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召喚術師「安価で修業する」
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798 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/05/17(木) 16:43:48.43 ID:Q0trqdR1O
半鳥「亜人ってこと? 私達みたいなデミ・ヒューマン? 普通に純人間の帝国人でしょ教授は」
半鳥「の 奴隷? えー待って意味不明……」
WPS「降霊魔法のかなり上等なやつだと この場合は神降ろしと言えば伝わるかも知れんとも」
半鳥「! 巫女さんの必殺技でしょ 私の村にあるよ分かる」
WPS「必殺技ぁ? ぐぐぐぐ お」find
WPS「見付けたぞ 話は後だな」チャプン
半鳥「?」
スライムが目当ての物を見付けた ラベルの貼られた小瓶 割れていない
ぬらつく触手で取り上げると 触手の先端がワームの口吻のように開き そのまま蓋も開けず飲み込んだ
何らかの薬液入りの小瓶だった これでスライムは能力として薬効を獲得したことになる
嚥下したばかりの触手がハーフィに向いた
WPS「ぐぐぐぐぐぐぐぐ」spray
吸収 分析 獲得 精製 麻痺毒と睡眠薬の混合薬液であることを把握する
どこぞの薬学教授が作り出した特製の魔導薬であった
手に入れたそれの濃度を調整し噴霧
半鳥「!? 何し」バッ
半鳥「た……」クラ
半鳥「……の……」ぐて
あっという間に全身が弛緩し昏睡 用途の気になる出来と効き目である
隠し棚の奥へとハーフィを押し込み スライムも後に続いて棚を閉ざす
どういう訳か内側からも閉められるようになっていた
799 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/05/17(木) 16:51:31.59 ID:Q0trqdR1O
大至急の呼び出しを食らった客人が到着
路肩に愛車を停めた
開け放たれている玄関に入る
リビングへ 姿を認めるや、立ったままのサモナーはヤバい顔色で不敵に笑った
術師「遅いぞ」
J「これでも急いできたんだ みんな君みたいだと思わないでくれ 友よ」
J「トラクター売約?」
術師「滞りなく 次は讃美歌にするか」
J「問題はリクエストを読んでくれるかということになるが」
術師「帝都魔法大学教授 帝国工廠魔導部門顧問魔術師団筆頭 歩く大量殺戮破壊殲滅蹂躙民族浄化兵器 二足歩行猫 他多数」
術師「立派な肩書きの数々にハガキ職人を加えてみる気はないか?」
J「今までで最高の肩書きじゃないか」
術師「ネタはいくらでもある」
J「残念ながら 刺激的な話の殆どは部外秘なんだよ」cast AURA of VIBGYOR
術師「目立ちたがりが話放り込むような所に本物を供することもなかろう 脚色脚色」summon HYDRA's HEAD
極光を放つ戦術級魔法 即応待機魔力塊が展開
幾重にも補助魔法陣が接続 召喚魔法陣が多重起動
Jは一瞬考えた
J「(基本クソ忙しいこの私に それを分かっていながら――――)」
J「(暇潰しの果たし状なんかに緊急招集の合図を使ったのかい サモナー?)」
J「(その割にはなんというか……)」cast CHAIN RUNE
術師「行け」バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ
両手にそれぞれ 触媒のツルハシと槍型デバイスを携え サモナーがけしかける
傍らに引き寄せた特大の魔法陣三基から召喚されたのは漆黒の巨影 血色の眼光は六つ 打って変わり焼き付くされ炭と化した家々のような闇色 光を吸う邪悪な竜鱗
ロングドラゴンに多大な魔力を与え進化させた多頭の魔竜
種をハイドラ
ヒドラ首s「GRRRrrRrRrrrr……」フシュゥウウ
瘴気めいた吐息が床を這って漂い
Jが纏う 輝く魔力塊に触れた側から掻き消える
虹色の球光が輝きを増した
J「(正気ではないと)」
J「(では何べんか死なせてみるかな)」cast VX GAS
シュオオォオォオォオオオオオオオオオ
術師「(何か発動した 視認できない)」
首A「……?」クン クン
術師「! そうか匂うか 神経ガスだな?」order breath
首B&C「「■■■□□■□ーーーッ!!」」FIRE BAAAAAaaaaaaaaaaaLL
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
J「(ああ壁が……自分ちだろう君 リビングとホールがぶち抜きになってしまったぞ)」cast INVISIBLITY
首A「 ■□ っ 」グラ
術師「視界を塞がせ透明化 常套戦術だな 容赦ない」
術師「資源世界の蛮族共に使う"聖なる浄化魔法"じゃないのかこれは」gate active VACUUM SPACE
術師「クソ人道主義の穏健派とラリってる教会シンパにはそう言って売り込んだんだろ」
J『何? デバイス部隊の指針定義は上層部のみ呼んだ極秘だったぞ』
J『ブラウンと一緒に魔法組みつつ 私が一人で一生懸命考えた宣伝文句をなんで君が知ってる』
術師「見っけ」DETECTED!
