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男「はぁ?ダンジョンに行ってこいって?」
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202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/04(日) 17:04:40.60 ID:QmbLLtJ6O
オモロイデニイチャン
203 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/07(水) 12:38:46.79 ID:J8QF+87Ao
おつ
素晴らしい
204 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/07(水) 18:48:06.65 ID:TgFXkO7Y0
こんばんわ、1です。
今日もほどよく投下していきます。
205 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/07(水) 19:32:39.98 ID:TgFXkO7Y0
『水見の滝 中流の滝』
ザァァァァァァァアアアアッ!!!!
魔少女「キングス……ありがとです」ナデナデ
キングス『ホナマタ』ボゥンッ!!
男「ハァッ、ハァッ、デカイくせにめちゃくちゃ速いなチクショウ……」
魔少女「ちょうど見通しもいいですし……ここで休憩しましょう。電車で食べなかったお弁当もありますし」バサバサッ
男「ピクニックシートなんて持ってきたのかよ、完全にピクニックだな。てか何処から出した?」
魔少女「最近……こういう嵩張る旅の荷物を別空間の保管場所から取り寄せられるように空間魔法を勉強してるんですよね」ジジジッ……
魔少女が手を広げると、直径30cmくらいの穴が空間に開く。
どうやらこの中に色々な道具を保管しているようだ。
男「それ四○元ポケッ○じゃねーか魔法凄ぇ!!……あれ?それ使えばダンジョンの道具持ち帰り放題じゃねぇの?」
魔少女「いえ……ダンジョンの道具は出口から脱出するか、脱出道具を使う事でしか持ち帰れないようです」
男「なるほど……ズルはできねぇんだな」
魔少女「なんにせよ……自分もダンジョンから出なければいけませんからね。お弁当食べながら戦利品の確認でもしましょうか」
206 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/07(水) 19:38:08.96 ID:TgFXkO7Y0
……………………
丈夫な蔓 10ゴールド分
赤い植物の種 5ゴールド分
目覚まし時計 10ゴールド
リュックサック 15ゴールド
リュックサックに入っていたお菓子 消費
リュックサックに入っていた安物のブレスレット(魔物付)20ゴールド
リュックサックにくくられていた木製バット(戦技付)20ゴールド
男「もうお菓子くらいなら驚かねーや」モグモグ
魔少女「リュックサックは一瞬……別の探索者の荷物かと思いましたが、ゲームや映画でいう宝箱的なモノのようですね」
男「ゲームじゃあるまいし、宝箱なんてわかりやすいもの流石に置いてないよなー」
207 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/07(水) 19:46:04.51 ID:TgFXkO7Y0
魔少女「そして……新しく武器と装飾品を初めて拾いましたが……」
男「これ戦技とか魔物の力がもう入ってるよな?使ってもいいのかな?」
魔少女「安全策をとるなら……持ち帰って業者さんに鑑定してもらうのが一番です。使うには通常通り魔力を流せば発動はしますが、どんな事になるかはわかりませんからね」
男「よし、じゃあまずはバットの戦技から」ググッ……
魔少女「えぇ……わかってましたよ使うって」ハァッ……
男がバットを握り魔力を通すと、バット全体にある魔法が発動する。
男「お、何かきた。魔少女、どんな感じがする?」
魔少女「感じる魔力の種類としては……爆破系に近いような」
男「んじゃ試しに石ころでも打ってみるか。せーの!!」ブンッ!
しかし男の攻撃は外れた。
魔少女「先輩……ダサいです」
男「うるせぇ!んじゃ気を取り直して」ブンッ!!
カキーンッ!!
男が手頃な大きさの石を宙に上げ、それをバットで打つと石は滝壺の方へと飛んでいった。
男「あり?何も起こらねぇや」
そして、石が滝壺の奥の岩壁に当たった瞬間
208 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/07(水) 20:07:18.83 ID:TgFXkO7Y0
ドォォオオオンッ!!!
男「ッ!?何だ!?」
石がそこそこ威力のある爆発を起こした。
魔少女「どうやら……バットで打ったモノを爆弾にする戦技のようですね。そして衝撃で爆発すると」
男「え?それってどんな強いヤツでも打てば倒せるんじゃね?」
魔少女「流石に……そんなに強力ではないでしょう。飛ばせるモノ。あるいは大きさ、生命体以外。そんな条件があるハズです。詳しくは……やはり鑑定ですね」
男「なるほど。野球部なら狙った方向に打てるんだろうが、俺には使いこなせそうにねぇな」
魔少女「単純に……当てれば爆発するとかならよかったですね。その場合は先輩もバットも吹き飛びそうですが」
男「怖いなそれ。よし、次はこのブレスレットを……ん?」
男はふと先ほど爆破した滝壺の奥の岩壁を見る。
大した威力ではなかったのだが、岩壁が崩れているようだ。
更にその先には
209 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/07(水) 20:13:02.23 ID:TgFXkO7Y0
男「おい……何かあの奥に道が続いてねぇか?」
魔少女「そうですね……ガイドブックにもあの道の事は書いてありません。という事は……」
男「俺達……新しい採取エリアを見つけちゃったのか?」
魔少女「恐らく……よかったですね先輩。固定型ダンジョンの場合、新しいルートや採取エリアなどを市に報告すると、報奨金がもらえますよ」
男「マジで!?いくら!?」
魔少女「ランク2ですと……多分200ゴールドだったような……」
男「おぉ!!一気に資金が増えんじゃん!!」
魔少女「しかし……どれだけ運がいいんですか先輩……たまたま拾った武器の戦技でたまたま岩壁を破壊したら道を見つけるなんて……」
男「どうせなら宝クジ当たって欲しいけどな。とりあえず写真と場所だけ記録しとくか」
210 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/07(水) 20:19:08.87 ID:TgFXkO7Y0
…………
魔少女「よし……位置記録は大体ですがとれました。まぁ滝という目印があるので報告も楽でしょう」
男「写真もOKだ。あとは水晶だけとって帰るか……そういえば水晶のある滝ってここじゃあなかったのか?」
魔少女「その滝は……もっと山頂の出口付近にあるようですね」
男「……そこの道……洞窟になってんなら水晶くらいあるんじゃねぇの?」
魔少女「先輩……危険は極力避けるといったのは先輩では……」
男「いや、そうだけどさ……気になるじゃん」
魔少女「はぁ……わかりました。先にラージアントにある程度探索してもらいます。危険な魔物が中にいたら知らせてくれますから」カッ!
ラージアント『キー!』
男「流石魔少女!じゃあ知らせが来るまでここで待ってるか」
211 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/07(水) 20:37:48.50 ID:TgFXkO7Y0
…………
ザァァァァァァァアアアアッ!!!
男「あぁ……お茶がうめぇ……」ズズッ……
魔少女「滝の音が……いい感じで心が安らぎますね……」ズズッ……
ラージアントが滝壺の洞窟へと進入して5分。
男達は、ピクニックシートに座り、存分にくつろいでいた。
この間にもラージアントは単身大冒険の最中だがとくに語られる事はないだろう。
ガサガサッ…………
カウボーイ「ここにも滝があったのか……ん?」
男「え?」
魔少女「あ……こんにちは」ズズッ……
212 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/07(水) 20:42:18.48 ID:TgFXkO7Y0
…………
カウボーイ「君達もこのダンジョンにいたのか。あの電車の中で見た時には、高校生くらいなのに珍しいなぁと思ってたんだが……あ、お茶ありがとう」ズズッ……
魔少女「いえ……こちらもジロジロ見てしまってすいません」
カウボーイ「ん?あー、いーよいーよ。目立つからねぇこの格好は」
男「何でそんな格好してんすか?」
カウボーイ「格好いいじゃない」
男「えぇー……」
カウボーイ「まぁそれは半分冗談として……僕はダンジョン探索請負の会社……まぁいわゆるギルドだね。そこに所属してるんだが、方針がとにかく目立て!なんだよね。その方が宣伝にもなるし。
僕の他にも数人所属しているけど、皆どんな戦闘スタイルかわかりやすい格好をしてるよ」
213 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/07(水) 20:52:41.38 ID:TgFXkO7Y0
魔少女「何か……芸能事務所みたいですね」
カウボーイ「ハハッ、確かにそうだ。まぁ格好だけつけても実力がないと笑い者だからね。
ウチのギルドは少人数だが、皆それなりの実力者だと思うよ」
男「ほぇー、因みに何てギルドなんすか?」
カウボーイ「あぁ、それじゃあ名刺を渡しておくよ。もしダンジョン関係で相談があればウチに遊びにおいで。お茶くらいは出すよ」つ名刺
男「『ダンジョンギルド 【RPG】 カウボーイ』……」
魔少女「そんな気軽に……行ってもいいんですか?」
カウボーイ「んー、ウチは割とそういうのラフだから。他の連中も学生のお客なんて珍しいから喜ぶんじゃないかな?」
魔少女「わかりました……ありがとうござい……ッ!?」バッ!!
お礼を言いながら頭を下げていた魔少女が、何かを感じ取り滝の洞窟の方へと振り向く。
男「ん?どうした魔少女」
魔少女「ラージアントが……何かにやられました」
男「……やっぱ魔物がいるってことか」
魔少女「えぇ……中はかなり広いようですし、私達のレベルでは無闇に入らない方がよさそうです」
カウボーイ「ん?あの洞窟がどうかしたの?」
214 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/07(水) 20:55:48.02 ID:TgFXkO7Y0
…………
カウボーイ「へぇ……新しい採取地をねぇ……凄いじゃない」
男「偶然っすけどね」
魔少女「ですが……中の形状も把握できず、未確認の魔物もいる為、探索はやめておこうかと」
カウボーイ「うん、確かにそれが賢明だね。碌に調査もせずに欲に目が眩んで死んでいった探索者なんて腐るほど見てきたよ」
男「中の魔物をある程度誘い出せればどんなのがいるかわかるんだけどなー」
魔少女「そうですね……やりますか?」
男「できんの!?」
魔少女「拾ったアイテムに……『目覚まし時計』がありましたよね。あれを『丈夫な蔓』で洞窟の入り口に吊るしておけば」
カウボーイ「音に釣られて姿を現わすと……しかも洞窟だから音は反響して奥まで届く……凄いね彼女」
男「いやー……ホント頼りになりますよ」
魔少女「」ドヤッ
魔少女クラフトアイテムNO.1『魔物こいこい』
使用アイテム
目覚まし時計 1個
丈夫な蔓 2メートル
215 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/07(水) 21:03:54.41 ID:TgFXkO7Y0
ジリリリリリリリッ!!!!
男「いい具合にうるさい目覚ましだな」
魔少女「これなら……洞窟の中に響き渡ると思います。問題は、洞窟の外の魔物まで呼び寄せなければいいんですが……トレントとか」
カウボーイ「あぁ、トレントなら僕があらかた倒したから大丈夫だよ」
男「あ」
魔少女「やっぱり……あの音はあなたでしたか」
カウボーイ「ん?」
大ミミズ×5【キシャァァァアアッ】ウネウネ
男「うわ、洞窟からミミズ出てきた」
魔少女「多いと気持ち悪いですね……焼いていいですか?」
カウボーイ「いや……これは何かから逃げてきてるみたいだ。本命はコッチだな」
216 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/07(水) 21:08:55.16 ID:TgFXkO7Y0
ズンッ!!
男「……何か重そうな足音が聞こえてくるんだけど」
ズンッ!!
魔少女「やはり……無闇に洞窟に入らなくて正解だったようです」
ズンッ!!!
カウボーイ「でもコイツがいるって事は、そこには大体お宝があるんだよね」
ジリリリリリリリッ!!!
グシャァッ!!!
ゴーレム【ゴォオッ……】
現れてすぐに、洞窟の入り口に吊るされた目覚まし時計を握り潰した魔物。
それは、ダンジョンに眠る宝を守る目的で、石材で作られたとされる人型魔導兵器。
通称『ゴーレム』である。
危険度『ランク8相当』
217 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/07(水) 21:11:33.03 ID:TgFXkO7Y0
投下終了です。
次回このダンジョンのボス戦です。
218 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/07(水) 21:43:42.95 ID:EcPkcv0+0
乙
面白いから勝手にダンいけの愛称付けて楽しんでるぜー
それはそうと初のボス戦期待してる
219 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/07(水) 23:57:55.02 ID:pY2M4TxSO
俺も男ダ行てって愛称つけて楽しんでる
おつ
220 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/08(木) 00:21:08.21 ID:PXZpVlUf0
じゃあ俺は
男「はダにいいって?」
って愛称つけて楽しむわ
乙
221 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/08(木) 09:49:49.53 ID:RtD1mV/fo
男「は?ジョンにこいって?」でいくわ
222 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/08(木) 10:36:21.60 ID:3rt0TN+xO
いいぞ
223 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/08(木) 10:46:08.51 ID:ZWbCCDyno
おだてて、で行くわ
224 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 21:11:06.26 ID:95AyM9Qw0
こんばんわ、1です。
皆さん色々な略称ありがとうございますw好きにお呼びください
今日もたらたらと投下していきます
225 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 21:28:09.24 ID:95AyM9Qw0
ザァァァァァァァアアアアッ!!!!
男「これって……結構ピンチだったりする?」
魔少女「恐らく……私と先輩が全力で立ち向かっても、勝率2割といったところでしょうか」
カウボーイ「逃げ場の無い狭い洞窟で出会わなくてよかったね」
ゴーレム【ゴォオッ……ォォォォォオオオッ!!!!】
ォォォォォオオオッ!!!!!!
ゴーレムの低い力強い雄叫びが辺りに響き渡る。
男達にとっては明らかに格上の相手。しかも、一体だけとは限らない。
もしかすると、まだ洞窟の中にいるかもしれないのだ。
男「さて……逃げる用意は出来てるよな?」
魔少女「それは大丈夫です……ただ……」
男「ただ?」
226 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 21:35:03.00 ID:95AyM9Qw0
魔少女「ゴーレムは……オートマタなどと原理は同じ、魔力結晶の魔力を原動力に動いているハズです」
男「魔力結晶って……エリスを直すのに必要な素材の1つだよな?まさか……」
魔少女「えぇ……ここであのゴーレムを倒す事が出来れば……その動力源である魔力結晶を得る事が出来るハズです」
男「だったら……なぁ?」ゴクリッ……
魔少女「えぇ……ですよね……」ゴクリッ……
男と魔少女は互いに覚悟を決める。
オートマタの少女、エリスを直す為にはいつかは通らなければならない道だ。
それをこんな開けた場所で相手は格上だが一体。
条件としては最高に整っている。
227 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 21:37:26.05 ID:95AyM9Qw0
カウボーイ「さて……どうする?逃げる?戦う?なんならお茶のお礼に俺がやってもいいけど」スッ……
先ほどまでののんびりとした空気とは一転し、空気を凍てつかせるような戦闘モードにスイッチを切り替えたカウボーイが、ホルスターに装備したリボルバーに手をかける。
トレントの群れを相手に何の苦もなく完勝したカウボーイならば、その格下であるゴーレム一体など瞬く間に倒してしまうだろう。
男「いや……」
魔少女「あの1体は……私達が……」
しかし、男と魔少女はそれを拒否する。
この先、こんなイレギュラーな事態が何度も起こるだろう。時には逃げられない戦いをあるかもしれない。
そんな時、何度も他人に助けてもらえる訳がないのだ。
2人は言葉を交わさずとも、その結論に達した。
ここで自分達が倒すと。
228 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 21:40:02.32 ID:95AyM9Qw0
カウボーイ「ふふん……いーね!いーよ君達!!それなら俺は君達とあのゴーレムとの戦いには一切手を加えない……あ、流石にマジで死にそうになったら助けるけどね。それが大人の役目だし」
カウボーイは、意気揚々とピクニックシートに座り、2人に話しかける。
カウボーイ「安心しなよ……君達の戦いを邪魔する魔物が来たら、俺が片付けてあげる……存分に戦いな」ニィ……
魔少女「ありがとうございます……」
男「邪魔が入らず死なないってだけでも破格の条件だろ」ザッ!
2人はそれぞれの前衛、後衛の戦闘スタイルに構え、ゴーレムと対峙する。
229 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 21:43:26.82 ID:95AyM9Qw0
男「魔少女、解説!」
魔少女「ガイドブックには情報がありませんでした……ただ、見たところアレは最も簡易的に造られたゴーレム。ランクは8相当で、石の身体のために防御に長けていると記憶しています」
男「よし……魔少女、アイツを仕留めるのは一番火力のあるお前だ。俺がお前の準備が終わるまで相手するから、終わったらデカイのを叩き込め!!」
魔少女「先輩……大丈夫ですか?」
男「かなり不安だから、お前が前使ってた身体能力上げる魔法をかけてくれると助かる」
魔少女「わかりました……『フィジカル』!」
魔少女が手をかざすと、男の全身を魔法が覆う。
男「おぉ!身体がめっちゃ軽い!!」
魔少女「効果時間は1回3分です……それまでに私も準備を終わらせます」ググッ……
男「3分ね……どうにかやってみるか」トントンッ
男は軽くジャンプして身体の感覚を確かめる。
そして
男「先手必勝ォッ!!」ダンッ!!
一気にゴーレムへと距離を詰めた。
230 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 21:46:52.13 ID:95AyM9Qw0
ゴーレム【ゴォオッ!!!】ブンッ!!
それを迎え撃つように、ゴーレムが右腕を振りかぶり右ストレートを放つ。
今の男の装備で当たれば、間違いなく骨折以上のダメージを負うだろう。
男「なんてな」ズザザァァアッ!!!
ゴーレム【ッ!?】
しかし、男はゴーレムの射程圏内から10cmほど離れたところで踏みとどまり、ゴーレムの右拳は空を切る。
そして
男「突きぃぃぃぃいいいいいいッ!!!!」ダンッ!!
ドォンッ!!!
一度踏みとどまり、溜まった慣性の力に更に前に踏み込む力を加え、男の唯一最大の戦技である『なんか凄い突き』をゴーレムへと放つ。
しかし
男「……硬ぇ……」ググググッ……
ゴーレム【ゴォォオオッ……】
渾身の一撃をゴーレムの胸へと突き刺すも、石の身体を持つゴーレムは想像以上に堅牢であった。
更に、重量故か銅の剣の先から放たれた衝撃波をゼロ距離で喰らっても少し体勢が崩れる程度である。
トレントと違い大きさは2mほど。重心も安定しているからだろう。
そして
231 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 21:48:30.00 ID:95AyM9Qw0
カウボーイ「単純に火力不足だねぇ……ちょっと研いだくらいの銅の剣とランク1の戦技。それに彼の魔力操作の拙さ。
身体の使い方は十分合格点だが、上乗せするパワーが弱い弱い」
魔力。あるいは気力。
名前は違えど本質は同じ、人間の内に秘められた力である。
それを使いこなす事が、人間が魔物に生身で相対する方法。
例え幼稚園児でもそれが出来れば凄まじい力をダンジョンでは発揮する事が出来るのだ。
現に、世界には小学生でランク50という天才としか言いようの無い魔法使いの少年が存在する。
カウボーイ「魔力の基本すら覚えたのは最近だね?学校の授業では寝てたのかな」フフッ
232 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 21:51:06.91 ID:95AyM9Qw0
ゴーレム【ゴォォオオッ!!】ガシッ!
ブンッ!!
男「うぉっ!!」ズザザァァアッ!!
銅の剣を掴み取られ、剣ごと男は投げ捨てられる。
単純な力の差は歴然である。
ゴーレム【ゴォオッ!!】ブンッ!
男「ヤバッ!!」ゴロンッ
ズンッ!!
すかさずゴーレムは倒れている男へと拳を振り下ろすが、男は横に転がりそれを避ける。
ゴーレム【ォォォオオッ!!!】ブンッ!!
ズンッ!
ズンッ!!
ズンッ!!!
更にゴーレムは追い打ちをかけてきたが、男は転がり続けて、連撃の隙を見て体勢ゴーレムから離れた。
魔少女の魔法で身体能力が上がっていなければ、この時点で終わっていただろう。
潰されたカエルの如く。
233 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 21:55:11.65 ID:95AyM9Qw0
男「やっぱまともには敵わねぇな……だったら!!」ダンッ!!
魔法によって動きにブーストがかかっているため、男は容易くゴーレムの背後へと入り込む。
ゴーレム【ゴォォオオッ!!】ブォンッ!!
男「うぉっ!?」サッ!!
しかしゴーレムは腕を広げながらその場で回転し、男を寄せ付けない。
カウボーイ「彼だけでは絶対にゴーレムには勝てない。これは絶対だ。それならどうするか……」
男「近付くのも難しいか……どうしたもんかな」
魔少女「先輩……もっと離れてください」ググググッ……
後方に立つ魔少女の側に浮かぶ魔法球の数は3つ。
どれも属性は違う。
そしてそれらを維持しながら、反発しないように集中しながら混ぜ合わせる。
カウボーイ「お……いいね」
魔少女「火球……光球……風球……」ググググッ!!!
そして
234 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 21:58:05.96 ID:95AyM9Qw0
男「撃て!魔少女ッ!!」ダッ!!
魔少女「三種複合魔法……『レイ・スラスト』ッ!!!」カッ!!
魔少女が複合魔法を放った瞬間、何十もの小さな光の刃がゴーレムへと放たれた。
ゴーレム【ゴォォオオオオオオッ!!!】ドドドドドドッ!!!!
小さな光の刃は、1つ1つが凝縮された高熱を帯びている。
その高熱は、ゴーレムの石の身体をも溶かすように斬り刻むほど。
何十もの刃は、男の攻撃で傷つくことのなかった石の身体へと確実にダメージを与えていく。
しかし
235 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 21:59:33.62 ID:95AyM9Qw0
ゴーレム【ゴォオッ……】
魔少女「くっ……ハァッ……ハァッ……」ドサッ
光の刃を放出し続けていた魔少女が、突然地面に膝をつく。
魔法を発動させる為の魔力はまだ残っている。
だが、魔法を放出し続けるだけの体力が尽きたのだ。
ゴーレムの身体はいくつもの切り傷を受けているが、変わらず健在である。
魔少女「ハァッ……ハァッ……」
カウボーイ「知識は素晴らしい。技術も年の割には十分にある。だけど、体力が無いな。
発動させるだけならズバ抜けているが、それを維持させるだけのスタミナが足りない。魔法を使うにはその器である術者の体力は重要だよ?」
カウボーイは冷静に観察を続けている。
若い高校生の少年と少女。
素材は悪くない。
しかし、まだまだ足りて無いモノが多すぎる。
恐らくは、まだまだ実戦に慣れていない事が原因だろう。
目立った欠点を直すだけでも一気に成長すると見える。
カウボーイ「ま、今はここが限界か。手遅れになる前にここらで」スッ……
236 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 22:01:37.12 ID:95AyM9Qw0
魔少女「舐めないで……くださいッ!!!」ザッ!!
魔少女が声を張り上げ、再び立ち上がる。
237 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 22:07:15.74 ID:95AyM9Qw0
魔少女「水・氷複合魔法……『フリージング』ッ!!」カッ!!
魔少女が魔法を練り合わせた右手を、滝から流れてくる大量の水に向ける。
ゴーレム【ッ!?】バシャアッ!!
その水の一部は魔少女によって操作され、ゴーレムの身体へとかけられる。
魔少女「魔力も体力も足りなければ……周りを利用します!」ググググッ!!
ゴーレム【ゴッ……】ピキピキピキッ!!
ゴーレムにかけられた水が、一気に熱を失い凍り始める。
魔少女「『クイックフリーズ』……」ググググッ……
本来なら魔少女が空気中から生み出した水を、かけられたモノが急速に凍り出す魔法であるが、大量の水源を利用する事でその消費魔力を大幅に減らす事が出来たのだ。
238 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 22:17:06.93 ID:95AyM9Qw0
ピキピキピキッ!!パリィッ!!
ゴーレム【ゴッ……ゴォオッ!!】ズンッ!ズンッ!!
ゴーレムは身体の自由を氷結によって失いながらも、無理矢理身体を動かしながら魔少女の元へと向かってくる。
痛覚が無いため、無理な動きをしようが問題はないのだろう。
魔少女「キングスッ!!『キングストライク』ッ!!」カッ!!
魔少女は、キングスライムのキングスを封じ込めたキーホルダーを握り締め、残った全ての魔力を込める。
魔少女「維持する体力が無いのなら……一撃に込めます!!」
キングス『マカシトキ』ボヨンッ!!
239 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/08(木) 22:18:51.46 ID:m/CQAI6fO
キングのあんちゃんキターーーーーーーー
240 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 22:19:17.16 ID:95AyM9Qw0
何処からか降ってきたキングスは、その勢いそのままにゴーレムへと突進し
ゴーレム【ゴォォオオオオオオッ!!!】ズドォォォオオッ!!!
