八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「またね」

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12 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:27:22.88 ID:J34r1N8z0



正直、無理しなくてもいいのであれば俺は投げ出す気満々でいた。不審者扱いされる可能性だって否定出来ないからな。ってか実際された。

けど、そう簡単に割り切れなかった。割り切れないんだよぉ……!
俺にスカウトの話をした時、最後に社長はこう言っていたのだ。



社長『そうだ。もしも上手くスカウト出来たなら、番組の現役枠の方に渋谷くんを抜擢しようか。それくらいの見返りは考えないとね』



現役枠への、抜擢。

それはつまり、テレビ出演……!


凛の名が売れて来たと言っても、テレビでの仕事はやはり貴重だ。こんなチャンスをみすみす逃す理由は無い。

だから、だから俺は、何としてもスカウトを成功させないと……!
凛の為にも、スカウトしなきゃ…………って思ってたけどやっぱキツい! SAN値がガリガリ削られる! こんな挙動不審じゃお縄になっても文句言えねぇぞ! ってかなった!!









八幡「……と、まぁそんな紆余曲折を経て、現在に至るというわけだ」


「なるほどー。それは大変でございましたねー」





13 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:28:41.09 ID:J34r1N8z0



とある公園のベンチ。


派出所でお巡りさんに必死こいて説明して、会社に電話してやっと分かって貰えて、なんとか解放されたのがついさっき。

近くにあったこの場所で、俺は見事に項垂れていた。
それも、見ず知らずの人間に吐露する程に。



「プロデューサーというお仕事も、簡単には行かないものでございますねー」

八幡「本当にな……」



手に持っているアイスを一口齧る。
あぁ…甘い……

この真ん中でパキッと割って二本になるアイス、久しぶりに食ったな。このチープな味が懐かしくてなんとも美味い。

このアイスは隣に座る少女から分けて貰ったもので、もう一本はその少女が食べている。


美味しそうに顔を綻ばせている少女。
褐色の肌に奇麗な金髪がよく映える。瞳を見てみれば、深い海を想像させるかのように青く澄んでいる。

日の光に照らされた少女の姿は、幼さを垣間見せながらも、どこか神秘的な美しさを感じさせた。



八幡「…………」

「美味しいでございますねー」

八幡「…………なぁ」

「なんでございますですか?」

八幡「……………………どなたでございますか?」


14 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:30:13.63 ID:J34r1N8z0



凛がいたら「今更!?」と突っ込まれること請け合いな質問。

いや、本当に今更で申し訳ないんだけど、本当に誰? アイスを貰って、身の上話まで聞いて貰って、しかし名前も知らない。分かる事と言えば、異国の方だという事くらいか。見れば誰だって分かる。



「わたくしはライラさんですよー」



俺の失礼とも言える質問に、しかし彼女は怒ること無く、むしろ感情を感じさせないくらいの表情で返事をしてくれた。

ライラ……って確かアラビア系の名前だったか? あまり詳しくはないが、そっち方面の国出身なのかもしれない。なんだか冒険にでも行けそうな名前だ。



八幡「そうか。……アイス、ありがとな」

ライラ「いえいえ。困った時はお互い様、という言葉が日本にはありますです。日本は良い国ですねー」



ぽけーっというか、にぱーっというか、そんなのほほんとした笑顔で言うライラ。
なんつーか、毒気を抜かれる思いだな。こいつには邪な気持ちなんて存在するのかと疑いたくなるほど純粋そうな顔だ。



ライラ「貴方様は、なんというお名前でございますですか?」

八幡「比企谷八幡だ」

ライラ「では、八幡殿でございますね。よろしくお願いしますですー」



そして、また笑顔。
人懐っこいというか何というか、壷とか買わされないか心配になる奴だな。

でも、良い奴だ。間違いなくそう言える。



八幡「……まてよ」


15 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:31:35.18 ID:J34r1N8z0



これはもしかして、絶好のチャンスではなかろうか?

何でかは知らんが、こいつは今俺の事を怪しもうともせず、話を聞いてくれている。ちょっと抜けている感はあるが、見た所美少女と言って差し支えない容姿だ。制服を来ている事から恐らくは華の女子高生だという事が連想できる。外国人という点も、上手くすれば他の新人たちに差を付けるアドバンテージになるかもしれない。

……いける! これは、もしかしなくてもいけるじゃないか!


今こそ、スカウトのチャンス――ッ!



八幡「…………なぁ、ライラ」

ライラ「なんでございます?」

八幡「これ」



俺はスーツの内ポケットから名刺ケースを取り出し、一枚だけ抜き取って、それをライラに差し出す。



ライラ「……おー」

八幡「改めて、シンデレラプロダクションの比企谷八幡だ」



鼓動が高鳴る。

通報される心配が無いと分かっていても、緊張感はどうしたって拭えない。

さぁ、躊躇わず、言うんだ。


今こそ――



八幡「お、お前こそ良ければ、アイドルに…」

ライラ「ライラさんと同じ事務所でございますですねー」

八幡「そう、同じ事務所に…………え?」






え? なんて?




16 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:33:19.93 ID:J34r1N8z0






ライラ「ライラさんもデレプロのアイドルでございますよ。奇遇ですねー」


八幡「……………」






一瞬、思考が固まった。



ええええええぇぇぇぇぇぇぇ……

デレプロの、アイドル……? こんなん流石に予想外だ。奇遇どころの騒ぎではない。



ライラ「八幡殿がデレプロのプロデューサー殿とは、驚きなのでございますよ」



驚きなのはこっちでございますよ。ってかそう言うライラのが全然驚いてるようには見えない。本当に君感情とかあるのけ?



八幡「……じゃあ、何。もう既にアイドル活動してるわけなのか」

ライラ「あー…あまりやってないですねー。とても黒い社長さんにスカウトされたのが、先月くらいでございますからねー」



とても黒い社長という面白い言い回しはともかくとして、そうか、既にスカウト済みだったか……。いや、あの社長貪欲過ぎでしょ。なんでスカウトしようとした子が既にスカウトされてるの? これがアイドル事務所社長の慧眼か……

しかしスカウトされたばかりというのを聞いて少し納得した。見覚えが無かったのも、まだあまり目立った活動をしていなかった為か。



八幡「まぁ、断られるよりは良かった……のか?」



とりあえず、スカウトが失敗したという事は分かった。
またこれで振り出しかぁ……

がくっと、自然と肩をおりる。これ以上ないチャンスだと思ったんだけどなぁ。


だが、そこで隣に座るライラから以外な言葉を聞く。


17 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:34:44.78 ID:J34r1N8z0



ライラ「……でももしかしたら、アイドルじゃなくなるかもしれないですねー」

八幡「は?」



アイドルじゃ、なくなる?

一体どういう意味かとライラの方を見てみれば、その表情は先程よりも少しばかり暗い……ような気がする。



ライラ「ライラさん、お金に困ってるでございますよ。今はアパート暮らしで……それは幸せでございますけど、難しいです」

八幡「……さっき、あまり活動できてないって言ってたな」

ライラ「はい。レッスンは楽しいですけど、アルバイトもあるので大変でございますです」



アイドル業とバイトの両立。

それはまだあまり売れてないアイドルにしてみれば、酷く切実な問題であった。仕事を貰えないんじゃ他にバイトでもしないと生活できない。だが、それだけキツいスケジュールじゃ身が保たない。学校にも通わないといけないし、外国から日本に来てそんな酷な生活じゃ確かに堪える。

こんな飄々としてはいるが、心労は半端じゃないだろう。



八幡「それじゃあ……アイドル、辞めるつもりなのか?」



恐る恐る聞いてみる。先程の言い回しじゃあ、続けるのが困難なように聴こえたからな。

しかし、ライラの返答は思いの外希望に満ちていた。



ライラ「できれば、続けたいでございます。アイドルは、楽しくて、幸せでございますから」



その顔は、先程よりも少しばかり明るい……ように思えた。


18 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:37:03.94 ID:J34r1N8z0



ライラ「今度、初めてテレビ出演するかもしれないのでございますよ」

八幡「っ! そうなのか?」

ライラ「はい。それがダメだったら、辞めるかもしれません」

八幡「…………」

ライラ「だから、お仕事を頑張って、アイドルをやりたいのです」



頑張って、アイドルに。

そんなライラの姿を見ていると、とても懐かしい気持ちを覚える。


まだCDデビューも、テレビ出演も無く、ただただ上を目指していた時期が、俺の担当アイドルにもあった。
彼女は成功する事が出来た。だが、そこに辿り着けるのはほんの一握り。誰もが夢見るそのステージは、あまりにも狭き門。


