ドイツ「地球立キチガイ学園にようこそ!今日も今日とて偽善に励むぞ!」

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466 : ◆pIxjj4GI1s [sage]:2016/12/08(木) 16:02:19.29 ID:H1wZr9Cs0
扶桑さんの元ネタは梁書と袮軍墓誌です
(梁書の扶桑国は倭と高句麗両方に似た国だと思われます。袮軍墓誌では完全に日本です。)

草薙剣ネタを出してしまったので、前々から書こうか迷ってた元寇ネタ回も書こうと思います
(なかなか大日本帝国編に行けない・・・)
次の元寇ネタは、>>1の約束を破って、スウェーデン以外にホモが2名増えることになります
汚い場面があります。ごめんなさい・・・
主人公は>>302に出てきた鎌倉日本です

ややこしいので歴代日本(厳密には違う時代でも便宜上名前をつけてます)の順番を書きますと、

(時代前後不明)草薙剣簪の主達、邪馬台国、拘奴国など
→(世代不明)
→古墳・飛鳥日本(番外編:NTRと整合性 に登場。やまとちゃんの父。)
→奈良・平安日本(番外編:トウモロコシの語源ryに登場、通称やまとちゃん。渤海と友達。)
→平安日本(非キチガイ学園出身。やまとちゃんの息子で、鎌倉日本の父。次回にちょろっと登場)
→鎌倉日本(>>302登場、次回番外編に登場)
→南朝日本&北朝・室町日本(南朝が姉で室町が弟、登場予定なし。非キチガイ学園出身。)
→安土桃山日本(>>302と◆バナナ型神話などに登場。室町日本の息子にして江戸日本の父。)
→江戸日本(>>303と番外編:ドカン!と一発ホームラン などに登場。大日本帝国の母。)
→大日本帝国(日本国の父。渤海と何らかの因縁がある。)
→日本国(本編主人公)
 
こんな感じになっております。
なお、スレタイではさもドイツが主人公であるかのように装っていますが、
当初は『ジャパンの奇妙な冒険〜キチガイ共との闘い〜』というスレタイを考えていたこともあり、
一応主人公は日本です(すごい今更)
467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/08(木) 22:17:00.64 ID:LZK8ccGf0
戦国日本は、無しか…てかスレタイwwwwwwwwwwwwwwww
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/15(木) 11:29:35.09 ID:2YUnH5Ke0
保守
469 : ◆pIxjj4GI1s [sage]:2016/12/20(火) 10:31:04.61 ID:FQR7ktZlO
今晩あたり、元寇ネタを投下できそうです
マジで一人もまともなキャラを見出せません
しかも結構展開が複雑で、ちゃんと書けてるか不安です
このSSでは草薙剣簪は草薙剣と節刀を同じものとして扱っています
特に今回の主人公は鎌倉幕府の擬人化ではなく、
平家+鎌倉幕府+公家+九州武士団の擬人化なので
470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/20(火) 13:32:29.89 ID:pAsqQDJM0
待ってました
471 : ◆pIxjj4GI1s [sage]:2016/12/20(火) 22:31:25.53 ID:vgwpYOPq0
しまった、スマホの書きためをメモ帳に移すまで気づかなかったのですが、
今まででトップクラスの大長編になってしまいました
かといってどこを削ってよいものやらわからないので、そのまま投下します

>>466で南朝日本&北朝(室町)日本の話は予定しないと書きましたが、
設定だけは考えてあった、というか大日本帝国編で南朝がらみの会話が出てくるかもしれないので
おまけでこの2人のあらましだけ説明することにしました
472 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:15:37.86 ID:vgwpYOPq0

ホラー番外編:恐怖!ウホッとあそこがむくりこくり!の巻

〜〜かまくらのしゅごしん☆さがみからのおねがい〜〜

相模「良い子の諸君。今回の話は特に汚いから、画面を暗くして人から離れて見てくれ!」
 
相模「・・・はぁ」

相模「お薬変えてもらわないと・・・」
  
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ある時、6歳の少年が海で溺れるという事故があった。

彼は突然、着衣のまま海の中へ飛び込んだというのだ。

「なんであないなことした?」と父親に尋ねられると、

彼は「波の下に都があるという声が聴こえたんです。
そして海の方を見てみますと、本当に竜宮城があるじゃありませんか。」と答えた。

彼は挙動不審で、目の焦点も合っていなかった。

彼には幻聴と幻覚の症状があると見られた。

彼の父親はうな垂れ、「この子を例の病院に入れなあかへん」と言った。

父親は近くにいた祖母に問う。

「せやけど、あそこは人死にも出るような物騒な所やて聞きます。
 実際どないどしたんや、母上。」

祖母は孫の頬を撫でながら、

「何も心配せんでええよ。わたいも行った所どすさかい。
 お友達がいっぱいできる、楽しい学校え。
 大事なお友達とお別れして、哀しい思いしぃひんかだけ、
 わたいは心配やけど・・・」

彼の祖母は海の向こうを見つめて、
何かの姿が見えたようにハッとして、そのまま肩を震わせて泣き崩れた。
473 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:16:42.94 ID:vgwpYOPq0

家の者の証言によると、海に飛び込む直前まで少年は剣状の簪で遊んでいたという。

父親はそれを家宝の草薙剣簪だと見なし捜索したが、

見つかることはなかった。
 
 
その少年は大地立青少年精神医療センターに送られ、そこの院内学校で学ぶことになった。

彼の名前は日本。

日本「はぁ、いつになったらここを出れるんだよ・・・」

彼は17歳になっていた。
 
 
さて、実を言うと日本少年はとんでもない学校の、
特にとんでもない時期に入れられてしまったのだ。

西病棟では神聖ローマ帝国やフランス王国らによる、
イスラム教徒の生徒たちとの喧嘩が日々勃発していた。
(西病棟委員長はビザンツ帝国であるが、
 彼はしばしばカツアゲされるなど、権威皆無のサンドバック的存在である。)

キリスト教徒の少年達はその喧嘩を十字軍と称し、
イスラム教徒の少年達は聖戦(ジハード)と称するという、
聞くに耐えない厨二病全開ぶりであった。

そして日本少年の所属する東病棟はというと、
型破りなガキ大将・モンゴル帝国が牛耳っていた。

彼は東病棟・西病棟の女生徒たちをレイプしまくり、
17歳という若さでありながら幾人もの子をなしていた。

そして彼に抗う男子生徒は皆、大怪我をさせられた。

性の乱れと暴力に溢れ、加害被害を問わずに生徒たちは日々恐怖した。

それにも関わらず、当時のアトランティス院長は特別な対処を一切しなかったのだ。
もっとも彼は元々水泳講師として当院に呼ばれたのであって、
契約外の仕事を放置するのは当然ともいえる。
(しかし、本来の水泳講師の仕事すらもやっていないとの批判の声もある。)

キチガイ学園の歴史上最悪の世代とすら噂されるのが、
このアトランティス院長時代である。

(と、かつての烏有先生は取調べの際に熱弁したという。
 また、現在のマクガフィン先生はことあるごとに
 「うるさい、アトランティス学級よりマシなはずだ」と言い、
 詰問する情報管理課職員相手に反論する。)
  
474 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:17:44.44 ID:vgwpYOPq0
 
しかしここ最近で転機が起きた。

モンゴル帝国はイクメン宣言をし、子育てに専念するべく、

東病棟委員長の座を末弟の大元ウルス(13歳)に譲渡したのだ。

小さな転機ではあるが、これを以って東病棟の主導権が元に移ったのだ。
 
 
このような環境で10年以上も暮らしていながら、
日本少年が無傷でいられたのは奇跡に近しい。

日本少年は、友人の高麗少年と親しく遊んでいた。

日本「蒙古野郎は近くにいないな?」

高麗「ああ、大丈夫みたいだ」

日本「くそっ!なんでアトランティス先生は何もしてくれないんだよ!」

高麗「あの人は生徒のことなんて何も考えてくれないんだ」

高麗「だから僕、大切な宝物は肌身離さず持ち歩いてるんだ」

高麗「そうそう、アルバムで見つけたんだよ、これ」

そう言って高麗は写真をポケットから出した。

防水カバーまで付ける慎重ぶりである。

中には三人の青年が写っていた。

日本「あん?それって・・・お前の爺さんか?」

高麗「違うよ、この見切れてる人は曾祖父さ」

高麗「この右の人は、曽祖父の友人の高句麗という人だよ」

高麗「この三人はよくつるんでいたから、曾祖母が撮ったんだって」

高麗少年の言う曾祖父は新羅であり、曾祖母は百済である。

写っている青年三人は左から順に新羅・日本(曾祖父)・高句麗だと考えられるが、

新羅は見切れて左腕が少々写っている程度である。
 
475 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:18:38.47 ID:vgwpYOPq0

日本「はあ?そんな古い写真なんで大事に持ってんだ?」

日本「しかも、自分の曾祖父さんの写りがあんまり良くないのに」

高麗「フフフ、良く見なよ。何か感じることない?」

日本「ええ?・・・・・・あっ!真ん中の人が俺にすごく似てる」

高麗「そんな人名前も知らないよ!そうじゃなくてさ」

日本「えー?じゃあ何の変哲も無い普通の写真に見えるが」

期待外れであった。

高麗「この高句麗って人、とても魅力的じゃないか?##」

日本「・・・んんん?」

高麗少年はホラホラと写真を見せるが、日本少年はいまいち理解できない。

日本「そうかあ?見た目、遊んでそうな軽薄男って感じがするぜ」

高麗「ムッ・・・そうかな、僕はそう思わないけどな」

高麗は写真をポケットにしまうと、そっぽ向いてしまった。

日本(何じゃこいつ)

日本少年は不審に思ったが、

院内で唯一の遊び仲間を失くすのが嫌だったので、

それ以上写真について言及しなかった。

そのとき、絹を裂くような悲鳴が聞こえた。

声の主は女生徒・南宋だった。

南宋「いやあああ!助けてぇ!誰かああああっ」

元「うるさい女だ、兄者は女には優しいから安心しろ」

南宋は元の肩に担がれ、いくら暴れても抜け出せない状態であった。
 
476 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:19:58.01 ID:vgwpYOPq0

大元ウルスは長兄のモンゴル帝国によく似ており、
13歳にはとても見えないほど背が高く、屈強な肉体の持ち主であった。

声を聞きつけて高麗と日本がやってきたが、
元の姿を見てすぐ物陰に隠れてしまった。

高麗「うわぁ、とうとう南宋ちゃんが元に連れ去られちゃった!」

日本「兄貴のとこに連れてく気だ!南宋ちゃんかわいそうに・・・」

日本「せっかくの美少女なのに、野蛮なモンゴルの性奴隷にされてしまうんだ」

日本少年は南宋の未来を想像した。
嫌がる南宋、そんな彼女の衣服を構わず破るモンゴル帝国・・・。

日本(・・・エッロいなぁ///)グヒヒ

そう思った瞬間、日本少年の全身に蕁麻疹ができた。
これは彼の一族歴代に受け継がれる呪縛によるもので、
少しでもハレンチなことが関係すると超常現象が起きるというものだ。

日本「かゆっ!かゆっ!かゆううううううううううう」ガリガリ

少年は苦しんでかきむしった。

そのせいで、彼らの存在が元に気づかれてしまった。

高麗「しまった!こっちに気づいた」

日本「ええっどうしよう!」ガリガリ

元「・・・」 南宋「離しなさいよこのゴリラ!」ジタバタ

元はじっと日本のほうを見つめる。

日本「ヒィッ」

元「・・・・・・ヵゎぃぃ・・・」ボソッ

元「##」プイッ

元はそれから目をこすりだした。
どうやら目にまつげが入り込んだらしい。
元は目の痛みに耐えながら、兄のもとへ少女を運んだ。

日本(なんだ今の・・・)ゾクッ

高麗「なんだかわからないけど、見逃してくれたみたいだね」

日本「ああ、でも南宋ちゃんが連れ去られてしまった」

日本「これで院内の女の子、マルムークさんを除いて全て蒙古野郎の餌食に・・・」

高麗「しかたないよ、誰もあいつらには逆らえないんだから」

日本「でもなぁ、蒙古野郎の横暴をこのまま許していいのか」
 
477 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:21:24.50 ID:vgwpYOPq0

少年らはそのまま別れ、日本は自室に戻った。

部屋の前には小さな小包が置かれていた。

日本「あ、父上からだ」

少年は父親に申し訳なく思っていた。

彼の父は元々、彼を自身の母校に入学させたがっていた。
彼の父は小中高と、名門私立の出身であった。
「さすがに中学には間に合うだろう」と、中学受験の勉強を息子にさせた。
「さすがに高校には間に合うだろう」と、高校受験の勉強を息子にさせた。
結果はというと、受験すら不可能であった。
彼はいつまでたっても退院させてもらえず、11年間このセンターで過ごした。
彼の父は落胆した。
一応高等部編入試験の勉強は続けているが、それもおそらく無理だろう。

日本(せめて大学には、華々しく入学したいものだけど・・・)

小包の中の封筒を開け、手紙を読む。

『息子よ、我が母校に通うことはできなくても気にする事はない。
 私はもはやお前に大学受験の勉強はさせない。
 そのセンターで受験勉強をしても、退院させてもらえないのなら意味がないからな。
 ちゃんと退院できてから、家で勉強を始めればいい。』

日本「ごめん、マジでごめん」

『ところで、お前に良い知らせがある。
 お前が入院するきっかけになったあの事件で、
 お前が紛失した草薙剣簪が見つかったのだ。』

日本「え?あー、そういえば・・・あれか。玩具にしてたなぁ」

何せ11年も前の話であるので、日本はあの事件のことを忘れかけていた。
あの頃の少年は、「蔵でカッコいい剣を見つけた」と大はしゃぎで、
そのまま簪を振り回して外を駆け回っていたのだ。
浜辺まで来たところで、知らぬ男の声が聞こえて―――その先は記憶が曖昧になっていた。
 
478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/20(火) 23:21:44.77 ID:pAsqQDJM0
まさかの元ホモ疑惑
479 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:22:23.95 ID:vgwpYOPq0

『草薙剣簪を部屋に飾っていたところ、毎日怪奇現象に見舞われた。
 気持ち悪いからお前に預かってもらおうと思う。』

日本「おい!」ガーン

『お前はこの簪と不思議な縁がある。
 お前の側にこの簪を置くことで、この簪の供養になるのではないかと思う。
 そして、それによってお前も退院できるのではないかと期待する父である。』

日本「えー?そうかな」

日本「てことは、この箱の中に・・・あれが入ってるのか?」

少年は恐る恐る箱を開けた。
中の包み紙を取ろうとしたそのとき―――

ピンポーン

少年は作業をやめて扉へ向かった。

日本「誰だー?」

||高麗「ぼっ僕だよ・・・あっ・・・開けてぇっ///」

日本「どうした?喋り方変じゃね?」

||高麗「んっ・・・気にしないで、とにかく・・・中に入れてくれ!」

ガチャッ

日本はいつものように、扉を開けてしまった。

日本「!!!!????ウ、ウワァァァァァァァッッッ」ガクガク
 
480 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:23:22.44 ID:vgwpYOPq0

高麗「えへへ・・・ごめんねぇ日本・・・僕っコッチ側だった///」

日本少年の目の前には、東病棟委員長・元と
それに尻の穴を突かれて喜んでいる友人の姿があった。

元「・・・日本##」ポッ

日本(ゾゾゾ

高麗「にっ日本もこっちに来いよ///気持ちいいよォッ」

日本「うわあああ!うわあああああああ!あわあわああああああああああ!」ガクガクガク

日本は腰を抜かしてしまい、恐怖のあまりうまく喋ることもできなかった。

元は高麗と合体したまま、日本の腕を掴んで引っ張ろうとした。

日本「ややややややあばばばばばばばばばばばばば」ガクガクジタバタ

バチィン!
ビリビリビリ

元「ぐおっ」 高麗「し、シビレルゥ!」

元が日本を部屋の外へ引きずり出そうとしたとき、全身に猛烈な電流が走った。
元(とくっついてる高麗)が思わず日本の腕を放して外へ出てしまうと、
扉が独りでに閉まって鍵までかかった。

ガチャン!ガチャッガチャッ

元は何が起こったのか理解できないといったふうに、扉を凝視した。
一方で、日本自身にも何が起こったのか理解できなかった。

日本(な、なんだ今の!?勝手に扉の鍵が閉まったぞ?)

日本(ま、まあいい!とにかく、部屋の奥に逃げないと・・・)

日本は這いずりながら部屋の奥へ向かった。

扉の外からは元の怒声が聞こえた。

||元「この!お前の紹介なら日本は必ず来てくれると言ったじゃないか!」

||元「完全に嫌われた!どうしてくれるんだ貴様!」

||高麗「ごめんなさぁい!ちが、ちがうんですよぉ」

||高麗「あいつは照れ屋なんです!あれもきっと愛情表現の一種ですよぉ」

||元「本当か?じゃあ俺に脈アリだと見なしていいんだな?」

日本(て、適当なこと抜かしやがって高麗め!絶交してやる!)
 
