クマ「ゲッターロボ・クマー!」

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94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:10:10.37 ID:mZvQ5q5So

ナガレ『オラオラオラ! 邪魔だクソトカゲ共があっ!』

バララララララ バキッ バラララララ


クマ「ナガレ!? あいつ何してるクマ!?」

早乙女「ゲッターが出せないと知って、銃を持って飛び出していきよった。だが奴なら問題あるまい」

クマ「ナガレがいないと尚更ゲッターを動かせないクマ! 本当に何を考えているクマ!」

ジン「待ってよ! どうしてゲッターロボとやらを出さないのよ?」

早乙女「ゲッターロボは三人で乗るロボットだ。二人は勿論、一人でなど論外だ」

クマ「オートパイロットじゃあ合体もできないクマ……」

ジン「ここの人たちは、他に誰か乗れないの!?」

早乙女「できるのならばそうしている。できないからこそ、お前を連れてきたのだ」

ジン「うっ……」
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:11:12.39 ID:mZvQ5q5So
ズガアァァァン!

ジン「きゃあっ!」

クマ「クマーッ!」

早乙女「ぐっ……被害状況!」

オペレーターA「所員食堂が全壊! 居住区域にも被害小!」

早乙女「重要箇所は免れたか……」

ジン「居住区域って……避難は終わってるの?」

早乙女「…………この場にいる人間は、皆覚悟している。勿論、あそこにいた所員も残らずだ」

ジン「そんな……!」


ナガレ『ッの……野郎ォ! オオオォォラアァッ!』

バララララララララララ


クマ「誰かあのバカに弾の無駄だと伝えるクマ! え? 無線持って行ってないクマ? ほんとに馬鹿クマ!」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:12:15.91 ID:mZvQ5q5So
クマ「早乙女博士、もう駄目クマ、逃げるクマ!」

早乙女「ゲッターロボを残したままで逃げられん。ゲットマシンに乗って、お前たちだけでも逃げろ」

クマ「ゲットマシンを持って逃げても早乙女博士が一緒じゃないと意味ないクマ!」

早乙女「ワシには役目がある。お前たちが逃げた後、地下のゲッター炉心を暴走させる」

早乙女「少なくとも、奴らを道連れにできる」

クマ「それは逃げる事も出来なくなった後の本当の最終手段クマ! まだ打つ手はあるクマ!」

早乙女「橘 神がゲッターに乗るとでも言うのか?」

ジン「っ…………」

クマ「それは、駄目クマ!」

ジン「クマ、ちゃん?」

クマ「ジンはゲッターに乗りたくないクマ! ジンの本能がそうさせているクマ!」

クマ「本能は理性よりも優先される大事なものクマ! だからクマは、絶対にジンをゲッターに乗せないクマ!」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:13:28.41 ID:mZvQ5q5So
早乙女「クク……本能か。本能が何よりも優先されるならば、既に答えは一つなのだ」

クマ「クマ?」

早乙女「どうするのだ、ジン」

ジン「……腹の底から、そんな事はお断りよ」

ジン「でも…………」

ジン「三人乗れば動くって言うなら、乗るだけ乗ってやる!」

クマ「ジン!」

ジン「乗るだけよ! 私は何もしない、何もできないんだから!」

早乙女「クマ! ジンをゲットマシン格納庫に連れていけ。ナガレは外で回収する」

クマ「分かったクマ! ジン、こっちクマ!」

ジン「ええ!」

キュムキュム……


早乙女「そうだ。本能こそが、お前たちを突き動かす……」
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:14:29.75 ID:mZvQ5q5So
ナガレ「ウォオオオオオ! オラオラオラァ!」

バララララララララララ

恐竜兵士A「ギャッ!」

ナガレ「死ねぇっ!」

バキッ

恐竜兵士B「グバッ!」

ナガレ「くそったれ……! 次から次へと沸いてきやがる!」

ナガレ「その上、真上のメカザウルスには攻撃が届かねえ!」


メカザウルス「ギョアアアアッッ!」バサバサッ


ナガレ「負けたんじゃねえか、これ……フン!」

ガスッ

恐竜兵士C「げえっ!」
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:15:17.95 ID:mZvQ5q5So
ギュオン……

ナガレ「ん……この音は、ゲットマシン!?」

バシュウ!

ナガレ「イーグル号がこっちに来る! 乗れって事か!?」

ナガレ「へっ……無茶言いやがる、ゼッ!」タンッ

ガシッ

ギュオン!

ナガレ「うおおお! 落ちるかああああ!」グイッ

ガシッ ガシッ

バシュッ

ゴロン ドカッ

ナガレ「ぷはっ! 流石に、死ぬかと思った……!」ピッ
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:16:08.17 ID:mZvQ5q5So
クマ『ナガレ! 大丈夫クマ?』

ナガレ「ああ? 余計な心配するんじゃねえよ、熊公!」

クマ『元気そうで何よりクマ』

ナガレ「どうするんだよ。ゲットマシンを出したって、合体出来なけりゃメカザウルスは倒せねえ」

ジン『だから、合体できればいいんでしょ?』

ナガレ「ジン! テメエ、乗らねえんじゃ……なんだその恰好!?」

ナガレ「パイロットスーツのサイズ合ってねえじゃねえか! すげえエロいぞ!」

ジン『うっさい! スーツが一着しかないんだから仕方なかったのよ!』

クマ『来るかどうかも分からないパイロットの体系に合わせてスーツの数を用意するのは難しいクマー』

ジン『とにかく、さっさと合体して、あのメカザウルスを叩いてハチュウ人類を蹴散らす! そして私は帰る!』

ナガレ「面白れぇ。このゲッター、乗ったら最後の地獄行き超特急だって事、思い知りな!」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:17:16.46 ID:mZvQ5q5So
クマ『ゲッター以外で対処できないメカザウルスを先に破壊するクマ! 合体するクマ!』

ジン『いきなりね……でも合体するだけなら!』

クマ『さっき説明した通りにするクマ! ジンならできるクマ!』

ナガレ「励まし合いなんざ要らねえ! 行くぜ!」

ギュオン

ジン『クマちゃん!』

クマ『行くクマ、ジン!』

ギュオン……

ガシィン!

ジン『ぐうっ! た、確かにこれは、キツいっ……!』

ナガレ「へこたれるな、本番はここからだぜ!」
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:17:48.35 ID:mZvQ5q5So
メカザウルス「ギョアアアアアアアッッッ!」ギュン


クマ『メカザウルスがこっちに来るクマ!』

ジン『か、回避を!』

ナガレ「そんな暇あるか! 行くぜえええーーーッ!」



ナガレ「チェーーンジ! ゲッタァーーー 1 !」ポチッ



ギュオン

ガシィン!

グググ……グワオン!


ナガレ「よっしゃあ、かかってきやがれ!」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:18:38.75 ID:mZvQ5q5So
メカザウルス「ギョアアアアアアッッ!」

ドガッ

ナガレ「ぬおおっ!」

ジン『があっ!?』

ナガレ「いってえな……だがこれで!」グイ

ガシッ

メカザウルス「ギョアアッ!?」

ナガレ「捕まえたぜェ! 食らえ、ゲッター……!」

メカザウルス「ギョアアアアアアッッ!」

バサバサ

ナガレ「ぬわ! この、暴れるんじゃねえ!」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:19:17.89 ID:mZvQ5q5So
メカザウルス「ギョアアアッ!」パカッ

ナガレ「何だ、口を開けて……!?」

クマ『ナガレ、手を放すクマ! 攻撃してくるクマ!』

ナガレ「なにぃ!?」


キィン……パウッ

ズガガガガガ!


ナガレ「どわああああっ!」

ジン『あ、熱い!』

クマ『超高熱のビーム攻撃……! ナガレ、早く手を放すクマー!』

ナガレ「クソったれえーー!」パッ
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:19:51.71 ID:mZvQ5q5So
ヒュー……ズガァン!

ナガレ「ハアっ、ハアっ……クソ、ゲッターの装甲が軽く溶けてやがる……!」

クマ『あのまま受け続けていたら、クマたちが蒸し焼きになっていたクマ……』

ジン『ほ、本当に地獄行く……!』


メカザウルス「ギョアアアアアアッ!」バクンッ

バシュンバシュンバシュン!


ナガレ「ぐっ……今度はミサイルかよ!」

キイィィン……ドワオ!

バキィッ!

ナガレ「ぐわあっ! なんだこいつ、前の奴より滅茶苦茶強ぇぞ!?」

クマ『多分、前のは斥候クマ……こっちこそが、ハチュウ人類の真の戦力クマ!』

ジン『ちょ、ちょっと……倒せるの、本当に!?』

ナガレ「うるせぇーッ! 客は黙ってろ!」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:21:04.66 ID:mZvQ5q5So
クマ『ナガレ、落ち着くクマ!』

ナガレ「落ち着いたらあいつに攻撃が届くのかよ! 空を飛んでるんじゃ、こっちが一方的にやられるだけじゃねえか!」

クマ『昨日あれだけ説明したのにもう忘れたクマ!? ゲッター1は空中戦も視野に入れたゲッタークマ!』

ナガレ「だったら飛ばしてみろよ!」

クマ『「ゲッターウィング」クマ! 音声認識で出るクマ!』

ナガレ「思い出したぜ! ゲッターウイィングッ!」

ブワッ……バサッ!

バオン!

ナガレ「なるほどなあ、こいつは良い!」

クマ『はしゃいでないでメカザウルスをちゃんと見るクマ! またミサイルが来るクマ!』
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:22:48.47 ID:mZvQ5q5So
キイィィン……

ナガレ「あらよっと!」グイ

ヒョイ ヒョイ

ナガレ「もう当たりゃしねえよ!」

メカザウルス「ギョアアアアアアッッ!」パカッ

ジン『ナガレ、またビーム攻撃よ!』

ナガレ「分かっている! 見切って一気に接近してやる!」

キィン……パウッ

ズガガガ!

