叔母「今日からココに住んで」男「ラブホテルで?」

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253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 22:54:07.35 ID:QbgMpNKJO
清掃「……や、やるです……」コクコク

男「よっしゃ。じゃあ俺の部屋に行こうか、…待って、その姿のままじゃ駄目! ちゃんと着替えてからだよッ!?」

〜〜〜

清掃「あ。それさっきやったよ」ドゴォーン!

男「動き読まれたー!? つ、強すぎる…!? つか、俺のキャラと全く違う動きしてるんだけど!?」

清掃「エヘヘー」ニッコニコ

男「このゲームならケル君相手でも食い下がれると思ったのに…修行が足りなかった…」

清掃「でもオトコすごい。キャラの特徴いっぱい把握してるし、記憶力イイのね!」

男「えっ? ま、まあ…それだけ…それだけが俺の取り柄だしね」テレテレ

清掃「でも探求力ナッシングよ? キャラ把握だけじゃダメ、プレイヤースキルもっと学習!」

男「肝に銘じます…し、しかし趣味を何処まで極めるか判断付きにくいというか…」ムムム

清掃「………」

清掃「…あ、あの、オトコ」くいくいっ

男「ん、どうした?」

清掃「その、…ありがと…です、よ?」

男「えっ? な、なにがかな?」

清掃「きぃ使ってくれて嬉しい…ケルケル、色々あって落ち込んでたから…」
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 22:56:00.93 ID:QbgMpNKJO
清掃「オトコが一緒ゲームしてくれて、とっても楽しかった、ううん、ちがう、そうじゃなくて…」

男「うん」

清掃「………」じぃー

清掃「オトコ。…質問あるの、聞いてくれる?」

男「もちろん。良いよ、なんだってきいて良いから」

清掃「…ありがと」


【それは彼の家族の問題だった】


清掃「新しいお母さん出来るらしいの」


【遠い故郷の出来事で。彼には電話一本でしか伝えられなかった】


清掃「おとうさんは決めてた。もうボクに聞くまえに、とっくに決めてた」


【――彼はここでの収入の殆どを実家へ仕送りしていて】

【例え、趣味で故郷の国を離れたとしても、彼は一人の家族としてみんなを想っていたのに】


清掃「…すごく、いっぱい、たくさん悲しかった」

清掃「もう家族じゃ無いって、勝手に一人で頑張れって、そう言われちゃった気がした」

男「それは…」

清掃「ウン。大丈夫、ケルケルの考えすぎだって、ちゃんとわかってる」
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 22:56:38.23 ID:QbgMpNKJO
【でも彼はお酒に頼るほど思い悩んだのを、俺は知っている】


清掃「遠いんだもん。伝えたかったとしてもいっぱいお金払わなくちゃダメだし、電話だってたくさんお金がかかっちゃう」

男「……うん」

清掃「でも、ね」ギュッ

清掃「―――会いたかった、ちゃんと顔を見て、お話ししたかったよ…」


【でも、でも、でも、と】

【彼の中ではあり得た可能性が何度も呟かれてるようだった】

【現実的に見ようとする自分と、希望に縋ろうとする自分が鬩ぎ合っている】


男(ああ、…わからない、わけがない)

【彼の悩みは自分自身、結構身に染みた話題だった。離婚調停中の親を持つ身だったから】

男(…だから一つだけ、こんな可能性もあると言ってみたい)

男「ケル君」

清掃「あ…ご、ごめんね! 変なこと言っちゃって、だからソノ、質問ってのは…っ」

男「唐突にごめん。実は俺の親、近々に離婚するんだ」

清掃「えっ、あっ! う、う〜…」

男「ああ、もしかしてもう叔母さんから聞いてた?」

清掃「…う、うん」コクコク
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 22:57:19.20 ID:QbgMpNKJO
男「そっか。でもね、そんなに悲しくないんだ、俺個人としてはさ」

清掃「どうして?! 大事な家族がばらばらになっちゃうんだよ!?」ガタッ

男「おぉう!? ――そうだね、でも悲しくなんかない、これっぽっちも」


男「悲しくなんて、なってやらないんだ」


清掃「……?」

男「子が親をわかったように言うのも気分が悪いけど、この際ハッキリぶっちゃけるけども」


男「――――笑っちゃうぐらい、ほんっっと身勝手な人たち過ぎるんだよなァ…!?」ギラァッ


清掃(ヤダ! 普段オトコがしたこと無い顔よ! こわい!)ガクガクガク

男「両親共働きでろくに朝昼晩と一緒に飯喰ったことないし、まあそれは良いよ。こっちの我が儘だ」

男「でも、子供がせっせと努力を重ねて勝ち取った学年一位と最優秀生徒やら何やら!」

男「普段あっちがブツクサと人の上立てと要求する癖に、いざ取ったら取ったでまったくの無関心!」

男「かァーッ! ほんっとマジで子供のこと単なる跡継ぎでしか想ってないんじゃ無いの!?」

男「と、中学の頃は本気でそう思ってました」スッキリ

清掃「ハ、ハイ」

男「……。でもね、最近は違うんだ、そうとも思えなくなってきてる」

清掃「? どうして?」
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 22:58:11.83 ID:QbgMpNKJO
男「…離婚の話がちらほら見え始めたとき、珍しく両親が家で揃ったんだ」

男「あれは中学卒業の…半年前かな、もうとっくに互いに愛想を尽かしてたんだろうけど」


【その日。生まれて初めて両親の夫婦喧嘩を見た】

【熱くて、目を開けてられないぐらいのドロドロとした、異様な光景】

【それをドアの隙間から覗いていた俺は、驚いたと同時に、ただ一つだけ思ったんだ】


男「どうして【今まで誰にも言わなかったんだろう?】 いつから誰一人信頼せず独り抱え込んで来たんだろうって」

男「…それぐらいしょーもない喧嘩内容だったから」

男(でも、それが普通なんだと今では分かる。両親は一般人と変わらない、ただの人間だと)

男「ただただ、俺の両親の周りは、本音を言えない人たちばっかりだったんだなぁっと…」

男「もうちょっと自分らしく居られる場所があれば…きっと…」ハッ

清掃「………」ジッ

男「ご、ごめん。話が少し断線してた、うん、ごめん」ポリポリ

清掃「いいよ。聞いてる、ケルケル聞いてるから」クイッ

清掃「ラストまで話して、オトコ」

男「あ、ありがと」テレ

男「だからね、ケル君。離婚で悲しい思いなんて絶対しない。そんなの自業自得だってさ」
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:00:16.63 ID:QbgMpNKJO
男「あの人たちは他人に、近しい人に、自分の想いを伝えることを怠った」

男「…自分の悩みを家族に言わなかった、独り抱えて黙ってた。それは駄目だと…」チラ

清掃「!」

男「そうだよ、ケル君が俺に言ってくれただろ? バイク二人乗りの時にさ」ニコ

清掃「…うん、言った…言ってたよケルケル…っ」ギュッ

男「相手を深く知らずいるのは楽だし、一人で生きた方がきっと穏やかだろうね」

男「…でも」


『おかえり』

『…た、ただいま』


男「―――素直に言葉を言ったり言われたりとか、そっちのほうが凄く楽しいじゃん?」

清掃「そう、そうだよオトコ! ボクも素直に言ったほうが好き!」フンスーッ

男「そうそう。だから君のお父さんにもハッキリ言った方が良い、じゃないかな…」

男「じゃなかったら、ケル君に電話なんてしないよ。否定される可能性を敢えてやってるんだからさ」

清掃「ザッツライ! ダディって小心者? みたいなけつ穴ちいせぇー男だもん!」フンフンッ

男「うん。あとでその言葉教えたであろう受付さん怒っておくね」

清掃「な、なんだか…なんだかケルケル超元気でてきたんですけど!? ナニコレ!? why!?」

男「おお…! 確かに、何時ものパワフルなケル君に見えなくもない…!」
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:01:02.43 ID:QbgMpNKJO
清掃「Powerfulkerukeru!? なにそれテラつよそう! ふんぬぅうぅぅうぅぅ〜〜っ!!」グググ

パァンッ!

清掃「決めた! 今からダディに電話する! やっぱいっぱい怒る! 直接こいって文句いう!」

男「おう! 行ってこいケル君!」ニッ

清掃「ありがとオトコ! もう、なんだろっ、愛してる! ラブユーチュッチュ!」シュバァッ!

男「………」フリフリ


パタン


男(なんて、わかったような事をよくもまあ言えるな、俺も)スッ…


【壊れていく家族をそのままに、本音を語れなかったのは俺自身なのに】

【子供に何が出来る。離婚を引き留めるなど無理だ。そんな力は俺には無いと】


男(だって、最初から期待されてないんじゃどうしようもないだろ)

男(…ああ、寒気がする。頭が痛い。数十分間の俺を消し去りたい、嫌だ、もう嫌だ)


【何を努力しても、想像しても、他人から期待される人間になんてなれやしないのに】


男(浮かれるな。偶然上手くいっただけ。何度も続かない。自信をつけるな)
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:01:43.45 ID:QbgMpNKJO
男(お前は人の悩みを聞ける大した人間か? 違う、その逆だ。教養の無いちっぽけな人間だろ)

男(ああ、恥ずかしい。自分を殴りたい。もう二度と自分を期待するな…次はきっと大失敗するんじゃないか――)


「ありがとう、男君」


男「――えっ?」バッ

叔母「ん? だから、ありがとうと言ったんだけど…?」


男「………」ボーゼン

叔母「……」キョトン


男「…なぜ、叔母さんがここに…?」ダラダラダラダラ

叔母「え? さっきから居たんだが、…もしかしてずっと無視されてた?」

男(ええッッ!? 完ッ全ッに自分の世界入ってた…!? こりゃ恥っずぅーーー!!)カァァァァ

叔母「…じゃあ出直すか」スタ

男「いや良いですってば!? 全然ここ居てくださいよ!!」

叔母「本当に?」チラ

男「まったくもってかまいません! それでッ!? ありがとうとはどういったことで!?」

叔母「う、うん。ケルケル君のことだよ、さっき廊下で元気に走り抜けていく姿を見たから」

叔母「ああ、君が上手くやってくれたんだなと。だからお礼。ありがとうって、君にね」
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:02:33.71 ID:QbgMpNKJO
男「お、俺はそんな大したことなんて…単に話を聞いて、思ったことを言っただけで…」

叔母「……、煙草すう? 最後の一本だけど…」ヒョイ

男「は、はい?」

叔母「やっぱり吸わないか。いやなんとなく君らしくないなぁと、ふと思ったから」シュボッ

男「………」

叔母「ほら君らしくない。君の部屋で煙草吸ってることに何も言わない」グリグリ

シュウウウ…

男「…俺らしさって、なんですか」ボソリ

叔母「ん。そうだなあ、私が知っている男くんはとにかく…うん…とにかく小姑っぽい?」

男「………」ズーン

叔母「ほ、褒めてるからっ。でもごめん! 気に障ったのなら謝るから!」

男「い、いえ、別に…」

叔母「うーん…」ポリポリ

叔母「…君は年齢しては落ち着きもあるし、よく考えて行動してるから偉いと思う」

叔母「私よりもきっと大人に近い大人なんだろうと、常々思うんだ」

男「は、はあ…ありがとうございます…」

叔母「でも子供だろ?」スッパリ

男「…………」ピク

叔母「君はまだ成人もしてない。大人っぽいけど大人じゃない、だから…」


叔母「人から期待されて、それを達成できたら嬉しがらないとダメだってば」


262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:03:11.10 ID:QbgMpNKJO
男「喜ばないと、ダメ?」

叔母「期待されたら喜ばないとね」

男「そっ、そんな期待されて喜ぶ人間ですかね俺…!?」

叔母「料理を作る君は凄く楽しそう見えるけど」

男「うぐッ」

叔母「ケルケル君だって受付だって、君の世話焼きっぷりには凄く期待してる。だからケルケル君も、素直に悩みを打ち明けるんだと思う」

叔母「それに、私も」スッ


ぽんぽん


叔母「もう一度言うよ。――ありがとう、君は本当に凄い、私の自慢の甥っ子だ」ナデナデ

男「……」

ぶるっ

叔母「それが君に対する私の素直な感想だよ」

男(あぁ…この人は、本当に…)ギュッ


【どうして何時も、こんな恥ずかしい言葉をさらっと言うのだろう】

【どうして何時も、こんなにも欲しかった言葉を言ってくれるのだろう】

【………。やだ! 泣きそう! やだやだ待て待て待てッ! 堪えろ俺ぇーッ!】


男「…叔母さん」

叔母「ん?」

男「煙草、買ってきますから…お金ください…今から行ってきますから…」

叔母「ん。そっか」


叔母「ありがと」ニッ

男「はい…っ!」ニッ
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:04:32.88 ID:QbgMpNKJO
〜〜〜


