【ダンロン】ダンガンロンパ・クエスト【オリキャラ】

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663 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/12(水) 21:48:16.30 ID:fSwyz+vA0
【スケート場】

赤穂「ここはスケート場か……」

スケートなんてやる機会もなかったんだよな……今となってはこの足でさらに難しいだろうし。

赤穂「牡丹は滑れるのか?」

御影「やった事ない……」

赤穂「……」

まあ、牡丹も普通の青春とは無縁だったろうしな……

道掛「どわあああああっ!?」

御影「あっ、道掛だ」

見事に滑ってるな……身体全体で。

道掛「くっそ!なかなか難しいなこれ!」

赤穂「道掛」

道掛「おっ、赤穂と牡丹ちゃんか!スケートってなかなか手強いな!」

御影「よくチャレンジする気になるよ……」

道掛「あはは、まあ身体動かしてりゃ色々考えずに済むしな」

赤穂「……」

道掛「考えたってろくな事思い浮かばねえし、苗木の事も鞍馬の事もわけわかんねえけど……」

御影「道掛……」

道掛「俺はやっぱり身体動かして何も考えねえ方が似合うんだよな!だからもっとスケートに挑戦するぜ!」

そう言って道掛はまた滑っていってしまった……

御影「相当まいってるねあれ……」

赤穂「道掛、苗木や鞍馬とよく話してたからな……」

その果てがあれで、道掛にとってはショックな事だったはずだ。

赤穂「今は、そっとしておこう」

御影「うん」
664 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/12(水) 22:27:20.13 ID:fSwyz+vA0
【巨大冷凍庫】

赤穂「これ、建物丸々冷凍庫になってるのか」

御影「防寒用の服あるし、入ってみる?」

赤穂「そうだな……」

中は確かに寒かった……でも外が酷いからむしろ助かった感がある。

津浦「……」

赤穂「津浦?」

津浦「ああ、Mr.赤穂にMs.御影……」

どうしたんだ、何だか様子がおかしいけど……

津浦「ここを見てください」

御影「設計……あっ」

壁に彫られた設計士の名前、それは【グレゴリー・アストラル三世】。

赤穂「この冷凍庫は、グレゴリーが設計したのか……」

津浦「こんな形で、またあの人の名前を見るなんて」

壁の名前をなぞる津浦の横顔は複雑な表情で。

前を見る決意はしてても、ふとした事でまた立ち止まる……このコロシアイのつける傷をはっきり見せられたような気がした。
665 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/22(土) 20:14:01.59 ID:JMKU4sQA0
【温泉施設】

赤穂「ここは温泉か」

御影「寒いからありがたいね……」

兵頭「あら、お2人もこちらに?」

六山「あー」

赤穂「……六山は何をしてるんだ?」

六山「マッサージチェアだよ。結構肩とかこるんだよね」

御影「……まあ、そうかもね」

兵頭「こうしたマッサージ器具にサウナ……だいたいの物は置いてあるようですね」

赤穂「近くに温泉あるからかここにいるだけでなんだか暖かいな」

六山「あっ、そうだ。わたしと兵頭さんはこれから温泉入るけど2人も一緒に入る?」

赤穂「男1人は気まずいし遠慮しとく」

御影「えっと、私は……」

チラリと牡丹がこちらを見てくる。

ははあ、これは……

赤穂「牡丹、寒かったろうし入ってきたらどうだ?」

御影「えっ、でも」

赤穂「調査する場所は残り1つみたいだし、そっちは俺がしとく。それに」

赤穂「牡丹には友人付き合いを大事にしてほしいしな」ポンポン

御影「うっ……わ、わかった。ごめんね、私が連れ出したのに」

赤穂「いいっていいって。2人共、牡丹をよろしくな」

兵頭「わかりました」

六山「はいはーい」

さて、俺は調査続行といくか……
666 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/22(土) 20:22:12.22 ID:JMKU4sQA0
【モノクマ量産工場】

赤穂「うわっ!?」

なんだここ……モノクマが大量に!?

如月「……見るに堪えませんね」

佐場木「今回ばかりは貴様に同意だ」

赤穂「……」

珍しい組み合わせだな……

佐場木「どうやらこのモニターに奴の残りが表示されるようだな」

如月「……現時点で82体ですか」

赤穂「少ないのか多いのか判断に困りますね」

如月「一体一体は壊そうと思えば脅威ではありませんが」

佐場木「貴様に関しては他の誰かが処罰される……ふん、82人の命を引き換えにする計算か」

如月「そんな事出来ませんよ。たとえ1人でもそんな形で亡くしたら……僕は僕を許せません」

赤穂「……」

如月さん……
667 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/22(土) 20:29:23.79 ID:JMKU4sQA0
赤穂「……」

新しい島の調査は終わったけど……

赤穂「ああ、そういえば」

俺第3の島をしっかり調べた事なかったな……

赤穂「ほとんど病院にいたし、暗かったしな」

病院には今、土橋もいるはずだ。

様子見がてら、行ってくるか……
668 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/22(土) 20:50:23.90 ID:JMKU4sQA0
【病院】

遠見「赤穂殿?」

赤穂「遠見、土橋の様子は?」

遠見「固定はしたであります。後は自然治癒に任せるしか……本当は手術した方がいいのでありましょうが」

土橋「大袈裟だよメメ」

赤穂「土橋」

病室から出てきた土橋はギプスで固定した腕を吊っている……あれを人の手でやったんだよな。

土橋「土木作業してると結構骨折とかに関わるのも多いし、そんなに深刻でもないってなんとなくわかるから」

遠見「……何かあれば言ってほしいでありますよ」

土橋「うん、ありがとう。政城も来てくれてありがとうね」

赤穂「いや、そんな……それで、心はどうなんだ?」

土橋「……辛いし、憎いよ。誠を理解なんて出来ないし、したくもない」

赤穂「……」

土橋「でももう誠はいない。ジェニーの遺言もある……だからアタシは、生きるために頑張っていくよ」

赤穂「そう、か」

遠見「無理はしないように、お願いするであります」

土橋「うん」
669 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/23(日) 20:16:47.04 ID:IzOHySQA0
【ホテルミライ・レストラン】

ここに集まるのも久しぶりだな……

佐場木「相変わらず手がかりはなしか」

如月「黒幕である苗木さんがいなくなったとはいえ、犠牲を考えると全く喜べませんね」

津浦「しかし、Mr.苗木が今までの全ての事件の引き金を引いていたのなら……これからはそういった事はなくなるのでは?」

兵頭「そうも言っていられないでしょう。私達の中にもう1人の黒幕がいるのならば」

苗木とモノクマが告げたもう1人の黒幕……

それは間違いなく疑心暗鬼の種を俺達に植え込んでいた。

遠見「それなのでありますが……今は考えない方がいいであります」

道掛「な、なんでだ?」

赤穂「単純に手がかりがない。この状態で疑いあってもただ険悪になるだけだ」

六山「ヒントなしでしらみ潰しにしてもこういうのはクリア出来ないもんね」

御影「それに……多分今までみたいには動けないんじゃない?」

土橋「もう1人が誠みたいにしたら今度こそ黒幕いなくなるもんね」

黒幕の存在は不安材料だ……でもそれで本末転倒の事態になるのは避けたい。

だから俺達はこんな逃げのような選択をするしかなかった……
670 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/29(土) 21:44:08.13 ID:amIDGLVA0
【ホテルミライ・レストラン】

赤穂「……はあ」

話し合いでも特に実りはなく、俺達は解散する事になった。

佐場木は道掛を連れて新しい島の調査。

遠見は動きにくい土橋の手伝い。

牡丹は兵頭や津浦と頭の包帯を変えに行って。

如月さんはいつの間にかいなくなっていた。

そういうわけで……

六山「……」カチカチ

俺はなぜか六山と2人でレストランにいた。

赤穂「……」

だけど会話がない……六山がゲームしてるのはいつもの事だけど、いつにも増して空気が重い気がする。

六山「苗木くん」

赤穂「えっ?」

六山「わたしにも死んでほしかったのかな」

赤穂「……」

苗木は俺達全員を殺したくて直接鞍馬とジェニーを殺した。

それは、六山も例外じゃないだろう。

六山「結構仲良くしてたつもりだったんだけど、むしろ嫌われてたのかなぁ」

赤穂「……」

六山「苗木くんはわたし達を異物だって言ってた……彼からしたらわたし達はバグだったんだね」

赤穂「六山……」

六山「今まで色んなバグに対処してきたけど……まさか自分がバグ扱いされるなんてなぁ……」

ゲームをしていて下を向いている六山の表情はわからない。

だけど、その悲しげな声に俺はなんて言ったらいいのか、わからなかった……
671 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/01(月) 21:35:35.24 ID:ZgPtUigA0
気まずい空気から逃げるように外に出ると、牡丹と兵頭が歩道を歩いていた。

病院から帰ってきたみたいだな。

御影「あっ、兄さん」

赤穂「津浦は一緒じゃないのか?」

御影「また冷凍庫行くって別れたんだ」

赤穂「そうか……ああ、巻いてないみたいだけどもう包帯はいいのか?」

兵頭「私達は元々気絶させるための怪我だったので……苗木さんもそこは考えていたようです」

御影「私達がその場で殺されなかったのは、万が一見つかって学級裁判が起きるのを避けたかったんじゃないか……って兵頭が」

なるほど……あの時はまだ2人までのルールはなかった。

苗木はリスクを避けつつ全滅させるつもりだったはずだからな……

兵頭「しかし……苗木さんは黒幕だというのに、モノクマはなぜあんなルールを追加したんでしょう」

御影「どういう事?」

赤穂「苗木とモノクマは黒幕として繋がっていたはず……それなのにモノクマはむしろ苗木を邪魔するようなルールを作った」

御影「あっ、そうか」

兵頭「案外、モノクマは苗木さんとは違う目的で動いているのかもしれませんね」

違う目的……苗木が俺達の全滅なら、モノクマの目的ってなんなんだ?
672 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/01(月) 22:10:42.75 ID:ZgPtUigA0
【モノクマ量産工場】

佐場木「……」

赤穂「佐場木?」

モノクマの数が表示されるモニターを睨んで何をしてるんだ?

道掛「おっ、赤穂も来たのか」

赤穂「佐場木は何をしてるんだ、あれ」

道掛「ああ、今日でここに来てから2週間だろ?モノクマがどれだけの間隔で増えてんのか調べてんだと」

赤穂「そうだったのか……」

佐場木「……ふん、なるほどな」

道掛「おっ、終わったのか?」

佐場木「モノクマは4時間に一度、1日6体量産されるようだ」

赤穂「4時間に一回……また多いのか少ないのか微妙な数字だな」

道掛「つうかこれ止めるスイッチとかねえの?これとか」

道掛が壁にある見るからに怪しい赤いスイッチを押そうとする。

……それ押して大丈夫なやつなのか?

赤穂「ちょっと待……」

モノクマ「こらー!」

道掛「うおっ!?」

モノクマ「何してんの道掛クン!この工場の自爆スイッチ押そうとするとかさ!」

道掛「これ自爆スイッチなのかよ!?」

佐場木「なんでそんな物がこんな所にある」

モノクマ「うぷぷ、自爆スイッチはやっぱりロマンかなって思ったんだよね」

赤穂「ロマンって……」

モノクマ「だけど押すのは許さないよ!もし押したらおしおきだからね!」

道掛「危ねえ……押すところだった」

赤穂「少し考えた方がいいぞ……」
673 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/03(水) 22:13:55.06 ID:u3WptC/A0
調査を再開した佐場木達と別れた俺は津浦の様子を見に冷凍庫に向かう。

津浦「……」ハァ-

白い息を吐きながら津浦は冷凍庫の中心に立って目を瞑っていた。

赤穂「津浦」

津浦「Mr.赤穂」

赤穂「あっ、もしかして邪魔しちゃったか?」

津浦「いえ、大丈夫ですよ」

津浦は冷凍庫を見渡しながら目を細める。

津浦「Mr.グレゴリーは……なぜ設計を続けたのでしょう」

赤穂「えっ?」

津浦「ワタシの両親の事故のように、いくら彼自身が素晴らしい設計をしてもそれを歪められて責任を押し付けられて」

津浦「あの人は、絶望しなかったんでしょうか」

赤穂「……」

グレゴリーがどうして設計を続けたのか、か。

赤穂「きっと、好きだったからじゃないか?」

津浦「好きだったから?」

赤穂「やっぱり絶望は、したと思うんだ。苦しくて辛くて悲しくて……でも好きな設計をそんな形で終わらせたくはなかった」

赤穂「答えはわからないけど……そんな気持ちだったんじゃないかって俺は思う」

津浦「好きだから……」ハァ-

息を吐く津浦が納得したかはわからない。

でもグレゴリーの設計に対する姿勢の根本はそこなんじゃないか……俺はそう思いたかった。
674 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/03(水) 22:46:56.10 ID:u3WptC/A0
一度コテージに戻るという津浦を見送って、俺は島を回る。

遠見「……」

すると道を歩く遠見を見かけた。

赤穂「遠見!」

遠見「赤穂殿でありますか」

赤穂「土橋は一緒じゃないのか?」

遠見「さすがに怪我をした土橋殿を連れて調査をするわけにもいかないので……」

赤穂「ああ、確かにな……」

遠見「しかしこの島はまた気候が急激に変化するでありますね」

赤穂「そのわりにはなんだか動じてないな」

遠見「極寒の戦場もあったでありますから。妹と身を寄せあい、暖をとりながら進軍したでありますよ」

赤穂「へぇ、遠見妹がいるのか」

遠見「まあ、血は繋がってないのでありますが」

赤穂「そうなのか?」

遠見「そもそも自分は隊長殿が名前をくださるまで名前もなかったのであります」

赤穂「えっ?」

遠見「自分はその、戦災孤児だったのであります。妹とは奴隷市場で一緒にいた子でありますよ」

赤穂「……悪い。踏み込んじゃまずい話だったか」

遠見「いえいえ!今の自分は幸せでありますから!」

そう言って笑う遠見……いったいどれだけの苦労をしてきたんだろうな……
675 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/05(金) 22:30:57.32 ID:Z4o0hhNA0
土橋「ううん……」

赤穂「土橋?」

マーケットに行ってみると段ボールの前で土橋が何やら困った顔をしていた。

赤穂「土橋、どうかしたのか?」

土橋「あっ、政城。ちょっと暇潰しに何か作ろうかなって道具を集めてたんだけどさ……」

土橋は吊られた腕を見て苦笑いすると、頭を掻く。

土橋「あはは、この腕じゃ運べないって今さら気付いたんだよね」

赤穂「それはまた……」

手伝えたらいいんだけど、俺も杖で基本的に片腕塞がってるしな……

赤穂「あっ、そうだ。確か台車があったはずだからそれに乗せて運ぼう」

土橋「それしかないか……なんか政城の苦労が少しわかった気がする」

赤穂「ははは……」

それから荷物をコテージに運ぶ土橋を手伝った。

だけど何か作るって片腕で出来るのか……?
676 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/05(金) 22:51:13.46 ID:Z4o0hhNA0
如月「……」

ホテルの前で如月さんが佇んでいる。

その手には昨日の事件で見つけたバッジがあった。

赤穂「如月さん……」

如月「ああ、赤穂さん」

赤穂「そのバッジ妹さんの、なんですよね」

如月「えぇ、間違いなく……だから本当に不思議なんですよ」

如月「なぜ、これがここにあるのか」

赤穂「……」

如月「妹は死んで、その遺体が着けたままだったはずのバッジ」

如月「もし、もしも可能性があるとすれば……」

如月「あの男の関係者が、ここにいる可能性です」

赤穂「あの男って、まさか……」

如月「僕の妹を殺し、あなたの妹さんを傷つけた男」

如月「あのマッドサイエンティストの関係者が……」

赤穂「……」

ただでさえ色々あるのに、そんな奴までいるっていうのか……?
677 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/06(土) 23:25:30.18 ID:paXAvg0A0
【赤穂のコテージ】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「……」

長い1日だった気がする……

それもそうか、学級裁判の後すぐ調査したりしてたんだから。

赤穂「……」

苗木の影に隠れる黒幕。

だけど苗木がいなくなった以上、これからはそいつが中心で動くはずだ。

赤穂「……頑張らないと、な」

もうこれ以上誰かを失ってたまるか。

それを心に刻みながら俺は眠りについた。
678 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/08(月) 21:37:07.19 ID:yBYxaBbA0
【15日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「よし、牡丹を迎えに行くか」

【ホテルミライ・レストラン】

赤穂「おはよう」

御影「おはよ」

どうやら全員来てるみたいだな……俺達が最後か。

兵頭「土橋さん、どうぞ」

土橋「ありがと千。片手だとやっぱり不便だからね」

2週間経ってこうして集まって食事するのにも慣れた感がある。

道掛「千ちゃんの飯は相変わらず美味いな!」

遠見「佐場木殿、今日は……」

佐場木「予定としては……」

だけど7人もいなくなったという事実が、どこか空気を歪にしていて。

津浦「ふぅ……」

如月「……」

六山「うーん……」カチカチ

所々にある空席……それをつい意識してしまうのは、何でなんだろうな。

御影「どうかした兄さん?」

赤穂「いや、何でもない」
679 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/08(月) 22:22:39.79 ID:yBYxaBbA0
【倉庫】

赤穂「……」

静音が薄井に殺された倉庫。

ここからコロシアイは始まったんだよな……

如月「おや、赤穂さん」

兵頭「こちらで何を?」

赤穂「ああ、ちょっとな。2人はどうして?」

如月「少し思うところがありまして」

兵頭「ここは最初の殺人が起きた現場ですから」

2人も俺と同じか……

如月「僕は薄井さんを悪と断じました。彼が静音さんを殺した動機は……言ってしまえば【誰でもよかった】でしたから」

赤穂「……」

確かに薄井はお姉さんの事を心配してここから脱出しようとした。

だけどコロシアイの標的に静音を選んだ理由は……

兵頭「本当にそうなんでしょうか?」

赤穂「えっ?」

兵頭「私は静音さんが殺された理由は別にあると思いますよ」

如月「それは、苗木さんが誘導したからですか?」

兵頭「いえ、もっとはっきりした理由です」

赤穂「それっていったい」

兵頭「静音さんが、あの時誰よりも前向きだったからですよ」

如月「前向きだったから?」

兵頭「彼女は中止になりそうだった懇親会を行いたがっていましたが……それはなぜなんでしょう」

赤穂「それはきっと四方院さんの……」

兵頭「そう、静音さんは家族と慕う四方院さんのために頑張っていました」

赤穂「……ああ」

そういう事、か。

薄井の殺人の動機は……

如月「……嫉妬」

兵頭「姉の努力を否定するしか出来ない自分、一方ただひたすらに四方院さんのために動ける静音さん」

兵頭「きっと、薄井さんには眩しかったんでしょうね」

赤穂「……」

如月「……だとしても、それは」

兵頭「はい、身勝手な動機です。しかしそう考えると如月さんにも、彼の気持ちがわかるのでは?」

如月「……!」

赤穂「えっ?」

如月さんが、薄井の気持ちをわかる?

如月「……ああ、なるほど。これが、薄井さんの抱えていた」

如月さんも、誰かに嫉妬してるのか?
680 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/09(火) 23:05:44.56 ID:srPke9iA0
【水族館】

何となく聞く空気にもならなくて、俺は2人と別れた。

そして着いたのは……第2の事件が起きた水族館。

津浦「……」

道掛「……えーっと」

津浦がいるのはともかく道掛がいたのは予想外だったな。

赤穂「道掛、何してるんだ?」

道掛「お、おう、赤穂。琴羽ちゃんが水族館行きたいって言うから送ってきたんだよ」

赤穂「津浦が?」

津浦にとってここは辛い記憶しかないはずの場所。

そこに自分から来た……

津浦「……ありがとうございましたMr.道掛」

道掛「あっ、もういいのか?」

津浦「はい……Mr.赤穂?いつの間にここに?」

赤穂「ああ、いや。今来たところだよ」

津浦「そうでしたか……それに気付かないほど考えこんでいたのですねワタシは」

道掛「よくわかんねえけど……まだどっか行く?」

津浦「そうですね……次は射撃練習場にお願い出来ますか?」

道掛「うっし、わかった!」

津浦「それではMr.赤穂。ワタシはこれで」

赤穂「……大丈夫なのか?」

津浦「そうでありたいとは、思っています」

そう言って少し身体を震わせると……津浦は水族館から出ていった。

グレゴリーの死を受け入れて、次は思い出のある場所を巡って……

あれが津浦なりの、前の進み方なんだろうな。
681 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/11(木) 23:24:50.00 ID:fSmOZa2A0
【発電所】

鞍馬が殺された発電所……あいつは殺される瞬間までいったい何を考えてたんだろうな。

御影「兄さん」

六山「やっ、赤穂くん」

今日は事件現場でよく人に会うな……

御影「鞍馬はここで死んでたんだよね。私結局鞍馬の死体見てないから……なんか未だに信じられない」

六山「鞍馬くんは死にそうな雰囲気なかったもんね」

赤穂「それがそもそも間違った認識だったんだな」

鞍馬が殺されるなんてあり得ない……そんな認識だったあいつをそれこそ動くなんてあり得ないと思える黒幕の苗木が殺した。

あの事件はそれこそあり得ない事だらけだったんだ。

御影「鞍馬……私の才能知ってたんだよね」

六山「御影さんのって秘匿才能なのによく知ってたよね」

赤穂「……」

鞍馬は牡丹を死なせるなって言ってたけど……当たり前だそんなもの。

俺は絶対牡丹を死なせない。

あんな気分になるのは……もうごめんだ。
682 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/14(日) 04:01:32.34 ID:GsyKIGwA0
佐場木「……」

発電所を出て歩いていると、佐場木が考え込むように立っていた。

そこはちょうど、ジェニーが殺された辺り。

赤穂「佐場木」

佐場木「赤穂か」

赤穂「ジェニーの事、考えてたのか」

佐場木「クラヴィッツだけではない。ここで死んだ全員について考えていた」

赤穂「……」

佐場木「静音、四方院、鞍馬、クラヴィッツ……それに薄井やグレゴリーも死んだ裏にはあの男が関わっていた」

赤穂「苗木、だな」

佐場木「そして奴の悪意を見極められず、こちらの作業に参加させ情報を話していた……俺にはもう裁く資格などないのかもしれん。いや、それは事件の発生を許した時点でか」

赤穂「そこまで言わなくても……佐場木は事件が起きないように動き回ってるじゃないか」

佐場木「……なら聞くがな赤穂、もし御影が殺された時にお前はそれで納得するのか?事件を防ごうとしておきながら、結局妹を死なせた俺に思うところがないと言えるのか?」

赤穂「それは……」

佐場木「それが答えだ。頑張ったなど、殺された命の前には言い訳にもならない」

赤穂「……」

佐場木が自他共に厳しいのは知ってたけど、ここまで思い詰めてたのか……

佐場木「……変な話をしたな、忘れてくれ」

そう言って佐場木は行ってしまった……きっとまた見回りやチェックをするんだろう。

無理をして、倒れたりしなきゃいいんだけどな……
683 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/14(日) 04:32:54.18 ID:GsyKIGwA0
【温泉施設】

赤穂「気が滅入ってくるな……少し温泉にでも入って、リラックスするか」

※※※※

赤穂「はあっ……」

誰もいない1人きりの温泉……その暖かさに疲れやら何やらが溶けていく感覚。

赤穂「こんな状況じゃなければ、もっとよかったんだけどな……」

カラカラ

赤穂「んっ?」

隣に誰か来たのか……

「ごめんねメメ、付き合わせちゃって」

「自分が好きでしているので気にしないでほしいであります。1人では大変でありましょうし」

土橋と遠見か……

土橋「でもメメ、半次と色々やってたのに最近出来てないでしょ?」

遠見「佐場木殿は、お1人でも大丈夫でありますよ」

土橋「……心配そうな顔してるけど」

遠見「うっ」

土橋「やっぱり本当は一緒にいたいんだ」

遠見「……佐場木殿はきっと自分自身を強く責めているであります。あの人は真面目故に、妥協が出来ない」

土橋「ああ……確かに半次は頑固なとこあるね」

遠見「自分はそんなあの人に共に動くよう、頼まれて……しかし何が出来たのでありましょうか」

遠見「苗木殿への警戒を真っ先に外したのは自分で、それがなければもっと早く止められたかもしれないのに……!」

土橋「メメ……」

遠見「もしかしたら、自分がこうして土橋殿を介助するのは、ジェニー殿の事があるからで……」

土橋「メメ!」

遠見「……」

土橋「メメは悪くないよ。そもそもこんな事させる黒幕が全部悪い!そうでしょ?」

遠見「しかし」

土橋「半次もメメも自分達だけで抱えすぎなんだよ。まあ、アタシじゃ頼りないかもしれないけど……こうして話を聞くぐらいならするから」

遠見「土橋殿……」

土橋「美姫でいいよ!」

遠見「……美姫、殿」

土橋「はは、なんか湿っぽくなっちゃったね。もっと明るい話しようか!」

赤穂「……」

これ以上は、聞くべきじゃないな……

俺は気付かれないよう、そっとその場を後にした。
684 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/15(月) 11:45:27.81 ID:9owfMFmA0
【赤穂のコテージ】

赤穂「ふー……」

お腹の傷も少しはマシになってきたな。

病院から持ち帰ってある傷薬を塗って、新しい包帯を巻く。

大怪我をしてから自分1人でこの手の事をするのにも慣れた。

赤穂「よし」

そういえば包帯と傷薬だいぶ減ってきたな……

赤穂「今度病院に行ったら確保しておくか」

服を着て、杖を持つとコテージの外に出る。

もうすぐ夜時間だからか、人の気配はない。

赤穂「……」

コツコツと杖が木を鳴らす音だけが響く。

特に行き先があるわけじゃない、ただ何かせずにはいられなかった。

【図書館】

赤穂「何か参考になりそうな本は……」

とはいっても日本語とせいぜい英語の本ぐらいしか俺は読めない。

だから本を選ぶのにほとんど時間はかからなかった。
685 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/15(月) 12:17:34.65 ID:9owfMFmA0
赤穂「……」

日本語の本を片っ端から読んではみるものの、そこに手がかりになりそうな物はない。

佐場木や遠見、津浦が調べてる後だろうから当たり前なんだけどな……

赤穂「ふう」

流し読みしていた5冊目を机の上に放り投げる。

それがよくなかったのか、本は机の端に乗って、そのまま床に落ちた。

赤穂「あっ、しまったな」

カバーの外れた本を拾って……俺はそのカバーに封筒が貼り付いているのを見つけた。

赤穂「なんだこの封筒……」

試しに他の本も調べてみても何もない……どうやらこの本にだけ封筒が貼り付いているみたいだな。

赤穂「……」

何かある、そう直感して俺は封筒を外して中を見る。

折り畳まれた紙が1枚入ってる……それを取り出して広げて。

赤穂「……は?」

俺は固まった。

そこに書かれていたのはたった数文。

【六山百夏。
内通者として数日以内に殺人を起こせ。
さもなければ命はない】

だけど、衝撃を与えるには充分過ぎる内容だった。
686 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/15(月) 12:24:29.34 ID:9owfMFmA0
赤穂「六山が、内通者!?」

どういう事だ、意味がわからない。

だって六山は静音を庇ってモノクマに反抗して見せしめに殺されかけたじゃないか。

如月さんが助けなかったら、あいつは……

赤穂「……だからか!」

この手紙、命はないって書いてある……一度殺されかけた六山は死に対する恐怖心がかなり強いはずだ。

だから従うしかなかった……死ぬのが怖いから。

赤穂「……どうする?」

この手紙を六山がまだ読んでないなら、数日中にあいつは殺される。

もし読んだ後なら数日中にあいつは誰かを殺す。

赤穂「どちらにしても六山は死ぬ……!」

どうにかしないといけない。

だけどどうすれば六山を助けられる?