summon HYDRA HEAD×2
J『あっやばい」cast SHOCK WAVE
首4&5「■■■■■□■ッッ!!!」CRUuuuuuuuuuuuuuuuuuuNCH
800 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/05/18(金) 06:27:32.04 ID:um8+cMBi0
ああー、デミサバ化か……そりゃまた厄介で面倒な事だわな
801 :
◆1qS/J7BvDg
[sage saga]:2018/05/23(水) 17:10:15.55 ID:XS0N8OXjO
新たに召喚された双頭が位置を指示され迫る 首Dは放たれた衝撃波によって上顎を吹き飛ばされ舌と下顎だけになった
もう片方 Eはクリーンヒットならず鱗を剥いだのみ
仕留め損なったEは骨付き肉にありつく野蛮人めいて首を寝かせ 歪んだ空間に喰らいついた
硬質の咬合音
バリアーが牙を阻む 看破を受け透明化は解除
出力調整に歯を食い縛り歯列を剥き出す様は猫と言うより虎 笑みも混じればむべなるかな
なんだかんだ楽しそうなJだが 前編を描写過多によるスタミナ切れで終わらせくさった近接工兵との時のように遊んでばかりもいられない
J「とッ……ころで」ギャギリリギギギギ
J「顔色が優れないようだなあ友よ それにまたぞろヘンな魔法をかけられたと見え――――」
術師「魔術だ 二度と間違えるな」pull order
首E「 」グイィッ
J「るっ!?」グンッ
術師「あ いや 今のは気にしないでくれ 口が勝手に」cast REALITY MARBLE
J「魔法も魔術も呪術も奇跡も呼び名が違うというだけの筈だが?」cast STEEL LANCE URCHIN
術師「やめろ こいつを刺激するな」sending MP
J「こいつ?」thunkthunkthunkthunkthunkthunkthunkthunkthunkthunkthunkthunk
首E「」ブシュゥウウウウッ
ドズン……
J「ウニの如く 外からどう見える? 新種のカクタスハイドラとかいって学会に提出するか!」
802 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/05/23(水) 17:11:23.58 ID:XS0N8OXjO
術師「おっと そのままだとマズいかもしれんぞ」manipulate AGREEMENT BIND CHAIN
J「(! 召喚契約拘束魔法を魔力の鎖に……)」
死首A「」connect
死首D「」connect
死首E「」connect
死首ADE「「「 」」」ググググググググ
グアァァァアアアアァアアッ
J「死霊術は好かなんだのではなかったのか!? マリオネットだ!」cast BARRIER LAMINATE
ガギィ ガギィ ガギィ
J「(バリアに噛み付いて……待て 何を開いている? このまま異界流刑でもさせる気か?)」
J「……ッうむ……挨拶も済んだことだし 要点に入ってもいいかい?」ギリギリギリギリギリギリギリギリ
術師「いいとも 手というか発動中のは勝手に動くが」
J「要件は?」
術師「助けてくれ」
J「具体的に」
術師「召喚魔法からのアプローチでかなり大規模な降霊術をやらされてる 首謀者は霊体 格は無いが非常に厄介なタイプの"英霊"だ」
術師「どうやったのか私の魔力関連神経系やら循環系やらをズタズタにして弱らせ そこへさらに英霊をおっ被せて――――」
術師「被せた霊ごと契約拘束術式の一種で命令を遵守させている 意志にまでは及ばんようだが実情は見ての通りだ」
J「ふうむ ……私を殺せというのがか」
術師「違う 偶然ハーフィも来たが同じようにした」
J「なんだって?」
術師「程度の差はあるがな 逃がすつもりだったがお前が来たんで上に待たせているよ」
術師「命令は一つ "降霊術の完遂" これも魔法が拡大解釈をしている一環なんだ」
J「つまり そいつの邪魔になる=排除しようと ああ させようとしているのか 何故我々がそうだと……」
術師「……」ニヤリ
J「…………助けを求めたからか……」sigh
術師「そういうことだな ふふふふ」
術師「持つべきものは友と弟子だなぁジェ〜〜イ 詳細はそいつに書き込んであるから後は頼むぞ まあ……」sending complete
死首s「「「 」」」ググググググググ
J「バリアごと引きずり込む気か……!」
異界転移魔法
サモナーがよく使う転移魔法陣 その極致と言える絶技
門陣が開く
それは招き入れるための魔法陣ではなかった
繋がる先は異界 そこは間違いない
おぞましい気配が邸宅に這い出てくる
陣の先に深淵が覗いた
どこまでも広がる薄暗い空間 空は無く 一枚一枚に夥しい行数の数式を書き詰め込んだタイル張りの地平線
心情風景を孕んだ魔法陣が
音を立てて侵食を始める
術師「こいつを突破するのが先になるが」
J「なんだ それは――――」
◆
803 :
※首4&5→首D&E
[sage saga]:2018/05/23(水) 17:13:49.85 ID:XS0N8OXjO
804 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/05/24(木) 14:40:33.80 ID:+LhZzm8s0
無限の法式……ってとこか?
乙!
805 :
◆1qS/J7BvDg
[sage saga]:2018/05/30(水) 18:24:56.60 ID:pEpxlynjO
【現在 サモナー邸リビング】
自分を収納に押し込めたスライムがいなかったことは気になったが それより魔力の装填が終わっていた方に気がいった
破壊されたリビングには発動を終了した魔法陣と
それから先客
J「やあ……ハーフィ 寝ていたのかな」ボロッ
半鳥「J教授 と……そっちの……こないだの傀儡大会みたいな格好の人は……」
J「こんな趣味の悪いマスクを被っていた奴がいたのかい?」ハハハ
黒マント仮面「趣味の悪いとは 言ってくれるじゃないか……」カポ
半鳥「いやぁそのデザインは……って!?」
ペルセウス「久しぶり よく成長しているようだ」
半鳥「ペルセウス様!」
ペルセウス「様?」
J「神話生物の気配がする よその世界の英雄か」
J「黒マントと趣味の悪い仮面以外は軽そうな若者にしか見えないが やれるか?」
ペルセウス「ふ またこの世界で戦う羽目になろうとは……ってね」
J「? ああ」
半鳥「格好もそうですしイケメンは不変ですけど なんかお顔が変わってませんか?」
ペルセウス「うん 喚び出すに当たり、この前とは違う前提知識というか……解釈の元に召喚したようだね」
ペルセウス「兜がマントになっている この仮面も飾りではないけれど私の元々の持ち物ではないな」ジャキ
半鳥「あっ 鎌」
ペルセウス「また お前の相手をすればいいのか?」
J「臭うな どこだろう」
半鳥「床下」draw gun
「……ぐぐぐぐぐ 状況は陣に書き付けてあったんじゃないのか? スっトボけるなよ首狩り族が」ズロロロロロ
WPS「第一オレをあの時と同じだと思うな 茹でた海藻みたいな頭しやがって」ドロォ
J「 」standby VIBGYOR
半鳥「 」aim core
ペルセウス「出る幕はないらしい」
WPS「いや待て 待って つーかハーフィはお前ちゃんと説明したじゃんオレ昨日」
