男「はぁ?ダンジョンに行ってこいって?」

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348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/16(水) 21:39:15.79 ID:phF7prLYo
ここまでテンプレ
349 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/17(木) 19:07:15.57 ID:UgOrhTYk0
こんばんわ、1です。
まさかテンプレくんでここまで盛り上がるとは思いませんでしたwそれでは軽めに投下します
350 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/17(木) 19:09:19.52 ID:UgOrhTYk0
ダンジョン生活8日目


魔少女宅
薬屋『ラストエリクサー』


魔少女母「あら、○○くんこんにちは。久しぶりね」

男「あ、どうも。お久しぶりです……あのー魔少女います?」

魔少女母「えぇ、いるわよ。ただ昨日の大会で疲れたのかまだ起きてこないのよね。どうせだから○○くん起こしてきてくれない?」

男「え?僕がっすか?……魔少女に怒られたりしないすかね……」

魔少女母「気にすることないわよー、ご近所だし昔は一緒にお風呂もお昼寝もしてたもの。懐かしいわね、すっかり私もおばちゃんになっちゃって」

男「おばちゃん……?……じ、じゃあとりあえず、起こしてきますね」


魔少女母「えぇ、お願いねー」


男「…………おばちゃんって…………どう見ても見た目精々中学生なんだがな……魔少女のおかんって一体……」

魔少女の母は見た目がとてつもなく若かった。そして可愛かった。
その為、この店の魔法薬などに美容とアンチエイジングの効果があると睨んだおば様達が、毎週のようにこの店の薬を買い漁りにくるのだ。
351 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/17(木) 19:16:25.35 ID:UgOrhTYk0
トントン

男「おーい魔少女ー、もう昼前だぞー起きろー」トントン


ノックもせずにラッキースケベなぞゴメンだと言わんばかりに、男は魔少女の部屋の前で声を上げる。

が、何の反応もない。まだ寝ているのだろうか。少なくとも着替えの最中とかではなさそうだ。


男「んー……しゃあない、入って起こすか。魔少女ー」ガチャ

男は仕方なく魔少女の部屋の中へと入る。


男「うぉ……本ばっかしだなー……流石知識欲の塊」


魔少女の部屋は女の子らしい部屋とはお世辞にも言えず、一面本棚で埋められていた。

この知識こそが今の魔少女の強さでもあるのだろう。


男「お、でもベッドの周りは結構かわいい感じに……うわぁ……」

ふと男はベッドの方に目を向ける。
352 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/17(木) 19:47:13.16 ID:UgOrhTYk0
男「……コイツ寝相悪過ぎだろ……」

そこにはベッドから上半身がずり落ち、布団代わりのタオルケットが顔を覆い、下半身はパンツどころか半ケツ丸出し状態の魔少女の姿があった。

正直エロいというよりちょっと引く光景である。


男「……ここにいたらコイツに殺される気がするな……見なかった事にしよう……」スッ……

バタンッ!!


魔少女「……………………ふぇ?」





…………


ファミレス


魔少女「先輩……朝ウチに来られてたんですね」

男「え?あ、あぁ、お前寝てたみたいだからすぐ帰ったけどな」

魔少女「そうですか……すいません、やはり疲れが出てたみたいですので」

魔少女母には口止めをしておいた。
あんな寝相を見られていたと知ったら、魔少女は恐らく烈火の如く荒れ狂うだろう。
353 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/17(木) 19:57:35.88 ID:UgOrhTYk0
男「まぁ当然だろ。今日くらいお前もゆっくりしてたらどうよ」

魔少女「そういうわけにはいきません……あのオートマタの子を引き取る日まであと1週間しかないんですから」

男「まぁなー、あと1週間で最低でも1000ゴールドは一端の高校生にはちとキツイよな」

魔少女「ダンジョンに毎日入るというのも……あまりいい手段とは言えません。蓄積された疲れが大ケガに繋がる恐れもありますから」


男「となると、やっぱ今1番いい手段は……」

魔少女「そうですね……やはりカウボーイさんのギルドを頼るの1番かと」


先日男が気付いた、カウボーイのギルドで仕事を受けるという案。
ギルドには大小様々な依頼が寄せられる。その中でも手軽な依頼をクリアし、なおかつダンジョンのアイテムを換金するという手段である。


男「とりあえず、まずは名刺を使ってあのおっさんのギルドに行ってみるか」


魔少女「そうですね……では市役所近くのダンジョンに行きましょう」
354 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/17(木) 20:11:25.91 ID:UgOrhTYk0
『一(はじめ)市 市役所前ダンジョン』




男「ダンジョンの中で名刺に魔力を込めればいいんだよな?」

魔少女「はい……それでギルドのあるダンジョンへのゲートが開くハズです」

男「んじゃ早速……」ググッ


カッ!!


男がカウボーイからもらった名刺に魔力を込めると、たちまち目の前の空間が歪み、別ダンジョンへの穴が開く。


男「うぉ、本当に道が出来た……なんかちょっと怖いな入るの」

魔少女「ゲートは安定しています……男の子なんですから腹をくくってください」

男「こういう時は女の方が度胸あるよなー……うし、行くか」

魔少女「はい」ニコッ
355 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/17(木) 20:13:11.04 ID:UgOrhTYk0
東京

ダンジョン『株式会社【RPG】中央エリア』



男「ここが……」

魔少女「ダンジョン内に作られたとはいえ……想像を遥かに超えるスケールですね。まるで一つの都市のようです」



ゲートを抜けるとそこは大都市でした。


思わずそう言いたくなるような光景が、男達の目の前に現れた。


そこら中にそびえ立つビル。
道路などがきちんと整備され、ダンジョンの外と変わらないように行き交う人々や車。

本当にダンジョンの中なのかと疑うほど、一つの完成された都市がそこにはあった。



男「さて……とりあえずどうしようか」

魔少女「まずは……カウボーイさんのところに向かいましょう。ほら、あそこに案内所があります」
356 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/17(木) 20:20:42.50 ID:UgOrhTYk0
受付嬢「いらっしゃいませ。こちらは株式会社RPG、中央エリア総合案内所でございます」


男「あ、ども。すいません、僕たちカウボーイさんって方にこの名刺をいただいてここに来たんですけど……」

受付嬢「名刺ですね、ご確認いたします。……ッ!?し、少々お待ちください!!」バタバタッ


案内所の受付おねーさんは、名刺を見るやいなや驚いた表情で奥へと姿を消した。


男「……どうしたんだろうな?」

魔少女「あの人は社長と言ってましたし……恐らくギルド部門のトップの方でしょうからね。アポイントもとってませんしもしかしたら会えないかもしれません」

男「そうなると困るよなー。最悪俺たちでギルドで仕事もらえるようにどうにかしないと」


受付嬢「お、お待たせいたしました!!会長は現在ギルドエリアにあるこちらの建物にいらっしゃいます。こちらの携帯ナビゲーターをお渡しいたしますので、指示に従ってお進みください」

男「お、よかったよかった。何とか会えそうだな」

魔少女「あれ?……今会長って……まぁ気にしなくてもいいですかね。行きましょう」


…………

受付嬢「な……何であんな高校生の子達に会長が……私だって初めて電話を繋いだのに……」
357 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/17(木) 21:12:33.41 ID:UgOrhTYk0
ギルドエリア
総合依頼案内所


『ギルド【RPG】伝説の秘宝からお子様のお使いまで、あらゆる依頼を受け付けます』


男「うおー、めちゃくちゃデカイビルだなー」

魔少女「ここに……世界中からあらゆる依頼が集まってくるんですね」

男「こんなデカイところにいるとは……流石社長っていうだけあるなーあのおっちゃん」


ナビゲーター『目的地までこの道をあと1kmです』

男「え?ここじゃねーの?」

魔少女「この先に……もっと凄いところがあるんでしょうか」
358 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/17(木) 21:14:57.96 ID:UgOrhTYk0
ギルドエリア端

寂れたビル内 事務所


カウボーイ「ウィッチちゃーんコーヒーちょーだい」

ウィッチ「あぁ!?こっちは忙しいんだよ!テメェで淹れやがれ!!」カチカチカチカチ

カウボーイ「ダメダメー、ウィッチちゃんのコーヒーじゃないと僕やる気でないんだよー……仕方ない、プリースト頼む」

プリースト「却下だ」ズズッ……


比較的新しい建物が並ぶ街通りの中、一つポツンと浮いたように建てられた寂れた小さなビルの中。
その中に、カウボーイ達の集まる事務所はあった。


パッと見る限り、先日会ったカウボーイとパソコンとにらめっこしているウィッチの他に、短髪の金髪で神父のような格好の、両腰にロングソードを携えた男がコーヒーを啜っている。
359 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/17(木) 21:18:59.36 ID:UgOrhTYk0
男「…………あれ?社長じゃなかったのこの人」