481 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:24:27.49 ID:vgwpYOPq0

日本は草薙剣簪の箱を手にとって、奥の押入れに避難しようとした。

すると、包み紙の中からモクモクと霧が上がった。

日本「!?」

モクモクモク・・・

部屋の中には瞬く間に雲海が出現する。
雲の中には古風な青年が立っていた。

出雲「八雲立つ出雲八重垣妻ごみに八重垣作るその八重垣を」

日本「な、なんだあああ」

出雲「私は出雲。この簪を作った主である。そして、お前の先祖の一人でもある」

日本「じゃあ幽霊?」

出雲「まぁそうなるな」

日本「わあああああああああああ!!!!!」

出雲「落ち着け、我々はお前を救いにきたのだ」

出雲は雲の奥を明らかにした。

奥のほうでは人影がさらに3人、
両手足を縛られた青年が一人と、そばに青年と若い娘がいた。

筑紫「放せええええええええええ!放せクソ共ォォォォォ」ジタバタ

大和「クックックックッ」 尾張「うふふふふふふっ」

出雲「あやつらもお前の先祖達だ」

出雲「お前はかつてこの簪で遊んでいた時に謎の声を聞いたな?」

日本「は、はぁ」

出雲「あの声は私だ。畏れを知らぬ小倅を殺してやろうと思ってな」

日本「えーーー」ガビーン

出雲「だから私には逆らわんほうが良いぞ」ニッコリ
 
482 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:25:27.52 ID:vgwpYOPq0

出雲「しかしいくら私とて、子孫がホモの餌食になるのは可哀相でな」

出雲「そこでお前に提案があるのだ。飲むか飲まないかはお前しだいだが・・・」

大和「よぉ、俺の子孫!散々な目にあったなw」

大和「お前さ、エロいこと考えると不思議なことが起こるだろ?」

日本「え?ああ!そういえばさっきも蕁麻疹がでました」

大和「それに、さっきホモ2人に襲われたときも静電気が流れたりしただろ?」

出雲「それは拘奴の代より始まる呪いでな、お前たちの子孫繁栄を阻む呪いなのだ」

大和「お前がスケベしようとしても発動するし、スケベされそうになっても発動するんだ」

日本「そ、そうだったのか!なんてひどい呪いだ」

大和「だが、経験でわかると思うがたいした呪いじゃないんだ」

大和「震度3くらいの地震が起きたり、電車のダイヤが乱れたり、ちょっと運悪くなるだけ」

大和「つまり、お前がレイプされたとしてもその程度だということだ」

日本「そんな」

大和「そこで相談なんだが、この呪いを強化する方法があるんだ」

出雲「我らの力と連動させることで、呪いを致死レベルに上げることができる」

大和「まあ・・・そうしたら自分も危なくなるんだけどな。どうする?」

日本「あー・・・えっと・・・」

日本「呪いはそのままにして、別にあなた方の力を借りるってわけには」

出雲「貴様、代償なしで私を使役するつもりか?いい度胸だ」ギロリ

日本「ひぃ、ごめんなさい!」

大和「すまんな、俺にお前を守る権限はないんだ・・・」シュン
 
483 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:26:16.09 ID:vgwpYOPq0

出雲「自分の呪い被害を代償に、これが私の許容し得る最低条件だ!」

ドォォン!ドォォン!

日本「何だ!?」

出雲「先ほどのゲイ2人だろう。扉を突き破ろうとしているな」

||高麗「にほーん!出ておいでよ、怖くないからさ」

||高麗「さっきは驚かせちゃってごめんねーーっビックリしたよね」

||高麗「大丈夫!元様は友達から始めたいっておっしゃってるから!」

||元「日本・・・怖くないから出ておいで」

||元「がっつくのはやめるよ。君のペースに合わせよう」

暴君の元にしては、だいぶ譲歩しているらしかった。

そもそもが高麗の招いた誤解なのだが。

日本「どうしよう!」

出雲「さぁどうする?自力で立ち向かうという道もあるが」

出雲「相手の剣を木の棒にすり替えて斬りかかるくらいの卑怯な手でも使ったらどうだ?」

大和「あれ?まだ根に持ってる?やだねー」ケラケラ

大和「今よりキツくなるのは確かだが、調節は出来るんだぜ?」

大和「『主人公補正効いてんな』から『もはやこいつがラスボスだろ』レベルまで」

大和「そうなると『彼女が膣痙攣起こして救急搬送』から『煩悩を滅せよ』になるけど」

大和「お前がどのへんまで我慢できるかによるよ」

出雲「ええい面倒臭い、いっそなすがままに掘られるか」イライラ

日本「それだけは嫌です!」
 
484 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:27:09.89 ID:vgwpYOPq0

少年は考えた。

日本(どうしよう、年下だけど元に敵う気がしない)

日本(しかも高麗だってそんなに喧嘩弱いわけでもないんだ)

日本(二人に囲まれたらまるで勝ち目が・・・)

日本「・・・わかりました」

日本「お願いします。俺を助けてください」

出雲「よし」

大和「おーい!尾張ちゃん!スタンバイできてる?」

尾張「はい!水圧カッターの準備できましたぁ!」

筑紫「やめてくれえええええええええええええええええ」ジタバタ

日本「ちょっと待った!」

日本「あ、あの人をどうするつもりですか!?まさか」

大和「ああ、バラバラにして8つに分けるぞ」

日本「そんなの酷すぎませんか!」

出雲「お前の呪いと我らの力を連動させるために必要なことだ」

出雲「筑紫を贄にすることで、私と大和がノリノリになる」

日本「ノリノリになるだけすか!」

大和「尾張ちゃんのお肌もツヤツヤになるぞw」

筑紫「貴様ら絶対許さんぞ!許さんから!」ジタバタ

出雲「よいか小僧、世の中は残酷な仕組みになっているのだ」

出雲「一人が楽をすればどこかに必ずしわ寄せが来る・・・世の常よ」

出雲「お前とこの筑紫を連動させる」

出雲「そうして筑紫の神力がお前に、お前のダメージが筑紫に行くのだ」ニヤリ
 
485 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:28:04.22 ID:vgwpYOPq0

大和が筑紫を足蹴にする。

大和「へーい筑紫ィ、今どんな気持ちだ?ハッハッア!」

大和「悪いねぇ、俺には十種神宝の保護があるから出雲も手を出さないんだ」

筑紫「くそったれ大和!」

大和「子孫よ、こいつなら大丈夫だ。案ずることはない」

大和「なんせ一度死んでるからな!霊体だからすぐに復活できる」

出雲「だからお前は自分の心配だけしていればいい」

日本「そうですか?じゃあ、それで」

筑紫「!」

筑紫「ちょまっ・・・ままま」

尾張「いっちゃいま〜〜〜〜すww」チュィィーーーーン

キュルキュルキュルキュルチュチュチュチュチュ

筑紫「うああああーーーーーーーー!!!!!!!」

日本「うわっ」

筑紫の断末魔の叫びが部屋中に轟き、

その惨状に日本は思わず目を背けた。

筑紫「あああああああああああああああああああああああああ!!!」
 
486 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:29:00.09 ID:vgwpYOPq0

筑紫「痛いいいいいいいいいい!!!!死ヌァァァァァァァァ!!!」

キュルキュルキュルキュルチュチュチュチュチュキュルキュルキュルキュルチュチュチュチュチュ・・・ウフフフフフフフフフ、モット、サケビナサイ!

ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ・・・・・・・・・キュルキュルキュルキュルチュチュチュチュチュ・・・ぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・キュルキュルキュルキュルチュチュチュチュチュ・・・ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

日本「うわぁ、見てられない・・・ほ、本当に復活するんですよねあの人!」

ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁオホホホホホホホホホホぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・キュルキュルキュルキュルチュチュチュチュチュ・・・アラ、キリソコナッタワモウイチド!・・・ぃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・キュルキュルキュルキュルチュチュチュチュチュ・・・ぅゎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

大和「うん」 出雲「復活はするぞ」

ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁウフフフ!ルーンルン♪ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・イイカンジニナッテキタワァ///・・・ぅぅぅぅ・・・キュルキュルキュルキュルチュチュチュチュチュ!ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・

尾張「終わりましたー☆」ツヤツヤ

筑紫「」デロリアン

日本「うわぁグロ・・・ッ元に戻るんですよね」

大和「うん」 出雲「痛みの記憶はそのままだが」

日本「酷いじゃないですか!」

大和「そうだな、少し可哀想なことを出雲がしたかもしれない」

大和「筑紫を慰めるためにも、彼をそう・・・八幡神とでも呼んで崇めてやれ」

出雲「言いにくかったら8マン(エイトマン)と呼ぶがいい」

日本「エイトマン?!」

大和「これを以って、この簪を節刀(せちとう)として君に与えよう!」キリッ

出雲「さぁ、そろそろゲイたちが扉を突き破る頃だ」

大和「頑張れよエイトマン、応援してるぜ」

日本「俺がエイトマンになってんじゃねーか!」
 
487 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:31:03.85 ID:vgwpYOPq0

みるみるうちに雲海は消え、
部屋には少年と簪だけが残された。

日本「今のは現実だったのか?」

ガシャアアン!!

日本「わっ!」

ついに部屋の扉は破られてしまった。

高麗「日本、何で出てきてくれなかったんだよ・・・」

高麗「元様は君に合わせてくれるって言ってくださったのに、我儘だなぁ」

高麗「元様はすっかりお怒りだよ?」

元「・・・」ブチギレ

日本(やべぇ、俺殺されるかも)ゴクリ

そのとき、日本少年の頭の中で声が聞こえた。

>>筑紫「おい、俺だ。お前の先祖の筑紫だ」

日本(え?もしや、さっきバラバラにされてた人?)

>>筑紫「ああ。出雲と大和は鬼畜だからな」

>>筑紫「まぁあれはあれで仕方のないことではあったがな」

>>筑紫「俺の身体を聖数の8に分割することで」

>>筑紫「我ら統合の印たる大八洲の象徴となり、お前との連動が可能となる」

日本(なるほど、わからん)

>>筑紫「とにかくだな、俺はお前のやりたいように融通してやる」

>>筑紫「ただし、やりすぎたらお前の首を絞めるだけだということを忘れるなよ」
 
488 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:32:06.03 ID:vgwpYOPq0

>>筑紫「じゃあ、簪を手に取って一振りしてみろ」

日本は言われた通りにした、すると草薙剣簪は本物の剣のように大きくなった。

日本「かっけぇ・・・!」キラキラ

男はいくつになっても、棒切れを持つと振り回したくなるものである。

>>筑紫「むしろこっちが真の姿だ。どんどん敵を薙ぎ倒すがいいw」

日本「言われなくてもそのつもりだ・・・」ニヤリ

>>筑紫(おろろ?)

「で、できるかなぁ?」とか「無理っす!」とかの返答を筑紫は想定していたのだが、
少年の反応はそれとは違っていた。

日本少年は邪悪にすら思える不敵な笑みを浮かべて、
元と高麗の方へ駆け出した。

筑紫の神力を帯びた少年の脚は、風の如く疾い。

高麗「わっ!?」

日本少年は友人の肩に手を置いて飛び越え、元の目の前に現れた。

元「!」

日本「や、元!迎えに来てくれたんだな?俺をどこに連れてってくれるんだw」

日本は元の右手を掴み、自分の左頬に当てる。

元「お、おう///」
 
489 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:32:44.14 ID:vgwpYOPq0

元が日本を抱き締めようとしたとき、

日本(ニヤッ

メキメキメキ・・・ピシッ・・・ピシッ

パキ・・ベキベキベキ・・・

バッキャアアアアアン!!!

高麗「うわあ!」

消火栓が破裂して、壁が砕け散った。

ビチャビチャビチャ・・・

元「なぜ」

日本「ふーん、この程度か」

日本「つまらん。もっと盛大に暴れたいのに」チッ

高麗「に、日本が・・・見たことないくらい冷たい目をしてる」

日本「おいお前、兄貴のとこ行ってこいよ。後で俺も行くからさ」

日本「どうせテントの中でクソみたいなガキ共と一緒だろ?殺しがいがある」

元「そんなこと、させるものか!」

日本「お前の話には興味ない。ほら、さっさと行けよ。遅いんだ・・・」

日本「よっ!」ヒュッ

ブワァッ

ズバッ

元「ぐっ・・・」

日本が剣を一度振ると、猛烈な風が起こって元は吹っ飛ばされた。
ただの風ではなかったらしく、元の腹部に生々しい傷がついた。
 
490 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:33:53.92 ID:vgwpYOPq0

高麗「元様、ここは逃げましょう!あいつは正気じゃない!」

元「し、しかたがない・・・兄者たちに知らせないと」

元は高麗とその場を離れつつ、後ろを振り返って日本を見つめた。

元(俺は・・・君と愛し合いたかっただけなのに、どうしてこうなったんだろう?)

ガチホモ2人はモンゴル帝国の居ましますテントへと急いだ。

>>筑紫「おい日本!やりすぎじゃないのか?」

日本「やかましい、お前は俺に力を貸せばいいだけだ」

日本は不気味な声をあげて、腹がよじれるほど大笑いした。

日本「フフフフフフ・・・いいねぇ、これが全能感ってやつなんだねぇ・・・!」

日本「族滅っ族滅できるんだなァこれから!たーのしーみだーwwwwww」

日本「族滅!族滅!族滅!族滅族滅族滅族滅族滅族滅族滅族滅族滅族滅族滅族滅族メツゾクメツゾクメツゾクメツゾクメツゾクメツゾクメツゾクメツゾクメツゾクメツゾクメツゾクメツゾクメつぞくめつぞくめつぞくめつぞくめつぞくめつぞくめつぞくめつぞくめつぞくめつぞくめつぞくめつっ族滅――――ッ!!!!」アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \

>>筑紫(ゾクッ

>>筑紫(おかしい!この子はこんなんじゃなくて、もっと優しい子のはずだ)

>>筑紫(術をミスった?切られる時、痛みのあまり何度か気絶したのがまずかったか?)

>>筑紫(何とかして止めねば、だが力の主導権を完全に奪われてしまっているし)

>>出雲「フフフ、流石我が子孫。上出来だ」

>>大和「俺に負けないくらい悪い子になっちゃって、嬉しくて涙が出るぜ」

>>筑紫「何だと?貴様らまさか、この子にまた変な術でもかけたんじゃ・・・」

>>大和「あん?人聞きの悪いこと言うなよ、ツクシ野郎」

>>筑紫「だってお前ら日頃の行いが悪いし!」
 
491 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:34:59.05 ID:vgwpYOPq0

>>出雲「貴様の方こそ何を言っている?予想通り、いや、むしろ良い方向に上回ってくれた」

>>筑紫「は?いやいや明らかに異常だろコレ!完全にキチガイと化してるじゃん!」

>>出雲・大和「?」

>>筑紫「この子は普通の子だろ!こんな精神病院に入れられてるのは出雲のせいだし・・・」

>>出雲「おい待て、なぜ私のせいなんだ?キチガイが精神病院に入るのがおかしいか?」

>>大和「まぁ、周囲にバレるきっかけを作ったって感じ?」

>>筑紫「お前が波の下に都がーとか言うから幻聴扱いされたんだろ?忘れたのかよ」

>>出雲「私は確かにそう言ったが、それだけだぞ?」

>>筑紫「・・・へ?」

>>出雲「竜宮城だの鮫の王だのが見えて海に飛び込んだ件について、私は一切関係ない」

>>大和「こいつは元々ぶっ壊れてんだよ?気づいてなかったのかお前」

>>筑紫「・・・え?ええーー・・・」

>>大和「たぶん剣を握ったら壊れてるのが外に出ちゃうんだな。もはや二重人格?」

>>出雲「あの時から目をつけていたのだ、こいつは良い剣の使い手になるとな!」

>>筑紫「そんなァ、じゃあもう止められないのか?」

>>出雲「そういうことになるな」

>>筑紫「くそっ・・・おい山背(やましろ)!こいつらなんとかしてくれよ!」

>>筑紫「山背!山背ーーッどこにいるんだあいつ」

>>大和「いやいや、山背くんはもうここにはいないよ?」

>>大和「彼はこの学校に来るのが嫌だったらしく、屋敷に残ったよ」

>>筑紫「何ィ」
 
492 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:35:50.45 ID:vgwpYOPq0

>>出雲「今頃は相模と武蔵を胃潰瘍にする遊びに勤しんでいるだろう」

>>筑紫「陰湿!」

====これが山背のイケズだ!!====

・「名前で呼べ?あんさん、雀さんを名前で呼ばはるんか?呼ばへんやろ?アズマエビスはアズマエビスや」とか相模たちに言う。

  ※雀には敬称を付けるのがポイントである。

・「日本語上手やなぁ」とか相模たちに言う。

・「大和くん?あの人より僕の方が有能やろ」と本人の前で言う。

・「あんさん、僕らの仲間とちゃうやろ」とか播磨たちに言っちゃう。

・裾を引きずって歩く人がいれば、「お掃除ご苦労さんどす」とかすれ違いざまに呟く。

・いつのまにか「山城」と名乗っている。

・「あの人品無いよって」と浪速をボロクソに言う。

==============================

>>筑紫「畜生!クソ大和を止められるクソ山背がいないとは!」

>>筑紫「日本やめるんだ!おっぱいひっつき虫になる野望が叶わなくなるぞ!」

日本「うるさい黙れ」


その頃、元たちはモンゴル帝国のいる庭に到着していた。

庭ではモンゴル一家のゲル群が並んでいる。
元はその中でも一等大きいゲルの中に入る。

元「兄者!大変なことになりました!」

モンゴル「おう、どうした」パンパン

南宋「いやぁぁぁぁ!ううっ・・・」
 
493 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:36:37.59 ID:vgwpYOPq0

元「教えてください兄者、可愛い子を見たらどうするのが正しいのか」

モンゴル「そんなの決まっている、即押し倒せ!このようにな!」パンパン

南宋「悔しいっ・・・こんな奴に・・・あひぃ!」ビクンッ

元「そうですよね、だから俺もそうしようとしたんですよ」

元「でもうまく行かず、逆にその子を激怒させてしまいました!」

元「もうじきその子が俺たち一家を殺しに来ます!」

モンゴル「・・・何?」

モンゴル(そんな勝気ないい女、マルムークの他にいたかな?)