この異国の少女が目指している頂きはそういう場所で、だが、だからこそ夢に見る。

そんな彼女だからこそ、眩い程に輝かしく、美しい。


……社長も俺も、スカウトしたくなるわけだよ。



八幡「そうか。……頑張れよ」



だから、俺は彼女の行く末を祈ろう。



ライラ「頑張りますです。お家賃とアイスの為にも」

八幡「お家賃とアイス」



このアイス好きで節約家なちょっと変わった異国の少女。

同じ事務所なら、いつか臨時プロデュースをする機会もくるかもしれない。
もしそうなれば、仕方が無い。甘んじて依頼を引き受けるとしよう。


だってきっとその時は、彼女は立派なアイドルになっているはずなのだから。





19 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:38:50.61 ID:J34r1N8z0










ライラと分かれた後、もう少しだけスカウトが出来ないかと奮闘はしたものの、結局成功する事は無かった。

さすがにもう通報はされちゃいかんと気を付けていたので、行動が制限されてたしな。仕方ないね。うん、仕方ない。
仕事を手に入れる事が出来ず凛には申し訳ないが、こうなれば他の仕事を取ってきて挽回するしかないな。凛も無理しなくて良いと言っていたし、分かってくれるだろ。情けないプロデューサーであった。

とりあえずは、社長に謝罪と報告だな。
事務所へ戻り、そのまま社長室へと向かう。こういう時は社長のあのフランクさがとても有り難い。

扉の前に立つと、何やら中から話し声が聴こえてきた。
ちひろさんか? まぁ、もし間が悪いなら後で良いと言われるだろうし、とりあえず顔は出しとくか。

数回ノックをすると、中から入って良いと返事が来る。

失礼しますと言いつつ扉を開くと、そこに居たのは社長と、ある意味じゃ予想外の人物であった。



社長「比企谷くんか。どうかしたかね?」

「…………」



社長の前に立つ、険しい表情をした40代程の男性。
その眼光は鋭く、スーツ姿から一瞬ヤーさんかと見紛うくらいだ。正直めっちゃ怖いです。

一応、彼とは俺も面識はある。彼はこのシンデレラプロダクションの常務。


まぁ、言ってしまえば上司ってやつだ。



八幡「スカウトの件の報告に来たんですが…」

社長「ああ。やっぱり、難しかったかい?」

八幡「……ええ。すいません」


20 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:42:20.75 ID:J34r1N8z0



苦笑する社長に対し、頭を下げる。

申し訳ないが、やはり俺には荷が思い。



社長「大丈夫だよ。他のプロデューサーくんたちにも頼んではいるし、期待できそうなアイドル候補生も何人かはいる。ご苦労だったね」



本当にこの社長は人が良いな。企画で参加した一般Pとはいえ、ここまで良くしてくれると申し訳なさでいっぱいだ。こりゃ社畜にもなる。ならんけど。



社長「そういう訳だから、候補生から決まり次第君に連絡しよう」

常務「……分かりました」



返事をしたのは静観していた常務。あれ、この人も今回の番組に関わってるのか?



社長「ああ、今回の企画は彼がメインで担当してくれていてね。今も丁度その打ち合わせをしていたんだ」



俺が不思議に思っているのを察したのか、そう説明してくれる社長。なるほどな。
……って事は、あれか。一応常務にも謝っといた方が良いよな? 担当であるわけだし、思いっきり関係してるもんな。……うん、謝っとこう。怖い。



八幡「あの、常務。すいません……」

常務「…………」



無視だった。割り易いくらいの無視。スルーと言っても良い。あれ、俺のこと見えてない?

とりあえず、常務はクールで寡黙な方なんだなぁ……と自分に言い聞かせる事にする。じゃなきゃ怖過ぎるよぉ!


そんな俺の葛藤を尚無視するかのように、常務はさっさと別の話へ移る。本当に仕事人って感じの人だな。


21 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:43:38.73 ID:J34r1N8z0



常務「番組へ出演するアイドルですが、現役組の方を新しくリストアップしておきました。こちらが資料になります」

社長「ありがとう」

常務「基本的には社長の告げたメンバー構成ですが、こちらで調整してリストから外したアイドルもいますので確認しておいてください」



なんか、これ以上は俺がいても関係無い話になりそうだな。
邪魔になるのも悪いので、一礼して部屋を後にする事にする。



常務「除外したのは…」



しかし、踵を返した所で、俺は思わず足を止める事になる。

というのも……









常務「ライラ、というドバイ出身のアイドルです」









聞き捨てならない名前を、聞いたから。






社長「ライラくんを外したのかね? 一体どうして?」

常務「彼女は未だ経験が浅い。テレビ出演するには、今回の企画はまだ早いと判断致しました」

社長「ふむ……」


22 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:45:37.66 ID:J34r1N8z0



常務の言い分に理解出来る事もあったのか、考え込む社長。

ちょっと待て。ライラを、今回の企画から降ろすだと?


あいつは、初めてテレビに出演出来ると言っていた。それが、今回俺がスカウトを任されていた番組の事だった……?

そして、もしもそれが上手くいかなければ、あいつはアイドルを辞めるかもしれないと、そう言っていた。


それなのに、出演すら、出来ない……?

そんなのは、そんなのはあまりにも酷じゃないのか。彼女の折角のチャンスを、奪い取っていいのか?




良いわけが、無いだろ。






八幡「……待ってください」






思わず、声を出す。

二人の視線が俺に向けられる。ここで黙って見過ごすわけには、いかなかった。



八幡「ライラを今回仕事から外すって……その、考え直してくれないっすか?」

社長「比企谷くん……?」

常務「…………」



社長は怪訝そうな表情を浮かべるが、常務は変わらず無表情なまま。だが、その目は俺に向けられたままだ。彼はまだ、俺の言葉を待っている。



八幡「あいつとは知り合い……って程でもないんすけど、聞いたんです。今回の企画にかけてるって」

常務「…………」

八幡「生活が苦しいみたいで、もしも企画がダメだったら、アイドルを辞めるかもしれないって。だから、せめて出演だけでも…」

常務「甘えだな」

八幡「っ!」


23 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:47:09.16 ID:J34r1N8z0



ずん、と。その言葉がのしかかる。

元々低い彼の声が、更に重く、俺へと投げかけられた。



常務「そんな個人の私情を仕事に持ち込むわけにはいかない。降板は変わらん」

八幡「なっ……」



俺が思わず絶句すると、そこで社長が見咎めたのか割って入る。



社長「待ちたまえ。もう少し詳しく話を聞いてからでも…」

常務「彼女を現役アイドルとして出すには技量不足と言わざるを得ません。リスクも高い。既に企画会議で取り決めた内容を変更するのは難しいかと思います」

八幡「いや、だからって……!



俺が抗議しようとするも、常務は更に鋭い眼光で俺を射抜く。



常務「所詮は企画で雇われている半人前のプロデューサーが、口を挟むんじゃない」

八幡「――ッ」



それを、今言うか?