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「っ、とにかくこの手紙はこっちで持っておこう」

俺は封筒ごとポケットに手紙を突っ込むと、図書館を後にする。

猶予はほとんどない……それでも何とかしないと!
687 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/15(月) 13:19:22.60 ID:9owfMFmA0
【16日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「くそっ!」

一睡も出来なかった……しかも特にいいアイデアも浮かばない。

このままだと次の事件が……

モノクマ「ああ、それとオマエラ!中央の島に集合してくださーい!」

赤穂「……!」

まさか、動機か!?

この状況でさらに動機だなんて……!

赤穂「とにかく、行くしかない」
688 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/18(木) 21:09:16.68 ID:qO9IeUEA0
【中央の島・未来機関第二十支部】

中央の島に行くともう全員集まっていた。

赤穂「……?」

だけど、様子がおかしい。

誰も喋らない、いや、それどころか互いの顔色を窺うような素振りを見せている。

いったい何が……

モノクマ「いやっほーう!全員集まってるみたいだね感心感心!」

佐場木「ちょうどいい……こちらも話がある」

モノクマ「話?」

佐場木「この指示書はどういう意味だ?内通者に殺人を行えと指示を出しているようだが」

赤穂「……!」

佐場木も六山への指示を見たのか!?

赤穂「佐場木、それは」


佐場木「俺は貴様の内通者になった覚えはない」


……えっ?
689 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/18(木) 21:24:12.22 ID:qO9IeUEA0
道掛「はっ!?ちょっと待てよ、内通者ってメメちゃんじゃなかったのか!?」

遠見「何の事でありますか!?自分は、兵頭殿が内通者だと……」

兵頭「あら、私は津浦さんに宛てた指示書を見ましたよ?」

なんだこれ……どうなってるんだ!?

みんながみんな、内通者に対する指示書を持ってる……ただ1つ、内通者の名前だけが違う指示書を。

モノクマ「うぷぷ、それこそがボクがオマエラを呼び出した理由!」

モノクマ「今回の動機!チキチキ内通者当てゲームだよ!」

六山「内通者当てゲーム?」

モノクマ「その通り!オマエラ全員に渡したのは内通者に対する指示書!」

モノクマ「つまりこのままだと内通者は数日中にコロシアイを発生させる事になるね!」

土橋「そんな……」

モノクマ「うぷぷ、さてさて誰が内通者なのかな?もしかしたら親しくしてる人かもしれないよ?」

御影「あんた……!」

今回の動機は、シンプルに疑心暗鬼を引き起こすものだってことか……!

モノクマ「内通者に殺されるか、内通者を殺すか、はたまた勘違いして内通者じゃない人を殺すか!」

モノクマ「うぷぷ、せいぜい面白い展開を見せてくださーい!」

内通者当て……しかも疑いは全員にある。

誰が内通者かわからない状況で、誰かに殺されるかもしれないリスクに囚われる。

赤穂「っ……」

直前に人当たりのいい苗木が豹変したのも拍車をかけて……最悪としか言いようがない動機だった。
690 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/19(金) 23:10:01.27 ID:9X98Un0A0
モノクマが消えた後、俺達は互いに顔を見合わせていた。

ただでさえ黒幕がいるのにさらに内通者の存在を知らされて……冷静になれという方が難しい。

佐場木「……ちっ、如月」

如月「なんでしょう佐場木さん」

佐場木「貴様は歪みきった殺人鬼だが、内通者とも黒幕とも遠い……ある意味一番安全な存在だ」

赤穂「……」

確かに如月さんは命惜しさに内通者になるのも、黒幕としてコロシアイを引き起こすのもありえないだろう。

皮肉にも殺人鬼としての彼がそれを否定しているんだ。

佐場木「だから貴様に一任する。この状況をどうするかをな」

如月「どうするか、ですか……」

黒幕、もしくは内通者として疑われる人間が何を言っても悪戯に疑心暗鬼になるだけ。

だから佐場木は絶対に違う如月さんに託したんだろう……裁判官としてのプライド諸々を切り捨てて。

如月「そうですね……では提案なのですが、皆さん全員で動くと言うのはどうでしょうか」

道掛「全員?」

如月「内通者が誰であれ、ルールからは逃げられません。殺せるのは2人まで……全体で動けば一気に手出しがしにくくなる」

六山「……まあ、最初から人数も減って見張りやすくも、なってるしね」

如月「基本的に1つの場所にいて、動く場合は僕も一緒にいれば……一気に事件の発生確率は減少するかと思います」
691 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/19(金) 23:28:45.81 ID:9X98Un0A0
【旧館】

固まるのに一番都合がいいだろうという事で俺達は旧館に向かった。

病院やマーケットから色々荷物を持ち込んで……一番広い広間に集まる。

如月「怪我をしている方は、特に赤穂さんと土橋さんは気をつけてくださいね」

土橋「うん、ありがとう」

赤穂「はい」

これから少なくとも内通者がはっきりするまでは俺達はここで寝泊まりする事になる。

消極的かもしれないけど、これが今は最善だと反対する人間はいなかった。

御影「兄さん……大変な事になったね」

赤穂「……ああ」

黒幕、そして内通者……抱える問題が多すぎる。

こうして不安を抱えたまま、俺達の籠城は始まった。
692 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/20(土) 23:26:25.79 ID:j8z78B1A0
御影「はぁ……まさかこんな事になるなんて」

赤穂「黒幕の存在がほのめかされてた以上、いつこうなっても不思議じゃなかったけどな」

俺個人は牡丹がどちらでもないというのは確信してるけど、この状況じゃそれが通用しない事もよくわかる。

御影「兄さん?」

赤穂「んっ?ああ、どうした牡丹」

御影「どうしたじゃないよ、なんだかボーッとしちゃってさ」

赤穂「まあ、信じる専門とはいえ考えないといけない事は多いしな……」

御影「……」

赤穂「まあ、1つだけ言えるのは」クシャ

御影「んっ」

赤穂「何があってもお前を信じるのは間違いないって事だけだな」

御影「……シスコン」

赤穂「妹思いと言ってくれ……んっ?」

なんか視線を感じたような……

御影「兄さん?今度はどうしたの」

赤穂「いや……」

気のせい、か?
693 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/21(日) 20:44:07.23 ID:HB4kXUbA0
倉庫を覗いてみると、六山が箱に座ってゲームをしていた。

六山「ああ、赤穂くん。調子はどう?ゲームする?」

赤穂「遠慮しておく。というか、本当に六山はゲームを手放さないな」

俺の知る限り六山は食事時もみんなで集まる時も、それこそ学級裁判や処刑の時、自分が殺されそうになった時すらゲームする手を止めた事がない。

それが精神の安定に繋がるならと思ってたけど、さすがにこれはどうなんだ……?

六山「まあ、わたしはゲームなかったらろくな人生じゃなかったろうしね」

赤穂「えっ?」

六山「わたし、引きこもりだったんだよね。昔通ってた学校でいじめられてさ」

六山「家で親とかがとやかく言うのから逃げるためにずーっとゲームしてた。それこそ寝食忘れてね」

赤穂「それ、大丈夫だったのか」

六山「大丈夫ではなかったね。入院するはめになったし」

赤穂「入院!?」

六山「だから今は少しゲームの時間減らすようにしてるよ」

これで、減らしてるのか……
694 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/22(月) 21:16:23.21 ID:734xLw1A0
遠見「佐場木殿、自分自身を責めないでほしいでありますよ」

佐場木「……」

あれは、佐場木と遠見か?

遠見「自分も苗木殿の策略にかかったのは同じ。佐場木殿だけの責任ではないであります」

佐場木「……」

遠見「佐場木殿が犯罪を憎んでいる事は自分でも理解出来るであります。しかしそれで足を止めるのはそれこそ本末転倒というものでは?」

佐場木「……」

おいおい、あんなに言って大丈夫なのか?

万が一、何かあったりしたら……

佐場木「……お前にはかなわないな」

赤穂「……!」

佐場木があんな声出すの初めて見たぞ……

遠見「なんだかんだ、佐場木殿とは共に任務を行ってきた仲でありますから」

佐場木「たかだか2週間だろう」

遠見「戦場では1日共にいられないなど当たり前でありますから」

佐場木「……そうか」

遠見「そうでありますよ!」

赤穂「……」

佐場木が抱え込んでてどうしたものかと思ってたけど……

遠見がいるなら、大丈夫そうだな。
695 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/22(月) 22:31:50.18 ID:734xLw1A0
津浦「ふぅ……」

兵頭「お手伝いしますよ津浦さん」

津浦「あ、ありがとうございます」

赤穂「何してるんだ?」

津浦が持ち込んできたのは大量の本。

図書館で見た事あるやつばかりだ。

津浦「この辺りの言語の本はワタシしか読めないないので……もしかしたら何かヒントがあるのではないかと」

赤穂「そうか、わからない言語に紛らせておくなんていかにもモノクマがやりそうな事だな」

兵頭「もしそうなら津浦さんが今もここにいて助かりましたね」

津浦「……そうですね。確かにその通りです」

今もここにいる……兵頭の言外の意図を察したのか答える津浦の表情は明るくない。

津浦「時々思うんです、ワタシがこうして生きていられるのは奇跡のようなものだって」

赤穂「それは……」

兵頭「銃の持ち出しの件もありましたからね。あの時はグレゴリーさんが何とかしてくれましたが」

津浦「そう、ワタシの命はあの人に救われたものです……だから、出来る事をしたい」

赤穂「津浦……」

津浦「そして生きて、ここから帰って、あの人に……」

津浦「だから、頑張ります。ワタシにしか出来ない事を」

津浦はイヤホンを外して深呼吸を1つすると、本を取ってページをめくり始める。

赤穂「兵頭」

兵頭「はい、わかってます」

邪魔しない方がよさそうだからな。

本に目を通す津浦を残して、俺達はこっそり部屋を出た。
696 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/22(月) 22:53:45.73 ID:734xLw1A0
道掛「212……213……214……!」

声が聞こえてくるからどうしたのかと道掛がスクワットをしていた。

こもっていると自転車も出来ないもんな……

如月「303、304、305」

だけどなんで如月さんも一緒にしてるんだ?

道掛「っ、はぁ!ちくしょう、限界だ!」

如月「大丈夫ですか道掛さん?」

赤穂「どれだけやってたんだよ……」

道掛「おぉ、赤穂。いや、如月とちょっと勝負をな」

如月「500回を3セット……今は4セット目でしたね」

そんなに。

道掛「如月のやつ、涼しい顔してやりやがるからよ!なんか負けてられっかって気分になんだろ?」

如月「だからといって無茶はやめてください。道掛さんは脚を大切にする必要があるでしょう」

道掛「……へへ、サンキューな」

道掛は嬉しそうに如月さんが差し出した手を取る。

鞍馬の事、苗木の事……色々あった道掛にとって純粋に心配してくれる如月さんの気遣いが嬉しいんだろうな。

道掛「よっしゃあ、次は廊下ダッシュだ如月!」

如月「だから無茶は……」

赤穂「……」

いや、俺の考えすぎか……?

ちなみに道掛はその後佐場木に説教されてるのが見つかった。
697 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 10:33:00.85 ID:Sz46XOLA0
赤穂「はぁ」

まだ裁判があって2日しか経ってない……それなのに起き続ける出来事に正直疲労がかなり溜まっていた。

赤穂「少し、寝るか……」

壁に寄りかかるようにして目を閉じる。

思った以上の疲労があったのか抗えない睡魔に俺はゆっくりと委ねるように沈んでいった。

「……」

※※※※

赤穂「んっ……」

「あっ、目が覚めた?」

赤穂「……?」

目覚めると後頭部に柔らかい感触……そして視界を遮る何か。

赤穂「……」

前にもこんな事があったな……

赤穂「……土橋?今回は熱中症にはなってないぞ」

土橋「なんか寝苦しそうだったから膝枕してみたんだけど……迷惑だった?」

赤穂「いや、驚いただけだよ。ありがとうな、骨折してるから大変だったろ」

土橋「まあ、ちょっと苦労はしたけど……」

土橋はモゴモゴと口を動かしながらも、言葉は出てこない。

まあ、言いにくいなら無理に聞かなくてもいいか……
698 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 11:15:00.21 ID:Sz46XOLA0
赤穂「今何時だ?」

土橋「えっと、8時半だね」

赤穂「2時間くらい寝てたのか……んっ?土橋、いつから膝枕してたんだ?」

土橋「えーと、1時間くらいかな?」

赤穂「そんなにしてたのか!?」

長時間膝枕させてた事での足への負担を考えて思わず飛び起きる。

あっ、と声が聞こえた気もしたけどはっきりとはしなかった。

赤穂「悪かった。重かっただろ」

土橋「いや、そんな事は……」

赤穂「本当か?痺れたりしてないか?」

土橋「大丈夫だって!政城は心配しょ……わわっ!?」

立ち上がった土橋がバランスを崩して倒れそうになる。

咄嗟に手を出して支えたものの、俺も踏ん張りが聞かず結果2人で倒れるように床に転がった。

赤穂「いつ……大丈夫か土橋!」

土橋「う、うん、大丈夫」

どうやらうまい具合に骨折した腕を打つのは避けられたらしい。

赤穂「やっぱり痺れてたんじゃないか……怪我人なんだからあんまり無茶するなよ」

土橋「……だって」

赤穂「だって?」

土橋「したかったんだよ……政城に膝枕」

赤穂「……?」

俺に膝枕したかった?

なんで?

赤穂「俺そんなに寝苦しそうだったのか?」
699 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 11:27:28.26 ID:Sz46XOLA0
土橋「……はあ?」

いや、なんでそんな冷たい目を……

土橋「この、鈍感政城!」

赤穂「ど、鈍感?」

土橋「アタシがなんで牡丹が側にいるって言うのを代わってもらってまで膝枕したと思ってるの!?」

赤穂「いや、今の初耳……」

土橋「好きだからに決まってるでしょ!?」

赤穂「は!?」

好き?

赤穂「誰が?」

土橋「アタシが!」

赤穂「誰を?」

土橋「政城を!」

赤穂「なんで?」

土橋「元々気になってたけど、はっきりしたのはジェニーの事があってから!」

赤穂「……」

土橋「…………あっ」

ようやく自分の言った事に気付いたのか土橋の顔が真っ赤になったり真っ青になったりする。

土橋「ア、アタシ何を……ご、ごめん!」

そして逃げるように土橋は部屋を飛び出していった。

赤穂「……」

土橋が、俺を、好き?

赤穂「……」

御影「兄さん、起きた……ってなんで床に寝てるの」

赤穂「牡丹」

御影「な、なにどうしたの?」

赤穂「悩みが増えた……」

御影「???」
700 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 11:51:02.14 ID:Sz46XOLA0
【旧館】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「……」

道掛「なあなあ、赤穂の奴どうしちまったんだ?」

佐場木「土橋の話によると深刻なものではないようだが」

如月「……」

土橋「あああああ……アタシなんであんな」

遠見「美姫殿、何かあったのでありましょうか」

兵頭「……ああ、そういう」

津浦「……なるほど、理解しました」

御影「えっ、何を」

六山「あー、あー、フラグ成立しちゃったかなこれは」

内通者の警戒のために集まった俺達。

しかしその初日はそんな空気とはまるで無縁な様子で更けていった。
701 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 21:01:47.48 ID:Sz46XOLA0
【17日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「…………」

眠れなかった。

まさかこんな形で悩む事になるなんて……

兵頭「土橋さん、口を開けてください」

土橋「あ、あーん……」

赤穂「……」

道掛「なーに、美姫ちゃんと見つめあってんだよ!」

赤穂「痛っ!?み、見つめあってなんかいない!」

道掛「そうだったのか?悪い悪い!」

赤穂「……はあ」

本当、どうしたらいいんだ。
702 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 21:33:38.09 ID:Sz46XOLA0
御影「へー、ほー、ふーん」

恥を忍んで牡丹に事情を話したら、返ってきたのはそんな言葉になってない返事だった。

なんでそんな冷めた目で見るんだよ……

御影「よかったじゃん、土橋って結構可愛いし、胸もおっきいし」

赤穂「茶化すなよ、本気で悩んでるんだぞ」

御影「なに、土橋嫌いなの?」

赤穂「いや、そういう話じゃなくてだな……多分土橋の好意はつり橋効果だと思うんだよ」

御影「つり橋効果ってあの危ない時のドキドキを勘違いしちゃうってやつ?」

赤穂「そうそう、だから……」

御影「兄さん、まさかそれ土橋に直接言った?」

赤穂「いや、まだだけど」

御影「ほっ……いい?絶対本人にそれ言わないでよ」

赤穂「えっ?」

御影「あのね、兄さん。勢いとはいえ告白した女の子にお前の感情は勘違いなんだなんて言ったらどれだけ傷つくと思う?」

赤穂「うっ……」

御影「土橋の気持ちに応える応えないは兄さんの自由だけど、少なくともその気持ちを否定するのは違うと思う」

赤穂「……」

どんな事があっても、やっぱり牡丹も女の子なんだな……

御影「いい、わかった?」

赤穂「お、おう……わかった」

だけどなぁ……
703 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 21:47:35.40 ID:Sz46XOLA0
道掛「おー、とうとう美姫ちゃんが告ったのか」

六山「やっぱりフラグ成立してたんだね」

赤穂「道掛と六山は気付いてたのか?」

そういえばこの2人は病院にいた時、色々変な事を言ってたな……

道掛「当たり前だ!美姫ちゃんが赤穂に惚れてんのはしっかりわかってたぜ!」

六山「恋愛ゲームをしてればなんとなくね」

そんなもの、なのか。

道掛「……なあ百夏ちゃん。ちなみに俺のフラグは」

六山「あはは、道掛くんは友人ポジションでしょ?」

道掛「よくわかんねえけどバッサリ切られたのはわかるな!?」

道掛と六山の漫才を眺めながら俺は考える。

そんなにわかりやすかったのに俺、全然気付かなかったのか……

これでも、鋭い方だと思ってたんだけどな。

道掛「で、どうすんだ?まさか無視するわけにもいかねえだろ」

六山「バッドエンド一直線だね」

赤穂「だけどな、今はそれどころじゃ」

道掛「バッカヤロウ!こんな時だからこそだろうが!」

六山「うーん、生きる気力にはなるんじゃないかな?」

赤穂「……」

生きる気力、か……
704 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 23:33:57.12 ID:Sz46XOLA0
佐場木「なるほど、そういう事か」

津浦「Ms.土橋らしいと言えばらしいですね」

佐場木と津浦にも話してみたらそんな反応が返ってくる。

なんだ、俺が思ってるよりこういう状況って受け入れられてるのか?

津浦「ワタシには気持ちがわかりますから」

佐場木「それが抑止になるなら俺は何も言わん」

赤穂「……」

理由は違えど、肯定には変わりないか……

佐場木「なんだ、否定材料がほしいのか?」

赤穂「えっ」

津浦「Mr.赤穂、そうなんですか?」

赤穂「いや、それは……」

佐場木「断りたいならただ断ればいいだけだろう。状況、その他の要因をいちいち言い訳に使う必要がどこにある」

赤穂「……」

津浦「Mr.赤穂……向き合ってあげてくれませんか?ワタシには、もうかなわない話ですから」

赤穂「……」

向き合う……だけど俺は……
705 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/25(木) 21:08:55.18 ID:HTkdcFfA0
遠見「なるほど……美姫殿から話は聞いていたでありますが」

赤穂「土橋、遠見に相談してたのか」

遠見「一昨日の事でありますが、肯定であります」

一昨日って事は、あの温泉で相談してたのかもな……

如月「赤穂さんはどうしたいんですか?」

赤穂「正直、わかりません」

覚悟もなく、いきなりの事だったからな。

遠見「赤穂殿、美姫殿は本気であります。それは自分が証明するでありますよ」

赤穂「……」

ここまで来ると俺もそんな気がしてきた……だけど俺の方がどう考えてるか自分で自分の気持ちがわからない。

如月「今は色々と大変な状況、赤穂さんが混乱するのも無理ありませんね」

遠見「おそらく美姫殿も、それは理解しているはずでありますよ」

赤穂「だろうな」

あれは本当に勢いだった、多分本人に言うつもりはなかったはずだ。

赤穂「……」

だけど俺は知った、知ってしまった。

赤穂「……」

もうわからなかった頃には戻れない以上、考えないとな……しっかりと。
706 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/25(木) 21:37:18.95 ID:HTkdcFfA0
兵頭「それで土橋さんを避けていると」

赤穂「言わないでくれ」

そう、考えるとはなったものの簡単に結論が出るわけがない。

そして結論が出ない内に土橋に会うのが躊躇われた結果……俺は彼女を避けるように動いてしまっていた。

兵頭「ヒーローもこういう事には形無しですね」

赤穂「仕方ないだろ……こんな事初めてなんだよ」

兵頭「あら、そうなんですか?ヒーローというぐらいですから、モテモテなのかと」

赤穂「むしろ腫れ物だったよ」

俺はいじめをなくしたりしてた関係上、関わるとろくな事にならないって扱いだったからな。

兵頭「なるほど……それならこうなってしまうのも仕方ないのかもしれませんね」

赤穂「……」

やれやれと言った感じの視線を向けられるのもそれはそれで腹が立つな……

いや、俺がしている事の結果と言えば、それまでなんだけどな。

兵頭「まあ、悩むのは特権と言いますから。頑張って悩んでくださいヒーローさん」

赤穂「なんか馬鹿にしてないか……」

兵頭「いえいえ、純粋な応援ですよ」
707 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/25(木) 22:07:42.52 ID:HTkdcFfA0
赤穂「あっ」

土橋「あっ」

ここは旧館……そこで避けるのなんてどうしても限界が来る。

だからこうしてばったりと出くわしてしまうのも、必然と言えた。

土橋「ま、政城……」

赤穂「ど、どうした?」

土橋「ちょっと、話があるんだけど」

赤穂「あ、ああ」

【事務室】

赤穂「……」

土橋「……」

……気まずい。

かなり露骨に避けてたしな……

土橋「あの、さ……昨日の事なんだけど」

赤穂「……!」

来たか……!

土橋「忘れて、ほしいんだ」

赤穂「……えっ」

忘れるって、昨日の告白をだよな……?

土橋「こんな状況なのに、アタシあんな事言って政城を困らせて……ジェニーが殺されたのだって、ついこないだの事なのに」

赤穂「土橋……」

土橋「本当に言う気なんてなかった!言えば政城が困るのわかってたから!なのに、我慢出来なかった……」

土橋の瞳からはボロボロと涙が溢れて、旧館の床に雫を落としていく。

土橋「ごめん、ごめんね……アタシ本当に馬鹿だ。みんな、黒幕とか内通者とかに対処しようとしてるのにアタシ……」

……俺、何やってたんだ。

こんな言葉を吐かせるのがヒーローのやる事か?

こんな辛い涙を流させるのがヒーローなのか?

土橋「……じゃあ、それだけ、だから」



違うだろう!
708 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/25(木) 22:18:27.99 ID:HTkdcFfA0
赤穂「土橋!」

土橋「っ!」

土橋の腕を掴んでこちらに振り向かせる。

その顔は耐えきれない苦痛を味わったかのようなそんな顔で。

こんな、辛そうな顔してるのをほっとくなんてそれこそ、ヒーロー失格だ!

赤穂「俺は土橋の告白に困ってたわけじゃない。ただ、戸惑ってたんだ」

赤穂「女の子にああ言われるなんて初めて、だったからな」

土橋「そう、なの?」

赤穂「ああ、だから正直……どう答えたらいいかもわからないんだよ」

俺のするべき事は考えるとか結論を出すとかの前に……

彼女と、話す事だったんだ。

赤穂「だから悪い。あの告白に答えはまだ返せない」

土橋「……うん」

赤穂「だけどな!忘れるなんて事もしない!」

土橋「……!」

まだ何もわかってやしない、結局結論は応えられないかもしれない。

赤穂「だから、待っててくれ」

だけど牡丹に言われたように、否定しない。

俺は土橋の気持ちを、受け止めて答えを返す。

そう、決めたんだ。

赤穂「必ず答えを返すから……ちょっとだけ、俺に時間をくれ」

土橋「……」

土橋は涙を拭うと、頷く。

土橋「待ってる、アタシ……政城の答え待ってるから」

その顔はとてもいい笑顔で。

俺は、なんとなくその笑顔をもっと見ていたいなと、そう思った。
709 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/25(木) 22:22:25.67 ID:HTkdcFfA0
【旧館】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「……」

まだまだ考えないといけない事や悩み事は多いけど、昨日よりは清々しい気分だ。

赤穂「……」

身体の芯から沸き上がるものを感じる。

それは黒幕に負けてたまるかという気持ち。

赤穂「絶対、生きて帰ってやるからな……!」

そう決意して、俺は眠りについた。
710 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/25(木) 22:32:38.51 ID:HTkdcFfA0
【18日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「んっ……」

もう朝か。

「きゃあっ!?」

赤穂「!?」

この声は土橋!?

【旧館・倉庫】

赤穂「土橋!」

土橋「あ、あいたたた……」

声がした倉庫に来てみると土橋が、床に倒れて段ボールの下敷きになっていた。

遠見「美姫殿!?何をしているのでありますか!」

土橋「いやー、ちょっと落ち着かなくて倉庫漁ってたら段ボールが崩れちゃって」

道掛「うおっ、美姫ちゃん頭にコブが出来ててんぞ」

土橋「頭打っちゃって……」

津浦「Ms.土橋!少し頭を切ってますよ!」

土橋「うわっ、本当だ!?」

佐場木「全く、人騒がせな」

如月「何事もなかったならよかったじゃありませんか。とりあえず怪我を治療しましょう」

御影「じゃあちょっと傷薬取ってくるよ」

兵頭「私は朝食の準備を」

六山「ふああ……おはよー」

赤穂「今起きてきたのか……」
711 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 05:40:54.12 ID:5dF676iA0
遠見「これでよし、であります」

あの後遠見が牡丹の持ってきた傷薬を塗って土橋を治療した。

たいした怪我ではなかったみたいで、ガーゼだけで済むぐらいのもので正直安堵する。

土橋「悪いね、メメ。みんなも心配かけてごめん」

六山「まさか寝てる間にそんな事があったなんて」

御影「むしろよく寝てられたね」

兵頭「本当結構悲鳴大きかったのに……はい、土橋さん」

土橋「あむっ」

佐場木「……警戒が足りないんじゃないか」

道掛「でもこうしてこもってからは何もねえからな」

如月「現状怪しい動きをしている人もいません」

津浦「何かあったと言えばMr.赤穂とMs.土橋の件ぐらいでしょうか?」

赤穂「おい津浦!?」

いくらなんでもそこを持ち出す必要はないだろう!