モンゴル「案ずるな弟者よ、この俺が躾してやる」

高麗「でもっあいつ狂ってますよ!はっきり言ってキチガイです!」

モンゴル「いいなーw強い子を産みそうだ」

高麗「はい?」キョトン

元は他のゲルに行って甥姪を回収し、彼らを西病棟へ運んだ。

イル「どうした東病棟委員長殿、こんなところに甥たちを連れて来て」

元「そんな、委員長殿なんて堅苦しいですよイル兄者」

元「東病棟が危ないので、この子たちを預かってもらいたいのです」

実はモンゴル6兄弟のうち、2人は西病棟に在籍していたのだ。

長男のモンゴル帝国(17歳)、次男のオゴタイ・ハン国(16歳)、
三男のチャガタイ・ハン国(15歳)、六男の大元ウルス(元、13歳)は東病棟に在籍。

四男のジョチ・ウルス(キプチャク・ハン国、14歳)と、
五男のイル・ハン国(14歳)は西病棟に在籍していた。
このうち四男のジョチだけは異母兄弟である。
 
494 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:37:19.77 ID:vgwpYOPq0

元「俺の惚れた子が一族を皆殺しにすると言って・・・」シュン

イル(東病棟にはそんな強烈な娘がいるのか、怖いな)

元「初めに西病棟に来るとは思いませんが、一応警戒してください」

イル「いや、その前にここもそんなに安全じゃないんだが」

イル「わかってると思うが、十字軍(笑)があるからさ」

元「ああ、あれですか。キリスト教徒は中々の気違い揃いだと聞きます」

イル「いや、俺はビザンツと組んでるんだよ」

イル「ジョチの奴がマルムークと手を組んで俺を殺そうとしているからな」ギリッ

元「ジョチ兄者が?!」

イル「あんな奴は兄でも何でもねぇ」

イル「まぁ流石にジョチも兄者の子たちは襲わねぇと思うがな」

イル・ハン国は元が連れて来た赤子たちに話しかける。

イル「いいか、お前らは兄弟なんだろ?幸せそうだなぁ"今は"」

イル「でもな、兄弟同士の争いは他人のそれより溝が深いんだぜ・・・」

イル「早いうちに理解しとく方が傷が浅く済むんだよ」

元「兄者、赤ちゃんにそんなの言っても理解できませんよ」

イル「いいでちゅか、ジョチおぢちゃまは悪い人なんでちゅよー」

イル「ジョチおぢちゃまみたいになっちゃ絶対にメッ!でちゅからね」

元「言い方の問題ではないと思いますが」

甥姪を五男に預けた元は、大急ぎで東病棟に戻った。
 
495 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:38:18.72 ID:vgwpYOPq0

東病棟の庭(のゲル内)では、長男次男三男が集まって話していた。

元「ただいま戻りました!」

モンゴル「ご苦労、それでさっきの話だがな」

モンゴル「俺たちの自衛はするが、できる限りお前自身で対処して欲しい」

モンゴル帝国は目で「わかってくれよ」と語った。

元「はい」

次男と三男は末っ子に冷たい眼差しを送る。

オゴタイ「俺たちの力なんか必要ないよな?"委員長"!」ケラケラ

チャガタイ「だいたいさ、好きな子くらい自分で落とさないと〜」ニヤニヤ

元「・・・」

次男と三男、そして西病棟の四男は末の弟を激しく嫌っていた。
長男が東病棟委員長の座を彼に与えたことが気に食わないのだ。
そして、長男もこれ以上末っ子に肩入れするわけにはいかなかった。
モンゴル兄弟間の闇は深い。

その頃、見張りに出されていた高麗が馳せ参じた。

高麗「元様大変です!日本が来ます!」

元「おいでなすったか!」

モンゴル「どれどれ、お前の惚れた娘とやらは」

先ほど一切手伝わないと宣言した次男三男も、

末弟の惚れたという相手を見ようと前に出た。

ドドドドドドドド・・・

元たちは恐ろしいものを見た。
 
496 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:38:57.31 ID:vgwpYOPq0

まず日本少年の目・・・養豚場のブタでも見るかのように冷たい目だった、残酷な目だった。
「かわいそうだけどあしたの朝にはお肉屋さんの店先にならぶ運命なんだね」とでも言いそうな。

そしてその背後、数え切れないほどのコンクリート片が渦巻いていた。

これらは皆、草薙剣簪で薙ぎ払われた建物の破片である。

元が少年の目をじっと見ていると、そのコンクリートが元めがけて飛んできた。

ビュンビュンビュンビュンビュンッ
ガシャーンガシャーンパリーン

元は間一髪で避けたが、高麗にはいくつか直撃した。

高麗「死ぬっ」グフッ

これは元少年が日本少年の冷淡な目に対して「むしろご褒美だ」と深層心理で思ってしまったためである。

13歳の元少年は思春期真っ只中であり、そういった思考を完全に封印することは不可能である。

また、そんな些細な思惑が反映してしまうほど、日本少年の呪いは強化されていたのだ。

一方の日本少年は破廉恥なことを一切考えない、純粋な殺戮マシーンと化していた。

日本少年とデート、隙あらばレイプするつもりだった大元ウルスは、
思いを遂げられない悔しさや殺される恐怖を超えて、哀しくさえあった。
ところでモンゴル帝国他はというと、二通りの意味で驚愕していたのだが・・・。

心底恐ろしく思いつつ、元は日本を長兄に紹介した。

元「あの子です、可愛いでしょう?」

モンゴル「・・・あ、いや・・・」

モンゴル「弟者よ、俺はお前を驚かせてしまうかもしれない」

元「はぁ」
 
497 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:40:01.00 ID:vgwpYOPq0

モンゴル「弟者、非常に言いづらいのだが」

モンゴル「あいつは男だぞ!」

元「存じておりますよ」

モンゴル「」

モンゴル「・・・そうか、驚いたのは兄者の方だったな」

そう言ってモンゴル帝国は倒れた。

ドサッ

オゴタイ&チャガタイ「兄者ァァァァァァァッ!!!!!」

元「あ、兄者!?いかがなさいましたか?」

オゴタイ「この、不孝者!兄者に何てことを!」

チャガタイ「兄者は父親代りで、これまで一人で俺たちを育ててくださったのに・・・」

チャガタイ「まさか我が一族からゲイが出てしまうとは!」

オゴタイ「兄者がショックあまり気絶なさったじゃないか!」

元「そんな、俺はいつでも兄者の言う通りに・・・」

オゴタイ「黙れ、これ以上お前の近くに兄者を置くわけにはいかない!」

チャガタイ「早く医務室へ運ぼう!」

次男三男は長男を抱えて運ぼうとしたが、

日本「おっと、揃っていてくれないと困るじゃないか」

日本「俺はお前らを族滅するために来たんだよ?そこの弟から聞いてない?」

日本「お前らを殺せばそれだけ経験値が上がるんだよ。特に先代と今の委員長を殺せばさ」

日本「なるべくたくさんの人間に死んで欲しいね。たっぷり巻き添えを食らわせてね」

日本「もちろん裏切り者の高麗は絶対殺すし」

高麗「そんなァ!」ガーン
 
498 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:40:38.89 ID:vgwpYOPq0

日本の心に、弱った筑紫が語りかける。
筑紫の超自然的な身体能力は日本に全て渡り、代わりに日本のダメージを引き受けるのだから、弱って当然である。

>>||筑紫「やめるんだ・・・お前の首を絞めることになるって言ってるだろ」

>>||筑紫「おっぱいしゃぶり虫になるという夢は捨てちゃったのか!?」

>>||筑紫「このままだとお前は一生海水浴場のギャルを拝むことが叶わなくなるぞ!」

>>||筑紫「いや、美人を見ただけでも呪いが発動するかもな。そうなったら外歩けないぞ!」

日本「うるさいな、あんたは大人しく俺に力を貸せばいいんだよ」

>>||筑紫「うう・・・」

>>||筑紫(も、もう喋ることもできない・・・苦しい)

日本は完全に力に飲まれていた。
それを見て、出雲は静かに笑った。

------その頃西病棟では------

イル「この蒙古斑が目に入らぬかぁ!」

イル・ハン国は赤ん坊の小さな尻を敵に見せつける。

彼は長兄の子どもたちを周囲に侍らせ、オムツを取り替えていた。

ジョチ「ぐぬぬぬぬ・・・!卑怯だぞ貴様!」

ジョチ・ハン国の隣にいるクール・ビューティは例のマルムーク嬢である。

マルムーク「何やってんの、ガキごと殺ればいいでしょ?」

ジョチ「ダメダメダメ!あれ偉大な兄者の子たちだから!俺の甥たちだから!」

ジョチ「偉大な兄者に恨まれちゃうじゃないか!そんなの耐えられない!」

マルムーク「ブラコンうっざ」

ジョチ「このゲス野郎!よりにもよって、兄者の子を盾にするとは!」

イル「黙らっしゃい!子守中に襲いかかる方がゲス野郎だろが!」

イル「そら、これでもくれてやんよ!」ポイポイポイ

イル・ハン国は使用済みの紙おむつを投げつける。

ジョチ「やめろ!」

--------------------------------
 
499 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:41:17.21 ID:vgwpYOPq0

日本「なんだ?その目は」

日本「まるで俺が酷いことしたみたいじゃないか」

日本「俺が死んで悲しむ奴はいないけど、お前らが死んで喜ぶ奴は大勢いるぜ」

元「・・・」

日本「フン、小さなガキ共は既にどこかへ移したか」

日本「なぁ、最近裏庭で鳥が大量死したの知ってる?」

日本「たぶん何かの病気なんだと思うけどね、残酷だよねぇ野生って」

日本「というわけでさ、大量の死骸がそのままなんだよーアトランティス先生仕事しないから」

日本「せっかくその死骸を、赤ちゃん達にプレゼントしようと思ったのになー」

日本「ほら、俺だって無抵抗な奴殺すのは気が引けるし?これでも子ども好きなんで」

日本「父親も叔父達も皆殺した後、生かしておくのが可哀相だから病気にしとこうってね」

高麗「なんて奴だ・・・この人でなし」

日本「お前らみたいなのが人としてあるべき姿なら、俺は人を辞めるぞ」

元「・・・っ・・・どうして・・・」

大元ウルスはデカい図体に似合わず(されど彼はまだ13歳であったと気づかされるが)
大粒の涙をボロボロと流した。

元「どうしてわかり合えないんだよ、俺と君はぁ!」

日本「お前がホモのレイプ魔だからだと思うよ」キッパリ

元「うわあああああああん!」
 
500 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:42:09.42 ID:vgwpYOPq0

高麗「そこまでだ日本!こいつがどうなってもいいのか!」

南宋「ううっ・・・」

高麗は先ほどまでモンゴル帝国に手篭めにされていた南宋の喉元にガラス片を突きつける。

高麗「僕は知ってるんだ、お前が彼女に憧れていたことを!」

高麗「いつも蕁麻疹とか腹痛とか起しながら、彼女をオカズにしてたもんな!」

南宋「うう・・・どいつもこいつも男ってクズだわ!死ね!死に絶えろ!」

日本「その節は大変お世話になりました、宋ちゃん」

南宋「死ね!」

日本「安心してよ、呪縛のお陰で大した妄想はできてない」

日本「俺への精神攻撃を図ったつもりだろうが高麗、お前のホモが露呈した今尋ねよう」

日本「まさか、お前は俺をオカズにしたことなんてないよな?」

高麗「・・・」

高麗「・・・///」

その時、高麗の顔面めがけて腐敗した鵲の死骸が飛び込んだ。

高麗「オエッ!オエエ・・・何で僕ばかりこんな目に」

日本「やっぱコイツ消すわ」

南宋「もう嫌こんなとこ・・・いち早く退院したい」グスン

高麗「僕は信じてるぞ、お前が本当は優しい人間だって!」

高麗「この女の命が惜しければ、大人しく僕や元様に屈服するんだ!」

南宋「憶(おぼ)えてなさいよあんたたちィ・・・後で殺してやるから、ぶっ殺してやるからァ」

日本「大丈夫だよ宋ちゃん、助けれたら助けるからね」
 
501 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:42:58.39 ID:vgwpYOPq0

日本「君が生きてたら絶対に助ける。生きてたらね」

そう言って日本は剣を一振りした。
猛烈な風が起こり、高麗と南宋は数メートル先に吹き飛ばされた。
その際、高麗は持っていたガラス片で左腕を刺してしまった。
危うく南宋にそれが刺さるところであった。
日本は彼女にかまうことなく風を送ったのだ。

高麗「痛ぁい!」

南宋「くぅ・・・ふふっ・・・あはははははははははははは!」ガクガクガク

彼女の心はとうとう壊れてしまったらしい。
彼女を救う者はいない。

南宋「狂ってるわ・・・みんな、みんな狂ってるんだわ!」

南宋「私以外みーんな狂ってしまったのよ、いいえ、最初から彼らは頭がおかしいのよ!」

南宋「私一人だけがまともなの!だから皆は私に酷いことをするのだわ!」

南宋「私はね、正気を帯びているの!いくら汚されようとも、常に正しく美しくいられるの!」

南宋「お兄様!今わかったわ、私はお兄様のものよ!」

このお兄様とは、彼女の実兄・北宋のことだと思われる。
実は彼女は一線を越えたブラコンであり、
愛情の裏返し、兄に対する深刻な嫌がらせ行為が原因で当センターに入院していたのだ。

その音調はトテも人間の肉声とは思えないほどしゃがれてしまって、ただ、底悲しい、痛々しい響であった。

それが男達による陵辱に対する怒りなのか、
それとも裁判所命令が出ているので兄との再会が叶わないがための嘆きなのかは判断しようがない。

南宋「お家に帰ったら、清く正しいお兄様の妻になります!よろしいでしょ、お兄様!」

南宋「……お兄さま。お兄さま。お兄さまお兄さまお兄さまお兄さまお兄さま。……モウ一度……そのお声を……聞かしてエ――ッ…………」

南宋「……お兄さまお兄さまお兄さまお兄さまお兄さま……お外で一人暮らしてらっしゃるお兄様……わたしです。わたしです。お兄様の許嫁だった……あなたの未来の妻でした私……わたしです。わたしです。どうぞ……どうぞそのお声をモウ一度聞かして……聞かして頂戴……聞かして……聞かしてエ――ッ……お兄様お兄様お兄様お兄様……おにいさまア――ッ……」

チャガタイ「ひえっ!こいつらキチガイだ!」

オゴタイ「シッ!こっちに火の粉が飛んできたらどうする、早く兄者を連れて避難しよう」

ヤンデレの妹をさらにヤンデレ化させたモンゴル帝国たちの罪は重い。
 
502 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:43:48.32 ID:vgwpYOPq0

西病棟への避難を試みるオゴタイたちを日本は見逃さない。

日本「逃がしゃしないよ」

モンゴル一族を族滅するべく与えられた節刀をオゴタイ達に向ける。

元「待った!」

元は兄達の前で仁王立ちになる。

元「兄者たちを殺すのは俺を倒してからにしろ!」

オゴタイ「元、お前・・・」

元「東病棟委員長として、異分子を排除する責任がある!」

次男三男も元を憎んでいたし、元も彼らを心底嫌っていた。
しかし、いざ兄たちが殺されそうになると元はそれを嫌がった。
深層心理では彼らを愛していたのかもしれないし、
彼らに自分を認めて欲しかったのかもしれない。
とにかく元は、彼らを守らねばならないという強い意志に突き動かされていた。

オゴタイ「・・・」

オゴタイ(・・・ずるいじゃないか、委員長の地位だけでなく)

オゴタイ(カッコいい見せ場まで取ってしまうとは、だから嫌いなんだ)

そもそもこの兄弟間の対立は、東病棟委員長の地位が主な原因であった。
弟達はみな次の委員長は次兄のオゴタイがなるものだと思っていたし、本人もそうだと信じていた。
それなのに、尊敬する長兄は末弟に地位を譲ってしまった。
三男と四男は次男こそふさわしいと彼を担ぎ、五男は末弟を応援した。

末弟に庇われたことで、オゴタイは少し敗北感を感じた。

オゴタイ「・・・ふざけるな」
 
503 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:44:37.94 ID:vgwpYOPq0

オゴタイ「こんな時まで委員長気取りか、どこまで俺を馬鹿にすれば気がすむんだ!」

元「しかし」

オゴタイ「俺があいつを殺る。お前なんかよりも委員長にふさわしいんだ」

元「兄者・・・」

チャガタイ「何だよ二人とも!誰か忘れてるんじゃないか?」

チャガタイ「俺という強力な助っ人を忘れてもらっちゃ困るな!」

チャガタイ「だいたいさ、ぶっちゃけ俺が兄弟の中で一番才能豊かだしー」フフン

オゴタイ「フッ、そうか?」

元「そんなこと、俺だって一番の自信がありますよ」

元「困りますよね、兄弟全員とびきり優秀なんですから」ポツリ

モンゴル「・・・そうだ、だから俺も悩んだんだ。だからクジで決めたんだよ」

オゴタイ「!兄者、お目覚めですかっ」

モンゴル「いつまでも気絶してるわけにはいかんだろう?」ニコリ

元「兄者、申し訳ありません。ご期待に沿うことができませんでした」

モンゴル「?何を言っている。俺は驚いただけだぞ」

モンゴル「俺は自身を恥じている。どんな趣味にせよ、可愛い弟には変わりがないのに」

元「あ、兄者ぁ・・・!」ジワリ

モンゴル「さて、モンゴル6兄弟の内4人も同時に相手して、さぞや敵は後悔するだろう」

モンゴル「我らの強さ、思い知らせてやろうではないか!」

元・オゴタイ・チャガタイ「はい!」
 
504 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:45:17.84 ID:vgwpYOPq0

高麗「ああ、なんと美しい兄弟愛だろう」ホロリ

高麗「僕も戦いますよ!元友人だからって、手加減はなしです!」

モンゴル・元・オゴタイ・チャガタイ「「「「「どうぞどうぞ!!」」」」」
   
  
  
高麗「・・・えっ」
   
  
  
元「友人相手でつらいだろうが、頑張れよ」

モンゴル「骨は回収してやる」

オゴタイ・チャガタイ「頑張れよ、誰だか知らんけど」

高麗「・・・えっちょっ、何でですか?皆さんは?皆さんも戦うんでしょ」

元「お前の後でな。今はとりあえずお前に任せる」

高麗「そそそ、そんなのおかしいですよぉ!日本だって納得しませんよきっと!」

日本「ほら高麗あくしろよ」

高麗「何で!?君って馬鹿なの?元様は君をレイプしようとしたゲイなんだぞ!」

日本「彼らの兄弟愛に感動したよ。ほら、俺って一人っ子じゃん?」

日本「小さい頃、親に『お兄ちゃんがほしい!』って言って困惑させたなぁ」

高麗「そんなの関係ないと思うけどなー!こいつらはクズだと思うけどなー!」

日本「確かにあいつらクズだけど、お前も相当なクズだと思うよ?」

日本「元に俺を紹介したのはお前だし、さっき宋ちゃんを人質にしてたよな?」

高麗「でもでもでも」
 
505 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:46:07.67 ID:vgwpYOPq0

日本「お前の減らず口にはもう飽きた。いいからこの剣の試し切りさせてくれよ」

日本「俺、まだ人って斬ったことないんだよなぁ」

高麗「でもでもでもでもでもでも」

ヒュッ

高麗「お願いやめて!」

日本「おまえが、コンティニューできないのさ!」

日本「上上下下左右左右BA!」

▼十種神宝が手に入り、MP・HPともにパワーアップした!