自分で言うのは良いが、人に言われと、思わずカチンとくる。



八幡「……関係ねぇだろ」

常務「なに?」

八幡「あんたがふざけた事ぬかすから、それはおかしいって言ってんだ。俺の事は関係ねぇだろ」




ギロリと、思わず俺も睨み返す。

上司とはいえ、そんな横暴を認めるわけにはいかない。
あいつの事をよく知りもしない奴が、そんな勝手な判断をして良い筈がねぇだろ。

しばしの間、無言の膠着状態が続く。


その沈黙を破ったのは社長だった。


24 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:48:25.14 ID:J34r1N8z0



社長「その辺にしておきたまえ。もう少し頭を冷やすんだ」

八幡「……すんません。口が過ぎました」



一呼吸置いて、一応謝罪する。

別に常務の判断を許したわけじゃないが、社長の顔もあるからな。



社長「君もだよ。いくらなんでも、言って良い事と悪い事がある」

常務「……申し訳ありません」



頭を下げる常務。
いや、それ社長に謝ってるよね。俺に対してじゃないよね。

だが、それでも常務の言い分は変わらないようだ。



常務「ですが決定は変わりません。もう一度会議で話すにしても、可能性は限りなく低いという事だけは確かですので、そのつもりで」



言うや否や、さっさとこの場を後にする常務。
俺とすれ違う瞬間も、彼は俺に一瞥もくれる事は無かった。


俺が言うのもなんだが、あれだ。



いけ好かねぇ。





25 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:49:36.91 ID:J34r1N8z0










社長「彼は元々、君と同じプロデューサーだったんだよ。それはもう敏腕のね」



事務所の休憩スペース。

昔を懐かしむように、ソファに座った社長はどこか遠くを見つめていた。



社長「別の事務所ではあったんだが、この会社が出来た時に私が声をかけてね。それから常務として働いてくれている」

八幡「そうだったんすか」

社長「気難しい所もあるが、優秀な社員だよ」



確かにその仕事ぶりは一般Pの俺でも聞き及んでいる。

だが、それにしたってちょっと非情過ぎやしないか。仕事の為とはいえ、アイドルを切り捨てるなんて。



ちひろ「元プロデューサーだからこそ、公平に徹したいというのもあるかもしれませんね。……コーヒー、お持ちしましたよ♪」



どこからともなく現れる事務員ちひろさん。テーブルの上にコーヒーを置いてくれる。
ちなみに俺のとこには砂糖とミルク付き。分かってるじゃないか。



社長「確かに、仕事がほしいのはアイドル皆が思っている事だ。贔屓にしてはいけないという彼の言い分も、間違いじゃない」

八幡「…………」


26 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:50:45.31 ID:J34r1N8z0



甘え、と彼は言っていた。


確かに甘いんだろうな。社長の言うように、仕事がほしいのは皆一緒だ。続けられないからアイドルを辞めるというのは、何も不自然な事ではない。競争率の高いこの業界では尚更の事。

もしも俺がライラという少女と知り合わなければ、きっと気にも留めなかっただろうし、情が移ったんだろうと言われれば、何も否定できない。

だからきっと、常務の言う事は正しい。


だから。


だから俺は、このまま見過ごせば良いんだろうか。



八幡「…………」



ふと、隣に誰かが座る気配を感じる。

座った拍子に少しだけ舞う長い髪から、ふわりと花の香りがした。






凛「それで?」






彼女は、俺の担当アイドル、渋谷凛は、






凛「プロデューサーは、どうしたいの?」






俺の目を真っ直ぐに見て、問いかける。



八幡「……一応、策、みたいなものはある」

凛「あるんだ。……まぁ、どうせいつもみたいな感じなんだろうけど」

八幡「否定できんな」


27 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:52:25.42 ID:J34r1N8z0



俺の答えに苦笑する凛。

だが呆れながらも、彼女は絶対に俺を見限ろうとはしないんだから、物好きな奴だ。
そして、物好きは何もこいつに限った話ではない。






輝子「フヒ……そこは、否定してほしいところ……」

八幡「……お前、さすがにテーブルはキツくないのか」



休憩スペースに置いてある平たいテーブル。の、下から頭を出すのは元ぼっち系アイドル星輝子。
いつもは仕事用デスクの下に潜んでいるが、今回はテーブルか。ほとんど四つん這いだよ君?



輝子「フヒヒ……いつか、挑戦したいと思ってた」

八幡「ちひろさん。自腹切りますんで、ここのテーブル買い替えません? ガラスの透けてるやつとかに」

ちひろ「あら、オシャレで良いですね♪」

輝子「お、鬼……悪魔…………八幡」



忌々しいと言わんばかりに呻く輝子。どうやら日の光にはやはり弱いようだ。
ってかその位は俺には早いって! ポストちひろだって!



輝子「……それで、八幡。策とは……?」

八幡「…………」



やっぱり、お前も訊いてくるんだな。


凛は、俺がどうしたいかと問うてきた。

そして輝子は、話を聞かせてほしいと言ってきた。


こいつら、そして、今まで担当してきた臨時アイドルは、俺なんかの事を見てくれるし、聞いてくれる。

本当に物好きで、お人好しな奴らだよ。自分が嫌になるくらいな。


28 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:53:52.45 ID:J34r1N8z0



八幡「……凛の言うように、どうせいつもみたいな感じのやり方なんだが……お前らはどう思う?」



逆に俺が問いかけてみれば、凛は一度溜め息を吐いて、輝子は小さく笑って、愚問だとばかりに言う。



凛「いいんじゃない? それがプロデューサーのやりたい事なら、別にさ」

輝子「フヒヒ……上に同じ」

八幡「そうかい」



その言葉が、何よりも助かる。

こんな俺のどうしようもないやり方も、救いがあるように思えるから。


だから俺は、正しい事に対して、真っ向から間違えてやれるんだ。



八幡「社長」

社長「何かね?」



今まで静観していた社長は、まるで期待するかのような眼差しで、俺の言葉を待つ。






八幡「俺がスカウトした子を番組に出して貰えるって話、まだ通りますかね?」





29 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:55:26.67 ID:J34r1N8z0










翌日、準備を整えた俺は再び社長室へ向かう。

既に社長には話を通してある。であれば、彼もきっと部屋にいるはずだ。


……あー、なんか、無駄に緊張すんな。正直かなり怖い。
大丈夫だよね? さすがに暴力沙汰とかにはならないよね? 大人しそうな感じだし、手を出すにしてもどっちかってーとチャカとか取り出しそうだ。そっちのがヤバイ。


しかし、もう後には引けない。

歩きながらも、俺は事が上手く運ぶように頭の中でシミュレーションしつつ、真っ直ぐに目的地へと向かう。

この程度の修羅場、今までも乗り越えて来たからな。
だから、きっと大丈夫だ。


予定通りの時間に到着すると、俺は扉をノックし、返事を待った後に入室する。



八幡「失礼します」



入れば、昨日と同じ面子が揃っていた。

椅子に座る社長と、その前に立つ常務。
相変わらず、常務のその表情は険しい。ってか前よりも不機嫌そうに見える。



常務「……呼び出された理由は、昨日の件ですか?」

社長「そうだ。比企谷くん、報告を頼めるかい」

八幡「はい」



社長の言葉に応じ、俺は常務の隣に立って報告を始める。


30 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:56:48.15 ID:J34r1N8z0



八幡「シンデレラプロダクションの所属アイドルであるライラですが、今回の降板に伴い退社する事になりました」

常務「…………」

社長「……そうか」



ライラが、事務所を辞める。

報告を聞いても、常務は特に表情を変える事は無い。その様子に少々嫌な気分になるが、しかしとりあえずは置いておく。

彼は、本当に何も思う所が無いのか、それとも……



常務「…………」

八幡「それと候補生枠での出演の為のスカウトですが、何とか出てくれる子を見つけられましたので、その報告も」



俺の発言のに、ぴくりと、常務の視線がこちらに向けられたのを感じた。

ま、仕事に関係あるし、これには反応するよな。そうでなくては始まらない。



八幡「入ってくれ」



俺は扉の外で待機してるであろう彼女に、声をかけた。






常務「……っ!」






入室してきた彼女を見て、予想通り、常務は驚愕の表情を浮かべてくれる。


そうだ、その反応で当然。



なんせ入ってきたのは、常務もよく知る少女なのだから。





31 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:57:47.28 ID:J34r1N8z0









ライラ「失礼しますです。わたくしスカウトされました、新人アイドルのライラさんでございます」









何てことのないように、出会った時のような飄々とした様子で自己紹介するライラ。

ある意味じゃ、大物の対応だなこれは。



ライラ「好きな食べ物はアイス。趣味は公園で知らない人とおしゃべりでー…」

八幡「ライラ、とりあえず自己紹介はいい」



ってか、それ趣味なの? 公園で知らない人とお喋りって……あれ、俺の事?

