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勇者「ハーレム言うなよマジで」戦士「5だぞっ!」
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119 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/13(水) 23:30:35.27 ID:Wjeo41nZ0
チリリリリ… チリリリリ…
勇者「……」
ポルトガ勇者「……」
ポルトガ勇者(……寝たかな?)チラッ
勇者「……」
ポルトガ勇者(寝たみてえだな)
ポルトガ勇者「……」
『俺にも息子が居るんだ』
『お前の何歳か年下なんだがな、こいつがまた泣き虫で』
ポルトガ勇者「……」
『……旅をしたいってきかないんだ。俺が何を言っても』
『なあ、ポルトガ勇者。もし、もし俺の息子が旅に出てお前と出会ったら』
『できれば旅をするのをやめさせてくれないか』
『あいつは、戦ってはいけないんだ。戦う為に生まれたんじゃない』
ポルトガ勇者『……やめさせればいいのか?へんなのー』
『ははは、確かにそう思うかもしれんがな』
『――もし、お前とあいつが出会った時、あいつが腑抜けた顔していたら』
ニカッ
『遠慮はいらん。ぶん殴ってやってくれ』
ポルトガ勇者「……」
勇者「……」
ポルトガ勇者「……」
ポルトガ勇者(悪ぃ、オルテガさん……あの約束は守れそうにもねえや)
ポルトガ勇者(多分あんたがあんな事言ったのはこいつの正体に気付いてたからなんだろうな)
ポルトガ勇者(……どうやら、あんたの心配は形になっちまったみてえだ)
ポルトガ勇者(……――ただ)
ポルトガ勇者(ぶん殴るのは、必要ないぜ)
ゴロン
ポルトガ勇者(あ……やべ、瞼が)
ポルトガ勇者(ずっと歩き通しだったから、疲れが、圧し掛かって)
ポルトガ勇者(くる……)
ポルトガ勇者「……」
120 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/13(水) 23:31:08.25 ID:Wjeo41nZ0
…………
……
…
・
ムクッ…
勇者「……」
ポルトガ勇者「かー……くかー……」zzz
勇者「……」
バサ…
スタ… スタ…
カチャカチャ
スタ… スタ…
――ホビットの祠・外――
スタスタ
勇者「……」
ムオル勇者「……来たか」
勇者「はい」
ムオル勇者「ポルトガ勇者は」
勇者「眠っています。昨日疲れたのかぐっすり快眠していました」
タッタッタ
スー勇者「……おはよう、ございます」
勇者「おはよう、スーちゃん」
スー勇者「おはようございますっ、ご主人様」
ムオル勇者「……行くぞ。日が昇るまではまだ時間がある」
勇者「……はい」
121 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/13(水) 23:31:39.96 ID:Wjeo41nZ0
――――――――――――
ホー ホー
イシス勇者「……ん」
ムク…
イシス勇者「……」
イシス勇者(……まだ薄暗い……肌寒いし、日の出は少し遠そうだ)
ブルッ
イシス勇者(寒い……皆大丈夫かな)チラッ
イシス勇者(……あれ?)
イシス魔法使い「すー……すー……」zzz
イシス僧侶「んこー……くこー……」zzz
イシス戦士「むにゃ……」zzz
イシス勇者(あれれ、スー勇者ちゃんは?)キョロキョロ
イシス勇者「……トイレ、かな」
―――――――――
スタスタ…
イシス勇者「……薄暗い」
イシス勇者(でも灯りをいちいち用意する程でもないな)
オォォォオォ…
イシス勇者(……本当に広い建物だ)
イシス勇者(なんの為に作られたんだろう……結構古そうだけど)
スタ…
イシス勇者「!」
イシス勇者(あ、ここ、勇者くんの部屋かな?)
イシス勇者「……」
イシス勇者(あれ、なんだろう、やな予感がする)
ザッ
イシス勇者「……」
ポルトガ勇者「くかー……」zzz
イシス勇者「……勇者くん?」
キョロキョロ
イシス勇者「……」
イシス勇者「……っ」
122 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/13(水) 23:32:30.36 ID:Wjeo41nZ0
ユサユサ
ポルトガ勇者「ふがふっ、んあ?」
イシス勇者「ポルトガ勇者君、起きて」
ポルトガ勇者「んあ……?んだよ、イシス勇者……」
イシス勇者「勇者くんは?」
ポルトガ勇者「え?そこに居んだろ……」
ポルトガ勇者「……あれ?」
ムクッ
ポルトガ勇者「……――あいつ、どこ行った?」
イシス勇者「スー勇者ちゃんも居ないんだ」
ポルトガ勇者「……探してみるか」
イシス勇者「うん」
…………
スタスタ…
イシス勇者「やっぱり祠の中には居ないね」
ポルトガ勇者「ああ、荷物はあるからどっかに行ったってワケじゃなさそうなんだが」
――ホビットのほこら・外――
ザッ
イシス勇者「……外に居るのかな」
ポルトガ勇者「まだ薄暗いのにか?こんな森の中に何しに行くっつうんだよ」
クルッ
ポルトガ勇者「もう戻って寝ようぜ。攫われたんなら俺らが気付かねえはずねえし、大丈夫だろ」
イシス勇者「……うん」
スタ
…
ポルトガ勇者「……イシス勇者」
イシス勇者「……うん。聞こえた」
ザッ
ポルトガ勇者「……あっちか」
イシス勇者「だね。昨日も聞いた音だ」
イシス勇者(剣と剣が、触れ合う音)
ポルトガ勇者「……――行ってみる、か?」
イシス勇者「……う、うん」
123 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/13(水) 23:33:08.50 ID:Wjeo41nZ0
「行って、どうするんだい?」
イシス勇者・ポルトガ勇者「「!!!」」
ズザァッ!
イシス勇者「ホ、ホビット様……」
ホビット「やあ、おはよう」
イシス勇者「お、おはようございます」
ホビット「行ってどうするんだい?面白いものではないよ?」
ポルトガ勇者「……あいつ、何やってるんすか」
ホビット「頑張ってるんだよ」
イシス勇者「……」
ポルトガ勇者「……」
ホビット「……ふふ」
ホビット「勇者もどうやら、心配性な友人を持ったみたいだね」
スタスタ
ホビット「……邪魔しないと誓えるなら、ついておいで」
ホビット「ただ、“絶対に何もしてはダメだ”」
スタスタ…
イシス勇者「……」
ポルトガ勇者「……」
イシス勇者「……行こう」
ポルトガ勇者「……ああ」
スタ…
スタスタ…
―――――――――――――
――森の中――
ザッザッ…
イシス勇者「……」
ポルトガ勇者「……」
イシス勇者(背の高い木が生い茂って、祠の辺りより薄暗い)
ポルトガ勇者(霧も濃い……マジで何をやってるっつうんだアイツ)
124 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/13(水) 23:33:40.07 ID:Wjeo41nZ0
ザッザッザッ……
ホビット「……君達は」
イシス勇者「え?」
ホビット「君達は、強いかい?」
イシス勇者「……ん、はい?」
ポルトガ勇者「えっと……まあ、はい。腕には自身あるっすよ」
ホビット「では……どうやって君達は強くなった?」
ポルトガ勇者「……どうやって、すか?」
ポルトガ勇者「それは……まあ、鍛錬したり、魔物を倒したりして」
ホビット「……うん。そうだろうね」
イシス勇者「……?」
ホビット「お」
ザッ
ホビット「丁度いい。人間くらいの大きさの岩だ……ポルトガ勇者」
ポルトガ勇者「はい?」
ホビット「この岩を破壊してみてくれるかな」
ポルトガ勇者「……え」
ホビット「身構える必要もない。とんちでも謎かけでもないよ」
ポルトガ勇者「えっと……了解っす」
スッ
ポルトガ勇者「ほっ」
ドゴォン
パラパラ…
ポルトガ勇者「えっと、これでいいっすか?」
ホビット「ああ、ありがとう」
ポルトガ勇者「あの……これ何の意味あったんすかね」
スタスタ
スッ…
ホビット「……君はこれを素手で砕いたね」
ポルトガ勇者「?は、はい」
ホビット「これは、誰にでもできると思うかい」
125 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/13(水) 23:34:13.79 ID:Wjeo41nZ0
ポルトガ勇者「やあ、まあ……こんくらいなら少し鍛えりゃ誰でもできるんじゃないすかね」
イシス勇者「それほど大きい岩でもないですし」
ホビット「……ふふ、そうだね。ただわしは思うんだ」
ホビット「これを当たり前だと思っているわしたちがおかしいのでは、とね」
イシス勇者「……え?」
ホビット「少し、歩きながら聖書の話をしよう」
スタスタ
ホビット「わしらがどうして生まれたか知っているね?ルビス様が作られたからだ」
ホビット「大精霊の一人であったルビス様が、精霊戦争の後にこの大地と……わしらと、動物を作った」
ホビット「その証拠として、わしらには加護がある。傷を負っても癒す術がある」
イシス勇者「はい。それは分かります」
ホビット「……ただ、それらはわしらの力ではない」
ホビット「それは“ルビス様の加護”だ。わしら人間の能力ではない」
ポルトガ勇者「……何が言いたいんすか」
ホビット「例えば手のひらに斬り傷を負う。これを直す際は、たいてい治癒魔術を使うが……使わない場合はどうなるね」
イシス勇者「それは、傷の完治に時間がかかりますが」
ホビット「そう。時間がかかる。それさ」
ホビット「わしらの限界は、恐らくそれなんだよ」
ホビット「わしらの限界は、傷の完治に、これっぽちの傷だけで相当な時間がかかる、“そこ”だ」
ホビット「わしら生き物は、実はそんなに強くないんじゃないか?」
ホビット「わしら生き物は、ルビス様の加護を、人間の当たり前の力として認識しているんじゃあないかな?」
イシス勇者「……」
ポルトガ勇者「……」
ホビット「……だったら、このわしらの。先ほどのポルトガ勇者のような力は、どうだ」
ホビット「なぜ、火贈りの儀式の前と後で、身体能力が均一に育たない?」
ホビット「……なぜ」
ホビット「なぜ、魔物を殺せば殺すほど。目に見える様に強くなる?」
126 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/13(水) 23:35:07.80 ID:Wjeo41nZ0
ポルトガ勇者「……そ、そんなの」
ホビット「そうさ。誰にも分からない。ただの仮説さ。わしが勝手に考えた、ね」
ホビット「でも不思議でならなかったんだ。昔から」
ホビット「何故、魔族を殺すと力が異様な程に得られるか……強くなれるのか」
ザッザッザッ
ホビット「……そしてわしは、一つ思った」
ホビット「魔族は、原初の精霊達の怨念から生まれた、と聖書に書いてある」
ホビット「そしてそこに人間の怨念がそそぎこまれ、今の魔族になった……とも」
ホビット「……魔族は怨念の塊だ。もしそれが、本当ならば」
ピタ
クルッ
ホビット「“怨念”を。殺して、殺して。殺して」
ホビット「ルビス様の加護で、それを力に変換して、繰り返して」
ホビット「……わしらは、怨念を纏って、怨念と戦っているのではないかね」
ホビット「“それ”を、強さと誤認して」
イシス勇者「……」
ポルトガ勇者「……」
ホビット「……わしらが、強くなっているのは」
ホビット「ルビス様の加護で変換された、怨念の芥の力によるものなのではないかね」
ホー ホー
イシス勇者「……そ」
ポルトガ勇者「な、なにを言ってるんすか」
ホビット「……ちょっと、意地が悪い話だったね」
ホビット「老人の戯言さ。わらっておくれ」
127 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/13(水) 23:35:34.53 ID:Wjeo41nZ0
クルッ
スタスタ…
ホビット「……勇者は、ルビス様の加護がない」
ホビット「つまり、さっきの説が本当と仮定するならば、怨念を力にする術がない」
イシス勇者「……」
イシス勇者「……」
イシス勇者「……あ」
――――――――――――――
イシス勇者『(今日一日、勇者君の動きを見てたけど…………)』
イシス勇者『(あれは、なんて言えばいいんだろう)』
イシス勇者『(なんらかの……妙な違和感を感じる)』
イシス勇者『(なんて言うのか…………)』
イシス勇者『…………』
イシス勇者『……“まるで最初から強くなる事を許されていない”様な……』
――――――――――――――
ホビット「合点がいかないかい?」
ホビット「あの子が、皆に劣るのは……あの子が弱いからじゃない」
ホビット「あの子は人間だ」
ホビット「あれが、人間本来の姿なんだ」
イシス勇者「……」
ポルトガ勇者「……」
ホビット「……そう、思うのさ」
ホビット「ただ、それで納得していては。あの子は進めない」
ホビット「だったらあの子の気が済むまで、人間本来の限界を目指さなければならない」
ホビット「だからあの子は頑張らなければならないんだ」
ポルトガ勇者「……頑張るって……」
イシス勇者「どうすれば、人間本来の、限界なんて……」
ホビット「……本当なら、相当時間がかかる話だろうね」
ホビット「わしらルビスの加護持ちの人間と同じような無茶をさせれば、あの子は容易く死ぬ」
ホビット「だが……スー勇者ちゃんが居る」
イシス勇者「え?」
128 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/13(水) 23:36:34.79 ID:Wjeo41nZ0
ばちゃあっ
勇者「いぎぃぃいいいぁああぁああああっ!!!!!!!!!」
どちゃあっ!!!!