ゴーレムはそれを全身で受け止めた。
キングスライムの召喚。
本来の威力なら、ゴーレムを粉砕する事が出来ただろう。
更に強力な別の技を使う事も出来ただろう。
キングス【ヤルヤナイカ】ググググッ!!
ゴーレム【ゴォオオオオオオッ!!!!!】ググググッ!!
しかし、魔少女にはただでさえキングスライムを召喚として扱うには圧倒的に魔力が足りない上に、2度の複合魔法によって消費した分、ゴーレムにトドメを刺すには至らなかった。
241 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 22:24:19.68 ID:95AyM9Qw0
ピキピキッ…………
しかしその巨体を受け止めた為、高熱の刃と冷気の複合魔法によってダメージを受けた石の身体に亀裂が走る。
いわゆる熱疲労というやつだ。
キングス【ホナ】シュンッ!!
魔少女「クッ……」
ゴーレム【ゴォォォォォオオオオオオオオオッ!!!!!】
カウボーイ「最後の意地か……いい根性じゃない。そういうの好きだよ俺は」
キングスの召喚が解け、全てを出し切った魔少女は今度こそ、力尽きて地面に倒れていく。
魔少女「……あとは……お願いしますね……」フラッ……
魔少女「……先輩……」ドシャアッ!!
242 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 22:26:18.30 ID:95AyM9Qw0
男「ウォォォォォォォオオオッ!!!!!!」ダッ!!!
その瞬間、戦技を発動した男がゴーレムへと全力で突っ走っていた。
243 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 22:31:32.91 ID:95AyM9Qw0
ゴーレム【ゴォォオオオオオオッ!!!】ブォンッ!!
ゴーレムはすかさず右腕を振りかぶり、向かってくる男へと右ストレートを繰り出す。
一回目の衝突と同じ展開だ。
先ほどは、男が踏みとどまりその拳を空振らせた。
男「ラァァァアアアアッ!!!」ブンッ!!
しかし、次はその右拳に突きを当てる。
ゴバァァアッ!!!
ゴーレム【ッ!?】
男「ガァッ!!」グラァッ……
激突の瞬間、ゴーレムの右腕は、突きとそれと同時に発動した衝撃波によって粉砕される。
突きの戦技の威力。ゴーレムの右ストレートに対するカウンター。
そして何より魔少女によって石の身体全体ににヒビが入るほどに蓄積されたダメージが、この結果に結びついたのだ。
しかし同時に男の銅の剣も折れ、男は衝撃でそのまま背後に勢いよく倒れ込む。
が。
244 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 22:39:05.31 ID:95AyM9Qw0
ダンッ!!!
男「ラストォォォオオッ!!!!」ブチブチブチッ!!!
男は全身の力を使い踏み止まり、全身を捻りながら無理やり倒れ込むのを阻止する。
全身からは筋肉が切れるような嫌な音が聞こえてくる。
男「オオオオオオオオオッ!!!!」
ゴーレム【ゴォォオオオオオオッ!!!!】
その捻れを戻す勢いのまま、折れた銅の剣で戦技を発動させる。
男の一度の戦闘で発動できる戦技は2回。
その限界を超え、文字通り最後の一撃である。
そして
ドゴォォォォォォォオオオッ!!!!!
ゴーレム【ゴッ……ゴ…………】ビキビキビキッ!!!
折れた銅の剣は、そのままひび割れたゴーレムの胴体を貫き、亀裂が全身に走ったゴーレムは、そのまま全身が砕けた。
245 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 22:41:11.25 ID:95AyM9Qw0
男「よ……しゃあ…………」フラッ……
ドシャアッ!!!
カウボーイ「……最高……」パチパチッ……
全ての魔力を使い果たし、男が地に沈むのを見届けた後。
カウボーイは、男と魔少女へと静かに賞賛の拍手を贈る。
1つ、大きな壁を乗り越えた少年と少女へと。
246 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 22:46:03.70 ID:95AyM9Qw0
『戦闘終了』
魔少女はレベルが上がった
魔少女は特性『女の意地』を会得した
男はレベルが上がった
男は特性『猪突猛進』を会得した
『ゴーレムの心』を手に入れた
ゴーレムの核である『魔力結晶(ランク1)』を手に入れた
247 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/08(木) 22:48:10.86 ID:95AyM9Qw0
投下終了です。
対ゴーレム戦でした。
ゴーレムはドラクエのゴーレムを想像してもらえれば。
あと
>>1
的にカウボーイは、野原ひろしの人の声をイメージしてます。FF15のアーデンというおっちゃんみたいなキャラな感じで。
ではまた。
248 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/08(木) 23:03:43.70 ID:fCVY4fnaO
おつ、いいぞ
249 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/09(金) 01:27:13.23 ID:taHsjAirO
まぁこればっかりはしょうがないけどご都合主義がくるのかやっぱり…
250 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/09(金) 07:53:30.70 ID:B5Fq8DzgO
ひろしやんけ!
251 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/09/09(金) 07:54:00.58 ID:5tqyacECO
むしろご都合主義じゃない作品がこの世のどこにあるというのだ
252 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/09(金) 08:22:42.90 ID:XIMTe5Kv0
エロ→ご都合主義
アクション→ご都合主義
感動→ご都合主義
ホラー→ご都合主義
日常系→ご都合主義
253 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/09(金) 12:55:26.11 ID:oDffsIbho
ご都合主義ってどれのこと?魔翌力結晶持ちのゴーレムが来たこと?
254 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/09(金) 14:50:14.53 ID:GcDqxAaMo
ゴーレム倒せたことじゃね
別にご都合主義とは思わんけど
255 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/09(金) 15:07:32.03 ID:CM6VduHb0
都合でいえば最初からここまで全部そうだよ
256 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/09(金) 17:04:49.94 ID:YSjFfJWHo
乙
面白ければそれで良い
257 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/09(金) 18:37:52.12 ID:cie2BC8qo
乙
男は大学か専門学校で彼女見つけないと、魔少女のいいようにされそう
258 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/16(金) 16:35:02.01 ID:NYz2aDLko
支援
259 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 10:44:07.07 ID:tTfDZAmE0
おはようございます、1です。
軽くのんびりと投下していきます。
ご都合主義で揉めておりますが、まぁ1の実力不足という事で。
260 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 10:55:08.71 ID:tTfDZAmE0
…………
魔少女「先輩……先輩!」
男「…………魔少女か…………」
目を開けると、魔少女が心配そうな顔でこちらを覗いている。
どうやら、あのゴーレムを何とか倒した後、気絶していたようだ。
男「お前は……大丈夫なのか?」
魔少女も魔力を使い果たして倒れていたのを覚えている。
魔少女がゴーレムの石の身体に亀裂を与えていなければ、絶対に勝てなかった相手だった。
魔少女「はい……カウボーイさんがレッ○ブルくれたので魔力は全快です」
男「え!?○ッドブルで魔力回復すんの!?ッ!!イテテ!!」ビキビキッ……
魔少女「まだ……動いちゃダメです。全身の筋肉が痛んでますから」ポゥッ……
そういいながら、魔少女は鈍く光る両手を男の身体に向ける。どうやら、ずっと回復魔法をかけ続けてくれていたようだ。
261 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 10:55:26.92 ID:8smR8yIJo
ご都合主義は気にならんです
ところで魔少女のヒステリーはこの先も治りませんか?
262 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 11:08:30.34 ID:tTfDZAmE0
>>261
魔少女の男にたまに出るアレはヒステリーではなくただの駄々っ子です。親兄弟にする感じのヤツです。
263 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 11:09:17.86 ID:tTfDZAmE0
男「サンキュー……しっかし強かったなーゴーレム。魔少女の魔法をあんだけ喰らっても倒れもしないなんて」
魔少女「ランク8相当ですから……今の私達にとってはボスキャラです」
男「だよなー。あんなのをアッサリ倒せる日がくんのかな?……あれ?カウボーイのおっちゃんは?」
ふと周りを見渡すと、カウボーイの姿が無い。
代わりに
男「何か魔物からの戦利品みたいなのが山積みなんだけど……寝てる間に何があったの?」
洞窟の入口側辺りには、大量の魔物を倒して得るようなアイテムが山積みになって置いてあった。
魔少女「カウボーイさんが……ゴーレムがいるって事は何かしらお宝があるって事で洞窟に入っていったんです。
そしたら中には魔物が大量にいたみたいで」
男「片っ端から倒しては持ちきれないアイテムをここに持ってきてるって事か……やっぱ入らなくて良かったな俺たち」
魔少女「そうですね……」
男「しっかしあのおっちゃんもちょっと白状だなー。魔少女こんなとこに残して1人で洞窟探索なんて」
魔少女「いえ……あの人はちゃんと護衛の魔物を置いていってます……充分すぎるくらいのを」
男「え?どこ?」キョロキョロ
魔少女「向こうです……」
男「向こう?……何あれ……」
264 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 11:11:49.92 ID:tTfDZAmE0
キラーマシン『ケイカイチュウ……ケイカイチュウ……』ウィンッ、ウィィインッ
男が魔少女の指す方を見ると、そこには3m近いロボットのような魔物が、男達の周囲を警戒していた。
魔少女「『キラーマシン』……という魔物だそうです。いわゆる『異界』からダンジョンに来たロボットのようで、見た事も聞いた事もありませんが……魔物のランクは覚えてないけど大体40くらいだとか……」
男「40って……世界的にも上位プロ並みなんじゃねーの?しかも覚えてないって事は本人は軽く上を行くんだよな?……何者なんだよあのカウボーイ……」
265 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 11:16:15.29 ID:tTfDZAmE0
…………
カウボーイ「いやぁー大漁大漁。ちょっとした小遣い稼ぎにはなったかなぁ」
洞窟を隅から隅まで探索しつくしたカウボーイの横には様々な装備品やアイテム、戦利品が山積みにされていた。
男「……これで大体いくらぐらいになるんだ?」
魔少女「少なく見積もっても……2000ゴールドにはなるかと」
1ゴールド→100円
カウボーイ「未発見のエリアでも、流石にランク2だと1エリア取り尽くしても5000超えもないよね。最近金銭感覚狂いそうだから僕みたいな庶民出にはちょうどいい金額だよ」
男「ちなみにランク40くらいの探索って一回の探索でどれくらいの儲けなんだ?」ヒソヒソ
魔少女「昔見たプロジェクトDという番組では……5万ゴールドは軽く超えると言ってましたね。ランクが上がるにつれて得られる資源やアイテムは、大企業の生産原料や文化遺産、美術品や貴重な金属類などにもかなり関わりますから」ヒソヒソ
男「ひょっとして、俺らとんでもない人と一緒にいるんじゃねーの?」
魔少女「今更すぎますよ……」
266 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 11:22:23.15 ID:tTfDZAmE0
男「あ、でもこんだけの荷物どうやって持って帰るんだ?」
カウボーイ「ん?あぁ、知らないのかい?世の中にはこんなモノがあるんだよ」ゴソゴソ
カウボーイがポケットから何かの指輪を取り出す。
男「指輪?何かのダンジョンアイテムすか?」
カウボーイ「これは『保管の指輪』って言ってねぇ。こういうダンジョンで入手した大量のアイテムを、指輪の力で作り出した空間に保管する事が出来るのさ。そこそこレアだねぇ。
ダンジョンの中でしか物を入れる事は出来ないし、指輪のランクごとに保管出来る容量は決まっているけどねぇ」
そう言いながらカウボーイが指輪をアイテムの山に翳すと、山は綺麗さっぱり指輪の作った空間の中へと入っていった。
魔少女「上のランクのダンジョンには……こんな空間魔法のアイテムもあるんですね」
カウボーイ「ランクの低い保管の指輪なら専門店でも売ってるよ?そこそこ値が張るからダンジョンで拾った方がいいと思うけどね」
男「どれくらいっすか?」
カウボーイ「んー……一番下でこれくらいかなぁ」スッ
カウボーイは片手の平を広げて男の前に翳す。
男「500ゴールドか……ちょっと頑張ればエリスの修理代ついでに何とか買えそうだな」
カウボーイ「ん?違う違う。5万ゴールドだよ」
男「買えるかチクショウッ!!」
魔少女「私が……頑張っていつか同系統の魔法を覚えますので……」
少量だがダンジョンの外から空間魔法で物を持ち込む事の出来る魔少女でも、ダンジョンの物を別空間に入れる事はまだ出来ない。
いわゆるプロテクト的なモノがダンジョンアイテムには備わっているようだ。
恐らく正規の手順以外でのダンジョンアイテムの持ち出しを防ぐ為。魔法とはいわゆる、如何にバレないようにズルをするかという手段なのだ。
267 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 11:24:32.10 ID:tTfDZAmE0
カウボーイ「あーそうそう、そういえばこれは保管せずにとって置いたんだ」
カウボーイが地面に落ちているアイテムを拾いあげる。
どうやら『鉄の剣』のようだ。銅の剣よりも1ランク上の武器である。
カウボーイ「少年はゴーレムとの戦闘で銅の剣が折れちゃったから……この武器なんてどうかな?戦技も何かついてるよ」つ鉄の剣
男「え?いや、俺は……」
魔少女「先輩……武器は手に入れられる時に手に入れた方がいいですよ」
カウボーイ「貰っておきなよ。力はつけられる時につけた方がいい」
男「じゃあ……折角なんで。……そういや折れちゃったんだな、俺の銅の剣……」
男はゴーレムとの死闘によって折れた銅の剣を見る。
ダンジョン初日に母親が渡した、兄のおさがり。
使用期間も短く特段思い入れがあるわけではないが、初めてのダンジョンから使い続けていたので何とも言えない気持ちになる。
男「短い間だったけど……ありがとな」
男は折れた銅の剣をしまい、引き続き魔少女の治療を受ける。
268 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 11:31:12.71 ID:tTfDZAmE0
…………
魔少女「身体の調子は……どうですか?」
男「おう、だいぶ痛みが和らいだな。歩いていく分には問題ねぇや」
30分ほど魔少女の回復魔法を受け続けて、男の身体はどうにか動くようになった。
といってもあくまで応急処置。帰ったらゆっくり休ませなければならない。
明日も痛みが続くなら部活時代に世話になっていた整体にでも行くとしようか。
魔少女「それでは……山頂に向かいましょう。出口の近くにある滝に、目的の水晶があります。あ、それといい報告が1つ」
男「ん?どうした?」
魔少女「ダンジョンで……入手する予定でしたもう1つの素材『魔力結晶』をゴーレムから、無事に得ることが出来ました」
男「あ、そういえば……え!?マジで!?」
魔少女「えぇ……先輩がゴーレムの核ごと壊してないか心配でしたが……ゴーレムだった石の中にちゃんとありましたよ」
男「そっか……一時は不安だったけど先が見えてきたな。後は資金を集めて残りの材料を買えば……」
カウボーイ「そういえば君達は何でこのダンジョンに来たんだい?」
269 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 11:32:20.00 ID:tTfDZAmE0
……説明中……
カウボーイ「えぇ子らや……」ホロリ……
男「おい、いい歳した中年のおっさんが泣いてるぞ」ヒソヒソ
魔少女「年をとると……涙もろくなるともいいますし……」
カウボーイ「要はそのオートマタの少女を直したいわけだ。だったら、さっき拾ってきたアイテムの山は君達に」
男「それはノーセンキュー」
魔少女「こういうのは……自分でやる事に意味があると思います」
カウボーイ「そうなの?僕だったら喜んでもらってくけどねぇ。手間が省けるし、ちまちまダンジョンに潜るのめんどくさいし」
男「とても最低でもランク40以上の探索者とは思えない発言だな」
魔少女「案外……こういう人に大物の素質があるんですよね」
カウボーイ「ま、せめてダンジョンの出口までは一緒についてあげるよ。少年はまともに動けないだろ?」
魔少女「それは……ありがたいです。先輩は今お荷物にしかなりませんから」
男「さらっとヒドイな魔少女」
270 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 11:37:28.07 ID:tTfDZAmE0
カウボーイ「そういえば君達、手に入れたゴーレムの心の使い道はどうするんだい?」
男「どうって……どうする魔少女?」
魔少女「そうですね……キングス程ではないですが、私達に扱いきれるランクではないので……使えるまで保管しておくか、売却して資金の足しにするのがいいと思います」
カウボーイ「君達もしかして……『武器召喚』の事知らない?」
男「武器召喚?何すかそれ?」
魔少女「一応……魔物の心の特殊加工の1つとして聞いています。ですが、アレを使いこなすには相当な技量がいると聞きますが」
カウボーイ「まぁそうだね。でも使いこなす事が出来ればかなり強力な力になる。
少年……君のような魔力の少ない前衛タイプには特にね」
男「え?俺?」
271 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 11:42:09.94 ID:tTfDZAmE0
『武器召喚とは!!』
魔物の心を用いた召喚術の1つ。
魔少女の使うモノは、魔物自身を呼び出し、魔物の力に使い手の魔力を上乗せして強力な一撃を放つ通常の召喚である。
非常に強力だが攻撃に使うには魔力を放出しっ放しなので消費量が激しく、基本的に魔少女のように後衛タイプの者が使う。
それに対し、武器召喚は魔物の力を武器という形に圧縮し、それを用いて戦う前衛向きの召喚である。
魔力を大きく放出するのは、通常武器で戦技を使う時と同じく、武器召喚にて戦技を使った時のみ。それなんてオーバーソウrとか言わない。
どちらも発動には装飾品に魔物の心を加工する必要がある。
ここらで簡単に各技を、物凄く簡単に数値化して比べよう。
例として術者のHP、MPをそれぞれ100、ランク1スライムの魔物の心を使っているとする。
通常武器攻撃(銅の剣)
ダメージ10
通常戦技
一回MP消費5
ダメージ30
合成戦技(+ラージアント)
一回MP消費35
ダメージ250
武器召喚
召喚時MP20消費
武器召喚攻撃
武器召喚後、継続的にMP・HP消費1
ダメージ35
武器召喚戦技
一回MP消費60
ダメージ500
仲間メンバーとして召喚
一回MP消費1
スライムの強さ変わらず(ダメージ2程度)
通常召喚
一回MP消費20
ダメージ100
継続召喚
通常召喚後、継続的にMP・HP消費5
継続的にダメージ50
極大召喚
1回MP消費100 魔物の心消滅
ダメージ1000
ちなみに魔法に関しては通常召喚・継続召喚と仕組みはほぼ同じである。
勿論、術者の技量・装飾品の質・特殊アイテムの装備・魔物との相性によって数値は大きく上下するが、基本は大体こんなモンである。それなんてオーバーソウrとか言わない。
272 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 11:46:08.28 ID:tTfDZAmE0
カウボーイ「とまぁ、大体こんな感じだ。理解できたかい?」
男「まぁ大体は……ちなみにかなり技量が必要ってのは」
カウボーイ「そりゃあ常に一定量の魔力を放出しないといけないからな。今の君じゃあハッキリ言って無理」ビシッ!!
男「うぐっ」
カウボーイ「魔少女ちゃんは、キングスライムで継続召喚も出来てたからねぇ。まぁ魔法使いならその点は問題ないかな。優秀優秀」
魔少女「はぁ……ですが、私が武器を持ったところで」
カウボーイ「武器だって色々あるさ。魔少女ちゃんの魔法をブーストしたり仲間のサポートをしたり遠距離攻撃したり。魔力容量の多い魔法使いは、比較的ダンジョンにおいて有利なんだよ?」
魔少女「そう……なんですか?」
カウボーイ「そう!!さっきのゴーレム戦みたいに、少年が前に出て魔少女ちゃんの準備が出来るまで戦い、準備が出来たら大火力で攻撃。これが最もスタンダードな戦い方さ。
さっきの戦いは2人のどちらかが……特に魔少女ちゃんが居なかったら絶対に勝てなかったからねぇ」
男「それは確かに」ウンウン
魔少女「そんな……先輩がいたから魔法に集中出来たんですから……」
273 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 11:46:54.58 ID:tTfDZAmE0
カウボーイ「ま、武器召喚も1つの戦い方って事で覚えておいてよ。何なら山頂までの道のり……俺が武器召喚を使って君達を護衛してあげよう。百聞は一見にしかずってねぇ」チャリ……
カウボーイは、首にぶら下げた十字架のネックレスに魔力を込める。
カウボーイ「武器召喚『キラーマシン』」カッ!!
274 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 11:48:22.15 ID:tTfDZAmE0
『水見の滝 山頂の滝』
ザァァァァァ!!!!
ガサゴソガサゴソ
男「よっと……ホイ、これで水晶もゲットと……」
魔少女「何か……割とあっさり取れちゃいましたね」
男「しょうがねぇだろ……ここまで来る途中の魔物、全部カウボーイのおっちゃんが倒しちまったんだから」
カウボーイ「おっ、中々品質のいい水晶だねぇ。ギルドの奴等のお土産に僕も少し貰って帰ろうかな」
男「あの戦技……1体を……いや、あの数の1グループを一瞬てっておかしくね?」
魔少女「文字通り……何もかもが一瞬でしたよね……」
山頂までの道のり。
それなりに魔物は出てきたのだが、武器召喚を発現したカウボーイが全ての戦闘をこなしていた。
その戦う様は正に圧巻の一言であった。
というより、魔物達にとってはもはや虐殺であった。
275 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 11:51:19.53 ID:tTfDZAmE0
…………
男「これが……武器召喚……」
魔少女「魔力が……信じられない程の魔力が発せられています……ただ余波のようなモノが流れているだけなのに……」
カウボーイがキラーマシンを武器召喚すると、カウボーイの手には大きなボウガンのような武器が現れた。
カウボーイ「『ビッグボウガン』。まぁキラーマシンが装備している武器の1つだね。僕のような銃士に適した武器と言えば、やはり銃タイプだからねぇ」スッ……
バシュゥッ!!
蔓人形【】ズンッ!!
カウボーイがビッグボウガンの引き金を引くと、大きな矢が放たれ何処からか現れていた蔓人形が爆散する。
あまりの矢の威力に、着弾した衝撃によるモノのようだ。
そして矢はボウガンに自動装填される。
276 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 11:53:15.83 ID:tTfDZAmE0
トレント【ボォォォオオオオオッ!!!!】ズンッ!!ズンッ!!!
蔓人形×50【】シュルシュルシュルッ!!!
男「うわ、多っ!!何だコイツ等!?」
カウボーイ「あー……多分僕のせいだろうね。トレントの討ち漏らしが追いかけてきたんだろうねぇ」
魔少女「完全に囲まれていますね……とはいえ、あの蔓の魔物程度ならば、一方向に集中して攻撃すれば退路は開けると思います」
カウボーイ「いやぁ……別にいいよ?俺が全部ヤるから。君達にこの召喚武器の戦技の1つを見せてあげる。俺から離れちゃあ……ダメだよ?」スッ……
カウボーイの纏う空気が変わる。どうやら戦闘体勢に入ったようだ。
ブゥンッ……
魔少女「アレは……空間魔法?」
同時に、空中に幾つもの黒い穴が開く。
見たところ、魔少女が荷物を取り出すのに使った空間魔法に酷似している。
カウボーイ「召喚戦技……『レイニーエビル・ビッグボウガン』」
そしてカウボーイが引き金を引いた瞬間
277 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 11:56:14.49 ID:tTfDZAmE0
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!
空中に現れた幾つもの黒い穴から、大きく太いボウガンの矢……というよりもはや槍が、正確に魔物達の群れを貫いていく。
蔓人形はともかく、トレントの巨体すらも一瞬で爆散していくその様は、正に虐殺であった。
カウボーイ「ふぅ……とまぁ、これが召喚武器ってヤツさ。参考になったかな?」ニコッ
男「正直レベルの次元が違いすぎて……現実じゃなくて映画見てる気分っすね」ゴクリッ……
魔少女「こんなの……例え私の極大魔法が完成しても足元にも及びませんね……」
ザァァァァァ…………
静かに流れていく滝の音。
眼下には数十の魔物とその数倍の槍のようなボウガンの矢の雨の跡。
初めて見る世界上位クラスの実力者の戦いに、男と魔少女はただただ呆然とし、同時に戦慄していた。
278 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 11:58:13.95 ID:tTfDZAmE0
ダンジョン『水見の滝』入り口
男「ふぅ……無事に戻ってこれたな」
魔少女「何だかんだで……今日は危ない橋を渡ってしまいましたね。リターンは十分にありましたけど」
無事に目的の水晶に、おまけの魔力結晶まで手に入れた2人は、山頂の出口からダンジョンの外へと抜け出した。
カウボーイ「まだ夕方か……どうせだから荷物を換金した後に、駅前でご飯でも食べていくかい?」
男「お、いいっすねぇ。あ、俺らは役所に新エリアの報告もしないと」
魔少女「そうですね……色々戦い方について聞きたい事もありますし」
ブゥンッ……
カウボーイ「よーし。そうと決まれば早速」ガシィッ!!
