男「はぁ?ダンジョンに行ってこいって?」

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414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/10(火) 15:31:55.86 ID:h9oM1koVO
金髪さん一応雇い主なんでしょRPGの大切な顧客にタメ口なのか……
415 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:21:42.71 ID:2+dJOTO10
すいません昨日は寝落ちです……投下予定だったとこまで投下します

>>413
金髪にはps4ゲーム「ブラッドボーン」ばりの浪漫溢れる改造変形バ火力武器をメインに使ってもらうつもりです。キャラはFF8のゼルをイメージしてます。ガテン系の気のいい兄ちゃんです
>>414
まぁ同い年だし金髪も気にしない性格なので。ドラクエ3のルイーダの酒場みたいなもんです
416 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:22:36.79 ID:2+dJOTO10

『下層への階段』


男「あったな、次の階層への道」

金髪「この部屋は何なんやろな?あちこちにデカイ岩がゴロゴロ落ちとるけど」

魔少女「この階段……先が真っ暗で何も見えませんね。恐らく、途中で別空間に繋がっているんでしょうが」

金髪「この階層はほぼほぼ探し尽くしたし、次行こうや」

男「そうだな。でもその前に……」チラッ



ゴブリンの群れ「キキーッ!!」


男「こいつ等どうする?」

金髪「ほっといて下降りてえぇんちゃう?」

魔少女「しかし……この魔物達を倒しておけば、換金するアイテムが増えますよ?」


ホブゴブリン「……ニンゲン……」


男「お、何かデカイ奴がいるぞ?しかも俺らの言葉喋ってるし」

ゴブリン達の群れの奥には、ボス格と思われる一回り体の大きなホブゴブリンと呼ばれる魔物もいた。

ゴブリンがランク1、ホブゴブリンがランク4となる。

この中で一番実力のある魔少女でも、ホブゴブリンを相手にするには骨が折れるだろう。
417 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:23:35.62 ID:2+dJOTO10
魔少女「……おかしいですね。先ほどの大ムカデといい危険度ランク2のダンジョンなのに、それ以上のランクの魔物がやけに頻繁に出てきてるような……」

男「でもまぁ、1体づつだろ?それに俺等も3人いるんだし、実力的には丁度いいんじゃないか?」

金髪「せやせや。金を稼がなあかんのも確かやし……やろか?」

男「おし……魔少女!とりあえず雑魚を片付けてくれねーか?」

魔少女「わかりました……火球・火球・火球ッ、3種複合魔法『ガトリングファイヤーボール』ッ!!」ボゥッ!!


ドドドドドドドドドッ!!!


前に突き出した魔少女の両手から、小さな火球が連射されていく。
火球はゴブリン達を次々と撃退していった。


魔少女「……ふぅ……これであらかた片付いたと思いますが……」


ホブゴブリン「…………」シュゥゥウッ……


男「親玉は殆ど無傷か。まぁ、そんな簡単な話じゃないよなぁ」
418 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:27:53.47 ID:2+dJOTO10
ダッ!!

男「おっ!?」

前に飛び出したホブゴブリンは、そのまま男へと殴りかかる。

ボクサー並みの両拳の連打により、男はひたすら躱す事しか出来なかった。

男「くっ、流石格上。やっぱ1対1じゃあちょっと厳しいな」

ホブゴブリン「ォォォォォオオオッ!!」シュシュシュシュッ!!!

魔少女「補助魔法をかけます……『フィジカル』」カッ!!

男「うっし!!これで身体が軽くな」

ホブゴブリン「オオオッ!!!」ブンッ!!

ドォンッ!!

男「がっ……は……」ドサッ……


一瞬の隙に、ホブゴブリンの渾身の拳が男へと当たり、男は岩壁へと衝突する。ダメージは大きいだろう。


魔少女「先輩!!」

ホブゴブリン「オオオッ!!」ダッ!!

そのままホブゴブリンは、魔少女へと突進していく。
か弱い魔少女がこの一撃をもらえば、ひとたまりもないだろう。

金髪「させるかボケェ!!」ブンッ!!

ズシュウッ!!

その前に、金髪が右腕のパイルハンマーでホブゴブリンの腕を斬りつける。腕に刻まれた傷はかなり深く、ホブゴブリンの攻撃を弱める事となるだろう。


しかし
419 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:29:07.00 ID:2+dJOTO10
ホブゴブリン「……ニンゲンン……」シュゥゥウッ……

金髪「ッ!?何や……傷がえらい勢いで治っていきよる……」

魔少女「あの魔物、何か変です……一体……」

通常ではあり得ない速さで、ホブゴブリンの傷が治っていく。格上の魔物ならば回復魔法などの様々な回復手段を持っているが、ホブゴブリンにはそれは無いはずである。

そもそも、人語を解している時点で、既に普通のホブゴブリンではない。


ホブゴブリン「ォォォォォオオオッ!!!!!」ゴキゴキゴキッ!!!


魔少女「身体が大きくなっていく……こんな事……」

金髪「なーんや……ヤバそうな匂いがプンプンすんなぁ」

雄叫びと共にホブゴブリンの身体が徐々に大きくなっていく。骨格すら作り変えられているようだ。

先ほどまでは精々150cmほどだった体長は、いまや180cmほどにまで大きくなった。より強く、より頑丈に。


魔少女「危険度6……7くらいはありそうですね……」

金髪「こら、ワシらの手に負えなさそうやな……」


ホブゴブリン改「ニィンゲェン……」ユラッ……

明らかに異常なホブゴブリンが、魔少女達へと攻撃を仕掛けようとしたその瞬間


ズシュッ!!
420 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:30:24.67 ID:2+dJOTO10
魔少女「ッ!?先輩……」

男「魔少女!!速攻で撃てるデカイ魔法をコイツに撃てッ!!」

魔少女「は、ハイ!」ググッ!!

ホブゴブリンの背後から、先ほど一撃を喰らった男がホブゴブリンの右腕を斬り落とした。

完全に不意をついた一撃だ。

ホブゴブリン改「グォォォオオオオオッ!!!」ガシィッ!!
男「ガハッ!?」

すかさずホブゴブリンが男の首を残った左手で掴む。プロレスラーのような肉体から繰り出される腕力は、とても男が抵抗できる力ではない。


金髪「隙だらけやでデカブツ」グッ!


そのホブゴブリンの背後には、右腕のパイルハンマーを構えた金髪が。


金髪「本日2発目やッ!!」カチッ!


ズドォォォオオオオッ!!!

ホブゴブリン「グガァァアアッ!!!」ドンッ!!

男「ブハァッ!!」ドサッ!

そのまま巨大な杭を放つパイルハンマーがホブゴブリンの背中へと炸裂し、ホブゴブリンは坑道の壁に叩きつけられる。
捕まえていた男を思わず放してしまうほどに強烈だったのだろう。
421 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:40:45.46 ID:2+dJOTO10
魔少女「撃ちます……二人とも避けてください!!」ググググッ!!

男「ヤバッ!!」ダッ!!

2つの練り上げられた魔力球を浮かび上がらせ、魔少女が叫ぶ。同時に男と金髪は全力でその場から離れる。


魔少女「火球、光球……2種複合『フレイムアロー』!!」ドドドドッ!!

1つの魔力球から、10発程の炎の矢がホブゴブリンへと放たれる。

ホブゴブリン「グォォォオオオオオッ!!!」

矢はホブゴブリンの身体を貫き壁へと突き刺さり、ホブゴブリンを壁に固定した。

魔少女「更に火球、火球……2種複合魔法『フレイムボール』」ドンッ!!