勇者「おご、うぶっ」
バチャバチャバチャ
ジャキン
ムオル勇者「……何故今のを避けなかった」
勇者「おえっ、うびゅっ」
バチャバチャバチャ
ムオル勇者「今、俺が敵ならお前の首は地面に転がっている」
ムオル勇者「俺の一閃を何故避けなかった」
ムオル勇者「何故避けなかったと聞いている」
勇者「きひぃっ、きひぃっ」
ギリッ
ググ
勇者「あーっ、はーっ……っっっっあ”ッ」
ムオル勇者「立つならすぐに立て。脳に刻み込め」
ムオル勇者「今の一閃を避けなければ、今のお前のようになる」
ぼとぼとっ ぼとぼとばちゃばちゃぁっ
勇者「いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
ムオル勇者「……臓物をしまえ。馬鹿者が」
129 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/13(水) 23:38:48.84 ID:Wjeo41nZ0
イシス勇者「っ……っ……」
ポルトガ勇者「おい……おいおいおいおい」
ホビット「……言ったね?二人共」
ホビット「絶対、何もするんじゃない」
ホビット「水を差したら、ただじゃおかないよ」
勇者「があっ、がああああ!!!!!!!!!!!」
タッタッタ!!
スー勇者「ご主人様!!!!」
ザッ
スー勇者「“ベホイミ”!!!」
パァァァァァァァァ……
勇者「がふっ、が、くぁっ……!!!!」
スー勇者「っ……!!」
ムオル勇者「……今のは、避けられた筈の攻撃だ」
ムオル勇者「もし俺が敵ならば、スー勇者が居なければ、お前はこの世には居ない」
スゥゥゥ…
スー勇者「……できました」
勇者「はぁっ……!!はぁっ……!!」
ポン
勇者「ごめん……スーちゃん……」
勇者「ごめん……」
スー勇者「……」ギュッ
ギリッ
ザッ
勇者「もう、一度ッッ……お願いします!!!!!」
ムオル勇者「ならば早く立て愚図が」
130 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/13(水) 23:40:44.89 ID:Wjeo41nZ0
イシス勇者「……勇者くん……っ」
ホビット「……スー勇者ちゃんは、なぜかは教えてくれないが勇者を治癒させる事ができる……その力を利用させて貰っているんだ」
ホビット「勇者は今までも相当鍛錬をしてきたらしいけれど、本当に“死ぬまで”やった事は無かった」
ホビット「だから、ああやって本当の危険を体に覚えこませる」
ホビット「“死”を体に何度も覚えさせる……それが、必要だ」
ポルトガ勇者「でもよっ……!!!!……さすがにあれはやりすぎじゃっ」
ホビット「わしら、ルビス様の加護のある人間がいつもやってる方法だよ」
ポルトガ勇者「……」
ホビット「わしらは、魔族相手に挑んで殺されても……体の一部分があれば蘇生できる」
ホビット「だからこそ、魔族に何度でも牙を向ける事ができる」
ゲーム
ホビット「……まるで。“遊戯”みたいに、ね」
ホビット「それを否定できるかい?」
ポルトガ勇者「……」
イシス勇者「……」
ホビット「…………さあ、帰ろう」
ホビット「あの子も君達に、こんな所を見られたくない筈だよ」
…………―――――――
ザッザッザッ
イシス勇者「……」
ポルトガ勇者「……」
ホビット「……」
ポルトガ勇者「……ホビットさん」
ホビット「ん?」
ポルトガ勇者「ホビットさんは……あいつがなんなのか知ってるんすか」
ホビット「……」
ポルトガ勇者「……」
ホビット「……少しなら知ってるが、言えない。……ごめんよ」
ポルトガ勇者「……そうすか」
ザッザッザッ
ホビット「……ただ……いい子だ。あの子は」
ホビット「二人共。あの子が例え何であれ……仲良くしてやってくれ」
イシス勇者「……――勿論です」
ポルトガ勇者「あたぼうっすよ」
ホビット「……ん」
ホビット「あの子は、いい友人を持ったね」
…………
……
…
・
131 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/13(水) 23:41:13.44 ID:Wjeo41nZ0
今日はおしまいです
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/14(木) 00:30:25.01 ID:ji5Xg4H0O
乙
133 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/14(木) 00:33:28.11 ID:OQjngMlP0
乙つ
134 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/14(木) 02:36:36.30 ID:oNwG10g30
乙でございます
135 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/14(木) 18:40:54.28 ID:okv92bicO
乙、昨今のどの漫画やアニメよりもきになる
136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/19(火) 19:19:31.94 ID:jpY7yyYU0
乙、勇者には幸せになってほしいなぁ…ほのぼのがいいよぅ
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/19(火) 19:21:26.16 ID:jpY7yyYU0
乙、勇者には幸せになってほしいなぁ…
138 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/22(金) 00:55:51.51 ID:q8V621ke0
乙、勇者は相変わらず無茶しまくってるな。
ところで勇者はイシス勇者が女だって事は覚えてないんだろうな、武道家に殴られて記憶障害起こしてたし。
139 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/26(火) 20:51:08.00 ID:53lo73Rz0
舞ってる
140 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/07/27(水) 20:47:11.00 ID:uF/9R8QC0
そろそろ書きに来て欲しいのだか
141 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/27(水) 21:21:52.24 ID:fdrrqmHO0
なんかもう登場人物の言葉の一つ一つが伏線に思えてゾクゾクしてきた
142 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/28(木) 00:39:55.51 ID://rGN1y40
・
…
……
…………
―ホビットの祠・大広間―
スタスタ…
勇者「ふぁ……おはようございます……」
イシス僧侶「おー、勇者くんおっはよー」
イシス戦士「もう昼だぞ?だらしない」
イシス魔法使い「スー勇者ちゃんもまだ寝ているみたいね」
スー勇者「くー……くー……」zzz
スラお「むにゃ……」zzz
イシス魔法使い「ふふ。仲がよろしいみたいね」
イシス僧侶「しかしよく寝るねー」
勇者「ああ、ちょっと朝に軽い鍛錬をするようにしてるんだけど、それに付き合ってもらってるんだ」
イシス僧侶「そうなん?って事は一回起きてたんだ」
勇者「そうそう。だからいつも夜に少し寝て、また朝の鍛錬が終わったら寝る生活してるんだよ」
スー勇者「くー……くー……」zzz
勇者「……僕に付きあわせてばかりで……」
ナデ…
スー勇者「ん…………」
勇者「本当に、この子には申し訳無い事ばっかりだ……」
イシス勇者「……」
ポルトガ勇者「……勇者、おはようさん」
勇者「ん。おはよう皆」
スタスタ
ホビット「おお、勇者も起きたかい。丁度いい。ご飯の準備ができたよ」
勇者「先生」
イシス魔法使い「ああ、もう、何から何まですみません」
イシス僧侶「お手伝いできる事ありませんか?」
ホビット「いやいやいいんだよ。わしも料理は好きだしね」
ムクリ
スー勇者「む……ふぁ……」
イシス戦士「ん。スー勇者も起きたみたいだな。おはようスー勇者」
スー勇者「んー……」
143 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/28(木) 00:40:37.10 ID://rGN1y40
ギュッ
イシス戦士「!?」
スー勇者「ご主人様……おあようございます…………ふふ」ギュゥゥ
イシス戦士「なっ!?ちょ、わ、私は勇者ではないぞ?」
スー勇者「んえ?」
「「「…………」」」
スー勇者「……あっ」
勇者「…………スーちゃん、おはよう」
ババッ
スー勇者「すすす、すみません!つい、いつもの癖で」
イシス勇者「ん?」
勇者「ヒッ」
イシス勇者「勇者くん、いつもあんな風に抱きつかれてるのかい?」
勇者「いや、その」
イシス勇者「何焦ってるんだい?」
イシス僧侶「ロリコン」
イシス戦士「ペド野郎」
勇者「ちげえし!!!!!ちげえし!!!!!」
スラお「ゆーしゃうるさいっ!」がぶー
勇者「ごめんなさいやめてください!!!!」
ギャーギャー
ホビット「ふふ、賑やかな食事もいいね」
ポルトガ勇者「おいお前ら飯が冷めるから早くこっち来いって!」
…………
勇者「では」
「「「いただきまーす」」」
パクッ
イシス勇者「っ!これもおいしい!!」
イシス魔法使い「これ何のお肉なんですか?」
ホビット「それは鹿だよ。勇者が捕ってきたんだ」
イシス僧侶「え?勇者くん狩りできるの?」
勇者「こっちに来てから、一応教えてもらったんだよ」
144 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/28(木) 00:41:03.68 ID://rGN1y40
ホビット「はは、腕の方はまだまだだけどね」
勇者「うぐ」
スタスタ
ムオル勇者「……狩りだけではなく、こいつは様々な事が未熟だ」
勇者「うぐぅっ」
イシス勇者「ムオル勇者さん」
イシス僧侶「様々なこと?」
ムオル勇者「こいつがここに来てしばらく経つが、最初はあまりの愚図さ加減に頭を抱える事が多かった」
ムオル勇者「方位磁石を忘れ道に迷う、狩りの罠の場所を忘れて自分で踏む、剣を忘れて魔物に半殺しにされる」
ムオル勇者「毒草を狙ったように採取してくる、料理を作らせれば器具を駄目にする」
勇者「……本当に、すみません……」
ムオル勇者「枚挙に暇が無いが……これでもマシになった方だ」
イシス僧侶「確かに、勇者くんはあの状況で旅してたからねえ。昔からあの子達に世話を焼かれていたんでしょ?」
イシス魔法使い「あはは……だったらちょっと疎くなっちゃうのも仕方ない気もするわね」
ムオル勇者「だが仕方ないで済みはしない」
勇者「仰るとおりです……」
ポルトガ勇者「でも今はだいぶマシになったんだろ?」
ホビット「ん。まだまだだけど、最初に比べたらだいぶ良くなったね」
勇者「まあ料理はスーちゃんや先生に頼りっきりなんだけどさ」
スラお「ゆーしゃのごはんおいしくない!ばか!うんこ!」
勇者「うんこはなくない?いいすぎじゃない?なあスラお」
…………
カラン
ホビット「ところで、聞いてもいいかね?」
イシス勇者「はい、なんでしょうか」
ホビット「君達は何をしにここへ来たんだい?」
ポルトガ勇者「…………今さらな感もあるっすね」
イシス僧侶「何を……って、それは勇者くんが心配だったからですけど」
イシス魔法使い「しばらく音沙汰が無かったので、イシス勇者様が心配してだいぶ滅入ってしまって」
勇者「すみません心配かけて……」
イシス勇者「いいんだよ。こうして無事だったんだしさ」
ポルトガ勇者「俺もイシス勇者と同じ理由だぜ」
ホビット「ふふ、そうかそうか……じゃあもう一つ質問させてもらうね」
ホビット「人間達の動きはどうだい?ラーミアを復活させるつもりらしいが……進展は」
145 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/28(木) 00:41:48.88 ID://rGN1y40
イシス勇者「……実は、全くと言っていいほど何も進展していないんです。おはずかしながら」
勇者「ん、そうだったんだ」
イシス戦士「お前はムオル勇者殿から何も伝えられていないのか?」
ホビット「彼は無口な男だからね。外の情報で勇者の気を散らすのを良しとしなかったんだろう」
ムオル勇者「……」
ポルトガ勇者「だんまりかよ……お前が何か一言あれば俺らも無理に後をつけたりしなかったっての」
ムオル勇者「下手にお前達に伝えればボロが出る可能性があるだろう」
ポルトガ勇者「……否定しきれねえのが哀しい」
ホビット「しかし、進展が無しか……オーブを集めるのは至難なのだろうね。やはり」
イシス勇者「とりあえず今はあらゆる場所へ歩兵団や船団が向けられているのですが……中々に手こずっています」
イシス勇者「特に……“賢者の扉”には、苦戦を強いられていて……」
勇者「……“賢者の扉”?」
スー勇者「って、何の事ですか?」
イシス勇者「え?勇者くん?」
ポルトガ勇者「何でてめえが知らねえんだよ?」
勇者「え?え?だって、覚えが」
ポルトガ勇者「“魔法の鍵”」
勇者「……――あ」
イシス勇者「あれを見つけ出してロマリア大陸の境界を暴いたのは、君たちだったじゃないか」
勇者「そっか……あれが賢者の扉だったんだ」
勇者「でもそれなら、魔法の鍵は女勇者が持ってる筈だからあいつに」
ホビット「いや、恐らく、だけれど……それでは無理だろうね」
勇者「えっ?どうしてですか?」
ホビット「それらの扉の鍵の構造がね、普通の扉と違うというのは君もわかるだろう?勇者」
勇者「それは、まあ、はい」