魔少女「いえ……さっき携帯で私も調べましたが、社長どころかこの【RPG】グループの会長だそうです……写真でも確認しました。権力としては1番上の方のハズですが……」

男「じゃあ何でこんな寂れた建物でダラダラしてんだよ……」


プリースト「む……客だぞ」

カウボーイ「おー、よく来たね2人ともーほらほら入って入って」

「「は……はぁ……」」

カウボーイがこちらに気づき、2人はボロボロのソファーへと案内された。
360 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/17(木) 21:32:48.69 ID:UgOrhTYk0
カウボーイ「よーこそ当ギルド【RPG】へ。歓迎するよー2人ともー。あ、ウィッチちゃんお茶ちょーだい」

ウィッチ「だから今手が離せねーって言ってんだろーがクソオヤジ!!申し訳ございませんお客様!!」

プリースト「俺が淹れよう」スッ……

カウボーイ「え!?僕には淹れてくれなかったのに!?」

男「なんか……想像とはかけ離れてんな……ギルドって……」

魔少女「あの……どうしてあんな立派な建物のギルドがあるのに皆さんこんなところにいらっしゃるんですか?」


カウボーイ「だって面倒くさそーじゃない」

プリースト「性に合わん」スッ……つお茶

ウィッチ「人が多すぎて緊張いたします」カチカチカチカチ


魔少女「納得しました……」


男「何で社長なんてウソついたんだ?社長どころか会長だなんて」


カウボーイ「え?社長だよ?この汚いギルド事務所【RPG】の」

プリースト「【RPG】グループの社長は我々の仲間が担当し実際にグループを動かしている。この男はただの創業者という事で名目上グループの会長となっているだけだ」

ウィッチ「この人がまともに企業のトップとしての仕事をするとお思いにますか?かといってここまで成長したグループを完全に放り出すのも勿体無いのでこういった方法を使っております」


男「……納得……」
361 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/17(木) 21:37:45.36 ID:UgOrhTYk0
カウボーイ「とりあえず紹介しとこうか。これが僕たちのギルド【RPG】だよ。メンバーは他にもいるけど、とりあえず今日はこないだ会ったウィッチちゃんと、この無愛想な神父っぽいヤツがプリースト。
ちなみにコイツ本物の神父ね。武器はロングソードの二刀流で神父というよりエクソシストみたいなヤツ」


プリースト「よろしく」


男「あ、ども。『男』です。……ていうかこれがギルドって事はあの大きな建物のギルドは……」

カウボーイ「あぁ、アレ?アレはアレでちゃんとしたギルドだよ。何て言ったらいいかなー……コッチのメンバーは本物の精鋭揃いで、アッチのメンバーは大衆的というか何というか……まぁよくて上の下くらいの冒険者達ってとこかな」

プリースト「基本的には彼らが。手に負えない大きな仕事は我々が遂行している」

男「なるほど……モ○ハンでいうG級冒険者ってヤツっすね」

カウボーイ「お、君もやってる?モ○ハン」



プリースト「で。何の様で来た?」

魔少女「あ……はい。実は、こちらのギルドで何かお仕事を紹介していただけないかと思いまして」
362 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/17(木) 21:40:21.73 ID:UgOrhTYk0
…………


プリースト「成る程。オートマタ修理の為か」

魔少女「はい……どうでしょうか。よろしければこちらのギルドに登録させていただきたいのですが」

カウボーイ「ウィッチちゃん」指パチンッ

ウィッチ「登録完了です」カチカチカチカチ

男「早っ!!え!?いいの!?そんな一瞬で決めてッ!!何か色々審査とかあるって聞いてたんだけど」


カウボーイ「審査ならやったじゃないのー、こないだ滝のダンジョンでさ」


男と魔少女がゴーレムと激闘を繰り広げていた時、カウボーイは一部始終それを観察していた。
結果、2人の将来性・人格共に問題なしという判断を出していた。

カウボーイ「というか実は、既に手続きやら何やらほとんどやっちゃってたんだよねー。後は本人達の了承のみってだけだったから」
363 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/17(木) 21:42:15.86 ID:UgOrhTYk0
魔少女「ということは……既にこのギルドに来ると予想していたと」

カウボーイ「そりゃあダンジョンでお金を稼ぎたいんならギルドの依頼受けた方が実入りはいいからねぇ。名刺も渡してたし近いうちに来るとは思ってたよ」

男「んじゃあ、もう俺たちはギルドの依頼を受けられるって事?」

カウボーイ「そうだよー。ほら、コレが少年のギルド所属証明書。チームの時は代表者1人が持ってりゃいいから。魔少女ちゃんも欲しいならあげておこうか?」

魔少女「そうですね……念の為、いただきます。先輩無くしそうですし」

男「否定はしない」

カウボーイ「まぁ後はギルドの受付嬢にでも丁度いい依頼を見繕ってもらってよ。期待してるよ2人共」ニィッ
364 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/17(木) 21:45:17.27 ID:UgOrhTYk0
投下終了です。
次元の違う最強格3人目、プリーストさん登場です。
次回は初クエストとなります。ではまた。
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/17(木) 22:25:06.07 ID:aRHOJ72go
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/11/17(木) 22:25:57.89 ID:7SPP79Ib0

クエスト:オートマタの性格を決めよう
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/17(木) 23:41:02.03 ID:R6AWNder0
乙!
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/11/18(金) 09:57:24.04 ID:grBZcGuRO
オートマータ…コンロビーヌを思い出した救われた物語を藤田さん書いてくれないかなぁ
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/18(金) 13:39:16.32 ID:z0wegGY0O
あの頃のサンデーは輝いていた…
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/18(金) 19:19:41.18 ID:L92isVjTO

黒賀村編だけは絶対許さない
371 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/20(日) 09:15:42.64 ID:H6cV/QLo0
おはようございます、1です。軽めに投下していきます。

>>365
>>366
>>367
>>368
>>369
>>370
ありがとうございます。引き続き暇な時にどーぞ。
372 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/20(日) 09:20:14.39 ID:H6cV/QLo0
ギルドエリア 総合依頼案内所


男「さて。早速こっちまで戻ってきたわけだけど」

魔少女「このエリア全体で……依頼や情報などを集積しているようですね。まずは初心者用の簡単な依頼から……あのー」

オペレーター「はい。どうされましたか?」ニコッ


魔少女は1人の受付の女性らしき人に声をかける。
笑顔に思わず同じ女である魔少女さえトキメキそうな、大人な純和風の女性である。

魔少女「えっと……今回初めてこちらで依頼を受けようと思うのですが……やり方がわからなくて」

オペレーター「かしこまりました。では、ギルド所属証明書をご提示いただけますか?」

魔少女「ほら……先輩、さっき貰ったアレです」

男「ん?あぁ、俺が出すのか……お願いします」スッ……
373 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/20(日) 09:31:43.55 ID:H6cV/QLo0
オペレーター「はい。……あら。貴方達があの人の言っていた新人さんかしら?」

男「あの人?カウボーイのおっちゃんっすか?」

オペレーター「えぇ。私もあの小さな事務所のメンバーの1人だから。情報収集や依頼などの情報処理が主な仕事よ。よろしくね、お二方」ニコッ

魔少女「情報収集……ですか」

オペレーター「えぇ。紹介代わりに少し見せましょうか」カチッ

オペレーターがキーボードに手を添えると、一瞬で画面に魔少女の情報が現れる。

オペレーター「フムフム……ほぉほぉ……○○県の魔法部の大会で優勝と……流石あの人のお気に入りだけあって並ではないのね」


魔少女「え?……私の……まだ名前すら言ってないのに」

オペレーター「フフ、どうやったかは秘密ね。次にそっちの男の子はと…………あれ?特に目立った功績はないのかしら?」

男「まぁ、いわゆるちょっと動けるだけの普通の男子高校生ですんで」

オペレーター「じゃあこれからの活躍に期待ね。……あら……お兄さんがプロの探索者なのね。しかもこの3年間で若手トップクラスの功績を挙げてるわ」


男「いやー、アレは血ぃ繋がってんのか?って疑うレベルに優秀な兄貴ですからねー」


オペレーター「そう自分を卑下にしないの。じゃあ早速お仕事の説明をしましょうか」
374 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/20(日) 09:33:31.29 ID:H6cV/QLo0
ギルドの依頼とは!!