その瞬間、唐突に発生した空間の穴から、カウボーイの腕を掴む両手が現れた。
279 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 11:59:48.62 ID:tTfDZAmE0
カウボーイ「ゲッ!?マズイ」
ォォォォォォオオオォォォォオオオッ…………
「社ァァァアア長ォォォォォオオオッ!!!!」ズォオオッ!!
ォォォォォォオオオォォォォオオオッ………
男「ひぃぃぃいいいっ!!!!」
魔少女「 」( ゚д゚)
そしてすぐに、その穴から1人の女性が這い出てきた。まるで某TVから出てくるあの人のように。
その風貌は、顔の上半分が見えない程の長い黒髪に羽織った黒いローブ。
誰もがこの女性を見てこの名をイメージするだろう。
『魔女』と。
280 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 12:02:57.67 ID:tTfDZAmE0
魔少女「ダ……ダンジョンの外なのに……自分自身を空間移動させるなんて……」
魔女「やぁっと見つけた!!アンタ一体、たかがランク2のダンジョンから帰ってくるのにどれだけ時間かかってんだよ!!」
カウボーイ「いや、魔女ちゃん。これには深い理由がね……」
魔女「言い訳すんな!!大体、社長のアンタが何で勝手に依頼を受けてんだ!?しかもタダで!!大方今日の夜の会食から逃げ出そうって魂胆なんだろうがそうはさせねぇぞ!?」
カウボーイ「いや、だってね?ギルドにこのっくらいの小さい女の子がなけなしのお小遣い持ってきて、『だんじょんでがんばってるおとうさんのためにつよいまものがほしい』なんて頼んでくるんだよ?そりゃあ男としていくしかないでし」
魔女「社長のテメェが行く理由になってねぇだろうがぁぁあああっ!!!!」ブンッ!!
カウボーイ「ぐはぁぁあああっ!!!」グシャァッ!!!
見た目は完全に陰キャラな魔女から繰り出された豪快な右ストレートによって、カウボーイは回転しながら地面へと倒れこむ。
281 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 12:05:07.83 ID:tTfDZAmE0
魔女「全くこのおっさんは……あ!?あ、えっと……わ、わたくし株式会社『RPG』で社長秘書をやらせていただいております魔女ともうします」ペコッ!ペコッ!!
男「あ……ど、どうも……」
魔少女「あんな細い身体から……凄いパワーです……」
カウボーイ相手に凄んだ時とは一転、?然としてその光景を見ていた2人に対し、魔女は全力で腰を低くしながら社会人っぽい挨拶をしてきた。
魔女「えっとえっと、初めて会う人には名刺名刺、あれ!?」アタフタ
カウボーイ「ふふふ……彼女は昔、日本でもトップを争うレディースチーム『魔慈餓瑠(マジカル)☆』の総長だったんだがね……昔、僕がスカウトして立派な秘書兼探索者に育てあげたんだよ。
これがまたいわゆる丁寧語のコミュ障ってヤツで、今でもお客さんとか社外の人への丁寧な応対が不器用で一生懸命で拙いのが可愛くて可愛ぐ」グシャァッ!!
魔女「社長ォォォォォオオオッ!!!テメェ昔の話はすんなって何べん言ったらわかんだゴラァァァァアアアッ!!!」
魔少女「今……髪に隠れた顔が見えましたが、物凄い美人ですよ」ヒソヒソ
男「え?マジ?超見てぇ」
282 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 12:09:58.17 ID:tTfDZAmE0
…………
男「ていうかおっちゃん社長だったんすか?ギルドなのに?」
カウボーイ「うん。ウチは小さなギルドから始めて今じゃあダンジョン発掘・貿易・アイテム開発・若手探索者育成と幅広くやってるからねぇ。で、名目上社長って枠に僕がいるってわけ」
魔少女「じゃあ……その格好も……」
カウボーイ「そー、僕の指示。やっぱり幅広い層から依頼を得るには目立ってなんぼの世界だからねぇ」
魔女「お陰でアタシまでこんな格好……マジで動き辛いったらありゃしない……」ブツブツ……
魔少女「魔女さんも……魔法使いなんですね。私もなんです」
魔女「え!?あ、えっと、そそうです!わたくしも僭越ながら魔法を少々取り扱っておりまして」アセアセ
魔少女「あの……普通に喋っていただければ……」
カウボーイ「彼女……言っとくけど強いよ?何ていうか……火力バカってヤツだから」
男「凄い魔法を使えるってことですか?でも……失礼かもすけどそんな凄い知識を持った人には見えないなー」
カウボーイ「まぁ元ヤンだからねぇ。使える魔法も基本的なのかシンプルなモノばかりで複合魔法も精々2種複合を数種類が限界。
だけどさ……彼女反則的な魔力容量と出力を持っててね?ただの初歩魔法が並の上位魔法より火力出るんだよ」
男「え?それ完全にチートじゃないですか」
カウボーイ「もしもあの子が極大魔法なんて覚えて使ったら、世界は簡単に消滅しちゃうだろうねぇ」ハッハッハ
男「よかった……失礼だけど馬鹿でよかった……」
魔少女「ダンジョンの外なのに……人間を移動させる空間魔法。凄いです!一体どれだけ複雑かつ強力な魔法が」キラキラ
魔女「あ、いやえと、わわたくしはですね!ただ思いっきり力を込めているだけででして、あまり術式とかそそういうのはちょっと」アセアセ
283 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 12:10:32.82 ID:8smR8yIJo
前科持ちでも冒険者にとっては箔付けになるか
284 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 12:12:27.47 ID:tTfDZAmE0
…………
カウボーイ「というわけで、そろそろ僕はギルドに戻るとするよ。僕の名刺渡したよね?それがあれば多分ウチのギルドや会社にフリーパスだから、いつでも遊びに来て痛い!痛いって魔女ちゃん!!」
魔女「ほら!早く行けってんだよ!!一体どんだけ予定が詰まってると思ってんだ!!」ゲシッ!ゲシッ!!
魔女が絶大な魔力量で無理矢理開けて何処かに繋いだ空間の穴……いわゆる『ゲート』に、カウボーイが尻を蹴飛ばされながら魔女に詰め込まれる。
魔女「えっとえっと……そ、それでは失礼いたしまふる!!」ブゥンッ!!
恐らく噛んだのであろう魔女が穴に入ると、空間に空いた穴は消え、残されたのは男と魔少女の2人となった。
魔少女「嵐のような……すごい人達でしたね」
男「そうだな……さて、役所で換金して新しいエリアの報告をして、飯でも食ったら帰るか」
魔少女「そうですね……今日の遠征は大成功と言えるでしょうし、報告の報奨金で美味しいモノを食べましょう」
285 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 12:15:31.60 ID:tTfDZAmE0
ダンジョン生活4日目
水見の滝 クリア
リザルト
水見の滝の水晶 材料納品
魔力結晶ランク1 材料納品
丈夫な蔓 8ゴールド
赤い植物の種 5ゴールド
蔓人形の心×2 10ゴールド
鉄の剣 お持ち帰り
リュックサック お持ち帰り
木製バット(戦技:爆破?)お持ち帰り
安物のブレスレット(未鑑定品)お持ち帰り
ゴーレムの心 お持ち帰り
新エリア発見報酬 180ゴールド
水見駅前定食屋『滝処ろ』
店長オススメセット×2 30ゴールド
みたらし団子×5 15ゴールド
帰りの電車賃15ゴールド
『143ゴールド獲得』
男「お前団子食いすぎだろ」
魔少女「先輩の……回復に魔力を使ってお腹減ってましたから……」モグモグ
男「そういや何でレッドブ○で魔力全回復出来んの?」
魔少女「カフェイン飲料や栄養ドリンクは……一時的な魔力回復にかなり効果的ですよ。今反動がきてますけど」モグモグ
286 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/18(日) 12:21:29.97 ID:tTfDZAmE0
投下終了です。
魔女さんが初歩魔法を使えば敵がヤバイ。
魔女さんが複合魔法を使えばダンジョンがヤバイ。
魔女さんが極大魔法を使えば世界がヤバイ。
そんな感じの人です。ではまた。
>>283
ダンジョン関係の仕事は実力が全てなのでアウトローな方達も活躍しております。
287 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 12:23:17.31 ID:6laB6BcoO
カウボーイすこ
288 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 12:28:46.45 ID:8smR8yIJo
乙でしたー
289 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 17:22:24.10 ID:dPg0W4910
おつ
290 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/18(日) 23:10:13.49 ID:SDukMuAYO
おつ、おもしろい
291 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/21(水) 21:42:36.85 ID:6365ZJtg0
すいません投下ではありません、
>>1
です。
新しく登場した魔女さんですが、後々面倒くさい事になりそうなので
次回から魔女→ウィッチに名前を変更させていただきます。
ではまた。
292 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/21(水) 22:44:33.48 ID:pBW60NwyO
はぁい
293 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/26(月) 19:30:15.13 ID:wTsCWmra0
こんばんわ、1です。今日もゆっくり投下していきます。
>>287
>>288
>>289
>>290
ありがとうございます。引き続きどうぞ。
294 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/26(月) 19:30:48.47 ID:wTsCWmra0
ダンジョン生活5日目
男「全身が痛い……」
水見の滝の探索を終えた翌日。
男はゴーレム戦で酷使し過ぎた身体の痛みに悶えていた。
とはいえ、これくらいの代償を払わなければ到底ゴーレムを倒す事は出来なかっただろう。
母「ホラホラ、夏休みだからってダラダラすんな」ツンツン
そんな男に対し、母はクイックルワイパーの柄で男を突く。
男「うっとおしいなー……疲れてんだからそっとしといてくれ」
母「何言ってんの若いモンがー。お母さんの若い頃なんてそりゃあ毎日お父さんとダンジョン巡りだったわよー」
男「え?そうだったん?」
母「そうよー。お父さんが頼りないからお母さんともう1人の子がダンジョンの魔物を千切っては投げ千切って投げ」
男「あぁ、そこは大体想像出来るけど。……親父かー。会った事もないからわからないけど大変だったんだろうなー……こんなのに振り回されて」
母「もういやーねぇー☆誰がこんなのよ誰が☆」ギリギリギリッ!!!
男「痛い痛い痛い!!!今日は死ぬ!マジで死ぬから!!!」バンッ!バンッ!!
『続いてのニュースです。今日未明、東京都内の繁華街にて大規模な爆発がありました。警察ではテロの可能性もあると見て捜査を進めて』
295 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/26(月) 19:54:08.41 ID:wTsCWmra0
…………
男「あのクソババァ……怪我人に腕ひしぎ十字固めなんて極めやがって……」
家で寝てても身体の痛みが取れないどころか悪化するので、男は昔から世話になっている整体に行くことに。
男「しっかし親父もダンジョンに行ってたんだな。結局は普通の会社員になったって話だけど」
男の父親は男が産まれる前に、交通事故で他界していると周囲からは聞いている。
昔の写真を見たことがあるが、男は父親似。男の兄は母親似のようだ。
男「ダンジョンが好きでも、好きなだけじゃあ探索者にはなれないんだなぁ。好きって訳でもない俺が探索者になれるかどうか……」
一(はじめ)高校
魔法部 部室
魔少女「Zzz……」zzZ……
「大会前の集まりなのに部長爆睡してるんだけど」
「普段からマイペースな人だけど部活は真面目なんだけどな」
「センセー、魔少女ちゃんどうします?」
魔法部顧問「うーん……明後日には全国大会の予選があるし叩き起こしたいところですが……珍しく疲れてるみたいですねぇ」
「ウチの高校じゃあ部長が唯一全国行きの可能性がありますからねぇ。無理させないようにしないと」
「最近元剣道部の先輩とダンジョンに潜ってるらしいからそのせいじゃない?」
魔少女「んー……○○くんおかわりー……」zzZ……
296 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/26(月) 20:25:21.28 ID:wTsCWmra0
ダンジョン生活6日目
魔導式機械人形店 『フリーダム(糸の切れたマリオネット)』
男「こんちわー」
店長「おーいらっしゃい。今日は可愛い彼女はいないのかい?」
男「アイツは妹みたいなモンっすよ。今日は魔法の大会が明日あるから部活っす。エリスの修理はどんな感じっすかー?」
店長「君たちが早めに動力系の材料を持ってきてくれたおかげで順調だよ。予定通り来週には終わるだろうね」
男「そうっすか、来週が楽しみっすねぇ。あ、そう言えば残りの材料も買ってきましたよ」ガサガサ
男は、水見市で獲得した資金で買ってきた『人皮樹脂』と『冷却用オイル』を店長に渡す。
店長「お、仕事が早いねー。これで最低限の条件はクリア出来たわけだ。後は修理代と、欲を言えば服と武装ってわけだね」
297 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/26(月) 20:25:56.05 ID:wTsCWmra0
男「修理代がなー……ちなみにエリスを受け取る時にいくらあればいいすか?」
店長「最低でも……1000ゴールドは欲しいね。残り500は夏休み中で大丈夫だけど」
男「1000ゴールドか……材料買って残りは40ゴールド……そろそろダンジョン行かねぇとなー」
店長「兄ちゃん達がギルドにツテがあれば、ギルドの仕事をこなすって選択もあるんだがなぁ。流石に高校生じゃあそうそうそんなツテを持ってねぇよなぁ」
男「探索者の養成所とかに入ってればいいんでしょうけどねー。……ん?ギルド?」
モヤモヤモヤ
カウボーイ『ヤッホー』
モヤモヤモヤ
ふと男は、カウボーイの格好をしたおっさんの姿を思い浮かべる。
男「あー!!その手があった!!おっちゃんありがとう!!」ダッ!!
298 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/26(月) 20:36:54.72 ID:wTsCWmra0
……………………
家
男「あったあった名刺。えっとギルドの場所はっと……東京!?いや、そりゃあデカイ会社なんだろうからおかしくねぇけど……遠いよなぁ。当てが外れたか」ハァッ……
男が考えたのは、カウボーイに貰った名刺を元にカウボーイのギルド『RPG』に簡単な仕事をもらおうという事であった。
しかし、ギルドの所在地が東京のダンジョン内となっており、金を稼ぐ為の仕事を探しに行くために高い交通費を払う事になる為、どうやら企画倒れとなりそうだ。
男「大体、この『RPG』ってギルドの事何も知らねーよな俺。ちょっと調べてみようかな」ポチポチ
そんな感じで男は携帯でカウボーイのギルドについて検索を行う。
驚いた事に、ギルド検索のトップにはすぐにRPGというギルドのサイトが現れた。
どうやら日本でも、世界でも指折りののギルドのようだ。
男「マジであのおっさん、ココの社長なのか?とてもそうは見えなかったんだけど」ポチポチ
男がサイトを開くと派手なCGアニメーションと音楽が流れてきた。
この辺りはあの派手好きなカウボーイの趣味だろう。
男はそのまま、ギルドの説明が書かれているページを開く。
299 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/26(月) 20:40:51.43 ID:wTsCWmra0
『ダンジョン探索・アイテム収集請負ギルド【RPG】』
当ギルドは、空間固定型ダンジョン内に広がる広大な敷地に設立された株式会社RPGの一部門となっております。
当ギルドではインターネット等を通じて世界中から要望のある、主にダンジョン探索・ダンジョン内のアイテム収集依頼などを取り扱っております。
当ギルドの探索者は当ギルドにて面接・実技試験を行い厳正なる審査を通過した者を採用しております。
このようにお客様からの依頼に100%お応えできるよう、プロの探索者の徹底した厳選を行っております。
男「審査って……やっぱそういうのあんのかよー。こりゃあギルドの仕事をするっていうのは無理だなー。……ん?」
落胆する男がそのままサイトを流し読みしていると、気になる一文を見つけた。
男「『当ギルドのスタッフから名刺を渡された方は、お近くのダンジョン内にて名刺に魔力を通していただくと、当ギルドへの直通ゲートをご利用いただくことが出来ます』……マジで!?」
どうやらカウボーイから渡されたこの名刺自体が、ダンジョンとギルドのあるダンジョンを結ぶ魔法道具となっているようだ。
こうする事で、このギルドは世界中から顧客や探索者を集めているのだろう。
調べてみると、広大な土地が広がる空間固定型のダンジョン内に、様々な建物やテーマパークやショッピングモールなどが建てられる事は昔からあるが、このダンジョン間ゲート技術を初めて作ったのはこのギルドのようだ。
その特許による資金もこのギルドが超巨大な企業に成長した要因の1つだろう。
男「これを使えばいつでもギルドに行けるのか……魔少女誘って行ってみるかな。学校に迎えに行くか」
300 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/26(月) 20:59:22.45 ID:wTsCWmra0
一(はじめ)高校 剣道場
「キェェエエエエッ!!!!」パーンッ!!
「サァァァァアアアアッ!!!」ダーンッ!!
「小手ェエエィァァアアアッ!!!小手ェッ!!」
男「おー、このクソ暑いのにやってるやってる」
剣道部顧問「ん?おぉ、お前か。何だ?引退したばっかなのにもう練習したくなったのか?」
男「ゲッ!?お、お疲れっす……」
剣道部顧問「ちゃんと受験勉強はやってんのか?引退後の夏休みだからって遊んでばっかじゃあいかんぞ」
男「ハハ……勉強はちょっと……あ、自分こないだからダンジョンに行き始めたんすよ」
剣道部顧問「ほぉーダンジョンか。何だ、お前そっち系の進路を希望なのか?」
男「いやー元はそんなに興味なかったんですけどね。ちょっとした事がキッカケになって何回も潜るようになって色んなトコに行って人に会って……そうしてる内に少しずつ楽しくなってきたっていうか」
剣道部顧問「ふん……まぁ興味がある事に打ち込むのはいい事だ。教師としては安定を進めるモンだろうがまだお前は若いんだ。頑張れる事を頑張ればいい。繋がりも出来てきたみたいだしな」
男「先生……ありがとうございます」
剣道部顧問「ダンジョンの魔物にコテンパンにやられたら練習にこい。俺が鍛え直してやる」
男「いや……それは遠慮しときます」
301 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/26(月) 20:59:57.15 ID:wTsCWmra0
魔法部 部室前
『魔法部練習の為、学校敷地内のダンジョンに移動しています』
男「学校のダンジョンか。差し入れでも持ってってやるか……魔少女の部活が終わったらそんまま直でギルドに行けるかな?」
302 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/26(月) 21:03:18.45 ID:wTsCWmra0
一(はじめ)高校 実習用ダンジョン
『夕焼け空のグラウンド』
魔少女「火……水……雷……風……地……」ググググッ……
魔法部顧問「……コレは驚きました……まさか5種同時に魔法球を発現させるとは……」
現実を模した高校の校舎と永遠に変わらない夕焼け空のダンジョンにて、魔少女は5種複合魔法……すなわち極大魔法を発動する為の準備を行っていた。
魔少女「ここからが……山場です……」ググググッ……
魔法部顧問「魔法球を混ぜ合わせ……!?まさか極大魔法を!?魔少女さんが!?」
「……何か部長凄くね?」
「うん……2種複合とかはよくやってたけど5種複合なんて全国クラスでも……」
魔法部顧問「いけない!皆彼女から離れて!!」
顧問が他の部員を魔少女から遠ざける。
魔法使いの最高技術であり最終奥義である極大魔法。魔少女が完成させても失敗しても、その威力は凄まじいモノになる。
例え最も初歩的な属性魔法の組み合わせでも、人に当たれば骨も残らないだろう。
303 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/26(月) 21:28:15.92 ID:wTsCWmra0
魔少女「順番に掛け合わせる属性の相性を……火は水に呑まれ……水は地に呑まれ……」ググググッ……
魔少女は属性魔法球を1つずつ掛け合わせていく。
今までは5種を同時に無理矢理混ぜ合わせて失敗していたが、相性がよい順に掛け合わせればどうかと試しているようだ。
そして、その思惑は成功したようである。
バチバチッ……バチバチッ……
魔少女「地は風に削られ……風は雷に裂かれ……」ググググッ!!
そして、最後の魔法球が混ぜ合わされた瞬間
魔少女「極大魔法…………『(プチ)アルテマ』…………」バチバチッ!!バチバチッ!!!」
魔少女の目の前には凄まじい魔力を放つ球体が現れていた。
基本5大属性魔法球を用いた、最も初歩で基本的な極大魔法の完成である。
304 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/26(月) 21:29:29.07 ID:wTsCWmra0
魔少女「ようやく完成しましたが……これを発動するのに……約8分ですか……実戦では使えませんね……」ググググッ!!!
魔少女の手が震える。極大魔法を維持するのも限界のようだ。
魔少女はそのまま作り出した魔法球『プチアルテマ』を夕焼け空へと放つと
ドォォォオオオオオオンッ!!!!!!!!
「わっ!?」
「キャッ!!」
魔法球は途中で炸裂し、まるでミサイルが爆発したかのような爆炎と爆風が、夕焼け空を覆った。
爆風範囲はおよそ15mほど。もし地上でこれが炸裂すれば、少なくとも直径5mほどの空間には何1つ残らないだろう。
魔少女はとうとう、兵器並みの火力を手に入れたのだ。
これがアレばゴーレムは愚かトレントすら一撃だろう。
しかし
魔少女「これでは……形成維持も不安定ですし撃つ前に先輩がやられちゃいますね。もっと精度を上げて、時間も短縮しないと……」ブツブツ
改善するべき箇所は多いようだ。
魔法部顧問「ふ……ふふ……まさかウチの学校から極大魔法を完成させる生徒が出るとは……これは明日の県大会で全国大会出場間違いなし!!」
「部長ー。めちゃくちゃ凄いっすけど危ないっす」
魔少女「あ……ごめんなさい……」ペコ
男「……魔少女がどんどん人間離れしていく……」
「あ。あれって部長と噂の先輩じゃない?」
差し入れを片手に様子を見ていた男は、極大魔法の威力に呆然としていた。
305 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/26(月) 21:34:29.27 ID:wTsCWmra0
…………
魔少女「差し入れ……ありがとうございます」モグモグ
男「お、おお。てかビックリしたわ。お前いつの間にあんな凄い事出来るようになったんだ?」
魔少女「アレは……前にダンジョンで暴発させた魔法の完成形です。色々やり方を試していたんですがようやく上手くいきました」
男「あー、トレントにやられそうになった時のヤツか!まだ数日しか経ってないのに凄いなお前」
魔少女「前々から……全国大会に出場する為に研究してましたから。それに今は先輩がダンジョンで魔物にやられない為にも」フンスッ
男「ハイハイ、頼りにしてますよっと。……俺もどうにかして強くならないと本格的にヤバイなこりゃあ」ハァッ……
306 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/26(月) 21:50:28.40 ID:wTsCWmra0
…………
オツカレッシター
魔少女「ギルドへのゲート……ですか?」
男「おう。調べたらあのおっさんのギルドに行くのにダンジョンの中でこの名刺を使えばいいんだってさ」
魔少女「この名刺に……そんな高度で強力な魔法が込められていたとは……」
男「まぁダンジョンアイテムで作られた技術らしいけどな。どうする?部活終わったなら今から行くか?折角ダンジョンの中にいるんだし。でも明日大会ならもう休むか」
魔少女「そうですね……行きたいところですが、その……今日はかなり汗もかいてるので……」
男「ん?……別に汗臭くねぇけど」クンクン
魔少女「ッッッ!!!?『ファイヤーボール』!!」ボゥッ!!
男「おわっ!?危なッ!!何すんだテメェ!!」
魔少女「ファイヤーボール!ファイヤーボール!!ファイヤーボール!!!ファイヤーボール!!!!」ボゥッ!!
男「ちょっ!?マジかよ!!」ダッ!!
魔少女「ファイヤーボール!!!!!ファイヤーボール!!!!!!ファイヤーボール!!!!!!!」ドドドドドッ!!!
307 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/26(月) 22:02:18.11 ID:wTsCWmra0
「凄ぇ……部長があんなに取り乱してるとこ初めてみた……」
「いいんすかアレ?あの先輩死ぬんじゃないすか?」
「あー大丈夫大丈夫。あの子にとってはお兄ちゃんに戯れてるようなモンだから」
魔少女「火球!火球!!火球!!!3種複合魔法『ガトリングファイヤーボール(最弱)』!!!」ドドドドドドドドドドドドッ!!!!
男「おまっ!?さり気なく新技の実験台にしてんじゃねぇぇぇええええっ!!!」ダッ!ダッ!!ダッ!!!
魔法部顧問「シンプルかつ強力な術式と素早い発動……やはり今年の魔少女さんなら全国大会出場間違いなし!!」
アッツゥゥゥウウッ!!!
