キスショット「これも、また、戯言か」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/20(金) 23:52:35.16 ID:ntvrM9VEo

「詳しくは企業秘密だけど……フィールドは僕が整えてあげよう。そして阿良々木くんが、

彼らからハートアンダーブレードの手足を取り戻す。無事に両腕両足を取り戻せば――

ハートアンダーブレードはパワーを回復できて、そうすれば阿良々木くんは無事に人間に

戻れるというわけだ」

「取り戻す――ね」

 やっぱりというかなんというか、難しいところは、直接的なところは、ぼくが担当する

ことになるようだった。

 ドラマツルギー、エピソード、ギロチンカッター。

 大剣二本に、十字架に、そして得体の知れない謎の男。

 キスショットはやたらにぼくに期待をかけてくるが、実際のところ、たとえ一対一だった

ところで、ぼくが三人のうちの誰か一人にも勝てるヴィジョンなんて、まるで思い浮かばな

いのだけれど――

「でも、やるしかないんだよなあ」

 勝てない相手に、勝つ算段を。

 そう考えれば、今回もまた、と言う感じだ。いつも通りの平常運転。吸血鬼になった程度

ではぼくの状況は大して変わらないらしい。
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/20(金) 23:53:09.20 ID:ntvrM9VEo

「おい、従僕」

 キスショットが――ぼくに言った。

「なんだい? キスショット」

「儂は人間の貨幣は用意できん――二百万円という借金がどの程度の物なのかもよくわか

らんが、その金額をうぬは背負うことができるか?」

「……額は、まあ、問題ない」

 だから、あとは、結局。

 信じるか、否か。
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/20(金) 23:54:13.31 ID:ntvrM9VEo

「心配するな。この小僧のスキルは本物じゃ――ここを教えられたとか、うぬが救われた

とか、そういうことを度外視してもな。いかに弱体化しても、それくらいのことは今の儂

でもわかる」

「でも、だからと言って、信じていいものか――」

「敵ではないよ。あの三人の攻撃を受け止めたのじゃろう? それほどの実力者ならば、
                 クビ
本気を出せば、今すぐこの場で儂らを縊り殺すことくらい容易じゃろうて」

「……それも、そうか」

 通りすがりの、おっさん。怪し過ぎる、アロハ服。その口調は誠実と言うよりかはこちら

寄り、詐欺師とか、戯言遣いとか、そう言うのに近い。

 でも、敵ではないというのなら騙されたところで、問題はない。ここは、騙されたと思っ
て、

というやつで行こう。

「いやそれ十中八九騙されるやつじゃろ……無駄なフラグを立てるでないわ」

 そんなキスショットのツッコミを聞き流して、ぼくは「お願いします」と、忍野さんに頭を

下げた。
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/20(金) 23:56:46.30 ID:ntvrM9VEo

「ある時払いの催促なし、保証人も担保も金利もなし。死後遺族に請求はいかないのでしたよね?」

「いやそこまでは言ってないのだけれど、まあ、それでいいか――まいどあり〜なんつって」

 忍野は的外れなくらい気楽そうな調子で言った。

「ぼくも今日から、ここで寝泊まりすることにするから。よろしくね。というか、もともと僕は、この町に来

て以来、この場所には目をつけていたんだよね。義を見てせざるは勇無きなりと、ハートアンダーブレ

ードに譲ったけれど、やっぱこの町にここ以上の廃墟はなかったや。とりあえず、どうする? 明日か

らの前途に対して気合を入れるために、円陣でも組んでみよっか」

 寝転がったまま、最高に気合のない姿勢でそんなことを言う忍野。勿論、ぼくもキスショットも、そんな

言葉に乗っかったりはしなかった。

 時刻はまたも零時を過ぎ、日付は三月二十九日へと変わっている。

 明日といえば――既に今日は明日なのであった。


鉄血編――了。
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 23:59:17.21 ID:ntvrM9VEo
そんなわけでひとまず書き溜め分は終わり。
あとはちまちま一章ずつ更新していけたらいいなと思います(願望)

熱血編、どうなるんですかね。
せめて四回見に行って飽きない程度のクォリティであってほしいです。
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/21(土) 04:30:48.82 ID:IKO1QtLIo
おつおつ
前作教えてほしー
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/05/21(土) 16:37:43.49 ID:oJAdCKWrO


>>188
前に書いてたシリーズについては>>1が黒歴史にしようか迷ってるみたいだし直接は言えないがとりあえずヒロインズの名前+戯言で検索してみれば幸せになれるかも?(無責任)
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/22(日) 12:17:11.34 ID:8oUrLf/qo
はぁああああん?
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/18(土) 00:08:28.07 ID:pfPTND2DO
続きはまだかいな
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/20(月) 00:57:08.26 ID:idw9AFlEo
>>1です。気がつけば一月経ってしまいましたね。ごめんなさい。

このペースで書き直すなんて無理だと悟ったので前に書いたもののリンク貼っておきます。
ひたぎ「これも、また、戯言よね」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1311/13119/1311985423.html
ただ書いているうちに設定が変わってるところもあるので(実は最初は居候じゃなくて一人暮らしの設定だったり)そこら辺は目をつぶっていただきたいです。私の目も潰したいですはい。
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/19(火) 19:06:00.72 ID:3gEjSX14O
ほしゅ
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/24(日) 21:48:52.98 ID:b1ybKeUhO
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/06(土) 13:32:36.78 ID:UugLJ4ZL0
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/12(金) 22:23:14.89 ID:eal7QMDd0
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/20(土) 00:06:11.00 ID:GrYSg2Iro

007


「ところで、『柔よく剛を制す』という言葉がぼくの国にあるんだけど、知ってる?」

「いや、『ぼくの国に』って、お前と僕は同郷だろうが」

「で、知ってる?」

「……知ってるよ。だいたい小学生くらいには習う、簡単なことわざだ。日本人で知らない

やつは、まあ、いないだろうよ。で、唐突にどうしたんだよ。またぞろ僕を馬鹿にしようっ

て魂胆か?」

「よせよ。その言い方だと普段からぼくがきみをバカにしているみたいじゃないか。ぼくの

イメージを害するな」

「基本的にお前の存在は害だろうが……僕も人のことは言えないけど……いや、罵り合いは

もうやめよう。なんだか悲しくなってきた。うん。で、またどうしたんだ?」

「いやさ、このことわざ、どうにもおかしいと思わないか?」

「? いや、特に変なところもないだろう。まさにその通りだと思うぜ? ドラゴンボールとか

でも言ってたじゃないか。パワーだけ膨らましても勝てないってさ」
  exactly
「その通り。たしかに力だけでは勝つことは出来ない。ただ、じゃあ技だけなら勝てるかと

言ったら、そういうものでもないだろ? たとえば、お前と真心が戦ったとする」

「嫌な『たとえば』だな。たぶん僕、肉片も残らないぜ?」

「さすがに真心もそれくらいは手加減してくれるだろ……とにかく、頭の良いお前と、圧倒

的な力を持った真心、どっちが勝つかと言ったら、そりゃあ真心だろ?」

「いや、そりゃあそうなんだが、だからと言って技術は大切だろ。というか真心は規格外だろ。

あいつは力もそうだが技術もある」

「そう、そこなんだ。真心は力も技術もある。ぼくらが策を練ろうとかないっこない。で、

問題はさ、真心は規格外と言ったが、じゃあこれは真心にだけ言えることなのか?」

「……いや、そうだな。真心だけってわけでもないか。力あるやつは大抵、力の出し方、使

い方を知っている。つまりは技術を持っているってことだ」

「それに経験もある。そこまでの強さにたどり着くまでにおよそ数え切れないほどの鍛錬や

戦闘を繰り広げてきたことを考えると、力の無いものが使ってくるような策なんて、そいつ

の中ではもう対処法が確立されているだろうさ」

「柔よく剛を制すと言うよりは剛は柔を兼ねるって感じか……しかし、あれだな」

「ん?」

「夢も希望もない話だなって思って。ようは、強い者に弱い者は勝てないってことだろ?