806 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/05/30(水) 18:27:52.28 ID:pEpxlynjO
WPS「首長肉に見付かんないように隠せって命令されて張り切ったんだぞ」
半鳥「眠り薬は何」
WPS「ただの睡眠薬じゃない ブラウンとかいうのが作った、催眠薬と仮死薬と筋弛緩剤を混ぜた拉致の特効薬だ」
半鳥「は?」
WPS「匂いや音だけじゃない ドラゴンというか蛇は熱を視れるからああするしかなかった」
半鳥「赤い人みたいなこと言ってる……」
J「熱源探知の魔法を素でやるというのだろう 実際言われるまで君がいると分からなかったしな」
J「炎熱の魔法に関しては私達にも劣らぬエキスパートだった あのパイロゴーストが今居てくれたらどんなに楽か……」
半鳥「(というか傭兵側ガチの人多すぎ案件だったような)」
ペルセウス「では軽いコントも済んだところで いいだろうか」
WPS「オレの上位体ストックの危機がコントだと?」
ペルセウス「私は今召喚者として魔力を使ったハーフィに従っている形だが――――」
ペルセウス「陣形成は ヒy んんっ」ゴホン
ペルセウス「陣形成はサモナーが行った よって奴ともごく僅かながら魔力のパスが設けられているのだが」
ペルセウス「そこから鑑みるに あまり時間が無いようなのだ」スッ
J「どこへ?」
ペルセウス「移動しながら話そう」
半鳥「どこに行くんですか?」
ペルセウス「場所は知らない だが君達は知っているのだと思う」
WPS「通訳してやろう『運転手をやれ猫肉 ぐぐぐぐぐ』」ペタン ペタン
J「奴の案内でなくて良かったと思うべきか」
半鳥「?」
J「師の運転を知らないのかい? いやはやラッキーというかなんというか 羽があるのはいいな」
807 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/05/30(水) 18:32:53.23 ID:pEpxlynjO
【数分後 路上走行中】
【Jの魔導車内】
J「4ドアので来ていて良かった」driver
半鳥「イス二つでも全然いいですけど私ー なんちゃって」後部座席
WPS「……」後部座席足元(着席禁止)
ペルセウス「儀式の応用で付与された霊体化とかいう能力がある 迷惑はかけないよ」助手席
半鳥「そーいうこと言ってんじゃねェーんですけどねー」
WPS「(ちょッろ)」
半鳥「 」stomp
WPS「へぶ」グリュィ
J「一息吐こう 付呪か何かか、玄関を開け放していたのに騒ぎにもならずに済んだし」
半鳥「そういえば服とか毛並みとかちょっと傷んだり荒れたりしてますけど 大丈夫だったんですか?」
J「ああ 少し手間と時間がかかったがへっちゃらさ 君と我が友には悪いがね」
J「自慢じゃないが 火力と殺傷の魔法で私を凌ぐ人間はこの国に五人もいない 伊達に軍部へ出向してはいないのだよ」ふふん
半鳥「よーーーーく知ってます ドリアードちゃんの傀儡フレームごと溶かしててハンター君と一緒にビビってましたから」
WPS「J教授スゴーい! 今度ぼくにも魔法を見ーせて!」
J「本体を全部集めてくれればとっておきの殲滅魔法GRB180530XXを教えてあげよう その身をもって」
WPS「なんて?」
J「では始めて欲しい 首狩りの」
ペルセウス「(首狩りの……)」
ペルセウス「……サモナーを引き入れた首魁は戦争をしたがっている」
J「戦争……」
半鳥「帝国とってこと? 軍隊が要るから教授を誑かしたの?」
WPS「死体が沢山出るな」ジュルリ
J「涎を垂らすなよスライム それで」
ペルセウス「あくまで戦争を模したという儀式の話だが 有り様はまさにそう 成り行きによっては被害者も出よう」
ペルセウス「土地に蓄積した膨大な魔力を用い 術者であるマスターが英霊であるサーヴァントを召喚」
ペルセウス「組んで殺し合う 斃れたサーヴァントの魂と延いては魔力を用意した器へと貯めてゆく」
J「貯めてどうする」
J「何処ぞの英雄を再現する魔力となればそれは確かに相当な量になるだろうが」
半鳥「塊にして売るとか? 工業用の魔力って 工場でなんかやって純度上げて固めるんだよね」
ペルセウス「違う ここのような魔導技術の知識とその膾炙が前提にある世界の儀式ではないんだ」
ペルセウス「端的に言えばその魔力を使って生き残った一組の願いを叶える」
ペルセウス「おおよそどんな願いでも叶うだろう 貯めておく器を"聖杯"と呼称することから一連の儀式はこう呼ばれる」
ペルセウス「聖杯戦争と」
808 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/05/30(水) 18:35:09.15 ID:pEpxlynjO
【帝都 随所にて】
809 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/05/30(水) 18:36:07.43 ID:pEpxlynjO
【帝都総合病院 特別入院棟】
【エレベーター】
病少年「ぁあっ……はァッ……がゥうグっ……ッ!!」ズギン ズギン
「寄る辺に従い……って 坊主 おい少年?」
「おい おいボウズ マスター! 起きろよ どうした立てねえのか? しっかりしろ!」
病少年「た……助 け」
病少年「助け て……」
病少年「だれか……!」
「……魔力が消えてってる? 循環系が死んでるのか」
「ったくしょうがないな……あー……よし 電力は魔力に置き換わってるみたいだし」
「スーツの生命維持装置でイケんだろ 俺の発明に不可能はねェ」
「コイツでどうだ……!」
810 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/05/30(水) 18:41:30.75 ID:pEpxlynjO
【同所 上層階】
『あなたのことは知ってる プレシア・テスタロッサ! やっぱり美人だ、本当に会えるなんて、しかもこんなところで!』
『優秀な魔法使い 魔導士 いいや魔術師を探してるんだ あなたなら完璧だよ!』
『これを 是非! 受け取ってくれ! いいよいいよ陣もやっとくよ任せて!』
プレシア『ちょっと、何を――――』
プレシア「(……)」チラ
"少々の用事"があるとして仕事の前に病院へ寄った
かつて『条件付きSS』という 実際の扱いに比して肩書きだけは至極妥当な評価を得ていた魔導技術者 プレシア・テスタロッサ
濡れ羽色の髪を揺らし 訝しげに目をやるのは右手
そう右手 右手の甲
突如現れた変人に焼き付けられたこの紋様の解析自体は 実はとうに済んでいる 高純度に結晶化された魔力と精緻な制御魔法
使いの者からしてまた体制側の仕業なのかとカマをかける意味でこの病院には検査に来た
結果そうではないことが判明した
医者の返答は、
医者『先日の検査ではコンシーラーか何かで隠しておられたのですか?』
医者『タトゥー消しをご希望であれば 整形外科に紹介状を――』
素っ頓狂なものだった
ただ予想通りではあったのだ 辻褄が合わなかった
プレシア「…………ボディガードの番犬にしては」
プレシア「手間がかかり過ぎているし 強いし」
プレシア「それに 明らかに必要の無い自由意志を持っているものね」
プレシア「ねえ 貴女?」
