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P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2
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510 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:39:27.72 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B8F ー
…キィン!! ガキィン!!
バキッ!! ドガッ!!
ブワッ…
…スタッ
千早「………」
月の女神「……へぇ、さっきの言葉はウソじゃなかったんだね?」
月の女神「あなた、こないだ戦った時よりいい動きしてるよ!」
千早(確かに、身体が軽い……)
千早(不思議ね、何をしたっていうわけではないのに)
千早(私、いつもよりもリラックスしてる……)
千早(別れ際の春香の告白騒動があったからかしら)
千早(……春香には感謝しなきゃいけないわね)
千早「私は、みんなとの約束を果たさなければならない」
千早「……あなたを倒して、先へ進ませてもらうわ」チャキッ
月の女神「……じゃあ、私は……」
月の女神「教えてもらうよ。あいどるってなんなのかを!」チャキッ
千早「!」
511 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:41:45.44 ID:lU/e7KMhO
月の女神「……はあっ!」ダッ
ガキィン!!
千早「くっ……!」ググッ
千早(相変わらずの腕力ね……。今にも押し返されそう)
千早(それに……)
月の女神「はっ!」タンッ
クルンッ
月の女神「……えいっ!」ブンッ
ザシュッ!!
千早「うっ……!」ヨロッ
月の女神「やっ!」ブンッ
キィンッ!!
千早「く……!」ギリッ
千早(なんて軽やかな動き……。まるで踊るような……)
月の女神「私は、あいどるになりたい」
月の女神「あいどるはキラキラ輝いていてとても楽しいものだって、コトリ様に教えてもらったから」
月の女神「……だから、あなたを倒して私があいどるになるッ!!」
千早「………」
千早(これも音無さんの作戦か何かなのかしら)
千早(魔物がアイドルになりたいだなんて……)
千早(……ううん、多分、人間も魔物も関係ない)
千早(何かに対して憧れる気持ちは、きっとみんなが持っているもの)
千早(でも、だからってこの子に付き合う必要はない。私には果たさなければならない約束があるのだから)
千早「悪いけど、あなたの願望には興味はない。無理やりにでも道を開けてもらうわ!」チャキッ
月の女神「えへっ、たくさん遊ぼう!!」チャキッ
512 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:47:36.19 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B10F ー
春香「……これは……!」ゾクッ
ビリッ…
春香(空気が震えてる……)
春香(この階全体にまんべんなく張り巡らされた殺気……)
春香(まるで、私たちを誘ってるみたい……)
春香「お姉ちゃん……」
律子「ええ……ものすごいわね、これは」
律子「さっきの階とは真逆ね。完全に私たちを挑発してるわ」
律子「……いえ、私たちじゃなくて……」チラッ
律子「この闘気の主は、貴音、あなたを待っているのね」
貴音「………」
春香「貴音さん……」
貴音「……覚悟は出来ております」
貴音「ですから、どうかわたくしの事は心配なさらずに」
春香「………」
春香「……それでも」ギュッ
貴音「春香……?」
春香「貴音さんがどんな想いで戦うのか、私には想像もつきません」
春香「だから、せめて……」
春香「私のパワーを貴音さんに分けてあげます。使ってくださいっ!」ギュッ
貴音「………」
春香「………」
貴音「………」
春香「………」
貴音「………」
貴音「……あの」
春香「あ、えっと、私……」
513 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:50:40.54 ID:lU/e7KMhO
春香「こうして手を握れば、少しでも力を分けてあげられるかなー、なんて……」
春香「あ、あはは……。こんなの、気休めにもなりませんよね……」シュン
貴音「……いえ、ありがとうございます」
貴音「春香、あなたのぱわぁ、確かに貰い受けました」ニコッ
春香「貴音さん!」パァァ
律子「……そういう事なら、私のパワーもあなたに分けてあげなきゃね」ギュッ
貴音「律子嬢……」
律子「この殺気、ここまで出会ったどの魔物よりも確実に格上だわ」
律子「こんな時になんて言葉をかけたらいいのか分からないけど……」
律子「貴音、自分を信じて。あなたならきっと……」
貴音「………」
貴音「わたくしは本当に幸せ者です。こうして一生懸命わたくしの事を想ってくれる友がいるのですから」ニコッ
春香「貴音さん……!」
律子「……しっかりね、貴音!」
「…………よくぞここまで辿り着いた」
三人「!!」
514 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:53:19.47 ID:lU/e7KMhO
…ザッ
ダークバハムート「光の戦士……いや、あいどるたちよ」
律子「あれが、バハムート……」
春香「貴音さんのお友達で……」
貴音「幻獣神……幻獣たちの頂点に立たれるお方です……!」
ダークバハムート「………」ゴゴゴ
貴音「律子嬢、春香、二人は先へ」
貴音「宜しいですね? ばはむーと殿」
ダークバハムート「無論だ。そこの二人にはこの先で試練が待っている」
ダークバハムート「行くがよい、娘たちよ」
春香「貴音さん……」
貴音「もう言葉は要りません。……さ、早く」
春香「……はいっ」コクリ
タタタタ…
…ピタッ
春香「あの、バハムートさん!」
ダークバハムート「……なんだ、娘よ」
春香「貴音さんのこと、よろしくお願いしますっ!」ペコリ
タタタタ…
ダークバハムート「ククッ……!」
515 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:59:21.68 ID:lU/e7KMhO
ダークバハムート「さて……漸く二人きりになる事ができたな、タカネよ」
ダークバハムート「会いたかったぞ……!」
貴音「ばはむーと殿……」
貴音(わたくしもずっとお会いしとうございました)
貴音(……ですが、同時にお会いするのが怖くもありました)
貴音「……お久しぶりでございます」ペコリ
ダークバハムート「うむ。お前が変わらず健在で安心したぞ」
貴音「ありがとうございます」
貴音「ばはむーと殿は……」
貴音(……黒き闘気を纏った体躯、おぞましい程鋭く伸びた爪や牙、闇夜の如き漆黒の翼……)
貴音(あの頃の光に満ち溢れた眼差しはもうありません)
貴音(……ばはむーと殿は、大きく変わられてしまったようです)
ダークバハムート「……そう怯えるな。久々の再会なのだ、もっと嬉しそうな顔を見せよ」
貴音「っ……そう、ですね」
貴音「あの、ばはむーと殿」
ダークバハムート「……なんだ?」
貴音「もう、戻られるおつもりはないのですか?」
ダークバハムート「……要領の得ぬ問いだな。それは、我の住処へ、か?」
ダークバハムート「それとも、光に、か?」
貴音「……その両方です」
ダークバハムート「タカネ。まさかお前程の者が理解出来ぬ訳ではなかろう?」
ダークバハムート「『こう』なってしまっては、我の力を以ってしてももはや以前の身体には戻れぬ」
ダークバハムート「それに、単なる眷族の為にわざわざ住処へ戻ってやる義理もない」
ダークバハムート「答えは両方とも否だ」
貴音「………」
貴音(やはり、取り返しのつかないところまで来ていたのですね)
貴音(……戦うしか道は無いのでしょう)
516 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 21:02:09.27 ID:lU/e7KMhO
ダークバハムート「それよりも、我の言いつけ通り青き星から光の戦士たちを連れて来たようだな」
ダークバハムート「よくやった。褒めてつかわす」
貴音「……何故、ですか?」
ダークバハムート「む? ……何故、とはどういう事だ?」
貴音「闇へ堕ちたご自分がいずれ光の戦士に倒されると分かっていて、何故わたくしを褒めてくださるのですか?」
貴音「わたくしには、ばはむーと殿の真意は測りかねます」
ダークバハムート「……随分と自信があるようだな。この我を倒すのはあくまで前提、という事か」
貴音「! ……す、すみません、過ぎた事を……」
ダークバハムート「ククッ……良い。それ程の気概が無ければ我を倒してコトリの元へは行けぬ」
ダークバハムート「……否。お前をコトリの元へなど行かせぬ」ゴゴゴ
貴音「!」
貴音(なんと、おぞましい闘気……!)
ダークバハムート「お前は……永久に我のものになるのだ……!」
ゴオオオオッ!!
貴音(……戻ることなどできない)
貴音(散々後悔し、迷いもしましたが……)
貴音「わたくしは引きません、ばはむーと殿」スッ
貴音「貴方を倒し、その先の光を手に入れますっ……!」ゴゴゴ
ダークバハムート「……見せてみよ、お前の力!」
517 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/28(金) 23:43:09.78 ID:Vq+5ACzLO
久々の寝落ちか?