これ」

「まあでも当然のことなんじゃないのか? 熱心に自分を磨き続けてきた強者からしたら、

弱者のその場限りの小賢しい思いつきに負けるなんて、それこそ報われない話だ」

「じゃあ、僕ら弱者は、強者ともし相対することになったら、どうするべきなんだ?」

「そりゃあもう勝負しないことだね。とにかく戦ってはいけない。誤魔化すとか、説得する

とか降参するとか、その場から逃げるとか」

「戯言を使う、か。じゃあもし言葉が通じず、逃げ道がなかったら? 諦めて死ねってか?」

「そうだな。……強いフリをするしかないんじゃないか? で、相手が降りるのを待つ」

「……いや、ポーカーかなにかやってるんじゃないんだからさ」

 彼は苦笑した。
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/20(土) 00:07:09.43 ID:GrYSg2Iro
 その後人生とポーカーの違いについてとか、トランプが作られた経緯についてとか色々話した

けど、まあここから先は今回の話には関わらないので割愛して。

 唐突な回想になんの意味があったかというと、これが今回のぼくの基本方針である。

 強いフリをする。

 退治できなさそうに見せかけて、相手に降りてもらうのを待つ。

 殺し合い、というのならこんな案は通らない。馬鹿な男二人の机上の空論。それこそポーカー

くらいでしか通用しそうにない策だ。

 しかし、この状況では効果はあるだろうと思う。こちらは必死の命の取り合いではあるが、向こ

うからしてみれば、これはゲームのようなものなのだから。
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/20(土) 00:08:03.74 ID:GrYSg2Iro

「話はついたよ」

 交渉から帰ってきた忍野は、なんでもないことのように、仕事が成功したことを告げた。「庭先で

猫が寝てたよ」くらいな気軽さでの報告に、拍子抜けというか、身構えていた分脱力したというか

なんというか……。
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/20(土) 00:11:24.07 ID:GrYSg2Iro

「日付は明日。三月三十一日。時刻は深夜。場所は阿良々木くんがこれから通うらしい、

私立直江津高校に決まった」

「……」

「ルール説明に移ろう。ルールは単純。戦って、勝った方が報酬を得る。きみが勝った場合は

ハートアンダーブレードの手足の場所を彼らから聞き出せ、奴らが勝った場合は、きみは

この場所を教える。あとはまあ、基本的に何でもありだ」

「……」

「初戦の相手はドラマツルギーだってさ。次はだれになるかはわからないけど、連戦にはならない。

日を改めての対戦となるからそこは安心していいよ……ところで、さっきから黙りこくっちゃってるけど、

なにか不満かい?」
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/20(土) 00:12:33.64 ID:GrYSg2Iro

「いえ、この街で、化け物同士が戦えるくらい広くて、ぼくが場所を知ってるのはそこくらい

しかない。そこはベストな場所です……加えて、相手から場所を聞き出すというルール

ならば殺される心配はなく、戦闘に不慣れな一般人のぼくへのハンディキャップとなる。

考え得る限り、最高の条件です」

「にしては、かなり不満そうな顔をしているけど?」

「…………ただ」

 あまりにも、できすぎだ。

 ここまでとんとん拍子で話が運ぶと、むしろ不安になってしまう……。
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/20(土) 00:13:58.01 ID:GrYSg2Iro

「ほんと心配性だね、きみは。ネガティブというかなんというか。せっかく梶裕貴みたいな

いい声してるんだから自信をもったらいいのに」

「いや、声質と性分とに何の関係が……」

 というか個人名を出すんじゃない。もし発売までに変わってしまったり、そもそも間違って

いたらどうするんだ。

「そんときはそんときさ。声優の変更ってのは結構あることだからね。体調の問題だったり、

ドラマCDかゲームかアニメかVOMICかで変わってくる場合もあるし」

 最後のをなぜか強調する忍野。気にしないことにしよう。
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/20(土) 00:15:25.31 ID:GrYSg2Iro

「しかし、まさかこんなに早く交渉が終わるとは思ってもいませんでした」

 場合によっては戦闘に入る前に直江津高校始業、つまり月火ちゃんのタイムリミットを

迎えるのではないかと思い、どうにか丸め込めないかと言い訳を考えていたのだが、無駄に

終わったみたいだ。いや、実践に移すことがなくてよかった。あいつの妹を騙すのは心苦しいし。
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/20(土) 00:16:25.03 ID:GrYSg2Iro

「まあ、ちょっとカッコつけてみたけれど、正直言うと結構大変だったんだけどね。特に

ギロチンカッター。最終的に全部片付くって言ってんだからそこまで目くじら立てること――」

「……?」

 全部、片付く?

「――失言。まあ、でもどうせ阿良々木くんだしすぐ忘れるか。大丈夫大丈夫」

「いや、そういうこと言われるとなんか気になるんですが……」

 これ、何かの伏線なのか?

「その時になれば気づくさ。別に覚えている必要はない。というか深く考えない方がいいよ。

考えすぎて鈍れば、きみか僕がギロチンカッターに殺されることになってしまう」

「だから、言われると余計気になってしまうんですが……」

 ぼくはわかるけど、忍野が?
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/20(土) 00:20:49.03 ID:GrYSg2Iro

 そんな色々気になることを言ってくる忍野に振り回され、会話後もなんだか気になってしまい、

答えが出るはずもないのに忍野の言葉の真意を考えていると、あっという間に時間は経ち、

丸一日が経過。三月三十一日となっていた。

 ……あえて無駄に意味深なことを言い考えさせることで、戦闘前に不安になったり、緊張するのを

防いでくれたのだと思おう。結局ドラマツルギーへの対策は何も思い浮かんでないけれど、

あれこれ下手に考えてしまうよりはいいんだろう。そうだ。これから戦うのだ。精神は落ち着けておかねば。
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/20(土) 00:23:25.87 ID:GrYSg2Iro

「そう苛立つでないわ。まったく、我が従僕がそのような移ろいやすいメンタルでは困るぞ」

 いや、ほんと、オコッテナイデスヨ?

「というか、キスショットだっていつも怒ってるじゃないか」

「たわけ。儂が怒ったことなどこの五百年で一度もないわ」

 …………また堂々とした嘘を吐くなこいつは。

「嘘の吐き方でうぬになにがしか言われとうないんじゃが……」

 キスショットのボヤキは無視して、戦いに意識を向ける。向けよう。向けないと。

 基本方針を思い出す。

 まっとうに戦って勝てないのなら、

 相手をおりさせろ。

 こちらが強者だと、

 信じ込ませるのだ。
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/20(土) 00:34:02.18 ID:GrYSg2Iro

「――ふう」

 時刻を確認。午後十時。

 まだ、時間はあるな。

「ドラマツルギー、か」

 あの三人の中では、一番の巨漢。両手を大剣へと変える、同属殺しの吸血鬼――。

「いや、さっそく基本方針が利かなそうな相手じゃん……」

 まず体格からして違うもんなあ……。同属だしびびらせるもなにもない。

 それにあの冷静な態度。真面目そうだから揺さぶれば騙すことはできそうだが、揺れるのか?

あの人。あの鬼。

 今一度ルールを考えてみる。

 殺してしまうと、相手の隠し場所、隠れ場所がわからない。よって殺害は禁止。

 ぼくではあの三人を殺せるとは思えない。つまりは、向こうは手加減した状態で、こちらは

文字通りの死に物狂いで戦いに臨める。

 プロのヴァンパイアハンター相手に、なりたての弱っちい吸血鬼。

 すこしでも知っている場所に、そして大きなハンディキャップ。

 忍野は本当に、最高のルールを敷いてくれたと思う。

 そこまでのお膳立てがあってもまだ、ぼくがドラマツルギーと五分とはとても思えないんだけど……。

209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/20(土) 00:35:42.71 ID:GrYSg2Iro

「なあ、キスショット、その、勝つためのアドバイスとか、そういうのないの?」

 軽く投げやりに質問する。なんとなく、どんな答えが返ってくるかわかる。そう、こいつは

きっと――

「アドバイス……といってものう……戦うじゃろ? 勝つじゃろ? 終わりじゃろ」

「……うん、まあ、そんなこったろうと思った」

 やっぱりというかなんというか、キスショットはぼくが負けるなどと微塵にも思ってないらしかった。

「いくらなんでも買いかぶりすぎだろうが……」

 どうすれば他者にそこまで信頼を寄せられるのだろうか。

 戦い方の前にそれを教わった方がいいかもしれない。
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/20(土) 00:39:27.52 ID:GrYSg2Iro

「むう。まだわかってないようじゃな。うぬは」

 憶えの悪い従僕に腹を立てたのか、キスショットはほほを膨らませながら言って、

ぼくの手を取り、それを自身の胸へと当てた。

 またかよ。

「あの、キスショット様? もうそれは勘弁を――」

 「うぬは」キスショットが、ぼくの言を遮るように、言う。
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/20(土) 00:41:39.37 ID:GrYSg2Iro