ドォォオンッ!!

そしてもう1つの魔力球から通常よりもふた回りほど大きな火球が、ホブゴブリンへと放たれ炸裂する。

どうやら魔少女は、2種複合の魔法を2つ作成していたようだ。
より複雑な3種複合よりも威力は劣るが、手早くダメージを与える為に考えたのだろう。
422 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:41:56.74 ID:2+dJOTO10
金髪「やったんか!?」

魔少女「いえ……金髪さんの武器で倒しきれないのでしたら、あの程度の魔法では無理です。ここは今すぐ退きましょう」

男「うし!そうと決まれば」チラッ


3人は同時に、次の階層へと続く階段へと目を向ける。
次の階層とは空間自体は直接繋がっていない。
ダンジョンの外から入ってきた人間達はそれを通り抜ける事ができるが、ダンジョンで生まれた魔物達には別階層へ行くことは出来ないのだ。


ホブゴブリン改「ォォォォォオオオッ!!!」

男「走れっ!!」ダッ!!

ホブゴブリンの雄叫びが響き渡ると同時に、3人は階段へと全力で走り出す。


ガラガラガラッ…………

金髪「うお!?アイツデッカイ岩持ち上げとんやけど」

男「いいから早く走れ!!」

ホブゴブリン改「ォォォォォオオオッ!!!」ブンッ!!

この部屋に無造作に転がっていた人を潰すには十分なほどの大きさの岩を、ホブゴブリンが男達目掛けて投げ飛ばす。

ドォォォオオオオオオンッ!!!


ホブゴブリン改「ニンゲン……ニンゲンンンンン!!!」
423 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:44:34.32 ID:2+dJOTO10
第三層

『火晶石の採掘坑道』


男「ハァッ……ハァッ……」

金髪「流石に……ちょっと死ぬかと思ったわ……」ハァッ……

魔少女「…………」ゼェッ……ゼェッ……

男「おい魔少女……一気に走り過ぎてダウンしてやがんな」

金髪「ここらでちょっと休もか……アイツも別の階層まで来られへんし」




……………………



カウボーイ「おーいプリっちー、ちょっと頼み事があるんだけどー」

プリースト「断る。そしてその呼び方はやめろ」

カウボーイ「まぁまぁいーじゃない。それでさー、ちょっと『例の件』でアクシデントがあっちゃってね?こないだここに来たあの少年達が危ないかもしれないんだよー。ちょっと片付けてきてくんない?」


プリースト「……『バグ』か?」


カウボーイ「そゆこと。頼んでいい?皆出払ってるからさぁ……」


プリースト「……ハァッ……場所はどれだ?」
424 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:45:51.62 ID:2+dJOTO10

…………



魔少女「ふぅ……ようやく呼吸が整いました」

金髪「魔少女ちゃんビックリするくらい体力ないなー、天は二物を与えずってヤツやな」

男「これでも無事に下に降りるまで体力が保っただけ大成長なんだがな」


魔少女「それでは進む前に……先ほどの件について話しておきましょう。なぜあのホブゴブリンはあれほど強力な個体となっているのか」

男「確かにどんだけダメージ与えても、治るだけでなく更に強くなるんだもんなー。何なんだアイツ」

金髪「突然変異ってヤツなんか?それでもあんな極端なヤツにはならへんやろ。『バグキャラ』やであんなの」

魔少女「この先……同じような特異個体が出てこないとも限りません。もし敵魔物に異常が見られれば即時撤退を。どうやら傷つければ傷つけるほど強力になるようなので、それならば交戦しなければよいだけですので」

男「了解。ギルドに戻ったらオペ姉さんに報告しとかなきゃな」

金髪「じゃ、引き続き探索といこか!さっさと火薬を見つけて脱出した方がよさそうや」
425 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:46:33.43 ID:2+dJOTO10
投下終了です。ではまた。
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/10(火) 23:39:24.23 ID:9YGApZs/0
乙!
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/14(土) 04:44:08.04 ID:OK4R5Elwo
潜れば潜るほど火薬が減っていく負のサイクルに陥りそうだなぁ
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/24(火) 15:02:38.27 ID:qPcBE0Bk0
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/06(月) 12:57:16.39 ID:mtGOjZec0
保守
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 16:05:20.30 ID:DMdt0niF0
続きまだ?
431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/13(月) 16:26:32.90 ID:AoJkvaw4o
保守
432 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 19:52:48.06 ID:tp7V0iLq0
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/08(土) 22:43:11.21 ID:7wj1Fzpxo
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/14(金) 20:53:54.41 ID:Mn0q2sEYO
楽しみにしてるSS多くてつら…苦はない
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/28(日) 03:21:10.45 ID:ma/6DtIxO
エタった…のか?
436 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 08:27:00.21 ID:E5+C4lEP0
お久しぶりです。1です。軽く投下していきます。
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/29(月) 08:46:21.68 ID:q9AH3d07O
待ってた(*゚∀゚)
438 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 09:13:25.24 ID:E5+C4lEP0
『採石保管所』


金髪「あったぁぁあ!!ココやココ!!間違いあらへん」

傷つく度に異常な成長を遂げるホブゴブリンから階層を移動することで逃れた3人は、十数分程の探索で採掘してされた火薬石が保管されているであろう大部屋を見つけた。

男「ふぅーようやく見つけたなー。この階層もゴブリンばっかで疲れたわ」

魔少女「先程の……特異なホブゴブリンのような魔物がいなかったのは幸いです。それで金髪さん、目的の火薬石というのはどれになるんですか?」


金髪「え?……これぜんぶ火薬とちゃうんか?」

魔少女「恐らく……別種の鉱石も混じっていると思いますが……まさか……」

男「……これ全部調べなきゃならないパターンかもしかして」


しかし、石にも様々な種類がある為どれが目的の火薬石かはわからない。

魔少女「わかりました……火をつけてみましょう」

男「ちょっ!?ちょっと待て!!こんな火薬の塊みたいなモンに火をつけたら大爆発すんだろ」

魔少女「百も承知です……鉱石の小さなカケラや粒状のものに火をつけます。幸い品質は低いとの事なのでそれだけで怪我するような爆発は起きないでしょう。
それと、この部屋で火をつけると空気中に舞っている火薬の粉末で粉塵爆発を起こすかもしれませんから一通りカケラを集めたら別の部屋へと移動しましょう」

金髪「いやーなんや悪いなー」ハッハッハッ

男「自分の目的の素材のことくらいしっかり調べとけ馬鹿野郎!!」
439 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 09:15:16.16 ID:E5+C4lEP0

『ただ広いだけの大部屋』


ボンッ!!

男「うぉっ!!石が軽く爆発したぞ」

魔少女「どうやらコレのようですね……黒いざらついた感じの鉱石です」

金髪「んじゃ、早速さっきの部屋に戻ってワシのパイルハンマーで粉々にして持って帰ろか!!」

男「だから爆発するって言ってんだろうがぶっ飛ばすぞこの野郎!!」

魔少女「私の水系の魔法で……高圧カッターのように切りましょう」

金髪「それ火薬湿気ったりせぇへん?」

魔少女「天日干しすれば……多分大丈夫じゃないでしょうか?本来なら、木ノミなどで削ったりするんでしょうが」
440 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 09:22:57.44 ID:E5+C4lEP0

『採石保管場』


魔少女「水……風……複合魔法『ウォーターカッター』」ズシャァァアアッ!!