しかし今はそんな話をしている場合ではない。能天気なやり取り等どうでもいいとばかりに、常務がドスの効いた声を出す。



常務「……ふざけてるのか? どういうつもりだこれは」

八幡「言ったでしょう。彼女がスカウトしてきたアイドルなんですよ」

常務「馬鹿を言うな。先程お前は退社したと…」

八幡「だから、“辞めた後のアイドルでも何でもないライラを、改めてスカウトした”んですよ」

常務「ッ!?」



今回の企画は現役アイドルとアイドル候補生による合同番組。そしてライラは現役アイドルとしての出演が不可能になった。だから俺は、“アイドル候補生として出演出来るように、一度辞めて改めてスカウトし直した”のである。


32 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:58:49.34 ID:J34r1N8z0



八幡「俺がスカウトした子は番組へ出演させてくれる……そういう約束でしたから。ですよね社長?」

社長「うむ。確かにそう言った」



苦笑しつつ頷く社長。

まぁ、昨日の時点で社長には確認して了承は得てあるけどな。元々ライラが出れない事は良く思っていなかったようだし(そもそも社長がスカウトしてきたし)、何とか引き受けてくれた。



常務「そんな屁理屈で……!」

八幡「実際、問題なんてありますか? 現役組と違って、候補生組には経験なんていらないですし。むしろ無い方が良いまである」



アイドルとしての活動があまり出来ていなかったからこそのこの手段。まぁ、実際は別に辞める手続きも特にしてないし、候補生側として出演する事になったってだけなんだがな。

だが、これでライラが出演するのに弊害は無くなった。



八幡「これでも、まだ反対するつもりですか?」



俺は常務へそう問いかける。

彼は重苦しい表情ではあったが、しかし、やがて熟考するかのように一度目を閉じる。



常務「……番組へ出演する資格があるのであれば、私は異を唱えるつもりはない」

八幡「…………」

常務「話は以上でしょうか?」


33 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 00:59:35.53 ID:J34r1N8z0



常務の質問に社長が首肯すると、常務は「では」と言って踵を返す。
もう用は無いとばかりに、扉へ向かっていった。






ライラ「……あの」






しかし、以外な事にライラが彼を呼び止める。その行動は俺もさすがに予想外だった。

常務はドアノブへ手をかけた所で動きを止め、振り返らないまま彼女の言葉を待った。






ライラ「ライラさん、アイドルを頑張ります。だから……よろしくお願いしますです」






いつもより、少しだけの早口。

言って、ライラはぺこっと頭を下げた。



常務は少しの間何も言わず黙っていたが、やがて小さく「ああ」と答えると、扉を開けて部屋を後にした。





34 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 01:00:50.60 ID:J34r1N8z0










あれから数日。何とか出演権を勝ち取ったライラは、無事に番組へ出演する事が出来た。


対談型の、候補生が現役アイドルに話を聞いたり、一緒に歌って踊ってみたりするありがちなバラエティ番組。当初とは違う候補生側の出演ではあったが、それでも、彼女は嬉しそうにしていた。

お家賃もちゃんと払えたようで、俺としても何よりだ。



八幡「よっこらせっと」



誰もいない休憩スペース。備え付けのテレビを点け、DVDプレーヤーへディスクを入れ、ソファへとどかっと座る。こんだけ堂々と使ってりゃ誰も寄り付かんだろ。何もしなくても寄り付かんけど。



八幡「…………」



これからも、きっとあいつは、ライラは苦労するんだろうな。


今回俺がやった事は、所詮はただの繋ぎでしかない。次の仕事が成功出来なければアイドルを辞める、そんな事情を抱えた彼女を、何とか番組へ出演させて一時的に繋ぎ止めただけ。
番組へ出演した事でこれからチャンスは来やすくなるかもしれないが、それでも現状がさほど変わっていないのは事実。

だからこれからも、ライラは頑張り続けなければならない。


アイドルを、続けるため。



八幡「…………」

凛「あれ。プロデューサー、何見てるの?」



ふと、偶然通りかかったのか、後ろから凛の声が投げかけられる。


35 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 01:02:15.21 ID:J34r1N8z0



八幡「ああ。この間の番組」

凛「ふーん。この間の…………え」

八幡「録画しといたからな。折角だから見返してた」



テレビ画面の向こうには、候補生たちの色んな質問に困惑しながらも頑張って返答する凛の姿。その下手をすれば候補生たちよりも必死な姿は、見ていて何とも和む。可愛い。



八幡「また候補生の奴らも中々エグい質問するよな。ライラとか無自覚なのが何とも…」

凛「ちょ、ちょっとプロデューサー。もうやめない? 一回実際に見てるんだから、また見返さなくてもいいでしょ?」

八幡「いやでも、この後に振られる『同じ事務所のアイドルのモノマネ』が…」

凛「い、いいから! もう見なくていいから!」



顔を真っ赤にしてリモコンを奪い取る凛。

結局、続きは見られずDVDも没収されてしまった。ちぇー、蘭子のモノマネ結構良かったと思ったけどなー。赤面してるとこが面白可愛くて。

こりゃ、俺が今まで出演してる番組全部録画してDVDに焼いてるって知ったら、めちゃくちゃ怒りそうだな。大原部長ばりに家まで乗り込んでくるかもしれん。



とぼとぼと休憩スペースを後にして、仕方なく事務所外の自販機へと向かう。
こういう時はMAXコーヒーでも飲んで癒されよう。……けど今考えたら事務所の中であれ流すって結構鬼畜だな。反省反省。


そんな事を考えながら階段を下り、自販機へと目を向けた所で一人の人物を捉えた。

うげっ、あの人は……






常務「…………」






相変わらず険しい表情の常務と、ばっちりと目が合う。
その手にはブラック缶コーヒー。イメージ通り過ぎるだろ。


36 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 01:03:40.50 ID:J34r1N8z0



八幡「……うっす」



とりあえず何も挨拶しないのもあれなので、軽く会釈する。

だが、常務は相変わらずの無視。やっぱりこの人俺の事見えてないんちゃう? 名前すら呼ばれた事無いし。もしかして覚えてないのか……
しかしそのくせ常務は自販機の前を空けると、すぐ側で缶を開けて飲み始めてしまう。いや、事務所戻れよ。買いづれーだろ。

俺は外に出た手前引き返すわけにもいかず、仕方なく自販機まで歩いてMAXコーヒーを買う。


そしてさっさと戻ろうと踵を返した所で、まさかの声がそこでかかった。



常務「……先日の合同番組の報告書、まだ出ていなかったようだが?」

八幡「………………」



あーやっべーー完全に忘れてたぁーー!!?

足が止まり、ダラダラと嫌な汗が流れる。しまった、マジでしまった。普通にガチで忘れてた。いやでも、期限とか特に無いですし、催促もされないし、はい。すぐに出すのが当たり前ですよねすんません!!



八幡「す、すぐに出します」

常務「そうしてくれ」



常務はそう言うと、コーヒーをまた一口飲んで黙ってしまう。俺は何となく動けず、その場に立ちすくむ。

あー…これ完全に立ち去るタイミング失った奴だ。あのまま勢いで走り去れば良かった。もう俺もMAXコーヒー飲んじまうかな。

そんな事を考えていると、また常務が話し始める。



常務「……ひとつ、訊いてもいいか」

八幡「は、はい?」

常務「どうしてお前は、あんなに彼女の肩を持ったんだ」


37 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 01:05:04.83 ID:J34r1N8z0



話されたのは、意外な言葉。
常務の言う彼女とは、もしかしなくてもライラの事だろう。

どうして、彼女の肩を持ったのか。

そんな事を訊かれるとは思っていなかったので、思わず面食らってしまった。



八幡「どうして、と言われても……」

常務「知り合いだと言っていたな。やはり、情が移ったのか」



別に知り合いと呼べる程会った事があるわけじゃない。情が移った? そう言われれば、それも間違いではないな。彼女がアイドルを辞めてしまう事に思う所があった。それは事実だ。

だが、たぶんそれだけではない。


敢えて言うのであれば……



八幡「……笑顔、ですかね」

常務「笑顔?」



思わず怪訝な表情になる常務。
さすがに良く分からなかったか。でも、これが一番しっくりくる。



八幡「あいつ、良い顔で笑うんすよ」



あの能天気そうな、邪気の無さそうな、こっちの気が抜けるような、そんな幸せそうな笑顔。

彼女の笑顔を見ているだけで、嫌な事も、抱えてる物も、どうでもよくなってしまう。そんな不思議な魅力がある。



八幡「あんな良い笑顔が出来る女の子がアイドルを辞めるなんて、それは惜しいなって、そう思ったんす」

常務「……それだけか?」

八幡「それだけです。けど、そんなもんじゃないんすか。アイドルをスカウトする理由なんて」


38 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 01:06:22.47 ID:J34r1N8z0



社長のように、ティンときた! ってわけじゃない。

けど、確かにあいつと初めて会った時。話をした時。何か感じるものが、光るものが、あったような気がしたのだ。






『どうかしたのでございますか?』



『これ、ライラさんのアイスを半分あげますです。パキッと割れるですよー』



『本当は節約しないといけないのでございますが……頑張った貴女様には、ご褒美でございますですよ』






差し出してくれたその手は、俺にはとても眩しく見えた。



八幡「本当、惜しいですよ。あいつの事を知らない奴がいるなんて」

常務「…………」



常務は目を伏せ、しばしの間口を鎖す。

やがて缶コーヒーを飲み終えた頃、彼は小さい声で呟いた。



常務「……お前を見ていると、酷く懐かしい気持ちになる」

八幡「はい?」

常務「何故だろうな。自分でも不思議だよ」



珍しく、本当に珍しく、苦笑しながらそう言う常務。

良くは分からんが、俺を見て懐かしいというのであれば、それはきっとあれだろう。


39 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 01:08:23.92 ID:J34r1N8z0



八幡「そりゃ、俺はプロデューサーですから。かつて、あなたがそうだったように」

常務「っ!」

八幡「…………」 ドヤァ

常務「…………」

八幡「…………」

常務「…………映画の見過ぎだ」



あ、バレました?