518 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:00:22.66 ID:kgLR5JNJO
ー 月の地下渓谷 B11F ー
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
春香「……誰もいませんね」
律子「……そうね」
519 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:02:26.90 ID:kgLR5JNJO
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
春香「……何も、起こりませんね」
律子「……そうね」
520 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:04:11.75 ID:kgLR5JNJO
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
…ピタッ
春香「………………」
春香「……………………おかしい!」
521 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:13:49.15 ID:kgLR5JNJO
春香「絶対におかしいですよこれ! 進んでも進んでもずーーっと同じ景色だし、魔物なんてぜーんぜん出てこないし……」
春香「お姉ちゃん、私たちもしかして騙されてるんじゃないですか?」
律子「……あら、春香にしては察しがいいわね」
律子「貴音がいないから断言出来ないけれど、ここまで進んでも下り階段が見つからないのは、きっと罠なんでしょうね」
春香「や、やっぱり!」
春香「ど、どうしましょうお姉ちゃん!」
律子「うーん……さっきから考えてはいるんだけど、結局こういう場合って魔物を見つけないと進めないってパターンだと思うのよ」
春香「じゃあ、まずはこの階を守ってる魔物を探さないといけないんですね」
律子「ええ。でも……」チラッ
春香「……もう、結構進んできましたよね、私たち」
律子「そうね。ここまで進んでも何も無いとなると、このまま先へ進むべきか、いったん戻るべきか……」
「…………おおーーい!!」
春香「……えっ?」クルッ
律子「! あれは……」
522 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:22:56.99 ID:kgLR5JNJO
タタタタ…
P「……はぁっ、はぁっ……!」
P「……よ、良かった、やっと知ってるやつに会えた……」
春香「プロデューサーさん!?」
律子「プロデューサー殿!」
春香「なんでここにプロデューサーさんが? 小鳥さんと一緒じゃなかったんですか?」
P「いやあ、中心核までの道で小鳥さんとはぐれてしまってな」
P「はは……面目ない」ポリポリ
春香「えっ、じゃあもしかして私たちが来るまでずっと迷ってたんですか?」
P「ああ。なぜかこの階には下へ降りる階段が見つからないんだよ。魔物の罠かもしれないんだ」
律子「丁度私たちもこれはきっと罠だ、って話をしていたところです」
P「そうだったのか」
P「それで、今は二人だけか? 他のみんなはどうしたんだ?」
春香「みんなは、親衛隊の魔物と戦ってくれています。だから私たちも早く先へ進まないと」
P「そうか……そうだな」
律子「ところで、プロデューサーはなんで私たちの後ろから現れたんです?」
律子「私たちが来るよりももっと前からこの階にいたんですよね?」
春香「あ……言われてみれば、私たち誰ともすれ違ってないのにおかしいですね」
春香「貴音さんの話だと、この階は一本道らしいですし……」
P「それは……」
523 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:26:33.21 ID:kgLR5JNJO
P「うーん、口で説明するよりも実際に見た方が早いかもな」
P「春香、すまないがちょっとこの先へひとっ走り行ってきてくれないか?」
春香「先へ……ですか?」
P「うん。ずっとまっすぐ進んでくれればいいんだ」
春香「えっと……はい、分かりました」
春香「じゃあ、行ってきます!」
タタタタ…
律子「……なるほど、プロデューサーが何をやろうとしているのかがなんとなく分かりました」
P「そうか。流石は律子だな」
律子「また面倒くさそうな罠ですね」
P「俺ひとりじゃどうしていいか分からなくてな。二人が来てくれて助かったよ」
律子「ちなみに、この階を守っている魔物に心当たりは?」
P「すまん、分からないんだ」
律子「……ま、仕方ないですね」
タタタタ…
律子「……あ、来ましたね」
P「ああ」
524 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:29:40.32 ID:kgLR5JNJO
春香「……はぁ、はぁっ……!」
春香「……あれっ? なんでここにプロデューサーさんとお姉ちゃんが……?」
P「俺たちはさっきからここを動いていない。春香は元の場所に戻ってきたんだよ」
春香「えっ? でも私、プロデューサーさんに言われた通りずーっとまっすぐ走ったつもりなんですけど……」
律子「春香、多分これはループする罠よ」
春香「ループ?」
律子「何らかの方法で空間が捻じ曲げられて、入り口と出口が繋がってしまっている」
律子「先へ進んだつもりでも、元の場所へ戻ってきてしまうようになっているんじゃないかしら」
春香「なるほど……だから今までも進んでも進んでもずっと同じ景色だったんですね!」
春香「でも、どうしましょう? これじゃ小鳥さんのところまで行けませんよ」
P「魔物を見つけさえすればなんとかなると思うんだけどなぁ……」
律子「………」
P「……仕方ない、どうすればいいか知恵を出し合おう」
春香「そうですね。三人で考えればきっと何か方法が見つかるはずです!」
P「……というわけで、律子、頼んだぞ」
律子「はい?」
春香「お姉ちゃんが頼りなんです!」ギュッ
律子「二人揃って丸投げとか、文殊の知恵はどこへ行ったんですか……」
律子「……まったく、仕方ないわねぇ」
525 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:33:38.17 ID:kgLR5JNJO
律子「じゃあ、二人のお望み通り私の考えを話すけどいいかしら?」
P「もちろん!」
春香「もう何か思いついたんですか? さっすがお姉ちゃん!」
律子「まあ、考えって言っても魔物がどこにいるかについての考察だけなんだけどね」
P「充分だよ。いやあ、律子は頼りになるなあ!」
春香「それで、魔物はどこにいるんですか?」
律子「その前に……」
律子「春香、今までの会話で何か気づかない?」
春香「えっ? 何がです?」
律子「私たち三人のここまでの会話の中に、明らかにおかしい点があったわ」
春香「えっと……」
春香「……す、すみません、全然わかんないです……」
律子「あなたって結構鈍感なのねぇ。私は真っ先に気づいたっていうのに」
春香「もう、焦らさないでくださいよぅ!」
P「そうだぞ、律子。事態は一刻を争うんだ」
律子「……分かりました。じゃあ言いますけど……」
律子「……あなた、プロデューサーじゃありませんよね?」
P「えっ……?」
526 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:38:31.44 ID:kgLR5JNJO
春香「プロデューサーさんが、プロデューサーさんじゃない……?」
春香「ど、どういう事なんですか?」
律子「そのままの意味よ。そこにいる人はプロデューサーじゃない別の誰かってこと」
律子「もっと言うと、この階を守っている魔物じゃないかと思っているわ」
春香「ええっ!?」
春香「で、でも、どこからどう見てもプロデューサーさんだと思うんですけど……」チラッ
P「律子、今は冗談言ってる場合じゃないんだ。お前も分かっているだろ?」
律子「……ふーん、あくまでシラを切るつもりですか」
P「そもそも、何を根拠に俺を魔物だなんて言うんだよ?」
律子「根拠……根拠ねぇ……」
律子「もちろんあります。あなたがプロデューサーじゃないっていう根拠は」
律子「でないとこんなこと言い出したりしませんって」
P「………」
春香「……あの、お姉ちゃん。本物のプロデューサーさんじゃない根拠って何なんですか?」
律子「ええ、今から説明するわ」
律子「あなたがプロデューサーではないのではと思ったのは、会話の中に三つの違和感を感じたからです」
P「………」
527 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:41:03.68 ID:kgLR5JNJO
律子「まず一つ目。あなたは小鳥さんとはぐれたって言ってましたけど、じゃあなんで小鳥さんは迎えに来ないんですか?」
P「それは……」
P「分からない。小鳥さんにも何か事情があったんじゃないか?」
律子「苦しい言い訳ですね。この地下渓谷は小鳥さんの庭のようなものらしいじゃないですか。それなのにあなたを迎えに来れない事情ってどんな事情なんでしょう?」
P「それが分からないからここにいるんじゃないか」
P「律子、お前はいつから仲間を疑ったりするようになったんだ?」
律子「………」
春香「あ、あの、二人ともケンカはダメですよ?」
律子「……ま、いいです。じゃあ二つ目の違和感」
律子「あなたは私たちよりも先にこの階の罠について知っていたみたいですけど、それはどうやって知ったんですか?」
P「? それは重要なことなのか?」
律子「重要です」
律子「この階の罠は、さっき判明した通り『無限ループの罠』です」