ナガレ「ぐおおおおっ! クソが、避けられねえ!」

ジン『ばっ……何をやってるの!』

クマ『発射から着弾までが早すぎるクマ! 撃つのを見てからじゃ避けられないクマ!』
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:23:43.21 ID:mZvQ5q5So
バオンッ

ナガレ「カハッ……ハアっ、ハアっ! おい、どうする熊公! 近付こうにもあのビームを避けられねえんじゃ話にならんぞ!」

ナガレ「言っておくが、こんな距離からゲッタービームを当てる自信なんざ無ェからな!」

クマ『何を威張っているクマ……』

ジン『何か他に武器はないの? もしくは、囮にできるものは!』

ナガレ「おとり……イーコト思い付いたぜ! ゲッタートマホークッ!」

ジャキンジャキン ガシッ

ジン『肩から出た鉄球が斧に……でも、それで何をするつもり?』

ナガレ「見てろよー……!」グイ

バオンッ

メカザウルス「ギョアアアアッ!」バサバサ
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:24:47.28 ID:mZvQ5q5So
ナガレ「トマホーゥク……ブゥーメラン、ダブルッ!」

ブンッ ブンッ

ギュルギュルギュル……!

メカザウルス「ギョアアッ!」パカッ

キィン……パウッ!

ジュワッ……

ナガレ「貰ったぁ!」グイッ

バオンッ

ガシィッ!

メカザウルス「ギョアアアッ!?」

クマ『うまいクマ! ゲッタートマホークを囮にしてビームを撃たせている間に、後ろを取ったクマ!』

ジン『真後ろならビームの範囲外だし、ミサイルも届かない……やるじゃない』

ナガレ「褒めても何も出ねえよっ」
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:26:16.92 ID:mZvQ5q5So
ナガレ「さぁて……よくも散々手古摺らせてくれたなァ?」

メカザウルス「ギャアアアアッッ!」ジタバタ

ナガレ「終わりだ! 喰らえェ……ゲッター、ビーーームッ!」

キィイン……


メカザウルス「ギョアアッ!」ガチッ

バカンッ


ナガレ「何っ!?」

ジン『メカザウルスがっ……!』

クマ『分離したクマッ!?』

キュオン

バオオォォオオンン!
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:27:05.06 ID:mZvQ5q5So
ナガレ「くっそおおおお! 必殺のゲッタービームを外したァ!」

クマ『奴らは……分離したメカザウルスはどこ行ったクマ!』

ジン『下よ、落下している!』


ズガァン! ズズゥン!

メカザ「ギョアアアッ!」

ウルス「ゲシャアアアッ!」


ナガレ「なんだありゃあ、分離した上半身と下半身がそれぞれ動いてやがる!」

ジン『つまり、最初から合体していた二機のメカザウルスだったって事!?』

クマ『多分そうクマ……』
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:28:10.45 ID:mZvQ5q5So
ナガレ「合体できるのはこっちだけじゃねえってか……面白くねえ真似しやがって!」グイッ

バオンッ

クマ『待つクマ! 相手が二機に増えたなら、無暗に突っ込むのは危険クマ!』

ナガレ「うるっせえよ熊公! こうなったらさっさとどっちかを叩き潰すしかねえだろうが!」

メカザ「ギョアアアアッ!」ガチャガチャ

ナガレ「まずはテメエだ! ゲッターパァンチ!」

ブンッ

メカザ「ギョアアアッ!」ヒョイ

ナガレ「甘ェ! ゲッタートマホーク!」

ジャキンッ ガシッ

ナガレ「オオオオオリャアアアッ!」

ジン『――――ナガレ、後ろ!』

キィイイン……ドワオ!
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:28:44.34 ID:mZvQ5q5So
ナガレ「だああっ! なんだあっ!」

クマ『もう一機のメカザウルスクマ! ミサイルを撃ってきたクマ!』


ウルス「ゲシャアアアアッ!」


ジン『片方に気を取られていたらもう片方にやられる……!』

ナガレ「やりやがったなァ! このっ――――」

メカザ「ギョアアアッ!」パカッ

ナガレ「しまっ……!」

キィン……パウッ!

ズガガガガガガガガガ!

ナガレ「ウオオオオオオオッ!」

ジン『きゃああああああ!』

クマ『クマーーーーー!』
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:30:19.27 ID:mZvQ5q5So
ズズゥン……

ナガレ「ま、まずい……んじゃねえか、これ……!」

クマ『だ、だから言ったクマ……人の話を聞かないでからこうなるクマ!』

ナガレ「うるっせえ!」

ジン『ナガレ……下半身の方が来るッ!』

ウルス「ゲシャアアアッ!」

ガシッ

ナガレ「クソッ……!」グイグイ

ウルス「ゲシャアアッ!」バクンッ

ジン『こ、この距離でミサイルを撃つ気だわ』

クマ『ナガレ! 振り解くクマ!』

ナガレ「やってんのが見えねえのかクソ熊公!」ガッチョンガッチョン

バシュンバシュンバシュン

ドワオ! ドガァン! バゴォン!
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:31:11.52 ID:mZvQ5q5So
クマ『クマーーー!』

ナガレ「こ……の……!」

メカザ「ギョアアアッ!」パカッ

キィン……パウッ

ズガガガガガガガ!

ジン『アアアアアアアアッッ!』


ナガレ「うおおアアアッ……ゲェッター! ビィーーームッ!」


キィイン……キュオン

バオオォォオオンン!


メカザ「ギョアアアアッ!」バッ

ウルス「ゲシャアアアッ!」バッ
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:32:22.13 ID:mZvQ5q5So
シュウウウウッ……

ナガレ「ハアーッ、ハアーッ……!」

クマ『ク、クマー……』

ジン『し、死ぬ……熱い……!』


早乙女『ナガレ、クマ、ジン。聞こえるか?』


ナガレ「そ、その声……ジジイ……!」

クマ『早乙女、博士……ごめんなさいクマ、あいつら強いクマ……』

ジン『ひゅー……ひゅー……』
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:33:24.20 ID:mZvQ5q5So
早乙女『ナガレ。今のお前では二機以上のメカザウルスを相手にできない。ゲッターを活かしきれていない』

ナガレ「るっ、せぇ……だったらテメエが乗ってみやがれってんだ……!」

早乙女『勝つには一つだ。奴らの攻撃を受けないほどの速さで翻弄し、殲滅する』

早乙女『速さに特化した「ゲッター2」へとゲッターチェンジするのだ』

ナガレ「ゲッターチェンジ……だと!?」

クマ『さ、早乙女博士っ! でも、それは……!』

ジン『ひゅー……ひゅー……がはっ』

早乙女『ジン。お前が戦うのだ』

ジン『げほっ!? げほげほっ、がはっ! ごほごほっ!』

早乙女『むせている場合ではない。今すぐに合体を解除し、お前が操縦者となって戦え!』
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:35:05.98 ID:mZvQ5q5So
クマ『早乙女博士、それは約束と違うクマ! ジンを戦わせない、それを条件にジンはゲッターに乗ったクマ!』

早乙女『ならばお前が戦うか? 確かに「ゲッター」はあの熱光線を耐えられるだろう』

早乙女『だがその熱によって、お前たちは確実に死ぬ』

クマ『でも、ジンは……』

早乙女『戦わない為に乗ったのではない。死なない為に乗ったのだ!』

ナガレ「だとよ、ジン……どうする?」

ジン『ど、どうもこうも……』

クマ『……ジン。このままナガレに任せたままだと、負けるクマ』

ナガレ「ぐっ……ムカつくが、その通りだ。俺はこんなところで死にたくはねえ」

クマ『だけど、嫌なら、クマが頑張るクマ。ナガレよりはできるクマ』

ジン『クマちゃん……』


メカザ「ギョアアアアアアアッッッ!」

ウルス「ゲシャアアアアアアアアッッッ!」


早乙女『時間はないぞ、選べ!』
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:35:37.69 ID:mZvQ5q5So
ジン「…………結局、こうなるのかー」

ジン「どうなったって、知らないんだから! あなたたち全員、死んでも私を恨むのだけはやめてよね!」

ジン「戦えばいいんでしょうが!」

クマ『ジン!』

ナガレ『判断が遅いんだよ、オープン・ゲット!』

ガチャン! バシュゥン!

クマ『ジン、ナガレ! 順番が入れ替わるクマ! ジャガー号が先頭、クマが真ん中で、イーグル号が一番後ろクマ!』

ジン「ええ!」

ナガレ『つまり俺が後ろから突っ込むわけか。熊公、容赦なくやるぜ!』グイッ

クマ『事故だけは嫌クマ!』グイッ

ギュオン……

ガシィン!
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:36:47.09 ID:mZvQ5q5So
ナガレ『どんなモンだ!』

クマ『ジン、スピードを落とすクマ!』

早乙女『合体の前に叫べ、「チェンジ・ゲッター2」だ!』

ジン「え、ええ……!」

ナガレ『ビビるなよ、諸共に死ぬぜ!』

ジン「脅かすんじゃない!」

ジン「すー……はー……!」

グッ



ジン「…………チェンジッ! ゲッター 2 !」



ガシィン!


グググ……


グイーン


ガキョン!


ヒュー……ズザザザザ

121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:37:28.46 ID:mZvQ5q5So
ジン「…………せ、成功した?」

クマ『やったクマ! すごいクマ、ジン!』

ナガレ『テメエ今、目ェ瞑りながら合体しやがったな!? マジで殺す気か!』

ジン「だ、だって……恐いんだから仕方ないじゃない!」

早乙女『口喧嘩なら後でやれ! ジン、手元のレバーが腕に連動し、足元のレバーが脚に連動している!』

ジン「そんなので大丈夫なの? 本当に動くのよね!?」

ナガレ『俺はそれで操縦していたんだからできる! 四の五の言うんじゃねえ!』

早乙女『知識を捨てろ、自由に動かせるはずだ!』

ジン「ま、待ってよ……このレバーが腕だから……」グイッ

ウィーン

ジン「それで、足が……」グイッ

ウィーン
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:38:52.01 ID:mZvQ5q5So
ウルス「ゲシャアアアアッッ!」ズンズン

ドガァアン!

