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魔法少女ダークストーカー 2スレ目
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1 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/19(日) 01:02:12.92 ID:qA82S3wZo
魔法少女ダークストーカー
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414330789/
前スレが落ちてしまったので、2スレ目です
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1466265732
2 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/19(日) 01:04:19.51 ID:qA82S3wZo
大変長い間お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。
PCが壊れたり、PCを買うために職探しして、またその職場に慣れるまでの間に色々あったりと…時間を作る事ができませんでしたが
生活環境も仕事の方も大分落ち着いて来たので、更新を再開させて頂きたいと思います。
前回の更新からかなりの期間が経ってしまいましたが、引き続き本作にお付き合い頂ければ幸いです。
3 :
◆TPk5R1h7Ng
[sage]:2016/06/19(日) 01:16:54.48 ID:qA82S3wZo
●もりびと
俺「えっと、とりあえず……その虚獣ってのは、一体何なんだ?」
神風「スピリット同様に、この世界の仕組みとして存在する…世界の免疫機能のような物です」
俺「ザックリとした判り易い説明だが、何だってまたそんな奴が……いや、待てよ?まさか……」
虚獣…その余りにも唐突な出現と、神風による説明により明かされるその存在理由。俺はまず、何故そんな物が現れたのかを考え…
言葉の途中で、その理由…と言うよりも今までの出来事を思い出して、ある可能性に行き着く。
ハル「私も……まさかとは思いますけど。でも…」
ディーティー「やれやれ…またこのパターンか」
俺「いや、お前が言うな!!」
ハル「それで…実際の所はどうなんですか?」
神風「虚獣も、スピリット同様に世界とリンクしているため…正確な情報は掌握出来ません。ですが…可能性の有無で言うのであれば…無いと断言も出来ません」
俺「ってー事は………」
カライモン「今回の当面の敵は、虚獣…そして、虚獣を背後から操っているのは……もう、言うまでも無さそうだね」
ここまでの会話で皆が理解を示し、カライモンの言葉に頷いて答える。
そして、皆の認識が纏まった所で……まるで見計らったかのように、周囲を暗闇が包み込み……
俺達は、その原因を確かめるべく窓の外へと目を向けた。
すると、そこには…
俺「なぁ…キョジュウのキョって…巨大の巨じゃなくて、虚構の虚だよな?」
神風「はい、その通りです。それと、大変言い難い事なのですが…あれはまだ、尖兵にあたる…その、虚獣の中でもまだ小型な分類の者です」
俺「………マジかよ」
都市まるごと一つを覆い、影を落す程の…巨大な白い鳥のような物。虚獣と呼ばれる存在が浮かんで居た。
4 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/19(日) 01:31:25.82 ID:qA82S3wZo
●おおぞら
ユズ「一応聞いて置きたいんッスけど……たまたま散歩に来ただけとか…そう言うんじゃ無いんッスよね?」
俺を含め…各々が変身を行う等して、臨戦態勢に入る中…神風に対して、僅かな期待を込めて疑問を投げかけるユズ。
だが、その結果は……
神風「現時点で…既に、我々に対しての攻撃態勢に入って居ます。戦闘は避けられない…と、考えた方が良いでしょう」
ユズ「やっぱり…無理ッスか」
案の定、淡い期待を打ち砕く内容だった。
カライモン「では…戦闘に入る前に、可能な限りスペックを把握しておきたいのだが…何か特筆するような能力を持っているのかね?」
神風「まず、スピリットと同等の未来予測と…次に、耐性能力が大きな特徴でしょう」
カライモン「ふむ…未来予測は良いとして…耐性能力とは、具体的にどのような能力なのだね?」
神風「自らが受けた攻撃に対して耐性を作り出し…以降、その攻撃を無効化出来るようになると言う能力です」
カライモン「定番と言えば定番だが…それはまた厄介な能力だな」
神風「また、能力とは異なりますが…対峙する上で最も大きな問題となるのは、やはり…その質量でしょう」
カライモン「見ての通りの、あれだけの巨体を削り切るだけの戦力もさる事ながら…耐性を上回るだけの手段を用いる必要がある…と言う事だね」
神風「その通りです」
カライモン「しかも、あれだけの大きさでまだ小型……裏を返せば、あれよりも大型の物が後に控えている事が確定している…と来た物だ」
ディーティー「圧倒的な戦力差による消耗戦が待ち構えている…そう考えておくのが妥当だろうね」
俺「ってーか今更だが…そんな無茶苦茶な免疫が居ながら、何で今までの世界の危機に現れなかったんだ?」
ハル「それは多分…私達が居たからじゃ無いですか?」
俺「そりゃ結果論……いや、スピリットと同じように未来予測が出来る以上は、それも順当な判断だった…って事か。釈然としねぇなぁオイ」
と言った流れで、俺達の会話は締め括りに向かい…虚獣への距離が縮まる最中。
カライモン「………」
俺「どうした?まだ何か気になる事でもあんのか?」
何故か無言で考え込むカライモンに、俺は話しかけた。
カライモン「いや、本当にそれだけだったのだろうか…と思ってね。まぁ…今はまだ確証の無い憶測に過ぎないので、気にしないでくれ給え」
俺「だから、そう言う言い方だと余計に気になるんだが…って言っても、詳しく聞いてる時間はもう無さそうか」
カライモンが何を考えているのか、正直気にはなるのだが……俺も言った通り、それを問い質すだけの時間的余裕は無いらしい。
そう、当然と言えば当然なのだが…俺達の到着を、虚獣が大人しく待ってくれる筈も無く……
腹部の蓮の種のように窪んだ穴から、白い球体が射出され…それが俺達に向けて飛来して来ていた。
5 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/19(日) 01:45:25.64 ID:qA82S3wZo
●へきれき
俺「作戦は…どうする?」
カライモン「まず未来予測を相殺するためにも、可能な限り神風君との契約による連携を展開。それと…」
俺「耐性能力にはどう対応するんだ?俺達の攻撃手段って、そんなに多くは無いよなぁ?」
カライモン「それに関しては、幾つか確認をしてからで無ければ結論を出す事は出来ない。まずは目の前の相手で確かめてみよう」
飛来する球体が流線型に変形し、速度を増しながら落下する中…俺達は神風との契約を行い、意識を共有する事で連携を取る。
カライモン『まずはユズ君…君の炎で奴等の戦力を削いでくれ給え』
ユズ『はいッス!』
軌道を変え…螺旋を描きながら収束して俺達の頭上へと迫り来る、虚獣から射出された流線型の物体。
それにを…カライモンの指揮の下、ユズが火炎の魔法で迎え撃つ。
次々と敵を飲み込み焼き尽くす、ユズの火炎。
その火力は、傍からは相手を全滅させるのに充分な物に見えたのだが…
群の奥に進むその最中、ある瞬間を境に…焼き尽くすどころか、焦げ目一つ残す事すら出来なくなってしまっていた。
俺『マジかよ……これって、リアルタイムで例の耐性が反映されてるって事だよな』
カライモン『…そのようだね。なるべく大量に引き付けておいて、一網打尽…と言う訳には行かないか』
ユズ『じゃぁ、残りはどうするッスか?炎じゃなくて光の魔法で自分が……』
カライモン『いや、恐らくそれはまだ早い。分の悪い賭けになってしまうが…彼のディメンションスレイヤーで残存兵力を片付けよう』
レミ『…って、むしろそっちの方が早すぎるんじゃないの!?切り札をいきなり使っちゃって大丈夫なの?』
カライモン『だから、分の悪い賭けと言っただろう?それに―――』
6 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/19(日) 01:47:11.78 ID:qA82S3wZo
●うらわざ
俺『成程な……確かにそれなら何とかなるかも知れないが…実際に上手く行くかも、そもそも俺がそれを出来るかも判らないぞ?』
カライモン『…何度も言わせないでくれ給え。それを踏まえた上での分の悪さでも賭けるしか無いのだよ』
俺『プレッシャーかけてくれやがるなぁ、おい。くそっ…失敗しても恨むなよ』
残った戦力に向けて跳躍しながら、ディメンションスレイヤーを形成。
おあつらえ向きな事に、標的の方から飛び込んで来てくれているため…討ち漏らす事無く難無く残機を迎撃。
更にその勢いのまま虚獣本体へと切迫し、翼にディメンションスレイヤーを突き立てる。
先の…ユズの火炎への耐性が付くまでの間隔を考えても、ディメンションスレイヤーへの耐性を付けられた様子は無し。
………カライモンの目論見通り、ディメンションスレイヤーの投入が功を奏したようだ。
ユズ『えっと…これってつまり、どう言う事ッスか?』
レミ『身も蓋も無い言い方だけど…ディメンションスレイヤーって、何でもありの反則技じゃない?』
ユズ『そうッスね』
レミ『だから…攻撃の際に耐性を作られないように、ディメンションスレイヤーがディメンションスレイヤーである事を隠して、偽装しながら攻撃…って事が出来れば』
ユズ『耐性を付けられる事無く、攻撃する事も出来る…って事ッスね!』
俺『とまぁ、そう言う訳で…実際に試してみたんだが……』
レミ『何?言い淀んじゃって、どうかしたの?』
俺『今確認してるんだが…その偽装に対しても、耐性を付けられた形跡が無い。多分…ディメンションスレイヤーその物への耐性が付けられないみたいだ』
カライモン『それは朗報だね。ならこのまま…次の段階に進んでくれ給え』
そう………ここまでは順調だった。最初の懸念も無駄に終わり、予想以上の成果を得て……何もかもが順調に進んでいるように見えたのだが……
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/19(日) 01:47:47.37 ID:e0gCDI94o
>>2
なんか大変だったんだな
お疲れさま
8 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/19(日) 02:01:49.95 ID:qA82S3wZo
●つながり
俺『………くそっ…ダメだ!!』
万事が万事、思い通りに進む…と言う訳には行かなかった。
カライモン『そうか…では、駄目だった原因を報告してくれ給え。ディメンションスレイヤーの限界かね?それとも、君の技術面での限界かね?』
俺『ディメンションスレイヤーで干渉する所までは持って行けたんだが…肝心の免疫機構を書き換える事が出来ない!いや、やろうと思えば出来なくも無いんだが…』
本来の予定ならば…ディメンションスレイヤーで虚獣の免疫機構を書き換え、最大の難関である耐性の構築を無効かする筈だった。
だが…いざそれを実行しようとした所で、思いもよらない問題が俺を待ち受けて居た。
カライモン『実行出来ない理由は何なのだね?』
俺『この免疫機構…そっくりそのまま、世界の物理法則に直結してやがる。下手に…いや、どんだけ上手くやったとしても…』
カライモン『干渉が世界に与える影響は計り知れない…か。さすがにそうなってしまっては、元も子も無いね』
俺『って訳で、一応これで確認の方は終わったと思うんだが…肝心の作戦はどうなるんだ?ってか、どうにかなりそうなのか?』
カライモン『そうだね…ディメンションスレイヤーを中心として、各自最小限の魔法使用に抑えて立ち回れば…としか、言えないね』
俺『中心にって、簡単に言ってくれるが…いや、んでもまぁ、打つ手が無いって言われるよりは幾分かマシか……』
ここに至るまで…たった一太刀浴びせたこの時点での消耗でさえ、決して少なくは無い。
ガス欠の心配がある以上、ここは短期決戦に持ち込みたい所なんだが………
俺『しっかし……こいつを倒すためには、全身を削り切る必要があるんだよなぁ…』
そう……さっきディメンションスレイヤーで干渉した際に判った事なんだが…虚獣には弱点が無い。
巨大な身体を持っていたり、再生能力を持っていたり、と言うお決まりの強敵にはありがちな…ここだけ何とかすれば倒せる!と言った弱点が存在しない。
この巨体に真正面からぶつかって、絶望的なまでのこの質量を削り切らなければ勝利する事が出来ない…と言う訳だ。
レミ『毎度毎度の事ながら…ジリ貧の戦いになりそうね』
あえて言葉にしないでくれ…まだ戦いも序盤だと言うのに、心が折れそうになる。
9 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/19(日) 02:05:17.68 ID:qA82S3wZo
ハル『そう言えば…耐性の方は、どの程度の範囲に適用されているんですか?ユズちゃんの炎で、私達の光の魔法全般が無効化されるとかは…』
俺『あぁ、その点は問題無い。あの時点で付いた耐性は、熱耐性だけで…それも、あの炎の温度までだ』
カライモン『ならば、それ以上の温度…収束させた光で焼き切るのも、削り切るのもまだ有効…と言う事だね』
俺『そう言う事だ』
カライモン『適応では無く、耐性でありながら…この結果とは。律儀と言うか何と言うか…』
俺『まぁ、言いたい事は判らないでも無いんだが…さすがにこれ以上の雑談をしてる暇も無さそうだ…ぜっ!』
神風を介して、意識を直結させた状態での意思の疎通。
通常の会話と比較にならない程の、ほんの数秒の間に済ませたやりとりであっても…戦いの最中では、決して短くない時間を費やしている。
そして…虚獣に至っても、その時間を無為に過ごす筈が無く……
俺「やれやれ…今度は人型かよ。まぁ、こっちとしちゃぁ丁度良いサイズだから願ったり叶ったりなんだがな!!」
先の球体のように…今度は背中に空いた無数の穴から、人型の小さな虚獣を大量に生み出していた。
カライモン『生み出した質量に対して、減少した本体の質量が多い。決して見た目で油断せず、気を引き締めて迎え撃ち給え』
俺『その点だけは安心しな。こう言うのも何だが…油断なんざしてる余裕はこれっぽっちも無ぇよ!』
その手に剣を形成し…俺に向けて一斉に斬りかかって来る、人型の虚獣達。
足の運びに、刃の軌跡…切り返しから回避に至るまで……姿形こそ人のそれでありながらも、動きに関しては全くの別物。
まるで人型の水風船がうねるような奇妙な攻撃を、俺は紙一重の所で躱しながら…一瞬の隙を突いて、反撃する。
俺「だぁぁぁぁぁりゃぁぁぁぁ!!!」
掛け声と共に人型虚獣の胴体を切り裂き…間髪入れずに、後ろに跳んで一気に間合いを離す。
そして1テンポ置いた後、切り裂かれた虚獣の断面から眩い光が溢れ………
周囲に爆音が響き渡った。
10 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/19(日) 22:26:19.44 ID:qA82S3wZo
●ばくはつ
ユズ「な……何事ッスか!?」
ハル「……爆発…?まさか、虚獣の攻撃で彼が…!?」
俺『あぁ、いや…驚かせちまって悪ぃな。今のは俺の攻撃だ』
レミ『攻撃って…一体何したの?!アンタの攻撃レパートリーに、あんなの無かったわよね?!』
俺『今まで使った事ぁ無かったけど、試してみたかったのがあったんだよ。とは言っても…思ったような効果は出せなかったけどな』
カライモン『効果が出なかった理由は……虚獣の組織構成が原因かね?』
俺『……何に失敗したかをすっ飛ばして、何で失敗したかを聞くんだな』
カライモン『そんな物、君の趣向と結果を照らし合わせれば推測も難しく無い。大方、あの人型虚獣を反転して本体もろとも爆破しようとしたのだろう?』
俺『…………』
カライモン『図星のようだね。それで、失敗の原因は何だったのだね?』
俺『……さっき言われた通り、虚獣の組織構成だ』
カライモン『反転に対する耐性を、予め持たれていた…あるいは…まさか、虚獣その物が反物質で構成されて居たと言うのかね?』
俺『いや、そうじゃ無くてだな…虚獣はそもそも、普通の物質構成と違うんだ。そこに存在してるけど、存在するための条件をすっ飛ばしてるって言うか…』
カライモン『無理に説明しようとしなくても良いので、結論だけ言い給え』
俺『まぁ、つまり…反転させようにも元が無いから、無理矢理変換しようとしたんだが…そしたら何故か表面だけ変換出来て、あぁなっちまったんだよ』
カライモン『表面にしか干渉出来なかった。いや…逆を言えば、表面には干渉出来たと言うべき…なのか?』
ユズ「…カライモンさんが二人居るみたいで、チンプンカンプン…ッス。先輩達は言ってる事判るッスか?」
レミ「原因はともかく、何をしようとしてどうなったか…って所までならね」
ハル「私も…レミちゃんと同じくらいの理解度かな」
カライモン「と……雑談に入っている所を悪いが、そろそろ戦闘準備に準備に入ってくれ給え。彼一人では危なくなって来たようだ」
ハル「………え?」
11 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/19(日) 22:45:17.97 ID:qA82S3wZo
●せつじつ
俺「やれやれ…参ったな。俺的には切り札として格好良く切ったつもりだったんだが…こうも裏目に出ちまうか」
皆との、会話を行うその最中にも続く…人型の虚獣との切り結び。
切り札がほぼ不発に終わってしまった、その痛手もさる事ながら…追い打ちとなるのは、そのしっぺ返し。
小規模ながらも、下手に反物質によるダメージを与えてしまったため…当然のように、衝撃に対する耐性を付けられ………
いよいよもって、ディメンションスレイヤー以外でのダメージが見込めない…と言う危機的状況に陥ってしまっている。
だが…そんな追い打ちさえも、まだ本当の危機では無いらしく……それを知らしめるかのように、俺の背後から破滅の足音が近付いて来た。
俺「っ―――!?」
肉体か精神か…はたまたその両方の疲労か……
僅かに鈍った反射神経の隙を突かれ、人型虚獣の刃が俺の二の腕を掠める。
ダメージだけならば、それ程の物では無い。
痛みも殆ど無く、文字通りのかすり傷。
虚獣との戦闘が始まってから、初めて…たった一度だけ受けた攻撃。
そう…たったの一撃掠っただけ………にも関わらず、俺の背筋を正体不明の寒気が走り抜けた。
俺「何だ…何だってんだ?何で俺はこんな攻撃にビビってる?まだほんの一撃…たったの一撃くらっただけで………いや、そうじゃ無い?」
不安を紛らわそうと、改めて口にしたその言葉。だが…逆にその行為が、目を背けて居た事実を目の前に突き付け………
俺「そうだ…俺はまだ一撃も虚獣の攻撃を食らって無かった。どんな攻撃なのか、何が起きるのかも知らないまま……それを受けちまった?」
…………気付いた時には、もう遅かった。
俺「確か………俺は…腕を斬り付けられて………え?な………何だよこれ!?」
思い出したように、腕の具合を確かめようとした時………
そこある筈の、ディメンションスレイヤーを掴んでいた俺の腕は…既に存在していなかった。
12 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/19(日) 22:59:19.57 ID:qA82S3wZo
俺「何だ……一体何が起きた?!」
まるで…全身の毛穴と言う毛穴が開き、その内側から電気を流されたような嫌な刺激が体表を駆け巡る。
腕を失った事自体は大した問題では無い。
いや、大した問題ではあるがんだが…この不可解な現象の前では、それすらも些細な問題になってしまっているだけだ。
そう…問題は腕を失った理由。それを突き止める必要がある訳だが…それよりもまず先にやるべき事がある。
それは何か……そうだ、腕の再生だ。
考えるよりもまず先に行うべきそれを、何故か俺は失念していて……思い出した所で、慌てながらもその手順に入る。
だが………
俺「何でだ…何で再生出来ないんだ!?」
人型虚獣の刃を、後ろに跳んで避けながら…俺は、困惑と共に驚愕の叫び声を上げた。
腕を再生させるだけの質量が足りて居ないのか?