「うぬは、儂の眷属じゃ。この、鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼、キスショット・アセ

ロラオリオン・ハートアンダーブレードの眷属じゃ。うぬが負けるわけなどない。うぬが

勝てぬ相手などいない。うぬが諦めることはない。」

 キスショットは、強い口調で続ける。

「うぬが自信をもてぬというのなら、儂を信じよ。儂は、儂自身の吸血鬼としての力を信じ

ておる。うぬを見定めたこの眼を信じておる。じゃから、うぬも信じろ。眷属として、従僕として、

主を信じろ」

「…………」

 他者への信頼、ではない。

 絶対の自信。

 五百年生きた伝説の吸血鬼の、確固たる自己。

 なるほど。たしかにアドバイスなんて必要ない。ぼくが悩む必要はない。

 これは、キスショットの戦いなのだ。ぼくは、ただそれを為すだけの力。道具。

 文字通りの、手足。

 そう思うと、ほんの少しだけど、気楽になった。
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/20(土) 00:42:30.29 ID:GrYSg2Iro

「…………死にかけてボロボロ泣いてたくせに」

「うん? 何か言ったかのう?」

 キスショットがぼくの腕を動かす。やめろ。それじゃあぼくの手の動きを抑えてるかの

ようじゃないか。絵面が大変よろしくない。

 キスショットの手を振り払い、立ち上がる。

 まだ時間はあるけど、これ以上セクハラされてはかなわない。
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/20(土) 00:43:13.86 ID:GrYSg2Iro

「確認するぞ。うぬがやることは?」

「戦うだろ? 勝つだろ? それで終わりだ」

「上出来」

 かかっ、とキスショットは笑った。

 教室を出ようとして、「行ってらっしゃい」と、声が聞こえた。

 ああ、そう言えば、眷属は、家族みたいなものなのだっけ?

 「行ってきます」と、ぼくは答える。

 「ただいま」と言えたらいいなと、らしくもなく、そんなことを思った。

214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/20(土) 00:47:13.24 ID:GrYSg2Iro
今夜はここまでです。
保守してくださった方々、本当にありがとうございます(2ヶ月は覚えてたけど1ヶ月は完全に忘れてました)。
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/20(土) 08:52:26.64 ID:0DF98tvB0
更新来てたのか。乙
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/20(土) 15:27:56.64 ID:qU2l+EkDO
乙!

自覚はないけど地力で上回ってる相手に戯言をどう使うか……
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/21(水) 00:33:58.03 ID:C8UltgswO
保守
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/20(木) 23:54:41.52 ID:+aq35APCo
>>1です。ちょっと展開に悩んでしまったせいでなかなか書くことができなくなってしまっていました。
生きてます。続き書く気はあります。ごめんなさい。
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/21(金) 20:23:48.14 ID:EYOLwxcOO
生存報告乙
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/21(金) 21:03:07.19 ID:WKb3eRLho
 
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/26(水) 01:16:19.56 ID:m5HRsdcr0
映画か
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/27(日) 02:05:21.47 ID:JCAAMKfBo
ほしゅ
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:22:05.87 ID:znhwGlXXo

008

 教室を出ようとしたその瞬間「あ、おい、ちょっと待て」と、キスショットがぼくを引き止める。

「アドバイス、そういえば一つだけあったわ」

「ええ…………」

 あんないろいろカッコいいこと言ってたのに……。

 完全に戦いに行く気でいたのに……。

 章ももうまたいだというのに…………。

「まあ大丈夫じゃろうとは思うんじゃが、念のためにと思ってな。まあまあ聞いていけ」

「はあ。で、アドバイスって何?」

 あんなに言っていたキスショットが、わざわざ言ってくるようなこととは?

「いや、本当に大したことではないのじゃ。ドラマツルギーは立場的にそんな戦法は取らん

じゃろうし、まあ、そのような状況になることもないじゃろう」

 買いかぶり、ではなかった。キスショットがそう言うのだ。キスショットの力を普通に

使えば、そうなることはないのだろう。
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:23:10.91 ID:znhwGlXXo

「で、その戦法というやつは?」

「簡単なことじゃよ。血を吸われぬことじゃ。吸血鬼が吸血鬼に血を吸われると、存在その

ものを絞りつくされてしまうからのう」

「…………」

「…………」

「……え? 終わり?」

「うん、終わり。これだけ」

「ええええ……………………」

 なんだそのアドバイスは……血を吸われるまで接近を許した時点でもうほぼ負けなんじゃないか?

 こんなことのために章を締めた余韻を台無しにされたのか……。
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:24:23.46 ID:znhwGlXXo

「いや、うぬの中で章を締めるのどれだけ大事なんじゃ……」

「そりゃ四ヶ月も空いちゃったわけだしね……後付けで設定足されても……」

「大丈夫じゃ。この部分は実は五ヶ月前には終わっとる」

「なお悪いわ」

 そんなぐだぐだした空気で教室を出て、階段を下り、廃墟を出て、忍野にもらった地図を

見ながら歩き――

 ぼくは、私立直江津高校へとたどり着いた。
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:25:19.67 ID:znhwGlXXo

「…………」

 時刻は十一時半。

 ちょっと早めに出てきたつもりだったのだが、それでも遅かったらしい。グラウンドにはすでに、

二メートルを超すであろう大男、ドラマツルギーが待ち受けていた。

 腕を組んで仁王立ち。両の腕は通常の、つまりは普通の人間の状態である(一対一の近接戦闘に

際しては、大剣を振るうより人間の腕あるほうがやりやすいのだろうか)。その様はまるでなにかの

像のように厳かな雰囲気すら感ぜられる佇まいで、すこし、たじろぐ。
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:26:01.57 ID:znhwGlXXo

「……どうも、待たせてしまったみたいですね。いや申し訳ない」

「……■■■■……いや、かまわん。お前も時間より早く来たのだ。気にすることはない」

 初デートかよ。

 と、突っ込む気を抑えて、「ところで、戦いを始める前に確認しときたいことがあるのですが、

よろしいですか?」と、努めて冷静に、余裕があるように話しかける。
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:27:30.21 ID:znhwGlXXo
                                          ゲーム
 ドラマツルギーからしてみれば、ぼくは吸血鬼に成りたての一般人。狩りにちょうどいい玩具だ。

初対面で命乞いをし、嘘の場所を教え、砂かけをしてくるような卑怯者だ。軽々しく縊り殺せるものと

思っていることだろう。

 その隙を狙うことも考えたが、ドラマツルギーは名の知れた、いわゆる歴戦の戦士というやつらしい。

そんな相手に、ぼくごときがかなうべくもない。たとえ隙を突こうとも返り討ちにあうだけだ。

 であるのならば、ここは逆、ドラマツルギーの戦士の勘、というのを利用するべきだろう。

楽勝であるはずの対戦相手が、弱小であるはずの対戦相手が、まるで対等の存在であるかのように

話しかけてくる。これをドラマツルギーはどうみるか。

 きっと、ドラマツルギーは不思議に思い、想像する。ぼくになにか奥の手があるだろうと、

勝つ手段を、持ち合わせているのだろうと。

 そこまで思考を持っていければあとは簡単だ。ほんの少し意表を突くような行動を、いくつか

取ればいい。そうすれば、あとは勝手にありもしない「本命の策」に溺れ、先に降参をされるだろう。

最初に考えた通りの勝ちパターンだ。

 後の問題は、ドラマツルギーの意表を突く行動を思いつくだけ。この時間でできるだけ

ドラマツルギーの行動や言動、性格を探っていけるといいのだけれど……。まずはこれに、

応じてくれるかどうか。
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:28:51.24 ID:znhwGlXXo

 はてさてドラマツルギーはぼくの要望に「いいだろう。こちらからも尋ねたいことがあるのでな」と

応じた。ふむ。応じるか。少なくとも未だ対話の余地はあるらしい。

「ぼくが勝ったら――あなたはキスショットの右脚を返してくれる、でいいんですよね?」

 自信たっぷりに、ぼくは問う。ぼくが勝つのが前提であるかのように。ドラマツルギーが

負けるのは必定であるかのように。

 「……………………」と、ドラマツルギーは押し黙る。これは効いている……んだよな?