世界中に多数散らばるギルドには、未知のダンジョン探索から晩ご飯の材料に悩む主婦までありとあらゆる依頼が発注されている。
その依頼にギルドが達成難度を決めて、冒険者、探索者は自分の実力にあった依頼を受注するのだ。

主に目安となるのは、そのダンジョンの危険度ランクなどである。




オペレーター「貴方達はランク2までのダンジョンにしか入らないから受注範囲は非常に狭くなるけど……それでも数は膨大よ。さて、本日はどのような依頼をお探しかしら?」


375 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/20(日) 09:41:47.55 ID:H6cV/QLo0
男「んー、あり過ぎて悩むどころじゃないなこの数は」

ざっと検索してみたところ、ダンジョンランク2までという制限にも関わらず、依頼件数は万を軽く超えていた。これも世界各地の大都市からだけでなく、地方の中小ギルドとの連携が強い大手ギルドならではの光景である。

魔少女「まずは……私達の住む地域を中心として検索しましょう。そこから検索半径を徐々に広げ……早速いいのがヒットしましたね」


魔少女が一件の依頼に注目する。


『協力者求む。ダンジョン探索に同行してくれる方募集』

条件
明日の13時、仁市駅前集合→ダンジョンクリアまで同行出来る方


潜入予定ダンジョン
仁市第二運動公園ダンジョン(危険度ランク2)

報酬
100ゴールド
互いにダンジョンで得た金品の5割
376 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/20(日) 09:45:35.00 ID:H6cV/QLo0
男「仁市って、俺らの街の隣じゃん」

魔少女「確定報酬100ゴールド……更にダンジョンで稼いだお金の半分が入ります。
危険度2のダンジョンで私達と依頼者の合わせて3人で探索を行えば300から400ゴールドは固いかと。取り分はその半分ですから報酬と合わせて合計250ゴールドから300ゴールドほどの見込みがありますね」

オペレーター「依頼者は貴方達と同じ高校生のようね。実力も同程度、欲しい素材が最近このダンジョンに大量に出る傾向があるので、安全策として共に探索する人材が欲しいと。……これにする?」

魔少女「悪くないと思います……個人的に親しくなれば、私達の目的に協力してくれて、後日探索を手伝ってくれるかもしれませんから」

男「年が近い同業者の知り合いが出来るかもってのはメリットデカイな。これにするか」

「「じゃあこれで!!」」


オペレーター「フフ、了解。では依頼内容などを明記したメールを貴方達の携帯に送っておくわね。初仕事頑張って、怪我しないようにね」
377 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/20(日) 09:49:23.13 ID:H6cV/QLo0
男「ありがとうございまーす。うっし、んじゃ折角東京に来たんだし遊んで帰るか」

魔少女「却下です……先輩には、先日新しく手に入れた『鉄の剣』と魔力の練習をやってもらいます。ついでに武器の鑑定も。明日の仕事で使いモノにならないと困りますので」グイッ

男「嘘ーん!折角ここまできたのにー」ズルズルズル

魔少女「名刺があれば……またいつでも来れるじゃないですか。ほら、さっさと帰りますよ」ズルズルズル


オペレーター「フフ……若いっていいわね……本当に……」




8日目成果

ギルド【RPG】への登録を完了した
初めての依頼を受注した
カウボーイより譲り受けた『鉄の剣』を鑑定した
市役所横ダンジョンでの修行ついでに、40ゴールド獲得した

所持金55ゴールド
オートマタ引き取り代金 残り945ゴールド
378 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/20(日) 09:50:41.09 ID:H6cV/QLo0










ー同時刻ー
379 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/20(日) 09:51:48.36 ID:H6cV/QLo0

…………

南米 ペルー
マチュピチュ遺跡

ダンジョン『浮遊都市マチュピチュ』危険度ランク54




リバース幹部「くっ!!何なんだこの剣士は!!めちゃくちゃ強いじゃねぇか!!」

兄「さぁ、吐いてもらおうか。お前ら『リバース』がこのダンジョンで何をしていたのか」チャキッ

1人の日本人剣士が、いかにも悪そうな男に剣を向け尋問している。

その周りには、男の部下が数人、それらが従えていたモンスターなどが、剣士に斬られ倒れていた。


リバース幹部「り、リバース?はは、俺には何のことやら」ザクッ!!

グァァアアアッ!!!

兄「調べはついてるんだ。余計な手間を取らせるなら足のつま先からコイツを刺してくぞ?」

剣士はナイフを男の右足の甲に突き刺し、尋問を行う。
いや、既に拷問の域であろう。
380 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/20(日) 09:54:43.74 ID:H6cV/QLo0
リバース幹部「ぅぅ……た、ただこのダンジョンで入手出来る素材を採りに来ただけだ。貴重なモノだから市場には出回っていない……ただの探索だ!正当な手続きもした!!それの何が悪い!!」

兄「貴重な素材ねぇ……このダンジョンで、市場に出回らないレベルのごく少数しかとれないと言われている貴重な素材といえば、別次元へのワームホールを作る為に必須なレアクリスタルの一つ『浮遊結晶』だが……そんなモノを何故お前らが欲しがるんだ?」

リバース幹部「〜〜〜〜〜ッ!?……ク……クククッ……ハハハハハッ……」

兄「ん?」

リバース幹部「知りたければ教えてやろう!!この世界を『裏返す』のさ!!強者のみが生き残る混沌の世界へとなぁ!!」

兄「それは何回も聞いた。お前のお仲間にな」

リバース幹部「弱者は穴にでも閉じこもればいい!!我々にこの世界は狭く、生温い!!ならば全てを反転させればよいのだ!!」

兄「それも聞いた。お前ら皆、同じ事しか喋らないのか?ゲームのキャラクターかよ」

リバース幹部「ゲーム?……ハハハッ……そう!これはゲームだよ!!我々が創り出す、これ以上にない壮大な世界を舞台にしたRPG(ロールプレイングゲーム)だ!!」カッ!!

突如、男の身体が光りだす。

兄「げ!?」
381 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/20(日) 09:56:20.02 ID:H6cV/QLo0










リバース幹部「『リバース』の創り出す世界に栄光あれぇぇぇえええッ!!!!」











ドォォォオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!



そして、男の叫びと共に、周囲に爆炎が広がっていく。
爆炎は剣士どころかまだ息のある男の仲間をも飲み込んでいった。
382 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/20(日) 09:59:14.92 ID:H6cV/QLo0
ォォォォォオオオッ…………



兄「余計な事しなくても良かったのに。これやられると酔うんだよ」ゲホッ



爆炎が収まると、剣士は何事もなかったかの様に姿を現した。あれだけの熱量かつ広範囲の爆炎にも関わらず、気分は悪そうだが全くの無傷である。



魔術師「またそんな事言ってッ!ボクが君を『フェーズシフト』で別空間に飛ばさなかったら、君は今頃焼き焦げた匂いの、魔物のエサになってたところなんだから!!」フヨフヨフヨ



どこからか、フワフワと箒に乗った赤毛の少女が剣士の前に現れる。

見た所日本人の剣士とは違い、外国人。魔術の本場、イギリス出身の魔法使い19歳である。
383 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/20(日) 10:02:10.05 ID:H6cV/QLo0
兄「はいはい、サポート助かったよ魔術師。とりあえず敵の現在の目的も把握出来たし、今回は上出来だろ?」

魔術師「うん、わかればよし!ホラ、ジャパンのことわざにもあるでしょう?『おかしい仲にも礼儀あり』ってさ」

兄「『親しき』な。まぁ俺とお前ならおかしいである意味あってるけど」

魔術師「oh……ジャパンのことわざ難しいよ……それで?これからどうするの?ボスから奴等の次の情報が入るまでは自由だってさ」

兄「そうだなぁ……去年の正月ぶりに家に帰ろうかな。お袋や弟の顔を見にでも」

魔術師「ッ!?YEAH〜〜ッ!!!賛成賛成!!ボクジャパニーズフード大好きだもん!!スキヤキシャブシャブスシナンプラ〜〜♪」

兄「ナンプラー?あぁ、天ぷらか。てかお前も来るのか?」

魔術師「そりゃあ行くよ!ていうか連れてってよ!パートナーでしょ!?」

兄「はぁ……しょうがないなー」
384 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/11/20(日) 10:08:33.59 ID:H6cV/QLo0
投下終了です。
兄貴アンド魔術師登場でした。正統派主人公とその相方みたいな感じです。ちなみに2人の見た目は普通の動きやすい服装です。
カウボーイ達みたいにコスプレっぽくはなってません。プリーストさんは本物の神父なのでコスプレとは思ってません。