いや…質量はまだまだ余裕がある。例え尽きても、そこから更に限界を超えた質量を生成する事だって出来る。
再生能力の問題で無いのなら…虚獣の攻撃の影響か?
考えたくは無いが、その確率が一番高い…と言うよりも、それ以外の原因は考えられない。
俺は、自分の身体に起きた未知の現象に怯えながら……失われた腕の確認を行う。
痛みは…無い。感覚も無い。当然ながら再生も出来ない。となれば…まず最初に思い付くのは…
俺「再生阻害系の能力…って事か。だったら……あんまりやりたかぁ無いんだが、これしか無ぇか…よぉっ!!」
俺は、失った腕の根元…肩を掴んで、自らの手でそれを勢い良く引き千切り…それを放り投げた後、間髪入れずに再生を開始。
能力を受けたと思われる切断面を排除した上で、改めて根元からの再生を試みたのだが………
俺「嘘…だろ………?何で、どうして再生しねぇんだよ!?」
その再生は、腕を引き千切る前まで残って居た部位……二の腕付近で止まり、その先を再生する事は無かった。
13 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/19(日) 23:16:02.09 ID:qA82S3wZo
●けつらく
俺「……物理的な干渉じゃ無いのか?まさか、ディメンジョンスレイヤーと同じ直接介入か!?」
その言葉を口にした後…何故か、まず最初に思い出したのは……根幹を食らう竜の力。
失った物の記憶その物は消えていない事や、そこに至るまでのプロセス等…相違点は幾つもあるにも関わらず、俺は何故か奇妙な既視感を覚えた。
攻撃を受けて、その部位が消失した…
一体どんな原理で、どんな作用を起こしてこんな結果になったのは判らない。だが……この攻撃が俺にとって致命的な物だと言う事だけは判る。
失ったのが、末端…腕だったから良かった物の、もしこれを頭に受けて居たら………
俺と言う存在…俺と言う人格を司る頭脳を失ってしまったら………
その仮定の末にある物に、思考が辿り着いた瞬間。久しく忘れてしまっていた……死…と言う物の恐怖が俺に襲い掛かって来た。
そして………
俺「――――!?」
そこに生まれてしまった恐怖が、俺を判断を遅らせる枷となり…
足元から現れた刃に気付く事が出来ず、そのままその刃に両足を貫かれてしまった。
二の腕を斬られた時のように、殆ど痛みは無し。
だが、その痛みが薄れ行くと共に…貫かれた両足に向ける意識や、両足の感覚や存在その物が薄れ………
俺「……………」
再び気が付いた時には…俺は、片腕に続き両足を失い……虚獣の背中の上で、うつぶせに倒れて居た。
俺「…ヤバい。今度こそ本気でヤバいだろこれ………!!」
文字通り、手も足も出せない絶体絶命の状態の中……残った全身から嫌な汗が噴き出すのを感じながら、俺は声を絞り出した。
何か手がある筈…そう信じてやまない自分が居るにも関わらず、手も足も出す事が出来ない。
どこからとも無く溢れ出す違和感…そして、その奥底から溢れ出す恐怖。
脚をもがれたバッタの如く、抵抗すら出来ない俺に…次なる魔の手が迫っている事くらい、深く考えなくても判る。
目視する事は適わないが…頭上では、人型の虚獣が刃を構えて……俺に止めを刺すべく、狙いを定めている筈。
―――やられる
そう確信した瞬間………
ハル「大丈夫、させません。貴方は…私が絶対に守ります」
ハルの声が響くと共に…周囲を光の柱が包み込んだ。
14 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/19(日) 23:30:58.58 ID:qA82S3wZo
●てんしん
眼前に広がるのは、虚獣の身体に空いた風穴。
巨体から体積を削り取った証の、その向こう側で………ハルが両手を広げていた。
俺「色んな意味で、無茶してくれるなぁ……んでも、助かったぜ」
ハル「ちょっと手荒な方法になってしまいましたけど…あの場を何とかするためには、仕方が無かったので」
落下する俺の身体を、ハルが抱き留め…そのまま二人で、頭上の虚獣を見上げる。
虚獣は欠損した部位を残った質量で補い…空いた穴が塞がった後の全長は、最初の半分程まで減少。
成果だけを見れば、残りは単純計算で8分の1。かなりの体積を消耗させたと言えなくも無いのだが……
ディメンションスレイヤーで削り取る事が出来た量は、余り多くは無く。実質上は、ユズとハルによる功績が殆ど。
しかも…本来は温存しておくべきだった筈の、ハルの閃光魔法を使ってしまった上でのこの状態。
残り少ない攻撃手段を費やし、止めを刺さなければいけないこの場面にありながらも…
俺は、ディメンションスレイヤーを振るう事が出来ない。
どうしようもない無力感に苛まれる中……俺とハルの隣に、カライモンが現れ…
カライモン「そう考える気持ちも判らないでは無いが…落ち着いて自分の身体を見てみ給え」
その口から、これまた不可解な言葉が飛び出した。
俺「いや…今更こんな惨状を見てどうしろって言うんだよ!こんな状態で、俺にどうしろって………ん?」
カライモンの言葉に苛立ちながら、振り払うように手を伸ばす俺。
だが…その行動を起こした事で、ある事に気付いた。
俺「あれ…?俺、今……手が…」
カライモン「やっと気付いたかね?キミの身体はもう元通りだ。これで何も問題はあるまい?」
そう………どんな手を使ったのかは判らないんだが…虚獣の攻撃により失われた筈の腕と両足は、元に戻っていた。
15 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/20(月) 00:14:07.29 ID:m7uOCMAko
●おうたい
カライモン「しかし驚いたよ。ディメンションスレイヤーであれば、耐性を持たれないと思って居たが…まさか、こんな方法で対応して来るとはね」
俺「…どう言う事だ?何をしたんだ?ってそもそも、俺は何をされたんだ!?」
カライモン「焦る気持ちは判らないでも無いが…説明は一つずつにしてくれ給え。まずは君が何をされたかについてだが……これは比較的単純だ」
俺「いや………何がどう単純なのかを教えてくれよ」
カライモン「虚獣は、ディメンションスレイヤーに対して耐性を付ける事は出来ない。これは判っている事だろう?」
俺「あぁ、そうだ…実際にやって見せた通りな」
カライモン「だから…ディメンションスレイヤーを無効化するために、まず君に適応して対策を打ったらしい」
俺「………は?対策だって?どうやってだ!?」
カライモン「まず…ディメンションスレイヤーの行使は、君の認識を前提に成り立っている。これは判るね?」
俺「あぁ…判ってる」
カライモン「ならば、逆に…君がディメンションスレイヤーを使えない状況だと、自らを誤認したならば……」
俺「はっ………」
カライモン「さぁ、後は言わずとも判るだろう?」
俺「そうか……腕を失ったと思い込まされた事で、ディメンションスレイヤーを封じられて居たって事か!!」
カライモン「その通り。正確に言えば、ディメンションスレイヤーだけでは無く…加速空間に停滞空間………」
俺「………」
カライモン「果ては、再生以外の手段…代替部位の生成に至るまで。思考が回らないよう、干渉されていたようだね」
俺「そうか…そうだよな。言われてみりゃぁ、幾らでも方法はあったんじゃ無ぇかよ!!あ…でも待てよ?」
カライモン「ん?どうしたのだね?」
俺「話は戻るんだが…そんな状態から、俺はどうやって戻る事が出来たんだ?」
16 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/20(月) 00:31:13.92 ID:m7uOCMAko
●いたりて
ユズ「あ、それなら自分にも判るッスよ」
俺「…マジか」
ユズ「神風さんと繋がってたから、助かったんッスよね」
カライモン「その通り。私達は虚獣の干渉を受けていない視点を持ちつつ、キミの認識を把握する事が出来た…後は判るだろう?」
俺「そうか…虚獣に歪められた俺の認識を、正常な認識で上書きしたんだな」
カライモン「そう言う事だよ」
俺「んでも…よくこの方法には対応されなかったな?タネさえ明かしちまえば、結構単純な事だろ?」
カライモン「その疑問に対する答えも、比較的単純明快だ。思い出してみ給え…虚獣の能力に関しては、神風くんでも知らなかった。ならば逆に………」
俺「神風と…あぁ、そうか。神風が虚獣の能力の詳細を知る事が出来ないのと同様に、虚獣もまた神風の能力の詳細を知る事が出来なかった…って事だな」
カライモン「そう…だからこうして窮地を脱する事が出来た訳だ。もし個別に戦っていたのならば、互いの異変に気付く事も出来ず…確実に敗北して居ただろうね」
俺「よし……仕組みさえ判っちまえば、こっちの物だ。残りの質量も全部削り切ってやるぜ!」
と…対抗手段があると判った途端に、調子を取り戻す俺。
カライモン「とは言え…虚獣の攻撃に対しては、充分に気を付け給えよ?先に君も心配した通り。頭にあれを受けるのはさすがに不味い」
俺「大丈夫だ。さすがにそれは判ってる」
勝利までの道筋を見出し、後はそこを駆け抜けるだけ……だった筈なんだが………
レミ「本当…アンタって現金―――…えっ?」
そんな俺達の会話の隙を突き…虚獣が、身体の真下に杭のような物を形成。更にはそれを物凄い勢いで射出して、俺とハルのすぐ近くを横切り…
今の今まで蚊帳の外だった、レミへと向けて突き進んでいた。
俺「――――っ!!」
………正に一瞬だった。
レミへと向かう杭の存在に気付いた俺は、瞬時に加速空間を形成。そのままレミの頭上に立ちはだかり、振り向きざまに杭を切り払おうと試みた。
だが…予想以上に加速が付いていた杭は、俺の刃が届くよりも早く………
俺の眉間を刺し貫いた。
17 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/20(月) 00:45:58.61 ID:m7uOCMAko
●うしない
レミ「なっ―――――」
ハル「―――っ!!」
カライモン「しまっ………」
ユズ「嘘…ッスよね………?」
維持しきれなくなった加速空間がかき消え、皆が驚愕の表情を浮かべる。
しくじった……ついさっき注意されたばかりだと言うのに、頭に虚獣の攻撃を受けてしまった。
杭自体は辛うじて脳を逸れてくれたが…俺と言う存在が消えてしまうのは時間の問題だろう。
失う部位が手足ならば、まだ認識の上書きで取り戻す事が出来る。だが……頭を失ってしまったら、そうはいかない。
俺自身…脳が俺を認識する事が出来なくなってしまったら、上書き以前に俺が俺と言う人格を確立出来なくなる。
つまりは………絶対的な死だ。
手足に攻撃を受けた時の事を顧みれば…完全に認識出来なるまでに、僅かな時間はあるが……
それまでの時間で、虚獣を倒せる見込みは無し。例え倒せたとしても、そこで攻撃の効果が消える保証も無し。
刻一刻と、存在の消滅が迫る中…同時に、俺が考え付く筈だった手段も認識から消されて居る筈。
万策尽きたとは、正にこの事だ。
何の手も打てないまま…打つ事すら許されないまま、俺と言う存在が消滅へと向かう最中………
『―――――』
『―――――――――』
声が…聞こえた気がした。
そして俺は、その声に促されるまま……一万と一つ目の策、ディメンションスレイヤーを形成して…
自分の頭に突き刺した。
18 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/20(月) 01:07:59.51 ID:m7uOCMAko
●こうちく
レミ「えっ………ちょっ…な、何やってんの!?」
ハル「成程…その手がありましたか」
ユズ「その手って何なんッスか!?」
カライモン「毎度の事ながら……よくもまぁ、こんな荒業を実行に移す気になる物だね…」
俺「仕方無ぇだろ…これ以外の方法が無かったんだからよぉ」
辛うじて…本当にギリギリの所で踏み止まり、俺は自身の存在を保つ事が出来た。
ユズ「だから、一体何をどうして助かったんッスか!?」
カライモン「ディメンションスレイヤーで書き換えたのだよ。自分自身の頭を…攻撃を食らっていない状態にね」
レミ「それって……え?つまり…自分で自分を…………あ、ゴメン。今の無し!!」
俺「あー…その辺りは自分でも判っててやった事だから気にすんな。ってーかむしろ問題なのは…これで大分消耗しちまった事の方なんだが…」
カライモン「その消耗を見越した上での攻撃…だったのかも知れないね。どちらにせよ、これ以上ディメンションスレイヤーを用いる事は出来なそうだ」
俺「面目無ぇ…」
ハル「だったら、後は私が。ライトブリンガーの火力なら、残りも倒し切れると思います」
カライモン「そうだね、それも一つの方法ではあるが…止めを刺し切れず、耐性だけ付けられた時の事を考えると…」
ハル「まだ温存しておくべき…ですか?でも、現状をどうにかしなければその先もありませんよ」
カライモン「まぁ、目の前の虚獣に関しては…奥の手が無い訳でも無い」
俺「って…だったら俺一人に戦わせてないで、勿体ぶらずにそれを使ってくれよ!」
カライモン「そうだな。キミがこんなにも早く戦闘不能になるとは思って居なかった…君一人で何とか出来ると思った私の判断ミスだ」
俺「ぐっ………」
19 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/20(月) 01:18:05.68 ID:m7uOCMAko
●おくのて
カライモン「…と言う訳で、奥の手を使ってさっさと決着をつけてしまいたい所なのだが……少々問題がある」
ユズ「問題って、どんな事ッスか?」
カライモン「これ…奥の手を発動させるためには準備が必要で。あと3分ほど時間を稼ぐ必要がある訳なんだが…」
レミ「あ………何か読めて来たかも」
カライモン「その間、私は無防備になってしまうため…虚獣からの攻撃を凌いで貰いたい」
俺「あぁ…やっぱそう言う展開か。って…攻撃を凌ぐために魔法を使うんなら、結局耐性を付けられちまうんじゃないか?」
ハル「そうですよね。だったら最初から私が……」
カライモン「まぁ、そう急いて事を仕損じる事も無い。彼なら出来る筈だ」
ハル「彼って………え、もしかして…」
カライモン「そう、全て彼にやって貰う。ディメンションスレイヤー無しで…ね」
俺「無茶言ってくれるなぁぁぁ!?」
カライモン「攻撃ならともかく、防御だけならばどうにかなるだろう?……と言って居る間にも、早速第一波が来たようだ。後は任せたよ?」
俺「って、そんな一方的に………あぁ、くそ!良いじゃねぇか!やってやるよ!どうなっても知らねぇかなら!?」
………と、勢いで引き受けてはしまった物の…俺の余力では、足止めする事さえ至難の業。
しかも、その手段は限られ…下手な事をすれば耐性を付けられてしまう縛りプレイ状態。
無理をすればディメンションスレイヤーを形成出来るのでは無いか、と試してみるも…やはり無理。
残された力で出来る事と言えば、ダークチェイサーの形成……だが、大した成果も望めないような状態では耐性の付けられ損。
しかし…俺はダークチェイサーの形成とディメンションスレイヤー以外の攻撃手段は持ち合わせて居ない。
そうして悩んでいる間に、虚獣から伸びた鞭のような刃が襲い掛かり……目前まで迫った所で………
俺「そうか…そう言う事かよ!」
攻撃ならともかく、防御だけならば―――……その言葉の意味を理解して、俺は行動に移した。
20 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/20(月) 01:36:33.84 ID:m7uOCMAko
●あしどめ
レミ「そっか!何も迎撃しなくたって、攻撃を防げさえすれば良いのよね」
すぐ目の前…停滞空間により極端に減速した、その刃を見据えながら……レミが声を上げる。
カライモン「うむ、そう言う事だ。ディメンションスレイヤーを展開する事は出来なくても、停滞空間を形成するだけの力は残っていた筈だからね」
魔法陣を展開するカライモンに対し、虚獣がもう一本鞭を形成して攻撃を行う……が、それも停滞空間により阻止。
攻め続ける事も引き抜く事も出来ないまま…鞭がアンカーとなって、虚獣の身体をその場に縛り付ける。
ユズ「でも…停滞空間に耐性を持たれたりとかは…しないんッスか?」
カライモン「100%無いとは言い切れないが…その可能性は極めて低いね」
ユズ「どうしてッスか?」
カライモン「停滞空間は、特定範囲内の時間…運動速度に干渉する空間だ。もしこれに耐性を持つと言うのならば、単純に今よりも加速する必要がある訳だが…」
俺「そんな事まで出来るってんなら、もっと前の段階で俺達の攻撃速度や防御に耐性を付けて加速してる筈…って事だ」