 ドラマツルギーは、じっと、ぼくを見る。訝しみ、不思議なものを見たように、ぼくを観察する。

…………なんだろう? 期待したような反応とは違うもののような気がする。そう、ただ、

「何を言ってるんだこいつは?」といった視線だ。

「あの、ドラマツルギーさん?」

「――ああ、いや、すまない……その、なんだ。ハートアンダーブレードの眷属よ。お前は、

ハートアンダーブレードをキスショット呼ばわりしているのだな?」

「はあ。そうですけど」

 なんだ? そんな珍しいことなのか? 吸血鬼界隈はどうにも面倒そうだ。

「界隈がどうとかそういう問題ではないのだが……まあ、ハートアンダーブレードがそれを

良しとしているということは、情報の信憑性が高まるので助かるのだが」

「?」
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:29:29.60 ID:znhwGlXXo

「いや、いい。質問に、というか、確認に答えよう。そうだ、私に勝てたらハートアンダーブレードの

右脚を返そう。私が勝てば、お前がハートアンダーブレードの居場所を教えてくれると誓うのであればな」

「……ええ、誓いましょう。ぼくが負けたらハートアンダーブレードの居場所を教えます」

 ぼくは真剣であるかのように応える。笑ってしまいそうだったが、なんとかこらえて。

 まったく、このぼくが「誓う」などと、滑稽なことこの上ない。戯言ここに極まれり、だ。
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:30:21.87 ID:znhwGlXXo

「さて、今度は私の話を聞いてもらおうか」

 ドラマツルギーは、言う。さて、ぼくに対しての話、というのはなんだろう? キスショットに

ついてのことだろうか……。はたまた対戦前にぼくの動揺を誘う作戦か……。いや、本来格上である

ドラマツルギーがそれをする必要はないし、これは素直にそのまま聞いておくべきか?

「まず、私はお前を退治しに来たわけではない」

「…………後者だと?」

「ん?」

「いえ、なんでも……あの、退治しに来たわけじゃないって、どういうことですか?

この前はいきなり襲い掛かってきたというのに」
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:33:01.99 ID:znhwGlXXo

 ドラマツルギーは、ぼくを揺さぶって何を仕掛けようといている? いや、違う。仕掛ける

必要はないはずなのだ。ドラマツルギーは圧倒的に格上なのだから。

「退治しに来たわけじゃない……私はお前を勧誘したいと思っているのだ」

「勧誘……」

 そうだ、本来なら必要のない呼びかけ。対話。つまり、この時点でぼくはすでに最初の目的を

完遂しているということか? すでにドラマツルギーは、ぼくを警戒する相手である。策を

弄す必要のある相手だと。

「私のことはある程度ハートアンダーブレードから聞いているのだろう? 私たちは、吸血鬼で

ありながら吸血鬼退治を生業としている」

「それでぼくも、というわけですか」

 これは……少々まずいかもしれない。ドラマツルギーが、ぼくのなにを警戒しているのか

わからない以上、戦闘中にドラマツルギーの意表を突けたところで、その驚きや、畏怖と

いったものは薄れる。それどころか、その警戒点から外れた行動をとってしまえば、失望されかねない。

やはり遅るるに足らない相手だと、そう判ぜられかねない。そうなってしまえば、詰みだ。

正気を取り戻したドラマツルギーに勝つ方法はなくなるだろう。

「ああ、初対面で襲い掛かったのはエピソードとギロチンカッターがいたからな。あの二人の前で

このような誘いをかけるわけにはいかなかったのだ。あの二人は私怨や心情があるからな。

しかし、私からすれば、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの眷属、
    ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
いや、お前は稀有な存在だ――殺すに惜しい。主人からの支配も薄いようであるし、仲間になるのには相応しい」

「まあ、わかりました」

 ここが正念場かもしれない。ここだ。この受け答えを間違えることがそのまま生死を分ける。

 そう思いぼくはどう返答すべきか困っていたが、ドラマツルギーは「いや、お前はわかっていない」

と、話をつづけた。
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:35:11.75 ID:znhwGlXXo

「お前はわかっていない……ハートアンダーブレードの眷属であること、それ以上に、お前には価値がある」

「はあ」

「生きづらいと、感じたことはないか? 」

「はあ?」

 なんだ? いきなり人生相談タイムなんですか?

「そりゃあ、すこしは感じてますけど」

「いや、嘘だな。お前は、はっきりと『人間社会』で生きづらさを感じていたはずだ」

「あの……急に言われても困るんですけど」

 ドラマツルギー、だよな? ギロチンカッターじゃなくて。たまに言い間違えそうになるけど。

まさか戦士と宗教家を間違えるはずがないとは思いたい。信じてるぞぼくの記憶力。

「真面目に聞いてくれ。お前は人間社会に適応できていなかったはずだ。なぜなら、お前は

本質的に人間からは遠い存在だからだ」

「……………………」

「お前は人間の中でも、異端で、異質で、異才で、異彩で、異常で、異能な、異な存在だ。
                                                        ・ ・ ・ ・
もはやその在り方は生まれついての鬼に近い。生来の鬼、天性の鬼だ。文字通り根っからの人でなし。

そもそも人間であったことすら間違いみたいなものだ。お前は、常軌を逸している。

お前には、化け物としての才能がある」

「…………ひどいことを言うんですね」

「だが事実だろう? 思い当たることがあるはずだ」

 「人でなし!」散々言われた言葉だ。「化け物!」シャワーより浴びたかもしれない。

 合点がいく。納得がいってしまう。そもそも人間であったことすら間違い。
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:36:21.98 ID:znhwGlXXo

「私には今五十三人の同胞がいる。そして、組織のナンバーワンがこの私だ。しかし、もし、

お前が入れば、いずれはお前が組織のナンバーワンとなるだろう。今はまだ成り立てだが、

身体の使い方に慣れればお前が最強になるはずだ。いや、組織どころではない。お前は最強の

吸血鬼となる。場合によっては最強の怪異に、果てはあの人類最強にまで届くかもしれない」

 ドラマツルギーは言う。……なんだか順番おかしくないか?

 純粋にぼくを勧誘してるのか、それとも、動揺を誘っているのか……わからない。ただ、

どちらにせよ言えることは、ドラマツルギーはこれを本気で言っているようだった。

 最強……か。

 いろいろ言われたが、ただ一つそれについては言えることがある。

 そんなものに、興味はない。

「……買いかぶり、ですよ。ぼくはそこまで大した人間じゃありません。吸血鬼としてだって、

きっと最弱です」

 気にするな、何を言われても。たとえ図星でも。

 これは戦いだ。いや、戦いはこれからだ、か? とにかく、平常心を保て。この勧誘は、

この交渉は、きっとこの後の戦いを決定づける。ならば慎重に応えなくては。
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:37:39.26 ID:znhwGlXXo

「それで、ぼくがこの勧誘に応じれば、キスショットの右脚は返してもらえると、

そういう話ですか? これは」

 もし戦わないで済むというのなら、それで済む話だ。ここで乗っておいて、あとで適当に

抜け出せばいい。もしくはぼくの不甲斐なさにドラマツルギー自身がぼくをクビにするかも。

 しかし、そんなぼくの甘い考えは通じなかった。というか、そもそもぼくらの間に相互理解なんて

ものはなかったのかもしれない。ドラマツルギーは「違うな」と言った。

「お前が仲間になったのならば、ハートアンダーブレードを殺すことが、お前の最初の仕事となるだろう」

「却下だ」

 珍しく、考える前に言葉は出てきた。
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:38:56.66 ID:znhwGlXXo

「ぼくはキスショットを戻して人間に戻る。吸血鬼の仲間になんてなるか」

「…………そうか」

 こうして、交渉は決裂した。ドラマツルギーからの印象は悪くなっただろうし、こうなると、

ぼくの強弱に関わらず、ドラマツルギーは本気でぼくを倒そうとするだろう。仲間にならないのだし、

殺す気で来られるかもしれない。いや、殺されてはキスショットの居場所がわからないのだから、

ぼくが降参するまで拷問され続けるのだろうか? どちらにせよ、これでぼくの勝ちの目はほとんど潰れた。

詰んだかもしれない。

 でも、ぼくに後悔はなかった。むしろなぜか、妙にすがすがしささえ感じた。
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:40:29.64 ID:znhwGlXXo

