY0
しほ「それでは、失礼させてもらってもよろしいですか?高校選抜の発足に伴って、こちらも暇ではなくなってしまったので」
辻「ま、待ってください!このような……」
千代「くすくす……そう。これがそちらの策だったのですね」
しほ「さあ?我々はあくまで高校戦車道の益々の発展のため、最善と考えた行いをしているだけに過ぎませんが」
辻「高校戦車道の発展!?馬鹿な!こんなものは強豪校の横暴だ!」
しほ「これは高校戦車道連盟に認められた権限内での行動だと考えています。そちらはあくまで認める気はないと?」
辻「いえ、そういうわけでは……」
309 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/06(日) 00:57:46.14 ID:zRUwJCeY0
千代「正直に言えばいいではありませんか。……西住流家元は、こちらから試合を申し込んで欲しいのでしょう?」
しほ「…………」
千代「こうまで大々的に発表されてしまっては、解散させるにも首脳陣を入れ替えるのにも、世論を納得させる何らかの理由が必要になる……例えば、先ほど勝るとも劣らないと言ってのけた大学選抜に惨敗する、とか」
杏(さっすが、鋭い)
千代「大洗を廃校にして財源を確保した後に工作を行って立ち行かなくすることは可能でしょう。ですが、文科省にも時間はない。早急に高校選抜への対処を行わなくてはならないけれど、現状ではそれほどの予算はない」
しほ「そちらの事情は存じ上げません」
310 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/06(日) 01:03:36.39 ID:zRUwJCeY0
辻「寄せ集めの高校選抜チームとやらで、大学選抜に勝てると考えていると?」
しほ「それは、やってみなくてはわからないでしょう」
千代「いいでしょう。大学選抜は高校選抜チームに対し試合を申し込みます」
しほ「そう言われましても、高校選抜は設立したばかりでとてもそのような日程の余裕はありません」
千代「くすくす……なんて白々しい。さあ、どうします?文部科学省、学園艦教育局長さん。ここが腹の括りどころですよ」
辻「……わかりました。高校選抜が勝利すれば、大洗女子学園の廃校は撤回しましょう!それで、受けていただけるのですね?」
311 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/06(日) 01:36:21.53 ID:zRUwJCeY0
〜〜〜〜
――戦車道チーム・一時転校先――
沙織「みんな!会長から連絡がきたよ!……交渉、うまくいったって!」
左衛門佐「まことにござるか!?」
典子「その戦いに勝てれば、今度こそ廃校を阻止できるんだね!」
沙織「うん!……どうしたの?ゆかりん?」
優花里「大学選抜チーム……チームの隊長は島田流の後継者、島田愛裡寿殿です。乗員も精鋭揃い、戦車も強いものばかり。いくら皆さんと共に戦えるとはいえ、本当に勝てるのでしょうか」
312 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/06(日) 01:40:47.99 ID:zRUwJCeY0
華「……ねえ、優花里さん。一ついいですか?」
優花里「五十鈴殿?なんでありますか?」
華「優花里さんは、温室で育てられた一種類の花の花束と、野に咲く花々を集めた花束と、どちらが美しいと思いますか?」
優花里「それは……物によるのではないでしょうか。どちらもそれぞれの良さがあると思いますが……」
華「それと一緒ではないでしょうか。相手は強いのかもしれません。もしかすると、今まで戦った相手のどこよりも。ですがきっと、私たちにも勝っているところはあるはずです」
313 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/06(日) 01:41:21.91 ID:zRUwJCeY0
桃「五十鈴の言うとおりだ!私たちが戦ってきた皆の戦車道!そして、その中で見つけた我々の戦車道!それをぶつければ、大学選抜チームなど恐れるに足りん!またこの戦いに勝つことこそ今後の学園艦、ひいては文部科学省の強権的支配に対する我々の独立を維持するための……」
エルヴィン「長いぞ。桃ちゃん先輩」
優季「副隊長になれたからって、舞い上がっちゃってるんですかー?」
桃「う、うるさい!とにかく、次の試合が最後のチャンスなんだ!絶対に勝って、廃校を阻止するぞ!いいな!」
ナカジマ「もっちろん!」
梓「黒森峰には勝てなかったけど……今度こそ勝ちましょう!」
麻子「単位帳消しは困るからな……」
沙織「皆、頑張ろうね!」
「おー!」
314 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/06(日) 01:49:49.68 ID:P2tev5c9O
乙。
いよいよ高校+連盟と大学+文科省の意地と意地の力比べ開催か。
315 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/06(日) 01:51:17.80 ID:zRUwJCeY0
今回はここまで!