ホビット「あれは魔力で編み込んでいる錠型なんだけれど、それには3種類あるというのが今の所確認されている」
ホビット「それらは全て賢者が作り出したらしいんだが……高位の賢者が作る錠型ほど複雑なものになっているんだ」
ホビット「一番目の扉は、腕のある盗賊ならば暴ける。二番目の扉は、高度魔法を生業にした、名のある魔法使いならば暴ける」
ホビット「しかし、三番目の扉は……賢者しか暴けない。そう、賢者の作った鍵無しでは、ね」
勇者「……」
イシス勇者「そして、どうも何かありそうな“聖域”などにはそれらが多いんだ」
イシス僧侶「賢者様が“何か”を守るために閉じ込めてるんだもの。大事な物があるって考えるっしょ?」
勇者「確かに……」
146 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/28(木) 00:42:22.26 ID://rGN1y40
ポルトガ勇者「ただ、これに関しては少し情報も掴んであんだよ」
勇者「情報?」
ホビット「……海の祠、の伝説だね?」
ポルトガ勇者「……よく御存知で」
勇者「海の祠?海に祠があるんですか」
ホビット「ああ。昔、四賢者の一人が作った祠が今も海の中に沈んでいる、という伝説だ」
イシス勇者「そこに、僕達が求める鍵があるって言い伝えがあって、今はその捜査に尽力している」
ホビット「だが、場所は分かったのかい?」
イシス勇者「いえいえ、流石にそこまでは……怪しい場所を虱潰しに探している途中です」
ホビット「場所が場所だからね……仕方ないものだよ」
イシス魔法使い「国連には未だ見つかっていないので急いで見つけ出したいんですけど、その伝説が本当かどうかも怪しいんですよね」
ホビット「しかしわしらが旅をしていた時から小耳に挟んでいた伝説だよ。火の無い所に煙は立たないと言うし」
ポルトガ勇者「あー……いっそ海の水が干上がっちまえば探しやすいんだろうけどよ」
イシス勇者「現実逃避もいい所だねそれは……気持ちは分かるけれど」
勇者「……鍵、かぁ」
「それ、できるかもです」
勇者「えっ?」
イシス勇者「……何、?が?」
ポルトガ勇者「それって、なんだよ?スーの字」
スー勇者「……――海の水、干上がらせるの……できるかもです」
イシス勇者「…………えっ」
イシス僧侶「ス、スー勇者ちゃん、それはいくらなんでも無理じゃないかぁい?」
スー勇者「勿論、全部干上がらせるは無理です」
スー勇者「けれど、浅いところなら……干上がらせるの。できると思うです」
ポルトガ勇者「……何か、あるのか?」
ホビット「確かに、あの伝説では海の祠は岩礁に囲まれているという話だね……恐らく浅い所にあるのだろう」
ホビット「もしスー勇者ちゃんの言う方法が可能なら。見つかる可能性は高くなる」
勇者「……スーちゃん、その案聞かせてもらってもいい?」
スー勇者「はい、ご主人様……あの」
スー勇者「私の村……スーには、秘宝があったです」
イシス戦士「秘宝?」
スー勇者「はい。スーは、周りを川で囲まれた村です……いつもは、平和で暖かい、いい所です」
スー勇者「でも、時にその川は暴れ川になって、私達の先祖様を脅かしたです……」
スー勇者「でも遠い昔、村のその代の巫女が、力を使って……壷を作ったです」
勇者「壷?」
スー勇者「はい……――『渇きの壷』。こっちの言葉だと、そういう意味になるます」
147 :
◆3VOBH3KJAk
:2016/07/28(木) 00:42:55.90 ID://rGN1y40
イシス勇者「渇きの、壷かぁ……初めて聞く名前だ」
イシス魔法使い「それがあれば水を干上がらせる事ができるのね?」
スー勇者「はい。ある程度の水なら、その壷が飲み込んでくれるです」
ポルトガ勇者「すげえ話だな……!それ、スーに行けば貸して貰えるか?」
スー勇者「……」
ポルトガ勇者「おい、スーの字?」
スー勇者「……ないです」
勇者「え?」
スー勇者「もう、スーには……渇きの壷はないです」
ポルトガ勇者「……そりゃどういうこった?」
スー勇者「……――今は、エジンベアにあります」
「「「……!!!」」」
ホビット「……ああ、そういう事なのか……」
勇者「え?え?どういう事?」
ポルトガ勇者「勇者お前マジでいってんの?」
勇者「えっ、ごめん」
ホビット「昼過ぎの座学でもっと厳しく色んな事を詰め込むべきだったね……」
勇者「ひいい」
イシス戦士「座学もホビット殿に師事しているのか」
勇者「う、うん……いや、今はそれより」
スー勇者「私の村は、昔、エジンベアに戦争で負けました」
勇者「――……」
スー勇者「その時に、私達は……いろんな物資と、捕虜と……秘宝を差し出しました」
イシス勇者「……『同士大戦』の時だね」
スー勇者「……」コク
勇者「………………そうなんだ……」
スー勇者「で、でもっ、命は皆平気でしたしっ、今もスーは残ってるですっ!」
イシス僧侶「そうは言っても、暴れ川は?渇きの壷が無ければ……」
スー勇者「……それも、先祖様たちは、別の方法で乗り越えたです」
スー勇者「もう、スーの皆も、誰も恨んでないです!へいきですっ!」
イシス勇者「……ん、ありがとう。話してくれて」
148 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/28(木) 00:43:41.43 ID://rGN1y40
ポルトガ勇者「さあて、じゃあ……――どうやってその秘宝をぶん取り返すかね」
スー勇者「ンッ!!?」
イシス勇者「ああ、なんかこういう事言い出す気がしてたよ……」
イシス僧侶「結構ポルトガ勇者様も後先考えない人だよね」
ポルトガ勇者「いやさ、俺ァそういうのいっちばん嫌いなんだよなあ」
イシス魔法使い「好き嫌いの問題じゃないでしょ!国際的な問題が絡んでるのよ?」
ポルトガ勇者「だが、どうするよ?せっかく掴んだ糸口だ。引き寄せない手はないぜ?」
イシス勇者「……それは、そうなんだけどさ」
ポルトガ勇者「ま、だからといって俺も懸念は無いとはいえねえ」
ポルトガ勇者「もしおおっぴらにエジンベアに壷返せって言ったとしたら、国連の中のキナ臭え連中に感づかれる」
イシス戦士「確かに……例えそれで鍵を手に入れてもそれを国連で共有するという建前で持っていかれるかもしれんな」
勇者「じゃあ殺して取り返せばいいよ」
ポルトガ勇者「……」
イシス僧侶「……」
イシス魔法使い「……」
イシス戦士「……」
イシス勇者「……は、え?」
勇者「?だから、エジンベアの奴らから取り返せば良いんだよ」
イシス僧侶「ちょ、ちょっと勇者くん?」
勇者「んっ?え、なになに皆一斉にぼくを見て」
イシス魔法使い「いえ……勇者くんにしては、黒い冗談だなって」
勇者「冗談?なにがですか?」
イシス魔法使い「……え」
勇者「元々盗んだのはそいつらなんでしょ?そいつらに構う事なんてないだろ」
勇者「スーの人たちの物はスーの人たちの所に返さなきゃいけない」
勇者「もっと報復してもいいくらいだ」
勇者「……――――全員、殺してもいいくらいに」
149 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/28(木) 00:44:54.68 ID://rGN1y40
ポルトガ勇者「……」
イシス僧侶「……」
イシス魔法使い「……」
イシス戦士「……」
イシス勇者「……勇者、くん……?」
勇者「何?」
イシス勇者「っ」ゾッ…
ポルトガ勇者「お前、どうし――……」
スー勇者「てやーっ!」
バコオン
勇者「マウンッ!!!」
イシス勇者「うおぉっ!!?スー勇者ちゃん!?!」
スー勇者「ご主人様!うとうとしたらだめです!」
ポルトガ勇者「は!?お前何言って」
勇者「あてて……ごめん、少し眠ってた」
ポルトガ勇者「る……んだ……」
イシス勇者「……」
勇者「スーちゃん、いっつもうたた寝だけにはなんでこんなに厳しいのさ……!コブできてる……」
スー勇者「……眠るの、よくないです」
イシス魔法使い「……これ」
イシス僧侶(意識が、とんでる……?)
イシス戦士(ではさっきの圧迫感は)
150 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/28(木) 00:45:47.02 ID://rGN1y40
ホビット「……ふむ、なるほどね」
スクッ
ホビット「勇者」
勇者「ふぁう、アッはい、何ですか先生。座学の準備は――……」
ホビット「しばらく授業は無しだ」
勇者「……え」
ホビット「勇者、君はしばらくここを離れてその渇きの壷を手に入れて来なさい」
ホビット「特別授業期間、という事にしよう」
――――――――――――――――
――ホビットの祠・入り口前――
サァァァ…
イシス勇者「……」
イシス魔法使い「……」
イシス僧侶「……」
イシス戦士「……」
ポルトガ勇者「……風、気持ちいいな」
イシス勇者「うん……本当いい所だね」
イシス僧侶「ですね……」
「「「……」」」
ザッ
ホビット「……すまないね、皆来てくれたばかりだというのに」
イシス勇者「ホビット様」
イシス魔法使い「とんでもない、急に押しかけたのは私達ですのに……」
ホビット「もっとゆっくりしてもらいたかったんだがね……そうもいかなくなった」
ポルトガ勇者「?」
ホビット「まあ、気にしないでおくれ」
ホビット「何はともあれ、勇者を少し見守っててくれると助かるよ」
151 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/28(木) 00:47:58.23 ID://rGN1y40
イシス勇者「それはもう……そういえば、勇者君はまだ準備中ですか?」
ホビット「ああ。スー勇者ちゃんとごたごたしているよ」
――――――――――――
勇者「スーちゃん!鍋は持ってかなくていいでしょ!めっ」
スー勇者「でもっ、これっ、おこげが付かなくて!」
勇者「めっ」
――――――――――――
ホビット「しばらくは荷造りだろうね……だから」
ホビット「今のうちに、君らの質問に答えておこう」
イシス勇者「……」
ポルトガ勇者「……質問、っすか」
ホビット「何か、わしに聞いておきたい事はあるかい?」
イシス僧侶「……ホビット様」
ホビット「なんだい?イシス僧侶さん」
イシス僧侶「御優しいのか、残酷なのか……わかりませんね」
ホビット「ははは……どちらでもありたいものだね」
イシス戦士「ム、ムオル勇者殿は?一緒にエジンベアまで行かれるのですか?」
ホビット「いや、彼はまた国連の任務で今日から別行動だよ」
イシス魔法使い「という事は、私達で勇者くんたちを守らなきゃですね」
ホビット「意気込み有難いが、そうヤワに鍛えてもいない。あまり気負わずに軽く考えておくれ」
ホビット「……他に何か。ないかい」
イシス勇者「……えっと……」
ポルトガ勇者「……ホビットさん」
ホビット「なんだい?」
ポルトガ勇者「俺に、質問させたいんすよね?」
ホビット「……君が、聞きたくないなら質問はせずにしておきなさい」
ホビット「これによって、君らがあの子をどうするかも決まってくるかもしれないしね」
ポルトガ勇者「……人が悪いぜ」
ホビット「ホビットだからね。以前は人間と争った身さ」
スクッ
ポルトガ勇者「んっ……と!」バキボキ
ポルトガ勇者「ふぅ…………じゃあ聞くが、ホビットさん……昨日も同じような問いかけたけど、ちょっと変えるぜ。はいかいいえで答えられるヤツにする」
ポルトガ勇者「あいつは、魔王の手下なんすか?」
ホビット「……」
152 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/28(木) 00:50:52.17 ID://rGN1y40
ポルトガ勇者「あいつは、いや。あいつの中のアレは……魔王バラモスによるものなんすか」
ポルトガ勇者「それとも――……」
ホビット「いや……あれは違うよ」
ポルトガ勇者「――……」
ホビット「あの子自身には裏切りや騙りも無いし、あれは魔王バラモスの手下でもない」
ホビット「……詳しくはないが、それは言える」
ポルトガ勇者「……そっすか」
イシス勇者「……良かっ……た」
ホビット「ただ、今の所それくらいしか言えないんだ。何のきっかけであれが暴走するかも分からないしね」
イシス勇者「でもそれだけ知れれば十分」
ポルトガ勇者「まだだ」
イシス勇者「え?」
ポルトガ勇者「まだ質問がある……というか、ホビットさんが聞いて欲しいのはこっちなんだろ?」
ホビット「……――質問をどうぞ」
ポルトガ勇者「えっと……昨日、あいつと一緒に風呂に入ったんだけど」
イシス僧侶「えっ、いきなり何の話しだすのポルトガ勇者様」
イシス勇者「自慢したいのかい?」ギリッ
イシス魔法使い「その会話の流れ第三者からすると怖いわよイシス勇者様」
ポルトガ勇者「いや、びっくりしたのがあいつのチンコの大きさなんだけどよ」
イシス勢「「「本当に何の話だ!!!!」」」
イシス勇者「チッ、チチチチチチ」
イシス戦士「イッ、イシス勇者様っ、お気をっお気をたしかかっ、かにっ」
ポルトガ勇者「いやだって……普通の状態で、えっと……こんくらいだぜ?」
イシス僧侶「えぇっ……本当それ……うそぉっ……?」
イシス魔法使い「あらやだ、やだやだやだ、もう、ちょっと……うそぉ……?」
イシス戦士「お前らはっ!!何の話をしているっ!!!!」
イシス勇者「こ、このくらいひぃっ……!!!!?」
イシス戦士「お気をたしかn、えぇっ……うそぉっ……」
ホビット「ははは……ポルトガ勇者」
ホビット「……――君は、勇者の下半身を見たよね」
ポルトガ勇者「……ああ」
ホビット「……その上で、聞きたい事は?」
ポルトガ勇者「……――本当に酷い人だな、アンタ」
ホビット「人ではないからね」
ポルトガ勇者「じゃあ……単刀直入に聞くっすよ」
153 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/28(木) 00:51:36.87 ID://rGN1y40