「(((まあ 特に願うものもなく喚ばれるまま応えたわたしの側にも責任の一端はあるのだろうが)))」telepathy
「……でも せめて後の世のローマがどうなってるか見たかったなあー!」霊体解除
「いくら平行世界を跨いで座に繋がるとはいえ 全然違う世界に喚ばれるってどういうあれなのだ?」
プレシア「霊体化 忘れないで頂戴……病人なのよ」
「(((ああすまないマスター けどローマの話はしたでしょう?)))」霊体化
プレシア「素晴らしい国だったそうね でもどこかの世界の古代文明の話でしょう? 時代が下りすぎていると思うわ というか」
プレシア「マスターと呼ばないでとも言ったはず 私をそう呼んでいい者はもういないわ」
「(((代わりを探すという約束だったな マスター権限を移譲する)))」
プレシア「追々ね」
「(((まだ済んでいないから無効だなぁ マスター? フフフフ 追々わたしもミス・テスタロッサに変えてあげよう)))」
プレシア「本当に皇帝だったの 貴女……?」
呆れるプレシア 待たせていた娘の元へ向かった
また検査ということで心配そうな顔をする愛娘を宥める
プレシア「(戦って 願いを叶える?)」
柔らかく微笑み その髪を撫ぜ
プレシア「(精一杯戦った そしてもう叶ったわ そんなものは必要ない……)」なで
ぼんやりと視線を投げた先で、
泣き腫らした顔の短髪の少女と目が合った
811 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/05/30(水) 18:49:37.42 ID:pEpxlynjO
【帝都 スラム街某所】
【半狼の隠れ家】
半狼「……」circle ready
捕まっているボスにも明かしていない隠れ家に人の立ち入った形跡があった
居を移してから瞬く間にゴミと生活用品で溢れた古い空き家
メインで使っているコーヒーテーブルの上にあった食べかけの朝食はハエの飛び回る台所へ勝手に退かされていて
出来たスペースに謎の置き手紙と謎の荷物がドサリ
罠を調べてから手紙と荷物を開けた
そして 隠れ家を荒っぽく掃除
今は 汚い床に鶏の血で 手紙に書かれた指示通りの陣を描き終わったところであった
手紙『ライカ 突然だがこちらは君の現状を知っている 上司を助けたいそうだね』
手紙『手の令呪は気に入ってくれたかな? それが参加チケットだから大事にしてね』
手紙『まあ胸と腹と尻に入れてるタトゥーに比べれば飾り気に欠けるだろうが』(ここで一度握り潰したせいでグシャグシャになった)
手紙『同封している鶏の血とハケで陣を描き 触媒にはプギオ 変な形のナイフを使ってくれ』
手紙『あみだクジで君のはそれになった』
手紙『それで喚べる英霊を使えば大抵の犯罪は上手くいくだろう ただし――――』
半狼「……他の六組をブチ殺せば好きな願いが叶う その方がてっとり早くて」
半狼「しかも そいつらも同じことを狙っていやがるだ? アホらしい」
半狼「……だが コイツはアタシのことを把握してやがる "嫌ならここへ"とかご丁寧に連絡先まで書いて」
半狼「しかも調べたらこれ警察署の番号じゃねえか……舐めやがって……」GrrrrrrrR
半狼「舐めやがッて!!!」ガシャァアン
部分獣化させた腕で鶏血の入っていたバケツを窓へ投げた
窓枠ごとぶち砕ける 苦労して描いた陣へは当たり散らそうとしない
つまり 臨む気でいた
裏切り者の方も 散発的に当たっている連中からはこれといった情報を得られていない
実際手に窮しているところではあったのだ
半狼「…………呪文……んだよ」カサ
半狼「召喚使いの連中 こんなハズいの毎回やってんのか……?」たじ
半狼「……ええと……スに銀と鉄 ソに石と契約のダイコウ……」wrong
何度か読み直し 八つ当たりで壊すものが無くなった頃
漸く召喚陣が光りだした
「……ここは……この世界は?」
半狼「よう 色男」スッ
半狼「レージュで命令する アタシに逆らうな」First Command Seals active
「これは 令呪? 唐突すぎる マスター これはッっ……ッ!?」キィィィィン
半狼「三回までで二回だったよな お前堅そうだしもう一回キメさせとくか」
半狼「絶 対 逆らうな 絶対服従 裏切ったら殺す ミスったら殺す 邪魔したら犯す」
半狼「勃てろやって命令して犯しながら頭から喰ってやるから」Second Command Seals active
半狼「分かった?」キィィィィィィィィィィン
812 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/05/30(水) 18:55:52.51 ID:pEpxlynjO
【帝都第二学園 新聞部部室】
後輩「うーん 見出しがイマイチかなあ どーするっスかねえ」サラサラ
後輩「あーあ 退屈ー 何か事件でも起こってくれればなあ ハデなやつ……」ぐでー
集中していて額に汗をかいていたことに気付き
右手で拭う
ペンだこを除いて女子らしい綺麗な手だった
爪は切られてヤスリ掛けで丸く磨かれ 馴染ませたハンドクリームで保湿は常に完璧
よく手入れが行き届いている 傷やシミはおろか 妙なアザさえどこにもない
もし手フェチの猟奇殺人者がいれば手だけ放って置かれない程の逸材であった
後輩「そんなに期待してないけど……あ」
後輩「けどあの先輩 なんか勘に引っかかるのよね……」
手持ち無沙汰にマイ資料という名の雑多な本棚を漁る
"魔法大学総長著 魔導生物図鑑" "スライム事件自伝本" "ヤス・ザ・ポートピアン" "気になった事件新聞欄のスクラップブック" "対戦傀儡ラジオドラマ第一期台本"
"切り裂き刑事パルド" "赤黒色の暗殺者が描かれたパルプコミック" "伝説の雑誌記者アサカワ 解呪体験手記" "悪魔の屁を轢け消防車"
"帝国資源獲得戦線 戦地インタビュー" "フォイエット〜二丁拳銃と黒仮面〜" "古びた赤い装丁の本" "点字の教会聖書" "栗色の長髪の女性と 水面に写る藍色の長髪の女性がヌードで座り込んでいる表紙の本"
全部一度は目を通している 当然目新しいものはない
適当にパラパラやって満足すると ファイルを整理しながらまた机に向かう
813 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/05/30(水) 19:00:53.97 ID:pEpxlynjO
【繁華街 古い大衆酒場】
【二階居住スペース 生徒会長の部屋】
当然本気にはしていなかった
しかし実際に召喚は成功 仰々しい血色の光と共にそれが現れてしまう
授業を空けて設けた平日休暇は終了
呆気に取られて口は半開きのまま 思い付いたように眼鏡を掛け直す
実家の稼業である酒場の余り物として食ってたピザから具がこぼれ落ち 大女はそれで正体を取り戻した
生徒会長「……あ しまった サラミ」ポロ
床を汚すのはあれだったので 捨てる予定だったトラックの古幌を自室に広げて陣は書いていた ピザをアテとしていたビールの成せる荒業である
玄関先に届けられた荷物 菌糸がどうのとメモに謳う新興宗教(?)のまじないを アルコール入った頭の悪ふざけにせよ生徒会長はやったのだ
彼女がそうしてみた理由があり 理由を醸成した背景がある
だがそれはこうして箍の緩んだ時くらいにしか表出しない些細な冗談話程度のものであり 本当に実行したいと考えたことはない
