京太郎「俺はもう逃げない」 赤木「見失うなよ、自分を」

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293 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/21(水) 21:34:40.74 ID:4du1A6Vz0
今日はここまでです。

次から京太郎修行編に入ります。

御無礼言ったり、打(ぶ)つ打つ言ったり、馬鹿みたいに鳴きまくる人とかもゲストで出ます。

ただ現状書き溜めているうち 42/51ページ吐き出しちゃってるから、余裕保つためにも投稿ペース落ちます。

>>284
積み棒?
ポッキーとかでオブジェ作るあれかな?(震え声)
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/21(水) 21:38:29.23 ID:8WRq/KxG0

お友達が勢揃いww
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/21(水) 22:11:19.14 ID:E4WZR29ho
乙!
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/21(水) 22:21:40.16 ID:5o+SrzKSo

赤木しげるが人を育てる……?
勝手に育つんじゃなく育てる
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/21(水) 22:26:58.24 ID:8e8FKZp0o
清澄を出たら地獄を突き抜けた何かに飛び込まされる京ちゃん…
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/21(水) 22:29:56.39 ID:1VMk/Lnuo
乙です
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/21(水) 22:41:20.47 ID:YLgd0Hw50
いつものお友達だなw
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/21(水) 23:38:25.86 ID:seILEILQ0

面白いよ、がんばれ
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/22(木) 06:11:32.88 ID:ILuNwEXsO
京ちゃんはいつもお友だちと仲良くて羨ましいなあ(白目
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/23(金) 03:15:27.89 ID:5jBuu0GZ0
14枚取るんじゃ四暗刻単騎かどうかは判別つかない気がする
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/23(金) 09:31:49.21 ID:+fo8JgbrO
14枚とってくるのに一気に選ぶ訳じゃないんだから最後に持ってきた牌が頭なら単騎でいいやん
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/23(金) 13:49:02.36 ID:wGSUO5lX0
>>302
並び方もそのままで>>292持ってこられたら
さすがに和もそんな異議唱える気なくすと思う
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/23(金) 14:04:00.32 ID:X8aTnyP50
いっそ轟盲牌使う総理大臣も出しちゃおうぜ
306 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/26(月) 21:27:03.88 ID:fIKZQmnB0
赤木さんの命日ということで、今日もあげていくよー
307 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/26(月) 21:28:16.91 ID:fIKZQmnB0
「ろ、ロン! 8300点です!」

「うはぁ、やっぱり通らなかったかぁ………ほれ」


 3日後、俺は赤木さんと約束通り、放課後に雀荘に来ていた。

 レートは点1。入店料が1000円だから、大勝ちしてもせいぜいその元金の半分が返ってくるかどうかの気楽な麻雀だ。


「ありがとうございました」


 案外勝てるものなんだな、と自分への意外さを感じながら、俺は背伸びして、後ろで見ていた赤木さんと向き合う。


「どうでしたか?」

「まぁ、ようやく見知らぬ相手と戦うたびにビビる癖が抜けてきたってとこだな。
 どんな相手にも安定して自分の麻雀が打てるようになってきた」

「俺の打ち方、ですか?」

「何だ、無自覚だったのか?」


 赤木さんは煙草をふかしながら、呆れた顔で俺を見た。
308 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/26(月) 21:29:39.30 ID:fIKZQmnB0
「お前、俺が初めてお前の対局を見た時からそうだがな、後ろに下がることをほとんどしない。常に前へ前へ。どんな苦しい待ちだろうと、手が入りさえすれば親のさらなる大物手に対して逃げることを選ばない。
 ま、それなりに放銃もしているがな。だがむしろ、弱気に流れた時の方が放銃している印象だ」

「要は無謀だってことですか?」

「まぁそれも否定できないな。だが………型にはまった奴ほど、そうやって突っ込んでくる奴のことは恐ろしく感じる。
 前へ進みつつも、最小限の回避だけで相手の手を躱して突っ込み続けられるようになったら………お前、この上なく恐ろしい打ち手になれるぜ」

「お、おお………!」


 かっこいい。

 少年心に素直にそう思った。何か少年漫画の主人公的な感じがする。


「ほれ、また卓が開いたぜ。打ってこい」

「はい!」


 初めて勝ちが続いたことで、俺の調子は上がりに上がっていた。

 麻雀を初めて、こんなことは初めてだった。


(やっぱり気持ちが調子に現れるパターンか。
 なのに心の中に突っかかるものを残したまま打ってちゃ勝てないのも道理だ。ま、ガキらしいっちゃガキらしいな)
 

 赤木さんが後ろで見守っていてくれると、なんだか心が昂ると同時に、安心感がある。
 
 この人が付いてくれているだけで、並大抵のことは怖くない。


「お願いします!」



「さて………打つ(ぶつ)か」
「御無礼」
「あンた………背中が煤けてるぜ」


 と思っていた時期が俺にもありました。
309 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/26(月) 21:30:43.58 ID:fIKZQmnB0
 帰り道


「ハッハッハ………! また気持ちよく飛ばされたもんだな」

「うう………なんすかあの人たち」


 俺たちは時間も早い冬の夕暮れ道を通って帰っていた。

 同じ卓に着いた途端、俺の思考は次の一言で埋まった。


(わーwww。俺死んだなーwww)


 まるで全力全開時の咲を3人同時に相手にした気分だった。
 
 ちなみにあの人たちとの戦った内容を簡潔に述べると。


半荘1回目
 親が俺で、第1打は北。
 それをタバコ吸ってたお兄さんがポンして、さらに次の巡にお兄さんは西と南を暗槓。
 運よく3巡目で張れた俺は打白。
「ロン。字一色」
 飛びました。


半荘2回目
 もう一度俺が起家で打9p。
「ロン。人和・大四喜・四暗刻単騎」
 黒シャツのお兄さんに飛ばされました。


半荘3回目
 また俺が起家でなんとダブリー出来た。
 今度はさすがに人和でいきなり飛ばされはしなかった。
「御無礼。地和・国士十三面待ちです」
 代わりにツモで飛ばされました。


 ここまでくると意識を飛ばさなかった自分を褒めたい。

 店にいた他のギャラリーは、皆無言で何とも言えない表情で俺のことを遠巻きに見つめていた。

 なぜか店の主人がサービスでジュースを出してくれて、肩を何度か優しく叩かれた。

 ちなみに赤木さんは後ろでずっと腹を抱えながら爆笑していた。畜生め。
310 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/26(月) 21:31:49.76 ID:fIKZQmnB0
「ま、あれは規格外の化け物どもだから気にしなくてもいい。他の対局は楽しかっただろう?」