 「惜しいな」とドラマツルギーはつぶやいて肩、首、そして腕を回す。準備運動――――

つまりは、本気ということだ。

「ですか。ぼくはまったくそうは思いませんね」

 ぼくも応じて構える。左足を軸に両腕を前に出す、いわゆる、ファイティングポーズ。

まずは観察。ぼくがドラマツルギーと正面から打ち合って勝てるとは思わない。様子見。

見ることが第一だ。そして、繰り出される攻撃を、避ける、受け流す、カウンターを入れる、

どれを選択するにせよ、もっとも動きやすい、フットワークの軽い構えはおそらくこれだろう。

動体視力はそれなりにある。むこうで散々訓練してきた。それに加えて今は吸血鬼の状態。

それにドラマツルギーは筋肉質。それほど機敏に動けるとは思えない。きっと、その動きを

捉えることはできる。
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:40:58.69 ID:znhwGlXXo



 ――などと、考えた自分が甘かった。


239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:41:30.88 ID:znhwGlXXo

「は?」

 思わず声が出る。ドラマツルギーは、その巨体に似合わない俊敏な動きで、一足でぼくに詰め寄った。

吸血鬼の目によって、その動きは捉えることはできたが、しかし、これは捉えるべきで

なかったかもしれない。

 ドラマツルギーは、まるでその肉体がただ目の前の相手を殴るためだけに存在しているかのような、

そんな動きをした。流動する筋肉。美しさすら感じられる軌道、それがただそうであるかのように、

脚が動き、腕は流れ、そして衝撃が炸裂する。

 こんなの、見えたところで意味はない、ただ、こちらとあちらの戦力差を思い知らされるだけだった。

 こんなもの――見てから人間が反応できるわけがない!

 ドラマツルギーの右の拳は、ぼくの頭を吹き飛ばした。
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:42:43.07 ID:znhwGlXXo

 一瞬、視界が暗転する。その後、ぼくが見たのは星だった。視界いっぱいに広がる夜空。

(ぼくは倒れている?)久しぶりに見た気がするそれらはただひたすらに美しかった。

 なぜぼくはドラマツルギーに殴られたはずなのに、こうしてどこに傷を負うこともなく

グラウンドに倒れているのだろう? 深夜にグラウンドに倒れている、ということは別に

夢オチでもなんでもなく、勝負は行われたはずだ。つまり……殴られて気絶して、勝負は

ついてしまったのか? あれだけかっこつけて、五ヶ月引っ張ってワンパンKO?

そりゃいくらなんでも……と、そこまで考えたところで。

 上から、殺気が、降って、思、考より先、に身体が動、く。
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:44:02.80 ID:znhwGlXXo

「くっ!」

 左腕に全力をかけ、全身を飛ばすように地面をうつ。しかしそれでも遅かったらしく、

ドラマツルギーの左拳がぼくの手の甲をかすった結果――ぼくの左手首から先は、弾け飛んだ。

ごがぐが、と音が聞こえた気がした。それはぼくが左手でグラウンドを砕いた時の音なのか、

ドラマツルギーがぼくの左手を破砕した時の音なのか、はたまた幻聴か。

 考えたところで、遅れて、熾烈な痛みが脳に伝達される。

「……っがあああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 いたいいたいいたいいたいいたい! ずきんずきんと、左手が痛み、機能の欠損を、

生命の危機を、脳が叫ぶ。

「う、お、あ」

 勢いをそのままにグラウンドを無様に転がるぼくの思考は、ただただ一つのことだけを訴える。
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:44:43.05 ID:znhwGlXXo

 ぼくは死ぬ。

 殺される。

 勝てない。

 戦いにすらならない。

 ぼくでは、ドラマツルギーには、勝てない。
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:47:23.35 ID:znhwGlXXo

 唐突に、ぼくの回転は止まる。何か施設の柱にでも引っかかったのか?と、そちらを向くと、

回転を妨げたその正体は、はたしてドラマツルギーの丸太のように太い右脚であった。

 ああ、そりゃあ、回転するよりも走るほうがはるかに速いよな。

 死ぬ。

 ギロチンカッターが脚を振り上げる。

 死が目の前にある。

 せめてもの抵抗に、とぼくは両腕を顔の前で交差させ、防御の姿勢をとる。だが、ぼくは

知っている。この程度ではあの脚は止められるはずがない。最後のあがき、といってもそれは

諦めを過分に含んだものだった。

 ああ、今度こそ終わった。

 吸血鬼の力で強化された目が、ドラマツルギーが脚を振り下ろす様を見届ける。今度こそ、

ぼくは殺されるのだ。

 その瞬間、ぼくは気づいた。

 ぼくの左手が、再生していた。

「!?」
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:48:13.87 ID:znhwGlXXo

 一瞬の両腕の激痛。そしてまた一瞬の暗転。

 二度目の暗転の後、今度の景色は、夜空と、ドラマツルギーの右脚だった。

「!!」

 ようやく、理解する。

 最初に頭を殴られたとき、ぼくは気絶していたわけではない。夢オチでも何でもない。

 本当に、ぼくの頭は吹き飛ばされたのだ。

 そして、その後、再生した。

 吸血鬼としての――――再生力。

 そうだ、突然のことで混乱していたが、以前にもあったのだ。最初も最初、吸血鬼として

目覚めたその日、ぼくは日光に焼かれ、焼けただれ、そこから再生した。

 ならば、そう、ならば。

 いくら傷ついても構わないというのであれば。

 ドラマツルギーに勝つ手段はある?
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:49:44.05 ID:znhwGlXXo

「!」

 ドラマツルギーは左脚でぼくを蹴り、身体を宙に浮かした。十メートルほど、ぼくは吹っ飛ぶ。

「どうした? ハートアンダーブレードの眷属よ。降参するというのであれば、応じるが?」

 蹴られた瞬間激痛が走った。地面に着弾するとき、全身を擦りむいた。けれどもう痛みはない。

 ドラマツルギー相手には、手段を仄めかすだけでよいと考えていた。というか、

それしかないと思っていた。たとえどんな手段を用いたところで、返り討ちにあうだけだと。

けれど、今前提条件は崩れた。そうだ。すばやく再生するというのなら、一瞬で回復する

というのなら、どれだけ返り討ちにあおうが問題はない!

「……降参なんて、しませんよ」

 ぼくは、立ち上がり、ドラマツルギーをじっと見る。
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:51:40.22 ID:znhwGlXXo

 構えは取らない。カウンターは無理だ。あの攻撃速度では対応できない。ならばぼくに

できることはといえば、ドラマツルギーの攻撃を全力でかわすことだけだった。

 「そうか」とつぶやき、ドラマツルギーはまた右の拳でぼくをぶち抜きにかかる。

 よけるよけるよけるよけるよけるよけるよけるよけるよけるよける――――!

 全神経を集中させて、ぼくはドラマツルギーの右の拳を、左に避けることに成功した。

その拳はあまりの速さに風すら発生させ軽くよろけそうになったが、なんとか持ちこたえる。

左に避けたことで、ドラマツルギーの脇ががら空き。この体勢では、ぼくへの攻撃は右腕に

よるひじ打ちしかない。ならば、ぼくが狙うは脇腹だ。

「はっ!」

 ひじが当たらないよう、ぼくは右の拳を突くようにドラマツルギーの脇腹に入れる。避けながら

なので姿勢は悪いし、元の利き手の左手でもない、そのうえまるで腰の入ってない反撃であったが、

今はぼくも吸血鬼だ。これでもある程度のダメージは見込めるだろう。

 しかし、そんなぼくの一撃はドラマツルギーに当たることはなかった。

 ぼくの脇腹への攻撃を、拳を打った後の無防備な状態で振るわれる反撃を、ドラマツルギーは

無理やりにかわした。
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:53:03.09 ID:znhwGlXXo

「ふっ!」

 今度ははっきりと「ゴキコキゴキガキッ」と音がした。無理な体勢でぼくの拳を避けるために、

ドラマツルギーは筋肉を無理やりに伸ばし、腹を無理やりに変形させ、ぼくの拳を避けた。

「んなっ!?」

 瞬間あっけにとられる。目の前で、人間が軟体動物のように上半身を九十度、いや、

百三十五度は傾けたのだ。しかも、横向きに。完全に予想の範囲外の動きにぼくは戸惑い、

一瞬動けなくなる。そして、ドラマツルギーには、一瞬あればぼくへの反撃には十分であった。

 無理な体勢のまま、ドラマツルギーはぼくの右腕へと、自身の右腕を振るう。

その体勢では先ほどのぼく以上に力が出ないはずなのに、ドラマツルギーは、ぼくの右腕を飛ばした。

今までよりも鋭い痛みが右腕から送られてくる。

「ぐ、あああああああ!!!」

 鮮烈な痛み。今まで生きてきた中で一二を争うほどのその鋭い痛みが、ぼくを一瞬襲い、

そして右腕が回復する。

「っはあ、っはあ」

 そこまでくるとぼくは状況を冷静に判断できるようになっていた。ドラマツルギーが

横に傾けていた身体を起こす。元の構えに戻ったドラマツルギーの身体は、その両腕は、

先ほどまでとは大きく変質していた。

 両腕が、大剣に変化している。

 波打つ大剣、フランベルジュ。

 吸血鬼としての――――変身能力!!