385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/20(日) 11:22:57.72 ID:o1k1/riSO
乙乙
お兄ちゃんが外国人の嫁連れて帰って来るのか…次の更新も楽しみに待ってる
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/20(日) 11:45:09.66 ID:FIuj+cT+o

兄登場かどうなるかね
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/20(日) 20:22:04.78 ID:ZTCOaKXD0

兄はひっそり死んでいると思ってた
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/29(火) 21:27:59.47 ID:chTdoxuq0
保守
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/09(金) 23:32:20.10 ID:Hg4UED8/0
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/18(日) 01:08:53.72 ID:Rj/mYV/0O
支援&期待の☆
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/26(月) 19:32:33.17 ID:vAQfgsni0
ほしゅ
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/28(水) 14:21:49.54 ID:Uz/nUayFo
昨日見つけてそのまま勢いでここまで読んでしまった
面白い

リバースが裏返すのって通常空間とダンジョンをか?
そういや大概のRPGって世界の大半に魔物が跋扈しててぽつぽつ存在する町や村が安全地帯だもんなぁ
そういうRPGみたいな世界にしたいのか?というかRPGのマッチポンプじゃないだろうな
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/06(金) 00:25:19.45 ID:7reAscXs0
保守
394 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/09(月) 17:04:27.61 ID:MrLSsepx0
あけましておめでとうございます、1です。
遅くなりましたが夜辺りに投下します。ヒマな時にどうぞ
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/09(月) 17:58:37.80 ID:qfZiYnG/0
期待してます!
396 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/09(月) 20:03:41.12 ID:MrLSsepx0
ダンジョン生活9日目 午後12時


男「ほんじゃ、初仕事行ってくるか」

魔少女「えぇ……行きましょう」ニコッ

母「車に気をつけるのよー☆」

男「もっと気をつけなきゃいけないもんが、いっぱいあるけどな」



仁市駅前

12時40分


男「結構早めに着いちゃったな。どっかで軽く何か食うか」

魔少女「でしたら……駅の近くに美味しいシュークリームを売っている店があるらしいです」グイッ、グイッ!!

男「腕引っ張んなって!俺的にはもうちょいガッツリ食いたいんだけどなー」

魔少女「コンビニで……ついでに何か買ってください。あ、あの店ですね」トテトテトテ


「シュークリームあと1セットでーす、次回販売は3時間後となっておりまーす」

「「すいませーん、シュークリームください」」


魔少女「ッ!?」バッ!!

「ッ!?」バッ!!
397 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/09(月) 20:05:05.39 ID:MrLSsepx0
駅前にそびえる小さな店舗。
そこで売られている最後のシュークリームを求め、今見知らぬ金髪の少年と少女の2人が同時に注文を行なった。


金髪「なんやアンタ……ワシの方が早かったと思うんやがなぁ……」ピキッ……

魔少女「いいえ……私の方がコンマ3秒ほど早かったです。順番は守っていただかないと」ピキピキッ……

金髪「せやなぁ……順番は守らんとなぁ……まぁどうしてもというなら」ビキビキッ!!

魔少女「えぇ……どうしてもというなら……」ビキビキビキッ!!!







「「最初はグー!!ジャンッ!ケンッ!!」」
398 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/09(月) 20:15:25.93 ID:MrLSsepx0

……………………


「ありがとうございましたー」


魔少女「正義は必ず勝つのです……」ドヤッ!!

金髪「あぁ……何でワシはグーを出してもうたんや……」


戦いの結果、魔少女が最後のシュークリームの入った袋をゲットしたようだ。
激闘を繰り広げた短髪の金髪な少年は酷く落ち込んでいる。


魔少女「よかったら……1個どうぞ。一袋に結構入ってるみたいですので」

金髪「おぉ……天使や。ココに天使がおる……あんがとうなぁ!!んーうまッ!!」モグモグ

男「3時間後に新しく焼いて販売されんだから待てばいいのに」

金髪「あかん。3時間後やったらワシは近くのダンジョンの中や。その前に、ここのシュークリームで景気付けときたかったからな」

男「へぇー、アンタもダンジョンに入るんだ。俺たちもこれから近くのダンジョンに入るんだよ」

金髪「おーお前らも探索者か!一緒のとこかもなー、ほな向こうで会ったらよろしくな。ワシは待ち合わせがあるから駅前で待たなあかんのよ」

男「おう、よろしく。俺達も駅前で待ち合わせだからそれまで情報交換でもしとくか」

魔少女「……………………」モグモグ
399 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/09(月) 20:24:23.03 ID:MrLSsepx0
13:00 待ち合わせ場所


金髪「なんや、まだ来てないんか?プロなのに時間に疎いとは感心せんなー」

男「こっちもまだ来てないのかな?折角指定時間に来たのに」

魔少女「あのー……お二方もしかしてワザとですか?」


「「へ?」」


…………


金髪「なんやー、アンタらがワシの頼んだギルドの人らやったんかいなー」

男「アンタが依頼人だったのか!いやー、こういう事もあるんだなー」


魔少女「まるでコントを見てるようでした……改めまして、ギルド【RPG】から参りました、魔少女と申します」

男「俺は『男』だ。初仕事でダンジョン経験も浅いけど、給料分の働きが出来るよう頑張るからよろしくな」

金髪「ワシは『金髪』や!まぁワシも経験浅いし、最悪目的の素材がキッチリ手に入れば問題ないからよろしく頼むわ!」

魔少女「では……腹ごしらえも済んだ事ですし、行きましょうか。ダンジョンへ」
400 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/09(月) 20:34:49.57 ID:MrLSsepx0
仁市第二運動公園ダンジョン






空間変異型ダンジョン 鉱山 全4層

出現時期 15年前

危険度2

主な魔物 ゴブリン ???
401 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/09(月) 20:36:34.89 ID:MrLSsepx0
ダンジョン 第二層

『薄明かりの坑道』



男「ここは……鉱山のダンジョンなのか」


冒険前の準備を整える為の第一層を素通りし、そのまま本格的に探索が始まる第二層へと降りた男達は、周囲が岩に覆われ、ランプの灯りに灯された坑道のような通路に降り立った。


魔少女「そのようですね……このダンジョンは全4層の空間変異型。つまり決まった地図などは存在しません。私達は、この迷路のような坑道を探索しなければいけないというわけですね」

金髪「まぁ、通路はかなり広いし魔物と戦闘になっても問題ないやろ。まずは次の階層への出口を見つけよか」

男「ん?素材やアイテムを探さなくていいのか?」

金髪「それは二の次や。まずはワシら自身の安全の確保。先に出口見つけてそこを中心に探索すれば迷いにくくもなるやろ」


男「おー、それもそうだな。てかそういえば、お前が集めたい素材って何なんだ?わざわざギルドに依頼するくらいだし」

金髪「ん?あぁ、『火薬』や」

男「火薬ぅ〜?」

金髪「ワシは探索者として武器を使うなら、やっぱ男気溢れた武器を使いたい!って昔から思うとってなぁー。まぁいわゆる『漢の浪漫』ってヤツやな。
んで色々候補はあったんやけど、まずはコレ!って武器を見つけたんや。せやけど、この武器の最大の魅力を使うにはアホみたいに火薬が必要になって、武器屋のオヤジが最初の何発か分はサービスしたるから、あとは自分で材料を用意しろ。そしたらまた作ったるって話でな。
そんで、このダンジョンに低品質やけど火薬を精製出来る鉱石が大量に出るって聞いてな?こうして人を呼んでいっぱい持って帰ったろってワケや」
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/09(月) 20:54:08.82 ID:JYfsRM0to
つまりどういうことだってばよ
403 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/09(月) 22:01:53.62 ID:MrLSsepx0
魔少女「ようするに……」

男「俺らは荷物持ちって事かよ……通りでデカイカバン持ってると思った」

金髪「まぁ『男』の方にはそっちメインで働いてもらうかもなぁ〜。魔少女ちゃんは魔法使えるんやろ?ならワシのアシお願いなぁー」

魔少女「了解しました」

男「まぁいいけど。……で、結局お前の武器は何なんだ?」

金髪「あぁ、コレやコレ」スッ……


金髪が右腕を上げると、そこにはゴテゴテした機械のような物が取り付けられていた。

それはリボルバーのシリンダーの様な機構と、そこからスプリング式に発射されるように付けられた金属の太い杭。
太い杭の先には近接戦闘に使えるように槍の穂先のような物が付いている。
404 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/09(月) 22:02:43.94 ID:MrLSsepx0
男「ま……まさかそれは……」