男「おー切れた切れた。あとはコレをバッグに詰めれるだけ詰めればいいか」

金髪「いやー、ホンマ魔少女ちゃんいてくれて助かったわ。ワシだけやったらとんだどれが火薬かわからんで無駄足になるとこやった」

魔少女「お仕事ですから……お役に立ててよかったです」

男「よっと……結構重いな。とりあえずコレで目標達成か?」

金髪「せやな!!こんだけアレば当面弾の火薬には困らんやろ!!ついでに金になりそうな鉱石も結構取れたし、あのヤバイヤツのようなんが出る前にささっと出口探して帰ろか」
441 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 09:25:21.30 ID:E5+C4lEP0

『ォォォォォオオオオオオッ!!!!!!!』ビリビリビリッ!!!


男「ッ!?今のって……」

魔少女「まさか……魔物が階層を越えて追ってこれる訳が……」

金髪「おいおいまさかまたアイツかいな」


突如、坑道内に響き渡った雄叫びは、上の階層で3人を圧倒していたホブゴブリンをイメージさせていた。

ダンジョンにて階層を移動出来るのは、『ダンジョンの外』から来た冒険者のみ。
このダンジョンの魔物であるホブゴブリンに追ってこれるハズは無いのだ。


魔少女「こうなるのでしたら……先に出口を確保しておくべきでしたね。私のミスです」

男「なわけねーだろ。どっちにしたってあの雄叫びがヤツならどっかでカチ合うんだからな」

金髪「せやせや。それに、この階層でならもしかしたらアイツを倒せるかもしれへんで?」チラッ

金髪は、ふと目を部屋全体に向ける。
そこには、先程の入手した火薬石の岩が、至るところに配置されていることが確認出来た。


魔少女「確かに……多少リスクはありますが、ココなら……コレを使えば倒せるかもしれません」
442 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 10:18:52.21 ID:E5+C4lEP0
…………



ホブゴブリン改『ニィンゲン……』


上の階層で死闘を繰り広げたホブゴブリンが、先程まで男達がいた採石保管場へと足を踏み入れる。

本来、そのダンジョンに生息する魔物は階層を跨ぐ事は出来ない。ここにこの魔物が降りてきた事自体が異例、異常なのだ。

しかし、ここはダンジョン。何が起きても行うべきは生きて地上へと戻る事。
どんな魔物が現れようとも、それが出来ればいいのだ。


例えどんな手段を用いても。


男「今だ魔少女!!」

魔少女「『ファイヤーボール』」カッ!!


そして魔少女が部屋の外から火球を撃ち込んだ瞬間、部屋の火薬岩に引火し、部屋は轟音とともに爆炎に包まれた。
443 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 10:19:41.55 ID:E5+C4lEP0
パラパラッ……


魔少女「作戦成功ですね……火薬岩に粉塵爆発も合わせて大爆発です」

金髪「ッかー……ごっつー威力と爆音やったわー……あれ?どないしたんや男」

男「耳が……塞ぐの間に合わなかった……」キーン


男「しかし凄い爆発だったな……これなら流石のあのバケモンも木っ端微塵じゃないか?」

金髪「どれどれ……せやな。何処にも死体すら見当たらんわ」

魔少女「……ッ!?まだです!!」


部屋の中の様子を3人が伺う中、魔少女が何かに気付く。

爆発によって粉々になったハズのホブゴブリンの禍々しい気配を感じ取ったのだ。

そしてその瞬間、部屋中に散らばっていたホブゴブリンの肉片が一点に集まっていくのを確認する。
444 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 10:53:16.48 ID:E5+C4lEP0
男「な……マジかよ!!まだ終わらないのか!?ホントどうやったら倒せるんだアイツ!!」

金髪「こうなったら逃げるが勝ちや!!流石にダンジョンの外までは追ってこられへんやろ!!」

魔少女「そうですね……目的のモノは手に入れました。後はダンジョン協会などに報告して任せましょう。行きますよ先輩」

男「あぁ、わかってる。だけど出口はまだ俺ら見つけてねえぞ?」

魔少女「この部屋にたどり着くまでに……おおよそのマッピングは済ませてあります。恐らくですが出口の見当はつきました。急ぎましょう」



ホブゴブリン極『ォォォォォオ"オ"オ"ッ!!!』


肉片は再生されると共に、ホブゴブリンを更に異形の化け物へと進化していく。上半身のみ再生された身体を見るだけで、先程までとは桁違いにレベルが上がっているのが感じられた。




男「うぉ!?もう上半身が殆ど再生しやがった!!よし、とっとと逃げるか!!」

魔少女「その前に……『ミラージュ』!!」

魔少女が魔法を発動させると、大部屋がもくもくと煙に包まれていく。

魔少女「簡易的な幻覚作用のある煙魔法です……これで少しは時間が稼げるハズ。行きましょう」
445 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 10:54:00.14 ID:E5+C4lEP0
ダッダッダッ!!


男「本当にこの方向であってんのか魔少女!?」

魔少女「恐らく……としか言えません。先に階段を見つけられていればよかったのですが」

金髪「ダメやったらダメやったらや。そんときゃ腹括ってもう一回アイツをバラバラにしたらえぇ」

男「それもそうだな。魔少女がいなけりゃもっと迷ってたんだ。逃げられるチャンスがあるだけマシか」

魔少女「広い空間に出ます……恐らくこの先に……」


男「お……おぉ!!あった!!階段があった!!」


3人が辿り着いた先には、魔少女の見事な予想通りに最下層へと続く階段があった。
しかし周囲には火薬岩のような鉱石が転がっている。

ホブゴブリン極『ォォォォォオオオッ!!!』ボゥッ!!


同時に、距離はあるものの背後から追いかけてきた強靭に進化したホブゴブリンが、手から火球を放つ。

それは魔少女が散々ホブゴブリン相手に撃ち放ったファイヤーボールであった。
それは真っ直ぐに3人へと飛んでいく。

魔少女「そんな……まさか私の魔法を学習したという事ですか?」

男「この部屋にも火薬の岩っぽいのが転がってる!!早く逃げねぇと誘爆して全員丸焦げになんぞ!!」

金髪「階段に突っ込めぇぇええ!!」


ホブゴブリンの放った火球が通路の岸壁に衝突した瞬間


ドォォォオオオオオオンッ!!!!


階段のある空間全体を含め、ダンジョン内に爆炎が広がった。
446 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 10:59:29.29 ID:E5+C4lEP0
最下層

『火蜥蜴の巣』


男「痛ててて……オイ、全員無事か?」

金髪「ワシは五体満足や。魔少女ちゃんは?」

魔少女「私も大丈夫です……どうにか全員無事に降りられましたね」

男「ここまでくれば、後はダンジョンから出るだけだ。さっさと……何だコレ……」

再び階層を越えてホブゴブリンが追いかけてくる前にダンジョンから脱出しようとする3人の眼前には、異様な光景があった。


本来このダンジョンの最下層には、洞窟内の火薬岩を主食とする『火蜥蜴』達の縄張りとなっている。

ランクは5ほど。見た目や大きさは火球を吐くコモドドラゴン。ランク2のダンジョンならばボスと言える魔物である。


その火蜥蜴達が怯えるように巣として作られた広い空間の隅で縮こまっていた。
447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/29(月) 12:28:35.71 ID:1upb6ozpO
投下おつ
敢えて言うけど
運営がサボってたから残ってるだけで
>>1が生存報告してないから本来は3月10日に強制html化されてるからな?
448 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 13:09:55.47 ID:E5+C4lEP0
プリースト「来たか。思ったより遅かった」


男「アンタは……カウボーイのおっさんの事務所にいた……」

金髪「誰やこの兄さん?神父さんか?」

魔少女「プリーストさん……でしたね確か。何故貴方がこんなダンジョンにいるのですか?」


巣の中心には、教会の神父の格好をした男。

カウボーイに頼まれてこのダンジョンに直接転送してきたプリーストが、聖書のような本を開き立っていた。


プリースト「少々ココで問題が起きた」

男「問題?……あ!?もしかしてあのホブゴブリンのことっすか!?倒しても倒しても倒せないヤツ!!」

プリースト「遭遇していたか。よく無事だったな」

魔少女「プリーストさん達は……あのような魔物をご存知なんでしょうか?」

プリースト「知っている。あれは『バグ』だ」スッ……
449 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 13:12:50.96 ID:E5+C4lEP0
バチバチバチバチッ!!!

