男「はぁ?ダンジョンに行ってこいって?」

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2 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/11(木) 20:49:51.77 ID:3CovM/k00
母「そうだ、アンタもお兄ちゃんみたいにプロを目指せばいいのよ。稼ぎもいいんだしさー」


男「聞けよ!大体、稼ぎがいい代わりに危険な仕事じゃん。俺は平和にのんびり生きていきたいの!!
大体、兄貴からの仕送りもあるのに何で金がねぇんだよ」


母「いやぁー……ちょっと闘技場で稼いでこようと思ったら……テヘッ☆」


男「このクソババァッ!!!あれ程生活費まで持って行くなって言ってんだろうがぁぁぁああッ!!!!」


母「誰がババァだコラァッ!!!まだ36歳のイケイケだろうがぁぁああッ!!!」ギリギリギリギリ!!


男「イテテテテ痛い痛い!!ギブギブギブギブ!!!」バンッ!バンッ!!
3 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/11(木) 20:53:17.67 ID:3CovM/k00
…………



母「とりあえず100ゴールドくらい稼いできてねー、いってらっしゃーい」


*1ゴールド→100円


男「クソォ……息子にコブラツイストなんざ極めやがって……イテテ……」

母「車には気をつけるのよー」

男「ダンジョンの魔物には気をつけなくていいんかい!!」


隙あらばギャンブルに勤しむ母親の愛(物理)に背中を押され、俺は家から1km程離れたところにある、市役所近くのダンジョンへと自転車で向かった。
4 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/11(木) 21:01:07.84 ID:3CovM/k00
ダンジョンとは。


100年以上前から、世界中に現れ始めた不思議な不思議な迷宮である。
ダンジョンの入口には旅の扉と呼ばれるワープ装置のようなモノがあり、それを通る事で、異空間に作られたダンジョンへと挑む事が出来る。
中は、1つの大きなフィールドであったり、建造物であったり、迷路のようになっていたりと様々で、危険度ランクによってより広く、より深い作りになっていく。
また、各地に昔から伝わる伝説の地や遺跡などに出現したダンジョンは、その特色を強く引き継いでいるモノが多い。



ダンジョンには危険度というモノが設定されており、それは旅の扉から発せられる色によって判断出来る。
危険度の高いダンジョンには、強力な魔物やタチの悪いトラップ。難解な暗号や仕掛けなどがある。

ちなみに、魔物は現在に至るまでダンジョン内でしか確認されていない。



ちなみに現在最高危険度のダンジョンに認定されているのは、70年前にエジプト『アブ・シンベル大神殿』内に出現したダンジョンである。

設定された危険度ランクは『72』



世界中から冒険家、傭兵、軍隊などが投入され、死者38万人という大勢というにはあまりにも多すぎる犠牲者を出したそうだ。
が、ダンジョンより回収されたあらゆる資源やアイテム、文献や財宝により、人類は加速的に文明の発展を遂げる事となった。
と、歴史の授業で習った。神殿ダンジョンの写真見たけど凄い荘厳というか壮大というか、とにかく凄かった。

つまり、ダンジョンとは、資源やアイテム、古代文明の宝庫なのだ。


なお、この最高難度ダンジョンを制覇した青年は、世界の影の支配者と呼ばれるほどの富と権力と武力を手に入れたとかいないとか。

その辺の事は俺みたいな一庶民にはわからない事だ。
5 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/11(木) 21:06:56.98 ID:3CovM/k00
男「あのー……すいません」

ガードマン「ん?あぁ、もしかしてダンジョンに入るの?学生さんみたいだけどいい銅の剣持ってるし、経験者?」

男「えっと……そうです。学校の授業以外では初めてですけど」

ガードマン「じゃあランク証明書見せてー。……うん、ランク2までの証明書だね。学校でダンジョンの中の事は教わってるよね?」

男「えぇまぁ。と言っても、授業用に整備されたダンジョンだったんで、ちょっと不安ですけど」

ガードマン「まぁランク1とは言え、魔物は出るからね。でも立派な銅の剣持ってるじゃない。それが使いこなせるならきっと大丈夫さ」

男「はぁ……」

ガードマン「じゃあ、入っていいよ。あ、あとコレ。『脱出の玉』。危なくなったらスグ使うんだよ?」
6 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/11(木) 21:09:08.08 ID:3CovM/k00
男「え?でもコレお金いるんじゃ」

ガードマン「初めてなんでしょ?じゃあオジサンからのプレゼントさ。アイテム一杯持ち帰りたいかもしれないけど、無茶しちゃダメだよ」

男「あ、ありがとうございます!!いってきます!!」


脱出用の魔法アイテムをガードマンのお爺さんから受け取り、俺はいよいよ、本物のダンジョンへと足を踏み入れた。


シュインッ!!



ガードマン「んー……男の子の旅立ちってのはいつ見てもいいもんだねぇ……」

少女「あのー……すいませーん」

ガードマン「あ、ダンジョンに入るの?じゃあ証明書をお願いね」
7 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/11(木) 21:16:40.43 ID:3CovM/k00
投下終了です。
現代に不思議なダンジョンがあったら的なSSになります。サラリーマンもいれば、魔法使いや戦士やガンナーなどもいる世界です。でも皆、大体現代人です。
ゴールドは、全世界共通通貨で。アイテム、武器やモンスターなどは色んなゲームや神話的なモノから取っていきます。
ではまた。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/11(木) 21:26:13.53 ID:6B8iOzZF0

期待
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/11(木) 22:16:42.35 ID:1rZQrDU7O
おもしろそう
きたい
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/12(金) 00:17:43.16 ID:oVVIMoEd0
期待
11 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/12(金) 07:48:47.54 ID:YxbxKaex0










『一(はじめ)市 市役所前ダンジョン』




出現時期 12年前

危険度ランク 1

主な魔物 スライム ラージアント








12 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/12(金) 07:50:26.93 ID:YxbxKaex0
1F 憩いの広場


シュインッ!!


男「さて……意を決して初ダンジョンへと踏み入れたところだが……まぁ1Fは大体こうらしいしな」


ワイワイガヤガヤ
イラッシャーセー


ダンジョンに入って一層目。
殆どのダンジョンは、この一層目には魔物がいないし、新しくも生まれない。
なので、ダンジョンの外で商売をする為の土地がない地元の人達や、旅の商人、露天商などが、この一層目に店を構えているのだ。
基本ダンジョンは入ったら、最下層まで行くか魔法やアイテムを使う以外は出られない。
しかし一層目には、国が各市町村に配っている脱出用の永続魔法道具が配置されている為、許可証さえ持っていれば買い物をする為だけにダンジョンを訪れる事も可能なのだ。



グー……

男「そういや昼メシ食ってなかったな……ここで食ってくか。すいませーん、たこ焼き1つ」

店主「あいよー。兄ちゃん学生かい?頑張ってこいよー」

男「どうもー。……アチッ、熱ッ」ハフハフ

「あれ……もしかして先輩?」
13 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/12(金) 08:12:56.07 ID:YxbxKaex0
男「ん?……あれ?魔少女じゃん。何でこんなところに」ハフハフ

魔少女「私は薬の材料を取りに……先輩こそどうして?」


魔少女。
俺の通っている高校の一個下の後輩であり、魔法部の新しい部長兼、『魔法薬学研究会』会長だ。


家が魔法使いの家系であり、コイツ自身も魔法使いである。ちなみに家は漢方やダンジョンで取れる素材で作る、魔法薬局を営んでおり、店がウチのすぐ前にあるので、小さいときから知ってる仲ではある。