佐場木「とにかく倉庫を片付けるぞ」

道掛「俺もやるぞ!」

そうして今日も1日が始まった。
712 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 05:49:47.56 ID:5dF676iA0
あれから何人かは倉庫に行ったり、各々動いたり……今この場には俺と土橋だけが残された。

土橋「うー、頭痛い」

赤穂「大丈夫なのか?」

土橋「結構思いっきり打っちゃったからね……」

赤穂「だいたいなんで今は片腕しか使えないのに無茶したんだ」

土橋「……だって本当に落ち着かなくて」

赤穂「……もしかして昨日の事か」

土橋「……」コクッ

赤穂「……」

ま、まあ……そういう事なら落ち着かないのは無理ないか。

土橋「あー、もう2人きりだから余計落ち着かないよ。ちょっとトイレ行ってくる!」

赤穂「あ、ああ」

土橋が立ち上がって大広間のドアに向かう。

そしてドアノブを掴んで外に――
713 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 05:50:14.36 ID:5dF676iA0






土橋「うぷっ……!」






714 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 06:04:39.29 ID:5dF676iA0
赤穂「土橋?」

土橋「おええっ!」

土橋がいきなり嘔吐する。

そして、床に、倒れた。

赤穂「土橋!?」

土橋「ううっ、げほっ、頭、痛っ、ぐっ!」

なんだ、なんでこんな吐いて……

赤穂「誰か来てくれ!!土橋が!!」

俺の叫びにみんなが集まってくる。

そして土橋を見て、息を呑んだ。

遠見「美姫殿!何が起きたのでありますか!」

赤穂「わからない!ただ急に吐き出して……」

道掛「吐いた……あっ、おい赤穂!美姫ちゃん頭痛するとか言ってなかったか!?」

赤穂「そ、そういえば頭痛いって」

道掛「やべえ、やべえやべえやべえ!!俺大会で頭打った後に頭痛い吐き気するってぶっ倒れた奴見た事あんぞ!」

佐場木「そうか、頭を打った際に脳が傷付いたのか……!」

赤穂「は……?」

御影「そ、それでどうなったの!」

道掛「し、死んじまった……」

津浦「そんな!」

兵頭「どうにかならないんですか!?」

六山「とりあえず病院に……」

如月「しかしこれは医者がいなければ……!」

なんだよそれ。

さっきまで普通に話してたんだぞ?

それがこんな、こんな……!

土橋「政、城……」

赤穂「土橋!しっかりしろ!今病院に」

土橋「アタシ、死ぬの……?」

赤穂「そんな事言うな!ジェニーの遺言通り生きるんだろう!?」

土橋「アタシ、まだやりたい事あるのに……」

土橋「アタシ、まだ答えを聞いてないのに……」

土橋「アタシ、アタシ……」

赤穂「お、おい……」
715 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 06:08:03.34 ID:5dF676iA0






土橋「政城っ……アタシ、まだ、死にたくないよぉ……」

そう、泣きながら、呟いた土橋の俺に伸ばした腕は……

届く事なく、床に落ちた。






ピンポンパンポーン…!
716 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 06:08:32.09 ID:5dF676iA0






モノクマ「死体発見!死体発見!」

モノクマ「捜査タイムの後学級裁判を始めまーす!」






717 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 06:14:25.18 ID:5dF676iA0
赤穂「……」

何も、聞こえない。

何も、わからない。

ただ土橋の最期の言葉と顔が俺の心を抉る。

赤穂「……」

そしてわかった。

俺は。

※※※※

土橋「だってそれヒーローとして頑張って出来た傷でしょ?だったらむしろ勲章だって!」

※※※※

あの言葉をもらってから、俺は。

赤穂「土、橋……」

きっと。

赤穂「うわああああああああああああっ!!」

彼女に、惹かれていたんだ。

それが俺のあまりにも、遅い。

残酷な結論だった。
718 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 06:16:44.68 ID:5dF676iA0






CHAPT.4【そして希望は捨てられた】(非)日常編 END

生き残りメンバー10→9人

NEXT→非日常編






719 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 06:18:16.30 ID:5dF676iA0
一旦ここまで。

土橋さん退場です。

捜査はまた夜に。

それではまた。
720 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 20:02:42.00 ID:5dF676iA0






CHAPT.4【そして希望は捨てられた】非日常編






721 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 20:37:01.15 ID:5dF676iA0
【旧館・大広間】

モノクマ「うぷぷ、せっかく固まったのに何の意味もなくコロシアイが起きたみたいだね!」

如月「モノクマ……」

佐場木「ちっ、腹立たしい奴だ……!」

赤穂「……」

モノクマ「あれれ?赤穂クンボーッとしちゃってどうしたのかな?」

御影「ちょっとやめなよ!」

赤穂「……」

モノクマ「うぷぷ、もしかして絶望しちゃった?ねぇねぇ、どうなの?」

道掛「やめろよてめえ!今赤穂は……」

ダンッ!

津浦「っ!?」

兵頭「赤穂さん?」

赤穂「大丈夫、だ」

立ち上がって土橋の死体を見下ろす。

俺は結局、あんな無念な最期を迎えさせてしまった。

赤穂「学級裁判があるんだろう……やってやる」

遠見「赤穂殿……」

六山「本当に大丈夫なの?」

赤穂「ああ、土橋の無念は……必ず晴らす!」

それが俺のやるべき事のはずなんだ……!

    【捜査開始】
722 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 20:49:31.91 ID:5dF676iA0
赤穂「まずはモノクマファイルからだ……」

【被害者は土橋美姫。
死体発見現場は旧館・大広間。
死亡推定時刻は8時2分。
被害者の頭部には瘤と切り傷がある】

赤穂「……」

このモノクマファイル……

コトダマ【モノクマファイル4】を手に入れました。
〔被害者は土橋美姫。
死体発見現場は旧館・大広間。
死亡推定時刻は8時2分。
被害者の頭部には瘤と切り傷がある〕
723 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 22:04:04.91 ID:5dF676iA0
佐場木「土橋はお前の目の前で苦しみだしたのか?」

赤穂「ああ……いきなり吐き出して、倒れて、頭が痛いって」

佐場木「典型的な症状ではあるが、気になる事もあるな……」

赤穂「気になる事?」

佐場木「見てみろ、土橋の腕を」

赤穂「……これは、引っ掻いたような傷か?」

佐場木「朝にはこんなものはなかったはずだ」

赤穂「確かに……俺も見てない」

この傷、事件に関係あるのか?

コトダマ【土橋の死亡時の状況】を手に入れました。
〔土橋は赤穂と普通に話していたところいきなり吐き出して倒れた〕

コトダマ【腕の傷】を手に入れました。
〔土橋の腕に残されていた引っ掻いたような傷〕

724 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/27(土) 20:24:05.67 ID:cxROkNOA0
遠見「美姫殿……」

土橋のそばに膝をついて口元を拭う遠見……ここ数日で仲良くなっていたみたいだから辛いんだろうな……

赤穂「遠見、大丈夫なのか?」

遠見「自分は、大丈夫であります。亡くなった人間はたくさん見てきたでありますから」

赤穂「……」

遠見「美姫殿の無念、自分も晴らしたいであります。だから赤穂殿、絶対に真相を突き止めるでありますよ」

赤穂「ああ、もちろんだ……それで、土橋に変わったところはあるか?」

遠見「1つ。美姫殿の吐瀉物に血が混じっていたであります」

赤穂「血が?」

だけど土橋の嘔吐は、脳にダメージがあった事が原因だよな?

それなのに血を吐いた?

これはいったい……

コトダマ【土橋の吐瀉物】を手に入れました。
〔土橋が吐いた物の中に血が混じっていた〕
725 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/27(土) 21:01:48.34 ID:cxROkNOA0
【旧館・倉庫】

道掛「……」

赤穂「道掛?何してるんだこんなとこで」

道掛「赤穂か。いや、美姫ちゃんが死んだ原因朝の怪我だろ?もしかしたらそこに何かあるんじゃねえかって思ってよ」

赤穂「あの事故が、そもそも仕組まれてたって事か?」

道掛「それを調べに来たんだよ。だけどどうすりゃそんな事出来んのかさっぱりわかんねえ……」

赤穂「そうだな……道掛は佐場木と片付けしてたよな?そこで何か気になる事なかったか?」

道掛「うーん……あっ、そういやなんかパイプみてえなのがたくさん転がってたな!」

赤穂「パイプ?」

道掛「これだよこれ!」

道掛が持ってきたのは金属の棒……ちょうど俺の杖に似たような形の。

道掛「そういやこれ、昨日結構高いとこにあったんだよな」

赤穂「……!」

まさか、土橋は……

コトダマ【金属の棒】を手に入れました。
〔倉庫にあった赤穂の杖に似た形状の金属の棒〕

コトダマ【道掛の証言】を手に入れました。
〔事件前日、金属の棒は高い所にあった〕
726 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/27(土) 21:19:51.49 ID:cxROkNOA0
【旧館・厨房】

兵頭「まさかこんな事になるとは……」

赤穂「朝食の時は土橋の様子に変わった所はなかったか?」

兵頭「そうですね、いつも通りでしたよ。ああ、ただ……」

赤穂「ただ?」

兵頭「機嫌がよかったのかなぜか私や御影さんも食べさせられまして……土橋さんの分だったのに本人は気付いてませんでしたが」

赤穂「ああ、なんか騒いでたのはそれか」

兵頭「だからこそ、今でも少し信じられない気持ちです」

赤穂「……」

コトダマ【兵頭の証言】を手に入れました。
〔土橋は朝食の時機嫌がよく、兵頭や御影にも自分の分のご飯を食べさせていた〕
727 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/28(日) 20:32:06.58 ID:mFuPFECA0
【図書館】

津浦「……」ペラペラ

赤穂「津浦、捜査はどうだ?」

津浦「Mr.赤穂。今少し調べているところです」

赤穂「この本は?」

外国の本なのかタイトルからして俺にはなんて書いてあるか読めないな……

津浦「これは毒に関する本です」

赤穂「毒?」

津浦「Ms.土橋の腕にあったあの引っ掻き傷のような痕……それを調査していたこの毒に関する本で見た覚えがあるんです」

赤穂「なんだって!?」

津浦「……ありました。これです、【モノポイズン】」

赤穂「読んでみてくれないか?」

津浦「はい。【この毒は体内に侵入して1時間経った頃に強烈な頭痛と嘔吐感を引き起こす。特徴として少量の吐血、腕に引っ掻き傷のような痕が出来る事が確認されている】」

赤穂「それって、間違いなく……」

津浦「一致、しますね。さらに言えばこの毒、市販されているような物で作る事が可能ですよ」

まさか土橋はこの毒で……?

コトダマ【毒の本】を手に入れました。
〔図書館にあった外国語で書かれた毒に関する本。
赤穂はタイトルを読む事も出来なかった〕

コトダマ【モノポイズン】を手に入れました。
〔図書館の本に書かれた毒。
市販の材料で作る事が可能。
その効果は土橋に起きたものと一致する〕
728 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/28(日) 21:14:00.51 ID:mFuPFECA0
御影「……兄さん」

赤穂「牡丹か、捜査はどうだ?」

御影「一応、色々調べてるけど……兄さん、本当に大丈夫なの」

赤穂「……」

御影「ねぇ、家族の前でぐらい弱音吐いてよ。なんか、今の兄さんすごく危なっかしいよ」

赤穂「……牡丹は、よく見てるな」

御影「家族だもん。当たり前でしょ?」

赤穂「……正直泣き叫びたい。後悔だらけで、膝をつきたくなる」

御影「……」

赤穂「でも負けるわけにはいかないんだ。泣き叫ぶのも後悔も、終わってからする」

御影「兄さん……」

赤穂「だから終わったら、ちょっと泣かせてくれるか?」

御影「うん、もちろん。兄さんがそうしたいなら」

赤穂「ありがとうな。お前は本当にもったいないぐらいの妹だよ」

御影「そ、そんな事ないって……あっ、それと捜査の事なんだけど」

赤穂「ああ、そうだった。何かわかったか?」

御影「土橋なんだけど、こもってからは一度も外には行ってないみたい。物とかも如月に頼んでたって」

赤穂「一度も外に出てないのか……」

そうなると、色々狭まってくるよな……

コトダマ【こもってからの土橋】を手に入れました。
〔土橋はこもってからは一度も外に行かず、欲しい物などは如月に頼んでいたらしい〕
729 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/28(日) 21:40:14.77 ID:mFuPFECA0
六山「どういう事なのかな……」

赤穂「六山?どうかしたのか」

六山「あっ、赤穂くん。ほら、この金属の棒なんだけど」

赤穂「それは……」

道掛が昨日上にあったっていう……

六山「ほら一昨日赤穂くんとここで話したでしょ?あの時この棒、わたしの座ってた箱に入ってたんだよ」

赤穂「……それ本当なのか?」

六山「うん。一応中身確かめてから座ったし」

じゃあ、一昨日箱に入ってた棒が……昨日上に移動していたって事か?

それってつまり……

コトダマ【六山の証言】を手に入れました。
〔金属の棒は一昨日箱に入っていた〕
730 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/28(日) 22:02:55.75 ID:mFuPFECA0
赤穂「……」

大広間のテーブルの上に朝土橋の治療に使った道具が残っている。

包帯、ガーゼ、傷薬……これを使った時はまだ土橋も元気だったっていうのに。

赤穂「……んっ?」

この傷薬、土橋だけに使ったにしては減ってるな……

赤穂「牡丹、ちょっといいか?」

御影「どうしたの」

赤穂「なあ、この傷薬どこから持ってきたんだ?」

御影「えっ?兄さんの荷物だけど」

赤穂「ああ、そうか。だったら減ってて当たり前か」

こもる前に病院から新しいの持ってきて使ってたしな……

御影「もしかして駄目だった?」

赤穂「いや、全然問題ない」

問題ないんだけど……何か引っ掛かるな。

コトダマ【傷薬】を手に入れました。
〔土橋の治療に使った傷薬。
赤穂の荷物から御影が取ってきた物で量が半分ほど減っている〕
731 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 01:01:22.21 ID:juXEPiyA0
【厨房】

赤穂「う、ん……」

なんだこれ……なんだか、ちぐはぐな気分だ……

赤穂「くそっ、考えがまとまらない」

水でも飲んで落ち着くか……

赤穂「……んっ?」

流しに、何か透明な物が……

赤穂「この匂い……傷薬?」

なんで傷薬が流しにあるんだ?

赤穂「あっ、これ……」

ゴミ箱に粉々の瓶……これもしかして傷薬の瓶か?

赤穂「……」

コトダマ【流しの傷薬】を手に入れました。
〔厨房の流しについていた傷薬〕

コトダマ【傷薬の瓶】を手に入れました。
〔厨房のゴミ箱に捨てられていた傷薬の瓶〕
732 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 12:46:20.62 ID:juXEPiyA0
如月「赤穂さん、捜査は順調ですか?」

赤穂「如月さん……えぇ、なんとか」

如月「土橋さんの事……本当に残念でした」

赤穂「いえ……あっ、あの1つ聞きたいんですけど」

如月「なんでしょう?」

赤穂「如月さんって、土橋に何か物を頼まれたりしました?」

如月「ああ、それなら確かに外出の際いくつかマーケットから持ってきてほしいと頼まれましたよ」

赤穂「それって具体的には」

如月「薬や洗剤がいくつかと、後バンドのような物を頼まれましたね。最も洗剤はなかったんですが」

赤穂「なかった?」

如月「はい、どうやら誰かが持っていってしまっていたようで」

赤穂「……もう1つ、旧館にこもってから外に出たのは誰ですか」

如月「赤穂さん、土橋さん、御影さん、六山さん以外の方は最低一度は外に出ていますね」

赤穂「……わかりました」

コトダマ【土橋の頼み事】を手に入れました。
〔土橋は如月に薬品や洗剤、バンドなどを頼んでいたらしい〕

コトダマ【なかった物品】を手に入れました。
〔マーケットから洗剤がなくなっていた。
誰かが全て持っていってしまっていたようだが……〕

コトダマ【旧館からの外出】を手に入れました。
〔旧館にこもってから外出したのは赤穂、土橋、御影、六山以外の6人〕
733 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 12:54:20.73 ID:juXEPiyA0
赤穂「……」

一応、あそこを見ておくか。

※※※※

赤穂「……あった」

大量の洗剤……マーケットからなくなっていたのはあれだ。

赤穂「中に入れないから、手に取れないけど……確認出来れば充分だ」

コトダマ【大量の洗剤】を手に入れました。
〔苗木のコテージの中にあった大量の洗剤。
マーケットからなくなっていた物と思われる〕

キーンコーン、カーンコーン…
734 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 17:28:18.58 ID:juXEPiyA0
モノクマ「うぷぷ、うぷぷぷぷぷ……」

モノクマ「いよいよお楽しみの時間がやってきたよ!」

モノクマ「そう、絶望渦巻く学級裁判の時間が!」

モノクマ「うぷぷ、オマエラ急いで中央の島に集合してくださーい!」

ブツン!

赤穂「……」

学級裁判……そう聞いても心は穏やかだ。

もう慣れてしまったからか、それとも……

赤穂「行く、か」

【中央の島・未来機関第20支部】

御影「これで4度目か……」

兵頭「今回は目の前で亡くなった分、気が重いですね」

道掛「だなぁ……」

津浦「しかしワタシ達のするべき事に変わりはありません」

遠見「その通りであります……それが美姫殿の無念を晴らす事になるでありますよ」

佐場木「……」

六山「まずは生き残る事を考えよう……うん」

如月「旧館にこもる案は僕が提案した事……必ず真実は明らかにします」

赤穂「…………」

モノクマ「うぷぷ、全員集まったみたいだね!それじゃあ学級裁判場に出発ー!」

モノクマに促されて、俺達はエスカレーターを降りていく。

一番最後に乗った俺の視線の先には8人の背中。

もう、半分しかいないんだな……

そう考える内に、学級裁判場にたどり着いた。
735 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 17:53:22.64 ID:juXEPiyA0
【学級裁判場】

モノクマ「ひよっこだったオマエラもなかなかいい顔をするようになったねぇ」

モノクマ「うぷぷ、そうして絶望に歪む顔は本当に最高だよ!」

モノクマ「さあ席についてくださーい!」

モノクマの戯れ言を聞き流して自分の席につく。

【超高校級の土木作業員】土橋美姫……

傷を見られたくなかった俺を慰めてくれた女の子。

ジェニーが殺されて悲しみと憎悪を見せた女の子。

……俺なんかを、好きになってくれた女の子。

だけど俺はもう彼女の好意に何も返せない。

六山「内通者、なのかなぁ……」カチカチ

道掛「くそっ、こんなに減ったなんて寒気がしてきやがる……!」

遠見「美姫殿……自分達は必ず、真相を……!」

彼女は、死んだ。

俺達の目の前で、死にたくないと泣きながら、死んでいった。

佐場木「今回の事件、どうなる……」

津浦「あれが使われたなら、いつ、どうやって……?」

御影「兄さん……」

今俺はヒーローらしくない感情を抱いてる。

だけどそれに逆らおうとは思えない。

もし土橋が殺されたって言うなら、必ず犯人は引きずり出す。

兵頭「こんなはずではなかったんですが……」

如月「……責任は果たします」

ズキズキと痛む胸を掴む。

忘れるな、この痛みを。

忘れるな、今渦巻くこの感情を。

赤穂「……絶対に」

今回のクロは、たとえ裁判を逃げ切っても殺してやる。

そう心の内に刃を隠しながら俺は挑む。

この、学級裁判を。
736 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 20:24:20.53 ID:juXEPiyA0
・コトダマ一覧表

【モノクマファイル4】>>722

【土橋の死亡時の状況】
【腕の傷】>>723

【土橋の吐瀉物】>>724

【金属の棒】
【道掛の証言】>>725

【兵頭の証言】>>726

【毒の本】
【モノポイズン】>>727

【こもってからの土橋】>>728

【六山の証言】>>729

【傷薬】>>730

【流しの傷薬】
【傷薬の瓶】>>731

【土橋の頼み事】
【なかった物品】
【旧館からの外出】>>732

【大量の洗剤】>>733

目の前で土橋が死んだ事は赤穂の心に深い傷を刻んだ。
その傷を抱いて向かう学級裁判。
憎悪に染まった赤穂の迎える結末は……


     【学級裁判開廷!】
737 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 20:41:26.07 ID:juXEPiyA0
モノクマ「はいはい、それでは学級裁判の説明をしまーす!」

モノクマ「学級裁判ではオマエラに誰が犯人かを議論してもらいます!」

モノクマ「その結果は投票によって決定され、正しいクロを指摘できればクロがおしおき」

モノクマ「ただし間違えたら……クロ以外の全員がおしおきされ、クロは自由の身となるのです!」

道掛「何から話すよ?」

佐場木「まずは初回の事件と同じように事故か他殺かを話し合うぞ」

六山「最初の事件……あの頃から人も随分減ったよね」

兵頭「感傷は後にしましょう。今は佐場木さんの仰るように議論をしなくては」

赤穂「……」

事故か他殺か……そんなの決まってる!

これは他殺だ……!
738 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 20:49:49.77 ID:juXEPiyA0
【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>736
【モノクマファイル4】
【道掛の証言】
【金属の棒】

佐場木「事故か他殺か……」

佐場木「思う方に意見を出してみろ」

道掛「色々調べたんだけどよ……」

道掛「【事件の証拠はどこにもなかった】んだよな」

御影「じゃあ事故って事?」

津浦「しかし、【事件ではない】となると……」

遠見「自分は事件だと思うであります」

如月「ふむ、このままでは平行線ですね……」

これは事故なんかじゃない……

間違いなく誰かの悪意が働いてたんだ!
739 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 20:54:26.00 ID:juXEPiyA0
【事件の証拠はどこにもなかった】←【金属の棒】

赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「違うだろ道掛、事件と示す証拠はあったはずだ」

道掛「えっ、そんなのあったか……?」

赤穂「あの金属の棒だよ」

六山「金属の棒って倉庫にあったあれだよね」

遠見「リストにもあるであります……赤穂殿、これの何が証拠となるのでありますか?」

赤穂「この金属の棒……これに隠された悪意が土橋は殺されたって証拠になる」

佐場木「悪意だと?」

そうだ、隠された悪意……それを俺は証明出来るはずだ。
740 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 20:58:27.41 ID:juXEPiyA0
【ショットガンコネクト開始!】

金属の棒にあった悪意……

それを示すのは……!

・コトダマ>>736
【道掛の証言】
【モノクマファイル4】
【兵頭の証言】

・課題
【金属の棒の使用者を示すのは?】
【金属の棒の状態を示すのは?】
【金属の棒の場所を示すのは?】
741 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 21:00:46.71 ID:juXEPiyA0
【道掛の証言】―【金属の棒の場所を示すのは?】

赤穂「……」

道掛によれば金属の棒は上にあった……

だけどそれはおかしいんだ……!

・コトダマ>>736
【大量の洗剤】
【毒の本】
【六山の証言】
742 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 21:05:27.92 ID:juXEPiyA0
赤穂「……」

なぜなら金属の棒が箱に入っていたのを六山が見ている……!