ユズ「成程…そう言う事だったんッスね」
カライモン「…と、おしゃべりをしている間に準備は完了だ。さぁ…そろそろこの戦いに決着をつけようでは無いか!」
ユズぶ一連の解説をした所で…ついに発動する、カライモンの奥の手。
皆が見守る中、黒い立体魔法陣が虚獣の身体を包み込み…それが中央に向けて収縮を行い―――
俺「って!オイッ!!地球上で何無茶苦茶な物を発生してくれちまってんだよ!?」
中央に発生した真っ黒な球体……光さえ飲み込む絶対的な重力の塊が、虚獣の身体を飲み込み始めた。
カライモン「いや…下手したら地球丸ごと滅ぼしかねない量の爆発物を精製しようとした君が、どの口でそれを言うのかね」
俺「ぐっ………」
カライモン「それに…君とは違って、その辺りの対策も込みでの発動だから心配は無用だよ。むしろ、そのために3分近い時間を要したのだからね」
俺「あぁ、そうか…ピンポイントで虚獣だけを吸い込めてんのは、そう言う事か」
カライモン「そう言う事だよ。まぁそのせいか威力も制限され、未だに吸い込みきれては居ないが……それでも尚、耐性は間に合うまい」
21 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/20(月) 01:41:13.66 ID:m7uOCMAko
真っ黒な球体にその大半を飲み込まれ、今正にその全身を消失しようとしている……虚獣。
もがき苦しみ、暴れながら脱出を試みるが…それも無駄な足掻きに終わり、後は僅かな頭部を残すのみ。
………やっとの事で戦いが終わる。
攻撃方法を使い捨てにされるという、理不尽な条件の上でのギリギリの消耗戦。
そこに終止符が打たれる事になり…皆が皆、安堵する中……ほんの一瞬、瞬きしている間に…
僅かに残った虚獣の頭部は真っ黒な球体に飲み込まれて居た。
いや………違う。
俺「なっ――――!?」
瞬きしたほんの一瞬の間に、俺達の頭上へと現れた………虚獣の頭部。
俺達全員を包み込む程に大きく広げた嘴が、勢い良く左右から迫る。
俺『どうやってあの状態から脱出を……そうか!神風と同じ瞬間移動か!?』
ユズ『でも、瞬間移動が出来るなら何で今まで使って来なかったんッスか!?』
カライモン『結果論だが…至って単純な質量の問題だったのだろう。恐らく…だがね』
ユズ『えっ……』
カライモン『これも憶測だが、質量が多いほど時間がかかると言った所だろう。それも、一部分を切り離しての転送は出来無い…と言った所なのだろうが……」
俺『皮肉にも…あの真っ黒な球体のせいでその条件を満たしてしまったって事なんだろうな』
ハル『それは判りましたが…この状況は………』
俺『かなり不味い…な。加速空間にしろ停滞空間にしろ、残ってる力じゃ展開出来ない。ハルの方は………』
ハル『停滞空間を展開するにしてもライトブリンガーにならなければ…今のままでは全体を捉えるのは無理です。嘴の先を一瞬止める程度が関の山です』
俺『………だよなぁ…』
………万事休す。
先に話した通り…せめてもの足掻きとしてハルが停滞空間を形成し、嘴を止めるも大きな成果は無し。
再び動き出した頭部が、俺達をその嘴で噛み砕こうと迫り……俺の腕に食い込んだ瞬間―――――
22 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/20(月) 02:01:43.56 ID:m7uOCMAko
●ぶんかつ
俺の腕を噛み砕く筈だった嘴が、バラバラに砕け散った。いや、砕け散ったと言うよりは………
レミ「ふぅ………ギリギリセーフ」
微塵切りに切り刻まれた、虚獣の頭部………そして、その向こう側から覗く、黒い線。
俺「………マジで危ない所だった。よくあんな一瞬であれを展開出来たな」
レミ「んー…まぁ、準備だけは一応しといたからね。ハルが作ってくれた一瞬で何とかなったわ」
俺「そっか…本当、お前はそう言う所はちゃっかりしてるよな。ってか…手があるんなら言ってくれよ。寿命が縮んだぞ?」
レミ「ゴメンゴメン。発動に集中して伝える余裕も無かったのよ」
カライモン「そう言う事ならば仕方が無いだろう。すまないね…私の詰めが甘かったばかりに迷惑をかけた」
レミ「謝らないで良いわよ。仲間なんだから、フォローし合ってこそでしょ?」
カライモン「あぁ、その通りだな。では、今度は私からのフォローでこの借りを返させて貰おう」
俺「で…またフォローされる側に回るフラグだよな、それは」
カライモン「フォローされる事に慣れた人間の経験則だね。肝に銘じておこう」
俺「いや、慣れるほどされて無ぇよ!どっちかって言うと、してる方が多いよな!?」
ハル「………えっ」
ユズ「えっ」
レミ「えー……っ」
俺「って、何だその反応!?俺、思いあがってた!?俺の思い込み!?」
カライモン「…と言う訳で、何とか一体目の虚獣を倒す事は出来た訳だが…」
俺「いや、サラっと流すなよ!?………って…あぁ、そうだよな…そう言やぁ言ってたよな、あれでまだ小さい虚獣だって」
ユズ「あ、そうなんッスよね。そもそも攻撃方法を限定してたのも次に備えてた訳なんッスから……」
神風「はい。既に次の虚獣が顕現を開始しています」
俺「開始している…か。んじゃぁ、今回みたいに顕現しきる前に…先手を打ったりとか出来ないか?」
神風「準備…と言う意味でなら可能ですが、顕現し切るまで虚獣本体への干渉は出来ません」
レミ「えっと…どうして出来ないの?ディメンションスレイヤーとかで無理に干渉しようとしたらどうなるの?」
神風「顕現し切るまでは世界と繋がった状態なので…最悪、世界その物が崩壊します」
レミ「んげ……さすがにそれは不味いわね」
カライモン「では、迎え撃つための準備だけは行うとして…次の虚獣が顕現する時間と場所、それと…規模は判るのかね?」
神風「まず…顕現までの猶予は、3日間」
ハル「3日間…ですか。時間の余裕はありそうですが……問題は、その先ですよね?場所と規模は…」
神風「場所は………ミラの方向に約326億km進んだ宙域で、規模は………全長…15000km程になると推測します」
俺「………………えっ?」
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/20(月) 06:46:39.07 ID:dGYSCKLDO
乙、お帰りー
24 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/21(火) 00:32:40.85 ID:sb64dYF/o
●げんじつ
ユズ「ミラって何ッスか?」
カライモン「この場合…くじら座のミラの事だろうね。人類が最初に発見した変光星で―――」
俺「って、いやいやいやいや!!聞く所そこか!?もっと突っ込み所はあるよなぁ!?」
レミ「そうよね…文字通り天文学的な距離を、どうやって移動するのか…まずはその手段よね」
カライモン「それならば、エディーの扉を使えば問題は無いだろう。一旦あちらの世界を経由して、転送座標をずらしてこちらの世界に戻って来れば良い」
ハル「…あと、宇宙空間での戦闘や……生命維持の手段も用意しなければいけませんよね」
カライモン「その点も…私に考えがあるので任せて欲しい。2日もあれば問題無く準備出来るだろう」
とある一つの事を除けば…不自然なまでにトントン拍子で進む、次なる虚獣への対策会議。
だが……
ディーティー「いや………着々と準備を進めている所を悪いんだけど、一つ良いかい?」
その腰を折るように、ディーティーが会話に割って入る。
カライモン「何だね?」
ディーティー「誰も突っ込まずにスルーしてるみたいだから、あえて言うけど…」
レミ「だから何なの?」
ディーティー「敵の規模の事…幾ら何でも無茶が過ぎるんじゃ無いかい?地球よりも大きな虚獣を、どうやって相手にするのさ?」
正確には、俺はその点も含めてさっき突っ込んだがんだが……ディーティーは、改めてそこをピンポイントで言及した。
避けては通れない…だが、まかり通る事も適わない大きな壁。
先ほどまでの弾んだ会話はどこかに消え去り…皆、揃って沈黙する。
だが、そんな中…ハルが口を開き……
ハル「どうにもならなかったら…それで諦めるの?」
ディーティー「……………」
その小さな口から飛び出した、正し過ぎる程の正論を前に…今度はディーティーが言葉を失った。
25 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/21(火) 01:00:22.82 ID:sb64dYF/o
そして再び…その場に居た全員が沈黙に呑まれる中…今度は俺が口を開く。
俺「そうだよな……本当は皆も判ってるんだよな。勝ち目があるような戦いじゃぁ…無いって事を」
ユズ「………………」
皆、見て見ぬ振りをしていた訳じゃ無い…
俺「何だよ惑星サイズの敵って…パワーインフレにも程があるじゃねぇか、無茶苦茶な相手じゃねぇかよ」
レミ「………………」
絶望的な状況だからこそ、そこに希望を見出すべく前に進もうとしていた。
俺「どう考えたって勝ち目なんか無ぇ………力も手段も尽きて、負けるのが目に見えてるような戦いだよなぁ?」
カライモン「…………………」
だが、多分……それも限界だったんだろう。ギリギリまで張り詰めた虚勢が、現実と言う名の重圧を受けて押し潰されてしまった。
ディーティーの言葉は…原因では無く、ただの切っ掛けに過ぎなかったんだろう。
だが…俺もまた、ディーティーと同じ事を言おうとしていた。
一歩間違えば、俺がその切っ掛けになってしまっていたかも知れない。
俺「んでも…………」
ハル「…………」
だからこそ……俺は、こう言わなければいけない。
26 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/21(火) 01:01:15.92 ID:sb64dYF/o
「「「「「「「「「「それがどうした!!」」」」」」」」」」」
俺は声を張り上げ、声高らかに叫んだ。
だが…紡がれたその言葉は俺一人の声では無く………
俺「んだよ…ここは俺がキメる所だろ?」
レミ「そうは問屋が卸さないってね。一人だけ格好付けようったってそうは行かないわよ」
カライモン「第一、前置きがあからさま過ぎるのだよ。あんなテレフォンパンチでは、カウンターを打ってくれと言うような物だろう?」
俺「ぐぬっ……ってーかディーティー!何お前までちゃっかり入ってんだよ!?お前はついさっきまで否定派だったろーが!!」
ディーティー「それはそれ、これはこれさ。それに…僕だけで無くハルだって、ちゃっかり一緒になって叫んでたよね。他の皆に至っても…ねぇ?」
ハル「私は…えっと。元々貴方と同じ意見ですし、それに……貴方と一緒に言いたかったので」
俺「ぬ………ならよし!で、他の皆はどうだってんだ!?」
ユズ「うわっ、エコヒイキがパないッスよ!?自分は…その、何か皆が言いそうな雰囲気だったみたいなんで………」
DT「ユズに同じく、だね」
エディー「わたくしめも、この度は空気を読ませて頂きまして…はい」
神風「私は…ここは皆で声を合わせて団結するのが最善かと思ったので」
アラク「よくわ…ヨクワカラナイガ アワセテミタ」
俺「お前ら………途中から何となくな理由ばっかじゃねぇかよ。本当ならこっから続けるセリフもあったっての台無しじゃねぇかよ!!」
カライモン「良いでは無いか。男は細かい事を気にするものでは無いぞ?」
俺「細かくねぇよ!ったく…………んでも、まぁ………」
ハル「何ですか?」
俺「俺一人で叫ぶより…大きな声にはなったよな」
レミ「…………何よそれ。他に言いようがあるんじゃないの?」
俺「るせぇ。良い感じに格好良い言葉が出て来なかったんだよ!」
皆の声で、固く強く紡がれた言葉。その言葉に…俺は、皆の強い絆と……その絆が生み出す可能性を見た気がした。
27 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/21(火) 01:12:09.81 ID:sb64dYF/o
○わんでい
マイ「―――と言う訳で…今回の件に関しては、引き続き我々の管轄…と言う事になるのだね?」
朱桜「そう言う事なの」
マイ「では、そうならそうで…色々と情報を開示して欲しい所なのだが………」
朱桜「……………」
マイ「朱桜ちゃんの方からそれを行わなかった時点で、お察し…と言う所か」
朱桜「その通りなの」
マイ「では一つだけ…最終ラインの確認をさせて貰いたいのだが…」
朱桜「この世界の崩壊…それが最終ラインなの」
マイ「それはまた、随分とギリギリな所だね。崩壊よりも前に手を貸して貰う事は出来ないのかね?」
朱桜「私達が強制介入する事も、出来ない訳では無いけれど………」
マイ「けれど?」
朱桜「私達が介入して終わらせた場合…貴方達にとっては、最悪の結末になる事が確定しているの」
マイ「最悪の結末…ねぇ………しかし、その内容を聞いた所で教えてはくれないのだろう?」
朱桜「その通りなの」
マイ「…だろうね」
マイ「しかし………世界を滅ぼす存在…終焉を齎す者が誕生する日…それ故の、災厄の日(バースデー)…か」
28 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/21(火) 01:26:51.17 ID:sb64dYF/o
●ひとつめ
――――――夢を見た。
俺の知らない場所………
俺の知らない時間………
俺の知らない人物………
床下に地球が広がる、宇宙船のような建造物の中で……これまた判りやすい休眠カプセルの中で眠る女性が一人。
長い金髪を後ろで括り、白い衣服を纏った色白の…白い鳥のような翼を背中から生やした女性。
その女性が目覚めると共に、新たに別の女性がその部屋へと現れた。
新たに現れた女性は、足元まで黒髪を真っすぐに下ろした褐色肌の…蝙蝠のような黒い翼を生やした女性。
金髪の女性は重たそうに瞼を上げた後、そのエメラルド色の瞳で黒髪の女性を見据えた。
金髪の女性「毎度の事ながら、あまり実感は無いのだが…800日ぶり…と、言っておくべきか?」
黒髪の女性「いえ……今回は381日ぶりです」
金髪の女性「381日か。予定よりも大分早いようだが…まさか、解決策が見つかったのか?」
黒髪の女性「そうでは…ありません。むしろ………」
金髪の女性「真逆………ウロボロスの浸食がまた拡がった……と言う事か」
黒髪の女性「……はい。貴方が眠っている間…ウロボロスは、生物のみならず、ありとあらゆる有機体に感染し…遂には無機物にさえその猛威を振るい始めました」
金髪の女性「だが、それは地上の話であろう?事態は未だ想定内にある筈。いや…まさか」
黒髪の女性「はい……ウロボロスは、既にセントラルに達し…最早、ここに至るのも時間の問題とでしょう」
絶句する金髪の女性…黒髪の女性からも、それ以上続く言葉は無し。
沈黙のみが漂う中……不意に壁面の一部が変色し、またも新たな人物の姿がそこに映し出された。
壁面に映し出されたのは、銀髪を首の後ろで縛った黄色人種系の肌の女性。
そして…他の二人の様子から見ても、銀髪の女性が顔見知りであろう事は伺えた。
黒髪の女性「その髪……そんな…まさか貴方まで…」
銀髪の女性「そのまさか、さ。いやぁ…完全に油断していたよ。宇宙空間を超えて感染するとは、さすがに予想出来なかったね」
金髪の女性「笑い事では無いであろう!そのままでは汝も…!」
銀髪の女性「皆まで言わなくても判ってるさ。ここまで追い込まれた以上、残された時間でどうにかしなければいけない事も…ね」
金髪の女性「くっ………では、可能な限りの情報を送ってくれ。ウロボロスを駆逐…いや、せめて抑制だけでも……っ」
黒髪の女性「私も…何か出来る事はありませんか?」
銀髪の女性「残念ながら…ここまで来てしまったら、キミの分野ではどうにもならないだろうね。キミは今まで通り、残りの生物の生存を最優先で進めておくれよ」
黒髪の女性「…………判りました」
銀髪の女性「そんなに落ち込まないでおくれよ。ボクはボクなりに手を打ってあるから…ね」
と…最後に、銀髪の女性が笑顔で告げた所で………俺の視界は暗転した。
29 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/21(火) 01:58:23.44 ID:sb64dYF/o
●ふたつめ
全てを事細かく伝えていると、時間が幾らあっても足りない…ので、途中をザックリと省略させて貰う。
あれから…具体的な状況は判らないが、銀髪の女性はウロボロスにより死亡。
コンピューターみたいな物に、予め人格をコピーしていたらしく…二次元の存在になりながらも、他の二人と共に研究を進めている。
しかし、3人とも肝心の成果は上がらないまま………次なる悲劇に見舞われる事になった。