最終戦まで長くなってすみません。
あと少しイベント挟んだら大学選抜戦のつもりです
316 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/06(日) 03:52:11.38 ID:E2/YjgR3o
ついに最終決戦か
乙です
317 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/11/06(日) 08:48:38.65 ID:OcfXB+3kO
両者の言い分は納得出来る部分は多いけど、
素人目に見て、強力な戦車を揃え相手を蹂躙する戦術を得意とする、黒森峰と関係が深い西住さんが
正論ぶっても何言ってんの感が残る。
仕方がない事なんだけど
318 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/11/06(日) 14:39:46.71 ID:n1CKMxU50
その結果が避けない当たらない連携しない考えないの決勝戦なんだから
むしろ才能と青春の墓場まである
319 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/06(日) 15:23:02.07 ID:grBLWbazo
やっぱり恐い副隊長に代わったから実力をだしきれなかったんじゃね?しらんけど
320 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/06(日) 17:08:40.27 ID:tS7IOEeeO
・強い戦車で弱小を容赦なく踏み潰す
・生真面目に上からの命令に従う
・競争慣れしている
黒森峰は商社やメガバンク向けの人格形成の場としてはあながち間違ってはいないと思う
321 :
◆8DlJds//22
[sage]:2016/11/07(月) 02:22:18.99 ID:LkQdQc/60
黒森峰のやり方を擁護すると、恐らく「全国大会でティーガーに乗れる」ってのが受験生向けの黒森峰の大きな魅力なんだと思います
少子化の時代、どこも生き残りに必死なんですたぶん
ましてや大学までエスカレーター式のサンダース、お嬢様学校の聖グロ、農業高校っぽいプラウダと違って戦車道以外にあんま見るところが無さそうな黒森峰は勝たないと学校経営が危ないんですきっと
無意味に長いアウトバーンの整備にお金かかりそうだし
322 :
◆8DlJds//22
[sage]:2016/11/07(月) 02:33:44.32 ID:LkQdQc/60
サンダース→日大付属
聖グロ→聖心
プラウダ→農業高校
黒森峰→PL学園
あくまで
>>1
の独断と偏見ですが
知波単は学習院かな
323 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/07(月) 04:13:15.27 ID:Gx0qiq5+o
乙です
324 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/07(月) 04:48:56.83 ID:tzenG3XOo
メッチャ費用かかりそうだから当然だけど戦車道って各校の経済状況に左右され過ぎよね
その中でやりくりするのも戦車道の内なのかもしれんが
325 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/07(月) 10:04:56.85 ID:ULSQtPEko
乙でした
まぁ文科省側が何を言おうが魔改造カール持ち出したら大義無しだからなぁ……
326 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/07(月) 10:07:49.93 ID:gH+Nm9SSO
>>322
アンツィオ…
327 :
◆8DlJds//22
[sage]:2016/11/07(月) 10:17:17.26 ID:y2M6I5E3O
下手すると黒森峰は
生徒を集めなくてはならない→試合に勝たなくてはならない→強いドイツの戦車や特待生で優秀な選手を集める→維持にお金がかかる→もっと生徒を集めなくてはならない
のループになってるのでは
いつの間にか手段と目的が逆転してたパターン
328 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/07(月) 11:36:00.63 ID:amF8BGf3O
それってもはや自転車操業状態のブラック企業じゃ…
329 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/11/07(月) 13:17:56.72 ID:yacoCHM6O
黒森峰に通う生徒が全員機甲科って訳じゃないから、
いくらなんでも
330 :
◆8DlJds//22
[sage]:2016/11/07(月) 13:21:29.00 ID:y2M6I5E3O
これを国家規模でやった国が黒森峰の元ネタなんで…
アンツィオは…遠月学園?