つまり、この金属の棒は……

【道掛の証言】―【金属の棒の場所を示すのは?】―【六山の証言】


・結論
【金属の棒を適当に片付けた】
【何者かが金属の棒を上に移動させた】
【金属の棒は二ヶ所にあった】
743 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 21:15:53.26 ID:juXEPiyA0
【何者かが金属の棒を上に移動させた】

赤穂「真相の道筋を繋いでみせる!」


赤穂「道掛、確かあの金属の棒は高いところに置いてあったんだよな?」

道掛「おう、そうだぜ!具体的には積み重なった段ボールの上にはみ出して置いてあったぞ」

赤穂「六山、金属の棒は一昨日箱に入っていたんだよな?」

六山「間違いないよ」

遠見「金属の棒の場所が移動している……?」

赤穂「俺はこう考えてる」

赤穂「誰かが金属の棒を箱から出して上に仕掛けたんだってな」

佐場木「……確かにあの散らばっていた金属の棒は気になってはいた」

御影「つまり誰かが金属の棒で罠を作っていたって事なの?」

赤穂「ああ、そうだ。そして土橋はそれを取ろうとして……」


遠見「その推理、捉えたであります!」反論!
744 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 21:34:50.89 ID:juXEPiyA0
【反論ショーダウン開始!】

・コトノハ>>736
【土橋の頼み事】
【なかった物品】
【旧館からの外出】


遠見「赤穂殿、それは偶然に頼りすぎであります!」

遠見「罠を仕掛けたとしても狙った時に動くとは限らず……」

遠見「そもそも美姫殿が金属の棒を取ろうとしなければ成立しないでありますよ!」

赤穂「そうだ、土橋は金属の棒を取ろうとした!」

赤穂「そして罠にかかったんだ……!」

遠見「【美姫殿が金属の棒を取ろうとする理由がない】であります!」

遠見「確かに結果的には金属の棒は落ちたのでありましょうが……」

遠見「それが罠だと断言は出来ないでありますよ!」
745 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 21:47:58.01 ID:juXEPiyA0
【美姫殿が金属の棒を取ろうとする理由がない】←【土橋の頼み事】


赤穂「その反論に正義はない!」


赤穂「いいや、土橋にはあったんだ……金属の棒を取ろうとする理由が」

遠見「それはいったい……」

赤穂「如月さん、土橋はバンドを持ってきてほしいって頼んでたんですよね?」

如月「えぇ、腕に着けるタイプの物を……まさか」

赤穂「……正直、信じたくない結論だ」

御影「もしかして、兄さん……」

赤穂「だけど他に浮かばないんだ……土橋があの金属の棒を取ろうとする理由」

道掛「どういう事だよ!?美姫ちゃんは何しようとしてたんだ!」

赤穂「土橋は……」
746 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 21:48:35.01 ID:juXEPiyA0






赤穂「俺の新しい杖を、作ろうとしてたんだ」






747 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 08:09:59.31 ID:1OdtMfQA0
津浦「Mr.赤穂の……」

兵頭「新しい、杖」

赤穂「ああ……だから土橋は金属の棒を取ろうとした。俺の杖に似たあの棒を」

佐場木「それを見越して罠を仕掛けたのかもしれないな」

御影「そんな……」

赤穂「……」

遠見「これ見よがしに上に置かれた杖に相応しい棒……美姫殿はそれを見つけてしまった」

六山「土橋さんは腕を骨折してた。高いところにある棒を取るにも一苦労だったはずだよね」

如月「その結果……段ボールと共に崩れてきた金属の下敷きとなった」

道掛「なんてこった……」

土橋がなんで俺の新しい杖を作ろうとしていたのかはわからない。

だけどこの結論に、間違いはないはずだ。

赤穂「だからこの一件は事件」

赤穂「土橋は殺されたんだ……!」
748 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 10:39:08.19 ID:1OdtMfQA0
【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>736
【モノクマファイル4】
【土橋の死亡時の状況】
【土橋の吐瀉物】


佐場木「土橋が殺されたのはわかった。その前提で議論を進めるぞ」

津浦「犯人はやはり【内通者】なんでしょうか」

兵頭「今回の動機を考えても間違いないとは思いますが……」

御影「わざわざ罠まで作った以上【】突発的でもなさそう】だしね」

六山「でもそのわりにはお粗末だよね」

六山「【偶然脳が傷付いたから土橋さんは亡くなった】けど」

六山「わたしだったら一緒に厨房の刃物でも仕掛けとくよ」

道掛「百夏ちゃん怖えよ!?」

如月「しかし六山さんの言葉にも一理あります」

如月「この罠は片腕が使えず受け身も取りにくかったであろう土橋さんを殺すには【殺傷能力が低すぎる】」

遠見「表面上はたいした怪我ではなかったでありますからな」

土橋が殺されたのは間違いない……

だけどまだ疑問点はある。
749 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 13:01:58.69 ID:1OdtMfQA0
【偶然脳が傷付いたから土橋さんは亡くなった】←【モノクマファイル4】


赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「待ってくれ、そもそも土橋は本当に脳にダメージを受けて死んだのか?」

六山「……それって大前提じゃないの?」

道掛「そうだぜ、他にねえだろ!」

赤穂「だけどこのモノクマファイルを見てくれ」

佐場木「死因が書かれていない……赤穂が言いたいのはそういう事か」

赤穂「ああ、今までもモノクマファイルに書かれてなかった事は重要だった……」

赤穂「だから今回もそれは例外じゃないはずだ」

遠見「しかしあの美姫殿の死因が罠によるものでないのならば、いったい何が……」

兵頭「とにかく話し合いましょう。土橋さんはどうして亡くなったのかを、ね」
750 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 20:59:37.78 ID:1OdtMfQA0
【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>736
【こもってからの土橋】
【毒の本】
【腕の傷】

道掛「美姫ちゃんが【別の方法で殺された】ってマジなのかよ……」

六山「とりあえず色々あげてみよっか」

遠見「[撲殺]……ではなさそうでありますな」

兵頭「あの傷では[刺殺]にはなりそうにありませんね」

津浦「……[毒殺]では、ないでしょうか」

御影「[病殺]っていうのは?」

佐場木「勝手に手口を作るな……」

如月「さて、死因はいったい……」

土橋の死因はきっとあれだ……
751 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 21:48:13.27 ID:1OdtMfQA0
[毒殺]←【腕の傷】

赤穂「それに賛成するぞ!」


赤穂「津浦の言う通り、土橋は毒殺の可能性が高い」

道掛「ど、毒!?んなもんどっから……」

兵頭「そう断定するからにはもちろん根拠がおありなんですよね?」

赤穂「ああ、土橋の腕にあった引っ掻いたような跡だ」

佐場木「あれか……」

六山「あれは苦しんだ土橋さんがつけたものじゃないの?」

赤穂「あれは一見引っ掻いた傷に見えるけど実際は違ったんだよ」

御影「ど、どういう事?」

あの跡は……ある毒が使われた証拠になるんだ!
752 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 22:00:10.08 ID:1OdtMfQA0
【モノポイズン】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「モノポイズン……」

如月「モノポイズン?」

津浦「こちらの本に書いてある毒物です」

道掛「なんだそれ!宇宙語か!?」

佐場木「そんなわけないだろう」

兵頭「とりあえず、どんな毒物か教えていただけませんか?」

津浦「モノポイズンは体内に入って一時間前後で効果を発揮する猛毒です」

津浦「その際、腕には引っ掻いたような跡が残るのが特徴と書いてありますね」

六山「引っ掻いたような跡……土橋さんの腕にあるのそのままだね」

遠見「それでは美姫殿はその毒を用いて殺害されたのでありますか……」

赤穂「そういう事になる」

津浦「この毒は市販されている材料を使いますので、作るのは困難ではなかったでしょう」

如月「そんなに身近な物でそんな毒が……」

モノクマ「うぷぷ、そんなに驚く事はないよ!」

モノクマ「モノポイズンはボクが産み出した毒だからね!」

モノとついてる時点でそんな気はしてたけど、やっぱりそうなのか……!
753 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 22:11:59.94 ID:1OdtMfQA0
兵頭「色々わかってきましたね」

御影「土橋は罠を仕掛けられていた……」

六山「そして毒殺されたんだね」

道掛「うーん、だけど本当にそんな毒簡単に作れんのか?」

津浦「材料は本当に簡単に手に入りますので。例えば……」

津浦がいくつかの材料をあげていく……それは俺達が日常で見るような物ばかりだ。

如月「……ちょっと待ってください」

遠見「どうしたのでありますか?」

如月「津浦さん、モノポイズンは本当にその材料を使うのですか?」

津浦「そうですが……」

如月「まさか、いやしかし……」

佐場木「なんだ、何かあるなら言え」

如月「……そのモノポイズンの材料ですが、僕は外出の際に旧館に持ってくるよう頼まれています」

道掛「だ、誰にだよ!」


如月「……土橋さんですよ」
754 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 22:23:07.12 ID:1OdtMfQA0
赤穂「……!」

道掛「んっ?はっ?ちょっと待てよ、美姫ちゃんが……毒の材料を頼んだ?」

如月「津浦さん、これから僕があげるものにモノポイズンの材料となる物がどれだけあるか教えてください」

今度は如月さんが物の名前を告げていく。

そしてそれを確認していた津浦は……青ざめた顔で本を閉じた。

津浦「今、Mr.如月があげた物品は……バンド以外、全てモノポイズンの材料です」

御影「ちょっと待ちなよ!?土橋は被害者なんだよ!?」

六山「だけど土橋さんがモノポイズンの材料を頼んでたのは事実、だよね」

佐場木「……問題なのはその目的だ」

道掛「そ、そりゃ、毒を作る理由なんて1つしかなくね?」

赤穂「土橋が誰かを殺そうとしていたっていうのか!?」

兵頭「……1ついいですか?もしかしたら」
755 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 22:23:42.12 ID:1OdtMfQA0






兵頭「土橋さんが、内通者だったのでは?」






756 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 22:35:20.58 ID:1OdtMfQA0
赤穂「は……?」

土橋が、内通者?

兵頭「内通者は事件を起こさなければ命がないと脅されていました」

道掛「そ、それなら毒を作ってもおかしくは、ねえよな……」

待て。

六山「土橋さんが内通者だったなんて……」

津浦「そうなると、この事件に新しい展開が見えるのでは?」

待てよ。

佐場木「自殺か」

御影「じ、自殺はおかしくない?だって土橋は命がないって脅されて毒を作ろうとしてたんでしょ?」

なんだよこれ。

如月「躊躇った末に絶望したか……もしくは、赤穂さんをどうしても犠牲に出来なかったか」

なんなんだよ、これは!

赤穂「待て、待てよ!!なんで土橋が内通者だなんて話になってる!!あいつは被害者だ、あいつは死にたくないって泣きながら殺されたんだぞ!?」

おかしいだろ、なんでみんな被害者のあの子を責めるような雰囲気なんだ!!

兵頭「しかしだったらどう説明をつけますか?彼女がモノポイズンの材料を求めていた理由を」

赤穂「知るかそんなもの!!」

御影「に、兄さん……?」

ふざけるな、ふざけるなよこいつら……!

だったら証明してやるよ、土橋にはモノポイズンを作れないってな……!
757 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 22:43:43.35 ID:1OdtMfQA0
【毒の本】

赤穂「お前らに正義はない……!」


赤穂「津浦!!今すぐその本を貸せ!!」

津浦「ひっ!」

差し出された本を奪い取ると全員に向けて適当なページを見せる。

赤穂「なあ、誰かこれ読めるか?」

道掛「い、いや……」

佐場木「どこの国の言語かぐらいしかわからんな」

兵頭「残念ながらわかりませんね……」

赤穂「そう、誰にも読めない、わからないんだよ!頭のいいだろう兵頭や佐場木にも!」

赤穂「だったら土橋にも読めなかったと考えるのが普通だろう!!」

御影「あっ……」

六山「じゃあどうして土橋さんは……」

赤穂「さあな!だけどこれで1つ結論が出た……」

モノポイズンを作る方法、そのための材料……そのどちらもこの本を読めないとわからない。

だったら毒を作れるのは……!
758 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 22:53:30.87 ID:1OdtMfQA0
【津浦琴羽】

赤穂「お前しかいない……!」


赤穂「津浦、お前だろう?」

津浦「えっ?へっ?」

赤穂「そもそもこの本読めるのはお前だけだ。だったら毒を作れるのはお前しかいないんじゃないのか?」

津浦「ま、待ってください!なんでワタシが……」

赤穂「そんなの、お前が内通者だからじゃないか?」

津浦「は!?」

赤穂「お前は死ぬ事に随分怯えてたもんな?少なくとも銃を持ち出すぐらいには」

津浦「そ、それは……」

道掛「ちょっと待てよ赤穂!それは乱暴……」

赤穂「お前らも今土橋に同じ事をしただろう!!」

御影「……!」

赤穂「もう死んで反論出来ない土橋によってたかって内通者の罪を押しつけて……!」

佐場木「……」

赤穂「そもそも毒の材料は津浦にしかわからない!だったら嘘をついてる可能性もある……!」

如月「赤穂さん……」

赤穂「これでわかっただろう!お前らに正義なんて――」
759 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 22:54:08.75 ID:1OdtMfQA0






パァン!!






760 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 23:06:31.12 ID:1OdtMfQA0
喚く俺の言葉を遮るように響いたのは……一発の銃声。

その音の発生源は……上に向けて銃を構える。

遠見「全員、静粛にであります」

遠見、だった。

遠見「赤穂殿、はっきり言うであります……」


遠見「さっきから見苦しい、少し黙れ」


赤穂「っ……」

遠見の発するその気迫に俺は言葉を失う。

それだけ遠見からは……剣呑な雰囲気が漂っていた。

遠見「赤穂殿は美姫殿を信用していなかったのでありますか?」

赤穂「は?何言って」

遠見「それならあの感情のままに喚き散らすあれはなんでありますか?」

遠見「もし同じ立場に立っていたのが御影殿なら……赤穂殿は冷静に、それこそジェニー殿の疑いを晴らした時のように立ち回っていたはずでは?」

その言葉に、俺は冷や水をぶっかけられたような気がした。

そして思い返す……さっき自分の醜態を。

赤穂「なんだ、あれ……俺、なんであんな……」

遠見「頭に血が上った、それはわかるでありますよ」

遠見「しかしそれで津浦殿に罪を押しつけるのは違うでありましょう?」

遠見「冷静に考えれば……そもそも津浦殿が内通者ならモノポイズンの事など明かさなければいいのでありますから」

赤穂「……」

そうだ……俺、そんな事すら……
761 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 23:21:04.24 ID:1OdtMfQA0
遠見「続いて……美姫殿が内通者だという話には少々無理があるかと」

兵頭「それはなぜですか?」

遠見「ちぐはぐだからでありますよ」

御影「ちぐはぐ?」

遠見「如月殿、美姫殿が材料を頼んだのは一度にでありますか?」

如月「そうですね……」

遠見「あの腕を見れば津浦殿は同じように調べるでありましょう。そうなれば一巻の終わりであります」

六山「だったら津浦さんを殺せば……」

遠見「それなんでありますが……今回の事件、自分は2つ確信してる事があるのであります」

佐場木「確信してる事だと?それはなんだ?」

遠見「……赤穂殿」

赤穂「なん、だ?」
762 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 23:22:29.60 ID:1OdtMfQA0






遠見「おそらくあの罠もモノポイズンも、標的は赤穂殿であります」

遠見「そして」

遠見「内通者なんか、はじめからいないであります」






763 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 23:23:52.20 ID:1OdtMfQA0






    【学級裁判中断!!】






764 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 23:24:18.26 ID:1OdtMfQA0
今回はここまで。
次回学級裁判完結です。
765 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/31(水) 20:29:53.98 ID:TE2fWHVA0






     【学級裁判再開!】






766 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/31(水) 21:12:19.64 ID:TE2fWHVA0
赤穂「狙われてたのが、俺……」

いったい、どういう事なんだ?

遠見「1つ考えてほしいのであります、もしあの罠を赤穂殿が受けていたとしたらどうなっていたか」

御影「それは……」

佐場木「腕が不自由だった土橋と違い、赤穂は脚だ。おそらく逃げきれず押し潰されていただろうな」

六山「だけどそれにはそもそも、赤穂くんが棒を取りに行かないと」

遠見「……赤穂殿、その杖をよく見てほしいであります」

赤穂「杖を……?」

遠見に言われるがまま杖をよく見てみる。

赤穂「……!なんだこれ!?」

それは、微かな、だけどはっきりとした異常。

杖の下の方が……削れていた。

もしこのまま使っていたら、いずれ折れてバランスを崩していただろう。

遠見「これでも眼は自信がありましたので……それは明らかに人為的なものであります」

赤穂「……」

確かに杖が使えなくなったら、俺は代わりを取りに行ったはずだ。

そしてあの金属の棒を取ろうとする。

そうしたらどうなっていたか……考えなくてもわかった。
767 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/31(水) 22:02:29.10 ID:TE2fWHVA0
兵頭「あの罠が赤穂さんが狙っていたのはともかく……それでなぜ内通者がいないという話に?」

道掛「そうだぜ!メメちゃんはなんか確信があるみてえだけど……」

遠見「そもそも、自分は内通者がいるという話には正直最初から懐疑的だったのであります」

津浦「それはなぜ……」

遠見「もし内通者がいるなら黒幕である苗木殿が動きすぎなのであります」

御影「動きすぎ?」

佐場木「確かにそうだな……今までの事件、内通者の役割がまるでない」

六山「あっ、そっか。例えば静音さんに提案したり四方院さんに手紙送るのは内通者にさせればいいもんね」

六山「そうすれば自分のした事が事件を起こしたってさらにがんじがらめに出来るし」

道掛「だから百夏ちゃん怖えよ!?」

赤穂「言われてみればそうだ……それに、もし黒幕以外に内通者もいたならあの苗木が最期にそれを暴露しないのは不自然だ」

実際そこでガタガタになってた部分はあったしな……

如月「……ふむ、ならば聞いてみましょうか」

如月「モノクマ、内通者はいるんですか?」

如月さんの質問を受けて微動だにしないモノクマ……

長い時間が経ったかのような感覚……そして。

モノクマ「内通者?そんなのいないよ」

それが、モノクマの解答だった。
768 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/31(水) 22:45:29.25 ID:TE2fWHVA0
道掛「な、なんだよそれ!?いねえもんを当てろとか言ってたのか!?」

モノクマ「えっ?だからいないが正解だよ?」

御影「あんたそんなの!」

モノクマ「ボクは内通者がいるなんて言った覚えはないよ!」

モノクマ「もし内通者がいたらコロシアイを引き起こすっていうのをちょっとはしょっただけじゃん!」

佐場木「とんでもない暴論だな」

モノクマ「何さ何さ!内通者なんかいないって思えないオマエラの信頼関係とかがボロボロだってだけの話じゃない!」

赤穂「ぐっ……!」

さっきまでその事で雰囲気を悪くした俺はそれに何も言い返せない……

如月「内通者はいない……なるほど、ならば毒を作ろうとしたのはもう1人の黒幕ですか」

モノクマ「は!?」

佐場木「ふん、内通者がいない以上苗木のような裏で動く黒幕もしくは誰かが殺人を起こそうとして毒を作った事になる」

兵頭「後者の場合作れるのは本が読める津浦さんのみとなってしまいますね」

津浦「疑いは晴れたのではなかったんですか……」

赤穂「……待てよ、冷静に考えたらたとえ本が読めても、モノポイズンは作れないんじゃないか」

御影「えっ、なんで?」

そうだ、そもそもモノポイズンは作れない……

どうやっても不可能なんだ!
769 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/31(水) 22:59:23.33 ID:TE2fWHVA0
【なかった物品】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「……如月さん、土橋が頼んだ品物の中になかった物があったんですよね?」

如月「はい。洗剤がなくなっていましたよ」

津浦「えっ?洗剤がなければモノポイズンは作れませんよ」

六山「材料がないなら物理的に無理だもんね」

御影「じゃあモノポイズンはそもそも使われてないって事なの?」

兵頭「ですが先ほど津浦さんがおっしゃった内容とモノポイズンの症状は一致するんでしたよね?」

津浦「は、はい」

道掛「じゃあいったいどうなってんだよ!」

遠見「……」

佐場木「とにかく話し合うぞ……内通者はいないとわかった以上確実に進んでいるんだ」
770 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/31(水) 23:08:14.90 ID:TE2fWHVA0
【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>736
【土橋の死亡時の状況】
【こもってからの土橋】
【旧館からの外出】


兵頭「モノポイズンの材料が手に入らなかった……」

御影「【モノポイズンは使えなかった】って事になっちゃうんだけど……」

遠見「ふむ……」

津浦「しかし【症状は一致しています】……」

道掛「わかったぜ!【美姫ちゃんは直前に別の毒飲まされた】んだ!」
771 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 21:07:36.39 ID:3y8a328A0
【美姫ちゃんは直前に別の毒飲まされた】←【土橋の死亡時の状況】

赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「いいや、それはない。土橋は直前まで俺と普通に話してたんだ」

赤穂「特に何も口にしてなかったしな……直前に毒を受けた可能性はまずないはずだ」

道掛「じゃあなんなんだよ!モノポイズンとかいうのは作れねえ!他の可能性もねえ!」

道掛「もうわけわかんねえ!いっそ苗木が化けて出たって言われても信じるぞ俺は!」

津浦「み、Mr.道掛、落ち着いてください」

赤穂「……」

苗木が化けて出た……

赤穂「そうかも、しれないな」

御影「えっ!?」

兵頭「とうとう気が……」

赤穂「もちろんあいつが幽霊になって土橋を殺したなんて言うつもりはない」

赤穂「だけど今回の事件にも、あいつの関与はあったはずだ」

六山「もう死んじゃった苗木くんが、どうやって関与するの?」

苗木の関与している証拠……
772 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 21:21:52.76 ID:3y8a328A0
【大量の洗剤】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「念のため苗木のコテージを見てきたんだ……そうしたら中に大量の洗剤があった」

如月「洗剤……それはやはりマーケットからなくなっていた?」

赤穂「はい」

遠見「つまり苗木殿はモノポイズンを作成していた可能性が高いでありますな……」

佐場木「先ほどモノクマはモノポイズンを自分の作った物だと明言した。つまり黒幕である苗木はモノポイズンの作り方を知っていたわけだ」

兵頭「洗剤という物的証拠があるなら津浦さんが作ったというよりは説得力がありますね」

津浦「ほっ……」

御影「じゃあどうやって作ったかは問題じゃないって事だ。だって苗木が作ってたんだから」

赤穂「そう……そしてその事からはっきりわかる事がある」

赤穂「今回の犯人はもう1人の黒幕だ!」

モノクマ「はい!?どうしてそうなるのさ!」

赤穂「モノポイズンは黒幕である苗木が作っていた……そして苗木はもういない」

赤穂「つまりモノポイズンを使えるのは苗木と共犯だったもう1人の黒幕以外あり得ないじゃないか!」

モノクマ「そんなの、こっそり持ち出せば済む事でしょうが!」

赤穂「それはない!だって……」

【被害者以外のコテージには入れない】
【クロ以外のコテージには入れない】
【誰のコテージにも入れない】
773 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 21:38:34.50 ID:3y8a328A0
【被害者以外のコテージには入れない】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「捜査中は被害者のコテージにしか入れない……そうだったよな牡丹」

御影「うん、モノクマははっきりそう言ってたよ」

赤穂「そしてそれ以外のタイミングはコテージの鍵がなくなった以上どうしようもない」

赤穂「ただ1人……このコロシアイを運営する黒幕以外はな!」

モノクマ「うぐぐ……」

遠見「おそらく美姫殿がモノポイズンの材料を如月殿に頼んだのは誰かに頼まれたからでありましょう」

佐場木「そうして毒の入手経路をあやふやにしようとしたわけか」

兵頭「……如月さんが洗剤がなかったと証言すればさらに混乱を招きますからね、道掛さんのように」

道掛「褒められたのか!?」

津浦「違います」

六山「苗木くんのコテージを調べた赤穂くんのファインプレーだね。でもどうして調べようと思ったの?」

赤穂「あいつは悪意に満ちた奴だったからな……なんとなく気になったんだ」

如月「彼ほどの悪は確かにいません……疑うのも無理はありませんね」

事実、あいつは関わっていた……苗木は死んだ後も俺達に牙をむいていたんだ。
774 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 21:49:50.95 ID:3y8a328A0
兵頭「さて……入手経路はわかったところで次の議論にいきましょうか」

佐場木「土橋がどうやって毒を盛られたかか」

如月「津浦さん、それについて何か手がかりは?」

津浦「いえ、このモノポイズンはあらゆる使い方が出来るらしく……せいぜい発症まで1時間前後という事ぐらいしか」

御影「1時間……ちょうど朝起きたくらいの時間だね」

道掛「よしわかった!美姫ちゃんは朝飯に毒を仕込まれたんだ!つまり犯人は」

兵頭「何か?」

道掛「千ちゃん笑顔なのに怖っ!?」

御影「それは多分ないよ」

そう、朝食に毒はなかったはずだ……
775 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:01:00.23 ID:3y8a328A0
【兵頭の証言】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「土橋は自分の分の朝食を兵頭や牡丹にも食べさせてたらしいんだ」

御影「そうそう、鼻歌なんて歌ってたし……うん、本当に幸せそうだったのに」

兵頭「御影さん、涙は後に回しましょう」

御影「ん、わかってるよ」

遠見「それなら自分も見たでありますよ」

津浦「つまり朝食にモノポイズンが入っていたら……」

佐場木「今頃この学級裁判は7人で行っていたわけだ」

六山「怖い話だね……」

道掛「朝飯が違うのはわかったけどよ、じゃあ他に何かあんのか?他に美姫ちゃんが口に入れたのとかなくね?」

如月「毒の侵入経路……重要でしょうから慎重に議論しましょう」
776 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:07:17.09 ID:3y8a328A0
【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>736
【傷薬】
【流しの傷薬】
【傷薬の瓶】


佐場木「モノポイズンをどうやって摂取したか……」

道掛「そうか!」

兵頭「黙っていてください道掛さん」

道掛「なんでだよ!?」

津浦「〔気体を吸引した〕可能性はないでしょうか」

如月「それならもっと被害が出ていたはずです」

御影「〔飲み物〕なら私達も手つけてないしあるんじゃない」

六山「あっ、わたしが間違って飲んだ……」

遠見「……〔塗った〕と、自分は考えるでありますよ」

毒の経路……それはきっとあれだ。
777 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:12:34.31 ID:3y8a328A0
〔塗った〕←【傷薬】

赤穂「それに賛成するぞ!」


赤穂「そうだ……土橋は毒を塗られたんだ!」

道掛「俺もそれ言おうとしてたんだよ!」

津浦「塗ったとは……あの傷薬ですか」

兵頭「他に土橋さんが塗られた物は浮かびませんね」

赤穂「そう、土橋がした頭の切り傷……あれを治療するための傷薬にモノポイズンは仕込まれていたんだ」


御影「それは違ってるよ!」反論!


御影「ちょっと待って兄さん!それはないよ!」

赤穂「牡丹?」

御影「少なくともあの傷薬に毒はなかった……」

御影「私は断言するよ!」
778 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:16:11.75 ID:3y8a328A0
【反論ショーダウン開始!】

・コトノハ>>736
【こもってからの土橋】
【傷薬の瓶】
【モノポイズン】


御影「あの傷薬に毒があったなんて絶対おかしい!」

御影「兄さんだってそれはわかるはずでしょ!」

赤穂「他に経路は考えられないんだ牡丹」

赤穂「モノポイズンは傷薬にあったとしか思えないんだよ」

御影「あの【傷薬は兄さんだって使ってた】じゃない!」

御影「だけど兄さんはこうして生きてる」

御影「それが傷薬に毒なんてなかったって証拠だよ!」
779 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:28:26.96 ID:3y8a328A0
【傷薬は兄さんだって使ってた】←【傷薬の瓶】

赤穂「その反論に正義はない!」


赤穂「違うんだ牡丹、あの傷薬は……俺が使ってた物じゃない」

御影「えっ」

道掛「どういうこった?」

赤穂「厨房に傷薬の瓶が捨てられてたんだ」

兵頭「傷薬の瓶、ですか?」

赤穂「そうだ。犯人はモノポイズンの入った傷薬と俺が使っていた傷薬を入れ換えたんだよ!」

津浦「な、なぜそんな事を……」

赤穂「遠見の推測が正しいなら、俺を殺すためだろうな」

遠見「……」

如月「赤穂さんは腹部の負傷に傷薬を使っていましたからね……もし何も起こらずにそのまま使っていたら」

津浦「Mr.赤穂が、被害者になっていた……」

赤穂「……」

土橋は……俺を殺そうとした罠にかかって殺された。

くそっ、気分が悪い!

もし俺が早起きして塗っていたらそれだけで土橋は……………………



赤穂「……は?」

ちょっと、待てよ。

赤穂「モノ、クマ」

聞かないといけない。

モノクマ「何さ赤穂クン!また言いがかりつけたらただじゃおかないよ!」

赤穂「1つ、聞きたいんだ」
780 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:29:10.39 ID:3y8a328A0






赤穂「俺が傷薬塗って死んでたら、クロは誰になる?」






781 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:30:42.36 ID:3y8a328A0






モノクマ「そんなの赤穂クンに決まってるじゃない!毒を用意しただけでクロになるわけないでしょ!」






782 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:34:44.06 ID:3y8a328A0
赤穂「…………」

最悪だ。

御影「兄さん?」

道掛「おいおい、顔が真っ白だぞ!?」

俺は今まで、毒を用意した奴がクロだと思っていた。

六山「えっと、どうしたの」

津浦「今の質問の意図はいったい……」

兵頭「……まさか」

だから議論をしてきたんだ。

佐場木「…………」

如月「……やはり、そうなりますか」

だけど、これは……

モノクマの言葉が、正しいならこの事件の、クロは……!
783 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:35:27.72 ID:3y8a328A0






「――やっと、わかってくれたでありますか」






784 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:39:03.53 ID:3y8a328A0
弾かれたように声の方を向く。

俺が見た彼女の顔は、落ち着いていた。

まるで、最初からこうなるのをわかっていたかのように。

赤穂「なんで、そんな穏やかなんだよ」

まさかわかってたのか?