ポルトガ勇者「あいつの、下半身の左側を覆ってる……黒い痣、あれ。なんすか」
イシス勇者「……――え」
イシス僧侶「……!!!?」
ホビット「……」
ポルトガ勇者「……それと、あいつ昨日。寝る時に言ってました」
ポルトガ勇者「『自分に何かあったらスー勇者の場所へ逃げろ』って」
ポルトガ勇者「…………ホビットさん」
ポルトガ勇者「あいつ、ここで魔物になった事、あるんすね?」
ポルトガ勇者「そしてあの痣……無関係じゃないんでしょ?」
ホビット「……」
イシス僧侶「ホ、ホビット様!本当なんですか!?」
ホビット「……勇者が来て、二ヶ月目の頃だったかな」
ホビット「少し寝苦しい夜でね……多分、そのせいで。あの子も嫌な夢を見たんだろう」
ホビット「急に勇者とスー勇者ちゃんの部屋から轟音がして飛び起きたわしは、急いで二人の部屋に駆けつけた」
ホビット「そこで――……」
――――――――――――――
ホビット『これ……は……』
ごりゅ、ぐちゅっ、ばちゅっ
勇者『あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!』
ギュゥッ…
スー勇者『……ご主人様』
勇者『あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!』
スー勇者『……怖い夢、……見た、ですね』
勇者『あああああああああああああああああ!!!!!!!!!!ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!』
スー勇者『ほら……もう、だいじょうぶ、だいじょうぶです……』
ナデ…
勇者『あああああああああああっ!!!!!!あああああああああああああ!!!!!!!』
154 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/28(木) 00:53:04.93 ID://rGN1y40
スー勇者『…………もう、大丈夫』ボソッ
勇者『あああああああああああああああああああああああああ!!!!!!』
スー勇者『……ね?』ギュゥッ
勇者『ああああああああああああああああああ』
ごりゅ
勇者『あああああああああああっ、あああああ』
ぐぎゅ…
勇者『ああああっ、あああああ』
ぐりゅ…
ホビット『……』
ホビット『(勇者の体が、元通りになっていく……)』
スー勇者『……』
勇者『……ス……ちゃん……』
スー勇者『……大丈夫、です……』
スー勇者『ここに……居る、ですよ……』
勇者『……ん……』
ホビット『……』
―――――――――――――
・
…
……
…………
ホビット「……そして、目覚めた時には……あの子の体にはあの痣が浮かんでいたよ」
イシス勇者「…………!!」
イシス戦士「し、しかしそれによる後遺症などは無いのでしょう?」
ホビット「ああ、無いね」
イシス戦士「でしたら、何も問題は」
ホビット「ただ、後遺症がないだけさ」
イシス戦士「……え」
イシス僧侶「…………勇者くんの所の僧侶ちゃんとの話のくだり、覚えてる?イシス戦士」
イシス戦士「……」
ホビット「…………そうだね、これは今の所、勇者のその後の魔族への変貌を総括しての話だから推測ではあるけれど」
155 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/28(木) 00:53:56.23 ID://rGN1y40
ホビット「あと3回魔族になると、あの子は死ぬ」
156 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/28(木) 00:54:27.03 ID://rGN1y40
今日はおしまいです
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/28(木) 02:21:55.75 ID:jl9Z2GJT0
おつ
どんどん先が気になる様になるな
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/28(木) 02:30:50.82 ID:wbKV90yEO
乙
159 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/28(木) 09:35:52.32 ID:7OlPZptQO
こうなるとスー勇者は何者なんだろ、ルビス以外に精霊がいたりするんだろうか…乙
160 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/28(木) 22:55:10.22 ID:tIi2oPLH0
乙
161 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/29(金) 01:04:35.15 ID:p6cSTQgN0
乙でございます
162 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/29(金) 01:14:03.81 ID:hlznTdzL0
イシス勇者「……――は……?」
イシス僧侶「……本当、なんですね」
ホビット「恐らくだがね」
イシス勇者「いやいやいや!ちょっと待ってください、そんなっ」
イシス魔法使い「イシス勇者様。……落ち着いて聞きましょう」
イシス僧侶「あと3回……ですか……」
ホビット「うん。色んな文献であの症状を見かけた事があるが、恐らくそれらから推測するに3回だよ」
イシス戦士「ホ、ホビット殿!!なぜそんな落ち着いて話す事ができるのですか!勇者は――」
ホビット「わしが落ち着いて無感動に話していると。そう見えるかい?」
イシス戦士「……あ……」
イシス僧侶「イシス戦士。ダメだよそれは」
ホビット「いや、そう見られても仕方ないかもしれないね。これはわしの悪い癖でもあるし」
ポルトガ勇者「…………あいつの魔物に変化する時の条件ってあるんすか」
ホビット「ああ……これもまたわしの推測でしかないけれど」
ホビット「あの変化は、勇者の精神状態によって引き起こされると思っているんだ」
イシス僧侶「精神状態、というと」
イシス勇者「……仰っていた、怨念……――憎悪によってのもの、という事ですか」
ホビット「理解が早くて助かるよ」
ホビット「君らもさっき見ただろう?あの子が会話の途中に妙になったのを」
イシス魔法使い「あの時の勇者くんも魔物に変化しつつあったのですか?」
ホビット「極々軽微、ではあるけれどね……何かがあの子の中で琴線に触れてしまったんだろう」
ホビット「ああなるとスー勇者ちゃんの力を借りなければ引き戻す事ができなくなるんだ」
イシス戦士「でも、何故今まで生きてきて平気だったのですか……怨念に苛まれる事など、勇者ならば数多く」
ホビット「それはホラ、君らも間近で見たんじゃないかな」
イシス戦士「え?……――あ」
ホビット「“賢者達が魔力を込めた刃”……それが体内に入っていたからね」
ホビット「アリアハンで育ったからか、それまでは不要だったものを……あの子はテドンで、強いられてしまった。緊急的にね」
ホビット「それがどういう事か理解できなくはないだろう?」
イシス勇者「……――あの時、落日の七日間の初日に……勇者くんは強い憎しみに苛まれて」
ポルトガ勇者「それが決壊して、その賢者達が緊急で対応しなけりゃならなくなった……っつう事か」
ホビット「ん……そうだね」
163 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/29(金) 01:14:42.32 ID:hlznTdzL0
ホビット「だから、本来ならばこういった隔離された場所でのびのびさせてやるのが一番良いと思うんだ」
イシス勇者「では何故今回勇者くんに特別授業なんて」
ホビット「……それも、ちょっとわけアリでね」
ホビット「ただ傍にスー勇者ちゃんが居る限りあの子が痣を作ってしまう程完全に魔物への変身を遂げてしまうことはないと思うのさ」
ポルトガ勇者「ちょっと聞いてもいいっすか」
ホビット「ん?」
ポルトガ勇者「そうなるとあいつは、スー勇者はマジで何者なんすか」
イシス魔法使い「お話を聞く限りは……それこそ、遊び人ちゃんのような、そう……賢者様のような」
ホビット「んー……それはちょっとわしでも分からない」
イシス僧侶「そうなんですか?」
ホビット「ああ。あの子から直接話してくれるのを待っているんだが、なかなかだね」
ポルトガ勇者「……そっすか」
ホビット「はは、複雑な顔をしているよポルトガ勇者」
ホビット「スー勇者ちゃんまで殺さなければならない事態になるのが、やはり怖いかい」
ポルトガ勇者「!!!」
イシス勇者「――え」
イシス僧侶「ちょっとちょっと、どういう事ですか」
イシス魔法使い「今何か聞き捨てなら無い事が」
ホビット「……最初から、そのつもりで見定めに来たんだろう?」
ポルトガ勇者「あー……別に隠すつもりは無かったんだがよ」
イシス勇者「ど」
ガシッ!!
イシス勇者「どういう事だ!!!ポルトガ勇者君っ!!!!」
イシス戦士「イシス勇者様!!落ち着きなさってください!!」
イシス勇者「落ち着いていられるもんか!!だって、ポルトガ勇者君は――」
ポルトガ勇者「もし勇者が、魔族の血に身を染められているなら。殺すつもりだったよ」
イシス勇者「っ……――!!!!」
ギリッ…!!
イシス勇者「……君はっ……!!何を言っているのか分かって……!!!!」
ポルトガ勇者「わかってるさ」
イシス勇者「でも勇者くんは!!純粋に君の事を信じて――……」
「知ってたよ」
イシス勇者「!!」
イシス僧侶「……勇者くん」
スタスタ
勇者「知ってたよ。……なんとなく、ポルトガ勇者が何をしに来たのか」
164 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/29(金) 01:15:10.47 ID:hlznTdzL0
ポルトガ勇者「おう。荷造り終わったか」
勇者「うん。皆おまたせ!」
イシス勇者「ゆ、勇者くんっ!何をそんな悠長な」
勇者「イシス勇者くん、ありがとう」
イシス勇者「え?」
勇者「僕の事心配して、ここまで来てくれて……本当に感謝してる」
勇者「そして、ポルトガ勇者も」
ポルトガ勇者「おう」
勇者「……“僕の事”、心配してくれてありがとう」
ポルトガ勇者「……勇者」
勇者「ん?」
ポルトガ勇者「まあ、帰りがてら言うつもりだったんだが、今言うぜ」
勇者「うん」
ポルトガ勇者「お前が完全に魔物になりかけてたら、俺が殺してやるつもりだった」
勇者「うん。知ってた」
ポルトガ勇者「まあ今は大丈夫そうで安心したけど――もしこの先、そうなったら俺がちゃんと被害が出る前に殺してやる」
ポルトガ勇者「俺ができなそうだったら、無理せずに数呼んで、みんなで殺してやる」
ポルトガ勇者「だから安心しろ。……ただ、絶対呑み込まれねえようにしとけ」
勇者「……ポルトガ勇者」
ポルトガ勇者「んだよ」
勇者「ありがとう」
ポルトガ勇者「……ん」
勇者「でも、僕の幼馴染達も同じ約束をしてくれたんだ」
ポルトガ勇者「……――ははっ、じゃあ心強いな」
勇者「ああ」
ポルトガ勇者「………………殺させんなよ。あいつらには」
勇者「頑張るよ。ありがとう」
165 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/29(金) 01:15:41.15 ID:hlznTdzL0
勇者「ただ、スーちゃんは本当に関係ないんだ。手を出したら本気でブチ切れる」
ポルトガ勇者「ああ。わかったよ……俺もスーの字がかわいくないワケじゃないしな」
スタスタ
スー勇者「お、おまたせしましたです」
勇者「スーちゃん。準備できた?」
スー勇者「は、ははい、おっけーです」
勇者「……?どしたのスーちゃん」
スー勇者「なななな何も隠してないです!本当です!」
モコッ
スラお「くるしいっ!」
勇者「……」
スー勇者「ああっ!?だめですスラさん!」
スラお「だってくるしいもん!」
勇者「元の位置に捨ててきなさい」
スー勇者「ひどいです!!」
スラお「ゆーしゃうんこ!ひどい!」
勇者「なにさ、付いてくるつもりなの!!?スラお!ダメ!!絶対ダメ!!」
スラお「なんで!」
勇者「だって街中を歩くんだよ!?スラおが例え害のないスライムだからって目立たないワケ」
スラお「うるひゃいつれてけうんこゆーしゃ!」ガブー
勇者「あだだだだだやっぱりお前害あるわ!!!擁護しきれんわ!!!!」
ぎゃーぎゃー
ポルトガ勇者「……一瞬で毒気が抜かれちまったな」
イシス勇者「ポルトガ勇者君」
ポルトガ勇者「ん?」
イシス勇者「さっきは、掴みかかってごめん」
ポルトガ勇者「いや、当然の反応だろあれは」
イシス勇者「……覚悟が足りないのは、僕だったよ」
ポルトガ勇者「……」
イシス勇者「……――ただ」
イシス勇者「僕は、絶対に彼を殺させはしない」
ポルトガ勇者「……」
イシス勇者「そうなる前に、絶対。勇者くんを救う方法を探してみせる」
ポルトガ勇者「……ああ。頼むぜ」
イシス勇者「はは……期待してなさそうだね」
ポルトガ勇者「期待は、したいさ」
166 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/29(金) 01:17:49.45 ID:hlznTdzL0
…………
イシス勇者「泊めていただいて、本当にありがとうございました」
イシス僧侶「なにもお返しできないのが心苦しい限りなんですが……」
ホビット「いやいや。楽しかったよ」
イシス魔法使い「でも、いずれ何かでお返しさせて頂くのを約束させて下さい」
イシス戦士「今度は私にも稽古をつけていただけると」
ポルトガ勇者「ちゃっかり何頼んでんのお前」
ホビット「ははは。いや、是非是非」
ザッ!!