「あ、当たった」
「花火くらいの威力だから大丈夫よ。多分」
男被弾。魔少女魔力切れの為、共に帰宅
308 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/26(月) 22:02:51.94 ID:wTsCWmra0
家
魔少女「先輩……コレ、ウチの火傷用の塗り薬です」
男「サンキュー。ってお前の魔法で火傷したんだから礼を言うのもなんか違うな」
魔少女「ごめんなさい……でも先輩もデリカシーないです」ヌリヌリ
男「…………すまん」
母「……オホホッ☆」ニヤリ
6日目終了。
309 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/26(月) 22:03:45.16 ID:wTsCWmra0
家
魔少女「先輩……コレ、ウチの火傷用の塗り薬です」
男「サンキュー。ってお前の魔法で火傷したんだから礼を言うのもなんか違うな」
魔少女「ごめんなさい……でも先輩もデリカシーないです」ヌリヌリ
男「…………すまん」
母「……オホホッ☆」ニヤリ
6日目終了。
310 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/09/26(月) 22:04:52.12 ID:wTsCWmra0
投下終了です。ではまた。
311 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/26(月) 22:24:24.49 ID:M0ls6Lt+o
乙
312 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/09/29(木) 07:00:59.25 ID:fVHCytSbO
乙
日常パートは苦手とみた。でもダンジョンがいいわー
313 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/08(土) 20:39:01.88 ID:j42Y2cRxO
ちらっ
314 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/08(土) 22:30:09.58 ID:j42Y2cRxO
h
315 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/08(土) 22:39:36.10 ID:vhXOQa08O
マダー?(・∀・)
316 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/13(木) 17:56:27.84 ID:+/yx4xV90
保守
317 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/19(水) 00:29:14.20 ID:nRajE1o70
続きマダー?
318 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/25(火) 16:37:33.59 ID:MwQuScEl0
ほ
319 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/29(土) 08:42:12.19 ID:VmqYCxuG0
続き待ってる
320 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/07(月) 08:22:29.92 ID:Ak/+9Pbt0
ほ
321 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/13(日) 13:14:53.97 ID:cgoAXrnv0
こんにちわ、1です。久しぶりに投下していきます。
322 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/13(日) 13:16:40.30 ID:cgoAXrnv0
ダンジョン生活7日目
魔法部大会当日
男「お、もう火傷のとこ痛くない。魔少女んとこの薬はやっぱ効くなー」
母「アンタ今日魔少女ちゃんの応援に行くんでしょ?早く行かなくていいの?」
男「あ、もうこんな時間か。んじゃ行ってくる!!」
…………
大会会場
県立総合体育館隣 ダンジョン『鏡世界の体育館』
ワイワイガヤガヤ
男「流石に県内の魔法部が集う大会、めっちゃ人多いなー」
県の中心市街にある大きな体育館。その隣にある、現実の建築物とリンクした固定ダンジョン。
このダンジョンは現実と鏡合わせの世界のような仕組みになっており、範囲は大きな体育館から半径1kmほど。
ダンジョンの中の物は石ころ1つ一切壊せない。というより壊れても10秒ほどで元に戻るが、現実で何か物が壊れればダンジョンの中の物も壊れる仕組みだ。
よって思いっきり力を解放する事が出来るため、普段はダンジョン探索者や魔法使い、その他魔力を扱う者達のトレーニングダンジョンとして県によって解放されている。
ちなみに使用料は18歳以上は2時間1000円、中学生高校生は半額である。
魔法使いという者は総じて火力が高い。
その為、普通のダンジョンでは地形が変わってしまう事も多々あり、こういった壊す事のできないダンジョンなどで競技などは行われる。
323 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/13(日) 13:20:34.01 ID:cgoAXrnv0
魔少女「あ……先輩こっちです」フリフリ
魔少女がこちらに手を振っている。どうやら開会式などは全て終わったようだ。
男「流石にクールぶってるお前も緊張してきたんじゃねーのか?」
魔少女「ぶってるってなんですか……緊張はしてますけど同時に楽しみでもあります。自分の力を見せる場でもあり色んな人の魔法が観れる場でもありますから」
男「あわよくば便利そうな魔法があったらパクっちゃおうと?」
魔少女「もちろん……ダンジョンで使えそうな魔法があればいいですね」
男「ホント勉強熱心なこって……で、お前はいつ出番あんの?」
全国高校魔法大会では、様々な部門に分かれて競技・審査が行われている。体操や陸上競技みたいなモノだ。
324 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/13(日) 13:23:03.34 ID:VPSMoht90
待ってた
325 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/13(日) 13:31:35.33 ID:4nGWrgqgO
やったぜ。
326 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/13(日) 13:56:25.46 ID:cgoAXrnv0
魔少女「私は……去年と同じくフリースタイルと課題魔法です」
フリースタイルは、一対一でとにかく自分の出来る限りの魔法を披露し、審査する競技。
魔法大会の華であり、いわゆるショー形式である。
課題魔法は事前に発表された課題の魔法をどれだけ完成形に近づけるかという競技である。
男「去年はフリーで8位入賞まで行ったんだっけ?」
魔少女「えぇ……でも全国行きが4位からですので」
男「ま、お前なら今年は行けるだろ。ちゃっちゃと優勝してこいよ」
魔少女「……はい」ニコッ
327 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/13(日) 13:58:07.51 ID:EKZj533VO
…………
男「とまぁ、あっという間に去年と同じ準々決勝進出と」
魔少女「去年……負けた相手に勝てたのは嬉しかったです。同じ学年でしたし」
男「相手ポカンとしてたよなー。自慢気に2種複合とか使ってきたけど、こっちは普通に3種複合って。レベルが全然違ったって感じで」
魔少女「去年から……毎日一生懸命、勉強と練習をしてましたから」
男「最近はダンジョンでも色々やったしな。ま、あと一勝だ。気楽にやってこいよ」
魔少女「ですが……次の試合、去年の2位の人で優勝候補なんですよね……ほら、あそこでインタビュー受けてます」
パシャパシャ!!パシャパシャ!!
「あと一勝で全国への切符が手に入りますが、意気込みを聞かせてください」
テンプレ「ここまでこれたのは部員の皆や先生。そして支えてくれた両親のおかげです!皆の為に、あと一勝ではなくこのまま優勝まで頑張りたいと思います」
『キャーーーー!!!テンプレくーーーん!!!』
328 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/13(日) 14:07:32.30 ID:TUuxjS8Do
乙
待ってたよ
329 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/13(日) 14:48:38.38 ID:NvByhwneo
乙
テンプレくんワロタ
330 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/13(日) 14:55:43.30 ID:Dg9IcOxGO
男「おーおー、テンプレ通りの綺麗な受け答えだこと。顔もテンプレみたいなイケメン寄りだしテンプレな黄色い声援飛んでるし何か気に食わねぇーなー」イライラ
魔少女「あの人は……魔力自体に特殊な特性『ドレイン』を持つ特異魔法使いです。その為、あの人にしか出来ない魔法も存在します」
男「特性?何それ?」
魔少女「そうですね……例えば水の属性の魔法を使ったとすると、普通は空気中の水分を集めたりして何も無いところから水が放たれたりします。
ですが……『ドレイン』の特性を持つ彼が使うと、物体から逆に水分を吸収するということです。このように魔力自体に特殊な性質を込める事の出来る魔法使いの事を特異魔法使いといいます。まぁ……魔法使いに限らず魔力を使う人に現れる体質のようなものですね」
男「へぇ……じゃあ植物とかに水の魔法を使うと枯れるとか?」
魔少女「枯れますね……人に使っても枯れます」
男「怖っ!物騒な魔法使いだなー」
魔少女「普通の魔法使いでも……やろうと思えば出来る事ですが、術式がかなり複雑になります。故に……特異持ちは最初から特定の複合魔法が使えるといったところですね」
男「へぇー何かズルイなそれ。ちなみに魔少女は?」
魔少女「特異持ちは多くはないので……ただ、20歳までに環境や訓練で後天的に現れるケースも珍しくないので私も先輩も可能性はあります」
男「俺は魔法使いにはなれないだろうけどあったら面白そうだな」
331 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/13(日) 14:56:53.47 ID:cgoAXrnv0
キャー!!キャー!!!
男「……しっかしモテてるなーアイツ。何かこう……胸の奥からイライラが」
魔少女「結構遊んでるって有名ですけど関係ないんでしょうね周りの女の子達には……でもあの人の相手ってことは、次の試合凄く注目されるんですよね……何か緊張してきました……」
男「ふーん……でもゴーレムとやった時とどっちが緊張する?」
魔少女「断然……ゴーレムですね。何か楽になってきました」
男「だろ?お前はあんなエセイケメンには到底出来ねぇ事やってきたんだからさ。自信持てよ。いつものドヤ顔でよ」
魔少女「……はい!」
332 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/13(日) 15:10:21.37 ID:cgoAXrnv0
…………
テンプレ「君!君が準々決勝の相手の子だよね。よろしくね」ニコッ
魔少女「……よろしくお願いします」
テンプレ「あれ?君近くで見たら結構可愛いねぇ。よかったらメールかRINE教えてよ?大会終わったら遊ぼ?」
魔少女「いえ……」イラ……
テンプレ「ん?もしかして彼氏いんの?」
魔少女「いないですけど……」イライラ……
『ピッ』
テンプレ「だったらいいじゃーん。じゃあこの試合俺が勝ったら教えてよ。俺の事知ってんでしょ?なんせ全国選手よ?自慢できるよー」
魔少女「てことは……私が勝てば教えなくていいんですね?」イライライラ
テンプレ「え?もしかして勝つつもり?俺に?アハハー凄い自信だねー。そんなに自信があるならさぁ……やっぱ俺が勝ったら今日大会が終わったらヤラせてよ」
プチッ
魔少女「……わかりました……じゃあ私が勝ったら、私が貴方に対して行う事に文句を言わないでくださいね?」
テンプレ「いーよいーよー何でもしてちょーだい。じゃあ頑張ってねー」
魔少女「……ありがとうございます……」
『ピピッ』
魔少女「……約束しましたからね……」
333 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/13(日) 15:12:19.39 ID:cgoAXrnv0
…………
テンプレ「火!風!2種複合『ヒートブレス』!」ゴォォオオッ!!
テンプレの掌からドライヤーを至近距離で当てたくらいの熱風が、5mほど先まで吹き荒れる。
審査員1「テンプレくんは掌に魔力を溜めて放出するタイプですね。このタイプは射程が短いですが出が速い」
審査員2「滑らかな術式ですねぇ。発動までの無駄が少ない」
テンプレ「水!地!ドレイン!!2種特異複合『クラップ』!」ドゴォオッ!!
テンプレが掌を地面に当てると、数m先の地面の水分が急激に枯渇し、直径5mほど地面が陥没した。
審査員1「彼の特性が出ましたね。様々な属性を吸収する力、中々珍しい特性です」
審査員3「様々な属性をなんなく組み合わせられる……大した技術ですよ」
テンプレ「地!水!風!ドレイン!!特異3種複合……」グググッ……
テンプレ「『デッドスペース』」
テンプレが掌を前にかざすと、直径3mほどの魔力の球体が現れる。
その球体の中は全ての空気が取り除かれ、完全な真空状態を作り出していた。
審査員1「これは凄い!実質4種複合の魔法……今すぐプロに転向しても通用しますよ彼は」
審査員2「単純にダンジョン活動だけでなく、完全な真空状態は様々なジャンルで研究に活用されますからね。いや大したものだ」
テンプレの魔法実演は、様々な観点から審査員に高評価を得ていた。
魔法の活用法とはダンジョンでの魔物との戦闘だけではない。未だ科学で簡単には再現出来ない事象を作り出すことで、技術の進歩に貢献する役割もあるのだ。
テンプレ「ふぅ……最終的には無重力状態を作り出すのが目標だけど、今はこれが限界かな。
ちょっと大人気なく本気出しちゃったけど、これで今日はあの子と……ん?」
自身の持てる全ての魔法を発揮し、勝利を確信したテンプレはふと魔少女の方を見る。
334 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/13(日) 15:13:42.64 ID:cgoAXrnv0
魔少女「……………………」ブツブツブツ
魔少女の周囲には、火・水・地・風・雷の基本5種属性の魔力球が浮かんでいた。
審査員1「あの生徒は一体何をしようとしてるんでしょうか?」
審査員2「基本属性の魔力球を5つ……いや、まさか……」
審査員3「こんな無名の高校生が極大魔法を成功させられるわけが……」
5つの魔法球は、順番に混ざり合い1つになっていく。
そして
魔少女「極大魔法……『プチアルテマ』」ググググッ……
完成させた魔法球を、魔少女が数十mほど離れた場所に撃ち、それが地面に着弾した瞬間
ドォォォオオオオオオンッ!!!!!
テンプレ「え……な……」
審査員1「これは……まさかあんな無名の高校生が極大魔法を成功させるとは……」
着弾地点から半径15mほどに爆風が広がり、爆心地には何も存在しなかった。
極めて基本的な魔法による5種複合魔法だが、その難易度は並の3種4種複合よりもかなり高く、成功させるだけでその名は少なくとも県内トップレベルには轟く事となる。
それを有名な魔法使いでもないこの少女がやったのだから会場内は驚きに満ち溢れていた。
魔少女「えっと……以上です」
335 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/13(日) 15:15:16.08 ID:cgoAXrnv0
…………
男「全国大会進出おめでとさーん」パチパチパチパチ
魔少女「ありがとうございます……疲れました……」グデー
男「結局あのまま優勝までいっちまったな。緊張が解けたんだろ」
魔少女「それはいいんですが……その後の取材の人達にインタビューされ続けたのが……」
男「無名の生徒がいきなり優勝だもんな。なんなら決勝は負ければよかったのに」
魔少女「それはそれで不自然ですから……」
男「ま、とりあえずお疲れさん。この後部の奴等と打ち上げだろ?俺は先に帰るわ」
魔少女「はい……応援に来てくれてありがとうございました」ペコッ
男「……俺も頑張らねぇと魔少女にドンドン置いてかれそうだな」ハァッ……
336 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/13(日) 15:16:15.65 ID:cgoAXrnv0
…………
テンプレ「やぁ……待ってたよ……」
魔少女「あなたは……準決勝ではお疲れさまでした」
テンプレ「……何がお疲れさまでしただ!!」バンッ!!
テンプレは、魔少女を脅すように自分の拳を思いっきり壁に叩きつける。
テンプレ「このクソブスがぁ……どーせ何かイカサマでもしてやがんだろうが!!俺にあんな恥をかかせやがって!!」
魔少女「イカサマとは?……私は自分に出来ることを堂々と披露しただけですけど」
テンプレ「しらばっくれてんじゃねぇ!!ボコボコにして審査員の前に突き出してやる!!」
テンプレが魔少女の制服に掴みかかろうとした瞬間
ピッ
337 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/13(日) 15:17:27.18 ID:cgoAXrnv0
テンプレ『だったらいいじゃーん。じゃあこの試合俺が勝ったら教えてよ。俺の事知ってんでしょ?なんせ全国選手よ?自慢できるよー』
魔少女の携帯から、準決勝前に2人が交わした会話が流れ出した。
テンプレ『え?もしかして勝つつもり?俺に?アハハー凄い自信だねー。そんなに自信があるならさぁ……やっぱ俺が勝ったら今日大会が終わったらヤラせてよ』
テンプレ「な……これは……」
魔少女「念のため……バッチリ録音しておきました。ついでにコレをネット上に拡散させる用意もできています」
テンプレ「この……消せよこのドブスがぁっ!!!」
魔少女「私に触れた瞬間……これの拡散を行います。元々貴方には黒い噂がついてましたから、すぐに広まるでしょうね」
テンプレ「く……この……」
魔少女「そういえば勝った方が言うことを聞くといってましたよね?……では金輪際私の目の前に現れないでください。守れなければ、これを拡散します。では……」
テンプレを冷たい視線で見下しながら、魔少女はその場を後にする。
338 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/13(日) 15:19:26.68 ID:cgoAXrnv0
テンプレ「ハハッ……もう終わりだ……大学の魔法特待も推薦も周りの期待も全部パァッ……何にも残っちゃいない……周りの馬鹿達と同じような底辺の将来……あははははは……」
完全に弱みを握られた。
今となっては立場は魔少女の方が上。その上あんな会話を録られていては手も出せない。
そして魔少女の気まぐれで、いつアレが世に出回るかもわからない。
これから一生、あの女に、あの弱みに怯えて暮らしていかなければならないのだ。
「だったらいっそ全部壊さないかい?」
失意に沈むテンプレへと、何者かが声をかける。
テンプレ「……誰だよ……アンタ……」
「君と同じ、力があるのにこの世界では存分に振るえない人間だよ……ならいっそこんな世界変えてしまった方がいいと思わないかい?君のような力のある人間が、こんな事で落ちぶれてしまうなんて勿体無いと思わないかい?」
テンプレ「……その通りだよ……何で僕のようなエリート魔法使いがこんな目に……」
「我々は君のような人間こそ次の世界を担う者だと信じている。どうだい?そんな世界を作ってみたくないかい?」
テンプレ「……一体何者なんだよアンタらは……」
「我々は『リバース』。世界の理を逆転させる者達さ。混沌渦巻く弱肉強食の世界へとね」ニィッ……
339 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/13(日) 15:24:54.90 ID:cgoAXrnv0
投下終了です。全てがテンプレ小物通りのテンプレくんでした。
ついでに敵対組織登場です。まぁテロリストです。もしかしたら、賛同しちゃう人が多いかもしれない目的があります。
ではまた。
340 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/13(日) 15:42:19.64 ID:iHAO18yW0
乙
テンプレ君はそのまま消えれば被害はないものを
341 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/13(日) 18:35:50.03 ID:VPSMoht90
テンプレ君名前ヒドすぎワロタwwwwwwwwwwww
342 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/14(月) 02:32:02.14 ID:sO6pqdHxo
本当に何から何までテンプレだな
勝利宣言からの負けて悪落ち展開までとは恐れ入った
343 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/16(水) 00:19:25.11 ID:JSyKS/iE0
テンプレ君が死ぬところまで見えた
344 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/16(水) 00:55:01.67 ID:l95VKxRK0
テンプレ君の恐ろしいところはその後の展開から主要キャラの反応まで全てテンプレ通りにしてしまうところだな
345 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/11/16(水) 07:06:13.77 ID:bSLW8yctO
私はテンプレ君は実験体として生け贄にされるまでが見えた
346 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/16(水) 20:33:07.53 ID:aAcX1O8Io
つまりテンプレ君が出てきた時点でハッピーエンドは確定している…?
347 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/16(水) 21:31:26.82 ID:q1P6fXy3o
なんだテンプレっていいやつじゃん!
348 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/16(水) 21:39:15.79 ID:phF7prLYo
ここまでテンプレ
349 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/17(木) 19:07:15.57 ID:UgOrhTYk0
こんばんわ、1です。
まさかテンプレくんでここまで盛り上がるとは思いませんでしたwそれでは軽めに投下します
350 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/17(木) 19:09:19.52 ID:UgOrhTYk0
ダンジョン生活8日目
魔少女宅
薬屋『ラストエリクサー』
魔少女母「あら、○○くんこんにちは。久しぶりね」
男「あ、どうも。お久しぶりです……あのー魔少女います?」
魔少女母「えぇ、いるわよ。ただ昨日の大会で疲れたのかまだ起きてこないのよね。どうせだから○○くん起こしてきてくれない?」
男「え?僕がっすか?……魔少女に怒られたりしないすかね……」
魔少女母「気にすることないわよー、ご近所だし昔は一緒にお風呂もお昼寝もしてたもの。懐かしいわね、すっかり私もおばちゃんになっちゃって」
男「おばちゃん……?……じ、じゃあとりあえず、起こしてきますね」
魔少女母「えぇ、お願いねー」
男「…………おばちゃんって…………どう見ても見た目精々中学生なんだがな……魔少女のおかんって一体……」
魔少女の母は見た目がとてつもなく若かった。そして可愛かった。
その為、この店の魔法薬などに美容とアンチエイジングの効果があると睨んだおば様達が、毎週のようにこの店の薬を買い漁りにくるのだ。
351 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/17(木) 19:16:25.35 ID:UgOrhTYk0
トントン
男「おーい魔少女ー、もう昼前だぞー起きろー」トントン
ノックもせずにラッキースケベなぞゴメンだと言わんばかりに、男は魔少女の部屋の前で声を上げる。
が、何の反応もない。まだ寝ているのだろうか。少なくとも着替えの最中とかではなさそうだ。
男「んー……しゃあない、入って起こすか。魔少女ー」ガチャ
男は仕方なく魔少女の部屋の中へと入る。
男「うぉ……本ばっかしだなー……流石知識欲の塊」
魔少女の部屋は女の子らしい部屋とはお世辞にも言えず、一面本棚で埋められていた。
この知識こそが今の魔少女の強さでもあるのだろう。
男「お、でもベッドの周りは結構かわいい感じに……うわぁ……」
ふと男はベッドの方に目を向ける。
352 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/17(木) 19:47:13.16 ID:UgOrhTYk0
男「……コイツ寝相悪過ぎだろ……」
そこにはベッドから上半身がずり落ち、布団代わりのタオルケットが顔を覆い、下半身はパンツどころか半ケツ丸出し状態の魔少女の姿があった。
正直エロいというよりちょっと引く光景である。
男「……ここにいたらコイツに殺される気がするな……見なかった事にしよう……」スッ……
バタンッ!!
魔少女「……………………ふぇ?」
…………
ファミレス
魔少女「先輩……朝ウチに来られてたんですね」
男「え?あ、あぁ、お前寝てたみたいだからすぐ帰ったけどな」
魔少女「そうですか……すいません、やはり疲れが出てたみたいですので」
魔少女母には口止めをしておいた。
あんな寝相を見られていたと知ったら、魔少女は恐らく烈火の如く荒れ狂うだろう。
353 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/17(木) 19:57:35.88 ID:UgOrhTYk0
男「まぁ当然だろ。今日くらいお前もゆっくりしてたらどうよ」
魔少女「そういうわけにはいきません……あのオートマタの子を引き取る日まであと1週間しかないんですから」
男「まぁなー、あと1週間で最低でも1000ゴールドは一端の高校生にはちとキツイよな」
魔少女「ダンジョンに毎日入るというのも……あまりいい手段とは言えません。蓄積された疲れが大ケガに繋がる恐れもありますから」
男「となると、やっぱ今1番いい手段は……」
魔少女「そうですね……やはりカウボーイさんのギルドを頼るの1番かと」
先日男が気付いた、カウボーイのギルドで仕事を受けるという案。
ギルドには大小様々な依頼が寄せられる。その中でも手軽な依頼をクリアし、なおかつダンジョンのアイテムを換金するという手段である。
男「とりあえず、まずは名刺を使ってあのおっさんのギルドに行ってみるか」
魔少女「そうですね……では市役所近くのダンジョンに行きましょう」
354 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/17(木) 20:11:25.91 ID:UgOrhTYk0
『一(はじめ)市 市役所前ダンジョン』
男「ダンジョンの中で名刺に魔力を込めればいいんだよな?」
魔少女「はい……それでギルドのあるダンジョンへのゲートが開くハズです」
男「んじゃ早速……」ググッ
カッ!!