受付「へっ?」

男「えっ?」

叔母「………」ポトリ


清掃「エ? 言った、よね? 新しいお母さん、は【ダディがなるマミィだって】」


男「ちょッ、ちょっと待って! えっ、なにっ、お父さんがお母さんてどいうことッ!?」

受付「あぁ〜〜〜なる、ほど〜〜〜……」

叔母「世界は広いな…」しんみり

男「俺だけ理解置いてかれてる! わかんないわかんない! 理屈意味不明ですけど!」


受付「ウン。つまり、ケルケル君のお父さんは…」

叔母「性転換手術でお母さんになる、と」フゥー

清掃「ダディ悩んでたのケルケルもう知ってたけどタイヘンな手術なのに一人で決めてー!」プンプン


男「……………………」(思考停止)

受付「ありゃ、キャパ超えちゃったか。言うてもここのラブホの客にだって居るよ?」

叔母「ああ、彼らンンッ! 彼女らは、非常に清潔に部屋を使ってくれる上客だ」

受付「もしかして酔っ払ったとき、メイド服だったのもアレ?」

清掃「ザッツライ! どんな気持ちか確かめたかったの!」

叔母「それで? 少しは分かった?」

清掃「ウーン……ケルケルおっぱい大きい人好きだから……うーん……」
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:05:03.22 ID:QbgMpNKJO
受付「やっぱそうだよネ! んな簡単にセクシャリティ変わっちゃ全国の男みんなホモだ!」スタスタ

叔母「しかしそれじゃお前は一生モテないな…」スタスタ

受付「唐突に暴言吐かれて戸惑う私なんですけど!?」

叔母「ケルケル君に酒飲ませたのお前だろ。しかも部屋のビールという話を聞いた」

受付「巫女さんの仕事いってきまぁーーががががががが!?」



男「………」チーン

「オトコ、オトコ」つんつん

男「はっっっ!??!」

清掃「大丈夫? ヘイキ? 気分悪い?」

男「えっ!? いやっ、うん! 大丈夫だよ…全然…ちょっと気を失ってただけだから…」

清掃「そんなにショックだった? ケルケルのダディ、女の人になるの?」

男「ちょ、ちょっとね…衝撃が凄いというか…ケルケル君はヘイキなの…?」

清掃「タイの友達にいるから! えーとえと、ひぃふぅ…みぃ…? たくさん!」ニッコニコ

男(なんたる…これがカルチャーショック…)

清掃「…ダディ、やさしい人よ? 嫌いならないでほしいよ…」シュン

男「も、もちろん! ケル君の家族が悪い人なわけがない! でしょ!?」
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:06:12.30 ID:QbgMpNKJO
清掃「うん!」ニコ

男「あ、あと…それと、おめでとう。ちゃんと話できたみたいで、こっちも嬉しいよ」

清掃「………」じぃー

男「ケル君?」

清掃「ケルケルね、本当はダディの手術反対するつもりだったの」


『《すっ、好きな人できちゃったんだよなぁ!? こんな話ケルディにしか出来ないよ!》』

『《反対なら言ってくれ…でも、パパ…この年で恋しちゃってぇ…えへへ…ムゴォホン! だから!》』

『《好きな人の為に、素直な自分を出すために、…まずお前に一番相談したかったんだよォ…っ》』


清掃「だってさ! ケラケラケラ! ほんとダディちっさいよねー!」ケタケタ

男(ほんっと凄いなケル君の懐の深さは…)

清掃「そうまで言われたらケルケルも認めなきゃ。マミィも居なくなってたくさん時間たったし」

清掃「オトコが言ってくれた、素直に、我慢しない。そう言ってくれたから、もういいの」ニコ

男「…そっか」

清掃「うん! あのねあのね、そういえばケルケルの質問してないの覚えてる?」

男「え? ああ、確かに。俺の話で終わっちゃってたな、そういや…」

清掃「なら今してもオッケ?」キラキラキラ

男「今に?! ま、まあ別にかまわないけど…」
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:06:40.33 ID:QbgMpNKJO
清掃「わー! よかった、じゃあ今からするね!」スッ

男(一体どんな質問を…)ドキドキ


ぎゅっ


男「………えっ?」

清掃「んん〜〜〜」ぎゅううっ

男「ケル君!? これは何っ!? 一体…!?」

清掃「どお? なにか感じる? ハグって恥ずかしい? 特別なキモチ沸いちゃう?」

男「わっ沸かないよ全然!? それが聞きたいことなの!?」

清掃「そうよ!」ニッ

清掃「ありとあらゆる方法でダディの気持ち知る為よ! 情け容赦ないね、ケルケルは!」

男「…ほんっとケル君は凄いよ…」トホホ

清掃「よっと。ありがとねオトコ! そのオトコらしさに完敗よ!」パッ

男「そう、お役に立てたようで…それで、お父さんの気持ちって理解できた…?」

清掃「んーーー…」


清掃「ちょっぴりだけ!」ビシッ


男「そっか。なら良かった、……ん?」

清掃「んじゃケルケル仕事あるからバーイ! 漫画の感想あとでねー!」

男「あ、うん! あとでまた…!」
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:07:28.19 ID:QbgMpNKJO
ポツーン


男「り、理解できたって話だよな、うん。それだけって話だろう…」

清掃「♪」ヒョコ

男「うおっ?」びくっ

清掃「んふふーオットコ〜! またねー!」フリフリ

ヒョイ

男「…多分…そう、だよね…?」


第七話 終
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/21(土) 23:09:01.62 ID:QbgMpNKJO
一週間以内に… 次は叔母さんメインで

ではではノシ
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/21(土) 23:26:13.79 ID:fTQZTeSAo
久しぶりー
また濃厚な…乙です
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/22(日) 07:05:56.60 ID:/J/Rm1bz0
良かった続くのか
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/22(日) 15:47:42.47 ID:xKdZj1qYO
てっきり女装に目覚めて実は男性が好きだったみたいな話だと思ったら…
性転換は予想つかないは…濃厚すぎる…けど嫌いじゃない
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/26(木) 16:38:13.88 ID:YqJrmDrRo
ケルケルルート
ケルケル女性化ルート

が解禁されました

やったー続ききたー
18禁版は>>253で分岐
ホモーCG
メイド服プレイCG
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/31(火) 23:08:38.28 ID:XT6ycRKxO
>>272
巫女服も似合いそうだし巫女服CG追加で
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:32:18.70 ID:+UB8et70O
男「――え、手紙?」

『とっくの前に届いてるハズなんだが? 読んでねーの?』

男「んー…いやまったく…」

『確かに送ったんだがなあ…あのクソからの手紙だし、忘れるわけないし』

男(なるほど。パ、ンンッ! 親父からの手紙か)

男「あ。もしかして叔母さんのところ送った?」

『たりめーだろ。ラブホの住所に生々しい手紙届けに行く郵便屋がかわいそーだわ』

男「全くその通りだ…」

『そっちあんのか? なら確かめに行ってこいよ。アホからの電話超うるせえから、読んだら折返しあっち電話しろ』

男「はいはい、了解。…んで、近状は?」

『はあ? 阿呆か、大人がやることに探り入れんじゃねーよ。ガキは勝手に青春謳歌しとけっつーの』

男「…………」

『聞こえてんのかー?』

男「…聞こえてるって」

『なら返事しろ。――まったく、いちいち似てきやがったな、アイツと』

男「アイツ?」

『テメーの父親だよ、さっきの無言っぷりが腹立つぐらい似てたわ』
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:32:57.06 ID:+UB8et70O
男「……。それは、」

男「それは叔母さんとも、似てるってこと?」

『……………』

男「………? もしもし? ちゃんと聞こえてんの?」

『あれ? あれあれあれ? あっれ〜〜〜〜〜??』

『なに? なんなの? それどういう意味での質問?』

男「えっ!? べ、別に、とくに深い意味は…」

『お前もしかして親父の妹と、寝た?』

男「……………は?」

『ウッソ〜〜〜!! お前って奴はほんっと私の息子だって今更! 確信! した、スゲーなオイ!』

男「ちょ、待て待て待て待て…ッッ…アンタなに言ってんだマジでよ…っ!?」

『愛しい我が子を褒めてる』

男「褒めてねーよ! つか、やめろよォ…! 例え冗談でも、親とそういった話これっぽっちもしたくねェ! 実の子供に下ネタNGだろ!」

『なんだ違うのか。…ま! んな度胸ねえよな! 知ってた!』

男「なら息子に下ネタ振るなと知っててくれ…」

『不思議なこと言い出すもんだから疑いもするわ。…お前らしくもない』

男「…俺らしくない?」

『良いか? 親らしいこと殆どやってない私もテメーの母親だ。一応、言っとくぞ』


『――あんま馴染みすぎると、後が辛いぞ。ほどほどにしとけ』

276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:33:31.85 ID:+UB8et70O
男「なん、だよ……それどういう意味、」

『仕事が残ってる、もう切るぞ。手紙の件忘れるなよ』

男「あッ!? オイって!」

ピッ ツーツー…

男「どいうことだよ、まったく」ピッ

男(俺らしくない? アンタが俺の何を知ってるってんだ、ふん!)ポイッ

男(それに、あとが辛いとか……意味分かんねーよ)


次の日 44号室


男「…はぁ」トントントン…

受付「あ。ため息だ」

清掃「ケルケル数えてたけど十回以上で諦めたよ?」

叔母「今のは29回目」

清掃「数えてた! ほわぁ〜…ownerすごかですなぁ〜…!キラキラキラ

受付「え…きっちり数えてたんスか…ちょっとキモいっすね、オーナー」

叔母「ご飯できるまで暇だったから」ぐー

受付「なら手伝えば良いのにネ☆ っていう私も手伝う気ゼロッスけど!」ニパー

男「別に良いですって、むしろそこで大人しくしてて欲しいぐらいですから」コトコト

清掃「前にケルケルたちお手伝いしたら凄かったネ! 戦場だった!」

男「惨状って言いたい感じ? …いや、戦場でも間違ってなかったなあ…」
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:33:58.17 ID:+UB8et70O
受付「ここ火災保険下りるんスか?」

叔母「原因による。先日のアレだったなら確実に下りない。100パーセント」

受付「んじゃダメだ! 頑張れファイトだよ男くーん!」ブンブン

男「はいはい。言われなくても美味しい晩飯用意しますって」


トントントン カチャカチャ…


受付「にしても…」

受付(――なんか雰囲気おかしいよね、彼。どーおもうケルケルくん)ヒソヒソ

清掃(ため息は幸せ逃げちゃうよ! デイオフよ!)

受付(幸福にも休暇が存在していた…!? すなわち、お姉さんが幸せになるため有給残数を増やすべきッスねオーナー!)

叔母(永久に休みたいなら飛ばすが、その首)

受付(ひぇぇッ)

清掃(でもでもどうしたんだろ? オトコ、確かにゲンキないよ?)

叔母(そうだね。手際の良い彼なのに、ここまで時間がかかるのは初めて見るよ)

受付(むむむ〜…)ジィー


男「…はぁ…」


受付(む! わかった! こりゃ恋のお悩みッショ!)ピコーン

叔母&清掃(コイ?)キョトン
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:34:37.45 ID:+UB8et70O
受付(恋ッス! 恋愛絡みの悩み事! くんずほぐれず酒池肉林、魔の密林真っくろくろの人間関係図が高校生ではお約束!)

清掃(な、なんだか凄いの…そんなところオトコ毎日通ってるの…っ?)ガクガク

叔母(彼に彼女が? …ならなぜ私が知らないんだ)ムス

受付(何気に構いたがりッスよねオーナー、知ってたけど)ムホホ

叔母(か、彼の監督役としては知っておくべきだろっ?)