いや、この元ネタの台詞めっちゃ好きなんよね。個人的にはフォースと共にあれ、よりも好きだ。マジ名作。


そして常務はまた苦笑すると、重く、それでもどこか優しい声音で俺に言う。



常務「なら、プロデューサーとして責任を果たせよ。中にいる私に出来ない事を、お前がやれ」



その言葉は、初めてちゃんと俺へと向けられたように感じた。

……いやでも、常務に出来ない事を俺がやるとか、ちょっと責任重過ぎません? 俺ちょっと名台詞パロっただけよ?

だが、ここまで言われては断る事も出来ない。
自信は無い。だがそれでも、意志はある。



八幡「……うっす」



情けない話だが、これが今の俺に出来る最大限の返事だ。

まぁ、それでも常務は満足してくれたようだったがな。
これが、上司ってやつか。



と、そこで階段をパタパタと下りてくる音がした。

事務所の誰かが来たのかと思って視線と向けると、そこには以外な人物。


40 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 01:10:15.81 ID:J34r1N8z0



ライラ「あ、こんな所にいたのでございますねー」



相変わらずのほほんとした金髪碧眼褐色の少女。件のライラである。



ライラ「おや、八幡殿も。プロデューサー殿とお話中でございましたか?」

八幡「まぁそんな所……って………………え?」



話しかけて、一瞬、思考が止まる。

ん? え、何。今、こいつは何て言った? プロデューサー? 誰がプロデューサーだって?



常務「そういえば言ってなかったな。今度から、私がライラの担当プロデューサーをする事になった」

ライラ「でございます」

八幡「…………………………」



なん…だと……

いや、マジでか。なんで、何で!?



常務「アイドルの人数に対し、プロデューサーの数が足りていないのはお前も知っているな」

八幡「え、ええ」

常務「その対策として、私を始めとする他の社員もプロデューサーとして活動する事になった。一時的ではあるがな」



そ、そういう事か……


いやでも、それはまだ分かるとして、何故よりによって常務がライラの担当? 選考理由は分からないが、何かあるんじゃないかと勘繰ってしまう。

そして俺のそんな心中が伝わったのか、常務は少しばかり所在無さそうに目を逸らす。



常務「……私が自ら志願した。特に他意は無い」

八幡「…………」

常務「……っ……先に戻る。ライラ、この後の時間には遅れるなよ」

ライラ「はいです。頑張りますですよー」


41 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 01:11:29.86 ID:J34r1N8z0



言うや否や、足早に去る常務。

照れてる。あれ、完全に照れてるな。
常務のそのらしくもない様子に、思わず破顔してしまった。



常務「比企谷」

八幡「っ」

常務「……報告書、忘れるなよ」



そして今度こそ、常務はその場を後にした。最後に余計な一言を残して。

……なんだ、ちゃんと覚えてんじゃねーか。名前。



ライラ「プロデューサー殿と八幡殿は、仲が良いのでございますねー」

八幡「そう見えるなら眼科へ行く事をオススメするな」



そりゃ、前に比べればマシな関係にはなったかもしれないが、それでも良くはないだろ。ってか別になりたくもない。



ライラ「ライラさんは、お二人には感謝してますですよ」



嬉しそうに、幸せそうに、笑うライラ。



ライラ「八幡殿のおかげで、ライラさんはアイドルを続けられるですよ。そして、プロデューサー殿と一緒に、これからどんどん頑張りますです」

八幡「…………」


42 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 01:13:15.52 ID:J34r1N8z0



番組へ出演する為に策を講じた時、ライラには常務の考えを話してあった。けれどそれでも、彼女はその常務と手を取り合い、歩んでいくと言っている。

気がかりだった。俺のやった事は、最適であっても、最善ではなかったんじゃないかと。

けれど、それでも彼女は俺に感謝してくれる。
俺が取った手段に救われたと、そう言ってくれる。


ならきっと、良かったんだよな。



八幡「……ホント、いつもながらまともな手が使えないな」

ライラ「何の話でございますか?」

八幡「人には、得手不得手があるって話だよ」



俺の言葉に、しかしライラは首を傾げるばかり。これだけ日本語が達者でも、さすがに外国人には伝わらないか。



八幡「人には得意な事と、得意じゃない事があるだろ? それを手段、つまり手で現してんだ。得手、不得手ってな」

ライラ「おぉ……なるほどでございますねー」



お、今ので理解したのか。我ながらテキトーな説明だったんだが……もしかして結構頭良い?



八幡「人と話したり、誰かの相談に乗ったり、スカウトしたり……そういうのは、俺は不得手なんだよ」



今回のライラのスカウトだって身内に対してやったも同然だからな。やっぱり俺には荷が重い。まぁ、それでもちゃっかり報酬である凛の番組出演権は獲得してるのだが。



ライラ「んー…でも、ライラさんは嬉しかったですよ?」

八幡「あ?」

ライラ「……八幡殿の差し出してくれた手は、フエテでも、とても暖かかったでございますよ」



にこりと、またあの幸せそうな柔らかい笑顔。

その言葉は、俺の意表を突くには、充分過ぎた。


43 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 01:14:59.23 ID:J34r1N8z0



八幡「…………」

ライラ「八幡殿?」

八幡「……なんでもない」



あぁ、本当に、こいつは天然だ。
天然でこんな事が出来るなら、きっと凄いアイドルになれるだろうよ。

オマケにあの堅物常務もついてる。こりゃ、強力なライバルになるかもな。



八幡「……アイスでも食いに行くか。奢ってやるよ」

ライラ「本当でございますか? おー…楽しみでございますです」



結局、得手も不得手も、俺から見た一面でしかない。
それが他の角度から見る事で、全く違う側面を見せる事もある。

たぶんそれは自分じゃ気付けなくて、捻くれた奴にも見えなくて……



八幡「この辺でってなると……サーティワンでいいか」

ライラ「サーティワン……ライラさん、31個も食べれないでございますよ」

八幡「いや種類ね。種類。個数じゃないから」



こんなお人好しの素敵な女の子だから、見ていてくれて、気付かせてくれるんだろう。

……やっぱ、こいつがアイドルを辞めるなんて勿体ないな。



鉄面皮のプロデューサーと、どこか抜けた異国の少女。

どうにも面白いこの二人の行く末を、俺も同士として祈るとしよう。



願わくば、彼女のその手が目指す場所へと届きますように。









おわり


44 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 01:19:12.27 ID:J34r1N8z0
というわけで、短めではありますがライラさん編でした。前々スレの>>244の方、遅くなって申し訳ないです。結局書きました。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 01:19:14.79 ID:B1RTbdd1o
乙乙
常務素敵
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 01:20:49.78 ID:JqSCw+9Xo
乙です
47 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/07(火) 01:24:13.90 ID:J34r1N8z0
新しくスレも立ててしまったので、もう楓さん編の続きも書き切ろうと思います。順番めちゃくちゃで本当申し訳ないんですが、ここまできたら全部ね。
なんとか3周年までには完結させるつもりなので、どうかよろしくお願いします!
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 01:29:40.53 ID:01v5q7IQo
乙乙
いつまでも待つわ
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 01:30:08.98 ID:B1RTbdd1o
旅館の話待ってます
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 01:53:03.97 ID:jM9dbNpvo
正直すげー気持ち悪いこれ
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 02:12:35.30 ID:THs6pmrco
八幡に自己投影させた気持ちの悪いSSだな
作者の欲望が透けて見えて凄まじく醜い
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 02:39:34.07 ID:jqPzGgQR0
>>44
書いてくださってありがとうございます
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 02:56:05.31 ID:XQSk0DadO
まーた俺ガイル女キャラに飽きたからって他作の女に手を出してるのか
京豚や八幡厨って自己投影して女キャラレイプしたいだけなキメェ
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 03:01:53.80 ID:GStEnqND0
気持ち悪いかどうかはどうでもいいので、
取り敢えず続きが見れて良かった!