男がカウボーイからもらった名刺に魔力を込めると、たちまち目の前の空間が歪み、別ダンジョンへの穴が開く。
男「うぉ、本当に道が出来た……なんかちょっと怖いな入るの」
魔少女「ゲートは安定しています……男の子なんですから腹をくくってください」
男「こういう時は女の方が度胸あるよなー……うし、行くか」
魔少女「はい」ニコッ
355 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/17(木) 20:13:11.04 ID:UgOrhTYk0
東京
ダンジョン『株式会社【RPG】中央エリア』
男「ここが……」
魔少女「ダンジョン内に作られたとはいえ……想像を遥かに超えるスケールですね。まるで一つの都市のようです」
ゲートを抜けるとそこは大都市でした。
思わずそう言いたくなるような光景が、男達の目の前に現れた。
そこら中にそびえ立つビル。
道路などがきちんと整備され、ダンジョンの外と変わらないように行き交う人々や車。
本当にダンジョンの中なのかと疑うほど、一つの完成された都市がそこにはあった。
男「さて……とりあえずどうしようか」
魔少女「まずは……カウボーイさんのところに向かいましょう。ほら、あそこに案内所があります」
356 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/17(木) 20:20:42.50 ID:UgOrhTYk0
受付嬢「いらっしゃいませ。こちらは株式会社RPG、中央エリア総合案内所でございます」
男「あ、ども。すいません、僕たちカウボーイさんって方にこの名刺をいただいてここに来たんですけど……」
受付嬢「名刺ですね、ご確認いたします。……ッ!?し、少々お待ちください!!」バタバタッ
案内所の受付おねーさんは、名刺を見るやいなや驚いた表情で奥へと姿を消した。
男「……どうしたんだろうな?」
魔少女「あの人は社長と言ってましたし……恐らくギルド部門のトップの方でしょうからね。アポイントもとってませんしもしかしたら会えないかもしれません」
男「そうなると困るよなー。最悪俺たちでギルドで仕事もらえるようにどうにかしないと」
受付嬢「お、お待たせいたしました!!会長は現在ギルドエリアにあるこちらの建物にいらっしゃいます。こちらの携帯ナビゲーターをお渡しいたしますので、指示に従ってお進みください」
男「お、よかったよかった。何とか会えそうだな」
魔少女「あれ?……今会長って……まぁ気にしなくてもいいですかね。行きましょう」
…………
受付嬢「な……何であんな高校生の子達に会長が……私だって初めて電話を繋いだのに……」
357 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/17(木) 21:12:33.41 ID:UgOrhTYk0
ギルドエリア
総合依頼案内所
『ギルド【RPG】伝説の秘宝からお子様のお使いまで、あらゆる依頼を受け付けます』
男「うおー、めちゃくちゃデカイビルだなー」
魔少女「ここに……世界中からあらゆる依頼が集まってくるんですね」
男「こんなデカイところにいるとは……流石社長っていうだけあるなーあのおっちゃん」
ナビゲーター『目的地までこの道をあと1kmです』
男「え?ここじゃねーの?」
魔少女「この先に……もっと凄いところがあるんでしょうか」
358 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/17(木) 21:14:57.96 ID:UgOrhTYk0
ギルドエリア端
寂れたビル内 事務所
カウボーイ「ウィッチちゃーんコーヒーちょーだい」
ウィッチ「あぁ!?こっちは忙しいんだよ!テメェで淹れやがれ!!」カチカチカチカチ
カウボーイ「ダメダメー、ウィッチちゃんのコーヒーじゃないと僕やる気でないんだよー……仕方ない、プリースト頼む」
プリースト「却下だ」ズズッ……
比較的新しい建物が並ぶ街通りの中、一つポツンと浮いたように建てられた寂れた小さなビルの中。
その中に、カウボーイ達の集まる事務所はあった。
パッと見る限り、先日会ったカウボーイとパソコンとにらめっこしているウィッチの他に、短髪の金髪で神父のような格好の、両腰にロングソードを携えた男がコーヒーを啜っている。
359 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/17(木) 21:18:59.36 ID:UgOrhTYk0
男「…………あれ?社長じゃなかったのこの人」
魔少女「いえ……さっき携帯で私も調べましたが、社長どころかこの【RPG】グループの会長だそうです……写真でも確認しました。権力としては1番上の方のハズですが……」
男「じゃあ何でこんな寂れた建物でダラダラしてんだよ……」
プリースト「む……客だぞ」
カウボーイ「おー、よく来たね2人ともーほらほら入って入って」
「「は……はぁ……」」
カウボーイがこちらに気づき、2人はボロボロのソファーへと案内された。
360 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/17(木) 21:32:48.69 ID:UgOrhTYk0
カウボーイ「よーこそ当ギルド【RPG】へ。歓迎するよー2人ともー。あ、ウィッチちゃんお茶ちょーだい」
ウィッチ「だから今手が離せねーって言ってんだろーがクソオヤジ!!申し訳ございませんお客様!!」
プリースト「俺が淹れよう」スッ……
カウボーイ「え!?僕には淹れてくれなかったのに!?」
男「なんか……想像とはかけ離れてんな……ギルドって……」
魔少女「あの……どうしてあんな立派な建物のギルドがあるのに皆さんこんなところにいらっしゃるんですか?」
カウボーイ「だって面倒くさそーじゃない」
プリースト「性に合わん」スッ……つお茶
ウィッチ「人が多すぎて緊張いたします」カチカチカチカチ
魔少女「納得しました……」
男「何で社長なんてウソついたんだ?社長どころか会長だなんて」
カウボーイ「え?社長だよ?この汚いギルド事務所【RPG】の」
プリースト「【RPG】グループの社長は我々の仲間が担当し実際にグループを動かしている。この男はただの創業者という事で名目上グループの会長となっているだけだ」
ウィッチ「この人がまともに企業のトップとしての仕事をするとお思いにますか?かといってここまで成長したグループを完全に放り出すのも勿体無いのでこういった方法を使っております」
男「……納得……」
361 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/17(木) 21:37:45.36 ID:UgOrhTYk0
カウボーイ「とりあえず紹介しとこうか。これが僕たちのギルド【RPG】だよ。メンバーは他にもいるけど、とりあえず今日はこないだ会ったウィッチちゃんと、この無愛想な神父っぽいヤツがプリースト。
ちなみにコイツ本物の神父ね。武器はロングソードの二刀流で神父というよりエクソシストみたいなヤツ」
プリースト「よろしく」
男「あ、ども。『男』です。……ていうかこれがギルドって事はあの大きな建物のギルドは……」
カウボーイ「あぁ、アレ?アレはアレでちゃんとしたギルドだよ。何て言ったらいいかなー……コッチのメンバーは本物の精鋭揃いで、アッチのメンバーは大衆的というか何というか……まぁよくて上の下くらいの冒険者達ってとこかな」
プリースト「基本的には彼らが。手に負えない大きな仕事は我々が遂行している」
男「なるほど……モ○ハンでいうG級冒険者ってヤツっすね」
カウボーイ「お、君もやってる?モ○ハン」
プリースト「で。何の様で来た?」
魔少女「あ……はい。実は、こちらのギルドで何かお仕事を紹介していただけないかと思いまして」
362 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/17(木) 21:40:21.73 ID:UgOrhTYk0
…………
プリースト「成る程。オートマタ修理の為か」
魔少女「はい……どうでしょうか。よろしければこちらのギルドに登録させていただきたいのですが」
カウボーイ「ウィッチちゃん」指パチンッ
ウィッチ「登録完了です」カチカチカチカチ
男「早っ!!え!?いいの!?そんな一瞬で決めてッ!!何か色々審査とかあるって聞いてたんだけど」
カウボーイ「審査ならやったじゃないのー、こないだ滝のダンジョンでさ」
男と魔少女がゴーレムと激闘を繰り広げていた時、カウボーイは一部始終それを観察していた。
結果、2人の将来性・人格共に問題なしという判断を出していた。
カウボーイ「というか実は、既に手続きやら何やらほとんどやっちゃってたんだよねー。後は本人達の了承のみってだけだったから」
363 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/17(木) 21:42:15.86 ID:UgOrhTYk0
魔少女「ということは……既にこのギルドに来ると予想していたと」
カウボーイ「そりゃあダンジョンでお金を稼ぎたいんならギルドの依頼受けた方が実入りはいいからねぇ。名刺も渡してたし近いうちに来るとは思ってたよ」
男「んじゃあ、もう俺たちはギルドの依頼を受けられるって事?」
カウボーイ「そうだよー。ほら、コレが少年のギルド所属証明書。チームの時は代表者1人が持ってりゃいいから。魔少女ちゃんも欲しいならあげておこうか?」
魔少女「そうですね……念の為、いただきます。先輩無くしそうですし」
男「否定はしない」
カウボーイ「まぁ後はギルドの受付嬢にでも丁度いい依頼を見繕ってもらってよ。期待してるよ2人共」ニィッ
364 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/17(木) 21:45:17.27 ID:UgOrhTYk0
投下終了です。
次元の違う最強格3人目、プリーストさん登場です。
次回は初クエストとなります。ではまた。
365 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/17(木) 22:25:06.07 ID:aRHOJ72go
乙
366 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/11/17(木) 22:25:57.89 ID:7SPP79Ib0
乙
クエスト:オートマタの性格を決めよう
367 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/17(木) 23:41:02.03 ID:R6AWNder0
乙!
368 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/11/18(金) 09:57:24.04 ID:grBZcGuRO
オートマータ…コンロビーヌを思い出した救われた物語を藤田さん書いてくれないかなぁ
369 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/18(金) 13:39:16.32 ID:z0wegGY0O
あの頃のサンデーは輝いていた…
370 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/18(金) 19:19:41.18 ID:L92isVjTO
乙
黒賀村編だけは絶対許さない
371 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/20(日) 09:15:42.64 ID:H6cV/QLo0
おはようございます、1です。軽めに投下していきます。
>>365
>>366
>>367
>>368
>>369
>>370
ありがとうございます。引き続き暇な時にどーぞ。
372 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/20(日) 09:20:14.39 ID:H6cV/QLo0
ギルドエリア 総合依頼案内所
男「さて。早速こっちまで戻ってきたわけだけど」
魔少女「このエリア全体で……依頼や情報などを集積しているようですね。まずは初心者用の簡単な依頼から……あのー」
オペレーター「はい。どうされましたか?」ニコッ
魔少女は1人の受付の女性らしき人に声をかける。
笑顔に思わず同じ女である魔少女さえトキメキそうな、大人な純和風の女性である。
魔少女「えっと……今回初めてこちらで依頼を受けようと思うのですが……やり方がわからなくて」
オペレーター「かしこまりました。では、ギルド所属証明書をご提示いただけますか?」
魔少女「ほら……先輩、さっき貰ったアレです」
男「ん?あぁ、俺が出すのか……お願いします」スッ……
373 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/20(日) 09:31:43.55 ID:H6cV/QLo0
オペレーター「はい。……あら。貴方達があの人の言っていた新人さんかしら?」
男「あの人?カウボーイのおっちゃんっすか?」
オペレーター「えぇ。私もあの小さな事務所のメンバーの1人だから。情報収集や依頼などの情報処理が主な仕事よ。よろしくね、お二方」ニコッ
魔少女「情報収集……ですか」
オペレーター「えぇ。紹介代わりに少し見せましょうか」カチッ
オペレーターがキーボードに手を添えると、一瞬で画面に魔少女の情報が現れる。
オペレーター「フムフム……ほぉほぉ……○○県の魔法部の大会で優勝と……流石あの人のお気に入りだけあって並ではないのね」
魔少女「え?……私の……まだ名前すら言ってないのに」
オペレーター「フフ、どうやったかは秘密ね。次にそっちの男の子はと…………あれ?特に目立った功績はないのかしら?」
男「まぁ、いわゆるちょっと動けるだけの普通の男子高校生ですんで」
オペレーター「じゃあこれからの活躍に期待ね。……あら……お兄さんがプロの探索者なのね。しかもこの3年間で若手トップクラスの功績を挙げてるわ」
男「いやー、アレは血ぃ繋がってんのか?って疑うレベルに優秀な兄貴ですからねー」
オペレーター「そう自分を卑下にしないの。じゃあ早速お仕事の説明をしましょうか」
374 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/20(日) 09:33:31.29 ID:H6cV/QLo0
ギルドの依頼とは!!
世界中に多数散らばるギルドには、未知のダンジョン探索から晩ご飯の材料に悩む主婦までありとあらゆる依頼が発注されている。
その依頼にギルドが達成難度を決めて、冒険者、探索者は自分の実力にあった依頼を受注するのだ。
主に目安となるのは、そのダンジョンの危険度ランクなどである。
オペレーター「貴方達はランク2までのダンジョンにしか入らないから受注範囲は非常に狭くなるけど……それでも数は膨大よ。さて、本日はどのような依頼をお探しかしら?」
375 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/20(日) 09:41:47.55 ID:H6cV/QLo0
男「んー、あり過ぎて悩むどころじゃないなこの数は」
ざっと検索してみたところ、ダンジョンランク2までという制限にも関わらず、依頼件数は万を軽く超えていた。これも世界各地の大都市からだけでなく、地方の中小ギルドとの連携が強い大手ギルドならではの光景である。
魔少女「まずは……私達の住む地域を中心として検索しましょう。そこから検索半径を徐々に広げ……早速いいのがヒットしましたね」
魔少女が一件の依頼に注目する。
『協力者求む。ダンジョン探索に同行してくれる方募集』
条件
明日の13時、仁市駅前集合→ダンジョンクリアまで同行出来る方
潜入予定ダンジョン
仁市第二運動公園ダンジョン(危険度ランク2)
報酬
100ゴールド
互いにダンジョンで得た金品の5割
376 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/20(日) 09:45:35.00 ID:H6cV/QLo0
男「仁市って、俺らの街の隣じゃん」
魔少女「確定報酬100ゴールド……更にダンジョンで稼いだお金の半分が入ります。
危険度2のダンジョンで私達と依頼者の合わせて3人で探索を行えば300から400ゴールドは固いかと。取り分はその半分ですから報酬と合わせて合計250ゴールドから300ゴールドほどの見込みがありますね」
オペレーター「依頼者は貴方達と同じ高校生のようね。実力も同程度、欲しい素材が最近このダンジョンに大量に出る傾向があるので、安全策として共に探索する人材が欲しいと。……これにする?」
魔少女「悪くないと思います……個人的に親しくなれば、私達の目的に協力してくれて、後日探索を手伝ってくれるかもしれませんから」
男「年が近い同業者の知り合いが出来るかもってのはメリットデカイな。これにするか」
「「じゃあこれで!!」」
オペレーター「フフ、了解。では依頼内容などを明記したメールを貴方達の携帯に送っておくわね。初仕事頑張って、怪我しないようにね」
377 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/20(日) 09:49:23.13 ID:H6cV/QLo0
男「ありがとうございまーす。うっし、んじゃ折角東京に来たんだし遊んで帰るか」
魔少女「却下です……先輩には、先日新しく手に入れた『鉄の剣』と魔力の練習をやってもらいます。ついでに武器の鑑定も。明日の仕事で使いモノにならないと困りますので」グイッ
男「嘘ーん!折角ここまできたのにー」ズルズルズル
魔少女「名刺があれば……またいつでも来れるじゃないですか。ほら、さっさと帰りますよ」ズルズルズル
オペレーター「フフ……若いっていいわね……本当に……」
8日目成果
ギルド【RPG】への登録を完了した
初めての依頼を受注した
カウボーイより譲り受けた『鉄の剣』を鑑定した
市役所横ダンジョンでの修行ついでに、40ゴールド獲得した
所持金55ゴールド
オートマタ引き取り代金 残り945ゴールド
378 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/20(日) 09:50:41.09 ID:H6cV/QLo0
ー同時刻ー
379 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/20(日) 09:51:48.36 ID:H6cV/QLo0
…………
南米 ペルー
マチュピチュ遺跡
ダンジョン『浮遊都市マチュピチュ』危険度ランク54
リバース幹部「くっ!!何なんだこの剣士は!!めちゃくちゃ強いじゃねぇか!!」
兄「さぁ、吐いてもらおうか。お前ら『リバース』がこのダンジョンで何をしていたのか」チャキッ
1人の日本人剣士が、いかにも悪そうな男に剣を向け尋問している。
その周りには、男の部下が数人、それらが従えていたモンスターなどが、剣士に斬られ倒れていた。
リバース幹部「り、リバース?はは、俺には何のことやら」ザクッ!!
グァァアアアッ!!!
兄「調べはついてるんだ。余計な手間を取らせるなら足のつま先からコイツを刺してくぞ?」
剣士はナイフを男の右足の甲に突き刺し、尋問を行う。
いや、既に拷問の域であろう。
380 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/20(日) 09:54:43.74 ID:H6cV/QLo0
リバース幹部「ぅぅ……た、ただこのダンジョンで入手出来る素材を採りに来ただけだ。貴重なモノだから市場には出回っていない……ただの探索だ!正当な手続きもした!!それの何が悪い!!」
兄「貴重な素材ねぇ……このダンジョンで、市場に出回らないレベルのごく少数しかとれないと言われている貴重な素材といえば、別次元へのワームホールを作る為に必須なレアクリスタルの一つ『浮遊結晶』だが……そんなモノを何故お前らが欲しがるんだ?」
リバース幹部「〜〜〜〜〜ッ!?……ク……クククッ……ハハハハハッ……」
兄「ん?」
リバース幹部「知りたければ教えてやろう!!この世界を『裏返す』のさ!!強者のみが生き残る混沌の世界へとなぁ!!」
兄「それは何回も聞いた。お前のお仲間にな」
リバース幹部「弱者は穴にでも閉じこもればいい!!我々にこの世界は狭く、生温い!!ならば全てを反転させればよいのだ!!」
兄「それも聞いた。お前ら皆、同じ事しか喋らないのか?ゲームのキャラクターかよ」
リバース幹部「ゲーム?……ハハハッ……そう!これはゲームだよ!!我々が創り出す、これ以上にない壮大な世界を舞台にしたRPG(ロールプレイングゲーム)だ!!」カッ!!
突如、男の身体が光りだす。
兄「げ!?」
381 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/20(日) 09:56:20.02 ID:H6cV/QLo0
リバース幹部「『リバース』の創り出す世界に栄光あれぇぇぇえええッ!!!!」
ドォォォオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!
そして、男の叫びと共に、周囲に爆炎が広がっていく。
爆炎は剣士どころかまだ息のある男の仲間をも飲み込んでいった。
382 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/20(日) 09:59:14.92 ID:H6cV/QLo0
ォォォォォオオオッ…………
兄「余計な事しなくても良かったのに。これやられると酔うんだよ」ゲホッ
爆炎が収まると、剣士は何事もなかったかの様に姿を現した。あれだけの熱量かつ広範囲の爆炎にも関わらず、気分は悪そうだが全くの無傷である。
魔術師「またそんな事言ってッ!ボクが君を『フェーズシフト』で別空間に飛ばさなかったら、君は今頃焼き焦げた匂いの、魔物のエサになってたところなんだから!!」フヨフヨフヨ
どこからか、フワフワと箒に乗った赤毛の少女が剣士の前に現れる。
見た所日本人の剣士とは違い、外国人。魔術の本場、イギリス出身の魔法使い19歳である。
383 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/20(日) 10:02:10.05 ID:H6cV/QLo0
兄「はいはい、サポート助かったよ魔術師。とりあえず敵の現在の目的も把握出来たし、今回は上出来だろ?」
魔術師「うん、わかればよし!ホラ、ジャパンのことわざにもあるでしょう?『おかしい仲にも礼儀あり』ってさ」
兄「『親しき』な。まぁ俺とお前ならおかしいである意味あってるけど」
魔術師「oh……ジャパンのことわざ難しいよ……それで?これからどうするの?ボスから奴等の次の情報が入るまでは自由だってさ」
兄「そうだなぁ……去年の正月ぶりに家に帰ろうかな。お袋や弟の顔を見にでも」
魔術師「ッ!?YEAH〜〜ッ!!!賛成賛成!!ボクジャパニーズフード大好きだもん!!スキヤキシャブシャブスシナンプラ〜〜♪」
兄「ナンプラー?あぁ、天ぷらか。てかお前も来るのか?」
魔術師「そりゃあ行くよ!ていうか連れてってよ!パートナーでしょ!?」
兄「はぁ……しょうがないなー」
384 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2016/11/20(日) 10:08:33.59 ID:H6cV/QLo0
投下終了です。
兄貴アンド魔術師登場でした。正統派主人公とその相方みたいな感じです。ちなみに2人の見た目は普通の動きやすい服装です。
カウボーイ達みたいにコスプレっぽくはなってません。プリーストさんは本物の神父なのでコスプレとは思ってません。
385 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/20(日) 11:22:57.72 ID:o1k1/riSO
乙乙
お兄ちゃんが外国人の嫁連れて帰って来るのか…次の更新も楽しみに待ってる
386 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/20(日) 11:45:09.66 ID:FIuj+cT+o
乙
兄登場かどうなるかね
387 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/20(日) 20:22:04.78 ID:ZTCOaKXD0
乙
兄はひっそり死んでいると思ってた
388 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/29(火) 21:27:59.47 ID:chTdoxuq0
保守
389 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/09(金) 23:32:20.10 ID:Hg4UED8/0
ほ
390 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/18(日) 01:08:53.72 ID:Rj/mYV/0O
支援&期待の☆
391 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/26(月) 19:32:33.17 ID:vAQfgsni0
ほしゅ
392 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/28(水) 14:21:49.54 ID:Uz/nUayFo
昨日見つけてそのまま勢いでここまで読んでしまった
面白い
リバースが裏返すのって通常空間とダンジョンをか?
そういや大概のRPGって世界の大半に魔物が跋扈しててぽつぽつ存在する町や村が安全地帯だもんなぁ
そういうRPGみたいな世界にしたいのか?というかRPGのマッチポンプじゃないだろうな
393 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/06(金) 00:25:19.45 ID:7reAscXs0
保守
394 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/09(月) 17:04:27.61 ID:MrLSsepx0
あけましておめでとうございます、1です。
遅くなりましたが夜辺りに投下します。ヒマな時にどうぞ
395 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/09(月) 17:58:37.80 ID:qfZiYnG/0
期待してます!
396 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/09(月) 20:03:41.12 ID:MrLSsepx0
ダンジョン生活9日目 午後12時
男「ほんじゃ、初仕事行ってくるか」
魔少女「えぇ……行きましょう」ニコッ
母「車に気をつけるのよー☆」
男「もっと気をつけなきゃいけないもんが、いっぱいあるけどな」
仁市駅前
12時40分
男「結構早めに着いちゃったな。どっかで軽く何か食うか」
魔少女「でしたら……駅の近くに美味しいシュークリームを売っている店があるらしいです」グイッ、グイッ!!
男「腕引っ張んなって!俺的にはもうちょいガッツリ食いたいんだけどなー」
魔少女「コンビニで……ついでに何か買ってください。あ、あの店ですね」トテトテトテ
「シュークリームあと1セットでーす、次回販売は3時間後となっておりまーす」
「「すいませーん、シュークリームください」」
魔少女「ッ!?」バッ!!
「ッ!?」バッ!!
397 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/09(月) 20:05:05.39 ID:MrLSsepx0
駅前にそびえる小さな店舗。
そこで売られている最後のシュークリームを求め、今見知らぬ金髪の少年と少女の2人が同時に注文を行なった。
金髪「なんやアンタ……ワシの方が早かったと思うんやがなぁ……」ピキッ……
魔少女「いいえ……私の方がコンマ3秒ほど早かったです。順番は守っていただかないと」ピキピキッ……
金髪「せやなぁ……順番は守らんとなぁ……まぁどうしてもというなら」ビキビキッ!!
魔少女「えぇ……どうしてもというなら……」ビキビキビキッ!!!
「「最初はグー!!ジャンッ!ケンッ!!」」
398 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/09(月) 20:15:25.93 ID:MrLSsepx0
……………………
「ありがとうございましたー」
魔少女「正義は必ず勝つのです……」ドヤッ!!
金髪「あぁ……何でワシはグーを出してもうたんや……」
戦いの結果、魔少女が最後のシュークリームの入った袋をゲットしたようだ。
激闘を繰り広げた短髪の金髪な少年は酷く落ち込んでいる。
魔少女「よかったら……1個どうぞ。一袋に結構入ってるみたいですので」
金髪「おぉ……天使や。ココに天使がおる……あんがとうなぁ!!んーうまッ!!」モグモグ
男「3時間後に新しく焼いて販売されんだから待てばいいのに」
金髪「あかん。3時間後やったらワシは近くのダンジョンの中や。その前に、ここのシュークリームで景気付けときたかったからな」
男「へぇー、アンタもダンジョンに入るんだ。俺たちもこれから近くのダンジョンに入るんだよ」
金髪「おーお前らも探索者か!一緒のとこかもなー、ほな向こうで会ったらよろしくな。ワシは待ち合わせがあるから駅前で待たなあかんのよ」
男「おう、よろしく。俺達も駅前で待ち合わせだからそれまで情報交換でもしとくか」
魔少女「……………………」モグモグ
399 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/09(月) 20:24:23.03 ID:MrLSsepx0
13:00 待ち合わせ場所
金髪「なんや、まだ来てないんか?プロなのに時間に疎いとは感心せんなー」
男「こっちもまだ来てないのかな?折角指定時間に来たのに」
魔少女「あのー……お二方もしかしてワザとですか?」
「「へ?」」
…………
金髪「なんやー、アンタらがワシの頼んだギルドの人らやったんかいなー」
男「アンタが依頼人だったのか!いやー、こういう事もあるんだなー」
魔少女「まるでコントを見てるようでした……改めまして、ギルド【RPG】から参りました、魔少女と申します」
男「俺は『男』だ。初仕事でダンジョン経験も浅いけど、給料分の働きが出来るよう頑張るからよろしくな」
金髪「ワシは『金髪』や!まぁワシも経験浅いし、最悪目的の素材がキッチリ手に入れば問題ないからよろしく頼むわ!」
魔少女「では……腹ごしらえも済んだ事ですし、行きましょうか。ダンジョンへ」
400 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/09(月) 20:34:49.57 ID:MrLSsepx0
仁市第二運動公園ダンジョン
空間変異型ダンジョン 鉱山 全4層
出現時期 15年前
危険度2
主な魔物 ゴブリン ???