勇者「それでは先生!行って参ります!!」
スー勇者「お体、気をつけてくださいです!すぐに戻るです!」
スラお「おじちゃん!またね!」
ホビット「ああ。皆気をつけて行くんだよ……無事にね」
ホビット「いってらっしゃい」
勇者「はい!!」
・
…
……
…………
…………
……
…
・
サァァァァ……
ホビット「……」
テトテト
猫「……にゃーあ」
ホビット「ん?……ああ、君か」
猫「なーご……」
ホビット「皆行ってしまったよ。また以前のように静かになるね」
猫「……大丈夫なんですか?」
ホビット「なにがだい?」
猫「わかっているのでしょう?……何が来るのか」
ホビット「あはは……まあ、病人としては遠慮させてもらいたい事だよね」
ホビット「しかしいいのかい?スー勇者ちゃんを行かせてしまったわしを怒らないのかい?」
猫「かわいい子には旅をさせろ、といいますもの。それに勇者様が付いていますし」
ホビット「ふふ。そうか、そうか」
クルッ
ホビット「さて……それじゃ、中に入ろうか」
ホビット「もうすぐ、一雨来るようだから」
167 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/29(金) 01:18:17.01 ID:hlznTdzL0
今日はおしまいです
168 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/29(金) 02:32:17.48 ID:k7ZLbiLLO
おつ
169 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/29(金) 08:17:46.72 ID:sv8yxdmGo
乙です
170 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/29(金) 12:58:34.10 ID:FGb02DTb0
相変わらずの面白さ
乙です
171 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/29(金) 14:48:02.55 ID:ozMcAn+o0
乙つ
172 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/29(金) 19:51:39.21 ID:OneLSVooO
めちゃ乙続き早めに頼むよぉ
173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/29(金) 19:56:30.83 ID:AfPwRFx1O
おつ
174 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/29(金) 20:57:54.02 ID:B/H51O5vo
おっつー
更新多くてうれしい!
175 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/29(金) 22:32:54.27 ID:fHcj3K2DO
この猫何者?
176 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/30(土) 00:03:50.89 ID:5cXKGN6Y0
乙です
177 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/30(土) 01:05:14.87 ID:oOxHwYfb0
乙でございます
178 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/30(土) 21:54:29.90 ID:og3+Jf/s0
――――――――――――
…………
ゥゥゥウウウウ
ストッ…
イシス魔法使い「っと……こんな感じね」
スー勇者「わああ……!すごいです!綺麗に着地できたです!」
イシス勇者「イシス魔法使い、お疲れ様。ありがとう」
スー勇者「イシスさん!イシス魔法使いさんのルーラ、すごいです!」
イシス僧侶「そうだろうそうだろう」
イシス魔法使い「なんであなたが得意気なのよ……でも、着いたわね」
勇者「……――はい」
……
勇者「……って、あれ?エジンベアは?」
ポルトガ勇者「もうちょい先だ。ここは只の魔力場だよ」
――エジンベアのちょっと手前――
ガヤガヤ…
スタスタ
勇者「でも布を纏っといて良かったよ。人がだいぶ多いんだね」
イシス戦士「気付かれないようにしていろ……お前はエジンベアに来るのは初めてか?」
勇者「うん。ちょっとドキドキしてる」
イシス僧侶「いつもはもうちょっと人は少ないんだよ?なんか今日多い気がする」
イシス魔法使い「やけに船が多いわね……あら?」
勇者「どうしたんですか?」
イシス魔法使い「ううん。ちょっとね。どれもこれも商船だなあって……契約している商船なら専用の港があるのに」
イシス戦士「売り込みに来た個人商船か、それとも専用港の空き待ちか。何にせよやたらと出入りが激しい様だな」
イシス勇者「とりあえずエジンベアまで歩こう。ほら。ここからでももう見えてきた」
ザッ
勇者「……おおー」
――城塞都市・エジンベア――
勇者「す、すげー……」
179 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/30(土) 21:54:59.47 ID:og3+Jf/s0
オオォォォォ……
勇者「え、あれって全部お城?」
イシス勇者「うん。凄いよね。国一つを城で囲んでしまっているんだ」
イシス僧侶「この大陸自体はすっごく小さいからねー。歴史も長い国だしこうやって守りを堅めるのも必然だったんじゃないかな」
勇者「この間先生に座学で習ってはいたけど……うおー、凄い……でっかい」
イシス僧侶「でもよく考えたら先生も……ホビット様も連れてくればよかったんじゃない?」
勇者「え?」
イシス僧侶「ずっとあそこに住んでたんでしょ?だったら旅行がてら一緒にさ」
勇者「あー……ん。それはちょっと無理なんだ」
イシス僧侶「無理?」
勇者「うん。先生は理由があってあそこから離れられなくてね」
イシス僧侶「そうなんだ……どんな理由?」
勇者「体調面での理由」
イシス僧侶「えっ!?ホビット様、病気患ってるの?」
スー勇者「はい……だから安静にしてないと、だめです」
勇者「だから先生には何かお土産を持ってく事にするよ」
ポルトガ勇者「ああ、そうしろそうしろ。美味いもんいっぱい紹介してやるよ」
勇者「ありがとう助かる……って、ちょっと話変わるけどさ」
ポルトガ勇者「ん?」
勇者「どうして皆も布被ってるの?」
「「「?」」」
勇者「軽く僕ら変な集団になっちゃってるんだけど」
イシス勇者「だって、僕らは国連関係者だよ?もし門を通る時顔を認められたら上にすぐ連絡がいく筈だよ」
勇者「あっ、それもそっか」
ポルトガ勇者「お前はお尋ね者だしスーの字は捜索令が布かれてる。とにかく皆コソコソやるしかねえのさ」
勇者「でもさっきの……えっと、門って言ったっけ?それって厳重なのかな」
イシス勇者「……」
ポルトガ勇者「……」
イシス僧侶「……」
イシス魔法使い「……」
イシス戦士「……」
勇者「えっ?どしたの皆いきなり苦虫噛み潰したような顔になって」
ポルトガ勇者「いや……冷静に考えたら今回はあの門を一般人として潜らなけりゃならねえと思うとちょっとな……」
勇者「?」
イシス勇者「まあ行けば分かるよ。ホラ。もう門が見えてきた」
180 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/30(土) 21:55:30.68 ID:og3+Jf/s0
――エジンベア・城門(兼関所)――
門番「名前と居住区、そして国外に出た時の申請の有無。述べよ」
男「申請はしてきた。名は○○、居住区はリヴァプルフの235通りの35棟だ」
門番「割り銅は」
男「ここに」
門番「……――よし、通れ」
スタスタ…
勇者「おー、ああやって通るんだ」
ポルトガ勇者「こうやって見る分には普通の門番なんだがなぁ……」
勇者「ん?普通じゃない時もあるの?」
ポルトガ勇者「……気になるか?じゃあ行こうぜ」
勇者「?うん」
スタスタ
勇者「でもいいのかな、さっき見た感じだと銅?みたいなの差し出してなかった?僕ら何も持ってないけど」
イシス勇者「んー、いや。どの道僕らはエジンベアの人間じゃないから関係ないんじゃないかな……」
勇者「そうなの?」
イシス僧侶「ままま、行けば分かるよ」
門番「止まれ!」
ザッ
門番「名前と居住区、そして国外に出た時の申請の有無。述べよ」
勇者「えっと……僕らエジンベアの人間じゃなくて……」
門番「何?」
勇者「少し入国させて頂きたいんですけれど」
門番「ハンッ!!」
勇者「えっ」
門番「……紹介状・国連の許可証・エジンベア国からの来国要請書などは」
勇者「あ、いえ。それも持っていなくて」
門番「…………」スゥゥゥゥゥゥゥ
勇者「ん?」
181 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/30(土) 21:56:15.08 ID:og3+Jf/s0
門番「ッッブハッッハ――――――――ン!!!!!!」
勇者「……」
門番「という事はなんだ貴様、馬の骨か!!田舎者の!!」
勇者「馬の骨て」
門番「うっす汚い格好して、どうりで田舎者の匂いがプンプンすると思ったわ!!!!」
勇者「……え。……え?」
門番「帰れ帰れ!!貴様のような田舎者が来る所ではない!!」
勇者「いやそんな、横暴な」
勇者「お願いします。なんとか通りたいんですが」
門番「じゃあ聞くが、貴様どこ出身だ」
勇者「僕?僕は……アリアハンですけど」
門番「うわっ、クソ田舎じゃん」
勇者「なっ!?」
門番「あれだろ?便所ってそこらで立ってやるんだろアリアハン」
勇者「しないよ!!」
門番「ルビス祭終わったらみんな急に裸族になるんだろアリアハン」
勇者「ならないよ!!」
門番「家は獣の糞尿で固めて作ってるんだろアリアハン」
勇者「木材だよ!!」
門番「駅馬車も半日に一回とかしか来ないんだろアリアハン」
勇者「えっ、き、馬車っ?」
門番「……え?」
勇者「……」
門番「…………まさか、駅馬車も無いの?」
勇者「……あ、あるし」
門番「……ほんと?」
勇者「……………………………嘘です」
門番「田舎者けって――――――ッッへへへェ――――――イ!!!!」
勇者「ち、ちくしょう!とおしてっ」
門番「ラメェー――――ここは田舎者は通さないシティでェーす」
勇者「くそぉっ……!!田舎が、アリアハンが何したっていうんだよ!!!」
勇者「いい所なんだよ!!!ちくしょう!空気美味しいんだよっ!ちくしょうっ」
門番「空気おいしいからって田舎には変わりありませぇーん」
門番「これだから田舎者は……教育受ける環境も整ってないんじゃないの?」
勇者「整ってるし!!!」
182 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/30(土) 21:57:26.95 ID:og3+Jf/s0
クルッ
勇者「はぁ……もういいです……出直します」
スタスタ
勇者(どうしよう……もうこの国嫌いになりそうだ)スタスタ
門番「……」
ダッ
門番「……」タッタッタ
勇者(でもここから入れないならどうしよう……何か皆策あるのかな)
勇者(というか皆なんで離れたところで見守ってるのさ!!……いやまあ門番があれならしかたないか)
門番「シティ浣腸」
ブソン!!!
