【ガルパン】西住みほ「あの……私、戦車道、やめます……」【劇場版】

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1 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:02:09.49 ID:22YIuaV40
【ガルパン】西住みほ「あの……私、戦車道、やめます……」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1473678365/

の続編です。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1476446529
2 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:03:00.73 ID:22YIuaV40
――熊本――

まほ『大洗女子学園の廃校を止めるために、力を貸してください』

みほ(このままだと、大洗が廃校になるなんて……)

杏「……あれ?西住ちゃん?」

みほ「は、はい!あなたは……」

杏「大洗女子学園の生徒会長、角谷杏。アンツィオ戦の時に一度会ってるよね」

みほ「お、お久しぶりです。西住みほです」

杏「確か、うちのあんこうチームのファンなんだよね。妬けちゃうなぁ。武部ちゃんも会いたがってたよ」

みほ「沙織さんが?」

杏「そーそー。『一度、いっしょに戦車に乗ってみたい』ってさ」

みほ「そうなん、ですか……」
3 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:04:44.01 ID:22YIuaV40
杏「……西住ちゃんは、もう戦車道はやんないの?」

みほ「いつか、また始めたいとは思っています。でも今はまだ……」

杏「ま、黒森峰には戻りづらいよね。いっそどっかに転校しちゃえば?」

みほ「それはさすがに……ところで、会長さんはどうして熊本に?」

杏「よくぞ聞いてくれました。西住ちゃんのお母さんに用があって来たんだけどさ、道に迷っちゃって。大きなお家らしいから適当に歩いてれば着くかなー、って思ったんだけど、そう上手くはいかなかったよ」

みほ「お母さんに、用……もしかして、廃校のことですか?」

杏「おっ、耳が早いね」

みほ「やっぱり、本当の話だったんですね」

杏「全国大会で優勝してればチャラになる予定だったんだけどさ、負けちゃったからね。ま、諦めるつもりはさらさらないから、こうしてなんとか力を貸してくれるようお願いしに来たわけ」

みほ「そうだったんですね……私にできることがあれば、ぜひ」

杏「そう?じゃあさ、とりあえずお家まで案内してくれない?熊本、暑くてもうくたくただよ」

みほ「は、はい!」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/14(金) 21:05:31.37 ID:agQQyL5SO
期待
5 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:05:48.44 ID:22YIuaV40
〜〜〜〜

みほ「着きました。ここです」

杏「はえー……何て言うか、すっごいね」

みほ「あはは……古いだけですよ」

菊代「みほお嬢さま。お帰りなさいませ」

みほ「ただいま、菊代さん」

菊代「お嬢さま、そちらの方は?」

みほ「大洗女子学園の生徒会長、角谷さんです。お母さんに用があるって」

菊代「それはそれは。遠いところをよくお越しくださいました」

杏「どうもどうも。いやー、お恥ずかしながら迷っちゃって。みほさんに会わなかったら約束の時間ぎりぎりになるところでしたよ」

菊代「あらあら。それではお会いになれなかったでしょうね。家元は厳しい方ですから」

杏「危ないところだったんですねー。あ、これ大みか饅頭です。皆さんで召し上がってください」

菊代「まぁご丁寧に。ありがとうございます」
6 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:07:17.09 ID:22YIuaV40
まほ「みほ。それと角谷か」

杏「やあやあ姉住ちゃん。お久しぶり」

まほ「姉住……?」

杏「西住ちゃんだと妹と区別が付かないからね。嫌だった?」

まほ「いや。そういう風に呼ばれるのは始めてでな。……悪い気はしない」

杏「それは何より。そんなことより今回の件、本当にありがとう」

まほ「優れた戦車道チームが無くなるのは戦車道全体にとっての損失だ。約束の時間まではまだあるんだろう?上がってくれ。大したもてなしはできないが」

杏「じゃ、そうさせてもらうよ」

まほ「みほも来るといい。大洗の話を聞きたがっていたろう?」

みほ「お姉ちゃん、いいの?」

まほ「ああ。菊代さん、申し訳ないが何か冷たいものを私の部屋まで持ってきてもらえますか」

菊代「はい、かしこまりました」
7 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:08:12.64 ID:22YIuaV40
〜〜〜〜

杏「そしたらかーしまったら泣きながら『ざがぜぇぇぇ!』って叫ぶもんだから全部の車両に無線で伝わっちゃってさ、試合の後で皆にからかわれたら拗ねちゃって大変だったよ」

みほ「くすくす……そんなことがあったんですね」

まほ「あのサンダースが無線傍受とは」

杏「うん、でもおケイは何も知らなかったみたい」

まほ「サンダースのケイと言えば、フェアプレー精神で有名だからな」

杏「まぁそのおかげで勝てたからね。結果オーライだよ」

みほ「綱渡りのような勝利の連続だったんですね……」
8 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:09:30.85 ID:22YIuaV40
杏「うちの戦力じゃあね。経験者もいないから皆で教本読んだり、ダージリンに質問したりしながらあーでもない、こーでもないって作戦を考えてさ。朝までかかることもあったよ」