「そりゃ、まあ楽しかったです。なんて言うか、牌が俺のことを応援してくれてるような感じまでして………」

「それが、流れが来てるってことさ。お前に最も教えなきゃならないのは、流れとのうまい付き合い方だ」

「流れですか?」


 これはまた、和が聞いたら憤慨しそうな内容だ。


「ああ。賭けには何事も、流れが存在する。
 その流れが良いからって調子に乗っていると、ふっ……と流れが途絶えた時に、派手にスッ転んじまう。
 逆に、流れが来ているのに手堅く打ち過ぎて、倍満役満と行けるのに満貫程度で収めちまうのもだめだ。
 お前は流れに乗るのは、実はかなりうまい。
 ただ、今自分に本当に流れが来ているのか、来ていないか、いつ途切れるかを敏感に察知できるようにならなきゃだめだ。
 技術自体は人並みにもうできている。後は、勝負にいくら身を投じれるかってところさ」

「はぁ………」


 流れというものを、和みたいに真っ向から否定しはしないが、かといってオカルト全開で信じているわけでもない俺は、曖昧な返事をしてしまう。

 すると赤木さんは、ややうんざりしたような感じで語り始めた。
311 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/26(月) 21:32:50.18 ID:fIKZQmnB0
「世の中にはなぁ、とんでもない化け物がいるんだぞ?
 その気になれば配牌で字牌の対子が5つあったり、配牌で国士張って地和確定だったり、上がるつもりでカンしたら絶対にドラ乗ってリーチドラ12とかして来たり…………
 まぁ、全部同一人物だが」

「えぇ………」


 漫画じゃあるまい、と言いたかったが、麻雀に関してこの人が言うのだし本当のことだろう。

 というかこないだ部室で見せたあなたの離れ業の方が恐ろしいんですがそれは。


「まぁ、そんな流れに乗るのがあほみたいに上手い化け物と相対したら、小手先の技術も必要なんだがな、ブラフとか。
 それは後々本当の勝負の場に立つようになったら覚えればいい」

「そ、そうですか………・」


 この人の話は聞いてみたい感じもするし、やっぱり怖いからいいですと同時に言いたくもなる。

 でも総じて俺はこの人のことが好きだった。

 そうやって話すうちに、バス停に着く。赤木さんはここでお別れだ。


「じゃあ赤木さん。明日も学校終わったら旅館の方に行きますから」

「おう、じゃあな」


 小さく手を振って、笑って別れる。

 何だか、新しいおじいちゃんが出来たような感じだ。


「さて、一応課題とかもやりますか」


 帰路を明るい気持ちで歩きながら、俺と赤木さんの日々は充実していた。

312 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/09/26(月) 21:35:23.02 ID:fIKZQmnB0
今日はここまでです。

アカギの最新刊今日発売だったけど面白いよね。
俺の好きな安岡さんも大活躍するよ。

ゲスト3人組に期待していた人は出番少なくてごめんなさい。

>>305 ごめんよ、原作見たことないんだ……
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/26(月) 22:06:27.96 ID:aR4+/bp8o
乙乙
流れの概念がある人はsakiには結構出てきてるよね
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/26(月) 23:04:33.56 ID:TIEiD2hS0
乙です
新刊出てたのか買わなきゃ
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/26(月) 23:55:56.36 ID:pKZKSruh0
赤木が例えで出してた人って鷲巣様ですね。
しっかりと覚えてたんですね。
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/27(火) 00:52:06.84 ID:QH71RXLfo
乙。
ネリーとかモロにそれだよね>流れの概念
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/27(火) 12:52:46.35 ID:sRIg3RsNO
むこうぶちはむしろ流れしかないからなw
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/27(火) 13:40:11.19 ID:lpNYFhht0
オーラスの安岡さんはむしろ活躍しすぎや
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/28(水) 23:43:56.77 ID:H4+KfZ9z0
>>312
大丈夫!「轟盲牌ッ!!」とか言わせとけばそれらしくなりますって!(暴論)

真面目な話、無理してまで特定のキャラ出してとか言わんので問題ないですぞ
320 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/03(月) 23:08:14.05 ID:GrvCEBYz0
こんばんは。
書き溜め全然進まないうえに学校始まっちゃったねー(白目)

そんじゃ投稿してきます。
321 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/03(月) 23:09:09.55 ID:GrvCEBYz0
 その日の夜11時半。


「うっ、ひくっ、ぐすっ…………」


 俺はリビングのソファに、カピーを膝の上に乗っけて腰かけながら泣いていた。


「うぐ………ぐすっ」


 カピーしか他にいない静かなリビングで、俺は人目を気にすることなくボロボロと涙を流した。

 だが悲しみの涙ではない、むしろ流せてうれしい涙だ。 

 ピーンポーン………


「ん?」

 膝に乗っけていたカピーを下ろして、玄関に向かった。

 今日は父さんも母さんもいないはずだが、誰だろうか?

 急いで顔を拭って、玄関を開ける。
322 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/03(月) 23:10:09.90 ID:GrvCEBYz0
「はーい」

「こんばんは、京ちゃん」

「咲?」

「あれ、京ちゃん顔どうしたの!?」


 涙の痕を見つけた咲が、驚きの声を上げる。


「ん、ああ。さっきまでターミネーター2見てたから。水曜ドラマで」

「は…………?」

「いやー、何度見ても名作だわ。最初から最後まで無駄なシーンが一つたりとも無い。
 地球が宇宙に対して誇る映画だぜ」

「あほらし…………」


 咲がやれやれとため息をつく。


「ああん!? お前ターミネーター舐めんなよ!? 特に2! あれを見て感動しないやつは人間じゃないね!
 溶鉱炉に沈んでしまえ!」

「はいはいわかったわかった。ところで、ちょっと今上がってもいい?」

「んー? いいけど、何だってまたこんな時間に」

「いいじゃん、京ちゃんなんだし」

「何だよそれ………」


 気温はマイナスだし、こんな寒いときに女の子をつっけどんに返すのも悪いので、とりあえず家に上げることにした。
323 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/03(月) 23:11:17.95 ID:GrvCEBYz0
「お邪魔しまーす」

「されまーす。今日は俺とカピーしかいないぞ」

「あれ、そうなんだ?」

「だから日付が変わる前に帰れよ。帰りは送るから」

「やっぱそういうところ気にするんだ?」

「誰かさんたちがいろいろと押し付けるせいで、いろいろ気づかいが出来るようになりましてねぇ」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」