しかし部屋に登場した異文明風の兵士然とした女性と 手の甲に焼き入れられた印が
それを実行する具体的な手段を得たのだということを如実に表していた
生徒会長「…………サーヴァント?」
「はいサーヴァントです あなたがマスター?」
「なんかゴッツイ方……これは期待できそうかもですよ」
生徒会長「マスター うん そうなるみたいね……そうなるみたい その」headache
歯切れ悪くメモ書きを見る カンペか
生徒会長「聖……セイハイの その取り合いの あー 戦争をやるの?」
「他にどういう用件でサーヴァントを喚ぶんですか」
生徒会長「……ビールの勢いで……?」
「は?」
生徒会長「待って ちょっと待って……水を……」のそ
「ちょちょっ 私の召喚酔っ払いながらやってたんですか!?」
「ってゆーかよく見たら女性……ッ? ……マネーレンダーのボスみたいな貫禄……」
生徒会長「酔っ払いながら じゃない 酔っ払ってやったの あと金貸しじゃないぞ……」
生徒会長「待ってくれ本当……待って 状況整理したい頭の」open fridge
「ええー……マスターやる気は」
生徒会長「何への……?」take water
「何へって 聖杯戦争で優勝するんでしょう??」
生徒会長「ああ聖杯戦争への……ああ そうねちょっと 聖杯戦争へ臨む心構えとかあればレクチャーしてもらってもいい?」
「…………マジですか……ええーうっそ……」
生徒会長「……飲む? 水 硬水だけど」
「……瓶入りの水……」
「あの失礼ですけど……この世界の衛生的なあれってどーいう感じなんでしょうか」
生徒会長「買った水だよ 買えば真水は手に入る国って答えれば察せるんじゃないか」つ栓抜き
「……なるほど まあいただきます」キュポン
814 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/06/01(金) 19:13:43.16 ID:Xj6gWJtp0
更新乙です!
とりあえず出揃った感じですかね?
様々な境遇はどの様にぶつかりあい、そして収束してゆくのか...
815 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/02(土) 05:22:22.12 ID:NVGCghpV0
あー、病少年が召喚したのってもしかして……
816 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/06/06(水) 10:25:52.51 ID:mCP5Qdl90
乙!
巻き込まれ系妙齢淑女と化したプレシアさん
しかし、令呪の移植って腕切り落とすとか何とか見た気がするけど、その辺大丈夫なのかね
817 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/06/09(土) 11:17:53.96 ID:TLyhvodDO
【帝都 工業地区路上】
【運送屋トラック 走行中】
ブロロロロロロ……
ソバカス面の先達「上がり昼過ぎンなっちまったべなァ 大丈夫かおめぇ」driver
青年「え?」うつらうつら
ソバ先「学校行ってんだろ? 時間」
青年「あ……大丈夫っス今日夕方からなんで 社長それ知ってて」
青年「だから回してんだと思います ありがとうございます」
ソバ先「ちゃんと行けよォ? 一杯勉強してダチ作れェ? でねぇと俺みたいにつまんねーおっさんになっちまうぞォ」
青年「はは……」
ソバ先「まァーまずぁその眉間のシワだぁなァ こえーぞおめぇそれ、ムショ上がりに見えっからよォたまに ええ?」
ソバ先「ニコッといけ! ニコッと! エガオが一番のお化粧よォ〜〜ぉ↓ォ↑〜〜っと」sing
青年「もう呑んでんすか?」
ソバ先「終わったからァ!」げははは
青年「程々にしてくださいよ 肝臓」
ソバ先「カカァみてーなこと言うなよぉ〜」
青年「はは お 着きますね」
ソバ先「あとやっとっからよ シャワー浴びてサッパリしてけな ヒゲも剃っとけな」
青年「ありがとうございます お疲れ様です」
ソバ先「おーう」
818 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/06/09(土) 11:24:04.74 ID:TLyhvodDO
【運送会社 更衣室】
青年「(明日は休みか……夕方まで寝てよ 飯は豆缶でいいや)」着替え
青年「(ああダメだ洗濯溜まってっから洗い行かねーと……ダリー)」
青年「あ お疲れ様です」
「おうお疲れー」
「お疲れさんですー」
青年「(寝るのはそれからだな……)」
「社長 お疲れ様です」
運送社長「おゥお疲れ コマイヌいるか?」
青年「!」
「戻ってます 着替えてましたけど その社長がよく言ってるコマイヌってそれなんなんすか?」
運送社長「東の島国に居る犬の魔物 石像がたくさんあってよ こう グッとこう眉間に皺がめちゃ寄ってんだ」
「なるほど ははは……」
運送社長「まーコマでイヌなのはお前ら全員そうだけどな」ガチャ
青年「社長」
運送社長「よォコマイヌお疲れ お前明日夜出ろ」
青年「夜便ですか?」
運送社長「段取り組みてえから電話してんのに昨日からこっちハゲが捕まらねェ バックレやがった」
運送社長「奴ぁ懲戒免職だ 他で強化魔法使える奴は出払ってる 行け」
青年「俺 まだ習得しきれてないですよ 魔導炉にかけれるレベルのやつ……」
運送社長「そうだな ほら」つアンプル
青年「……」
運送社長「八時からだから 早退して来いよ」
運送社長「まだ単位に影響しない程度には休めるだろ? 大丈夫だよちゃんと卒業できる程度には考えてやるから」
青年「(それは俺がなんのアクシデントもなく体調も崩さず 仕事以外に休みを使わない場合の だろ……)」
運送社長「手当ては弾む 分かったな 以上」
バタン
青年「あ〜〜 マジか」
「うーわ ご指名かァ〜……」
「災難だったなコマよぉ ほら コーラ買ってやっから気張んな」vending machine
「俺にもくれ貧乏なんだ」
「スったからだろ? 修道院か公園に行くといいことがあるよ」buy cola
「ボコされるわ」ホームレスに
「コマ ほれ」つコーラ
青年「すんませんありがとうございます でもコマはやめてくださいって……」ギャリン グビ
「いや結構しっくり来てんぜ呼びやすいし」
「犬の魔物だってよ」
「こないだ警官殺りまくった奴じゃねえの オレンジの犬っつってなかったかラジオで」
「いや魔人だったらしいぞ 巨乳のデミ女になったって見た奴が言ってた」
「デミかよ ねーわ」
「毛ジラミ確定だっていうじゃん」
「それ以前に食い千切られんぞおめー」ハハハハ
「心配ねェ。俺の皮は鉄壁だ」キリッ
ギャハハハハハハハ
青年「毛ジラミよりやべーやつじゃないっすかそれ 早く医者行った方がいいスよ」アハハハ
「うるせー!」
青年「はははは…… じゃ お先失礼しまーす」
「うーい」
「お疲れー」
819 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/09(土) 20:40:55.77 ID:g2oplJlV0
うわ何その辛い現実……乙
820 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/11(月) 08:13:59.68 ID:8cwhEoQl0
乙!