みほ「作戦を皆さんで考えるんですか?」

杏「最初のうちは希望者だけでやってたんだけど、プラウダ戦から全員でやるようになったんだ。皆初心者じゃ、人数が多い方がいいしね」

まほ「作戦立案、戦力分析を総員で行うことでチーム全体の理解度を上げるわけか」

杏「うちぐらいの人数ならなんとか。勝てた時の喜びはひとしおだよ……っと、そろそろ時間だ」
9 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:10:11.73 ID:22YIuaV40
菊代「角谷さま、まほお嬢さま。家元がお呼びです」

まほ「私もですか?」

菊代「まほお嬢さまが呼んだのですから、同席しなさいと」

まほ「わかりました。それじゃみほ、行ってくる」

杏「西住流の家元か。緊張するよ」

まほ「大丈夫。お母様もわかってくれるはずだ」

みほ「あ、あの!頑張ってください!」
10 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:11:27.47 ID:22YIuaV40
〜〜〜〜

杏「初めまして。大洗女子学園生徒会長、角谷杏です。本日はお会いしてくださりありがとうございます、家元」

しほ「挨拶は不要よ。用件を言ってもらえるかしら」

杏「では、単刀直入に。大洗女子学園に力を貸してください」

しほ「文部省とは『優勝すれば廃校を止める』という約束をしていたと聞いたけれど」

杏「その約束は果たせませんでした。でも、それは諦めなきゃいけない理由にはならないはずです」

しほ「大洗の廃校を止めることに何のメリットがあるのかしら」

杏「高校戦車道のイメージや知名度の向上、優れた乗員の育成……色々と提示できるものはあります。でも、あえて一つ挙げるなら……私達は黒森峰に名誉挽回の機会を与えることができます」

しほ「……勝ったのは黒森峰よ」
11 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:16:04.17 ID:22YIuaV40
杏「確かに負けましたが、あの戦力で惜しいところまでは行きました。『黒森峰、恐るるに足らず』。そう思われても仕方ない試合内容だったんじゃありませんか?」

しほ「言ってくれるわね」

杏「でも事実のはずです。その評価を覆したかったら……」

しほ「来年の大会で大洗を叩き潰してみせろ、と」

杏「はい。ここで大洗が廃校になれば、ずっと言われ続けますよ?」

しほ「それが人に物を頼む態度?……と言いたい所ではあるけれど、あなたの言っていることも一理あるわ」

杏「もし受けてもらえなければ島田流に頼みます。島田流の指導を全面的に受けて、来年度こそ黒森峰を倒してみせる、という条件で。初心者だけでここまでやれたんですから、あながちあり得ない話でもないと思うんですけどね」

しほ「私相手にここまで言う相手は久しぶりよ」

杏「なりふり構っている余裕はないんです」

しほ「そう……では、一つだけ聞かせてもらえる?」

杏「ええ。何でも」

しほ「決勝戦で、あなた達がM3を助けた理由を説明しなさい」
12 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:17:20.45 ID:22YIuaV40
杏「……理由、ですか」

しほ「そうよ。そこまで廃校阻止にこだわるあなたが、なぜ止めなかったの?」

杏「……もしM3を見捨てれば、それは大洗の戦車道じゃないからです。自分達の戦車道を貫かないで、黒森峰に勝てるとは思えません。……実のところは、少し迷っちゃったんですけど」

しほ「あなた達の戦車道、ね」

杏「西住流とは違うと思います。でも皆で見つけたんです。大洗の皆とだから見つけられたんです。私のことを『会長』って呼んで慕ってくれる皆の居場所を、絶対に守りたいんです」

しほ「甘い。甘すぎる」
13 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:18:47.46 ID:22YIuaV40
杏「もう一度お願いします。……私達に、力を貸してください!」

まほ「お母様、私からもお願いいたします。大洗の戦車道は、失うにはあまりにも惜しいと思います」

しほ「……二人とも、頭を上げなさい」

しほ「そのような甘い学校に完勝できないままでは黒森峰の、ひいては西住流の鼎の軽重が問われるわ」

杏「……じゃあ!」

しほ「ただし、条件があります。……けして諦めないこと。廃校阻止という『勝利』のために、何がなんでも突き進むこと。これを守るというなら、力を貸すことを了承します」

杏「もちろん、最初からそのつもりです!」

しは「なら、それでいいわ」

杏「ありがとうございます!」
14 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:19:50.32 ID:22YIuaV40
しほ「ところで、別件で一つ頼みがあります」

杏「頼みですか?できる限りは」

しほ「近く、エキシビションマッチがあるそうね」

杏「聖グロリアーナ・大洗連合チーム対プラウダ・知波単連合チームの試合のことですね」

しほ「ええ。本来であれば優勝校の黒森峰も参戦すべきではあるのだけれど」

まほ「申し訳ありません。その日はドイツの戦車道チームとの交流試合が予定されています」
15 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:21:00.87 ID:22YIuaV40
しほ「チームとして参加することは困難、かといって優勝校が全く関わらないのも面子が立たない。そこで、せめて乗員だけでも黒森峰から派遣させてもらえるかしら」