「……そういえば、そんなのもありましたね」
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:55:11.01 ID:znhwGlXXo

 ドラマツルギーはまだ全然全力ではなかったらしい。勧誘する都合上、武器を相手に

見せないために腕をそのままにしていただけということか。

「ああ、くそ」

 見たところその大剣は、人間の腕だった状態の時よりも長い……先ほどよりもリーチは

長くなっている。ドラマツルギーは大男だ。通常の腕の時点ですでに不利であったのに、

さらにそれ以上長くなるだなんて……。しかも西洋剣、両刃であるということは単純に

どう振っても切れるということだ。拳は突き出す威力は高くても振った際の威力は落ちる。

まあ、ドラマツルギーほどの怪力であればラリアットでもぼくの首は飛びそうだが。

ともかく、武器が腕から剣に変わったことは、更にぼくの勝ちの目が潰されたということになる。

もう降参して助かるなら降参したい。

「でも、なあ」

 人間に戻れないから、人外として暮らす。

 人間に馴染めないから、人外として暮らす。

 それは、ただの逃げだ。諦めだ。

 もう、逃げたくない。今まで逃げてばかりの人生だけど。それでも、それだからこそ、

逃げられない。

 だって、逃げたところで、結局そこでもぼくの扱いは、生き方は変わらないのだと、もう

知ってしまっているから。

 人外になり果てたところで、ぼくが仲間を作れるはずがないのだから。

ぼくが誰かと、良好な関係を築けるわけがないのだから。

 どこに行っても、どこまでも孤独。

 そんなものを味わいながら、生き長らえたくはない。
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:55:48.60 ID:znhwGlXXo

「やるしかないよな」

 ドラマツルギーを、もう一度見据える。

 やはり、何度見ても勝ち目はなさそうに見えるけど、それでも。
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:57:53.78 ID:znhwGlXXo

 ドラマツルギーが、飛び込んでくる。右の大剣がぼくの左肩から右脇腹にかけて裂こうとする。

ぼくは、それを後ろに二歩下がってぎりぎりでかわす。続いて左の大剣を身体の中心を

突きさすように前に出す。そんなことをすれば折れてしまいそうなものだが、元はドラマツルギーの

身体だ。たやすくぼくの身体に穴をあけるだろう。食らうわけにはいかない。今度はそれを右にかわす。

 それを見て、ドラマツルギーは左腕の軌道を変え、水平に振るうようにしてきた。ぼくはそれを

かがんで避ける。ドラマツルギーはその勢いをそのままに回転するように右腕を振るう。

かかんだ体勢のぼくは飛んで――ダメだ! 空中に逃げてはその後の連撃をまともに食らう!

ここはおとなしく斬られる以外の道はない!
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 01:59:34.49 ID:znhwGlXXo

「くっ」

 覚悟を決める。被害を最小限に食い止めるため腰を曲げたまま、足だけをまっすぐにする。

斬られるのは太ももから下だけだ。

 ぶちぶちっ、と筋肉と血管が斬られる音が聞こえた気がした。

「〜〜!」

 覚悟を決めていたためか、先ほど右腕を切られた時よりは痛くない。ならばこのままドラマツルギーに

攻撃を加えようと意識を切り替える。両腕で逆立ち状態で着地し、そのまま再生した足で

蹴りを食らわせる――と、そこまで考えたところで。

 ――――背中が――――――――ぶるり――――――――――――――――ふるえた。

「うおおおおおおおお!?」

 ぼくは逆立ち状態の腕で全力でグラウンドをはじき、後方に飛ぶ。飛ぶといってもあまり

高く飛びすぎると追撃を食らう恐れがあるので、地面からの角度は十五度といったところだ。

そしてまたそのまま無様に後ろに転がっていく。

 転がりながらぼくが見た光景は、ドラマツルギーの右脚が、ぼくが逆立ちしていたあたりで

空を切るさまだった。
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:05:31.83 ID:znhwGlXXo

 思わず、ゾッとする――不意打ちであんな蹴りをかまされて、まともに食らっていたら、

ぼくの身体はどうなっていたことか。いや、ぼくの身体はどうでもいい。問題は逆立ち状態で、

何が起きているのかわからない状態で不意打ちの蹴りを食らったら、はたしてその時、ぼくは
 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
意識を保てていただろうか?

 また、どこか甘く考えていた。何回死んでも、最終的にドラマツルギーを倒せればそれでいいと。

敗北条件を見誤っていた。

 そう、ぼくは死なない。だから、致命傷を食らうことは問題ではない。ここまでは正しい。

じゃあぼくの敗北条件は、降参しないことだけなのかといえば、それは違う。ぼくの現在の
        ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
敗北条件は戦闘中に気絶しないこと、または、ドラマツルギーにつかまって、追い込まれて、
 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
降参するまでなにもできずに殺され続ける状況に追い込まれること。

 そうすると、そうなると……。

「このままでは、やっぱり勝てないか」

 相手のリーチを、自分の不利をそのままにしたままでは、勝てない。

 どうしても、今、この戦力差を埋める方法を思いつかなくては……。
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:07:13.94 ID:znhwGlXXo

 ふたたび、いや、もう何度目か、ドラマツルギーが突っ込んでくる。避けながら、食らい

ながらでもいい、考えろ。

 ぼくを斬ろうとする右腕をかわす。なにかないか。ぼくの首を刈ろうとする左腕をよける。

絶望的なリーチ差を覆すなにか。右腕がぼくの左腕を切り落とす。近づく手段、またはより

遠くで戦う手段が欲しい。左腕を囮に繰り出される右脚を食らう。大剣に対抗する手段は。

 ……一つ、見つけた。

 できるのか? いや、やるしかない。

 ぼくは一気に後ろに下がり、そして構える。最初の構え、ファイティングポーズ。

 「む?」とドラマツルギーが反応する。

「ほう。逃げてばかりでつまらぬ男だと思っていたが、とうとう覚悟を決めたか」

「ええ。覚悟を決めました。今の状況を見つめました。こうなれば、真っ向勝負しかないですよね」
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:08:14.38 ID:znhwGlXXo

 そうだ。相手は吸血鬼だ。両腕を、そのまま剣にしてしまうような、埒外の存在だ。

 そして、ぼくも吸血鬼。斬られても斬られても復活するような、そんな規格外。

「ならば、あなたにできてぼくにできない道理はない」

 イメージする。ぼくの両腕は剣だ。ぼくの両腕は剣になる。いや、違う。元からぼくの

腕は剣だった。ぼくの両腕は剣。剣。剣。剣。剣剣剣剣剣けんけんけんけんけんけん――――。

「……ふぅ」

 ぼくの両腕は、剣となった。長い、ドラマツルギーとの身長差、体格差をも凌駕しうる長い西洋剣。

 そうだ。ぼくは、化け物。

 この程度、できて当たり前になってしまったんだ。

 そんなぼくの姿を見て「ほう、さすが、呑み込みが早い」と、ドラマツルギーは笑った。

「ずいぶんとまた余裕ですね。リーチ差はこれでなくなったというのに」

「ああ、たしかにそうだ。これでお前と私の条件は五分となった。いや、お前の得物のほうが長いか?」

 それでも、ドラマツルギーは笑っている。

「……いやいや、馬鹿にしているわけではない。本当に、その速さで変身能力を身に着けるとは、

驚嘆に値する。やはり、私の見立て通り、お前は吸血鬼としては天才的だ。だが……」

 と、ドラマツルギーは笑みを消して、真剣なまなざしでこちらを見る。

「お前がナンバーワンになるのはいずれ、私を超えるまでになるのはまだずっと先だ。

その程度で、私に勝てるなどと甘い考えを持たれるのは、不快だな」

 ぎろり、とより強い殺意がその目に宿る。
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/26(月) 02:12:19.47 ID:znhwGlXXo

