沼の畔の女の子

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1 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/01/17(日) 16:22:01.56 ID:dgAO+BAa0
半分は体験談かな?まぁ、エンタメと思って楽しんで下さい。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1453015321
2 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/01/17(日) 16:22:49.08 ID:dgAO+BAa0
沼の畔の女の子「明日も来る?」

俺「もちろん!明日も遊ぼうね!」


子供の頃の俺は札幌の山があるとある区に住んでいた。その頃は周辺で宅地造成が進み、いつも遊び場だった山や野原がどんどんと開発されていった。

その沼には小学生低学年の時に友達に連れて行ってもらった。春先はカエルやイモリの卵を捕りに行ったり夏前にはヤゴを捕ったりした。
そんな里山の雰囲気が残っている場所だった。
3 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/01/17(日) 16:25:57.83 ID:dgAO+BAa0
八垂別と言う旧地名が残っている場所でみゆきストアと言う小さな市場の横を抜けて山の方へと道を上る。天気が良い。丁度季節は暖かいから暑いへと
移り変わる時だった。住宅が途切れ新緑が眩しい林の中を歩く自分。

白樺林の中を幅1メートル程の舗装されていない道を歩くと5分もしないうちにそこへとたどり着く。

目の前には大きな沼が広がり、そのすぐ前には廃校となった小学校の様な建物が有った。札幌時計台の時計塔だけを取り除いた様な小さな2階建ての校舎で、

1階にガラス戸で陽の光を取り入れる様な作りの広い教室があった。教室前はウッドデッキになっている。教室は1階に1室、2回に1室だけの小さな建物だ。

奥に古ぼけたピアノがあり14.15個の机やイスが乱雑に放置されている。今時の教室にある机やイスでは無く、完全木製の昭和中頃の様な作り。

そう、例えるなら「8時だョ、全員集合」のDVDに出てくる学校コントのセットの様な作りと言ったら理解して貰えるだろうか?

子供の目から見ても使用されなくなってから何年もの月日が経っているのが分かる荒れようだ。
4 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/01/17(日) 16:28:02.96 ID:dgAO+BAa0
6月終わりのある日、俺は1人でその廃校の沼の前に居た。

たまたまその日は遊びに行こうと思って同級生に声を掛けても誰も捕まらなかったのだ。

誰か来ていないかと期待をして行ったが残念ながらその日は誰もいなかった。今の様に携帯やLINEで連絡を取り合う様な時代では無い。

学校や家の近所の公園や原っぱに行けば誰か彼か遊んでいる。そんな長閑な時代だ。

誰も来ておらず遊ぶ相手がいないと分かった自分は落胆して来た道を戻ろうとしていた。


沼の畔の女の子「1人で来たの?」


声を掛けられた事にびっくりして振り向くと、そこには小さな女の子が立っていた。

白いワンピースに映える健康的な肌色で髪は横で縛りサイドテールにしていた。自分と同じ小学生2-3年生くらいだろうか?

何度かここにきているが今まで見た事が無い女の子だった。
5 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/01/17(日) 16:29:48.35 ID:dgAO+BAa0
沼の畔の女の子「帰っちゃうの?」


ちょっと寂しそうな瞳でその子は言った。


俺「誰もいなかったら帰ろうかと思ったんだけどね。一緒に遊ぶ?」


そう聞くとその女の子は笑顔で


「うん!」


そう答えた。

木に登ったり沼のカエルを探したり教室の中を探検したりした。楽しい時間は早く過ぎる様で気が付くと近くのスピーカーから「夕焼け小焼け」のメロディーが
流れてきた。この曲が流れたら子供は家に帰らなければいけない。
6 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/01/17(日) 16:34:16.23 ID:dgAO+BAa0
こんな感じでボチボチとやっていこうかと思っています。

どうぞご贔屓に。

7 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 21:12:02.45 ID:0TPICNnAo
よしみちゃん係みたいな話かと思ったら…
8 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 23:10:32.40 ID:KEoHkHaeO
期待
9 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/01/17(日) 23:35:13.86 ID:dgAO+BAa0
ご希望に沿えず申し訳ありません。エロ展開は無いんです…。
ちょっと服が透けてるよね、位のピュアさで勘弁して下さい。