受付(まあそれに、彼女が居るって決まったわけじゃないデショ? 片思いやら度胸が無い、はたまた―――)

受付(――世間から認められない相手って可能性のあり得るし)


清掃「…認められない…」

叔母「相手……?」


受付(ん? んー? なんだか二人とも真に受けてちゃってる感じッスけど、単なるウチの勘っすよー?)


清掃(オトコがもしかしたら…そんなっ…でもでも…)モジモジ

叔母(叔母として、彼にはきちんとした高校生活を送らせると誓ったからには…っ)


受付(ちょっとー?)チョンチョン

清掃&叔母「――こうしちゃ居られないッッ!!」ガタタンッッ!!

男「どぅあッ!?」ビク
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:35:24.94 ID:+UB8et70O
受付「お、おお…!? ふ、二人ともまずは落ち着い、」

清掃「イロイロ準備するよ! ケルケル行ってくるー!」ダダァッ

男「ケル君どこいくの!?」

叔母「……覚悟を、責任者として覚悟が足りなかったんだ……」ユラァ スタ…スタ…

男「お、叔母さんもっ?」


キィ パタン…


男「一体どうしたんですかアレは…」

受付(そんなのウチが知りたいんだけど…)

受付「…あのさ。男くん」

男「は、はい?」

受付「もしかして恋しちゃったりしてる? それに悩んでたり?」

男「は? 恋? …そんな余裕あるわけないでしょ」

受付「わぁ〜まったくもって高校生っぽくない発言だぁ〜」

男「……高校生は恋愛で悩まなくちゃダメなんですか……?」

受付「いいや、君らしくて良いとお姉さん的には高評価かも?」

男「そ、そうですか?」

受付「うん。でもそーいうの考えないとあとで人生苦労するよ、恋愛下手になるから」
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:35:55.17 ID:+UB8et70O
男「肝に銘じます…」ションボリ

受付(うむ。この子は自分から恋愛しないタイプだ。なら勘違いか)

受付(はてさて、まったく。あの二人はどー動くのやら…厄介なことにならないとイイケド…)ウーン…

男「できましたよ、二人の分もったいないから俺らで食べちゃいましょうか」

受付「わー! やったー!」ケロッ


〜〜〜


男(何か…)ガサゴソガサ


清掃「……」サッサッ

叔母「……」キュキュッ


男(何か凄く、見られてるというか。あの二人から視線をもらってるというか…)

男(なんだろう。何かしてしまったか? 俺、二人に変なところ見せてしまった?)

清掃「オーナー、窓拭き終わり?」

叔母「大体は」キュッキュッ

男「あ、こっちのゴミの分別も終わりました。ケル君、資源ゴミって何曜日だっけ?」


清掃「………」じぃー

叔母「………」じぃー


男「……あ、あの…二人とも……?」ダラダラ
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:36:22.91 ID:+UB8et70O
清掃「水曜日よ! んじゃケルケルあっち掃除してくるね!」

叔母「引き続き分別頼むよ。それじゃ私はあっち行ってくる」

スタスタ スタスタ

男「あっ、はい…」

ぽつーん

男(やっぱり何か変だ。どう見たって二人して俺に余所余所しい)

男(急にどうしたって言うんだ。原因なんて思い当たらない…)

男(早く叔母さんに手紙のこと、聞かなくちゃいけないのに。タイミングが図りづらい…図りづらい…?)


『――あんま馴染みすぎると、後が辛いぞ。ほどほどにしとけ』


男「………」

受付「オーナー居なくなった?」ヒョッコリ

男「……あなた本当に自由な人っすね、マジで」

受付「あっははー、だって月一度の大掃除なんてやってらんないじゃーん」

男「いつか本当にクビになりますよ…?」

受付「またまた冗談いわないでよ〜! …冗談だよね?」

男「知りません。でも、クビになってもご飯ぐらい作ってあげなくもないです」スタスタ

受付「ほんとぉ〜! やったー!」ワーイ

男(…そうだ、悩んでたって仕方ない。行動だ、自分から動いてみるべきだ)
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:36:53.61 ID:+UB8et70O
〜〜〜

男「って、叔母さん何処まで行ったんだ? この階じゃ無いなら、上か?」

男(階段で上がろう。ん、縛った雑誌が踊り場に置きっ放しだ。回収忘れかな)ヒョイ


『男の娘特集! 〜見つけられる? ボクのスカートの中の織田財宝〜』


男「う、う〜んッ? なんだろう、このっ、……うーん…ッ?」

清掃「ずいぶんマニアックね!」

男「だァいッッ!? け、ケル君がなぜここに!?」ビッックーンッッ!

清掃「掃除中よ?」キョトン

男「し、知ってるよ! だからって急に背後に居ないで、心臓に悪いから…!」

清掃「ソーリ! ごめんね! でもでもぉ、オトコってばぁ〜」キラリン

清掃「――ゴミの中からソッチ系雑誌かくして持って行くなんてえっちね!」

男「待って、その勘違い待って、凄すぎてまったく言葉出てこない!」

清掃「チガウノ?」コテン

男「違うよ!? これだけ踊り場に放置してあったから回収しようとしただけ!」

清掃「ふーん、そうなんだ。ケルケルわかるよ、大丈夫! バッチシね!」グッ

男「いらぬ優しさ発揮しないッ!」

清掃「頑なねオトコ…そういうのキライ? あっ、フゼンってやつなの…?」サー…

男「ち、違うってば…! こういった本はっ、別にキライじゃ無いし…高校生として普通に興味あるし…」モゴモゴ
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:37:35.57 ID:+UB8et70O
清掃「ウンウン」キラキラ

男「……。ちょっと待って、雑誌系の回収ってケル君が担当だったよね?」

清掃「エッ!」

男「既にこの階は終わった、と俺は認識してたんだけど。…これは?」スッ

清掃「……ンン〜♪」ダラダラダラ

男「俺以上にうそヘタクソだねケル君…」

清掃「ゴメンナサイ…そうですボク、忘れてたみたい…」

男「いや、良いよ。後で俺が持って行くから、ケル君は上の階の掃除に向かって」

清掃「………」じぃー

男「うん。ちゃんとゴミ捨て場に! 持って行くから、そんな目で見ない!」

清掃「そ、そう? エート、その、オトコ…」

男「な、なに? まだなにか用?」

清掃「んん。オトコはそーいうの興味ナシ? 全然気にならない?」

男「…こういう雑誌には興味あるが、この特集にはいまいちピンと来ないな…」

清掃「どうして?」じぃー

男「ええっ? だってこれはいわゆる…特殊な性癖というか、一般的に公言できないような方向性であって…」

清掃「ウンウン」

男「あっ、でも――別にそういった人たちを軽視してるわけじゃ無いよ? ただ、自分の趣向に向かないって話で…」
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:38:03.81 ID:+UB8et70O
清掃「そか。オトコは認められないのね、そっち系は」

男「まあ簡潔に言えば…」

清掃「でもね、オトコ」ずいっ

男「はいッ?」

清掃「世の中いっぱい愛の種類ある。たとえ認められなくっても、愛があればイチコロ。ケルケルの友達にだっていっぱいたよ!」

男「け、ケル君…?」

清掃「こーだからこーだと頑なダメ! オトコそーいう所あるとケルケル思う!」

男「は、はい! ごめんなさい…っ?」

清掃「わかってくれた? ケルケルの思い、知ってくれた?」

男「う、うん…なんとなくだけど、ケル君が言いたいことは理解できたと思う…」

清掃「ならイイヨ! ケルケル満足!」ニコニコ

男「…でも急にこんなこと聞いてどうしたっていうのさ、ケル君」

清掃「ウン? ケルケル心配だったから、オトコ最近悩んでる感じだったし!」

男「えっ?」

清掃「もしかしたらオトコがオトコ好きになった可能性考えてた」

男「予想以上にブッ飛んだこと考えてたねッ!」

清掃「そお? ガンコなオトコなら悩むと思ってた」
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:38:50.33 ID:+UB8et70O
清掃「だからケルケル、ちゃんと友達としてオトコの恋応援したい。悩んでるなら、相談して欲しい。ケルケルできることやってあげたい」


清掃「――オトコが好きになった相手なら、絶対良い子のハズだし! 是非あってみたいし!」


男「ケル君…も、もしやこの雑誌もケル君がわざと放置して…?」

清掃「イエス! アキバでこの前かってきました!」ビシッ

清掃「とにかくそう言いたかった。理解してもらえてよかったよ、一息付けた」ふぃー

男「と、とりあえず納得してもらえたようで。それに、別に誰を好きになったとか、そういう悩みじゃ無いんだけどね…」

清掃「エッ! そうだったのー!?」

男「うん。でもありがとう、ケル君が一生懸命考えてくれたことは素直に嬉しい」

清掃「で、でも…ならケルケルやったことオトコに迷惑だったよね…ごめん…」

男「そうでもないよ? いっぱしに恋愛してない俺が言うのもアレだけど、うん、愛に境目なんて無いって、俺なりに理解できたつもり」

清掃「う、うん」シュン

男「そうだなぁ、もし仮に将来そういった関係ができるなら―――」

男「―――ケル君みたいな話しやすい人が良いな、俺的に」(悪意0)
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:39:22.23 ID:+UB8et70O
清掃「………………………」

男「なーんて、あっ! 気に障ったらゴメン! へ、変なこと言った…?」

清掃「ううん。そーでもないよ、オトコがそーーだってケルケル知ってるし」

男「えっ、あ、うん?」

清掃「オトコ約束して」

男「約束?」

清掃「今後ゼッタイそーいうの言わない、ケルケル以外に言っちゃダメ。わかった?」

男「…ちょっとケル君怒ってる?」

清掃「ヤクソク!」

男「はい! 約束ねッ!」ビクン

清掃「ウム。じゃあケルケル掃除始めるから、オトコもフォクシィみたいにサボらないように」

男「い、いえっさー…」

清掃「…………」じぃー

清掃「ケルケル。違うこと心配なってきたよ、放っておけないねオトコは」ハフゥ

男「ど、どういうこと?」

清掃「ヒミツ」ベー

たたっ

男「…何故に彼はああいった行為が似合うのだろう、不思議だ…」ボンヤリ

男(って、ぼーっとしてる暇ない! 叔母さん探さないと!)
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:39:54.23 ID:+UB8et70O
〜〜〜


男(スィートランドホテルにはケル君と、タンコブ出来た受付さんだけだった)

男「すると、居るのはここだよな…」スッ


ぴんぽーん


叔母「はい」ガチャ

男「…敢えて言いますけど、まずインターフォンで相手を確認しドア開けてください。不用心ですよ」

叔母「お、男くんっ? なぜここに…! あっ! 一緒に住むの…?」

男「違います。探してここまで来たんですよ、叔母さんに用事があって」

叔母「…………………」

男「上がってもいいですか?」

叔母「え? あ、うん、いや! 待って、五時間後になら…」

男「五時間後!?」

叔母「三時間後?」

男「たいして変わらない! なんでそんな時間を、あっ!? まさか、嘘、また…!?」

叔母「えぇえ〜…? なんのコトだろう〜…?」ソローリ

男「そっとドアを閉じようとするなーッ! アンタっ、部屋がまた汚くなってるんでしょうが…!?」ガッ

叔母「暴れるとご近所に迷惑だから…顔を覚えられたら今後一緒に住みにくくなっちゃうから…っ」ギリギリギリ

男「先の心配より今の心配でしょうが! 大家にバレたら叔母さんが住めなくなるんですけど!?」
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:40:28.78 ID:+UB8et70O
室内


ゴチャーッ

男「……なんたる、惨状……」ゴゴゴゴゴ

叔母「言うほど汚れてないと思うけど…」

男「片付けた以前ぐらい元通りなんですけど…!?」

叔母「スミマセン」

男「ハァ〜…ホテル掃除の前に、ここを片付けなきゃダメじゃ無いですか…」

叔母「そう、思ったから一人でやってたんだ」スッ

男「え? あ、ゴミ袋に…金鋏? 金鋏!?」

叔母「ああ。キッチン用」ガッチンガッチン

男「イヤァッ! 聞きたくなァいッ! 水場周りで金鋏を使用しなきゃ駄目な状況なんて聞きたくなァい!」

叔母(これが受付が言ってた乙女系反応…)ぽやぽや

男「うぐぐッ、こうだと知ってれば除菌殺菌抗菌道具一式持ってくれば良かった…っ」

叔母「それで用事って何?」

男「当の本人がこれだもんなァ…! くッ、良いですよ! 掃除は今度にします、先に用事を済ませてたいですし!」

男「――はぁ、それで質問があるんですよ。叔母さんに」ジッ

叔母「質問?」

男「…………、なんで最近俺のことみてるんですか?」
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:41:47.51 ID:+UB8et70O
叔母「ミテナイヨ」

男「やっぱ血筋って重要ですね。下手くそすぎますよ、嘘が」

叔母「うっ…」

男「教えてください。なにか、俺しましたか? 問題あるならちゃんと聞きますから、きちんと言ってください」

叔母「………」ダラダラ

男「言い辛い、ことなんですか?」

叔母「少し、そうかも」

男「……」

男「そう、なんですか。なら別に、無理して言わなくて良いです」フィ

叔母「あ…」

男「すみません。なら用事は終わりです、もう帰りますね、俺」

叔母「ま、待って。そうじゃない、違うんだよ男くん!」

男「……」

叔母「違う…と言っても…本当にただ、私から言っていいものなのかわからなくて…」

男「俺、信用できませんか。叔母さんにとって、信頼できないですか」

叔母「…っ」

男「前にじ、自慢の甥っ子だって言ってくれたこと、凄く嬉しかった。だから…」

男「……やっぱり忘れてください。変なこといってすみません、俺もう帰ります」


がしっ ぐいー!
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:42:23.47 ID:+UB8et70O
男「わあっ!?」

叔母「わ、私にとって君は大事な家族だと…! 大切に思ってることは事実だから!」

男「えっ? あっ、ハイ…!!」

叔母「勘違いしないで、君は大切な家族だということ。預かった時から心に決めてるし、三年間責任もって見届けようと思ってる」

男「あ、ありがとうございます…!」

叔母「でも」

男(でも?)