黒髪の女性「……………」
金髪の女性「……………」
銀髪の女性「まさか…キミまでもがウロボロスに感染してしまうとはね」
黒髪の女性……その髪の根元が銀色に変色。ウロボロスの初期症状が現れてしまった。
金髪の女性「っ……セントラルの住人達はどうなっている!?」
銀髪の女性「上層の住人にも、感染者が数人…中層では既に7割が発症して………」
銀髪の女性は、その先を告げる事無く言い淀み…
金髪の女性「…………………」
金髪の女性もまた、その先を察したのか…押し黙る。
銀髪の女性「それともう一つ、悪い知らせなのだけど……ボクも、もうそろそろ限界が近いらしい」
金髪の女性「なん………だと…っ!?」
銀髪の女性「今のボクを形成している、このハードその物が…ウロボロスに感染してしまったらしいんだ」
黒髪の女性「でしたら、他のハードを………はっ…まさか………」
銀髪の女性「そう…既に他のハードもウロボロスに感染している。代用品はもう無いんだ」
金髪の女性「おのれ、ウロボロスめ!!くっ……所詮は我々の足掻きなど無駄でしか無いのか!何をしても無駄だと言うのか!?殺せ!いっそ一思いに殺せ!!」
絶望と怒りに打ち震える、金髪の女性。
机の上の機材を薙ぎ払い、壁を殴り付け……それでもまだ抑えきれない感情に、息を荒げ……
その瞳が、黒髪の女性に向いた所で、一旦動きが止まった。
30 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/21(火) 01:59:20.82 ID:sb64dYF/o
黒髪の女性「駄目です…諦めてはいけません。私達は、セントラルの住人のためにも…いえ、例え最後の一人になったとしても…ウロボロスに屈してはいけないのです」
金髪の女性「判っている……頭では判っているのだ!!だが………一体どうすれば良い?!どうすればウロボロスを止められると言うのだ!?」
黒髪の女性「判りません。でも、だからこそ…挫けそうな時だからこそ、諦めてはいけません。こんな時こそ、あの魔法の言葉を思い出しましょう?」
金髪の女性「魔法の………あぁ、そうだな…そう言えば久しく口にして居なかったな」
黒髪の女性「では…今一度、皆で言ってみましょうか?」
銀髪の女性「そうだね。じゃぁ………」
「「「―――――――」」」
黒髪の女性「…………さて、それでは心機一転して打開策を編み出しましょうか」
金髪の女性「うむ…しかし、結局はそこに行き付いてしまう訳だな」
銀髪の女性「そうだね…幾ら前向きに考えても、具体策を練らない限りはどうしようも………いや、待てよ?」
金髪の女性「どうした?何か閃いたか?」
銀髪の女性「うん……ウロボロスを止める……その前提こそが間違って居たのかも」
黒髪の女性「………え?」
銀髪の女性「そうだ…そうだよ!!これなら…これなら、もしかしたらどうにかなるかも知れない!!」
そして………銀髪の女性がそう叫んだ所で、俺は夢から覚め………
俺「……………」
目覚めと共に、大きなため息を零した。
31 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/21(火) 21:40:21.80 ID:sb64dYF/o
●さくせん
カライモン「さて………それでは全員揃った所で、今回の作戦を説明させて貰う」
カライモンの地下秘密基地に集まり…対虚獣戦の、作戦説明に耳を傾ける俺達一同。
敵の規模もさる事ながら、その舞台においても俺達が経験した事の無い未知の領域。
ほんの僅かなミスが全滅に繋がりかねない以上、僅かな情報も聞き漏らす事は出来ず…皆が皆、真剣に聞き入っている。
アラク「…………クー…スピー………」
……ただし、アラクを除く。
カライモン「まず…私やハルくん、並びにその契約者達に至っては…防壁を展開する事により、宇宙空間での活動が可能な事が判っている」
ハル「私とカライモンさんの二人で…この二日間で検証しました」
ユズ「あ…防壁は張れるとしても、空気はどうするんッスか!?息が出来なかったら死んでしまうッスよ!?」
カライモン「それに関しても問題は無い。ゲートを開いたままにしておいて、そこから空気を供給すれば良いだけの話なのでな」
レミ「ぁー…そんな使い方も出来るのね。でも、アタシ達はどうすれば良いの?防壁なんて作れないわよ?」
カライモン「レミ君や彼に至っては、問題…と言う以前に、必要無いと言っておこう」
ユズ「え?どう言う事ッスか!?」
俺「露出している頭部さえダークチェイサーで覆ってしまえば、宇宙服替わりに出来る…って所か?んでも、実験も無しにそんな事…」
カライモン「出来る…と断言出来るだけの実績を残して居るだろう?逆に聞くが、出来ないと思うような要素があるのかね?」
俺「ぁー…うん、確かにやろうと思えば出来るだろうなぁ………」
レミ「酸素にしたって…この子達の中で合成出来るって言ってるから、問題は無さそうね」
俺「んでも…どっちの方法にしろ、ただ宇宙空間に居るだけじゃなくて、惑星サイズの敵との戦闘しながらなんだよなぁ?力が尽きた瞬間、文字通り力尽きちまうぞ?」
カライモン「なぁに、その点に関しても問題は無い。今回の戦闘では、魔力の供給手段もちゃぁんと確保してあるのだよ」
俺「供給って言っても…半端な量じゃ雀の涙だよなぁ。どんな手段なんだ?」
カライモン「実はだね…宇宙空間その物を魔力に変換する術式を作り出す事に成功したのだよ。この術式を皆に付与する事で、魔力不足を解決出来るだろう」
俺「…………はぁっ?!」
32 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/21(火) 21:52:48.13 ID:sb64dYF/o
ユズ「え?宇宙空間って何にも無いんッスよね?どう言う事ッスか??」
レミ「えっと…まず、宇宙空間って何も無いみたいだけど…実は知覚や解明されて無い未知の物質が存在してるのよ」
俺「んでまぁ…中には、実質上の質量を持たない粒子なんかもあったりするんだが…」
カライモン「当然、その双方に対応している」
俺「だよなー………」
ユズ「………え?え?え?」
俺「まぁ何だ…あれだよ、みかんゼリーのゼリーの部分。あの透明な部分を食べるみたいに、宇宙を取り込む物と思ってくれりゃぁ良い」
ユズ「あー…それなら何となく判るような感じがするッスね。と言うか、そんな物を作ってしまうなんて、やっぱりカライモンさんは凄いッス!!」
カライモン「ふふふ…もっと褒めてくれ給え」
俺「…とまぁ、子芝居はここまでとして…だ。供給元は無尽蔵でも、供給速度が間に合わなくなる場合もあるだろ?その時はどうする?」
ハル「そうですよね……魔力が尽きたら、宇宙空間で生身と同じになる訳ですが……」
カライモン「その場合は…魔力が一定値以下になると同時に、ゲートが展開して強制離脱するようになっている。なぁに、ぬかりは無いよ」
俺「成程…な。んで、改めて回復してからすぐ戦線に復帰すれば良い…って訳か」
カライモン「いや、それは難しい。一度離脱したら、すぐには戻って来れないと考えてくれ給え」
俺「………は?」
カライモン「まず単純に…魔力が空っぽの状態で、再びゲートを開く事は出来ない。ゲート分の魔力が回復しても、戻った所で満身創痍では意味が無いだろう?」
俺「お、おう……」
カライモン「それに…強制離脱の場合、座標の把握と計算を省いて力技で置き換え転送をするのでね。戻るための再計算にも時間がかかってしまうのだよ」
俺「あぁ……そう言う事か」
カライモン「…と言う訳で、説明は以上だ。他に何か質問はあるかね?」
俺「あー…っと、作戦とか…具体的な戦闘方法とかは無いのか?」
カライモン「臨機応変だ」
レミ「行き当たりばったりの、出たとこ勝負…って事ね」
カライモン「敵の情報が少ない以上、そうとしか言いようが無いだろう?」
俺「まぁ…そりゃぁそうか………」
カライモン「さて…では、準備が出来た所で出発だ。逃げ帰るならば今の内だぞ?」
俺「はっ………冗談ぬかせ!」
カライモン「宜しい、では行こう」
カライモンの号令と共に、俺達の足元に現れる魔法陣。
その魔法陣がエディの扉…ゲートと同様に、俺達を虚獣の下へと転送した。
ただし…ユズとDTは除く。
33 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/21(火) 22:13:21.99 ID:sb64dYF/o
●おきざり
ユズ『………って、何で自分だけ置いてきぼりになってるんッスか!?カライモンさん、転送忘れてるッスよ!?』
DT『まぁ、正確には僕も置いてかれてる訳だけど…この状況を見る限りでは、作為的な物を感じざるを得ないね』
カライモン『……すまない。言い難い事なので、事前に伝えなかったが…君達は戦力外なのだよ』
ユズ『………………え?』
カライモン『無尽蔵の供給源があろうとも…魔力の最大値には限界が存在する。それは判るね?』
ユズ『…………はいッス』
カライモン『正直な所…ユズ君のそれでは、今回の虚獣の攻撃に耐えられるとは到底思えない。故に今回は残って貰ったのだよ』
ユズ『……………』
カライモン『厳しい言い方だが…それが現実だ。納得してくれとは言わないが、堪えて欲しい』
ユズ『………ははっ…大丈夫ッス。自分、そう言うのは慣れてるッスから』
カライモン『……………』
ユズ『って言うか、自分が勝手に勘違いしちゃっただけなんッスよね。センパイ達と肩を並べて、一緒に最前線で戦える………って』
カライモン『………』
ユズ『それに…よくよく考えてみたら、本拠地をノーガードにするって言うのもマズいッスからね!ここは自分に任せて、心置きなく頑張って来て欲しいッス!』
カライモン『…………すまない。感謝する』
カライモンとユズの会話の中………俺達は何も語らず…一言も口を挟まないまま、その終わりを待ち……
二人の会話が締め括られた後、改めて現状の確認に入る事となった。
34 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/21(火) 22:26:05.06 ID:sb64dYF/o
俺『術式は…転送の時に付与されてるみたいだな。皆、防壁は展開出来てるか?』
ハル『はい、問題ありません』
カライモン『当然ながら、私の方も既に展開済だ』
ハルとカライモン、そして二人の契約者であるディーティーとエディーは、既に各々が展開した防壁の中。
レミ『アタシの方も何とか…ちょっと慣れないから変な感じがするけど、大丈夫』
レミは…目を覆うように展開したヘッドギアと、口元や髪を覆う透明な被膜により頭部を密閉。
俺に至っては…頭蓋を除く全身をダークチャイサー化する事で、宇宙空間という非常識な環境に適応していた。
俺『んでもって………あれが、これから俺達が戦う敵…次の虚獣って訳だよな』
俺達が視線を向けた先……と言うよりも、少し視線をずらせば否が応でも視界に入る、巨大な物体。
まだうっすらと透明みを帯びている、惑星サイズの………白い鯨のような虚獣。
改めて目の当たりにする、規格外の敵を前に…俺達は皆、固唾を呑んだ。
神風『はい…間違いありません』
アラク「…………………………」
存在その物が超常故か…防壁を展開する事も無く普段通りにそこに存在する、神風とアラク。
ただ、アラクの発した言葉は音にはならず……傍から見ている限りでは、口をパクパクと動かしているようにしか見えなかった。
俺『えっと…アラクも一緒に契約の輪の中に入れてやれないのか?このままだと色々不便じゃないか?』
神風『そうしたいのは、山々なのですが…何分、彼女は狭間に巣食う蜘蛛なので。同調すると情報処理に支障が出てしうまう恐れがあるのです』
俺『あー………そーいう事か』
カライモン『それに…意思の疎通に関しては、特に問題は無い』
俺『何でだ?』
カライモン『私が読唇術と声帯の振動で内容を把握し、それを皆に伝達すれば済む事だからだ。そして何より…』
俺『何より?』
カライモン『アラクは…「自分の出番があるまで、狭間で待っている」…と言って居るからだ』
俺『あぁ…………うん、そう言う事な』
………と言った感じで、決戦前の確認は完了。
そこから更に、俺が中二病モード末期フォームに変身してディメンションスレイヤーを形成したり…
ハルがライトブリンガー化したりと言った感じで、準備も整った所で…………
虚獣「―――――――――――!!!!」
体の芯まで響くような雄叫びと共に、虚獣が顕現を完了し………決戦が始まった。
35 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/21(火) 22:41:45.79 ID:sb64dYF/o
●ぶつかり
レミ『………って、え?何で宇宙空間なのに聞こえるの!?』
俺『しかも……鼓膜じゃなくて、骨伝導で直接響いてるな。ハル達にも聞こえてるのか?』
ハル『はい、私達にも聞こえています』
カライモン『これは恐らく…我々が魔力供給のため周囲の空間を取り込む際に、その内部に蓄積した振動を知覚しているのだろう』
俺『んな事、虚獣とどんだけ距離が………いや、やっぱ良い』
カライモン『…同意だ、下手な事を考えれば心が折れる。今後も極力スルーして戦う方が、気が楽になるだろうな』
神風『と…お話の途中ですみませんが………来ます。虚獣の攻撃です、避けて下さい!!』
目隠しながらも前向きに…辛うじて後ろ向きになる事だけは避けながらの前進。
交わしたやりとりで、脇道にそれてしまった俺達の意識を……神風の言葉が引き戻す。
俺『避ける…って言っても…………んなぁっ!?』
神風が叫んでから…実際には、1秒にも満たない間の事。
目視した限りでは、虚獣からの攻撃の素振りは確認出来ず…俺は、半ば疑念を持ちながらも神風の指示通りに回避行動を行った。
そして、その結果が…これ。俺のすぐ真横を、いや…ここに居る全員のすぐ真横を、光の束が突き抜けて行ったのだ。
俺『嘘だろ……今のって、ハルのと同じ光の魔法じゃ無いか!?』
ハル『結果的に同じ現象を引き起こしていますが…今のは魔法ではありません。あれは多分……』
カライモン『この虚獣が元より備え持っている、機構……それも、予備動作無しで発射可能な反則性能のようだな』
俺『マジかよ…冗談キツいぜ』
カライモン『…こればかりは嘆いていても仕方ない。加速空間や停滞空間はいざと言う時のために温存して……可能な限り神風君の空間掌握に頼ろう』
俺『……って訳だ。神風にばっか負担かけちまって悪ぃな』
神風『いえ、問題ありません。元より…この命、この世界を…皆さんを守るために使うつもりです』
俺『おいおい…縁起でも無い事言うんじゃ無ぇよ。それじゃぁ俺達が困るだろ?』
神風『…え?』
俺『神風…お前の命はお前のために使え。皆を守るのも良いが…何より、皆を守った後一緒に帰るために…な?』
神風『………………はい、そうですね。そうします』
神風は、満面の…屈託の無い笑顔で、力強く答えた。
36 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/21(火) 23:03:58.28 ID:sb64dYF/o
カライモン『さて……また新しい女の子を、ハーレムに引き込もうとしている所を悪いが…』
俺『いや、ちげーよ!!どこをどう見たらそうなるんだ!?』
ハル『………え?』
レミ『えー………?』
俺『………えっ?』
カライモン『はいはい、漫才はそこまでだ。とにかく…今回の作戦を伝えさせて貰うが構わないか?』
俺『お、おう………今回も俺が中心になる流れになりそうな感じか?』
カライモン『私も最初はそう考えていたのだが…そこまで悠長な事をしている余裕は無いかも知れない』
ハル『だったら…どうするんですか?』
カライモン『こんな事、作戦と呼べるかどうかは判らないのだが……各々が尽力し、全力で攻撃して畳みかける。それが…最善と言わざるを得ない』
俺『…何だ何だ、お前らしくもない直線的な作戦だな。んでもまぁ……』
レミ『そう言うの、嫌いじゃ無いのよね』
光の束の第二射を回避しながら…カライモンの指示の下、各々の判断で虚獣との距離を縮める俺達。
続く第三射、四射を掻い潜りながら…まずは俺が虚獣に接近して………
俺『うおぉぉぉぉぉぉ!!!』
ディメンションスレイヤーを200メートル近くにまで巨大化させ、それを振り下ろす。
相手のサイズがサイズなだけに、与えたダメージはさほど大きくは無く…全体から見れば、かすり傷程度。
だが……そんな事は想定内の大前提。
斬撃を見舞った後、俺はすぐさまその場を離れ……入れ替わりで、今度はハルが杖を構える。
そして………
ハル『………行きます!!』