シュリン!

▼日本は草薙剣と八握剣の二刀流になった!

高麗「おい、そんなのずるいじゃないか!」

▼高麗はてつはうを投げた!

ボカーンボカーンボカーン

ヒョイッ

▼日本は全部避けた!

▼日本はコンクリート片を遠隔操作!

ズドドドドドドッ

高麗「ぐああっ」

▼高麗にダメージ!

▼高麗は南宋を盾に使った!

南宋「もういやぁぁ!お兄様助けテェ」

▼日本はコンクリート片を遠隔操作!

ズドドドドドドッ

▼南宋に直撃!
 
506 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:46:46.17 ID:vgwpYOPq0

▼高麗にダメージ!

▼南宋は死んだ!

高麗「くそっ人でなしめ」

▼日本はスペルカードを使用!

▼死返(まかるかえし)符&道返(ちかえし)符を使用!

▼南宋は生き返った!

高麗「す、スペルカード?」

▼高麗は大量のてつはうを投げた!

ボーンボーンボーンボーンボーンボーンボーン

▼日本は両刀でそれらを斬り捨てた!

シャキーンシャキーンシャキーン

▼日本は腐敗した鳥の死骸を大量に投げた!

▼高麗にダメージ!

高麗「このっ、さっきからやることが陰険だぞ」

日本「高麗よ! 何ゆえもがき 生きるのか? 」

日本「滅びこそ我が喜び。死にゆく者こそ美しい」

日本「さあ、わが腕の中で息絶えるがよい!」

高麗「・・・///」ハァハァ

▼高麗は「わが腕の中で息絶えるがよい」というセリフに反応した!

▼呪い発動!どこからともなく洪水が暴風雨とともにやって来た!

高麗「なぜぇ!」
 
507 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:47:28.62 ID:vgwpYOPq0

▼高麗は溺れ死んだ!

▼日本は死返(まかるかえし)符&道返(ちかえし)符を使用!

▼高麗は生き返った!

高麗「え・・・日本、そんな、君って奴は」

日本「友達じゃないか、もっとお前と一緒に遊びたいんだ」

高麗「ごめん・・・ごめんね!裏切ったりして」

▼日本は両刀で高麗を斬った!

ズバズバズバッ

高麗「なん・・・で」

▼高麗は死んだ!

▼日本は死返符&道返符を使用!

▼高麗は生き返った!

▼日本は両刀で高麗を斬った!

ズバズバズバッ

高麗「ちょ・・・え?え?」

▼高麗は死んだ!

▼日本は死返符&道返符を使用!

▼高麗は生き返った!

高麗「怒ってる?当たり前だよね、でもさ」

▼日本は両刀で高麗を斬った!

高麗「やめて」

ズバズバズバッ

▼高麗は死んだ!

▼日本は死返符&道返符を使用!

▼高麗は生き返った!

高麗「ねぇ、やめよ?僕が悪いのは十分わかってるから」

▼日本は両刀で高麗を斬った!

ズバズバズバッ

▼高麗は死んだ!

▼日本は死返符&道返符を使用!

▼高麗は生き返った!

日本はこれを飽きるまで繰り返した。
 
508 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:48:11.39 ID:vgwpYOPq0

------------------------

ところで、熾烈な弾幕勝負は東病棟だけでなく、

ここ西病棟でも炸裂していたのだ。

イル「うおおおおおっ」ブンッ

▼イルは赤子を投げた!

甥「ばぶー」ピョーン

▼ジョチは赤子をキャッチした!

ジョチ「赤ちゃんを投げるんじゃねぇよ、このドクズめが!」

マルムーク(何コレ)

------------------------

高麗は日本に土下座して謝った。

高麗「ごめんなさい!もう君をオカズにしないし、売ったりしないから!」

高麗「これ以上殺して生き返らせるのはやめて!」

日本「わかった」

こうして、二度にわたる高麗との勝負は全て日本の勝利に終わった。

元と日本はなんやかんやあって和解し、

一先ず休戦することになった。

元(日本・・・)ハァ

こうして、大元ウルスの初恋は失恋に終わったのだった。
   
509 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:48:59.59 ID:vgwpYOPq0
  
役目を終えた草薙剣は、簪の姿に戻った。

南宋「お兄様・・・お兄様・・・」グスグス

日本(宋ちゃん)

数々の陵辱を受けた南宋を不憫に思った日本は、

彼女に上着を貸してあげようと思い近寄った。

ズキィーーーー・・・ン

その時、日本は全身を貫く痛みを覚えた。

日本「うああああああ」

女体を見たこと、それにより呪いが発動したのだ。

ここで注意すべきは、彼は下心の一切ない目で彼女を見たということだ。

彼は筑紫の忠告を聞かずに大暴れしたために、

異性を見ただけで死に至る呪いが発動するようになったのだ。

日本(俺は死ぬんだ)

少年はそう直感したが、激痛のあまり思考することが適わなかった。

日本少年の全身が裂けようとした時、

大和「タンマ!」

大和が少年を抱えて異界へ連れて行った。

少年を襲った痛みは消えた。

日本「はぁ、はぁ、はぁ」ガクガクガク

大和「間に合ったー」フゥ

510 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:49:42.22 ID:vgwpYOPq0

日本「あ、あなたはさっきの」

大和「何で筑紫の言うことを聞かないんだよ!死ぬとこだったぞお前」

日本「あなたが助けてくれたんですか?」

大和「そうだよー、出雲から半殺しにされながらも許可をもらって来たんだからな」

日本「半殺しに・・・」

大和「正確に言えば、半分より死寄りだ」

大和「とりあえず、今からその強烈になりすきた呪いを弱体化させる作業をする」

大和「屋敷と中継が繋がってるんだ、お屋敷の山背さーん?」

ズズッ

水溜りのような空間が眼前に広がっていき、その中に世界が見えた。

日本「あっ、これ、家の蔵の中でしょ!懐かしい」

手前に公家顔の青年が見え、奥には磔にされた青年と、

その隣に鉢巻を締めて竹槍を持った青年が見えた。

山背『へぇ、こちら山背どす』

山背『後ろに居たはるのは飛騨はんで、アズマエビスを磔にしてます』

飛騨(ペコリ

相模『日本くん!会いたかったんだよ!』ジタバタ

山背『おまはんは黙りよし、田舎侍が』ギロリ

相模『ひええ』

山背『聞きましたで?あんさん、出雲はんに半殺しにされたそうやないか』ニヤニヤ

大和「くそっ、もう知られてた」
 
511 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:50:20.34 ID:vgwpYOPq0

山背『まぁそれはそれとして、日本』

日本「は、はい」

山背『あんさん、とんでもないことしたんやて自分でわかってるか?』

日本「はい・・・」

山背『今さら特別に弱体化させたとこで、日常生活に支障は出るんやで』

山背『事態は相当厳しい。出雲はん、おとろしいお人やなぁ』

山背『ほんでそこに居たはるボンクラや・・・僕やったら反対してます』

大和「う、うるさいな!出雲ってめちゃくちゃ怖いんだぞ!」

山背『日本、あんさんは壊れてる。剣を握ったらそれが表に出るんやな』

大和「ハンドル握ったら人格変わる人っているよな」

日本「はぁ」

山背『そやから、あんさんから剣を奪います。壊れた部分と共に』

山背『というより、あんさんの壊れた部分をこの剣と連結させる感じやな』

山背『ここから怖い話になるで、よう聞きや』

日本(ゴクリ

山背『精神的に狂った部分をどかすてことは、あんさんが不完全な人間になるてことや』

山背『不完全な魂には不完全な呪いを、それが弱体化の理屈や』

山背『呪いは既にこの剣の力と連結されてしもてるから、こっちが母体になる』

山背『そやから不完全なあんさんには"比較的"弱い呪いが発動するようなる』

日本「なるほど、わからん」

山背『怖ないんか?まぁ狂った部分どかすんやから、そこは願ったり叶ったりか』
 
512 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:50:58.64 ID:vgwpYOPq0

山背『話はまだあるんや。問題はあんさんの子どもに孫や』

山背『あんさん使てみてわかるように、この剣を使てる間はあらゆる呪いが免除される』

山背『この剣を使う人間は呪いが発動しいひんのや』

山背『そやけど呪いとこの剣が連結されてしもてる以上、どこかで代償を払わなあかん』

日本「どうなるんです?」

山背『この剣を絶対使えへん人間が、その代償を払うんや』

山背『おそらく、あんさんの子か孫あたりがあんさんのツケを払うやろなぁ』

日本「そんな」

山背『酷い親やなあんさんは!』ハハハハ

日本「う・・・」

山背『まぁ、そこは大和くんの図太さを見習いなはれな』

大和「そうだぞ!」エヘン

山背『ほんでどないしはるんや?子孫に恨まれるか、今すぐ木っ端微塵になって死ぬか』

日本「・・・」

日本「木っ端微塵?」

山背と大和は頷く。

日本「・・・・・・・・・死にたくないです」

大和「そうこなくっちゃ!」パチン

山背『決まりやな。今からこの東夷を槍で刺してから車で引きずり回して八つ裂きや』

相模『やめてぇ』

日本「ちょっと待った!」
 
513 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:51:43.29 ID:vgwpYOPq0

日本「その人可哀想じゃないですか!」

山背『・・・人?』ハテナ

相模『えっ、人でしょ!人ですよ僕は!』

相模はポロポロと涙を流した。

相模『日本くんは良い子だねぇ、僕は感動したよ・・・』

山背『そやかてこれが儀式やから』

日本「そんなことして何の意味があるんですか!」

山背『僕と飛騨はんがノリノリになります』

日本「やっぱりノリノリになるだけなの?!」

その時、飛騨が山背に近寄りそっと耳打ちする。

飛騨(ボソボソボソ

山背『え?何です・・・・・・ほうほう』

山背『リウマチ、冷え性、高血圧等の改善効果もあるそうや!』

大和「マジでか!」ワーイ

日本「温泉程度じゃんかよ!」

大和「日本、お前はどうやら俺たちより優しい子みたいだが、よく考えろ」

大和「俺たちは既に死んでる。相模がこれから八つ裂きにされようと、筑紫同様復活するんだ」
 
514 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:52:25.52 ID:vgwpYOPq0

大和「だがお前が死んだら、弟妹が生まれない限り家は絶えてしまうんだぞ」

大和「俺だったら相模が何回殺されようとも、自分が助かる方を選ぶぜ!」

日本「うーん、それもそうですよねぇ」

日本「わかりました、どうぞお願いします」ペコリ

相模(ガーン

山背『わかった』

山背『ほんなら始めてください!』

飛騨(コクリ

飛騨は竹槍を相模の脇腹に向けて構える。

飛騨『でりゃあ!!』

グサーッ

相模『ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!』

ブツンッ

中継はここで終了した。

こうして、日本少年は一命を取り留めた。

気狂いの部分が排除されたせいか、
彼はその1ヶ月後に退院し、大学受験に間に合ったという。

ただし、いわば自分の一部を失くした彼は精神的に不安定であり、
そのせいで借金をこさえて後々大変なことになるのだった。
 
515 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:53:09.38 ID:vgwpYOPq0

また、彼は今回の体験によって、子孫に借金以上の負の遺産を残したことになる。

草薙剣簪に選ばれた者は、則ち呪いを免除された幸運世代である。
彼らは神風を自在に扱うが、この力を頼るならば必ず身を滅ぼす。

草薙剣簪に選ばれなかった者は、則ち幸運世代のツケを払う世代である。
彼らの繁栄は難航するが、身を滅ぼす恐怖は避けられる。
 

>>>>>>>【ボーナスステージ】!!!!!!!
 
【おまけ・氏神太平記のあらまし】
 
とんでもない負の遺産を残した鎌倉日本には、
知的で気高い娘・南朝と、剣術と芸術の才能を持つ息子・北朝を授かった。
子供達は私立・万邦学院へ進学し、祖父を満足させた。

この二人から父親である鎌倉日本は疎まれがちであったが、
それも仕方ない宿命と言えよう。

さて、一方この一族の氏神たちの間では、盛大な「相模イジメ」が行われていた。

イジメ加害者のリーダー格である大和と山背は些細なことから大喧嘩し、
これが南朝と北朝の家督争いにまで影響してしまった。

父親から呪いについて説明を受けた姉弟は、
「何としてでも草薙剣簪は自分が確保しなければ」という危機感に取り憑かれ、
それ故 氏神たちに頼るのだった。

草薙剣簪を含めた三種の神器を受け継いだ者が、
この家の当主と認められるのだ。

南朝には大和たちが、北朝には山背たちがついた。
 
516 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:54:02.19 ID:vgwpYOPq0

大和方の主張は単純で、
「草薙剣簪は簪なのだし、綺麗な女の子に使ってもらいたい」というもの。

山背方の主張はこれに反し、
「草薙剣簪は出雲が銃刀法違反を回避するために便宜上簪としただけで、
 実質的には完全に剣である。剣術に秀でた弟に継がせるべきだ」というものであった。

返答に困った大神・出雲は、
「姉と弟を争わせて、勝った方にこれを授ける」と言って逃げた。

製作者とて、これを簪として作ったのか剣として作ったのか決めかねていたらしい。

事態はそう簡単に進まず、その理由の一つには南朝の美貌があった。

大和たちが味方についたとは言え、
氏神たちのルールとして何もかも人間に協力して良いわけではなかった。

しかし、彼女のお願いとあらば氏神たちはみな協力を惜しまなかった。
例を挙げれば、浪速は禁断の未来予言書を南朝に見せてしまっている。
(これにより自身の敗北を知ってしまった彼女は、その運命に抗おうと知略をめぐらすのである。)

また、敵方のボスである山背ですら、途中 彼女に恋文を渡す始末である。
(これはいろんな意味でアウトな事件であった。)

その他にも伊勢が手品で草薙剣簪を3本に増やしてしまうなど、
思いがけないトラブルが相次ぎ、それらは南朝に味方した。

されど南朝は運命には抗いきれず、北朝に敗北してしまう。

ここで、北朝にとって衝撃の知らせが入る。

草薙剣簪を受け継いでも、
それが節刀として氏神たちから贈られなければ、
呪いは免除されないというのである。

つまり、父・鎌倉日本のツケは姉弟で半半だったのだ。
 
517 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:54:46.16 ID:vgwpYOPq0

強烈な呪いに性欲の強い北朝は日々苦しんだが、
勝利の褒美として子作りの際だけは、草薙剣簪の力を借りることが許された。

こうして何とか安土桃山日本は誕生できたのである。

ちなみにこの呪いの苦しみから、
豪華絢爛嗜好だった北朝は、侘び寂びの心に目覚めたという。

そして南朝のほうは生涯独身を貫いた。

しかし、南朝の気高さは彼女の知らないところで、
北朝の子孫である大日本帝国に大きな影響を与えたのである。

大日本帝国は彼女に憧れ、彼女の供養に努めた。

この草薙剣簪と呪いの関係について姉弟で話し合った結果、
身内の間で要らぬ争いを生むとして、
次世代へは語らないことに決めたという。

 
-------[人物紹介]--------
 
 日本
 :やまとちゃん(>>236登場)の孫で、安土桃山日本の祖父。
  江戸日本や日本(本編)を苦しめる呪縛を強化した戦犯。
  剣を握ると人格が変わり、狂った冷血漢に変貌する。
  平常時もそれなりに無慈悲な判断を下す。
  名門私立・万邦学院への受験を度々試みたが、結局受験すらできなかった。

 大元ウルス
 :モンゴル6兄弟の末弟にして、東病棟委員長。
  若干13歳にはとても見えない図体を持つゲイ。
  日本に惚れてレイプを試みるが、呪縛のせいで思いを遂げることはできなかった。
  次男三男四男に嫌われている。
  元々は兄弟揃って窃盗団を形成しており、逮捕された後に当センターに入院した。
 
518 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/20(火) 23:56:01.78 ID:vgwpYOPq0

 高麗
 :日本の"元"友達で、元に彼を渡して3Pを目論んだ大罪人。新羅(>>236登場)の孫。
  日本は気づかなかったが、曾祖父世代の高句麗に恋慕するなど、根っからのゲイ。
  ゲイであるためか、美少女を盾に使うことも厭わない。

 モンゴル帝国
 :モンゴル6兄弟の長兄にして、前・東病棟委員長。
  マルムークを除く女性患者全てをレイプするという非道を行うが、
  彼女らとの間に生まれた子供たちは大切に育てている模様。
  親が蒸発したために、父親代わりとして5人の弟たちの面倒を見てきた。
  全ての弟たちから慕われている。