律子「でも、それって一人で気づけることですか?」
春香「どういうことですか?」
律子「私たちはさっき春香を使った実験でこの階の罠を知った」
律子「そして、その実験を提案したのはこの人。つまり、この人は私たちが来る前からこの階の罠を知っていたことになるわ」
春香「はい、そうなりますね」
P「………」
律子「でも、じゃあこの人はどうやって罠の内容に気づいたの?」
律子「さっきの実験みたいに先へ進む人とその場に留まる人に別れれば無限ループだと気づけるけど、果たして一人の時にその事実に気づくことができるかしら?」
春香「……確かに、一人だとさっきみたいな実験は出来ないし……」
P「そんなの簡単だよ。石か何かで壁に印を付けて、しばらく進んで同じ印が見つかれば無限ループしているってことだ。これくらいは誰でも思いつくことだと思うぞ?」
春香「あっ、なるほど」
律子「……ふむ」
528 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:54:26.22 ID:kgLR5JNJO
律子「……じゃあ、三つ目の違和感です」
律子「今までの二つの違和感は、あなたが本物のプロデューサーではないのでは? という疑念を私に抱かせるにすぎない、言わば取っ掛かりのようなもの」
律子「証拠と言うには不十分です」
律子「……が、三つ目の違和感は、それだけであなたが別人であるという証拠になり得る確定的なものです」
P「………」
春香「……!」ゴクリ
律子「……プロデューサー殿、あなたは……」
律子「いつから小鳥さんのことを下の名前で呼ぶようになったんですか?」
P「えっ……?」
春香「あっ……」
春香「そうですよ! 確かにプロデューサーさんはいつも『音無さん』って呼んでます!」
春香「『小鳥さん』って名前で呼んでるのは、聞いたことないです」チラッ
P「………」
律子「あなた、誰ですか?」
P「………」
律子「魔物なんでしょう? 姿を現しなさい!」
P「………」
P「…………いやあ、参った。これは調査不足だったなぁ」
スゥーー…
「……大正解。ボクはプロデューサーさんじゃないよ」
春香「……あ、あなたは……!」
529 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:56:06.03 ID:kgLR5JNJO
クルーヤ「……ハルカ、久しぶりだね。見違えたよ」ニコッ
春香「お父さんっ!」
律子「お父さん……?」
律子(じゃあ、この人が私の……)
クルーヤ「リツコ、見事だった。ボクの幻影を見破るなんて」
クルーヤ「とても賢く成長してくれたんだね。父親として鼻が高いよ!」ニコッ
律子「………」
クルーヤ「……それと、辛い思いをさせてすまない」
クルーヤ「君がコトリさんに操られて青き星を滅ぼそうとしていたのは知っていたんだ」
クルーヤ「でも、ボクはもうこの世の存在ではない。だから、世界に干渉して君を助けるわけにはいかなかった」
律子「………」
春香「お父さん……」
530 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:58:31.80 ID:kgLR5JNJO
律子「終わったことはもういいです。私はこうして春香と共にここにいるんですから」
律子「あなたがこの世の存在ではないっていうのも、特に興味は無いですし」
春香「お、お姉ちゃん?」
クルーヤ「………」
律子「それより、この世界へ干渉するのが禁じられているっていうならなぜあなたはここにいるんです?」
律子「禁忌を犯してまで私たちの邪魔がしたかったっていうんですか?」
クルーヤ「………」
春香「お、お姉ちゃん、それはさすがに言いすぎじゃ?」
律子「……ごめんね、春香。この人はあなたにとっては父親かもしれないけど、私にとっては目的の邪魔をしようとしているただの敵でしかないわ」
春香「!」
クルーヤ「……はは、嫌われちゃったなぁ……」
クルーヤ「父親らしいことなんて何一つ出来なかったクセに今さらのこのこと君の前に現れるなんて、虫が良すぎるよな」
春香「お父さん、でもそれは」
律子「私たち、急いでいるんです。ここを通してもらえません?」チャキッ
クルーヤ「……ふむ」
春香「お姉ちゃん、ダメですっ! お父さんは敵じゃありません!」
律子「……いいえ」
律子「こうして私たちの前に立ちはだかっている以上、今まで出会ってきた魔物たちと同じ、排除すべき敵だわ」
春香「そ、そんな!」
クルーヤ「………」
クルーヤ「……自分のいる位置を知っておくのも大事なことだ。いいよ、かかっておいで、リツコ」ニコッ
律子「っ! ……はぁぁぁあああっ!!」
タタタタ…
春香「お姉ちゃんっ!!」
531 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/29(土) 07:59:47.51 ID:kgLR5JNJO
ここまでです
寝落ちしました
532 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/29(土) 15:51:21.17 ID:l1trogsLO
ドンマイ
533 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/26(土) 17:32:26.24 ID:zWOiNkMA0
もうすぐ1ヶ月
534 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/11/29(火) 18:04:30.29 ID:17JM/YY8O
ー 月の地下中心核 ー
『……はああああっ!!』
『バキッ!! ドガッ!!』
『ドゴオオオン!!』
P「………」
小鳥「………」
小鳥「みんな、頑張ってますね」
P「はい。もう物語も最終局面ですからね。それぞれが持てる力の全てで戦いに臨んでいると思いますよ」
小鳥「………」
P「……音無さん?」
小鳥「は、はい、何でしょう?」
P「なんだかぼーっとしてましたけど、大丈夫ですか?」
小鳥「大丈夫、です」
P「無理はしないでくださいね?」
小鳥「………」
P「あっ……」
P「すみません。音無さんはもう覚悟を決めているんですよね。それなのに俺……」
小鳥「……ありがとうございます、プロデューサーさん」
小鳥「でも心配いりませんよ。私は一人でも戦えますから」ニコッ
P「………」
小鳥「それに、みんなと戦うのが楽しみな気持ちもあるのも確かです」
小鳥「みんながどれだけ強くなったのか。それに対して私はどこまでやれるのか。ちゃんとみんなを楽しませることができるのか」
小鳥「長い間待ってた出番がようやく巡ってきたんですもの。私、張り切っちゃいますからねっ!」
P「音無さん……」
535 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/11/29(火) 18:12:03.86 ID:17JM/YY8O
P「あの、俺……」
P「この物語が今までゲームの通りに進まなかったのは、俺っていう不純物がこの世界に混ざってしまったからだとずっと思っていました」
P「でも、違ったんです」
P「この世界に呼ばれたみんなは、勝手が分からないながらも試行錯誤してそれぞれが思う通りに行動した」
P「その結果が今なんです」
P「本当は俺の存在なんて関係なくて、本来の筋書きなんかも関係なくて」
P「最初からみんなの想いが同じ方向を向いていた。……ただ、それだけだったんですよ」
小鳥「プロデューサーさん……?」
P「正直、ここまで俺がみんなの役に立てたかどうかは分かりません」
P「でも、俺はあなたも含めて全員のことを応援しています」
小鳥「っ……!」
P「一緒に戦うことはできないけど、ちゃんと最後まで見届けたい」
P「だから、何もしてあげられませんけど、せめて音無さんの側にいたいって思っています」
小鳥「……ありがとうございます、プロデューサーさん」ニコッ
小鳥(あなたがこの世界へ来てくれて、本当に良かったです……)
小鳥「……あの、ところでプロデューサーさん?」
P「はい、何です音無さん?」
小鳥「えっと……」
小鳥(せっかく二人っきりなんだし、もう少しお近づきになりたいなー……なーんて)
小鳥「あ、あの」
小鳥「えっと、その……できれば、名前で……」
P「? 名前がどうしたんです?」
小鳥「……や、やっぱりなんでもないです」
P「?」
小鳥(……ダメ、言えないわ。私のこともみんなみたいに名前で呼んでほしいだなんて)
小鳥(あーあ……私ってなんて弱い女なんだろう)
536 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/28(水) 03:40:28.34 ID:ec0dlTo5O
1レスしかないからあれから続き来るかと1日1回は確認してるが来ないのな
537 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/30(金) 13:14:55.13 ID:QA3BFH4EO
すみません、いろいろ忙しくてこんな時期になっちゃいました
まだ待っててくれてる人がいるかはわかりませんが今日の夜投下します
538 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/12/30(金) 23:58:32.92 ID:4gchaJZ2O
ー 月の地下渓谷 B5F ー
プリンプリンセスたち「うふふふふ……!」ワラワラ
響「……ほんっとに、倒しても倒しても湧いてくるなぁ」
響「ま、でも、ラストダンジョンの敵があっさり倒せたら確かに物足りないもんな」
響「よーし、こうなったら全部倒してやるさー!」
響「いっくぞー!!」ダッ
ビュンッ…!
