勇者「ハーレム言うなよマジで」戦士「5だぞっ!」

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219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/11(木) 18:36:38.19 ID:9w4rr01SO
世界の創造の話まで描くのか…相変わらずこの>>1の構成力には脱帽だわ

にしてもスーちゃん可愛いよスーちゃん
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/15(月) 03:05:08.25 ID:vr/+cVCO0
乙つ
221 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:46:32.19 ID:lJLa1x5u0
…………

コンコン

給仕「エジンベア勇者様」



ガチャ


エジンベア勇者「……なんだい?おや、君は」


給仕「あ、エジンベア勇者様。お客様がお見えになられたとの事でしたので伺いました。お茶はおいくつ――……」

エジンベア勇者「ああ、いいのさぁ。気にしなくて。お茶はいらないよ……それより」

ナデ…

エジンベア勇者「君はいつになったら給仕としてではなく、女性としてこの部屋をノックしてくれるのかな……?」

給仕「い、いやですわっ、もうっ、からかわないでくださいまし……失礼しますっ」

タッ

エジンベア勇者「ふふ……時間の問題、かな?」


イシス僧侶「うわー、見ました?今の」


ポルトガ勇者「ああ、歯が浮くったらありゃしねえ」


イシス勇者「感心しないね」


イシス魔法使い「ちょっと強引過ぎるのも考えものね」


イシス戦士「心底どうでもいい」


エジンベア勇者「君ら自分達の立場わかってるのかよお!!!?」


――エジンベア城・エジンベア勇者の執務室――


スタスタ ドカッ


エジンベア勇者「まったく!外で仕事してた僕が偶然君らを見つけたからいいものの!」

エジンベア勇者「もし見つかったのが他の国連の勇者だったらどうするつもりだったのさあ!?」

ポルトガ勇者「それに関しちゃマジで感謝してるよ。ありがとな」

イシス勇者「まさか他の勇者の人たちも来てるとは思わなくて」

エジンベア勇者「はあ……ま、いいんだけどさ」

イシス僧侶「エジンベア勇者様は何のお仕事だったんですか?」

エジンベア勇者「んー?……まあ色々だよ。港の方でね」

イシス勇者「港?」

エジンベア勇者「積荷やらの確認さ。最近新しくできた港町に行く船の積荷」

ポルトガ勇者「なんでまたそんな役目……お前まさか苛められてるの?」

エジンベア勇者「むかつくんですけど」

ボリボリ

エジンベア勇者「色々とさ、大きな取引があるんだよお。僕も船に同乗しなきゃいけないんだ」

イシス勇者「……大きな取引って?」
222 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:47:00.87 ID:lJLa1x5u0
エジンベア勇者「あのさ」

ギシッ


エジンベア勇者「質問したいのは、本来ならこちらの方なんだよねえ」


エジンベア勇者「君らはなんでここに居たんだい?」


エジンベア勇者「どうやって入国した?何の目的で?何故隠れてこそこそ動いていた?」


一同「「「……!!」」」


ポルトガ勇者(……やっぱり話題は逸らせねえか。だよな)

イシス勇者(どうしよう、勇者くんも一緒だっていうのは話せないし……渇きの壷を手に入れるためっていうのも言えないし)

イシス勇者(何かうまい言い訳は――)

エジンベア勇者「と、いっても……見当はつくけどね」

イシス勇者「へっ?」


エジンベア勇者「……――今の、エジンベアの裏の動きについて……嗅ぎつけてたんだろ?」


ポルトガ勇者「?」

イシス勇者「?」

イシス僧侶「?」

イシス魔法使い「?」

イシス戦士「?」


「「「「「????」」」」」


エジンベア勇者「……えっ、ちがうの」


イシス勇者「裏の、動き?」

ポルトガ勇者「おいおい、ちょっと待てなんだそりゃ」

エジンベア勇者「あー……いや、いいんだ。違うならそれで」

ポルトガ勇者「いいわきゃねえだろ。今のは聞き捨てならねえ言葉だったぞ」

エジンベア勇者「忘れてくれないかい?」

イシス勇者「そんなの無理に決まってるじゃないか!」

エジンベア勇者「……はあ……墓穴ほっちゃったなあ」

スクッ

エジンベア勇者「少しね、エジンベア大臣が妙な動きをしてるんだ。それが気になっててね」

イシス僧侶「エジンベア大臣様が?エジンベア王様じゃなくてですか?」

エジンベア勇者「王は企みごとなんてできないよ。馬鹿だし」

イシス戦士「ひどい」
223 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:48:11.15 ID:lJLa1x5u0
エジンベア勇者「ともかく、それだけさ。別に僕もその動きをどうこうしようってつもりは無いしね」

イシス勇者「えっ」

ポルトガ勇者「……なあ、エジンベア勇者よお」

エジンベア勇者「なんだい?」

ポルトガ勇者「もしかして、今回の大きな取引ってのも……もしかしてその大臣絡みじゃねえのか」

エジンベア勇者「……」

ポルトガ勇者「お前、それを知ってて、知らん顔で協力してんのかよ?」

エジンベア勇者「……それが何かいけないのかい?」

ポルトガ勇者「お前勇者だろうが!妙な事見かけたんなら――!」

エジンベア勇者「そう。僕は勇者だよお?」

エジンベア勇者「“国連の犬”。それが勇者だ」

エジンベア勇者「何で君が『自分は違う』って顔で憤ってんだい?」

ポルトガ勇者「……!!」

イシス勇者「でも、もしかしたらその妙な動きがいずれ色んな人に影響を与えるかもしれないじゃないか」

エジンベア勇者「……あのさあ、皆が皆、君らと同じ思考してるって思わないでくれるかなあ?」


エジンベア勇者「上に言われた事こなして。魔物と戦って雑務をして。給料貰って綺麗なお姉さん方を抱く」


エジンベア勇者「それが僕にとっての『勇者』なんだよねえ」


イシス勇者「……」

ポルトガ勇者「……ああ、そうかい」

ガタッ

エジンベア勇者「どこに行くんだい?」

ポルトガ勇者「帰るんだよ。少しだけでも匿ってくれてありがとよ」

エジンベア勇者「はあ……余計な事する、って顔に書いてあるよ?」

ポルトガ勇者「へえ。他の文字は読み取れねえか?」

エジンベア勇者「僕の事を理解できない、って。そう書いてある」

ポルトガ勇者「解読ありがとよ」

ガチャ…

ポルトガ勇者「イシス勇者、お姉さん方。行こうぜ」

イシス勇者「うん」スクッ

エジンベア勇者「ったく……」

スッ 


チリンチリン


イシス勇者「……?」

ポルトガ勇者「おい、なんだその鈴」

エジンベア勇者「何って、合図だけど?」
224 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:48:40.11 ID:lJLa1x5u0


ガチャッ!!

ゾロゾロ


イシス勇者「!!?」

ポルトガ勇者「うわ!!?」

イシス僧侶「なっ……!!」

イシス魔法使い「えっ、なになに……?」

イシス戦士「……」ジャキッ


黒服の男達「「「……」」」


エジンベア勇者「……早いねえ」

黒服の男「隣の部屋で待機してたからな。何の用だよ?」

エジンベア勇者「この人らをこの城に暫く軟禁してもらえるかい?」

ポルトガ勇者「なっ……!!?」

イシス勇者「ちょっと!エジンベア勇者君!」

エジンベア勇者「言ったろ?君ら自分の立場をわかっちゃいないんだよ」

エジンベア勇者「客室もあてがうからさ。しばらく大人しくしていなよ」

ポルトガ勇者「そんなもん俺らが――」

ジャキッ

黒服の男「……おう、動くなよ」

ポルトガ勇者「あ?やんのかコラ」

イシス僧侶「ポルトガ勇者様!落ち着いて!」

イシス魔法使い「ここで騒ぎを起こしても状況が悪化するだけだわ」

エジンベア勇者「さーすがイシスの美女達は話がわかるねえ」

エジンベア勇者「ちなみに、逃げようとしてみ?この男達が全力で阻止するよ」

ポルトガ勇者「俺らが負けるとでも思ってんのかよ」

エジンベア勇者「いーや?勝つだろうね……でも」

エジンベア勇者「こいつらは、死ぬまで君らを阻止するよ?君らが手加減して戦えるなんて事はないだろうね」

エジンベア勇者「……君らがここから逃げる時は。この黒服達を殺した時だ」

ポルトガ勇者「……!」

エジンベア勇者「自分の目的の為に、普通の人間である彼らを殺すかい?……“勇者”のおふたりさん?」

イシス勇者「……っ」

ポルトガ勇者「……いい趣味してやがるぜ、本当に」

エジンベア勇者「ありがとう。自身はあるんだ」ファサッ
225 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:49:12.84 ID:lJLa1x5u0


バタン


ツカツカ…

エジンベア勇者「さて、と……」ポキポキ

エジンベア勇者(あとは黒服に任せていれば大丈夫かな。僕は船出の準備でもするかねえ)

タッタッタ

エジンベア兵「エジンベア勇者様!」

エジンベア勇者「ん?どうしたんだい?」

ザッ

エジンベア兵「失礼します、実は――……」

ボソボソ

エジンベア勇者「……」

エジンベア兵「……如何しましょう」

エジンベア勇者「はあ……いや、いいよ。僕が行く」

エジンベア兵「はっ。ありがとうございます」

エジンベア勇者「君は持ち場に戻っていいよお」

エジンベア兵「畏まりました」

スタスタ

エジンベア勇者「全く……どうしようもないね」

エジンベア勇者(ついでに伝えなきゃいけない事もあったしねえ)


…………
―――――――――――


スタスタ


マーゴッド「だーかーらー。ごめんなさいって言ってるじゃない」

勇者「言われましても僕ら急いでるんですよおおお?」

マーゴッド「お詫びに渇きの壷は貴方達にあげるってば。さっきも言ったけど」

勇者「う、うーん……でもいいんですか?そんな簡単に。ありがたいですけど」

マーゴッド「もともと誰も使ってないモノだったし。無くなったってばれないんじゃないかしら」

マーゴッド「それに!……あたしはこのコの事気に入っちゃったしね♪」ギュウ

スー勇者「うー……くるしいです」

マーゴッド「ねえ、貴女私の専属のメイドにならない?お洋服いっぱいあげる」

スー勇者「お、お洋服……!?」ピクッ

勇者「スーちゃんを攫おうとしないでくれますう?」

マーゴッド「貴方は本当につまらないわね」

勇者「よろしくどうぞ」
226 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:49:59.88 ID:lJLa1x5u0
マーゴッド「でもあんな壷、何に使うの?」