続きを少し投下します。
10 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/01/17(日) 23:36:55.85 ID:dgAO+BAa0
俺「もう帰らなきゃいけない時間だよ」


そう言うと女の子はちょっと残念そうな表情を見せたが


沼の畔の女の子「そうだね、帰らなきゃ」


そう言った。そういう自分もまだ遊び足りなく後ろ髪を引かれる思いだった。


沼の畔の女の子「明日もここで一緒にあそぼうよ!」


俺「うん、いいよ!」


断る理由も無い自分は素直にまた明日この女の子と遊べる事が嬉しかった。


沼の畔の女の子「また明日ねぇ、バイバーイ!」


そう言って女の子は自宅が有るであろう方向に走って行った。


俺「うん、バイバーイ!」


そう言って女の子を見送ると自分も家路を急ぐのだった。
11 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/01/17(日) 23:43:07.43 ID:dgAO+BAa0
次の日は雨だった。あの女の子はどうしているだろうか?そういえば名前を聞いていない。明日晴れたらあの沼の前の廃校に行ってみよう。
そう思いまんじりとしない1日を過ごすのだった。




翌日は晴れだった。初夏の日差しの中、学校から帰りランドセルを家の玄関に放り投げると俺は沼の前の廃校に向かって駆け出していた。

後ろで母親が何かを言っていたが振り向かずに走った。

きっと帰ったら叱られるだろう。


坂道を駆け上がり白樺林を抜けると向こうを向いて立っている白いワンピースが見えた。彼女だ。

中に机が見える小さな廃校の様な建物の入口前はちょっとしたウッドデッキみたいになっている。昔は沼の水がここまで来ていたのだろうか?


息を切らしながら白いワンピースの女の子に声を掛けるとその子は振り向いた。嬉しそうな表情とちょっと怒ってほっぺたが膨れた様な微妙な表情をしていた。

開口一番、


沼の畔の女の子「昨日はずっと待ってた。もう来ないかと思った」


そう言われた。
12 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/01/17(日) 23:47:28.13 ID:dgAO+BAa0
俺「雨だから来て無いと思ったんだよ。次からは雨の日もちゃんと来るよ。ゴメンね」


沼の畔の女の子「…、分かった」


そう言うと彼女は気持ちを切れ変えた様に笑顔でこう言った。


沼の畔の女の子「今日は何して遊ぼうか?」


俺「その前にさ、俺まだ君の名前聞いてない」

沼の畔の女の子「私の名前?」

俺「うん。おしえてくれる?」

沼の畔の女の子「…なみ、たかおかみなみ 5年生」

俺「たかお…か?」

なみ「なみって呼んでいいよ!君の名前は?」

俺「俺っていうんだ、3年生!改めてよろしくな!」


その日はいつも自分が来る道と反対側の道を上って探検して見る事にした。
13 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/01/17(日) 23:49:07.35 ID:dgAO+BAa0
今日の投下はこんな感じで。
明日また投下出来ればと思っています。
おやすみなさい。
14 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/18(月) 10:46:08.31 ID:MEAszN/PO
乙!
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/25(月) 21:16:24.63 ID:xWr8HEUSO
期待
16 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/01/31(日) 01:04:44.89 ID:hVcBnnZo0
翌日来ようと思ってて気が付けば2週間、すんません。少しだけ投下します。
17 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/01/31(日) 01:14:41.09 ID:hVcBnnZo0
反対側の道は近くの山へとつながっていた。

歩き始めると沼のすぐ近くに小さな祠がある事に気が付く。


俺「ねえ、なみ!こんなところに祠があるよ。何の神様なのかなぁ?」

なみ「それは水神様だよ。この沼は意外に深い場所があるから子供が溺れたりしない様にって昔からあるんだよ」

俺「ふぅ〜ん。じゃあ神様を拝んでおこう!」

なみ「いい心がけね」

そう言って彼女は微笑んだ。



俺「よし、じゃあ出発!」

なみ「おー!しゅっぱーつ!」
18 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/01/31(日) 01:22:13.49 ID:hVcBnnZo0
自分を先頭に歩き出す。