 ひるむな。恐れるな。今はぼくが有利なのだ。

「はっ!」

 声を上げ、ぼくはドラマツルギーへ剣が届く間合いまで一気に詰め寄り、右腕の大剣を振り下ろす。

 戦いが始まって、初めてぼくから仕掛ける攻撃、それを、ドラマツルギーの大剣は真っ向から受けた。

 そして――ぼくの右腕はガラスのように音を立てて崩れた。

「!!!!!!」

「やはり、な」

 ドラマツルギーがぼくへと近づいてくる。斬られる前に左腕の剣を振り、ドラマツルギーに

カウンターを決める。決めようと思った。

「え?」

 ぼくの左腕は、ドラマツルギーを斬れずに空を切る。それもそのはず、ぼくの左腕は、そもそも

ドラマツルギーに届いてなかった。ぼくの左腕はリーチを失っていた。
 ・ ・ ・ ・ ・ ・  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 ぼくの左腕は、元の人間の形に戻っていた。

「くっ!」
                                   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「やはり、まだまだ人間であるころの意識が抜けてないな。私も元は人間だったからわかるよ」

 言って、ドラマツルギーはぼくに斬りかかる。

「自分が化け物である現実など、ふつうはそうそう認められないものだ」

 ドラマツルギーの両腕は、強固な二本の大剣はぼくを×の字に切り裂いた。

「ぐっ、うっ」

 もちろん、すぐさま再生する。ぼくの身体から肩が生え腕が生え頭が生える。

 元の人間の形に、生え変わる。
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:14:13.11 ID:znhwGlXXo

「うっ、うっ、うううううう」

 覚悟したつもりだった。

 捨てきったと思い込めてると勘違いした。

 それでも、ぼくは人間であると、自己の認識を変えられないというのか?

「うううううううううううう」

 今度こそ、もう本当にダメだと思った。無理だ。これが通じなければ、ぼくに勝ち目はない。

 ドラマツルギー以上のリーチを、ぼくは作り出せない。

「どうした? ハートアンダーブレードの眷属よ。今度こそ手詰まりか?」

 ドラマツルギーが、問う。
                                           バケモノ
「諦めろ。お前はまだまだ化け物に成り切れない、中途半端な存在だ。  私 の真似事はまだ

できはしない」

 そうだ。ぼくはドラマツルギーのように考えられない。割り切れない。自分が化け物であると、

認めたくない。今までだって何度も何度も言われてきたけど、自分でもどうかと思うような

人間性をしているけれど、でも、認めたくない。

 だって――

 自分で認めてしまったら――

 本当に化け物になってしまいそうで――
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:16:47.64 ID:znhwGlXXo

「認めろ。お前は化け物なのだ。人間にはもう戻れない。だから、お前の選択肢は二つに一つだ」

 ドラマツルギーは言う。

「選ぶがいい。ハートアンダーブレードの眷属よ。これが最後の選択だ。あの女と心中するか。

われらの仲間となり化け物として暮らすか」

 化け物として生きるか……化け物として死ぬか。

 その二択しか本当にないのか?

 ぼくは、人間にはもう戻れない?

 いや……ドラマツルギーからしてみれば、ぼくはもともと人間ですらないのか……。
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:17:44.39 ID:znhwGlXXo

 …………ん? ドラマツルギーからすれば?

 そうだ。ずっと図星を突かれていたからその気になっていたけど、全部、ドラマツルギーが

勝手に言っているだけじゃないか。この勝負を化け物対化け物の構図にしているのは……

ドラマツルギーのほうだ。そして、ドラマツルギーはずっと優位に立っている。それはそうだ。

ドラマツルギーが始めたことなのだから。

「やはり、後者か」

 これは、ドラマツルギーの揺さぶりだ。化け物対化け物ではぼくに勝ち目はないという、

ただ当たり前のことを勝手に主張してるだけに過ぎない。

 むしろ、勝てる勝負だというのに、ドラマツルギーの態度は先ほどから不自然だ。

 本当に仲間にしたいというなら、有無を言わさず決着をつけて、キスショットを殺してから

仲間に引き入れてもいい。

 そして、先ほどからの提案、降参の促し。ドラマツルギーは勝負を焦っている?

 ドラマツルギーはぼくを倒す手段がないということじゃないのか?

 そして、化け物にぼくが成りきれないというのなら……。

 ぼくが自分をまだ人間と認識しているのであれば……。

 ならば。

 まだ、ぼくに勝ち目はある。
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:18:34.84 ID:znhwGlXXo

「……………………決めました」

「ほう、答えを聞こうか」

「ぼくは決めました。あなたを倒して、人間に戻ります」

「……そうか。心中する道を選んだか」

 とどめを刺さんとばかりに、ドラマツルギーは、構える。右腕を前に出し、左腕はやや水平気味。

おそらくは右腕を斜めに、左腕を水平に薙ぐように斬りかかってくるだろう。おそらく四回目で

逃げ場をなくされてまた斬られる。そしてその後の状況も悪い。それでは、またぼくに勝ち目はない。

 まずは、有利な場作りだ。

「あ、すいません。間違えました」

 「おい」と、気が抜けたように、ドラマツルギーは言う。

「いえ、そこまで違いはありませんよ。誤解されかねない言い方だったな、と」

「……」

「ぼくは、人間です。まだ、化け物にはなってない」

 宣言して、ぼくはドラマツルギーに背を向けて、走ってその場を逃げ出した。
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:19:53.32 ID:znhwGlXXo

「くっ! この期に及んで逃げるか!」

 という声を背中で浴びた。足音から察するにドラマツルギーも、全力で追いかけてくる。

巨体のわりにすばやいが、ぼくもまた吸血鬼の力のおかげでそれなりに足の速い状態だ。

足音からの体感になるが、ほぼ同速だろうと思う。

 ドラマツルギーとのリーチ差をなくす。相手より遠い間合いからの攻撃は不可能。

 ならば、剣を振るう前に、ドラマツルギーが剣を振るえない距離まで接近できれば、

脚を振るえない距離まで肉薄できる、それだけの速度が持てれば、ぼくに勝機はある。

 その速度には、互いが全力疾走したくらいの速さが欲しい。つまり、この速さを維持したまま、

ドラマツルギーの元へと突っ込めればいけるはずだ。

 この速度を維持したまま、方向転換。学校のグラウンドであるならば、きっとそれはある。

 あたりを見回し、そして見つける。

「あった! 鉄棒!」

 さいわい、鉄棒の持ち手はぼくの身長よりも高い位置にある。であれば、あそこを支点に

回転ができる!

 ぐるり、と、グルッピーのように回転し、ぼくはドラマツルギーの元へと特攻を仕掛ける。
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:22:43.86 ID:znhwGlXXo

 が。

「あ」

 思ったより、ドラマツルギーとの距離は離れていた。距離にして三十メートルほど。

ドラマツルギーの足音が一定に聞こえてきたのでせいぜい十メートルくらい後ろだと思っていたが、

吸血鬼の力によりぼくの耳は強化されていた。遠くの音でさえもしっかりと拾えるようになって

しまっていたのだ。

 ドラマツルギーが、走りながら右腕を振りかぶる。そりゃそうだ。三十メートルも先で回転する

動きが見えたら、あらかじめ剣を置くようにぼくを斬ることはできる!

 どうする、速度を落とすか?

 いや、このままでも行ける。

 ぼくは人間なのだから。

「うおおおおおおおお」

 恐怖を押さえ、そのまま走り続ける。ドラマツルギーは首を切り落とすつもりのようだ。

 問題は、ない。

 ドラマツルギーの右腕、フランベルジュの間合いに、全力で入った。

 水平に振るわれた右腕が、ぼくの首を切り落とす。

 問題はない。

 ぼくは、人間なのだから。
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:24:13.54 ID:znhwGlXXo

「ぬう!! う、うおおおおお!?」

 ドラマツルギーが、ぼくの狙いに気づく。

 ドラマツルギーにはねられたぼくの首は、首だけになったぼくは、勢いそのままにまっすぐ飛び、そして。

 ドラマツルギーの首へとかみついた。
 
「おおおおおおお!?」

 吸血鬼は吸血鬼に血を吸われてはならない。存在そのものが絞りつくされてしまうから。と、

キスショットは言っていた。

 そうだ、ぼくにとって弱点となりうるのであれば、それがドラマツルギーに通じない道理はない。

 ぼくは、首だけになって、血を吸う。ドラマツルギーを吸いつくそうとする。

「な、な、なななななな」

 ドラマツルギーがうろたえる。いつまでも、吸い付いて離れないぼくに驚き、そして。
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:25:07.27 ID:znhwGlXXo