 部活関連の冗談を持ち出すと、咲が全速力で誤ってくる。

 あれだけボロボロ泣いてたんだ、今だって気にしてはいるのだろう。
324 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/03(月) 23:12:33.66 ID:GrvCEBYz0
「カピーちゃんこんばんわー♪」

「キュー♪」


 もう何度も会って咲のことを覚えているカピーが鳴く。

 咲はカピーを撫でようとするが、ふと手を止めた。そのまま俺の方を振り向くと。


「えい。ジュー」

「冷てっ!?」


 口で効果音を出しながら、両手で俺の頬を挟んできた。

 手袋をしてなかった咲の手は冷え切っていて、背筋がぞくぞくする冷たさだった。


「うん、温まった。お待たせカピーちゃん」

「キュー♪」

「何しやがる………」

「え? だって冷たい手で触ったらカピーちゃんがかわいそうじゃん?」

「俺の頬はどうでもいいんかよ!」


 冷え切った頬を自分の手でさすりながら、咲に文句を言う。

 とりあえず飲み物を用意しに、台所に向かう。


「お腹壊しそうな冷水と火傷しそうな熱湯どっちがいい?」

「お茶でー」

「へいへい」


 仕返しではないが嫌味を言うと、完全にスルーされた。

 やかんを火にかけ、その前で腕を組んで突っ立つ。

 後ろではカピーにデレデレの咲が一方的に会話を楽しんでいる。
325 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/03(月) 23:13:28.02 ID:GrvCEBYz0
「もういいか」


 かすかにやかんの口が笛のような音を出すと、そこで火を止めた。

 どうせ後で飲める温度まで冷ますのに、わざわざ沸騰させることはない。

 多分80度くらいのお湯をお茶葉の入れた急須に注ぎ、湯呑を二つ用意する。


「ほれ、少し冷めるの待てよ」

「ありがと、京ちゃん」

「ん、どういたしまして」


 咲がにっこり笑ってお礼を言ってくる。

 ふーふーお茶に息を吹きかけて、一口飲む。

 何だか小動物のようで、見ていて和んだ。
326 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/03(月) 23:14:17.76 ID:GrvCEBYz0
「…………口にすれば、当たり前のことなのにね」

「ん?」


 何かお茶の味が変だったかと思い、俺も急いで一口すする。

 特におかしなところはない。


「そうじゃないよ。ありがとうって、京ちゃんに言うの、久しぶりだったから」

「ああ…………」


 なんとなく、咲の言いたいことが分かった。

 部活でこうやって皆に飲み物を出したりしても、最近は「どうも」とか「おう」とかしか言ってもらえなかった。

 面と向かってありがとうと言われたのは、結構久しぶりだった。


「ごめんね…………」

「いいよ別に。もう気にしてないし」

「京ちゃん」

「どうした?」


 咲が真下を向いてうつむくので、横から覗き込む。


「京ちゃんは………何で、怒らないの?」

「え?」
327 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/03(月) 23:15:52.72 ID:GrvCEBYz0
 咲が涙声になる。

 横から覗く顔はよく見えないが、おそらく泣いている。


「私たち………ずっと京ちゃんにひどいことしてた。
 なのに、何で京ちゃんは私たちを許しちゃうの?」

「え、いや………怒ったぞ、一応? こないだ仲直りした日の昼に、部長に怒鳴ったし………」

「そうじゃない!」


 咲が急に顔を上げて叫ぶ。

 その顔は、涙に濡れてぐしょぐしょになっていた。


「私たち、どんなに謝っても足りない、自分たちのことしか考えないで、ひどいことばっかりしてた………!
 なのに何で京ちゃんは、私たちのこと許しちゃうの?
 立ち直ってくれたのはうれしいけど、何でそこまでして、麻雀部に居ようとするの?
 もっと怒って当然なのに、一緒に居たくないくらい嫌われて当然………なのに………!」
328 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/03(月) 23:17:51.19 ID:GrvCEBYz0
 ぼろぼろと俺の目も憚らず、咲はしゃくり上げて顔を真っ赤にして泣く。


「……………さきー」


 俺は湯呑を持って温まった手で、咲の頬を撫でてやった。


「まぁ何でって言われたら………俺が皆のこと、大好きだからなんだろうなー」

「え………」


 咲はキョトンとした表情になっている。


「そもそも俺が麻雀強くなろうと頑張ってたのも、皆の隣にいたいからだしな。
 なんつーかさ………俺ってさ、しばらく一緒にいるとさ、その人のことが大好きでたまらなくなっちまうんだよな。
 優希はまぁ犬犬呼ばれるのはともかくとして、気の置けないい奴だし。
 和は見て分かるほどに超スーパー美少女で、まじめにがんばればそれだけ褒めてくれるし。
 染谷先輩は、俺のこと結構気にかけてくれるいい先輩だし。
 部長は……普段から悪ふざけがちょっと………ちょっと?、過ぎるけど根はいい人なのは感じるし………うん、根は………ね、根は」


 最後はちょっと変な強調の仕方になってしまったが、とりあえずさておく。一応事実だしね。うん。
 合同合宿に置いていかれた時も、「買い出し宜しく」とだけ書いてくような人だしね、うん。
329 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/03(月) 23:18:58.58 ID:GrvCEBYz0
「そんなみんなが麻雀やってるときは、鬼のように豹変するんだ。いい意味でだぞ?
 とにかく、皆方向性は違うけど、どんな相手にも負けず勝っていくそんなみんなを見ていると、凄く格好良く見えるんだ。
 もう心の底から、混じりっ気のない憧れとかが湧いてきて………、こんなみんなと、ずっと一緒に居たいって思うんだ」

「あ………う………」


 咲の顔の赤さが、さらに増す。

 自分でも結構恥ずかしい言い方をしているのはわかるが、今更だ。


「まぁ、ひたむきさが過ぎて一緒に居ると辛いのもまた事実だったけど………、やっぱ俺も、皆と同じくらい格好よくなりたいって気持ちもあったからさ。男だし? だからさ………」


 ポケットからハンカチを取り出し、ぐしゃぐしゃになった咲の顔を拭ってやる。



「俺はお前のこと、嫌いになったりはしないよ、咲。
 こないだまで一緒に居て辛くはあったけど、嫌いにはなるはずがない。
 しかもお前だけは、ずっと俺のこと心配してくれてただろ? ありがとうな」
330 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/03(月) 23:19:53.34 ID:GrvCEBYz0
「京………ちゃ………う、ふ、ふあぁあああああ………」

「わわっ! なんでここで泣くんだよ!?」


 咲が声を上げて泣き始めて、ぎょっとする。
 あれ? 結構いい話してたと思うんだけど。イイハナシダナーってなると思うんだけど。
 イイハナシカナー? だったの?