それなのに毒を【塗った】なんて言ったのか?

赤穂「わかってるのか?今のモノクマの言葉を考えたら、今回のクロは……」

「もちろん、理解しているでありますよ……最初から」
785 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:39:45.14 ID:3y8a328A0






遠見「美姫殿を殺したのは、自分であります」






786 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:49:21.01 ID:3y8a328A0
道掛「は?はあ!?」

兵頭「遠見さん、あなたは……」

遠見「いや、さすがでありますな!自分もあえて黙って全員の成長に一役買ったかいがあるであります!」

御影「何、言ってるの……?」

遠見「モノポイズンが仕掛けられていたのは傷薬。赤穂殿が塗っていたなら薬を塗った赤穂殿がクロとなる」

遠見「つまり、今回は美姫殿に薬を塗った自分がクロとなる……それだけでありますよ」

津浦「Ms.遠見……最初からという事は、あなたはそれをわかった上で混乱を静めたんですか!?」

遠見「もちろんであります。だって自分は、ここにいる誰も犠牲になんてするつもりはないでありますから」

六山「怖く、なかったの……?」

遠見「軍人でありますから!」

如月「……残念です遠見さん」

遠見「……ありがとうであります」

赤穂「遠、見」

遠見「さあそろそろ投票タイムといくでありますよ。もう議論は――」
787 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:50:46.23 ID:3y8a328A0






佐場木「黙れ……!」






788 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:55:13.90 ID:3y8a328A0
遠見「佐場木殿……?」

佐場木「自分が犯人?下らん話をするならその口を閉じていろ」

赤穂「佐場木、だけど」

佐場木「前にも言ったはずだ赤穂」

佐場木「貴様だけで勝手に進めるのはやめろとな……!」

佐場木「遠見をクロとするなら俺が提示する疑問全てに答えを出してみろ!」

佐場木「それが出来ない限り、判決など下させるものか」

佐場木「絶対に、下させるものか!!」


佐場木「その推理を棄却する!」反論!
789 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 23:01:35.80 ID:3y8a328A0
【反論ショーダウン開始!】

・コトノハ>>736
【こもってからの土橋】
【流しの傷薬】
【土橋の吐瀉物】


佐場木「まずは傷薬の件だ」

佐場木「貴様は傷薬にモノポイズンが仕掛けられ、自分の物と入れ換えられていたと言ったな?」

赤穂「ああ、そうだ」

赤穂「モノポイズンを用意した……多分黒幕は傷薬にそれを入れて交換したんだ」


佐場木「語るに落ちたな赤穂!」

佐場木「あの傷薬は大量に消費されていた!」

佐場木「つまり【他にもあの傷薬を使用した人間がいる】という事!」

佐場木「ならばなぜ土橋だけが死んだ?」

佐場木「それはあの傷薬にモノポイズンなど入っていなかったからだ!」
790 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 23:06:43.07 ID:3y8a328A0
【他にもあの傷薬を使用した人間がいる】←【流しの傷薬】

赤穂「その反論に……!」


赤穂「傷薬は瓶だけじゃない、中身も捨てられていたんだ」

赤穂「流しにその痕跡がしっかり残っていたんだよ佐場木!」

佐場木「……ちいっ!」

赤穂「これで、もう」

佐場木「まだだ、まだ疑問はある!」


佐場木「その判決を不服とし、控訴する!」反論!
791 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 23:13:40.16 ID:3y8a328A0
【反論ショーダウン開始!】

・コトノハ>>736
【土橋の吐瀉物】
【こもってからの土橋】


佐場木「そもそもモノポイズンは本当に使われていたのか?」

佐場木「腕の痕が傷である可能性は完全に否定されていない!」

佐場木「他の死因、他の毒、まだ議論の余地はある!」

赤穂「今さらそれを言うのか!?」

赤穂「モノポイズンの特徴と土橋の状況は完全に一致する!」

赤穂「もう認めてくれ佐場木!」

佐場木「認めるのは貴様だ赤穂!」

佐場木「【腕の痕のみが特徴】なら……」

佐場木「いくらでも説明はつけられる!」
792 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 23:18:01.25 ID:3y8a328A0
【腕の痕のみを特徴】←【土橋の吐瀉物】

赤穂「……!」


赤穂「土橋の吐いた物の中に血が混ざっていた!」

赤穂「この少しの血もモノポイズンの特徴なんだ!」

赤穂「モノポイズンが土橋を殺した毒という事に議論の余地はない!」

佐場木「ぐうっ!?」

赤穂「頼む、もうやめてくれ佐場木!」

赤穂「お前だってもうわかっているはずだ……」

赤穂「この事件の真実に!」

佐場木「…………まだだ」

赤穂「佐場木……!」

佐場木「まだ俺の反論は終わっていないぞ赤穂政城!」

佐場木「上告だ!これで最後にしてやる……赤穂!!」
793 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 23:23:45.35 ID:3y8a328A0
【パニックトークアクション開始!】

佐場木「赤穂が塗った場合赤穂は犯人となるた!」

佐場木「しかしそれが今回も適用されるとは限らん!」

佐場木「いいや!モノクマがわざわざ言及したからには違うと疑うべきだ!」

佐場木「今回の事件のクロはモノポイズンの作成者……!」

佐場木【苗木誠以外にいはしない!】



     禁止の

複数の        殺害

     ルール
794 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 23:29:55.83 ID:3y8a328A0
【複数の殺害禁止のルール】

赤穂「もう、終わらせよう……!」


赤穂「苗木が犯人なら、苗木は2人以上の殺害禁止のルールを破った事になる」

赤穂「モノクマ、その場合はどうなるんだ?」

モノクマ「もちろん違反として知らせるよ!学級裁判も開きません!」

赤穂「……これが答えなんだ佐場木」

佐場木「こんな判決、こんな判決など……!」

佐場木「ぐうっ!うああああああっ!!」ダンッ!!

遠見「……佐場木、殿」

赤穂「…………」
795 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 23:39:26.78 ID:3y8a328A0
【クライマックス推理開始!】

ACT.1
今回の事件は……あまりにも残酷なものだった。
被害者もクロも……本来とは違ったんだからな。

ACT.2
今回裏で動いていた黒幕は、何を狙っていたか俺を殺そうとしていた。
そのためにいもしない内通者関連の動機を出し、俺達を一ヶ所に固めさせたんだ。

ACT.3
黒幕は俺の杖と薬に細工すると、何事もなかったかのように過ごした。
罠とモノポイズン……どちらにかかって俺が死んでもいいようにな。
だけど……そううまくはいかなかった。

ACT.4
多分俺の杖の異変に気付いた土橋が罠のある倉庫に行ってしまったんだよ。
そして土橋は罠にかかり、怪我をした……この時の切り傷が土橋の運命を決めてしまったんだ。

ACT.5
そして土橋の治療のために今回犯人となってしまった人物は傷薬を使った。
モノポイズンの入った、傷薬を……何も知らずに。

赤穂「黒幕の企みは失敗した、俺は今も生きてる」

赤穂「土橋と遠見……2人を犠牲にして……」

遠見「……」

COMPLETE!
796 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 23:40:53.22 ID:3y8a328A0
モノクマ「議論の結論が出たみたいだね!」

モノクマ「それでは投票タイムとまいりましょうか!」

モノクマ「オマエラ、お手元のスイッチで投票をお願いします!」

モノクマ「オマエラの答えが正解?それとも不正解?」

モノクマ「運命はどっちだー!!」

         VOTE

      遠見 遠見 遠見

       チャッチャッチャー!


     【学級裁判閉廷!】
797 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 23:42:59.87 ID:3y8a328A0
今回はここまで。

次回おしおきと四章完結です。

それでは、また……
798 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 21:19:02.18 ID:5gNy0aTA0
モノクマ「だいせーいかーい!」

モノクマ「今回土橋美姫さんを殺したクロは……」

モノクマ「遠見メメさんでしたー!」

遠見「……よかった、ちゃんと正解でありますね」

赤穂「……ぐっ、くっ」

なんだよこれは……!

俺はこんな、こんな結末を望んでたんじゃない……!

俺は、ただ……!

モノクマ「だけど全員正解ではなかったね!」

津浦「えっ?」

モノクマ「佐場木クン、ダメじゃない!裁判官のキミが間違えるなんて!」

佐場木「……」

道掛「さ、佐場木……」

佐場木は、最後まで認めなかったのか……

佐場木「……だ」

モノクマ「はい?なんか言った?」

佐場木「この判決は不当だ!今すぐ裁判のやり直しを要求する!」

モノクマ「えー?なんでそうなるの?」

佐場木「なんでだと!?この事件、遠見に土橋を殺す意思はなかった!毒を作った苗木、もしくはそれを仕掛けた貴様こそこの事件のクロとして裁かれるべき存在だ!」

如月「……」

佐場木「こんな判決、認めてたまるか!こんなふざけた……!」

佐場木の言葉は、ある意味俺達の言葉でもあった。

だけどそれを口に出せるはずもない。

佐場木と違って俺達は……遠見を差し出してしまったんだから。
799 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 21:24:43.04 ID:5gNy0aTA0
遠見「佐場木殿!もういいでありますよ!」

佐場木「お前はこんな結果でいいのか!?お前は土橋を殺したかったわけでも毒の存在を知っていたわけでもない!それなのに……」

遠見「自分は軍人……戦場で死ぬ覚悟は常に出来ているであります」

佐場木「ここは戦場ではない!」

遠見「戦場でありますよ。これはモノクマと自分達の……戦争であります」

遠見は笑っている。

なんでだ、いくら軍人だからって……

御影「なんで……そこまで言えるの?」

遠見「……そうでありますね。モノクマ、少し昔話をしてもいいでありますか?」

モノクマ「お好きにどうぞ!うぷぷ、今は遠見さんが喋るだけで他の皆にダメージいきそうだし!」

遠見「……理由はともかく、許可は出たでありますか」

遠見は俺達の顔を見渡して、微笑むと口を開いた。
800 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 21:35:25.09 ID:5gNy0aTA0
何人かには話したのでありますが、自分は戦災孤児でありました。

実のところ、自分は日本人ではないのであります……遠い血には混じっているみたいでありますが。

そんな自分は元々奴隷としていつか売られる運命の子供でありました。

名前は1番という番号、最年長だった事から同じように売られ、捨てられ、連れ去られた子供達のまとめ役をしていたのであります。

地獄でありました……病気や虐待で次々と死んでいく子供達。

それを見ながら、今日も生き延びられたと安堵し、そんな自分を嫌悪し……本当に最低最悪でありましたよ。

そしてとうとう自分ともう1人しかいないという状況で……自分は希望を、見たのであります。

「生きてるか」

「……あなた、誰」

「……」ガタガタ

「自分は」



切原「切原生人。傭兵だ」
801 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 21:44:57.95 ID:5gNy0aTA0
隊長殿に救われた自分達は安全な場所まで共に過ごす事になったであります。

部隊の皆はとても優しくて、自分達を人間として扱ってくれて……

切原「名前はないのか」

「……はい」

「……」コクッ

切原「……なら自分が名前を贈ろう。そのままでも不便だろう」

「……!」

切原「……遠見、遠見メメ。それがお前の名前だ」

遠見「遠見……メメ……」

切原「お前はいい瞳をしている。これからはその目で遠く広い世界を見渡していけ」

遠見「……」

「……」クイクイッ

切原「ああ、お前にも贈らなくてはな……」

隊長殿はきっと、たいしたことをしたとは思っていないであります。

しかし、自分達にとって……この名前という贈り物がどれだけ希望となったか。

そして決めたのであります……隊長殿のように、自分も誰かに何かを贈れる存在でありたいと。

元々死んでいたはずの命、今という奇跡のような時間。

だから自分は、いつ死んでもそれを悲観も絶望もしないであります。

だって。

どんな時でも遠見メメの人生は幸福であったと、胸を張って言えるのでありますから。
802 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:01:06.47 ID:5gNy0aTA0
遠見「だからそんな顔をしないでほしいでありますよ」

津浦「Ms.遠見……」

遠見「ここに来てからは、役に立てていなかったでありますが……それでもこんな自分を信頼してくださった人もいたであります!」

佐場木「……」

遠見「そして今回他の方がクロにならずに済んだ、それだけは救いであります」

道掛「ち、ちくしょう、メメちゃん……!」

遠見「……佐場木殿」

遠見が自分の髪を結う2本のリボンを佐場木に渡す。

遠見「1本は妹に、渡してほしいであります」

佐場木「……もう1本は」

遠見「あなたに、持っていてほしいであります上官殿」

佐場木「……はっ、こんな役立たずの上官にか」

遠見「自分を信頼してくださっただけで充分でありますよ!」

佐場木「……お前だけは、絶対に黒幕側ではないとわかっていたからな」

遠見「ずっと気になっていたのでありますが……なぜそこまで自分を信頼してくださったのでありますか?」

佐場木「覚えてないか……お前は昔、俺の命を救ってるんだよ」

遠見「えっ…………マジでありますか?」

佐場木「…………マジだ」

遠見「ぷっ、あははは!まさかそんな巡り合わせがあったとは!本当に世の中は不思議でありますなぁ!」

遠見は笑う、これで心残りはなくなったと言わんばかりに。

そんな彼女に、何も言ってやれない……そんな自分に腹が立った。
803 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:09:25.73 ID:5gNy0aTA0
モノクマ「そろそろいいかな?なんか遠見さん、覚悟決まりすぎてつまんないし!」

遠見「全く、泣き叫ぶなど自分がするわけないでありましょうに」

遠見はモノクマに対峙するように歩いていく。

如月「……遠見さん、1つお願いが」

遠見「……わかったであります。自分もそうするつもりでありましたから」

なんだ?

今、如月さんと遠見が何か……

モノクマ「さてさて、それではおしおきといきましょう!」

遠見「……」

モノクマ「今回は【超高校級の観測手】である遠見メメさんに!スペシャルなおしおきを用意しました!」

遠見「……ふー」

モノクマ「それでは張り切ってまいりましょう!」

遠見「最後に1つ」

モノクマ「おしおきターイム!」
804 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:10:04.91 ID:5gNy0aTA0






       GAME OVER

  トオミさんがクロにきまりました。

    おしおきをかい―――――






805 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:10:37.18 ID:5gNy0aTA0






パァン!!






806 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:18:20.78 ID:5gNy0aTA0
赤穂「は?」

銃声、そして機械が落ちる音。

兵頭「遠見さん!?」

遠見「……ふむ、強度はたいしたことないでありますね」

銃を手の中で回しながら、遠見が呟く。

佐場木「お前、何を」

道掛「そ、そうだぜ!モノクマを撃ったりなんかしたら!」

そう、遠見はスイッチを押そうとしたモノクマを撃って、破壊したんだ。

そんな普通ならあり得ない事を。

遠見「どちらにしても処刑されるなら変わらないでありましょう?」

六山「だ、だからって……」

遠見は、やってのけた。

モノクマ「ちょっと遠見さん!どういうつもりさ!スペアがあるからいいけど!」

遠見「最後に1つと言ったでありましょう」

御影「遠見、いったい何をするつもりなの……」

遠見「では改めてモノクマ」

モノクマ「……」

遠見「あんまり自分を舐めるな、この×××野郎」

そう吐き捨てて遠見は……学級裁判場を飛び出した。
807 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:30:23.88 ID:5gNy0aTA0
【緊急事態発生】

【緊急事態発生】

学級裁判場を飛び出した遠見さんはモニターに映る警告をよそに走り出します。

向かう先は……モノクマ量産工場。

あっという間にそこにたどり着いた遠見さんは……笑って自爆スイッチに腕を叩きつけました。

【#/.\+%[<】

【超高。`級の観$ー手,'見メ@|刑執<+】

量産工場が爆発すると同時に量産されていたモノクマ達がぞろぞろと現れます。

その内の1体を銃で撃ち抜くと……遠見さんは再び走り出しました。


射撃練習場に飛び込んだ遠見さんがマシンガンや手榴弾を装備して、再び出てきます。

そこからモノクマと遠見さんの……戦争が始まりました。

※※※※
808 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:34:45.09 ID:5gNy0aTA0
【学級裁判場】

モノクマ「ちょっ、ちょっ!?」

モニターの向こうでは今までの処刑とはまるで違う光景が繰り広げられていた。

遠見が群がるモノクマを次々に蹴散らしていっている。

爪や爆発で所々傷が増えてもまるで気にせずに、むしろ力強さが増していくように。

例えるなら、1つの芸術みたいに遠見は鮮やかにモノクマを確実に破壊していた。

赤穂「遠見……」

それをただ見ている事しか出来ない俺達……くそっ、何か出来る事はないのか!?

御影「あっ!?」

道掛「メメちゃん!」

モニターの向こうで遠見が髪を掴まれて動きを抑えられる。

痛みに顔を歪める遠見に向けられるモノクマの爪……終わり、なのか。
809 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:35:24.46 ID:5gNy0aTA0






佐場木「諦めるな!!」






810 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:36:40.86 ID:5gNy0aTA0
津浦「Mr.佐場木……!?」

まるで佐場木の声が聞こえたみたいに遠見がナイフで自分の髪を切り落とす。

そして髪を散らしながら、遠見は再びモノクマの大群に向かっていった。

赤穂「佐場木……」

佐場木「死ぬな!お前にはまだまだ俺の手伝いをしてもらわなければならん!」

御影「っ、そうだよ遠見!モノクマなんかに負けないでよ!」

道掛「頑張れメメちゃん!!負けんなぁ!!」

六山「遠見さん、ゲームオーバーにはまだ早いよ……!」

兵頭「こんな投票、私も認めたくない……遠見さん!」

如月「…………」グッ

赤穂「……遠見!死なないでくれ、生きてくれ!!」

俺達の声が遠見に届いてるかはわからない。

だけど俺達は声をあげずにはいられなかった。


※※※※
811 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:43:10.53 ID:5gNy0aTA0
銃弾を、爪を、地雷を、爆撃を、遠見さんは最小限の傷に抑えながらモノクマに立ち向かっていきます。

戦車の下に滑り込み爆弾で爆破し、戦闘用ヘリを奪うとわざと墜落させモノクマを巻き込み、群がるモノクマ達をマシンガンで次々に破壊して……

そして銃撃の音が止んだ時……そこにいたのは満身創痍の遠見さんとモノクマ達の残骸。

遠見さんが大きく息を吐いてカメラを見ます。

向こうにいる仲間達に笑いかけた彼女が表情を変えて少し動くのと同時に……


遠見さんの脇腹が撃ち抜かれました。


血を撒き散らしながら転がる遠見さんが見る方向にはスナイパーライフルを構えたモノクマ。

遠見さんは流れ出す血とモノクマを交互に見て……意を決したように再び走ります。

そして……

最後のモノクマをバラバラにした遠見さんが血を流しながら歩いています。

そして木に寄りかかった遠見さんは笑みを浮かべるとゆっくりと目を閉じて……


そのまま、動かなくなりました。
812 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:50:03.22 ID:5gNy0aTA0
赤穂「遠見……!」

遠見はもう動かない……彼女の命はここで燃え尽きてしまったんだ。

だけど遠見はただでは死ななかった。

モノクマ「嘘でしょ!?まさかスペア全部破壊されるなんて……!」

そう、モノクマが大量に用意していたスペア。

それを道連れに、遠見は死んでいった。

モノクマ「うぎぎ、遠見さんも酷い悪足掻きしてくれたよ!だけど――」


如月「終わりですね」


それはまるで最初の船で見た出来事の再現だった。

如月さんの拳がモノクマを貫いたんだ。

道掛「お、おい如月!そんな事したら……!」

だけどそれが意味するのは、悪夢。

如月さんがルール違反したら、本人以外の誰かが処罰される。

でもいくら待っても……その時は来なかった。

津浦「な、何も起きません、ね」

兵頭「ああ……だから遠見さんは」

御影「どういう事?」

佐場木「……モノクマのスペアと工場は遠見が破壊した」

六山「そっか、つまり今のが最後のモノクマ……もうルール違反してもそれを咎める存在がいない!」

赤穂「じゃあ、遠見はもしかしてそのために!?」

ふと思い出す……さっき如月さんと遠見が話していた事を。

如月『遠見さん、1つお願いが……』

遠見『……わかったであります。自分もそうするつもりでありましたから』

あれはこの時のための……
813 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:53:02.21 ID:5gNy0aTA0
如月「遠見さんにはモノクマのスペアと工場を破壊してほしいと頼みました」

赤穂「如月さん……」

如月「そして僕が最後の詰めを行う。このコロシアイを終わらせるために」

如月さんは拳を握りしめる。

そこにあったのは、後悔の色。

如月「僕が手助けに入れれば……遠見さんは死なずに済んだ。万が一を考えてそれを行えなかった事だけが、無念です」

佐場木「遠見も納得しての作戦だろう。そしてあいつは……それを果たした」

佐場木は遠見に託されたリボンを見つめると、それを手首に結ぶ。

今佐場木が何を考えているかは俺にはわからないけど……その顔に絶望の色なんてない。

佐場木「黒幕もモノクマなしではコロシアイをまともに運営出来んだろう。後は脱出に向けての戦い……お前達にも手伝ってもらうぞ」

道掛「当たり前だろ!」

津浦「はい……!」

兵頭「ふふっ、今までと変わりません」

六山「クリアまで後少しだね……」

御影「もうこれ以上コロシアイは起きないんだ……」

如月「……全力を尽くします」

赤穂「ああ、もう誰1人死なずに脱出しよう!」

決意を新たにした、俺達。

もう俺達は負けたりなんか――
814 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:56:23.92 ID:5gNy0aTA0






ゾクッ!






815 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:58:27.46 ID:5gNy0aTA0
赤穂「っ!?」

な、なんだ、この寒気……

思わず辺りを見回す俺は……はっきりと見た。

牡丹の足下の床が、微妙に動くのを。

赤穂「……!」

ま、まさか!まさかまさかまさかまさか!!

逃げろって叫ぶ……駄目だ間に合わない!

如月さんに……これも駄目だ、間に合わない!

このままじゃ牡丹は……

赤穂「っ」

牡丹が死ぬ、血の海に沈む牡丹のイメージが脳裏に浮かぶ。

そんなの、させて、たまるか!

赤穂「あああああああっ!!」

叫んで牡丹に向かって腕を伸ばす。

普通なら無理だろうけど、俺には……これがある!

御影「痛っ!?」

伸ばした杖に突かれる形で牡丹がその場から押し出される。

そして、俺は。

俺は――
816 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:59:44.59 ID:5gNy0aTA0
※※※※

御影「痛っ!?」

いきなり突き飛ばされて尻餅をつく。

お腹痛い……というか、これ手とかじゃない……兄さんの杖じゃない!?

御影「ちょっと兄さん、何する――」

いくら兄さんでもこれは許せない、そう思って文句を言おうとした私が顔を上げると。
817 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:00:25.05 ID:5gNy0aTA0






赤穂「は、はは……」

身体中を、槍に貫かれた、兄さんが、いた。






818 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:02:33.96 ID:5gNy0aTA0
赤穂「ごぼっ……!?」

津浦「ひっ!?」

道掛「あ、赤穂……?」

御影「え……?」

赤穂「っ、あ、が……」

血を吐いた兄さんがそのまま血だまりに崩れ落ちる。

えっ、なにこれ……なんで、兄さん、えっ?

如月「こ、これはいったい……っ、まさか!?」

如月が私の後ろを見て目を見開く。

つられて後ろを振り返ると……あいつが、いた。



モノクマ「アーハッハッハッハッハ!!」

いちゃ、いけないはずのモノクマが……笑って、いた。
819 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:05:37.79 ID:5gNy0aTA0
兵頭「モノクマ、なぜ……スペアも工場も遠見さんが確かに!」

モノクマ「うん、確かに壊されちゃったよ。正直焦ったね!」

道掛「だったらてめえがなんでいるんだよ!?」

モノクマ「うぷぷ、あのさぁ……こういう時工場が1つしかないなんて誰が決めたの?」

六山「工場にも、スペアがあったの……?」

モノクマ「そのとーり!つまり、オマエラが頑張って応援してた遠見さんのしてた事は……最初っからなんの意味もありませんでしたー!」

佐場木「そんな馬鹿な……!」

モノクマ「そして如月クン!さっきキミ、ボクを壊したよね?」

如月「……!」

モノクマ「その連帯責任として、御影さんをおしおきするつもりだったんだけど……さすがお兄さん!赤穂クンが庇ってくれたよ!」

赤穂「っ……最初っ、から……そのつもりで……げほっ!」

私を、庇って……

私の、せいで……?

御影「兄さん、兄さん!」

倒れた兄さんの側に膝をつくと身体からどんどん溢れる血で、私の脚が濡れていく。

それを見て素人の私にもわかる、わかっちゃう。

もう、どうしようも、ない……

兄さんは、助からない。
820 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:10:06.25 ID:5gNy0aTA0
御影「兄さん!兄さん!」

嫌だ、やだやだやだ!

何か、何かあるはず、兄さんの助かる方法、ああ、まず血を止めなきゃ、どこから止めればいいの、ああ傷薬、持ってない、違うまずは病院――

赤穂「……牡、丹。怪我はない、か?」

御影「私は無事!それより兄さんが……!」

赤穂「そう、か……ごめんな、杖で突き飛ばして、さ」

御影「そんな事どうでもいいよ!早く、早く治療……」

赤穂「牡丹」

兄さんの手が私の頬を撫でる。

ああ、なんで?