金髪「あぁ……いわゆる『パイルハンマー』ってヤツや」

男「スゲー!!ヤベーカッケー!!超カッケーよ金髪ー!!」

魔少女「あの……それ右腕重くないですか?」




パイルハンマーーとは!!
火薬などによって杭などを瞬間的に撃ち出す、いわゆるロマンである。




金髪「まぁ試しに撃ってみたら1発で肩が外れてなぁー。そんで対策として撃つと同時に衝撃を緩和させる魔法が使えるいい戦技を買って組み込んだんや。おかげで武器代と合わせて半年分のバイト代が全部パーやけどな」ハッハッハ


男「スッゲー!俺にも今度使わせてくれよソレ!!」

魔少女「…………普通の銃などでよかったのでは?」
405 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/09(月) 22:04:26.10 ID:MrLSsepx0
ゴブリンの群れ「キキーッ!!」

男「お、都合のいいところに魔物の群れが」

魔少女「あれはゴブリンですね……いわゆる小鬼です。洞窟のような暗く狭いところに生息する魔物ですね」

金髪「うっし!んじゃあ、準備運動がてらに一丁やったるか!!魔少女ちゃん、身体強化の魔法って使えたりするん?」

魔少女「もちろんです……『フィジカル』」カッ!!

金髪「お、身体が軽ぅなった!……んじゃやるか」スッ……

金髪は、10匹ほどのゴブリンの群れに対して、軽くステップを行いながらファイティングポーズをとる。

男「もしかしてボクシングやってたのか?」

金髪「いんや、喧嘩で身につけた我流や。でも伊達や酔狂だけで、この武器を選んだワケやないんやで」

魔少女「え?……そうなんですか?」


ゴブリンの群れ「キーッ!!」バッ!!

そして、手に棍棒などを持ったゴブリンの群れが、一斉に金髪へと襲い掛かってくる。
406 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/09(月) 22:08:26.45 ID:MrLSsepx0
金髪「オラァッ!!」ブンッ!!

それらに対し、金髪の右拳に取り付けられた刃物が、素早く薙ぎ払うようにゴブリン達をまとめて斬りつけた。
数体のゴブリンはそれだけで後方に飛ばされる。

金髪「シュッ!!」ダンッ!!

そのまま金髪は前方に足を踏み込み、残りのゴブリンの一体に密着したまま照準を合わせ

金髪「ぶっ飛べや!!」カチッ!

ドォォォオオオオオオンッ!!!!

拳に仕込んだトリガーを引き、シリンダーの中の弾薬を炸裂させ、右腕から太い杭が発射された。

杭をモロに食らったゴブリンは即死し、他のゴブリン達もろとろ大きく後方に飛ばされる。


金髪「クゥゥゥウウッ……やっぱコレをぶっ放すのは最高やな!!」ガチャンッ!!

そして取り付けられたレバーを引き、杭を元の位置に戻すと同時に薬莢が排出される。

要は、デカイ大砲を備えたインファイターである。
重さや衝撃など様々なデメリットはあるが、戦技や魔法でデメリットを解消する事で使い手によっては凄まじい戦力を生み出すのだ。


まさに浪漫である。
407 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/09(月) 22:11:23.13 ID:MrLSsepx0
魔少女「驚きました……凄まじい威力ですね。格上の魔物が相手でも通用しそうです」

金髪「まぁな!ただ弱点としてはやっぱ、いくら緩和してても衝撃で身体がヤワになるからなぁ〜。一度の探索で何発も連続で気軽に撃てんってことやな」

男「じゃあこんなとこで撃つなよ!まだ始まったばかりなのに」

金髪「じゃあお前ならあの状況で撃たんのか?」

男「いいや、撃つね!!」

ガシッ!!(握手)

魔少女「とりあえず……戦力に問題は無さそうですね。1番弱いのは先輩ですし。まずは出口を探しましょう」

男「否定はしない」


戦利品
小鬼の石飾り(材質によって値が変わる) 大体10ゴールド分
ゴブリンの心 1個
408 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/09(月) 22:18:02.68 ID:MrLSsepx0
探索30分経過



男「結構歩き回ったけど、出口どころか大部屋の一つも見つからんな」

魔少女「一応目印と……簡単なマッピングはつけています。まだ一度も同じ所を通ってませんから、それだけこの鉱山ダンジョンが広いという事でしょうね」

金髪「そら簡単にクリア出来る親切設計なら誰でも探索者になっとるわ。練習みたいなランク1とは違って、ランク2からはガチ探索やからなぁ」


男達は順調に迷っていた。
といっても魔少女が自分の歩幅を数えて、用紙にマッピングを行なっているので、順調な探索といえば順調である。


男「流石に普通の道にポンポン素材が落ちてるわけでもないからな。出来ればここら辺で一回広い空間に出たいもんだ」

魔少女「そうですね……あ!?ここ、さっき通った分かれ道のようです。作ってる地図とも一致してます」

金髪「てことは、ようやくあらかた探索出来たんか」

魔少女「そのようですね……いくつか選ばなかった分かれ道があったので、この中のどれかに次の階層への出口の部屋があるはずですが」

男「とりあえずこの分かれ道の先に行ってみようぜ」
409 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/09(月) 22:19:51.91 ID:MrLSsepx0
探索40分経過


第二層

『採掘者の休息所』



男「おー!やっと通路以外の広い部屋に出た!!」

最初に選ばなかった分かれ道を進んでいくと、男達は坑道内に開けたエリアを見つけた。
このエリアには、採掘者達の為の簡易的な小屋のようなモノが数軒建てられている。といっても、ダンジョンが作られるさいにその膨大な魔力によって、現実の世界のどこかを写し取っただけなのだが。

金髪「この小屋で少し腰を下ろして休憩が出来そうやな」

魔少女「そうですね……ただし、先にこの小屋を全て調べましょう。魔物が潜んでいる可能性が高いですから」

そう魔少女が進言すると、三人はそれぞれ小屋の中を慎重に確認していく。


魔少女「……こっちの小屋は大丈夫です」

金髪「こっちも何もおらんわー」

男「どわぁぁあああ!?何かデッカいムカデがいる!!」


大ムカデ『キィィィイイッ!!!』バッ!!

ズザァァァアアアッ!!!

男の叫び声と共に、小屋の中から大ムカデと男が飛び出してくる。

大ムカデの大きさは成人男性ほど。
ガイドブック曰く、危険度2から3の魔物である。

男「くっ!?離れろ!!」ブンッ!!

男が鉄の剣を振ると、男に組みついていた大ムカデが一旦離れる。


魔少女「大ムカデ……私達には決して弱くはない魔物です」

金髪「加勢したろか男!?」

男「いや、まだいい!!この剣の試運転がてら、俺1人でやってみる」

魔少女「……わかりました。気をつけてくださいね、先輩」

金髪「おいおいええんか?アイツあんまり強くないんやろ?」

魔少女「火力でいえば……私や金髪さんの方が上です。でも、まぁ見ててください」
410 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/09(月) 22:30:26.36 ID:MrLSsepx0
大ムカデ『キィィィッ!!!』バッ!!

大ムカデが男へと飛びかかってくる。この大きさ、噛む力も相当だろう。まともに噛みつかれれば大ダメージもある。


男「戦技……『倍加速』ッ!!」



ズシャアッ!!

大ムカデ『ギィィイッ!!』ズザァッ!!

しかし、男はカウンターで大ムカデの胴体へと横薙ぎに攻撃を加える。それも素早く、腰の入った一撃で。


金髪「速ッ!?何やアイツ、めちゃくちゃ動けるやんけ!!」

魔少女「あの鉄の剣に付いていた戦技の効果です……時間魔法『アクセル』と同種類の戦技。発動後、1秒間だけ自身の時間を加速させる事ができます。……先輩にとっては大当たり武器ですね」


滝の洞窟にて、カウボーイが洞窟内で見つけ、男へと譲り渡した鉄の剣。
これを鑑定したところ、この戦技が最初からつけられていた。正面から剣で戦う戦法の男にとってはベストな戦技である。

魔少女「昨日は……鑑定した後ずっと、あの戦技を使いこなす特訓をしていました。魔力の消費も大きくなく、使うタイミングがよければ絶大な効果を発揮する……先輩ならそのタイミングは絶対見逃しませんからね」


剣道に限らず、武術・格闘技を長くやっている人間なら、対峙する相手の隙を突いて技を繰り出すのは当たり前。

その隙を倍速で突けるのだ。弱いわけがない。


大ムカデ『キルルルルル……ッ!!』ザザァッ!!