「何なのさぁ……京ちゃん………。かっこよすぎるよぉ………」

「へ?」

「優しすぎて、かっこよすぎだよぉ………」

「そ、そう、か?」


 怒らないことを優しいと言われるのはわかるが、かっこいいというのはピンと来なかった。

 とりあえず褒められているようなので口出ししないが。


「と、とりあえず泣き止んでくれ、な?」

「うん………」
331 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/03(月) 23:21:15.93 ID:GrvCEBYz0
 こんな夜遅くの家に二人っきりの高校生の男女が居て、男が女を泣かせているとなると、字面にするとかなり危ないものがある。

 俺は急いで話を変えて、咲の気を逸らすことにする。


「え、えーっと、俺がいない部活っていうのは、どうなってるのかけっこう興味あるけど」

「ぐす………えっと、毎日優希ちゃんはタコスが足りない足りないって言ってる」


 上手く咲が反応してくれて、俺のハンカチで目許を拭いながら答えてくれた。


「あれ? タコスの材料は部室にあるだろ?(俺が買いに行かされた)」

「京ちゃんのタコスじゃないと、舌が満足しないんだって」

「あれま」


 少しうれしい知らせだった。

 最近は用意したことを「よくやった犬!」とか言われこそすれ、味に関しては何も言われなかったからだ。
332 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/03(月) 23:22:21.72 ID:GrvCEBYz0
「先輩達と和ちゃんは、牌譜の多さにひーひー言ってたなぁ。テスト前にやるものじゃないって」

「おーおー、どんなに大変か身を以って知ってくれ。咲は?」

「…………一応、部室のパソコンで一度ソフトの使い方教えてもらったんだけど」

「あ、うんわかった」


 咲の表情ですべて理解した俺は、そこで聞くのをやめた。

 優希も事務作業の戦力にはならないだうし、和と先輩達の苦労が偲ばれる。


「買い物とかは、私が放課後にすることになって………今もその帰り」

「ああ、なるほど。でも遅くないか?」


 時計を見る。もうすぐ日付が変わりそうだ。


「京ちゃんが、何時に帰るかわからなかったから…………」

「え?」

「あ、えっと、久しぶりに、話したかったっていうか………」

「久しぶりって、学校で毎日会ってるだろ。しかもまだ3日しか経ってないし」

「それでも、一緒に麻雀打ちたいんだもん…………」


 咲が拗ねて口を尖らせてうつむく。子供か。


「…………なら、打つか?」

「え?」

「今からはもう遅いけど、明日赤木さんに、roof-topで打っていいか聞いてみるよ。
 雀荘って程でもないけど、一応いろんな人と打てる場所だし」

「本当!?」

「ああ、出来たら明日皆で打とうぜ」

「うん! 誘ってみるね!」

「うん。ほれ、急いでお茶飲んじまいな。もう遅いし帰り送ってやるから」

「ありがと、京ちゃん」


 その日はそのまま咲を家まで送り、自宅でカピーと一緒に寝た。

 帰り道で咲がやけに手をつなぎたがっていたけれど、断る理由もないから言う通りにした。
333 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/03(月) 23:24:48.50 ID:GrvCEBYz0
ここまでです。
製作状況としては、この後のroof-topでの闘牌シーンが頭の中で固まったくらいです。
というかどんな手で勝つかっていうのは終盤までもう全部決まってるんだけどね。
文字にするのは面倒なのよ。


え? 夏休みにもっと書いておけだって?
ごめん何言ってるのかよくわからない
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/03(月) 23:26:06.84 ID:31veIp2d0
咲さんヒロインですわ
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/04(火) 00:19:32.64 ID:KMDWzlU+o
情景ができてもそれを言葉として形作るのは
結構労力がいるからねぇ。
乙乙。
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/04(火) 00:26:41.92 ID:EKSg+4yEO
そういやカピって何の目的で出したんだろな
設定がほぼイかされてないけど
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/04(火) 01:03:52.46 ID:mA44EjDv0
おつです

あと確か緑茶は沸騰してないお湯で淹れると美味しいらしいから>>325では図らずもおいしい淹れ方してたってことになるね
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/04(火) 01:31:26.97 ID:OD4U2F5Do
咲さん最高
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/04(火) 05:40:13.22 ID:MYAmX3xoo
>>336
元々は一気に合宿から県大会じゃなくて、3巻ぐらいだったか? かけてじっくり清澄掘り下げてから県大会行く予定やったんやで。
少なくともそれで人気出たから(じっくり掘り下げて打ち切りにならなかったか、はタラレバだしね)間違ってはいない。
なお、少なくとも京ちゃんは(のみかは知らん)全力で影響受けた模様。

以前ブログでりつべ本人が「京ちゃんの過去はプロット全部出来てんのに入れる場所無いンゴwwwwwwww(なんJ訳」言ってるww
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/06(木) 10:32:51.68 ID:9tLMfp4o0
>>336
連載当時にちょっとブームになってたから出したってだけじゃね?

しかしそのお陰でカピバラは個人で買うとめっちゃ金かかる
→そんな動物をペットとして飼う位の経済的余裕が京ちゃんの家にはある
→あれ?京ちゃん割と金持ちじゃね?

なんて二次設定が生まれてしまったな
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/07(金) 15:13:58.47 ID:8QB6y8Huo
でも実際カピバラってちょっとぐぐってみるだけでも
本体価格60〜70万、月の餌代だけでも最低3万以上
その他寒さ対策も兼ねた入浴設備etcetcとか出てくるからな
+育ち盛りの子どもがいる家庭とか割とお金持ち確定だろってなるわな
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/08(土) 17:28:16.90 ID:tIFUgxKa0
その辺作者も編集もぶっちゃけ何一つ考えてなかった可能性も0じゃない
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/13(木) 01:03:00.55 ID:OHL/ykS6O
余程捻くれた設定でもない限り、京ちゃんはお金持ち確定だよね
まあ作者も適当に付け加えただけだろうし深い意味はあるまいが
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/14(金) 04:46:56.07 ID:BcpzlhL0O
金持ちで背が高くてイケメンとか
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/14(金) 14:51:04.42 ID:55dO4aIto
>金持ちで背が高くてイケメン

ここだけ見ると嫌味なライバルキャラや寝取りキャラの属性だなw
346 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/15(土) 16:36:18.48 ID:OmBIba+K0
京ちゃんはぐう聖。異論は認めない。