響「……ナンクル砲っ!!」バッ
ドゴオオオンッ!!
…ドサッ
プリンプリンセス1「」
響「もういっちょ!!」バッ
ドゴオオオンッ!!
プリンプリンセス2「」
プリンプリンセス3「っ! させませんわっ!」ダッ
響「ふふーん! 遅いぞっ!」ヒョイッ
響「……はっ!!」バッ
ドゴオオオン!!
響「い!!」バッ
ドゴオオオン!!
響「さー!!」バッ
ドゴオオオン!!
響「いっ!!」バッ
ドドドド…!!
ドゴオオオンッ!!!
ドサドサドサッ!!
プリンプリンセス3「」
プリンプリンセス4「」
プリンプリンセス5「」
プリンプリンセス6「」
プリンプリンセス7「」
プリンプリンセス8「」
539 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:01:39.73 ID:1Hr7ym9uO
…スタッ
響「……よし、半分以上は減らしたかな」
響「えへへ、自分、確実に強くなってるぞ!」
プリンプリンセス9「ちぃ……! すばしっこい……!」
プリンプリンセス10「それに、あの人間業とは思えない砲撃が厄介ですわね……」
プリンプリンセス11「ですが、今度はこちらのターンですわよ!」
プリンプリンセス12「覚悟なさいっ!」
響「余裕余裕! どんな攻撃だって避けてやるさー!」タンッ タンッ
プリンプリンセス12「いきますわよっ! ……王女の歌!!」
プリンプリンセスたち「ラララ〜〜♪」
響「えっ…………歌?」
ーー♪…
響「なーんだ、どんなすごい攻撃がくるかって期待して損したなー」
ーー♪…
響「そんな攻撃、痛くもかゆくもないぞ!」
ーー♪…
響「それじゃ、そろそろ反撃させてもらうからな!」ビシッ
ーードクンッ
響(!? ……な、なんだ?)
響(今、何か……)
響(……あ、あれ!? 身体が動かない……!)グッ
540 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:04:15.89 ID:1Hr7ym9uO
プリンプリンセス9「うふふっ♪ 思うように身動きが取れないでしょう?」
プリンプリンセス10「『王女の歌』を聴いた者は自由と意思を奪われ……」
プリンプリンセス11「死が訪れるまで、ダンスドールとして永遠に踊り続けるのです!」
プリンプリンセス12「形勢逆転、ですわねっ!」
響(う、うそ……でしょ……!)グッ
響(死ぬまでずっとって……!)ググッ
響(……あ……ダメだ、身体が、勝手……に……)
響「うがあああっ!!」タッ
タタンッ
響(うぅ……どうしよう……)
響(このままじゃホントに死ぬまで踊り続けることになっちゃうぞ……)
響(自分、ダンスは大好きだけど、踊り死になんて絶対にいやだっ……!)
響「っ……!」キュッ キュッ
プリンプリンセスたち「ラララ〜〜♪」
プリンプリンセス9(さあ、舞踏会の始まりですわよ!)
プリンプリンセス10(このドールは果たしていつまで耐えられるのでしょうね)
プリンプリンセス11(でも、焦ることはありませんわ)
プリンプリンセス12(だって、パーティは死ぬまで終わらないのですから!)
541 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:08:06.22 ID:1Hr7ym9uO
ー 月の地下渓谷 B2F ー
ベヒーモス「うおおおおっ!!」
ドドドドッ!!
真「はああああっ!!」ガシッ
ベヒーモス「……ふふっ……! アタイと力比べとは、面白い……!」ジリッ
真「へへっ……!」ググッ
ズザザッ…
ベヒーモス「……どうしたんだい? 本気を出すんじゃなかったのかい?」ズズッ
真「……くぅ〜……!」ググッ
真「さすがに純粋な力比べじゃ勝ち目は薄いか……!」
真「……それだったら!」タンッ
…フワッ
ベヒーモス「なっ!? あの態勢から跳んだだと!?」
真「……飛燕、龍神脚!!」
ビュンッ…
ズドオオンッ!!
ベヒーモス「……なんて蹴りだ……! だが、狙いは外れだ!」ダッ
…スタッ
真「……飛燕……」クルッ
真「旋風脚っ!!」
ブオッ…
ドゴォ!! バキィ!!
ベヒーモス「ぐっ……!」ザッ
真「……雷煌拳っ!!」バリッ
ズガガガガッ!!
ベヒーモス「……ぬぅ……!」ヨロッ
542 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:11:32.53 ID:1Hr7ym9uO
…スタッ
真「……ふぅ」
ベヒーモス「………」
真「君はさっき『最後に勝敗を分けるのは圧倒的なパワーだ』って言ったよね?」
真「ボクの故郷には、柔よく剛を制すって言葉があるんだ」
真「君の馬力は確かに滅茶苦茶だけど、普段から響の身のこなしを見ているボクには、君の動きが速いとは感じられない」
ベヒーモス「………」
真「ボクの動きに、ついて来られるかな?」タンッ
ベヒーモス「!」
…ビュンッ!
ベヒーモス「……ふっ!」ダッ
真「……遅いっ!」
…シュタッ
真「……暫烈拳っ!!」
ドゴゴゴゴ…!
真「……破っ!!」ブンッ
ドゴォッ!!
ベヒーモス「っ……ぐ……」ザッ
543 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:14:23.04 ID:1Hr7ym9uO
真「へへっ! どう? 確かに戦いにはパワーも重要だけど、身のこなしだってもちろん無くてはならない要素だ」
真「ボクは、バランスが大切だって思うんだ」
ベヒーモス「……ふふっ」
ベヒーモス「このアタイの身体に傷を付けられる人間なんて今までいなかった」
ベヒーモス「あんたの技は本当に大したもんだよ」
ベヒーモス「……だが、それが全力なのかい?」
真「!」
ベヒーモス「身のこなし……か」
…ザッ
真(ん……? また突進かな?)
真(あいつの突進スピードはもう分かった。響ほどは速く動けないけど、あれくらいボクだって躱せる!)
…ジリッ
ベヒーモス「…………はっ!!」ダッ
ブワッ…
真「えっ、跳ん……!?」
ベヒーモス「はあっ!!」ブンッ
ブオオオオッ!!
真「! 空中から衝撃波!!」
真(予想外で反応が遅れた! 避けられない!)
真「くそっ」グッ
ドゴオオオオオオンッ!!
真「……くっ……!」
ベヒーモス「ふんっ!!」ブンッ
ザシュッ!!
真「うあっ!!」ヨロッ
…ザッ
ベヒーモス「はあっ!!」ブンッ
真「っ……!」タンッ
クルンッ…スタッ
544 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:17:44.79 ID:1Hr7ym9uO
ベヒーモス「何も突進だけがアタイの武器じゃない」
ベヒーモス「この爪も角も、そこいらの剣や槍なんかに遅れは取らないように鍛えてある」
真(……まさかあんな巨体であんなに軽やかに跳ぶなんて思ってなかった)
真(油断しちゃったなぁ)
真(「柔よく剛を制す」なんて偉そうに言った自分が恥ずかしいよ……)
真「でも、確実に以前戦った時より成長してるよね? 君も修行したのかい?」
ベヒーモス「この動きは、コトリ様の『だんすれっすん』で身につけたのさ」
真「だ、ダンスレッスン?」
ベヒーモス「ああ。あいどるには必要不可欠なものなんだろう?」
真「そ、それはまあ、そうだけど……」
真(よく分からないけど、小鳥さんはやっぱりただボクたちを待ってるだけじゃなかったってことか)
真(これもボクたちを楽しませるために考えたこと……なのかな?)
真(……へへっ。小鳥さん、超えてみせますよ。あなたが用意した試練!)
ベヒーモス「さあ、見せてやるよ。れっすんで鍛えたアタイの実力を!」
真「……望むところだっ!」グッ
545 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:23:04.85 ID:1Hr7ym9uO
ー 月の地下渓谷 B4F 内部 ー
…ゴオオオォォォオオッ!!
銀竜「……く……!」
金竜「……ぬぅ……!」
亜美「よしっ!」グッ
亜美「んっふっふ〜! どうよ、亜美の『鳳翼天翔』は! びっくりしたっしょ?」
金竜「……炎を不死鳥に変えるとは、見事なり……!」
金竜「だが、貴様が不死鳥で戦うというのならば、我は天翔ける竜となりて貴様を喰らってやろうぞ!」
銀竜「しかし兄者、我らは既に竜であるぞ!」
金竜「む、そうであったな!」
亜美(天然さんかな?)