で、この苦学生さんはどうなってしまうのか……
821 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/06/12(火) 23:49:57.41 ID:fMt6Qg6nO
【数時間後 路上某所】
ペラ ペラ
バイカー1「リーダー? リーダー! またそれ見てんすか 赤い本」
バイカーリーダー「おう」
バイカー2「……読めねえな……ルーンってやつですか? サッパリ分かんねえ」
Bリーダー「俺にも分からん だが貴重品だっていうしな、終わった後で値打ちモンなら気になんだろ それより遅ぇぞ」パタン
バイカー2「もうそろそろ……あ 来ました」
ロロロロロロロロルルルルルドルルルドルンドルンドルン
バイカー3「遅くなりやした」キキッ
Bリーダー「獲物は?」
バイカー3「どうぞ リストっす」つ紙
Bリーダー「リストだと? いつもは口頭だろうが、何件もあるってことか」check
バイカー3「どうもそうみてえで」
Bリーダー「……あー こいつぁ参ったな」カキカキ
Bリーダー「明らかに"ダンナ"に出張ってもらうのを前提にしてる 頭数だけじゃキツい仕事だ」
バイカー4「ダンナか……」
バイカー1「いいじゃないスか! 帝都入ってからこっち、派手なのはご無沙汰だったじゃないすか」
バイカー3「渡りに船って具合だよな 渡されて試しでしか喚んでませんし、いっぺん見とく方がいいんじゃないですか?」
Bリーダー「……」
バイカー1「お前はどうだよ」
バイカー2「リーダーに従う どうしますリーダー」
Bリーダー「いや一応考えを聞いておきてェ どう思う? 参考までに――――」
Bリーダー「俺達ゃ国外からの労働者扱いでここ帝国に入って来てる 二十八人全員な 目的は帝国での足掛かり作りだが……出国期限が迫ってる」
Bリーダー「現状 拠点を築くにゃ至ってねえ が とりあえずシノギの当ては見付かった」
バイカー2「車ドロ(車泥棒) 大陸中央で生きてきた俺達には朝飯前っす」
822 :
◆1qS/J7BvDg
[sage saga]:2018/06/12(火) 23:51:17.92 ID:fMt6Qg6nO
Bリーダー「そうだ そもそも手を出してねぇ分野だったようだが ここへきて"地元の連中"が浮き足立った 発端のイベントがよく分からんかったが……」
Bリーダー「とにかく流れが来てると思う センセイは大口の客になる ダンナを寄越したのも俺らを見てる、試してるんだ」
バイカーs「…………」
Bリーダー「聞いておきてェ このままスゴスゴと中央に帰って――――」
Bリーダー「またクソ共和国と帝国のタコのおこぼれに預かる生活に戻るか? 戻りたいのか? あ? どうなんだ?」
Bリーダー「俺ァ嫌だね!!」
Bリーダー「なんとしてもここで一旗揚げんだ! 故郷ごと負け犬にされ続けた今までにケリをつける!」
Bリーダー「俺らの故郷は修羅の国だァ! 甘ったれたハナ垂れインペリアルどもが来りゃ三分でケツの毛まで毟られる無法地帯だ!」
Bリーダー「そこでイワした俺達の、そん中でも選りすぐりの精鋭がここにいるお前らだ! いいか お前らは俺の子分でも手下でも ましてやコマでもねェ――――」
Bリーダー「おらァ! 俺達はなんだ!?」
「兄弟だ!」
「家族!」「家族」
「家族だァー!」
「兄弟姉妹だ!!」
「運命共同体っす!!」
Bリーダー「そォだ運命共同体だ! いいこと言ったぜ、そう家族なんだ! この世界のどこに居ても心は一つよ!!」
823 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/06/12(火) 23:55:17.21 ID:fMt6Qg6nO
Bリーダー「故郷の兄弟達にでっけえ土産持ってくぞ! おいお前 どうなんだ! やる気はあっか!?」
バイカー2「アぃリーダー! 家族のために! リーダーに従う!! やりましょうでっけえのを!!」
ウオオォオオオオオオォオオォオォォオォオォオォオォオォォォォ
ドルルゥン ドルルゥン ドルルゥン ドルルゥンドルルゥンドルルンドルルンドルルン
Bリーダー「リストを回せ! 小隊ごとに獲物を振った、どいつもこいつも骨がありゃあがるがいつも通りやれば問題ねェ!」ドルルンドルルンドルルンドルルン
Bリーダー「一号から四号は情報管制! 俺が先陣を切る、ついてこいてめえら!!」ドルルルロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ
Bリーダー「繋いだか? 繋げ!」biker radio
バイカー1『一号隊感度良好』
バイカー2『OK二号』
バイカー3『三号繋ぎました』
バイカー4『四号オーバー!』
Bリーダー「狙いは公共車両だ! パトカー 消防車 ミートワゴン 交通機関!!」
『交通機関ってのは!』
Bリーダー「路面電車だ」
『ヒューーー!』
『マジっスか!? うおおっしゃ!!』
『腕が鳴るわァァア!』
Bリーダー「冗談だよォ どうやって掻っ払うんだよんなモン!? ガハハハハ ゆくゆくは頂くがなァ!」
Bリーダー「今日はバスを狙え! 二階建てのやつがいい、挨拶代わりにゃ丁度良かろうよ!!」
『リーダーの隊がサツ行くんスか!?』
『危ねェ 俺らに任せてください!』
Bリーダー「誰にモノ言ってんだァ最強は俺だ! 最強のヤツが最強のヤツに当たンだろが!!」
Bリーダー「四号! 寄れ!!」ヒュンッ
バイカー4「!」パシッ
Bリーダー「客が居る! 殺しは無しってのがセンセイからの絶対条件だ!」
Bリーダー「上手く使えよ! 暴れっぷりを後で聞かせてくれや!!」
バイカー4「アぃリーダー!!」
ドルルルロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ
ブロロロロロロロルルルルロロロロロロロロロロロドロロルロロロロロ……
824 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/13(水) 05:05:39.00 ID:x2X9W7OI0
乙!