久しぶりに投下しますぜ。
347 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/15(土) 16:37:32.95 ID:OmBIba+K0
「えっと………ここです」

「へぇ、麻雀打つにはずいぶんとこじゃれた感じじゃないか」


 翌日の放課後、俺は赤木さんと一緒にroof-topに来ていた。

 赤レンガに洋風窓の、いかにも明るい雰囲気のお店。

 よくある煙草の煙がすぱすぱ蔓延している雀荘とは大違いだ。

 何より雀荘には「本日メイドデー」とか書いてある看板は置いてない。


「よぉきたのぉ」

「お邪魔します、染谷先輩」


 俺と赤木さんは背が高いから、店内からも見えたのだろう。

 メイド衣装に身を包んだ染谷先輩が、店の入り口から顔を覗かせた。

 前に一度、インターハイが終わってroof-topで打ち上げを行った時にも先輩のメイド衣装は見たが、中々に可愛らしい。

 麻雀部の中では一番(良心的な意味で)大人びた先輩で、今もその雰囲気は抜けきっていない。

 ただ、さらに大人びた落ち着いた色合いの衣装がかえって、背伸びをしている子供らしさを出して可愛らしく見えた。
348 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/15(土) 16:38:38.59 ID:OmBIba+K0
「おう、赤木さんも一緒かい。お二人様麻雀卓へごあんな〜い」

「いや、俺は構わない。京太郎を鍛えんのが目的だしな」

「そうかの? ならまぁええが、うちは全席禁煙じゃけんの。タバコはこっちへポイじゃ」


 先輩が店の入り口のすぐ隣に置いてある灰皿スタンドを指さす。


「そうかい……(´・ω・`)」


 赤木さんはしょんぼりしてから煙草を捨て、一緒に店の中へ入った。




「おかえりなさいませ、ご主人様」

「ご、ごしゅじんさま…………」




 出迎えたのは、やけに堂に入った動作でお辞儀をしたピンクのメイド服の和と、消え入りそうな声でお辞儀をする水色のメイド服の咲だった。


「ん、う、うん?」


 俺は予想だにしなかった展開に対して、正しく処理を下すことが出来なかった。
349 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/15(土) 16:39:49.99 ID:OmBIba+K0
「ほら咲さん。そんなにたどたどしいから、須賀君も困っていますよ」

「だ、だって、京ちゃんにこの服で………その………」


 和に諫められた咲は、やけに短いスカートの裾の部分(いわゆる絶対領域)を抑えて、もじもじと顔を伏せて俺から身体の正中線を逸らす。

 羞恥心に身を焦がされていることは、傍から見ても明らかだった。


「えっと、ただいま咲?」

「お、おかえりなさい京ちゃん…………」


 これがあの大魔王宮永照の妹、魔王宮永咲の普段の性格だと言っても、大多数の人間は信じないだろう。

 メイド服のコスプレして恥ずかしさに悶える魔王。

 噴き出すのを堪える方が難しい。
350 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/15(土) 16:40:38.76 ID:OmBIba+K0
「今日は京太郎をもてなしてやろうっちゅうことでな。臨時メイドデーじゃ」

「はぁ」

「ご主人様、お飲み物はいかがなさいますか?」

「お、おう………じゃあコーヒーで」


 自然体でメイドさんをやっている和に、意外さを隠しきれない。

 当の本人は結構面白おかしく楽しそうにメイドさんをやっている。

 まぁ、私服が「アレ」なことを考えると、珍しい衣装が好きなのかもしれない。

 NAGANOスタイル恐るべしだ。


「そちらの方は…………」


 いきなり声のトーンが落ちる。 

 俺の後ろで黙っている赤木さんを見た途端、和の機嫌が悪くなったのが分かった。


「酒類はないのか?」

「当店ではアルコールの類は提供しておりません」

「じゃあ俺も京太郎と同じもんでいい」

「はい。ではお席にどうぞ」


 ツンツンしたメイドさんというのもよくありそうなものだが、実際に見てしまうとなんだかしゅんとした。

 俺は赤木さんも和も好きなので、あんまりつっけどんにされると残念なのだが。
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/15(土) 16:48:31.42 ID:3DmLRpGio
アカギのしょぼん好き
352 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/15(土) 16:49:34.32 ID:OmBIba+K0
「じゃあ京ちゃ、こほん。ご、ごしゅじんさま。麻雀卓へどうぞ」

「呼び方くらい好きにしろよ」

「うん…そうするね」


 ご主人様、の発音が上手くいかない咲は、俺からの助け舟に心底胸をなでおろしたようだった。


「あれ? そういえば優希は?」

「優希ちゃんは、厨房で皆のタコス用意してるよ。部長は、新生徒儀会長の選挙の会議で遅れるって」

「ああ、2月で引継ぎだもんな」


 顔の見えない二人のことを尋ねて、麻雀卓につく。

 学校にあるのと同じタイプの雀卓だ。


「いそいそ………ごそごそ…………」

「お待たせしまし…………須賀君、何やってるんです?」

「いや、ちゃんと整備されてるか気になって……どうした?」


 台の下の方や洗牌をする部分を何気なく見ていたら、咲と和からものすごい気の毒そうな視線をもらった。


「須賀君………今須賀君はお客さんです。そういうのは気にしなくていいんです」

「いやでも毎回部活で様子見てるとなんか気になっちゃって。
 この数日通った雀荘で打った時も、始める前に調べたりして、2件ほど調子悪い台直したらお礼言われたんだけど…………」


「京ちゃん………ごめんね、私たちのせいだね。全部京ちゃんに押し付けてた私たちのせいだね………」

「おい、何でそんなに沈んでるんだ二人とも」

「京太郎………」


 雀卓の様子が見える近くの席に座った赤木さんまで、何と言ったらいいか困っているような顔をしていた。

 おい、雀卓の具合がどうか気にするのがそんなに悪いのか。泣くぞ。
353 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/15(土) 16:50:31.06 ID:OmBIba+K0
「おーう京たろ………じゃなくていぬ、じゃなくてご主人様、タコスの到着ですじぇ!」