勇者「えっと……まあ、いろいろと」

マーゴッド「いろいろって何よ。やましい事?」

勇者「やましい事ってワケじゃないんですけれどね」

マーゴッド「はっきりなさいな」

勇者「んー……説明が難しいな」


マーゴッド「お尋ね者の貴方がしようとする事だもの。そんな面白そうな事ちゃんと聴かなきゃいけないわ」


勇者「ブフンッ」

スー勇者「えっ、あっ、え?」ワタワタ

勇者「ちょ、ちょっと違いますよ?何を言って」

マーゴッド「貴方が噂になってる魔族の男でしょ?勇者って名前だっけ」

勇者「ちちちちちちち違うです」ギュウウウ

スー勇者「ご主人様!手がいたいです!力強いです!」

勇者「ご、ごめんスーちゃん!」

マーゴッド「で、そっちが行方不明になったっていう国連のスー勇者ね?」

スー勇者「ちちちちちちちちちがうれす」ギュゥゥゥゥ

勇者「スーちゃん!手が痛い!爪食い込んでる!」

マーゴッド「仲いいわねあなた達。っていうかまだ手繋いでたの」

マーゴッド「でも安心なさいな。別に兵に突き出すつもりなんてなくてよ」

勇者「えっ……」

マーゴッド「あら、ご不満?」

スー勇者「いえ、でもなんで」

マーゴッド「さっきも言ったでしょ?貴女が気にいっちゃったのあたし」

マーゴッド「それに……貴方が本当に悪い魔族なら私にいちいちかわきの壷の場所なんて聞かないで皆殺しにして奪えば良い事だもの」

勇者「……でも、なんで僕がそのお尋ね者だってわかったんですか?」

マーゴッド「一応私の知り合いから“ガルナの塔の変”での事情は聞いたの。貴方の特徴もね」

マーゴッド「ふわっとした毛に、青い目、珍しい髪の色、女々しい顔……特徴通りね。うん」

勇者「女々しい顔は不本意だなぁ」

マーゴッド「腰には銅の剣も下げているし、えっと……貴方布被っただけで変装したつもりなのそれ」

勇者「うわあすげえ不安になってきた今さら」

マーゴッド「そっちの貴女は公用語が不安定、黒髪、珍しい肌着のような格好、羽根の髪飾り」

マーゴッド「そして国連のスー勇者はガルナの塔の変後にいきなり姿を消した……ってトコロから推測したの」

勇者「……さすが、お姫様は頭がいいですね」

マーゴッド「あら、貴方も察しがいいじゃない」

勇者「さすがにもう分かりますよ。その教養に城の関係者しか入れない所も近道も把握してるってところを考えれば」

マーゴッド「なのに畏まらないのね。ふふっ!いいわ、貴方も面白くなってきた!私に仕えてもよくてよ?」

勇者「殺されますって、国連の人らに」

マーゴッド「そうね」
227 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:50:37.24 ID:lJLa1x5u0
勇者「それに……さっき仰った知り合いって、えっと……」



ザッザッザッ


勇者・スー勇者「「!!!」」

勇者(結構な人数の足音が……!しかも甲冑の揺れる音も)

マーゴッド「……二人共、隠れてなさい。その花瓶の後ろ辺りに」

勇者「すみませんっ……!恩に着ます!」


ザッザッザッ

ザッ


エジンベア勇者「……ああ、姫。こっちにいらっしゃいましたか」


スー勇者(エジンベアさん……!)

勇者(うわー、ジャストタイミング……エジンベアの勇者の人だ)

マーゴッド「何の用?」

エジンベア勇者「兵から姫が怪しい者と行動していると聞きまして」

マーゴッド「怪しい者……?ああ!さっきの果実商達ね!もう街に帰ったわよ?」

エジンベア勇者「果実商?」

マーゴッド「ええ。リンゴについて聞きたい事があったから詳しい者達を呼んだの。いけなかった?」

エジンベア勇者「いえ、とんでもございません」


スー勇者「……?」

勇者「どしたのスーちゃん」ヒソヒソ

スー勇者「なんだか……エジンベアさん、話し方が前と違うです」ヒソヒソ

勇者「そうなの?」ヒソヒソ

スー勇者「えっと……前は、もっと、こう……女の人には、えっちな話し方でした」ヒソヒソ

勇者「えっちな話し方てなによ……でも仕える姫様の前だもん。それはしょうがないんじゃないかな」


マーゴッド「そう。じゃあもういいでしょ?あたしは調べる事が沢山あるの」

エジンベア勇者「はい。失礼しました……あともう一つ」

マーゴッド「何かしら?」



エジンベア勇者「姫の部屋に置かれていた“渇きの壷”は、返していただきました」


エジンベア勇者「今日その為に部屋へ給仕が立ち入ったので報告させて頂きます」


マーゴッド「…………――は?」

228 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:51:20.24 ID:lJLa1x5u0


勇者「!!!?」


マーゴッド「ちょっと、何のつもりかしら」

エジンベア勇者「随分前から買い手を探していたのですが、その買い手が見つかったのです」

エジンベア勇者「王から宝物庫の壷を持って来いという命令を頂いた直後、給仕が貴女様の部屋でそれを見かけたというので」

マーゴッド「勝手に持って行ったって事?」

エジンベア勇者「……本来あれは城の宝です。現在誰も使っていないとしても、あれは貴女様のモノではございません」

マーゴッド「その理論で言えば城のモノでもないわね?エジンベアの宝物庫は泥棒博物館と言われているのくらい知っているわ」

エジンベア勇者「あまり私を困らせないで頂きたい」

マーゴッド「さっき道理で宝物庫に何も無いと思ったのよ。宝、全部売ったのね?お父様……いえ、大臣かしら?」

エジンベア勇者「姫、宝物庫には何用で?」

マーゴッド「……」

エジンベア勇者「……何を企んでいるのかは存じ上げませんが、大人しくなさってください」

エジンベア勇者「壷はもう契約港の船に積まれました。もう取りやめもできませ」


パアン!!


エジンベア勇者「っ……」

マーゴッド「…………久々に話したと思ったら、随分つまらない話だったわ」

エジンベア勇者「……君達。姫を部屋に」

兵達「「「はっ!」」」

ザッ

エジンベア兵「さあ、姫様」

エジンベア兵2「こちらです」


マーゴッド「……」


スタスタ……


エジンベア勇者「……はあ」

エジンベア勇者「…………変わんないねえ、マーゴッドも……」ボソッ

エジンベア兵3「はい?何か仰いましたか?」

エジンベア勇者「いや?それじゃ僕は買い手と会って来るよ。姫や城は任せたよ」

兵達「「「畏まりました!!」」」


…………
……

229 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:51:48.66 ID:lJLa1x5u0
――――――――――――――



――エジンベア城・マーゴッドの部屋――


給仕「それでは姫様、失礼します」

エジンベア兵達「「「失礼します」」」


バタン


マーゴッド「……」

スタスタ

マーゴッド「……本当に無くなってる」

マーゴッド「あーもう!」

ボフッ

マーゴッド「…………」

ゴロン


マーゴッド「……エジンベア勇者の、馬鹿」



「……お姫様」


マーゴッド「!!?」ガバッ!!


シーン…


マーゴッド「……え?」

マーゴッド「誰……?今の声は」

「いきなりすみません、さっきの二人です」

マーゴッド「え!?どこどこ!?」

「今はちょっと姿を消してます。すみません忍び込んじゃって」

マーゴッド「……っ!あなた達、いよいよをもってステキだわ……!」キラキラ

「なんすかそれは……」

「ご主人様はステキです!」

「スーちゃんありがとう、でもちょっと話の腰折らんといてね。勿論スーちゃんもステキなので」
230 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:52:26.08 ID:lJLa1x5u0
マーゴッド「で?どうしたの姿を消して」

「実は姫様にお願いがありまして……」

マーゴッド「お願い?」

「はい。実はここには五人の友人達と一緒に来たんですけど途中で逸れちゃって」

マーゴッド「五人の友人ね?それがどうしたの?」

「もしその五人の友人に会う事がありましたら、僕とスーちゃんは無事だと伝えてくれませんか?」

マーゴッド「いいけれど……あたしがわかるかしら?五人の友人なんて」

「実は、イシスの勇者とポルトガの勇者が一緒で」

マーゴッド「!!!」

「……もしかしたら、この城に来るかもしれないんで、その時は秘密裏に伝えていただけませんか」

マーゴッド「ふふっ……!魔族の男に国連の勇者が三人も関わってるなんて……面白いわね……!!」

「ご主人様は魔族じゃないです!」

「スーちゃん、いいって。ありがとう」

マーゴッド「ちょっといじわるで言っただけよ。謝るわ……そして。そのお願い聞き入れたわ」

「あ、ありがとうございます!」

マーゴッド「で、あなた達はその壷を追うのかしら?」

「はい。なんで今すぐ行かないと」

マーゴッド「急げば間に合うと思うわ。契約港のエジンベアの国印が掘られた大きな帆船よ」

マーゴッド「……――さ。聞き入れたから早く行きなさいな」

「本当に色々とありがとうございました」

マーゴッド「いいのよ。あたしも楽しませてもらったわ。ありがとう」

「何かいずれお返しはさせて頂きます!」

マーゴッド「ん?んー……そうね、だったら」


マーゴッド「いつか丸一日スー勇者のお洋服を着せ替えて遊びたいわ」


スー勇者「お洋服っ!?……あ、え、でもっ……」ソワッ

勇者「勿論いいっすけど僕も同席していいんすよね」クワッ

スー勇者「ご主人様っ!?」

マーゴッド「着替え中はダメよ」

勇者「それは勿論です」

マーゴッド「だったらいいわ」

勇者「恩に着ます」


ガシィッ!!!


スー勇者「お姫様、ご主人様の事見えてないですよね!!?凄く綺麗に手を握り合った音がしたです!!!」


231 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:52:55.51 ID:lJLa1x5u0


――エジンベア港――


ガヤガヤ…


ダーマ勇者「ふあ……大きい船」

エジンベア兵「我が国一の輸送船です。立派なものでしょう」

ダーマ勇者「はい!でも私も何か搬入を手伝わなくてもいいんですか?」

エジンベア兵「それは下々の仕事です。ダーマ勇者様は船旅に備えて休んでいらしてください」

ダーマ勇者「下々なんて……人の仕事にそんなもの」

スタスタ

エジンベア勇者「おやぁ、もう準備できてるのかい?ダーマ勇者」

ダーマ勇者「エジンベア勇者様。お疲れ様です」

エジンベア勇者「お疲れ様。これから船旅だね」

エジンベア勇者「嬉しいね……君みたいな綺麗な女性と船旅なんて、まるでバカンス」

ダーマ勇者「お仕事です!ちゃんとなさって下さい!」

エジンベア勇者「はは、厳しいね。君はいつも」

ダーマ勇者「あれ?」

エジンベア勇者「どうしたんだい?」


ガヤガヤ


ダーマ勇者「なんだかやたら大きな荷物……あれは皆さん何を運んでいらっしゃるんですか?」

エジンベア勇者「さあ……なんだか色々運んでるみたいだよ?」

エジンベア勇者「これから行く港町は新しくできた町でさあ、国連が世界各所のポルトガ領港経由で物資を運ぶ時の中継地点になってるんだ」

ダーマ勇者「んもう、それくらいなら存じています!」

エジンベア勇者「で、その街はここからなら五日間くらいの場所にある……五日間は女性にはきついかもしれないが、大丈夫かい?」

ダーマ勇者「ご心配ありがとうございます。ですが私なら大丈夫ですよ」

エジンベア勇者「ならいいんだ」


「搬入、全て完了致しました!」


エジンベア勇者「お、完了したみたいだ。それじゃ乗り込もう」

ダーマ勇者「……」

エジンベア勇者「……どうしたんだい?」

ダーマ勇者「……いえ」

ダーマ勇者(この船から、なんだか……魔物の気配が)

ダーマ勇者(なんでかな……)


…………
……

232 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:53:32.83 ID:lJLa1x5u0


……
…………


――船倉――


シーン…


ガ

ガコッ……


勇者「……」


キョロキョロ

勇者「……船倉の中には誰もいないみたいだ」

ヒョコッ

スー勇者「本当です?」

ヒョコッ

スラお「みんないないね」


<……。……。


勇者「でも船倉の扉の前に見張りがいるみたいだから隠れてよう」

スー勇者「はい」

勇者「それじゃ、上蓋閉めるよ」

ガコ


――大貨物の箱の中――


勇者「ふー……ごめんね、スーちゃん。狭くて」

スー勇者「大丈夫です!」

スラお「スーちゃんをこんなめにあわせるな!ばかゆーしゃ!」

勇者「スラおちょっと声は静かに」

スラお「ばかゆーしゃ!」ヒソッ!