勇者「ア――――――オ!!!!!!」
勇者「なんてことしやがる!!!!!」
門番「ホホホッ!!」シュタタタ
勇者「ちょっ、こら!!逃げるな!!!!お前ェッ!!!」ダッ
ザッ
門番「はいもうだめでーすここ国境で――――す!!!リアル国境で――――す!!!国境バーリア!!!」
勇者「なっ、ちょっと卑怯だろそれ!!!」
門番「入れるもんなら入ってみーろ!一緒に豚箱に入ることになるけどヌェ――――」
勇者「くっ……あっ、ぎ」プルプル
門番「ねえねえ田舎者」
勇者「なんすか!!!」
門番「ヴェロヴェロ」
門番「……」
勇者「……」
門番「……」
勇者「……」
門番「……ヴゥェア―――!!!!」
勇者「ぶん殴りてえ!!!!」
183 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/30(土) 21:58:31.76 ID:og3+Jf/s0
スタスタ
ザッ
勇者「……」
「「「「おかえり」」」」
勇者「おかえりじゃないよ!!!なんで皆来なかったのさ!!!!」
ポルトガ勇者「いやすまん、ちょっとマジで苦手なんだこの国の門番」
イシス僧侶「でもやっぱりダメそうだったねー。なんか尻にイタズラされてたし」
勇者「その言い方やめてもらえるかな」
イシス勇者「とりあえず、分かっただろう?この国の人たちって少し……その、他の国を見下す傾向にあるんだよ」
勇者「そういう問題以前のものもある気がするけど……よくわかったよ」
イシス魔法使い「でも、どうしようかしらね。こうなると門からはやっぱり無理そうよね」
勇者「紹介状・国連の許可証・エジンベア国からの来国要請書が要るって言ってたよ」
イシス戦士「むう……どれも簡単には用意はできんか」
イシス僧侶「イシス女王ちゃんに頼めば用意くらいは簡単にできるんだけどそれじゃ私らの身分バレちゃうしなあ」
イシス戦士「……そうだ。良い事を思いついた」
イシス魔法使い「っていうと?」
イシス戦士「エジンベアには契約した商船を迎え入れる専用の港があるだろう。そこから入るというのはどうだ」
イシス戦士「ここにはポルトガ勇者殿も居るし、なんとかポルトガから乗り込めば」
ポルトガ勇者「あー、わり。そりゃ無理だ」
イシス戦士「む……すまないな。少し我侭が過ぎた」
ポルトガ勇者「いやそういうワケじゃねえんだ。いい案だとは思うよ。だがよ……ポルトガは今危険だ」
勇者「ポルトガが?どうして?」
ポルトガ勇者「ホラ、この前のポルトガ領の港を譲渡した時から世界全てのポルトガ領港には国連の監査が常に港に張り付いてやがんだ」
勇者「!」
ポルトガ勇者「今じゃどの船も隅から隅まで調べられる。全員を見つからずにここまで運ぶのは無理だ」
イシス戦士「そうか……」
イシス勇者「でもそうなると…………裏口的なものを探すしかなくなる、かな?」
イシス僧侶「そりゃちょっとリスキーすぎじゃない?侵入が成功したら万々歳だけど、見つかったら全員暴かれるよ?」
イシス魔法使い「割符的な物を誰かから一時的に借りる、なんてどうかしら」
ポルトガ勇者「それもちょっと怖いぜ。一般人から金で借りても洩れる可能性が高いし、裏のそういう商売してる奴のツテもねえ」
「「「…………」」」
ポルトガ勇者「……八方塞がりか」
イシス勇者「でもまだ考えれば何か穴がありそうだよ」
イシス僧侶「とにかく皆でもっと意見を出し合おうか」
スー勇者「はいっ」
勇者「ん?どしたのスーちゃん」
スー勇者「あの、あそこ……あの道通る事、できればいいです?」
勇者「あの道って、さっきの門番の?うん。そうなんだよ。でもね」
スー勇者「だったらできるです」
勇者「……――え?」
スー勇者「あの道、通る事。多分できるです」
184 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/30(土) 22:00:35.31 ID:og3+Jf/s0
ポルトガ勇者「……ちなみにあの門番殺すってのはなしだぞスーの字」
スー勇者「んもー!違うです!ポルトガさんはもう!私をすぐからかうです!」プンスコ
ポルトガ勇者「わりいわりい、でもどうやるんだよ?あんなの簡単に」
ゴソッ
ポルトガ勇者「抜けられ――……」
カサ…
スー勇者「これを使えば、多分あそこを通れるです」
イシス戦士「……?」
イシス僧侶「……ねえスー勇者ちゃん」
ポルトガ勇者「なんだ?その葉っぱ」
勇者「ただの葉っぱに見えるけど……」
スー勇者「えっと……もう試した方が、早いと思うですので」
スッ
スー勇者「あむ」
イシス僧侶「え?食べるの?」
フッ……
イシス戦士「……」
イシス僧侶「……」
イシス魔法使い「……」
イシス勇者「……」
ポルトガ勇者「……」
勇者「……――えっ」
「「「消えた!!!?」」」
勇者「スーちゃん!?スーちゃん!!ス、スーちゃあん!!?」ワタワタワタワタ
イシス僧侶「ちょっと勇者くん取り乱しすぎ!!」
イシス勇者「スー勇者ちゃん!?どこへ――……」
185 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/30(土) 22:01:37.61 ID:og3+Jf/s0
「大丈夫です、ここにいるですよ」
「「「!!!」」」
ポルトガ勇者「……マジ?マジかこれ」
イシス勇者「噂には聞いた事あったけど……じゃあ、さっきスー勇者ちゃんが食べたのって」
「はい。“きえさり草”です」
イシス魔法使い「初めて見るけど、こんな綺麗に消えちゃうものなのね……」
勇者「えっと、この、この辺りから声が」
サワッ
「ひぁぅっ……ん」
勇者「ンッ」
「ご、ご主人様……だ、だめです、こんな……」
勇者「アッ、エッ……すみませんでした。すみませんでした……土下座はこっちの方向で合ってる?」
イシス勇者「もっと命乞いするみたいにしなきゃだよね」
勇者「ハイ」
「きえさり草は、私の村の近くでたくさんとれるです……ただ、食べると頭痛がするので、おすすめはできないです」
ポルトガ勇者「いやいや、んなもん何のそのだって。食えばいいのか?」
「はい。噛んで噛んで、そのお汁を飲めば3瞬くらいで、消えるです」
「草の新鮮さにもよるですが、私のカバンの中のきえさり草は、半々刻くらい姿を消せるです」
イシス僧侶「それで全然十分よ!スー勇者ちゃんやりおりますな!」
「私のカバンに、あと10枚くらい入ってると思うです。みなさんどうぞ食べてくださいです」
イシス魔法使い「善は急げね!……それじゃちょっとカバン失礼するわね」
イシス戦士「これは衣服も消えるのか?」
「はい。身に着けてるものは生き物でないかぎり、消えるです」
「ぼくもたべたよ!」
勇者「スラおもいつの間に……よし、それじゃ食べようか皆!」
ぱくり
……フッ……
……。
……。
……。
「「「まずぅっ……」」」
「好き嫌いは、めっ、です」
186 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/30(土) 22:03:34.59 ID:og3+Jf/s0
・
…
……
…………
門番「……」
門番「ふぁあ……あふ」
門番「……」
門番「……」
ズムンッ!!
門番「ア――――――オ!!!!!!」
ドサァッ!
門番「け、ケツが……!!くっ!!?……ッ、!!!?」キョロキョロ
シーン…
門番「……!?……!?」
……………
……
…
・
スタスタ
勇者「アリアハンを馬鹿にした報いだ……痔になれ」
ポルトガ勇者「気持ちはわかるがちょっと落ち着け」
イシス僧侶「ってか、これ皆ちゃんと居る?」
イシス魔法使い「私はイシス勇者様とイシス戦士と手を繋いでいるけど……」
イシス戦士「私はスー勇者と手を繋いでいる」
スー勇者「はい!」
イシス勇者「僕もちゃんと居るから……うん。大丈夫みたいだね」
勇者「ん、皆離れないように歩こう」
ポルトガ勇者「……お、ようやく門を抜けるぜ」
ザッ
――エジンベア・内部――
勇者「おおおおお……!」
ガヤガヤ
勇者「すごい……!煌びやかで綺麗な街が……」
イシス僧侶「華やかだよねー。イシスも負けちゃいないけど」
187 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/07/30(土) 22:04:19.87 ID:og3+Jf/s0
ガヤガヤ
勇者「うおお、人多いね?凄く賑やか」
ポルトガ勇者「ああ。はぐれんなよ?スーの字」
スー勇者「もう!子供じゃないです!」
イシス僧侶「きえさり草食べてからどのくらい時間たってるっけ?」
イシス魔法使い「まだ半々刻はいかないと思うけど……少し不安ね」
イシス戦士「それまでこの手繋ぎ状態を確保できていればいいが」
イシス勇者「じゃあ、もし離れ離れになった時の目印の場所でも決めておこうか?」
勇者「そうだね、じゃあ――……」
ザワッ
勇者「ん?」
「なんだなんだ?」
「おい、道あけろ」
「行列が通るぞ、おい、どけって」
ゾロゾロゾロ
勇者「えっ、あっ、ちょっ……あっ!!?」
ドンッ
「ん?今誰か当たったか?」
勇者「やばっ――……!!」
パッ
ポルトガ勇者「ッ!!おい!勇者!」
イシス勇者「勇者くん!!みんなっ!!」
ゾロゾロゾロゾロ
勇者「うわっ、ちょっと!!」
勇者(なんでこんなに急に人が……!!流されっ)
ガシッ
スー勇者「ご主人様!」
勇者「ッ!スーちゃん!」
188 :
◆3VOBH3KJAk
:2016/07/30(土) 22:05:29.26 ID:og3+Jf/s0
ガヤガヤ…
「なんだこの人だかり」
「なんでも、エジンベア勇者様が直々に……」
「マジかよそりゃ!」
「どっかの軍の行列も通るし、やってられんな……この国に土足で上がりこみおって」
「最近急に兵隊を多く見るようになったわね」
「……世界のどこで何が起きようとしてんだか、考えたくもないな」
…………
……
…
・
――路地裏――
ザワザワ…
スー勇者「はーっ、はーっ……」
勇者「スーちゃん……良かった、はぐれないで」
スー勇者「でも、他の皆さん、はぐれてしまったです」
勇者「うん……」
ヒョコッ
ザワザワ…
勇者「……結局、なんで急にこんな大勢の人が流れて来たんだろ……うっ……!?」
サマンオサ兵「……」ガシャンガシャンッ
シュバッ!!
勇者「〜〜〜〜っ……!!!」
スー勇者「…………サマンオサ兵……!!!!」
勇者「なんでエジンベアにこんな大勢……ッ!」
スゥッ…
スー勇者「あっ、効力が」
勇者「ん?あ……本当だ、消えた」
スラお「ばかゆーしゃがいきなりでてきた!」
勇者「るっさい」
スー勇者「……ご主人様」
ギュッ
スー勇者「離れないように、お願いしますです」
勇者「はは、うん。ありがと」
勇者「…………みんな、無事かな……」
スー勇者「皆は、見つかってもどうにかなると思うです。でもご主人様は」
勇者「……だね」
スクッ
勇者「とりあえず、ここをちょっと移動しよう……サマンオサの兵が多くなってきた」
スー勇者「はい……」
189 :
◆3VOBH3KJAk
:2016/07/30(土) 22:07:01.96 ID:og3+Jf/s0
勇者「まずは、じゃあ……大通りの反対側……この道のあっちの方、行こう」
スー勇者「はいっ」
…………
ゾロゾロ
ピタッ
「……」
エジンベア兵「?どうかされましたか?」
「いえ、ちょっと……気になる事が」
エジンベア兵「気になる事?」
「この先は一体何が?」
エジンベア兵「この先は細い裏通りです。居住区ですので、ちょっと入り組んでいますね」
「ん……そうですか」
ダッ
タッタッタ
「少し離れます!申し訳ありません!」
エジンベア兵「え?あっ!?あの」
「そちらには後で参ります!上の方々にはそうお伝え下さい!」
エジンベア兵「と、申されましても……ぐむ……了解、しました」
「ありがとうございますっ!」
タッタッタ…
エジンベア兵「……まったく」
エジンベア兵2「……行かせていいのか?アレ」
エジンベア兵「ああ、ちょっとくらいならば平気だろう。予定も終わった後だし」
エジンベア兵2「しっかし、なんでこんな所に」
エジンベア兵「……ダーマの神官でもあるんだ。何かルビス様が御導きになったんじゃないのか」
エジンベア兵2「ははっ……本当にダーマ勇者様もルビス様も呑気なもんだ」
――――――――
タッタッタ
ダーマ勇者(うーん……気のせいかな)
ダーマ勇者(こっちから、魔物の気配がする)
190 :
◆3VOBH3KJAk
:2016/07/30(土) 22:07:45.76 ID:og3+Jf/s0
今日はおしまいです
191 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/30(土) 22:20:43.95 ID:F8HfX7pno
おつです
192 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/31(日) 03:40:43.15 ID:k6iQsnMY0
乙でございます
193 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/08/03(水) 23:34:06.49 ID:6P4wd5F50
―――――――――――
スタスタ…
勇者「……結構歩いたね」
スー勇者「はい。もう大通りから、離れたです」
勇者「人の気配も少なくなってきたし……でも」
――貧困街――
ビュォオォオ……
乞食「……」
娼婦「……」
子供「……」
勇者「……表とは、えらい違いだ」
娼婦「ねえ、そこのアンタ!どう?アタシを買わない?」
勇者「いえ、すみません。大丈夫です……スーちゃん、行こう」
スー勇者「はい」
スタスタ…
勇者「んー……見た感じ警備兵も居ないし店も無さそうだ。少し物騒な輩もいる」
勇者(何人か僕らの後を付けようとしてるのも居るな……)
スー勇者「です。早くどこかに抜けましょうです」
勇者「だね」
ピタ
スー勇者「あれ?」
勇者「どしたの?」
スー勇者「いえ……こっちの空気の流れが、速くて」
スタスタ
スー勇者「多分、開けた場所があるです」
勇者「ほんと?じゃあそっちに行こう」
スタスタ
スラお「んー」モゾッ
スー勇者「あっ、だめですスラさん出てきちゃ」
スラお「……ゆーしゃのばか」
勇者「いきなり何さ」
スラお「だって……あれ?」
勇者「え?どしたの」
スラお「んーん……ちがった」
勇者「??」
194 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/08/03(水) 23:34:57.06 ID:6P4wd5F50
ピタッ!