ホブゴブリン極『ォォォォォオオオッ!!!!』

バチバチバチバチッ!!!


同時に、異形に進化したホブゴブリンが、ダンジョンの魔物には越えられないハズの階層の空間を破るように、最下層へと浸入してきた。


金髪「チッ!!やっぱ追ってくるんかい!!」

男「プリーストさん早くダンジョンから出ましょう!!アイツ倒しても倒しても復活して進化していくんです!!ダンジョンから出ればアイツも追っては」

プリースト「『バグ』はこの外にも出る。今までも何度も出現した」

魔少女「な……ダンジョンの外に魔物が?」


プリースト「退がれ。死ぬぞ」ビリッ!!

フワッ……

プリーストは、手に持った聖書のような本から2枚のページを破り、その2枚の紙片はプリーストの側で浮いている。

魔少女「あれは……魔道書?いえ、ならばページを破る意味が……あれは一体」

プリースト「…………」スッ……


そのままプリーストは、両腰にある鞘に収まった剣の柄に触れながら目を瞑る。
450 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 13:17:42.49 ID:E5+C4lEP0
バチバチバチバチッ!!!!

ホブゴブリン極『ォォォォォオオオッ!!!』

バチバチバチバチッ!!!!

ズゥゥウウンッ!!!


ホブゴブリンは空間を完全に越え、最下層の地を踏みしめる。

見た目は既にホブゴブリンとは冗談でも言えない。背丈2メートルを優に超える鬼だ。

そして、目を瞑り静かに佇むプリーストへと突進し、鋭い爪を振りかざす。






プリースト「『主よ。私を許したまえ。貴方の造りし戒めを破るこの私を』」






そして瞬きほどの瞬間

鬼の四肢は胴体から切り離された。
451 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 13:21:20.53 ID:E5+C4lEP0
男「……え?」


まさに一瞬だった。
いつ両腰の剣を鞘から抜いたのかもわからないほどに。



プリースト「『ゴルゴダの丘』」ブゥンッ……


ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!!


そして切り離された四肢と胴体へと向かって、何十もの剣が突き刺さる。


3人に一瞬だけ見えたのは、破られた聖書らしき本の紙片が一枚、青い炎を上げて燃え、同時にプリーストの両手から何十もの魔法陣のようなものが形成されたこと。
恐らくはそこから放たれた剣だろう。鬼の胴体と四肢は、そのまま巣の壁面へと剣で突き刺さる。


それはまさに十字架に剣で磔にされているかのようであった。
452 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 13:24:54.53 ID:E5+C4lEP0
男「……一瞬で……」

金髪「な……何やねん今の……」

魔少女「今のは……あの紙片を触媒に魔術を?……次元が……違いすぎますね……」


3人は、ただただ呆然としていた。自分達があれほど逃げ回っていたホブゴブリンに対し、この最下層に降り立ってから僅か5秒も経たない内に完全に無力化してしまったのだ。

男と魔少女は、プリーストがあのカウボーイと同じレベルの存在である事は予想していたが、あの滝のダンジョンで見たカウボーイよりも遥かに衝撃的であった。
まぁカウボーイが本気を出したわけでもないのでどちらが上など検討もつかないが。


ホブゴブリン『ォ……ォオオ……』グググッ……

男「ッ!?プリーストさん!!まだです!!アイツはまだ再生します!!」

バラバラにされ、磔にされたホブゴブリンが生きているのを確認し、男が叫ぶ。

そもそも火薬岩の爆発で粉々になっても再生したのだ。四肢を斬られ磔にされた程度ではまだ再生できるだろう。


ボゥッ!!


魔少女「また……あの紙片が燃えて」


プリースト「『グランドクルス』」スッ、スッ……


カッ!!!


2枚目の紙片が燃え、同時にプリーストが指先で軽く十字を切ると、十字架のように磔にされたホブゴブリンの前に光の十字が現れ、そこから強烈な光が発せられる。
453 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 13:26:50.34 ID:E5+C4lEP0
男「グッ!?…………ッ!?消えた……」


光が消えた後3人が見たものは、ホブゴブリンが磔にされていた壁が十字架のように抉り取られた光景であった。


ホブゴブリンや刺さっていた剣は跡形も無く消えている。


プリースト「終わりだ。俺は帰るぞ」スッ

男「ちょ!?ちょっと待ってください!!あの化け物は結局何だったんですか!?」

魔少女「貴方の持っている本は……魔道書なのですか?それともまた別の」

プリースト「アレについてはカウボーイに聞け。この本はただの聖書だ。膨大な魔力と祝福を込めて書き記された」ブゥンッ!!


そう言い残し、プリーストは何らかの方法を用いて何処かへと転送された。
454 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 13:35:31.90 ID:E5+C4lEP0
男「ちょっと!!……行っちまった。仕事人だなあの人」

魔少女「魔力と祝福を込めて書かれた聖書……とするとあの本自体……いえ、記述された文章自体に魔法の術式と発動の為の魔力が……」ブツブツ……

金髪「おーい魔少女ちゃんがトリップしとんのやけど」

男「あー昔から深く考えるとこうなるんだ。こんまま抱えて持って帰ろう」ヒョイッ

魔少女「そもそも文字に魔力を宿すとは一体……インクや紙自体に何か特殊な素材が使われているのか……そもそもたった一枚の紙片であれほどの大魔法を発動されるとは……」ブツブツ……

金髪「扱い慣れとるなー……うし!周りにおる火蜥蜴達が襲ってくる前に、さっさとダンジョンから脱出しよか!!」



『仁市第二運動公園ダンジョン 』をクリアした。

クエスト『協力者求む。ダンジョン探索に同行してくれる方募集』をクリアした。
455 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 13:36:59.86 ID:E5+C4lEP0
18:20

仁市 駅前


金髪「うっし!!アイテムの換金も終わったし火薬岩から火薬の生成も注文したし、今日の探索は大成功やったな!!2人ともお疲れさん!!」

男「いやー疲れた疲れた。ギルドの依頼ってのは大変なんだなー」

魔少女「今回は……プリーストさんいわく『バグ』と言う魔物までいましたからね。アレは一体何だったのか」

金髪「まぁあのバケモンも神父さんが倒してくれたんやし、今は探索成功を祝っとこうや!!どや?どっか適当なファミレスでメシでも」

男「おーいいねー!!ついでに報酬の山分けもそこでやろうぜ」

魔少女「…………」



倒しても倒しても再生し、更に強靭に進化して何処までも追いかけてくる魔物『バグ』。あの存在は明らかに異常であった。

魔少女「アレは……自然に発生する魔物なのでしょうか?もしかして人為的な何かが……」

男「おーい魔少女!早く行こうぜー」

魔少女「……今は情報も少ないですし、考えても仕方ないですね……」
456 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 13:45:39.39 ID:E5+C4lEP0
9日目成果