「屋台」に小物や大道芸まで含まれているとすれば個人事業者の育成場所としては最高なのでは
331 :
◆8DlJds//22
[sage]:2016/11/07(月) 13:29:38.86 ID:y2M6I5E3O
これを国家規模でやった国が黒森峰の元ネタなんで…
野球に力を入れて入学者を増やそうとする高校と似たようなもんですたぶん
アンツィオは…遠月学園?
「屋台」に小物や大道芸まで含まれているとすれば、個人事業者の育成場所としては最高なのでは
332 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/07(月) 14:47:17.98 ID:7cOXoYpt0
乙乙
大洗は済美か?
333 :
◆8DlJds//22
[sage]:2016/11/08(火) 11:30:17.77 ID:36D/JVGAO
>>332
みほ「ウサギさんチームのお昼ご飯はカメムシです!」
華「飲み物は灯油ですね」
おりょう「澤、ちょっと逆刃刀で殴らせるぜよ」
こうですかわかりません
展開出ない…
334 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/09(水) 23:47:07.98 ID:TD+iJdvg0
〜〜〜〜
ドオン……シュパッ!
愛里寿「状況終了。……始まってる。よかった、録画しておいて」
メグミ「隊長?何かお約束でも?」
愛里寿「気にする必要はない」
アズミ「先ほど、家元からお電話があったそうです。……それと、こちらの二人が隊長に挨拶をしたいと」
まほ「失礼する」
ダージリン「大学選抜の皆さん、お目にかかれて光栄ですわ」
335 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/09(水) 23:48:02.30 ID:TD+iJdvg0
ルミ「ねえ、あれって……」
メグミ「ええ。高校選抜チームの隊長。そして西住流の後継者……西住まほと、聖グロリアーナの隊長ダージリン」
ルミ「へー。『大学選抜に勝るとも劣らない』なんて宣言しておいて、たった二人で乗り込んでくるなんていい度胸ね」
まほ「高校選抜の隊長を拝命した、西住まほです」スッ
愛里寿「大学選抜隊長、島田愛里寿」ギュッ
まほ「……!社会人チームを一蹴とは、驚きました」
336 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/09(水) 23:49:48.32 ID:TD+iJdvg0
愛里寿「褒められるほどのことじゃない。敵の弱いところを見極めて適切な戦力配置をして、適切なタイミングで攻撃を行っただけ」
まほ「変幻自在の忍者戦法、ですか」
愛里寿「話はそれだけ?」
まほ「ええ。ありがとうございました。いい勉強になりました」
337 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/09(水) 23:50:27.18 ID:TD+iJdvg0
〜〜〜〜
ダージリン「まるでお人形のような隊長さんだったわね」
まほ「あんな人形などいない。いるわけがない」
ダージリン「何か気になることでも?」
まほ「握った彼女の手だ。私の手よりも固かった」
ダージリン「あなたよりも?……それは、認識を改める必要があるかしら」
まほ「ああ。私よりも長い時間操縦席でレバーを操作し、私よりも多くの砲弾を装填し……そして恐らく、私よりも指揮の経験を積んできているのだろう。私より幼いにも関わらずな」
338 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/09(水) 23:51:28.42 ID:TD+iJdvg0
ダージリン「とんだロレーヌ女公というわけね……西住流対島田流になるこの試合、西住流後継者さんの勝算のほどは?」
まほ「……たった一試合見ただけだが、わかる。あれは完璧で完全なチームだ」
ダージリン「ずいぶん弱気ですこと」
まほ「完璧で完全だ。だが、けして無敵じゃない、勝ち筋はある。私たちの持ち味を活かした戦いができれば」
ダージリン「そう。大隊長がそう言うのだったら、きっとそうなんでしょうね」
まほ「私は負けない。まだ、強い姉でいなくてはならないからな。それよりもダージリン、頼んでいた件だが」
ダージリン「なんとかなったわ。参加各校との調整、滞りなく完了よ……一校だけ連絡が取れなかったけれど、伝わっていると信じたいわね」
まほ「そうか。感謝する」
339 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/09(水) 23:52:33.72 ID:TD+iJdvg0
ダージリン「会場は大洗。学園艦を奪われた以上、彼女たちが戦車を輸送するのは困難だもの」
まほ「ああ……公開合同訓練。急造チームで大学選抜に勝つのはほぼ不可能だ。ここでなんとか、チームとして動けるようにしなくてはならない」
ダージリン「それに加え、独自の財源確保ね。文科省からの補助金には期待できないものと考えなくてはならないから」
まほ「大規模戦の演習も兼ねたエキシビションマッチ、だな」