勇者「言い直すなや」

勇者「しかし……こんな無理やり忍び込むことになるとは」


―――――――――――――


――エジンベア港――


タッタッタ!!

勇者『間に合ったか!?』

スー勇者『ご主人様!もうきえさり草の効果が!』

勇者『えっ!?じゃあ追加で』

スー勇者『もうないです!』

勇者『マジすか!!!』
233 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:54:00.77 ID:lJLa1x5u0
勇者『と、とりあえず今のうちに忍び込まなくちゃ!』

スー勇者『だめですっ!船の場所まで、持ちそうに』

勇者『っ!』


『おーい、それも運び入れてくれ』

『うーっす』


勇者『!!!スーちゃん!!』グイッ

スー勇者『わわっ!?』

…………
……



―――――――――――――


勇者「……本当に間一髪だった」

スー勇者「すみません……きえさり草が、もう無くなって」

勇者「あー、ごめんそういうつもりじゃなくってさ」

スラお「でもここいーにおい!」

勇者「ん。幸いなのが」


ゴロッ


勇者「忍び込んだのがリンゴを入れた箱だった事かな」

スラお「ごはんにこまらない!」

スー勇者「うー……でも泥棒みたいです」

勇者「忍び込んだ時点でもう泥棒なのよ……ここは腹をくくろう。モヤっとするけれどね」

勇者「でもどのくらいの船旅なんだろう?それによっても色々と問題が出てくるな」

スー勇者「頑張るですけど……もし一月の航海でしたら」

勇者「ううん……まずいかもね……この箱の中だけじゃ」

スー勇者「そんなに一緒にいたら、その……私、臭いです」

勇者「あっ、そこ?そんなところの心配してるのスーちゃん?」

スー勇者「そんなことじゃないです!ご主人様に臭い匂い、嗅がせられないですっ!」

勇者「だ、大丈夫だって!スーちゃんの匂いならなんでも気にならないよ!寧ろなんでもいい匂い!」

スー勇者「えっ」
234 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:54:39.56 ID:lJLa1x5u0
勇者「……冷静に考えると今の発言はやべえな僕」

スラお「へんたい!」

勇者「ちがうって!と、とにかく!そんな事気にしないから!ね?」

スー勇者「は、はい……えへへ」

勇者「なんで嬉しそうなのさ」

勇者「……あー、それとさ。スーちゃん」

スー勇者「はい?」

勇者「危なくなったら僕に口裏を合わせてね。スーちゃんを攫ったって体で演技しよう」

スー勇者「!!!そ、そんなっ!だめですっ」

勇者「いいから。スーちゃん」

スー勇者「でも」

勇者「こればっかりは僕のいう事を聞いてもらう」

スー勇者「……!」

勇者「……」

ナデ

勇者「大丈夫だって!きっと船もすぐに着くよ」

スー勇者「……はい」

勇者「あと今になって思ったけど」

スー勇者「はい?」

勇者「トイレどうしようね……」

スー勇者「あっ……」


…………
……

235 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:55:13.97 ID:lJLa1x5u0
――――――――――――――


〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜


勇者「って事があったんだよ」

スー勇者「ふふっ!ふふふっ!」

勇者「でも僕はそこで思っちゃったんだけど――……」


〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜


スタスタ…


勇者「……行ったみたいだね」

スー勇者「見回りの人、いつ来るかわからないです」

勇者「だね。用心しておこう」


〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜


勇者「しりとり」

スー勇者「りんご」

スラお「ごめす」

勇者「誰だよ」


〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜


スー勇者「っ、ぐすっ……!!」

勇者「スーちゃん!おならなんて全然気にしないって!泣かないで!」

スラお「くちゃい!」

勇者「お前ぶっ殺すぞ!!?」


〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜


勇者「ぐー……ぐー……」zzz

スラお「ぐむー……ぐむー……」zzz

スー勇者「っ、あっ……だ、だめですっ、ご主人様」グイッ

勇者「んむ……むにゃ」ゴソッ

スー勇者「ゃっ……ぁ」ピクンッ


〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜
236 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:56:41.01 ID:lJLa1x5u0
〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜


ガコッ

勇者「おっけー!今なら見張りもいなかった!」

スー勇者「すっ、すみませんですっ!」ダッ

勇者「気をつけてね!……ふー、僕も漏れそうだった」

スラお「にんげんってたいへん。ゆーしゃきらい」

勇者「それ語尾か何かなの?」


〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜


勇者「そうそう。発音はそんな感じ」

スー勇者「ありがとうございますです!」

勇者「スーちゃんは飲み込み早いね。えらい」ナデナデ

スー勇者「えへー」


〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜





……
…………



――甲板・先端付近――


ダーマ勇者「……」

スタスタ

エジンベア勇者「どうしたんだぁい?眠れないのかい?」

ダーマ勇者「あ、エジンベア勇者様……いえ」

ダーマ勇者「ちょっと、この船から妙な気配を感じていまして」
237 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:57:11.52 ID:lJLa1x5u0
エジンベア勇者「妙な気配?ってーと魔物の?」

ダーマ勇者「はい」

エジンベア勇者「んー……ま、大きな船の造りの隙間に弱い魔物が住んでるなんてよくある事だしね。気にしない方がいいさ」

ダーマ勇者「ですかね……」

エジンベア勇者「そ。でもそれでも怖いなら……どうだい?今夜は僕の船室で、できればベッドの中で朝まで……」

ダーマ勇者「お断りします」

エジンベア勇者「即答だねぇ……」

ダーマ勇者「夜が明ければもう目的地に着いて仕事が始まります。夜通しお喋りなんてしていたら支障をきたします」

エジンベア勇者「ンッ?あっ、うん……?そうだね」

ダーマ勇者「……まして、明日は」

エジンベア勇者「……緊張するかい?」

ダーマ勇者「それはもう……ムオル勇者さんを超える、生ける伝説ですから」




エジンベア勇者「“皇帝”……――糾えるソクラス」



ダーマ勇者「……どんな方なのでしょうね……」




ザァン… ザァン……


238 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:57:44.80 ID:lJLa1x5u0
…………
……





ガロガロガロ



ゴォォン……



勇者「……今の音」

スー勇者「多分、錨をおろす音でした」

勇者「……スーちゃん、スラお。リンゴを掻き分けて、できるだけ深く潜ろう」

スー勇者「はい」

勇者「そして……今から会話は無しで」

スー勇者「っ」コク

スラお「わかった!ゆーしゃくたばれ!」

勇者「聞いてねえな?」


バタン!!


勇者・スー勇者「「!!」」


スタスタスタ!


「入り口付近の小さいヤツから運べ!」


「それはいい!例のヤツは船の中に置いたままでいい!」


「せーのっ!」


ガコンッ!!


勇者「!」

勇者(箱が動き出した……できればこのままどこかに放置されるか、市場に持っていかれますように……!)

勇者(もし国連兵が多い場所で開けられたら終わりだ。どうか……!!)


「これは何の箱です?」


「それはリンゴだ!果物類は一度倉庫へ運べ!」


「大聖堂横にある倉庫だ!運び終えたらまた戻って来い!」



…………
……


239 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:58:11.26 ID:lJLa1x5u0


……
…………


シーン…


ガコッ


勇者「……」



――どこかの倉庫――



キョロキョロ

勇者(僕らがここに置かれてしばらく経った)

勇者(物の出入りももう長い事ないみたいだし……)

勇者「よし……今なら大丈夫みたいだ!スーちゃん!出よう!」

スー勇者「はいっ!」


スタッ


勇者「とりあえずここを抜けよう」

スタスタ

勇者「しっかし……でかい倉庫だな……」

スー勇者「天井が高いです……」

スラお「ほあー……」

勇者「あ、ここから出れそうだ」


ザッ…

ヒョコッ


勇者「……うん。外にも誰も居ない。行こう」

スー勇者「はいです……わああ」

勇者「ん?どったの?……ってうおお」



――大きな建物――



勇者「なんだこれ……すごくおおきいな」

240 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:58:44.29 ID:lJLa1x5u0
「そこは大聖堂だ」

勇者「大聖堂?全然そう見えないですね」

「ああ。まだ建設途中だからな。着工からまだ二ヶ月ってところか」

勇者「でも二ヶ月でこんなに進んだんだ……すげー……」

「国連の協力もあるみてえだしな。不本意ながら」

勇者「ところで」

「なんだ?」

勇者「…………どなたでしょうか?」

「俺か?」

バキッ ボキッ


あらくれ「……倉庫番だよ。コソ泥野郎共」


スー勇者「ひぅぅ!?」

勇者(やばいっ!逃げ――……)

グイッ!!

スー勇者「きゃあっ!!!」

勇者「!!」


あらくれ「ああん?なんだ?布被ってたから分かんなかったが女じゃねえか」


スー勇者「いたいっです……!はなして……!」


勇者「スーちゃん!!!!」

あらくれ「おっと動くなよ?大人しくしていれば」

あらくれ「痛い目には」



ぞく



あらくれ「……」



勇者「手を離せ」



ズズズ ズ   ズ  ズズ


あらくれ「……あ、う……?」



勇者「スーちゃんから手を離せって言ってるんだよ」


勇者「殺すぞ?お前」


241 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/17(水) 23:59:22.57 ID:lJLa1x5u0


あらくれ(なっ、んだ、こいつ)

パッ



スー勇者「てやーっ!!!」


バコオンッ!!!!


勇者「キパイッ!!!!」メシャァ!!



あらくれ「えぇーっ!!!?」

スー勇者「ご主人様!だめです!あぶないです!」

勇者「えっ、あう……?ス、スーちゃん?あれ?」

あらくれ(な、なんなんだ?こいつら……)

あらくれ(……まあいい)

ザッ

スー勇者「!!」

勇者「あう……?」


あらくれ「……大人しくしとけ、よっ!」



バキィッ!!!