ジン「きゃああっ!」

カシャン……パキッ

ジン「あっ、め、眼鏡が……!」

ナガレ『当たり前だぁ! じっと止まってたら攻撃されるに決まってんだろうが!』

ジン「待って、眼鏡が……前がよく見えない!」

ナガレ『ンなモン心の目だか何だかでどうにかしやがれ!』

クマ『何を意味の分からない無茶言ってるクマ!』

ウルス「ゲシャアアアッ!」

ガンッ ズガァン

ジン「きゃあああっ!」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:40:21.55 ID:mZvQ5q5So
ガンッ ガンッ

ジン「うぐっ、ぐうぅ…………」

ナガレ『何してんだバカが、反撃しろ!』

ジン「でも、見えない……! 何がどうなっているのか、分からない!」

クマ『落ち着くクマ! ナガレ、クマたちで補佐するクマ!』

ナガレ『補佐も何も目の前にいるじゃねえか、とりあえずそいつをどうにかしろ!』

クマ『助言もできないなら騒いでないで黙ってるクマ!』

ウルス「ゲシャアアッ!」グワッ

ガキッ バキバキバキッ

ジン「か、噛み砕かれてる!」

クマ『ゲッター2は速さに特化してる半面、装甲が薄くなるクマ!』

ナガレ『それを早く言えよ熊公!』
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:41:08.01 ID:mZvQ5q5So
バキバキッ

ジン「ヒッ…………!」

ジン(こんなところで、死ぬ?)

ジン(死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ)

ジン「い、嫌ァーーーー!」グイッ

ギュイイイーーーン!

ジン「喰らえエエェーーーー!」

ドスッ

ウルス「ゲシャアアッ!?」

ジャリジャリジャリズババババババッ!

ウルス「ゲシャアアアアアアアアアッッッ!」

ズバアッ!
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:42:07.00 ID:mZvQ5q5So
バラバラバラ……

ナガレ『うわあっ、汚ェ!』

クマ『やったクマ! ジン、あと一機クマ!』

ジン「ハッ、ハッ、ハッ……!」


ズズゥン……ドシャッ


ジン「ハッ、ハッ、ハッ……!」


ジン『ヒヒヒャヒャハ、ハアアアッ!』


ジン「ハッ、ハッ――――!」ゾクゾク
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:43:06.51 ID:mZvQ5q5So
メカザ「ギョアアアアアアアアアッッッ!」パカッ

クマ『ジン! 熱光線攻撃クマ!』

キィン……パウッ

ジン「ハアッ!」グイッ


ザザ――――

ザザザザザ!


メカザ「ギョアアアッ!?」

ナガレ『だあああ、速ェぞ!?』

クマ『クマっ……流石のクマも、ちょっとキツいクマー……!』

ジン「あああああッ!」

ザザザザザ

メカザ「ギョアアアッ! ギョアアアアアッッ!?」キョロキョロ

ズサッ
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:44:16.22 ID:mZvQ5q5So
クマ『後ろ、取ったクマ!』

ナガレ『やれぇ、ジン!』

ジン「やアアアアアッ!」グイッ

ゾブッ ズバアッ!

メカザ「ギョアアッ!? ギョアアアアアアアアアッッッ!」

ナガレ『バカ野郎、この距離で急所を外すかあ!?』

クマ『ジン、焦っちゃ駄目クマ!』


メカザ「ギョアアアッ……!」ジタバタ


ジン「――――フヒッ」

ギュイィーン!

ズブッ ズバアッ!

メカザ「ギョアアアアアッッ……!」
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:45:45.70 ID:mZvQ5q5So
クマ『また急所を外した……いや、これは、わざと外しているクマ?』

ナガレ『おい、ジン! 何を考えてやがる、さっさととどめを……!』


ジン「ギヒッ、フヒャハハハハッ!」

クマ『ジ、ジン!?』


ギャリギャリギャリギャリ!

ジン「なんで気付かなかったのかしら! ハチュウ人類が相手なら、何をしても構わないじゃない!」

ギャリギャリギャリギャリ

ズババババババッ ブシャアッ

メカザ「ギョアアアアアアッ!?」ジタバタ

クマ『ジン、どうしたクマ!?』

ナガレ『こいつ、メカザウルスを……嬲ってやがる……!』
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:46:13.66 ID:mZvQ5q5So
ジン「ハチュウ人類相手なら刑法204条・傷害罪に問われない!」

ジャリジャリジャリズババババババッ

ジン「殺人罪に問われない!」

ズバッ ドチャッ

ジン「ぐちゃぐちゃにしても死体損壊にならないッ!」

グチャッ

ジン「目を抉り出しても、耳を千切っても、鼻を削いでも、何をしても許される!」

ジン「あれだけ『夢』見た事が、全部、デキルッ!」

ギュイイイーーーン!

ジャリジャリジャリ……

バシャアッ!

ジン「ッ――――――――!」ビクビクビクッ

ジン「さいっ……こぉ……」プシャア
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:47:12.86 ID:mZvQ5q5So
ナガレ『な、なんて女だ……メカザウルスを嬲り殺して、イってやがる……!?』

クマ『ジン……』


早乙女「……クマ。強制オープン・ゲットし、帰投しろ」

クマ『分かったクマ』

ガチャン バシュゥン

早乙女「オートパイロットでジャガー号を拾え」

オペレーターA「は、はい」

早乙女「トゥルーパー4を出撃させろ。残っているハチュウ人類歩兵を全滅させるのだ」

カランカラン

早乙女(本能こそが、生き物を生かす。それでいいのだ、ジン)


ジン「あーっ……」ビクビクッ
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:48:39.50 ID:mZvQ5q5So
 ―― 早乙女研究所 ――

所員A「おーい、誰かペンチを貸してくれー」

所員B「せーので持ち上げるぞ、せーのっ!」

ナガレ「こっちは危ねえからお前らは来んな。俺が渡す!」


ジン「…………」

クマ「ジン」

ジン「…………クマちゃん」

クマ「隅っこで体育座りなんかしてどうしたクマ?」

ジン「ちょっとね……自己嫌悪」

クマ「嫌な事、あったクマ?」

ジン「自分の事を、最悪だって思う」
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:49:31.87 ID:mZvQ5q5So
ジン「私、よく妄想するのよ。白昼夢って言った方が、近いかもしれないけど」

ジン「人を殺す妄想……それも惨く殺して、私がそれを喜ぶ妄想」

ジン「私は自分の事をまともな人間だと思ってた。だから、それが嫌で、それが自分の本当の姿だなんて認めたくなくて」

ジン「……でも、それが本性だった。もう、ほんと、嫌でね……」

クマ「クマは、あの時のジンは、とても生き生きしていたと思うクマ」

クマ「あの時のジン、すごく綺麗だったクマ!」

ジン「お世辞なんていいのよ」

クマ「お世辞なんかじゃないクマ、本当だクマ」

クマ「ジンは、それが本性だって言うクマ。でも、それは嫌クマ?」

ジン「当然じゃない。そんなの、人としておかしいわ……」

クマ「クマはそうは思わないクマ」
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:51:16.52 ID:mZvQ5q5So
クマ「自然界では、さっきのジンみたいに獲物を弄ぶなんてしょっちゅうクマ」

クマ「それは強い生き物が持つ特権みたいな物クマ。別におかしくはないクマ」


ジン「でも私は、野生動物じゃなくて理性のある生き物なのよ?」


クマ「野生動物にだって理性はあるクマ。さっきもクマは言ったけど、それより大事なのが本能クマ」

クマ「ジンは戦いたくないからゲッターに乗ったクマ。死にたくないから、結局ゲッターに乗ったクマ」

クマ「その結果、ジンの本性が出てきたクマ」

クマ「本性は、即ち本能クマ。本能は全ての生き物がすべからく持つ物クマ。つまりジンの行動は、全て本能クマ」

クマ「生き物は本能に従って生き残るクマ。ジンは本能に従って動いただけクマ」

クマ「なのに本能に従うのが駄目だなんて、それじゃあまるで、人間だけが生き物じゃないみたいクマ」


ジン「……人間界じゃ、そんなのは通用しないのよ」

クマ「じゃあ人間界に通用するように言うクマ」

クマ「ジンのおかげでクマは助かったクマ。みんな助かったクマ。ありがとうクマ」

ジン「……本当に優しいのね、クマちゃん」

クマ「そんな事無いクマ。今のはちょっとずるい言い方だったクマ」
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:53:00.94 ID:mZvQ5q5So
クマ「ジン。本能は、もう一人の自分クマ。ちゃんと、仲良くしてあげるクマ」

クマ「そうしたら、いざと言う時、絶対に助けてくれるクマ」

ジン「……仲良くなんて、できるかしら。今まで散々否定してきたのに」

クマ「できるクマ。そうじゃなくちゃ、野生じゃ生き残れないクマ」

ジン「……ええ、頑張ってみるわ」

ナガレ「オイ、熊公! サボってんじゃねえぞ、働け!」

クマ「手伝ってほしいならそうだって言うクマー!」

ナガレ「るせー! テメエの不器用な手なんざ要らねえよ!」

クマ「……かと言ってナガレみたいに本能と口が直結した生き方はしなくていいクマ」

ジン「そうね。それには、賛成だわ」

クマ「今行くクマ!」

キュムキュムキュム

ジン「……待って、私も手伝う!」
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:53:53.08 ID:mZvQ5q5So
 ―― 橘法律事務所 ――