 南宋
 :潔癖症で几帳面な美少女。
  その正体は芸術家の兄・北宋を狙うヤンデレな妹。
  兄の交際相手への傷害事件等が原因で、当センターに送られてきた。
  モンゴル兄弟の陵辱によって、ヤンデレ具合が加速した模様。
  最終目的は兄と一つになること。

 出雲
 :日本の家を守る氏神の一人にして大神。
  草薙剣簪を作った張本人で、絶大な権力を持つ。
  子孫を愛しているのか憎んでいるのか、いまいちわからない人物。
  しばしば子孫を殺そうとするなど、
  祟り神と呼んで差し支えない働きぶりである。

 大和
 :日本の家を守る氏神の一人。
  どの氏神も日本一族の先祖であるが、特に彼の子孫であることが強調される。
  草薙剣簪の守り神でありながら、十種神宝の主でもある。
  女装をして相手を騙した上で斬りかかり、相手に一生消えないトラウマを植え付けるなど、
  邪神と呼んで差し支えない働きぶりである。

 筑紫
 :日本の家を守る氏神の一人。
  強力な神力を持ち、腕力に優れている。
  しかし、なぜたかやたら生贄にされたりかませ犬にされたりするポジション。
  ストレスからか度々 大和や山背相手に反乱を起こす。

 尾張
 :日本の家を守る氏神の一人。
  草薙剣簪のマスコットガールを務めている。
  剣が大好きで、サディストっぷりが見え隠れしている。
  伊勢(八咫鏡の主)をライバル視している。

 山背
 :日本の家を守る氏神の一人。
  選民思想のレイシストで、相模たちを東夷と呼んで苛め抜く。
  かなり強力な神通力を持っているが、腕力勝負はめっぽう弱い。
  (大和を差し置いて)氏神代表を自負しており、子孫への面倒見は良い。
  絶対に上司や舅には欲しくないタイプの人物である。

 相模
 :日本の家を守る氏神の一人。
  鎌倉日本の幸せを願っており、成長を見守っている。
  特に山背に苛められており、胃痛に悩んでいる。
  その反動からか、現在(本編時)ではお洒落でキザな男になっているらしい。
  
519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/21(水) 00:16:23.22 ID:K9KXx8Qe0
乙面白かった
520 : ◆pIxjj4GI1s [sage]:2016/12/22(木) 20:17:09.38 ID:mBhjbF9Z0
以前に「大日本帝国編を最終章」「小ネタ集2つ投下してから大日本帝国編」と書きましたが、
予定を変更して大日本帝国編→2つ目の小ネタ集→最終話の順番にしようと思います
次の第17話から大日本帝国編が始まります

ただ、第17話はやまとちゃん(奈良日本)の時代の話、
第18話はとある情報管理課職員の話で、
大日本帝国自体が登場するのは第19話からになります
(しかも本格的にキチガイ学園で活躍するのは第20話以降になります)

次の第17話はけっこうな数の登場人物が不幸になっています
例えばあんまり書いてませんが、隋は死にかけです。

あと、第17話と第19話にそれぞれ「蝦夷」という名前の人物が登場しますが、
少年(第17話)のほうは奥州藤原氏が支配する前の(坂上田村麻呂が征伐した、アテルイとかが活躍してる)東北地方の擬人化で、
若い女性(第19話)のほうは開拓前の北海道の擬人化で、
両者は名前が同じだけであまり関係はありません
521 : ◆pIxjj4GI1s [sage]:2016/12/23(金) 22:44:01.77 ID:NxmejbOj0
明日あたり第17話を投下できそうです
いつもはボーナスステージを登場人物紹介の前に書いてますが、
今回は温度差が激しい(話がシリアスなのにボーナスステージがギャグ)ので、登場人物紹介を間に挟みます
ボーナスステージをつけないことも考えましたが、登場人物的に他の回にまわすとわかりにくいので17話で出します

あと、時系列的には
番外編:NTRと整合性 → 番外編:トウモロコシの語源は(唐唐黍)だけど唐は産地じゃない → 第17話
の順番で読んだほうがわかりやすいかもしれません
ついでに、飛鳥日本は「NTRと整合性」時が22歳で、第17話では40歳(前後?)になってます
522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/24(土) 06:39:10.46 ID:pF7dzbyP0
今日か…待ってるぜ
523 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:19:05.62 ID:My0lU9vO0
第18話:約束を破った少女

飛鳥日本の屋敷では、奥方の扶桑が荷造りをしていた。
実家に帰るためではない。
夫と共に、入院している愛娘を迎えに行くためであった。

蝦夷「娘さん、やっと退院できるんですね!先生」

扶桑「そうよ、やっとあの子に会えるの!早く抱き締めてあげたいわ」

蝦夷(いいなぁ、羨ましいなぁ・・・)

少年の名は蝦夷。
元々は孤児であったが、珍獣ハントをしていた時に獣医である扶桑と出会い、
そのまま彼女の助手として住み込みで働いているのだ。

飛鳥日本「ああ、だから君には留守番をしてもらうことになるな」ポンッ

亭主の飛鳥日本は、蝦夷の肩を軽く叩く。

蝦夷「ええ、任せてください!泥棒なんかいたらコテンパンにしてやりますよ!」ニコニコ

表面上、この二人は仲が良さそうに振舞っていた。
しかし、実は非常に険悪な関係であった。
あまりに嫌いすぎて、ある意味以心伝心、彼らは目で睨みながら心で会話していた。

飛鳥日本(どうだ小僧?俺と妻は二人きりで旅行するってわけだ)

蝦夷(クッ・・・でも、先生の頭の中は娘さんでいっぱいですよ)

飛鳥日本(そうだよ、俺と彼女の愛の結晶さ。親子水入らずで旅行するんだ)

飛鳥日本(ていうか娘が帰ってくるのだし、君は邪魔だから出て行ってくれない?)

蝦夷(何でそんなのあなたに決められなきゃいけないんです?)

飛鳥日本(ここは俺の家だぞ)

蝦夷(先生の家でもあるでしょ、先生はぜひ住んでくれって言ってます)

飛鳥日本(このロクデナシ、そんなこと言って俺の娘をたぶらかすつもりじゃなかろうな?)

蝦夷(そんなつもりは毛頭ありません!)

飛鳥日本(どうだか?お前は既に妻をたぶらかしているのに)

蝦夷(聞き捨てなりませんね、それは先生への侮辱ですよ!)

飛鳥日本(わかっていないようだから言おうか?俺の妻は、君の母親じゃない)

蝦夷「・・・ッ」

蝦夷(ええ、ええ、わかってますとも!あたりまえでしょ!)

このような静かなバトルが日々繰り広げられていた。
もちろん扶桑は気づいてない。
 
524 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:20:20.53 ID:My0lU9vO0

扶桑「あなたー、帰りにやまとのお着物を買おうと思ってるのだけど」

扶桑「あの子、もしかしてドレス派かしら?ひらひらドレスも着せたいわねぇ##」

飛鳥日本「どちらも買えばいいさ、あの子は可愛いから着こなすだろうよ!」ニッコリ

飛鳥日本「さ、飛行機の時間までに荷物をまとめよう」

飛鳥日本はほくそ笑みながら、妻と共にその部屋を出る。

扶桑「それにしても・・・あの子びっくりするでしょうね」

飛鳥日本「ああ、まさか家に戻ってから唐くんと新羅くんに会えるとは思わないだろう」

飛鳥日本(俺としては新羅ジュニアとは遊ばないでもらいたいけどな)ネトラレェ

扶桑「唐くんも、少しは気を紛らわせてくれたらいいんだけど」

扶桑「隋さんが寝たきりになってから、目に見えて痩せたでしょ?あの子」

飛鳥日本「強がってるけど、隋は親代わりみたいなものだからな」

飛鳥日本「俺もかなり心配だ・・・」

飛鳥日本(あいつはもう、駄目かもしれない)

飛鳥日本(モルヒネ投与が始まって、笑う余裕なんか残されてないんだ)

扶桑「そういえば、高句麗くんも心配だわ」

扶桑「最近パッタリと連絡をくれなくなって・・・どうしたのかしら」

飛鳥日本「高句麗のことだ、どこかでプラプラ遊んでるよ」

そう言いつつ、実は飛鳥日本も気にしていた。

飛鳥日本(こないだ会ったとき、様子が少しおかしかったが・・・)

飛鳥日本(いや、まさか・・・たまたま元気がなかっただけだろ)
 
525 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:21:11.32 ID:My0lU9vO0

部屋で本を読みながら蝦夷は考えていた。

蝦夷(やまとちゃんが帰ってくるなら、俺は出て行くべきなのかな)

蝦夷(旦那にめちゃめちゃ嫌われてるし)

蝦夷(でも、俺には行くとこがないよ)

蝦夷(俺は先生に甘えてる、クソガキなんだよなァ)

蝦夷(・・・やまとちゃんってどんな子なのかな)

蝦夷(もしも先生みたいに優しい子でさ、俺と一緒に遊んでくれたら?)

蝦夷(毎日楽しいだろうなー##)ニヘラァ

蝦夷(あっでもこれ旦那から見たら娘をたぶらかしてることになる・・・?)ハッ

蝦夷(でも俺・・・)

蝦夷(ここに居たいなぁ・・・)グスン

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--------------------------------

日本「渤海くん」

日本は渤海の部屋の前に立つ。

日本「渤海くん・・・」

返事はない。

大地立青少年精神医療センター院内学校ワクワク学級。

東病棟委員長だった唐は、叔父・隋の容態悪化を理由に退院した。

唐の指名で後梁が次の東病棟委員長になったが、
彼女もすぐに退院したために、現在は後唐が委員長を務めている。

新羅も退院した今、日本には話し相手がいなかった。

彼女の親友であった渤海はというと、既にこの世に居なかった。

渤海は殺害されたのである。
 
526 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:22:20.25 ID:My0lU9vO0

彼の私物は跡形残らず処分され、部屋はもぬけの殻であった。

日本「なんもあらへん」

日本「なんも、なーんも残ってへん・・・っ」

少女はポロポロと涙を流した。

渤海少年は日本が寝ている間に、喧嘩をして殺された。

渤海の死亡が確認されてすぐ、職員達によって部屋は片付けられた。
おそらくそれらは全て、彼の母親・粟末に渡されたのだろう。
日本に形見は残されなかった。

日本が翌日目を覚まして彼の死を聞かされたとき、部屋は既にこうなっていた。

事件から幾日も経っているが、彼女は毎日こうして彼の部屋を訪れる。

日本「いじわるや・・・ちょっとくらい、ちょっとくらい待ってよ!」

日本「酷いわ・・・酷いわ・・・わたいのお友達を・・・」

日本「一緒に退院しよねって約束したのに!約束したのに・・・」

契丹「日本」

日本(ピクッ

契丹は花瓶を持っていた。
眼帯の下の肌は蒼かった。

日本「なにしに」

日本「何しに来たん?!」

契丹少年が、渤海を殺したのだ。

彼と渤海は常々仲が悪かったが、あの晩にとうとうそれが爆発した。

激しい口論の末、渤海は契丹の左眼を傷つけた。

怒りで興奮した契丹はナイフを手に取り、

渤海の喉を刺した。
 
527 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:23:19.84 ID:My0lU9vO0

契丹「ごめん」

契丹「俺が言えた口じゃないけど、君のためになんないよ、それ!」

契丹「君は毎日泣いて、どんどんやせ細ってる」

契丹「君のこと嫌いじゃない、心配なんだよ」

日本「あんたのせいやろ!」

日本「あっち行って!人殺し!あんたなんか、嫌いや!大ッ嫌い!」

契丹「ごめん・・・ごめん」

契丹は花瓶を置いて、部屋を出る。

日本「渤海くん・・・」

日本「なんで、なんで喧嘩したん?なんでわたい寝てたん?」

日本「会いたい!会わして、会わしてよ!」

日本「ずっと一緒に居よよ!戻って来てよ!」

日本「あの子居てへんのやったら、こんなとこに居たない!」

日本「うう・・・」
  
   
   
この数日後、日本は退院した。

彼女の両親は、娘の憔悴ぶりに驚いた。

少女は唐や新羅に会えることを知ると、家に飛び帰った。

唐と新羅は彼女から渤海の死を聞いて、共に悲しんだ。

彼女の父親は居候の少年・蝦夷を家から追い出す考えであったが、
娘が少年と話すうち、次第に元気を取り戻すのを見て考えを改めた。
 
528 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:24:09.35 ID:My0lU9vO0

そして、彼女の両親は「渤海」という名前に心当たりがあったので、
共通の友人である高句麗と連絡を取ろうとしたが、
ついに彼の消息はつかめなかったという。
 
 
それもそのはずで、
高句麗は大地立青少年精神医療センターの警備員として、
住みこみで働いていたのである。

それはなぜか?
息子の渤海のためであった。

彼は渤海を認知こそすれ、父親らしいことはまるでやってこなかった。

彼と渤海はほとんど面識がなく、月々僅かばかりの養育費を払うだけの関係である。

息子の死を知って、流石の彼も病院に怒りを覚えた。

葬儀は既に母親が済ませていた。

葬儀を勝手に済ませたことに彼は怒ったが、
今までほとんど親としての責任を果たさなかったことを逆に責められ、
それ以上何も言わずに墓だけ参った。

それから、誰にも相談せずに一人でセンターに乗り込んだのだ。
出るとこ出るつもりであった。

ところが応対したワクワク院長は、彼に世にも恐ろしいことを伝えたのだ。

その内容は以下である。

「渤海くんのお父様ですね。

 よかった、免職される前に私の口から説明したいことがあるのです。

 いくら謝罪しても許されるはずのないことだと承知しておりますが、
 この度の事件を招いてしまったことを深くお詫びいたします。

 息子さんのご遺体及び私物は既にお母様の方へ送ってあります。
 賠償金の方も同様ですね。

 ええ、そんな問題でないことは承知しております。

 ところで、あなたはここの元患者でいらっしゃいますね?
 カルテが残ってありますよ。
 
529 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:25:27.35 ID:My0lU9vO0

 実は、息子さんに関してお母様にはお伝えしていないことがあるんです。

 でも、元患者のあなたになら話しても良いでしょう。

 今回の事件により、息子さんの生命活動は完全に停止されました。

 しかし、息子さんの治療が終了したわけではないのです。

 息子さんは特別な治療メニューへと移行することになりました。

 肉体を持った患者と同じ治療は難しいものでして、はい。

 息子さんは引き続き当センター付属の院内学校の所属となりますが、
 課題プリントの提出や試験等の評価は行われません。

 ここで、肉体を持った他の患者たちとの関わりの間で、

 息子さんの精神状態が快方に進んだと判断され次第、

 息子さんは当センターを退院することができます。

 え?幽霊でもいるのかですって?

 当たり前じゃありませんか、彼の精神はこのセンター内に残っています。

 後でご覧になられますか?

 他の患者たちが就寝したのを確認してから・・・。

 その方がご理解いただけるでしょうしね。

 問題はあなたにそれを見る才能があるかどうかですが、
 なくても空気の違いにはすぐお気づきになるでしょう。

 とりあえず、幽霊がいると考えておいてください!

 幽霊になった息子さんの場合、生前よりも治療が難航いたします。

 そもそも患者たちとの交流が非常に難しくなりますし、

 息子さん自身のこだわりが強くなって、

 精神活動が二進も三進もいかなくなるからです。
 
530 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:26:47.62 ID:My0lU9vO0

 しかも渤海くんの場合、はっきり申し上げて、

 彼はいわゆる地縛霊になっています。

 これは非常に厳しい状態です。

 霊的なセンスをかなり持ったお友達にでも恵まれない限り、

 彼の退院は不可能だと思います。」

このような次第であった。

にわかに信じがたい話であったが、
高句麗は院長の案内のもと、息子の霊を見に行ったのである。

歩いているうちに彼は気づいたのだが、
過去に新羅が飛鳥日本の簪を盗んだ時、
自分は不気味な声やら蛇やらを確認しており、
そういう才能はある方だったのだ。

彼にとって懐かしの東病棟給湯室に到着した。

彼は恐怖で声を上げそうになったが、院長に止められた。

彼がそこで見たものは、
  
  
渤海「やまとちゃん・・・どこ?」

渤海「僕・・・なんでか、動けないんだ・・・」

渤海「やまとちゃん・・・助けて欲しいんだ、やまとちゃん・・・」

渤海「助けて・・・ねぇ・・・」
  
  
確かに息子であった。

彼は院長を押しきって、息子に話しかけた。

高句麗「おい、俺だ!お前の父さんだぞ!」

高句麗「なんとなく覚えてるだろ!昔会ったんだ!なあ!」

しかし、渤海には彼の存在が把握できていないらしかった。

何度声をかけても、渤海はずっと似たようなうわ言を繰り返していた。

ついに高句麗は諦めて、その場を離れることにした。
 
531 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:27:39.87 ID:My0lU9vO0

それから高句麗は、このセンターの警備員として、
施設内に住むことを決心したのである。

彼がそれを申し出ると、ワクワク院長は最後の仕事に、彼を警備員に雇ったのだ。

しかし、さすがのワクワク院長も、高句麗の真の思惑には気づいていなかったらしい。

ただ息子のそばに居たいだけではなかったのだ。

高句麗(あんな状態でも、一応は退院を目指して取り組んでもらえるんだろ?)