…………
……




……
…………


スタスタ


勇者「……つ」

スー勇者「大丈夫ですかっ!?ご主人様っ」

勇者「大丈夫だよ、スーちゃん」

グイッ

勇者「うっ」

スー勇者「わわっ」

あらくれ「おら、チャキチャキ歩け。手の縄をもっときつくしてやろうか?」

勇者(……クソ、まずい事になったな……)
242 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/18(木) 00:00:35.27 ID:TrhsX2e50
勇者「あの、本当に僕らは泥棒じゃないんです」

スー勇者「何もとってないです!」

あらくれ「てめえら倉庫の中から出てきただろうがよ。んな言い訳が通用するか」

勇者(ダメか……考えろ。国連の奴らに突き出されたらおしまいだ)

あらくれ「!止まれ!」

勇者「え?」ザッ


<……!……。


あらくれ「チッ、国連のヤツらだ……別の道行くか」

勇者「え?え?」

あらくれ「んだよ。こっち行くぜ」

勇者「僕らを国連の兵に突き出すんじゃないんですか?」

あらくれ「へっ!なんで自分達の街の事をあいつらに管理されなきゃなんねえんだよ!」

勇者「!」

あらくれ「とにかくてめえらは町長の所に連れてく。てめえらをどうするかは町長が決める。行くぞ」

スタスタ

勇者(……少し、光明が見えたかも)

勇者(もしその村長を説得できたらなんとかこの街を……)


スタスタ


勇者「……ん。ねえスーちゃん」

スー勇者「はい?」

勇者「ここってどこかな……?見覚えある?」

スー勇者「いえ……見覚えはないです」

あらくれ「お前ら連行されてるっつうのに暢気すぎやしねえか?」

勇者「あの、ここってどこなんですか?」

あらくれ「ああん?……ここはな、ガルナバーグだ」

勇者「ガルナバーグ?知ってる?」

スー勇者「いえ、はじめて聞いたです……」


あらくれ「ああ、できて一年も経ってねえ町だからな」


勇者・スー勇者「「ええ!!!?」」


243 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/18(木) 00:01:07.70 ID:TrhsX2e50
勇者「で、でも町並みすっごく綺麗なんですけど!?」

スー勇者「人もいっぱいいます……!建物も高いです!」

あらくれ「あっはっは!!驚いたろ!いい町だろ!?」

勇者「え、嘘でしょ?じゃないとこんな」

あらくれ「ところが嘘じゃないんだなこれが。まあ不本意ながら国連の援助もあったみてえだが」

あらくれ「なにより町長がすげえのよ。凄腕で頭のキレるお人でな」

あらくれ「ここに町を作りたかった副町長と旅の途中の町長が一年前に出会ってこの町を創りあげたワケさ」

勇者「はー……すっごいなあ」


ガヤガヤ


勇者「うお、市場凄いですね?」

あらくれ「だろ?この町はあの市場から始まったようなもんよ」

あらくれ「町長が制度を全て取り決めてなあ。それがまた画期的で」

勇者「町長さんは凄い人なんですね」

あらくれ「おうとも!!自慢の町長さ!」

勇者(凄く嬉しそうに話すなあ)


スタスタ……


あらくれ「……ただ、最近少し不安でな」

勇者「不安?」

あらくれ「ちょっとその町長の評判がよろしくねえのさ」

あらくれ「俺はこの町には結構最初の方から居るが、新し住人が増えだして不満もいろいろ増えてなあ」

スー勇者「不満です?」

あらくれ「いろいろあるのよ、お嬢ちゃん……ま、最初は気のいい大工と行商人が殆どだったしな」

あらくれ「それがいつしかぞろぞろと……住人も俺が来た時は10人だったのが今や500人だぜ」

勇者(あ、住人自体は凄く多いわけでもないんだな)

あらくれ「町長は町を大きくしようと頑張ってるんだが……そうも思わない奴らもいてよ」

あらくれ「変な噂が沢山湧いてんだ……」

勇者「どんな噂なんですか?」

あらくれ「根も葉もないもんさ。この町の金使って宝石買い漁ってるだの、うまいもん食ってるだの」



あらくれ「町の金使ってくだらねえ骨董品買っただの」



勇者・スー勇者((わお))


244 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/18(木) 00:01:58.24 ID:TrhsX2e50
あらくれ「ん?どうした?」

勇者「いえいえいえ、なんでもないです」

スー勇者「なんでも!なんでもです!」

あらくれ「?」

勇者(え、まさか……渇きの壷の買い手って)

あらくれ「って、気付けばくだらねえ事喋っちまった……忘れてくれ」


ザッ


――立派な建物――


あらくれ「さ、着いたぜ」

勇者「おお……立派だ」

あらくれ「へへ!だろ!大工の連中が……ってもうこのくだりはいいんだよ」

スタスタ

ガチャッ

あらくれ「オラ、入れ」

勇者「は、はい……行こう。スーちゃん」

スー勇者「はい」


スタスタ


勇者「あの、ここは?」

あらくれ「ここがこの町の役場だ」

勇者「役場……立派だけど人が居ないですね」

あらくれ「ここで働いてんのは5人くらいだからな。お。ここだ」
245 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/18(木) 00:02:26.85 ID:TrhsX2e50

ガチャッ


あらくれ「うっす!失礼します!」


勇者(ここに町長が……!)



「……何、あった」



勇者「!」

スー勇者「っ……!!!!」



あらくれ「コソ泥を捕まえたぜ!」






老人「おお、偉い。お前、ご苦労」





勇者(この人が町長……!?あまり見かけない人種だ)

勇者(って、え……?この訛り方って)
246 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/18(木) 00:02:54.62 ID:TrhsX2e50


スー勇者【大爺様!!!?=z


勇者「えっ!?」

あらくれ「あん?」


大爺「ん……?……っ!!!!?」

ガタァッ!!

大爺【スー勇者!!!?スー勇者ではないか!無事であったか!!!=z

ダッ

ガシッ!

スー勇者【お久しぶりです大爺様!お元気でしたか!?=z

大爺【おお、おお……私は元気だったよ。良かった、お前が無事で……!=z

スー勇者【心配かけて本当にごめんね……でも、私は大丈夫!=z


<……!……!


勇者「やっぱり、スー人だったんだ……」

あらくれ「えっ……?副町長、その嬢ちゃんお知り合いかい……?」

大爺「そう。私の村、大事な子」

勇者(あれ、副町長?町長じゃないんだ?)

あらくれ「すっ、すまねえ!!!俺とした事が乱暴に……今すぐ解くぜ!!」

シュルシュル

大爺【この男も悪い者じゃないんだ。許してやっておくれ=z

スー勇者【平気だよ!それにいい人だっていうのも分かっていますよ=z

勇者(うーん、なんかスーちゃんが地元語で喋っているとさみしい……)

あらくれ「よし!解けたぜ!すまなかったな嬢ちゃん!」

スー勇者「いえ!」

勇者「……あの……」

あらくれ「あん?」

勇者「僕はまだ解いてもらってないんですけれど……」

あらくれ「なんでてめえのまで解かなきゃなんねえんだよ」

勇者「あ、やっぱり?」
247 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/18(木) 00:03:25.05 ID:TrhsX2e50
スー勇者「こ、この人もいい人です!」

あらくれ「あんたは副町長の知り合いみたいだったが、こいつは違うしなぁ」

あらくれ「それに……」

勇者「?」

あらくれ「……いや、なんでもねえ」

あらくれ(さっきのあれは、尋常じゃねえ殺気だった)

あらくれ(こいつは危険な気がする)

勇者「あの……?」

あらくれ「っ、とにかく。てめえの処分は町長が決める。さっきも言ったがなあ」

グイッ

あらくれ「おら。付いて来い」

勇者「あうっ……わかってますってば」

スー勇者「わ、私もいくです!」

大爺「私も、行く」

あらくれ「いえ副町長はここで嬢ちゃんと喋ってても」

大爺「……この子、その男、心配、してる」

スー勇者「うー……」

あらくれ「……はあ、勝手にしてくれ」

スタスタ

あらくれ「町長はこっちの奥の扉で仕事してる」

大爺「多分、仕事、落ち着いた、思う」

あらくれ「もうそろそろ国連の連中と会わなきゃいけねえみてえっすしね」

あらくれ「本当、体こわさねえか心配だぜ、ったく」

勇者「……本当に慕ってるんですね」

あらくれ「何回も言わせんな恥ずかしい」
248 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/18(木) 00:04:12.91 ID:TrhsX2e50


ザッ

あらくれ「さ、ここだ」

勇者「っ」ゴクリ


勇者(さて、こっからが正念場だ)


コンコン

あらくれ「町長!入らせてもらうぜ!」


勇者(まず何も取って無いって証明……いやそういえばリンゴ食べちゃったな)

勇者(その分の支払いはするって事と、国連から隠れてできる仕事ならなんでもするって事を伝えておきたい……)

勇者(もし国連とあまり良い関係じゃないのなら多分そのあたりは)




「はい。どうぞ」




勇者「――――…………」


勇者(……あ、れ?)


スー勇者「?……ご主人様?」


ガチャッ


あらくれ「っし。ほら。とっとと入れ」
249 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/18(木) 00:05:04.52 ID:TrhsX2e50


スタスタ


勇者「………………」


あらくれ「よっす!おはようございます町長!」


大爺「おはよう、良い朝、来た」


スー勇者「お、お邪魔しますです……」



カリカリ



「ちょっとまって下さいね。今一段落つきますから」


あらくれ「あんまり根詰めすぎるなよ?体壊すぜ?」


「お気遣いありがたいですね。でも今が頑張り時ですから。で、どうしたんです?」


あらくれ「いやよ、実は倉庫でコソ泥みてえなのを捕まえてよ」


スー勇者「ですから!泥棒違うです!」



勇者「………………………………」



カリカリ… パタン


「はい、失礼しました」


スッ


「で、どちらが泥棒の――――…………」




「………………………………………………えっ……………………?」




250 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/18(木) 00:06:14.09 ID:TrhsX2e50









勇者「何やってんの…………商人……?」






商人「勇、くん…………?」








251 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/18(木) 00:06:51.48 ID:TrhsX2e50


今日はおしまいです

http://i.imgur.com/bPGd9m5.png

252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 00:42:14.67 ID:Vp5nx0oE0
乙でございます
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/18(木) 00:55:01.30 ID:kDj1JQGe0
おつです
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 03:54:15.36 ID:zqNANkk4O
おつ
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 04:20:21.00 ID:wegd74bg0
おつ
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 08:45:47.30 ID:bsEGkiUzo
おつー
商人ちゃんめっちゃかわいいじゃないですかやだー!!
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 15:39:35.20 ID:YGDmqxcR0
ここでこのイベント来ましたかー
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 19:04:05.48 ID:TMSznYX7O
>>1がまた絵を書いてくれて嬉しい
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 20:41:39.36 ID:ncQG87N+0
久々だ、スーちゃんも見たい
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/20(土) 23:50:51.36 ID:MoOvALvDO
商人ちゃんカワイイ!!
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/07(水) 00:09:43.83 ID:fGbAilUn0
そろそろ来て欲しい
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/10(土) 11:34:45.04 ID:7TPcJkzU0
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/11(日) 19:47:08.65 ID:UEXhRvJk0
せっかく商人ちゃんの画像らしいのに…!
ページが……っ、開かないなんて……!
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/13(火) 23:32:40.43 ID:upZGWgrPo
乙でした!久々に戻ってきたら面白いことに…また楽しみに待ってます!
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/14(水) 22:27:57.71 ID:tkh0B/Ubo
乙ですー

>>263
普通に見られるけど?
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/25(日) 12:25:02.55 ID:MwhuZE5L0
商人ちゃんかわゆい
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/26(月) 01:59:21.01 ID:gsYWGVRH0
乙 その一から読んできた
268 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/09/28(水) 22:29:29.28 ID:vPM+LqBw0
…………


ザザァン…


戦士「しっかしさあー」


――エジンベア・国境前――


スタスタ

戦士「なんであんなに商船が多かったんだ?」

僧侶「んー、もしかして祭りかなにかあるんでしょうか」

魔法使い「とにかく、いまはエジンベアにぶじにはいることをかんがえないとねえ」

武道家「それだったら大丈夫よ。ポルトガ王から令状貰ってるから安心なさい」

ポルトガ姫「そうっす。一応私も一緒っすから、皆さん護衛って体でお願いしますね」

ガシャッ ガシャッ

遊び人「うー……甲冑の中鉄臭いよう」

盗賊「……ちょっと我慢しててね……」

戦士「遊び人は顔バレるとまずいからさ」

ガシャッ ガシャッ

女勇者「御付の人間が女ばかりだと色々と怪しまれるかもしれないからね」

武道家「……なんでアンタまで甲冑を?」

女勇者「…………いや、えっと……ほら。1人だけってのもあれじゃないか」

ポルトガ姫「まあとにかく、これまでも何度かこうやって訪れてるんで安心してくださいっす」

魔法使い「けっこうきたことあるの?」

ポルトガ姫「はい!この国の人間はムカツク奴多いんすけど、お姫さんとだけは仲いいんすよ!」

僧侶「ムカツクって」

ポルトガ姫「まーそれは入れば分かる事っす……とにかく急ぐっすよ。あの城の宝物庫、別名泥棒博物館なら何か手がかりが――……」

戦士「……」

ポルトガ姫「って戦士ちゃんどうしたっすか。港のほうじっと見て」

戦士「んー?ああ、ちょっとな」

戦士「商船、か」

戦士「商人…………ちゃんと無事かな」

女勇者「……」

遊び人「……ん。当たり前よ。あの商人だよ?」

武道家「今は目先の事を考えましょ」

戦士「……うん」
269 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/09/28(水) 22:30:01.67 ID:vPM+LqBw0
…………
……