銀竜「しかし……」
銀竜「形が変わったとはいえ、先程の技の中身はファイガ二発分に変わりはない。我ら兄弟が耐えられぬ威力ではないぞ!」
亜美「ん……なかなかスルドイじゃん」
亜美「確かに銀ぴょんの言うとおりだよ。ファイガ二発じゃちょっとハデさが足りなかったかもしんないね」
亜美「だったら……」ザッ
亜美「……もうワンランク上、いっとく?」ニヤリ
銀竜「……なに?」
金竜「更に上だと……?」
546 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:26:42.52 ID:1Hr7ym9uO
亜美「ねえ、その前にちょっとエーテル飲んでもいい?」
銀竜「魔力を回復させるのか。……兄者、どうする?」
金竜「ここで叩いても面白くあるまい。あやつの技を全て受けきった上で倒す。その方が箔が付くというものだ」
銀竜「流石は兄者、格の違いを見せつけるのだな!」
銀竜「……ということだ。子供よ、好きにするが良い」
亜美「んもー、子供じゃなくて亜美だよ! でもオッケーしてくれてありがと!」
亜美「えーっと……」ゴソゴソ
亜美(……あれっ? エーテルもうこれだけしかないじゃん。いつの間に使ったんだっけ?)
亜美(これじゃあと三回……ううん、二回くらいで勝負を決めないとダメっぽいよ)
亜美「んく、んく……」
亜美「……ふぅ。MP回復かんりょー!」
亜美「そんじゃ行っくよー!」
金竜「来い!」
亜美「……ブリザガ!」パリッ…
銀竜「今度は冷気か……!」
亜美「………………×3!!」パリパリパリッ
金竜「! 今度は三つ同時に!」
亜美「マイナス二百……えーと何度だっけ? 忘れたけど、接待零度の世界、タイケンさせてあげるよ!」
亜美「くらえー!! オーロラ・エクスキューションッ!!」バッ
キラキラキラ…
金竜「……冷気が、輝いて……! これが接待零度とやらか!」
銀竜「兄者、絶対零度だ!」
コオオォォ…!!
パリパリッ…シャキィィンッ!!
547 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:32:55.58 ID:1Hr7ym9uO
亜美「……ふぃ〜、同時に三つはちょっとしんどかったかも」
亜美「でも……」チラッ
銀竜「」
亜美「銀ぴょんはカチンコチンだね。これで一体ゲキハ!」
亜美「あとは金ぴょんを倒すだけっぽいよ!」
…ビュンッ!! ドガッ!!
亜美「ぐえっ!?」ヨロッ
ドサッ
金竜「……あまり舐めてもらっては困るな。我らとてコトリ親衛隊の端くれ、この程度の子供騙しでやられはせぬっ!」
亜美「な、なんでピンピンしてんのさー!? まさか亜美のオーロラ・エクスキューション、全然効かなかったの?」
金竜「……我が弟が盾になったのだ」チラッ
金竜「……行くぞ!」フワッ
亜美「ぐぬぬ〜! ひきょーだよ〜!」
金竜「! 卑怯……だと?」ピタッ
548 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:35:51.63 ID:1Hr7ym9uO
亜美「そーだよひきょー者ー! 弟を盾にするなんてカワイソーじゃんか!」
亜美「兄としてはずかしくないのかー!」ビシッ
金竜「ぬ……! た、戦いに情など無用なのだ! それがたとえ血を分けた弟であってもな」
亜美「そんなのおかしーよ!」
亜美「亜美にもきょうだいはいるけど、チョー仲良しだもん」
亜美「たまにケンカしちゃったりもするけど、すぐに仲直りするし」
亜美「もしも亜美がピンチになったとしても、真美を盾にして亜美だけ生きのびるなんてことだけは……ゼッタイにしない。したくない!」
亜美「だって、それがきょうだいの絆ってやつだと思うから!」
金竜「ぐ……ぬぅ……!」
金竜「銀竜……我は……」
亜美「……よし、今がチャンス!」
亜美「サンダガ! ……×3」バリバリバリッ
金竜「あっ、貴様、ズルいぞ!」
亜美「我が光速の拳、受けてみよ!」
亜美「ライトニング・プラズマーー!!」
…キラーンッ!
ズガガガガッ…!
金竜「ぬおおおおーーっ!!」
ドゴオオオォォォオオンッ!!
549 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:39:32.98 ID:1Hr7ym9uO
ー 月の地下渓谷 B3F ー
雪歩「えいっ! えいっ!」ブンッ
バキッ! ガキィン!
魔人兵「無駄だよ。君の得物ではこの装甲を貫くことはできない」
魔人兵「せめてオレのような兵器が無ければね」
魔人兵「……はっ!」
ガコンッ!
キュイィィン…ドゴオオオンッ!!
雪歩「ひぅっ!」
雪歩「……っ、ぜ、全然平気ですぅ!」
魔人兵「うーん……」
魔人兵「ビーム砲もレーザーもミサイルも全て通じない、か」
魔人兵「決め手を打てないのはこちらも同じみたいだね」
魔人兵「君の鎧がこれほどまでに堅牢だとは思わなかったよ」
雪歩「そ、そうです! アダマンアーマーはどんな攻撃だって防いじゃうんですぅ!」
雪歩(……小鳥さんの『メガフレア』だけは防げなかったけど)
雪歩(でも、それはきっと小鳥さんがものすごく強いから、だよね?)
雪歩(だから大丈夫なはず。今はなんとかしてあの魔物さんの装甲を破壊する方法を考えないと)
…パラッ
魔人兵「……うん?」
魔人兵(今の……)
550 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:42:55.30 ID:1Hr7ym9uO
雪歩「い、行きますぅ!」チャキッ
タタタタ…
魔人兵「また懲りずにスコップで殴打か。無駄だっていうのに」
雪歩「はああああっ!」
キラッ…!
魔人兵「! なんだ? スコップが光って……」
雪歩「……えーーいっ!!」ブンッ
バキィンッ!!
ポロッ…
魔人兵「……げっ、オレの装甲に傷が……」
雪歩「……や、やりましたぁ!」グッ
雪歩(成功して良かったぁ……『気』をスコップに纏わせる技)
雪歩(真ちゃんから『気』のことについて少しだけ教えてもらってたけど、実際にちゃんと理論を理解して実践するのは初めてのことだったもんね)
雪歩(これも、ククロさんに鍛えてもらったスコップと真ちゃんの教えがあったからこそだよ)
雪歩(ありがとう、二人とも)
魔人兵「先手を取られちゃったか。この戦い、君が一歩リードってところだね」
雪歩「えへへ……」
魔人兵「でも、喜ぶのはまだ早いんじゃないかな? こちらの装甲に傷が付いたとはいえ、ほんの少し欠けただけだ。かすり傷に過ぎない」
魔人兵(それに引き換え……)チラッ
雪歩「そ、そうでした……。でも、この調子で行っちゃいますぅ!」
魔人兵(気づいていないのか? 自分の鎧にも傷が付いているってことに)
魔人兵(あの傷に合わせてオレの最大の砲撃を加えれば、おそらく……)
魔人兵(……よし、試してみるか)
551 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:47:02.27 ID:1Hr7ym9uO
魔人兵「悪いね、ちょっとだけ本気を出してみることにするよ」
ウイィィン…ガコンッ!
雪歩「!」
雪歩(すごく大きな砲台が……)
雪歩(な、なんだろう、なにか嫌な予感がする……)
雪歩(気をつけなきゃ!)グッ
魔人兵「さあ、行くぞ!」
雪歩「っ!」ビクッ
魔人兵「……っと、その前に」チャキッ
キュイィィン…ドゴオオオンッ!!
雪歩「えっ!? じ、地面が……!」
魔人兵「君は穴掘りが得意みたいだからね。地中に逃げられないように少々地面を抉らせてもらったよ」
雪歩「そ、そんなぁ……」
雪歩(で、でも、大丈夫だよね、きっと。だってアダマンアーマーは今までずっと私を守ってくれたもん)
魔人兵「さて、それじゃ今度こそ」
ゴオオオォォ…
雪歩「あわわわわ……! な、なんだかものすごいエネルギーが集まってますぅ!」
魔人兵「これで君の装甲を突破出来なかったら……オレの負けでいい」
魔人兵「…………波動砲!!」
ゴオオオォォ…
雪歩「ひぃっ!」
………………カッ!!
ドゴオオオオォォォオオォオンッ…!!!