金髪「あ!?あのムカデ逃げよった!!」

魔少女「いえ……恐らく身を隠しただけです。ムカデは素早くどこにでも潜む事が出来ますから……隙を見て飛びかかる気でしょう」
411 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/09(月) 22:39:24.64 ID:MrLSsepx0
シー……ン……


男「……………………」


ザ……

大ムカデ「ギィィイッ!!!」ザザァッ!!

男「『加速』ッ!!」ブンッ!!

ズシャアッ!!!


静寂の中、男は全方向に神経を集中させ、大ムカデの這いずる音に反応すると同時に戦技を発動させる。
背後から飛びかかってきた大ムカデに対し、加速された反応で再び横薙ぎに斬る。


大ムカデ「ギッ……」ドシャアッ!!

男「うっし!終わり!!」

魔少女「戦技を瞬間的に発動させる訓練……少しは成果が出てきましたね。まだまだタイムラグはありますが」

大ムカデ「ギィィイッ!!」

金髪「ッ!?まだや!!」

魔少女「『ファイヤーボール』」ポゥッ!!

大ムカデ「キィィィッ!!!……」ドサッ

魔少女「これくらいは……とっさに出来るようにならなければ、その戦技は活かせませんよ?折角いい性能なんですから」

男「はいはい精進しますよー」

金髪「……ハハッ、こいつ等やるやん!!」
412 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/09(月) 22:42:17.60 ID:MrLSsepx0
〜休憩中〜


魔少女「書いていた地図を見る限り……恐らくここら辺に次の階層への出口があると思われます。というより、恐らくこの辺り以外はこの階層は探索済みかと」

男「何だ、先に探索終わっちまったのか。意外に道中何にもなかったな。その分この小屋のエリアにまとめて落ちてたけど」

休憩前に男達は、小屋に落ちていたアイテムを拾い漁っていた。
ここにあった持って帰れそうなものだけで、100ゴールド分はあるだろう。

金髪「武器やアクセサリーみたいな装備品が、いっちゃん儲かるんやけどな。ゴツいもんばっかで持って帰れないんが勿体無いわー」

鉱山の休憩エリアらしく、鉱夫の使うツルハシなどの道具が落ちていたが、あくまで火薬鉱石狙いなのであまり多くは持ち帰れない。
男達は仕方なく、拾ったものを選別して、最低限の儲けを出そうとしていた。

魔少女「しかし……目的の火薬鉱石は見つかりませんでしたね」

金髪「恐らく掘り出した鉱石を保管しておく場所みたいなモンがあるんやろ。こんな休憩所みたいなもんがあるんや。次の階層には必ずあるハズ」

男「無かったら今回の戦利品を売って、その金で火薬買えよ」

金髪「市場で買うと金かかるからなぁー。今回持ってきた6発分だけで180ゴールドやで?この値段やと火薬の威力もイマイチやしそれなら自分で調達した方がえぇわ」

魔少女「とりあえず……まずは先に進みましょう」
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/09(月) 23:54:39.23 ID:rP9Ypsf8o
くっ、ロマンは認めたるわ
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/10(火) 15:31:55.86 ID:h9oM1koVO
金髪さん一応雇い主なんでしょRPGの大切な顧客にタメ口なのか……
415 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:21:42.71 ID:2+dJOTO10
すいません昨日は寝落ちです……投下予定だったとこまで投下します

>>413
金髪にはps4ゲーム「ブラッドボーン」ばりの浪漫溢れる改造変形バ火力武器をメインに使ってもらうつもりです。キャラはFF8のゼルをイメージしてます。ガテン系の気のいい兄ちゃんです
>>414
まぁ同い年だし金髪も気にしない性格なので。ドラクエ3のルイーダの酒場みたいなもんです
416 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:22:36.79 ID:2+dJOTO10

『下層への階段』


男「あったな、次の階層への道」

金髪「この部屋は何なんやろな?あちこちにデカイ岩がゴロゴロ落ちとるけど」

魔少女「この階段……先が真っ暗で何も見えませんね。恐らく、途中で別空間に繋がっているんでしょうが」

金髪「この階層はほぼほぼ探し尽くしたし、次行こうや」

男「そうだな。でもその前に……」チラッ



ゴブリンの群れ「キキーッ!!」


男「こいつ等どうする?」

金髪「ほっといて下降りてえぇんちゃう?」

魔少女「しかし……この魔物達を倒しておけば、換金するアイテムが増えますよ?」


ホブゴブリン「……ニンゲン……」


男「お、何かデカイ奴がいるぞ?しかも俺らの言葉喋ってるし」

ゴブリン達の群れの奥には、ボス格と思われる一回り体の大きなホブゴブリンと呼ばれる魔物もいた。

ゴブリンがランク1、ホブゴブリンがランク4となる。

この中で一番実力のある魔少女でも、ホブゴブリンを相手にするには骨が折れるだろう。
417 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:23:35.62 ID:2+dJOTO10
魔少女「……おかしいですね。先ほどの大ムカデといい危険度ランク2のダンジョンなのに、それ以上のランクの魔物がやけに頻繁に出てきてるような……」

男「でもまぁ、1体づつだろ?それに俺等も3人いるんだし、実力的には丁度いいんじゃないか?」

金髪「せやせや。金を稼がなあかんのも確かやし……やろか?」

男「おし……魔少女!とりあえず雑魚を片付けてくれねーか?」

魔少女「わかりました……火球・火球・火球ッ、3種複合魔法『ガトリングファイヤーボール』ッ!!」ボゥッ!!


ドドドドドドドドドッ!!!


前に突き出した魔少女の両手から、小さな火球が連射されていく。
火球はゴブリン達を次々と撃退していった。


魔少女「……ふぅ……これであらかた片付いたと思いますが……」


ホブゴブリン「…………」シュゥゥウッ……


男「親玉は殆ど無傷か。まぁ、そんな簡単な話じゃないよなぁ」
418 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:27:53.47 ID:2+dJOTO10
ダッ!!

男「おっ!?」

前に飛び出したホブゴブリンは、そのまま男へと殴りかかる。

ボクサー並みの両拳の連打により、男はひたすら躱す事しか出来なかった。

男「くっ、流石格上。やっぱ1対1じゃあちょっと厳しいな」

ホブゴブリン「ォォォォォオオオッ!!」シュシュシュシュッ!!!

魔少女「補助魔法をかけます……『フィジカル』」カッ!!

男「うっし!!これで身体が軽くな」

ホブゴブリン「オオオッ!!!」ブンッ!!

ドォンッ!!

男「がっ……は……」ドサッ……


一瞬の隙に、ホブゴブリンの渾身の拳が男へと当たり、男は岩壁へと衝突する。ダメージは大きいだろう。


魔少女「先輩!!」

ホブゴブリン「オオオッ!!」ダッ!!

そのままホブゴブリンは、魔少女へと突進していく。
か弱い魔少女がこの一撃をもらえば、ひとたまりもないだろう。

金髪「させるかボケェ!!」ブンッ!!

ズシュウッ!!

その前に、金髪が右腕のパイルハンマーでホブゴブリンの腕を斬りつける。腕に刻まれた傷はかなり深く、ホブゴブリンの攻撃を弱める事となるだろう。


しかし
419 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:29:07.00 ID:2+dJOTO10
ホブゴブリン「……ニンゲンン……」シュゥゥウッ……

金髪「ッ!?何や……傷がえらい勢いで治っていきよる……」

魔少女「あの魔物、何か変です……一体……」

通常ではあり得ない速さで、ホブゴブリンの傷が治っていく。格上の魔物ならば回復魔法などの様々な回復手段を持っているが、ホブゴブリンにはそれは無いはずである。

そもそも、人語を解している時点で、既に普通のホブゴブリンではない。


ホブゴブリン「ォォォォォオオオッ!!!!!」ゴキゴキゴキッ!!!


魔少女「身体が大きくなっていく……こんな事……」

金髪「なーんや……ヤバそうな匂いがプンプンすんなぁ」

雄叫びと共にホブゴブリンの身体が徐々に大きくなっていく。骨格すら作り変えられているようだ。

先ほどまでは精々150cmほどだった体長は、いまや180cmほどにまで大きくなった。より強く、より頑丈に。


魔少女「危険度6……7くらいはありそうですね……」

金髪「こら、ワシらの手に負えなさそうやな……」


ホブゴブリン改「ニィンゲェン……」ユラッ……

明らかに異常なホブゴブリンが、魔少女達へと攻撃を仕掛けようとしたその瞬間


ズシュッ!!
420 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:30:24.67 ID:2+dJOTO10
魔少女「ッ!?先輩……」

男「魔少女!!速攻で撃てるデカイ魔法をコイツに撃てッ!!」

魔少女「は、ハイ!」ググッ!!