勇者「……!スーちゃん!隠れて!」ヒソッ
スー勇者「え?わわっ」
ザッ
スー勇者「どうしたです?」
勇者「あれ。ほら、人がたくさん居る」
スー勇者「……――!!」
――貧困街・広場――
勇者「しかも兵士が何人か混じってる……くそ、こっちもダメか」
スー勇者「でもなんだか様子がおかしいです」
兵士達「「「……」」」
ローブを身に纏った集団「「「……」」」
スー勇者「やけに静かで……」
勇者「ん?――あれ、何だろう。中央にでかい荷物がやたらと積まれてる」
ガラガラガラ
「はやくしろっ!ここに置け!」
勇者「!」
ガラン
「よし、次はあと一台……」
勇者「……あれは」
ギシ…
勇者(……――鉄、だよな。熱加工される前の)
ガラガラガラガラ
勇者「お、もう一台……ンッ!!」
スー勇者「ひうっ!」
スラお「ぐゆっ!」
プーン
勇者(くっっっさ!!!臭いくさい!!何運んでるんだよ!!!)
「ぐっ……早く布で覆え!」
バサァッ
「よし。これで全部だな」
勇者(なんなんだこの集団)
スー勇者「……――――エジンベアの、大臣さん」
勇者「え?」
スー勇者「あの人、エジンベアの大臣さんです」
勇者「!!?」
195 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/08/03(水) 23:35:28.40 ID:6P4wd5F50
エジンベア大臣「揃ったか?では運べ!」
ガラガラ
勇者「エジンベアの大臣がこんな所で何を運んでるんだ……?」
勇者(ヤバイ取引現場とかじゃないよね、命狙われたりなんか)キョロキョロ
…………――――。
勇者「ん?」
勇者「あれ?……スーちゃん、何か言った?」
スー勇者「いえ、私は何も……でも」
勇者「でも?」
スー勇者「……――なんでも、ないです」
勇者「?」
ザッ
勇者「とりあえずあの集団ももう見えなくなるし、そうしたら動こうか」
スー勇者「はい、ご主人様」
「あの」
勇者・スー勇者「「ハオッ!!!?」」
ザザァッ!!
勇者「いえいえいえいえ僕は何も見てませんよぉ!!?」
「え?何をですか?」
勇者「え?」
「私はちょっとあなた達に用があって」
勇者「な、なんです?」
スー勇者「……――っ!!ダ……」ハッ
「えっと……おほんっ」
ダーマ勇者「私は国連認定勇者資格保有者の一人ダーマ勇者です。少し聴きたい事があります」
スー勇者「ダーマさん……!!」
勇者「 」
勇者「 こ、くれん」
勇者(詰んだ)
196 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/08/03(水) 23:36:30.04 ID:6P4wd5F50
勇者「ど、どうされました?」
スッ…
勇者(顔見知りの可能性もあるしスーちゃんを隠さないと……)
スー勇者(ご主人様……)
ダーマ勇者「いえ」
ダーマ勇者「……魔物の気配がするのです。貴方達の方から」
勇者(ダイレクトに詰んだよ)だうー
ダーマ勇者「私の家系は代々ダーマに深く繋がっていて、私も魔族の気配に敏感な特異体質を持って生まれました」
ダーマ勇者「その私の血が騒いでいるんです。魔物の気配に」
勇者「それは、えっと」
ジャキン
勇者「!?」
ダーマ勇者「私も手荒な真似はしたくありません。もし貴方が魔物の手先ならば優しく浄化するように手助けします」
勇者(それってどの道滅ぼすんですよね)
ダーマ勇者「なぜ、魔族の気配がするか……教えてくれますか?」
勇者(ど、どうする!?逃げるにも袋小路に迷い込んだらそれこそアウトだ)
勇者(僕が魔族だって事を悟らせない何か上手い言い訳は……!)
もぞっ
スラお「こんにちは!」
ダーマ勇者「えっ」
勇者「!!!」
スラお「こんにちは!おねーさん!」
ダーマ勇者「えっ?えっ」
勇者(ナイスだスラおおおおおおおおおおおおお)
ザッ
勇者「こ、この子は違うんです!!見逃してやってください!」
スー勇者「くださいっ!」
スラお「んー?」
スー勇者「お話、あわせてくださいスラさんっ!」ヒソヒソ
ダーマ勇者「えっ、スライム……喋って、えぇっ?」
勇者「こ、この子は、ええと、その……亡き父が僕らが子供の頃に拾ってきた孤児のスライムで!」
スラお「そうだそうだ」
勇者「僕らは子供の頃から兄弟のように、家族として接し続けてきたんです……!心が通じ合って言葉も覚えてくれた!」
スー勇者「そうですそうです」
勇者「お願いです、勇者様!こいつは……こいつは見逃してください……!!」
スラお・スー勇者「「そうですだそうですだ」」
勇者(合いの手適当すぎりゅう)
197 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/08/03(水) 23:37:06.93 ID:6P4wd5F50
ダーマ勇者「……」
勇者(……ダメか?)
ブワッ
ダーマ勇者「っ……!なんて、ステキなっ……!」
勇者(大丈夫そうだ)
ダーマ勇者「すいませっ……そうとは知らず、剣なんて抜いてっ……」
勇者「いえいえいえ!勇者の方ですし当然の対応をされたまでです!悪いのは街の中にこいつを入れた僕らですし!」
スラお「みたかったんだもん!」
ダーマ勇者「お願いを叶える為にっ……!」ぶわっ
勇者(この人大丈夫か……いい人すぎないか)
勇者「というわけで、もう二度と立ち入りませんのでこの場は見逃してください!」
ダーマ勇者「どうぞどうぞ、引き止めてしまって申し訳ありませんでした……!」
勇者「ありがとうございます!二人共!行こう!」
スー勇者「はいっ!」
スラお「めーれーするな!」
ガシッ
勇者「それでは失礼しますッ!!」
ドヒュンッ!!
タッタッタ……
ダーマ勇者「はー……なんてステキな話だったのかしら」
クルッ
ダーマ勇者「さて」
スタスタ
ダーマ勇者(早く戻らなきゃ。エジンベア王にまだお話を伺っていないし……)
ピタ
ダーマ勇者「……」
ダーマ勇者(でも、変ね)
クルッ
シーン……
ダーマ勇者(…………スライムが、あんな大きな禍々しい気配を出せるのかしら)
…………
……
…
・
198 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/08/03(水) 23:38:03.16 ID:6P4wd5F50
・
…
……
…………
勇者「死んだかと思ったわ」
――倉庫棟――
スタスタ
勇者「本当、本当寿命縮んだ」
スー勇者「すみません、ダーマさんに気付かないでした……」
勇者「スーちゃんが謝る事ないじゃないさ。ってかやっぱり顔見知りだったんだね」
スー勇者「はい。凄く良い人です」
勇者「知ってる」
スタスタ
勇者「しっかしもう随分歩いたね。皆とはぐれてから結構経っちゃったけれど」
スー勇者「ここは……なんでしょう」
勇者「倉庫が並んでるね。そういやスーちゃんはエジンベアの道知らないの?」
スー勇者「……ごめんなさい」
勇者「……あっ」
勇者「いや、本当謝らないで。こっちこそ……無神経だった。ごめん」
スー勇者「い、いえ!」
勇者「とにかく……ん?」
ザワザワ…
スー勇者「急に人気が多くなってきたですね」
スラお「なんかへんなにおいするっ」
勇者「…………――港だ」
――契約商船専用港――
ザァン……
ザワザワ
勇者「ほー」
勇者(壁が一部分だけ取っ払われていて、露出した海面に足場がいくつも飛び出してる)
勇者(そこに商船が錨をそれぞれ下ろして……なんだか、外国に来たって感じられる風景だなあ)
勇者「って、あれっ」
スー勇者「え?」
勇者「ほら、港の奥の方」
スー勇者「……あ!」
――エジンベア城・本城――
勇者「あれ本城だよね!?おおー、もうそんな所まで来ちゃったんだ」
199 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/08/03(水) 23:38:48.96 ID:6P4wd5F50
スー勇者「たくさん歩いたですからね……わあ、大きいです」
勇者「だねえ……豪奢な造りというか、なんというか。でも城に囲まれてる街の中にまた城があるって変な感じだね」
スラお「ねえねえ!ちかくいこうちかく!」
勇者「っし――――!!!!静かにスラお!!結構今人多いんだってば!!」ヒソヒソ!!
スラお「むー」
スー勇者「スラさん、良い子しましょう?」
スラお「はい」ヒソヒソ
勇者「さて……じゃあ、お城の方に行きますかね」
…………
ガヤガヤ…
勇者「……んー」
スー勇者「どうしたです?」
勇者「ううん。正直お城入るのってきえさり草が必要になるかな、って思ったんだけど」
スー勇者「まだ余ってるですよ?」
勇者「や……その必要は。ホラ。なさそうだよ」
ガヤガヤ
スー勇者「です。人がいっぱい行き来してるです」
勇者「門兵も居ないみたいだし……僥倖ってところかなあ」
――エジンベア城・内部――
キラキラキラ……
勇者・スー勇者「「ほわーっ……!」」
勇者「なんだこの、豪奢さは……すげー」
スー勇者「全部がキラキラしてるです……!」
「なんだ、あいつら」
「みすぼらしい格好して、キョロキョロ辺りを見回して……」
勇者「う……進もうかスーちゃん」
スー勇者「はいです」
スタスタ
勇者「んー、でもどうしようか。簡単に城に入れたのはいいけれど何も手がかりが無い状態だし」
スー勇者「そうですね……」
勇者「まずは誰かに聴いてみたいところでもあるけれど」チラッ
「……」ジロジロ
「……」ジロジロ
「……」ジロジロ
勇者「……ちょっと、無理そうかな」
スー勇者「きえさり草、使うです?」
勇者「最終的に頼る事になっちゃいそうかなあ」
200 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/08/03(水) 23:39:31.70 ID:6P4wd5F50
コロコロ
勇者「……――ん?」
ゴロ…
勇者「なんだこれ、リンゴ?」
ヒョイ
勇者「なんでいきなり」
「あら、ごめんあそばせ」
勇者「え?」
「それあたしのものなの」
勇者「あ、そうですか。すみません」
スッ
勇者「どうぞ」
勇者(なんでリンゴなんかこんな高貴そうな人が……)
「……」
ガシッ
勇者「へっ」
「……やっぱりあなた」
勇者「えっ?えっ」
勇者(え、なんだ?密入国がバレた!?それとも僕が魔族だって――……)
「田舎者ね!」
勇者「……――はい?」
「そこの貴女もそうだわ!田舎者よね貴方達!」
勇者「え、まあ……」
勇者(いきなり何なんだこの人……)
クイクイ
勇者「ん?どしたのスーちゃん」
スー勇者「ま、まわりが……」
勇者「え?……!?」
「「「……」」」
勇者(な、なんだなんだ?皆が僕らを睨みつけてる)
勇者(さっきの視線とは違う、なんていうか……)
201 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/08/03(水) 23:39:58.13 ID:6P4wd5F50
勇者「っ、あの!すみません、手を」
「え?ああ、ごめんなさいあたしったら」
パッ
勇者「じゃあ、僕らはこれで失礼します」
スー勇者「……」ペコッ
「え?ちょっと、待って――……」
ダッ
「――むう、逃げられちゃった」
スタスタ
エジンベア兵「姫様!!」
「あら、どうしたの?」
エジンベア兵「どうもこうもございません!あのような下賤の輩に触れて……ご自愛を」
「んもう、おおげさね」
エジンベア兵「エジンベア勇者様から私どもが叱られてしまいます」
エジンベア兵「何卒好奇心はお抑えになられてください……――マーゴッド姫様」
マーゴッド「……エジンベア勇者は関係無いじゃない。あたしを怒らせたいのかしら?」
エジンベア兵「……」ペコ
マーゴッド「ふん、まあいいわ」
スタスタ
エジンベア兵「どうか下階を歩き回らずにお願い致します」
マーゴッド「わかっているわ」
スタスタ
マーゴッド「……――ふふ」
マーゴッド「さっきのあの二人、なーんか面白そうよね……♪」
202 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/08/03(水) 23:40:24.08 ID:6P4wd5F50
今日はおしまいです
203 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/03(水) 23:41:38.82 ID:R6t1uAYX0
おつ
204 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/04(木) 00:05:30.68 ID:C+xEVwWU0
乙でございます
205 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/04(木) 02:52:21.71 ID:Nb4ojMji0
乙
206 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/07(日) 18:23:38.73 ID:iYML0sUr0
まだやってたのかこれ・・・(困惑
207 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/08/10(水) 23:54:58.61 ID:rvIdt3yc0
…………
スタスタ
ザッ
――望庭の広場――
勇者「ん、開けたトコにでちゃったね」
スー勇者「手がかり、ありませんですね……」
勇者「だなあ。歩けそうな所は一通り見回ったしね」
スタスタ
勇者「よいしょ。スーちゃんも腰掛けなよ。だいぶ歩き回ったから疲れたでしょ」
スー勇者「はいです」