俺が作った切り口に向けて、光の魔法を全力で叩き込む。
僅かに傷口からはみ出した光が、放物線を描きながら虚獣の体表を滑る中…反対に、傷口に叩き込まれた光が…着実に内側から虚獣を抉る。
虚獣は身体をのけ反らせて…のたうちながらも、全方位に向けて光の束を乱射。
出鱈目に飛び交う光の中を、神風か示すままに掻い潜り………
カライモン『では………少々早いが切り札を使わせて貰おう!!』
そう宣言するか否か、カライモンが後方にゲートを展開。
そして、そのゲートからは………
何と表現するのが適切なのか判らないが…巨大な建造物のような物が姿を現した。
37 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/23(木) 00:12:33.80 ID:T5WbXjFvo
●ぜんれい
カライモン『こう言う物は本来、男性のロマンなのだろうが…今回は私が見せ場を掻っ攫わせて貰う』
俺『………は?』
言葉を交わすか否か…カライモンを取り込むように中心部が展開し、変形して行く建造物。
途中で光の束による邪魔が入ったが、建造物はそれを難無く弾き飛ばし………
カライモン『さぁ…侵略の始まりだ!!』
俺『なっ………変形!?いや、合体した!?』
カライモンをその中心に格納して、戦艦のような形状へと変化した。
レミ『うっわー…………』
虚獣から放たれた光の束を物ともせず、虚獣本体へと迫るカライモン…と、その戦艦。
双方が肉薄する距離まで近付くと、互いの攻撃は激化し……
虚獣は光を幾重にも収束して、戦艦に向けて発射。
装甲を大きく破損しながらも、戦艦は後方から黒いワイヤーのような物を展開。
物の数秒の間に、虚獣をワイヤーで縛り上げ………
カライモン『圧縮術式展開…!!』
ワイヤーが接した部分を中心に、虚獣が石化を開始。そこから耐性を付けられ、石化が止まった頃には……既に体表の9割が既に石化済み。
だが、カライモンの猛攻は休む事を知らず………
カライモン『魔導式爆導索解放!!』
ワイヤーを中心にして、今度は石化した部分が爆発。
一連の攻撃だけで、虚獣の体積の実に2割近くを削ぎ落とす事に成功した。
が……虚獣は虚獣で、一方的にサンドバッグにされたまま終わる筈も無く……
突如、大口を広げ……レミ………いや、レミの背後に控える地球の方角へと狙いを定め…口内に光を貯め込み始めた。
38 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/23(木) 00:24:05.39 ID:T5WbXjFvo
カライモン『不味いな………これは悠長に攻撃などしている場合では無いか』
そんな中…何を思ったか、カライモンは戦艦から自身を射出。
更に俺そこから、俺の方へと向き直り………
カライモン『さて…このままではあれを止める事は不可能だ。あれを使ってくれて構わないので、君が止めてくれ給え』
俺『………は?いや、何で俺なんだ?ってか、まだまだ武装積んでそうな質量だよなぁ?』
カライモン『あぁ、積んでいるとも。だが…一つ一つ使っていては間に合わない。そのまま使うよりも効果的な方法が……君にはあるだろう?』
俺『あぁ………成程。そういう……』
カライモン『因みに…例の重力球を遠慮無しに発生させるだけの質量を積載している。君自身も気を付け給えよ?』
俺『…………』
カライモン『どうしたのだね?』
俺『いや……何でも無ぇ。ただ………』
カライモン『ただ?』
俺『突っ込むのに疲れただけ…………だっ!!!!』
俺は、再度ディメンションスレイヤーを形成して……これまた、それを巨大化。
そして、大きく振りかぶり………
俺『皆…ゲートで一旦離脱してくれ!!』
と…一言を伝えてから振り下ろす。
ハルとディーティー…レミ…カライモンとエディー…そして最後に神風が、この宙域から離脱したのを確認した後…虚獣もろとも、俺はカライモンの戦艦を一刀両断。
更にその際に…戦艦に積載されていた物を、反転して爆発させ………
それと同時に、俺もゲートでその場を離脱した。
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/23(木) 08:38:11.49 ID:RkQID4ADO
乙
反物質と聞くと星くず英雄伝を思い出すな…
ぽにきゃんで出し直してるらしいが、完結したのかしら?
40 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/23(木) 23:00:44.93 ID:T5WbXjFvo
●くだけて
俺『さて………これだけやっても、まだ最初の3割近くが残ってやがるのか…』
事態が事態なだけに、事の顛末を見届ける事は出来なかったが…
レミ『しかもご丁寧に…まだ鯨の形状を保ってるのね』
ハル『先の虚獣戦でもそうだったけど…虚獣は、それぞれの大本の形があるみたいですね』
幸いな事に、俺の試みは見事に成功していたらしく…
カライモン『まぁ、何にせよ………攻撃手段の大半を失ったのは痛いが、ここまで削る事が出来たならば…後はゴリ押しで何とかなるだろう』
虚獣の攻撃を退ける事が出来たようで、地球も無事存在していた。
そして、虚獣に与えたダメージ自体も尋常では無く…
あとは、残った虚獣を削り切るのみとなった筈だっただが………
俺『となると、また俺のディメンションスレイヤーの出番に……………ん?』
ハル『…………どうしたんですか?』
俺『いや…具体的にどうって訳じゃ無いんだが……何か、嫌な予感が…』
レミ『ちょっと、止めてよね……この期に及んで…』
神風『いえ、残念ですが…その予感は当たっているようです』
ハル『………どう言う事ですか?』
神風『虚獣の残りの質量は……顕現時と比較して、9割………今までの攻撃で消失したのは1割で、しかも………』
レミ『ちょっと……ジョーダンきついわよ…』
カライモン『で…しかも………何だと言うのだね?』
神風『虚獣が………変質します』
神風が宣言するか否か……虚獣に異変が起きた。
41 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/23(木) 23:14:13.05 ID:T5WbXjFvo
その体表に切れ目が入った…かと思えば、今度はその切れ目から体表が薄く剥離を始め……
それが何度も、何度も…まるで紐解かれるように、円を描きながら捲れ上がっていく。
そして、その動きが一旦収まると……
ハル『………綺麗ですね。お花みたいです』
レミ『でも、そんな可愛い物じゃ無いのよね……絶対』
鯨のような形の蕾が花開き…虚獣はその身を一輪の花へと変えて居た。
俺『ってか問題は……この変質が意味する事なんだが…』
中心の花弁が開き……その奥から覗く、白い球体。
その球体は、みるみる内に収縮を始め……気が付けば、1メートル程にまで縮まり……
周囲に展開していた花弁が、球体に向けて集まり…衣のような物を形成。
更にそのまま、今度は球体の形状が変化して行き………
その結果………俺達の目の前に現れたのは………
虚獣「―――――――――」
人型…………いや
少女の形をした虚獣……だった
42 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/23(木) 23:33:56.90 ID:T5WbXjFvo
●さいたん
俺『っ―――危ねぇ!!!』
まさに一瞬…一瞬の出来事だった。
虚獣が、一番近くに居たレミに手をかざし…その掌の先から、光の束を形成。
神風のおかげでいち早くそれに気付いた俺は、レミの手を引き……間一髪の所で、それを避ける事が出来た。
虚獣「な……ぜ……………じゃ…ま……を…す……る?」
俺「何故も何も…そもそもどの事を言ってるのかも判んねぇが、世界を滅ぼされるってのに邪魔しない訳無いだろうがよぉ!!」
虚獣「こ…れは……世界……を…護るため………必要な……事」
ここに来て虚獣が言葉を発し…俺は、意思の疎通を試みる………が、結果は見ての通り。
操られた虚獣から飛び出した言葉は、その行動とは真逆……
明らかに作為的な改変を行われた跡を、その言葉から見受ける事が出来た。
虚獣「あくまで…邪魔を…するのなら………それは…排除対象……」
俺「へっ…やれる物なら、やってみろってんだ!やれる物ならなぁ!!」
皆の全身全霊を叩き込んだにも関わらず、殆どダメージを与えられる事が出来なかった……それは確かにかなり手痛い。
だが…虚獣があの巨体を失い、人間サイズに凝縮した…と言うのならば話は別だ。
虚獣が惑星サイズだったが故に、使う事が出来なかった手段………停滞空間を展開する。
そして、次の手は…ディメンションスレイヤーの形成。
俺は、停滞空間に束縛された虚獣に向けて…ディメンションスレイヤーを振り下ろす。
だが………
43 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/23(木) 23:35:25.17 ID:T5WbXjFvo
俺「嘘……だろ……」
停滞空間の何に居るにも関わらず、虚獣は俺の放った攻撃を難無く回避し……背後に回り込んだ上で、反撃を繰り出して来た。
俺「っ……ぐぁっ…!!」
俺は反射的に加速空間を展開して、限界まで威力を殺した……にも関わらず、なす術も無く身体は四散。
身体を瞬時に再生して、体制を整えようとする…が、その間にも虚獣は迫り………
これまた半ば反射的に、俺は虚獣との間に再度停滞空間を展開した。
しかし…迫り来る虚獣は、僅かな減速を見せたのみで……その手は、再び俺の身体を大きく抉り取っていった。
俺『……って、おい!!虚獣は停滞空間や加速空間に耐性を付けられないんじゃ無かったのか!?』
カライモン『耐性を付けたのでは無く…ディメンションスレイヤーの時と同様に、対策を打って来たのだろうな』
俺『だとしても…それも出来ないって話だったよなぁ?!』
カライモン『恐らくは…出来ないでは無く、やらなかった…と言うのが正しかったのかも知れない』
俺『はぁっ!?』
カライモン『前回の戦闘は、大気圏内…空気が密集した場所で、対して今回の戦闘はほぼ真空状態……つまり、気兼ね無く全速力を出せる場所と言う事だろう』
俺『…………くっそ…納得出来るけどしたく無ぇ真相だなぁオイ!!』
…などと会話している間にも、容赦無く繰り出される…虚獣の猛攻。
俺は既に、攻撃を正面から受け止める事は諦め…神風のサポートの下で、回避に専念する事にしたのだが……
俺『ちくしょう!!幾らなんでも早過ぎんだよ!!』
その圧倒的なスピードの前では、回避行動さえもマトモに取る事が出来ず……致命傷寸前の攻撃を受け続ける事となった。
いや………それだけならまだ良い。それだけならまだ、いくらでもやりようがあったんだが……
44 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/23(木) 23:36:10.56 ID:T5WbXjFvo
ハル『―――――――っ!!』
レミ『ダメ……早過ぎて当たんない!!』
カライモン『補足すら出来ないのでは……対応のしようが無いぞ!』
…………と……ご覧の有様だよ。
ちなみに……唯一、虚獣の速度に対応する手段…瞬間移動を持つ神風に至っても、その結果は大差無し。
全力を集中させた手刀を繰り出し、それを叩き込む事までは適うも…有効と言える程のダメージを与える事が出来なかった。
神風『申し訳ありません…私では力不足です。無駄に耐性を付けさせてしまいました』
俺『いや…神風が悪い訳じゃ無ぇよ。ってか…俺を含め、誰一人攻撃を当てる事すら出来て無いんだよな。こんなの…一体どうすりゃ良いんだよ』
絶望に絶望を塗り重ねて、更に絶望をトッピングしたような状態。にも関わらず……虚獣はその手を緩めるどころか……
神風『―――っ!?』
俺『どうした!!何があった?!』
神風『………地球に……虚獣が顕現しました。前回と同様の虚獣が……その数……10体…っ……』
俺『なっ――――!?』
絞め殺すつもりで、全力を篭めて来たようだ。
45 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/25(土) 01:16:33.71 ID:j2Va2Sfxo
●しんじて
俺『くそ…っ!!地球に戻るぞ!!』
カライモン『いや…それは駄目だ!』
俺『何でだよ!!?』
カライモン『今、我々がこの宙域を離れてしまえば…変身直前のアレをやられるだろう。そうなれば…もう、我々に打つ手は無い』
俺『いや、でもよ…今の俺なら、地球の虚獣をすぐに倒せるだろうし…アレが地球に到達する前に迎撃すれば良い話だろ?』
カライモン『……迎撃を絶対に間に合わせるという、保証はあるのかね?』
俺『保証は…無いが……』
カライモン『…だったら止めておくべきだ。目の前の戦闘に集中し給え!!』
俺『だったら…地球はどうするんだよ!!』
カライモン『幸いな事に……前回の虚獣であれば、例え10体居ようとも瞬時に地球が消滅するような事態には陥らない。ならば……』
俺『先に目の前の虚獣を片付けて…超特急で地球に戻って駆除しろ…って事かよ。逆に…俺達が戻るまでに、地球が無事で居られるって保証はあんのか?』
カライモン『………無い。彼女達を…信じる他はあるまい』
俺『…………』
カライモン『………………』
俺『……ったく……その言い方は反則だろ。そんな言い方されたら………信じるしか無くなっちまうだろぉがよぉ!!!』
正直な所…ユズ達がどこまで持ち堪えてくれるかは判らない。
だが…少しでも地球を守れる可能性を増やすためには、目の前の虚獣をより早く倒す他は無い。
俺は気力を振り絞って……再び、目の前の虚獣と対峙した。
しかし…………
幾ら気合を入れたとしても…どうしようも無いような、力の差を埋められると言えば…そう言う訳でも無く…………
むしろ…今まで気力だけで限界を超えられて来た事の方が、奇跡のような物だったのだ。
加速空間に加速空間を重ね…この時点で俺単体での限界を超えて、更に停滞空間を展開して虚獣を捕獲。
そこから更に停滞空間を形成して、完全にその動きを封じようとしたのだが………
虚獣の速度は、更にそれを上回った。
46 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/25(土) 01:21:03.49 ID:j2Va2Sfxo
レミ「不味っ――――」
事前から備えていたのが幸いしたのか…虚獣の攻撃を真正面から受けながらも、辛うじて強制離脱が間に合い離脱するレミ。
カライモン「くっ…さすがにこの速度は―――」
続いてカライモンまでもが、防壁を突き破られ、強制離脱。
この宙域に残されたのは…俺と神風、そして……ハルとディーティーのみ。
虚獣は当然にように俺に狙いを定め、俺はそれに対抗するべく装甲を強化して…
正面から一直線に突撃して来る虚獣を、迎え撃つが―――
虚獣は俺の直前でその軌道を変え、ハルへ向けてその拳を突き出した。
更に付け加えるなら…気が付いた時には、俺の前に…ハルの作り出したであろう障壁が発生していて……
同時に、これを発生させた事によりハルが無防備になっているであろう事も容易に想像出来る。
そんな状態で虚獣の一撃を受ければ、一体どうなるか……
当然、レミやカライモンのように強制離脱すら出来ない可能性だってある。
つまり………導き出される結論は、筆舌に尽くし難い物だって事だ。
俺は、その結果を回避するため……いや、どうしようも無い結末をただただ先送りにするため………
残りの力を振り絞って、回避不能な範囲…この宙域全体に停滞空間を発生させて、俺達諸共虚獣の動きを停滞させた。
停滞した空間………この中でマトモに動く事が出来るのは、神風のみ。
神風自身もその事は承知の上で…虚獣を足止めすべく、ハルとの間に立ち塞がる。
だが、案の定…神風から繰り出される一撃一撃は、耐性を付けた虚獣にダメージを与えるどころか、怯ませる事すら適わず…
すぐさま、虚獣を止める事よりもハルを退避させる方向に転化した。
ハルを後方に押し出しながら…その背に虚獣の拳を受ける神風。
その衝撃で根元から翼が抉り取られ、全身を突き抜けるような衝撃に襲われ……そこまでの傷を負ったにも関わらず、稼ぐ事が出来たのは、ほんの一時。
虚獣は神風を襲った後で、改めてハルに狙いを定め…その拳が、再びハルの目前まで迫った瞬間――――
虚獣「――――――!?」
虚獣は、何故かその手を止め…地球の方角へと、視線を向けた。
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/25(土) 07:27:47.08 ID:Pf6i3eIDO
ユズ無双に期待!