401 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/09(月) 20:36:34.89 ID:MrLSsepx0
ダンジョン 第二層
『薄明かりの坑道』
男「ここは……鉱山のダンジョンなのか」
冒険前の準備を整える為の第一層を素通りし、そのまま本格的に探索が始まる第二層へと降りた男達は、周囲が岩に覆われ、ランプの灯りに灯された坑道のような通路に降り立った。
魔少女「そのようですね……このダンジョンは全4層の空間変異型。つまり決まった地図などは存在しません。私達は、この迷路のような坑道を探索しなければいけないというわけですね」
金髪「まぁ、通路はかなり広いし魔物と戦闘になっても問題ないやろ。まずは次の階層への出口を見つけよか」
男「ん?素材やアイテムを探さなくていいのか?」
金髪「それは二の次や。まずはワシら自身の安全の確保。先に出口見つけてそこを中心に探索すれば迷いにくくもなるやろ」
男「おー、それもそうだな。てかそういえば、お前が集めたい素材って何なんだ?わざわざギルドに依頼するくらいだし」
金髪「ん?あぁ、『火薬』や」
男「火薬ぅ〜?」
金髪「ワシは探索者として武器を使うなら、やっぱ男気溢れた武器を使いたい!って昔から思うとってなぁー。まぁいわゆる『漢の浪漫』ってヤツやな。
んで色々候補はあったんやけど、まずはコレ!って武器を見つけたんや。せやけど、この武器の最大の魅力を使うにはアホみたいに火薬が必要になって、武器屋のオヤジが最初の何発か分はサービスしたるから、あとは自分で材料を用意しろ。そしたらまた作ったるって話でな。
そんで、このダンジョンに低品質やけど火薬を精製出来る鉱石が大量に出るって聞いてな?こうして人を呼んでいっぱい持って帰ったろってワケや」
402 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/09(月) 20:54:08.82 ID:JYfsRM0to
つまりどういうことだってばよ
403 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/09(月) 22:01:53.62 ID:MrLSsepx0
魔少女「ようするに……」
男「俺らは荷物持ちって事かよ……通りでデカイカバン持ってると思った」
金髪「まぁ『男』の方にはそっちメインで働いてもらうかもなぁ〜。魔少女ちゃんは魔法使えるんやろ?ならワシのアシお願いなぁー」
魔少女「了解しました」
男「まぁいいけど。……で、結局お前の武器は何なんだ?」
金髪「あぁ、コレやコレ」スッ……
金髪が右腕を上げると、そこにはゴテゴテした機械のような物が取り付けられていた。
それはリボルバーのシリンダーの様な機構と、そこからスプリング式に発射されるように付けられた金属の太い杭。
太い杭の先には近接戦闘に使えるように槍の穂先のような物が付いている。
404 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/09(月) 22:02:43.94 ID:MrLSsepx0
男「ま……まさかそれは……」
金髪「あぁ……いわゆる『パイルハンマー』ってヤツや」
男「スゲー!!ヤベーカッケー!!超カッケーよ金髪ー!!」
魔少女「あの……それ右腕重くないですか?」
パイルハンマーーとは!!
火薬などによって杭などを瞬間的に撃ち出す、いわゆるロマンである。
金髪「まぁ試しに撃ってみたら1発で肩が外れてなぁー。そんで対策として撃つと同時に衝撃を緩和させる魔法が使えるいい戦技を買って組み込んだんや。おかげで武器代と合わせて半年分のバイト代が全部パーやけどな」ハッハッハ
男「スッゲー!俺にも今度使わせてくれよソレ!!」
魔少女「…………普通の銃などでよかったのでは?」
405 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/09(月) 22:04:26.10 ID:MrLSsepx0
ゴブリンの群れ「キキーッ!!」
男「お、都合のいいところに魔物の群れが」
魔少女「あれはゴブリンですね……いわゆる小鬼です。洞窟のような暗く狭いところに生息する魔物ですね」
金髪「うっし!んじゃあ、準備運動がてらに一丁やったるか!!魔少女ちゃん、身体強化の魔法って使えたりするん?」
魔少女「もちろんです……『フィジカル』」カッ!!
金髪「お、身体が軽ぅなった!……んじゃやるか」スッ……
金髪は、10匹ほどのゴブリンの群れに対して、軽くステップを行いながらファイティングポーズをとる。
男「もしかしてボクシングやってたのか?」
金髪「いんや、喧嘩で身につけた我流や。でも伊達や酔狂だけで、この武器を選んだワケやないんやで」
魔少女「え?……そうなんですか?」
ゴブリンの群れ「キーッ!!」バッ!!
そして、手に棍棒などを持ったゴブリンの群れが、一斉に金髪へと襲い掛かってくる。
406 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/09(月) 22:08:26.45 ID:MrLSsepx0
金髪「オラァッ!!」ブンッ!!
それらに対し、金髪の右拳に取り付けられた刃物が、素早く薙ぎ払うようにゴブリン達をまとめて斬りつけた。
数体のゴブリンはそれだけで後方に飛ばされる。
金髪「シュッ!!」ダンッ!!
そのまま金髪は前方に足を踏み込み、残りのゴブリンの一体に密着したまま照準を合わせ
金髪「ぶっ飛べや!!」カチッ!
ドォォォオオオオオオンッ!!!!
拳に仕込んだトリガーを引き、シリンダーの中の弾薬を炸裂させ、右腕から太い杭が発射された。
杭をモロに食らったゴブリンは即死し、他のゴブリン達もろとろ大きく後方に飛ばされる。
金髪「クゥゥゥウウッ……やっぱコレをぶっ放すのは最高やな!!」ガチャンッ!!
そして取り付けられたレバーを引き、杭を元の位置に戻すと同時に薬莢が排出される。
要は、デカイ大砲を備えたインファイターである。
重さや衝撃など様々なデメリットはあるが、戦技や魔法でデメリットを解消する事で使い手によっては凄まじい戦力を生み出すのだ。
まさに浪漫である。
407 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/09(月) 22:11:23.13 ID:MrLSsepx0
魔少女「驚きました……凄まじい威力ですね。格上の魔物が相手でも通用しそうです」
金髪「まぁな!ただ弱点としてはやっぱ、いくら緩和してても衝撃で身体がヤワになるからなぁ〜。一度の探索で何発も連続で気軽に撃てんってことやな」
男「じゃあこんなとこで撃つなよ!まだ始まったばかりなのに」
金髪「じゃあお前ならあの状況で撃たんのか?」
男「いいや、撃つね!!」
ガシッ!!(握手)
魔少女「とりあえず……戦力に問題は無さそうですね。1番弱いのは先輩ですし。まずは出口を探しましょう」
男「否定はしない」
戦利品
小鬼の石飾り(材質によって値が変わる) 大体10ゴールド分
ゴブリンの心 1個
408 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/09(月) 22:18:02.68 ID:MrLSsepx0
探索30分経過
男「結構歩き回ったけど、出口どころか大部屋の一つも見つからんな」
魔少女「一応目印と……簡単なマッピングはつけています。まだ一度も同じ所を通ってませんから、それだけこの鉱山ダンジョンが広いという事でしょうね」
金髪「そら簡単にクリア出来る親切設計なら誰でも探索者になっとるわ。練習みたいなランク1とは違って、ランク2からはガチ探索やからなぁ」
男達は順調に迷っていた。
といっても魔少女が自分の歩幅を数えて、用紙にマッピングを行なっているので、順調な探索といえば順調である。
男「流石に普通の道にポンポン素材が落ちてるわけでもないからな。出来ればここら辺で一回広い空間に出たいもんだ」
魔少女「そうですね……あ!?ここ、さっき通った分かれ道のようです。作ってる地図とも一致してます」
金髪「てことは、ようやくあらかた探索出来たんか」
魔少女「そのようですね……いくつか選ばなかった分かれ道があったので、この中のどれかに次の階層への出口の部屋があるはずですが」
男「とりあえずこの分かれ道の先に行ってみようぜ」
409 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/09(月) 22:19:51.91 ID:MrLSsepx0
探索40分経過
第二層
『採掘者の休息所』
男「おー!やっと通路以外の広い部屋に出た!!」
最初に選ばなかった分かれ道を進んでいくと、男達は坑道内に開けたエリアを見つけた。
このエリアには、採掘者達の為の簡易的な小屋のようなモノが数軒建てられている。といっても、ダンジョンが作られるさいにその膨大な魔力によって、現実の世界のどこかを写し取っただけなのだが。
金髪「この小屋で少し腰を下ろして休憩が出来そうやな」
魔少女「そうですね……ただし、先にこの小屋を全て調べましょう。魔物が潜んでいる可能性が高いですから」
そう魔少女が進言すると、三人はそれぞれ小屋の中を慎重に確認していく。
魔少女「……こっちの小屋は大丈夫です」
金髪「こっちも何もおらんわー」
男「どわぁぁあああ!?何かデッカいムカデがいる!!」
大ムカデ『キィィィイイッ!!!』バッ!!
ズザァァァアアアッ!!!
男の叫び声と共に、小屋の中から大ムカデと男が飛び出してくる。
大ムカデの大きさは成人男性ほど。
ガイドブック曰く、危険度2から3の魔物である。
男「くっ!?離れろ!!」ブンッ!!
男が鉄の剣を振ると、男に組みついていた大ムカデが一旦離れる。
魔少女「大ムカデ……私達には決して弱くはない魔物です」
金髪「加勢したろか男!?」
男「いや、まだいい!!この剣の試運転がてら、俺1人でやってみる」
魔少女「……わかりました。気をつけてくださいね、先輩」
金髪「おいおいええんか?アイツあんまり強くないんやろ?」
魔少女「火力でいえば……私や金髪さんの方が上です。でも、まぁ見ててください」
410 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/09(月) 22:30:26.36 ID:MrLSsepx0
大ムカデ『キィィィッ!!!』バッ!!
大ムカデが男へと飛びかかってくる。この大きさ、噛む力も相当だろう。まともに噛みつかれれば大ダメージもある。
男「戦技……『倍加速』ッ!!」
ズシャアッ!!
大ムカデ『ギィィイッ!!』ズザァッ!!
しかし、男はカウンターで大ムカデの胴体へと横薙ぎに攻撃を加える。それも素早く、腰の入った一撃で。
金髪「速ッ!?何やアイツ、めちゃくちゃ動けるやんけ!!」
魔少女「あの鉄の剣に付いていた戦技の効果です……時間魔法『アクセル』と同種類の戦技。発動後、1秒間だけ自身の時間を加速させる事ができます。……先輩にとっては大当たり武器ですね」
滝の洞窟にて、カウボーイが洞窟内で見つけ、男へと譲り渡した鉄の剣。
これを鑑定したところ、この戦技が最初からつけられていた。正面から剣で戦う戦法の男にとってはベストな戦技である。
魔少女「昨日は……鑑定した後ずっと、あの戦技を使いこなす特訓をしていました。魔力の消費も大きくなく、使うタイミングがよければ絶大な効果を発揮する……先輩ならそのタイミングは絶対見逃しませんからね」
剣道に限らず、武術・格闘技を長くやっている人間なら、対峙する相手の隙を突いて技を繰り出すのは当たり前。
その隙を倍速で突けるのだ。弱いわけがない。
大ムカデ『キルルルルル……ッ!!』ザザァッ!!
金髪「あ!?あのムカデ逃げよった!!」
魔少女「いえ……恐らく身を隠しただけです。ムカデは素早くどこにでも潜む事が出来ますから……隙を見て飛びかかる気でしょう」
411 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/09(月) 22:39:24.64 ID:MrLSsepx0
シー……ン……
男「……………………」
ザ……
大ムカデ「ギィィイッ!!!」ザザァッ!!
男「『加速』ッ!!」ブンッ!!
ズシャアッ!!!
静寂の中、男は全方向に神経を集中させ、大ムカデの這いずる音に反応すると同時に戦技を発動させる。
背後から飛びかかってきた大ムカデに対し、加速された反応で再び横薙ぎに斬る。
大ムカデ「ギッ……」ドシャアッ!!
男「うっし!終わり!!」
魔少女「戦技を瞬間的に発動させる訓練……少しは成果が出てきましたね。まだまだタイムラグはありますが」
大ムカデ「ギィィイッ!!」
金髪「ッ!?まだや!!」
魔少女「『ファイヤーボール』」ポゥッ!!
大ムカデ「キィィィッ!!!……」ドサッ
魔少女「これくらいは……とっさに出来るようにならなければ、その戦技は活かせませんよ?折角いい性能なんですから」
男「はいはい精進しますよー」
金髪「……ハハッ、こいつ等やるやん!!」
412 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/09(月) 22:42:17.60 ID:MrLSsepx0
〜休憩中〜
魔少女「書いていた地図を見る限り……恐らくここら辺に次の階層への出口があると思われます。というより、恐らくこの辺り以外はこの階層は探索済みかと」
男「何だ、先に探索終わっちまったのか。意外に道中何にもなかったな。その分この小屋のエリアにまとめて落ちてたけど」
休憩前に男達は、小屋に落ちていたアイテムを拾い漁っていた。
ここにあった持って帰れそうなものだけで、100ゴールド分はあるだろう。
金髪「武器やアクセサリーみたいな装備品が、いっちゃん儲かるんやけどな。ゴツいもんばっかで持って帰れないんが勿体無いわー」
鉱山の休憩エリアらしく、鉱夫の使うツルハシなどの道具が落ちていたが、あくまで火薬鉱石狙いなのであまり多くは持ち帰れない。
男達は仕方なく、拾ったものを選別して、最低限の儲けを出そうとしていた。
魔少女「しかし……目的の火薬鉱石は見つかりませんでしたね」
金髪「恐らく掘り出した鉱石を保管しておく場所みたいなモンがあるんやろ。こんな休憩所みたいなもんがあるんや。次の階層には必ずあるハズ」
男「無かったら今回の戦利品を売って、その金で火薬買えよ」
金髪「市場で買うと金かかるからなぁー。今回持ってきた6発分だけで180ゴールドやで?この値段やと火薬の威力もイマイチやしそれなら自分で調達した方がえぇわ」
魔少女「とりあえず……まずは先に進みましょう」
413 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/09(月) 23:54:39.23 ID:rP9Ypsf8o
くっ、ロマンは認めたるわ
414 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/10(火) 15:31:55.86 ID:h9oM1koVO
金髪さん一応雇い主なんでしょRPGの大切な顧客にタメ口なのか……
415 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/10(火) 21:21:42.71 ID:2+dJOTO10
すいません昨日は寝落ちです……投下予定だったとこまで投下します
>>413
金髪にはps4ゲーム「ブラッドボーン」ばりの浪漫溢れる改造変形バ火力武器をメインに使ってもらうつもりです。キャラはFF8のゼルをイメージしてます。ガテン系の気のいい兄ちゃんです
>>414
まぁ同い年だし金髪も気にしない性格なので。ドラクエ3のルイーダの酒場みたいなもんです
416 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/10(火) 21:22:36.79 ID:2+dJOTO10
『下層への階段』
男「あったな、次の階層への道」
金髪「この部屋は何なんやろな?あちこちにデカイ岩がゴロゴロ落ちとるけど」
魔少女「この階段……先が真っ暗で何も見えませんね。恐らく、途中で別空間に繋がっているんでしょうが」
金髪「この階層はほぼほぼ探し尽くしたし、次行こうや」
男「そうだな。でもその前に……」チラッ
ゴブリンの群れ「キキーッ!!」
男「こいつ等どうする?」
金髪「ほっといて下降りてえぇんちゃう?」
魔少女「しかし……この魔物達を倒しておけば、換金するアイテムが増えますよ?」
ホブゴブリン「……ニンゲン……」
男「お、何かデカイ奴がいるぞ?しかも俺らの言葉喋ってるし」
ゴブリン達の群れの奥には、ボス格と思われる一回り体の大きなホブゴブリンと呼ばれる魔物もいた。
ゴブリンがランク1、ホブゴブリンがランク4となる。
この中で一番実力のある魔少女でも、ホブゴブリンを相手にするには骨が折れるだろう。
417 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/10(火) 21:23:35.62 ID:2+dJOTO10
魔少女「……おかしいですね。先ほどの大ムカデといい危険度ランク2のダンジョンなのに、それ以上のランクの魔物がやけに頻繁に出てきてるような……」
男「でもまぁ、1体づつだろ?それに俺等も3人いるんだし、実力的には丁度いいんじゃないか?」
金髪「せやせや。金を稼がなあかんのも確かやし……やろか?」
男「おし……魔少女!とりあえず雑魚を片付けてくれねーか?」
魔少女「わかりました……火球・火球・火球ッ、3種複合魔法『ガトリングファイヤーボール』ッ!!」ボゥッ!!
ドドドドドドドドドッ!!!
前に突き出した魔少女の両手から、小さな火球が連射されていく。
火球はゴブリン達を次々と撃退していった。
魔少女「……ふぅ……これであらかた片付いたと思いますが……」
ホブゴブリン「…………」シュゥゥウッ……
男「親玉は殆ど無傷か。まぁ、そんな簡単な話じゃないよなぁ」
418 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/10(火) 21:27:53.47 ID:2+dJOTO10
ダッ!!
男「おっ!?」
前に飛び出したホブゴブリンは、そのまま男へと殴りかかる。
ボクサー並みの両拳の連打により、男はひたすら躱す事しか出来なかった。
男「くっ、流石格上。やっぱ1対1じゃあちょっと厳しいな」
ホブゴブリン「ォォォォォオオオッ!!」シュシュシュシュッ!!!
魔少女「補助魔法をかけます……『フィジカル』」カッ!!
男「うっし!!これで身体が軽くな」
ホブゴブリン「オオオッ!!!」ブンッ!!
ドォンッ!!
男「がっ……は……」ドサッ……
一瞬の隙に、ホブゴブリンの渾身の拳が男へと当たり、男は岩壁へと衝突する。ダメージは大きいだろう。
魔少女「先輩!!」
ホブゴブリン「オオオッ!!」ダッ!!
そのままホブゴブリンは、魔少女へと突進していく。
か弱い魔少女がこの一撃をもらえば、ひとたまりもないだろう。
金髪「させるかボケェ!!」ブンッ!!
ズシュウッ!!
その前に、金髪が右腕のパイルハンマーでホブゴブリンの腕を斬りつける。腕に刻まれた傷はかなり深く、ホブゴブリンの攻撃を弱める事となるだろう。
しかし
419 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/10(火) 21:29:07.00 ID:2+dJOTO10
ホブゴブリン「……ニンゲンン……」シュゥゥウッ……
金髪「ッ!?何や……傷がえらい勢いで治っていきよる……」
魔少女「あの魔物、何か変です……一体……」
通常ではあり得ない速さで、ホブゴブリンの傷が治っていく。格上の魔物ならば回復魔法などの様々な回復手段を持っているが、ホブゴブリンにはそれは無いはずである。
そもそも、人語を解している時点で、既に普通のホブゴブリンではない。
ホブゴブリン「ォォォォォオオオッ!!!!!」ゴキゴキゴキッ!!!
魔少女「身体が大きくなっていく……こんな事……」
金髪「なーんや……ヤバそうな匂いがプンプンすんなぁ」
雄叫びと共にホブゴブリンの身体が徐々に大きくなっていく。骨格すら作り変えられているようだ。
先ほどまでは精々150cmほどだった体長は、いまや180cmほどにまで大きくなった。より強く、より頑丈に。
魔少女「危険度6……7くらいはありそうですね……」
金髪「こら、ワシらの手に負えなさそうやな……」
ホブゴブリン改「ニィンゲェン……」ユラッ……
明らかに異常なホブゴブリンが、魔少女達へと攻撃を仕掛けようとしたその瞬間
ズシュッ!!
420 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/10(火) 21:30:24.67 ID:2+dJOTO10
魔少女「ッ!?先輩……」
男「魔少女!!速攻で撃てるデカイ魔法をコイツに撃てッ!!」
魔少女「は、ハイ!」ググッ!!
ホブゴブリンの背後から、先ほど一撃を喰らった男がホブゴブリンの右腕を斬り落とした。
完全に不意をついた一撃だ。
ホブゴブリン改「グォォォオオオオオッ!!!」ガシィッ!!
男「ガハッ!?」
すかさずホブゴブリンが男の首を残った左手で掴む。プロレスラーのような肉体から繰り出される腕力は、とても男が抵抗できる力ではない。
金髪「隙だらけやでデカブツ」グッ!
そのホブゴブリンの背後には、右腕のパイルハンマーを構えた金髪が。
金髪「本日2発目やッ!!」カチッ!
ズドォォォオオオオッ!!!
ホブゴブリン「グガァァアアッ!!!」ドンッ!!
男「ブハァッ!!」ドサッ!
そのまま巨大な杭を放つパイルハンマーがホブゴブリンの背中へと炸裂し、ホブゴブリンは坑道の壁に叩きつけられる。
捕まえていた男を思わず放してしまうほどに強烈だったのだろう。
421 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/10(火) 21:40:45.46 ID:2+dJOTO10
魔少女「撃ちます……二人とも避けてください!!」ググググッ!!
男「ヤバッ!!」ダッ!!
2つの練り上げられた魔力球を浮かび上がらせ、魔少女が叫ぶ。同時に男と金髪は全力でその場から離れる。
魔少女「火球、光球……2種複合『フレイムアロー』!!」ドドドドッ!!
1つの魔力球から、10発程の炎の矢がホブゴブリンへと放たれる。
ホブゴブリン「グォォォオオオオオッ!!!」
矢はホブゴブリンの身体を貫き壁へと突き刺さり、ホブゴブリンを壁に固定した。
魔少女「更に火球、火球……2種複合魔法『フレイムボール』」ドンッ!!
ドォォオンッ!!
そしてもう1つの魔力球から通常よりもふた回りほど大きな火球が、ホブゴブリンへと放たれ炸裂する。
どうやら魔少女は、2種複合の魔法を2つ作成していたようだ。
より複雑な3種複合よりも威力は劣るが、手早くダメージを与える為に考えたのだろう。
422 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/10(火) 21:41:56.74 ID:2+dJOTO10
金髪「やったんか!?」
魔少女「いえ……金髪さんの武器で倒しきれないのでしたら、あの程度の魔法では無理です。ここは今すぐ退きましょう」
男「うし!そうと決まれば」チラッ
3人は同時に、次の階層へと続く階段へと目を向ける。
次の階層とは空間自体は直接繋がっていない。
ダンジョンの外から入ってきた人間達はそれを通り抜ける事ができるが、ダンジョンで生まれた魔物達には別階層へ行くことは出来ないのだ。
ホブゴブリン改「ォォォォォオオオッ!!!」
男「走れっ!!」ダッ!!
ホブゴブリンの雄叫びが響き渡ると同時に、3人は階段へと全力で走り出す。
ガラガラガラッ…………
金髪「うお!?アイツデッカイ岩持ち上げとんやけど」
男「いいから早く走れ!!」
ホブゴブリン改「ォォォォォオオオッ!!!」ブンッ!!
この部屋に無造作に転がっていた人を潰すには十分なほどの大きさの岩を、ホブゴブリンが男達目掛けて投げ飛ばす。
ドォォォオオオオオオンッ!!!
ホブゴブリン改「ニンゲン……ニンゲンンンンン!!!」
423 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/10(火) 21:44:34.32 ID:2+dJOTO10
第三層
『火晶石の採掘坑道』
男「ハァッ……ハァッ……」
金髪「流石に……ちょっと死ぬかと思ったわ……」ハァッ……
魔少女「…………」ゼェッ……ゼェッ……
男「おい魔少女……一気に走り過ぎてダウンしてやがんな」
金髪「ここらでちょっと休もか……アイツも別の階層まで来られへんし」
……………………
カウボーイ「おーいプリっちー、ちょっと頼み事があるんだけどー」
プリースト「断る。そしてその呼び方はやめろ」
カウボーイ「まぁまぁいーじゃない。それでさー、ちょっと『例の件』でアクシデントがあっちゃってね?こないだここに来たあの少年達が危ないかもしれないんだよー。ちょっと片付けてきてくんない?」
プリースト「……『バグ』か?」
カウボーイ「そゆこと。頼んでいい?皆出払ってるからさぁ……」
プリースト「……ハァッ……場所はどれだ?」
424 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/10(火) 21:45:51.62 ID:2+dJOTO10
…………
魔少女「ふぅ……ようやく呼吸が整いました」
金髪「魔少女ちゃんビックリするくらい体力ないなー、天は二物を与えずってヤツやな」
男「これでも無事に下に降りるまで体力が保っただけ大成長なんだがな」
魔少女「それでは進む前に……先ほどの件について話しておきましょう。なぜあのホブゴブリンはあれほど強力な個体となっているのか」
男「確かにどんだけダメージ与えても、治るだけでなく更に強くなるんだもんなー。何なんだアイツ」
金髪「突然変異ってヤツなんか?それでもあんな極端なヤツにはならへんやろ。『バグキャラ』やであんなの」
魔少女「この先……同じような特異個体が出てこないとも限りません。もし敵魔物に異常が見られれば即時撤退を。どうやら傷つければ傷つけるほど強力になるようなので、それならば交戦しなければよいだけですので」
男「了解。ギルドに戻ったらオペ姉さんに報告しとかなきゃな」
金髪「じゃ、引き続き探索といこか!さっさと火薬を見つけて脱出した方がよさそうや」
425 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/01/10(火) 21:46:33.43 ID:2+dJOTO10
投下終了です。ではまた。
426 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/10(火) 23:39:24.23 ID:9YGApZs/0
乙!