報酬
100ゴールド
ダンジョン内で稼いだ金品50%→190ゴールド

を獲得した。


金髪に探索協力を頼むことが出来るようになった。


所持金55ゴールド→345ゴールド→交通費食費諸々で330ゴールド


オートマタ引き取り代金 残り670ゴールド
457 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 13:47:02.90 ID:E5+C4lEP0
投下終了です。

>>447
色々忙しくて申し訳ないです。


ではまた。
458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/29(月) 21:43:44.16 ID:DN8/63wCo
459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/01(木) 02:26:04.59 ID:9LE97Oyjo
おつ
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 20:20:37.55 ID://eJjTOpo
こんなのが出るんじゃダンジョンの危険度認定や保険が面倒な事になるな
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/17(月) 15:20:30.18 ID:QjUK7jFHo
続きが気になる乙
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 17:54:22.44 ID:oRX5QDTS0
はよ
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/22(火) 01:40:54.64 ID:GXf/dzFoo
ずっと待ってるんだから投稿してくれー
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/22(日) 02:37:14.21 ID:+nAWzY/BO
まだかよー!
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 11:33:00.57 ID:xpbsA1+00
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/13(水) 10:31:53.02 ID:Jz4IaFsW0
【最悪のSS作者】ゴンベッサこと先原直樹、ついに謝罪
http://i.imgur.com/Kx4KYDR.jpg

あの痛いSSコピペ「で、無視...と。」の作者。

2013年、人気ss「涼宮ハルヒの微笑」の作者を詐称し、
売名を目論むも炎上。一言の謝罪もない、そのあまりに身勝手なナルシズムに
パー速、2chにヲチを立てられるにいたる。

以来、ヲチに逆恨みを起こし、2018年に至るまでの5年間、ヲチスレを毎日監視。

自分はヲチスレで自演などしていない、別人だ、などとしつこく粘着を続けてきたが、
その過程でヲチに顔写真を押さえられ、自演も暴かれ続け、晒し者にされた挙句、
とうとう謝罪に追い込まれた→ http://www65.atwiki.jp/utagyaku/

2011年に女子大生を手錠で監禁する事件を引き起こし、
警察により逮捕されていたことが判明している。
467 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 20:42:05.50 ID:LAlp/wM/0
お久しぶりです、1です。
ふと思いついたので投下していきます。
468 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 20:44:58.23 ID:LAlp/wM/0
ダンジョン生活10日目

7:30

男「うー……ダンジョン探索の次の日は、毎回身体がダルいなー……魔力たくさん使ったり身体酷使するからしょうがないんだろうけど」グデー


母「ほらリビングのテーブルでグデってんじゃないわよーご飯食べたらのいたのいた」ゲシッ!!


男「いって、それがダンジョンで死闘を繰り広げた息子に対する態度かテメェ」


母「ランク2くらいで死闘繰り広げるんじゃまだまだよのーホッホッホ☆」

男「うぜぇー……そいやアンタもダンジョン行ってたんだよな。ランクはどんくらいなんだ?」

母「んー72くらいだったかなー☆」

男「あーはいはい。俺がそんだけ凄い探索者の息子なら今頃お城みたいな豪邸でバスローブ着てブランデー片手に佇んでるわ」

母「アンタそんな願望あったの?引くわー」ウワー

男「生活費までギャンブルに突っ込もうとするテメェに言われたくねぇよ!!」

母「お母様に向かってテメェとは何かな?ん?」グググッ!!

男「イテテテテテ!!極まってる!!コブラ極まってるから!!」バンッ!バンッ!!
469 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 20:47:27.59 ID:LAlp/wM/0
10:30

魔少女の部屋

魔少女「今日は……【RPG】のギルドに行こうと思います」

男「あー、そいや依頼の報告もまだだしな」

魔少女「いえ……それは昨日の内に公式ネットサイト内のメールで済ませておきました。金髪さんにもギルドに依頼完了報告をしてもらってます」

男「え?メールで出来たの?」

魔少女「今の時代……何でもネットで済ませられるのです。今日は次の依頼の確認と、昨日の『バグ』とやらについてカウボーイさん達にお話を伺おうかと」

男「あぁ、プリーストさんが言ってたな。何か知ってるみたいだし」

魔少女「と言うわけで……少しここで魔力操作の特訓をしてからお昼を食べてから向かいましょう」


男「へいよー」
470 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 20:49:49.83 ID:LAlp/wM/0
13:30


ダンジョン『株式会社【RPG】』

ギルドエリア端 寂れた事務所



カウボーイ「結論からいうと、アレは昔から『バグ』と呼ばれている魔物だね。いや、『バグ』に憑かれた魔物かな?」

魔少女「『バグ』に憑かれた?……アレはそういった魔物の種類という訳ではないのですか?」

カウボーイ「例えばね?ダンジョンを1つのシステムと考えてみてよ。ダンジョンに溢れる魔力によってそのダンジョンの世界や生態系、アイテムとかが生まれてる訳なんだよね?これによって1つの大小様々な世界が生まれてるわけなのよ」

男「ふむふむ」

カウボーイ「その過程で時々魔力の循環不良だか過剰供給やらでダンジョンのシステムに不備が出るわけよ。それがそのダンジョンランクに釣り合わない強い弱い魔物や、アイテムのレア度が高いものを拾う事がある理由だね。
だけど基本的にはその不備すらシステムに上手く組み込まれているわけ」


魔少女「そこまではわかります……ダンジョンに溢れる魔力は一体何処から来ているのかやアイテムが生成される過程など、未だ解明されていないこともありますが」
471 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 20:51:37.12 ID:LAlp/wM/0
カウボーイ「まぁ地脈エネルギーの具現化だとか地球外生命体のオーパーツだとか異次元干渉とか諸説あるけどどれも眉唾モノだよねー……的を得てるのもあるけど」ボソッ

男「え?」

カウボーイ「いやまぁそれはおいといてー。ようは『バグ』ってのはそのシステムの不備がとんでもないレベルで起きた状態ってところかな。
それによってとんでもない強さや性質の魔物やアイテムが生まれる事もあって、それが今回君たちの遭遇した魔物ということ」


魔少女「なるほど……非常に強力な魔物が生まれる危険と共に、非常に強力なアイテムが生まれる可能性があるんですね」

男「でもあんなバケモンがいるなんて聞いたことないぞ?倒しても倒してもより強くなって復活するなんてよ」


カウボーイ「そりゃあそうさ。『バグ』の存在、特に魔物のバグの存在はダンジョン協会によって、キツーく情報が封じられているからねー。
昔は世界中で年に数回レベルだったけど最近は発生件数が急増してるから大変そうだけど。
もしかしたら、近いうちに君達のところにも協会の人間が来るかもね」
472 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 20:55:46.43 ID:LAlp/wM/0
魔少女「余計な混乱を……避ける為にですか?」


カウボーイ「そーいうこと。大体あのレベルのバグに遭遇することなんざ宝くじ2等くらいの確率だからね。君達オートマタの件と言い凄い運だねー」

男「今回は運が悪い方に振り切れてるけどな。というかあのレベル?バグにも種類があるのか?」


カウボーイ「あるよーいっぱいねー。魔物にもアイテムにも、バグにはその性質毎に分類されてる。全部で22種類。タロットカードの大アルカナで例えられてるよ」


魔少女「タロット……ですか?」

カウボーイ「そ。ジ○ジョとかハウスオブ◯デッドとかで有名でしょ?『世界』とか『星』とかさ」

男「アレって占いだろ?」


カウボーイ「そのとーり。でもこの世界の様々な事象はこの22種類のアルカナで表せられるっていうからねー。
ちなみに君達が戦ったのは『審判』の性質を持つバグかな。再生・復活・変化を司る上位クラスのタチの悪ささ」