大きく分類すれば幼馴染だろうが、そこまでの深い付き合いはない。一緒の高校に行くからという事で、それから関わる事がかなり増えた程度だ。

性格は物静か。運動音痴。インドア派。ただし魔法使いなだけあって知識欲は半端ない。
14 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/12(金) 08:24:20.33 ID:YxbxKaex0
ちなみに、薬にダンジョン内の素材をよく使う為、普通ならば高校3年で取得するダンジョン許可証を、1年の終盤には取得していたという、中々の秀才である。


男「俺はまぁ……アレだ。ちょっと極秘の仕事で」

魔少女「またママさんが……ギャンブルで負けたんですか?」

男「うっ!?」

魔少女「この間……学校の実習でランク証明書取りましたよね?それで……早速生活費を稼いでこいと追い出されたとか?」ニヤリ


ちなみに推理モノが好きなようで、昔からコナ○やら金田○やらが部屋にあるらしい。貸してと言ったら全巻まとめて渡してきやがった。置く場所ないわ。
15 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/12(金) 08:29:27.26 ID:YxbxKaex0
男「そのドヤ顔と黒い笑みを混ぜたような表情やめろ。あーあーそうだよ。あのクソババァ、ギャンブルの才能ねぇのにまた生活費に手ェ出しやがって」

魔少女「……ママさん……まだ伝えてないんですね……」ボソッ

男「ん?どうした?」

魔少女「いえ……何でもないです。それで……先輩も行くんですか?ダンジョン……」

男「あぁ、止む終えなくって感じだけどな。まぁランク1だし武器もそこそこいいの持ってるし大丈夫だろ」

魔少女「よかったら……一緒に行きませんか?」

男「へ?マジで?いやーそれなら凄い助かるわー。お前の魔法があれば、ランク1くらいの魔物くらいは余裕だろ」



実際、魔少女の魔法は中々凄い。
間違いなく、並の高校生のレベルでは無いだろう。去年はもう少しで全国大会にいけるところだったとか。

ただ……
16 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/12(金) 08:31:32.90 ID:YxbxKaex0
魔少女「いえ……じゃあその代わりに……ハイ」つボストンバック

男「へ?バックを俺に?何で?」

魔少女「荷物持ちです……それ一杯に薬草入れて帰りたいので」

男「ゲッ……まぁ、心強い味方がそれで出来るならいっか……」

魔少女「 では……出発進行で」ガッ!!「へぶっ!!」

魔少女が何も無いところで盛大に転ぶ。
そう……彼女は運動音痴。超が3つ付くレベルのだ。


魔少女「……失礼しました。……では」


男「おい……お嬢さんパンツ。スカートめくれ上がってパンツ見えてますから」


魔少女「ッ!?」バッ!!


ピンクの何かヒラヒラふわふわした可愛らしいパンツを大サービスの魔少女は、その運動音痴に似合わぬ反応速度でスカートを戻す。


ちなみに、現役高校生である俺が、JKのパンツを見てなんでこんなに冷静かだって?
こんな全開のパンツ見せられても、全く何にも思わんわ!隠されてるからいいのだパンツは。
17 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/12(金) 08:43:05.67 ID:YxbxKaex0
魔少女「……ダンジョンに入る前に……『フィジカル』!!」カッ!!

男「おぉ、身体能力を上げる魔法だっけ?」

魔少女「……フフッ……これで私の身体能力は、普段の倍」ガッ!!「へぶっ!!」


男「まぁ……0に0に何を掛けても……0なんだよなぁ」

どうしよも無い現実に、俺は魔少女から目を背ける。仕方ないんだ。それが現実なんだから。


魔少女「…………」グググッ……

俺「もういい……もう休め、魔少女……」

魔少女「……魔力……もってくださいよ……」

魔少女「4倍だぁぁぁああああ」カッ!!

男「何っ!?」

普段出さない大きな声……まぁ別に大きくはない声と共に、魔少女の身体を青白い魔力が覆っているが見えた。
18 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/12(金) 08:44:20.05 ID:YxbxKaex0
ォォォオオッ…………

魔少女「さぁ……これならそうそう転びません。……その代わり、魔力の節約の為に他の魔法が使えなくなりますが」

ォォォオオッ…………



男「それ弱体化してんじゃねぇか!!いつもどうやって採取してんだよ」

魔少女「いつもはお父さんと一緒ですので……魔物は全部お父さんが」

男「俺荷物持つだけでメリットないじゃねぇーか。まぁいーや、ホラッ、さっさと行くぞ」

魔少女「待ってください……魔力の使いすぎで、お腹が減って……」ゼェッ、ゼェッ

男「お前もう、その魔法解けよ!デメリットしかないわ!!」
19 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/12(金) 08:46:17.40 ID:YxbxKaex0

魔少女「……ほひほうははへふ(ごちそうさまです)」モグモグ

男「いいよ別に。その代わり、ヤバイ時は魔法頼むぞ」


結局、俺は魔少女にたこ焼きを奢り、消費した魔力を回復させてから、いよいよ本格的なダンジョンへと続く旅の扉の前に立った。


男「この旅の扉をくぐれば、いよいよ本番か……」

魔少女「大丈夫です……ここには大ケガするような魔物はいませんよ。……アチチッ」ハフハフ

男「それでも、端金目当てでケガしたくないからな。うし、行くか!」

魔少女「はい」


そして一歩。
俺は新たな世界に足を踏み入れた。
20 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/12(金) 08:52:20.09 ID:YxbxKaex0
投下終了です。とりあえず魔法使いをパーティーに追加で。
魔少女は、物静かだけどノリはいいみたいな優しい子です。


>>8
>>9
>>10
ありがとうございます。暇なときに見てやってください。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/12(金) 09:29:20.31 ID:5pYva6GHo
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/12(金) 10:41:36.31 ID:QKLPssrCO

ダンジョンってワクワクするよな
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/12(金) 18:35:46.04 ID:EbvurFgJ0
乙。これは楽しみ
24 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/14(日) 08:43:25.17 ID:2rToSM7B0
おはようございます。>>1です。軽く投下していきます。
>>21
>>22
>>23
ありがとうございます。引き続き暇なときにどうぞ。
25 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/14(日) 08:51:47.59 ID:2rToSM7B0
ダンジョンエリア『始まりの草原』



男「……これがダンジョンか……」

魔少女「ダンジョンの中は……魔力に満ちてますから好きです」スー、ハー


ダンジョンには様々なタイプがある。


広い開けたエリアを1つの階層とするモノ。

壁に阻まれた迷宮。

全階層が連なった、巨大な建造物を探索するモノ。

1つの都市がダンジョンと化しているモノ。



今回挑んだこのダンジョンは、広い開けた空間のタイプのようだ。

男「綺麗な草原だな……何だか旅行に来た気分だ」

見渡す限り、草原と丘の世界。
気持ちのいい風が吹き、シートを広げて弁当でも食べたい気分になる。

26 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/14(日) 08:53:52.08 ID:2rToSM7B0
男「そうだ、実習用じゃない初ダンジョンだし写メっとくか。魔少女はいいのか?」パシャッ

魔少女「私は……このダンジョンには何度も来てますから。よかったら撮りましょうか?」

男「マジで?じゃあよろしく。後でRINEで送ってくれよ」

魔少女「じゃあいきます……ハイチーズ。……あ」パシャッ

男「どうした?」

魔少女「先輩……横、気をつけた方がいいですよ」

男「え?」

携帯を持った魔少女が、男の横を指差している。その指の方を見てみると

スライム【……】プルプルッ

男「…………」

そこには膝下くらいの大きさの青い生き物。
スライムが俺の隣でジッとこっちを見ていた。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/14(日) 08:55:05.06 ID:z2s1A0PCo
壁紙みたい
28 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/14(日) 08:59:42.63 ID:2rToSM7B0
男「…………ッ!?やべッ!!」バッ!!