助手「橘先生、事務所をたたむって、本気ですか?」

ジン「一時休業するだけよ。ちょっと私用でね。安心して、私の弁護士の先生にマイちゃんを紹介しておいたから」

ジン「あ、勿論マイちゃんさえ良ければの話だけどね。ここの代わりにそこで働いて」

助手「それは、ありがたいんですけど……何があったんですか?」

助手「この前だって、急に休んで、連絡も取れなかったし……」

ジン「だから言ったでしょう。急に熱出して、動けなかったんだって」

ジン「連絡しなかったのは悪いと思うけれどね。ハイこれ、先生の事務所の住所」

助手「……橘先生。本気ですか? 予約が入ってる状態で、突然休業なんて……」

助手「復職したとして、そんな信用を失った状態で、まともに仕事なんて……!」

ジン「そうね。そうなったら、別の仕事を探すわ」

助手「そんな適当な」

ジン「先方への謝罪の連絡、手伝って?」

助手「……はい」
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:55:52.76 ID:mZvQ5q5So
 ―― 早乙女研究所 ――


ナガレ「で、仕事を辞めてきたわけか」

ジン「ええ」

ナガレ「アホだな。二足の草鞋って選択肢もあったろうに」

ジン「弁護士って仕事を馬鹿にしてるでしょ。それこそ何年にも渡って、一つの案件に関わることもあるのよ」

ジン「そうでなくても何日も拘束されるのに、同時にゲッターパイロットなんてできるわけないじゃない」

クマ「頑張ってやっとなれた夢の仕事でもクマ……?」

ジン「そうだけど……天職は一つだけとは限らないわ」

ジン「それに私がいなくても裁判はできるけど、『ゲッターロボ』は動かせない」

ジン「考えるまでもないの」

ナガレ「あれほど嫌がっていたのに、心変わりが早い事で」

クマ「でも、これでやっと三人揃ったクマ!」
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 00:57:00.28 ID:mZvQ5q5So
ギュインギュイン ギュインギュイン

ナガレ「おっと……トカゲ共が来やがったか」

クマ「のんびり言ってる場合じゃないクマ。ゲットマシンに乗って待機クマ!」

キュムキュムキュム

ジン「そうね、急ぎましょう」スッ

カチャ……

ナガレ「眼鏡、外して良いのか?」

ジン「ええ……大丈夫」

ナガレ「また「前が見えなぁい」とか言いやがったらそのままコックピットから叩き落すからな」

ジン「そんな言い方してないんだけど」

クマ「二人とも何をしているクマ、急ぐクマ!」

ナガレ「うるせえぞ熊公! どうせテメエは一番遅ェんだから先に行ってろ!」

クマ「クマはクマだクマー! 本気出したらクマが一番早いクマ!」


ジン「…………フヒ」ニィ
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/02(土) 01:01:02.64 ID:mZvQ5q5So
第二話【ジン】終。

次回、第三話【クマ】。投下日未定。

なんか長引いたわ。戦闘シーンが実質二回あるのが原因に違いない。

>>67
それが思い浮かんだのならこっちは満足。
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/02(土) 10:03:46.54 ID:CCpW+xmn0
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/22(金) 20:42:57.73 ID:WCy4Ca0z0
鉄球からトマホークに変形するってことは新ゲッターのに近いのかな?
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/03(火) 18:56:43.53 ID:zaQEqIbI0
マ゛ダ゛ー゛?゛
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:02:15.60 ID:0oKAVaRPo
>>140
鉄球からトマホークの流れは合理的だと思ったから採用しただけです。
リメイクゲッターと言う点でリスペクトパロディしている節はあるけど。ナガレの冒頭とか。

>>141
デギダー゙。

今更だけどゲッター1、ゲッター2のデザインは従来のゲッターと同じ姿で想像してもらえればいいです。
ちょこちょこディティールは違うけど、どうせ描写しないし。
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:02:50.41 ID:0oKAVaRPo
早乙女「『ゲッターロボ』とは、イーグル号、ジャガー号、ベアー号の三機のゲットマシンが合体して完成するスーパーロボットだ」

早乙女「ゲッターロボはゲットマシンの順番を入れ替える事で、三つの形態に変形できる」

早乙女「イーグル号がトップとなり、空陸戦を可能とするゲッター1」

早乙女「ジャガー号がトップとなり、地上及び地中での戦闘を得意とするゲッター2」

早乙女「そしてベアー号がトップとなり、三つの形態の中で最も装甲が固く、また水中戦を目的としたゲッター3」

早乙女「状況に応じて変幻自在に姿を変え、戦闘を有利にする事をコンセプトに設計したのがゲッターロボだ」

早乙女「ゲッター1はイーグル号、ジャガー号、ベアー号の順番でのゲッターチェンジ」

早乙女「ゲッター2はジャガー号、ベアー号、イーグル号の順番でのゲッターチェンジ」

早乙女「ゲッター3は……」

ナガレ「ジジイ、質問」

早乙女「質問する時間は後で設ける」

ナガレ「何だって今更そんな基礎的な事を学ばされてるんだ、俺たちは?」
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:03:32.39 ID:0oKAVaRPo
ジン「簡単な話よ。私たちはゲッターロボについて知らなさすぎる。その結果が、前々回での戦闘での参事よ」

ナガレ「あれはジン、テメエがうだうだ駄々を捏ねるからだろうが」

ジン「それは認めるわ。同時に、ゲッターに対する知識が無かったからこその無様だった」

ジン「信じられない……一回学習しておきながら、ゲッターの武装を全部忘れてただなんて」

ナガレ「そんなモンは戦いの中で体が覚えるもんだ。大体にして勉強なんて小学校の頃以来で嫌いだよ!」

ジン「なら出て行くと良い。その場合、今後の戦闘は私とクマちゃんだけでするから」

ナガレ「ざけんなクソアマ! また空を飛ぶメカザウルスが出たら、どう戦うってんだっ?」

ジン「いっその事、敵に合わせて搭乗するゲットマシンを変えても良いかもね。ナガレは置物で」

ナガレ「表に出ろ。ひん剥いて一晩中犯す」

ジン「真っ裸にされて貧相なモノをカラスに突かれたければ、付き合うけど?」

早乙女「止めんか、お前たち」

ナガレ「チッ……」

ジン「すみません、博士……」
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:06:05.85 ID:0oKAVaRPo
ナガレ「と言うか、一番の疑問はなんで熊公がここにいねえのかって事だよ」

早乙女「クマは既にゲッターパイロットとして十分な知識を得ている。武装の追加等が無い限り、今更説明を受ける必要はない」

早乙女「この講習で一番重要なのは、お前たちをクマと同じ程度まで引き上げる事だ」

ナガレ「つまり俺たちは人間にして熊以下か」

ジン「仕方ないわ、その通りだもの……今のままじゃ、クマちゃんだけに負担を強いる事になる」

ナガレ「知った事かよ。あいつ今まで戦闘した事ねえじゃねえか。負担なんてねーだろ」

ジン「今後の話よ。戦いの中で成長できるなんて、都合が良すぎるわ。私たちは私たちで、努力しないと……」

ナガレ「……まあ、いつまでもアイツ頼りってのは癪だからな」

早乙女「忘れるな。お前たちが協力する事で、ゲッターはいくらでも強くなれる」

早乙女「協力するには、兎にも角にも情報の共有だ。続けるぞ」

ジン「お願いします」

ナガレ「早く終わらせてくれよ、もう……」
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:06:49.53 ID:0oKAVaRPo
 ―― 早乙女研究所・飛行訓練場 ――


クマ「みんな。やっと、ゲッターパイロットが三人揃ったクマ」

クマ「ナガレと、ジンって言うクマ。ナガレは、乱暴で自分勝手な奴クマ」

クマ「ジンは、冷静で強い女の人クマ。でも二人とも元々は一般人だから、多分、みんなが見たら怒るクマ」

クマ「「こんな奴らがゲッターに乗るのか!」って……言うと思うクマ」

クマ「それでも、クマたちが、これからはゲッターを動かしてハチュウ人類と戦うクマ」

クマ「だから……ちょっと我慢して、応援してほしいクマ」

カサッ……

クマ「……ケン、テツオ、ジョウ、モンジ」

クマ「トモカズ、ナルミ、ヤスノリ」

クマ「タカヒロ、ユウ、トシハル、ヒデオ、ナオヤ、キヨユキ」


クマ「……ミチル、タツヒト……」

147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:07:38.29 ID:0oKAVaRPo

 ゲッターロボ・クマ


.     第 三 話


.     【クマ】

148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:08:26.52 ID:0oKAVaRPo
ナガレ「だあーっ……頭がパンクしそうだぜ……」

ジン「あの程度の情報量で何を情けない……」

ナガレ「黙っとけ。はーあ、無駄に頭を使ったから腹が減った。飯にしようぜ、飯!」

ジン(多分、食後には全部忘れてるわね)

キュムキュムキュム

クマ「ナガレー、ジンー」

ナガレ「あっ、熊公てめえ! どこに一人で行ってやがった!」

ナガレ「俺たちだけに講習なんか受けさせやがって、お前はお気楽に散歩か!」

クマ「野暮用クマ。二人は、ちゃんと憶えられたクマ?」

ジン「ええ。後は実践して、体に落とし込むだけよ」

クマ「ジンは流石クマー」

ナガレ「どうせテメエが操縦するゲッターの特性を憶えられればそれでいいんだ。後は知るか」

クマ「ナガレはそんな事だろうと思ったクマ」

ナガレ「熊鍋にしてやろうか!」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:09:11.55 ID:0oKAVaRPo
ガツガツガツガツ

ナガレ「んぐんぐんぐ……」ゴクン

ガツガツガツガツ

ジン「ナガレ、少し落ち着いて食べなさい」

ナガレ「はあん? おえあえうあうえうああうおおうおッ!?」

クマ「ナガレ汚いクマ、散ってるクマ」

ジン「最低……」

ナガレ「んぐっ……お前らいつハチュウ人類が来るかも分からねえってのに、ちんたら食ってる暇があると思ってんのか!」

クマ「いやあクマにはそんな深い意図はなくただがっついているようにしか見えなかったクマ。食べカス飛んでたクマ」

ナガレ「ンだと! テメエこそ熊公、肉食獣の分際で何をお上品に食ってやがる! 野菜じゃなくて肉食えよ、犬食いとかしろよ!」

クマ「クマがやると本気で見苦しいからやらないクマ。あと栄養バランスを考えた食事をしないとコンディションに影響が出るクマ」

ナガレ「お、おう……」
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:10:40.93 ID:0oKAVaRPo
クマ「と言うか、ナガレ。熊公って言うの止めてほしいクマ。クマはクマだクマ!」