ダージリン「三十両どうしの大規模戦の経験があるのなんて、私たちの中ではカチューシャとケイぐらいだもの。二兎を追う者は一兎をも得ずとは言うけれど」
まほ「一石二鳥を狙わなくてはならない時もある。そういうことだろう」
340 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/09(水) 23:53:10.36 ID:TD+iJdvg0
〜〜〜〜
千代「ええ。徹底的に叩き潰しなさい。西住流の名が地に落ちるようにね」
辻「失礼いたします……おっと、電話中でしたか」
千代「お気になさらず。……そう。いいわ。徹底的にやりなさい」
辻「娘さんですか。島田愛里寿嬢、彼女こそ文科省の考える、理想的な戦車道選手です」
千代「お褒めに預かり光栄ね……愛里寿には必要なもの全てを与えてきた。無能な選手と一緒に戦車道をするあの子なんて、想像したくもない」
辻「その通り。有能な選手にはふさわしい場所というものがあります」
341 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/09(水) 23:53:50.43 ID:TD+iJdvg0
千代「それで?わざわざここまで来たということは、高校選抜との試合、詳細が決まったのかしら?」
辻「はい。形式は互いに30両を用いたフラッグ戦に」
千代「プロリーグを想定して殲滅戦にするという話ではなかったかしら?」
辻「残念ながら、向こうの無理を聞いた形となりました」
千代「フラッグ車は愛里寿のセンチュリオンでいいわね?」
辻「それには及びません。フラッグ車はこちらで用意させていただきます」
千代「愛里寿が信じられないというの?」
辻「そうではありません。この戦いで我々の威信を見せつけるのです。未だ日和見を続ける学校、そして文科省内の各校支援派に圧倒的な力を示す。うまくすれば、計画がさらに早まるでしょう」
千代「それで敗れれば、あなたはこれまで築いたもの全てを失いますよ?」
辻「ありえませんよ。先ほど申し上げたでしょう?向こうの無理を聞いたと。向こうの無理を聞いたのだから、こちらの無理を通すことが可能になったのです。……それに、他にも手は打っていますから」
342 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/09(水) 23:55:35.09 ID:TD+iJdvg0
短くてすみません、本日は以上です。
合同訓練編→大学選抜戦です。
343 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/10(木) 00:50:08.17 ID:Hj3aBFf8o
乙ー
344 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/10(木) 00:55:20.85 ID:R+OQF8IoO
この辻には計り知れない策謀力が有るな。
なお()
345 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/10(木) 01:34:59.46 ID:DjSQzSLWo
乙ー
これはアカン事をしましたね……
346 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/10(木) 02:10:11.51 ID:1CLaxsTjo
乙〜
許されざることをしたならこいつは眼鏡をわらねばなるまい
347 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/10(木) 06:24:29.75 ID:18Eid2O/O
いや、いっその事エロ同人みたく乱暴されるか、ロッカーに顔面ぶち当てられるかのどっちかでしょ
348 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/10(木) 08:58:26.42 ID:fYKmopHSO
千代さんから他者を無能と貶める台詞がでるのが、
いと悲し
349 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage ]:2016/11/12(土) 04:57:40.52 ID:y9NwIxP10
千代さん高校戦車道についてボロクソに言っていたように
そこで育った連中も酷いもんだと思ってるんだろうね・・・
どっちが先かわからないけどさ
試合中に飲み食いして大騒ぎやる奴とか片手封じる縛りプレイとか
スポーツでも武道でも芸事ですら普通にねーよ、だよなあ
350 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/12(土) 08:52:38.78 ID:r8f1oy4QO
戦車道は大学生や実業団からが本番と言う考えは
ありかも。
351 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/12(土) 12:55:14.67 ID:kc4goLOuo
国「戦車道まとめあげるために強豪校潰していくンゴwwwwwwww」
生徒「は?」
これってこういう事だよな?