スライム【ピキー!!】ダンッ!!

男「ぐはぁぁぁああああっ!!!」ズザァァァアアアッ!!

咄嗟に銅の剣を身構えるが、スライムの方が一歩早く、体ごと体当たりされてそのまま吹っ飛ばされる。

男「痛ってぇぇえええ!!出てくるの早すぎんだろ魔物!!」

魔少女「先輩……油断し過ぎです。ここはもうダンジョンの中ですから」ボゥッ!!

男「ッ!?手から火の玉が……マジか!!」ダッ!!

スライムの体当たりの痛みが残りながらも、魔少女の魔法を目の当たりにし、それを放つ前に急いでスライムから離れる。


魔少女「『プチファイヤーボール』」バッ!!


スライム【ピー!!】ボンッ!!


放たれた野球ボール程度の大きさの火球がスライムに当たると、スライムは2、3回ほどはねながら吹き飛んでいった。
29 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/14(日) 09:01:52.91 ID:2rToSM7B0
男「イテテ、何だ……火力抑えてたのか。流石だな」

魔少女「先輩……大丈夫ですか?回復いりますか?」

男「いや、大したダメージじゃないよ。剣でガードしたし、精々1発ガード上から殴られた程度」イテテ

魔少女「すいません……私がもっと早く気付けばよかったんですが」シュンッ……

男「いやー俺が初ダンジョンに浮かれてただけだし。助けてくれてありがとな魔少女」

正直浮かれていた。
実習の時は、引率の先生や他の生徒も大勢いたから全く危険はなかったが、今は自分と魔少女だけなのだ。
観光気分に浸るのも程々にしなければ。

男「ん?スライムがいつの間にか消えて、何か落ちてんだけど」

魔少女「魔物は……ダンジョンの魔力によって生まれた魔法生物ですから。倒せば消えるんです」

魔少女は、スライムの跡に残った3つのアイテムを拾い上げる。
30 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/14(日) 09:12:50.93 ID:2rToSM7B0
魔少女「これは『青い液体』……服の染料などに使われてます。それとこれは『スライムゼリー』……そのまま食べてもいいですが、料理に使うと片栗粉みたいにとろみがでて、あんかけチャーハンなどが美味しいですよ」


魔物には、物体にダンジョンの魔力が注がれる事によって生まれるタイプと、生態系に魔力が影響を及ぼしたタイプ。
そして、別の次元から現れるタイプが存在する。
スライムは一番目のタイプだ。


ダンジョンに落ちているアイテムなども、魔力によって生み出されたモノや、元の資源が変質したモノである。

従ってダンジョン内の魔力レベルが高ければ高いほど、比例して強力なアイテムや魔物が生まれる。
魔力レベルが高いイコール危険度が高いという事だ。ダンジョンの危険度ランクもこうやって決められている。


男「そういや、その辺は実習で習ってたな。でも、残りの1つは何だ?何かの原石みたいに見えるけど」


魔少女「これは……『魔物の心』と呼ばれる、魔物が時々落とす結晶です。持ち帰り加工すれば、様々な効果がありますが……このままでも使う事は出来ます」ポイッ

魔少女は、手にした結晶にホンの少しの魔力を込め、それを地面に落とす。すると



ボンッ!!

スライム『ピキー』
31 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/14(日) 09:17:04.23 ID:2rToSM7B0
男「おぉ!?スライムが出てきた!!」

魔少女「このように……このダンジョンの中でのみ、魔力を込めた人間に従う魔物が現れます。戦力が足りない時に、探索者が臨時でよく使う方法ですね」ヨシヨシ

男「へー、それは知らなかったな。俺もスライム倒して集めてみようかな」

魔少女「わかりました……じゃあ私はこの子とこの辺りの薬草を集めてますから、先輩はあの子達の相手をしてて下さい」

男「へ?……うぉ!?」

ふと視線を移すと、そこには8匹程のスライムの群れが、男と魔少女の目の前に現れていた。

魔少女「先輩なら……油断しなければ勝てるハズです。頑張って」ファイト

男「頑張ってって……いきなりこの数かよ。マジかー……」

魔少女「ちなみに……このくらいの数だと、青い液体が売れば5ゴールド。スライムゼリーで10ゴールド分くらいは最低でも稼げますよ先輩」ボソッ

男「よっしゃぁぁああ!!かかって来いや魔物共めが!!」


母親からのノルマ金額、100ゴールドを達成すべく、男は修羅の道へと向かう。
32 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/14(日) 09:19:52.50 ID:2rToSM7B0
投下終了です。スライムはドラクエです。魔物の心もドラクエです。アイテムもドラクエです。まぁ王道ですからね。
多分また夜にでも投下します。
ではまた。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/14(日) 09:20:53.12 ID:A0B2ii3HO
期待ゥー!
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/14(日) 09:22:35.33 ID:k/zjO3tDO


超期待してる!
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 11:06:29.32 ID:SG7VtJjQO

いいねのんびり続けてくれ
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/14(日) 12:36:47.62 ID:XELrDDQFo
>>35
sageろks
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/14(日) 13:24:26.51 ID:SG7VtJjQO
すまん 何故か消えてた
38 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/14(日) 20:12:40.60 ID:2rToSM7B0
こんばんわ、>>1です。軽めに投下していきます。

>>33
>>34
>>35
ありがとうございます。引き続きどうぞ。
39 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/14(日) 20:14:24.22 ID:2rToSM7B0
魔少女「ママさん……いつまで先輩に秘密にしてるんですかね……」

スライム『ピー』

魔少女「薬草……集めてきてくれてありがとう」ナデナデ

魔少女「お金がないからダンジョン行けなんて……わざわざ回りくどい事をしなくてもいいですのに」




…………





男「うっし、7匹目。一気に襲いかかられない限り、やられる事はねぇな」ブンッ!!

スライム7【ピー!】パコーンッ!

銅の剣を横に倒し、野球のスイングでスライムを吹っ飛ばす。
囲まれないように逃げながら、一体ずつ仕留めていき、スライムの残りは3体となっていた。

スライム8【ピキー!!】ダンッ!!

スライムの一体が、先ほどのように勢いよく体当たりを仕掛ける。

男「真っ直ぐ体当たりだけじゃあ、当たりもしねぇよ!」スッ
40 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/14(日) 20:16:07.98 ID:2rToSM7B0
男はそれを最小限の動きで横に避ける。
男は引退したものの、元々は剣道部である。幼少の頃から続けていた事により、身体の使い方は熟知していた。


よって魔物との戦いも、剣道の要領で対峙している。


剣道には基本的な技として面、小手、胴、突きとあるが、スライムの体当たりはただ単純に面を打ちにきているだけのような攻撃だ。
スピードも大してなく、一対一なら小学生でも勝てるだろう。


男「オラァァアアッ!!」ブンッ!


スライム8【ピー】パコーンッ!