ふいに後ろから小さく囁くような声で

「ありがと」

と聞こえた様な気がした。


俺「何か言った?」

なみ「んーん、何にも!」


気のせいか。そう思い歩き続けた。道は直ぐに細くなり10分も歩くと地面は見えなくなり草っぱらに動物が歩いた様な跡だけとなった。所謂、獣道と言うヤツだ。


そこから更にしばらく行くと見慣れた小高い丘の様な場所に出た。

冬に近所の子供たちが集まりソリ滑りをする場所だ。
19 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/01/31(日) 02:00:26.78 ID:hVcBnnZo0
俺「ここに出るんだ!」

なみ「ここ知ってるの?」

俺「うん、雪が降るとみんなでそり遊びに来る山だよ!」

なみ「いつの時代も子供はやる事が同じだね」

俺「何言ってるんだよ。なみだって子供じゃん!」

なみ「わたしは俺くんより2才もお姉さんなんだよ!」

俺「それでも子供には変わり無いじゃん!」

なみ「それもそっか!」


そういって2人で笑いあった。とても心地の良い時間だ。
20 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/01/31(日) 02:19:31.90 ID:hVcBnnZo0
なみ「ここからはわたしが先に歩くから。絶対に私より先に行っちゃダメだよ。わかった?」

俺「う、うん。わかった」


急に真面目な顔をしてなみが言った。少し驚きつつも素直に言う事を聞く自分。

ここを下ると道が有り100mも行かずに民家がある。でもそことは別に笹が深い獣道を登り始めるなみだった。

整備されていない獣道で足元が悪い。何度も転びそうになりながら先に歩くなみに置いて行かれまいと頑張って歩く自分。ちょっと息が上がってきた。


俺「ねえ、まだ登るの?」

なみ「うん、あと少し」

そう言ったかと思うと


「あ!」


と声を上げるなみ。
21 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/01/31(日) 02:26:46.95 ID:hVcBnnZo0
俺「なに?どうしたの?」

若干ビビりつつ尋ねる自分。

なみ「ほら、あそこ」

そう言ってなみが指差す方を見ると獣道から少し離れた場所に蛇がとぐろを巻いていた。真ん中には白い物が。卵かな?

なみ「あれは青大将って言う蛇だよ。毒は無いけど噛まれたら痛い」

俺「卵を温めているのかな?」

なみ「蛇は卵を温めないよ。多分、守っているだけだと思う」

俺「そうなんだ」

なみ「だから驚かさない様に少し離れた場所を歩こうね」

俺「捕まえてみようか?」
22 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/01/31(日) 02:27:53.22 ID:hVcBnnZo0
ここまで。
おやすみなさい
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/31(日) 03:45:27.19 ID:WhVGB7xEO
乙!
24 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/02/02(火) 23:51:14.09 ID:UQPZTXD+0
こんばんわ。
今夜もちびっと投下です。
25 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/02/03(水) 00:09:48.04 ID:VABcshCs0
なみ「野生の動物をむやみに捕まえたりしたらダメなんだよ。それに青大将がいなくなるとネズミが増えるよ」

俺「それはまたイヤだなぁ」

田舎のおばあちゃんの家の物置きに仕掛けられていたネズミ捕りに捕まっていたネズミを思い出した。嫌な声でキーキー鳴いてた記憶がある。

なみ「だからネズミが増え過ぎない様に青大将に頑張ってもらわないとね」

俺「そうだね、わかったよ。青大将バイバーイ!」

子供なりに納得して青大将を刺激しない様にゆっくりその場を立ち去る2人。


俺「2才しか違わないのになみは色んな事を知っているなぁ!」

なみ「お姉さんだから!」


そう言ってなみは微笑んだ。
26 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/02/03(水) 00:16:08.12 ID:VABcshCs0
5分も登ると小さな山のてっぺん、稜線にたどり着く。反対側も山かと思いきや、てっぺんから50mも行かない辺りでスパッと山が切れていた。