48 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/25(土) 23:30:01.41 ID:j2Va2Sfxo
○おもひで
男子A「教育実習生ってのはさ、教師になるための課題で来てるだけなんだよ」
もう何年も前の……担任の先生から、教育実習生の先生が来ると聞かされた日の事。
女子A「仲良くしようとするのも、結局上っ面だけ…絶対に騙されちゃだめよ」
クラスメイトの否定的な意見が飛び交う中…
その人は現れたッス。
実習生「ぁー……ご存じの通り、自分は教員免許を取るために来ただけッス。面倒な馴れ合いはするつもり無いんで適当に接してくれれば良いッス」
ついさっきまで皆が話していた内容を、絹を被せる事無く言い放つ実習生。
男子A「げ……聞いてたのか………」
それに対して、クラスの男子は愚痴るように…実習生に聞こえないような小声で呟いたのだけど……
実習生「別に、内緒話を聞いてた訳じゃ無いんッスけど…そう言う事にしておくのもアリッスね」
そんな男子の声さえも聴き取った事で、実習生は地獄耳キャラという立ち位置を手に入れたッス。
けれど………自分はその時、気付いて居たッス。
実習生は、地獄耳なんかじゃ無くて…もっと別の何かを持っているって事に。
実習生「で……こんな所に呼び出して、一体何の用ッスか?」
自分「それ…嘘ですよね?」
実習生「何がッスか?」
自分「呼び出した理由も…そこから話す内容も、全部判った上でわざと聞いてる……そんな風に聞こえるんですよ」
放課後の屋上…誰からも見られず、誰にも話を聞かれない場所に…実習生を呼び出して話をしたッス。
実習生「じゃぁ、答えだけ言うッスけど…ユズちゃんがなりたい自分になれば良いんッスよ」
自分「………途中をすっ飛ばし過ぎです。と言うか、そんな所までお見通しなんですね」
実習生「あ、ちゃんとユズちゃんの口から言ってからじゃ無いと落ち着かないなら、それでも良いッスよ?」
自分「……じゃぁ、一応言っておきます。どうしたら、先生みたいになれるんですか?自分に正直になれるんですか?」
実習生「自分の場合…余り認めたくは無いけど、知り合いの影響ッスね。と言うか…自分みたいになりたいってのは、あんまり意味無いッスね」
自分「どう言う事ですか?」
実習生「ユズちゃんが自分みたいになる必要は無いッスよ。自分みたいに…じゃなくて、ユズちゃんがなりたいユズちゃんになれば良いんッスよ」
自分「先生みたいな私になりたい……そう言うのはだめですか?」
実習生「別にそんな事は無いッスよ?本当になりたい物の姿がそれなら、それも一つの選択ッスから。それに………」
自分「それに?」
実習生「別の選択肢が見つかったなら、その時は改めてその選択肢に変わっちゃっても良いんッスから」
自分「そんな時が…来るんですか?」
実習生「そんな事は判らないッスよ」
自分「先生でも…判らない事はあるんですね」
実習生「残念ながら…自分はそこまで万能じゃ無いッスからね」
49 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/25(土) 23:42:00.10 ID:j2Va2Sfxo
○ひしがれ
自分「何だか…懐かしい夢を見た気がするッス。ほんの数か月の事の筈なのに…変な話ッスよね」
身体は…痛く所が無いくらい満遍無く痛くて、指一本動かす事が出来なくて……
自分「えっと……今、どんな状況だったッスか………」
口の中は、鉄の味でいっぱい。視界は左半分が霞んで、耳の中では耳鳴りが止む事無く鳴り響いてる。
自分「あぁ…そうッス。確か自分は…虚獣を倒そうと立ち向かって………」
あらぬ方向に指が曲がった右手に、視線を落として…自分は、今の自分の有様を思い知ってるって所ッス。
自分「自分は………誰かを助けるため…誰かを救うために、誰かを救える何か変わろうとしてた筈なのに……」
全力を出して…出し尽くして立ち向かっても……一体を倒すどころか、傷一付ける事が出来なかった。
自分「色んな物に…それまでの自分とは違う自分になろうとして…なって来た筈なのに……」
虚獣は今は力を溜めて…沢山の卵を地上に生み落とそうとしている。
もし今、虚獣に襲われたら…この街は壊滅する。街どころか…世界その物が…全てが…皆が滅ぼされてしまう。
自分「魔法少女でも…大事な人を、誰も救えない………」
どうしようもない無力さと、どうしようもない矮小さを思い知って…押し潰されてしまいそうな中………
「ならば…それを超える存在へと成れば良い。求めよ…力を。求めよ…我を。求めよ…平穏を」
聞いた事の無い男の人の声が聞こえて………
自分「なりたいッス………大事な人を救える…皆を救える自分になりたいッス!!」
自分は…その声の主を求めたッス。
50 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/25(土) 23:53:04.57 ID:j2Va2Sfxo
●ふたたび
俺『何だ?…一体何が………いや、それよりもハル――――』
カライモン『心配には及ばないよ。ハル君なら既に入れ替わりで退避して貰った』
俺『そっか、それなら良いんだが……一体何が起こったんだ?虚獣は…そうだ!地球はどうなったんだ!?』
虚獣に生まれた僅かな隙の合間…意識のみで言葉を交わす、俺とカライモン。
だが、その途中で思い出すのは……本来ならばすぐにでも解決しなければいけない筈だった、地球の安否。
苦し紛れの停滞空間を形成してしまったがために、その外…地球では決して少なくない時間が経過している筈。
そして、そこに来てのあの虚獣の反応。下手をすれば、既に………そんな予感が俺を押し潰しにかかるが……
カライモン『あぁ、その件ならば…そうだね、神風君に確認してみてはどうだね?』
俺『……え?』
カライモンの様子は、俺の予想を裏付ける物とは程遠く…それどころか、仮面の間から覗く口元には不敵な笑みを浮かべている程だった。
神風『地球に顕現した虚獣の……残数は四。いえ…たった今一体倒され、残数三です』
俺『………は?』
カライモン『さて…どうやら彼女達は上手くやってくれているようだが…問題はこの後か』
俺『いや…だからどうなってるんだ!?一体誰が地球を……』
カライモン『誰…と聞かれても、返答に困ってしまうね。彼女達は、彼女達だ。だが、あえて例を挙げるとするのならば――――』
51 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/26(日) 00:05:57.73 ID:JbMqKR0Io
○おとめの
フミ「さて、これで二体目。どうやら、同時に存在している虚獣同士で耐性を共有する事までは出来ないようですね」
チヅ「だだだ…だったらこのまま…同じ方法で…たたた…倒して行けば……ふふふふふ……」
ヤエ「いんやぁ、その事なんだけども……」
フミ「どうしました?何か問題でも?」
ヤエ「どんやら今のは二体目じゃぁなぐで、三体目だったみたいだぁねぇ」
フミ「それはつまり…私達以外にも、虚獣に対抗する戦力が居る…と言う事ですか?」
ヤエ「だぁねぇ。んまぁ何にしでもぉ、人手が増えでくれるのは良い事だぁよ」
キヨ「はぁっ!?何が良い事なもんか!アタイらの獲物が減っちまうって事なんだぞ!?」
チヅ「そ…そそそ、そう。私達の…て…手柄にならない」
キヨ「いや、手柄なんてどうでも良いんだよ!アタイはとにかく暴れ足りねぇんだ!もっともっともっともっと!!暴れてぇんだよ!」
フミ「……二人とも…やはりまだ、復帰して貰うには早かったかも知れませんね」
ヤエ「んでもまぁ…これも舞さんの決めだ事だぁ。ちゃぁんと考えての事なんだろうさねぇ」
マヤ「あらあらあらあら…孫が頼りにされているのは、祖母としては嬉しいけれど…過大評価されるのも考え物よねぇ」
キヨ「手前ぇ…白虎の!!一体何しに来やがった!!」
チヅ「ま…ま、まさか…他の虚獣を倒してたのは……」
マヤ「だったら良かったんだけどねぇ……そっちはそっちで別口みたいなんですよぉ。で、私はただのお手伝いですからぁ」
キヨ「ハン…だったら足だけは引っ張るんじゃぁ無ぇぞ!!邪魔になるようなら切り捨ててやらぁ!」
マヤ「そうならないよう、気を付けるわねぇ」
チヅ「で…でも…マヤじゃ……無いなら…一体…だだだ…誰が……」
52 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/26(日) 00:16:07.89 ID:JbMqKR0Io
●えんぐん
俺『………はぁっ!?それって…あれか?根幹を食らう竜の中に居た…元蒼龍隊の子達の事か!?』
カライモン『うむ、その通りだ』
俺『相変わらず出鱈目な…いや、突っ込むだけ無駄なのか?ってか待てよ?さっきの口ぶりだと……元蒼龍隊の子達以外にも居るって事だよなぁ?』
カライモン『当然だ』
俺『んじゃぁ、残りのメンバーは…一体誰が戦ってるって言うんだ?』
カライモン『他は……まぁ、さすがに全員参加とはいかないが…十二大祭の際に競い合った他の魔法少女達。それと………』
俺『それと………誰だってんだ?』
53 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/26(日) 00:45:16.31 ID:JbMqKR0Io
○ゆめおい
「なるほど…特性は掴めました」
「念のために、ディメンションスレイヤーだけで攻撃してもらったが…最初っから出し惜しみせずに、ダークチェイサーで攻撃しても良かったかもな」
「それはあくまで結果論です。温存して、いざと言う時のための奥の手にしておいた方が良いじゃないですか」
「いや…確かにそれはそうなんだが……こう、男としてだな…女の子にばっかり戦わせるってのもアレなんだよ」
「もしかして…コンプレックス感じてますか?」
「………そうだよ、悪ぃかよ」
「いえ、貴方らしくて良いと思います」
「そんな俺らしさはいらねぇなぁぁぁ!?」
「駄目ですよ、否定したら」
「くそっ………にしても、良いのか?本当はあっちの加勢にも行きたいんじゃ無いのか?」
「良いんですよ。私には私の…こちらの私にはこちらの私の領分がありますから。それに……」
「それに…何だ?」
「今の私には…貴方が居ますから」
「―――――っ!!!あぁくそっ!いきなりそんな事言うのは反則だろ!!」
「私も一応、元悪役ですから。ルール無用の残虐ファイトはお手の物です」
「っ…開き直られたら反論出来無ぇ。あぁくそっ!次行くぞ!次!」
「……はいっ、どこまでもご一緒します」
54 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/26(日) 22:43:20.47 ID:JbMqKR0Io
●もどりて
カライモン『………いや、言うまい』
俺『いやいやいやいや、何だよそれ!?言えよ!?勿体付けといてそりゃ無ぇだろ!?』
カライモン『…と言うか、話している余裕はもう無さそうだ。虚獣を見てみ給え』
釈然としないながらも…俺は、カライモンに促されるままに虚獣の方を見た。
すると、その先では………
俺『嘘だろ…まさか、仲間の虚獣ごと地球をあれで消し去るつもりか!?』
虚獣が、左手を地球の方角に向け……その手の平に、とんでもない量の光を凝縮していた。
神風『方角…質量……そのどちらを見ても間違い無いでしょう』
俺『だったら、何とかして止め――――』
止めなければいけない……そう叫びかけた次の瞬間…
ユズ『――――――――!!!!』
俺『―――なっ!?」
虚獣の腕を囲むように現れる、光の輪。
そして………光の輪の出現と同時に、ユズがその姿を現した。
ユズが現れた事…それ自体がかなりの驚きだが…その驚きを塗り潰して有り余るだけの問題が、一つ残っている。
虚獣には、光の魔法その物に耐性を持たれていて……ユズの魔力がそれを超えられない事は、先の戦いで実証済み。
現に…カライモンにおいても、それを理由に今回の戦いからあえてユズを外していた。
例え虚獣の虚を突いて奇襲を成功させたとしても、通用する筈が無い。そう思っていたのだが………
虚獣「―――――!?」
俺は幻でも見ているのだろうか?