叔母「――君がっ、私のことを家族としてみてないじゃないか…!!」くっ…


男「……」

男(んーっ?)

叔母「悩んでいるんだろう…私としたことが、責任者として十代の性欲を軽んじたばかりに…無防備な姿をさらし続けた…」

男「待って、オイ、待て」

叔母「良いんだ、嘘をつかなくても私は知ってるから。君がちくいち胸を見てるって」

男「それはちょっと否定できませんけど本当に待って!?」

叔母「認められない相手を好きになるぐらい…君のセクシャリティを歪ませた叔母を許してくれ…」サメザメ

男「ラブホテルに住まわせてる人のセリフじゃ無いなあ!?」
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:42:53.51 ID:+UB8et70O
男「叔母さん本気でなに言ってるんです!? お、俺が貴女を家族としてみてないって…一体どういう…!?」

叔母「えっ? 毎夜と私でこう…」シュッシュッ

男「してないわッ!!!」

叔母「え、嘘、じゃあネタはなに?」キョトン

男「今話すことでもないッ! 叔母さん、そっちこそ勘違いしないで下さいよ!?」

男「俺はまったく貴女を家族以外で見たことありません! さっき言ってくれた、そのっ、大切な家族…的な…感じですから!」

叔母「だからこそ燃える的な…」

男「まったく隙がねえ勘違いだよ!」

叔母「え、え、じゃあ違う? 私の勘違い? 全然いっしょ住めるぐらい普通?」

男「標準が分かりづらいですけど、まあ、余裕で住めるでしょうね…」

叔母「―――………」

男「お、叔母さん? わかってくれましたか?」

叔母「…ああ、そう。うん、わかった」

男「本当ですか? まったくも〜突然変なこと言わないで下さいよ、びっくりした」

叔母「そう、か。ごめん、君によからぬ疑惑を抱いてしまって。すっごい胸見るからもう我慢の限界だと思ってて…」

男「それはもう今後気をつけますッ!」
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:43:23.73 ID:+UB8et70O
叔母「うん。そういうことなら素直に言えるね、ごめんね。でも…」


叔母「…良かった、君が家族のままで」


男「………」チク

男(ん? あれ? なんだ今、一瞬…変な感じが…)サワサワ

叔母「どうして乳首触ってるの?」

男「触るかばっきゃろいッッ!」

叔母(ばっきゃろい……)

男「ご、ごほん。しかし誤解が解けたようでなによりです! …あ、でも、そういやケル君も変な誤解してたけど…」

男「どうして俺が『認められない相手』が居ると勘違いを?」

叔母「ん。その言葉で全て納得がいった、もうクビにするか」

男「……その言葉で俺も全ての原因を察したんですが、待って下さい、勘違いしたのは叔母さん達ですし」

叔母「でも君に迷惑が…」

男「い、いやいや。誤解が解けたなら問題なしですって!」

叔母「そう。君がそういうのなら」


男「………」

叔母「………」


シーン
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:43:54.21 ID:+UB8et70O
男「あ、えーっと! あはは、じゃあ俺はそろそろ…!」

叔母「帰るの?」

男「え、ええ、晩ご飯の準備もありますし、だから、そのっ、えっとー…」

叔母「ん」

男「…腕を放してもらえないと、帰られないんですけど…?」

叔母「………」ぱっ

男「あ、ありがとうございます」

男「うっ、それと叔母さんの分も用意してますから、後で食べに来て下さいね…! 受付さんのこと怒りすぎないように、あとそれとっ、」

叔母「男くん」スッ

男「掃除もあとでやりにきま―――」グイッ


ぎゅっ


男「――え?」

叔母「………」ぎゅうう

男「なんっ、ですか、コレ急に…?」

叔母「黙ってて」

男「は、はひっ!」

叔母「…………」ぎゅっ


チッチッチッチッチッ… カチン チッチッチッチッ…
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:44:21.61 ID:+UB8et70O
叔母「ん」スッ

男「…今の、なんですか…?」

叔母「え、ハグ? 知らない?」シュボッ

男「ご存じですけど…」

叔母「親愛を込めてハグらせてもらった。君が嫌がるか、性癖歪ませちゃうかもと、今までやらなかったんだ」

男「もっと他の躊躇う理由ありませんでした?」

叔母「今ではどうでもいい。…見た感じ、悪い気はしてなさそうだから」ニッ

男「うッ!? 嫌がるなんて、別に、俺は特になにも…」フィッ

叔母「嬉しかったよ」フゥー

男「えっ?」

叔母「君が『大切な家族』だって、私のことを言ってくれて。私は本当に嬉しかった」

男「……じ、事実ですからっ」

叔母「ん。だからハグした、これからもして良い?」

男「えっ!?」

叔母「了承得られなくてもするけど。私はよく兄貴にしてたよ、クッソ嫌がられてたけど無理矢理してた」

男「ぜ、全然想像できない…あの親父が…」

叔母「くっく。それにもう一人のほうも、」

男「もう一人?」

叔母「……。いや、なんでもない」
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:44:47.57 ID:+UB8et70O
叔母「さて。そろそろ日も暮れるし、帰った方が良いよ。それともやっぱりここに居る?」

男「か、帰りますって。あとでご飯食べに来て下さいね、…あ!!!!」

叔母「わ! どうしたの?」

男「叔母さんが兄貴って言って思い出しました…!」

男「――て、手紙ですよ手紙! 俺の親父から手紙届いてませんか!?」

叔母「兄貴から? え、えっと、来てたかな…?」クル


ゴチャーッ


叔母「来てると思う?」

男「もういいです…今度と言いましたけど、今から掃除しましょうか…」トホホ

叔母「お礼にハグするから」スッ

男「お礼も何も挨拶代わりしようと考えてるでしょうが…!」ググググ

叔母「おー、その嫌がり方すごく兄貴に似てる」マジマジ

男「と、とっとと探しますよ!!」


〜〜〜
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:45:16.57 ID:+UB8et70O
手紙は案外、すぐに見つかった。

底の見えぬ汚部屋で絶望に染まった俺と叔母さんだったのだが、

途中で参加した受付さんとケル君のお陰で迅速に片付いたのだ。


男「えっと、なになに?」ガサガサ


見慣れたシンプルな封筒を開封し、これまた質素な手紙を取り出す。

合理的な性格の親父らしいと、半ば懐かしく思いながら文面に目を通していく。


叔母「なんて書いてあった?」


しばし斜め読みを続けたところで、ふと、気になる単語に目がとまった。

堅苦しい几帳面な筆質に埋もれた一つの言葉。

なかば理解できず、何度も何度も、視線を往復さえ脳が把握するのを促すが――


清掃「オトコ?」

受付「どったの?」


297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/05(日) 05:46:31.19 ID:+UB8et70O
――ついぞ手紙の意味を理解し終わっても、俺の口は開かなかった。

そんな俺の頭の中では彼女の、俺の母親である親の言葉が回り続けていた。

『――あんま馴染みすぎると、後が辛いぞ。ほどほどにしとけ』

この助言を今になって痛感する。

俺はきっと優しくなりすぎた。だからこんなにも苦しくなっている。

分かっていたのに、こんなこと嫌だって知っていたのに。


『この手紙が届いた一週間後、離婚調停が済む。アメリカに来い』


もはや俺には辛いことしか残っていない。


第八話 終
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/05(日) 05:47:26.73 ID:+UB8et70O
できるだけ早く来ます ノシ
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/05(日) 12:48:59.00 ID:iSsZpQ8i0
楽しみにしてるが無理せんといて
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/05(日) 16:01:18.23 ID:UoWoG2XA0
舞ってる
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/05(日) 16:51:48.38 ID:Snb+A6f2O
>男「ラブホテルに住まわせてる人のセリフじゃ無いなあ!?」
確かにww

アメリカにこいってことはパスポートやら色々手続きしたあとか?
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/09(木) 03:17:37.20 ID:Xa+/2vcUo
よくいる自己主張のみ無能主人公なら保護者に逆らってんじゃねぇと思うが
自活出来る高校生(+養育実績がある親類が居る)なんだから
糞親なんかガン無視でおk
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/13(月) 03:43:10.21 ID:Nb1J8qxwO
それができるなら主人公もここまでショック受けんだろ
法律に載っとりやってきたらラブホテルに住ませてる以上勝ち目ねーべ
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/14(火) 11:00:52.75 ID:NbtXjO2IO
保守
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:20:38.14 ID:qigM/ANOO
『――してやられた』

『私が有利だと高をくくってた。まさか、ババアの遺言を引っ張ってくるとは』

叔母「遺言?」

『そう。私の母親のやつ』

『目敏いったらありゃしない、ふつうそんなの把握してるか? …するか、アイツなら』

叔母「義姉さん。要約すると、つまり…」

『ああ、アメリカで愛人と住んでる馬鹿に親権取られた。『婿養子が育て親に」ってチンケな遺言程度で』

叔母「親からの信頼度なさ過ぎませんか…」

『親の会社を独断で奪った時点で見限られてるよ。んで期限はどれくらいよ、妹ちゃん』

叔母「……、四日です」

『は〜あ、うん。なるほど、手早く引っ張り込みてーようで』

叔母「せっかちな兄貴らしい魂胆ですね」

『そいでアイツは受け止め切れてんの?』

叔母「私が見る限りでは。彼は問題なく準備を進めてるようです」

『カカッ! そうかい、最近ふぬけたとばっかり思ったけどよ。なら安心だ』

叔母「………」

『じゃあさ、こっちの国で最後のアイツを見届けてやってよ、妹ちゃん』

叔母「見送りには来ないんですか?」

『雰囲気しらけちゃう気がするし、仕事でもやって慰謝料頑張って稼いどく』
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:22:23.38 ID:qigM/ANOO
叔母「…そうですか」

叔母「……」

叔母「その、ちなみになんですか。差し支えなければお聞きしたいのですが」

『あん?』

叔母「今まで知り得なかったので興味本位程度なんですが、今回の離婚の直接的な原因とは?」

『私の浮気だけど?』

叔母「ぇぇ…」

『んだよ、テメーかまととぶりやがって。浮気ぐらいするわ、数年前から夫婦観乾ききってたわ、若い男囲いたかったんだわ』

叔母「…敢えて聞きますけど、何故、兄貴と結婚されたんです?」

『金』

叔母「身もふたもない理由ですね」

『ハン。妹ちゃん、アンタも意外とミーハー思考なんだなぁ。他人のゴシップ気にするタイプとはお姉ちゃん思わなかったよ』

『――理由なんて、なんだって良いんだ。離婚する、ただそれだけが現実であって、理由や原因なんて他人が求めるちっこい正当性だろ?』

叔母「つまり?」

『藪を突くな。蛇どころか鬼以上の厄介ごとが飛び出すってぇこと』

叔母「……肝に銘じます」
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:23:26.78 ID:qigM/ANOO
〜数十分後〜