ホブゴブリンの背後から、先ほど一撃を喰らった男がホブゴブリンの右腕を斬り落とした。

完全に不意をついた一撃だ。

ホブゴブリン改「グォォォオオオオオッ!!!」ガシィッ!!
男「ガハッ!?」

すかさずホブゴブリンが男の首を残った左手で掴む。プロレスラーのような肉体から繰り出される腕力は、とても男が抵抗できる力ではない。


金髪「隙だらけやでデカブツ」グッ!


そのホブゴブリンの背後には、右腕のパイルハンマーを構えた金髪が。


金髪「本日2発目やッ!!」カチッ!


ズドォォォオオオオッ!!!

ホブゴブリン「グガァァアアッ!!!」ドンッ!!

男「ブハァッ!!」ドサッ!

そのまま巨大な杭を放つパイルハンマーがホブゴブリンの背中へと炸裂し、ホブゴブリンは坑道の壁に叩きつけられる。
捕まえていた男を思わず放してしまうほどに強烈だったのだろう。
421 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:40:45.46 ID:2+dJOTO10
魔少女「撃ちます……二人とも避けてください!!」ググググッ!!

男「ヤバッ!!」ダッ!!

2つの練り上げられた魔力球を浮かび上がらせ、魔少女が叫ぶ。同時に男と金髪は全力でその場から離れる。


魔少女「火球、光球……2種複合『フレイムアロー』!!」ドドドドッ!!

1つの魔力球から、10発程の炎の矢がホブゴブリンへと放たれる。

ホブゴブリン「グォォォオオオオオッ!!!」

矢はホブゴブリンの身体を貫き壁へと突き刺さり、ホブゴブリンを壁に固定した。

魔少女「更に火球、火球……2種複合魔法『フレイムボール』」ドンッ!!

ドォォオンッ!!

そしてもう1つの魔力球から通常よりもふた回りほど大きな火球が、ホブゴブリンへと放たれ炸裂する。

どうやら魔少女は、2種複合の魔法を2つ作成していたようだ。
より複雑な3種複合よりも威力は劣るが、手早くダメージを与える為に考えたのだろう。
422 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:41:56.74 ID:2+dJOTO10
金髪「やったんか!?」

魔少女「いえ……金髪さんの武器で倒しきれないのでしたら、あの程度の魔法では無理です。ここは今すぐ退きましょう」

男「うし!そうと決まれば」チラッ


3人は同時に、次の階層へと続く階段へと目を向ける。
次の階層とは空間自体は直接繋がっていない。
ダンジョンの外から入ってきた人間達はそれを通り抜ける事ができるが、ダンジョンで生まれた魔物達には別階層へ行くことは出来ないのだ。


ホブゴブリン改「ォォォォォオオオッ!!!」

男「走れっ!!」ダッ!!

ホブゴブリンの雄叫びが響き渡ると同時に、3人は階段へと全力で走り出す。


ガラガラガラッ…………

金髪「うお!?アイツデッカイ岩持ち上げとんやけど」

男「いいから早く走れ!!」

ホブゴブリン改「ォォォォォオオオッ!!!」ブンッ!!

この部屋に無造作に転がっていた人を潰すには十分なほどの大きさの岩を、ホブゴブリンが男達目掛けて投げ飛ばす。

ドォォォオオオオオオンッ!!!


ホブゴブリン改「ニンゲン……ニンゲンンンンン!!!」
423 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:44:34.32 ID:2+dJOTO10
第三層

『火晶石の採掘坑道』


男「ハァッ……ハァッ……」

金髪「流石に……ちょっと死ぬかと思ったわ……」ハァッ……

魔少女「…………」ゼェッ……ゼェッ……

男「おい魔少女……一気に走り過ぎてダウンしてやがんな」

金髪「ここらでちょっと休もか……アイツも別の階層まで来られへんし」




……………………



カウボーイ「おーいプリっちー、ちょっと頼み事があるんだけどー」

プリースト「断る。そしてその呼び方はやめろ」

カウボーイ「まぁまぁいーじゃない。それでさー、ちょっと『例の件』でアクシデントがあっちゃってね?こないだここに来たあの少年達が危ないかもしれないんだよー。ちょっと片付けてきてくんない?」


プリースト「……『バグ』か?」


カウボーイ「そゆこと。頼んでいい?皆出払ってるからさぁ……」


プリースト「……ハァッ……場所はどれだ?」
424 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:45:51.62 ID:2+dJOTO10

…………



魔少女「ふぅ……ようやく呼吸が整いました」

金髪「魔少女ちゃんビックリするくらい体力ないなー、天は二物を与えずってヤツやな」

男「これでも無事に下に降りるまで体力が保っただけ大成長なんだがな」


魔少女「それでは進む前に……先ほどの件について話しておきましょう。なぜあのホブゴブリンはあれほど強力な個体となっているのか」

男「確かにどんだけダメージ与えても、治るだけでなく更に強くなるんだもんなー。何なんだアイツ」

金髪「突然変異ってヤツなんか?それでもあんな極端なヤツにはならへんやろ。『バグキャラ』やであんなの」

魔少女「この先……同じような特異個体が出てこないとも限りません。もし敵魔物に異常が見られれば即時撤退を。どうやら傷つければ傷つけるほど強力になるようなので、それならば交戦しなければよいだけですので」

男「了解。ギルドに戻ったらオペ姉さんに報告しとかなきゃな」

金髪「じゃ、引き続き探索といこか!さっさと火薬を見つけて脱出した方がよさそうや」
425 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/01/10(火) 21:46:33.43 ID:2+dJOTO10
投下終了です。ではまた。
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/10(火) 23:39:24.23 ID:9YGApZs/0
乙!
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/14(土) 04:44:08.04 ID:OK4R5Elwo
潜れば潜るほど火薬が減っていく負のサイクルに陥りそうだなぁ
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/24(火) 15:02:38.27 ID:qPcBE0Bk0
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/06(月) 12:57:16.39 ID:mtGOjZec0
保守
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 16:05:20.30 ID:DMdt0niF0
続きまだ?
431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/13(月) 16:26:32.90 ID:AoJkvaw4o
保守
432 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 19:52:48.06 ID:tp7V0iLq0
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/08(土) 22:43:11.21 ID:7wj1Fzpxo
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/14(金) 20:53:54.41 ID:Mn0q2sEYO
楽しみにしてるSS多くてつら…苦はない
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/28(日) 03:21:10.45 ID:ma/6DtIxO
エタった…のか?
436 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 08:27:00.21 ID:E5+C4lEP0
お久しぶりです。1です。軽く投下していきます。
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/29(月) 08:46:21.68 ID:q9AH3d07O
待ってた(*゚∀゚)
438 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 09:13:25.24 ID:E5+C4lEP0
『採石保管所』


金髪「あったぁぁあ!!ココやココ!!間違いあらへん」

傷つく度に異常な成長を遂げるホブゴブリンから階層を移動することで逃れた3人は、十数分程の探索で採掘してされた火薬石が保管されているであろう大部屋を見つけた。

男「ふぅーようやく見つけたなー。この階層もゴブリンばっかで疲れたわ」

魔少女「先程の……特異なホブゴブリンのような魔物がいなかったのは幸いです。それで金髪さん、目的の火薬石というのはどれになるんですか?」


金髪「え?……これぜんぶ火薬とちゃうんか?」

魔少女「恐らく……別種の鉱石も混じっていると思いますが……まさか……」

男「……これ全部調べなきゃならないパターンかもしかして」


しかし、石にも様々な種類がある為どれが目的の火薬石かはわからない。

魔少女「わかりました……火をつけてみましょう」

男「ちょっ!?ちょっと待て!!こんな火薬の塊みたいなモンに火をつけたら大爆発すんだろ」

魔少女「百も承知です……鉱石の小さなカケラや粒状のものに火をつけます。幸い品質は低いとの事なのでそれだけで怪我するような爆発は起きないでしょう。
それと、この部屋で火をつけると空気中に舞っている火薬の粉末で粉塵爆発を起こすかもしれませんから一通りカケラを集めたら別の部屋へと移動しましょう」

金髪「いやーなんや悪いなー」ハッハッハッ

男「自分の目的の素材のことくらいしっかり調べとけ馬鹿野郎!!」
439 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 09:15:16.16 ID:E5+C4lEP0

『ただ広いだけの大部屋』


ボンッ!!