なみ「ゆっくり付いてきて」

言われるままに付いて行き、山が切れている場所まで辿りついた。

なみ「落ちない様に押さえててあげるから。そこからそおっと下をのぞいてみて」

ビビりつつも言われた通りに地面に手を付き四つん這いの体制で落ちない様にそっと顔を出す。

そこは切り立った崖のようになっていた。しかし自然の崖じゃあない。

山肌は段々に切り立ち、遥か下に黄色い物が動いている。ブルトーザーだ。
27 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/02/03(水) 00:32:35.30 ID:VABcshCs0
なみ「ここね、硬石山の裏側になるの。採石場って言うのかな。ここから落ちたら死んじゃうから」

そりゃそうだろう。ブルトーザーが豆粒に見えるくらいは高いんだから。

なみ「だから友達と遊んでいても山の向こうに行ってみようって話になったらみんなを止めてね」

俺「わ、分かったよ」


真剣な、そしてちょっと怒っている様な悲しそうななみの目は子供の俺には少し怖く見えるのだった……、でも。


なみ「うん、分かればよろしい!」


そう言うとなみはいつもの優しい顔に戻っていた。
28 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/02/03(水) 00:34:18.28 ID:VABcshCs0
取り敢えず今夜はここまで。
おやすみなさい。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/03(水) 01:00:30.69 ID:aHN40IFZO
乙!
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/03(水) 16:53:12.27 ID:LImnIV3hO
31 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/02/04(木) 00:07:49.94 ID:lQOFqhCZ0
こんばんわ。
今夜も少し投下します。
32 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/02/04(木) 00:08:32.57 ID:lQOFqhCZ0
なみ「じゃ、もどろっか!」

俺たちはそこから来た道を辿り、そり遊びの山を通り沼の畔まで戻ってきた。

俺「次は何をしようか?」

なみ「まだ遊びたいけど、直ぐに「夕焼け小焼け」がかかるよ。

俺「もうそんな時間なんだ」

なみ「そ!だからまた明日遊ぼうね!」

俺「うん、分かった!また明日ね!」

なみ・俺「ばいばーい!」

そう言って歩き出しふと思った。そういえば、なみの家ってどこなんだろうな?
振り返って俺は、反対方向に歩いて行くなみを見ながらぼんやりと考えていた。
33 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/02/04(木) 00:14:57.83 ID:lQOFqhCZ0
翌日、池の畔。


なみ「今日はクワガタを捕りに行こう!」

俺「いいけどクワガタってどこに居るの?」

なみ「おねーさんにまかせなさい!」

そう言うなみに連れて来られたのは、道路を渡って反対側の山を登った先にある八垂別墓地だった。

俺「ねぇ、ここ勝手に入っていいの?」

なみ「だぁーいじょうぶ!ここはクワガタ捕りの穴場なんだよ!」

俺「そうかもしれないけどお墓だよ?」

そこは墓石に明治時代の年号が入った物もある古い墓地だ。初夏の陽がさんさんと照っていて明るくても何となく薄気味悪い物だ。
34 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/02/04(木) 00:28:02.37 ID:lQOFqhCZ0
なみ「ほら、そこのドングリの木の根元に芝生の欠片見たいな物が置いてあるでしょ?めくってみて」

俺「えぇ〜、俺がやるの?」

なみ「なあに?怖いの?」

そう言ってクスクスと笑うなみ。

俺「そっ、そんなこと無いよ!」

ああ、強がってしまった。めくって骨でも出てきたらどうしよう…。

なみ「大丈夫だよ、骨なんか出て来ないから!」

お見通しですか、そうですか。覚悟を決めて恐る恐る芝生の欠片見たいな物をめくる自分。
35 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/02/04(木) 00:29:17.17 ID:lQOFqhCZ0
なみ「ほらいた!ミヤマクワガタげっと!」