ナガレ「生意気言ってんじゃねえよ、テメエなんて熊公以外になんて呼べってんだよ」

ジン「またそんな事を言う……名前くらい普通に呼びなさいよ。ナガレだってポケットモンキー呼ばわりされたら嫌でしょうが」

ナガレ「意味は分からねえが馬鹿にされてるのは分かるな。言った奴はぶっ飛ばすから安心しろよ」

ジン「話にならねー……。そう言えばクマちゃん、名前で呼ばれているのかそうじゃないのか、一応分かっているのね」

ナガレ「どっちも同じイントネーションの「くま」なのにな」

クマ「当たり前クマ」

ジン「クマちゃん」

クマ「名前クマ」

ナガレ「熊公」

クマ「馬鹿にしてるクマ」

ナガレ「若干呼んでる人間に引っ張られてねえか?」

クマ「そんな事ないクマ!」
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:11:56.04 ID:0oKAVaRPo
ナガレ「しかし、何時までこんな青空食堂なんだ? テントすら張らねえで、しかも飛行訓練場の側ってよ」

クマ「早乙女博士が言うには、食堂を元通りにするまで二週間は掛かるらしいクマ」

ジン「跡形も無くなったものね……その程度の期間で元に戻せると考えられるのも凄いけれど」

クマ「早乙女博士が言うんだから間違いないクマ!」

ジン「クマちゃんは本当に博士が好きなのね」

ナガレ「お前みたいなのを置いとくんだから、あのジジイも相当変人だよな。お前、いつからここにいるんだ?」

クマ「四年前クマ。クマが1歳の頃クマ」

ナガレ「って事はお前今、5歳か」

ジン「人間換算だといくつなんだろ?」

クマ「普通のツキノワグマだと20歳ちょっとくらいクマ」

ジン「へえ、もう大人なんだ!」

クマ「でも、クマはちょっと普通じゃないし、自分でもそれほど大人だと思えないから、実際はもう少し下だと思うクマ」

ナガレ(普通だったら俺より年上だったのか……)
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:13:27.48 ID:0oKAVaRPo
ジン「ねえ、クマちゃん。クマちゃんがここに来るまでの経緯、詳しく聞いても良い?」

クマ「どうしてクマ?」

ジン「クマちゃんは私とナガレについて、もうそれなりに知っているけれど、私たちは何も知らないから」

ジン「一緒にゲッターに乗るんだから、それくらいは知っておきたいなって思って」

ナガレ「くっだらねえな。俺は要らねえ、テメエらで話してろ」ガタ

ジン「ちょっと、どこに行くのよっ」

ナガレ「腹ごなしの散歩くらい行かせろよ」

ジン「チームワークッ!」

ナガレ「ウンコと一緒に流してくる!」

ジン「全く……あいつには協調性がまるで無い。一人で戦うワケじゃないのに……」

クマ「それは同意クマ。ゲッターは三人の息が合ってこそ真の力を発揮するって、早乙女博士が言っていたクマ」
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:13:55.44 ID:0oKAVaRPo
ジン「まあ、聞く気が無い奴に居てもらっても邪魔なだけだし、却って良かったかもね。私だけでも聞くから」

クマ「……大した事じゃないクマ。早乙女博士に見つけてもらって、育ててもらって、ゲッターパイロットになったクマ」

ジン「…………」

クマ「…………」

ジン「…………えっ、それだけ?」

クマ「それだけクマ」

ジン「人間の言葉とか、最初から喋れたわけじゃないんでしょ?」

クマ「……早乙女博士に教えてもらったクマ」

ジン「見つけてもらったって……じゃあ、どういう状況で?」

クマ「研究所側で野垂れ死にそうになっているところをクマ。クマはこんなのだから、満足にエサも確保できなかったクマ」

ジン「ああ、そう……」

クマ「ナガレやジンほど、ショッキングな出会いじゃなかったクマ。それでも、早乙女博士は恩人クマ!」
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:15:59.83 ID:0oKAVaRPo
ナガレ「ふあーあ……食ったら眠くなっちまった。この上熊公の身の上話なんざ聞かされたら三秒で寝るぜ」

ナガレ「ったく、ジンの奴、余計な事を言いやがって……なんだって女ってやつぁ要らねえ詮索したがるんだか」

ナガレ「…………ン? なんだありゃ」

スタスタ……カサ

ナガレ「……花束? っていうか、摘んだ花を紐できったなく結んだだけだけど」

ナガレ「何だってこんなものがここに」

ナガレ(落とし物……じゃねえわな。人が通らない茂みの中に、隠すように「置かれている」)

ナガレ「飛行訓練場の近くの茂みに花束、ねえ……」

ナガレ「なるほど、間抜けへの手向けか。縁起悪ぃ」

ナガレ「あふ……なんか面倒な事ばかり起きやがるな。部屋に帰って寝るとすっか……」
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:16:34.45 ID:0oKAVaRPo
 ―― 翌日 ――


ナガレ『フゥーーー! ヒャッホォォォォウウゥッ!』

ギュオン

クマ『ナガレ、はしゃぎ過ぎクマー!』

ギュオン

ジン「これは飛行訓練よ! あなたが大好きな運動系なんだから、真面目にやりなさい!」

ナガレ『うっせえなぁ……ゲットマシンの動きに慣れるのも立派な訓練だろ!』

クマ『クマたちはもう十分にゲットマシンを動かせるんだから、あと必要なのはスムーズな合体クマ!』

ジン「時間の無駄よ。ほら、ゲッター1!」

ナガレ『チッ、優等生共が……』

クマ『ナガレ!』

ナガレ『わーったよ! チェーンジ、ゲッター 1 ! スイッチ、オンッ!』ポチッ
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:17:47.00 ID:0oKAVaRPo
ナガレ「ふぅ、訓練終わり、っと。ン、ああー……やっぱ窓全開にしても、乗り心地はアレだなぁ」

クマ「ナガレ!」キュムキュム

ナガレ「だはぁ、うるせえのが来た……」

クマ「なにをぶつぶつ言ってるクマ。いい加減、訓練だからって真面目にやってもらわないと困るクマ!」

ナガレ「実戦で死んだら元も子もねえンだろ、分かってる分かってる」

クマ「実戦前に訓練で死んだら本当に下らないクマ! ゲッターチェンジは一番危険クマ!」

ナガレ「少しでも互いのタイミングがずれたら合体の衝撃でぺちゃんこになるんだろ、分かってる分かってる」

クマ「分かっていながら何でちゃんとやらないクマ」

ナガレ「嫌いなんだよ、規律なんてモン」

クマ「嫌いなのは勝手だけどクマたちを道連れにされたら困るクマ」

ナガレ「今までだって十分合体はできてただろうが! おんなじ事をブチブチ垂れんじゃねえ!」
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:19:10.24 ID:0oKAVaRPo
ジン「いい加減にしなさいよ、ナガレ」

ナガレ「出たようるせえ変態露出狂。いい加減って言うならテメエもパイロットスーツ新調しろよ」

ジン「まだ新しいのができてないんだから仕方ないでしょ!」

クマ「技術の粋を集めて開発したスーツ一着ができるまで、少なく見積もっても三週間は掛かるクマ……」

ジン「それは置いといて! 何時までも子供みたいな事言ってないで、協力しなさい」

ナガレ「あーあ、やれ一言目には「真面目にやれ」、二言目には「協力しろ」。息が詰まるぜ!」

クマ「クマたち、言ってる事の何か一つでも間違ってるクマ?」

ジン「間違ってないところでこいつは納得しないでしょうけど」

ナガレ「分かってるじゃねえか。話は終わりだなっ!」

クマ「ずぇんっぜん終わってないクマ! 待つクマー!」

キュムキュム

ジン「はあ……私たちじゃ駄目ね」
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:19:59.63 ID:0oKAVaRPo
カツカツカツ……

ジン「……あったあった。博士の研究室」

コンコン

ジン「早乙女博士、いますか?」

早乙女「ジンか。入れ」

ジン「失礼します」

カシュッ

ジン(自動ドア……)

早乙女「何の用だ?」

ジン「はい。ナガレの事で話があります」

早乙女「どうした」
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:21:42.07 ID:0oKAVaRPo
ジン「ナガレは……協調性に問題があります。三人で動かしてこそのゲッターに乗せるのは、危険過ぎます」

早乙女「その程度の事、放っておけ」

ジン「その程度って……ナガレの身勝手は常軌を逸しています」

ジン「実際、ナガレは前回の戦闘の際にも、敵メカザウルスに不利だったゲッター1から変えたがりませんでした」

ジン「状況に応じて変幻自在を活かす事こそが『ゲッターロボ』であれば、それは放置して良いものとは思えない! 博士から、何か一言」

早乙女「言ってどうにかなると思うか? あれくらいの屑でなければ、ゲッターは乗れん」

ジン「あんな調子のナガレと組まされたら、命がいくつあっても足りません!」

早乙女「所詮貴様らは消耗品だ。使えなくなれば、新しいものを探す。いくらでも死ねばいい」

ジン「……何ですか、その言い方は」

早乙女「話はそれだけか?」

ジン「そうですか。やはりあなたも、相当の狂人なのですね」

早乙女「まともな人間などゲッターには必要ない」

ジン「クマちゃんに対しても、同じように死ねと言えますか?」
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:22:27.52 ID:0oKAVaRPo
早乙女「…………」