「おい待てなんで犬って言い直した」


 厨房の方から、タコスを積んだ大皿を優希が運んできた。

 よし決めた今日こいつだけには絶対に負けん。むしろ飛ばしたる。

 とりあえず放課後で小腹は空いているので、タコスはもらうが。


「さて、今日は京太郎が主賓じゃからの。打ちたい面子はおんしが決めてええぞ」


 全員がタコスを口にし始めたところで、染谷先輩が頼んでいたコーヒーを持ってきてくれた。


「いただきます。
 そうですね、前は一年組で打ちましたし、染谷先輩も入ってもらえますか?」

「おう、構わんぞ。まぁ店が混み過ぎてたら無理じゃが」

「お願いします。そんじゃタコス食い終わったら始めるか。食いながらとかは汚いし」

「ですね」
354 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/15(土) 16:51:20.65 ID:OmBIba+K0
 3,4分ほど、皆でタコスをかじりながらこの数日間の近況を報告しあう。


「そういえば優希、お前タコス自分で作ったのは気に入ってないんだって?」

「気に入ってないって程じゃないけど………なんだか味気なく感じるんだじぇ」

「あー、そりゃまぁあれだ。俺の場合ハギヨシさんに教えてもらったからなぁ。
 俺も料理する方じゃないから確かなことは言えないけど、多分あの人そこらの下手な料理人よりよっぽど料理上手いぜ。
 教わった時にとったメモ今度持ってきてやるよ、レシピの」

「なぬ! よし今すぐとって来い!」

「人の話を聞け」
355 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/15(土) 16:52:13.09 ID:OmBIba+K0
「和、牌譜とるのとか量が多くて困ってるんだって?」

「ええ、学校の古いPCじゃ対応しているソフトがあんまりいいのがなくて………結局家に帰ってやった方が速いですね」

「家に自分のパソコンあるの、俺と和だけだっけ?」

「わしも持っとるっちゃあ持っとるんじゃがのぉ。一応店の備品じゃし、私事に使っていいかびみょうじゃけん」

「ああそっか。店のパソコン、部活のために使っていいかは微妙ですしね」

「結果おんしに家に帰ってからもぜーんぶ押し付けちもうたわけじゃ。
 まったくいくら頭を下げても下げ足りんわい」

「はは………」
356 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/15(土) 16:53:05.38 ID:OmBIba+K0
「よし、じゃあ始めるか」

「ちょ、ちょっと待って」

「ん?」


 最後の一口を飲み込んだところで配牌を始めると、咲が肩を掴んだ。


「京ちゃん、私には何も質問ないのかな?」

「え、いや昨日けっこう話ししたじゃん」

「そ、そうだけど………」

「昨日?」


 和が俺の言葉に反応する。

「昨日はお昼も咲さんは私と話してて、放課後はずっと部活のはずでしたけど………。
 須賀君も授業が終わり次第、すぐに飛び出して行ってしまいましたし、いつ話したんです?」

「ああ、昨日咲が夜中にうちに来てさ」

「「「家に?」」」

「うん?」


 それを聞いた他のみんなが、声を揃えて食いつく。

 何か変なことを言ったかと、コーヒーを飲みながら考える。
357 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/15(土) 16:54:20.53 ID:OmBIba+K0
「夜中って、何時ごろだじぇ?」

「えーっと、俺がターミネーター2見終わってボロボロ泣いてた頃だから、もう11時半すぎてたと思うけど」

「ちょ、京ちゃ………」


「夜中の?」
「日付が変わる頃に?」
「一人で?」

「須賀君「京太郎「犬「の家に?」」」


 三人の声がぴったり揃う。優希は許さん。


「あ……そ、その、買い出しの帰りに近くを寄っから、ちょこーっと話そうかなーって……あはは………」

「咲さん」

「は、はい」


 なぜか和相手に敬語になる咲。


「その言い訳、苦しいです」

「あぅ………」


 ただでさえ小さいのに、さらに縮こまる咲。何なんだ一体。


「ま………京太郎、頑張れってことじゃ」

「? はい」

「こいつぜってーわかってねーじぇ」

「ですね」

「?」


 一気に場が俺を非難するような空気に変わる。

 え、何かしたか俺?
358 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/15(土) 16:56:00.47 ID:OmBIba+K0
「ま、ええわ。始めるとしようかの。そんじゃ、白引いた奴が一回休みな。あ、そういや赤木さんは打たんでいいんじゃの?」

「ああ、俺はいい。京太郎の打牌を見てるだけでな。ゆっくりくつろいでるさ」

「そうかの」


 染谷先輩が雀卓の上に牌を4枚伏せて掻き混ぜて、それを俺を除く女子四人が1枚ずつ取った。


「わっ! 私白だよぉ………」


 白を引いてしまった咲が、涙目になってしょげる。


「まぁ何回戦か打つからええじゃろ。咲が最初休みな」

「うう………せっかく一緒に打てると思ったのに………」


 そこまで楽しみだったのかと心の中で意外に思いながら、俺は改めて伏せられた4枚の風牌を手にする。

 1回戦開始だ。
359 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/15(土) 16:57:08.72 ID:OmBIba+K0
ここまでです。

東一局を描き終えた辺りまでしか書き溜めがないよ。
いうてここはもう1局分書けば終わりだからいいけど。
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/15(土) 17:14:18.61 ID:Hy3As2Ido
乙乙
当初は和のような打ち方を目指していた京太郎が流れとか言い出したら和はどう思うかな?
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/15(土) 17:49:41.66 ID:SPdTaz6e0

一挙放送で見返したら予想以上に京太郎が喋っててちょっとびっくり
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/15(土) 19:02:43.12 ID:tyrb7LSx0
色々言われているけどアニメじゃ何気に京太郎はアニオリシーンもあったりで割と優遇はされてるよ
あまり他の女の子とかかわると原作クラッシュになりかねんからそうならない程度にって感じだけど
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/17(月) 07:12:10.86 ID:rdSKbIV3o
京ちゃんの雑用精神アカギが素で引くレベルかよ……ww

>>362
そもそも原作だと個人戦そのものの描写が無いから京ちゃんが個人戦1次予選で負けたとかそこら辺全部アニメ補完だしね。
なお下手に闘牌描写増えてそこですら上がる描写無い+個人戦での飛び方と後で公式ブログで明言された「男子は地味」発言から、
むしろアニメ加えた方が京ちゃんの運がヒドいなんてもんじゃなく、むしろマイナスしかないオカルトあると考えた方が自然なレベルに達する模様。
364 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/30(日) 22:03:42.03 ID:ok3WdhKK0
 時刻は夕方6時過ぎ………大学帰りの電車の中でのことっ………
 「咲-saki-実写化キャスト発表」………!

 その文面を目にしたスレ主は迷わずリンクをふんだっ………!
 しかし、その画像の数々を眺めた瞬間っ、スレ主に電流走る………!