男「ハイ8匹目ー。これで15ゴールドか、バイトよりは割がいいかもな」

男「あとはスライムが落としたのを回収してっと……お、さっきの魔物の心とかいうのもあんじゃん」ゴソゴソ
41 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/14(日) 20:29:53.14 ID:2rToSM7B0
魔少女「あ……戻ってきましたね」


男「おーい魔少女。とりあえずさっきのスライム達は全部倒したぞー。で、魔物の心も2つ拾ったけど、これどうやってスライムを出すんだ?」


魔少女「お疲れ様です……結晶に魔力を込めれば出てきますよ。スライムならホンの少しの魔力で大丈夫です」


男「へー。……で、魔力ってどうやって込めんの?」


魔少女「……はぁ……」


男「おい、そんな憐れむような目で見んなよ」

魔少女「先輩……学校でもそれくらいは習うハズなんですが。いいです……私がやります」
42 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/14(日) 20:34:33.73 ID:2rToSM7B0
スライム's『ピー!!』

男「おぉー出た出た!よーしお前ら!ここら辺に落ちてるアイテムを、片っ端から取って来い!!」

スライム's『……』


男「……あれ?言うこと聞かないんだけど……」


魔少女「魔物は……魔力を注いだ人の言うことしか聞きません。皆、お願いします」

スライム's『ピー!!!』ダッ!!


男「おぉ、行った行った。しかし便利だなー魔力が使えると。後で俺にも魔物の出し方教えてくれよ」

魔少女「先輩……もしダンジョン関係の仕事をするなら、ちゃんとした魔力の使い方くらい覚えておいた方がいいですよ?」

男「仕事なぁ〜。言ってもダンジョンって稼げるけど危険もあるだろ?こういう小銭稼ぎならまだしも仕事としてはなぁ〜」
43 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/14(日) 20:36:09.57 ID:2rToSM7B0
魔少女「お兄さんも……第一線で活躍されてるんですから、先輩もそっちに進むんじゃないんですか?」

男「兄貴は別だよ別。剣道やってた時から別格だったからなぁー成績もいいし。あーゆう人間しか続けられないなら俺には向いてないだろ」

魔少女「そんなこと……ないです。先輩だって……」

スライム's『ピー!!』

男「お、戻ってきた。結構色々落ちてるモンなんだなー。どれどれ」

魔少女「先輩だって……」









『戦利品』

色んな薬草 魔少女のバック満タン分
青い液体 10ゴールド分
スライムゼリー 20ゴールド分
壊れた腕時計 3ゴールド
錆びた銅の剣 3ゴールド
うまい棒10本入り 1ゴールド
皮のベルト 10ゴールド
壊れたゲームボーイ 3ゴールド
洗濯板 1ゴールド

計50ゴールド
44 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/14(日) 20:42:36.92 ID:2rToSM7B0
男「……なぁ……ゲームボーイやらベルトやらは百歩譲って置いとくんだが……」

魔少女「なんですか?」

男「うまい棒ってなんだよ!なんでうまい棒がこんなダンジョンの草原に落ちてんだよ!!しかも10本セットの奴!!」

魔少女「ダンジョンですから」モグモグ

男「食うな!落ちてたモンを食うな!!女の子が!!」

魔少女「大丈夫です……封はされてましたから。ダンジョンでは食料の現地調達も必要不可欠です」サクサク

男「なんだよ……なんなんだよ、謎すぎんぞダンジョン……ていうか初代ゲームボーイ初めてみたわ。めちゃくちゃデカイな……」


…………




魔少女「とりあえず……この辺りのアイテムは大体拾ったみたいですね。後は出口に向かいながら探しましょう」

男「おう。……そういえば、他の人全然見ないな。いくらこの草原が広いとはいえ、1人くらい見てもいいだろ」

魔少女「ダンジョンの一層目の入り口からは……一定時間毎に転送される空間が変化してますから。
このダンジョンだと……1時間毎に変化します。私達の前後に入った人がいないか少ないということでしょう」
45 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/14(日) 20:51:24.02 ID:2rToSM7B0
ダンジョンの仕組みについて!!



1.ダンジョンは一定時間毎に、旅の扉からの転送先の空間が変化する。
転送される空間は各ダンジョン無数に存在し、同じ地形や形状の迷宮などは存在しない。その為、入る度にダンジョンが変化しているのだ。

ただし、建築物や遺跡、1つの街がダンジョンと化しているタイプのものは、空間が変化する事はない。
その為、何度も同じダンジョンに入ることとなる。が、基本的にそのタイプのダンジョンは危険度が高い。


また、無数にあるダンジョン空間から、最終的に行き着く空間は同じ。これが、ダンジョンの最奥地となる。
ただし、途中で空間が確定しているダンジョンもある。そこには大体露店や休憩所などがある。
たまに、とんでもない強敵やお宝が眠っていたりするが、クリア済みのダンジョンなら大体クリア者や先行組が退治・入手している。
故に、クリアされていない新しいダンジョンや危険度の高いダンジョンには、ダンジョン関係の仕事に就く者達が大勢挑戦しているのだ。



2.ダンジョン内に落ちているアイテムや素材は、魔少女が集めている薬草などのように、そのダンジョンに行けば必ず採取出来るモノと、ダンジョンの魔力によってランダムに生まれた・どこかの次元から転送されたモノに分けられる。

落ちているモノの金銭的な価値は、基本的にダンジョン魔力の高さ。危険度の高いダンジョンほど価値がある。


3.ダンジョン内で怪我を負って動けなくても、運が悪ければ誰も同じ空間内にいない。
そして死ねば、基本的に死体は見つからない。
故に、ダンジョンの出入りは厳重に管理されている。
46 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/14(日) 20:53:09.66 ID:2rToSM7B0
男「要するに、道のりは無数にあるけど、中継地点や最後に行き着く先は一緒って事だな」

魔少女「先輩……実習真面目に受けてましたか?」

男「え?あ……まぁそれなりにな。ハハハ……」




男「という事は、魔少女もこの草原ダンジョンの出口はわからないんだな」

魔少女「はい……ダンジョンの種類が草原エリアという事と、探索エリアがこの階層のみというのは固定なのですが、それ以外は変化してますので」

男「という事は、誰も見つけていない超レアなアイテムが落ちている可能性もあるってわけだ。結構広いしな」

魔少女「まぁ……0ではありませんが。でも所詮は危険度1ですので……期待はしないほうが」

男「なんだよ冷めてんな魔少女。折角なんだしとことん探索しようぜ」

魔少女「私は……門限までに帰れれば大丈夫ですので付き合ってもいいですよ」

男「おう、サンキュー。お、あっちにデカイ森があんじゃん。行ってみようぜ」
47 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/14(日) 20:54:59.97 ID:2rToSM7B0
投下終了です。
不思議なダンジョンでも何でパンなりおにぎりなり落ちてんの?って感じですよね。まぁダンジョンだから何でもありということで。
ではまた。
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/14(日) 20:56:31.87 ID:DJZuQr1kO
おつつつ
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/14(日) 21:12:37.74 ID:OMFwZRC/O
乙乙☆

次も期待して待ってる
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/14(日) 22:24:59.29 ID:hY3NDlq0O
これは期待、もっとたくさん読みたい
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/08/15(月) 10:29:41.63 ID:TD9HrkN1O
期待してたけど頭悪い系主人公なのわかった途端ダメだ
なんで学校で習う魔力の込め方知らないんだよ
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/15(月) 11:14:45.35 ID:3OQLjxBWo
53 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/15(月) 13:44:09.48 ID:MWaHUmGiO
こんにちわ、1です。引き続き軽く投下します。