なんであんな暖かった兄さんの手がこんなに冷たいの……

赤穂「――守れて、よかった。お前は、生きて、くれ……そして、幸せになって…………」

その言葉を最期に残して……私の頬を撫でた兄さんの腕が、血だまりに落ちた。

御影「あっ、ああ……」

兄さんが動かない、兄さんが目を開けない、兄さんが喋らない、兄さん兄さん兄さん兄さん……



兄さんが、死んじゃった。

御影「いや、いやあああああっ!!」
821 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:11:41.68 ID:5gNy0aTA0
道掛「う、嘘だろ……なあ、嘘だろ赤穂!!」

佐場木「こんな馬鹿なっ……!」

津浦「あっ、やっ、こんなの……」

兵頭「っ……最初から、私達は手のひらの上で……!」

六山「あんまりだよ、酷すぎるよ……」

如月「…………」

モノクマ「うぷぷ、いいねぇ!希望から一転絶望に叩き落とされた瞬間はやっぱり最高だよ!」

佐場木「黙れ!!」

モノクマ「嫌でーす!まだ本番はこれからだよ……ねぇ、如月クン」

如月「……!」

モノクマ「ちょっとね、1つ聞きたいんだけど……」
822 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:12:56.80 ID:5gNy0aTA0






モノクマ「キミ赤穂クン助けられたのに、どうして助けなかったの?」






823 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:22:05.57 ID:5gNy0aTA0
如月「……は?」

モノクマ「まさか出来ないとは言わないよねぇ?戦車相手にできた癖にあの槍には反応出来ませんでしたは通らないよ!」

兵頭「何を、言って」

モノクマ「うぷぷ、当ててあげようか?キミが赤穂クン助けなかった理由」

如月「何を、ふざけた」


モノクマ「キミ、妹が生きてる赤穂クンを殺したいほどに嫉妬してたでしょ?」


津浦「し、嫉妬?」

道掛「どういう事だよ!!」

モノクマ「如月クン、キミ御影さんと同じ才能の妹さんがいたよね?」

佐場木「同じだと……」

モノクマ「だけどその妹さんはもういない!死んでしまってる!」

モノクマ「だからさ……妹が生きてていつも仲睦まじい赤穂クンが羨ましくて羨ましくて羨ましくて羨ましくて羨ましくて羨ましくて羨ましくて」

モノクマ「死ねばいいって思ったんでしょ?」

如月「…………」

御影「……そう、なの?」

如月「……ぁ」

如月「……あああああアアアアアアアアアアアッ!!?」
824 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:24:45.29 ID:5gNy0aTA0
佐場木「如月!?」

如月「ち、違います、僕は正、正義を……」

モノクマ「正義ぃ?赤穂クンを殺すのがキミの正義なわけ?」

如月「違う!!僕は!」

モノクマ「本当さぁ、何が正義の執行だよ!何がヒーローだよ!結局キミは嫉妬でキミに憧れてた赤穂クンを見殺しにするようなただの人殺しでしかないんだよ!!」

如月「違、僕は、僕は……」

モノクマ「キミが何を言おうがね、事実は1つだけなの」

モノクマ「赤穂政城クンを殺したのはキミだよ殺人鬼如月怜輝!」

如月「違っ、違う、僕は、僕は……あっ、あああっ、うわあああああっ!!」
825 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:27:22.30 ID:5gNy0aTA0
※※※※

佐場木「如月!」

兵頭「如月さん!」

走って逃げていく如月怜輝……そこにはもう、ヒーローとしての彼はいない。

御影「兄、さん……」

道掛「牡丹ちゃん!」

六山「ど、どうするのこれ……」

津浦「もう、どうしようも……」

耐えきれなくなって兄の血に向かって倒れた御影牡丹の心にもう希望の灯はない。

先ほどまでの希望なんてもう消えてしまった。

絶望をひっくり返したはずのこの裁判を終えた面々に叩きつけられたのは……最大級の絶望。

ああ。

本当に。

最高の結末だ。
826 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:29:30.41 ID:5gNy0aTA0






CHAPT.4【そして希望は捨てられた】END

生き残りメンバー9→7人

To be continued...






827 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:32:06.46 ID:5gNy0aTA0






【渡せなかった贈り物】を手に入れました!

【撃ち尽くした銃】を手に入れました!

【壊れかけの杖】を手に入れました!






828 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:33:57.76 ID:5gNy0aTA0
CHAPT.4終了です。

CHAPT.5は新しくスレを立てて始めたいと思います。

それではまた……
829 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:41:34.79 ID:13NMDd5A0
新スレを立てる前に色々書いていきたいと思います。
まずは被害者達のおしおきから。
830 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:42:10.99 ID:13NMDd5A0
【絶望交響曲〜指揮静音凪〜】

【超高校級の指揮者静音凪処刑執行】

縛られた静音さんの前にやってきたモノクマ。

ステージにクラシックがかかり、モノクマは演奏を始めますが……それはあまりにヘタクソなもの。

不協和音に涙すら浮かべる静音さん……しかしその演奏は長く続きません。

あまりの扱いに怒った楽器達がモノクマを吹き飛ばし、指揮者である静音さんに襲いかかったのです。

弦楽器達が弦で静音さんの首を絞めて、打楽器達が棒を持って静音さんの頭や身体を滅多うちにして、管楽器達が大音量で静音さんの鼓膜を破壊して。

そして最後は静音さんの手から落ちたタクトが浮かび上がり……

静音さんの首を貫きました。

静まり返るステージに響く静音さんの喉からこぼれる空気の音。

それも次第に弱まり……最期には何も聴こえなくなりました。
831 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:44:05.39 ID:13NMDd5A0
【罪人来たりて笛を吹く】

【超高校級のフルート奏者四方院奏処刑執行】

動きを固定された四方院さんの口にフルートがあてがわれます。

そして彼女の意思とは関係なしにフルートの演奏会が始まりました。

素晴らしい音を奏でていく四方院さん……その演奏はまさに息つく暇もありません。

そう、文字通り四方院さんは一切呼吸せず、演奏させられているのです。

口にどんどん押し付けられていくフルート、鼻も塞いでしまう腕、どんどん青く赤くなっていく四方院さんの顔。

そして完全に呼吸出来なくなった四方院さんはもがく事すら出来ず、動きが鈍くなっていき……最後に気の抜けたような小さな音を出して、ぐったりと力尽きます。

モノクマ達は窒息死した四方院さんを工場に運んでいくと機械に投げ入れました。

そして出来上がったのは1本のフルート。

真っ赤な真っ赤な大きなフルートでした。
832 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:45:08.28 ID:13NMDd5A0
【無能の驕り】

【鞍馬類処刑執行】

鞍馬クンが薬の瓶を持って処刑場に現れます。

そして次々に出てくる処刑マシンを一瞥すると、薬を口に放り込みました。

身体能力を強化した鞍馬クンは、処刑マシンの攻撃を避けると逆に蹴りで機械を破壊します。

機械を操作するモノクマも慌てながら次々と攻撃を仕掛けますが、鞍馬クンには全く通用せず。

数分も経つ頃には処刑場は機械の残骸だらけとなり、中心には無傷の鞍馬クンが立っています。

怒ったモノクマは新しく機械を投入しますが、何回やっても結果は同じ。

鞍馬クンは一定時間が経つ毎に薬を飲み、機械を破壊し、薬を飲み、機械を破壊し……

しかしとうとう終わりが訪れます。

鞍馬クンの薬が、尽きてしまったのです。

その時初めて焦りを顔に浮かべた鞍馬クンの前にモノクマが現れます。

機械が尽きたのはモノクマも同じ……正真正銘最後の決戦。

モノクマ相手ならまだなんとかなると判断した鞍馬クンが構えると同時に。

モノクマが撃った銃弾が鞍馬クンの心臓を貫きました。

薬がなきゃ何も出来ない癖に何を勘違いしてたのかな、うぷぷ。
833 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:45:57.85 ID:13NMDd5A0
【道化の笑みは歪んで消える】

【超高校級の道化師ジェニー・クラヴィッツ処刑執行】

腕を縛られたジェニーさんが高い崖に連れていかれます。

崖には長いロープがかかっており、モノクマがこの綱を渡れと指示してきました。

ジェニーさんはしばらく戸惑っていましたが、意を決したように綱に向かって1歩足を踏み出します。

腕を縛られたままとはいえ、超高校級の道化師の名に恥じない彼女のバランス感覚。

綱の上とは思えないほど軽やかに進み、とうとう綱の真ん中までやってきたジェニーさんが気に入らないのかモノクマが綱を持ってガンガン揺らし始めました。

さすがにこれはキツかったのか、ジェニーさんがバランスを崩してしまいます。

そして綱が首に引っ掛かったジェニーさん。

モノクマはそれに構わずさらに綱を揺らし、ジェニーさんの首にどんどん負荷がかかっていきます。

苦しそうなジェニーさんですが落ちないためには首で綱にしがみつくしかなく……そして。

首吊り状態だったジェニーさんがとうとう力尽きて綱から落ちていきます。

崖の底に落ちていったジェニーさんの姿が見えなくなると同時に何かが潰れるような音がして。

誰もいなくなったその場で綱だけが風で寂しそうに揺れていました。
834 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:47:09.93 ID:13NMDd5A0
【解体工事】

【超高校級の土木作業員土橋美姫処刑執行】

土橋さんが大きな穴に横たわっています。

そこに現れたモノクマが持ってきたのは大きなコンクリートミキサー車。

土橋さんはそれを見てこれから何が起きるのか察し、穴から逃げ出そうとします。

そんな土橋さんを笑いながら、モノクマはコンクリートを流し込み始めました。

どんどん穴を満たすコンクリート、土橋さんは泣き叫んで逃げようとしますがあっという間に脚が沈み、逃げられなくなってしまいます。

コンクリートで固められていく土橋さんの身体……そして涙を流す土橋さんの頭をコンクリートが飲み込んでいきました。

固まったコンクリートを見て満足そうなモノクマがポロリとダイナマイトを落とします。

火がついていたダイナマイトはコンクリートの上を転がり、爆発してコンクリートを粉々に砕きました。

コンクリートに混じって降り注ぐ赤いなにかを傘で弾きながらモノクマは立ち去っていきました。
835 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:55:01.12 ID:13NMDd5A0
赤穂は本編終わってからやります。
続いてはシティモードは結局頓挫したので新芽のエンゲージリング集を……
836 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 22:16:39.63 ID:13NMDd5A0
【エンゲージリングを渡したら……吹石編】

新芽「……」

正直あたしは未だに自分で自分が信じられない。

吹石「おい新芽、いい加減俺の女になる気になったかよ?」

だってこいつよ?

この今でも人の神経を逆撫でしてくるこのゲスよ?

新芽「……」

吹石「あん?いつもみてえに抵抗しねえのか?」

新芽「……」

そんな奴に、あたしは今……

新芽「これあげる」

指輪を渡そうとしてる。

吹石「ああ?んだこれ指輪?」

新芽「エンゲージリングよ。ゲームコーナーにあったの見たでしょ」

吹石「ああ、アレか……あ?エンゲージリング?」

新芽「……」

吹石「なんだお前、俺に惚れたのか?」

新芽「っ、あたしだって信じられないわよ!だけどしょうがないじゃない!好きに、なっちゃったんだから……」

吹石「ほーん、男見る目ねえなお前」

新芽「それ自分で言うわけ……?」

吹石「けっ、自分の事は自分がよくわかってんだよ」

新芽「それで、どうなのよ」

吹石「めんどくせえなぁ……」

新芽「っ!」

わかってた、こいつはこういう奴だって。

こんな男を好きになった自分がとても馬鹿に思えて……あたしはそれでも涙を流すつもりはない。

こんな男にフラれて泣いてなんかやらない……!

新芽「悪かったわね……今の忘れて」

吹石「ああ?何言ってやがるさっさと指輪よこせや」

新芽「は?」

吹石「特定の女なんざめんどくせえけど、まあお前なら構わねえよ」

新芽「……なんでよ」

吹石「――コンプレックス、刺激されねえからな」

新芽「は?」

吹石「なんでもねえよ!ほら、さっさと指輪渡せ!」

新芽「あっ、ちょっと……」

指輪取られた……あたしの気持ち、通じたのよね?

吹石「じゃあ新芽は今から俺の女だ。早速部屋に行こうぜ」

新芽「いきなりそれ!?」

やっぱり自分がわからない!

なんでこんな男好きになっちゃったのよ、あたしは!!
837 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 22:37:15.13 ID:13NMDd5A0
【エンゲージリングを渡したら……錦編】

錦「ありがとうございました!」

新芽「はぁ、はぁ……」

錦のテニスに、付き合うの、本当にしんどい……

錦「新芽さん、大丈夫ですか!楽しくて少し全力を出してしまいました!」

新芽「だから、後半なんか走馬灯が見えたのね……まあ、楽しんでくれたなら何よりだけど」

錦「本当にごめんなさい!好きな人とのテニスだから受かれてしまいました!」

新芽「はい?」

今、なんて?

錦「新芽さん!」

新芽「えっ、あの、なんで手握って」

錦「好きです!」

新芽「ちょっ!?」

なんでこんないきなり!?ああ、でもなんか錦らしいというか、いやそうじゃなくて!

ポロッ

新芽「あっ!」

錦「これは、指輪ですか?」

新芽「いや、違うの!一緒にいたらなんか渡すチャンスあるかなとかそういう風に思って、は少しはいたけど!」

錦「……」

新芽「あの、錦……?」

錦「わかりました!立花さん!結婚しましょう!」

新芽「だからなんでそういきなりなのよ!?」

心の準備も何もあったもんじゃないじゃないの!

錦「立花さんはぼくを好きで!ぼくは立花さんが好き!だから問題ありません!」

新芽「いや、あの、だから……」

錦「全力で幸せにします!だから、全力でぼくと幸せになってください!」

新芽「……」

ああ、もう……本当に常に全力で。

そんな錦だから、あたしは好きになったのよね。

新芽「じゃあ錦……ううん、修二、1つお願いしていい?」

錦「全力で応えます!」

新芽「指輪、薬指にはめてくれる?」

全力で幸せか……うん、あたしもその全力に頑張って応えなきゃね!
838 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 22:55:50.67 ID:13NMDd5A0
【エンゲージリングを渡したら……真白編】

新芽「……どうしよう」

真白「……」

新芽「いや、これはさすがに……うーん、でも」

真白「幸運、さっきから何をブツブツ言ってるんだ」

新芽「真白君……」

真白「な、なんだ?幸運なんか変だぞ……」

新芽「真白君は、好きな子とかいる?」

真白「好きな子?まあ、ここのみんなは嫌いじゃないぞ」

新芽「そうじゃなくて、ガールフレンドとか」

真白「な、なんだいきなり!そんなのいるわけないだろう!ボクは暇じゃないんだ!」

新芽「そう、いないのね……だったら、予約していい?」

真白「よ、予約?」

新芽「そう、予約。このエンゲージリングあげるから、将来的にあたしと……」

真白「ま、待て待て待て!ボクはまだ10歳だぞ!?」

新芽「いつも子供扱いするなって言ってるじゃない」

真白「いや、それはその、だけど」

新芽「大丈夫、もちろん待つわ……真白君が18歳になるまで」

真白「こ、幸運、お前、そういう趣味が……」

新芽「それは違うわよ真白君!あたしは10歳だから真白君が好きになったんじゃない!好きになった真白君がたまたま10歳だったのよ!」

真白「ま、待って、待ってよ立花お姉さん!ボクそんな事言われても本当に恋なんてわからないよ!」

新芽「あたしも色々テンパってわけわからないからおあいこよ!」

真白「絶対違う!」

それからなんとか落ち着いたあたしは、真白君に改めて告白した。

恋がわかる時まで待ってほしいって言われて保留だけど……断られなかっただけ全然マシよね!

これから覚悟してなさい真白君……絶対にあたしを好きにさせてみせるから!
839 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/06(火) 22:04:50.31 ID:ANpZH+bA0
【エンゲージリングを渡したら……泉編】

泉「毎度すまんな新芽よ、我が輩の手伝いなどさせてしまって」

新芽「いいのよ、気にしないで!生原稿見られるだけでファンとしては感涙物なんだから!」

泉「むうっ、そんなものか」

新芽「でもあれよね、こうして一緒にいて色々話して……たくさん泉の事を知れた気がするわ」

泉「我が輩も新芽と話して学ぶ事が多かったであるな。参考になる意見も多々……やはりファンの目線は大事という事か!」

新芽「……ファンと言うより、恋してるから、じゃないかしら」

泉「ほう?確かに恋する少女の気持ちについては特に参考になったが……しかしいかんな」

新芽「えっ?」

泉「新芽は恋をしているのだろう。それも察するにこの生活の中の誰か……ならば我が輩が拘束してしまうのは問題である!」

新芽「い、いやいや、それに関しては大丈夫!問題なし!むしろ困る!」

泉「……新芽よぉ」

新芽「な、なに」

泉「我が輩は少女漫画家であるからして、そういう事には理解が早いと自負しているが……今の反応はそう判断してもよいのであるか?」

新芽「うっ……」

泉「よいのであるな……むうっ、まさか新芽が……」

新芽「一応、本気よ?こんなのまで用意してるし……」

泉「エンゲージリング!これはまた」

新芽「……重いかしら」

泉「ふんっ!我が輩は鍛えておるからな!それくらいの重さなら障害にもならん!」

新芽「泉……」

泉「……うーむ、しかしいかんなこれはいかん」

新芽「こ、今度はなに?」

泉「少女漫画家でありながら気の利いた言葉がまるで浮かばん!」

泉「故に新芽、情けないがこの言葉で許してほしい」

泉「これからも我が輩と共に生きてくれるか?」

新芽「気の利いた言葉なんかじゃなくても、それだけで充分過ぎるわよ……」
840 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/06(火) 22:19:40.22 ID:ANpZH+bA0
【エンゲージリングを渡したら……赤内編本編の場合】

赤内「さてと、スカウトとして再出発だ……新芽さんには色々とお世話になったね」

新芽「……」

赤内「どうかした?僕の顔ジッと見ちゃって」

新芽「赤内……これ受け取ってくれない?」

赤内「プレゼント?新芽さんは本当に人によくプレゼント…………」

新芽「……」

赤内「あのさ、新芽さん?これエンゲージリングだよね?」

新芽「そうよ」

赤内「意味、わかって渡してるんだよね?」

新芽「当たり前じゃない」

赤内「そっか……」

新芽「……」

赤内「…………ごめん」

新芽「っ!」

赤内「僕はもう、奈美以外はそういう目じゃ見られないと思う」

新芽「……」

赤内「もういないのは理解してる。だけど、それでも……」

新芽「……うん、わかってる」

赤内「新芽さん」

新芽「いや、わかるわよ!あんなに奈美さんについて話す時楽しそうだし!赤内が奈美さん好きな事くらい!」

赤内「……」

新芽「だから、ありがとう。しっかりフッてくれて……これで、諦めつく」

赤内「……」

新芽「じゃあ、またね!今のはなかった事にしていいから!」

赤内「……」

赤内「泣いてたな、新芽さん」

赤内「彼女が好きなのは心沢くんか佐木原くんだと思ってたんだけど……」

赤内「奈美、怒るかなぁ……」
841 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/06(火) 22:38:24.49 ID:ANpZH+bA0
【エンゲージリングを渡したら……赤内編】

赤内「はぁ」

新芽「人を見るなりため息なんて失礼ね。まあどうせあたしはキラキラしてないけど」

赤内「そう言わないでよ、僕も色々あって当時の事少しは反省してる」

新芽「人がキラキラしてないからってぶつけてきたあの態度と言葉が少しの反省で何とかなるとでも?」

赤内「新芽さん、怖いよ……」

新芽「あたしはもっと怖かったわよ」

赤内「うっ」

新芽「……はぁ」

赤内「あの、今の新芽さんにこれ言ったら殴られそうなんだけどさ」

新芽「なに」

赤内「……好きです」

新芽「は?」

赤内「いや、あの、僕はほらキラキラしてない人に酷い態度だったでしょ?」

新芽「そうね、泣いた事もあるわ」

赤内「そ、それでも新芽さんは諦めず話しかけたりとかしてくれたよね?」

新芽「まあね」

赤内「言い合いしたりしてる内になんというか、それが心地よくなってたというか」

新芽「……」

赤内「あ、あはは……」

新芽「えいっ」

赤内「痛っ!?」

新芽「それが答えよ」

赤内「暴力反対……えっ」

新芽「……」

赤内「あの、これエンゲージリング……」

新芽「だからそれが答えよ!」

赤内「ちょっ、それにしては態度キツくない!?」

新芽「今までのあれこれ考えてみなさいよ!?あんな口論ばっかりだったのに両想い!?意味わかんないわよ!」

赤内「だからといってそんなキツくなくてもいいじゃないか!だから新芽さんはキラキラしてないんだよ!」

新芽「またキラキラ言ったわね!?」

赤内「なんだよ!事実だろ!」

新芽「なによ!自分こそキラキラなんかないって泣いてたくせに!」

赤内「酷い捏造だ!」

この後しばらく口論してたあたし達は……我に返ってからしばらく顔を合わせられなかった。

いや、本当に予想外だったのよ……
842 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/06(火) 23:01:33.64 ID:ANpZH+bA0
【エンゲージリングを渡したら……佐木原編】

佐木原「んー……」

新芽「佐木原?」

佐木原「おぉ、新芽か。何か用か?」

新芽「いや、まあちょっと……それより何してたの?」

佐木原「んー?この生活も終わりが見えてきたからな。なんか新しい事したいなと」

新芽「新しい事ね……佐木原は帰ったら何するの?」

佐木原「逃げる。俺はこれでもお尋ね者だからな」

新芽「またそんな事……じゃあ逃げるでもいいけど、あたしもついてっていい?」

佐木原「はあ?なんでまた」

新芽「言葉じゃ、ちょっと恥ずかしいから……これで察して」

佐木原「ほー、これはマーケットのエンゲージリングか」

新芽「そういう事なんだけど、ついていったら駄目?」

佐木原「……」

新芽「……」

佐木原「【俺でもまともな幸せってやつを得られるのか?】」

新芽「えっ?」

佐木原「興味が湧いてきたな……まあ、新芽なら話してもいいか」

新芽「佐木原……?」

佐木原「あのな新芽」

それから佐木原があたしに話したのは……到底理解が追い付かない真実の数々。

新芽「……」

佐木原「そういうわけだ。撤回するなら今の内だぞ?」

新芽「……佐木原は、興味を持った事を知りたがるのよね?」

佐木原「まあな」

新芽「今興味があるの、さっき言ってた事よね」

佐木原「そうだな」

新芽「いいわ、だったらそういう事ばかりに興味を向けさせるだけよ」

佐木原「へぇ?」

新芽「あたしがずっとそばにいて、変な事に興味を持たないようにするわ!それなら佐木原も危険人物じゃなくなるでしょ?」

佐木原「……」

新芽「……」

佐木原「くっ、あははははっ!マジか、そんな事言う奴はお前が初めてだぞ!」

新芽「きゃっ!?」

佐木原「新芽、お前って人間に興味が湧いてきたよ……もう何しても俺から離れられないぞ御愁傷様」

新芽「……望むところよ。あなたこそせいぜい考えたら?」

佐木原「何を?」

新芽「【どうすればあたし達2人が幸せになれるか】、をよ」
843 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/07(水) 21:42:09.71 ID:hdiNFerA0
【エンゲージリングを渡したら……安原編】

新芽「安原!」

安原「……新芽か」

新芽「またここにいたのね、おかげで探す手間は省けたけど」

安原「俺を探していたのか?」

新芽「えぇ、話がしたくてね」

安原「話か……その様子だと大切な話のようだな」

新芽「それも探偵の推理?」

安原「そんな大袈裟なものじゃない……それで話とは?」

新芽「……色々考えたんだけどね、あたしはやっぱり一般人だから普通にいくわ」


新芽「安原、あたしあなたの事が好き」


新芽「色々見守ってくれて、気にかけてくれて、たくさん話もして……いつの間にかあなたを好きになってた」

安原「……」

新芽「これエンゲージリング……気が早いかもしれないけど、あたしの素直な気持ち」

安原「……新芽。俺は探偵だ」

新芽「うん」

安原「それも国家犯専門……潜入も多い。何より命の危機にさらされる」

新芽「……」

安原「悪い事は言わない、考え直せ。お前を幸せに出来るような人間ではない」

新芽「……安原の気持ちは?」

安原「何?」

新芽「あたしが危ないとか、あたしが幸せになれないとかそういう理屈じゃなくて、安原はあたしの事どう思ってるの?」

安原「……」

新芽「……」

安原「好意は、抱いている」

新芽「だったら問題ないじゃない!危ないなんてこんな世界なら今さら!それにあたし、安原関係なく誘拐されて殺されかけたしね!」

安原「……しかし」

新芽「それに幸せになれるかどうかなんてあたしが決める事……安原といられれば、あたしはそれだけで幸せになれるわ」

安原「現実は、そう甘くない」

新芽「そうかもね。だけどわざわざ悲観する事もない……違う?」

安原「……何を言っても聞かないか」

新芽「恋するとそんなものよ女の子は」

安原「わかった……俺の全てを懸けて誓おう」

安原「――お前を、世界で2番目に幸せにしてみせる」

新芽「2番目?」

安原「俺の1番は、揺らがないだろうからな」

新芽「……」

安原「柄ではないのは、理解している」

新芽「ううん、嬉しい!安原があたしをそれだけ思ってくれるって、わかるから」

安原「……立花」

あたしの名前を呼んで、安原は黙っちゃったけど……その想いはしっかりと伝わってくるような気がした……
844 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/07(水) 21:43:07.68 ID:hdiNFerA0
【エンゲージリングを渡したら……安原編本編の場合】

※本編仕様なので表記は佐木原です。

佐木原「……」

新芽「……あの、佐木原ちょっといい?」

佐木原「なんだ?」

新芽「ここじゃ、ちょっとあれだから……」

【モノクマ大橋】

佐木原「わざわざここまで来るという事は……あまり聞かれたくない話か」

新芽「うん、まあ……人にはあまり聞かれたくないかも」

佐木原「奇妙なものだな」

新芽「えっ?」

佐木原「新芽は今狂人、そして記憶もない俺を相手に何か重要な話をしようとしている」

佐木原「俺自身が1番自分を信用出来ないというのに」

新芽「……」

佐木原は狂人、それも記憶がない……本当はどんな人かもわからない。

だけど。

新芽「あたしにとって佐木原は狂人なんかじゃない」

佐木原「なに?」

新芽「ほら、この生活が始まったばかりの頃辛くないかって声かけてくれたじゃない?」

佐木原「そんな事も、あったな」

新芽「あたしね、すごく嬉しかったの。ああ、こんな状況でもあたしを気にかけてくれる人がいるんだなって」

佐木原「……」

新芽「だからあたしにとって佐木原は、口数は少ないけど優しくて、頼りになって、その……」
845 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/07(水) 21:43:48.74 ID:hdiNFerA0






新芽「――ずっと一緒にいたいって、思える人なの」






846 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/07(水) 21:45:53.52 ID:hdiNFerA0
佐木原「……!」

新芽「佐木原、あたしね!佐木原の事」

佐木原「駄目だ」

新芽「えっ……」

佐木原「それは駄目だ新芽、狂人の俺にそんな気持ちを抱いても破滅しか待っていない」

新芽「あたしはあなたを狂人だなんて思ってないって言ったはずよ!だいたい今までの佐木原のどこに狂人なんて言える部分があったわけ!?」

佐木原「それは記憶がないからだ……本性はわからない」

新芽「つまりまっさらな佐木原は狂人なんかじゃないって事よ!」

佐木原「っ」

新芽「佐木原は前にあたしが辛くないか聞いた時、結局答えなかった……改めて聞くわ、辛くない?」

佐木原「……わからない」

新芽「……」

佐木原「何もかもがわからない。俺の才能、今、過去……全てがちぐはぐに思えるほどに」

新芽「……」

佐木原「だが、1つだけ」

佐木原「お前に、側にいてほしいという気持ちだけは、はっきりしている」

新芽「佐木原……!」

佐木原「……狂人の俺には過ぎた願いだと、思っていたんだがな」

新芽「そんな事ない!」

佐木原「……お前はそう思ってくれるのか」

新芽「こんな物、用意しちゃうくらいにはね」

佐木原「エンゲージリング……全く、ここまで覚悟を持って挑んでいたのか」

新芽「しかたないじゃない、それだけ好きになってたんだから」

佐木原「……貸してくれ」

新芽「あっ」

佐木原があたしの左手薬指に指輪をはめる。

そして慈しむようにあたしの手を握ると、彼はあたしをとても優しい瞳で見つめてきて。

佐木原「新芽、いや、立花と呼ばせてくれ」

新芽「は、はい!」

佐木原「俺の本性がどれだけ狂っていても」

ああ、思った通りだ。

佐木原「これからどれだけ記憶を失っても」

やっぱり佐木原は、彰は狂人なんかじゃない。

佐木原「これだけは狂わない、失わない」

だってそうでしょ?