杏「メンバーの派遣?まーエキシビションですし、問題はないとは思いますけど……チーム全員での遠征じゃありませんでしたっけ?派遣できるメンバーなんていないんじゃないですか?」

しほ「いいえ、いるでしょう?黒森峰の生徒で戦車道の心得があり、なおかつチームの遠征に同行しない人間が」

まほ「……ふふっ、確かに。そして、襖の向こうで盗み聞きをしている人間ですね」
16 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:21:47.06 ID:22YIuaV40
しほ「入ってきなさい、みほ」

みほ「ふぇっ!?……は、はい……」

しほ「あなたに盗み聞きのような卑怯な振る舞いを教えた覚えはありません。ましてや客人に対してなんて」

みほ「ごめんなさい!私、どうしても気になって……」

しほ「そう。ならよかったわね。大洗はあなたの参加を受け入れてくれるそうよ」

杏「なるほどー。そういうわけですね。いーよ西住ちゃん。……やろっか、戦車道」

みほ「え、えぇっ!?」
17 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:23:27.03 ID:22YIuaV40
〜〜〜〜

――大洗・学園艦――

みほ「に、西住みほです!皆さん、今日はよろしくお願いします!」

沙織「みほ!久しぶりー!」

みほ「沙織さん!」

沙織「黒森峰のパンツァージャケット、似合ってるよ!すっごくかっこいい!」

みほ「そんな……沙織さんこそ!背中のあんこう、かわいい!」

杏「西住ちゃんには、とりあえずあんこうチームに入ってもらおっか。ちょうど一人足りてないしさ、いーよね?」

沙織「もちろん!よろしくね、みほ!」
18 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:25:18.06 ID:22YIuaV40
優花里「西住殿と同じ戦車に乗れるなんて、感激ですぅ!」

華「五十鈴華です。よろしくお願いしますね、みほさん」

麻子「冷泉麻子だ。それで、西住さんは何をやるんだ?」

みほ「えっと、操縦手は苦手なので、出来ればそれ以外で……」

沙織「じゃあみほは、車長お願いね!」

みほ「そんな、いきなり!?」

優花里「西住殿の指揮で戦えるんですか!?ヒャッホォォォゥ!最高だぜぇぇぇ!」

沙織「いやゆかりん……さすがに少し傷付くんだけど」

麻子「沙織の指揮は危なっかしくてしょうがないからな」

華「適材適所というわけですね」

沙織「もー!皆よってたかってひどい!」
19 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:26:08.43 ID:22YIuaV40
みほ「ご、ごめんなさい!」

沙織「いや、みほが謝ることないから」

みほ「でも私のせいで……」

沙織「あーもう、いいの!そうやってすぐに謝るの禁止!」

みほ「わ、わかりました。すみません!……あっ」

華「あら、さっそく一回ですね」

麻子「どうせエキシビションだ。そんなに気負わなくてもいいだろう」

優花里「よろしくお願いしますね!西住殿!」

沙織「頑張ろうね、みほ!」

みほ「は、はい!」
20 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:29:51.19 ID:22YIuaV40
〜〜〜〜

――大洗・市街地――

ダージリン「改めて確認します。戦車は各校8両、形式はフラッグ戦。向こうのフラッグ車はカチューシャのT-34/85、こちらは私のチャーチル。恐らくプラウダは、防御に向いた役場前に陣を張っていると思われるわ。そこで、大洗の皆さんは3時方向から攻撃」

桃「了解だ」

ダージリン「ローズヒップは左から大きく迂回、敵の背後11時方向から攻撃」

ローズヒップ「かしこまりましたでございますのよ!」

ダージリン「私達の部隊は正面から大通りを通って進撃。ポルシェティーガー、ルノーB1、89式の皆さんはよろしくね?」

ナカジマ「オッケー」

そど子「了解よ!」

典子「頑張ります!」

ダージリン「この作戦の要は、三方から攻撃をかけることによってプラウダの守備が弱いところを突破することにあるわ。各車、絶対に誘いには乗らないこと。偽装退却の可能性があります。では、全車前進」
21 : ◆8DlJds//22 [saga]:2016/10/14(金) 21:31:40.50 ID:22YIuaV40
〜〜〜〜

まほ「お母様。みほを大洗に行かせてしまって、よろしかったのですか?」

しほ「そう思ったからああ言ってまで行かせたのよ」

まほ「ですが、お母様は大洗の戦車道を『邪道』とおっしゃっていました」

しほ「邪道とはいえ、戦車道は戦車道。ああでもしないとあの子はいつまでたっても踏み出せないまま時を過ごしてしまうわ」

まほ「確かにその通りですが……」

しほ「何か問題でもあるの?」

まほ「もしみほが大洗から帰りたくないと言い出したらどうするのかと」

しほ「……まほ」

まほ「はい」

しほ「どうしてそれを言わなかったの。今からでも呼び戻しなさい」

まほ「お母様、今ごろ向こうでは試合中です。それは不可能です」
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