ジン「あなたの事を恩人と慕うクマちゃんを、私たちと同じく扱えますか?」

ジン「死なせても良いのなら……もう、私は何も言いません」

ジン「ただ、元々からゲッターに乗せるためだけにクマちゃんを見つけたのなら……」

早乙女「クマを見つけたのはワシではない」

ジン「え……?」

早乙女「そして奴には、死を恐れない理由がある。だからワシは、クマにも同じように言えるし、その上で言いはしない」

ジン「待ってください。なら、クマちゃんは……誰が見つけたんです?」

早乙女「ワシの娘だ」

ジン「娘……お子さんがおられるんですね」

早乙女「ああ、二人な」

ジン「でも、会った事は無いような……?」

早乙女「どちらも、もうこの世にはおらん」
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:23:16.00 ID:0oKAVaRPo
ジン「…………すみません」

早乙女「気にせんよ……ゲッターチームの事は、ゲッターチームで解決しろ。三つで一つのお前たちに、部外者は口を出せん」

ジン「ですが、博士なら」

早乙女「ワシの口から言ったところで意味はない。生死を共にするお前たちだからこそ、お前たちで解決するのだ」

ジン「それまでに、死ななければ良いですが」

早乙女「お前たちは死なん。だからこそ選んだのだ」

ジン「我々は普通の人間です」

早乙女「普通の人間にゲッターは乗れん。肉体的にも、精神的にもな」

ジン「…………」

早乙女「話は終わりだ、出て行くがいい」

ジン「……はい」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:24:15.71 ID:0oKAVaRPo
 ―― 早乙女研究所・ジンの部屋 ――

ジン「はあ……」

ジン(結局、何も解決できてないし……謎だけ増えたし……)

ジン(クマちゃんを拾ったのが早乙女博士でなく、早乙女博士の娘さんだった。それはいい)

ジン(どうしてクマちゃんは、そんな嘘を吐いたの?)

ジン(娘さんの死が関係しているのは間違いないけど……)

ジン(博士も、死んでも良いって言う割には、クマちゃんだけは特別視してるみたいだし……)

ジン「って言うか、今はそんな邪推してる場合じゃないからっ」

ジン(早乙女博士は、チームである私たちで解決しろと言う。実際、それは尤もな意見ではあるけれど……)

ジン「解決できないから他に丸投げしたいのよぉ〜〜〜、ナガレのバカ、ホントばか、マジ馬鹿……!」

ジン「んあーー、ムカついてきた……明日言う事聞かなかったら、ぶん殴ろ……」
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:25:13.42 ID:0oKAVaRPo
 ―― 翌日 ――


早乙女「ゲッター1の武装はゲッタートマホーク、ゲッターレザー、ゲッタービーム」

早乙女「外部武装でゲッターマシンガン、そして飛行を可能とするゲッターウィングがある」

早乙女「ナガレ。ゲッタートマホークはいくつ搭載されている?」

ナガレ「ジジイ、質問。一昨日も昨日も同じ事を聞いた気がするが、俺の気のせいか?」

早乙女「気のせいではなくなるまで続ける。答えろ」

ナガレ「マジかよ……えっと、三つ?」

早乙女「ジン」

ジン「両肩に二本ずつ、計四本です」

早乙女「正解だ。これは改良する際に、搭載できる数も増やす予定だが、現状はその数となっている」

早乙女「では、ナガレ。ゲッター2のドリルハリケーンの射程はどれくらいだ?」

ナガレ「……三〇〇mくらいだっけか?」

早乙女「ジン」

ジン「無風状態で六二〇mです」

早乙女「正解だ」
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:26:13.88 ID:0oKAVaRPo
ダンッ

ナガレ「やってられるか!」

ジン「それを早乙女博士の前で言えばいい」

ナガレ「言って聞くようなジジイなら、元より俺はここにいねえよ」

ジン(同じ事言ってるし……)

ガツガツガツガツ

ナガレ「ふぁいふぁい、ほあおえっあーおほふへいあんえいあいうういひあいはお……」モシャモシャ

ジン「食べながら喋るな、散ってるし、汚いし……」

ナガレ「んぐ……なんで他のゲッターの特性なんて理解する必要があるんだよ」

ジン「他のゲッターがどのような性質を持つか、互いに情報を共有する事で、戦闘を優位に進める意味があるのよ」

ナガレ「そんな事知った事じゃねえよ」

ジン「もうそれ、五回目ね」

ナガレ「やってられるか!」

ジン「それも三〇回は聞いた」
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:26:58.78 ID:0oKAVaRPo
ジン「……ナガレ。本当に、真面目に言うわ。もうそろそろ、真剣に私たちに協力しなさい」

ナガレ「知らねえよ、もう飽きるほど聞いたぜ」

ジン「いい加減にして!」

ガシャンッ

ザワザワザワ……

ナガレ「冷静じゃねえな、珍しい事で」

ジン「私たちはただゲッターを動かすだけじゃない。それを動かす意味を背負っているのよ」

ジン「人類の未来、世界の平和、ハチュウ人類を殲滅する為、牙無き人の明日の為に戦う!」

ジン「そんな大義名分の上で私たちは戦っている! なのにあなたは、そんな子供みたいな事ばかり」

ナガレ「知ったこっちゃねえな、そんなモン! 俺は俺の為に戦う! 俺は俺がやりたいようにやる!」

ナガレ「元々乗りたくもねえものに無理矢理乗せられてンだ! それくらい自由にやらせてくれたっていいだろうが!」

ジン「そんな傍若無人が通るわけないでしょうが!」

ナガレ「それはお前らが邪魔なんだよ! お前らなんか要らねえんだ、ゲッターが一人で動かせたなら!」

ジン「いい歳してたらればで物事を語るな!」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:27:51.23 ID:0oKAVaRPo
ナガレ「ハチュウ人類嬲り殺してイっちまうようなド変態の気違いに説教されたかねえな!」

ジン「なっ……今はそれは関係ないじゃない!」

ナガレ「いいや、お前が俺に文句があるなら関係あるね」

ナガレ「今後毎回、あんな風に発情されたんじゃこっちだって安心できねえからよ!」

ジン「そうならないように努力はするわ! でも、ナガレはそれを欠かしている。一緒にしないで」

ナガレ「ハァー、出た出た。ヒス女特有の自分は特別ですって価値観。吐き気がする」

ジン「頭が悪い癖に話をすり替えるのは達者ね。どれだけ私を貶しても、あなたの立場は変わらないわ」

ナガレ「俺はお前と違って周りに媚びる必要ねえからな、知るか!」

ジン「このっ……!」

ジン「…………ああ、私、馬鹿だったわ。こんな奴に言葉なんて通じるわけないのに」

ナガレ「喧嘩売ってんのか? 買うぜ? こっちも甲高い声で耳が痛え。どっちが上か、はっきり分からせてやる」

ジン「一人じゃ何もできない小僧が、図に乗るな」

ナガレ「ぶっ殺す!」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:29:42.93 ID:0oKAVaRPo
クマ「ナガレ、ジン!」

キュムキュムキュム

クマ「食事中に何を暴れているクマ!」

ナガレ「うるせえ。お前も殺すぞ、熊公」

ジン「クマちゃん。こいつ、一回本気で叩きのめさないと駄目」

クマ「落ち着くクマ! クマたちが争ったって良い事はないクマ!」

ジン「それは……そう、だけど」

クマ「ナガレ。ナガレの気持ちは分かるクマ。でも、嫌でも、ちょっとでいいから我慢して、頑張ってほしいクマ」

クマ「クマたちは三人しかいないゲッターチームクマ。だから仲良くして、信じ合って、助け合いたいと思……」

ガシャアンッ

ナガレ「黙ってろ! 熊の分際で人間様に口きいてんじゃねえ!」

クマ「クマっ……」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:30:08.37 ID:0oKAVaRPo
ナガレ「揃いも揃って仲良しこよしを要求してきやがって、虫唾が走る!」

ナガレ「大体テメエはいつもいつも上から目線で物言いやがって、ムカつくんだよ!」

ナガレ「自分は優秀なんですってか? だから俺を見下しても良いって、そういう事か?」

ナガレ「ゲッター線で進化したから何だってんだ。獣らしく四足歩行で這い蹲ってりゃいいんだ!」

シーン……

ジン「ナガレ……あなた、一緒にゲッターに乗る仲間になんて事を……!」

ナガレ「仲間? 笑わせんな! 喋る熊なんて気持ち悪いモンと一緒にされたかねえな!」

ナガレ「」

クマ「……ク、クマッー!」ダッ

キュムキュムキュム

ジン「あっ、クマちゃん!」

ナガレ「ヘッ、本当の事を言われて逃げやがった。畜生が俺に口答えするからだ」

ジン「……ナガレェ!」

ナガレ「やるか、来いよ! お前を降して、次はあのクソ熊を黙らせてやる!」
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:30:48.43 ID:0oKAVaRPo
ジン「……もう、いい。あなたの事なんか、知らない」

ナガレ「あん?」

ジン「ナガレ。あなたの事、最低な人間だと思っていたけど、訂正するわ」


ジン「クズよ、お前は……!」


ナガレ「ンだと……」

ジン「クマちゃん、待って!」ダッ

ナガレ「おい、逃げんのか! ジン!」

シーン……

ナガレ「……なんだよ、テメエら。何だその目は。文句があるなら言えよ、かかって来いよ!」

ナガレ「どいッつもこいつも、ざけやがってよオ!」

ドガッ ガシャアンッ!