高句麗(だったら、親が迎えに行ってやらなきゃさ)

彼や友人達がセンターを退院した時には、
親が迎えに来てくれた。
親に反抗的だった彼も、この時ばかりは嬉しかったのだ。

高句麗(死ぬまで、死んでもここで待っててやるさ)

高句麗(今まで大したことをしてやれなかったんだ)

高句麗(退院したら、すぐ迎えに行ってやるからな)

こうして、彼は警備員として生涯働き続けた。

老齢で働けない体になってしまったとき、
彼は施設内で自殺をした。

おそらくは、この施設を追い出されるのを危惧したのだろう。

それから先、彼の精神活動を確認したものはいない。

なにぶん、警備員専用宿泊室に一番近い施設は、
世界で最も現実的な集団、あの情報管理課のオフィスだからである。
あの職員たちに確認出来るはずがない。

ガチャッ

・・・前言を撤回しなくてはならないかもしれない。

彼の精神活動を確認しうる人間がちょうど、警備員専用宿泊室に来るからだ。

例の特殊部隊隊長・南極に「管理が杜撰過ぎる!」とたっぷり怒られて、
長らく使用されていなかった警備員専用宿泊室をしぶしぶ調査しに、
現在の地球立メンタルヘルスケアスクール院長である、

ゴドー・マクガフィンが。
   
532 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:28:54.79 ID:My0lU9vO0
  
-------[人物紹介]--------
 
 蝦夷
 :奈良日本(渤海の言う、やまとちゃん)の夫。
  つまり、平安日本の父にして鎌倉日本の祖父にあたる。
  珍獣ハンターをしていたことで扶桑(獣医をしていた)と出会い、
  彼女の助手として日本の家に居候する。
  姑(扶桑)との仲は本当の親子のように良好だが、舅(飛鳥日本)とは水と油のように険悪。
  
 契丹
 :渤海を殺害した少年。境界性パーソナリティ障害で入院していた。
  渤海殺害後、憔悴した日本を心配するも彼女に拒絶される。
  実はかなり成績優秀で、唐に次いで周囲から宿題の解答をせがまれている。
  後に、(文化人として著名になる)唐を支援する実業家として業界に知られる。
  
  
   
>>>>>>>【ボーナスステージ】!!!!!!!
  
◆やり場のない話

飛鳥日本「・・・」ハァ

蝦夷「旦那、元気ないですね。水虫でもかかりましたか」

飛鳥日本「失敬な!」

飛鳥日本「はぁ、いや・・・仕方ない。君はまともな反応をしてくれそうだ」

蝦夷「はい?」

飛鳥日本「相談があるんだ、俺はどうすべきなのか」

飛鳥日本「娘とやたら仲良くしていたらしい、渤海という男についてだ」

蝦夷「ああ、渤海くんですか。やまとちゃんから聞きました」

蝦夷「とても親切な子だったんですってね、可哀想に殺されてしまって・・・」

飛鳥日本「ああ、俺も初めはそう思った」

飛鳥日本「だが、話を詳しく聞くと、それがとんでもない奴だったんだよ」

飛鳥日本「この渤海、お前に勝るロクでもない男だったのだ!」ドンッ

蝦夷「え?」
 
533 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:30:06.99 ID:My0lU9vO0

飛鳥日本「何でもな、そいつに娘がやったことを列挙すると・・・」

1.部屋の鍵を没収する
2.生理の日の管理をする
3.着替えを手伝う
4.あーんして食べ物を口に入れる
5.同じベッド(シングル)で寝る
6.娘の濡れたパンツと自分のパンツを交換してはく
7.耳掃除をする
8.お風呂で背中を流し合いっこする

蝦夷「うわキモ」

飛鳥日本「絶対に許せん・・・」プルプル

飛鳥日本「俺なんて、娘と最後に風呂入ったの何年前だと思ってるんだ!!」

飛鳥日本「娘が小学校に入る前だぞ!妖精さんのように可愛かったわ!」ワァァン

蝦夷「いやいや、怒るポイントずれてませんか」

蝦夷「これ、先生(扶桑)は知ってるんですか?」

飛鳥日本「ああ、でも娘同様に『まぁなんて優しい子』で済ませちゃったんだよ!」

蝦夷(先生だいぶ天然だからなぁ)

蝦夷「ヤバいですね、特に2・6・8の破壊力パネぇ」

その時、飛鳥日本は蝦夷の頬を引っ叩いた。

パァンッ

蝦夷「なぜぇっ」

飛鳥日本「今、娘の裸を想像したろ」ギロリ

蝦夷「してませんよ!」

飛鳥日本「したろ」

蝦夷「してませんて!」

飛鳥日本「一瞬したろ」

蝦夷「・・・一瞬しました」
 
534 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:31:00.04 ID:My0lU9vO0

飛鳥日本「こんなことが許されていいのか?年頃の娘に何てことしやがるんだぁ」

飛鳥日本「せめてもの救いはキスや性行為の類はしてないことだ」

蝦夷「マジですか、変なとこで紳士ですね、そいつ」

飛鳥日本「ああ、絶対に越えちゃいけない線をギリギリ越えてはいないんだ」

飛鳥日本「でも俺の許容範囲はとうに超えている!」

蝦夷「ちなみにどの辺までが許容範囲で?」

飛鳥日本「娘の半径0.5m以外の空気を吸うこと」

蝦夷「厳しッ」

飛鳥日本「それでな、本当なら渤海を首から下まで埋めて、木のノコギリで首を引きたいんだが」

蝦夷「なにそれ怖い」

飛鳥日本「奴は既に故人だ。そして奴の父親とも連絡がつかない」

蝦夷「渤海くんのお父さんを呼んでどうするんです」

飛鳥日本「息子の代わりにノコギリで引くんだよ。一回引くごとに君と交代でな」

蝦夷「俺を巻き込まないでくださいよ!嫌ですよ」

飛鳥日本「わかるか?俺はこのやり場のない憤りをどこにぶつければいい?」

飛鳥日本「娘を傷つけずに渤海だけを罵倒してぶん殴ってやりたい」

蝦夷「何か別のことでストレス発散してはどうです?」

飛鳥日本「何?」

蝦夷「いやほら、例えばサンドバッグを殴りまくるとか」

飛鳥日本「なるほどな、少しはそれで苛立ちが治まるかもしれん」

飛鳥日本「君にしてはいい案じゃないか」

蝦夷「そんな#」
 
535 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:31:43.56 ID:My0lU9vO0

飛鳥日本「ウラァ!」ボコォ

飛鳥日本は蝦夷を殴りまくる。

蝦夷「なぜぇっ」

飛鳥日本「お前がサンドバッグだからだよ!」

飛鳥日本「渤海め!この!よくもうちの娘にエロいことを!いやらしい!いやらしい!」バキッボコッ

蝦夷「俺は渤海じゃない」

飛鳥日本「二度とこんなことしてみろ、去勢するからな!この勃起野郎!」ダンッガンッ

蝦夷「痛い痛い!やめて」

飛鳥日本「妻だけでは飽き足らず娘までたぶらかしやがってぇ!」バキッボキッ

蝦夷「それ完全に俺への文句じゃないですか」

唐と新羅はビクビクしていた。
 
 
◆万国テレフォンショッピング

シャンシャンシャンシャン・・・

飛鳥日本「いつまでも少年の心を忘れない四十路男、日本です」

蝦夷「何を血迷ったか元・珍獣ハンターの蝦夷です」

飛鳥日本「そのままバラエティ番組あたりで使われてればいいものを」チッ

飛鳥日本「さて、奥様方に今回ご紹介するのはこちらの商品」

飛鳥日本「訳ありズイズイ in the 布団だ!在庫一点限りですよ」

隋「うう・・・」ジャーン

蝦夷「まさかの人身売買!人権侵害でしょこれ」
 
536 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:33:01.03 ID:My0lU9vO0

飛鳥日本「せっかくのクリスマス・イヴを寂しく過ごす予定の奥様にはピッタリの品」

飛鳥日本「訳ありとはいえ一世を風靡したズイズイ、今でもその人気は衰えない」

蝦夷「訳ありとはどのへんが?」

飛鳥日本「見りゃわかるだろ、死にかけなんだよ」

飛鳥日本「だが、うっかり虐待死させてしまっても警察にバレにくい点はかえってお得だな」

蝦夷「なんて鬼畜」

飛鳥日本「このズイズイがなななんとたったの3000円×10回払い!」チャリーン

蝦夷「やっす!」

飛鳥日本「そして今回は特別に、隋を看病する唐少年もお付けする!」

唐「え?え?ちょっと、何なんですかこの番組」ジャーン

蝦夷「あー・・・ええと」

蝦夷「言いにくいんですけど、なんか・・・むしろ隋さんがお荷物のような」

飛鳥日本「だな、唐くんはピチピチの10代で健康で有望株だもんな」

飛鳥日本「死にかけの三十路越え男なんかぶっちゃけ需要ない」

隋(!?)ガーン

飛鳥日本「しかしテレビの前でご覧の奥様、よく考えてください」

飛鳥日本「隋が死んでも、布団と若い男の子が残りますよ!たったの3万!」

蝦夷「確かに安いけど・・・」

唐「さっきから何の話をしてるんです、あなた達は!」
  
537 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2016/12/24(土) 18:34:18.58 ID:My0lU9vO0

その時、隋が苦しみながらも上半身を起こした。

飛鳥日本「おっ?サービスシーンでもするのか?カメラ寄せて!」

隋「・・・くっ・・・」ググッ

唐「お、叔父貴?大丈夫なのかよ」

隋「ゼェ、ゼェ・・・」

隋「私の方がいい男ですよ、奥さん!」キリッ

蝦夷「残り少ない体力を自分のPRに使った!」

唐「しょうもないことやってんじゃねぇよ!」

隋「う、うるさい・・・」

「マダムキラーになりたい」、その思いが隋を突き動かした。
そしてこれは飛鳥日本の狙いでもあったのだ!

隋「私単体でも奥様方を満足させられるッ」

隋「布団の中に居ても、決して奥様を寝かせない!」

隋「啼かせてみせましょう、この隋が!」

飛鳥日本「ご覧ください、この鮮度!彼はやる気です」

飛鳥日本「それではメモのご用意を!」

飛鳥日本「電話番号2310-8010-8104(扶桑とやまとは天使)にご連絡ください!」

飛鳥日本「今から30分以内にお電話いただいた方には、この蝦夷もお付けします」ニヤリ

蝦夷「えっ」

お電話
おまちしってーいまっすー♪
  
538 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/26(月) 22:14:46.47 ID:Qa2omrz30
乙wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww渤海そんなにキモいやつだったんかいwwwwwwwwww
539 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/05(木) 22:44:56.94 ID:L+J9ZmVn0
保守
540 : ◆pIxjj4GI1s [sage]:2017/01/07(土) 21:45:01.15 ID:JWGniCcx0
ちょっと忙しいので、一週間ほど更新が無理そうです・・・
541 : ◆pIxjj4GI1s [sage]:2017/01/12(木) 14:57:01.67 ID:krbgfDSI0
読み返してみたら、前回の話のナンバリングを間違えてました・・・
>第18話:約束を破った少女
内容的に次回の話とその次の話(本格的に大日本帝国編が始まる第19話)は時代が前後してしまうので、
次回の話も第18話で通して「第18話が二つ存在する」状態にしようかと思います
実はどちらを19話の直前にするかで悩んでいたので(だからナンバリングを間違えてしまった)
せっかくなので、やや短めの話で第17話を19話の次あたりに書きます
第17話は本編のアメリカ合衆国(Jr.)の父親に関する話にします
第19話は大日本帝国の誕生とキチガイ学園編入までの経緯であるので、
内容的にはあまり混乱しないと思います
彼は大日本帝国編のラスボス・宿敵ポジションなのですが、
その割にちゃんとその生い立ちを説明する時間を作ってなかったなぁと思っていたので、
ちょうどよかったかもしれません
なので、第18話→第18話→第19話(大日本誕生)→第17話(アメリカ誕生)→第20話(キチガイ学園舞台)となります
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/14(土) 21:46:34.46 ID:YH9qahGg0
いよいよ大日本来るか
543 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/19(木) 22:05:55.64 ID:AZeSaSLX0
  
第18話:捕らえられるマクガフィン氏

情報管理課のイストワール氏(M. Histoire)は、
厳重で面倒な手続きを全て終えて、看守に案内された。

銃を手渡されたので、氏が理由を尋ねると看守は一言言い放つ。

看守「これからキチガイに会いに行くのに、何を仰るんです?」

氏は「彼は気違いではない」と訂正して、「彼は気違いだったな」と再訂正した。

氏は狂人を殺すつもりで銃を見つめ、それを絶対に人に向けるまいと決心した。

目的地に至るまでの道は非常に静かであった。

それも当然で、鉄格子の中にあるのはたいてい墓碑だからだ。

墓碑に記された年月は遠い昔のものもあれば、つい数分前のものもあり、七週間先のものもあった。

たまに生きた人間もいて、氏と目が合うと軽く会釈した。

それらに氏は何ら感想を抱くことなく、看守の案内に従うのみであった。

看守「ここですね、囚人番号130の牢は」

看守「おい、130番!面会だ!」

看守は鍵を開ける際、氏に「重々気をつけてくださいよ、130番はとくに危ないですから」と囁いた。

氏が牢の中に入るや否や、看守は外側から再度鍵をかけた。
看守は鉄格子の隙間から氏を見守る。

イストワール「130番、どこに隠れているんだ。私だ、イザングラン(Ysengrin)だ」

氏の声を聴いて、奥の影からヨロヨロと男が出てきた。

男はアジア系で鶏がらのように痩せており、目玉だけがギラギラと光っていた。

この男と氏は知り合いであったが、刑務所の規定により囚人は番号で呼ぶことになっていた。

130「ヤオ(1)サン(3)リン(0)、お前のほうが合ってないか?この番号」

130「俺は51号っぽい、うん、51号の人と番号換えてもらおうかな」

氏は男の話を無視して、「資料のありかを言え」とだけ言った。

130番は残念そうに「お前に渡す分は全部、お前んとこの課が回収したはずだが」と答えた。

イストワール「私に渡さない分はどこにやったと聞いてるんだ」

130「どこにって、病棟内に決まってるだろ。あの壁全部だ」

イストワール「壁だって?」
544 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/19(木) 22:06:40.36 ID:AZeSaSLX0

130番は小さい子どもにでも教えるように、噛み砕いて答える。

130「あの壁一面にでかでかーっと書いてあるぜ。
 あれは歴代院長が落書きしてきた、超貴重な資料群なわけだ。
 ムカつく職員の悪口から、患者たちの性癖、情報管理課コンピュータの裏コードまで!」

イストワール「馬鹿言うな、壁にそんな落書きなんかない」

130「あるんだよ、ちょっと特殊な字だけどな。
 その字には正類がなくて、韻にも正音がない!
 凡人には朦朧として存在しないように見えているが、
 選ばれし院長が見れば黄金のように鮮明に輝いて、その意味を理解することができるとゆー」

イストワール「ふざけるな、裸の王様の詐欺師みたいなこと言いやがって」

130「あーあ、なんて頭の固い、だから嫌いなんだよ情報管理課!」

氏はため息をつく。
氏と130番の会話はいつもこうであった。

氏にとって130番は、だらしがなくてわけのわからないことばかり話す頭のおかしい人間である。

130番にとって氏は、何を言っても理解してくれずに役に立たない提案ばかりする頭の悪い人間である。

氏は呆れて言う。

イストワール「君はいつもそうだ、私を馬鹿みたいな冗談で誤魔化そうとする。
 どうしてまともに接してくれないんだ?
 どうして普通に仕事をしてくれなかったんだ?」

130番が言い返す。

130「ほらな、俺の言うことを無条件に冗談だと決め付けやがる。
 お前って本ッ当、模範的な情報管理課職員だよ」

イストワール「ああ、だから君のバディに選ばれたんじゃないか」

130「・・・だろうな。
 俺は上の発掘能力が怖いよ、お前みたいなのを見つけてくるんだもの」

130「・・・イザングラン、お前はここに来て何を思った?」

イストワール「何って、暗くて寂しいところだ。君が不憫だよ」

130「ああやっぱり、お前はそれっぽっちしか思うことがなかったんだな」

130「俺はここに来るとき、周りの奴らの行動、看守の冷酷さ、この空間に存在する全てに頭を狂わされそうになったよ」

イストワール「そうなのか、でも君は元々狂ってるからここに連れてこられたのに」

130「俺は狂ってねぇよ!」

イストワール「患者は皆そう言うんだよ。君が一番よくわかってるんじゃないか」
545 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/19(木) 22:07:48.78 ID:AZeSaSLX0

130「ハァ、お前にはわからないんだろうけどな。俺は人より感性が鋭いんだ、だから院長に選ばれた」

130「学生時代、意味もわからず祭り気分で反政府デモの集会に参加したらブラックリストに載っちゃって、
 就活ボロボロだった俺が院長なんて職に就けたのは、特殊な才能を認められたからなんだ」

イストワール「君って昔からチャランポランだな」

130「ここは人を生かせる場所じゃない。殺す場所なんだぜ」

イストワール「何を言っている。君は別に死刑宣告されたわけじゃないんだよ」

130「俺にとってこの刑は死刑宣告に等しいんだ、だから、俺は死に向かっているよ」

イストワール「私はそれに関して怒っているんだ。君はなぜ自殺しようとしているのかね」

イストワール「君は、生徒達に対して大変酷いことをした!
 生徒達の病んだ精神を救うのが君の仕事であるのに、あろうことか君は彼らに劇薬を投与したんだ。
 医者失格だよ、君は!
 君は生きて、彼らに対して罪を償うべきなんだ!」

130番は静かに答える。

130「上はそう考えちゃいないさ・・・上はお前の考えとはまるで違ってるよ」

130「上は俺の行動をおそらく評価しているんだ、表面上は怒っているけどね。
 あの手のつけられない癌細胞、問題児達を弱めるためにはあれしか方法がないんだから。
 そして、お前たちを利用して俺を悪者に仕立て上げたんだ。
 上は完全に俺を殺すつもりでここに入れたんだよ」