『じゃ、あと頼んだぜ。書類等は四日後の朝には済ませるって、息子に伝えといて』

叔母「わかりました。では」

『ほいよ』ピッ

叔母(相変わらずサバサバしてるな、義姉さんは。実に普段通りだった)

叔母「…こういった所は彼に似てる、とも取れるのかな」

叔母(…実際のことろ。彼を引き取って、彼に何かしてあげられたとは思えない)

叔母(でも、やれることはやろう。最後の最後まで、叔母としてやりとおそうと思う)

チッチッチッチッ…

叔母「…試しに手料理とかやってみようかな」グッ


学校 放課後の教室


男「………」ボー

女「であるからしてねぇ〜! 私の班では汚水を如何なる過程で川に放出するかまとめたワケなの!」

男「はぁ〜…」

女「つ・ま・り! …ちょっと、なによため息なんて」

男「え?」

女「つ、つまらなかったのかしら…? 私の話、っていうか今度発表する社会見学のレポート……」

男「ち、違う違うってば。俺の方がきちんと聞いてなかっただけ」
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:24:21.05 ID:qigM/ANOO
女「へーめずらし、もしかして寝不足?」

男「いや、睡眠はちゃんと取ってる。色々と考え事をしてただけ、別に手を抜いてるわけじゃ無いよ」

女「そりゃそーよ! 私の班と、貴方の班! どっちが優秀かどうかちゃーーんと優劣決める為やることやってもらわないと!」

男「うん。頑張ってるから安心して、負ける気なんてこれっぽっちも無いから」

女「フン! 分かってるなら良いわ。これでもしふ抜けた発表でもされたら、今後の私の士気に影響出るんだから本気でやること!」

男「最初からそう言ってるから安心してください」セイセイ

女「なによ大人ぶっちゃって。もっとがっつきなさいよ、食らいつきなさいよ、本番は三日後なのにそれで大丈夫なワケ!?」

男「相変わらず勝手にヒートアップする癖治らないなあ! 声が大きいから、もっと小さくして、じゃないとまた誰かに怒られ…」

ガラリ

女姉「…………」ジィー

女「ヒィッ!? おっ、お姉ちゃ!?」ビクーン

男「あ。どうも先生」ペコ

女姉「精が出るわね、社会科見学発表の予行練習?」チラ

女姉「校内で必要以上に大声出す生徒さえいなければ、私も、他の職務を全うするのだけれども」ヂラ

女「スミマセンデシタ…」
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:25:01.60 ID:qigM/ANOO
女姉「はぁ、もういいわよ。貴女のそういった所はもう諦めましたから」

女「諦めましたから!?」

女姉「……だから貴女が自覚を持ち自制を効かせるよう見守ろうということなのよ……」ジロー

女「ウッス…」

男「そ、それで先生? もしかして、その本ってあれですか?」

女姉「ん? ああ、ちょうど良いわ。はい、コレが約束してたモノよ」スッ

男「わ〜…! わざわざありがとうございます!」ペコ

女「ヤクソク?」

女姉「英会話の本。オススメがあるから幾つか貸してあげると約束してたの」

女「ふーん…」

男「お。これなんて良さそうだ」ヒョイ

女姉「お目が高いじゃない。お決まりな会話から砕けたフランクな会話まで書かれてるの」

男「なるほど。…詠み込み度合いが凄い窺える、大量の蛍光ペンの後が」

女姉「ふふ。余白にイントネーションの違い、あったりしない?」スッ

男「本当だ! これ凄いですね! 一般の教材なんて目じゃないぐらいだ…!」

女姉「気に入った? なら持って行っても良いから。本場じゃ付け焼き刃じゃ厳しいでしょうし」
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:26:12.62 ID:qigM/ANOO
女姉「クローゼットにしまっておくよりはマシよ。ちゃんと大切にしてくれれば、私も嬉しい限り」ニコ


女「ちょっとまったぁー!!!」バァンッ


男「わぁッッ!?」ビクーーーン

女姉「…貴女ねぇ…」ピクピク…

女「お、怒るのはあとにしてお姉ちゃん! その前に、聞き逃せない単語が幾つかあったんだけど! どういうこと!?」


男「ナンノコトカナ?」

女姉「お姉ちゃんはやめなさいと言ったわよね?」


女「嘘ヘタクソ! ごめんなさい先生! …じゃなくて! あっちとか本場とか英会話の本とか!」

女姉「はあ? 彼があっちじゃ大変だろうと用意して――え? 言ってないの?」

男「え、えっとぉー…」

女姉「呆れた。君って他人には隠し事するなと言う癖に、自分だけは飄々と嘘をつくのね」ジィー

男「おぐッ!」

女「お姉ちゃんに隠し事するなって言ったのアンタ!? す、凄いわね…!」ワナワナ

男「そ、その話はややこしくなるから今は無しで!」

女姉「教師にとって、生徒の家庭的情報漏洩は御法度。私から女さんに事実を伝えることは無理なの」

男(ぐ…俺の淡い期待がバレてる…!)

女姉「甘い展開を私に抱かないこと。自分の口できちんと伝えなさい、良いわね?」
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:27:10.31 ID:ZJk9iEXnO
男「…はい、先生」

女姉「よろしい。あと女さん」

女「は、はい?」

女姉「何があっても騒がないこと。…これは教師では無く姉としてのアドバイスよ」


スタスタ ガラリ パタン


女「…。今のお姉ちゃんが一番恐かったんだけど、貴方なに隠してんのよ?」

男「………」

女「言えないの? だったらまあ、無理しなくても良いけどね」

男「…怒らないのか?」

女「誰にだって秘密はあるじゃない。無理して語られてもこっちが困るだけだわ、そんなの」

女「でも…」


女「秘密にしたせいで、後でもっと困るのなら。ちゃんと伝えて欲しい」


女「あとに残る嘘は嫌い。今だけ何とかしたいって気分でつく嘘が一番イヤよ」

男「……」

男「うん、そうだろうな。俺も、そう思う」

女「フン。で? 言ってくれるの?」

男「うん。言うよ、ちゃんと女さんに事実を言うよ」

女「そ。…じゃあさ、それってやっぱりさ、おっ、お姉ちゃんと隠れて付き合ってるとかー!?」ドキドキ


女姉「どーして何時も何時もそうなるのよ貴女はッ!!」バァーーン!!

312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:27:54.23 ID:ZJk9iEXnO
女「わぁーー!?」

男「先生!?」

女姉「今回ばっかりは我慢の限界です! すぐ勘違いを押し通すから相手も言い出し辛くなるんでしょうが!」

男「先生! 大変有り難いですが声が大きすぎます!」

女「思ってたとおりだわ…! お姉ちゃん、すぐ男のことになるとムキになるもの! まさか本当に貴方とお姉ちゃんって…」

女姉「ち、ちがッ! 茶化す空気じゃ無いと大人としての助言しようとしただけ!」

女「茶化す…? 待って、私は何時だって本気なのよお姉ちゃん!? 本気で生徒と付き合ってないか心配してるの!」

女姉「それが余計な世話だって言ってるんでしょーが!!」ムキーッ

女「余計なお世話!?」

女「ふっ、ふーんだ! だったらキャッキャウフフと教材眺めてた二人をどう周りは思うかしら!?」

女姉「え…? キャッキャウフフ…?」

女「してたよ! あんな好き好きオーラダダ漏れじゃ余計お世話なんて言われる筋はこれっぽっちもありませーーん!!」

女姉「なっ!? い、いっぱしに恋愛したことない子供がよくもまあ…姉に言えたモノね…ッ」

女「うるさいうるさい! 否定できるものなら否定してみればぁ!?」

女「最後までちゃんと聞いててあげるわ! どれだけ男のこと好きなのか見破って…あれ…?」ポロ

パタタ… ポロポロ…


女「……どうして泣いてるんだろう、私……?」

男&姉女「わーーーー!!!??」
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:28:42.61 ID:ZJk9iEXnO
女「ぐすっ」ゴシゴシ

男「本当に落ち着いて!? ちょ、泣かないで…! ハンカチで拭いて、ほら! ねっ?」

姉女「ちょっとは落ち着きなさい! ほら、珈琲かってきてあげるから! もうもう嫌な勘違いしないでよバカね…!」

女「うう…じゃあ違うの…? 本当に、付き合ってない…?」

女姉「教師と生徒! い、色々と過去にあって知りすぎてるのもあるけど…!」

男「女さんが勘違いしてることは絶対に無いから…!」

女「うん…うん…」コクコク

女姉「ちょ、ちょっと、私今から自販機で飲み物買ってくるわ。しばらく相手してて」スッ

男「は、はい!」

女姉「…次は一緒に居て話聞いてあげる。その方が妹も貴方も、落ち着いて会話できるでしょうから」

男「あり、がとうございます」

女「ぐす…」

女姉「……。まったく、今ここで本当に泣きたいのは、一体誰なのかしらね」パタン

男「………」
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:29:20.37 ID:ZJk9iEXnO
〜〜〜

ジュゥウウ

叔母「おかしい…おかしいな…フライパンで卵を焼いてるだけなのに…」

叔母「どうしてフライパンから卵が戻ってこないんだ?」クル ブンブン!

ガリガリボソボソ

叔母「不思議だ…フライパンを買い直した方が良いのかも知れない…」

ぴんぽーん

叔母「ん? …男君の書類でも来たかな」ガタン


がちゃり


受付「ウィッス〜! オーナ〜! 送別会の準備的な話しをしに――クッッサ!!??!」

叔母「唐突に失礼な奴だな」

受付「えッ!!? ちょ、なんスかこの匂い!? 焦げてる? これ火事的な臭さッスよ絶対!!」

叔母「そんなに臭う?」

受付「そりゃもうドアの隙間からモックモックと!」

叔母「ああ。なら多分、私が作ってる卵焼きのせいだ。別に気にしなくて良い」フリフリ

受付「いや気にしますけど…卵焼きでプラスチック燃えてる匂いが産まれる理由が…」

叔母「私も知りたいんだ。理由としてはフライパンが悪いんじゃ無いかと思う」

受付「……。大丈夫なんスか?」

叔母「買い換えるから大丈夫」

受付「違う違う。アンタ、鼻敏感なのに気づかないとかおかしいデショ」
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:30:04.30 ID:ZJk9iEXnO
叔母「……。言われてみれば確かに」クンクン

受付「体調でも悪いんスか? だったら無理せず出前でも取りましょーよ」パタン

叔母「いや、別に腹が減ってるわけじゃ…」

受付「ん? あぁ〜! なるなるー?」キラリン

受付「もしや彼の為に手料理作ってた、ってな若々しい魂胆抱えて頑張った感じッスかぁ?」ニマニマ

叔母「む」

受付「クケケ! オーナーにも可愛らしい部分残ってたんスね、って…わぁお…なんだこの物体X…」

叔母「卵焼き」

受付「…これを卵焼きと認めるには、例え料理上手くないウチでも躊躇うわ…」

叔母「食べてみるか?」

受付「食べれるんスかコレ」

叔母「私は喰わないけど」

受付「じゃ、この話おしまいッスね。本題に移る前に窓開けますよ」ガララー

ヒュウウ〜〜

受付「……。最近ラブホの仕事無いから会えてないですけど、彼は元気なんスか」

叔母「普段通りすぎてなにも」
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:30:38.36 ID:ZJk9iEXnO
受付「あっはは。いやあ素晴らしい、もはやそこまで分別効くなら菩薩級だわ」ケタケタ