352 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:32:00.71 ID:Ar1lmN9T0
〜〜〜〜
――合同訓練初日・大洗――
ワイワイ ガヤガヤ
沙織「うわー、すっごい人だね……」
優花里「結成宣言があれだけ大きく取り上げられましたからね。それに初日のエキシビションは、戦車道ファンなら絶対に見逃せない組み合わせですし」
麻子「客寄せにはちょうどいい組み合わせというわけだ」
華「プラウダ・サンダースの『連合』チームとと黒森峰・アンツィオの『枢軸』チームですか……どちらが勝つのでしょうね?」
優花里「ネットでは連合有利の声が強いです。なんでも、アンツィオ分の9両はハンデとか言われているそうでありますよ」
沙織「えー!ひっどい!」
353 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:32:42.03 ID:Ar1lmN9T0
優花里「とはいえ、アンチョビ殿の率いるアンツィオも一筋縄ではいきません。どちらが勝つかはわからないと言えるでしょう」
沙織「うんうん!きっと活躍してくれるって!あー、でもカチューシャさんとケイさんも強いし……やっぱり最後まで分かりそうにないなぁ……」
華「そうですね。大学選抜との試合も近いのですし、私たちも観戦から何かを学ばなくては……あら?」
沙織「華、どうしたの?」
華「あちらの方から、何かおいしそうな香りがします」
354 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:34:49.76 ID:Ar1lmN9T0
沙織「あっちは……屋台が出てるみたいだね」
優花里「屋台ということは……アンツィオですか?」
沙織「うん。でも今日はアンツィオだけじゃなくってサンダースやプラウダも出店してるんだって」
華「朝から準備で何も食べられていませんし、そこでお昼にしませんか?」
優花里「賛成です!」
麻子「戦車道グッズ目当てだろう」
優花里「うっ……べ、別にいいじゃないですかぁ!」
沙織「じゃ、そうしよっか!」
355 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:35:54.10 ID:Ar1lmN9T0
〜〜〜〜
華「ホットドッグにヴルスト、ピロシキ……どれも美味しそうで、目移りしてしまいますね」
沙織「目移りって、華は全部食べてるじゃん」
華「次に何を食べようか迷ってしまうんです」
沙織「そ、そうなんだ……あ、アンツィオの屋台だ!」
ペパロニ「さあさあお兄さんお姉さん!アンツィオ名物鉄板ナポリタンだよー!美味しくってボリューム満点だよー!」
356 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:37:06.75 ID:Ar1lmN9T0
優花里「ペパロニ殿、お久しぶりであります!」
ペパロニ「おお!大洗のみんなじゃん!どう?鉄板ナポリタン、食べてかない?」
華「それでは、5つ頂けますか?」
ぺパロニ「はいはい、5つね!ちょっと待っててねーっと」
沙織「ちょっと華、私たち4人なんだけど」
華「はい、そうですね」
沙織「ああ、華が2つ食べるんだ……」
357 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:37:59.67 ID:Ar1lmN9T0
ペパロニ「ナポリタンお待ち!はい、1500万リラ!」
麻子「1500円だな。安い」
優花里「相変わらずの美味しさです!」
華「ほんと、何皿でも食べられそうですね」
ペパロニ「だろー?」
沙織「ところで、試合には行かなくて大丈夫なの?」
358 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:38:35.20 ID:Ar1lmN9T0
ペパロニ「試合?だいじょぶだいじょぶ!まだまだ時間もあるしさ!」
アンチョビ「ペ、ペパロニ!やっと見つけたぞ!」
沙織「アンチョビさん」
ペパロニ「姐さん、そんなに焦ってどうしたんすか?」
アンチョビ「どうしたもこうしたもあるかー!お前、試合が近くなったら戻って来いって言ったじゃないか!」
ペパロニ「試合って4時からっすよね?まだあと3時間もあるじゃないっすか」