イストワール「130番、君は被害妄想とかいうのに捕らわれているんじゃないか?
 そんな馬鹿げたことを上がやるわけないじゃないか。
 どこまでも私を悲しませないでくれよ、私は君の友人なんだよ」

130「ここは、空気が悪い。
 俺はここに居て日々それに侵蝕されていく。
 お前にとって、ここはメンタルヘルスケアスクールと同じようなものに見えてるんだろう?
 だが、あそことここは大違いなんだよ。
 あそこは俺の城さ、俺は生徒達のために常にあそこを清潔に保ってきたんだ。
 だから、生徒は世界のどこよりもあの学校が快適なんだ。
 逆に、ここは世界で一番不潔で危ない場所なんだぜ」

イストワール「確かにここは窓もないし空気が悪いけど、君の言ってることは何もかもおかしいね」

130「イザングラン、悪く思わないでくれよ。俺はお前の親友だけども、俺はお前が大嫌いだ」

イストワール「私もそうだよ。だけど君のことが心配だ。それで、なぜ君は自殺なんかしたいんだ?」

130「俺だって死にたくないけど、ここにいるくらいなら死んだほうがマシだ。
 後ろの看守を見てみろ、ゴーグルをかけてマスクをしているだろ?
 あれは普通の人間ですら、ここに居るのが危ないからなのさ。
 お前って奴は超人なんだよ、皮肉でなく尊敬しちゃうぜ」

そのとき、獣のような叫び声が聞こえて、生肉をかき回すような音が聞こえた。
それを氏は冷静に推理する。

イストワール「あー130番、その・・・君の牢屋仲間が自殺を図ったようだが。
 あれ、君のほうもどうしたというんだ?」

130番は頭を押さえながら悶絶していた。

イストワール「いい加減冗談はよしたまえ」
546 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/19(木) 22:08:38.72 ID:AZeSaSLX0

130番の痙攣は続くが、イストワール氏は冷ややかに見つめる。
後方で待機する看守も何もしない。

130番はようやく落ち着きを取り戻す。

イストワール「気がすんだか?」

130「お前はいいよな・・・はぁ、はぁ・・・。
 おい看守!今絶命したのは囚人番号82番だ!
 奴め、俺を道連れにしようとしやがったぞ・・・」

イストワール「もういいよ、君がイカレてることは十分わかってるって」

看守は内線で他の者を呼んでいる。

130「お前にはわからないさ・・・お前は生徒の顔すら把握していない」

イストワール「顔写真は全て暗記しているよ」

130「写真のない分は?」

イストワール「写真がない?!そんなはずはない、全ての生徒は入院時に写真を撮るはずだ」

130「・・・夜郎、トレビゾンド、渤海」

130「彼らについて知ってることは?」

イストワール「何だって?・・・誰だ、彼らは?データになかったぞ」

130「彼らはメンタルヘルスケアスクールの在校生さ」

イストワール「待て、メモを取る!後で調べるから、彼らの生年月日を教えてくれ」

130「彼らの命日で調べたほうが早い」

イストワール「命日?・・・いい加減にしろ!」

イストワール「死んだ人間が生徒なものか!」

130「彼らは鬼籍に載った上で、在籍名簿にも載っているんだ・・・院長用のな」

130「夜郎君はいつも亜細亜病棟の百葉箱の近くに居てね、雨の日にはたまに生徒に目撃されるね」

130「トレビゾンド君は欧羅巴病棟の図書館に住んでいる。いつも聖書を熱心に読んで、クルアーンを破っているよ」

130「この2人は周囲と接触することがないから、擬似友人として外部のマクガフィン少年を定期的に投入している」

130「まぁ・・・夜郎君は高慢ちきだし、トレビゾンド君はインテリすぎてゴドーとは気が合わないみたいだが」
547 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/19(木) 22:09:28.12 ID:AZeSaSLX0

イストワール「いつまで茶番を続ける気だ?」

130「聞けったら、これまでゴドーに反応すら見せなかった渤海君の治療が大躍進したんだ」

130「俺は嬉しい、幾代もの院長が望んだ光景を見ることが出来たのだから」

130「彼は目覚めた。親友ができて、絶交するまでに回復したんだ」

130「これは快挙だ。なのに、俺へのこの仕打ちは酷すぎるじゃないか!」

130「新しい院長を任命するでもなく、学校を閉鎖するなんて酷じゃないか!」

130「先の二人はともかく、今の渤海少年の精神状態は危ないのに」

イストワール「もういい、君はやっぱり病気なんだよ」

イストワール「君の妄言にはうんざりだ」

130「頼む、マクガフィンを呼んでくれ!」

130「一刻も早く、ゴドーに引き継ぎしなければ・・・」

イストワール「何を言ってる?あの子はまだ小学生じゃないか」

130「そうさ、ユートピア小学校3年生だ」

130「そして、将来のここの院長だ」

イストワール「院長は世界中から選ばれる。君の知り合いが選ばれるとは限らないだろ」

130「限るよ。上があの子を逃すわけない」

130「あの子の夢を全て奪った上で、院長に迎えるだろうよ」

130「俺も連中と同じ、あの子の敵なんだ」

130「でも、それは救世主としてのあの子の宿命さ」

130「生徒たちを救えるのは、全世界であの子だけなんだから」

イストワール「何にせよ、こんな頭のおかしい人間のところへ子供を連れてくるわけにいかない」

130「俺がもっとおかしくなる前に、頼むよ」

130「お前もそこはわかるだろ?俺はじきに廃人になる」

130「その前に、何としてでもあの子に伝えなきゃならないことがあるんだ」

イストワール「・・・」

イストワール「わかった。彼が行くと言えばここに案内する」

130「ありがとう」

イストワール「だが、私にも言うべきことがあるだろう?」

イストワール「なぜ君は、WWとCOLDを生徒たちに投与した?」

130「上からの指示だ。俺から相談を持ちかけて許可をもらうという形で」

イストワール「どんな効果を期待したんだ?」

130「彼らの現状そのままを」

イストワール氏はため息をつく。

イストワール「・・・具体的に」
548 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/19(木) 22:10:58.61 ID:AZeSaSLX0

130「まず、病院が大地立から地球立に変わった意味を説明しなきゃな。なぜだかわかるか?」

イストワール「さぁ・・・グレートブリテン卿とフランス卿の発案だと聞いたが」

130「その通り、彼らは当院の出身者だ。他の出身者と協力して、彼らがそう判断した」

130「初め、患者たちは『大地を駆け巡り、自己を顕示したい』と願っていた」

130「ここでの自己顕示というのは、基本的に他者への犠牲を強いるものだ」

130「それが次第に海の覆う限り、空の届く限りに範囲が広がっていった」

130「お前も気づいていると思うが・・・この病院はただ重篤な精神病患者を集めているわけじゃない」

130「皆が皆、ある種の天才。大いなる犠牲の上に王になる素質を持っている」

イストワール「・・・ああ」

イストワール「出身者の多くは、それぞれの道で一流とされる人間になっているな」

130「本当はもっとすごい存在になれたのさ、彼らは」

130「その才能を、最大多数の最大幸福のために毟り取るのが俺たちの仕事だ」

130「この世界の彼ら以外の住民と、彼らのうちで傷つく敗者を守るために、王を殺す」

130「彼らの野望を引き裂いて、彼らの人生を大きく狂わせる酷い仕事さ」

130「似たような者たちを、子供のうちに共住させて潰し合わせるんだ」

130「これまでは・・・特に大地立の頃は、それだけで十分だったんだ」

130「少年時代のグレートブリテン卿は、当時の『王』最有力候補として見なされていた」

130「そこで病院は、彼に対する反逆者としてアメリカ(13植民地)少年を投入した」

130「アメリカ少年は元々ただの非行少年だと見なされていたが―――違った」

130「彼は院内で頭角を現して、病院の予想を超えた反逆者として成長した」

130「グレートブリテン少年とアメリカ少年の闘争は、大勢の患者を巻き込んだ」

130「その経験を踏まえて、元患者たちは『病院側の意識の低さ』を訴えたんだ」

130「時代を経るごとに患者・王候補たちの凶暴さや残虐さは増してゆく」

130「大地を駆けるどころではない、地球を滅ぼしてしまうほどに、患者たちは進化しているのだと」

イストワール「じゃあ、地球を守るという意味で『地球立』に変えたと?」

イストワール「だとするとおかしいじゃないか、元患者は病院を恨むはずだ」

イストワール「どうしてそんな、さらに患者を束縛するようなことを提案するんだ?」
549 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/19(木) 22:12:00.85 ID:AZeSaSLX0

130「自覚のないままに、爪をもがれた彼らは地球の一員だと認識してしまうのさ」

130「もはや王たりえなくなったグレートブリテン卿は、後輩たちを獣のように感じたんだろうな」

130「善良な地球市民である自分たちの脅威を排除しようと考えたわけだ」

130「・・・ここからは愚痴になっちまうけど、いいかな?」

イストワール「この際とことん言えばいい」

130「俺の受け持った生徒たちは、歴代で最も才能豊かで恐ろしい少年たちだったんだよ」

130「抜群の頭脳、身体能力、カリスマ性を持っていた」

130「そのまま彼らを世に放てば、世界は滅ぶところだった」

130「彼らは絶望、恥辱、憂鬱、恐怖、惰気、飢餓感、子宮回帰願望といったものを知らなかった」

130「彼らを大人しくさせるには、それらを刻みつける必要があったんだ」

130「そこで俺は・・・あの薬の投与を上に持ちかけた」

130「上はすぐに許可を出した。極秘のうちに」

130「お前らは、情報管理課の人間は、正義感が強いからな」

イストワール「信じられないな、そんな話」

130「そして、上への忠誠心も強い。忠実でまっとうな人間だよ、お前は」

130「被害妄想の作り話だと思いつつも、ちゃんと俺の話を聞いてくれる優しい奴だ」

130「見ておけ、彼らは人を殺そうとするたびに、恐怖が常によぎるから」

130「彼らはもはや、普通の人間と同じように、金や権力に従って生きることしかできない」

イストワール「・・・」

130「勘違いしないで欲しい」

130「俺は親の次くらいに、彼らを愛しているんだぜ」

130「たまらないほど愛しているんだ、だからこそ、WWを二度、COLDを一度投与したんだ」
550 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/19(木) 22:13:56.68 ID:AZeSaSLX0

130「最後に一人の王が君臨するより、愚かな民として暮らした方が幸せだと俺は思ったから」

130「彼らはきっと、俺の行動をわかってくれるはず」

130「自分の子や親戚を、この学校に入れるだろう」

その時、130番はよろめいた。

イストワール「!おいっ・・・」

130「だ、駄目だ・・・思ったより時間がなかった・・・」

130「俺はもう駄目だ・・・じきに、人間らしい思考ができなくなる」

130番はイストワール氏の両肩を掴む。

それを見て看守は銃を構えた。

イストワール「待って!撃つのは待って!」

130「ゴドーに、マクガフィンに、Qちゃんが言ってたって伝えてくれ・・・」

130「本当にごめんって、俺と出会ったせいで、ゴドーの人生がめちゃくちゃになること」

130「それでも、過去と、現在と、未来の患者を救えるのは、ゴドーしかいないこと」

130「生徒から逃げずに、向き合って欲しいこと」

130「俺よりも上手くやって、まともに生きて欲しいこと」

130「これだけは、あの子に伝えなきゃいけないんだ!」

イストワール「わかった」

130「あと、お前に言うぶんだ」

130「イザングラン、お前には苦労をかけたな」

130「業務に関してお前とわかり合えたことはなかったが、お前が相棒で良かった」

130「もっと違う出会い方をしていれば、喧嘩も少なく済んだだろうにな」

130「それから」

130「今から俺の勝手で、お前に一生消えない傷を付けることを謝る」

130「これ以上の屈辱に、耐えられないんだ」
551 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/19(木) 22:15:02.64 ID:AZeSaSLX0

130「Qちゃんは待ってるぞ、ゴドー!」

それだけ言うと、130番はイストワール氏から拳銃を奪い取り、

自らの眉間を撃った。

ダァン!

130番の体は、ずるりと床に崩れた。

彼は廃人になる寸前で、自殺したのだった。

イストワール「嘘だ」

イストワール「なぜだ、なぜなんだ、烏有!」

イストワール「最後まで君は、私が納得する答えを教えてくれなかった!」

始終を見ていた看守はトランシーバーで仲間に連絡し、130番の遺体に近づいた。

看守「いいですか、あなたがこいつを殺したんですよ」

看守「拳銃を奪って自殺しただなんて、大問題ですから。わかるでしょ?」

看守「こいつが暴れ出したからあなたが撃った、そういうことにしますよ」

看守「よござんすね?」

イストワール「・・・」

イストワール「・・・ああ、私が彼を殺したんだ」

イストワール「問題無い、そう報告するし、君の方も頼むよ」

イストワール「私が烏有を殺した」

イストワール(・・・だが)

イストワール(私が殺したのは狂人ではなかった)
  
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/22(日) 18:03:04.62 ID:CF+QvuZq0
何この話めっちゃ興奮する
553 : ◆pIxjj4GI1s [sage saga]:2017/01/24(火) 20:10:17.97 ID:3YItZhv00
考えた結果、19話と20話はやっぱりくっついていたほうがわかりやすいと思うので、
先に17話を投下します
17話は実質「番外編:ドカン!と一発ホームラン」 (>>389〜)の続きになります

17話の登場人物は基本アメリカなので、
ここで説明しておきます
セリフ「」の前に付ける名前で表記してます

アメリカ:「番外編:ドカン!と一発ホームラン」の主人公。二代目アメリカ合衆国。あだ名はコロンビア(以下)。

テキサス:コロンビアの夫。

USA:三代目アメリカ合衆国。呼び名はジュニア。コロンビアの息子のうち、兄のほう。

CSA:アメリカ連合国。あだ名はディキシー。コロンビアの息子のうち、弟のほう。

十三州:初代アメリカ合衆国。コロンビアの父親。ディキシーたちの祖父。
554 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:11:53.26 ID:3YItZhv00
  
第17話:アンクル・サムの小屋

かつて友人たちにコロンビアと呼ばれ慕われたアメリカ少女は、やがて大人になり、結婚し、子宝に恵まれた。

夫のテキサスは陽気で優しく、子どもは双子の男の子だったので一度に賑やかになった。

兄の方はアメリカ合衆国(USA)といい、ジュニアと呼ばれた。弟の方はアメリカ連合国(CSA)といい、ディキシーと呼ばれた。

さて、この双子のうちディキシーは大変な悪ガキで、アメリカはひどく手を焼いた。

彼は父親によく似ているらしく、「俺の子どもの頃にそっくりやー!」とテキサスは笑う。

アメリカ「ディキシー!ディキシー!遅刻しちゃうわよ!」

アメリカは2階の息子を呼んだ。

CSA「うーん・・・うっせぇな、わかってるよ、ムニャムニャ・・・」

アメリカ「もう!あの子ったらまた夜更かししたのね!」

テキサス「ははは、俺も遅刻常習犯やったからなぁ」

アメリカ「どうしてジュニアみたいにちゃんとできないのかしらー?」

USA「・・・」ズズッ

カチャン

USA「ごちそうさま、いってきます」

アメリカ「ランチボックス持ったわね、いってらっしゃい」

アメリカ「ジュニアは本当にいい子ねぇ」

兄のUSAは学年一の優等生で、スポーツ万能で物静かな少年だった。

彼に恋心を抱く女生徒は多く、学園の密かなアイドルであった。

そんな息子は、母親にとっても自慢であった。

CSA「ぅぁーーあ、今日も遅刻だなー」

アメリカ「ちょっとは焦りなさいな!また先生に呼び出されるでしょ!」

対する弟のCSAは、小学校一の問題児であった。

遅刻や喧嘩でしょっちゅうアメリカは学校に呼びだされた。

CSA「父ちゃーん、パンにピーナツバターとハチミツ塗ってー」

テキサス「どのみち遅刻なんやから、自分でゆっくり塗ったらええがな」

CSA「けちんぼー」

優等生と問題児、それでも母親にとってはどちらの子も等しく可愛かった。

が、躾のためにディキシーの方を怒りがちで、ジュニアを褒めてばかりいるのも事実。

ディキシーは内心面白いはずがなかった。
555 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:12:38.18 ID:3YItZhv00

元々レイシストの気質の強い彼は、自分より弱いものに八つ当たりしていた。

ドカッ

CSA「おい、ニガー!オレをよくも睨みやがったな!」

ドカッ

CSA「よくもだ、あいつと、ジュニアと見比べて、オレを嘲笑ったな!」

バキッ ゲホッゲホッ・・・ヤメテヨ・・・

CSA「ニガー野郎のくせに、オレを出来損ないだと笑いやがって!」

ガンッガンッ

CSA「二度と、二度とだ、絶対にすんなよ!」

ドカッ

CSA「オレはあいつが大ッ嫌いなんだからよ・・・」
   
   
   
アメリカ「ええっ!同級生をリンチ?!」

担任「はい、相手のお子さんは全身痣だらけで肋骨にヒビが入っています」

アメリカ「まぁ、まぁ、なんてこと!治療費はもちろんこちらで負担しますわ」

アメリカ「相手の御宅へすぐ謝りに行きます」

アメリカ「ディキシー!あなた、自分が何をしたかわかってるの!?」

CSA「オレ悪かねぇや!」

アメリカ「ディキシー!」

CSA(フン

担任「お母様が一生懸命なのは十分わかるんですが、彼自身の問題ですので・・・」

CSA「あのニガー、オレの言うこと聞かねぇんだもん。ちょっとばかし殴っただけだ!」

アメリカ「いい加減になさい!」パシンッ

アメリカはディキシーの頬を叩く。

CSA「・・・」

CSA「母ちゃんはジュニアばっかりだ・・・」ボソッ

アメリカ「必ず反省させて、相手の子に謝らせますから」

家に戻ると、さすがのテキサスもディキシーを叱った。

テキサス「ディキシー、お前、同級生に怪我させたそうやないか」

CSA「でもよ、父ちゃん。あのニガーはオレを侮辱したんだ」

テキサス「その子、何したんや?」

CSA「え・・・」

CSA「・・・明らかに、オレを馬鹿にしたような目で見てやがったんだ」

テキサス「何?それだけか!そんなようわからん理由で因縁つけて蹴ったり殴ったりしたんかお前は!」

バシィッ

テキサスはCSAを殴った。

CSA「・・・っ」
556 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:13:15.71 ID:3YItZhv00