男「うぉっ!!石が軽く爆発したぞ」

魔少女「どうやらコレのようですね……黒いざらついた感じの鉱石です」

金髪「んじゃ、早速さっきの部屋に戻ってワシのパイルハンマーで粉々にして持って帰ろか!!」

男「だから爆発するって言ってんだろうがぶっ飛ばすぞこの野郎!!」

魔少女「私の水系の魔法で……高圧カッターのように切りましょう」

金髪「それ火薬湿気ったりせぇへん?」

魔少女「天日干しすれば……多分大丈夫じゃないでしょうか?本来なら、木ノミなどで削ったりするんでしょうが」
440 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 09:22:57.44 ID:E5+C4lEP0

『採石保管場』


魔少女「水……風……複合魔法『ウォーターカッター』」ズシャァァアアッ!!

男「おー切れた切れた。あとはコレをバッグに詰めれるだけ詰めればいいか」

金髪「いやー、ホンマ魔少女ちゃんいてくれて助かったわ。ワシだけやったらとんだどれが火薬かわからんで無駄足になるとこやった」

魔少女「お仕事ですから……お役に立ててよかったです」

男「よっと……結構重いな。とりあえずコレで目標達成か?」

金髪「せやな!!こんだけアレば当面弾の火薬には困らんやろ!!ついでに金になりそうな鉱石も結構取れたし、あのヤバイヤツのようなんが出る前にささっと出口探して帰ろか」
441 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 09:25:21.30 ID:E5+C4lEP0

『ォォォォォオオオオオオッ!!!!!!!』ビリビリビリッ!!!


男「ッ!?今のって……」

魔少女「まさか……魔物が階層を越えて追ってこれる訳が……」

金髪「おいおいまさかまたアイツかいな」


突如、坑道内に響き渡った雄叫びは、上の階層で3人を圧倒していたホブゴブリンをイメージさせていた。

ダンジョンにて階層を移動出来るのは、『ダンジョンの外』から来た冒険者のみ。
このダンジョンの魔物であるホブゴブリンに追ってこれるハズは無いのだ。


魔少女「こうなるのでしたら……先に出口を確保しておくべきでしたね。私のミスです」

男「なわけねーだろ。どっちにしたってあの雄叫びがヤツならどっかでカチ合うんだからな」

金髪「せやせや。それに、この階層でならもしかしたらアイツを倒せるかもしれへんで?」チラッ

金髪は、ふと目を部屋全体に向ける。
そこには、先程の入手した火薬石の岩が、至るところに配置されていることが確認出来た。


魔少女「確かに……多少リスクはありますが、ココなら……コレを使えば倒せるかもしれません」
442 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 10:18:52.21 ID:E5+C4lEP0
…………



ホブゴブリン改『ニィンゲン……』


上の階層で死闘を繰り広げたホブゴブリンが、先程まで男達がいた採石保管場へと足を踏み入れる。

本来、そのダンジョンに生息する魔物は階層を跨ぐ事は出来ない。ここにこの魔物が降りてきた事自体が異例、異常なのだ。

しかし、ここはダンジョン。何が起きても行うべきは生きて地上へと戻る事。
どんな魔物が現れようとも、それが出来ればいいのだ。


例えどんな手段を用いても。


男「今だ魔少女!!」

魔少女「『ファイヤーボール』」カッ!!


そして魔少女が部屋の外から火球を撃ち込んだ瞬間、部屋の火薬岩に引火し、部屋は轟音とともに爆炎に包まれた。
443 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 10:19:41.55 ID:E5+C4lEP0
パラパラッ……


魔少女「作戦成功ですね……火薬岩に粉塵爆発も合わせて大爆発です」

金髪「ッかー……ごっつー威力と爆音やったわー……あれ?どないしたんや男」

男「耳が……塞ぐの間に合わなかった……」キーン


男「しかし凄い爆発だったな……これなら流石のあのバケモンも木っ端微塵じゃないか?」

金髪「どれどれ……せやな。何処にも死体すら見当たらんわ」

魔少女「……ッ!?まだです!!」


部屋の中の様子を3人が伺う中、魔少女が何かに気付く。

爆発によって粉々になったハズのホブゴブリンの禍々しい気配を感じ取ったのだ。

そしてその瞬間、部屋中に散らばっていたホブゴブリンの肉片が一点に集まっていくのを確認する。
444 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 10:53:16.48 ID:E5+C4lEP0
男「な……マジかよ!!まだ終わらないのか!?ホントどうやったら倒せるんだアイツ!!」

金髪「こうなったら逃げるが勝ちや!!流石にダンジョンの外までは追ってこられへんやろ!!」

魔少女「そうですね……目的のモノは手に入れました。後はダンジョン協会などに報告して任せましょう。行きますよ先輩」

男「あぁ、わかってる。だけど出口はまだ俺ら見つけてねえぞ?」

魔少女「この部屋にたどり着くまでに……おおよそのマッピングは済ませてあります。恐らくですが出口の見当はつきました。急ぎましょう」



ホブゴブリン極『ォォォォォオ"オ"オ"ッ!!!』


肉片は再生されると共に、ホブゴブリンを更に異形の化け物へと進化していく。上半身のみ再生された身体を見るだけで、先程までとは桁違いにレベルが上がっているのが感じられた。




男「うぉ!?もう上半身が殆ど再生しやがった!!よし、とっとと逃げるか!!」

魔少女「その前に……『ミラージュ』!!」

魔少女が魔法を発動させると、大部屋がもくもくと煙に包まれていく。

魔少女「簡易的な幻覚作用のある煙魔法です……これで少しは時間が稼げるハズ。行きましょう」
445 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 10:54:00.14 ID:E5+C4lEP0
ダッダッダッ!!


男「本当にこの方向であってんのか魔少女!?」

魔少女「恐らく……としか言えません。先に階段を見つけられていればよかったのですが」

金髪「ダメやったらダメやったらや。そんときゃ腹括ってもう一回アイツをバラバラにしたらえぇ」

男「それもそうだな。魔少女がいなけりゃもっと迷ってたんだ。逃げられるチャンスがあるだけマシか」

魔少女「広い空間に出ます……恐らくこの先に……」


男「お……おぉ!!あった!!階段があった!!」


3人が辿り着いた先には、魔少女の見事な予想通りに最下層へと続く階段があった。
しかし周囲には火薬岩のような鉱石が転がっている。

ホブゴブリン極『ォォォォォオオオッ!!!』ボゥッ!!


同時に、距離はあるものの背後から追いかけてきた強靭に進化したホブゴブリンが、手から火球を放つ。

それは魔少女が散々ホブゴブリン相手に撃ち放ったファイヤーボールであった。
それは真っ直ぐに3人へと飛んでいく。

魔少女「そんな……まさか私の魔法を学習したという事ですか?」

男「この部屋にも火薬の岩っぽいのが転がってる!!早く逃げねぇと誘爆して全員丸焦げになんぞ!!」

金髪「階段に突っ込めぇぇええ!!」


ホブゴブリンの放った火球が通路の岸壁に衝突した瞬間


ドォォォオオオオオオンッ!!!!


階段のある空間全体を含め、ダンジョン内に爆炎が広がった。
446 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2017/05/29(月) 10:59:29.29 ID:E5+C4lEP0
最下層

『火蜥蜴の巣』


男「痛ててて……オイ、全員無事か?」

金髪「ワシは五体満足や。魔少女ちゃんは?」

魔少女「私も大丈夫です……どうにか全員無事に降りられましたね」

男「ここまでくれば、後はダンジョンから出るだけだ。さっさと……何だコレ……」

再び階層を越えてホブゴブリンが追いかけてくる前にダンジョンから脱出しようとする3人の眼前には、異様な光景があった。


本来このダンジョンの最下層には、洞窟内の火薬岩を主食とする『火蜥蜴』達の縄張りとなっている。

ランクは5ほど。見た目や大きさは火球を吐くコモドドラゴン。ランク2のダンジョンならばボスと言える魔物である。


その火蜥蜴達が怯えるように巣として作られた広い空間の隅で縮こまっていた。
447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/29(月) 12:28:35.71 ID:1upb6ozpO
投下おつ
敢えて言うけど
運営がサボってたから残ってるだけで
>>1が生存報告してないから本来は3月10日に強制html化されてるからな?
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