アンチョビ「バカ!試合は14時からだ!」
359 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:40:16.68 ID:Ar1lmN9T0
ペパロニ「14時ってことは、えーっと……なんだ、1時間もあれば余裕じゃないっすか」
アンチョビ「黒森峰と作戦の打ち合わせをしたり準備したりしなくちゃいけないだろ!ほら、早く行くぞ!」
ペパロニ「ちょ、ちょっと待ってください!これだけの人出で屋台を片しちゃうなんてもったいないっすよ!P40の修理費用だって1日で稼げるかもしれないっすよ!」
アンチョビ「それはもったいないけど……しょうがないだろ」
沙織「あ、あのー、私たち、手伝いましょうか?」
アンチョビ「ホントか!?」
優花里「レシピを教えてもらえれば、恐らくはなんとか……」
アンチョビ「すまん!恩に着る!ペパロニ、ほら!」
ペパロニ「これレシピっす!ソースは用意してあるんで、その通りにやれば大丈夫だから!んじゃ、アリーヴェデルチー!」
360 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:40:57.68 ID:Ar1lmN9T0
沙織「行っちゃったね」
優花里「行っちゃいましたね」
華「で、どうします?」
沙織「やるしかないよ!華は洗い物を、麻子は会計をお願い!愛想よくね!」
麻子「なぜ私たちまで……」
361 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:42:17.89 ID:Ar1lmN9T0
沙織「つべこべ言わない!終わったらきっとジェラートとかティラミスとかいっぱい食べさせてもらえるからさ!」
麻子「むぅ……そういうことなら……」
優花里「レシピの再現は……こんな感じでしょうか?」
「すいませーん、ナポリタン一つ!」
沙織「はい!ただいま!みんな、頑張るよ!」
362 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:43:02.59 ID:Ar1lmN9T0
〜〜〜〜
アンチョビ「すまない!遅れた!」
エリカ「あんた達ねえ……やる気がないなら帰ってもらえるかしら?」
アンチョビ「本当にすまない!私の責任だ、許してくれ!」
エリカ「だいたい、そんな……」
まほ「エリカ、そのくらいにしておけ。すまないな。非礼を詫びさせてもらう」
363 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:43:38.67 ID:Ar1lmN9T0
アンチョビ「いや、元はと言えばこっちが悪いんだ」
まほ「そうか。それでは早速作戦を決めるとしよう」
カルパッチョ「相手はプラウダが20両、サンダースが10両……」
エリカ「A1タイプがメインとはいっても、サンダースのシャーマンじゃ私たちと正面から戦うには力不足。いくら17ポンド砲があるといってもね」
まほ「当然、それは向こうもわかっているだろう。となると、向こうの作戦としてはプラウダがこのゴルフ場で我々と正面からの戦いを挑み、サンダースが側面を衝いてくる……といったところか」
364 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:45:01.44 ID:Ar1lmN9T0
アンチョビ「まあ、そんなところだろうな。私たちはどうすればいいんだ?」
まほ「アンツィオには迂回してくるサンダースを食い止めてもらいたい。正面からの戦闘ならプラウダに負けることはない」
エリカ「隊長、アンツィオの戦力では力不足では?」
ペパロニ「なんだとぉ!」
エリカ「事実を言ったまでよ」
アンチョビ「確かに私たちはCVが6両、セモヴェンテが3両だしなぁ。せめてP40があれば何とかならないこともないんだろうけど」
まほ「こちらから1両援軍を出す。それで何とかしてほしい」
365 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:46:38.62 ID:Ar1lmN9T0
アンチョビ「まあ、そんなところだろうな。私たちはどうすればいいんだ?」
まほ「アンツィオには迂回してくるサンダースを食い止めてもらいたい。正面からの戦闘ならプラウダに負けることはない」