「ちっ」

 一瞬の暗転の後、ぼくはグラウンドに倒れていた。もう、タイムリミットであるらしい。
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:25:49.88 ID:znhwGlXXo

 ドラマツルギーはというと、両腕の大剣を人間状態のそれに戻し、首元を押さえ、

その場に座り込んでいた。

 ぼくは立ち上がり、反撃を恐れ距離をとる。

 おそらく、この手は二度目は通じない。もう一度、ドラマツルギーに近づくための方策を考えなくては。

と、考えたところで気づく。ドラマツルギーは、青ざめた顔でぼくを見ていた。座ったまま、動かないで、

いや、動けないでいる。血を吸ったことによる影響だろうか? ならば今は好機か?
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:26:39.94 ID:znhwGlXXo

「お、 お前! それは! 今のは、なんだ!」

 ドラマツルギーは、座り込んだまま叫ぶ。信じられない、と言った感じだ。

「吸血鬼が吸血鬼に血を吸われると、存在ごと吸い取られるんですよね。キスショットが言ってました。

まあ、キスショットはあなたにされないように気を付けろ、とアドバイスをくれたんですけどね」

「っ! つまり、ハートアンダーブレードの案ではなく! お前が企み、実行したというのか!」

「ええ、まあ」

「お前、人間に戻りたかったのではないのか!?」

 ドラマツルギーが、叫ぶ。

「吸血鬼などやめて人間に戻りたかったのではないのか! それが血を吸うなどと!

何のためらいもなく他人を食おうとするなどと!」

「……だから、言ってるじゃないですか。人間に戻りたいんじゃなくて、ぼくはまだ人間なんですよ」

「は?」

「人間だから、使えるものは吸血鬼の力だろうが何だろうが使います。生きるために精一杯のことを

します。殺されそうになったら、なりふり構わず戦います」

 後半は適当なことを言ったけど、まあ、だいたいそんな感じだった。
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:29:21.17 ID:znhwGlXXo

「人間であるために……人間以外の力を使う? それは……そんなの、矛盾だ」

「ええ。よく言われます」

 でも、人間てそんなもんじゃないですか?

「……………………………………そうか」

 ドラマツルギーは立ち上がった。さて、この後はどうすべきか……。

 と、身構えていると、ドラマツルギーは「いや、もういい」と、短く言った。

「え?」

「私の負けだ。と言いたいんだ。もうお前に、勝てる気がしなくなってしまった。お前は、

私ごときの手では負えない」

「え? いや、あの……」

「それとも、こう言えば満足か? 降参だ。二度と手は出さん。命だけは助けてくれ――と」

 ドラマツルギーは両腕を上げ、にこりともせずに言った。

 「え、えっと……」と、ぼくが困惑しているとドラマツルギーは説明をしだした。

「正直なところ、もともと、地力ではお前のほうが強いのだ。それでも実戦経験の差でまだ私が

勝てると思っていたが、まさかここまで色々されるとはな」

「……」

「変身能力に、不死身性を生かした接近。このままでは、戦ってるうちに本気になりそうに、

殺してしまいそうになる」

「あ、やっぱりまだ本気ではなかったんですね」

「ああ……だが、どうかな。最初から本気でやっていたところで、どう転んだかわからん。

それこそ、逆に私が殺されていたかもしれない」

「……買いかぶりすぎですよ」

「そんなことはないと思うがな」
                          バケモノ
 「お前は否定したが、やはり私は、お前はこちら側だと思うよ」と、ドラマツルギーはつぶやいた。

「……キスショットの右脚。返してくれるんですよね」

「ああ。今はある場所に隠して保管してあるが――すぐにでも、あの軽薄な男に渡しておく。

それでいいんだろう?」

「ええ」

「では、示談成立だ」
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:31:27.67 ID:znhwGlXXo

 「ところで」とドラマツルギーはぼくに訊ねてきた。

「最後、私が首をはねたとき、お前の首がしばらく回復せず、私にかみついてきたのは、

あれはどういう理屈だ?」

「ああ、いや、あれは簡単なことですよ。ぼくは化け物に成りきれてない、だからドラマツルギーさんの

ように腕を完全に変質できないんですよね」

「ああ」

「だから、ぼくにとってなじみ深いものになら変身できるんじゃないかと思いまして、
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
人間になることならできるんじゃないか、と思ったんです。ほら、人間なら、首をはねられても

回復なんてしないでしょ?」

 「……そもそも」と、ドラマツルギーは呆れたように言う。

「そもそも、人間は首をはねられたら死ぬし、ましてやかみついて血を吸うなんてできはしないだろうに」

「ええ、ですからこれも矛盾ですね」

「……そうだな」

 ドラマツルギーは納得してくれたようだった。
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:33:22.65 ID:znhwGlXXo

「ハートアンダーブレードの眷属よ」
               ・ ・ ・ ・ ・ ・
 言いながら、彼の姿がかすみ始める。

 目の錯覚かと思ったがそういうわけではなく、ドラマツルギーの身体は、夜の闇に溶け始めていた。

 変身能力。

 曰く、吸血鬼は身体を霧に変化できる。

「最後にもう一度だけ確認させてくれ。お前は、人間に戻るのだよな?」

「ええ。ぼくは人間ですからね」

 ドラマツルギーは完全に姿を消したが、声だけはグラウンドにまだ響く。

「それを聞いて、安心した」

 闇の中から聞こえる声は、最後に自分の意見を曲げた。

「お前は、もう、我々吸血鬼としても困る存在になってきたからな。早く人間に戻ってくれ」

「………………」

 もう、気配すらしない。最後に捨て台詞をはいて、同族殺しの吸血鬼は、ヴァンパイアハンターの

プロフェッショナルは、夜の闇に消えていった。いや、あれは彼なりの激励だったのかもしれない。

そう思うほうが精神衛生上いい。

「はあ、まさか初デートで、告白もしてないのに振られるとはな」

 ふざけて言ってみた。

 虚しいだけだった。
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/26(月) 02:34:36.75 ID:znhwGlXXo

「さて、グラウンドがだいぶへこんでしまったけど、これ、どうすりゃいいんだろな……」

 忍野が勝手にやってくれないだろうか。いや、それでオプション料金とか取られても

やだしなあ……なんて考えたところで、気づく。

 校舎の陰から、視線を感じた。

 ドラマツルギーがまだ何か言うことでもあるのか。はたまた残りの二人のどちらかか、

審判役として忍野が実はいたということなのか、いろいろ考えながら、その陰に隠れているのが

だれなのか校舎の陰がより見えるよう、回り込んで、歩く。

 無言でこちらを見つめる瞳。

 それは、女子生徒だった。三つ編みのおさげを一つ、後ろで結わえている。眼鏡をかけて、

いかにも委員長、という感じを全身から醸し出すその少女に、ぼくは見覚えがあった。

「えっと、たしか、は、はね、はね――」

 思い出した。羽川翼ちゃんだ。
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/26(月) 02:35:19.50 ID:znhwGlXXo
今回はここまでです。今度こそ続きは間開けないようにしたいです
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/27(火) 01:03:43.24 ID:c3QGgs9So
 
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/21(土) 23:38:32.20 ID:fddWCVsqo
保守
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/13(月) 11:54:03.02 ID:Fd/hLyVE0
またクソ懐かしいものが……
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/26(日) 14:24:07.25 ID:gYM/YUZro
>>1です。生きてます。まだ書けてません。間あけないようにしたいといいながらこの体たらくです。ごめんなさい
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/16(木) 14:21:39.54 ID:WPH0VNHYo
ほしゅ
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/24(金) 20:01:27.06 ID:HY+Xru02o
いーちゃんにももう子供がいるんだぜ…読んだときほんわかした気分になったけど、冷静に考えたらどんな子に育つんだよ…
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/25(土) 21:43:52.27 ID:fy7Ik6CBO
待ってる
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/26(水) 16:17:23.19 ID:vV5UN/3do
>>1です。自分を>>1と思い込んでいる精神異常者じゃなければ>>1なはずです。書けてません。ごめんなさい。生きてます。ごめんなさい。
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/28(日) 20:09:00.03 ID:ml012n64o
ほし
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/04(日) 11:31:59.11 ID:SyZTjK9bo
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/04(火) 08:34:23.44 ID:kNmEo/6kO
ほし
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/05(土) 08:08:19.65 ID:wSWNP8mTo
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/01(水) 22:50:40.77 ID:/7vl1p04O
待っとるで
217.62 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)