テキサス「お前は自分勝手すぎる!ちょっとはジュニアを見習わんか!」

テキサス「ジュニアは皆と仲良うできてんのにお前ときたら・・・」

テキサス「ジュニア、お前からも何か言うたってくれ。友達をむやみやたらに殴るなて!」

USA「・・・」

CSA「・・・」

USA「・・・そうだな」

USA「誰にでも多少は腹が立つこともあるさ。でも、平和的に解決するよう心がけたほうがいいね」

USA「自分の納得いく方法で、なおかつ周囲にとって一番理想的な選択をするべきだと思うよ」

テキサス「お、おう・・・」

ジュニアはそれだけ言うと、庭にある自分専用の作業小屋に行った。
双子の部屋はディキシーの玩具で散らかっているので、
ジュニアはこの小屋で勉強をしたり、筋トレをしたり、趣味の工作をしたりする。

テキサス「あいつの言うてる意味ようわからんかったけど・・・まぁあれや」

テキサス「たぶん、喧嘩すんなって言いたかったんやろ!なぁ、ディキシー?」

CSA「知らねー、オレ頭悪いもん」

CSA「あいつの言ってることなんか、何にも理解できないね!父ちゃんとおんなじで!」

テキサス「こらっおま、お前なぁ!##」

ディキシーはプイッと自室(兄と相部屋だが)に戻った。

ディキシーは部屋で綿を弄びながら、考え事をした。

CSA(わかってんだ、オレが出来損ないなのはさ)

CSA(ジュニアはオレみたいにニガーを殴ったりしねぇし)

CSA(オレみたいにすぐキレたり騒いだりしねぇし)

CSA(頭がすごく良くて、みんなの頼りになる人気者だよ)

CSA(でもさ、そんな奴と比べられるオレって不幸じゃないか)

CSA(一人っ子だったなら、こんな思いはせずに済んだんだぜ)

CSA(まぁ・・・オレがいないでジュニアだけ生まれてればよかったんだろうけど)

CSA(きっと母ちゃんはそう思ってるだろうな)

CSA「・・・」

ディキシーは自分が泣いていることに気づく。

CSA(情けねぇな)

CSA(なんでオレってこんなのなんだろ?)
 
557 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:13:55.55 ID:3YItZhv00

CSA「・・・あ」

CSA(なんか綿をいじくってたらカメリアみたいになったぞ!)

CSA(母ちゃんにあげよっと##)

その頃、母親のアメリカは客人を待っていた。

リーンリーン

アメリカ「来たわ」

彼女は玄関へ迎えに行く。

ガチャッ アメリカ「お父さん!」

十三州「遅くなってすまない。事故で渋滞していてな」

彼女はディキシーについて、父親と相談するつもりだった。
具体的に言えば、ディキシーを更生施設に入れるか否かである。
彼女の父親は、大地立青少年精神医療センター西病棟の出身であるため、
そのような少年達に理解があったのだ。

アメリカ「あたし、はっきり言ってディキシーを育てる自信がないの」

テキサス「そんなん・・・言うたんなや、可愛い自分の子どもやないか」

アメリカ「でも、本当のことよ!」

アメリカ「あたし、あの子が一体何を考えてるのかわからないの・・・っ」

十三州「まぁ落ち着きなさい」

十三州「コロンビア、どんな親でも育児に悩むものだ」

十三州「お前のおてんばぶりに、私とお母さんも随分悩んだよ?」

アメリカ「でも!女の子と男の子は違うわ!」

十三州「そうだ、ディキシーは男の子だ」

十三州「女の子よりも暴力的で、時として親の手に負えない」

十三州「ま、そこはテキサス君に頑張ってもらわないと困るが」チラリ

テキサス「はい・・・」ショボン

十三州「私が見る限り、あの子は異常ではないよ」

十三州「ひどく暴力的で、レイシストが過ぎるがな。そこを教育するのが親の仕事だ」

十三州「あの子はお前たちを愛しているから、必ず声が届くさ」

アメリカ「そうかしら・・・」
 
558 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:14:35.04 ID:3YItZhv00

十三州はコーヒーをすすりながら、娘に尋ねた。

十三州「ところで、外に小屋があったがあれは?」

アメリカ「ああ、あれはジュニアのよ」

アメリカ「ジュニアは工作が好きだから。ノコギリとか使うのよ」

十三州「自室とは別に、あの小屋を作ったのか?」

アメリカ「部屋はディキシーと共同よ。そろそろ分けようと思ってるけど」

十三州「ディキシーに、あの小屋の代わりは何かよこしたのか?」

アメリカ「え?いいえ、だってディキシーには必要ないもの」

アメリカ「あの子は宿題もやらないし、外で遊んでばかりだし、共同なのにディキシーの物で散らかってるし」

十三州「・・・それは良くない。ディキシーにも同じようにしてあげなくては」

アメリカ「何で?部屋ではジュニアは寝起きと着替えくらいしかできないのよ」

十三州「もういい、お前は何もわかってないな」

そこへ、2階からディキシーが降りてきた。

CSA「母ちゃん・・・あれっ爺ちゃん来てたの?」

アメリカ「ディキシー!お爺ちゃんはあなたを怒るために来たのよ」

CSA「う・・・」

十三州「ディキシー」

十三州「お前はたいした理由もなく同級生を蹴って怪我をさせたそうだな」

CSA「だって・・・」

十三州「もう二度としないか」

CSA「・・・約束できねー」

十三州「だろうな」

十三州「よし、週末は私と買い物に出かけるぞ」

CSA「はぁ!?何で?」
 
559 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:15:13.36 ID:3YItZhv00

十三州「私はお前に投資しようと思ってな、アメフトのスパイクを選ぶためだ」

十三州「お前は絶対にアメフトの才能がある。天才には良い装備を与えなくてはな」

CSA「えっ・・・」

CSA「・・・ジュニアは?」

十三州「ジュニア?あいつは勉強で忙しいだろう」

十三州「それにあいつはあまりアメフトを好きじゃないようだ」

CSA「・・・うん、そうだな」

十三州「ただな、私はお前に期待しているが、しょっちゅう暴力騒ぎを起すようでは困るんだよ」

十三州「いくら実力があっても、そんな選手は出場停止になるからな」

十三州「どうだ、むやみに人を殴るのをやめるか」

CSA「うん、頑張る」

十三州「約束だぞ」

CSA「うん、約束」

十三州「よし、では次に会うのは週末だな!」

CSA「ヤッホゥ!」

ディキシーは跳んで喜びながら自室へ戻っていく。

アメリカ「・・・お父さん、アメフト好きだっけ?」

十三州「野球派だ」

十三州「だが、ディキシーはアメフト選手に憧れているからな」

アメリカ「そうだったんだ・・・」

アメリカ「あたし、そういえばディキシーの好きなもの、あまり知らないかも・・・」

十三州「これからはよく注意して観察することだな」

アメリカ「お父さん、すごいね」

十三州「あの病院にいたから、人間観察がすっかり癖になってしまったよ」

祖父は車に乗る前に、ジュニアのいる小屋に寄った。
ジュニアはボトルシップを組み立てていた。
 
560 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:16:31.98 ID:3YItZhv00

USA「・・・お爺ちゃん」

十三州「いやぁ、邪魔してすまんな。なかなかいい部屋じゃないか」

部屋の本棚には(小学生に理解可能なのか怪しい)本が多数、整頓されていた。

USA「まぁね、本や道具をそろえるのにはそれなりに苦労したよ」

十三州「お前はおねだりが上手いからなァ」

そういうと、祖父は帰っていった。

アメリカ(あたし、ひどい母親だわ)

アメリカ(よく考えたら、ディキシーを褒めたこと、一度もないかもしれない)

アメリカ(もっとちゃんと、あの子のこと見てあげなくちゃ・・・!)
  
  
母親がそう思っていた矢先の金曜日に、ディキシーは行方不明になったのだった。
祖父が彼にスパイクを買い与えようとしていた前日である。
ディキシーが家に帰らない理由が見つからなかった。

いくら素行の悪い少年とはいえ、小学生が夜まで帰ってこないのは異常事態である。
両親はもちろん、学校関係者や同級生の保護者、近隣の住民たちは懸命にディキシーを捜索した。
警察は誘拐の線も含めて捜査した。
それでもディキシーは一向に見つからなかった。

USA「母さん、気に病まないで。ディキシーのことだもの、どこかで遊んでるに違いないよ」

アメリカ「ええ、そうね、きっとそのはずよ」

アメリカ「でも、遊んでる途中で怪我でもしてたら?大変でしょ」

母親は息子に説明しながら、自身をなだめていた。
本当は、ディキシーがどこかで遊んでいるとは考えていなかった。
事故にあったか、悪い人間にかどわかされたか、ディキシーの意図しないことが起こっているのだと。
週末の買い物を楽しみにしていたディキシーが、その約束を放り出すとは考えられない。

アメリカ(ディキシー、どこにいるの?)

アメリカ(無事で帰ってきて!そしたらお母さん、あなたを抱き締めてあげるから!)
 
561 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:17:11.52 ID:3YItZhv00

彼女は一睡もせずに息子を捜しつづけた。
夫が体調を心配して、一度ベッドで仮眠を取ることを勧めた。
彼女の体力は限界にあったため、彼女はそれに従った。

布団に身を包みながらも、彼女はなかなか寝つけなかった。
目を瞑っても、常に家に戻らない次男のことを考えていた。

夢か現か、彼女自身には判断がつかなくなった頃、
よく知った声が聞こえた。

CSA「・・・アチャン・・・母ちゃん・・・オレだよ・・・」

アメリカ(ディキシー!)

アメリカ「ディキシー!帰ってきたの!」ガバッ

母親は飛び起きて、次男を抱き締めようとした。
それを次男は制止した。

CSA「違うんだ、母ちゃん・・・オレは、最初からどこにも行ってないんだ」

アメリカ「?」

CSA「でも、これから行かなきゃいけないんだ。聖ペトロが門で待ってくれてるんだ」

アメリカ「ディキシー?何を言ってるの?どこにも行かせないわよ」

彼女は息子の姿の異変に気づいた。
彼の背中には、小さな翼が生えていた。

アメリカ「ディキシー?それはなぁに?どこでもらってきたの?」

CSA「神様がくれたよ。本当はオレ地獄行きだけど、ローマって人が口利きしてくれたみたい」

CSA「ちゃんと母ちゃんにお別れを言って、お仕事を手伝ったら天国に行けるんだって」

アメリカ「ディキシー、お母さんはそんなひどい冗談聞きたくないわ」

CSA「本当の話だよ、母ちゃん。お別れ言いに来たんだ」
 
562 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:18:11.86 ID:3YItZhv00

CSA「オレ、母ちゃんが大好きだよ。今まで言わなくてごめんね」

アメリカ「嫌よ・・・そんな冗談いらない!」

CSA「オレは悪い子だったから、母ちゃんを困らせてばっかりだった」

CSA「ごめんね、母ちゃん。でも、本当に困らせたかったわけじゃないんだ・・・!」

アメリカ「これからお母さん、あなたに優しくするから!そんなこと言わないで!」

CSA「あのね、母ちゃん。これ、綿で作ったカメリアだよ」

CSA「母ちゃんに渡しそびれちゃったから、今渡すんだ」

アメリカ「綺麗だわ、やわらかくて、お母さんこういうの好きなの」

CSA「そうだろうと思った」ニコ

アメリカ「でもお母さん、こんなのより何百倍もあなたが好きよ」

CSA「ありがとう、母ちゃん」

CSA「でもね、やっぱりオレは悪い子なんだよ」

CSA「これから一生、母ちゃんを苦しめてしまうんだ」

CSA「母ちゃんはジュニアを嫌いになってしまうかも。オレ迷うよ」

アメリカ「何を迷うことがあるの?」

CSA「あのね母ちゃん、オレはずっとこの家に居たんだ」

CSA「オレは今から聖ペトロのとこに行くけど、体はそこにあるままなんだ」

CSA「あのね・・・あのね、ごめんよ、母ちゃん」

CSA「オレの体ね、ジュニアの小屋の床下にあるんだ」

アメリカ「嫌!」
  
  
母親が我に返ると、次男の姿はなく、綿のカメリアが枕元に置いてあった。
 
563 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:19:17.31 ID:3YItZhv00

彼女はカメリアを手に取り、何かを思考することなくサンダルを履いて、外に出た。

外はまだ暗かった。

長男の小屋にはなぜか灯りがついていた。

彼女が小屋に近づくと、小屋の前で夫のテキサスがうなだれていた。

テキサスは彼女の姿に気づくと、必死に妻を中に入れまいとした。

彼女は夫を押し切って、小屋の中に入った。

小屋の中では、長男が椅子に座ってうつむいてた。

その長男を、彼女の父親は鷲のように鋭い眼光で睨んでいた。

父親の足元には、剥がされた床板が捨て置かれていた。

そしてその先に、

子どもの物らしい、頭部や手足がまとめて置かれていた。

アメリカ「いや・・・」

彼女が叫びそうになった時、父親は彼女の口を押さえつけた。

十三州「駄目だ、お前たち夫婦がもっと不幸になる!」

十三州「テキサス!」

テキサス「は、はい!」

アメリカ「うあああああああ・・・っ」ジタバタ

テキサスは小屋の扉を閉め、暴れる妻を抑えた。

十三州「コロンビア、すまない。私のせいだ」

十三州「お前に相談されたとき、いやそれ以前から、私はジュニアの方を危惧していた!」

十三州「私の甘さが招いたことだ・・・もっと早く、お前に言うべきだった」

USA「うるさいな、さっさと警察へでも通報すればいいじゃないか」
 
564 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:20:27.28 ID:3YItZhv00

USA「ディキシーが悪いんだよ、僕相手に自慢なんかするから」

USA「つまらない人間の自慢ほど、人を苛立たせるものってないよね?」

USA「頭の悪いディキシーが、靴を買ってもらう程度のことで、僕より上に立った気でいたのさ」

USA「そんな兄弟いらないから、捨てようと思ったんだよ」

USA「お母さんが騒がないように、ちゃんと僕はフォローしたんだよ?」

USA「お母さんを傷つけないように努力したのに、どうして僕が怒られるの?」

アメリカ「うそ・・・嘘よ、こんなの、あたしの産んだ子じゃない」

アメリカ「悪魔よ!あんたは悪魔!悪魔ーーーーー!!!!!!」

USA「母子手帳見返したら?僕はお母さんから生まれてきたよ」

十三州「お前を警察に引き渡したりしない・・・」

十三州「私は娘を愛している。娘を世間から差別される身分にさせてたまるものか」

十三州「お前は、刑務所よりももっと恐ろしい所へ連れて行く」

十三州「私が少年時代を過ごした場所だ。もっとも、私の場合 半ば雇われて入ったが」

十三州「お前によく似た少年たちがたくさんいる場所だ」

USA「それじゃ、そいつら全員 僕が殺すね」

十三州「殺されるのはお前かもしれんぞ」

USA「そんなわけないね」

十三州「強がりを言えるのは今のうちだな、入ればすぐに音をあげて、私に支援を求めるに違いない」

USA「ありえない」

十三州「私は喜んで支援するぞ。可愛い孫が殺されるために、弱い少年たちを排除せねばならん」

十三州「どうせ連中もお前と似たようなクズなんだからな、社会貢献の一環だ」
 
565 : ◆pIxjj4GI1s [saga]:2017/01/24(火) 20:21:20.61 ID:3YItZhv00

USA「孫がどうなってもいいの?」

十三州「お前が病院で死ねば、世界の不穏分子は一つ消えたことになるじゃないか」

十三州「仮にお前が退院しても、その時は今のお前とは別人になっているだろう」

十三州「恐れを知って、社会にビクビク怯えながら、自分を騙し騙し生きて行くのさ」

USA「意味わかんないね」

十三州「モデルがここにいるぞ。あそこに入る前の私は、今の私よりも勇敢だった」

十三州「少年時代の私は、ディキシーのように乱暴者で、お前のように自分勝手だった」

十三州「今や私は、自分より娘が大事になってしまった。孫の死が哀しくて頭が狂いそうだ」

十三州「お前もいずれ、こんなふうに情けない姿を晒すんだ」

USA「そんなの脅しにすらならない」

USA「要するに、お爺ちゃんは甘いから、コネで警察をうまいこと操ってくれるんでしょ?」

USA「ディキシーは山中あたりで見つかったことにして、僕はそのショックで療養したことにするんだ」

USA「僕は犯罪者扱いされないまま、ディキシーより長く生き延びられるんでしょ?」

十三州「ああ、娘夫婦のためにな」

USA「お母さんのおかげで、僕は普通の犯罪者よりも高待遇にあずかるわけだ」

十三州「お前がそう思うならそれでいいよ」

十三州「私の一番嫌いな友人が、お前を病院まで送り届けてくれる」

十三州「私やお母さん、お父さんとはここでお別れだ。挨拶でもしていきなさい」

ジュニアは両親を一瞥する。

USA「・・・だってさ、バイバイ!僕には二度と会いたくないだろうけど」

両親は絶句した。
母親は様々な感情が入り乱れて、ただ泣くばかりであった。

その時、小屋の外からクラクションが聴こえた。

十三州「あいつ・・・今何時だと思ってるんだ?相変わらず勝手な奴め」

祖父は孫の手を引いて、外へ出た。
 
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