エリカ「隊長、アンツィオの戦力では力不足では?」
ペパロニ「なんだとぉ!」
エリカ「事実を言ったまでよ」
アンチョビ「確かに私たちはCVが6両、セモヴェンテが3両だしなぁ。せめてP40があれば何とかならないこともないんだろうけど」
まほ「こちらから1両援軍を出す。それで何とかしてほしい」
366 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:48:40.29 ID:Ar1lmN9T0
アンチョビ「おお!ティーガーか?エレファントか?それともヤークトティーガーか?確かにそれならなんとか」
まほ「いや、パンターG型だ」
アンチョビ「パンターか……そりゃ強い戦車だけど」
まほ「優秀な車長を付ける。話し合って戦術を練ってほしい。入ってくれ」
みほ「し、失礼します!」
ペパロニ「あれ?あんた、確か……」
アンチョビ「2回戦の時に大洗と一緒にいた……」
みほ「西住みほです!アンツィオの皆さん、よろしくお願いします!」
367 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:49:37.29 ID:Ar1lmN9T0
〜〜〜〜
アンチョビ「いやー、チームに復帰できたんだな!よかったじゃないか!」
みほ「ありがとうございます。それで、作戦なんですけど……」
ペパロニ「まー、今回もいつもみたくノリと勢いでいけばどうにかなるんじゃないっすか?」
カルパッチョ「ペパロニさん、それじゃどうにもならないから黒森峰から援軍が来てるんですよ?」
アンチョビ「まったくだ!何かいい案はあるか?」
368 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:50:42.12 ID:Ar1lmN9T0
みほ「確認ですが、2回戦で使ったあの看板……今日は持ってきてますか?」
ペパロニ「マカロニのことか?そりゃもちろん!」
カルパッチョ「CV用もセモヴェンテ用も、用意してきています」
アンチョビ「マカロニ作戦か?」
みほ「いえ。ただ看板……マカロニをまとめて配置するよりも、有効に使いましょう。サンダースの予想進路ですが、ゴルフ場西の108号線を北上、市街地を通過して回り込んでくると思います」
カルパッチョ「市街戦で足止めするんですか?」
みほ「はい。ですがそれは向こうも予想しているはずです。そこで市街地に入る前……108号線で1回攻撃をかけます」
アンチョビ「正面からサンダースと戦うのか!?」
みほ「あくまで市街戦に持ち込む前の布石です。市街地に入ったら、こちらにも手はありますから、どうかお願いします」
369 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:51:24.01 ID:Ar1lmN9T0
〜〜〜〜
審判「試合開始!」
370 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:53:06.50 ID:Ar1lmN9T0
〜〜〜〜
ケイ「それじゃカチューシャ、こっちは任せたわよ!」
カチューシャ「任せなさい!あんまり遅いようなら、プラウダだけで突破してやるわ!」
ケイ「それじゃ、全速力でいかないとならないわね!」
カチューシャ「稜線の手前で待ち構えなさい!不注意に越えてくる車両がいたら、一斉射撃で撃破してやるのよ!重戦車が突出してきたらいったん後退してからの包囲、分かったわね!」
ニーナ「ちびっこ隊長、ずいぶん燃えてら」
アリーナ「大会じゃ黒森峰とは戦えながったからなぁ」
カチューシャ「この戦いで勝って、本当の優勝校がどこかを知らしめてやるわよ!」
371 :
◆8DlJds//22
[saga]:2016/11/13(日) 21:53:53.20 ID:Ar1lmN9T0
〜〜〜〜
ペパロニ「サンダース部隊、発見!」
みほ「小隊編成はどうなってますか?」
ペパロニ「えっと……3両ひとまとまりの小隊が3つっすね。そんで一番後ろにファイアフライガ1両」
みほ「わかりました。小回りを活かして接近、ある程度挑発したらすぐに後退してください」
ペパロニ「了解!いくぜお前ら、当たるなよ!」
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