ユズが発生させたであろう、光の輪が収縮して…俺の予想を大きく裏切り、虚獣の腕を切り落とした。
55 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/26(日) 23:12:42.96 ID:JbMqKR0Io
俺『なっ…一体どうやって………って、ユズ、その手は!?』
にわかには信じられない光景。
初めて虚獣に有効なダメージを与える事が出来たのもそうだが……信じられないと言った理由はもう一つ。
ユズ『ちょっと裏技みたいな方法を使って…自分も戦えるようになったッス!!』
ユズの右手が………ライトブリンガーへと変化していたのだ。
カライモン『成程…ライトブリンガー化した状態で、更にあの形式の魔法ならば…ユズ君の魔力でも……いや、だがそもそも…』
俺『そう…だよな。そもそも、どうやってユズがライトブリンガーに……』
カライモン『………まさか…リミッターを破壊したと言うのか!?』
俺『リミッター?えっと…どう言う事だ?』
ユズ『カライモンさんの言う通り…リミッターを外す事で本来の自分の限界を超えて、ライトブリンガー化出来るようになったんッスよ!…部分的にッスけどね』
カライモン『しかし、そんな事をすれば…どれだけの副作用が……いや、まずどうやってその方法を………そうか、ケイエルか!?』
ユズ『…大丈夫ッス。カライモンさんが心配してるように騙された訳じゃ無くて、全部承知の上で自分で選んだ事ッスから』
カライモン『だが…いや………すまない。これ以上の言及は野暮な事この上無いな』
ユズ『ありがとうッス。あと、話の腰を折って悪いんッスけど……あれ、不味く無いッスか?』
驚愕まみれのやりとりの中…ユズが促す先は、他でも無い虚獣の様子。
ここまでは先程と同じ流れに見える、が……相手が相手なだけに、そう甘くは無い。
俺『やろうとしてるの事自体は、さっきと同じなんだろうが……』
今度は、手の平に光を貯め込むのでは無く…腹部を口のように開いて、その中心に凝縮。
単純にその破壊力を予想するだけでも、規格外の物を予想する事が出来るが……問題はそれだけでは無い。
虚獣の背中から生えた花弁のような翼が、眩い光を放ち……次の瞬間には、地球へと舵を取って…急加速を始めた。
56 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/26(日) 23:25:57.53 ID:JbMqKR0Io
カライモン『――っ…不味い!!我々を振り切った上で、あれを放つつもりだ!!』
俺『加速空間は…くそっ!力が足りねぇ!!ゲートを使って先回りとか出来ないか!?』
カライモン『ゲートでは、転移座標を演算している間に防衛可能なラインを突破されてしまう。それに……』
ユズ『じゃぁ、自分がここに来た時みたいに――』
カライモン『ダメだ。例え間に合ったとしても、止める手段が無い!先の魔法では、あの大出力との相性が悪いだろうし…』
俺『頼みの綱のディメンションスレイヤーは…加速空間すら展開出来ない時点でお察しだ』
カライモン『私にしても、今から間に合う手段であれを止めるだけの物は…持ち合わせて居ない』
俺『ハルもレミも……対抗するどころか、こっちに戻って来るだけの魔力すら溜まって無いだろうし…』
カライモン『万事休す……だ』
万策を打ち尽くし…絶望に打ちひしがれる俺達。
だが………そんな絶望を打ち払うように……
神風『私が…行きます』
神風が名乗りを上げた。
カライモン『確かに…君の瞬間移動ならば、距離も速度も関係無く追い付く事が出来るだろう。だが…肝心の、止める手立てはあるのかね?』
神風『……………』
何も語らず…ただ、ニコリと微笑む神風。そして、その直後…神風の姿は俺達の前から消え去り……虚獣の進行先へと立ちはだかっていた。
神風「ハナ…貴女の言う通り、私もまた大切な物が出来ました」
俺『なぁ……俺達が知らない奥の手を隠し持ってるんだよなぁ?』
神風「私は、彼の言う通り…私のために命を使おうと思います」
俺『おい、待てよ!戻って来い!!俺達が、何とか…何とかしてみせるからよぉ!!?』
カライモン『………』
虚獣「―――――!!」
神風「私の名前は、神風………白虎隊筆頭、奇跡の一陣…神風!!」
虚獣「――――――――――」
神風「大切な物…護るべき物のため………」
神風に向けて直進する虚獣……虚獣に向けて手刀を構える神風。
神風「――――この命…燃やします!!」
神風と虚獣……二つの超常の存在が交差した瞬間………
俺達が居る宙域を、光が飲み込んだ。
57 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/26(日) 23:42:39.89 ID:JbMqKR0Io
●とむらい
光が収まり…周囲に再び宙の闇が訪れた頃……
俺達の瞳に映ったのは……
神風の一撃により、腹部を大きく抉り取られた虚獣の姿……
そう……それだけだった。
俺「嘘…だろ………?」
カライモン「目を逸らすな…現実だ」
俺の呟きに対して、言葉を返すカライモン。
だが…その声は、神風と言う媒体を介した意思の声では無く……
ハル「………体に直接…術式から音を響かせているようですね」
その仕組みを…正にこの瞬間、戦線に復帰したばかりの…ハルが読み解いてみせた。
ハル「私が…もっと早く戻って来れていれば………」
一見すると、ハルは淡々とした様子で語り続けているように見える……が、その実は真逆。
虚獣に…そして自分自身に対しての、怒りに燃える炎をその内に宿していた。
俺「ハルのせいじゃぁ無ぇよ…そんな事言ったら、その場に居ながら何も出来なかった…俺なんてどうなるんだよ!!」
カライモン「私も同じく…だが、その責を負ったとしても仕方が無い。今の私達に出来るのは…神風君の弔い合戦。いや………」
ユズ「意思を継いで………地球を守る事ッス!!」
俺「俺も…全く同意見だ。だが、どう言う手段で戦う?神風の未来予測が無くなって…相殺出来なくなった分、状況はさっきより悪くなってるよな?」
神風との衝突によりダメージを受け…今は静止している虚獣。だが…その風貌とは裏腹に、俺達に対する隙は微塵も無く……
下手に手を出せば、確実に返り討ちに逢う…それを確信するだけの威圧感を放っていた。
ユズ「それについては…アラクちゃんに頼むッス」
俺「アラクに…か?」
ユズ「地球の方で手一杯で、こっちに手を出す余裕は無かったみたいッスけど…それももう片付いたッスから」
俺「って、言っても……いや、そうか」
カライモン「世界の狭間での事…思い出したようだね。実際、ユズくんもそうして先の不意打ちを成功させた訳だ」
俺「狭間の世界…スピリットや虚獣が演算し切れる範囲から外れれば、予測は成り立たない…って事だよな」
カライモン「その通り。後は……いや、この問題は実際に直面するべきか」
辛うじて見出した打開策。だが…そこに落ちる、一筋の影。
カライモンは、言葉を紡ぎ切るなりその場から消え……次の瞬間には、虚獣の後ろに現れた。
完全に虚を突き、マイクロミサイルの束を打ち込んだ…かのように見えたのだが………
俺「―――っ……何でだ!何であれを避けられんだ!?完全に不意打ちだっただろ!??」
カライモン「あぁ、不意打ちだった…だが、その上で反応して避けた…対応されてしまった。他の攻撃に対しても同様だろう」
俺「そんな……だったらどうするんだ?!」
一歩前進したかと思えば、二歩後退。再び八方塞がりに陥りかけた、その時…
レミ「えっと、その事だけど……もしかしたらなんだけど、何とか出来るかも知れない」
未だ前線に戻る事が出来ないレミから、僅かな光明を届けられた。
58 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/26(日) 23:54:27.14 ID:JbMqKR0Io
●まぎれて
俺「んでも…一体どう言う作戦なんだ?」
レミ「それは…って、今言っちゃったら虚獣にバレちゃうのよね?じゃぁ…カライモンに、狭間まで来て貰える?」
思考を始めた辺りで、既に場所を移していたのだろう。
話を聞く限りでは、レミは今狭間に居て……カライモンも呼ばれてそこに向かった所らしい。
カライモン「ふむ…可能性は低いが、無い訳では無いな。となると後は、実行に移すまでの時間稼ぎと……決め手な訳だが…」
俺「あぁ………そこから先はわざわざ言わなくても判る。判ってる…俺が時間を稼げば良いんだろ?」
カライモン「そう言う事になる…が、心配はするな。今回ばかりは、私もその役を担うとしよう」
…と言って、カライモンが再び俺達の目の前に現れた。
俺「……って、こっちに戻って来ちまって良いのかよ!作戦がバレちまうんじゃ無ぇのか!?」
カライモン「なぁに心配は要らないよ。必要最低限の情報以外は消去して来てある」
俺「お、おう……そ、そうか」
突っ込まない、突っ込まない……無茶で出鱈目な事はいつもの事。
そう自分に言い聞かせながら…俺は、虚獣の足止めに入る。
俺「……つっても…さすがにこれはキっついな…」
勢い良く啖呵を切っては見た物の……障害となったのは、俺自身の余力。
宇宙空間その物を吸収して…辛うじてながら、ディメンションスレイヤーを要所要所で形成するだけの力は供給出来ている。
が…さすがに常時それを維持だけの力は無く…攻防が長引くにつれて、その間隔も短くなって行く。
カライモンに至っても、何やら魔法陣を展開し始め…それを維持しながらの戦闘は、極めて危うく………
ハルやユズも、魔力に関しては俺と同じ。
吸収量を消費量が圧倒的に上回り、保有していた魔力量が目に見えて減少して行くのが目に見えて判る。
いつ崩れるかも知れない防波堤…それを背にしながら戦うような、瀬戸際での交戦の最中……
俺「くそっ………またあれかよ!!」
虚獣は、残された方の腕に光を集め……再びそれを地球の方角へと向けた。
地球に向けて放たれる閃光……恐らくは、ゆうに地球を消し去る事が出来るであろう一撃。
しかし、こんなタイミングに限ってディメンションスレイヤーを形成する事が出来ず………止められない。
神風が命を賭して切り抜けた危機…それを俺達がないがしろにする事など出来る筈が無い。
俺は持てる意識を振り絞り、打開策を絞り出そうとしたのだが………
カライモン「先程の物は、あくまで不意打ちだったからこそ防げなかっただけの物。残念ながら…来ると判って居れば、どうにでもなるのだよ!」
俺が行動を起こすよりも先に、カライモンが先回りして……根幹を食らう竜の咢で、閃光を食らい尽していた。
カライモン「成程……ここまで織り込み済みで、あの魔法を準備していた…と言う事か。さぁ……この長い闘いにそろそろ終止符を打とうか!!」
そして、カライモンが雄叫びを上げるのとほぼ同時に……
レミが、その姿を現した。
59 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/27(月) 23:15:15.56 ID:QMq6hIOao
●あんこく
レミの出現…それに伴って、一瞬にしてその場から飛び去る虚獣。
更にそこから不規則に軌道を変え、背後からレミに迫った所で………
振り向きざにレミが放った黒い線が、虚獣の残った腕を切り落とした。
レミ「っ………バラバラにするつもりで行ったのに、腕だけ!?でも……まだ終わりじゃ無いのよね」
不敵な笑みを浮かべるレミ。そして…そんなレミを見て、後ずさる虚獣。
カライモン「成程……そう言う事か」
そこから更に……何かを理解したのであろうカライモンまでもが、レミ同様に口元に笑みを浮かべ……
カライモン「さぁ…後は任せ給え!!」
つい先ほどまで展開していた魔法陣に、最後の一手を加えて…術式を完成させた。
そして、その術式の発動により……
虚獣の背後に、巨大なブラックホールが出現した。
ブラックホールに半身を飲み込まれ……そこから抜け出そうと足掻きもがく虚獣。
だが…それが文字通り無駄な足掻きとなる事を、俺は知っていた。
地球に現れた虚獣と、同じ末路。
唯一の懸念は、質量が減少しきった際の瞬間移動だったのだが…それが可能になった時点の質量では、今の俺達を倒す事など出来ない。
虚獣が飲み込まれるまでの僅かな時間……その時間の中で、俺は…これまでの戦いを思い返す。
が…………そこで終わりでは無かった。
カライモン「くっ…ダメだ!思ったよりも早く対応された!!このままでは振り切られてしまう!」
俺「なっ…!?」
レミ「だったら…もうちょっと範囲を拡大出来ない?今抑えてる分を開放すれば……っ」
カライモン「駄目だ、それは出来ない!このまま虚獣を飲み込む範囲まで拡大すれば、レミ君が…っ」
レミ「私の事は良いから、やって!!神風の死を無駄にしちゃダメよ!」
レミは全速力で虚獣との距離を取る…が、それを追うように、虚獣もまた僅かながらその身をブラックホールから引きずり出す。
このままでは、作戦の失敗は時間の問題……全てが水泡に帰す。そして、そうならないためにレミは覚悟を決めた……
…………だが
60 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/27(月) 23:31:06.00 ID:QMq6hIOao
俺「いや………そうじゃねぇだろ!!」
俺はそれを否定する。
レミ「…えっ?」
俺「神風は…絶対そんな事望んでねぇ!今ここに居たら…例え自分の死が無駄になったとしても、レミを助ける方を選ぶに決まってんじゃねぇか!!」
レミ「だったら…だったらどうすんのよ!!他に虚獣を倒す方法があるの!?」
そう…最大の問題はそこだ。
唯一にして最大の切り札、ディメンションスレイヤーを形成するには力が足りず…
俺に出来るのは、数回の加速空間や停滞空間の展開が精々。
他に出来る事と言えば………
俺「………あぁ、そうだ…あれがあるじゃないか…」
ユズ…ハル……そして最後にディーティーに視線を向けた後、俺は呟いた。
ハル「あれって…何ですか?」
俺はまず、ブラックホールに足止めされた虚獣を停滞空間で捕縛し……ハルも追随するかのように停滞空間を展開して、それに重ねる。
俺「アラクは…まだ、能力を使える程回復してないんだよな?」
アラク「アトスウフン…マテバ、イッカイツカエル」
何も無い空間に空いた穴から、ひょっこりと顔を出し…答えるアラク。
俺「数分か……さすがにそれを待ってたら、色々間に合わないわなぁ…」
アラクの能力でレミを退避させる事が出来たなら、事は大分楽に運ぶのだが…さすがにそこまで上手くは行かないらしい。
俺は、加速空間を展開しながら……レミと入れ替わるように、虚獣に近付いて行った。
ユズ「え?センパイ、何してるんッスか!?」
ハル「戻って下さい!危険です!!」
俺の行動に慌てる、ユズとハル。そして……二人とは反対に、落ち着いた眼差しで俺を見送ったのは……ディーティーだった。
61 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/27(月) 23:41:21.88 ID:QMq6hIOao
ディーティー「いつかやるとは思って居たけど…ついにやるんだね」
俺「あぁ…ついに焼きが回ったぜ。まぁ、今までだって…やれなかった訳じゃなくて、出来るけどやらなかった…ってだけだしなぁ」
ディーティー「でも…あの時とは大分違うよ?その辺りはちゃんと判ってるんだろうね?」
俺「そうだな……最悪元通りにゃぁならないかも知れねぇが………それでも、今出来るのはこのくらいの物だからな」
レミが無事に離脱したのを確認した後…改めて虚獣に手を伸ばす俺。
そして、その手の平を虚獣の額に当て………
ダークチェイサーへと変化させた。
カライモン「…一体何を考えている?ダークチェイサーの攻撃力では、虚獣に対して有効なダメージを与える事は出来ないぞ?」
俺「あぁ……それは判ってる」
俺は、手から胴体…胴体からもう片方の手や両足……頭までダークチェイサーに変化させ…カライモンの言葉に答えた。
レミ「………って、ちょっと!アンタまさか!?」
さて……ここまで来れば、後は最後のひと押しだけだ。
幸いながら、俺の行動を止める人間は近くに居ない。
俺は………最後に残った脳を、ダークチェイサー化した。
62 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/27(月) 23:58:50.12 ID:QMq6hIOao
●ひつぜん
俺「ぐ………ぁ…あァァぁアアああアぁぁぁ!!!」
意識の深層まで澄み渡るような快感と、全てを掻き混ぜて微塵切りにしてまた掻き混ぜたような不快感。
脳細胞の一片に至るまで、余す事無くダークチェイサー化した俺が最初に感じたのは…そんな感覚だった。
俺「こ…レが………ガガガガガガガガガ………」
舌が回らない…と言うよりは、思考に対して発声器官が追い付かなイ。
加速空間の中で思考スピードを上げるのとはまた違イ、思考の構造その物ニ改革が起キてイル。
こレナラ――――
カライモン「…何を考えている?幾らリミッターを解除したとしても、虚獣を倒し切るだけの質量は……いや、まさか―――」
ソウ……そノマサかだ。
ディーティー「リミッター解除もさる事ながら…本当に無茶なのはこれからだね」
人の身…ニンゲンの枠ノ中では、演算が追イ付かナイ。