――ガルナバーグ・町長室――




スー勇者「えっ、えっ」

大爺「なに……?」

あらくれ「……あれ?」



勇者「……」


商人「……」



あらくれ「…………お知り合い、だった?」


勇者「え、だって……え?皆と旅してたんじゃ」

商人「……」

勇者「それに、町長って、えっ……えぇ?」

商人「……」

勇者「えっと、えっと」

ゴホン

勇者「と、とりあえず。久しぶり。商人」

商人「……」

勇者「…………商人?」


ギリッ…


商人「……なんで、このタイミングでっ……」ボソッ



勇者「え?」

あらくれ「おいおい、町長!お知り合いだったのかよ!俺とんだ失礼を」

商人「あらくれさん」

あらくれ「ん?何だ?」

あらくれ「あっ!縄か!?すまねえ!今解いて」

商人「縄はそのままで構いません」

勇者「エッ」

あらくれ「え?」




商人「その男を牢にぶち込んでおいてください」




勇者「あれれ?」



270 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/09/28(水) 22:31:58.85 ID:vPM+LqBw0
今日はおしまいです
週末に纏めて投下します
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/28(水) 22:52:25.32 ID:qIsEP1tDO
おつおつ
週末が楽しみ
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/29(木) 06:42:14.29 ID:Mlfg0VqSo
おつー
週末楽しみにしてるけど無理はしないようにね
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/29(木) 19:10:47.63 ID:u4mEcJ8t0

勇者よ・・・;;
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/30(金) 20:58:33.82 ID:A5Z4TXBs0
乙でございます
275 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:08:55.65 ID:/Kpz+n1R0
あらくれ「えっ!?でも町長」

商人「いいですから。ぶち込んでおいてください」

勇者「ちょっ、ちょっと待って商人!?なんで」

ガタッ

商人「さて、仕事も一段落着きましたし。私は国連の方々に挨拶しに行かないといけません」

商人「副町長。ではここはお願いします」

大爺「あ、ああ」

スー勇者「ちょっと待ってくださいです!」

商人「なんです?」

スー勇者「ご主人様は何も悪い事、してないです!許してください!」

商人「…………ご主人様?」

スー勇者「はい!」

商人「ご主人様って誰の事です?」

勇者「…………僕です」

商人「…………」

スタスタ

商人「あらくれさん。そのクソペド犯罪者を牢に。いいですね?」

あらくれ「お、おう」

勇者「ちょっと待ってえ!!!?クソペドって、誤解――……」


バタン!!


勇者「商人!商人ってば!!」

グイッ!

勇者「あぐっ!?」

あらくれ「……悪いが、牢にぶち込ませてもらうぜ」

スー勇者「そ、そんなっ」

あらくれ「安心しな。嬢ちゃんを牢にぶち込む命令はされてねえからな」

スー勇者「でもご主人様が!」

勇者「……いや、いいんだ。スーちゃん」

スー勇者「ご主人様!?」

勇者「ここは一旦従おう。あらくれさん、お願いします」
276 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:09:22.55 ID:/Kpz+n1R0
あらくれ「なんだ?素直じゃねえか」

勇者「一応、あいつの事は信用してるんで……ああなったら梃子でも意思を曲げませんし」

勇者「……逆らったら、怖いですし」

あらくれ「せ、せやな」

グイッ

あらくれ「よし、それじゃこっちだ。付いて来な」

スー勇者「待ってください!」

勇者「スーちゃん。大丈夫」

スー勇者「っ……!」

勇者「すぐ戻るよ。待ってて」


…………
……





……
…………


――ガルナバーグ・裏通り――

スタスタ

勇者「……しっかし、ほんとにできたばかりの町とは思えませんね」

あらくれ「立派なもんだろ?大工も腕のいいのばっかだからな」

勇者「はい……でも」


ヒュゥゥゥ……


勇者(……なんだか、裏通りは……あまり良い感じの雰囲気じゃ)

ザッ


――牢場――


あらくれ「ここが牢場だ。ほら。入れ」
277 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:09:51.47 ID:/Kpz+n1R0
…………



ガショォオン


ガチョッ


あらくれ「これでよしっと……んじゃ、大人しくしとけよ。俺は倉庫番に戻るからな」

勇者「あの、ちょっといいですか?」

あらくれ「あん?」

勇者「商人と……いや、町長と国連の話し合いやらってどのくらいで一段落つきそうですかね?」

あらくれ「さあなあ……。噂じゃ港の宿でお偉いさんが数日泊まるって話だしなあ」

勇者「そうですか……」

あらくれ「……なあ、お前町長のなんなんだ?」

勇者「え?」

あらくれ「あんな町長始めて見たぜ。まるで年相応のガキんちょみたいにむくれ顔して……」

勇者「……」

あらくれ「……?なんか言えよ」

勇者「僕は」

あらくれ「お?」

勇者「…………あいつの、足枷みたいなもんです」

あらくれ「…………はあ?」

勇者「まあ、昔からの知り合いですよ。それだけ」

あらくれ「……まあいいけどよ」

スタスタ

あらくれ「とにかく大人しくしてろよ。そんじゃ見張り番。ちゃんと見張ってろよ」

見張り番「まっかせろい」

スタスタ…

勇者「……」

ゴツン

勇者「……ふぅ……」

勇者(まだ頭ん中ごちゃごちゃしてる……いろいろありすぎだよ)

勇者(とりあえず国連の人たちからは逃げ続けないといけないし、ここに居たら少しは安全かな)


…………
……

278 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:10:18.16 ID:/Kpz+n1R0

―――――――――――



スタスタ


商人「……」


秘書「……町長」

商人「なんです?」

秘書「大丈夫ですか?」

商人「なにがです」

秘書「いや……なんだか苛々してるように見えたので」

商人「それより秘書さん、国連の方々は?」

秘書「先ほど搬入は終了したそうです。搬入船に同乗していた勇者の方々も大聖堂に移動したとの事です」

商人「そうですか。では急ぎましょうか」

秘書「しかし、予定では会合は昼の筈でしたが……何故到着がこんなに早く」

商人「それは、恐らく最後のお客人がいらっしゃるのが昼になるからだと思います」

秘書「……あの方ですか」

商人「とにかくまずは大聖堂へ行って現在いらっしゃってる方々に挨拶をしましょう」

商人「それとエジンベアからの搬入物も確認しなければなりません」

秘書「はい」


…………


――大聖堂――



ダーマ勇者「それにしても……大きな大聖堂ですね……」

エジンベア勇者「もうおおかた建設も終わってそうだけど……まだ手を加える所があるのかねえ」

ダーマ勇者「まだルビス様の聖像もありませんし、クロスが掲げられているだけですが……それでも凄いです」

エジンベア勇者「さて、それじゃ町長さんが来る前にちょっとだだけ今後の事話そうか?」

ダーマ勇者「今後の事ですね?」

エジンベア勇者「ああ。君とボクの今後の関係を――……」

ダーマ勇者「エジンベア勇者様!!ふざけないでください!!」

エジンベア勇者「おおう怖い怖い。悪かったよぉ」

ダーマ勇者「もう……」

ゴホン

エジンベア勇者「とりあえず、全員揃って国連の方針を明日の朝に話し合う」

エジンベア勇者「そこで国連関係の物資の運搬交渉も町長さんに説明して納得してもらう」

ダーマ勇者「納得されなかった場合は?」

エジンベア勇者「納得してもらうのさ」

ダーマ勇者「……」

エジンベア勇者「そしてその後、5日後にポルトガへこの船を向かわせる」

エジンベア勇者「その際は君が代表としてこの船を率いておくれ」
279 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:10:46.23 ID:/Kpz+n1R0
ダーマ勇者「え?私1人ですか?」

エジンベア勇者「ああ」

ダーマ勇者「なぜです?エジンベア勇者様は」

エジンベア勇者「僕やあの方は2日後に別の任務さ。勇者は君1人になる」

ダーマ勇者「でも……今回は私の部下は1人も居ませんし、務まるでしょうか」

エジンベア勇者「大丈夫さあ、なんたって乗り合うのは全員サマンオサ兵。ストイックで従順な奴らばかりだよ」

ダーマ勇者「……そう、ですね」

エジンベア勇者「不安そうだね?」

ダーマ勇者「い、いえ!大丈夫です!」

エジンベア勇者「とにかく、任せたよ」

エジンベア勇者「まあ、ポルトガに運ぶ予定のスー方面で調達できる物資が整うのが4日ほどかかるらしいからねえ」

エジンベア勇者「それまではゆっくりしてなよぉ。普段から君は肩の力張りすぎなんだし。さ」


ガロォン…


ダーマ勇者「!」

エジンベア勇者「おっと、いらっしゃったね」


スタスタ


商人「遠い船旅、ご苦労様でした。御二方」


ダーマ勇者「お疲れ様です。はじめまして、ダーマ勇者と申します。以後お見知りおきを」

商人「町長の商人です。お会いできて光栄です」

商人「……それと」

スタスタ

エジンベア勇者「こんにちはぁ、お久しぶり……といっても買取の話し合い以来だからそうでもないかな?」

エジンベア勇者「とりあえず今日も美しいですね町長さん……」

商人「こんにちは。どうも」

エジンベア勇者「いやあ、慣れない町に来て少し不安でして……どうでしょう、もしよろしければ私にこの町を案内していただけませんか?……二人きりで」

商人「ああ、それは構いませんよ」

エジンベア勇者「本当ですかあ!?」

商人「工事休憩の屈強な男共が暇を持て余してるんで、その人たちの中の誰かに」

エジンベア勇者「あ――でも考えたら視察を兼ねて自分で練り歩いた方がいい気がしますね?」

商人「それが一番かもですね」ニコー
280 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:11:13.88 ID:/Kpz+n1R0
……………………


――牢場――


ピチョン……  ピチョン……


勇者「……はあ」

勇者(なんか慨視感感じるなこの状況……あの時より全然待遇はいいけど)

勇者(しばらくは我慢だ。商人がここに戻ってくるまでは)

ぐぅぅぅ……

勇者「……」

勇者(お腹へった……そういやスーちゃんは何してるだろう……ちゃんとご飯食べたかな)


見張り番「おう坊や」


勇者「え?あい、はい?」

スッ

見張り番「暇だし、トランプで札遊びしようぜ」

勇者「……いいんすか見張りのお仕事は」

見張り番「一日牢に張り付いて退屈してんだよお。バチはあたらねえだろ?」

勇者「じゃあ、お言葉に甘えようかな」

勇者(丁度色々聞きたい事もあったし)

見張り番「流石にお前さんの手縄は解けねえし、牢越しだから、プリミエラ以外の遊びでもすっか」

勇者「何します?まあどの遊びでも大抵強くないですけど僕……」

見張り番「んじゃ“神と豚”だ!ルールは分かるな?」

勇者「まあ、一応は」


パサッ パサッ


見張り番「いやー、この仕事ぁ暇で暇でしょうがねえんだ。お前さんが来てくれてありがてぇよ」

勇者「そんなに暇なんです?」

見張り番「まあな。めったに罪人なんてこねえしな。お前さん何やらかしたんだ?」

勇者「……一応、無賃乗車……?と、窃盗……かな」

見張り番「あはははは!二つもやらかしたのかよ!欲張りだなあ!」

勇者「やりたくてやったわけじゃないもの!」
281 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:11:41.17 ID:/Kpz+n1R0

…………


バシッ!