552 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:49:43.48 ID:1Hr7ym9uO
雪歩「………」
雪歩「……うぅ……」
雪歩「けほっ、けほっ……」
雪歩「わ、私……! そ、そうだ、アダマンアーマー!」ゴソゴソ
雪歩「……ほっ、良かったぁ。壊れてないみたい」
魔人兵「……果たして本当にそうかな?」
雪歩「えっ」
…パキッ
雪歩「あ、あれ……?」
パキパキッ…
雪歩「う、ウソ……」
パキパキパキッ…
…………バキィンッ!!
ボロボロ…
雪歩「そ、そんな、アダマンアーマーが……」
雪歩(壊されちゃいましたぁ……)
魔人兵「君は気付かなかったようだけど、オレと戦う前から君の鎧にはすでに傷が付いていた」
魔人兵「よほど強力な攻撃を受けたんだろうね。大きなヒビが入っていたよ」
雪歩「そ、そうだったんですか……?」
雪歩(全然気付かなかったよぅ……)
雪歩(も、もしかして、昨日小鳥さんのメガフレアを受けちゃったからかな……?)
魔人兵「この戦い、どうやらこちらの勝ちが見えてきたようだ」
魔人兵「あいどるの真の実力とやらを見てみたかった気もするけど、まあ、それはコトリ様の過大評価だったのかもしれないしな」
魔人兵「……あとは、仕事を遂行するだけだ」
ウィーン…ガコンッ!
魔人兵「可哀想だけど、覚悟を決めてもらうよ?」
雪歩「ど、ど、どうしようっ……!」ビクビク
553 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:54:04.72 ID:1Hr7ym9uO
ー 月の地下渓谷 B1F ー
レッドドラゴン「熱線っ!!」
ドゴオオンッ!!
…シュンッ
あずさ「ブリザガ〜」
コオォォ…シャキーン!!
レッドドラゴン「うおっ!? 後ろかよ!」カチコチーン
レッドドラゴン「……んのやろっ!!」メキメキ
…パリンッ!
あずさ「あ、あらあら……強引に氷を割ってしまうなんて……」
レッドドラゴン「うりゃっ!!」ブンッ
あずさ「きゃっ……」ヨロッ
レッドドラゴン「もらったァ!!」ブンッ
ドゴォン!!
レッドドラゴン「………」
レッドドラゴン「……ちっ、またテレポで逃げやがったな」
あずさ「……ふぅ、危なかったわ〜」
あずさ(あの魔物さんはとても熱いから、きっと氷が弱点だと思うのだけど〜)
あずさ(ブリザガもあまり効果が無いみたい)
あずさ(やっぱり『あの魔法』を使わないと勝てないような気がするわ〜)
あずさ(う〜ん、でも……詠唱呪文どころか名前すら思い出せないのよねぇ)
あずさ(確かそんなに長い名前ではなかったような気がしたんだけど……)
あずさ(少し落ち着いて考えてみましょう。そうすれば必ず思い出せるわ、きっと)
554 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:56:39.58 ID:1Hr7ym9uO
あずさ(え〜っと、最初の文字は〜)
あずさ(そう、確か『メ』だったかしら〜?)
あずさ(メ、メ……)
あずさ(……メガネ?)
あずさ(……何か違うわねぇ)
あずさ(メ、メ……)
あずさ(……メザシ?)
あずさ(お酒のおつまみに良さそうだけど、これでもない気がするわ〜)
あずさ(メ、メ……)
あずさ(…………メオト?)
あずさ(………)
あずさ(う〜ん? 少しだけ近いような……)
あずさ(でも……)
あずさ(うふふ、なんだかいい響きねぇ♪)
あずさ(私もいつかはステキな人と……)
…ッドゴオオオン!!!
あずさ「きゃっ……!」ヨロッ
レッドドラゴン「よそ見してんじゃねーぞコラァ! 戦う気あんのかよ!」
あずさ「そ、そうだったわ。今は戦いの最中なのよね」
…ニョキニョキッ
555 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 01:00:06.88 ID:1Hr7ym9uO
レッドドラゴン「……へっ、何事もなかったかのように再生しやがる……」
レッドドラゴン「だが、そんな戦い方がいつまでも続けられると思うなよな!」
レッドドラゴン「あんたが魔道士で魔法を主体として戦う限り、いつかは魔力の底が見えてくるんだ」
あずさ(……確かにそうよね。このまま移動のたびにテレポを使い続けても、魔力の消耗が激しいわ)
レッドドラゴン「なるべく魔力を節約しつつ、さっき撃ちそこなった魔法を思い出す」
レッドドラゴン「あんたはそう考えるんだろうなあ?」
あずさ(あらあら、バレバレなのねぇ)
あずさ(というか、あの魔物さんはなんとなく考えるよりも先に手が出るタイプかなって思っていたけど……結構頭が回るみたいね)
レッドドラゴン「……おい、あんた今失礼なこと考えなかったか?」
あずさ「き、気のせいですよ〜」
レッドドラゴン「……とにかく、忘れた魔法を思い出すんならさっさとしろよな!」
レッドドラゴン「オレ様はそこまで気の長い方でもねえ」
レッドドラゴン「早く思い出さねえと、消しちまうぞ!」
あずさ「それは困りますね〜」
あずさ(あまり悠長に構えていられないかもしれないわね)
あずさ(なるべく早めに思い出さないと)
556 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 01:03:05.00 ID:1Hr7ym9uO
レッドドラゴン「そんじゃバトル再開すんぞ!」
レッドドラゴン「うおおおお!」
レッドドラゴン「……熱線っ!」
ゴオオオオッ…!
あずさ「!」
あずさ(あれをテレポ無しで反射神経で避けるのは、私じゃほぼ無理だわ)
あずさ(だったら肉を斬らせて……)
…ドゴオオオンッ!!
あずさ「ううっ……」ヨロッ
レッドドラゴン「……お? 避けない? 瞬間移動はもうやめたのか?」
レッドドラゴン「だったら畳み掛けてやんぜっ!!」
ドドドドドド…
あずさ「……スロウ!」
カタカタ…シュルンッ!
レッドドラゴン「ぬおっ!」ノロ〜
あずさ「……バイオ!」
ブニューン!!
レッドドラゴン「痛ってえ!! クソっ!」
あずさ(意外に状態異常の魔法が効くみたい。これならテレポ無しでもなんとか戦えそうね)
…ニョキニョキ
レッドドラゴン「やってくれんじゃねーか! さすがはオレ様がライバルと認めただけはあるな!」
あずさ「あらあら、それは光栄です♪」ニコッ
レッドドラゴン「!」ドキッ
レッドドラゴン「……ちっ、だからって手加減なんかしねーからな!」
557 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 01:06:37.34 ID:1Hr7ym9uO
ドゴォン! ドカァン!
あずさ(……そもそも、なぜ私は忘れてしまったのかしら)
あずさ(試練の山で確かに覚えて、一度使ったことだってあるっていうのに)
あずさ(……命と引き換えに、だけれども)
あずさ(やっぱり私、トラウマになってしまっているの?)
あずさ(命を落とす原因となった魔法だから……?)
レッドドラゴン「……なあ、あんた」
あずさ「はい、あの、私、あずさっていいます〜」
レッドドラゴン「……アズサ。ひとつ気になったことがあんだけどよ」
あずさ「はい、なんでしょう?」
レッドドラゴン「あんた、本当にゾンビなのか?」
あずさ「え〜と……たぶん」
あずさ「私、実は一度死んでいるんです。その時にゾンビのお友達が助けてくれて、それで……」
レッドドラゴン「……ふーん。転生ってやつか? でも、それにしちゃ全然ゾンビらしく見えねーんだよな」
あずさ「あの〜、それはどういうことですか?」
レッドドラゴン「ゾンビってのはよ、もっとこう、腐ってて体も崩れかけててグチャ味噌で……」
レッドドラゴン「うまく言えねーけど、あんたみてーにキレイなゾンビなんて今まで見たことねーんだよ」
あずさ「あ、あら〜……キレイだなんてそんな〜……///」
レッドドラゴン「あっ……///」
レッドドラゴン「い、今のは違うぞ! 別にあんたが美人でオレ様の好みのタイプだとかそういうつもりで言ったんじゃねーからなっ!!」
あずさ「うふふ♪」ニッコリ
レッドドラゴン「くそぉ……余計なことを言っちまったぜ……」
レッドドラゴン「と、とにかくだ! 勝負は勝負、きっちりカタは付けるからなっ!」ビシッ
あずさ「は〜い♪」ルンルン
558 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/31(土) 01:29:50.02 ID:VHqd7W40O
金竜銀竜の漫才が面白いな
559 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/26(木) 19:41:26.81 ID:3PjUUPrA0
まだか
560 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/09(木) 21:49:24.19 ID:dryvj0/kO
二ヶ月たっちまうぞ
561 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/02/12(日) 21:00:13.55 ID:2zaNk/pmO
ー 月の地下渓谷 B6F ー
伊織「……ふっ!」ブンッ
ザシュッ!!