芝生の欠片見たいな物の下にはクワガタがいた。別の木の根元にある物をめくると今度は2匹もいた。

俺「すげー!ノコギリクワガタじゃん!結構大きいよ!」

なみ「こうやって木の根元にクワガタが隠れられる場所を作っておくと夜活動したクワガタが明るくなると休む為に潜り込むの」

俺「へぇー、なみは物知りだなぁ!」

なみ「ふふん、そうでしょ!」

ドヤ顔のなみ。ちょっと、いや大分可愛い。

なみ「あと、木の幹の樹液が出ている場所もチェックポイントだよ。クワガタのご飯は樹液だから。でも気を付けないと偶にハチも来る」

クワガタの前にハチがいないかチェックだな。

なみ「次はねぇ、そのドングリの木の下に立って」
36 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/02/04(木) 00:31:25.81 ID:lQOFqhCZ0
また明日。おやすみなさい
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/04(木) 01:31:57.33 ID:rZTj4ZLdO
乙!
38 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/02/05(金) 00:04:34.96 ID:khq1j7os0
大きな栗の樹の下なら歌と一緒だな。とかどうでもいい事を考える俺。

なみ「うん、そこ。その太さ15p位のドングリの木の下ね」

俺「立ったよ」

なみ「よし。じゃあその木の幹を思い切り蹴って!」

俺「えっ、そんなことしていいの?」

なみ「大丈夫!折れたりしないし、誰かに怒られもしないから」

俺「わ、分かったよ」

覚悟を決めて自分の出せる最大の力で思い切りドングリの木の幹を蹴とばす。

ガン!サワサワ!木が揺れて葉っぱが揺れる音がしたと思ったら、

ポト ポト と周囲3.4カ所に何か黒い物が落ちてきた。
39 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/02/05(金) 00:22:32.37 ID:khq1j7os0
俺「えっ?何?何が落ちて来たの?」

その黒い物体を拾い上げてこちらに見せるなみ。

なみ「怖がらなくても大丈夫!ほら、クワガタだよ。木を蹴飛ばすとね、木の上の方にいるクワガタが驚いて落ちてくるんだよ」

へぇー、そうなんだ。今日も1つ賢くなった俺。

なみ「クワガタ捕りはね、木の根をチェックして幹の樹液が出てる所を見て、最後に木の幹を蹴とばすんだよ」

なみ「クワガタが好きな木の樹液はドングリの木とか柳、白樺なんかにも樹液を探しにくるよ」

俺「ふぅ〜ん、そうなのか。覚えておくよ!」

なみ「そうしたら学校のみんなとのクワガタ自慢にも有利だし、交換の時とかも有利に交渉出来るよ」

俺「そうだね、助かるよ。ありがとうな!」
40 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/02/05(金) 00:31:26.02 ID:khq1j7os0
おやすみなさい
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/05(金) 01:59:50.24 ID:rOw+KXSTO
乙!
42 : ◆fpdfvEPUTs [sage]:2016/02/13(土) 23:03:57.67 ID:KU9KTrqs0
なみ「注意しなきゃいけないのは、木の幹を蹴って上で『ブーン』て羽音がしたら走ってその場から逃げてね」

俺「え、どうして?」

なみ「『ブーン』て羽音がしたら木の上にハチの巣があるって事だから。ミツバチでも厄介なのにスズメバチだと大変だから」

俺「そ、そりゃ大変だ」

なみ「気を付けてさえいれば森の中で遊んでも安全だよ」

俺「今は墓地の中だけどな」

なみ「あと気を付けなきゃいけないのは、この葉っぱ。絶対触っちゃダメだよ。かぶれるから」

俺「毒の葉っぱ?」

なみ「これは漆っていうの。鳥の羽根のような葉っぱで、葉っぱの縁はギザギザが無くて滑らかなの。白い液が出て葉っぱだけでは無くそれに触るとかぶれちゃう」

なみ「秋には綺麗に赤くなるけど絶対触っちゃダメ。分かった?」

俺「うん、分かった!」
43 : ◆fpdfvEPUTs [sage]:2016/02/13(土) 23:26:40.17 ID:KU9KTrqs0
なみ「危ない物を知っていれば避ける事が出来る。自然の中で安全に遊ぶのに必要な事を知っておくのは大切だよ」