見張り番「っしゃ!トイトイのテッペンだ!」

勇者「うぐっ……!」

見張り番「ははははは!お前さん本当に弱ぇなあ!?」

勇者「だから言ったじゃないですか……昔から弱いんですよ札遊びは」

勇者「それこそあの商人……この町の町長にはボロクソに負かされてるんですよ。今までに」

見張り番「なに?じゃあお前さん町長の知り合いなのかよ?」

勇者「一応、幼馴染です」

見張り番「……なんで幼馴染が町長やってる町で犯罪やっちまったんだ?」

勇者「成り行きです……」

見張り番「しかしそうかぁ、町長の知り合いねえ」

勇者「……あの」

見張り番「あん?」

勇者「ちょっとお聞きしてもよろしいでしょうか」

勇者「その……町長の事」

見張り番「お聞きするも何も、幼馴染ならてめえの方が詳しいだろうよ」

勇者「いえ、あいつが町長になってからの事です」

勇者「ちょっと小耳に挟んだんです。……悪評の事とか」

見張り番「……」

勇者「……あれって本当なんですか?」

見張り番「……んー……さあな。どうかしらん」

パサッ

見張り番「ホラ。次お前が裏返す番だ」

勇者「あ、はい」

ペラッ

見張り番「……ブタだな」

勇者「ぐぅ」

見張り番「……お前、窃盗と無賃乗車だったっけか?」

勇者「?あ、はい?はい」

見張り番「俺は殺し」

勇者「……え?」


見張り番「俺は、殺し。人間を1人殺したんだよ。前になあ」

282 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:12:15.42 ID:/Kpz+n1R0
勇者「……!?」

見張り番「まあ、殺しっつっても好きでやったんじゃねえ」

見張り番「ちょっと酒場で酒飲んで、喧嘩売られて……取っ組み合いをしてたら、割れたビンがそいつの喉にグサ。だ」

見張り番「小せえ村だから教会も遠い、再生呪文使いもいない。少し経ってそいつは死んだ」

見張り番「すぐにその村を統治している国のお上さん方にに突き出されて、豚箱に入った」

見張り番「出所しても居場所もクソもねえ。惨めだったよ。人を殺した事があるヤツなんてどこも居さしちゃくれねえ」

勇者「……」

見張り番「でもな、町長はそれでも拾ってくれたんだよ」

見張り番「こんなもうお先真っ暗の俺でもあの人はかまわねえって拾ってくれたんだ」

見張り番「だから俺ぁあの人に恩がある。あの人の悪評なんざ聞きたくもねえ」

勇者「それじゃ……」


見張り番「でもな」


見張り番「“殺人の前科持ちを軽く雇う人間”だからこそ……その悪評も、脳みそん中に居座ってる」


見張り番「『俺みてえなのを雇ったのはそういう悪事を働く時に切りやすいから』とか、なんじゃねえかってな」


勇者「……!」

見張り番「……なあ。逆に聞かせてくれよ」

見張り番「町長は、そんな事する人じゃあねえよな?」

見張り番「あの悪評は馬鹿な奴らのホラでいいんだよな……?」

勇者「……」

見張り番「……」

勇者「……この一年、あいつから離れていたので……状況は分かりませんが」


勇者「あいつは悪い事なんて絶対しない。それは確実です」


見張り番「……本当か?」

勇者「はい。まあ、悪い事の基準は人それぞれでもあるんですが……」

見張り番「……へへ」

見張り番「そうか。良かったぜ。それ聞いて安心した」

勇者「安心してください。悪評の内容と真実がどうあれ、あいつが皆さんを陥れる事なんてないですよ……っと!」


パサッ


勇者・見張り番「……」


……。


見張り番「…………出すのが難しいくらいの、ブタだな」

283 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:12:43.30 ID:/Kpz+n1R0

――――――――――――――



バタアァン!!!!



「町長!!!!町長!!!!大変です!!!!!!」



――大聖堂――



ダーマ勇者「!!?」

エジンベア勇者「なんだなんだ?」

商人「どうしたんです!?一体何が――……」


「港……!港に!!」




――ガルナバーグ・港――



ザワザワ……!!!


ズザッ!!


ダーマ勇者「……っ!?これは……!!」




バシャバシャバシャバシャ!!!!!



水中魔族「「「「「「ギャア!!!!!ギャア!!!!」」」」」」



エジンベア勇者「うへぇっ……!?なんだこの数の魔物達は……!!!?」


ビョンッ!!!

水中魔族「グギャアアア!!!!」


エジンベア勇者「ってうわあぉっ!!?」チャキッ!!


ズバァァン!!


水中魔族「グエエッ!!!!」


水中の魔物を倒した!


ビチャビチャッ!!


エジンベア勇者「っ!磯臭っ!!ちょっとちょっと、こいつら港に飛び乗ろうとしてるよ!!?」
284 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:13:11.78 ID:/Kpz+n1R0
秘書「なんですか……!?この事態は」

商人「こんな事いままで一回も……!!!!」

ダーマ勇者「……」

ダーマ勇者(……なんだろう)


バシャバシャバシャ!!!!!


ダーマ勇者(みんな、何かから逃げようとしているような……)


ジワ…


ダーマ勇者「…………え」



「うわああ!!!?」


「赤潮!?じゃない!これ血だっ!!!!」


「海が真っ赤だ!!」




オォォォオォォォオォォォォ……




商人「……嘘、でしょう……!?」


商人(こんな大量の血……一体……)

商人(ここに集まってる水中の魔族はほとんど二次魔族みたいですし、二次魔族は血はこんな色じゃない)

商人(このあたりに住む水中の一次魔族は……クラーケンくらいしか)


「おい!あれ見ろ!!」


「人だ!!!」




「沖の方に、小舟に乗った人間がいる!!!!」




商人「えっ!!?」


ダーマ勇者・エジンベア勇者「「!!?」」
285 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:13:39.51 ID:/Kpz+n1R0



ゴゴゴゴゴゴゴゴ



ダーマ勇者「んぇ?」

エジンベア勇者「?何の音だい?これ」


商人「……!!!皆さん!!!港から離れて下さい!!」


エジンベア勇者「えっ!?何々!?何がおきたんです!?」

商人「大きい波が来ます!!」


ゾゾゾゾ


商人「おそらく、あの沖のほうから……ッ!!」



ズザザザザザザザ



商人「クラーケンが…………こっちに!!!!!」



ザパアアアアアアン!!!





クラーケン「ゴガアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」





ダーマ勇者・エジンベア勇者「「嘘オオオオオオ!!!!?」」


「みんな!!坂の上に逃げろ!!」


「このままじゃでけえ波が来るぞォ!!!」


「でも沖の方に小舟がっ」


エジンベア勇者「くそぉっ!!なんだってこんな所までクラーケンがっ!!!」

ダーマ勇者「……」

エジンベア勇者「ちょっとダーマ勇者!!!早く港から」

ダーマ勇者「……あの人、剣を」

エジンベア勇者「え?」
286 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:14:14.24 ID:/Kpz+n1R0






クラーケン「ゴギャアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」






「…………一つ」






キィィィィィン





「二つ」





キィィィィィィィィン





「さらばよ、さらば」







クラーケン「ゴギュッ」







ゾンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



ゾンッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!






ドパアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!






287 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:14:45.87 ID:/Kpz+n1R0



ザザァッアアアアン!!!!!



バシャアァァッ!!! ザパァァァン!!!!!





商人「……」



ダーマ勇者「……」



エジンベア勇者「……」



「……え……あ?」


「今、何が……?」


「お、おい見ろ」



ザザァン…  ザザァン…




「さっき居た魔物達が、全部くたばってる」


「真っ二つだ……全部。いつの間にか」



エジンベア勇者「…………あのイカも」


エジンベア勇者「この、水中魔族たちも……逃げてたんだ」


エジンベア勇者「……あの人から……」



ダーマ勇者(剣一振りで、二刃の破壊の風を呼ぶ)


ダーマ勇者「…………噂どおり、です」





商人「………………あの人が」




288 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:15:14.00 ID:/Kpz+n1R0




ジャキィン!!!!




「この海域の主と聞いてわざわざ海路を選びはしたが……」



「なんとも、つまらない事でありますなあ」



「まあよろしい」



――――――――――――





商人「……“皇帝”――糾えるソクラス」





――――――――――――





ソクラス「幕はこれから上がるのだから」





289 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:15:42.25 ID:/Kpz+n1R0
今日はちょっと一旦おしまいです
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/08(土) 23:01:29.65 ID:wgrdpI1dO
更新キテター!
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/09(日) 04:57:08.20 ID:OnyOquMa0
おつ
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/09(日) 12:10:27.26 ID:6BKga+800
乙どす
ソクラスとかめっちゃマイナーな奴がこんな登場してくるとは・・・
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/10(月) 14:26:32.48 ID:e6+ay2oR0
乙でございます
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/16(日) 14:47:23.52 ID:rQncDdhNo
乙です
なんでソクラスが強いのだww
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/30(日) 17:03:46.15 ID:RcjMlzZBO
相変わらず戦闘描写はよくわからんな
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/04(金) 18:42:54.55 ID:+ylmxNJk0
そろそろ書きに来て欲しいのだが
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/05(月) 06:05:22.78 ID:Nn+ZBeTK0
2ヶ月経過
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/06(火) 19:54:06.26 ID:nQ9tB2dq0
楽しみにしてるんだがな。。。
299 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:42:26.51 ID:3m9Dnx6p0


……
…………


ギィ…

ゴトン

ソクラス「さて、舟はここいらによせればよいかな」

スタスタ

ソクラス「む?」


商人「ご足労頂きありがとうございました」


エジンベア勇者「御初にお目にかかります」


ダーマ勇者「船旅、お疲れ様ですソクラス様」


ペコッ


ソクラス「おやおや、なんとまあ。皆さん礼をご丁寧に」

スタッ

ソクラス「うむ。地面が恋しかった」

ザッ!