叔母「どうだろうな。我々が察せられてないだけで、彼だけは思い悩んでるかも知れない」

受付「まるで他人事みたいッスね、今のセリフ」

叔母「じゃあ私に何か出来るとでも?」

受付「そうっすねー出来れば話は早いっすよねー」

叔母「だな」シュボッ

受付「まあ、そりゃ血が繋がってても他人は他人。よそはよそ。家族じゃ無いからなあ」

受付「かわいそうに。これからずっと、彼の自由はあの両親に弄ばれ続けるわけだ」

叔母「そうかもな。なら、お前が男君と一緒に駆け落ちでもするか?」

受付「イイっすね〜それ! 原付で全国津々浦々、月替わりには絵はがき送りますよ?」

叔母「くっく。そりゃ楽しみだ」

受付「ふむ。それよかケルケル君の実家に住むってのはどうデショ」

叔母「ほぉう」

受付「同じ外国住みなのに、この安心度の違い! 結局はソコなんスよねー」

叔母「……」フゥー…

受付「…どうにか出来ないんですか、ほら、今からぶん殴りに行くとかは?」

叔母「殴って解決できるのなら」

受付「じゃあウチらはせいぜい、華々しく彼を送り届けるだけッスか」
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:31:28.74 ID:ZJk9iEXnO
叔母「……。さて、送別会とやらの話だったか」グリグリ

受付「ケルケル君がノリノリで準備してるんで便乗するカタチでー」

受付「あとでここにきてパーティの内容を話してくれるッス」

叔母「楽でいい」

受付「いや、ここは楽すべき所じゃないデショ…」

叔母「? どうして、別れる準備まで苦労しなきゃならないんだ?」

受付「カ〜ッ! 妙にかっこいいセリフ頂きましたー!」

受付「…という冗談は今回は無しで、ここはひとまず頑張りましょうよオーナー」


受付「――我々が彼にできることなんて、今はこれだけなんですから」


〜〜〜


女「遊ぶわよ」

男「は?」

女「良いから準備しなさい。早く荷物を持って、財布にお金は? 無ければ貸すけど、転校する前に帰しなさいよね」

男「ちょ、ちょっと待って!」

女「なによ。家の門限でもあるの? ら、ラブホに住んでるクセに?」

男「違う、そうじゃなくて……あの、転校に対する感想は…?」

女「無い」
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:32:26.32 ID:ZJk9iEXnO
女姉「…………」

男「えぇッ!? 無いの!?」

女「無いわよ。転校するんでしょ、遠い外国に行っちゃうんでしょ、それで何?」

女「――別に会えなくなるわけじゃないでしょ? あほらしいったらありゃしないわ」

男「…女さん…」

女「ケッ! この私に心配でも為て欲しかった? 行かないでって引き留めて欲しかったワケ?」

女「あっりえないわよバーーカ!! 二度と意味不明な勘ぐり為ないでよね!」

男「正直に言いますと、私との勝負から逃げるのか! と怒られると思ってました…」

女姉(私も同意見だった……)

女「それも有り得ないわ。貴方と私の優劣を決める勝負、たかが国境程度で終わりなんてわ・た・し、が認めない!」

女「私は諦めないの。外国でも宇宙でも地底でも深海でも、貴方が何処に行ったって諦めない!」

女「私が貴方から受けた屈辱はどの広さも深さも遠さでさえも、計り知れない程にでっかいんだから!!」

男「…………」ドキ

女「わかった? わかったなら頷きなさい、そして認めなさい! 私との勝負の続行を!」

男「…うん」ギュッ

男「わかり、ました。もう君との勝負を俺は二度と、諦めた風に言ったりしない」


女「上等よ、受けて立つわ」ニッ

男「うん」ニッ

319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:33:55.28 ID:ZJk9iEXnO
女姉(……驚いたわ、素直に)

女姉(そっか。もう私の妹は既に成長してるんだ。私が知っている以上に、彼女は立派に大人となってきてるんだ)

女姉(でも、勝負って貴女ね。これじゃあ大人とは少し言い辛いかしら)クス

女姉(……けれど)


ただしい大人の対応なんて、私には理解できているのだろうか。


女姉(あーあ、先輩と飲んで話したい。今度、誘ったら来てくれるかなぁ)

女「? どこいこうっての先生?」

女姉「え?」

女「先生も来るのよ、遊びに行くの。教師の仕事って何時に終わるの? 早めに切り上げられないモノなの?」

女姉「はっ? いや、待ちなさい。どうして私まで一緒にっ?」

女「むしろ何故行かないと思ってるの……?」

女姉(こ、このバカ妹は! まさか本気で単に遊び感覚で誘ってるの…!?)

男「…ぇ、ぇと…」キョロキョロ

女姉(ホラ! まさかの展開に当の本人が気まずがってるじゃない!)

女「別に先生が居たって構わないわよね? ねえ?」クル

男「エッ! あ、ハイ…俺は断れるような立場じゃ無いというか…」チ、チラ
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:35:52.30 ID:ZJk9iEXnO
女姉(断りなさいよ! このいくじなし! 二人で行きたいって言いなさいよ!)

男(睨まれてる…すっごい睨まれてるよ…)ドッドッドッ…

女「もーう、素直じゃないんだから。こんな参考書じゃなくて、ちゃーんと一緒に送別会って奴をやりましょ!」

ぐいっ

女姉「…貴女ねえ…!」

女「来て。お姉ちゃん」ボソ

女姉「…え?」


ブルル…ブルッ…


女姉(この子、震えてる?)

女「――お願い、来て…ください…」

女姉「……。バカね、本当に」ギュッ

男「? あのー…?」

女姉「良いわ。じゃあ行ってあげるけれど、必ず九時前には帰宅させる。姉では無く教師として付き添ってあげるわ」

女「来てくれるの?」パァァ

女姉「もちろん。そして貴方も、今回だけ私が急遽時間を作ってあげたのですから――」

女姉「――一人の男子生徒として、立派に最後まで突き通しなさい」

男「わ、わかってますとも! ええ、心からやり遂げるつもりです!」

女姉「……いくじなし」ボソッ

男「うッ」
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:36:37.04 ID:ZJk9iEXnO
女「? じゃあ早速行こうじゃない! どうする? カラオケでも行く?」ワクワク

男「そうだなぁ。そういや、前に点数負けしたままだったっけ」

女「ほほう。……上等ッ! 勝負ってワケね受けて立つわッ!」

女姉(…しょうがない子ね、まったく)

女姉(こうなれば仕方ない。ここは大人として、姉として、一人の女として)

女姉(影ながらフォローしてあげましょう。ふふん、任せなさい…)


〜ラブホテル・スタッフルーム〜


『明日の天気は晴れ、のちに雨が降るでしょう』

叔母「…おっと」ピク

叔母(もう九時か。今日は客がやけに少なくて暇だった)シュボッ

叔母(ん? そういえばまだ帰ってきてないような…)

フゥー…

叔母「………」チラ

叔母「まあチンすれば食べれる、と思う。多分」


『取りあえず卵焼きぐらいフツーに作ろうッス』
『きっとオトコもよろこぶですよ! キットキット!』


叔母「ハッ」

叔母(私も随分とほだされた。義姉さんにもそう言われても仕方ない)
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:37:34.17 ID:ZJk9iEXnO
叔母「……藪を突くな、か…」

prrrrrrrr

叔母「はい。もしもし?」ガチャ

『あ! 良かった叔母さんでしたか、男です! すみません!』

叔母「? 唐突に謝ってどうしたの?」

『こんな時間まで連絡無しだったので…』

叔母「いや構わないよ。高校生らしくて素晴らしいじゃないか」グリグリ

『そう、ですかね。えっと! それでですね、実は――』


『うぇぇぇ! せんぱぃー! わたひっ、わたしぃいいいい〜〜〜…っ!』


叔母「この声って…」

『お、落ち着いて下さい先せエムホォン! お姉さん! こんなところで騒いだらダメです!』

叔母「状況がよくわからないんだが…」

『じ、実はですね! 今はファミレスなんですが、店員の間違いでワインを飲んでしまって…!』

叔母「なにやってんだアイツは…」ガタリ

『あ! だ、大丈夫ですよ! 偶然にも受付さんが近くに居て、こっちでなんとかできますから!』

叔母「そ、そうなの?」

『ええ、なのでまだ少し帰るのが遅れるかも知れません。だからその後報告をしようと思って』

叔母「そっか。…気をつけるんだよ」
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:38:34.48 ID:ZJk9iEXnO
『…はい、その、ありがとうございます』

叔母「ん? 感謝することあった?」

『いえ、個人的に。…心配されるの、あんまり慣れてないんで』

叔母「……」

叔母「ちなみに気をつけてとは、酔っ払うと後輩はキス魔になるから気をつけて、という意味」


『お姉ちゃん大丈――ふむぐゅううううううううう!??!!』

『うわぁあああ!!?? と、止めてきます! じゃあまた後で! また!』ピッ


叔母「…まあ受付がいるらしいし、大丈夫か」

カタン

叔母「……」カパリ

叔母「もぐ、もぐもぐ…」



「……しょっぱ」
324 :全知全能の神未来を知る金髪王子様の須賀京太郎様 [二次元美少女達は金髪王子様の須賀京太郎様の嫁]:2017/03/22(水) 22:41:41.99 ID:U7QQlHW30
ようこそ恋ヶ崎女子DMM課金ランキング三位の主任ナナ様開発された夫に真嫁にNTRて離婚した説
325 :全知全能の神未来を知る金髪王子様の須賀京太郎様 [二次元美少女達は金髪王子様の須賀京太郎様の嫁]:2017/03/22(水) 22:48:47.30 ID:U7QQlHW30
ようこそ恋ヶ崎女子DMM課金ランキング三位体育祭の娘達バスケ選手の餌に成る不人気を押す運営は頭行かれてるDMMでカナリ儲けてるんだろ数億は儲けてるのにケチル人間嫌い
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/22(水) 22:49:36.82 ID:ZJk9iEXnO
【オマケ・ファミレス帰り】

受付「セイセイ。何をそこまで荒れる必要あるってんだい、先生や」

女姉「うぅうーっ…だってだって…妹ばっかりたのしそーな青春おくっててぇ〜…」エグエグ

受付「そっかー爆発しちゃったかー、うん。男くんはソッコー彼女の耳ふさいで」

男「えっ? あ、はい!」ササッ

女「?」

受付「ねえ先生? 貴女は超立派よ、多くの生徒を正しく教育していく職業に努めてる、心から尊敬しちゃうワ」

女姉「うん…」

受付「でも人間はずっと完璧で居続けるのはムリ。何処かでボロは出るし、たまにの息抜きは必ず必要なの」

女姉「つまり…?」グス

受付「飲み行こう! 貴女のグチ、その最後の最後の一滴残らず絞り聞き取ってあげる!」グッ

女姉「お、おおっ、受付さぁああ〜〜〜ん!!」ガバァッ

受付「ガハハ! まかせなさい! ドンときなさい!」


男(奢らせるんだろうなあ…)

女「ね、ねえ、ちょっと、もうっ、コラ! 離しなさいよ!」バシッ

男「ご、ごめん。えっと、何も聞こえてなかったよね?」

女「何も聞こえなかったわよ! ったく、お姉ちゃんどっかいっちゃったじゃない!」

男「そ、そうだね。じゃあもう良い時間だし、そろそろ俺らも…」

女「え? 帰るの?」

男「え?」

女「……。まだ、私は帰りたくない、ケド…」モジッ

男「………。え?」
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 22:51:43.72 ID:ZJk9iEXnO
第九話 終

残り三話よろしくお願いします ノシ
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/23(木) 04:25:33.32 ID:GRcLFK1NO
これは男は誰のルートにもいかないbadendか?
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/23(木) 09:09:19.61 ID:dpBFrvq70
おつ
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 00:08:34.50 ID:vMxy84eyO
男「………」

女「…ちょっと、黙ってないで何か喋りなさいよ」

男「いや、だって、あのさ本当に、来るつもり? 俺の部屋に、というかアソコに」スッ

女「……」ウッ

男「べ、別に今から帰りたいっていうのなら送るけど…」

女「…いくわよ」

男「えぇ〜…」

女「いくったら行くのよ!」

男「や、やけっぱちになってない?」

女「違う! てか、こんな時間に出歩いてたら補導されるし、都合がいい場所ったら貴方の家ぐらいしかないし!」

男(カラオケとかあるじゃん…漫喫でもいいし…でも流石にここは…)


【ラブホテル・スィートランド】


男(凄い、嫌な予感しかしない)

女「さっさと行くわよホラ!! 躊躇ってる方がなんだか恥ずかしいでしょうが!!」


ラブホテル・勝手口


男「こっちだよ。正面からはお客さんの邪魔になるから」

女「そうなの? な、なんだか普通っぽくなくてドキドキする…」ドキドキ
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 00:09:57.71 ID:vMxy84eyO
男(クラスメイトと一緒にラブホテル来てる時点で全然普通じゃないけど…)ガチャ