今日はなみに森の中で危ない虫や植物に付いて教えてもらった。

外で遊ぶ為に必要な、学校でも中々教えてもらえないけど知らないと大変な事になる必要な知識。

こうやって子供の中の誰か彼かが知っていて年下の子に教えるんだなぁ。

なみ「さてと。陽も傾いてきたし、そろそろ帰ろうか?」

俺「え〜、もう少しクワガタ捕りしたいなぁ!」

なみ「暗くなった墓地の中を歩きたいなら良いけど、あっという間に薄暗くなるよ?」

そうだった…。クワガタに夢中になっていたけどここお墓なんだよなぁ(汗

俺「よし、直ぐに帰ろう!」

なみ「ふふっ、素直でよろしい!」
44 : ◆fpdfvEPUTs [sage]:2016/02/13(土) 23:28:47.10 ID:KU9KTrqs0
少しですが今日はこんなところで。
お休みです。
45 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/02/13(土) 23:31:42.25 ID:KU9KTrqs0
sageてた…(汗
寝ます
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/14(日) 06:56:27.25 ID:k9vtnHuoO
乙!
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/29(月) 09:59:24.06 ID:zvziz25cO
そろそろどう?
48 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/03/03(木) 23:38:04.28 ID:S6tWjc6s0
坂道を2人で並んで下り始める。

なみ「ここの道ね、冬はボブスレーで滑るとすごくスピードでて楽しいけど意外に車通りが多いし去年は登ってきたダンプカーにボブスレーで突っ込んでいった子供がいるから」

なみ「だから冬はここでボブスレーで遊んじゃダメだよ」

俺「う、うん分かった」

今年の雪が解ける春前に散々友達とここでボブスレーで滑って遊んだ事は言わないでおこう……。

坂道を降りみゆきストアの前まで来ると、

なみ「じゃあ、今日はここでバイバイね!」

俺「うん分かった。また明日ね!」

なみ俺「「ばいばーい!」」
49 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/03/03(木) 23:59:32.00 ID:S6tWjc6s0
学校は夏休みに入った。俺はと言うと朝から出かけて沼の畔まで来ている。

なみ「おはよー!」

俺「おはよー!今日は何して遊ぶ?」

なみ「ザリガニ探そっか!」

俺「ザリガニ?」

なみ「そ!ザリガニ。アメリカザリガニじゃなくて小さい日本ザリガニだよ!」

俺「いいけどどうやって?」

なみ「沼の畔の端っこから水が流れて小川になっているの分かる?あの少し下に泥でダムを造るの!そうやって遊んでいるといつの間にかザリガニ出てくるよ!」

ホントかなぁ?と思いつつ、水遊びは嫌いではないので早速石を集めて木や泥でダムを作り始める俺となみ。

俺「泥で石の隙間を埋めても直ぐに水で流されちゃうね」

なみ「そんな時はこっちの粘土っぽい泥を使うといいよ」

俺「ホントだ!水で穴があかないよ!」

幅1m、水深10p程の小川に直ぐにダムが出来た。真ん中の1ヶ所に石の隙間を作りV字にすると溢れた水がそこから流れて行く。
50 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/03/04(金) 00:48:10.95 ID:NOkIxvQG0
俺「いつもダムを作っても直ぐに水が溢れて決壊しちゃってたけど、石でV字にすると決壊しないで水が貯まるね」

なみ「ねっ!言ったとおりでしょう?」

俺「うん!なみスゴイな。色んな事しってるね!」

なみ「ふふん、そうでしょ、もーっとわたしに頼ってもいいのよ!」

俺「うん、知りたいことがあったらなみに聞くよ」

なみ「おねーさんに任せなさい!何でも答えてあげるわ!」


子供だった純粋な俺は素直になみの事をスゴいと思った。今の薄汚れた俺ならあんな事やこんな事やとんでもない事等、エロい事も聞くかもしれない。人生ずいぶん遠くに来てしまった物だ。