ソクラス「……ソクラスと申します。以後お見知りおきを」



…………


スタスタ

ソクラス「なんとまあ、綺麗な街である事か!これでまだ一年も経っていないとは驚きだ」

商人「有難いお言葉です」

ソクラス「いやはや、私も世界中を旅してきたが、これほど立派な港町は見かけた事は少ない」

商人「ソクラス様ともなれば、様々な港町をご覧になってこられた事と思いますが」

ソクラス「ええ。それはもう。その私が保証しましょう」

商人「ふふ、ありがとうございます」


<……。……。


ダーマ勇者(この方が……生ける伝説の1人、ソクラス様)


エジンベア勇者(魔王バラモスと対峙して、生きて帰ったただ1人の人間)
300 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:42:54.99 ID:3m9Dnx6p0
商人「ここまであの小舟で?」

ソクラス「ああ、そうなんです。どうも海路に海の主が立ち塞がる事件を聞きまして」

ソクラス「陸に飽きてきた頃だったのでね。小舟旅ついでに退治をと」

商人(……長い海路を1人で漕いで来たって事ですか)

ダーマ勇者「先ほどは御見事でした。あんな数の魔物を一斉に倒してしまうなんて」

ソクラス「いやいや、御恥ずかしい所を見られてしまった」

エジンベア勇者「しかし、そのお強さでしたら……未だ最前線で戦われても」

ソクラス「それがそうもいかなくてね」

スッ


商人・ダーマ勇者・エジンベア勇者「「「!!!」」」



フルフル…


ソクラス「……もうこの体では、あの戦いのみの負担さえも支えきれない」


ダーマ勇者「だ、大丈夫ですか!?」

ソクラス「お気になさらず。安静にすれば明日にはまた震えも治まる」

ソクラス「あの日……バラモスとの戦いの後遺症は未だこの齢になっても体を蝕んでいるのだよ」

ソクラス「最早戦線に出ても碌に戦えはしない……情け無い事にね」

ダーマ勇者「……!」

エジンベア勇者「……申し訳ありません。出すぎた事を」

ソクラス「ははは、やめませやめませこんな話は」

商人「一先ず、宿にご案内します。そこでどうか一旦休まれて下さい」

ソクラス「ああ。どうかお願いいたします」

商人「もし落ち着かれたら大聖堂に席を用意しておりますので」


ソクラス「ええ。そこで……色々とお話を伺いものですな」


商人「…………ええ、よろしくお願いいたします」

301 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:43:22.42 ID:3m9Dnx6p0
…………


見張り番「んっ……〜〜っと!札遊びも少し休憩すっか」

勇者「すんません弱くて……」

見張り番「ちっと休んだら運も上がってくるかもしんねえぜ?へへっ」


ギシッ


勇者「ふう……」

勇者(疲れた……目がしぱしぱする)

勇者「……」チラッ


<……


勇者(……窓から入ってた陽がもう見えない)

勇者(昼過ぎちゃったか……スーちゃんなにしてるかな)

勇者(…………それに、商人……国連の勇者達と何を話すんだろう)

勇者(あの壷の話なのかな……骨董品を買ったのが商人ならあるいは……でも商人はなんの為に)


スタスタ


勇者「ん?」

見張り番「お?」


スー勇者「ご主人様!」

大爺「……」


勇者「スーちゃん!と、副町長さん?」

見張り番「どうしたんすか副町長?」
302 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:43:49.44 ID:3m9Dnx6p0
大爺「もう、この男、出す」

見張り番「え?こいつを?」

勇者「え!?」

大爺「この檻、あける、しなさい」

見張り番「へ、でも……」

大爺「はやく」

見張り番「わ、わかりやした」


ガチャッ


見張り番「ほれ。出な」

勇者「え……い、いいんですかね」

見張り番「まあ副町長がこう言ってるし……」


ダッ ダキッ!


勇者「わわっ!?ス、スーちゃん!?」

スー勇者「ご主人様っ!よかったです!」ギューッ

勇者「う、うんありがとう。でも一回離れよ?」

大爺「……」

勇者「あ、副町長さん……ありがとうございます。でもなんで」

クルッ

スタスタ

大爺「ついてくる、いい」

勇者「……?」


――――――――――――


――ガルナバーク・牢場の表――


あらくれ「お?出てきたか」

勇者「出てきました……。ちょっとなんでか分かんないんですけど」

勇者「もしかして商人が出してくれたんですか?」

あらくれ「いーや、副町長の独断だ」

大爺「……」

勇者「あれ、そうだったんですか……副町長さん。何で僕を」

大爺「……お願い、ある」

勇者「お願い……ですか?」
303 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:44:23.44 ID:3m9Dnx6p0
クルッ

大爺「ちょっと、ついてくる」

勇者「えっ?あ、はい……」



………………


――ガルナバーク・裏通り――


スタスタ…


大爺「……」

スー勇者「……」

あらくれ「……」

勇者「……」

勇者「……」チラッ


オォォォォ…

「……んだ、副町長……が……」ボソボソ

「……ソ者…………何を……」ヒソヒソ


勇者(……なんていうか、怖い連中も多いな)



―――――――――


見張り番『“殺人の前科持ちを軽く雇う人間”だからこそ……その悪評も、脳みそん中に居座ってる』


見張り番『「俺みてえなのを雇ったのはそういう悪事を働く時に切りやすいから」とか、なんじゃねえかってな』


―――――――――


勇者「……」

大爺「どう、思う。この街」

勇者「えっ!?、あっ、えっと」

あらくれ「まあ、この辺りには暗ぇ奴らがたむろしてやがるからな。良い印象もクソもねえか」

勇者「あの、僕を一体どこに」


ザッ


勇者「ん?」

大爺「……ここ」


――立派な建物――

304 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:45:18.70 ID:3m9Dnx6p0
勇者「なんです?ここ」

大爺「……入って、みる、いい」

勇者「入るんですか?」

スー勇者「なんかでっかい所です……キラキラ、してるです」

勇者「ちょっと行ってみようか」

スー勇者「はい!」

スタスタ…

あらくれ「……副町長、いいんすか?」

大爺「……」


―――――――


勇者「ん、なんか暗いなここ……」

スー勇者「壁に黒い幕が張ってるです」


〜♪


勇者「……なんか音楽が聞こえるね」

スタスタ

蝶ネクタイ男「いらっしゃいませ」

勇者「えっ?あ、どうも」

蝶ネクタイ男「たった今開店したところです。御早い来店で」

蝶ネクタイ男「さあ、こちらでございます」

グイグイ

勇者「えっ、ちょっとちょっと……」

スー勇者「わわ」

ザッ

勇者「あれ?なんだか開けた場所に出たね」

スー勇者「……」

勇者「ん?どったのスーちゃん……ん?」


〜〜♪



勇者(なんだ?ちっさいけどステージみたいなのが……)

勇者(……ちょっと待ってあの鼓笛隊の横で踊ってるのって)


―――――――


ダダダダダダダダダダダダ!!!!!


蝶ネクタイ男「おや?もうお帰りで?」

勇者「はーっ!はーっ!!」

蝶ネクタイ男「どうでした?うちの踊り子は」



勇者「ス ト リ ッ プ 劇 場 じ ゃ ね ー か !!!!!!」



蝶ネクタイ男「そうですけど?」
305 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:45:46.87 ID:3m9Dnx6p0
勇者「か、帰りますすみません!!スーちゃん!いこ!」

スー勇者「くねくねって……お股を……手で、あんな……」プシュゥゥゥゥ

勇者「スーちゃんしっかりして!!忘れて!忘れようっ!」

ザッ

蝶ネクタイ男「それでは……ガルナバークの住民票は?」

勇者「えっ?住民票?」

蝶ネクタイ男「あら、お持ちで無い?でしたら……」

ニコッ



蝶ネクタイ男「しめて50000ゴールド。はらっていただけますね?



勇者「    」



蝶ネクタイ男「おや?どうされました?」

勇者「ちょ、ちょっと待って、待ってください」

勇者「あの、聞き間違いですかね?今50000ゴールドって」

蝶ネクタイ男「言いましたけど?」

勇者「はいいいぃぃ!?」

勇者(いやいやいや!いくらストリップだからって桁がおかしい!!)

勇者「あの、ちょっとした間違いで入っちゃったというか」

蝶ネクタイ男「……払えないんですか?」

勇者「待ってください。とにかく話を聞いて下さい」

蝶ネクタイ男「聞きましょう。ではまず出身国と現在の所持ゴールドを」

スー勇者「っ……ご主人様……!」

勇者(……やばい、ここ)


蝶ネクタイ男「……教えていただけますね?」


勇者(ぼったくりのアカンところだ)


スタスタ


大爺「……その男、ちがう」


勇者・スー勇者「「!!」」

蝶ネクタイ男「……副町長?」

大爺「わたし、この男、入れ、言った。金、いらない」

蝶ネクタイ男「はあ……そうですか。副町長のお知り合いで」
306 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:46:16.75 ID:3m9Dnx6p0
勇者「副町長さん!!?何でこんなとこ入らせたんですか!!!スーちゃんいるんですよ!!!過激すぎます!!!!」

大爺「……出る。ついてくる」

スタスタ

蝶ネクタイ男「はあ……副町長。ちょっといいですか?」

ピタ

大爺「……」

蝶ネクタイ男「何を企んでるか知らないんですけどねぇ……これは町長の命令なんですよ」

勇者「……え?」

勇者(商人の、命令……?)

蝶ネクタイ男「反感持ってるのかなんなのか知らないですけどね」

蝶ネクタイ男「余計な事しないでもらえますか……?はっきり言って邪魔です」

大爺「……出る」

勇者「え?は、はい」

スタスタ……

蝶ネクタイ男「……」


――劇場の外――


ザッ

大爺「……」

勇者「……あの、副町長さん」

勇者「今あの人が言ってたのって」

大爺「……まだ、見せる、場所、ある」


スタスタ


勇者「……」

スー勇者「……ご主人様……」

勇者「……行こうか、スーちゃん」
307 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:46:44.95 ID:3m9Dnx6p0
………………………………



………………………………



………………………………


ガヤガヤ


スタスタ…


大爺「……一通り、裏の道、見せる、した」


勇者「……」

スー勇者「……」

あらくれ「……どうだったよ」

勇者「えっと……なんていうか」

あらくれ「あんまり、褒められたもんじゃねえだろ?」

あらくれ「表通りの、他の国の客がうろついてねえ所は、まあ……ジメジメしたもんさ」

勇者「……はい……」

大爺【“……町長は、この町造りが進むごとに変になっていった”】

勇者「え?あ、えっと、スーの言葉かな」

スー勇者「はい……私、訳すです」


【“私は一年前、ここに街を作りたくてスーの村を出て1人ここに居を構えていた”】

【“ある日船で仲間と一緒にやって来た町長に会い、街づくりの助けを願い、町長としてこの街を任せた”】

【“最初は普通の街づくりだった。だが町長は変わっていった”】

【“住民を優先させるために住民票を発行し、それをさきほどの様な店で利用させたり”】

【“あらゆる犯罪者を優先して受け入れたり、街の金で骨董品を買ったり”】


勇者「……」


【“おかげで、表向きは華やか、裏は灰暗い街になってしまった”】

【“それにこの頃、エジンベアの大臣とよからぬ取り引きをしている気がある”】


勇者「……?よからぬ、取り引き……?」


大爺【“……ついてきて欲しい”】


スタスタ…

勇者「……」

あらくれ「……ほら、なにぼさっとしてんだ」

勇者「……はい。行こう。スーちゃん」

スーちゃん「はい……」
308 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:51:03.46 ID:3m9Dnx6p0
………………………………



スタスタ



ガヤガヤ…


勇者「……本当に、表通りは賑やかですね……」

あらくれ「ああ。宿も店も多いしな。住人も表にはほとんど住んでねえ」

あらくれ「店を出してるのは大抵船で来て宿に短期滞在してる奴らだ。エジンベアのな」

あらくれ「ショバ代だけもらって短期間契約ってのが多いんだよ」

勇者「……」

あらくれ「……さっきのは」ボソ

勇者「え?」

あらくれ「さっきのは、多分、根も葉もねえ噂話さ。骨董品がどうとか」ボソボソ

あらくれ「副町長もボケがきてるだけさ。気にすんな」ボソボソ

大爺【“……あまり表通りに出ないでくれ。国連の奴らに見つからないように道を選んでいるのだ”】

大爺【“今は港の方に集中しているから、隠れながらこの道を行けば見つからないだろう”】

勇者「……あの、どこに行くんですか」

大爺「……ここ」

勇者「え?」


ザッ


――大聖堂横・大倉庫――


勇者「ここ、ですか?ここって」

あらくれ「お前らが不法侵入してた場所だ。そして俺の職場」

勇者「あれは違いますって……!!!あれ?違わないか……?違わないですね……」

大爺「……入る」

スタスタ

あらくれ「今は国連のやつらもいねえ。急げ」

勇者「は、はい」

スタスタ…


スー勇者「……」


ゴソッ


スラお「……スーちゃん?どしたの?」ボソボソ

スー勇者「……あっち」

スラお「あっち?」ボソ

スー勇者「港の方……何か」


あらくれ「おい嬢ちゃん?どうした?」


スー勇者「あっ、な、なんでもないです」


スタスタ…
309 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:53:49.53 ID:3m9Dnx6p0



ガコォン……



スタスタ

勇者「しかし……改めて見ると本当に大きな倉庫ですね……天井が高い」

スー勇者「こんなに、なんの荷物があるです?」

あらくれ「輸入した商品やら……でも大半はスーの特産品やらだな」

勇者「スーの特産品?」

あらくれ「ああ。スーが近いから、そこいらで取れる果物やら野草やら、肉やらを輸出しようって考えてるんだよ。町長は」

あらくれ「で、やっと取り引き先が見つかってな、これが一番最初のスー特産物の普及になるぜぇ」

勇者「それ、肉って日持ちとか大丈夫ですか?」

あらくれ「安心しろ。干し肉が大半だ」

スー勇者「スーは、干し肉料理多いです。ご主人様にも食べさせたです」

勇者「あー、あれか。あれ凄く美味しかったよ」

大爺「……」

勇者「で……ここに一体何が」


プゥン…


勇者「……うぇ……?」

勇者(なんだこれ、さっきここに来た時こんな匂いしてたっけ?)