佐木原「――立花、俺は……お前を愛している」

こんな優しい声と瞳の人が狂ってるなんて、つまらない冗談だもの。
847 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/08(木) 21:49:31.77 ID:iVf1rbOA0
【エンゲージリングを渡したら……錦&鈴木編】

錦「ふっ!」

鈴木「修二さん、お茶を用意しましたからそろそろ休憩しませんか?」

錦「華さん!ありがとうございます!」

鈴木「私が好きでしてる事ですから……はいどうぞ」

錦「いただきます!熱っ!?」

鈴木「ああ!?もう落ち着いてください修二さん」

錦「ごめんなさい!」

鈴木「……でも、少し嬉しかったりもします」

錦「なぜですか!」

鈴木「だってこうしてるとなんか、夫婦みたいだなって」

錦「……」

鈴木「はっ!?な、何を言ってるんでしょう、私!いくらなんでも気が早すぎ、いや、修二さんが相手なのが嫌という訳じゃなくて!」

錦「華さん!」

鈴木「ひゃ、ひゃい!?」

錦「これを受け取ってください!」

鈴木「な、なんですかこれ」

錦「エ、エ……指輪です!」

鈴木「エンゲージリングですか!?修二さんどうして……」

錦「華さんが大好きだからです!」

錦「ぼくは病気になってから、全力で生きていこうって決めて生きてきました!」

錦「だから気持ちも全力で伝えます!」

錦「華さんが夫婦みたいだって言ってくれて嬉しかったです!だってぼくも華さんとそうなれたらって思いますから!」

鈴木「しゅ、修二さん……」

錦「華さん!ぼくと結婚して錦華になってください!」

鈴木「……うっ、ぐすっ」

錦「は、華さん!?ぼく、何か嫌な事を……」

鈴木「ち、違います!これは嬉し涙です……本当に、嬉しい……」

錦「華さん……」

鈴木「私、ドジだけど、全力で修二さんのお嫁さんとして頑張りますね……」

錦「はい!ぼくも華さんを……全力で、誰にも負けないぐらい幸せにしてみせます!」

鈴木「もう、誰にも負けないぐらい幸せですよ……修二さん」
848 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/08(木) 22:34:15.86 ID:iVf1rbOA0
【エンゲージリングを渡したら……吹石&早坂編】

吹石「……」

早坂「隣、いい?」

吹石「……」

早坂「無言は肯定って事で……」

吹石「……」

早坂「もうすぐこの生活も終わりか。じょ……吹石は、少しはみんなと仲良くなれた?」

吹石「……」

早坂「わたしはさ、結構周りと仲良くなれた気がするというか、その」

吹石「……よく話しかけられんな」

早坂「……」

吹石「馬鹿じゃねえのか。俺とお前がどんな形で別れたか忘れたのかよ」

早坂「……」

吹石「俺はボクサー、お前はランナー、もう生きる世界も違えんだ。関わる意味も必要性もねえだろ」

早坂「……」

吹石「わかったら二度と話しかけてくんな、お前見てると惨めになるんだよ!」

早坂「……別れてない」

吹石「あ?」

早坂「別れようとも、嫌いだとも言われてない。だからわたしは……今だって丈を」スッ

吹石「!!」バッ

早坂「あっ!?」

吹石「こんな写真を今でも後生大事に持ってやがんのか!!俺への当て付けか!?お前を忘れたくて色んな女に手出してきた俺への嫌みかよ!!」

早坂「返して!」

吹石「うるせえ!こんな写真……!」

早坂「やめっ!」

吹石「……ちっ」ポイッ

早坂「っ!」

吹石「なんなんだよ、さっさと忘れてくれよ俺の事なんかよ!!」

早坂「……」

吹石「しかたねえだろ!?忍は才能があって、俺には才能がなかった!!一緒にいてもただ俺が惨めになるだけじゃねえか!!」

早坂「……」

吹石「なのにお前はまた、つまらなそうに走りやがって……じゃあ俺はどうすりゃよかったんだ?あのままだったら俺はきっと取り返しのつかねえ事を忍に……」

早坂「……誇れば、よかったんだよ」

吹石「あん?」

早坂「丈、わたしね……公式戦でもそれ以外でも絶対に負けないって決めてるの」

吹石「はっ、そりゃ御大層な目標なこった。【超高校級のランナー】様は言う事が……」



早坂「わたしに勝ったのは、丈だけでいいから」
849 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/08(木) 22:35:21.52 ID:iVf1rbOA0
吹石「……は?」

早坂「わたしは、丈が告白してきた時のあの勝負以外には絶対負けない」

早坂「だから誇ってよ……丈は、【超高校級のランナー】を唯一負かした男なんだから」

吹石「お前……そんな……」

早坂「忘れられない、忘れられるわけがない。だって陸上の楽しさをわたしに教えてくれたの、丈なんだよ?」

吹石「……」

早坂「……丈」


早坂「わたし達、もう一度やり直せない、かな?」


吹石「……」

早坂「……」

吹石「はっ、ははっ……馬鹿だろ……こんな、こんな糞野郎いつまでも追いかけて、きてよ」

早坂「全然追い付けなかったけどね……わたしを置いてこんなに走っちゃってさ」

吹石「……やり直せんのかな?」

早坂「丈次第だよ。わたしは……信じてるけど」

吹石「……ちょっと待ってろ」

早坂「えっ」

※※※※

吹石「……これ、やるよ」

早坂「指輪……」

吹石「今度こそ、俺はあの夢守れんのか?」

早坂「……死んでも、一緒?」

吹石「覚えてたのかよ……あーあ、色々清算しねえとなぁ……」

早坂「付き合うよ。わたし達、ずっと一緒なんだから、さ」

吹石「……悪かった、忍。ずっと、遠回りして」ギュッ

早坂「……やっと、追いついたよ丈」ギュッ
850 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/11(日) 21:05:40.57 ID:QgAlznhA0
【エンゲージリングを渡したら……赤内&ミーナ&奈美編】

赤内「……」

ミーナ「やっ、赤内クン」

赤内「ああ、ミーナさん。悪いね、呼び出しちゃって」

ミーナ「それはいいんだけど……でもどうしたの、今まではこんな風に……」

赤内「ごめん、正確には話があるのはミーナさんじゃないんだ」

ミーナ「……どういう意味かな?」

赤内「月石奈美……知ってるよね?」

ミーナ「……!」

赤内「いや、もっとはっきり言うなら……ミーナさん、君、奈美でもあるよね?」

ミーナ「……どうしてそう思ったの」

赤内「きっかけは新芽さんだよ。ミーナさんがセーターに眼鏡の格好してたって言われてさ」

赤内「変装用にって奈美に僕が教えた格好をね」

「……」

赤内「それから注意して見るようにしたら出るわ出るわ奈美としか思えない言動の数々」

赤内「最初はミーナさんが奈美の身内なんじゃないかって考えもあったんだけど……それにしては君の顔には奈美に似てる要素がなかった」

「……」

赤内「荒唐無稽なのはわかってるよ。だけどこう思うしかないんだ」

赤内「奈美は、君の中で生きているって」

「…………ふふっ」

赤内「……!」

奈美「晶くんは相変わらずだね。鋭いのか鈍いのかよくわからない変な人」

赤内「な、奈美……?本当に生きて……」

奈美「ううん、私は死んだよ。車に轢かれて、殺された」

赤内「……」

奈美「今もよくわからないんだ。なんで私はまだ意識があるんだろう、それもこの子の中に」

赤内「そんな事どうでもいいよ!奈美とこうして話せる、それだけで僕は……」

奈美「……そうだね。私も晶くんには言いたい事があったし」

赤内「何でも聞くよ!だって僕達はずっと」

奈美「【キラキラしてない人間に価値はない】……私の事もそんな風に思ってたんだ?」

赤内「えっ……あっ、ち、違う!僕は奈美にそんな!」

奈美「今までの晶くんの言葉はずっと聞いてた。残念だよ……私がああいう人嫌いなの知ってるはずの晶くんがそうなってるなんて」

赤内「な、奈美……だけどそれは」

奈美「私が死んだからなんて言い訳しないでね?」

赤内「っ!」

奈美「それだけだから。もう晶くんとは話す事なんて――」
851 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/11(日) 21:11:52.45 ID:QgAlznhA0
ミーナ「ちょっと待った!」

奈美「み、美伊奈ちゃん?」

ミーナ「奈美!なんでそんな思ってない事言うの!?本当は赤内クンに謝りたいくせに!」

赤内「えっ……」

ミーナ「赤内クン。奈美は本当は赤内クンがああなったのは自分のせいだってずっと泣いてたの」

奈美「やめてください美伊奈ちゃん!」

ミーナ「ううん、やめない!だってこんなの悲しすぎるよ!」

赤内「奈美……」

奈美「……わかってた。晶くんを変えてしまったのは私だって」

奈美「見てられなかった、周りを傷つけて、嫌われて、自分自身も傷つける晶くん」

奈美「私がそうさせてるなら、もう振り切ってほしかった」

奈美「晶くんが、引きずる価値のない酷い女なんだって……」

ミーナ「だからってあれは駄目だよ!お互いに傷つくだけじゃない!」

奈美「……」

赤内「……奈美、君の言う通りだ。僕は君を言い訳にして不和ばかり生んでた」

赤内「こんな僕を奈美が見たらどう思うかなんてわかってたのに……こんなものまで用意して、本当に馬鹿だよ僕は」

ミーナ「赤内クン、それ……!」

赤内「ここにあった指輪……奈美が生きてるってわかったら勢いで買っちゃったんだ」

奈美「……!」

赤内「だけどその身体はミーナさんのだ。そもそも渡すのも不可能なのに本当に僕は……」

ミーナ「…………はあ、本当に世話が焼けるよ。奈美、アタシしばらく引っ込んでるから」

奈美「えっ、ちょっと美伊奈ちゃん!?」

赤内「……」

奈美「……晶くん」

赤内「スカウト失格だよ。アイドルに恋い焦がれるなんてさ」

奈美「それなら私だって……アイドル目指してたのにいつの間にか、晶くんが中心になっちゃってた」

赤内「……いいのかな?」

奈美「わからないけど……でも、今だけは」

※※※※

ミーナ「上手くいったかな?」

ミーナ「……アタシはね奈美。ずっと感謝してるんだよ」

ミーナ「二度と目覚めなかったはずのアタシが、こうしてアイドルとして生きていける」

ミーナ「それは全部奈美がいてくれたから」

ミーナ「だからこれぐらいのご褒美は受け取っていいんだよ?」

ミーナ「アイドルとしての諸々はアタシが。女の子としての幸せは奈美が」

ミーナ「だってアタシ達は……2人で【ミーナ・ルナストーン】なんだから」
852 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/12(月) 21:49:19.58 ID:F/0gf3dA0
【エンゲージリングを渡したら……佐木原IF編】

新芽「……」

佐木原「よぉ、新芽」

新芽「あっ……佐木原」

佐木原「わざわざ呼び出してどうしたよ?面白そうな話なら大歓迎……」

新芽「……ねぇ、あたし達って会った事ない?」

佐木原「……へぇ?」

新芽「なんか佐木原との会話の感じが、前にもした事ある気がして……」

佐木原「……」

新芽「変な話だとは思うのよ?でもモノクマは記憶を奪ったって言うし……」

佐木原「……はぁ、念入りに消しといたはずなんだけどな」

新芽「……!」

佐木原「そうだよ新芽。俺達は出会ってた……というか今回の一件の直前まで一緒にいた」

新芽「……なんで記憶を、ううん、そもそもなんでこんな事したの」

佐木原「興味が湧いたからさ。最初はコロシアイさせるつもりだったんだぞ?だけど二番煎じじゃ萎えるし、だから計画を変更したわけだ」

新芽「……」

佐木原「お前の記憶を消したのは興味が湧いたからだ。【新芽立花はまだ引き返せるのか】がな」

新芽「引き返せるか……」

佐木原「なんせ死体見ても慣れたとか言い出す女になっちまってたしなお前」

新芽「あ、あたしが?」

佐木原「そう、そして【超高校級の狂人】である俺と一緒にいるからか、お前は【超高校級の狂信者】って呼ばれるようになってた」

新芽「……」

佐木原「それで?真実を知ったわけだが、新芽はどう思った?」

新芽「…………」

新芽「納得した」

佐木原「納得」

新芽「みんなと仲良くなれたのは間違いないんだけど、あたしどこか違和感があったのよね」

佐木原「……」

新芽「そりゃそうよ。あたしを助けた恩人で、あたしが散々付き合ってきた奴が隣にいないんだから」

佐木原「……んー?」

新芽「まさかあなたが直前で計画変更するとは思って……あっ、そうだ」ゲシッ!

佐木原「いてっ」

新芽「あたしにスタンガン当てた罰よ。というかね、あんな強化したやつぶつけて死んだらどうするのよ!?」

佐木原「……おいおい、なんか記憶戻ってないか」

新芽「話してたら思い出してきたのよ。誰かさんに散々苦労かけられた思い出をね」
853 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/12(月) 21:50:03.89 ID:F/0gf3dA0
佐木原「んなアホな……記憶を消したんだぞ?会った気がするレベルでも信じられないってのに」

新芽「一応あたし【超高校級の幸運】になりかけてたからじゃない?理由は適当につけといてよ」

佐木原「……くっ、あははっ!全く本当に面白い女だな立花!」

新芽「あたしは面白くないわよ!」

佐木原「そう言うなって……しかしあれだな。【新芽立花はまだ引き返せるのか】って疑問は【引き返せない】って答えになったか」

新芽「そんなのわかってた事でしょ。よほどの事がない限りあたしが引き返すなんて無理よ」

佐木原「そんなものかね」

新芽「むしろ変わったのはあなたじゃないの」

佐木原「俺が?」

新芽「だってあなたが疑問に持つようなのって基本的に周りからすれば危険な事ばっかりでしょ」

新芽「それが仲良くなれるかを疑問に持つ時点であなたは変わった……違う?」

佐木原「……やれやれ、本当に擦れちまったな」

新芽「あなたのおかげでね……で?まだこの生活は続けるんでしょ?」

佐木原「まあな。まだ期間もある」

新芽「じゃあとりあえず……あたしの目的を果たしておこうかしら」

佐木原「目的?」

新芽「あなたにこれを渡したかったのよ」

佐木原「エンゲージリング?おいおい、正気か?」

新芽「言わなかった?あたしも狂ってきてるって」

佐木原「……」

新芽「【世間を騒がせた狂人とその付き添いははたして幸せになれるのか?】……この生活が終わった後の疑問としてはうってつけじゃない?」

佐木原「……本当にどこまでも調子狂わせてくれる女だな」

新芽「狂人の調子が狂ったら普通になるんじゃない?」

佐木原「それはないな」

新芽「……あっ、そう。それで答えは?」

佐木原「いい疑問だ。実に興味をそそられるよ、立花」

新芽「……ふふっ」

佐木原「……?」

新芽「あたし思ってたのよ。あたしはきっと普通に生きて普通に死んでくって」

新芽「だけど彰と出会って世の中がこんな事になって……もう世の中の普通なんて縁遠くなっちゃった」

佐木原「……嫌か?」

新芽「……ううん」

新芽「きっとこれがあたしの【普通】なのよ、彰」
854 : ◆DXWxLR/SkYo1 [sage]:2019/09/01(日) 07:29:19.43 ID:Iu868jHA0
次スレを貼っていなかったので
【ダンロン】ダンガンロンパ・クエスト【オリキャラ】後編
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1565729618/
855 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 21:00:13.53 ID:eiZGQf4A0
【未来機関第二十支部】

赤穂「なんだか騒がしいな……今日何かあったか?」

静音「なんだ知らないのか?だったらぼくが教えてやろう!」

赤穂「静音」

静音「今日は天才の日!この世に産まれたパーフェクトな天才……そう、奏を讃える日だ!」

赤穂「えっ、四方院さん今日が誕生日なのか」

静音「いや、違うけど」

赤穂「……」

静音「まあ、冗談はここまでにして……あっ、奏が天才なのは本当だぞ!」

赤穂「わかったわかった。それで、今日は何があるんだ?」

静音「それはもちろん……ハロウィンだ!」

赤穂「……ああ、そういえばそうだったな」

静音「反応が薄い!」
856 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 21:02:03.26 ID:eiZGQf4A0






EXTRACHAPT【第二十支部におけるハロウィンの過ごし方】






857 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 21:15:03.80 ID:eiZGQf4A0
赤穂「悪い悪い。どうもハロウィンとは縁が薄くてな」

静音「全く……このぼくがわざわざ仮装までしてるのに!」

赤穂「仮装……あっ、そういえばいつもと格好が違うな」

静音「ふふん、吸血鬼だ!最も美食家のぼくが飲む血は……」

赤穂「四方院さんだけなんだろ?」

静音「……!」

赤穂「なんだよその顔は」

静音「な、なんでわかった!もしかしてエスパーなの!?」

赤穂「……いや、普段の静音を見てればわかるからな」

静音「そうなのか……」

赤穂「それで?わざわざ仮装見せに来ただけじゃないんだろ?」

静音「あっ、そうだった……トリックオアトリート!」

赤穂「お菓子か……確か貰い物のカステラがあったな……」

静音「カステラ!?」

赤穂「あったあった。ほら静音」

静音「わーい、ありがとう!早速奏と食べてくる!」タタタッ

赤穂「転ぶなよー」

赤穂「……」

赤穂「なんか眩しかったな……俺も年取ったって事か?」

薄井「おっさんみたいな事言ってんなよ」
858 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 21:33:25.67 ID:eiZGQf4A0
赤穂「薄井、いつの間に」

薄井「静音と入れ違いにな。しっかしハロウィンね……」

赤穂「なんか気に入らないって感じだな?」

薄井「へっ、ハロウィンなんざ嫌いだね」

赤穂「嫌いってそこまで言うか……何か嫌な思い出でもあるのか?」

薄井「昔、姉貴がジャックオーランタンだったか?そいつを捕まえんのを手伝ってほしいって依頼されてよ……」

赤穂「また変わった依頼だな……」

薄井「お前の同期生だって聞いてんぞ」

赤穂「そんな奴いたか……?」

薄井「まあ、んな訳で姉貴はその日1日いなかったんだよ」

赤穂「へぇ……んっ?」

薄井「なんだよ」

赤穂「薄井がハロウィンを嫌いな理由って……お姉さんがその日いなかったからか?」

薄井「そう言ってんだろ」

赤穂「……」

薄井「……何か言えよ」

赤穂「シスコンだな、お前」

薄井「お前にだけは言われたくねえよ!!」
859 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 22:13:17.84 ID:eiZGQf4A0
【中央の島・歩道】

赤穂「薄井は少し姉離れした方がいいんじゃないか……?」

道掛「赤穂に言われちゃおしまいじゃね?」

赤穂「道掛……それじゃあまるで俺がシスコンみたいじゃないか」

道掛「自覚ねえのかよ!?」

赤穂「俺はただ妹思いなだけだ!」

道掛「……お、おう」

赤穂「ごほん、それで道掛もハロウィンか?」

道掛「まあな!ゾンビライダーってやつだ!」

赤穂「その格好のまま自転車で爆走するわけか……子供は泣くな」

道掛「実際さっき凪ちゃん泣かせちまったよ……ってやべえ忘れてた!?」

赤穂「何をだ?」

道掛「いや、奏ちゃんもいたんだけどな……凪ちゃん泣かせたから相当怒って」

四方院「見つけましたわよ道掛さん!」

道掛「やべっ!?赤穂助」

赤穂「あー……諦めろ」

道掛「切り捨てんの早えよ!?」
860 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 22:44:36.05 ID:eiZGQf4A0
四方院「凪を泣かせるなんて言語道断ですわ……」

赤穂「まあ、反省してるようだし許してやってくれ」

四方院「はぁ……凪からも言われてますし、ここまでにしておきます」

赤穂「あはは……」

四方院「あっ、赤穂さん。カステラありがとうございました」

赤穂「ああ、ハロウィンだしな……そのわりには四方院さんは変わってないように見えるけど」

四方院「ふふっ、そう見えます?実際は仮装をしているんですよ?」

赤穂「んー……あれ?四方院さんそんなに肌白かったか?」

四方院「わかりました?一応幽霊、なんです」

赤穂「静音の発案だろう?なんか下手なメイクとかさせなさそうだしな」

四方院「そうなんですの……わたくしはどのようなメイクでも受けて立つ覚悟だったんですが」

赤穂「そうなのか?」

四方院「どんな怪物だろうとパーフェクトに演じてみせますもの!」

赤穂「……」

ああ、そういえば四方院さんってこんな性格だったな……

四方院「ふふっ、それはそうと赤穂さん。トリックオアトリート」

赤穂「ああ、マーケットで用意してきた。えーっと、これでいいか?」

四方院「ありがとうございます。あら、少々多いような」

赤穂「静音の分だよ。泣いてたらしいからさ」

四方院「……」

赤穂「ど、どうしたんだそんな見てきて」

四方院「いえ、土橋さんの気持ちが少しわかりましたわ」

なんでそこで美姫の名前が出るんだ……?
861 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 23:12:06.93 ID:eiZGQf4A0
グレゴリー「ふははははっ!!我が力は今宵の収穫祭に向け、高まり、渦巻いている!」

津浦「よく似合っていますよ、Mr.グレゴリー」

グレゴリー「ふっ、言の葉の魔術師も魔導の衣を纏いしその姿……美麗であるぞ」

津浦「あ、ありがとうございます」

赤穂「……」

これは話しかけない方がいいのか?

グレゴリー「むっ、聖痕抱きし英雄か」

津浦「あっ……どうもMr.赤穂」

ほら、なんか津浦ガッカリした感じ出してるじゃないか。

赤穂「グレゴリーと津浦もハロウィンに参加してるんだな」

グレゴリー「然り!我にとって此度の収穫祭はまさに天界より誘われた運命の刻!心ゆくまで舞い踊らねばなるまい!」

津浦「……」

赤穂「そ、そうか……」

グレゴリー、テンション上がって津浦の様子に気付いてないのか!?

というか、その血塗れの仮面とかマントは本格的過ぎて逆に不気味だぞ!?

グレゴリー「さて、聖痕抱きし英雄よ……我は問う。甘き供物を捧げるか、妖精の戯れか!選ぶがいい!ふははははっ!」

赤穂「じゃあこれお菓子。津浦の分もな」

津浦「ありがとうございます……」

グレゴリー「ふははははっ!感謝するぞ聖痕抱きし英雄よ!この甘き供物は天界に確かに届けよう!」

赤穂「じゃあ、俺はこれで……ごめんな」

グレゴリー「むっ?」

津浦「……いえ」

津浦も苦労するな……
862 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 23:35:39.92 ID:eiZGQf4A0
赤穂「グレゴリーは少し女心を理解するべきだな……あの津浦の視線はわりとキツいんだぞ」

佐場木「何をブツブツ言っている」

遠見「お疲れ様であります赤穂殿!」

赤穂「お疲れ。佐場木と遠見は見回りか?」

佐場木「ハロウィンだからと気が抜けているようだからな」

遠見「自分達は何事もないようにする役割でありますよ」

赤穂「相変わらずだな……2人だって楽しんでもいいだろうに」

佐場木「全員が遊び呆けるわけにはいかないだろう」

遠見「それにこうして話をするだけで楽しんでいるようなものでありますから!」

赤穂「そうか……じゃあ差し入れっていうのもなんだけどこれ」

遠見「チョコレートでありますか!佐場木殿、後で分けるでありますよ!」

佐場木「……ああ」

遠見「それでは赤穂殿!自分達は見回りがありますので!」

赤穂「無理はしないようにな」

佐場木と遠見らしいな……
863 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 00:14:10.26 ID:sK4BE3/A0
六山「ふああ」カチカチ

鞍馬「……」チクチク

赤穂「……」

佐場木と遠見以上にいつも通りだなこの2人は……

六山「あー、赤穂くん。ゲームする?」

赤穂「ハロウィンとか関係ないな六山は……」

六山「1日は1日だからね。わたしはわたしらしく過ごすのだよ」

鞍馬「今さら輪に入れないだけでしょう」

六山「むっ……」

鞍馬「ゲームばかりでまともなコミュニケーションを取らなかった報いですね」

六山「それ、鞍馬くんには言われたくないなぁ」

鞍馬「僕はそもそも混ざる気がないので」

赤穂「……」

この2人仲悪いのか?

鞍馬もなんだかいつもより棘がある気がするぞ……

六山「むうっ……」カチカチ

鞍馬「……」

今度から気をつけて見てみるか……
864 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 08:02:04.37 ID:sK4BE3/A0
赤穂「……」

あいつの様子も見に行くか……

【第二十支部・地下】

赤穂「苗木」

苗木「……何さ寄生虫、ボクを笑いにでも来たの?」

赤穂「……」

苗木「全くお笑い草だよね。寄生虫を殺すために来たのにまさか捕まるなんて」

赤穂「まだ話す気はないのか?」

苗木「話す事なんてないよ」

赤穂「……そうか」

苗木が危険思想の持ち主だったってわかった時は本当に驚いたけど……

この様子だとやっぱり元々持ち合わせてたものだったみたいだな。

苗木「誰か死んだとかないの?それならボクも歓迎するよ」

赤穂「全員元気だよ」

苗木「あっそ……」

処刑を望んでる未来機関の強硬派はなんとか抑えてるけど……それもいつまで続くかわからない。

赤穂「また来る」

苗木「次はいいニュースを持ってきてよ」

それでも最後まで諦めてたまるか。

それが俺達全員の一致した気持ちなんだから。
865 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 08:41:37.48 ID:sK4BE3/A0
如月「苗木さんに会いに行っていたんですか?」

赤穂「まあ、一応俺が支部長なんで」

地下から戻ったら如月さんと出くわした。

如月さんも結構苗木を気にしてるみたいだから、なるべく様子は伝えるようにしている。

如月「彼も早く考え直してくれればいいんですが」

赤穂「相当難しいでしょうね。苗木のあれは根深いみたいですから」

如月「そうですね……長年染み付いたものは拭うのが本当に難しい」

赤穂「……」

それは如月さんもですか?とは聞かない。

如月さんは何かとんでもないものを抱えていて……だけど誰にもそれを見せていない。

如月「とにかく苗木さんについては慎重にいきましょう」

赤穂「はい」

慎重に……誰にも悟られないようにしないとな。

それが年長者として俺に出来る事だ。
866 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 11:46:20.18 ID:sK4BE3/A0
ジェニー「マサキ!マサキ!」

赤穂「そんなに跳び跳ねると危ないぞジェニー」

ハロウィンの巡回を再開した俺に跳び跳ねながらジェニーが近付いてくる。

いつものピエロの格好じゃなくて、羽の生えた……これは妖精か?