ナガレ「俺の何が悪いってんだよ……」
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:31:45.46 ID:0oKAVaRPo
ジン「クマちゃん! どこにいるの、クマちゃん!」

ジン「クマちゃん!」


クマ「くすん、くすん……ミチル、タツヒト……」


ジン「……クマちゃん」

クマ「クマっ……ジ、ジン」

ジン「ごめんなさい。ついてくるべきでは無いと思っていたけど……どうしても、ね」

クマ「……みっともない所を見せちゃったクマ。恥ずかしいクマー」

ジン「クマちゃん。あんなクズの言う事なんて気にする必要ないわ。何だったら私がぶっ殺したって」

クマ「止めてほしいクマ! ジンにまで、そんな事を言ってほしくないクマ」

ジン「クマちゃん……」

クマ「確かに、ナガレはバカで、どうしようもない奴クマ。でも、クズ呼ばわりされるほどじゃないクマ」

ジン「私、弁護士やってきた中であいつほどのクズを見た事ないわ」

クマ「それでも、クマ」
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:32:20.49 ID:0oKAVaRPo
クマ「それに、ナガレの言っている事は正しいクマ。クマは、気持ち悪いクマ……」

ジン「そんな事ない! クマちゃんは気持ち悪くなんてないわ!」

クマ「違うんだクマ! これは自虐とか、そう言うのじゃなくて、客観的事実なんだクマ」

クマ「普通のツキノワグマは喋ったりしないクマ……あとクマは小さいし、人間たちと違って不器用クマ」

クマ「人間でもない、熊でもない……分類できない不完全な存在クマ。気持ち悪いって言われるのは当然クマ」

ジン「だからナガレは正しいの?」

クマ「……そうクマ」

ジン「なら私は間違っていてもいい。私はあなたを認める。きっと、早乙女博士も、研究所のみんなも」

クマ「分かってるクマ!」

クマ「みんな、優しくしてくれたクマ……だから、ナガレの言葉にショックを受けちゃったクマ」

クマ「ナガレが悪いと言うなら、クマだって悪いんだクマ」
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:32:51.69 ID:0oKAVaRPo
ジン「どうして、そこまで……」

クマ「クマたちは三つで一つ、代えられないゲッターチームだからクマ」

ジン「……分かった」

クマ「ありがとうクマ」

ジン「でも、許せるわけじゃない。その時が来たら、私は本当にナガレを、どうにかする」

クマ「その時が来ない事を祈るクマ」

ジン「それはナガレ次第ね」

クマ「クマ。……ジンは、先に戻っていてほしいクマ。クマはもう少しここにいるクマ」

ジン「ええ。その……本当に気にしないでね」

クマ「大丈夫クマ。クマはこれでも図太いクマ!」

ジン「ふふ。じゃあ……ね」

クマ「気を付けて戻るクマ」
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:34:01.84 ID:0oKAVaRPo
所員A「全く、アイツにも困ったもんだよな。なんだってあんな奴がゲッターロボに……」ガチャガチャ

所員B「暴れるならまだしも、せめて片づけていけってんだよなあ……」ガチャガチャ

ジン「手伝います。ごめんなさい、騒いでしまって」

所員A「た、橘さん! いえ、大丈夫です! 自分ら、男なんで!」

所員B「そんな事より、傍観してすみませんでした。クマをあんな風に馬鹿にされて、悔しかったのに……」

ジン「あんな奴に突っかかっていくだけ損です。それより、ナガレはどこに行きましたか?」

所員A「さあ……あの後、すぐにいなくなりました。部屋に戻ったのではないでしょうか」

ジン「そうですか。もう一つ……「ミチル」と「タツヒト」と言う名前に憶えはありますか?」

所員B「それは……言って、いいのかな?」

所員A「いや、でも、なあ……」

ジン「言い辛いのであれば、大丈夫です。ありがとうございます」

所員A「すみません、お役に立てず……」
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:34:54.10 ID:0oKAVaRPo
 ―― ナガレの部屋 ――


ナガレ「あーあ、酒も駄目タバコも駄目、ただでさえ娯楽が少ねえってのに、飯の時間まで腹の立つ」

ナガレ「…………何だってんだよ。どいつもこいつも、俺ばかり」

ナガレ「うおー……クソったれがぁ!」ドガッ

ドンガラガッシャン! カラカラ……

ナガレ「はっ、はっ……」

ガンッ!

ナガレ「うおっ!?」ビクッ

ガンッ ドガッ

ナガレ(な、なんだ……何かが部屋のドアをどついている……?)

ナガレ「だ、誰だ! 今開けるから、そこで待ってろ……!」

バキャアッ!

ナガレ「だあああ、ぶっ壊れたアッ!?」
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:35:39.59 ID:0oKAVaRPo
ガシャンッ

カツカツ……

ジン「お邪魔するわ、ナガレ」

ナガレ「お邪魔じゃねーよ! テメエ何やってんだ、ドア蹴破って入ってくる奴があるか!?」

ジン「話がある。ついてきなさい」

ナガレ「話だあ? 馬鹿かお前は、こんな乱暴な奴についてくアホがいるかよ!」

ジン「嫌だって言っても、無理矢理にでも連れていく。要らないのは両腕? それとも両足?」

ナガレ「なんでどっちを選んでも揃って両方持ってこうとするんだお前は……」

ジン「大事な話だからよ」

ナガレ「…………」

ジン「無言って事はどっちも要らないのね?」

ナガレ「チッ……分かったよ、行きゃあ良いんだろうが」
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:36:28.17 ID:0oKAVaRPo
ナガレ「って、なんだ。どこに連れていかれんのかと思えばジジイの部屋じゃねえか」

コンコン

ジン「早乙女博士、いらっしゃいますか?」


早乙女「入れ」


ジン「失礼します」

カシュッ

ナガレ(自動ドア……)

ナガレ「入るぜジジイ」

早乙女「ナガレも居たのか。何の用だ」

ジン「単刀直入にお尋ねします。「ミチル」と「タツヒト」とは何者ですか?」

ナガレ「誰だそいつら」

ジン「クマちゃんはどうして、ゲッターロボに乗ったのですか?」
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:37:02.15 ID:0oKAVaRPo
早乙女「……驚いたな。クマがそれを話すわけがない。所員も口を閉ざすだろう」

早乙女「となれば、僅かなヒントだけでたどり着いたか。流石だと言わせてもらおう」

ジン「ありがとうございます」

ナガレ「下らねー茶番は良いからさっさと話しな。帰るぞ」

早乙女「せっかちな奴だ……まあ、よかろう」

カチャカチャ スッ……

ナガレ「写真?」

早乙女「ゲッターロボ開発の初期メンバーだ」

ナガレ「どれどれ……おっ、これがジジイか。今とあまり変わらねえな!」

ナガレ「アッ! こいつ、あの整備士のヤローじゃねえか! 何だ意外と昔からいたんだなあ」

ジン「……博士。この女の子が、娘さんですか」

早乙女「ミチルだ。そしてその隣にいる男が、息子の達人」
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:37:47.16 ID:0oKAVaRPo
ナガレ「ジジイ、子供がいたのか!? 堅物の分際でやる事やってんなあ」

ナガレ「なんだジン、お前の質問解決したじゃねえか。なんのこっちゃねえ、このジジイの子供だとよ」

ジン「そうね」

ナガレ「何だその気のねえ返答……ン? でも、こいつらに会った憶えは無いぜ?」

早乙女「死んだよ、二人とも」

ナガレ「あれま、ナンマンダブ。なんで死んだ?」

ジン「本当にデリカシー無いわね、ナガレ」

ナガレ「知らねえな、そんなモン」

早乙女「止めんか、お前たち。どうせ話す事だ」

ナガレ「だとよ」

ジン「チッ…………」

早乙女「……もう、四年にもなるか」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:38:48.34 ID:0oKAVaRPo
―――

――――――

―――――――――


早乙女「いかんと言ったらいかん! 『ゲッターロボ』は玩具ではない!」

達人「俺が玩具で遊ぶほど子供に見えるか? 許してくれよ、親父!」

達人「帝王ゴール率いるハチュウ人類が最初に襲撃してきたその日、お袋は巻き込まれて死んだ……」

達人「親父はお袋の仇を取るために、ゲッターロボを作ったんだろう!」

達人「俺だって同じだ。親父がお袋の仇を討たせてくれ!」

早乙女「ゲッターロボには、作ったワシですら分からん謎が多い。殆ど偶然の産物だ」

早乙女「それどころか、ワシの半生を注いで研究したゲッター線ですら、解明できていない事ばかりなのだ」

早乙女「それがどれほどに危険か、分かっているのか、達人!」

ミチル「さっぱり分からないわね、お父さん」
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:39:29.38 ID:0oKAVaRPo
早乙女「ミチル……」

ミチル「私もお兄ちゃんと同じ気持ちよ、お父さん。小さかった私には、お母さんの記憶はそんなにない……」

ミチル「だけど、優しかったのは憶えている。幸せだった事は知っている」

ミチル「それを奪ったハチュウ人類を赦せない!」

ミチル「私たち早乙女一族の因縁は、早乙女一族で果たす! 違うの、お父さん!」

達人「俺たちは親父ほど頭の出来は良くない。だからゲッター開発にはまるで関われなかった……」

達人「なら、ゲッターに乗る事こそが、俺たちにできる唯一の事なんだ」

ミチル「お願いよお父さん……私たちをゲッターのパイロットにして」
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:40:17.22 ID:0oKAVaRPo
早乙女「……お前たちの気持ちは分かった。だが、だとしても駄目なのだ」

早乙女「ゲッターロボは三機のゲットマシンが合体する事で姿を現す……あと一人、足りん」

早乙女「急ぎ、そのパイロットを探し育成する。その間、お前たちもパイロットとして十分な訓練を積むのだ」

達人「親父、それじゃあ!」

ミチル「お父さん!」

早乙女「想定されるゲッターロボの負荷は並大抵ではない。それにハチュウ人類と戦うと言う事は、命を懸けると言う事!」

早乙女「その覚悟があるか!」

達人「上等だぜ!」

ミチル「当然じゃない!」

早乙女「……良かろう。ワシも、より安全にゲッターを動かせるよう、研究を進める!」

早乙女「見ていろ、ハチュウ人類共め……! 早乙女一家の執念を思い知らせてやる!」
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:41:05.32 ID:0oKAVaRPo
早乙女「――――ゲッター2の耐久度は低い。敵の攻撃を一度でも受ければ……」