だが………ダークチェイサーのソレならば、スベテを掌握出来ル。
いや…それも違うか………
ただのダークチェイサーでは無い…・…光と闇…両方の力を兼ね添えたダークチェイサーだからこそ可能な……・・
不完全ながらも…・・…相手の存在その物に干渉する力。
その力で俺は…・・・……・・
――――虚獣を浸食した。
63 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/28(火) 23:25:45.73 ID:W3LlktMCo
●ほんとの
金髪の女性「今……何と言った?」
夢の中…いや、何時か見た夢の続きの中に俺は居た。
俺の知らない場所………
俺の知らない時間………
俺の知らない人物………いや、人物は知っているか。
銀髪の女性「だから…今までのキミたちの対応その物が間違って居たって言ったんだ」
黒髪の女性「そう言い切るからには…相応の根拠と対策があるのですね?」
銀髪の女性「勿論さ」
金髪の女性「よかろう…では話せ」
銀髪の女性「まず、ウロボロスに対する見解だけど…今までボクたちは、これを絶対的な敵性存在だと思い込んでいた」
金髪の女性「当然だろう!事実、ウロボロスによりどれだけの命が失われたと思って居るのだ!!」
銀髪の女性「でも…それは別に、ウロボロスに限った事じゃぁ無い。成長の裏に苦難があるのは、生物の常だろう?」
金髪の女性「………確かに。空気を始め…雨や火を制し、人は今の文明を築き上げては来た。だが……」
黒髪の女性「言いたい事は判りますが……貴女は、ウロボロスが恵みに転じる試練だと断言出来るのですか?」
銀髪の女性「直接…では無いけれども、その可能性はあると思って居る」
金髪の女性「……何?」
銀髪の女性「僕は思うんだ…今僕たちがウロボロスに追い詰められているこの状態は、危機じゃなくて好機なんじゃ無いか…ってね」
64 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/28(火) 23:37:58.07 ID:W3LlktMCo
金髪の女性「…何を血迷った事を言っている!今まさに皆の命が失われようとしているこれが、どんな好機だと………いや、まさか…」
銀髪の女性「…そう。人と言う種として…いや、生物としての枠を超える……絶好の好機だとは思わないかい?」
黒髪の女性「私達にも…貴女と同じになれと言うのですね。良いでしょう…ですが、ウロボロスはいずれその媒体をも食らい尽しますよ?」
銀髪の女性「判ってる…だからそうじゃない。もっと上の存在…純粋な意識体へと昇華するんだ」
金髪の女性「馬鹿な……そんな事が…」
銀髪の女性「出来る…もう準備も整っているよ。と言っても…すぐ受け入れるのも、無理な話だと言う事だと判ってる」
金髪の女性「……………………」
銀髪の女性「と言うか…意識体になったとしても、永遠に肉体を失うと言う訳じゃ無いんだよ?」
黒髪の女性「…どう言う事ですか?ウロボロスにより、全ての物質が消失するのも時間の問題では?」
銀髪の女性「意識体に昇華する際…波動その物を媒体にして、ボクたち自身が波動として存在するようになる…それは判るね?」
黒髪の女性「………はい」
銀髪の女性「それにより、ボクたちは次元の枠を超え……世界と世界の壁さえも超えられるようになるのさ」
金髪の女性「並列世界への移動……ウロボロスの存在しない世界へ航行する事が出来ると言うのか!?」
銀髪の女性「その通り!更に言うなら…波動に別の情報を付随する事で、その情報を保持したまま移送する事が出来るから…」
金髪の女性「我が研究………これまで保管した生命全ての情報を…いや、それだけでは無い」
黒髪の女性「そこに私の研究を上乗せする事で…物質として再現する事も可能…と言う事ですね?」
銀髪の女性「そう…そして更に付け加えるなら……再び人類を作り出し、その中に入る事で肉体を保有する事も可能になる…と言う訳さ」
金髪の女性「成程…よく判った。だが……本当にその方法は正しいのだろうか?」
銀髪の女性「ん?何か疑う余地でもあったかい?」
金髪の女性「人でなくなる事、その物が…だ。我等は…神になろうとしているのでは無いか?」
65 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/28(火) 23:58:19.04 ID:W3LlktMCo
銀髪の女性「それは違う。神なんて物はただの象徴や役職であって、人格に付随する物じゃぁ無い」
黒髪の女性「…………」
銀髪の女性「ボクたちはあくまでボクたち…ボクたちのまま、存在の係数が変化するだけの話さ」
黒髪の女性「………判りました。貴方の考えに乗りましょう」
金髪の女性「なっ………!?」
黒髪の女性「現に、他の手立ても無く…このままでは、指を咥えて滅びを待つだけしか無いのもまた事実です。それに……」
銀髪の女性「それに?」
黒髪の女性「例え私達が反対したとして…たった一人でも、貴女はそれを実行してしまうのでしょう?」
銀髪の女性「あぁ…勿論ね」
黒髪の女性「だったら…貴女一人で行かせてしまうくらいなら。私も…ご一緒しましょう」
銀髪の女性「………ありがとう」
金髪の女性「まったく……二人揃って意志は固まってしまったようだな。こうなってしまっては、梃子でも動かんのは判って居る事だ。なら……」
黒髪の女性「…………」
銀髪の女性「…………」
金髪の女性「………我も共に行こう。何事においても、汝等だけでは心許なかろう」
そして………夢は終わった。
66 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/29(水) 23:35:37.61 ID:GNOPPyCco
●しんそう
俺「………で、こうして無事に目覚めたって事は…何とかなったって事で良いんだよな?」
どれだけの間眠って居たのだろうか…長い眠りから目覚めた俺の、第一声はそれだった。
ハル「最初に言っておきますが…皆、凄く怒っていました」
レミ「そうよ。で…アンタが中々目覚めないもんだから、怒りを通り越して心配に変わって…」
カライモン「こうして目覚めた事により、また怒りに戻った所だ」
俺「いや、結局怒ってるんじゃねぇかそれ!」
ハル「当たり前です」
カライモン「判って居たとは思うが…キミの中のダークチェイサーは、ディーティー君を元に戻した時のようには行かなかった」
ディティー「ハルとレミの力を借りて、辛うじて元のキミを再現する事には成功したけれども……」
俺「判ってる…元の、ただの人間の身体には戻れないんだろ?」
ハル「………はい」
俺「んじゃまぁ、それは良いとして…」
レミ「って、軽っ!?いや…アンタが良いんなら別に良いんだけど……で、何なの?」
俺「現状は…どうなってる?あれから虚獣は?この先出現する可能性は?」
カライモン「今の所、あれ以降の虚獣の出現は無い。だが…これから先の事は………」
俺「あぁ…そっか。神風が居ないから………」
カライモン「…………」
俺「多分……何となくなんだが、虚獣はまだ現れる。多分、一週間後の0時丁度。んで、ソイツが最後で…最強の虚獣だ」
レミ「多分とか言う割に、随分と具体的じゃない」
俺「何となくそれが判るけど、確証を持てない…って感じだからな」
ハル「だったら…その最後の虚獣に備えて、また色々しておかなければいけませんね」
カライモン「にしても……前回のあれを超える虚獣との闘いか。そろそろ私の奥の手用引き出しも厳しくなって来たな」
レミ「ちょっと、不安になる事言わないでよ。土壇場で奇策に博打を打つような戦いは、もうこりごりなんだから」
俺「いや………そればっかりは、俺達のスタイルみたいな物なんだからどうしようも無いだろ」
また一つ……世界の存亡を賭けた戦いを乗り切った俺達。
またいつものように、仮初の日常に戻り…また皆で次の戦いに備える。そんな、いつも通りの展開になる。
………そう思っていた…そう願っていたんだが………
何故だろうか…レミを見る度に、違和感を覚え………
俺の中の何かが、警笛を鳴らし続けているような気がした。
67 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/29(水) 23:41:19.08 ID:GNOPPyCco
○はじまり
アイツの無事を確認して…家に帰る道の途中。
アタシは……今までの事を思い出していた。
これまでの戦い…虚獣との闘い……そして…アイツの言葉。
仮定に可能性を掛け合わせて…希望的観測を排除した上で、あえて自分の望まない仮定を当て嵌める。
アタシ「もしも…全部逆だったんなら……信じてた物が間違いだったなら…」
これはあくまでアタシの想像…何の根拠も無い、ただの妄想。
なのに……何故か、導き出したその答えがしっくりと来てしまった。
アタシ「あぁ………やっぱり…そうなんだ」
魔法少女でも大事な人を誰も救えない ―完―
68 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/06/29(水) 23:58:27.72 ID:GNOPPyCco
今回は長い間休載してしまった挙句、スレ落ちまでしてしまい申し訳ありません。
残す所最終章のみとなりました本作に、今回もお付き合い頂きありがとうございました。
また、上記の理由によりスレを跨いでの総レス返しを失礼します。
前スレ
>680 >690 その辺りはまた最終章で!
>682 699-702 お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。ちなみに…どちらかと言うと、なろうの方が加筆とか面倒になって放置気味だったりします。
>683 無茶を!!…相変わらずどこからもオファーは来ません(´・ω・`)
>684 >699 保守ありです!
>685 1つのレスで終わりそうだったのに、この体たらくですよ!
>689 >694 乙ありです!
>696 ぐぐって来ました。最近のスパロボはやってないので詳細は判りませんが、近い物はあるかもです。
>697 この作品……一番胸が大きいキャラでもCカップしか無いんだぜ?
>698 パッドを幾ら入れても、その根源は変わらないと言うのに…何という虚しい事を。
今スレ
>7 ご心配おかけしました。改めてここから頑張って行こうと思います。
>23 乙ありです!そしてただいまです!
>39 昔表紙だけ見た覚えがあったので、ぐぐってみたら…ファフナーみたいなキャラデザみたいになっててふきました
>47 活躍の場はありましたが、無双までは……だってユズですし(ボソッ)
仕事の関係で、また少し進行が遅れてしまうかも知れませんが…
次章、最終話「だってどうしても大好きだから」をお楽しみに!
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/30(木) 10:43:50.70 ID:JxCsBF0DO
一旦乙
3人の精神体…光と闇と後だれだろ?
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/03(日) 07:43:39.91 ID:gyQNQjr6o
そういえば魔法少女ダークストーカーって
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sagd]:2016/07/19(火) 07:47:04.88 ID:OvBPyJFDO
(*‘ω‘ *)
72 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/07/20(水) 21:26:54.62 ID:G8Avh2PSo
○じぶんの
自分でこんな事を言うのも何ですけど…
私は…内向的で、他人との距離を置きたがり…そのくせ、自分と他人の違いや評価を気にしてばかり居た……
いわゆる、友達を作れないタイプの子供でした。
そう、彼女……レミちゃんに出会うまでは。
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/20(水) 21:31:28.04 ID:G0txfInDO
おっ
74 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/07/20(水) 21:45:01.39 ID:G8Avh2PSo
≪だって どうしても 大好きだから≫
○はじまり
始まりは多分…風邪をひいて、病院へ行った時。
当時はインフルエンザが流行していて…血液検査をする事になりました。
私は注射が苦手で…涙ぐみながら我慢していた事は、今でも覚えています。
その時の検査結果は、ただの風邪でした。
ですが…この話は、そこで終わりではありませんでした。
父「ふざけるな!娘はまだ小学生なんだぞ!!」
誰か「それは重々承知の上です!ですが…」
母「…帰って下さい、これ以上話す事はありません。それと…娘にもこの事は話さないで下さい」
誰か「………判りました。ですが…どうか、ご一考下さい」
ある日…風邪も治って通学を再開した日の、学校から帰って来た時の事です。
玄関の前まで来て、家に入る直前…私の耳に飛び込んで来た、父の怒号…
普段の温和な父からは想像も付かないようなその声と…聞いた事の無い誰かの声。
入る事を戸惑い…立ちすくんでいた私を余所に、少し経ってから玄関が開き……声の主であろう人物が姿を現しました。
誰か「貴女は………そうですか、貴方が…」
私「あの…私に何かご用でしょうか?」
誰か「あ、いえ……何でもありません。お元気で」
私「え?あ…はい、ありがとうございます」
声の主…髭の生えた白髪の男性は、それの言葉だけを残して立ち去りました。
私「あの…お父さん、お母さん。さっきの人って…」
母「大丈夫、ハルには関係無い人だから」
父「ちょっと大人の話をしてただけから気にするな。それより晩飯にしよう」
私「………うん」
両親が会話を打ち切り…私はそれ以上の追及をしませんでしたが…
この話は、まだまだ続きます。
75 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/07/20(水) 22:06:20.76 ID:G8Avh2PSo
○てんらく
父「茅野が失踪!?まさか……4千万!?そんな馬鹿な話が………」
母「あなた…茅野さんって―――」
真夜中…ふと目を覚ました私は、両親の会話を耳にしました。
両親の話し相手らしき人物の声は聞こえず…電話をしているようでした。
そして、次の日の朝……父の友人が失踪して、その連帯保証人になっていた父が…返済を迫られている事を知らされました。
母「あなた……やっぱり不渡りになっていたわ」
父「どうして…どうしてこんな時に限って、こんな事ばっかりが続くんだ!!」
連日のように、真夜中に怒鳴り声を上げる父…それを必死になだめる母。
最初の連帯保証人の件以降、両親からその辺りの事情を話される事はありませんでしたが…
余り良く無い事が起こっている事だけは、幼い私にも判りました。
母「弁護士さんの方は…どうでした?」
父「減額は出来るみたいだが…それでも。この家を売ったとしても……やはり、自己破産しか残って居ないのか」
母「あなた…」
いつものように…両親が真夜中に帰って来てからの会話。
けれど、この日はいつもと違いました。
76 :
◆TPk5R1h7Ng
[saga]:2016/07/20(水) 22:22:56.99 ID:G8Avh2PSo
家の中にインターホンが鳴り響き…暫くしてから、覚えのある声が聞こえました。
誰か「この度は…ご友人の件、真に残念です」
父「いえ、これも身から出た錆でしょう。私の考えが浅かったのが原因です」
母「それより…本日はどう言ったご用件でしょうか?娘の件でしたら、先日お断りした筈ですが?」
誰か「いえ、本日は…少しでもお力になれれば…と」
父「これは……そんな…受け取る事など出来ません!!」
誰か「いいえ、受け取って下さい。貴方達のためにも…お嬢さんのためにも」
父「娘の……いや、そうか…そうだな、そうなんだな!?」
誰か「……どうなさいました?」
父「アンタか…アンタなんだな!?全部アンタが仕組んだ事なんだな!?全部…全部…!!娘目当てにこんな事をしたのか!?」
誰か「な…何を?!」
母「あたな!!」
父「茅野の失踪も…取引先の倒産が相次いだのも…全部あんたが、やったんだろ!?なぁ!?」
母「止めて…止めて下さい!あなた!!」
誰か「………こんな状況では、違うと言っても信じては貰えないのでしょうね」
父「当たり前だ!どう考えたっておかしいだろう!!信じられる訳あるか!!」
誰か「では…あえてその前提の上で話をしましょう」
母「え……?」
誰か「私は…娘のためならば、何だってします。それこそ、必要とあれば今回のような事もするでしょう」
父「っ………開き直るのか!!」
誰か「私が幾ら卑劣と罵られようと構いません。ですが…娘は別です!どうか…どうか、お願いします!!」
父「――――っ!!帰れ!帰ってくれ!!」
父の怒号の後…少ししてから、誰かが玄関から出て行く音が聞こえ……その日の出来事は終わりました。
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