まー、やる気に満ち溢れたファミリーです事
825 :
チッ!! やられた 予想がつかなすぎる のんびりしてられないってか……
◆1qS/J7BvDg
[sage saga]:2018/06/14(木) 00:51:59.63 ID:iHVkAgn1O
826 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/16(土) 18:56:05.60 ID:IuHZwy1G0
電車なんてどうやって盗むんだろな。いや、魔法を使えるんなら空を飛ばせて?
827 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/17(日) 19:51:26.35 ID:ZGxXZvvL0
ワープゲート魔法とか使えりゃ楽?
828 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/06/19(火) 12:35:49.34 ID:LEbxW9Pj0
ポートピアとかwwwってかそっちにもあんのかいw
829 :
◆1qS/J7BvDg
[sage saga]:2018/06/25(月) 16:43:43.58 ID:KgDByhkmO
【数分後 夕方前】
【夜学生主要登校時間帯】
【某所路上 乗合バス二階席】
青年「……」read textbook
青年「ん〜」difficult
青年「(いかん いかん 眠い……シャワー浴びてちょっとでも仮眠しときゃあよかった)」yawn
青年「(目覚まし時計のネジ変なんだよな 一時間早く四時に起こされた時は イラっときた後でヒヤっときた……)」
青年「(一時間遅かったらヤバかった 働かなきゃすぐに死んじまう 誰も助けてくれないんだから)」
青年「……」
青年「何のために通ってんだろうな」
暗澹としたダウナーな哲学に思考が引き込まれそうになった矢先
それは来た
始めは単に 魔導単車が集まっているだけなのだと思った
交通量が多く また道路が入り組んでいる都市部では 小さな荷物の輸送他 個人の移動手段としても重宝されている乗り物
何も珍しいことはない
ウオン ウオン ウォオン……
青年「(……んだようるせえな またかよ)」
青年「(鳥の次は バイクか――――)」
苦学生が座席越しに振り返るのと
艦船のそれ程ある巨大なアンカーが 冗談みたいに馬鹿太い鎖を曳いて 二階の手摺に引っ掛かったのは同時だった
ガキィィッ
「アンカー行ったァ!」ギャギャギャギャギャ
「後方二ヶ所オーケー 次ィィ!」
「強化急げやああぁ!!」
「玉ぁあ掛けぇえぇええ!」
エンジンに掻き消されないよう 絶叫でやり取りされる作業手順
単純に聞き取れなかったというのもあるが 乗客の殆どは連中のやりたいことと その言葉の意味を理解できずにいた
ただ一人を除いて
青年「……玉掛けっつった?」
二階席の他の乗客は一階へ引っ込んだ 苦学生は残った ヒーロー願望があるわけではない 決してない しかしその視線はアンカーに釘付けになっていた
青年「(このアンカー クレーン車の魔導フックを改造してんだ)」
青年「(付呪が起動してる……これは……工業用の強化魔法だ)」
その辺の悪漢でないことを雰囲気で察し 車内は騒然とする
車掌は混乱を抑えようと声を張った が その車掌が非常事態に冷静でいられない
830 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/06/25(月) 16:44:24.98 ID:KgDByhkmO
バス運転手「(なんだ畜生ッ こいつら何する気だ? チェーン掛けるだけ掛けて随走してきやがる 暫くは直進するしかないが……)」
バス運転手「(ひいふうみいよの ええい 何台持ってこようがバイクなんぞで綱引きできるわきゃねえだろう)」
大型車両の図体では 点々と通りに接続されている路地には入れない
進めば随行 曲がるのは不可
ならばブレーキを踏めばいい
運転手の足がペダルに乗り 踏み込む前に窓が鳴る ノック音
二人乗りのバイクだった
細長い車体 巨大なタイヤ 魔導排煙を吹き出す太いマフラー 乗り手の風体からしていかにも暴走族ですイェァーといった見た目
外を見た運転手の顔を睨め付けるものが四つ
飛行帽を被った後ろのアホがニヤけて向ける 遮光ゴーグルのレンズと 切り詰められた水平二連散弾銃 眼光と銃口が運転手を射竦めた
散弾銃が縦に振られる "窓を開けろ"
運転手「………………」freeze
"開ァ"
"けェ"
"ろ!"