「これはない………!」

 てなわけで久しぶりに更新するよ。
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/30(日) 22:06:19.94 ID:S0bTuphXo
待ってました
366 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/30(日) 22:06:20.93 ID:ok3WdhKK0

東一局  ドラ8m
親 まこ
南家 和
西家 優希
北家 京太郎

京太郎 配牌
 12289m 46p 569s 白白北  ツモ:1s


 白が対子になっている以外、特に何もない平凡な手配だ。

 46p か 56s のどっちかが端の数牌ならばチャンタに向かえたかもしれないが、この様子じゃ無理かと諦める。

 役牌ドラ1でいいから早くまとまってくれないかなぁと祈りつつ、1sをツモ切る。
367 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/30(日) 22:07:26.71 ID:ok3WdhKK0
7巡目


「リーチだじぇ!」


 優希からリーチ棒が場に出される。

 7巡目リーチを意外に遅かったなと感じるあたり、俺の感覚はマヒしているのかもしれない。


 京太郎手牌
 1234889m    チー:567s ポン:白白白 

 優希と同席する以上、勝つには早上がりしかないと見切りをつけて、白ポンより先に567sのチーをするという、

下手すれば役無しになる暴挙に出たが、かえってそれが功を奏した。
 
運よく後から白を鳴くことが出来て、イーシャンテン。


(萬子なら何引いても大体聴牌だ。せめて安パイ引けますように………!)
368 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/30(日) 22:10:34.46 ID:ok3WdhKK0
 ツモ:7m

(よりによってそこですかーーーー!!)


 これで14mのどっちかを切れば、一応白8ドラ3の満貫で8m待ち聴牌だが………。


(中膨のドラ単騎待ちとかどう考えても出るわけねーし………
あぁ〜……心がぴょんぴょん……じゃなくて、あぁ〜もう、どうすんのこれ………)


 とりあえず優希の捨て牌を見てから考えることにする。
369 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/30(日) 22:11:49.29 ID:ok3WdhKK0
 優希捨て牌
 9p 1m 7s(京太郎チー) 9m 3p 7m 2s(リーチ宣言牌)


 (3p 7m は、確か3pは速攻でツモぎってたから、つまり3p捨てた時にはもうイーシャンテンだったわけね。

  まぁどっちにしろ俺の手には萬子しか残ってないから、そこらへんは考えなくていいんだけど………。
 
  2−5−8mの筋が一枚も出てないし、もし切れれば1−4m待ちにできるけど、8mは危なくて絶対切れない。
 
  リーチに対して初手ドラ切りとか在り得んわ。
 
  んで、安パイが1mか9mかぁ………)
370 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/30(日) 22:12:49.18 ID:ok3WdhKK0
 仕方なく、1mを素直に捨てて一応8m待ち聴牌に受ける。
 
 9mを落としてもいいが、788mの形で残すと最悪この後フリテンになりかねない。

 俺の後の二人も、9p、9pと二人とも端っこの不要になりそうな安パイから切っていく。

 そして優希の一発目のツモ。

 ツモって来た5mをそのまま捨てる。


 (ドラ通ったんかい!)


 単騎待ちとかの可能性もあるから確かなことは言えないが、少なくとも一番ありそうなドラ筋の5−8mは通る確率が高かったわけだ。

 こんなことなら勝負に行けばよかった。

 そして次の俺のツモ。
371 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/30(日) 22:13:58.78 ID:ok3WdhKK0
 京太郎手牌
 2347889m  チー:567s ポン:白白白  ツモ:1m


(勝負に行ってれば普通に上がってたよちくしょー!)


 心の中で散々な悲鳴を上げる。

 フリテンの1−4m待ちに戻すわけにもいかない。

 もしかしたら5−8m待ちの線が消えたことで、他二人が浮いた8mの処理をしようと切ってくれる可能性もあるので、そのまま8m待ちのままツモ切る。


「チー」


 染谷先輩からの発声。

 俺は切った1mを先輩の方へ渡す。

 そして先輩は打4m。
372 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/30(日) 22:15:10.21 ID:ok3WdhKK0
(123mと234mの食い替え?)


 優希のリーチを流したいなら、喰いタンなど早い手が一番だ。

 鳴くにしても、タンヤオの消える一九字牌を鳴くのはおかしい。


(まぁ、染谷先輩のことだし、多分染め手だろ。完全に染め手じゃないにしろ、一通みたいな手の内の大部分が同じ色に染まるような手かな)


 そしてその次、和は打南。


「ポン」


 客風牌をポンする染谷先輩。そして打中。

 これはもう混一色かチャンタのどっちかで確定とみていいだろう。これが役牌ならまだ何か別の色が混じってる可能性が無きにしも非ずだったが。
373 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/30(日) 22:16:25.47 ID:ok3WdhKK0
 和も次はツモって来た北を切り、再び優希のツモ。

 ここでも優希はツモれず、苦い表情でツモ切る。

 再び俺のツモは、6p。


 (優希は3pと9pを切ってるし、準安パイではある。
  
  まさかまたこないだみたいに三暗刻対々和とかじゃないだろうし。
 
  染谷先輩は萬子の混一色かチャンタ。しかも9pを切っている。これは通るだろ)
 
 安心して打6p。


「ふふっ、それロンじゃ」

「へ?」


 染谷先輩の手が倒される。
374 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/30(日) 22:17:09.50 ID:ok3WdhKK0
 まこ手牌
 456m 中中中 6p ポン:南南南 チー:123m


「親の役牌のみ、2000点じゃ」

「ろ、6p単騎ぃ!?」


 顎があんぐり開くのが自分で分かった。

 染谷先輩の表情からして、これは意図的な待ちだったとわかる。

 にしても、何だこの待ちは。

 6−9p待ちだったが、リーチを早く蹴りたいので高め9pは諦めて6pで早上がりしたとかなのならわかる。

 だがいくらなんでもこれはないだろう。
375 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/30(日) 22:17:47.91 ID:ok3WdhKK0
「今日は来れなかった久から京太郎によろしくと頼まれたからのぉ。
 
 今日のわしは染め手の多面張&悪待ち使いとしてやらせてもらうぞ」

 ええー………」

 躱しきれる気がしない。

 染谷先輩も相当器用な方だから、部長ほど意地は悪くないが盲点になりそうな待ちをしてきそうだ。

 出鼻をくじかれつつ、俺は渋々点棒を先輩に渡した。
376 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/10/30(日) 22:21:31.83 ID:ok3WdhKK0
今日は短いけどここまで。
こないだ書くのは2局って言ってたけど、諸事情でこの後1本場とさらにもう1局書くよ。