魔少女「もしかして……元々の魔物の強さにそのアルカナの性質が加わるんですか?だとしたら元々強い魔物にそんな性質が加われば……」


カウボーイ「そーだねー。仮にランク60くらいの魔物一体に『審判』のバグが発生したとしようか?」


カウボーイ「その時は中堅国家レベルの武力でようやく対等ってところかな」

男「……マジ?」


カウボーイ「結構マジ。ちなみにもっとヤバイ『バグ』は何種類かあるからね?そしてさっきも言ったけど発生頻度は急増している。バグアイテムの恩恵も凄くなるけどその辺気をつけて今度からダンジョンに潜ってねー」
473 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 21:02:02.47 ID:LAlp/wM/0
東京 新宿

ダンジョン『無限城』

ランク『60』(日本第三位)


総面積18.23?の現実の新宿を元にした様な空間固定型のダンジョン。
永遠に明けない夜の空に建ち並ぶ塔のような城のような高層ビル群の数は現実の十数倍の数になり、そのビル1つ1つが難関ダンジョンといってもおかしくない程の構造となっている。それ故、探索範囲は縦にも広く、総探索面積は世界でも100位内に入る。

そして現実で建物が1つ増える毎にダンジョン内でも新たな建物が生まれ、無限に増えていく事から『無限城』と名付けられた。




474 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 21:06:19.06 ID:LAlp/wM/0
15:00

『無限城』
歌舞伎町エリア『不夜城』最上階


兄「いやー、やっぱ強ぇーなーこのダンジョンの敵は。流石に疲れた」フゥッ

一息ついたように座り込む剣士の足元には、3m程の大きさの金剛力士像のような石像の魔物が横たわっている。
ランクは50後半。文句無しに伝説級の魔物だ。


魔術師「ねーねー、どうしてボク達こんなダンジョンにいるのかな?なんでわざわざジャパンまできてこんなシンドイダンジョンに潜ってるのカナ!?」イライラ


地上でいう歌舞伎町エリアにそびえ立つ十数棟程の高層ビル。それらを1つの城と見たて、眠らない街・歌舞伎町にちなみ『不夜城』と名付けられている。
ジーパンにスニーカーに灰色パーカーとその辺のコンビニにでも行くような格好をした剣士と、赤毛の目立つ異国の魔術師の少女はその最上階にいた。



兄「まぁそういうなよ。久しぶりの実家帰りなんだ。軽くお土産代くらいは稼いどかないと」

魔術師「ここランク60超えのダンジョンだよ!?そのモンスター1体倒すだけでどれくらいお金入ると思ってんの?もう小さな都市の年度予算くらい分は、ここに来るまでに倒してきたんだケド!!」

兄「まぁまぁ、折角ここまできたんだ。せめて目の前のアイツを倒してから地上に戻ろうぜ」スッ……


剣士はゆっくりと立ち上がり、手に持った剣を担いで前を見る。

鎧武者『…………』チャキッ……
475 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 21:11:21.81 ID:LAlp/wM/0
そこには何百本もの武器がそこら中に突き刺さっており、圧倒的な威圧感を出しながら、これまた伝説級と思われる日本刀を構えた鎧武者の姿があった。
恐らくこのエリアのボスだろう。漂うオーラがこれまでに倒してきた魔物と違う。

魔術師「うわー……あの刀あれだよ絶対凄いお宝だよートレジャーブックでみたよー多分国宝級なんてもんじゃないよー」

兄「お、マジか。売ったら空港で高そうなお土産買って帰れるかな?」

魔術師「そうだネー空港で飛行機くらいなら2〜3機買えるんじゃないカナー」アハハー

兄「いや飛行機は持って帰れねーだろ」ハハハッ

魔術師「それくらい凄い刀ってことダヨ!!ほら来るよ!!」

魔術師の注意とほぼ同時に、武者が手に持った刀を横一文字に振るう。

ただそれだけの事であった。


…………ィ……ン…………


魔術師「ッ!?空間ごと斬れテル!!伏せて!!」バッ!!

兄「おっと」バッ!!


斬ッ!!!!!!


鎧武者「…………」


2人がその場に伏せた一瞬後に、周囲の何もかもが横一文字に斬れた。

文字通り何もかも。
2人が伏せなければ2人共真っ二つになっていただろう。
476 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 21:16:26.21 ID:LAlp/wM/0
兄「危ねぇ危ねえ。流石超絶チート特性持ちの空間の申し子、目に見えない空間の断裂もわかるんだなー」

魔術師「一瞬空間に干渉する音が聞こえたからネ!!ほら、アレが目に見えるように魔法をかけるよ!!あと君にチートだなんテ言われたくナイ」


あらゆる物質には硬度がある。
しかし、それが存在する空間自体を斬ってしまえば硬度など関係ない。文字通り斬れぬものの無い技である。

本来、その空間の断裂を目に見ることは不可能だが、この赤毛の魔術師。
自身の持つ特性を抜きにしても、空間を操る魔術に関しては恐らく、最高難度のダンジョンの魔物などを合わせても、この世で5本の指に入るだろう。
もちろん人間ではぶっちぎりのトップである。


兄「うっし、これで攻撃は見える。あとはどの剣にするか……空間系ならやっぱコレかなー」ブゥンッ……

剣士は手元に小さな魔法陣を作り出し、持っていた剣を納め、新たな剣……いや、刀を取り出した。


兄「タラララッタラーーー!『次元とおー』」

そして、某青いロボットの真似をしながら刀を構える。

兄「コレを使えば空間を斬ることが出来るんだーー。……コレで武器の条件は互角だな」スッ……
477 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 21:20:08.96 ID:LAlp/wM/0
魔術師「『フィジカル・アルティマキシマム』!!」

魔術師が、剣士に最高クラスの身体強化魔法を使う。コレも世界に使える者は20人いるかいないかと言われる魔法である。

魔術師「あとは君の仕事ダヨ!!とっとと終わらせてスシ食べに行くんだから!!」


兄「わかってるって!最高に美味い寿司を奢ってやるからさ」ブンッ!!

鎧武者『』ブンッ!!

剣士が刀を振った瞬間、何十もの空間の斬撃が放たれ、武者が刀を横一文字に薙いだ瞬間、一筋の空間の斬撃が放たれる。


ギィィィイイイインッ!!!!!