427 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/14(土) 04:44:08.04 ID:OK4R5Elwo
潜れば潜るほど火薬が減っていく負のサイクルに陥りそうだなぁ
428 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/24(火) 15:02:38.27 ID:qPcBE0Bk0
ほ
429 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/06(月) 12:57:16.39 ID:mtGOjZec0
保守
430 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/19(日) 16:05:20.30 ID:DMdt0niF0
続きまだ?
431 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/13(月) 16:26:32.90 ID:AoJkvaw4o
保守
432 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/14(火) 19:52:48.06 ID:tp7V0iLq0
ほ
433 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/04/08(土) 22:43:11.21 ID:7wj1Fzpxo
ほ
434 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/04/14(金) 20:53:54.41 ID:Mn0q2sEYO
楽しみにしてるSS多くてつら…苦はない
435 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/28(日) 03:21:10.45 ID:ma/6DtIxO
エタった…のか?
436 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 08:27:00.21 ID:E5+C4lEP0
お久しぶりです。1です。軽く投下していきます。
437 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/29(月) 08:46:21.68 ID:q9AH3d07O
待ってた(*゚∀゚)
438 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 09:13:25.24 ID:E5+C4lEP0
『採石保管所』
金髪「あったぁぁあ!!ココやココ!!間違いあらへん」
傷つく度に異常な成長を遂げるホブゴブリンから階層を移動することで逃れた3人は、十数分程の探索で採掘してされた火薬石が保管されているであろう大部屋を見つけた。
男「ふぅーようやく見つけたなー。この階層もゴブリンばっかで疲れたわ」
魔少女「先程の……特異なホブゴブリンのような魔物がいなかったのは幸いです。それで金髪さん、目的の火薬石というのはどれになるんですか?」
金髪「え?……これぜんぶ火薬とちゃうんか?」
魔少女「恐らく……別種の鉱石も混じっていると思いますが……まさか……」
男「……これ全部調べなきゃならないパターンかもしかして」
しかし、石にも様々な種類がある為どれが目的の火薬石かはわからない。
魔少女「わかりました……火をつけてみましょう」
男「ちょっ!?ちょっと待て!!こんな火薬の塊みたいなモンに火をつけたら大爆発すんだろ」
魔少女「百も承知です……鉱石の小さなカケラや粒状のものに火をつけます。幸い品質は低いとの事なのでそれだけで怪我するような爆発は起きないでしょう。
それと、この部屋で火をつけると空気中に舞っている火薬の粉末で粉塵爆発を起こすかもしれませんから一通りカケラを集めたら別の部屋へと移動しましょう」
金髪「いやーなんや悪いなー」ハッハッハッ
男「自分の目的の素材のことくらいしっかり調べとけ馬鹿野郎!!」
439 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 09:15:16.16 ID:E5+C4lEP0
『ただ広いだけの大部屋』
ボンッ!!
男「うぉっ!!石が軽く爆発したぞ」
魔少女「どうやらコレのようですね……黒いざらついた感じの鉱石です」
金髪「んじゃ、早速さっきの部屋に戻ってワシのパイルハンマーで粉々にして持って帰ろか!!」
男「だから爆発するって言ってんだろうがぶっ飛ばすぞこの野郎!!」
魔少女「私の水系の魔法で……高圧カッターのように切りましょう」
金髪「それ火薬湿気ったりせぇへん?」
魔少女「天日干しすれば……多分大丈夫じゃないでしょうか?本来なら、木ノミなどで削ったりするんでしょうが」
440 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 09:22:57.44 ID:E5+C4lEP0
『採石保管場』
魔少女「水……風……複合魔法『ウォーターカッター』」ズシャァァアアッ!!
男「おー切れた切れた。あとはコレをバッグに詰めれるだけ詰めればいいか」
金髪「いやー、ホンマ魔少女ちゃんいてくれて助かったわ。ワシだけやったらとんだどれが火薬かわからんで無駄足になるとこやった」
魔少女「お仕事ですから……お役に立ててよかったです」
男「よっと……結構重いな。とりあえずコレで目標達成か?」
金髪「せやな!!こんだけアレば当面弾の火薬には困らんやろ!!ついでに金になりそうな鉱石も結構取れたし、あのヤバイヤツのようなんが出る前にささっと出口探して帰ろか」
441 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 09:25:21.30 ID:E5+C4lEP0
『ォォォォォオオオオオオッ!!!!!!!』ビリビリビリッ!!!
男「ッ!?今のって……」
魔少女「まさか……魔物が階層を越えて追ってこれる訳が……」
金髪「おいおいまさかまたアイツかいな」
突如、坑道内に響き渡った雄叫びは、上の階層で3人を圧倒していたホブゴブリンをイメージさせていた。
ダンジョンにて階層を移動出来るのは、『ダンジョンの外』から来た冒険者のみ。
このダンジョンの魔物であるホブゴブリンに追ってこれるハズは無いのだ。
魔少女「こうなるのでしたら……先に出口を確保しておくべきでしたね。私のミスです」
男「なわけねーだろ。どっちにしたってあの雄叫びがヤツならどっかでカチ合うんだからな」
金髪「せやせや。それに、この階層でならもしかしたらアイツを倒せるかもしれへんで?」チラッ
金髪は、ふと目を部屋全体に向ける。
そこには、先程の入手した火薬石の岩が、至るところに配置されていることが確認出来た。
魔少女「確かに……多少リスクはありますが、ココなら……コレを使えば倒せるかもしれません」
442 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 10:18:52.21 ID:E5+C4lEP0
…………
ホブゴブリン改『ニィンゲン……』
上の階層で死闘を繰り広げたホブゴブリンが、先程まで男達がいた採石保管場へと足を踏み入れる。
本来、そのダンジョンに生息する魔物は階層を跨ぐ事は出来ない。ここにこの魔物が降りてきた事自体が異例、異常なのだ。
しかし、ここはダンジョン。何が起きても行うべきは生きて地上へと戻る事。
どんな魔物が現れようとも、それが出来ればいいのだ。
例えどんな手段を用いても。
男「今だ魔少女!!」
魔少女「『ファイヤーボール』」カッ!!
そして魔少女が部屋の外から火球を撃ち込んだ瞬間、部屋の火薬岩に引火し、部屋は轟音とともに爆炎に包まれた。
443 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 10:19:41.55 ID:E5+C4lEP0
パラパラッ……
魔少女「作戦成功ですね……火薬岩に粉塵爆発も合わせて大爆発です」
金髪「ッかー……ごっつー威力と爆音やったわー……あれ?どないしたんや男」
男「耳が……塞ぐの間に合わなかった……」キーン
男「しかし凄い爆発だったな……これなら流石のあのバケモンも木っ端微塵じゃないか?」
金髪「どれどれ……せやな。何処にも死体すら見当たらんわ」
魔少女「……ッ!?まだです!!」
部屋の中の様子を3人が伺う中、魔少女が何かに気付く。
爆発によって粉々になったハズのホブゴブリンの禍々しい気配を感じ取ったのだ。
そしてその瞬間、部屋中に散らばっていたホブゴブリンの肉片が一点に集まっていくのを確認する。
444 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 10:53:16.48 ID:E5+C4lEP0
男「な……マジかよ!!まだ終わらないのか!?ホントどうやったら倒せるんだアイツ!!」
金髪「こうなったら逃げるが勝ちや!!流石にダンジョンの外までは追ってこられへんやろ!!」
魔少女「そうですね……目的のモノは手に入れました。後はダンジョン協会などに報告して任せましょう。行きますよ先輩」
男「あぁ、わかってる。だけど出口はまだ俺ら見つけてねえぞ?」
魔少女「この部屋にたどり着くまでに……おおよそのマッピングは済ませてあります。恐らくですが出口の見当はつきました。急ぎましょう」
ホブゴブリン極『ォォォォォオ"オ"オ"ッ!!!』
肉片は再生されると共に、ホブゴブリンを更に異形の化け物へと進化していく。上半身のみ再生された身体を見るだけで、先程までとは桁違いにレベルが上がっているのが感じられた。
男「うぉ!?もう上半身が殆ど再生しやがった!!よし、とっとと逃げるか!!」
魔少女「その前に……『ミラージュ』!!」
魔少女が魔法を発動させると、大部屋がもくもくと煙に包まれていく。
魔少女「簡易的な幻覚作用のある煙魔法です……これで少しは時間が稼げるハズ。行きましょう」
445 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 10:54:00.14 ID:E5+C4lEP0
ダッダッダッ!!
男「本当にこの方向であってんのか魔少女!?」
魔少女「恐らく……としか言えません。先に階段を見つけられていればよかったのですが」
金髪「ダメやったらダメやったらや。そんときゃ腹括ってもう一回アイツをバラバラにしたらえぇ」
男「それもそうだな。魔少女がいなけりゃもっと迷ってたんだ。逃げられるチャンスがあるだけマシか」
魔少女「広い空間に出ます……恐らくこの先に……」
男「お……おぉ!!あった!!階段があった!!」
3人が辿り着いた先には、魔少女の見事な予想通りに最下層へと続く階段があった。
しかし周囲には火薬岩のような鉱石が転がっている。
ホブゴブリン極『ォォォォォオオオッ!!!』ボゥッ!!
同時に、距離はあるものの背後から追いかけてきた強靭に進化したホブゴブリンが、手から火球を放つ。
それは魔少女が散々ホブゴブリン相手に撃ち放ったファイヤーボールであった。
それは真っ直ぐに3人へと飛んでいく。
魔少女「そんな……まさか私の魔法を学習したという事ですか?」
男「この部屋にも火薬の岩っぽいのが転がってる!!早く逃げねぇと誘爆して全員丸焦げになんぞ!!」
金髪「階段に突っ込めぇぇええ!!」
ホブゴブリンの放った火球が通路の岸壁に衝突した瞬間
ドォォォオオオオオオンッ!!!!
階段のある空間全体を含め、ダンジョン内に爆炎が広がった。
446 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 10:59:29.29 ID:E5+C4lEP0
最下層
『火蜥蜴の巣』
男「痛ててて……オイ、全員無事か?」
金髪「ワシは五体満足や。魔少女ちゃんは?」
魔少女「私も大丈夫です……どうにか全員無事に降りられましたね」
男「ここまでくれば、後はダンジョンから出るだけだ。さっさと……何だコレ……」
再び階層を越えてホブゴブリンが追いかけてくる前にダンジョンから脱出しようとする3人の眼前には、異様な光景があった。
本来このダンジョンの最下層には、洞窟内の火薬岩を主食とする『火蜥蜴』達の縄張りとなっている。
ランクは5ほど。見た目や大きさは火球を吐くコモドドラゴン。ランク2のダンジョンならばボスと言える魔物である。
その火蜥蜴達が怯えるように巣として作られた広い空間の隅で縮こまっていた。
447 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/29(月) 12:28:35.71 ID:1upb6ozpO
投下おつ
敢えて言うけど
運営がサボってたから残ってるだけで
>>1
が生存報告してないから本来は3月10日に強制html化されてるからな?
448 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 13:09:55.47 ID:E5+C4lEP0
プリースト「来たか。思ったより遅かった」
男「アンタは……カウボーイのおっさんの事務所にいた……」
金髪「誰やこの兄さん?神父さんか?」
魔少女「プリーストさん……でしたね確か。何故貴方がこんなダンジョンにいるのですか?」
巣の中心には、教会の神父の格好をした男。
カウボーイに頼まれてこのダンジョンに直接転送してきたプリーストが、聖書のような本を開き立っていた。
プリースト「少々ココで問題が起きた」
男「問題?……あ!?もしかしてあのホブゴブリンのことっすか!?倒しても倒しても倒せないヤツ!!」
プリースト「遭遇していたか。よく無事だったな」
魔少女「プリーストさん達は……あのような魔物をご存知なんでしょうか?」
プリースト「知っている。あれは『バグ』だ」スッ……
449 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 13:12:50.96 ID:E5+C4lEP0
バチバチバチバチッ!!!
ホブゴブリン極『ォォォォォオオオッ!!!!』
バチバチバチバチッ!!!
同時に、異形に進化したホブゴブリンが、ダンジョンの魔物には越えられないハズの階層の空間を破るように、最下層へと浸入してきた。
金髪「チッ!!やっぱ追ってくるんかい!!」
男「プリーストさん早くダンジョンから出ましょう!!アイツ倒しても倒しても復活して進化していくんです!!ダンジョンから出ればアイツも追っては」
プリースト「『バグ』はこの外にも出る。今までも何度も出現した」
魔少女「な……ダンジョンの外に魔物が?」
プリースト「退がれ。死ぬぞ」ビリッ!!
フワッ……
プリーストは、手に持った聖書のような本から2枚のページを破り、その2枚の紙片はプリーストの側で浮いている。
魔少女「あれは……魔道書?いえ、ならばページを破る意味が……あれは一体」
プリースト「…………」スッ……
そのままプリーストは、両腰にある鞘に収まった剣の柄に触れながら目を瞑る。
450 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 13:17:42.49 ID:E5+C4lEP0
バチバチバチバチッ!!!!
ホブゴブリン極『ォォォォォオオオッ!!!』
バチバチバチバチッ!!!!
ズゥゥウウンッ!!!
ホブゴブリンは空間を完全に越え、最下層の地を踏みしめる。
見た目は既にホブゴブリンとは冗談でも言えない。背丈2メートルを優に超える鬼だ。
そして、目を瞑り静かに佇むプリーストへと突進し、鋭い爪を振りかざす。
プリースト「『主よ。私を許したまえ。貴方の造りし戒めを破るこの私を』」
そして瞬きほどの瞬間
鬼の四肢は胴体から切り離された。
451 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 13:21:20.53 ID:E5+C4lEP0
男「……え?」
まさに一瞬だった。
いつ両腰の剣を鞘から抜いたのかもわからないほどに。
プリースト「『ゴルゴダの丘』」ブゥンッ……
ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!!
そして切り離された四肢と胴体へと向かって、何十もの剣が突き刺さる。
3人に一瞬だけ見えたのは、破られた聖書らしき本の紙片が一枚、青い炎を上げて燃え、同時にプリーストの両手から何十もの魔法陣のようなものが形成されたこと。
恐らくはそこから放たれた剣だろう。鬼の胴体と四肢は、そのまま巣の壁面へと剣で突き刺さる。
それはまさに十字架に剣で磔にされているかのようであった。
452 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 13:24:54.53 ID:E5+C4lEP0
男「……一瞬で……」
金髪「な……何やねん今の……」
魔少女「今のは……あの紙片を触媒に魔術を?……次元が……違いすぎますね……」
3人は、ただただ呆然としていた。自分達があれほど逃げ回っていたホブゴブリンに対し、この最下層に降り立ってから僅か5秒も経たない内に完全に無力化してしまったのだ。
男と魔少女は、プリーストがあのカウボーイと同じレベルの存在である事は予想していたが、あの滝のダンジョンで見たカウボーイよりも遥かに衝撃的であった。
まぁカウボーイが本気を出したわけでもないのでどちらが上など検討もつかないが。
ホブゴブリン『ォ……ォオオ……』グググッ……
男「ッ!?プリーストさん!!まだです!!アイツはまだ再生します!!」
バラバラにされ、磔にされたホブゴブリンが生きているのを確認し、男が叫ぶ。
そもそも火薬岩の爆発で粉々になっても再生したのだ。四肢を斬られ磔にされた程度ではまだ再生できるだろう。
ボゥッ!!
魔少女「また……あの紙片が燃えて」
プリースト「『グランドクルス』」スッ、スッ……
カッ!!!
2枚目の紙片が燃え、同時にプリーストが指先で軽く十字を切ると、十字架のように磔にされたホブゴブリンの前に光の十字が現れ、そこから強烈な光が発せられる。
453 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 13:26:50.34 ID:E5+C4lEP0
男「グッ!?…………ッ!?消えた……」
光が消えた後3人が見たものは、ホブゴブリンが磔にされていた壁が十字架のように抉り取られた光景であった。
ホブゴブリンや刺さっていた剣は跡形も無く消えている。
プリースト「終わりだ。俺は帰るぞ」スッ
男「ちょ!?ちょっと待ってください!!あの化け物は結局何だったんですか!?」
魔少女「貴方の持っている本は……魔道書なのですか?それともまた別の」
プリースト「アレについてはカウボーイに聞け。この本はただの聖書だ。膨大な魔力と祝福を込めて書き記された」ブゥンッ!!
そう言い残し、プリーストは何らかの方法を用いて何処かへと転送された。
454 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 13:35:31.90 ID:E5+C4lEP0
男「ちょっと!!……行っちまった。仕事人だなあの人」
魔少女「魔力と祝福を込めて書かれた聖書……とするとあの本自体……いえ、記述された文章自体に魔法の術式と発動の為の魔力が……」ブツブツ……
金髪「おーい魔少女ちゃんがトリップしとんのやけど」
男「あー昔から深く考えるとこうなるんだ。こんまま抱えて持って帰ろう」ヒョイッ
魔少女「そもそも文字に魔力を宿すとは一体……インクや紙自体に何か特殊な素材が使われているのか……そもそもたった一枚の紙片であれほどの大魔法を発動されるとは……」ブツブツ……
金髪「扱い慣れとるなー……うし!周りにおる火蜥蜴達が襲ってくる前に、さっさとダンジョンから脱出しよか!!」
『仁市第二運動公園ダンジョン 』をクリアした。
クエスト『協力者求む。ダンジョン探索に同行してくれる方募集』をクリアした。
455 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 13:36:59.86 ID:E5+C4lEP0
18:20
仁市 駅前
金髪「うっし!!アイテムの換金も終わったし火薬岩から火薬の生成も注文したし、今日の探索は大成功やったな!!2人ともお疲れさん!!」
男「いやー疲れた疲れた。ギルドの依頼ってのは大変なんだなー」
魔少女「今回は……プリーストさんいわく『バグ』と言う魔物までいましたからね。アレは一体何だったのか」
金髪「まぁあのバケモンも神父さんが倒してくれたんやし、今は探索成功を祝っとこうや!!どや?どっか適当なファミレスでメシでも」
男「おーいいねー!!ついでに報酬の山分けもそこでやろうぜ」
魔少女「…………」
倒しても倒しても再生し、更に強靭に進化して何処までも追いかけてくる魔物『バグ』。あの存在は明らかに異常であった。
魔少女「アレは……自然に発生する魔物なのでしょうか?もしかして人為的な何かが……」
男「おーい魔少女!早く行こうぜー」
魔少女「……今は情報も少ないですし、考えても仕方ないですね……」
456 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 13:45:39.39 ID:E5+C4lEP0
9日目成果
報酬
100ゴールド
ダンジョン内で稼いだ金品50%→190ゴールド
を獲得した。
金髪に探索協力を頼むことが出来るようになった。
所持金55ゴールド→345ゴールド→交通費食費諸々で330ゴールド
オートマタ引き取り代金 残り670ゴールド
457 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2017/05/29(月) 13:47:02.90 ID:E5+C4lEP0
投下終了です。
>>447
色々忙しくて申し訳ないです。
ではまた。
458 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/05/29(月) 21:43:44.16 ID:DN8/63wCo
乙
459 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/01(木) 02:26:04.59 ID:9LE97Oyjo
おつ
460 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/04(日) 20:20:37.55 ID://eJjTOpo
こんなのが出るんじゃダンジョンの危険度認定や保険が面倒な事になるな
461 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/17(月) 15:20:30.18 ID:QjUK7jFHo
続きが気になる乙
462 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/24(月) 17:54:22.44 ID:oRX5QDTS0
はよ
463 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/22(火) 01:40:54.64 ID:GXf/dzFoo
ずっと待ってるんだから投稿してくれー
464 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/22(日) 02:37:14.21 ID:+nAWzY/BO
まだかよー!
465 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/21(土) 11:33:00.57 ID:xpbsA1+00
ほ
466 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/13(水) 10:31:53.02 ID:Jz4IaFsW0
【最悪のSS作者】ゴンベッサこと先原直樹、ついに謝罪
http://i.imgur.com/Kx4KYDR.jpg
あの痛いSSコピペ「で、無視...と。」の作者。
2013年、人気ss「涼宮ハルヒの微笑」の作者を詐称し、
売名を目論むも炎上。一言の謝罪もない、そのあまりに身勝手なナルシズムに
パー速、2chにヲチを立てられるにいたる。
以来、ヲチに逆恨みを起こし、2018年に至るまでの5年間、ヲチスレを毎日監視。
自分はヲチスレで自演などしていない、別人だ、などとしつこく粘着を続けてきたが、
その過程でヲチに顔写真を押さえられ、自演も暴かれ続け、晒し者にされた挙句、
とうとう謝罪に追い込まれた→
http://www65.atwiki.jp/utagyaku/
2011年に女子大生を手錠で監禁する事件を引き起こし、
警察により逮捕されていたことが判明している。
467 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 20:42:05.50 ID:LAlp/wM/0
お久しぶりです、1です。
ふと思いついたので投下していきます。
468 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 20:44:58.23 ID:LAlp/wM/0
ダンジョン生活10日目
7:30
男「うー……ダンジョン探索の次の日は、毎回身体がダルいなー……魔力たくさん使ったり身体酷使するからしょうがないんだろうけど」グデー
母「ほらリビングのテーブルでグデってんじゃないわよーご飯食べたらのいたのいた」ゲシッ!!
男「いって、それがダンジョンで死闘を繰り広げた息子に対する態度かテメェ」
母「ランク2くらいで死闘繰り広げるんじゃまだまだよのーホッホッホ☆」
男「うぜぇー……そいやアンタもダンジョン行ってたんだよな。ランクはどんくらいなんだ?」
母「んー72くらいだったかなー☆」
男「あーはいはい。俺がそんだけ凄い探索者の息子なら今頃お城みたいな豪邸でバスローブ着てブランデー片手に佇んでるわ」
母「アンタそんな願望あったの?引くわー」ウワー
男「生活費までギャンブルに突っ込もうとするテメェに言われたくねぇよ!!」
母「お母様に向かってテメェとは何かな?ん?」グググッ!!
男「イテテテテテ!!極まってる!!コブラ極まってるから!!」バンッ!バンッ!!