キィ…

女「暗いわね…」

男「普段は掃除道具入れに使ってる区間だしな」パタン

女「ふーん…」キョロキョロ

女「そういえば清掃さん? だっけ? あの人は今日は居ないの?」

男「ケル君は居ない。今日の担当は臨時の清掃員さんと、受付もバイトさんがやってる」


スタスタ


女「……ふーん、そなんだ」

男「うん」ガチャ

女「じゃ、誰も居ないのね。あたしが知ってる人、この建物内に」

男「うん? まあそうなるね、多分だけど」


女「だったら、二人っきりってワケだ。あたしたち」クル


男「えっ、あ、うん? そういったことになる、かな」

女「………」じぃー

男「な、なに? 急にどうしたっていうのさ?」

女「べつに」フィ
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 00:10:26.72 ID:vMxy84eyO
スタスタ


女(なんだ、じゃあ来た意味ないかも)フゥ

女(それとなく周りに人たちに、貴方の詳しい転校理由とか訊きたかったのに)


44号室


女「……」チョコン


女(この前、乗り込んだ時ちゃんと見れてなかったけど)チ、チラ

女(……うん、フツーにら、ラララ! ラブホテルじゃない…)

男「どうぞお茶です…」コトリ

女「あ、ありがとう」

男「で、一体なにをするつもりなんだ。俺の部屋でさ」

女「……………」

男「あ〜〜、うん。何も考えてないワケね…」

女「う、うるさいわね」キッ

男「せいせい。なら定番に卒業アルバムでも見る? この前の荷物整理で出てきたんだけど」

女「え! みるみる! 見たい見たい!」キラキラ

男(釣れた…受付さんのアドバイス通りだな…)


受付『もしクラスメイトを部屋に連れてきたら?』

受付『ハァン、んなの卒アル見せて、さっさとしっぽりいけば良し!』グッ
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 00:11:15.60 ID:vMxy84eyO
男(ようは捉えようなのだろう。間違ってはない、捉え方次第だ)

女「貴方はどこに写ってるの?」パラパラ

男「俺? あぁ、それならココかな」

女「ほぅ、……まったく変わってないわね、今と」

男「一年ぐらいで変わるほうがおかしいじゃないか」

女「そう? 学生なんて二週間あれば性格も変わるモンだけどね」

男「…そうなの?」

女「そうなの! んー、あたしが中学の頃に仲良かった娘が居たんだけど…」

女「夏休みは親戚のところで過ごすって聞いてて、まったく会えなかったのね」

男「う、うん」

女「それで二学期明け、その娘を教室で探したら───」

女「───親戚の人と駆け落ち同然で飛び出したって噂を聞いたの…」

男「えぇっ!?」

女「うん。当時はびっくりした、すぐに見つかってこっぴどく叱られて学校戻ってきたけどね」

男「信じて欲しい…俺はきっと外国に行っても、そんな無茶はしないと思う…」

女「もしなったら意地でも探し出しに向かうわよ、貴方の元へ」

男「よ、よろしく頼む。俺はノリで飛び出したものの、きっと近場の駅で蹲ってると思うから」

女「ヘタレ」

男「そこで文句言う? …まあ、言われ慣れてるよ。ヘタレなんて」
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 00:11:48.42 ID:vMxy84eyO
女「へぇ〜〜、誰に?」

男「母親。そんな人なんだ、はっきり物を息子にも言う人」スッ


コポコポ…


女「…突然の転校も、親のせい?」

男「うん? 母親じゃないよ、父親の方。外国に住んでて、こっちにこいってさ」

女「……。どっちにしろ親のせいなのね」

男「あー、まあ。そうなるね、うん」

女「文句いわないの?」

男「まさか。言ってどうするんだ、なにも変わらない。……きっと変わらない」

女「ヘタレ」

男「うーーーん、ヘタレって思う? だって親だよ? 育てられてる俺が言えるわけがないじゃんか」

女「言えるわよ。文句言わないほうが、もっと不自然」

女「……特に貴方みたいな人が言わないほうが、あたしには不思議でたまらない」

男「えっと、どういう意味?」

女「……あたしみたいなのと、フツーに接してられるじゃない」

男「根拠が不十分です」

女「ぐっ!! そっ、そーーいうところよ! あ、あたしが怒るってわかる癖にどうどうと言ってくるトコロ!!」ビシッビシッ

男「痛い痛い! 座布団で殴らないで!」
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 00:12:34.25 ID:vMxy84eyO
女「なによ! そんな貴方は素じゃないって言いたいワケ!?」ブンブン

男「い、いや全然普通にしてるつもりだけど…」サッサッ

女「じゃああ文句いいなさいよ!? 親にだって誰にだって面倒背負わせるなやめろ! って!」ガーッ

男「横暴過ぎる……」

女「横暴なのはどっちよ!? 急に転校させられて、それも外国で、まったく会話が成り立たない場所で!」

女「───そんなのあたしが、経験した以上につらいことじゃない……」スッ

男「……、」

女「やりたくないことなら、きっと子供だって言っていいのよ…絶対に…っ」

男「女さん…」

男「そうなると、俺も女さんと会話しなくていいことになる?」

女「あたしの立場そんな感じだったの!?」

男「いや、要点を捉えるとそうなるのかなと」

女「ここは要点じゃないでしょがぁああああ! 気持ちを! あたしの! 想いを察しなさいよおおお!!」

男「ひぃいいい!!」


ドッタンバッタン


男「だ、だって! 別にかまわないって言ったじゃないか! 転校しても構わないって!」

女「つ、強がりに決まってるじゃにゃい!! あたしが本当にそお言ってると思ってたの!?」

男「思ってたよ!!」

女「思うなアホぉーーーー!!!!」
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 00:13:24.30 ID:vMxy84eyO
男「……! 人ってのは正直に言われないと駄目なときもあるんだよ!」

女「にゃにおー!?」キッ

男「察し、察せ、こう思えなんて! …俺には高等技術過ぎる、出来ることなんてちっぽけだ!」バッ

男「俺はもう数日後には転校するんだよ! なのにっ、君の何を察せと言うんだ…!」

女「っ〜〜〜!!? 心配してるんじゃない!!」

男「……え?」

女「貴方が全然知らない場所に行って、誰も知り合いが居ない学校で、ちゃんと生きてられるのか…」

女「───貴方が! 全然気にしてないから、あたしは心配してんのよ! こっちは!!」

男「……俺が、気にしてないなら心配しなくていいじゃないか!!」

女「テ、テメー……乙女心なんもわかっちゃいないなんっとによォ…!?」

男「うるさいうるさい! 俺は君のペットかなにかか!? まったく余計なお世話だ!!」

女「………」しーん

男「……女さん?」


女「だァーーーー!!」ギシャー!

男「うわぁあああああ!?」


女「余計なお世話だとぉおお!? よく言ったその口よこせ! 真横に引き裂いてくれる!」ダダダダ

男「ひぃいいい!? な、なんだよ本当に!? 今日の女さんすっごく変なんだけど!?」ダダダダダ


───ドンドンドンドン!!!
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 00:14:44.39 ID:vMxy84eyO
男&女「っっっ!?」


女「…今の、なに…?」ドキドキ

男「と、隣の部屋からだ…騒ぎすぎてうるさかったのかもしれない…」


しーん


女「……ごめん、騒ぎすぎた。謝るわ、本当に」ストン

男「あ、うん…別にいいけど…」ストン

女「……」

男「……心配、してくれたの?」

女「す、するわよ。…一応、あたしでも心配してる…想像したら怖いじゃない…そんなの…」

女「…例え片親が居たとしても、見知らぬ土地に行くなんて、あたしだったら耐えられない…」

男「でも、俺は平気だよ?」

女「それ、それ【が】一番こわい」

男(それが一番…?)

女「貴方は今、そう思えてるかもしれない。今、だけはきっと大丈夫かもしれない」

女「でも、あっちじゃダメかもしれない。今まではよくても、これからはダメかもしれない」

女「……それを怖がってない貴方が、一番、怖い」ギュッ

男「…ごめん」

女「わかってないクセに謝るなっ!」
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 00:15:25.96 ID:vMxy84eyO
男「クス。君も随分と俺のこと、知ってるね。本当に」

女「あっ、あったりまえよ! ライバルよライバル! 腹立つコトぐらい分かってて当然よ!」

男「…うん、確かに。俺はなんとも楽観的だと思う」

女「そうよ……こ、こんな所に平然と住めてる時点で頭イッてるわよ……」

男「だね。実にそう思う」スッ

男「───文句か、考えたこともなかったな」

女「……」チラ

男「俺としては、親の言うことに従うのは普通のことだったからなぁ。凄く新鮮だ、うん」

女「…だから友達できないのよ」ぼそり

男「………………待ってくれ、なんだって?」

女「んでもない」ぷいっ


男「いや、なんでもなくない。なんだって?」ずいっ


女「ひゃい!? なっ、なによ急に顔を近づけて!?」

男「君は凄く聞き逃せないことをさらりと言ってのけた。なんだって? もう一度、頼む」

女「だっ、だから、えっ!? 今のもっかい、言うの…? その、友達が出来ないというか…」

男「………」

女「前から普通に喋ってるの、クラスであたしだけって思う、から…」

男「───………」ガク …ストン

女(膝から崩れ落ちた………)
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 00:16:34.92 ID:vMxy84eyO
男「なんたる…」

女「え、え、えっ? なに、あたし変なこといった…!?」

男「わかったよ。ああ、随分と深い衝撃を持ってして理解したよ…」スッ

男「俺は友達がいない!!!」カッ

女「し、知ってるけど」

男「…………」ヒョロロロ…

女「ちょっと! 気をしっかりもって!」ガシ

男「なんたる…」

女「もうそれいいから! なによ、一体急にどうしちゃったのよ…!?」

男「…不安になった、外国に行くことに」

女「今更!?」

男「今更だよ、凄く今更だ…! なにせ女さんが余計なこと言ってくれたお陰でね…!」クッ

女「わっ、悪かったわよ! でもわざとだと思ってたの! こっちは!」

男「わざと…!? どうして意識的に友達を作らないなどと思うんだ…!?」

女「……だってラブホテル住んでるし……」プイ

男「じゃあ外国だったら友達作れるかな!?」パァアア

女「え? いや、それは……」

男「え……なにその顔……」

女「ごめん! あたし咄嗟に嘘つけなくてごめん!」
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 00:17:15.41 ID:vMxy84eyO
男「なんて酷い事実を突きつけるんだ女さんは……」シクシク

女「とっくの昔から突きつけてるつもりだったけど!?」

男「友達…友達できるかな…俺…」

女「な、なによ…そんなことで自信なくしちゃうわけ…?」

男「失くすよ…知ってる通り、俺は友達が居ないんだ…一人も居ない…これから先も一人も居ない…」

女「…あたしは?」

男「ライバルだろ…?」

女「ぐっっ…! た、確かに! あたしが言ってたわ…!」

男「ライバルか…そうか、ライバル…あっちで沢山のライバルを作ることは可能性として…」ハッ

女「待って。あっちじゃ、ライバルのランク桁違いだとあたしは思う。命、危ないと思う」

男「命かけて出来るならやってみせようじゃないか…!」

女「トモダチでしょ!? 貴方が作りたいのはッ!」

男「……女さん、文通しよ?」

女「逃げるな逃げるな、こっちに」

男「話題作り大変なら…電話でもいいし…」

女「えぇいっ! なよなよすなっ!」ブゥーン!

男「うぐっ」ドタリ

女「みっともない! みみっちい! ダチの一人ぐらい己一人努力でつくれ!」

男「……無理だよッッ!!」
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 00:17:56.18 ID:vMxy84eyO
女「な、情けないことを堂々と…!」

男「俺には無理だ…きっと…無理なんだ…」

女(急にどうしちゃったってのよ…?)