>>48
>>49
>>50
>>52
ありがとうございます。引き続きゆるくいきます。

>>51
言われてみればそうですね。ちょっと描写が甘かったです。
とりあえず男は成績はだいたい主要教科は中の上くらいですが、ダンジョン系の実習は適当にやってました。ダンジョン関係の仕事に就く考えはなかったので。

54 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/15(月) 13:44:54.77 ID:MWaHUmGiO
ガードマン「今日はお客さん少なかったねぇ〜。あの学生2人は大丈夫かな?」

男達がダンジョンへ突入してから3時間後。

辺りはそろそろ夕方になろうとしていた。

このガードマンの老人は、このダンジョンを担当してから色々な人間を見てきた。

初めて挑戦する若者が、再起不能レベルの重傷を負う姿を見た事もあった。

入っていったきり、もう二度と戻らなかった者達もいた。

ぜひ、あの学生2人にはそんな事になって欲しくないモノだ。
まぁ、あの少女は何度も入っているから問題無いだろうが。


ガードマン「あれからもう、20年近く経つのか……歳は取りたくないモノだねぇ……」
55 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/15(月) 13:46:14.05 ID:MWaHUmGiO
『始まりの草原西 森林エリア』


男「よし。んじゃ各自ココから離れすぎない程度にアイテム探しで。魔物がいるかもだから、スライムは3匹行動な。3匹なら簡単にやられねぇだろ」

スライム's『……』

男「あー……魔少女」

魔少女「……ゴー」

スライム's『ピー!!』ダッ!!

男「……何か悲しいな……年上としては……」

魔少女「先輩が……ちゃんと実習やらずに魔力を使えないのが悪いんです。じゃあ私も探してきます」ガサガサ

男「魔力なぁ……帰ったらマジで練習しよっかな。お、早速見っけ」ゴソゴソ



…………

10分経過



男「んー……色々見つけたけど大したモンはねぇなー」

花火セット 5ゴールド
壊れかけのラジオ 5ゴールド
自転車のサドル 2ゴールド
携帯灰皿 2ゴールド
2年前のカレンダー 1ゴールド
56 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/15(月) 13:46:57.06 ID:MWaHUmGiO
男「……もう深く考えんのはやめよう。ダンジョンなんだ。自転車のサドルや花火セットくらい落ちてるさ。うん」



男は考えるのはやめた。
『ダンジョンだから』
それで全ては解決するのだ。いいじゃないかダンジョンなんだから。


男「他の奴らも同じくらい集めてくるとしたら……うん、とりあえずノルマは達成出来そうだな。今度魔少女に何か奢ってやんなきゃなー……ん?」

ガサガサ

男「……何かこっちに来てるっぽいな。魔物か?」

茂みを掻き分けるような音を聞き取り、男は銅の剣を構える。
油断さえしなければ、このレベルのダンジョンなら対処出来る事は確認済み。先手さえ取られなければ大丈夫と、男は音の主を待つ。

ガサガサ ガサガサ
57 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/15(月) 13:47:44.68 ID:MWaHUmGiO
ラージアント【】ガサッ!!

男「ッ!?デカイ蟻だなオイ」

現れたのは、全長60cmほどの黒アリ、ラージアントである。
単純に、地上にいるアリがデカくなっただけ。
しかし、アリと言う生き物は自身の大きさの何倍何十倍の大きさのモノを運ぶ力がある。

たった60cmだが、このラージアントをそれに当てはめると、かなりの強敵だ。

ラージアント【キィッ!!】ザッ!!

男「おっとぉ!!」ギィンッ!!


ラージアント【ギギギギギッ!!!】グググッ!!

男「クッ……結構力あんじゃねぇか……」グググッ!!


ラージアントが男に?みつこうとするのを、銅の剣で防ごうとすると、その銅の剣をラージアントが?みつき、力比べとなった。

大きめのアリに指を噛まれた経験はないだろうか?かなりの力で噛み付いてきたと思う。

それが60cmもの大きさである。顎の力、首の力共に、人間にも引けを取らないだろう。
58 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/15(月) 13:48:24.11 ID:MWaHUmGiO
男「な……めんなぁぁぁあああッ!!!」ググッ!!

ラージアント【ギィッ!?】

力は強いが、所詮は60cmの虫。重量はそこまで重くはない。プロレスの神様カールゴッチの如く、男はラージアントごと、銅の剣を振り上げる。

そしてそのまま

男「オラァァアアッ!!!」ブンッ!!

ラージアント【ギッ】グシャアッ!!

銅の剣を思いっ切り振り下ろし、噛み付いている顎ごと、ラージアントの頭を砕いた。

シュゥゥウウッ……

ちょっとグロい光景だが、そこはダンジョン。
グロい光景ごとラージアントは消えていった。

男「ふぅ……今のはちょっと危なかったんじゃねーかな。大ケガしないって魔少女は言ってたけど、あの顎は危ねぇだろ」

高校生男子と互角の力を持つ顎の力だ。?みつかれれば痛いでは済まないだろう。

男「あれが群れで来たらヤバイなぁ。っと、今のアリのアイテム落ちてねぇかな?」ガサゴソ
59 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/15(月) 13:49:13.58 ID:MWaHUmGiO
蟻のフェロモン 3ゴールド
ラージアントの顎 3ゴールド

男「顎……使い道あんのか?あとは……フェロモンねぇ」

魔少女に借りた、このダンジョンについて書かれたガイドマップを片手に、アイテムの名称を確認する。

男「……そう言えばアリってフェロモンで仲間の位置がわかるんだよな?」

男はふと思った。もしさっきのアリが戦闘中に、フェロモンを出していたとしたら。




ラージアントの群れ【】ガサガサッ!!





予想は的中し、男の周囲にはラージアントの群れが集まっていた。
その数は10匹以上。
フェロモンにより、まだまだ増えていくだろう。



男「やっべ……こんなの絶対やられるじゃねぇかよぉぉおおおっ!!!」ダッ!!

ガサガサガサガサッ!!!

男は何の迷いもなく、一目散にその場から逃げ出す。
囲まれる事はなかったが、ラージアントの群れは男を追いかけていく。
振り向かなくても、音でわかる。追付かれれば割と冗談じゃすまない。


男「うぉぉおおおおッ!!!魔少女お助けぇぇええええっ!!!!」ダッ、ダッ、ダッ、ダッ!!
60 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/15(月) 13:51:04.55 ID:MWaHUmGiO
…………



オタスケェェェエエエエッ…………



魔少女「あ……先輩何かやらかしましたね。大方、ラージアントの群れにちょっかい出したのでしょう」スッ……

少し離れた位置で、のんびりとアイテムを探していた魔少女の耳に、男の叫びが聞こえてきた。

ラージアントは、というかアリは基本群れで行動している。先頭がフェロモンを所々で出しながら移動しているのだ。
その先頭のラージアントと戦えば、後列の群れとかち合うのは当然である。


魔少女「しょうがないですね……たこ焼きを奢ってもらいましたし。……『チェイス』!」カッ!


魔少女は追跡探知魔法を使い、男の行方を追う。闇雲に逃げているらしく、意外と距離は離れてはいなかった。


魔少女「この距離なら……これが使えそうですね。……『ファイヤーボール』」ボゥッ!!


魔少女の周囲に、15個ほどの火球が現れる。大きさはバスケットボール程のであろうか。


魔少女「そして更に……自動追跡魔法『オートチェイス』を『ファイヤーボール』に追加。先輩の後方、1mから10m辺りの生体反応に着弾設定」グググッ……


ドンッ!!!