ライラさんの話は闇に飲まれたもんだと思ってたので嬉しいな
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 11:14:02.60 ID:hSa4clUzo
乙なのでございますよ。
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 12:26:33.55 ID:6jHvxP7VO
ごめんこれ俺ガイルクロスさせる必要ある?
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [Sage ]:2016/06/07(火) 15:48:13.93 ID:nG2vJwkW0
乙 楓編の続きが楽しみ
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 16:42:09.32 ID:2ObQpyJxO
乙乙
あと、楓さんの話で終わりかな?
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 17:22:24.12 ID:SM0E8Tj+0
まーた批判厨が沸いてるのか
スレタイで大体内容は分かるだろうにわざわざ書き込んでて恥ずかしくないのかね
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/07(火) 17:56:39.04 ID:6fwwDGYmO
批判wwwwwwwwww厨wwwwwwwwwwww
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 18:59:20.78 ID:blG+dYuPo
気持ち悪いことこの上ないけど、文句書き込む前にスレ閉じてみたらどうだろうか
気持ち悪いけど
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 19:50:00.13 ID:wDHiN35X0
わざわざ楽しんでる人がいる所にやってきて文句垂れるとか性格悪いやつ多いんだな
ちょっと思考回路が理解できないわ
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 20:00:45.96 ID:blG+dYuPo
な、気持ち悪くてもそれを楽しめる気持ち悪いメンタルの読者もいるのにな
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 21:08:56.43 ID:ZQIlCnwOO
前から楽しませてもらってます。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 21:29:54.26 ID:aMUesq0go
性格が悪いというよりもとりあえずはまちSSだから批判しとけばいいやって考えのフリをした荒らしだわな
とりあえず俺含めてNGしとけば平和なスレになるよ。
仮に批判を許さない信者乙とか言われても別にIDを加速してるわけでもないんだから好き好きだろ、嫌なら見なけりゃいいじゃんって話だし。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 21:55:42.19 ID:dNSixKnAO
>>65
ごめんちょっと日本語で話してくんない?
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 22:26:58.47 ID:FK2EE+dk0
京豚とか書いてるあたりでSS読みに来たんじゃなくて
荒らしに来ただけだって気づけよ
簡単に釣られやがって
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 22:46:07.90 ID:blG+dYuPo
このSSの気持ち悪さとはあまり関係ないけどアイマス叩くのってガイル信者の方じゃないの?
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/07(火) 23:14:00.95 ID:SIyRyfFY0
前スレが運営に間違えて消されなければ荒らしはわかなかったのかな…
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/08(水) 00:37:19.17 ID:LN0gWiSR0
そりゃそうだ
新スレはとりあえず荒らすのが荒らしだし
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/08(水) 13:20:07.05 ID:muBuGjzaO
とうふさんすこ?
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/08(水) 17:24:04.21 ID:8Qon8rHmo
スレタイが凛ってところがまた最高に童貞臭くて草生える
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/10(金) 03:51:06.17 ID:+h2TSh6u0
ようやく見つけた…。読んでいていいなと思うスレだったので、これからも頑張って続けてください!
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/10(金) 20:31:35.84 ID:vVvG9GL+o
八幡じゃなくて「俺」にしてればそんな痛々しくもないかなって
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 04:21:39.81 ID:gT7rfGNio
根も葉もないスキャンダルが起きた時に八幡一人に貧乏くじを引かせて終わったのには笑った
学校の中でガキどもが悪口を言うのと、実社会で実害のある醜聞を振りまくのでは訳が違うと思うんですがそれは
原作の俺ガイルが限りなく現実に近い世界観なのに、二次創作になると現実感の薄い超展開ありきで話が進んでいくからマジで困惑するわ
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 08:03:56.73 ID:OYFxetVC0
>>75
>原作の俺ガイルが限りなく現実に近い世界観なのに、
これ笑うところ?
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 09:12:19.33 ID:a1e76vyA0
新スレになったらネガキャンばっかだな
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 10:39:34.05 ID:ZRIKf8nFo
>>76
せやで
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 11:18:07.07 ID:ykirNyOeO
お前らこんなところに時間割いてないでもっと有意義なことに使えよ
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 15:13:22.03 ID:gT7rfGNio
>>76
えっ、俺ガイルの世界って魔法も超能力のような異能もない、宇宙人とか異世界人も関係ない千葉のお話じゃなかったの?
しいて現実との違いを言うならば、登場人物たちの底意地がありえないぐらい悪いという一点を除けば、ごく普通の日本の地方都市が舞台でしょ?
もしそうじゃないと言うのなら、どこが笑いどころなのかkwwsk
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 15:24:01.26 ID:Xw0hlOL7O
>>80
めっちゃ早口で言ってそう
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 16:23:03.72 ID:r1C1FI5hO
>>80
このSSも魔法も超能力のような異能もない、宇宙人とか異世界人も関係ない千葉と東京のお話なんですがそれは
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 17:43:31.94 ID:GnUt1Z4so
はまちの舞台設定が「現実に近い世界観」と評されたことにすら噛みつくのは流石にお門違いだろ。
むしろ、>>76の中では一体どんなぶっ飛んだ世界設定になっているんだろ。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 17:47:05.68 ID:6v8eCdG/o
>>83
えっ
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 19:14:53.62 ID:rJLcTWqpo
>>82
現実とそう変わらない世界のはずなのに、作者の都合で登場人物の言動や世界そのものがおかしな方向に歪められているからそこを突っ込まれているんじゃないか。
登場人物に現実ではありえない行動を取らせるなら最低限言い訳を用意すべきだったのに、そういうフォローが一切ない点は自分も何だかもにょる。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 20:29:13.17 ID:qiOxR05CO
雑談スレで純文学に挑戦とか言ってる奴と同じ匂いがする
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 20:34:34.63 ID:jwCHgnqko
SSなんだから気楽に読もうや・・・そもそもこんなとこで批評家気取ってる時点でどうなの
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 21:12:06.76 ID:a1e76vyA0
虚偽の情報を流した内通者は懲戒処分されたのですが
八幡もプロデューサーに復帰するみたいなんですが
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 12:08:00.66 ID:eFsTvOK4o
昨日のツイート
>>もう寝よ。明日は更新するぞ。
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 20:05:22.31 ID:SZcE+OADo
気持ち悪いSSのスレには気持ち悪い読者ばかりが集まってるってのがよくわかるな、ここ見てると
91 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/12(日) 20:23:23.84 ID:ViqRwwEc0
所詮は二次創作のSSだし、多少の気持ち悪さと展開に無理あるくらいは大目に見てくださいな。ガハハ!
あ、でも好みや趣味は人それぞれなので、SSや1へはともかく読んでくださる方への批判はやめてくださいね。

今夜更新します! いつも通り日付は変わると思うけど!
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 21:14:45.80 ID:wBcd9r5co
よっしゃー
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 21:21:02.26 ID:jI3zkZKAo
やったで
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 21:31:59.51 ID:9+K33zPLo
自演にしたってもうちょい上手くやれよ
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 21:56:37.72 ID:/ixP60V3O
わーい
96 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 00:44:21.78 ID:EZXQYtyb0
投下します!
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/13(月) 00:44:50.01 ID:cIcKFKrko
気持ち悪い書き込みだからふつーに作者だと思ってた
98 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 00:48:01.16 ID:EZXQYtyb0










女将さんへと連れられ、懐中電灯と防寒着を取りにいく事になった一同。正確には俺と楓さんに凛という面子だが、正直やっぱり多い気もする。

というか、俺としては一人の方が何かと都合が良かったんだけどな。荷物を取りに行くだけとはいえ、あんましアイドルに危険を負ってほしくもない。それに……


と、そこで背後から突然肩をちょんちょんされた。少し驚きはしたが、別に幽霊とかではない……はず。恐らく。
今の俺たちの配置はライトを持った女将さんが先行し、その後を俺、更にその後ろに楓さんと凛が続くといった形。なので、自ずとアイドル二人のどちらかになるだろう。
振り返ってみれば、案の定顔を寄せてくる楓さんの姿があった。……あの、暗いとはいえそんなに近づかれると色々と困るんですが……なにこの良い匂い。

しかしそんな俺の思いを知ってか知らずか、楓さんは妙に楽しげな様子で話しかけてくる。



楓「ねぇ、比企谷くん」

八幡「なんすか」



何故か小声の楓さんに対し、俺も何となく同じ声量で返す。



楓「……こうしてると、何だか肝試しているみたいじゃない?」



うふふ、っと小さく笑いを零す楓さん。

あーまぁ確かにな。ライトは女将さんが持ってる一つだけだし、こうして縦に並んで進む様はそう見えなくもない。何より、この真っ暗な旅館内を少人数で歩くってのがな。正直さっきから怖くて仕方ないです。