リルマーダー「ぐっ……このっ! サンダガっ!!」
ズガガガピシャーン!!
伊織「……遅い!」
伊織「はっ!」ブンッ
ズバッ!!
リルマーダー「ちくしょう……!」ヨロッ
伊織「あら? どうしたのかしら? 私の動きについて来れないみたいだけど」
伊織「私に見せてくれるんじゃなかった? 『王の力』ってやつを」
リルマーダー「………」
リルマーダー「けっ、わかってるよ。今から見せてやる。後悔すんじゃねーぞ!」
リルマーダー「……!」ゴゴゴ
伊織「!」
伊織(空気が変わった……)
伊織(魔力を集中させているってことは、アイツの『王の力』とやらは魔法なのかしら)
伊織(ま、どんな魔法でも当たらなきゃいいことよね)
562 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:02:04.62 ID:2zaNk/pmO
リルマーダー「……汝、真理の囁きにのみ耳を傾けよ」
リルマーダー「万物姿形隠すこと、あたはず!」
リルマーダー「…………ライブラ!」バッ
伊織「!」
伊織(……聞いたことない魔法ね。とにかく魔法が発動するより速く射程圏外へ!)
ダッ…
ピピピッ…
ピコーン!
伊織「……なっ!?」ピタッ
伊織「なによこれ……どういうこと?」
『リルマーダー
7650/12000 弱点:雷』
伊織(アイツの頭の上に文字が……)
563 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:04:29.33 ID:2zaNk/pmO
リルマーダー「げっ、間違えた! これじゃオイラの情報が筒抜けじゃねーか!」
伊織(対象の情報を知る魔法……ってところかしら? そういうのもあるのね)
伊織(アイツはそれを間違えて自分に使ったってこと? 間抜けにもほどがあるわ)
伊織(ま、なんにせよ重要なのは、『アイツの弱点が雷』って部分)
リルマーダー「今度こそっ! ライブラっ!」バッ
ピピピッ…
伊織「! 今度は私に!」
伊織「ちっ!」ダッ
タタタタ
リルマーダー「ムダだぜ! どうやってもライブラからは逃げられやしねー!」
…ピコーン!
『イオリ
誕生日:5月5日 血液型:AB 星座:牡牛座
身長:153cm 体重:40kg
スリーサイズ:B77 W54 H79
趣味:海外旅行、食べ歩き』
伊織「」
564 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:08:14.65 ID:2zaNk/pmO
伊織「こっ……!」
伊織「この変態! de変態! EL変態! 変態大人ー!」カァァ
伊織「なに乙女の秘密を勝手に暴いてくれてんのよっ!」ビシッ
リルマーダー「へー、お前イオリっていうのかー。……変な名前」
伊織「うっさい!! アンタほどじゃないわよこのエロガキっ!!」
リルマーダー「なんだよー、イオリだってガキじゃんかー。B77ってあんまり大っきくないよな?」
ズガガガガーーンッ!!
リルマーダー「ぐええぇっ!?」ヨロッ
伊織「……アンタ、私を怒らせたわね……!」バリッ
伊織「もう手加減なんてしてあげないんだからっ!」
リルマーダー「ちょ、ちょっと待」
伊織「問答無用! 雷迅っ!!」バッ
ズガガドゴオオオォォオオンッ!!
リルマーダー「いぎゃああーー!!」
565 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:10:32.91 ID:2zaNk/pmO
伊織「……ったく、なんでこの世界は変態ばっかりなのよ! これじゃ現実と大して変わらないじゃない!」
伊織「ま、これでアイツも立ち上がれないでしょ。二回も弱点を突いたんだし」チラッ
リルマーダー「」
伊織「バカバカしい戦いだったわ。さっさとやよいを追いかけないと」クルッ
スタスタ
リルマーダー「……待てよ……。オイラまだ参ったって言ってないぞ……」ヨロッ
伊織「……しぶといわね。さっさとやられちゃいなさいよ!」
伊織「雷迅っ!」バッ
ズガガドゴオオオォォオオンッ!!
リルマーダー「ぐああああっ!!」
リルマーダー「……ぐっ……」フラッ
伊織「ま、まだ倒れないの? アンタの弱点は雷のはずじゃない!」
リルマーダー「……ああ、そうだぜ。確かにオイラの弱点は雷だ」
リルマーダー「でも……」
リルマーダー「同時に雷はオイラの得意とする属性でもあるっ……!」バリッ
リルマーダー「うあぁぁああああっ!!」バリバリッ
伊織「!」
伊織(ウソ……! アイツ、まさか帯電してる……?)
566 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:12:40.83 ID:2zaNk/pmO
リルマーダー「……三発だ」
伊織「……は?」
リルマーダー「お前の放った雷は三発。だからそれを……」バリバリッ
リルマーダー「倍返ししてやるぜっ!!」ビリビリッ
ゴゴゴゴ…!
伊織「な、なによこの魔力……!」
伊織(貴音や美希と同レベル……いえ、今この瞬間に限ってはそれ以上……!)
リルマーダー「くらいやがれ! 6倍サンダガっ!!」バッ
伊織(ま、まずいわ……!)
ゴゴゴゴ…
ズガガガガーーン!!
ドゴゴゴオオォォオオンッッ!!!
伊織「……ぅ……ぁ……!」ヨロッ
ドサッ
567 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:15:56.75 ID:2zaNk/pmO
伊織「ぐ……っ」
伊織(なんてデタラメな威力っ……)
伊織(倍返し……。自分のサンダガに私の雷迅の分も上乗せして返してきたってわけ……?)
伊織(まさか、最初からそれが狙い?)
伊織(ライブラって魔法を自分に使ったのも……)
伊織(……そうよ、考えてみれば自分から弱点をさらけ出すなんて不自然じゃない……)
リルマーダー「へへっ……見たか、これが王の力だっ!」ビシッ
リルマーダー「さーてと、あとはじっくりとどめを刺してやるからなっ!」
伊織(迂闊……だった……!)
伊織(この状況、どうにかしなきゃ……!)
568 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:21:38.58 ID:2zaNk/pmO
ー 月の地下渓谷 B7F ー
ブルードラゴン「……ふぬっ!」ブンッ
やよい「はわっ!」ダッ
ドゴオオンッ!!
…スタッ
やよい「しるふちゃんっ!」バッ
シルフ「……風の囁き!」
ビュオオオ…!!
ブルードラゴン「……ふむ、心地よい風じゃ」
シルフ「わ、私の風が効かないなんて、化け物ですね……!」
やよい「うぅ、さすがどらごんさんです……」
ブルードラゴン「召喚士よ。お前の従える幻獣たちはそのほとんどが属性を持つ。故にほぼ全ての属性攻撃を弾くワシとは相性が悪い」
ブルードラゴン「ワシに傷を負わせる可能性があるのは、さっき喚び出したアスラくらいじゃろう」
ブルードラゴン「はっきり言って状況はお前に不利じゃ。それはお前自身も分かっているはず。ならばなぜ足掻く?」
やよい「………」
ブルードラゴン「最初に言ったな。『このカードはハズレ』だと。つまりそういうことじゃ」
ブルードラゴン「お前は何も出来ず、コトリの元へ辿り着くこともなくここで果てる」
ブルードラゴン「もう無駄なことはするな。子供が苦しむ様は見るに耐えぬ。せめて一撃で楽にしてやろう……」
ブルードラゴン「……ふんっ!」ブンッ
やよい「! 高木社長!」バッ
…ガキィンッ!!