衝突した斬撃は互いに打ち消しあい、凄まじい衝撃波と共に消滅した。

魔術師「ワオッ!?たった一撃でこっちの攻撃全部かき消されたヨ!!」

兄「ま、簡単にはいかないみたいだけどな」
478 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 21:21:52.88 ID:LAlp/wM/0
同時刻

ダンジョン『株式会社【RPG】』

公園エリア 第12運動公園


男「はぁー、ただでさえ金策に追われてんのにあんな話聞かされたら怖くてダンジョン潜れねぇよ」

魔少女「確かに……バグは脅威ですが、遭遇する確率はとても低くそこまで気にしなくてもいいのでは?何しろ宝クジ2等レベルだそうですから」

1つの都市丸々ダンジョンの中に持ち込んだようなココでは大きな公園などもある。
自給自足出来るように農業用に作られた、このダンジョンと繋がっている別のダンジョンもある。
万が一地上で何かあっても、100万程の人間が避難生活を無理なく過ごす事が出来るくらいだ。
実際過去に起きた大災害での避難民がここに辿り着き、その何割かはそのままこのダンジョン内で職につき生活している程だ。

まぁそれはともかく、2人はバグの話に不安を抱きながらも残り700ゴールド程のオートマタ引き取り代金をどう工面するか考える。
479 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 21:23:32.49 ID:LAlp/wM/0
男「あと一週間あるんだから地道に地元のランク1ダンジョンで稼いでいけばいいんじゃねぇか?」

魔少女「それでは……私や先輩の成長には繋がりません。普通のアルバイトをやっていた方がよっぽど健全です」

男「手段はこの際何でもいいだろー。まずはあのオートマタを引き取る。そんで問題なく動くようだったら3人で。何だったら金髪も誘って4人でガンガンダンジョンで経験を積む。それでいいんじゃね?」

魔少女「んー……確かに無理をして怪我するよりそっちの方が確実ですが……面白いですか?それ」

男「あ、ホントだ。全ッ然面白くねーや。やっぱりランク2のダンジョンにするか」

魔少女「ダンジョン協会で……ランク更新の試験をするというのもアリです。ただ今の先輩の実力だとランク3でもギリギリかと」

男「え?俺そんなに弱そう?」

魔少女「弱いというか……まだまだダンジョン探索に慣れていないのでしょう。魔力の使い方といい危険察知力といい危なっかしいです」

男「へーへーそりゃどーも。……しっかしアレだな。この東京にはランク60超えのダンジョンとかもあるんだろ?」

魔少女「はい……新宿の『無限城』ですね」

男「一体どんな人がそんなダンジョンに入れるんだろうな」

魔少女「それはもう……天才なんて言葉では言い表せないくらいケタ違いの探索者ですよ。最も世界中でも3ケタいるかどうかですが」
480 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 21:31:46.45 ID:LAlp/wM/0
無限城
歌舞伎町エリア『不夜城』最上階


兄「おりゃりゃりゃりゃぁぁあああ!!!」

ギンッ!ギンッ!!ギィンッ!!!

戦闘開始から10分ほど。

剣士と武者は互いに傷1つ付かないまま、互角の戦いを繰り広げていた。
周囲は互いに放つ空間の斬撃によりメチャクチャに。というか、不夜城の外壁や天井が斬り崩され、空に浮かぶ満月が最上階の2人の戦いを照らしている。


魔術師「オーイ相棒ー。そろそろボクの助けがいるんじゃナイ?」

兄「バカ言ってんじゃねーよ、まだまだこれから……アブね!!」バッ!!

壮絶な斬り合いの中、剣士は笑みを浮かべながら武者の攻撃を避ける。

魔術師「ほらー危ないジャン!せめてアレを使わないと普通に死んじゃうヨー」

兄「あー確かに同じような武器1本で勝てる相手じゃねーな。しゃーない……」スッ……

剣士は空間を斬り裂く次元刀を、出した時と同じように魔法陣に納める。


鎧武者『……』



兄「鎧武者さんよー。アンタめちゃくちゃ強いからさー……ちょっと本気でいくわ」ブゥンッ!!


その直後、剣士の周囲にいくつもの小さな魔法陣が現れる。
その数12。
481 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 21:36:07.59 ID:LAlp/wM/0
魔術師「出たネー、アホみたいなチート特性。いや、特性はチートではないカ」

兄「『十二人の英雄(ゾディアック)』」ガシッ!!

ブンッ!!!

その魔法陣の内の1つから一本のロングソードを取り出し、引き抜きながら武者へと剣を振るう。


武者『ッ!?』カッ!!


ドォォォォォォォォォオオオンッ!!!!!


次の瞬間、爆炎が武者の目の前で生まれ、そのまま武者を吹き飛ばした。


兄「『炎龍の剣』……ランク50の魔物、炎龍を武器召喚した剣だ。斬れ味もスゲーけど能力がもっとスゲーんだよ。どこでも爆発させられるって感じのヤツ」ブンッ!!

再び剣を振ると小さな爆発が剣士の側で起こる。


魔術師「『十二人の英雄』……まぁ言ってしまえば、単なる事前に登録した武器の転送魔法陣での出し入れなんだけどネ。桁違いに反則なのは、それで魔物の武器召喚も出し入れ自由っていうのと……」

兄「まぁ流石にこれ1本じゃ勝てないだろうからさー」ズズズズッ……

そして、他の12の小さな魔法陣からも剣が出てくる。

それらは、今剣士が持っている『炎龍の剣』と全く造形が同じなロングソード。
それが12本。


武者『……』スッ……

兄「だからコレ12本同時に使わせてもらうわ。これならさっきみたいにやられっぱなしにはならねーだろ」


魔術師「魔法陣の数と同じ12本までなら同時に出し入れ可能。自由自在に武器の同時操作も可能。更に登録したのと全く同じ武器の複製も12本まで可能ってネ。反則能力にも程があるヨ」ハァッ……



ゆっくりと立ち上がる武者に、魔術師は憐れみの視線を送る。


相手が悪かったネ。と。


その瞬間、ダンジョン無限城の空を爆炎が覆いつくした。
482 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 21:39:13.47 ID:LAlp/wM/0
…………


兄「ふぃー、やっぱ魔法使うと疲れるなー」

魔術師「カツカレー。やっぱ君が使うとチートだネ。特性『クローン』」


クローン。
自身が発した魔法を複製させる特性。
ただそれだけの特性。


兄「チート言うなよ、アレは努力の賜物ですー」

魔術師「まぁ、単純に言えば1つの転送魔法陣を12個に複製させたダケだもんネ。その機能とその機能込みでの複製数がチートなだけデ」

兄「お前みたいに色んな魔法が使えるわけじゃないからな。1つを極めるしかないんだよ」

魔術師「ボクだって頑張って覚えたんだヨ!!ほら、早くアイテム拾ってスシ食べよ!!」

兄「はいはい。あの刀はどこかなっと……お?」



爆炎による煙が晴れようとしている中、剣士が武者からの戦利品を探していると、煙の向こうに蠢く影を見つける。



兄「げ……もしかして『バグ』持ち?」

魔術師「えーーー!?ウソでしょー!?」


煙が晴れると、そこには片膝をつき、腰の鞘に刀を納めた鎧武者の姿があった。


鎧武者から発せられる禍々しいオーラは、更に強烈なモノになっている。バグによるパワーアップだ。
483 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 21:42:33.83 ID:LAlp/wM/0
バグ・鎧武者『……強……き……者よ……』


魔術師「喋っタ!?やっぱりバグだヨ!!えっと性質は……正位置の『正義』!!」


魔術師が指を輪っかにして鎧武者を覗くと、バグとして付与された性質を剣士に伝える。
『スキャン』と呼ばれるそれなりに難易度の高い中級魔法で対象の能力を視認する魔法なのだが、魔術師クラスの実力者となると指の輪っかから覗くだけで使用出来る。


兄「正義ってーと、確か公正・公平とかだっけか?あ、やべーなコレ」


正義・鎧武者『今……一……度……』ブゥンッ……




『正義』

タロットにおいて、公正・公平、均衡を司るカード。
バグを付与されたダンジョン魔物においてその性質は



兄「うわー出たー!!俺の『十二人の英雄』パクりやがったよ!!」

魔術師「一撃でも凄かっタ空間の断裂をプラス12本ノ刀で撃つとか……ちょっと冗談キツイヨー」



自分を倒した相手の技を完全にコピーする。




正義・鎧武者『今……一度……我が魂の一刀を!!!』チャキッ!!