99 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 00:49:11.70 ID:EZXQYtyb0



八幡「確かにちょっとそんな気分にもなりますね。一人だったらキツかったかもしれません」

凛「へー。あのプロデューサーが一人は嫌だなんて、そんな台詞を言うなんてね」

八幡「はん、別に怖くなんてないぞ? ないけど、たぶん一人だったら常にわーわー声を上げて平常心を保とうとするってだけだ」

凛「それ怖がってるよね」



凛が突っ込み楓さんが笑うと、つられたように前方からも笑い声が漏れる。



「……暗いので、足下に気をつけてくださいね」



女将さんが取り繕うようにそう言ったが、何となく声音からその表情を察する。……なんか恥ずかしい所を見られたな。



そのまま廊下を歩いていくこと数分。特に急いではいなかったが、それ程かからずに目的の倉庫へと辿り着くことが出来た。女将さんが鍵を開け扉を開いてみれば、その中には様々な備品がしまってある。

しかし思ったよりも大きい部屋だ。毛布やシーツがある所を見るに、恐らくはリネン室も兼ねているのだろう。



「今探しますので、少々お待ちください」



そう言って、倉庫の奥の方へと進んでいく女将さん。
勝手に漁るわけにもいかないし、ここは大人しく待機だな。



八幡「……凛。あまり中に入り過ぎるなよ」

凛「? なんで?」

八幡「いや。こういう時に全員倉庫の中に入ると、大体扉が勝手に閉まるのがお約束だからな」

凛「さすがに無いと思うけど……」


100 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 00:50:55.92 ID:EZXQYtyb0



と言いつつ、しっかり中へは入らない凛。まぁこう暗いし、さしもの凛も多少の恐怖感は感じているのだろう。それに比べて……



楓「早苗さんたち、もう先にお酒開けていたりしないかしら……」



不安そうな表情で言う25歳児楓さん。

能天気なもんだな……いや、ある意味じゃ恐怖を感じているとも言えるけど。正直こっちからしてみれば割りとどうでもいい。



「お待たせしました。コチラが懐中電灯と、防寒着になります」



女将さんが持ってきたのは懐中電灯が詰められた段ボールが一箱に、沢山の上着……これは、なんて言えば良いんだ。ダウンジャケット? 似たようなのを前にジャンパーって言ったら美嘉に引かれた事があるからな。気を付けねば。



八幡「んじゃ俺が段ボール持つから、上着は頼みます」

楓「良いんですか?」

八幡「まぁ、こういう時の為の男手ですし」



というかむしろ、ここで重い物持たなかったら情けないにも程がある。何しに来たか分からん。

そんな思いを汲み取ってくれたのか、楓さんと凛は上着を手分けして持ち、申し訳なさそうにしていた女将さんもそれに習った。

しかし、やっぱ人数分ともなるとさすがに多いな。……三人付いてきたのは正解だったかもしれん。



「それでは、鍵を閉めますので……」

八幡「ええ」



全員が倉庫から出て、女将さんが扉の鍵を閉める。

と、その時だった。









凛「あ」


楓「電気、つきましたね」





101 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 00:52:49.29 ID:EZXQYtyb0



声をあげる凛と、キョロキョロと辺りを見回して言う楓さん。

先程まで暗く何も見えなかった廊下が、パッと昼光色の光で明るくなったのである。どうやら無事に予備電源に切り替わったらしい。

ホッ、と。女将さんが安堵したのが分かった。やっぱ旅館側の人間としては気が気じゃなかっただろうな。



八幡「良かったですね」

「ええ。ご心配をおかけしました」

楓「これで飲み会に戻れますね♪」



そっち?



八幡「そんじゃ戻るか」

凛「そうだね。……でも、これはどうするの?」



手に抱える防寒着を見て言う凛。



八幡「まぁこの後も何があるか分からんから、念のため持ってった方が良いかもな」



と、言ってから女将さんに視線を向ける。
よく考えれば、俺が決めていい事ではない。ホテルの備品だし。



「そうですね。お手数ではありますが、格部屋へお持ち帰りして頂く方が宜しいかと思います」

八幡「だ、そうだ」

楓「それじゃ、すぐに戻りましょうか」



凛も頷き、一同は荷物を抱えたまま夕食会場の和室へと戻る事にする。
今頃はあっちも安心している事だろう。

戻る途中、ふと楓さんが思いついたように話し始める。


102 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 00:55:37.84 ID:EZXQYtyb0



楓「けれど、案外あっさり解決してしまったわね」



けれど、という言い回しが本当に雪ノ下そっくりだったのだが、それはひとまず置いておく。



八幡「と、言うと?」

楓「ほら。こういう時って電気が回復するまでの間に、何か事件が起きたりするじゃない?」



悪戯っぽい笑顔で言う楓さん。
何か事件とは、また物騒な事を言い始める。まぁ言いたい事は分かるけど。



楓「暗がりに生じて、か弱い少女を……ぐわぁっと!」

凛「ひゃっ……! ちょっ、楓さん!?」



凛のらしくも無い悲鳴に、思わずバッと振り返る。え、今なに。何されたの!?



凛「ど、どこ触ってるんですか」

楓「ごめんなさい。後ろ姿が無防備だったから、つい」



顔を赤くしてジト目で抗議する凛。対する楓さんはにこやかである。完全に親父キャラやないですか。……で? 一体どこを? 凛のどこをどう触ったんですかねぇ!? プロデューサー気になります!

どうやら明るくなった事で気が緩んでいるらしい。こうやって遊ぶ余裕も出て来た(一人に関しては元々な気もするが)。


しかし楓さんが言った、こういう時は何かしらの事件が起きるものだという台詞。
冗談めかして言ったであろうが、実は案外的を射ていたりする。



というのも……


103 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 00:57:10.19 ID:EZXQYtyb0



凛「あれ?」



元の和室へと戻り、襖を開けた凛が声をあげる。



文香「……お帰りなさい」

凛「ただいま。……文香だけ?」



凛の後を追って中を除いてみれば、確かにそこには鷺沢さんしかいない。



凛「他のみんなは?」

文香「それが、電気がついた途端、部屋から飛び出していきまして……」



部屋から飛び出してった? 鷺沢さん以外?
なんでまた……と思っていると、そこに上機嫌に鼻歌を歌いながら一人戻ってくる。



早苗「いや〜危なかったわ。あ、比企谷くんたちお帰りなさい。電気戻って良かったわね!」

八幡「早苗さん。どこ行ってたんすか?」

早苗「もう、そんなの女性に訊く事じゃないわよ? トイレよトイレ。それよりも武蔵を……」



と、どうでもいいとばかりにそそくさとお酒の元へと行ってしまう。あの、一応さっきまで非情事態だったんですが……

まぁ、平気そうなら別に良いか。他のメンバーも同じ理由かもしれないしな。それならば確かに早苗さんが言うように野暮な詮索だ。



八幡「懐中電灯と防寒着は各々で部屋に持ち帰るとして、とりあえずは部屋に置いておきますか」

「ありがとうございます。……こちらの和室のご利用時間は当初の予定通りに?」

八幡「いえ。さすがに申し訳ないんで、飯だけ食べてすぐに各自部屋へ戻ることにします」


104 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 00:59:27.15 ID:EZXQYtyb0



なんか点検とか、問題が無いかチェックとかやりそうだしな。迷惑にならないよう早く寝てしまった方が良いだろう。

女将さんにそう言った所で、チラと楓さんを伺ってみる。
何か異を唱えるかとも思ったが、特段そんな様子は見えない。



楓「事態が事態ですし、仕方ありませんね……」



お、おお……ちょっと感動した。

いや、そりゃ楓さんだって大人だし、そうだよな。こんな時くらいは自重するよな。



楓「改めてお部屋で飲みましょう」

八幡「そう来るか」



期待を裏切らない人だった。



「それでは私は戻りますが、何かあればお声がけ下さい」

八幡「ええ。ありがとうございました」



一度深く礼をして、女将さんはその場を後にする。

しかしこんな不足の事態になってもお客さん第一に行動しなきゃならんとか、本当に大変そうな仕事だ。それこそミステリーなんか起きよう日には堪ったもんじゃないだろうな。……これまであったりしたんだろうか。



八幡「そんじゃ、さっさと飯食って…」

早苗「ぎいぃえぇぇーーーーーーーーーーーっ!!?」

八幡「……………」


105 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 01:01:21.94 ID:EZXQYtyb0