51 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/03/04(金) 01:09:23.23 ID:NOkIxvQG0
なみ「ほら、あそこ!」

そう言ったなみの指さす方を見ると、泥ダムの縁にザリガニがいた。

俺「おー、ホントにザリガニが出て来たね!」

なみの言った通りになった。

ザリガニを摘みあげるなみ。

なみ「メスのザリガニだね」

俺「えっ、どうしてわかるの?」

なみ「卵を抱いてるもん、ほら」

見るとお腹に20個前後の小さな卵を抱いている。
52 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/03/04(金) 01:11:03.09 ID:NOkIxvQG0
なみ「ザリガニも赤ちゃんを育てないといけないから放してあげようね」

俺「うん、そうしよう」

そう言って見つけた時と同じ場所にそっと置くとザリガニは水の中に帰って行った。昔はどこにでもいたのに最近は絶滅危惧種に指定されてるのか。

俺「あ、」

なみ「どうしたの?」

俺「左腕が痒い。蚊にさされたかな」

なみ「ちょっと見せて」

なみの顔が近い。女の子ってどうしていい匂いがするんだろう?ちょっとドキドキする。
53 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/03/04(金) 01:13:22.76 ID:NOkIxvQG0
どんなもんでしょう?
では、おやすみなさい
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/04(金) 03:43:15.15 ID:kMiLFkM+O
よかった乙!
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/06(日) 12:02:29.70 ID:tNwYuaXk0

小学校の頃に読んだ文庫本みたいな雰囲気だな
56 : ◆fpdfvEPUTs [sage]:2016/03/30(水) 00:52:58.61 ID:enYlnR+z0
なみ「あ〜、これブヨにやられたんだね」

俺「ブヨ?」

なみ「そう、ブヨって言う毒虫。綺麗な水辺にいるの。刺すと言うより食いちぎるって感じで皮膚を破いて血を吸うの」

俺「ヤバいやつ?」

なみ「サイズは子バエ位だけど刺されたら腫れて痒くなって熱を持つの。酷いと腕が曲げにくくなる位に腫れるし2.3週間は痒みが続く」

俺「最悪だな」

なみ「今さらだけど、これ以上刺されないようにしようか」

そう言ってなみはポーチから単3電池を少し長くした位のサイズのガラス製のスプレーを出して俺にふり掛けた。
57 : ◆fpdfvEPUTs [sage]:2016/03/30(水) 01:03:59.54 ID:enYlnR+z0
なみ「目は瞑っててね。開けてもいいけど沁みるから」

そう言ってスーっとする物をふり掛けるなみ。

俺「これって、薄荷?うゎっ、目にしみる!」

なみ「だから目を開けないでって言ったのに。そう、薄荷だよ。この匂いは虫が嫌いな匂いだから蚊やブヨがいる季節は薄荷をスプレーしておくと虫に刺されにくくなるよ」

そう言ってクスクスと笑うなみ。

俺「スースーするけど嫌いじゃない。寧ろいい匂いだ」

なみ「忘れててゴメンね。次からは遊ぶ前にスプレーしようね」
58 : ◆fpdfvEPUTs [sage]:2016/03/30(水) 01:10:08.07 ID:enYlnR+z0
薄荷は天然の虫よけスプレーだ。薄荷の匂いに蚊やブヨは寄ってこない。俺は今日もまた1つ、賢くなってしまった。

なみ「これでよーし!じゃあ、次はね」

なみがそう言うと同時位に空から何か落ちて来た。

なみ「あめ?」

気が付くと空は暗くなっていて雨が降ってきた。最初はパラパラと降っていた雨が直ぐに大粒になった。

なみ「俺君、走るよ!」

そう言うとなみは俺の手を引いて走りだした。次第に雨脚は強くなりスコールの様になった。
59 : ◆fpdfvEPUTs [saga]:2016/03/30(水) 01:13:38.74 ID:enYlnR+z0
また次回。おやすみなさい
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