剣士が先ほど使用した12の転送魔法陣がそっくりそのまま鎧武者の背後に描かれる。
それぞれの魔法陣からは鎧武者の持つ空間を斬ることの出来る刀が現れ、同時に鎧武者は腰の刀に手を添える。

どうやら剣士が構えるのを待っているようだ。
1対1の、全ての力を込めた決闘を行う為に。
484 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 21:45:49.29 ID:LAlp/wM/0
魔術師「……どうスルー?ボクが代わろッか?」

兄「いや、アイツは俺を御指名だ。真っ向勝負で逃げたら男じゃねーだろ」ブゥンッ!!


剣士は武器を1番最初に使っていた次元刀と呼ばれる刀に変える。
そして、鎧武者と同じように腰に構えた。


兄「魔術師、合図頼む」


魔術師「ハイハイー。……スシが待ってるんだかラ、負けちゃダメだよ」ピィンッ!!

どこからか硬貨を取り出した魔術師が、指でその硬貨を宙に弾く。

兄「わかってるっての」


そして、硬貨が地に着いた瞬間






正義・鎧武者『いざッ!!!!!!』キィンッ!!!



鎧武者の全てを断ち斬る空間の斬撃が、転送魔法陣と合わせて13発、逃げ場の無いように放たれた。

一撃でも剣士の放った複数の斬撃を押し退ける程の渾身の斬撃。
バグによって更に強化し、それを13発同時に放たれ、既に勝敗は目に見えていた。









兄「悪ぃ、武者さん。13発じゃちょっと足りねーと思うわ」


剣士が集中し、ゆっくりと刀を抜く。


兄「『無限刃』」ブンッ
485 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 21:49:13.93 ID:LAlp/wM/0
正義・鎧武者『……見事也……』サラァッ…………

剣士が斬撃を放ったと同時に、鎧武者の姿は粉々に刻まれていた。

兄「残った魔力分、ぶち込んでやったんだ。満足しただろ?」チャキッ


剣士は刀を鞘に納め、魔力を使い切ったかの様に思いっきり息を吐き出した。


魔術師「おつかれサマー。何発撃ったの?」


魔術師が、魔法で濡らして冷やしたタオルを剣士へと手渡す。


兄「えーっと元の斬撃が5発で、そっから12かけて、更に12かけて、もひとつ12かけて、念のために12かけて、ダメ押しで12かけて……10万くらい?」フキフキ

魔術師「ウン、124万4160発だネ。最後の1回は増やサ無くても余裕だっタだろう二」

単純な話だ。

自身の発する魔術を複製する特性、『クローン』。
それで、増やした斬撃を更に更に更に増やしたのだ。
そして文字通り無数とも見れる空間の刃を受け、鎧武者は粉々に霧散した。
ただそれだけの事。
倍々ゲームに増えていく膨大な消費魔力と、発動させるタイミングと針に糸を通すどころではない魔力コントロールを斬撃全てに行き渡らせる事を除けば実に単純な話だ。
486 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 21:51:53.05 ID:LAlp/wM/0
兄「バーカ、相手の文字通り最後の一撃なんだ。コッチも全力でやらねぇと殺されるっての」チョンチョンッ

そう言って剣士は自身の右肩を指差す。
そこは血で真っ赤に染まっていた。
百万の刃でも、鎧武者の斬撃を完全にはかき消し切れていなかったのだ。

魔術師「OH……チョー痛そー……後で完璧に治してあげるヨ」

兄「いや、血ぃ止めるだけでいいや。こういうのは戒めとして残しとかねぇと。このパーカーはもう着れねぇな」ヌギヌギ


剣士が、着ていた灰色のパーカーを脱ぐと、そこには身体中傷だらけの姿が現れた。
全て、強敵と戦い受けた傷だ。
その気になれば魔術師がいつでも綺麗サッパリ治す事ができるが、あえて痕を残すのは傷を負った自分の弱さをいつでも確認する為だろうか。


兄「さてと、鎧武者さんの刀と……お、魔石GET。ボス級でしかもバグ持ちの魔石なんてツイてるなー」

魔術師「きっとカレーも満足したんダヨ。で、それどうするノ?売るの?」

兄「まさか。この刀にそのまま魔石ぶち込んで強化してやろうぜ。持ち主のなんだから相性抜群だろ」

魔術師「はぁ……加工代でこのダンジョンの稼ぎ殆ど持ってかれそうだネ」

兄「それでも土産の茶菓子代と寿司代くらいは残るだろ。ほら、行こうぜ」

魔術師「ワーイ!スーシ!スーシッ!!」
487 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 21:58:18.85 ID:LAlp/wM/0
20:00


剣士と魔術師はダンジョンを脱出した。


戦利品を換金して1100万ゴールドを手に入れた。
鎧武者のドロップ武器『空切丸』を手に入れた。
鎧武者の心を手に入れた。
空切丸に鎧武者の心を取り付け加工を依頼した。



最高級加工屋の偉い人「あの……当店はこの国随一の加工店の看板を掲げさせておりますが……こ、これ程のクラスの武具に更に貴重な魔石を加工するとなると時間はともかく加工費用としてもかなりのものになりますが……」

兄「そこをなんとか」




加工屋の偉い人の顔が青ざめた。

加工代として1500万ゴールド支払った。

魔術師「ちょっと!!!ものっスゴイマイナスになってルじゃんか!!!」
兄「アッハッハッハッ!!やべーどうしよう」
魔術師「ウゥ……今月も赤字ネ。私のフトコロスッカラカンだヨ……」

魔術師は魔法のカードで残りを支払った。




剣士と魔術師は回る方の寿司屋でたらふく寿司を食べた。
魔術師はかなり満足した。
剣士は60ゴールド支払った。

兄「あ、やっべ。実家までの交通費計算してなかった。今日はもう無理だな」

魔術師「何で君はソウ、ちゃんとまとまったお金を持ってないのカナ!?」

剣士と魔術師はネットカフェで一夜を過ごした。
488 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 22:01:36.87 ID:LAlp/wM/0
同時刻


男「ふぅー、新しい簡単な依頼も受けたし魔少女にこっぴどく特訓させられたし今日も疲れたなっと」


母「何かお兄ちゃんが明日帰ってくるってー」


男「兄貴が?久しぶりだなー。今どこいんの?」


母「東京のネットカフェだって」


男「……兄貴って若手トップだから結構稼いでるんじゃなかったっけ?」


母「連れの外国の子と寿司食べすぎたら交通費足りなくなったんだってー」


男「あーなるほどな。回らない方で食い過ぎたのか」


母「回る方だってー」


男「……何か夢がないなー……」ホロリ……


10日目 終了
489 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2018/06/21(木) 22:03:47.60 ID:LAlp/wM/0
投下終了です。
久々投下は兄貴回でした。ではまた。次は近い内に投下しますのでー
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/21(木) 22:05:25.40 ID:NEfamzRBO
キターーーーー!!!
ずっと待ってた!!
乙!乙!
また待ってる!!!!
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 19:01:00.84 ID:dOyGoHUA0
待ってた
492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/08(日) 12:07:15.20 ID:Hb6zd3rao
来てたのねーヤッター
493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/25(木) 01:37:35.01 ID:XBl9jsKA0
保守
494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/06(日) 20:22:43.68 ID:CxqJh+kd0
保守
495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/01/07(火) 23:27:43.63 ID:GyzF4ORy0
保守
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/23(日) 13:34:38.79 ID:POwUjrKV0
保守
497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/28(水) 20:57:13.36 ID:2/hjjhyj0
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