早苗さんの、悲鳴。

だが何故だろう。とてつもなくギャグ臭がハンパないのは。全然危機感が襲わない。



八幡「今度はどうしたんすか早苗さん。そんなアイドルらしからぬ声出して。凛との歳の差が干支一回り以上って事実に恐怖でもしたんすか?」

早苗「え? 嘘だぁ……ひい、ふう、……で、だから……うん。あ、マジだ。…………って違うわよ! 殴るわよ!?」



しっかり殴られた。グーで。



早苗「そんな事より、これよこれ! 見てよ!」



ずい、と早苗さんが差し出してきたのは、俺が持ち寄った例の桐箱。開かれたその箱の中には、しかしお酒の瓶は入っていない。

そう、空であった。









早苗「無いのよ! 剣聖武蔵がっ!!」









部屋の中へと木霊する、早苗さんの叫び。






八幡「あ。そうすか」

早苗「反応薄っ!? そんだけ!?」

八幡「いやそう言われても……」



正直どうでもいい……という反応の俺と凛(鷺沢さんはよく分からん)。しかし、過敏に反応する人物が一人。言わなくても分かるな。



楓「……早苗さん。それは本当ですか?」


106 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 01:02:56.73 ID:EZXQYtyb0



静かに、だがしっかりと、焦りの色を浮かべている。
下手をすれば、彼女がこんなに感情を露にしているのを見るのは初めてかもしれない。それで良いのか現役アイドル。



早苗「ホントよホント! ほら!」

楓「確かに空ですね……この中に入っていたんですか?」

早苗「ええ。確かに中……に…………?」



記憶を辿るように思い出していた早苗さんは、そこではたと気づく。そして、そのまま視線はゆっくりと俺へ。あ、これまずいやつだ。



早苗「……比企谷くん! 確か、最後に持ってたのあなただったわよね!?」

八幡「最後に箱にしまったのは俺ですけど…」

早苗「その時本当はどこか別の所に置いたんじゃないの!? どうなの!?」

八幡「あがががががががが」



強引に掴まれ、がっくんがっくんと肩を揺すられる。いやちょっと落ちついて痛い痛い痛い!



八幡「ちゃ、ちゃんと箱に入れましたよ。見てなかったんすか?」

早苗「あんな暗い中で見えるわけないでしょ!」

楓「まぁあぁ。とりあえず、部屋の中を探してみましょうか」



楓さんが早苗さんを宥め、仕方なく部屋の中でのお酒捜索が始まる。と言ってもただの広い和室だからな。探せる所など殆ど無い。5分とかからず終えてしまった。



早苗「やっぱり無いわねー」

凛「仲居さんが持ってったとか?」

文香「待っている間、他の方が入ってくる事は無かったので、それはないかと……」



鷺沢さんの証言通りならば、俺たちが部屋を出てからは誰もここへ立ち寄ってはいない。つまり誰かが持ち出す事は不可能という事だ。……いや、


107 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 01:04:46.49 ID:EZXQYtyb0



八幡「……明かりついて出ていった人たちなら、一応持ち出す事は出来るな」

凛「!?」

早苗「っちょ、あなた、みんなを疑う気!?」

八幡「別にそこまでは言ってないですよ。あくまで可能性の話です」



と、そこで襖が再び開けられる。
皆が視線を向けてみれば、そこにはいなかったメンバー全員が戻って来ていた。



レナ「ど、どうしたの。みんなしてそんなに見て」

幸子「はぁー……一時はどうなる事かと思いましたよ……」

莉嘉「あれ? みんなまだご飯食べてなかったの?」



見た感じ、特に怪しい所は無い。

俺が早苗さんを見ると、彼女はとても真剣な表情で、本当に仕事の時にしてくれと言いたくなる程に真剣な表情で、呟いた。






早苗「これは、事情聴取の必要があるわね……!」






そこまでの事か。


その後戻ってきたメンバーに事のあらましを説明。お酒の行方を知らないか訊いてはみたが、残念ながら誰も知らないようだった。



レナ「なるほど……これは確かに事件ね」

早苗「そうでしょう!? 誰か、無意識に持ってったりしてない?」



一体どれだけお酒が好きなら無意識にそんな行動に出るのか。むしろあなたの方があり得そうじゃありません?


108 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 01:10:32.50 ID:EZXQYtyb0



八幡「ってか、早苗さんも部屋からすぐに出てったんですよね。それこそ酒に目が眩んで持ち出したんじゃ…」

早苗「なんですってぇ!」



再び、がっくんがっくん揺らされる。今度は胸ぐらだ。段々余裕無くなってきてるぞこの人……!



早苗「さっきも言ったけど、あたしはトイレに行ってただけよ! そりゃ、アリバイは無いけど……とにかく元婦警のあたしがそんな事しないっての!」



力説する早苗さん。
正直、こんなしょうもない事でアリバイうんぬんとか言わんでほしい。なんか嫌だ。



レナ「私は部屋に携帯電話を取りに行ったけど、それも特に証明は出来ないわね」

莉嘉「アタシも、部屋に戻って電話してたよ? お姉ちゃんに報告しておこうと思って」

幸子「ぼ、ボクは、えぇっとー……そう、トイレ! トイレに行ってました!」



約一名焦り過ぎな気もするが、一応は全員が知らないと言っている。しかし、証明は出来ない。



八幡「…………」

早苗「あれ? でもあたし幸子ちゃんとトイレで会ってないわよ?」

幸子「うぇっ!? いや、あの、えっと……そう、ボクは一人じゃないと集中出来ないんですよ! だから部屋まで戻ったんです! ええ!」



そんな情報は別にいらん。っていうか君アイドルだよ? もうちょっと言い方ない?



凛「そもそも、明かりがついた後に持ってったらさすがにバレるんじゃない?」

八幡「どうなんですか?」

文香「……正直、皆あっという間に出て行ったので、何とも」

早苗「あー……確かに、そこまで気に留めてなかったわね」



じゃあ、どさくさに紛れて持ち出した可能性は否定できないわけだ。
まぁ俺以外は全員浴衣だし、瓶はデカイが隠そうと思えば隠せるか。……なんかエロいな(小並感)。



八幡「……とりあえず、ちゃっちゃと飯にしちゃいましょう。片付けられないんで」

早苗「うう……折角良いお酒で晩酌出来ると思ったのに……」

八幡「ちなみに飯食ったらすぐ部屋に戻ってくださいね。二次会も無しで」

早苗「嘘でしょぉッ!?」


109 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 01:12:05.14 ID:EZXQYtyb0



そんなこんなで、喚く早苗さんを宥めつつ、夕食をなんとか終える。
ちなみに撮影が遅れる事はこの時に伝えた。危ねぇ……普通に忘れる所だった。



レナ「嵐で来れない……いよいよサスペンスじみてきたわね」

文香「三日も何もしないでいて、大丈夫なのでしょうか……?」

八幡「予備日があるのでその点は心配いらないそうです」

早苗「うう…武蔵……」



まだ言ってんのかこのアラサーは。



凛「その間って、私たちは何してればいいのかな」

莉嘉「ヒマになっちゃいそうだよねー」

八幡「まぁ、台本とか読んで……ゆっくり休んどきゃいいんじゃないか」



正直俺も特に指示する事は無いし、する事も無い。休んでくれとしか言いようが無かった。

しかし、さっきから一つ気になる事が。



楓「…………」



飯食う前あたりから黙りこくってる楓さんである。

珍しく、その表情は思い詰めてると言える。……まぁ、何となく想像はつくけどな。



レナ「それじゃあ、そろそろお開きにしましょうか」

八幡「ええ。お酒を飲むのも良いっすけど、各自自己責任でお願いします」

早苗「くっ……子供のくせにまともな事言っちゃって……!」



大人のくせにまともじゃない人が多いんです。とは言えない。また鉄拳制裁くらっちゃう。

そして自分の部屋へ戻る間際、件の楓さんがそっと耳打ちしてきた。思わず、バッと後ずさる。






楓「――後で部屋に行きますね」






そう、彼女は言っていた。

これが何も無い場合の台詞なら何と心くすぐられた事だろうか。しかし、実際はそんな色気づいたものではない。


……一体何を言い出す事やら。





110 : ◆iX3BLKpVR6 [saga]:2016/06/13(月) 01:15:09.23 ID:EZXQYtyb0
相変わらず短いですが、今回はこの辺で。ミステリーだと思った? 残念、ギャグだよ!
楓さん編はこのままずぅーっとこんな感じなんで、期待していた方には正直申し訳ないと思っている。
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/13(月) 02:38:29.33 ID:E9dWFJ8Ko
乙です
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