火球が魔少女から放たれ、上空へと飛び上がる。
そして自動追跡魔法によって、目標を逃げている男の後方に設定。



魔少女「複合魔法……『メテオフォール(偽)』!!」



そして火球は上空から凄まじい速度で、男の後方目掛けて発射される。
61 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/15(月) 13:53:15.94 ID:MWaHUmGiO
投下終了です。アリはホントならもっと強いでしょうが、弱めに設定しとります。
ではまた。
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/15(月) 21:43:19.65 ID:ZidtpYVRO
細かいことは気にしなくて良いでしょそういうダンジョンもあるし
63 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/16(火) 10:35:47.42 ID:76z/AbrT0
おはようございます。休みなので軽く投下していきます。

>>62
色々見直しながら、ゆっくり進めていきたいと思います。
64 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/16(火) 10:49:01.90 ID:76z/AbrT0
…………


男「だぁぁああっ!!マジでしつけぇなぁコイツ等!!」ダッ!ダッ!!ダッ!!!


ガサガサガサガサッ!!!


森をジグザグと走り回り、気がつけば追いかけてくるラージアントは30匹ほどに増えていた。

割と絶対絶命の危機である。

男「流石に剣一本でこんな大群に勝てるわけねぇし!どっか隠れる場所ねぇのかよ!!」

♪ライ〜ン♪


男「あぁ!?誰だよこんな時に!!魔少女!?」

通信用アプリ『RINE』によって男の携帯にメッセージが魔少女から送られてきた。内容は




『止まらないでください』




男「止まんなって!?言われなくても止まれねぇよ!!どうする気なんだ魔少女」ダッ、ダッ、ダッ!!

その瞬間
65 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/16(火) 10:52:52.97 ID:76z/AbrT0
ドォォォオオオオオオンッ!!!

男「うぉおおっ!?な、何だ!?」

突如背後から響いた轟音と振動に思わず振り向くと、爆炎によって吹っ飛ぶラージアントと、上空から火の玉のようなモノが、次々に自分の方へと向かってくるのが見えた。


男「まさか……止まんなってそういう事かよぉぉおおおお!!!」ダッ!!


男は状況を理解して、全速力で走り出す。



ドォォォオオオオオオンッ!!
ドォォォオオオオオオンッ!!!
ドォォォオオオオオオンッ!!!!!

落下した火球が爆発し、それによって男を追いかけるラージアント達が吹き飛んでいく。

火球は、元々の威力に加わり、上空からの加速で更に威力を増している。1発でも当たれば、今の男の防御力では即あの世行きである。

まぁ、火球は男の後方に落ちるように設定されているので、そんな事はないのだが。


ドォォォオオオオオオンッ!!
ドォォォオオオオオオンッ!!!

男「魔少女ぉぉおおお!!お前、コレは流石にやり過ぎだろぉぉおおっ!!」ダッ、ダッ、ダッ!!

ドォォォオオオオオオンッ!!!
ドォォォオオオオオオンッ!!!!


そんな事は知らない男は、落下する火球から逃れるべく死に物狂いで走る。
66 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/16(火) 10:59:07.11 ID:76z/AbrT0
魔少女「……ふぅ……魔力殆ど使っちゃいました……お腹すいた」ドサッ

魔法に魔法を掛け合わせるという、複合魔法。
やり方さえわかれば、魔法に通じる者ならば難しくないが、組み合わせ次第で非常に強力になり、魔力を大量に消費する為、魔法使いの必殺技と呼ばれている。

昔は、組み合わせによる魔法使いごとの個性が色濃く出て、その術式は秘伝ともされていたが、今の時代ネットが普及している為、アイデアと術式はネット上に大量に飛び交っている。
67 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/16(火) 10:59:53.76 ID:76z/AbrT0
814:魔法使いさん
いいの考えた
ファイヤーボール系に追跡魔法系を重ねて上空から落としたらメテオじゃね?ウハw基礎魔法で極大魔法級wwマジ俺天才

815:魔法使いさん
割と複合魔法の基本戦法じゃね?

816:魔法使いさん
基本だな
でも威力あるし汎用性は高いぞ
誰か1人が魔物を惹きつければ殲滅できるし

817:◆暗黒棋士ガイアさん
剣で斬った方が早えしw魔法w効率悪ww

818:魔法使いさん
>>817
自スレに帰れ脳筋
色々漢字間違えてんぞ

819:魔法使いさん
ミサイル使った方が早くね?

820:魔法使いさん
>>819
お前はどんだけ重装備でダンジョンを歩き回る気だ


ましょうじょ(6才)「ふむふむ……」


ただし、それを上手く発現出来るかは術者の能力次第である。







魔少女「魔力が回復するまで……頑張ってくださいね先輩。……やはりうまい棒はチーズ味です」モグモグ
68 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/16(火) 11:14:50.39 ID:76z/AbrT0
…………



男「ハァッ、ハァッ、駄目だ、もう走れねぇ」ゼェッ、ゼェッ

火球の雨が止み、追いかけてくるラージアントは全滅したらしく、男は息を切らしながら歩いていた。

正直、ラージアント達にはオーバーキルもいいとこである。

男「ハァッ、ハァッ、魔少女、アイツ、俺に恨みでもあんのか?」ゼェッ、ゼェッ

恨みどころか、かなりの親切設定な複合魔法である。

男「ハァッ、ハァッ、まぁ、助かったから、感謝するけど、ハァッ、ハァッ、アレ?」ゼェッ、ゼェッ




ふと男は森林地帯に、不思議な円形のスペースを見つける。

一本の大木のみが立っており、日が射し込んでいる神秘的な光景。
その大木の下には、何やら墓のようなモノ。





そして
69 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/16(火) 11:16:41.35 ID:76z/AbrT0
男「ボロボロの……女の子?」


墓に寄り添うように眠っている、ボロボロに汚れた少女の姿があった。


男「ま、まさか死んでんじゃ……」ソー……


男は恐る恐る少女に近づく。


15才前後に見える少女。格好はドレスのように見えるが朽ち果ててボロボロ。
そして少女の身体をよく見ると




男「この子…………まさか機械人形(オートマタ)か?」




両手は破壊され、土まみれの機械の骨組みのようなモノが剥き出しになっている。
義手の可能性もあったが、十中八九。
地上とダンジョンの英知が組み合わさった技術の結晶の1つ。


魔導式機械人形……『オートマタ』である。
70 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/16(火) 11:20:24.59 ID:76z/AbrT0
投下終了です。
ちなみにこのSSは別に世界を救う勇者の話などではありません。1人の少年とその周囲の人間の、ダンジョン物語です。
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/16(火) 11:27:42.69 ID:364FEUypO
おつ
次もきたい
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/16(火) 11:34:41.38 ID:IJEoqns9O
剣道やってるけど実戦にはなんの役にも立たないよ
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/16(火) 11:57:03.18 ID:76z/AbrT0
>>72
3段だけど自衛の為に小手アンド膝おすすめ。使う機会がない方がいいに決まってるけど。
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/16(火) 17:52:24.33 ID:YBpYA9uMO
そんなこと言ってたらなろう界隈じゃ生きてけねーよ
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/16(火) 21:11:45.40 ID:CxcLVMZyO
面白いからもっとかけ
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/16(火) 22:37:03.71 ID:x3m8McVAO