勇者(ってかこの匂い、どっかで嗅いだ気が……)


大爺【“……お前さん方が乗って来た船とは違う船の積荷だ”】

大爺【“輸入品ではない……ここを中継地点として、他の国の商船に積ませる予定の積荷だ”】


スタスタ……

ザッ

大爺【“……それが、この一角だ”】

勇者「この辺り、ですか?」

大爺【“この木箱を開けてみるといい”】

勇者「……?」

あらくれ「おいおいおい、勝手に開けていいのかよ?いくら副町長さんでもちょっと度が過ぎてんじゃねえか?」

大爺【“……開けてみるといい”】

勇者「…………分かりました」

ゴトッ

勇者「よい、しょっと……んぐぇっ!!?なんだこの匂っ……」

勇者「……」

勇者「……」

スー勇者「?どうしましたです?」

大爺【“お前さん……町長と馴染みのある人間なのだろう?”】

大爺【“なんとかお前さんから、町長の本心を聞きだしてくれないだろうか”】

大爺【“そして、町長を……正してやってくれないだろうか”】

勇者「…………」

勇者「なんだ……これ」
310 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:56:30.73 ID:3m9Dnx6p0




「鉄と土ですよ」




大爺・スー勇者・あらくれ「「「!!!?」」」


勇者「……っ、商人……!」


スタスタ


商人「…………国連の連中の会合の合間に急いで牢に行ったら、もぬけの殻でちょっと焦りましたよ」


商人「ま、副町長が出したって見張り番さんも仰ってたんで、行き先の検討はつきましたけどね」


勇者「……これは、一体なんなのさ」

商人「さあ?知りませんよ。ただ輸送の中継地点として荷物を預かってるだけですし」

勇者「だとしても、これは……鉄は、いいとして、土、この木箱」

勇者「これは、おかしくないか」

勇者「だって、この土」




勇者「人の、骨が……死体が、混じってる」




スー勇者「!!!?」

あらくれ「……は?」

勇者「糞尿と一緒に、屍が混じってるよ」

勇者「これおかしいと思わないのかよ……?」


商人「……」


スタスタ


商人「……ねえ勇くん」

商人「勇くんに、何の関係があるんです?」


勇者「…………商人……?」


商人「ここは。私が作った街です。私の街なんですよ」


商人「なんでお前なんかに口出されなきゃならないんです?」


勇者「……」


商人「……お前」



ニコッ…



商人「もう、私と……何の関係もないでしょう?」


311 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:57:16.17 ID:3m9Dnx6p0
今日はおしまいです
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/08(木) 01:31:36.85 ID:pbLZfKgQo
乙です!商人ちゃん何があったの…
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/08(木) 19:36:03.42 ID:Os9ylmdw0
今追いついたが、結局エジンベア勇者は覚醒フラグへし折って現実逃避に走ったか。
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/08(木) 19:46:23.75 ID:zYrm2XOP0

死体の混じった鉄と土をどうするつもりなのか・・・
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/13(火) 15:28:28.92 ID:xqLqfXY70
死体と糞尿が混じった土と硫黄で火薬を作るってのを最近某アニメでやってたけど
鉄については前の会議で指摘されてた部分だよね、次回が待ち遠しい
316 : ◆3VOBH3KJAk :2016/12/15(木) 00:17:41.64 ID:PC86Fqf/0
勇者「……商人、何、言ってんのさ」

商人「言葉もろくにわからなくなりました?本当に愚図ですね」

スタスタ

ザッ

ガシッ!

勇者「!」

商人「……もう私に関わるなって言ってるんですよ。迷惑です」

あらくれ「お、おいおい町長!」

商人「あらくれさん、ちょっとだけ待っていただけますか?こいつと話をしなきゃいけないんですよ」

勇者「お前、冗談でもキツいってそれは」

商人「はあ?どこがです?」

商人「というか冗談でもなんでもないんですよ?お前が居るだけでこっちは迷惑なんです」

商人「自己満足の為か何なのか知りませんが、仲間達を皆放って勝手に単独行動になるぅ〜とか馬鹿みたいな事言い出しますし」

商人「国連に追われてる身なのに国連の人間が大勢居るこの街にのこのこ現れるし」

商人「腐れ縁の恩情で国連から見つからないように牢に隔離しておけば副町長に誘われてのこのこと抜け出すし……」

勇者「……」

商人「あげくの果てには、やーっとこさ軌道にのったこの街の動かし方にまで口挟むんですか?」

商人「いい加減、本当にうざいんですよね……」


商人「いつまで幼馴染の仲良しごっこ続けるつもりなんです?」


勇者「……ッ!!!!」


ガシィッ!!

商人「……なんです?肩、痛いんですけど」

勇者「今のは、マジでやめろ」

勇者「僕の事は、確かにその通りだからいくらでも言っていい、けどさ」

勇者「“幼馴染の、仲良しごっこ”とか……そういう事言うのやめろよっ……!!」

勇者「あいつらまで、あいつらの事までお前がっ」

バシッ

商人「だーかーらー」

商人「いちいち偉そうに私に口をきくなって言ってるのがわからないんですかねえッ」

勇者「……っ」
317 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:18:20.08 ID:PC86Fqf/0
商人「とにかく。これはちゃーんとしたビジネスです。部外者は黙っていてください」

あらくれ「で、でも町長さんよ。その木箱、土の中に人の骨入ってんだぜ!?」

あらくれ「いくらなんでもちょっと穏やかじゃねえよ……!なんの目的があってそんなもの」

商人「まあ、各国からこういった糞尿と屍混じりの土を仕入れてますが……私が知った事ではありませんよ」

商人「貿易の橋渡しをするだけで色んな恩も売れますし、船の出入りが多くなって街の資金も巡ります。良い事です」

商人「この土の木箱の隣に区分けされてる鉄の山も、同じくエジンベアの大臣様が取り仕切って動かしている品です」

商人「あの方とサマンオサの方々は良いお得意様ですからね……なんとか機嫌を損ねないようにしないと」

スー勇者「っ……」

商人「……なんです?その目」

スー勇者「あなた、嫌いですっ……」

商人「おやおや、嫌われちゃいましたね」

スー勇者「そんな、怪しい取り引き、して……あんな、お店も作って……!」

商人「あんな店?……あー、ストリップ劇場の事ですか?あれのどこに問題が?」

大爺「問題、ある!風紀が、乱れ、取る金も、おかしい!」

商人「……はぁ……では、ああいった店を全部無くした方が良いと、風紀が乱れないと。本当に思うんですか?」

あらくれ「……どういう……?」

商人「この街に定住している人間の多くが大工の人間です。優先的に誘致しましたし、だからこそ一年でここまで街の見栄えが整いました」

商人「そういった方々は、例外なく屈強な男性達です。体力を持て余した、血の気の多い、ね」

あらくれ「……」

商人「その方々が黙々と町を造り続けて不満が出ないワケないでしょう?何か欲求を満たすものが必要になります」

商人「幸い食品には恵まれていますから食欲は大丈夫として……では性欲は?」

商人「開拓地などによくあるお話では、労働夫達がその性衝動に任せて女を攫ってきて監禁、仕事場で隠し飼いにして犯し続けたり」

商人「あるいは見境もなしに来国した女性を強姦したり……とにかく明るいお話は聞きませんね」

商人「その事態を避ける捌け口として、ああいった店は必要なんですよ。近々売春宿を設置する事も考えています」

商人「そういう目的ですから、この街の住民でない方々にはお金を余分に頂いているだけですよ」

大爺「なっ……!あ、あの男達、貴女の事、尊敬、している!そんな犯罪、彼ら、しない!」

大爺「彼らの事、信じる、大事――……」

商人「そーれーだーかーら副町長。あなたを町の経営の第一線から降ろしたんですよ前にも言ったでしょうが」

商人「人を信じるだけで万事上手くいったら世話はいらないんですよ馬鹿馬鹿しい。言葉の美しさだけで生きていられりゃそりゃいいですがね」

商人「そんな事で生きていけるのは頭のイってしまった詩人くらいなもんなんですよ」

商人「人を疑う事の方が色んな計算ができて視野が広がるんです。そしてそれが私達の仕事です」

大爺「っ」

商人「ここは、私の街です。口出ししないで下さい」
318 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:18:49.80 ID:PC86Fqf/0
あらくれ「……町長……」

大爺「……それでも」

大爺「街の金で……骨董品、買う……宝石、買う……」

大爺「それは、違いない……貴女、悪い」

商人「…………へえ、知ってたんですか?」

大爺「取り引きの、現場、見た者、居た!」

商人「バレてたんですね……まあ想定はしてましたけど。ですがそれの何が悪いんです?」

商人「私のお給料で私の買い物をしてなーにが悪いんです?ねえ」

あらくれ「町長……?あんた、まさか」

商人「全く、質素に暮らしていれば聖人になれますか?本当になんなんですかアンタらは」

商人「私の勝手でしょう?そんなの」


商人「私の街で、私が好きにやるのは当たり前の事じゃないですか」


商人「……いいですか?もう一度言います」


商人「ここは、私の街です。何も考えずに口出ししないで下さいね」



勇者「………………」


スー勇者「……」

あらくれ「……」

大爺「っ……間違って、いた」

大爺「あの時、貴女に、全て任せた、間違っていた……!!」

商人「それはどうも」ニコッ

スタスタ

商人「さて。申し訳ありませんが勇くん。そろそろ消えてくれませんかね?動くなら今しか無いですよ?」

商人「国連の方々は現在宿で荷解きをしているんです。待機している兵達も船と港に集中しています」

商人「まあなんだかんだで知らない仲ではないですし。国連に突き出すのは勘弁してあげますよ」

勇者「……商人」

商人「なんです?」

勇者「…………いや」

スタスタ

勇者「なんでもない……行こう、スーちゃん」

スー勇者「ご、ご主人様っ……」

クルッ

スー勇者「……っ!べーっ!」

商人「ホントに嫌われちゃいましたね」
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