達人「お、親父、ちょっと休憩させてくれ」

早乙女「なんだ、まだ三〇分も経っておらんぞ」

ミチル「私たちが勉強苦手なの知ってるでしょー!」

早乙女「勿論知っているとも。お前たちは一度として良い評価の通知表を持って帰って来た事がないからな」

早乙女「お前たちは揃って恵まれた肉体を持つ反面、頭の方はどうにも弱い。こんな事は時間の無駄かもしれん」

達人「い、いや! そんな事はない! いきなり車に乗せられて安全運転なんてできるわけがないからな」

ミチル「た、大切な事だっていうのは分かってるから、怒らないで……!」

早乙女「良い心掛けだ。では続けるぞ」

達人「うぐぐ……」

ミチル「お父さんの鬼ー……!」
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:41:52.67 ID:0oKAVaRPo
達人「親父、これがゲッターパイロット候補の情報か?」

早乙女「そうだ。自衛隊、アスリート、NISAR……あらゆる分野、機関に所属する人間の情報を集めた」

ミチル「色々な人がいるのね……」

達人「どうやって誘うんだ?」

早乙女「素直に言うしかあるまい」

ミチル「この人なんかいいんじゃない? 体格も良いし、有名大学卒業だって」

達人「28歳……だいぶおっさんだな。歳が離れすぎているとチームワークに支障が出るんじゃないか?」

ミチル「子供ばかりのチームより良いと思うわ。大人としての冷静な観察眼も欲しいもの」

達人「ほー……思ったより考えているじゃないか、ミチル」

ミチル「お兄ちゃんみたいな子供っぽい男の人が増えても仕方ないもん。あ、この人カッコイイ!」

達人「前言撤回だ。親父、パイロットの選別は親父に任せるよ」

早乙女「同感だ。ミチルにはまだ早い」
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:42:49.06 ID:0oKAVaRPo
タッタッタッ……

ミチル「ほっ、ほっ……」

ミチル「いくら体力と運動神経に自信があるからって、体力作りを欠かしちゃいけないもんねっ」


「くぅん……くるる……」


ミチル「……あれ?」ピタ

ミチル「なんだろ、今の……こっち?」

ガサガサガサ……

「くぅん……」

ミチル「く、熊だ! でも、子供……怪我をしているのね」

ミチル「待ってて、今助けるから! よっと!」グイッ
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:43:34.42 ID:0oKAVaRPo
ミチル「お父さん、大変!」

早乙女「どうした、ミチル?」

達人「ミチル、なんだその動物!」

ミチル「子供の熊よ。飛行訓練場予定地近くの森の茂みで倒れてたの……」

「くぅん……」

達人「熊……なのか、これ。親父?」

早乙女「いや、普通の熊とは違うな……」

ミチル「ええっ、熊じゃないの!?」

早乙女「しかし、確かに酷い怪我だ。それに痩せ細っている」

ミチル「お父さん、この子を助けてあげてっ」

早乙女「生物は専門外だが……やってみよう」


「くぅ……くるるる……」
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:44:34.65 ID:0oKAVaRPo
早乙女「ふむ……」

達人「どうした、親父?」

早乙女「ミチルが拾ってきたあの子熊……やはり、普通の熊とは違うようだ」

達人「見た目からして変だからな。具体的には何が違うんだ?」

早乙女「遺伝子構造的には二ホンツキノワグマそのものだが、骨格がやや異なる」

早乙女「股関節が長時間の二足歩行に対応し、足の平もやや細く広い。前足は人間の手と大差ないほどに自由に動かせるようだ」

早乙女「気になるのが、声帯だ。大体の形はツキノワグマだが、人間と同じ個所も見られる」

達人「本当に熊なのか、あいつ……?」

早乙女「……どうだかな。あの熊の体から、膨大な量のゲッター線が確認された」

達人「どういう事だ? ゲッター線って、そんな代物だったか?」

早乙女「ワシにも分からんよ。ただ、ゲッター線は進化を促す放射線だ……」

達人「あの熊がゲッター線で進化した新種、もしくは突然変異って事か?」

早乙女「…………なんとも言えん」
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:45:23.01 ID:0oKAVaRPo
ミチル「クマちゃーん、ご飯だよ」

「きゅーん……」

ミチル「自分で食べられる? はい」

「くるるる……」マウマウ

ミチル「おー、良かったあ。ちょっとは体力が付いてきたみたいね」

ミチル「お父さんとお兄ちゃんがね、クマちゃんにあまり近寄らない方が良いって言うの」

ミチル「クマちゃんはこんなに大人しいのに。ねークマちゃん」ナデナデ

「くるる…………ク……」

ミチル「ん? どしたのクマちゃん?」

「グ……ク、マー……」

ミチル「…………ま?」
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:46:30.03 ID:0oKAVaRPo
ミチル「お父さん、お兄ちゃん!」ガンッ

早乙女「なんだ、どうしたミチル?」

達人「騒がしいな、ってお前なんでその熊持って来てるんだ!?」

ミチル「大変なの、クマちゃんが……喋った!」

早乙女「…………」

達人「気のせいだからその熊をよこせ。部屋に戻す」

ミチル「気のせいじゃないわ! 本当に喋ったの!」

達人「熊が喋るわけないだろうが! どこぞのマスコットキャラじゃあるまいし」

ミチル「本当だもん! ほらっ、クマちゃん!」

「クマー」

達人「…………お前腹話術上手いな」

ミチル「お兄ちゃん、現実逃避しないで」

早乙女「まさか…………」
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:46:57.93 ID:0oKAVaRPo
早乙女「ワシが指し示す平仮名を読め」スッ

「あ。さ。け。み。ろ。を」

早乙女「ではこの漢字を読んでみろ」

「いち。はやし。あお。くも。かお。ほそい」

早乙女「正解だ。次にこの算数テストをやってみろ」

「……かけざんがあるクマ」

早乙女「…………」

「クマー…………」カキカキ

「…………できたクマ」

早乙女「よし。戻っていい」

「わかったクマ」

キュム キュム キュム
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:48:54.66 ID:0oKAVaRPo
早乙女「一週間の学習で、小学一年生修了。二年生も問題ないか……」

達人「これが算数テストか。字は汚いが、ペンは持てているみたいだな」

達人「……ほー、一〇〇点満点の花丸じゃないか。おつむの出来も中々か」

早乙女「覚束ないが二足歩行もできつつある。発声も問題ない」

早乙女「見ろ。握力測定の結果だ。肉体こそ小さいが、普通のツキノワグマよりも高い数値を出している」

早乙女「指の構造の違いから強く握る事ができる分有利だとも考えられるが、それを差し引いても十分な値だろう」

達人「で、これが四足歩行での二〇〇m走のタイムか。一八秒六六……十分に速いな」

早乙女「これも体格や骨格の僅かな違いから出る差だろうが、実際に熊が出せる速度よりやや遅い程度だ」

達人「将来的に見て人間と同じ知能を持ち、身体能力は熊そのもの……本当になんなんだ、あの熊」

達人「これが、ゲッター線が齎す進化ってやつなのか?」

早乙女「……一つ言えるとするならば、あれは進化の一言で片付けられる代物ではない」

早乙女「進化よりも恐ろしい何か、かもしれん……」

達人「ハチュウ人類を相手に戦うってその前に、なんとも言えないババを引かされたな、俺たち」
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:49:37.28 ID:0oKAVaRPo
ミチル「クマちゃん、テストどうだった?」

「たぶん、できたとおもうクマ」

ミチル「クマちゃん、頭良いからね。大丈夫だよ」

「ありがとうクマ。ミチル」

ミチル「うふふ。すっかり口癖になっちゃったね。「クマ」」

「なんでかわからないけど、いいやすいクマ」

ミチル「憶えてるかなぁ。クマちゃんが最初に言った言葉、「クマー」だったんだよ」

「おぼえてるクマ。ミチルがなんども「クマ」「クマ」っていうから、まねしてへんじしたんだクマ」

ミチル「そうだったんだ。やっぱり頭良いなあ、クマちゃん。一ヵ月もしたら私やお兄ちゃんなんて抜かれるかも」

「それはないとおもうクマ」

ミチル「あり得るんだよねえ、私もお兄ちゃんも馬鹿だから……」

「ミっ、ミチル。おちこまないでクマ」
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:50:06.01 ID:0oKAVaRPo
「ミチルー、タツヒトー」

達人「おうクマ、どうした?」

「あれ、なにクマ?」

ミチル「あれは、『ゲッターロボ』よ」

「ゲッターロボ……」

達人「対ハチュウ人類用のスーパーロボット。親父が作ったんだ。と言っても、これはゲットマシン状態だけどな」

ミチル「これに、私とお兄ちゃんが乗って、ハチュウ人類と戦うのよ」

「ミチルとタツヒト、戦うクマ?」

達人「ああ。あと一人パイロットが見つかれば、そりゃもうハチュウ人類やメカザウルスなんざ挽き肉の泥団子に変えてやるのさ」

ミチル「ギタギタのメッタメタに叩き潰して、二度と蘇らないように纏めて活火山の溶岩の中に沈めてやるのよ」

「二人とも、こわいクマ……」
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/07(土) 08:51:05.70 ID:0oKAVaRPo
達人『こちらゲッターイーグル号、達人! ミチル、調子はどうだっ?』

ミチル『こちらゲッターイーグル号、ミチル。想定負荷再現装置での訓練と比べるとちょっときついけど、問題ないわ!』

達人『同じくだ。親父、そっちから見てどうなっている?』

早乙女「機体は安定している。ただ、お前たちの心拍数が上がっているな」

達人『なあに、ガムでも食ってりゃ落ち着くだろうよ!』

早乙女「舌を噛んでも知らんぞ。それに機内は飲食禁止だ」

「二人とも、すごいクマー!」

ミチル『クマちゃん見ててね。カッコ良く決めるからっ』

早乙女「二人とも、話はそれまでだ。コマンドAの連携だ」

達人『ミチル、遅れるなよ!』

ミチル『お兄ちゃんこそ!』

「クマー……かっこいいクマ……!」
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