>>58

世界観が現実準拠ぽかったのでつい計算しちゃったんだが、普通の蟻の体重を0.004g、体長を0.5cmとすると60cmの蟻はなんと7kgある
蟻がぶら下がった場所を1m先として、持つ場所を10cm先とすると70kgの荷物を持ち上げる力がないと剣は持ち上がらないどころか水平にすら持っていけない

まあダンジョンだから蟻も普通じゃなかったんだな!うん!
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/16(火) 23:04:38.52 ID:364FEUypO
>>76
それで納得したならわざわざ嫌味ったらしく文に書き起こして書き込む必要無い........無くない?
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/16(火) 23:04:38.83 ID:x3m8McVAO
やべ、剣の質量と重心忘れてたけど振り上げるなら結局これ以上必要だと思う
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/16(火) 23:12:33.52 ID:BEdt3zroO
最近、フィクションにドヤ顔で「俺って頭良いだろ?」みたいなバカがバカみたいな事を書き込む事案が多いなぁ…夏だからかなぁ…
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/16(火) 23:23:42.35 ID:NzRNDxSEo
そういうメタ的計算好きだから嫌みっぽくないようにいってくれれば皆ハッピー
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/16(火) 23:26:00.77 ID:gj8QPcb20
>>76
モーメント力だけで解決すると思ってるんだったらおめでたい頭だな。
黙って塾でも行って来いよクソガキ。
82 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/16(火) 23:53:45.14 ID:ZLdVYUBcO
こんばんわ、1です。軽く投下していきます。

何か色々揉めてるので、>>76>>1が説明しましょう。

きっと重力が地上よりこのダンジョンは軽かったんです。
だって!ダンジョンなんだから!!

以上です。投下します。
83 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/16(火) 23:55:34.16 ID:76z/AbrT0
男「オートマタ……何でこんなモンがこんなところに……」


森林地帯にポッカリと空いた円形のスペースに、ポツンと置かれた1つの墓。
そこに寄り添うように、少女の姿をした魔導式機械人形オートマタが眠っていた。


オートマタとは、簡単に言えば自我を持った人形である。
自分で考え、行動する。
側から見れば、普通の人間とそう変わらないだろう。


単純に、家庭用のモノもあるし、ダンジョン攻略のパートナーとして連れている者も多い。

そんな技術と魔導の結晶であるオートマタが、何故こんな所で捨てられているのか。
84 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/16(火) 23:58:19.15 ID:76z/AbrT0
男「……とりあえずほっとくのもアレだしな……でもこの墓の下の人がコイツの持ち主だったら、引き離すのも悪い気がするし。んー」

死んだ持ち主と共に眠るオートマタという、映画のエンディングに出てきそうな感動的な話かもしれないと思うと、やはり放って置くのが正解なのか。



そうこうしている内に





魔少女「……先輩……」

先ほど男を助ける為に、魔力の大半を使ってしまった魔少女が、魔力を回復させて追いついたようだ。


男「ん?おぉ、魔少女。丁度よかった、実はコイツ」

魔少女「先輩……とうとう罪を犯してしまったんですね」ハァッ……

男「え?は?」


魔少女「先輩が……そのような女の子に手を出す人間だとは思いませんでした……安心してください、自首する時は私も付き添いますから」

男「はいストップ。魔少女ストップ。お前は重大な勘違いを」

魔少女「私の……私の管理不足でした。先輩が無事にお勤めから帰ってきた時は、私も社会復帰に協力します。
まずは地道に出所者更生用の職場をリストアップして」

男「やめろ!具体的に出所後の復帰プランまで考えるのはやめろ!!」
85 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/17(水) 00:00:07.98 ID:/KNu79xO0

…………


魔少女「なるほど……オートマタですか。確かにこんなダンジョンに廃棄されているなんておかしいですね」

男「だろ?それも墓の側で倒れてんだぜ?何か映画のワンシーンみたいだよな」

魔少女「何処かに……製造年月日が記されているはず……」ゴソゴソ

男「え!?ちょ、バカ!!何やってんだお前!!」バッ!!


魔少女は、オートマタの作られた年代を調べようと、ボロボロのドレスを脱がし、身体中を調べていく。

人形とはいえ、見た目は完全に人間の少女なので、魔少女が色々弄ったり開いたりと、絵的にかなりヤバイ事になっている。
純情な男子高生には、直視しがたい光景である。本当は見たいが。


魔少女「ッ!?ありました……今から20年以上も昔に製造されたモノです」

男「20年!?そりゃまた結構古いなぁ。俺らが生まれるより昔か……あ」

魔少女「…………」


驚いた男は、つい目線を魔少女達に向けてしまい、少女を形取ったオートマタを色々と凝視してしまう。
見た目は人間と変わりはない。つまりモロ見えだ。

男「…………とりあえず上着かけといて…………」スッ……


男は経験値を獲得した。

男はレベルが上がった。
86 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/17(水) 00:01:50.47 ID:/KNu79xO0
魔少女「で……どうします?先輩」

男「ん?どうって?」

魔少女「このオートマタ……恐らくまだ使用出来ますよ?」

男「え!?マジで!?壊れてねぇの!?」

魔少女「いえ、流石に壊れてはいます……ただ、専門店に行って修理してもらえばいいかと」

男「修理かー。でも金かかんだろ?高校生で払える額なのか?」

魔少女「そこはコツコツと貯める感じで……ダンジョンを回ればバイトよりは早いですよ?」

男「んー……でもなー……問題は、この墓の主とこのオートマタの関係だよな。無闇に引き離すってのもさぁ……こう……何かダメな気がしない?」

魔少女「墓の主がオートマタの主であるなら……もう死んでいるので大丈夫です。所有権はリセットされています」

男「いやそうじゃなくて……お前意外とドライなんだな……」

魔少女「そうですか?……それでどうします?アイテムとして考えるなら、危険度ランク1何かではとてもお目にかかれない超レアものですが」

男「ん〜……んん〜〜〜……」
87 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/17(水) 00:03:33.71 ID:/KNu79xO0
……………………



ガードマン「そろそろ18時か……何事も無ければそろそろ戻ってくる頃だねぇ」

ダンジョンから脱出アイテム。もしくは最奥地から転送されてくると、ダンジョンの入り口周辺へと転送されてくる。

戻ってくれば、ガードマンが確認出来る仕組みだ。

ちなみに、ガードマンが男に渡した脱出用アイテム。アレは、遠隔操作でこちらからも転送させる事の出来る様になっている。

未成年の場合、20時を超えるとこちらから強制的に脱出させる規則となっているのだ。

これも、未成年の事故を防止する為の最低限の処置である。





シュインッ!!
88 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/17(水) 00:05:49.53 ID:/KNu79xO0
男「お!戻れた戻れた!!いやー、アリの大群に追いかけられた時はどうなるかと思ったぜ」

魔少女「先輩……今度からダンジョンに入る前には、最低限そのダンジョンの魔物の生態くらい知っておいた方がいいです。その為にガイドブックが配られているんですから」


賑やかな声が聞こえてきた。どうやら帰ってきたようだ。


ガードマン「おぉー戻ってきたねぇ。収穫はあったかい?……ん?」

声の方へと振り向くと、少年と少女の姿があった。
そして





ガードマン「……少年……君が背負っている子は……」



少年の背には、ボロボロのドレスを着たボロボロの少女らしき姿が。

男「え?あ!?ストップ!ガードマンさんの今考えている事は恐らく誤解ですから!!これには深い理由が」

魔少女「先輩……面会には時々行きますから安心してください」

男「魔少女!!お前もちゃんと理由を説明して」






ガードマン「まさか…………そんな…………『エリス』……」






男「へ?」

魔少女「?」

ガードマンの老人が1つの名を呟く。

それはこの老人の遠い遠い思い出。
89 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/17(水) 00:07:20.56 ID:/KNu79xO0