469 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 20:47:27.59 ID:LAlp/wM/0
10:30
魔少女の部屋
魔少女「今日は……【RPG】のギルドに行こうと思います」
男「あー、そいや依頼の報告もまだだしな」
魔少女「いえ……それは昨日の内に公式ネットサイト内のメールで済ませておきました。金髪さんにもギルドに依頼完了報告をしてもらってます」
男「え?メールで出来たの?」
魔少女「今の時代……何でもネットで済ませられるのです。今日は次の依頼の確認と、昨日の『バグ』とやらについてカウボーイさん達にお話を伺おうかと」
男「あぁ、プリーストさんが言ってたな。何か知ってるみたいだし」
魔少女「と言うわけで……少しここで魔力操作の特訓をしてからお昼を食べてから向かいましょう」
男「へいよー」
470 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 20:49:49.83 ID:LAlp/wM/0
13:30
ダンジョン『株式会社【RPG】』
ギルドエリア端 寂れた事務所
カウボーイ「結論からいうと、アレは昔から『バグ』と呼ばれている魔物だね。いや、『バグ』に憑かれた魔物かな?」
魔少女「『バグ』に憑かれた?……アレはそういった魔物の種類という訳ではないのですか?」
カウボーイ「例えばね?ダンジョンを1つのシステムと考えてみてよ。ダンジョンに溢れる魔力によってそのダンジョンの世界や生態系、アイテムとかが生まれてる訳なんだよね?これによって1つの大小様々な世界が生まれてるわけなのよ」
男「ふむふむ」
カウボーイ「その過程で時々魔力の循環不良だか過剰供給やらでダンジョンのシステムに不備が出るわけよ。それがそのダンジョンランクに釣り合わない強い弱い魔物や、アイテムのレア度が高いものを拾う事がある理由だね。
だけど基本的にはその不備すらシステムに上手く組み込まれているわけ」
魔少女「そこまではわかります……ダンジョンに溢れる魔力は一体何処から来ているのかやアイテムが生成される過程など、未だ解明されていないこともありますが」
471 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 20:51:37.12 ID:LAlp/wM/0
カウボーイ「まぁ地脈エネルギーの具現化だとか地球外生命体のオーパーツだとか異次元干渉とか諸説あるけどどれも眉唾モノだよねー……的を得てるのもあるけど」ボソッ
男「え?」
カウボーイ「いやまぁそれはおいといてー。ようは『バグ』ってのはそのシステムの不備がとんでもないレベルで起きた状態ってところかな。
それによってとんでもない強さや性質の魔物やアイテムが生まれる事もあって、それが今回君たちの遭遇した魔物ということ」
魔少女「なるほど……非常に強力な魔物が生まれる危険と共に、非常に強力なアイテムが生まれる可能性があるんですね」
男「でもあんなバケモンがいるなんて聞いたことないぞ?倒しても倒してもより強くなって復活するなんてよ」
カウボーイ「そりゃあそうさ。『バグ』の存在、特に魔物のバグの存在はダンジョン協会によって、キツーく情報が封じられているからねー。
昔は世界中で年に数回レベルだったけど最近は発生件数が急増してるから大変そうだけど。
もしかしたら、近いうちに君達のところにも協会の人間が来るかもね」
472 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 20:55:46.43 ID:LAlp/wM/0
魔少女「余計な混乱を……避ける為にですか?」
カウボーイ「そーいうこと。大体あのレベルのバグに遭遇することなんざ宝くじ2等くらいの確率だからね。君達オートマタの件と言い凄い運だねー」
男「今回は運が悪い方に振り切れてるけどな。というかあのレベル?バグにも種類があるのか?」
カウボーイ「あるよーいっぱいねー。魔物にもアイテムにも、バグにはその性質毎に分類されてる。全部で22種類。タロットカードの大アルカナで例えられてるよ」
魔少女「タロット……ですか?」
カウボーイ「そ。ジ○ジョとかハウスオブ◯デッドとかで有名でしょ?『世界』とか『星』とかさ」
男「アレって占いだろ?」
カウボーイ「そのとーり。でもこの世界の様々な事象はこの22種類のアルカナで表せられるっていうからねー。
ちなみに君達が戦ったのは『審判』の性質を持つバグかな。再生・復活・変化を司る上位クラスのタチの悪ささ」
魔少女「もしかして……元々の魔物の強さにそのアルカナの性質が加わるんですか?だとしたら元々強い魔物にそんな性質が加われば……」
カウボーイ「そーだねー。仮にランク60くらいの魔物一体に『審判』のバグが発生したとしようか?」
カウボーイ「その時は中堅国家レベルの武力でようやく対等ってところかな」
男「……マジ?」
カウボーイ「結構マジ。ちなみにもっとヤバイ『バグ』は何種類かあるからね?そしてさっきも言ったけど発生頻度は急増している。バグアイテムの恩恵も凄くなるけどその辺気をつけて今度からダンジョンに潜ってねー」
473 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 21:02:02.47 ID:LAlp/wM/0
東京 新宿
ダンジョン『無限城』
ランク『60』(日本第三位)
総面積18.23?の現実の新宿を元にした様な空間固定型のダンジョン。
永遠に明けない夜の空に建ち並ぶ塔のような城のような高層ビル群の数は現実の十数倍の数になり、そのビル1つ1つが難関ダンジョンといってもおかしくない程の構造となっている。それ故、探索範囲は縦にも広く、総探索面積は世界でも100位内に入る。
そして現実で建物が1つ増える毎にダンジョン内でも新たな建物が生まれ、無限に増えていく事から『無限城』と名付けられた。
474 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 21:06:19.06 ID:LAlp/wM/0
15:00
『無限城』
歌舞伎町エリア『不夜城』最上階
兄「いやー、やっぱ強ぇーなーこのダンジョンの敵は。流石に疲れた」フゥッ
一息ついたように座り込む剣士の足元には、3m程の大きさの金剛力士像のような石像の魔物が横たわっている。
ランクは50後半。文句無しに伝説級の魔物だ。
魔術師「ねーねー、どうしてボク達こんなダンジョンにいるのかな?なんでわざわざジャパンまできてこんなシンドイダンジョンに潜ってるのカナ!?」イライラ
地上でいう歌舞伎町エリアにそびえ立つ十数棟程の高層ビル。それらを1つの城と見たて、眠らない街・歌舞伎町にちなみ『不夜城』と名付けられている。
ジーパンにスニーカーに灰色パーカーとその辺のコンビニにでも行くような格好をした剣士と、赤毛の目立つ異国の魔術師の少女はその最上階にいた。
兄「まぁそういうなよ。久しぶりの実家帰りなんだ。軽くお土産代くらいは稼いどかないと」
魔術師「ここランク60超えのダンジョンだよ!?そのモンスター1体倒すだけでどれくらいお金入ると思ってんの?もう小さな都市の年度予算くらい分は、ここに来るまでに倒してきたんだケド!!」
兄「まぁまぁ、折角ここまできたんだ。せめて目の前のアイツを倒してから地上に戻ろうぜ」スッ……
剣士はゆっくりと立ち上がり、手に持った剣を担いで前を見る。
鎧武者『…………』チャキッ……
475 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 21:11:21.81 ID:LAlp/wM/0
そこには何百本もの武器がそこら中に突き刺さっており、圧倒的な威圧感を出しながら、これまた伝説級と思われる日本刀を構えた鎧武者の姿があった。
恐らくこのエリアのボスだろう。漂うオーラがこれまでに倒してきた魔物と違う。
魔術師「うわー……あの刀あれだよ絶対凄いお宝だよートレジャーブックでみたよー多分国宝級なんてもんじゃないよー」
兄「お、マジか。売ったら空港で高そうなお土産買って帰れるかな?」
魔術師「そうだネー空港で飛行機くらいなら2〜3機買えるんじゃないカナー」アハハー
兄「いや飛行機は持って帰れねーだろ」ハハハッ
魔術師「それくらい凄い刀ってことダヨ!!ほら来るよ!!」
魔術師の注意とほぼ同時に、武者が手に持った刀を横一文字に振るう。
ただそれだけの事であった。
…………ィ……ン…………
魔術師「ッ!?空間ごと斬れテル!!伏せて!!」バッ!!
兄「おっと」バッ!!
斬ッ!!!!!!
鎧武者「…………」
2人がその場に伏せた一瞬後に、周囲の何もかもが横一文字に斬れた。
文字通り何もかも。
2人が伏せなければ2人共真っ二つになっていただろう。
476 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 21:16:26.21 ID:LAlp/wM/0
兄「危ねぇ危ねえ。流石超絶チート特性持ちの空間の申し子、目に見えない空間の断裂もわかるんだなー」
魔術師「一瞬空間に干渉する音が聞こえたからネ!!ほら、アレが目に見えるように魔法をかけるよ!!あと君にチートだなんテ言われたくナイ」
あらゆる物質には硬度がある。
しかし、それが存在する空間自体を斬ってしまえば硬度など関係ない。文字通り斬れぬものの無い技である。
本来、その空間の断裂を目に見ることは不可能だが、この赤毛の魔術師。
自身の持つ特性を抜きにしても、空間を操る魔術に関しては恐らく、最高難度のダンジョンの魔物などを合わせても、この世で5本の指に入るだろう。
もちろん人間ではぶっちぎりのトップである。
兄「うっし、これで攻撃は見える。あとはどの剣にするか……空間系ならやっぱコレかなー」ブゥンッ……
剣士は手元に小さな魔法陣を作り出し、持っていた剣を納め、新たな剣……いや、刀を取り出した。
兄「タラララッタラーーー!『次元とおー』」
そして、某青いロボットの真似をしながら刀を構える。
兄「コレを使えば空間を斬ることが出来るんだーー。……コレで武器の条件は互角だな」スッ……
477 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 21:20:08.96 ID:LAlp/wM/0
魔術師「『フィジカル・アルティマキシマム』!!」
魔術師が、剣士に最高クラスの身体強化魔法を使う。コレも世界に使える者は20人いるかいないかと言われる魔法である。
魔術師「あとは君の仕事ダヨ!!とっとと終わらせてスシ食べに行くんだから!!」
兄「わかってるって!最高に美味い寿司を奢ってやるからさ」ブンッ!!
鎧武者『』ブンッ!!
剣士が刀を振った瞬間、何十もの空間の斬撃が放たれ、武者が刀を横一文字に薙いだ瞬間、一筋の空間の斬撃が放たれる。
ギィィィイイイインッ!!!!!
衝突した斬撃は互いに打ち消しあい、凄まじい衝撃波と共に消滅した。
魔術師「ワオッ!?たった一撃でこっちの攻撃全部かき消されたヨ!!」
兄「ま、簡単にはいかないみたいだけどな」
478 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 21:21:52.88 ID:LAlp/wM/0
同時刻
ダンジョン『株式会社【RPG】』
公園エリア 第12運動公園
男「はぁー、ただでさえ金策に追われてんのにあんな話聞かされたら怖くてダンジョン潜れねぇよ」
魔少女「確かに……バグは脅威ですが、遭遇する確率はとても低くそこまで気にしなくてもいいのでは?何しろ宝クジ2等レベルだそうですから」
1つの都市丸々ダンジョンの中に持ち込んだようなココでは大きな公園などもある。
自給自足出来るように農業用に作られた、このダンジョンと繋がっている別のダンジョンもある。
万が一地上で何かあっても、100万程の人間が避難生活を無理なく過ごす事が出来るくらいだ。
実際過去に起きた大災害での避難民がここに辿り着き、その何割かはそのままこのダンジョン内で職につき生活している程だ。
まぁそれはともかく、2人はバグの話に不安を抱きながらも残り700ゴールド程のオートマタ引き取り代金をどう工面するか考える。
479 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 21:23:32.49 ID:LAlp/wM/0
男「あと一週間あるんだから地道に地元のランク1ダンジョンで稼いでいけばいいんじゃねぇか?」
魔少女「それでは……私や先輩の成長には繋がりません。普通のアルバイトをやっていた方がよっぽど健全です」
男「手段はこの際何でもいいだろー。まずはあのオートマタを引き取る。そんで問題なく動くようだったら3人で。何だったら金髪も誘って4人でガンガンダンジョンで経験を積む。それでいいんじゃね?」
魔少女「んー……確かに無理をして怪我するよりそっちの方が確実ですが……面白いですか?それ」
男「あ、ホントだ。全ッ然面白くねーや。やっぱりランク2のダンジョンにするか」
魔少女「ダンジョン協会で……ランク更新の試験をするというのもアリです。ただ今の先輩の実力だとランク3でもギリギリかと」
男「え?俺そんなに弱そう?」
魔少女「弱いというか……まだまだダンジョン探索に慣れていないのでしょう。魔力の使い方といい危険察知力といい危なっかしいです」
男「へーへーそりゃどーも。……しっかしアレだな。この東京にはランク60超えのダンジョンとかもあるんだろ?」
魔少女「はい……新宿の『無限城』ですね」
男「一体どんな人がそんなダンジョンに入れるんだろうな」
魔少女「それはもう……天才なんて言葉では言い表せないくらいケタ違いの探索者ですよ。最も世界中でも3ケタいるかどうかですが」
480 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 21:31:46.45 ID:LAlp/wM/0
無限城
歌舞伎町エリア『不夜城』最上階
兄「おりゃりゃりゃりゃぁぁあああ!!!」
ギンッ!ギンッ!!ギィンッ!!!
戦闘開始から10分ほど。
剣士と武者は互いに傷1つ付かないまま、互角の戦いを繰り広げていた。
周囲は互いに放つ空間の斬撃によりメチャクチャに。というか、不夜城の外壁や天井が斬り崩され、空に浮かぶ満月が最上階の2人の戦いを照らしている。
魔術師「オーイ相棒ー。そろそろボクの助けがいるんじゃナイ?」
兄「バカ言ってんじゃねーよ、まだまだこれから……アブね!!」バッ!!
壮絶な斬り合いの中、剣士は笑みを浮かべながら武者の攻撃を避ける。
魔術師「ほらー危ないジャン!せめてアレを使わないと普通に死んじゃうヨー」
兄「あー確かに同じような武器1本で勝てる相手じゃねーな。しゃーない……」スッ……
剣士は空間を斬り裂く次元刀を、出した時と同じように魔法陣に納める。
鎧武者『……』
兄「鎧武者さんよー。アンタめちゃくちゃ強いからさー……ちょっと本気でいくわ」ブゥンッ!!
その直後、剣士の周囲にいくつもの小さな魔法陣が現れる。
その数12。
481 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 21:36:07.59 ID:LAlp/wM/0
魔術師「出たネー、アホみたいなチート特性。いや、特性はチートではないカ」
兄「『十二人の英雄(ゾディアック)』」ガシッ!!
ブンッ!!!
その魔法陣の内の1つから一本のロングソードを取り出し、引き抜きながら武者へと剣を振るう。
武者『ッ!?』カッ!!
ドォォォォォォォォォオオオンッ!!!!!
次の瞬間、爆炎が武者の目の前で生まれ、そのまま武者を吹き飛ばした。
兄「『炎龍の剣』……ランク50の魔物、炎龍を武器召喚した剣だ。斬れ味もスゲーけど能力がもっとスゲーんだよ。どこでも爆発させられるって感じのヤツ」ブンッ!!
再び剣を振ると小さな爆発が剣士の側で起こる。
魔術師「『十二人の英雄』……まぁ言ってしまえば、単なる事前に登録した武器の転送魔法陣での出し入れなんだけどネ。桁違いに反則なのは、それで魔物の武器召喚も出し入れ自由っていうのと……」
兄「まぁ流石にこれ1本じゃ勝てないだろうからさー」ズズズズッ……
そして、他の12の小さな魔法陣からも剣が出てくる。
それらは、今剣士が持っている『炎龍の剣』と全く造形が同じなロングソード。
それが12本。
武者『……』スッ……
兄「だからコレ12本同時に使わせてもらうわ。これならさっきみたいにやられっぱなしにはならねーだろ」
魔術師「魔法陣の数と同じ12本までなら同時に出し入れ可能。自由自在に武器の同時操作も可能。更に登録したのと全く同じ武器の複製も12本まで可能ってネ。反則能力にも程があるヨ」ハァッ……
ゆっくりと立ち上がる武者に、魔術師は憐れみの視線を送る。
相手が悪かったネ。と。
その瞬間、ダンジョン無限城の空を爆炎が覆いつくした。
482 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 21:39:13.47 ID:LAlp/wM/0
…………
兄「ふぃー、やっぱ魔法使うと疲れるなー」
魔術師「カツカレー。やっぱ君が使うとチートだネ。特性『クローン』」
クローン。
自身が発した魔法を複製させる特性。
ただそれだけの特性。
兄「チート言うなよ、アレは努力の賜物ですー」
魔術師「まぁ、単純に言えば1つの転送魔法陣を12個に複製させたダケだもんネ。その機能とその機能込みでの複製数がチートなだけデ」
兄「お前みたいに色んな魔法が使えるわけじゃないからな。1つを極めるしかないんだよ」
魔術師「ボクだって頑張って覚えたんだヨ!!ほら、早くアイテム拾ってスシ食べよ!!」
兄「はいはい。あの刀はどこかなっと……お?」
爆炎による煙が晴れようとしている中、剣士が武者からの戦利品を探していると、煙の向こうに蠢く影を見つける。
兄「げ……もしかして『バグ』持ち?」
魔術師「えーーー!?ウソでしょー!?」
煙が晴れると、そこには片膝をつき、腰の鞘に刀を納めた鎧武者の姿があった。
鎧武者から発せられる禍々しいオーラは、更に強烈なモノになっている。バグによるパワーアップだ。
483 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 21:42:33.83 ID:LAlp/wM/0
バグ・鎧武者『……強……き……者よ……』
魔術師「喋っタ!?やっぱりバグだヨ!!えっと性質は……正位置の『正義』!!」
魔術師が指を輪っかにして鎧武者を覗くと、バグとして付与された性質を剣士に伝える。
『スキャン』と呼ばれるそれなりに難易度の高い中級魔法で対象の能力を視認する魔法なのだが、魔術師クラスの実力者となると指の輪っかから覗くだけで使用出来る。
兄「正義ってーと、確か公正・公平とかだっけか?あ、やべーなコレ」
正義・鎧武者『今……一……度……』ブゥンッ……
『正義』
タロットにおいて、公正・公平、均衡を司るカード。
バグを付与されたダンジョン魔物においてその性質は
兄「うわー出たー!!俺の『十二人の英雄』パクりやがったよ!!」
魔術師「一撃でも凄かっタ空間の断裂をプラス12本ノ刀で撃つとか……ちょっと冗談キツイヨー」
自分を倒した相手の技を完全にコピーする。
正義・鎧武者『今……一度……我が魂の一刀を!!!』チャキッ!!
剣士が先ほど使用した12の転送魔法陣がそっくりそのまま鎧武者の背後に描かれる。
それぞれの魔法陣からは鎧武者の持つ空間を斬ることの出来る刀が現れ、同時に鎧武者は腰の刀に手を添える。
どうやら剣士が構えるのを待っているようだ。
1対1の、全ての力を込めた決闘を行う為に。
484 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 21:45:49.29 ID:LAlp/wM/0
魔術師「……どうスルー?ボクが代わろッか?」
兄「いや、アイツは俺を御指名だ。真っ向勝負で逃げたら男じゃねーだろ」ブゥンッ!!
剣士は武器を1番最初に使っていた次元刀と呼ばれる刀に変える。
そして、鎧武者と同じように腰に構えた。
兄「魔術師、合図頼む」
魔術師「ハイハイー。……スシが待ってるんだかラ、負けちゃダメだよ」ピィンッ!!
どこからか硬貨を取り出した魔術師が、指でその硬貨を宙に弾く。
兄「わかってるっての」
そして、硬貨が地に着いた瞬間
正義・鎧武者『いざッ!!!!!!』キィンッ!!!
鎧武者の全てを断ち斬る空間の斬撃が、転送魔法陣と合わせて13発、逃げ場の無いように放たれた。
一撃でも剣士の放った複数の斬撃を押し退ける程の渾身の斬撃。
バグによって更に強化し、それを13発同時に放たれ、既に勝敗は目に見えていた。
兄「悪ぃ、武者さん。13発じゃちょっと足りねーと思うわ」
剣士が集中し、ゆっくりと刀を抜く。
兄「『無限刃』」ブンッ
485 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 21:49:13.93 ID:LAlp/wM/0
正義・鎧武者『……見事也……』サラァッ…………
剣士が斬撃を放ったと同時に、鎧武者の姿は粉々に刻まれていた。
兄「残った魔力分、ぶち込んでやったんだ。満足しただろ?」チャキッ
剣士は刀を鞘に納め、魔力を使い切ったかの様に思いっきり息を吐き出した。
魔術師「おつかれサマー。何発撃ったの?」
魔術師が、魔法で濡らして冷やしたタオルを剣士へと手渡す。
兄「えーっと元の斬撃が5発で、そっから12かけて、更に12かけて、もひとつ12かけて、念のために12かけて、ダメ押しで12かけて……10万くらい?」フキフキ
魔術師「ウン、124万4160発だネ。最後の1回は増やサ無くても余裕だっタだろう二」
単純な話だ。
自身の発する魔術を複製する特性、『クローン』。
それで、増やした斬撃を更に更に更に増やしたのだ。
そして文字通り無数とも見れる空間の刃を受け、鎧武者は粉々に霧散した。
ただそれだけの事。
倍々ゲームに増えていく膨大な消費魔力と、発動させるタイミングと針に糸を通すどころではない魔力コントロールを斬撃全てに行き渡らせる事を除けば実に単純な話だ。
486 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 21:51:53.05 ID:LAlp/wM/0
兄「バーカ、相手の文字通り最後の一撃なんだ。コッチも全力でやらねぇと殺されるっての」チョンチョンッ
そう言って剣士は自身の右肩を指差す。
そこは血で真っ赤に染まっていた。
百万の刃でも、鎧武者の斬撃を完全にはかき消し切れていなかったのだ。
魔術師「OH……チョー痛そー……後で完璧に治してあげるヨ」
兄「いや、血ぃ止めるだけでいいや。こういうのは戒めとして残しとかねぇと。このパーカーはもう着れねぇな」ヌギヌギ
剣士が、着ていた灰色のパーカーを脱ぐと、そこには身体中傷だらけの姿が現れた。
全て、強敵と戦い受けた傷だ。
その気になれば魔術師がいつでも綺麗サッパリ治す事ができるが、あえて痕を残すのは傷を負った自分の弱さをいつでも確認する為だろうか。
兄「さてと、鎧武者さんの刀と……お、魔石GET。ボス級でしかもバグ持ちの魔石なんてツイてるなー」
魔術師「きっとカレーも満足したんダヨ。で、それどうするノ?売るの?」
兄「まさか。この刀にそのまま魔石ぶち込んで強化してやろうぜ。持ち主のなんだから相性抜群だろ」
魔術師「はぁ……加工代でこのダンジョンの稼ぎ殆ど持ってかれそうだネ」
兄「それでも土産の茶菓子代と寿司代くらいは残るだろ。ほら、行こうぜ」
魔術師「ワーイ!スーシ!スーシッ!!」
487 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 21:58:18.85 ID:LAlp/wM/0
20:00
剣士と魔術師はダンジョンを脱出した。
戦利品を換金して1100万ゴールドを手に入れた。
鎧武者のドロップ武器『空切丸』を手に入れた。
鎧武者の心を手に入れた。
空切丸に鎧武者の心を取り付け加工を依頼した。
最高級加工屋の偉い人「あの……当店はこの国随一の加工店の看板を掲げさせておりますが……こ、これ程のクラスの武具に更に貴重な魔石を加工するとなると時間はともかく加工費用としてもかなりのものになりますが……」
兄「そこをなんとか」
加工屋の偉い人の顔が青ざめた。
加工代として1500万ゴールド支払った。
魔術師「ちょっと!!!ものっスゴイマイナスになってルじゃんか!!!」
兄「アッハッハッハッ!!やべーどうしよう」
魔術師「ウゥ……今月も赤字ネ。私のフトコロスッカラカンだヨ……」
魔術師は魔法のカードで残りを支払った。
剣士と魔術師は回る方の寿司屋でたらふく寿司を食べた。
魔術師はかなり満足した。
剣士は60ゴールド支払った。
兄「あ、やっべ。実家までの交通費計算してなかった。今日はもう無理だな」
魔術師「何で君はソウ、ちゃんとまとまったお金を持ってないのカナ!?」
剣士と魔術師はネットカフェで一夜を過ごした。
488 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 22:01:36.87 ID:LAlp/wM/0
同時刻
男「ふぅー、新しい簡単な依頼も受けたし魔少女にこっぴどく特訓させられたし今日も疲れたなっと」
母「何かお兄ちゃんが明日帰ってくるってー」
男「兄貴が?久しぶりだなー。今どこいんの?」
母「東京のネットカフェだって」
男「……兄貴って若手トップだから結構稼いでるんじゃなかったっけ?」
母「連れの外国の子と寿司食べすぎたら交通費足りなくなったんだってー」
男「あーなるほどな。回らない方で食い過ぎたのか」
母「回る方だってー」
男「……何か夢がないなー……」ホロリ……
10日目 終了
489 :
◆A.DGm5tRfU
[saga]:2018/06/21(木) 22:03:47.60 ID:LAlp/wM/0
投下終了です。
久々投下は兄貴回でした。ではまた。次は近い内に投下しますのでー
490 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/21(木) 22:05:25.40 ID:NEfamzRBO
キターーーーー!!!
ずっと待ってた!!
乙!乙!
また待ってる!!!!
491 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/23(土) 19:01:00.84 ID:dOyGoHUA0
待ってた
乙
492 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/08(日) 12:07:15.20 ID:Hb6zd3rao
来てたのねーヤッター
493 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/10/25(木) 01:37:35.01 ID:XBl9jsKA0
保守
494 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/06(日) 20:22:43.68 ID:CxqJh+kd0
保守
495 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/07(火) 23:27:43.63 ID:GyzF4ORy0
保守
496 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/08/23(日) 13:34:38.79 ID:POwUjrKV0
保守
497 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/28(水) 20:57:13.36 ID:2/hjjhyj0
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