運転手「っ……」open window
「遅ェぞ死ぬかァ!?」ジャキ
「やめろバーロー!! おい速度ォ落とすなよ死にたくなきゃあな」
「殺しに来たんじゃねえ! 指示に従えや全員生きて降りられるぜェェ?」
運転手「わ 分かった」
固唾を飲んで見守る乗客は これで自分達が白昼堂々目立つ見世物の登場人物と相成ったのだということを ハッキリと理解させられた
並走してショットガンを突き付けられた運転席 鎖でバスと散歩するバイク 護送するかのように群がる暴走族風ライダーズ
否が応でも目立ちまくる 周囲の人間が事態に気付きだし 公衆電話と警官を探し始めた
それが分かり切っているから連中の仕事も速い
青年「ここを こうして……」カチャカチャ
ジャララララララララ ガキィン
青年「前の手摺もか これはちょっとヤベェかも……警察は何してんだ」コソッ
後方に続き それぞれ左右脇からバスの前に出たバイクが二階席の手摺にアンカーを射出 これで四方から鎖がかかった
青年の姿は下から見えていない 道路の直進ももうすぐ終わる
すると運転席からホールドアップ係が離れた
831 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/06/25(月) 16:46:36.69 ID:KgDByhkmO
運転手「……?」
「行け! 行け! 上げろ!」
号令で鎖を繋いだバイクが一斉に 変形
両輪が車体正面に対してきりもみに半回転 ホイールを路面へ向ける形になる
どうやってるのかタイヤは空転したまま ホイールがローターの役目を果たしているとでもいうのか これで揚力を得ているらしい
魔導垂直離着陸機 バイカーの集団が一転して空賊に変わった
青年「(クレーンはねえだろうと思ってた やっぱ連邦製の変態メカだったか……だが 細工は粒々)」
青年「(吊り下げてバスごと持ってく気なら もう上にいるのはマズいよな)」コソコソ
アンカーから離れ 苦学生は手摺に隠れたまま一階へ降りようとした
その時だった
パチッ
青年「っ? ちっ んだよ静電気かよ脅かしやがって」
階段を降りきり まず目に入るのは運転席
運転手の様子がおかしい
眠気と戦っているかのように船を漕いだかと思うと そのままハンドルに顔からいって突っ伏した
クラクションがけたたましく響き渡り バスのコントロールが失われる
青年「ちょッ……!」バッ
ガクンン……ッ
青年「! 浮いて……早いな」
あわや激突 はたまた横転かと思われたが それより先にバスが浮かんだ
吹き抜けになっている二階席の手摺に構造強化魔法をかけ堅牢化し無理矢理吊り金具に
狂暴な唸り声をあげる魔導炉の尋常ならざる馬力と 四隅から吊り上げる四台の一糸乱れぬ操縦が織り成す 曲芸犯罪
832 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/06/25(月) 16:48:03.40 ID:KgDByhkmO
バランスを崩した苦学生が壁に掴まり 顔を上げた拍子に客席が視界に入る
青年「!」
乗客達は運転手と同様 突然魂を抜かれたかのように 異様に脱力して座席や通路に倒れ付していた
そういえば悲鳴の類いを聞いていない
青年「ちょっと どうしたんですか? なあ! 起きて! 全員か」
青年「何をしやがっ――――」
揺れる車内 座席に手をつきながら通路を最後尾まで歩き声を掛けていく 十数名の乗客は完全に沈黙していた
手口はまったく分からない 何故自分だけ無事だったのかも 二階席に隠れていたことが関係していそうだがそれはいい どうせ知らない魔法だ
だが
だが原因は分かった
こいつだ 間違いない
フルフェイスのバイカー「――――――――」
空も走る以上視界確保のためなのか 理由は定かでないが バイカー共はどいつもこいつもまともなヘルメットを被っていなかった
そんな中にあって一人 バスの真後ろを走っていたフルフェイスヘルメットのバイカーと目が――――バイザー越しに恐らく――――合った
ファンファンファンファン ファンファンファンファン
警官1〈お前達何をしてる!? バスを降ろせ!〉拡声
FFバイカー「 」cruise
警官2〈止まれ! おい一番後ろのお前!!〉拡声
FFバイカー「 」中指
警官2〈てめッ 警察舐めんなよコラ!!〉
バスの高度は上がり 背後からは後れ馳せながらもパトカー数台 誰がどう見ても撤収時
しかしそのバイカーだけは飛ぼうとしない バイクを変形させる素振りすらない
振り返りもせず丁寧に返事を返すバイカーの 視線は苦学生に固定されたまま
ショットガンを向けられた訳でもなし だのに釘付け 蛇に睨まれた蛙のように 見下ろす苦学生は動けない
してやった と小さく得意気になっていたところへ 鏡面加工の視線だけで冷や水をぶっかけられたような
得体の知れない感覚があった
なんとなしに苦学生は直感する こいつは人間じゃない?
833 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/06/26(火) 06:50:51.76 ID:aMOA4A0D0
乙!
っはー、豪快にやるなぁ
謎のリーダー的存在も気になりますね
834 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/06/26(火) 20:49:43.25 ID:Lg8YMDHr0
中指、立てるんだ♪(ポプテピED感
835 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/07/19(木) 06:01:10.84 ID:Ua5KIGZB0
しっかし、飛行機形態バイク複数機でバスを引っ張り上げるなんて、それぞれが高度で精密な飛行技術を持ったうえで、完璧な
チームワークを発揮しないと出来ない曲芸飛行を、ろくに訓練なんてできる環境にない筈の盗っ人集団がやってのけるとか凄いな
836 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/13(月) 08:31:57.60 ID:P3VdEGeP0
警察さん達、大体毎回のストーリーで出ずっぱりだよな。お疲れさんだな
俺、次にストーリー安価踏めたら、絶対小ネタにするんだ
837 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/15(水) 06:04:28.07 ID:jKViEB4J0
>>1
さん、生きてんかな?
838 :
死んだように生きてる
◆1qS/J7BvDg
[sage saga]:2018/08/15(水) 12:17:39.13 ID:fyjgHEEsO
839 :
ごめんなさい 待ってて……暑くて死にそうなんです真面目に……
◆1qS/J7BvDg
[sage saga]:2018/08/15(水) 12:18:47.59 ID:fyjgHEEsO
840 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/16(木) 17:22:13.12 ID:LzsRP7v60
生存報告感謝!
いや、今年の夏は本当、エグい酷暑が多いですもんね。
しっかり養生(軽作業じゃなくて)するべきそうするべき
841 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/10/16(火) 20:28:11.83 ID:bMxI1nbt0
ようやく秋ですな〜
842 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/23(金) 08:41:51.91 ID:N7n09kXf0
く〜ろ〜ま〜く〜
843 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/02(日) 11:32:30.13 ID:6WvUcszY0
いや〜、陽がないと冷えるね〜
844 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/24(月) 12:17:35.01 ID:UuWIC/vF0
クリスマス……そういえばこのスレにも聖人喚ばれてたな
845 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/05(土) 08:36:45.92 ID:xDpYMXqC0
あけおめー
846 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/02(土) 08:32:42.69 ID:zHVFtv0K0
う〜ん……まだ来て下さるかねぇ?
847 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/04(土) 15:51:49.04 ID:T/xKmjGZ0
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