プルルルルル

女「で、電話? ほら、貴方の携帯鳴ってるわよ…?」

男「……………」

女「今の時間帯にでないと、心配されるんじゃ…」

男「……出てくれ、すぐに出られる状態に戻すから」

女「あたしが!? あんたほんっとに突然にウザったくなったわね!?」

ピッ

女「もしもしっ?」

『──Why!? なにゆえボスがオトコの電話でる?』

女「この声……け、ケルケルさん?」

『イエスマム! ケルケルだよ〜! …あ! しっぽり中?』

女「違うわよアホ!!」

『ケラケラ! うんうん、ジョーダンだヨ! 近くオトコいる?』

女「い、居るけど…その…」

『ウン?』

男「…………」ズーン
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 00:18:36.23 ID:vMxy84eyO
女「出られる状態じゃない、っていうか…」

『ジョータイ? 変なの、でも残念、お別れ会の予定言おう思ったのに』

女「お別れ会? 男のやつの?」

『イエス! 今度にownerとfoxeyとケルケルで、パーティするから!』

女「……それ、あたしも行っていい?」

『ボスも? 全然オッケー! きてきて! カモーンだよ!』ケラケラ

女「ありがと」

『いいのいいの。オトコは三人で良いって言うけど、沢山いたほうが楽しいよね!』

女「…うん」

女(誘ってくれてもいいのに、本当に冷たい奴。…じゃないのかな、それが普通だって思わなかっただけ?)チラ

女(変な奴。堂々とあたし話しかけるくせに、こんなトコロ住んでくる癖に、まるで…)

女(人から優しくされるのに慣れてない、みたいな……)

『ボスー? どしたのー?』

女「あ…なんでも…!」

男「…変わって、調子戻ったから」

女「あっ! うん、はい…!」バッ

男「もしもし? ケル君? はぁ…ぐすっ…はぁ…はぁ…」

『オトコ?』

男「うっ…うん、大丈夫、さっきまで調子が良くなくて…うん…ふぅ…」ズビビ
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 00:19:30.04 ID:vMxy84eyO
『ウ、ウン、オトコ無理しなくても別に…』

男「無理? 無理なんてしてないよ、全然!」

女「あっ! ちょっと(鼻水)垂れてきてるわよ…!」

『垂れて?』

男「い、いや別に!? 大丈夫大丈夫! なんにもないから」ゴシゴシ

女「ぎゃー! えんがちょね! ちゃんとテイッシュ使いなさいよもう!」シュッシュッ

『ソ、ソウネ…そういうのはちゃんと…』

男「平気だって! …なにやってるんだ、あっちに聞こえちゃうだろ…!」

女「貴方がばっちいことするからでしょ! 電話してて、やってあげるから…!」スッ

『…アノー…?』

男「や、やめっ…! ぐぁーーー!?」ズボァッ

女「あ! ご、ごめ…! (鼻に指)入っちゃった…! しかも(ティッシュ)無しで…!」

『えっ!!?』

男「うぐっ、ちょっと、早く抜いてくれ…! 痛い! キツイ!!」

女「ばっ、だったら動かないでよ! こっちだってそんな、んっ! あぁあっ…!?」

『…オ、オトコ……ボス……?』

男「どうしてガサツなのに無茶をするんだ…!? 無理に抜こうとすると、うっ!? あっ!?」

女「ガサツ!? よく言ったわねこの泣き虫! さっき情けなく崩れ落ちたの忘れてないんだから!」

『……technician…』
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 00:20:12.54 ID:vMxy84eyO
男「はががっ!? ぐぅううう!」

女「こうなったら(鼻の)形が変わるまでグリグリしちゃる! ……きゃっ!」

『………ちょ、ちょとボク、用事思い出したノデ、ソロソロ……』

男「あぐっ! おわぁっ!? へっ、へぁ…くっしょん!」

女「……よ、よくも顔にぶっかけてくれたわね……!」

『…bukkake…』

男「ずびび、いやいやいや! だって、ぐりぐりするほうが悪いだろう!?」

女「うるさいうるさい! ほら、責任持って拭きなさいよ! ほらほら!」

男「うぅ…なんでこんな目に…」

女「こっちのセリフよ…!」



『あ、アハハ、うん、ケルケル知ってるよ! これもきっとカンチガイってやつで…』

───ドンドンドンドン!!

『……ウン?』



男「…あ、また叩かれてしまった…」

女「うひっ! なんでここ壁が薄いのよ…! ラブホなんでしょう…!?」

男「いや、改装工事したらしいんだけど、44号室だけはやってないらしくて…」


『…アワワワ…』
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 00:20:58.10 ID:vMxy84eyO
女「そ、そうなの? じゃあはじめに言ってよ…」

『ふ、フツーなら怒られないケド…一体どんなプレイしてたの…?』

男「普段、俺は大きな声なんて出さないしね……さっきの女さんみたいに」

『そこ見栄はっちゃうオトコ!?』

女「あぁん!? 貴方の声も相当大きかったわよあんぽんたん!?」

『そ、そういうピロー……トーク、は後々に…』

男「そりゃそうだろう! 女さん、なんだか普段とは全然違う感じだったし!」

『どっちも良かったんだね! 盛り上がったんだね!』

女「それは!! だ、だって…心配だったし…」

『え、ボスはハジメテ…だったの? だったらオトコちゃんとリードしてあげた…?』

男「……俺はそんなの気にしない」

『キチク! オニ! オトコ見損なった!』

女「でも本当は、ちゃんと出来るか心配してたじゃない!!」

『……だよねッ!! オトコほんと紳士だもん! 知ってるケルケル知ってる! 素直じゃないだけ!』

男「だって…初めて、なんだよ…」

『…え…?』

男「俺は今まで誰一人とも、出来たことがないんだ…」

『オトコ……そっか、初めてで浮かれてた…わかるよ、ケルケルそのキモチ…』

男「──友達をどう作れるかって!!」

『セッ……セフ、セッ…クス…フレンド!?』
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 00:21:59.52 ID:vMxy84eyO
女「なによ…それ…」

『アワワワ…! お、怒るよゼッタイ! なんてこと言うの…!?』

女「──だったらあたしがなってやるわよ、友達に!」

『エェェエエエ!!?!!?』

男「えっ!? なんで、だって女さんは友達だなんて…」

『チョ、マッテ、リカイ、ケルケル追いついて…ッ』

男「き、キスもしてくれなかったのに…」

『ンンーーーーー!?』

女「そりゃもう忘れろ! いつまで引きずってんのよ!」

『オッホホホォーーーウ!?!!?』

男「う、うん…」

女「いい? 友達なんてぱっぱと作れる、心配するだけ意味がなし!」

男「…そうなの?」

女「そうなの! 万国共通よ!」


『』サラサラサラ…


男「………」コクリ

女「良いわ。そんなに心配なら、文通だって電話だってしてあげる」

女「──その代わり、ぜっっったいにあっちで友達つくりなさい。死ぬ気で、頑張りなさい」

女「友達の、このあたしが! 応援してあげるから!」
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 00:28:20.52 ID:vMxy84eyO
後日 朝方 女家


女「……」ズゥウウーン

女姉「朝からなんなの? その顔は」

女「余計なこと……言っちゃったなって、あたし……」ハハ…

女姉「余計なこと?」コトリ

女「…………、引き止めるつもりが応援しちゃった……」

女姉「…」ぽかーん

女姉「引き、止めたの? 貴女が?」

女「…うん…頑張ってあっちで友達作れ馬鹿って、言っちゃった…」

女姉「ま、まあ、今更止められても、彼の方も困るだろうし、良いと思うけれど」

女「…………」

女姉「…まだなにかあるの?」ズズッ

女「その場の勢い、っていうか。ノリで言っちゃった、というか」

女姉「うんうん」コクコク

女「………あたしが、一番最初の友だちになっちゃる、いっちゃった」

女姉「ぶふっ! ……あっ、ごめっ、今の笑ったわけじゃなく、」

女「………」ズーン

女姉「ちょっと聞いてる!? ねえ!?」
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 00:39:19.62 ID:vMxy84eyO
ラブホテル 今朝 スタッフルーム前


男(友達……応援までされたんだ、ちゃんと、頑張ろうじゃないか)

清掃「…ぁ…」ビクッ

男「あ。おはよう、ケル君。……昨日はごめんね、勝手に電話切れちゃって」

清掃「ウン…ベツ…イイケド…」フィ

男「それで昨日の電話ってなんだったの?」

清掃「………」じぃー

男「?」

清掃「…フォクシィーに訊いて、ケルケル、わかんないから」スタスタ

男「あ、うん……」

男(調子悪いのかな? …待てよ、そうだ、まずはケル君と…)

男「ケル君」

清掃「…ナニ?」じとー

男「その、あのさ…」テレテレ

清掃「………」

男「…俺たち、友達だよね?」

清掃「………………」ズキン

男「……………?」

清掃「トモダチなれば…オトコと今まで通り喋れるかな…?」ボロボロボロ

男「えぇっ!? なんで泣いちゃうの!? えっ!?」


【すごい追い詰めてたことを、改めて知って、心底謝りました】
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/13(土) 00:39:51.99 ID:vMxy84eyO
第十話 終

今日中に現れますノシ
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 22:48:08.55 ID:DNFeLLI1O
44号室

受付「ねーねー男くーん」パラリ

男「なんですかー?」ジュージュー

受付「前から気になってたんだけどさーこの際だから訊いちゃうけど〜」ペラリ

男「なんです?」チラ

受付「オーナーのこと、性的な目で見過ぎじゃない?」

男「…………」ガチン


ジュゥウウウ


男「…何故、そう思うのか根拠を述べて欲しいのですが…」

受付「ん? だってホラ、あの人って年がら年中タンクトップでしょ」

受付「だからココがね、ぼんって、服越しにどぉぼおんっ! って見えるじゃない?」

男「ま、まあ…確かにそうですけど…」

受付「見てるよね、それ。めちゃエロい目で」

男「見てません」

受付「見てるよ?」

男「断言しない! その根拠を言って!」

受付「オーナーから相談されたから」

男「…ぉぉぉぅ…!」
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 22:48:35.61 ID:DNFeLLI1O
受付「ま。わからんでもないよ、厳しいよね。年頃の男子じゃ、あの格好は」ケラケラ

男「そ、それでなんと言ってたんですか叔母さんは…?」

受付「んー? そういやなんて言ってたっけ…?」

男「…役立たず…」ボソリ

受付「サラッと暴言吐いたね、キミ」

男「と、というか、以前に俺言われましたから。叔母さんから直接、見すぎてるって」フィ

受付「なんと! そこでキミはどういう言い訳を?」

男「ラブホテルに住まわせてる人のセリフじゃない」カチャカチャ

受付「至極まっとうな切り返しだ…」

男「とにかく、俺の視線がどうであれ…あれから気にしてるんで…」

受付「そっかそっか。なら余計な心配だったね、ごめんごめん」ゴロロー

男「ええ、その通りです」ジュワワ…

受付「…いい匂い、卵焼き? オムライス?」

男「ビーフストロガノフ、オムライスです」チラ

受付「うへへ。凝った料理、お姉さん大好きだよ〜」ぺしっぺしっ

男「脛叩かない。床に転がらない。掃除してますけど、この周り油飛び散ってて汚いですよ」

受付「ウチの部屋より綺麗だよ〜」

男「……。それより、俺の方も前から言わせて貰いたいことあるんですが」

受付「あん?」

男「アンタの格好も相当露出度高いっすから」
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 22:49:10.25 ID:DNFeLLI1O
受付「へ? そお?」(キャミ&ショートパンツ)

男「ええ、酷すぎますよね」

受付「どこらへんが? ここ? どこ?」キョロキョロ

男「全部だよ」

受付「ん〜〜〜? でも、別にお姉さん相手じゃ欲情しないデショ?」

男「なんで基準が俺の価値観!? もっと自主性を持って!」

受付「キミが気にしないなら、あたしゃラフな格好で居たいよ。もう裸でも構わないし」ぺしぺし

男「女性としてどうなのか、と問うているんですけど。あと、邪魔です」

受付「じゃあウチを女として目覚めさせろよ!!」

男「なんでキレるんですか、そこで…」ドンヨリ

受付「やだやだー! お姉さんもいっぱしなオナゴとして認められたい〜チヤホヤっとされたい〜」バタバタ

男「わかりました」ジュゥウウ

受付「ほんとにっ?」キラキラ

男「じゃあ、受付さんの分だけ肉多めにしますよ」

受付「小学生かッ! でもありがと!」

男「……受付さん。俺、もう明後日には居なくなるんですよ。大丈夫なんですか」

受付「大丈夫とは?」

男「全部」

受付「さっきから一括りだねキミ! でぇーじょうぶだよ、ウチはよぉ」

男「…そう、ですか」
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