ポスン
勇者「んー、どうしよっか……一旦街に戻って情報収集でもするかな」
スー勇者「それがいいかもです。このお城の中の人達、少し怖いです」
勇者「それじゃ、少しここで休憩したら戻ろうか」
スー勇者「あれ?」
勇者「ん?どしたの?」
スー勇者「いえ、あれ……」
勇者「あれ?……あっ」
マーゴッド「……」
勇者「さっきの人……うわあ、めっちゃ見てる」
スー勇者「もしかして、ずっと追ってきてたです……?」
勇者「かもしれない」
スクッ
勇者「スーちゃん、やっぱりもう街に」
マーゴッド「あら、お城を出てしまうの?」
勇者「ってわあ!!!音も無く近づいて来ないで下さいよ!!」
マーゴッド「ふふっ、ごめんあそばせ」
勇者「……何か用ですか?」
マーゴッド「それはこちらの台詞ではなくて?」
スー勇者「えっ」
マーゴッド「あなた方御二人は何をお探しなの?」
勇者「……」
マーゴッド「さすがに傍から見ても何かを探しているのは丸分かりよ?」
勇者「……」
勇者(……一応、見学しに来たって体で聴けば、大丈夫、かな)
208 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/08/10(水) 23:55:30.60 ID:rvIdt3yc0
勇者「あの、渇きの壷って御存知ないですか?」
マーゴッド「!」
勇者「えっと……噂に聞いて、一度拝んでみたくて。展示とかされてません?」
マーゴッド「……ふふー?」
勇者・スー勇者「「?」」
ザッ
マーゴッド「よろしい。あたしについていらっしゃい」
スタスタ
勇者「え……」
スー勇者「ご、ご主人様……どうするです?」
勇者「んー、一応付いてってみようか」
勇者(もしこの人が嘘を付いていて、怪しい僕達を兵に突き出すつもりでもきえさり草でなんとかなると思うし)
…………
――エジンベア城・通路――
ババッ
マーゴッド「……」
シュバ
マーゴッド「……よし、誰も居ないわね。行くわよ」
スタスタ
マーゴッド「渇きの壷はこの城の地下に保管されてるの。知らない人も多いけれどね」
勇者「……なんで隠れながら歩いてるんですか?」
マーゴッド「兵に見つかりでもしたら渇きの壷の場所まで辿り着けないからよ……よし、こっちも大丈夫だわ」
勇者「あの……まずい場所にあるんですかね」
マーゴッド「まずいワケじゃないけれど、見つかったら貴方達の首がとぶじゃない」
スー勇者「ひっ!」
勇者「怖い事いわないでくださいよ……それに貴女も」
ピタ
勇者「……」
マーゴッド「……どうしたの?」
勇者「……やたら、高貴そうな人だなとは思いましたけど」
勇者「貴女、もしかして」
マーゴッド「私が何かなんて、どうでも良い事ではなくて?」
スタスタ
マーゴッド「さ、ここから足元が暗くなるわ。お気をつけて」
勇者「……」
スー勇者「……」
209 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/08/10(水) 23:56:58.54 ID:rvIdt3yc0
――エジンベア城・地下――
スタスタ…
マーゴッド「〜♪」
スー勇者「……」
勇者「……」チラッ
ヒュゥゥゥ…
勇者(……一応、逃げられるように警戒はしておこう。スーちゃんの手も握ってるし、いざとなったら)
コロン
コロコロ…
勇者「ん?」
マーゴッド「あら、いけない……また落としちゃった」
ヒョイ
勇者「……またリンゴ……はい。どうぞ」
マーゴッド「ありがとう」パシ
勇者「お好きなんですか?リンゴ」
マーゴッド「んー?……そうね」
ヒュッ
パシッ
ヒュッ
パシッ
マーゴッド「……これを見てね、思いついた事があるの。……それからずっとリンゴは持ち歩いているわ」
勇者「思いついたこと?」
マーゴッド「そう。この世界の成り立ちの事」
スー勇者「……世界の成り立ち?」
スタスタ
マーゴッド「あたし、結構な教育を受けてて……聖書なんてそれこそ穴が空くほど読み返したわ」
マーゴッド「でもそこでずっと疑問に思った事があったの」
勇者「聖書に疑問ですか」
マーゴッド「そ。“精霊神ルビスの世界創造”の項」
マーゴッド「昔はルビス様も一人の精霊だった頃があったっていうじゃない……この世界を作ったのはだいぶ最近だって」
マーゴッド「創造神ミトラ様、大地の神ガイア様、太陽の神ラー様、そしてそこにルビス様が加わった、ルビス様は神々の序列の新人だって」
勇者「らしい、ですね」
勇者(いきなり聖書の内容を話しはじめた……)
マーゴッド「でも、この大地を創ったのはルビス様でしょ?じゃあそれまでどこで暮らしていたのかしら?」
勇者「それは……精霊界じゃないんですか?精霊戦争が起きて、そこが滅んでしまって」
マーゴッド「じゃあ他の神様方は今はどこに行ったの?おかしいじゃない。もし神々がルビス様のように健在だったらこの大地を創ったのはミトラ様でもよくってよ?」
勇者「でもそれを言ったらルビス様だってどこにいるか分からなくないですか?」
マーゴッド「でも、加護は活きて、私達は生かされてる」
勇者「……」
210 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/08/10(水) 23:58:36.76 ID:rvIdt3yc0
マーゴッド「……ねえ、その後の項で記述されてる話があるじゃない」
スー勇者「…………“世界のはざ間の戦い”、です?」
マーゴッド「そう!それ」
マーゴッド「あの戦いでは、あらゆる世界を脅かした“災厄の王”と、あらゆる世界の神々が戦った。ルビス様もラーミアに乗ってそれぞれの世界を行き来して参戦したらしいわね」
マーゴッド「有翼の“星々の民”、空の上に住み人間の夢を司る“夢の民”、竜の一族……皆で力を合わせて無事に“災厄の王”は討ち倒された」
勇者「それが、聖書に書いてある筋書きですね」
マーゴッド「そしてその後にそれぞれの世界の復興を手伝って、ルビス様はそれぞれの世界でも神様になった……その辺りは別にいいわね」
マーゴッド「で、その“あらゆる世界をラーミアで移動して”って所でひっかかってね」
勇者「何がです?」
マーゴッド「……この世界って、ルビス様が作ったんじゃなくて、適当な世界に私達を作ったんじゃないかしら?」
勇者「……えっ」
マーゴッド「ではちょっと聞くわね」
スッ
ポロッ
コロコロ…
マーゴッド「……今のリンゴは、“なんで落ちたの?”」
勇者「え?なんで、って……言われても、落としたから、としか」
マーゴッド「なんでモノは落ちるのかしら?」
勇者「……そういう、モノだから……?」
勇者「一応、詳しく言うと、四元素の物質は回帰する力があるから……リンゴが地面に帰った、って事じゃ」
マーゴッド「ふふふっ……そうね。模範解答よそれが」
マーゴッド「じゃあもう一つ。この世界を船でどれだけ泳ぎ回っても果てに行く事はできません。何故?」
勇者「それは、船が落ちないようにルビス様が守ってるからって」
マーゴッド「それが通説ね、でもこんな説はどうかしら」
スー勇者「……大地が、丸いからです」
勇者「え?スー勇者ちゃん、なんて?」
スー勇者「この大地が、丸いからです……私達の村で、そう言われてるです」
マーゴッド「〜〜〜〜〜っ」
ぎゅうぅぅっ!
スー勇者「ふあ!?」
マーゴッド「これだから田舎者は大好きなのよぉ〜〜〜っ!!!」ギュゥゥゥ
勇者「え?この大地が丸い?」
マーゴッド「そう。この大地はまんまるなのよきっと」
勇者「そん、な……?ええぇ……?」
スー勇者「お空の星が、毎晩同じ方角を走るのも、関係があると言われてるです」
マーゴッド「それも理解してくれるの!!?あーんもう貴女すき!」ギュゥゥ
スー勇者「うー……」
勇者「え?星とこの大地がどう関係あるの?」
マーゴッド「多分、この大地が回ってるのよ」
勇者「ん……?ん?何?」
211 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/08/11(木) 00:00:54.22 ID:rr3468kg0
マーゴッド「つまり、ほら、このリンゴを見てごらんなさい?」
クルクル
マーゴッド「私のこの左手の握った手が太陽だとしたら、こうやって回ってるんだと思うの」
マーゴッド「だから星が、月が、太陽が回っているわけじゃなくて。私達がその周りを回っているのよ」
勇者「……?…………?」
マーゴッド「なによその間抜けな顔」
勇者「ごめんなさいいまいち納得しきれなくて」
マーゴッド「ま、こんな事大抵の人間は笑って流す説よね。……ルビス様を妄信してる人間達は。ね」
勇者「貴女は違うんですか?」
マーゴッド「少なくとも、何もかもをルビス様の手柄にしてルビス様のせいにするつもりはないわ」
マーゴッド「ルビス様の力が働いているのは、ルビス様が作った生き物と植物と建物だけ」
マーゴッド「原初のこの世界には、ルビス様の力は働いていなかった……そう思うの」
勇者「で、でももしさっき言ったのが本当なら僕らがここに立ってるのもおかしい気が」
マーゴッド「だから、さっきのリンゴの話になるわけ」
マーゴッド「大地がくるくる回っても私達が地面に居座れるのは……ルビス様の力じゃなくて。なにかの力の均衡の賜物じゃないかしら」
マーゴッド「この大地の底には、あらゆるものを引っ張る力がある。それは加護じゃなく、何かと何かの力の均衡、そしてこの大地の性質」
マーゴッド「……引力。それが働いてる」
勇者「……」
マーゴッド「っというのが私の考え。内緒よ?」
勇者「誰にも話さないですよ……」
スタスタ
マーゴッド「いままで何人かにこの話をしたけど相手にされなかったわ。只一人を除いてね」
勇者「信じる人が居たんですか?」
マーゴッド「そう。パp……エジンベアの王に謁見しに来た風格のあるおじいさんなのだけれど」
マーゴッド「王はその人を『田舎者』だと呼んで相手にしていなかったわね」
勇者「ひでえ話だよ」
マーゴッド「でもその“田舎者”はあたしの考えを肯定してくれたの」
マーゴッド「『それは一つの真理だ。辿り着いているのはほんの一握りである』ってね」
勇者(ほんの一握りって……本当に他にも居るのかな)
――――――――――――
――女勇者一行の船の中――
遊び人「くしゅんっ」
武道家「やだ、風邪?大丈夫?」
遊び人「ん、大丈夫よ。ごめんね」
――――――――――――
マーゴッド「だから、あたしは田舎者が面白くてだーいすきなの」
ぎゅぅぅ
マーゴッド「このコみたいなね……♪」
スー勇者「ご主人様ぁ……」
勇者「あの、離したげてくださいな」
マーゴッド「あなたはつまらなくてそんなに好きじゃないわ」
勇者「そうすか……」
212 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/08/11(木) 00:03:58.46 ID:rr3468kg0
――地下の宝物庫――
勇者「……ここに渇きの壷が」
スー勇者「っ……」ゴクリ
マーゴッド「でも、ここ……ただの宝物庫じゃなくってね」
勇者・スー勇者「「え?」」
マーゴッド「簡単に物を持ち出せないように仕掛けがあるのよ。すっっっっごく難しい仕掛け」
マーゴッド「……でも、もしそれを解けたら、渇きの壷を手に入れられる」
勇者「……!」
マーゴッド「さっき言った田舎者のおじいさんも、実は“渇きの壷”を求めていたの」
マーゴッド「その時は田舎者のおじいさんにここを案内できなかったのだけれど……今回は案内できたわ」
勇者(……その仕掛けを解くしかないか)チラッ
スー勇者「……」コクッ
勇者「……入ってもいいですか?」
マーゴッド「どうぞ?」
勇者「…………失礼します」
ギッ
勇者(僕は……正直仕掛けを解いたりってのは苦手だ)
勇者(でも、そんな弱音はいちゃいられない!)
ギィィィ…!
勇者(進んでやる……渇きの壷を、手に入れてみせるんだ!)
ギィッ!!!
バターン!!!!
シーン…………
勇者「……」
スー勇者「……」
スラお「……」
ガラーン…
勇者「……何もなくない?」
マーゴッド「ま」
ビシィッ!!!
マーゴッド「あたしものすごく頭いいからあたしが仕掛けをこないだ解いちゃったんだけどね!!!!!!」ドヤァァァォォォン!!!!
勇者「おうふざけんな時間返せや」
213 :
◆3VOBH3KJAk
[sage saga]:2016/08/11(木) 00:04:33.64 ID:rr3468kg0
今日はおしまいです
214 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/11(木) 00:13:11.95 ID:JLQYFg9Bo
乙です
215 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/11(木) 06:19:54.19 ID:34WFMc3Y0
乙
216 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/11(木) 07:21:39.55 ID:SxOd4+6Yo
おつですー
なんかワクワクしてきた
217 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/11(木) 12:11:20.02 ID:YVzx8Zit0
乙でございます
218 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/11(木) 12:44:39.71 ID:ZKSDuEmao
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