更新が早くなるように望んでる方は、某国立大で火事でも起きて今期の実験が全部なくなるように祈って、お願いだから。
しかも今度の近代麻雀の発売日と実験がかぶって夕方まで読めないっていうね。
377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/30(日) 22:58:58.11 ID:dvfxMECxo
乙乙
ワカメの面倒くささが無ければ2000点で済んでよかった場面なんだけど……
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/31(月) 00:10:36.91 ID:zRluobz/o
ドラマは、動いていればアリっぽく見えるかもしれないから!
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/31(月) 00:21:08.36 ID:pRfuiH/w0
9mも7mも通ってるんだから、どっちか切ってればドラ受けのあるシャンポンに出来たよね……
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/31(月) 01:06:17.27 ID:yrbDIYfR0
おつやん

あえて悪い待ちにした弊害で安くなる=なるべく長く京太郎を嬲れるってことですねわかります。

381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/31(月) 03:41:17.71 ID:qp3ANH9aO
タコスが起家じゃないだと!?
382 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/11/18(金) 11:07:00.74 ID:fA3ehvGp0
およそ3週間ぶりの投稿じゃ
とりあえず1局分だけだけどあげるぜよ
383 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/11/18(金) 11:07:35.99 ID:fA3ehvGp0
 東一局1本場  ドラ4m
親 まこ
南家 和
西家 優希
北家 京太郎


京太郎 配牌
 15m 168p 455778s  南北 ツモ:西

(索子が伸びてくれればいいんだけどな………)


 これが大物手になってくれるとしたら、索子の染め手あたりだろう。
 
 だが字牌と言えど客風牌ばかり持っていても仕方ないので、ツモ切る。
384 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/11/18(金) 11:08:25.67 ID:fA3ehvGp0
14巡目


(うーん、これは・・・)


 東場なのに、優希から上がりの声は上がらず、おとなしい。


「うぎぎ………じぇえぇ………」


 というより、さっきから憎々しげに自分の捨て牌を見て唸っている。

 優希捨て牌
 1m 9m 8m 5p 6p 9s 4p 中(まこポン) 1p 南 發 4s 6p 3s  
 暗槓:4m(ドラ4) チー:123m ポン:8m (新ドラ:2s)
 

 どうみても途中から萬子の清一色に向かっているのが見え見えなのだが、フリテンではなかろうか。

 1−4、5−8、、6−9の筋は最初の3巡でもうフリテン確定だし、
 仮にツモ上がりに期待していてももう8mと4mは種切れだ。

 これがいわゆるバカチンというやつか。
385 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/11/18(金) 11:09:08.28 ID:fA3ehvGp0
 ドラ4の暗槓の時はみんなしてぎょっとしたものだが、フリテンとなれば怖くはない。
 
 そんな時俺の手牌は


 京太郎手牌

 11p 13344557788s


 順調に索子が伸びてくれて、七対子聴牌。

 1pの対子が邪魔で、索子の清一色七対子に向かってもいいかもしれないが、
 もうツモが3〜4巡程度しかないので、そんなことをしている場合ではない。
 
 というか1sが種切れなのでこの後何かと待ちを換えないといけない。
386 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/11/18(金) 11:09:58.65 ID:fA3ehvGp0
「ん、カンじゃ」

 
 そんな中、染谷先輩が引いて来た中を加槓する。


「んー、引けんか。んで、ドラは………」


 新ドラ:1p


(やった!)


 邪魔でしかなかった1pに、ドラが乗ってくれた。

 これで張れば、七対子ドラ2でリーチをかければ満貫だ。


「ドラも乗らんのかい、まったく」


 まこがぼやきながら、嶺上牌の南をツモ切る。

 優希は相変わらずフリテンのツモ切り地獄。

 俺は出来る限りポーカーフェイスを保ちつつ、ツモ山へ手を伸ばした。
387 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/11/18(金) 11:11:13.43 ID:fA3ehvGp0
 ツモ:6s

 (オッケー、こうなりゃ全ツッパだ!)

「リーチ!」


 生牌を引けてきたことに歓喜し、リーチ宣言と共に打1s。

 出上りは期待しないが、残り3回のツモで引けることを祈る。

 そして親の染谷先輩。


「んー………まぁ、ここは冒険してもいいところじゃろ」


 打6s。


「ロンです!」

「なぁあ!?」


 バラっと手牌を倒し、手役を述べる。


「リーチ一発七対子ドラ2! 裏は………乗んないか。でもえっと合計で6翻で」

「え? 違いませんか?」

「え?」


 役の合計を確認してるところで、和が遮ってきた。

 もしかして何か間違っていたか? 

 ひょっとして俺までフリテンだったっけかと急いで河を確認する。
388 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/11/18(金) 11:12:26.56 ID:fA3ehvGp0
「あ、いえ。フリテンじゃなくて………あ、やっぱり。これ七対子じゃないですね、二盃口です」

「へ? 二盃口って………」


 たしか一盃口が二つ同時に鳴かないでできている役のことだったよなと思い出して、手牌をよく見る。

 11p 334455 67788s 上がり:6s


「あ」


 本当だ。見た目が七対子だから自分でもわかっていなかった。


「だからえっと、リーチ一発平和二盃口ドラ2………倍満ですね」

「うぐっ!? やってくれるのぉ………でもま、これは捨てられんわ」


 染谷先輩が手牌を倒して、どんな手を張っていたのか見してくれる。

 999p 999s 白白白 1m カン:中中中中
「ふぁっ!?」
 混老頭 トイトイ 三暗刻 役牌二つの親倍満手。
 これは勝負に行くのもわかる。
389 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/11/18(金) 11:14:05.32 ID:fA3ehvGp0
「本当は七対子で申告したらその点しかもらえんのじゃぞー?」

「す、すいません………」


 染谷先輩が苦笑いしながら16300点を支払う。

 図らずもいきなりトップになってしまった。
390 :スレ主 ◆EvBfxcIQ32 [saga]:2016/11/18(金) 11:17:28.45 ID:fA3ehvGp0
今回はここまで。
一応もう1局の最後らへんまで書けてるんだけど、それはまた今度。

ちなみに今回の二盃口は私が実際に上がった手です。

それとこないださすがに純正じゃないけど九蓮宝燈あがったよ。
スレ主が死んで打ち切りにならないよう祈っててね。
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/18(金) 12:19:39.46 ID:pWR4BzbMo

待ってる

じ、純正じゃないなら大丈夫やろ
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/18(金) 12:24:49.67 ID:M3CcY6rSO

大丈夫大丈夫。俺地和とスーアン単騎あがった日があったけど酔ってスッ転んで骨折しただけだったから
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