ジェニー「トリックオアトリートですマサキ!」

赤穂「おっと、ちょっと待ってな……よし、これだ」

ジェニー「サンキューですマサキ!あのあの、ところでこのフェアリーどうです?」

赤穂「よく似合ってる、可愛いぞ」

ジェニー「えへへ」

赤穂「でも1人なんて珍しいな。美姫はどうしたんだ?」

ジェニー「ミキは恥ずかしいて逃げちゃいました!」

赤穂「恥ずかしい?」

恥ずかしいって何がだ?

ハロウィンのコスプレは美姫もしてるだろうし、その衣装か?
867 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 12:08:15.48 ID:sK4BE3/A0
兵頭「赤穂さん、お疲れ様です」

赤穂「…………」

兵頭「あの、何か?」

赤穂「いや、ちょっと驚いてた……兵頭だよな?」

兵頭「そうですが……そんなにビックリしますか?」

赤穂「いきなりのっぺらぼうが声かけてきたら誰だってビックリするだろ……」

兵頭「道掛さんはすれ違っただけで驚いていましたね」

道掛も災難だな……

兵頭「それでは赤穂さん、トリックオアトリート」

赤穂「どこから声出してるんだそれ……これでいいか」

兵頭「はい、確かに。ところで如月さんを見てませんか?」

赤穂「如月さん?如月さんなら支部の近くにいるぞ」

兵頭「ありがとうございます。それでは」

兵頭はどこか急いだ様子で支部に向かっていく。

……あれ、どうやって前見えてるんだ?
868 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 12:20:46.31 ID:sK4BE3/A0
赤穂「おっ、あそこにいるのは……牡丹!」

御影「うっ、兄さん……」

赤穂「なんだその見つかっちゃったって顔」

御影「だって、恥ずかしいんだよ……」

赤穂「恥ずかしいってその猫耳と尻尾か?いいじゃないか、可愛いし」

御影「身内に見られるのは恥ずかしいの!兄さんもコスプレ私に見られたら嫌でしょ!」

赤穂「……いや、別に。昔はヒーローの格好してんのちょくちょく見せてたしな」

御影「……そ、そうだった。兄さんは慣れてるんだったよ……」

赤穂「だから牡丹も気にするなって。毎日してればその内慣れるから」

御影「今日だけだよこんな格好するのは!」

赤穂「なんだ、もったいない。そうやって周りと打ち解けていけば……いや、悪い虫もよってくるか?」

御影「私に悪い虫なんか来ないよ……」

赤穂「いいや、自覚するべきだ。牡丹は俺と違ってモテると思うぞ」

御影「自覚ないのはどっちなの……」

赤穂「何か言ったか?」

御影「なんでもない」
869 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 12:49:48.94 ID:sK4BE3/A0
【未来機関第二十支部・支部長室】

赤穂「みんな楽しそうだったな」

まだまだ問題は色々あるけど今日ぐらいは楽しんでほしいもんだ。

赤穂「だけど結局美姫には会えなかったな」

まあ、ジェニー曰く恥ずかしくて逃げてるらしいし……会えなくても仕方ないか。

赤穂「んー……!島中歩き回ってたら少し疲れたな」

少し寝るか……コテージには、行かなくていいな。

赤穂「……Zzz」

「……」

※※

赤穂「んっ……」

目覚めると後頭部に柔らかい感触……そして視界を遮る何か。

赤穂「……」

正直期待してたけど本当にそうなったか……まあ、いつもの事だもんな。

赤穂「恥ずかしいから逃げてるって聞いたぞ美姫」

土橋「し、仕方ないでしょ……こんな格好なんだから」

膝枕されたまま美姫を見てみると、包帯を巻いてるのが見える。

だけどその包帯は身体の一部にしか巻かれてないし、挙げ句その下には何も着けていなかった。

土橋「そんなにジロジロ見ないでっ!」

赤穂「嫌ならやめておけばよかっただろう……俺は眼福だけどさ」

土橋「だ、だって」

赤穂「だって?」

土橋「衣装、胸がキツくて入らなかったんだよ……」

そういう事言われると、なんだか妙に意識してこっちが恥ずかしくなってくるぞ……

土橋「も、もう!政城トリックオアトリート!恥ずかしいから早く!」

赤穂「わ、わかった。そこの鞄の中にあるぞ」

土橋「鞄、これだね…………えっと」

赤穂「どうした?」

土橋「何もないんだけど……」

赤穂「……あっ」

そういえば牡丹に渡した後補充してなかった……
赤穂「悪い。ちょうど切らし……うわっ!?」

起き上がろうとしたところを美姫に押し戻される。

美姫は何か上の空になっていて……あれ、ちょっと何する気だ?

土橋「悪戯、悪戯、お菓子ないんだから仕方ないよね……」

赤穂「待て美姫、顔が近い!お菓子なら用意するから落ち着い――」

その後の俺の言葉は、口に出る事はなかった。

どうしてかは……まあ、察してほしい。

END
870 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/24(火) 20:29:32.41 ID:zpdoyx8A0
赤穂「今日はクリスマスか……」

御影「もう年末だなんて時間が経つのは早いよね」

赤穂「牡丹は今日予定とかあるのか?」

御影「まあ、一応……兄さんは?」

赤穂「俺は特には……牡丹に予定とかないなら家族水入らずで過ごそうかと」

御影「……」ジー

赤穂「な、なんだよ」

御影「兄さんはもう少し女の子の気持ちとか考えた方がいいよ」

赤穂「意味がわからないぞ……」

御影「土橋、きっと待ってるよ」

赤穂「美姫が?いや、だけど牡丹と過ごすっていうのは美姫からの提案」

御影「いいからさっさと行く!」

赤穂「えっ、おい牡丹!?」

バタンッ

御影「全くもう……あっ、私もそろそろ行こうかな」
871 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/24(火) 20:31:06.03 ID:zpdoyx8A0






EXTRACHAPT【聖夜の光を追い求めて】






872 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/24(火) 20:42:23.84 ID:zpdoyx8A0
御影「まだ時間には早いかな……」

薄井「いいから放せ!」

静音「いやだ!ぼくは絶対薄井を連れていく!」

御影「……何してんの?」

薄井「御影!ちょうどいい、こいつを何とかしろ!」

静音「御影!このわからず屋にはっきり言ってやって!」

御影「いや、そんな事言われても……何があったの」

薄井「静音の奴がオレをパーティーに連れてくってきかねえんだよ!」

静音「1人で寂しそうだったから!こんな日にそんなのもったいないよ!」

薄井「ほっとけ!」

静音「やだ!」

御影「……」

なるほど。

御影「犬も食わないっていうからね。まあ、程々にしときなよ」

静音「犬?」

薄井「ちょっと待て!?お前何かとんでもない勘違いを……」

静音「薄井、犬ってなんなの?」

薄井「いや、それは……おいこら御影待て!責任持って説明もしやがれ!」

薄井の叫びを聞き流して待ち合わせ場所に急ぐ。

四方院「……」

御影「……」ビクッ

途中物陰からすごい目で静音と薄井を見てる四方院を見つけたけど……声はかけないでおいた。
873 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/24(火) 20:56:12.68 ID:zpdoyx8A0
グレゴリー「今宵は聖誕祭!今こそ我が天具その十二、雪原の園を使うとき!」

津浦「小型の人工雪発生装置ですか……Mr.グレゴリーは本当に様々な物をお作りになるのですね」

グレゴリー「フッ、これもまた天界からの囀りによるもの……言の葉の魔術師」

津浦「はい、なんでしょうか」

グレゴリー「今宵は我と共に刻の流れに身を任せぬか?」

津浦「えっ」

グレゴリー「無論、言の葉の魔術師が異なる術式をその身に宿すというなら、我も影となるが」

津浦「……いいえ、他の約束なんてありません」

津浦「Mr.グレゴリー。ワタシとクリスマスを過ごしてくださいますか?」

グレゴリー「……契約を持ちかけたのは我。その言霊を祓うなどありえん!」

津浦「ふふっ」


御影「……」

なんだか2人だけの世界って感じだね……ほっといてあげようかな。

グレゴリー「ならば早速この雪原の園を起動する!吹き荒れる結晶の欠片がこの世界を埋め尽くすであろう!」

津浦「さすがに吹雪はまずいのでは……」


御影「あっ、佐場木?グレゴリーが吹雪起こそうとしてるよ」
874 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/24(火) 21:15:07.31 ID:zpdoyx8A0
佐場木「本当にろくな事をしない……これで没収は何度目になると思っている」

御影「あはは……」

佐場木「御影、連絡に感謝する」

御影「あっ、佐場木は今日どうするの?まさか仕事なんて事は」

佐場木「そのまさかだが」

御影「いやいや、今日ぐらい休みなよ」

佐場木「全員が浮かれているわけにもいかない。こういった日は特にな」

御影「ほ、ほら、遠見と過ごすとか」

佐場木「あいつはここにいない。家族と過ごすように前々から言ってある」

御影「て、徹底してる……」

佐場木「……俺はな、御影。普段の日常を平和に過ごせるだけで十分なんだよ」

佐場木「犯罪者共の相手ばかりしていたからな。そういった日々は何よりも貴重だと理解しているつもりだ」

御影「……」

佐場木「だから特別な日は俺がこの空気を守る……それだけの話だ」

御影「佐場木……」

佐場木「赤穂に明日は休みを取ると伝えておいてくれ」

御影「うん、わかった。明日はしっかり休みなよ」

佐場木「遠見と同じ事を言うな……」

あっ、やっぱり遠見にも言われてるんだ。
875 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/25(水) 18:20:41.60 ID:wgoLr7nA0
ジェニー「はーいボタン!」

御影「あれ、ジェニー1人なの?」

ジェニー「ミキはマサキと一緒ですから2人にしたです!」

御影「あっ、そうか……ジェニーはこれからどうするの?」

ジェニー「……」

御影「まさか苗木の所に行くつもりじゃないよね?」

ジェニー「……」ビクッ

御影「やっぱり……ジェニー、あいつに散々酷い事言われたでしょ」

私だって面と向かって化け物呼ばわりされてる……あいつと私達はきっとわかりあう事なんて出来ないのに。

ジェニー「でもボクは、諦めたくないです……」

御影「……」

とはいえ、ジェニーの気持ちをバッサリ切り捨てるのも……

御影「わかった。じゃあ私も」

鞍馬「僕が一緒に行きましょう」

御影「うわっ!?」

ジェニー「ルイ」

鞍馬「苗木誠が不審な行動をしないように見張ればいいのでしょう。それに彼の悪意は1人で受けるにはいささか苛烈です」

御影「……」

鞍馬が一緒に来るなら心強いけど……

御影「どういう風の吹き回し?普段あんなに関わりませんって態度なのに」

鞍馬「……気紛れですよ。ただのね」

気紛れ、ね……

ジェニー「じゃあボタン!ボクはルイとセイに会てきますです!」

御影「えっ、私も一緒に行っても」

ジェニー「ボタン約束あるですよね?ボクは大丈夫だからそちに行てください!」

御影「……ジェニーがそう言うなら」

まあ、私はあいつに相当敵視されてるし……刺激しない方が無難かな。

鞍馬「……」
876 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/25(水) 18:36:02.50 ID:wgoLr7nA0
御影「ジェニー大丈夫かな」

鞍馬がいるならそうそう変な事にはならないだろうけど。

六山「おはよー」

御影「おはよう……って、百夏今起きたの!?」

六山「いやぁ、ダンジョンの攻略が思いの外白熱しちゃって」

御影「クリスマスでも百夏は平常運転だね……」

でもゲームに夢中で呼んでもコテージから出てこない日もあるから今日はマシなのかな……

六山「あはは、褒めないでよ」

御影「今私褒めたっけ……」

六山「まあ大丈夫だよ。わたしはこういうの慣れてるからね」

御影「あんまり慣れる事じゃないと思う……」

※※※※

六山「ふぅ……ごめんね牡丹ちゃん」

六山「でもさ、わたしとしては牡丹ちゃんには穏やかに生きてほしいんだ」

六山「せっかくお兄ちゃんと再会出来たんだからね」

六山「苗木くん以外にもいる絶望の残党、殺人鬼……」

六山「それはわたしが、何とかするからさ」
877 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/25(水) 18:51:30.82 ID:wgoLr7nA0
御影「百夏のあれは何とかしないといけないよね……」

兵頭「牡丹さん?」

御影「あっ、千……と如月も」

如月「こんにちは御影さん」

兵頭「お悩みだったようですが……何かあったんですか?」

御影「いや、百夏のゲーム中毒」

兵頭「……ああ」

御影「昨日もずっとゲームしててさっき起きてきたみたいで……どうしたものかなと」

兵頭「六山さんのあれはもう筋金入りですからね……」

如月「……」

御影「今度コテージに無理やり乗り込んじゃおうかな……」

如月「それは……」

御影「えっ?」

兵頭「如月さん?」

如月「いえ、強硬な手段に出ると逆効果ではないかと」

御影「そうかぁ……うーん」

兵頭「長期戦になりそうですね……私も手伝いますから頑張りましょう牡丹さん」

御影「うん、ありがとう千」

如月「…………」

如月(六山さんが夜に支部を抜け出している事はまだ知られていないようですが……)

如月(一度彼女と話した方がいいかもしれませんね)
878 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/25(水) 19:01:13.93 ID:wgoLr7nA0
御影「余裕持ってたはずなのに話してたらもうこんな時間だよ……!」

急がないと……あれ?

土橋「政城〜♪」

赤穂「落ち着け美姫!ちょっと頬擦りは駄目だって……!」

御影「……」

赤穂「誰だ、美姫に酒を飲ませたのは……!」

土橋「アタシお酒なんか飲んでなーい!ちょっと葡萄ジュースは飲んだけど!」

赤穂「それはワインだ……!ちょっ、力強いな!倒れる倒れる!」

土橋「……アタシが女の子らしくないって事?」ウルウル

赤穂「えっ、いや、違っ」

土橋「うええーんっ!まさきがひどいこというー!」

赤穂「そ、そんな事ないぞ!美姫は立派な女の子だって!」

土橋「ほんと?」

赤穂「本当だ」

土橋「じゃあー……ちゅーして?」

赤穂「うっ……わ、わかった。誰も見てないよな……」

御影「……」

私にもこんな時に隠れるだけの情けはあった。

兄さん……まあ、見なかった事にしておくよ。
879 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/25(水) 19:37:34.11 ID:wgoLr7nA0
御影「間に合った……」

道掛「おっ、牡丹ちゃん!」

御影「ま、待たせてごめん」

道掛「気にしなくていいぜ!好きな女の子待つのも青春だからな!」

御影「そ、そう」

道掛「おっと、忘れる前に……メリークリスマス牡丹ちゃん!これは俺からのクリスマスプレゼントだぜ!」

御影「手袋?」

道掛「牡丹ちゃん、よく手寒そうにしてるからさ。鞍馬に習って作ってみた!」

御影「あ、ありがとう……あれ?」

道掛「どうした牡丹ちゃん?」

御影「この手袋、片方は合うけど……もう片方はサイズ大きい」

道掛「えっ、うわっ、マジか!?や、やっちまった……」

御影「……道掛、ちょっとこれ着けてみてよ」

道掛「……おぉ、ピッタリだ」

御影「それで……こう」

道掛「牡丹ちゃん!?」

御影「着けてない方の手を繋いだら、寒くないでしょ?」

道掛「ぼ、牡丹ちゃん……今年は最高のクリスマスだぜ!」

御影「早いって……まだ始まったばかりなんだから」

道掛「よっしゃ、クリスマスデートの始まりだ!」

御影「あっ、私もプレゼント」

道掛「お楽しみは後にとっておくよ!行こうぜ牡丹ちゃん!」

御影「あっ、ちょっと……もう」

私にこんなクリスマスが来るなんて思わなかったけど……うん。

御影「青春だよね、こういうのも」

END
880 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 21:21:40.52 ID:Yg2JAeKA0
2月14日、バレンタイン。

こんな世の中になっても、いや、こんな世の中だからか?

こういう時は俺達第二十支部の面々は楽しむようにしている。

時々他の支部から小言をもらう事もあるけど、まあそれくらいは支部長らしく俺が引き受けるさ。

普段は世界をまた復興させるためにみんな頑張ってるんだからな。

御影「兄さん、これチョコレート」

赤穂「おっ、ありがとうな牡丹」

御影「市販品に大げさだって」

赤穂「こういうのはもらう相手が重要なんだよ」

特に生き別れてた妹からだしな……感激もひとしおだ。

御影「……そんなものなの?」

赤穂「ああ」

御影「そっか……」

赤穂「んっ……?」

なんだ、牡丹の様子がおかしいぞ?

というか、その手にある綺麗にラッピングされたチョコレートはなんだ?

御影「ありがとう兄さん、私頑張ってくるよ」

赤穂「えっ?ああ、頑張……って待て牡丹!頑張るってなんだ!?」

不穏な妹の言葉を聞き逃せるわけもなく、俺は杖を取って牡丹の後を追いかけた。
881 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 21:22:38.22 ID:Yg2JAeKA0






EXTRACHAPT【バレンタインの喜悲劇】






882 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 21:32:53.97 ID:Yg2JAeKA0
赤穂「くっ、見失った……!」

牡丹、いつの間にそんなチョコレートを渡すような相手が出来たんだ!

クリスマスか、俺が酔った美姫の相手を一日中してたクリスマスのあの時か!?

静音「チョコレートー♪チョコレートー♪」

赤穂「あっ、静音!牡丹見なかったか!?」

静音「御影?御影ならさっき図書館に行くって言ってたけど」

図書館?そこに牡丹に手を出した不届きものがいるのか!

静音「あっ、そうだ。せっかく会ったんだしこれをやろう!」

赤穂「……チョコレート?」

静音「義理チョコ!一応支部長だしな!」

赤穂「お、おう、ありがとう……静音は誰かに渡す予定とかあるのか?」

静音「奏とジェニーになら渡した!友チョコってやつ!」

赤穂「ああ、それは想像ついてた……んっ?じゃあそのチョコレートはもらったやつなのか?」

静音の手にはやけに気合い入ったチョコレートが……二つある。

てっきりあれが四方院さんに渡すやつだと思ってたんだけどな。

静音「これは奏と薄井からもらった!」

赤穂「…………薄井?」

えっ?
883 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 21:48:14.43 ID:Yg2JAeKA0
四方院「ふふっ、凪からのチョコレートは相変わらず可愛らしいですわ」

薄井「……おい四方院」

四方院「なんです」

薄井「なんでさっきから人についてきやがる」

四方院「あら、心外ですわ。偶然一緒の方向に行っているだけですのに」

薄井「……」

四方院「ああ、それにしても凪のチョコレート……」

薄井「わざとか!おい、わざとだよなオイ!?」

四方院「何の事です?せっかく気合いを入れて手作りまでしたのに凪からは貰えなかった人に自慢だなんて……完璧たるわたくしがするとでも?」

薄井「やっぱりわざとじゃねえか!この依存女!」

四方院「なっ!?わたくしはあなたのような粗暴な人は、凪のお相手には相応しくないとわざわざ教えてさしあげてるだけですわ!」

薄井「へっ、自分が相手いねえからって僻むなよ!」

四方院「誰が僻んでると言うのですか!?」


赤穂「……」

まさかこんな事になってるとは思わなかった……

中心の静音は何も知らずか……


静音「あっ、おーい!」

四方院「あら、凪。どうしましたの?」

薄井「……」

静音「薄井薄井、はいこれ!」

薄井「はっ?」

静音「さっき渡すの忘れてたから!」

四方院「なっ……!?」


静音……わざとじゃないんだろうなぁ、あれ。
884 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 22:07:31.39 ID:Yg2JAeKA0
津浦「……」ソワソワ

グレゴリー「ふむ、言の葉の魔術師よ」

津浦「は、はい、なんでしょうか」

グレゴリー「先ほどから妖精達の悪戯を受けているようだが……自惚れでなければそれはこの時間軸の影響か?」

津浦「え、ええ、今日はバレンタインデーですので、そのMr.グレゴリーにチョコレートを、用意したのですが……」

グレゴリー「フッ、その誘惑をはね除ける術はない。歓喜を持ってその贈り物を受け取ろうではないか」

津浦「で、ではこれを」

グレゴリー「確かに託された、言の葉の魔術師よ」

津浦「あ、あの……Mr.グレゴリー。もし良ければどこかで落ち着いて話をしませんか」

グレゴリー「ふむ、言の葉の魔術師の誘いならば。して約束の地はいずこか?」

津浦「では……」


赤穂「……」

見つかる前に退散しよう……
885 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 22:21:44.72 ID:Yg2JAeKA0
【図書館】

赤穂「牡丹はいないか……」

遠見「おや、赤穂殿」

赤穂「遠見、牡丹見なかったか?」

遠見「御影殿でありますか?自分達はここにいたでありますが、誰も来ていないでありますよ」

赤穂「そ、そうか……」

さては牡丹、これを見越して静音に図書館に行くって言ったな……!

赤穂「悪い、邪魔したな……」

遠見「いえいえ、大丈夫でありますよ」

となると、牡丹はどこに……



遠見「御影殿も大変でありますなぁ」

佐場木「誰か来たのか」

遠見「いえ、なんでもないでありますよ佐場木殿」コトッ

佐場木「チョコレート?」

遠見「バレンタインでありますから。佐場木殿、甘い物は苦手でありましたか?」

佐場木「いや……ありがたくいただこう」

遠見「はいであります」
886 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 22:29:33.80 ID:Yg2JAeKA0
六山「……むうっ」

ジェニー「モモカ?どしました?」

六山「あっ、ジェニーさん。チョコレート、マーケットでつい買っちゃったんだよね」

ジェニー「チョコレート!モモカ、誰かに渡すですか?」

六山「いや、渡す予定は、ないんだけどね……はあっ、なんで買っちゃったんだろ」

ジェニー「モモカ、あーんです!」

六山「えっ、んむっ」

ジェニー「美味しいです?」

六山「美味しいけど……」

ジェニー「バレンタインデーに暗い顔はダメですですよ!」

六山「ジェニーさん……」

ジェニー「スマイルスマイル、です!」

六山「うん、そうだね。あっ、よかったら他にも人呼んでみんなで食べよっか?」

ジェニー「パーティーですか!」

六山「あはは……そこまでのものじゃないけどね」


【六山のコテージ】

鞍馬「……」

コトンッ

鞍馬「……」スタスタ
887 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 22:42:15.07 ID:Yg2JAeKA0
如月「バレンタイン、ですか?」

兵頭「はい。如月さんはチョコレートをいただいたりは……」

如月「僕は基本的に世界各国を飛び回っていましたから、いただく機会はありませんでしたね」

兵頭「そう、ですか」

如月「兵頭さんは?」

兵頭「はい?」

如月「今まで誰かに渡したりは」

兵頭「義理を配る事はありましたが……」

如月「……」

兵頭「……」

如月「ふうっ」

兵頭「なんでしょう、ぎこちなくなってしまいますね……」

如月「そうですね……僕はこういった事に不得手ですから、柄にもなく緊張しているのかもしれません」

兵頭「如月さんも緊張するんですね」

如月「……本命をいただくのは、初めての出来事ですからね」

兵頭「……私も本命を誰かに渡すのは初めてです」

如月「……」

兵頭「……」

如月「兵頭さん」

兵頭「はい」

如月「……これからも、よろしくお願いします」

兵頭「……はい、こちらこそ」
888 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 22:53:55.94 ID:Yg2JAeKA0
御影「はい、これ」

道掛「ぼ、牡丹ちゃん……これはまさか……」

御影「チョコレート。マーケットのやつだけど」

道掛「う、うおおおお……!ありがてえ、ありがてえよ牡丹ちゃん!」

御影「ちょ、ちょっと、泣くほど?さっきも言ったけどこれマーケットの」

道掛「関係ねえ!牡丹ちゃんからチョコレートもらえたって事実が大事なんだよ!」

御影「……兄さんの言った通りだった」

道掛「赤穂?」

御影「こういうのは、もらう相手が重要だって」

道掛「おぉ、赤穂もいいこと言うな!さすが牡丹ちゃんの兄貴だ!」

御影「……でも私としては、手作りを渡したいんだよね」

道掛「へっ?」

御影「……好きな人にあげるものだし」

道掛「ぼ、牡丹ちゃん……!」

御影「だから、またいつかを楽しみにしててよ」

道掛「おう、おう!一生だって待つぜ!」

御影「……うん」
889 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 23:11:48.60 ID:Yg2JAeKA0
土橋「で?結局牡丹見つからなかったから拗ねてるの?」

赤穂「別に拗ねてるわけじゃ……だけど牡丹はまだ」

土橋「子供だーって言うなら同い年のアタシに手出してる政城はどうなの?」

赤穂「うっ」

土橋「ほらほら、チョコレートあげるから機嫌直しなよ。はい、あーん」

赤穂「んむっ……美味い」

土橋「ありがと」

赤穂「……わかってはいるんだよ。牡丹がそういう相手見つけるのはいい事で、あいつも子供じゃないのは」

赤穂「だけど、俺にとって牡丹は……離れたあの頃のままだったからさ」

土橋「牡丹が養子に行ったのが小学生の頃だっけ?最近止まった時間が動いたから追い付いていかないって感じかな」

赤穂「そう、だな……後はやっぱり寂しいのかもな」

土橋「寂しいか……だったらさ」ギュッ

赤穂「美姫?」

土橋「アタシがその分一緒にいるよ。いや、牡丹の代わりなんて無理なのは知ってるけど……せめて寂しくないって思えるぐらいに」

赤穂「……」

土橋「アタシは、その、政城の恋人なんだし」

赤穂「……こう言ってもらえるなんて俺は幸せ者だな」

牡丹もいつか大事な人を見つけて離れていく。

必ず来るだろうその時に美姫がこうして隣にいてくれたらいいなと、俺は思った。

END
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