『おっちゃん!今日もダンジョンで一稼ぎしてくるぜ!!行くぞエリス!!』

『毎日お勤めご苦労様です。待ってくださいマスター』

『待ってよー○○ー。私も行くってばー』










90 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/17(水) 00:09:44.30 ID:/KNu79xO0
泥だらけで眠っているオートマタを、老人はじっと見つめる。









ガードマン「そうかい……帰ってきたんだねぇ……『エリス』……」










老人の目に涙が滲む。
年老いて涙も枯れたと思っていたその目に。
20年近く前の思い出と共に。














男「……えっと……ガードマンさん?」

魔少女「先輩……空気読んでください。今は感動シーンというヤツです」

背に担いだオートマタを見つけた本人達は、いまいち状況を把握出来ていなかったが。
91 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/17(水) 00:11:37.45 ID:/KNu79xO0
投下終了です。眠いのでいいところで中断です。
明日の朝に残りを投下します。ではまた。
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/17(水) 00:13:48.95 ID:xPyQLhh0O
93 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/17(水) 07:56:01.76 ID:/KNu79xO0
…………


ガードマン「そうかい……ダンジョンの森の中に墓が……」

魔少女「はい……恐らくこのオートマタの子が作ったのでしょう。壊れた両手には土がビッシリ詰まっていましたから」

ガードマン「……昔……君らと同じ年くらいかなぁ……ダンジョンにしょっちゅう足を運ぶ少年がいたんだ」


ガードマンの老人は昔を思い出しながら語り始めた。


ガードマン「その少年に引っ付いて行くように、この子ともう1人、活発そうな女の子もダンジョンに入っていた。毎日のようにねぇ。
話を聞くと、修行がてらにダンジョン系の学校に入る為の資金稼ぎをしていたそうだ」
94 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/17(水) 07:58:04.85 ID:/KNu79xO0
『おっちゃん!俺は世界中のダンジョンを冒険したいんだ!!まだ誰も見たことない景色を、お宝を一番に発見してやりたいんだ!!』


『マスターだけじゃ心配だから、私もお供するつもりです!」


『○○は年下の私より腕っぷしが弱いんだから、エリスと私がついててやらないとねー☆』





ガードマン「そして進学して卒業し、仕事をこなしながら許可ランクを順調に上げていった彼は、身重の奥さんと小さな男の子を置いて、この子と海外で新しく出現したダンジョンに挑戦した。
……そのまま彼が生きて帰って来ることはなかったけどね」


『マスターは……このダンジョンが大好きでした。だから眠る時はこのダンジョンの中で眠りたい。それが最後の言葉です』


ガードマン「……この子は彼の遺骨と共にこのダンジョンに入りそのまま……あれから20年近く経った。まさかもう一度会えるとはねぇ……」


魔少女「…………おじいさん…………」


魔少女の側で横たわるオートマタの少女を見つめながら、ガードマンの老人は語り終える。
95 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/17(水) 08:09:40.44 ID:/KNu79xO0
男「魔少女ー!!ガードマンさーん!!やった!ノルマ達成した!!これであのクソババァの新技の実験台にならなくて済むわ!!」ヒャッホー




ガードマン「ハハハッ、よかったねぇー」

魔少女「……あぁ……今魔力が少なくなかったら……少なくなかったら……」ワナワナ……




シリアスブレイカーの使い手とも言わんばかり、満面の笑みを浮かべて小躍りしながら、男はダンジョンにて回収したアイテムの換金から戻ってきた。

ちなみに、ダンジョンアイテムの換金は、基本的には公的機関の換金所で行われている。


武器や防具、魔法道具などは直接店に売りに出した方が高く売れる事もあるが、多種多様なジャンク品なども多い為、換金所が収集品を受け取り、ジャンル毎に仕分けされ、各業者に売り渡すといった仕組みだ。

今回は近くの市役所に設置された換金所で男は換金してきたようだ。
ちなみに換金所員は公務員である。いつでも取引が行われるよう、3交代制で日夜行われているのだ。


今回、魔少女やスライム達が集めてきたモノを含め、160ゴールドの稼ぎである。


ダンジョン滞在時間は4時間ほど。時給40ゴールドと考えれば、破格の稼ぎだ。(1ゴールド→約100円)
その分、男はかなり死ぬような思いをしたが。
96 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/17(水) 08:16:04.70 ID:/KNu79xO0
男「よし、早く行こうぜ魔少女。急がないとオートマタの修理に出せなくなっちまう」

魔少女「先輩……感動の話の余韻も感じさせてくれないんですね……」ハァッ……

ガードマン「この子の修理先をお探しかい?」

男「はい!あ、ガードマンさん、どこかいいお店知ってたりします?出来れば安いところが」


ガードマン「それなら、商店街にある『フリーダム(糸の切れたマリオネット)』という店に行くといいよ。私が連絡しておこう」


男「商店街か。ありがとうガードマンさん」

魔少女「いいお話……ありがとうございました」ペコリ

ガードマン「いやいや。こちらこそ古い知り合いに再び会えてよかったよ。……贅沢をいえば、彼のお墓に一度くらいは会いに行きたかったけどねぇ」

ダンジョン入り口から転送される空間の先は、無限に近いほど存在する。
同じダンジョンに再び入る事は、宝クジに当たるレベル以上の確率となるだろう。









男「行けるよ?」

ガードマン「……え?」

男は、即答で老人に応えた。
97 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/17(水) 08:21:28.88 ID:/KNu79xO0
男「コイツがさ、オートマタが直ったら、この子がお墓まいりにいつでも来れるようにって、墓に探知魔法かけてんだ。頭いいよなー」ポンッ

魔少女「……ダンジョン救助用の……空間固定用の道具を使えばいつでもお墓のある空間に繋げられます」


ダンジョン探索の保険として、脱出用の魔法道具の他に、自分のいる空間を外に知らせる道具もある。
万が一の救助の時は、専用の魔法道具で、その空間を選んで繋げられるのだ。
最も、その階層までは自力で行かなくてはならない為、危険度が高いダンジョンほど救助に行ける人材も少なくなるが。


ガードマン「き、君たちは……ありがとう……」

男「こっちこそお店教えてくれてありがとでーす」フリフリ

魔少女「お墓に行く時は……いつでも言ってください。では」ペコリ


男と魔少女は、オートマタを担ぎ商店街へと向かう。
98 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/17(水) 08:23:07.20 ID:/KNu79xO0
魔少女「先輩……お墓まいりを提案したのは先輩ですよね」


男「ん?んなもんどっちでもいいだろ。その為の魔法が使えるのはお前なんだし」


魔少女「フフッ……やはり先輩は先輩ですね」






その3人の光景を見て、ガードマンの老人には昔の光景が被って見えた。



ガードマン「あの頃のあの子達とそっくりだねぇ……」
99 : ◆A.DGm5tRfU [saga]:2016/08/17(水) 08:25:02.59 ID:/KNu79xO0
投下終了です。ではまた。
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/17(水) 10:09:52.60 ID:rLa9l5jw0
おつつ
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/17(水) 10:28:42.98 ID:eho6fnctO
ええやん
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