569 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:24:33.81 ID:2zaNk/pmO
高木「……ウチのアイドルを傷付けるのは困るな。しかもこんなに小さな娘を」ググッ
ブルードラゴン「……幻獣騎士オーディンか。お前に何が出来る?」ググッ
高木「私の力はちっぽけかもしれない。だが、ちっぽけだからこそ他の誰かと力を合わせて道を切り開く。そういう生き方もあるとは思わないかね?」
ブルードラゴン「……ふ、知ったような口を」
ブルードラゴン「目の前にある結果こそが全てだ。そこの召喚士の為に力を振るうことの出来ぬお前は、ただの木偶に過ぎぬ!」ブンッ
高木「く……すまない、高槻君。私一人の力では……」
やよい「だいじょーぶです、社長。わたし、社長もみんなも大好きですから!」
やよい「みーんな、いっしょです!」
高木「高槻君……」
570 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:25:46.75 ID:2zaNk/pmO
ブルードラゴン「何故そのように楽観的に考えられるのだ? お前は今、死の淵に立たされているのだぞ?」
ブルードラゴン「お前には恐怖はないのか?」
やよい「こわくなんてないです。だってわたしには、みんながいてくれますから」
やよい「……黒井社長!」バッ
黒井「高槻やよいに歯向かう馬鹿はお前か。私が引導を渡してやろう!」
黒井「……大海衝!」
ザァァァ…!
ブルードラゴン「無駄だというのが分からんのか……。津波など、ワシにとっては子供の水遊びと変わらぬ」
ザパアアァァァァンッ!!
ブルードラゴン「……気は済んだか?」
黒井「バカな……。この私の津波をものともしないだと……!?」
571 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:28:56.39 ID:2zaNk/pmO
ブルードラゴン「さあ、もう万策尽きたであろう? 大人しくあの世へと旅立つのじゃ」スッ
やよい「……ごめんなさい、それはできません」ペコリ
ブルードラゴン「……何故じゃ。何故そこまで生に執着する?」
ブルードラゴン「生きることの辛さを知らぬ若さ故か?」
やよい「待ってる人がいるからです」
ブルードラゴン「………」
やよい「わたしには、待っててくれる人がいて、大切な人たちといっしょにめざす夢があるからです」
やよい「そのためには、小鳥さんのところへ行かなくちゃなんですっ!」
やよい「だから、わたしは死ねません」
ブルードラゴン「……現を抜かすのは、やはり若さの成せる業か」
ブルードラゴン「じゃが、その夢もちっぽけだったと気づく時がくる」
ブルードラゴン「その時にお前は、大きな絶望と失望を抱えることになる」
ブルードラゴン「世界とは、生とはなんと虚ろで意味の無いものだったのかと嘆く日が来るのじゃ」
やよい「………」
やよい「もし、そうなったとしても」
やよい「わたしには家族と……春香さんたちがいます!」
やよい「わたしが生きるいみは、それでじゅうぶんかなーって!」
ブルードラゴン「……!」
572 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:32:33.90 ID:2zaNk/pmO
ブルードラゴン「哀れな娘よ。お前が生の虚しさに気づく前に、ワシが幕を引いてやる……!」ブンッ
やよい「!」
やよい「……お母さんっ!」バッ
ミストドラゴン「……ああ、ヤヨイ。あなたはなんと健気なのでしょうか……」
ミストドラゴン「この子の尊い願い、誰にも邪魔はさせませんっ!」
ミストドラゴン「……ミストブレス!」
シュウゥゥ…! キラキラ…!
ブルードラゴン「! また目くらましか……!」
ブルードラゴン「じゃが、そのような一時しのぎなどなんの意味もない。死を僅かに遅らせただけじゃ」
やよい「いーえ、これでいいんです」
やよい「……これで『ぜんいん』です。じゅんびはととのいました!」
ブルードラゴン「……なんだと?」
やよい「……『みなさん』! 出てきてくださいっ!!」バッ
573 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:36:49.77 ID:2zaNk/pmO
イフリート「うおおおおお!! ヤヨイぃぃ!!!」ボオォ
シヴァ「ヤヨイさん……あなたは必ず守る……!」コォォ
ラムウ「幻獣全てを一度に召喚とは……。ヤヨイさん、やはりお前さんは誰よりも光に選ばれし者なんじゃな……」バリッ
翔太「僕たちもいるよー!」フリフリ
北斗「チャオ☆」シュタッ
冬馬「高槻、俺たちに任せろ!」グッ
高木「幻獣たちが一度に全員集合とは、なんとも壮観だねぇ」
黒井「フン……。同窓会じゃあるまいし、さっさとあの化け物を倒すぞ」
シルフ「きゃっ、なんだかかっこいいおじ様っ」ポッ
やよい「みなさんっ!」
ブルードラゴン(あれだけ続けて召喚魔法を使ったあとで8体もの幻獣を一度に喚び出すとは……なんたる魔力……!)
ブルードラゴン(ヤツの魔力は底なしか……?)
574 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:38:30.97 ID:2zaNk/pmO
ミストドラゴン「私のかわいいヤヨイ……。ご覧なさい」
ミストドラゴン「皆あなたを慕い、あなたを案じ、あなたとともに生きることを選んだ」
ミストドラゴン「そこには主従関係を超えた強い絆があります」
ミストドラゴン「これが、これこそが……あなたの進んで来た結果なのです」
やよい「お母さん……」
ミストドラゴン「さあ、ヤヨイ。あなたの選んだ答えを、魔物に見せておあげなさい」
やよい「はいっ!」
575 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:40:57.05 ID:2zaNk/pmO
やよい「どらごんさん」
ブルードラゴン「………」
やよい「わたし、まだまだ子どもで、世界のこととか生きるつらさとかぜんぜんわかりませんけど……」
やよい「わたしにとっての安らぎは、死ぬことなんかじゃなくて、生きることです」
やよい「みーんな笑顔ではっぴーでいられることなんですっ!」
ブルードラゴン「……幻獣たちの力でワシを攻撃せぬのか?」
やよい「こうげきなんてしません。わたしはただ、どらごんさんにも知ってほしいだけですから」
やよい「じぶんを待っててくれる人がいるってことを!」
ブルードラゴン「……そう、か」
やよい「だから、どらごんさんも仲間と生き」
ブルードラゴン「やはり、お前は分かっておらぬようだな」
やよい「…………えっ」
576 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:44:28.02 ID:2zaNk/pmO
ブルードラゴン「つまらぬ問答に付き合わせてすまなかった。もう、終わりにしよう」
やよい「あ、あのっ!」
ブルードラゴン「……さらばだ」
…ブオオオォォ!!
やよい「!」
翔太「や、やよいちゃんっ!」
北斗「行くぞ、冬馬!」
冬馬「てめぇ化け物っ!」ダッ
イフリート「や、ヤヨイっっ!!」ダッ
ラムウ「我らではジュピター殿の力になれぬ! ヤヨイさんを守るんじゃ!」
シヴァ「ヤヨイさんっ!!」
シルフ「吹雪くらい、私の風で散らしてあげます!」
シルフ「風の囁き!」
ビュオオオ…!!
ミストドラゴン「私にも手伝わせてください!」
ミストドラゴン「ミストブレス!」
シュウゥゥーー…! キラキラ…!
ブオオオォォォッ…!!
やよい「……ぁ……ぅ……」
高木「……ダメだ、向こうの吹雪の方が勢いが強い!」
高木「黒井、私たちも鬼ヶ島君たちに続こう!」
黒井「………」
高木「……おい、黒井!」
黒井「……なんだ、これは……」
577 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:47:04.27 ID:2zaNk/pmO
冬馬「てめぇ!! 吹雪を止めやがれ!!」
冬馬「うおおおおおおお!!」
ズドドドドド…!!
ブルードラゴン「ぐ、が……っ!」
高木「……斬鉄剣っ!!」
ズパァンッーー!!
ブルードラゴン「ぬ……ぅ!」
ブルードラゴン「む、無駄だ……。もう、手遅れだ……」
冬馬「あぁ!?」
やよい「ぁ……ぅ……」ガタガタ
イフリート「うおおおおおーーーー!!」ボオォ
シヴァ「イフリート、全然足りないわ! もっと火力を上げなさい!」
イフリート「くそおおおおーーーー!!」ゴオオ
ラムウ「ヤヨイさん、逝くな……!」ダキッ
やよい「……ぅぅ……」ブルブル
高木「高槻君っ! くそっ!」
黒井「………」
黒井(高槻やよい……。死ぬのか……?)
578 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:48:28.71 ID:2zaNk/pmO
ブルードラゴン「ば、バラバラの、力を持った……お前たちでは……救えまい……」
ブルードラゴン「彼女は……安らぎの国へ旅立つのだ……」
冬馬「ふざけんなっ!!」ブンッ
ドゴオオォ!!
メキメキッ!
ブルードラゴン「……あ、ぐっ……」
ミストドラゴン「ああ、ヤヨイ、なぜ……なぜこのようなことに……!」ダキッ
翔太「北斗君、回復魔法!」
北斗「ケアルダ!」
シャララーン! キラキラキラ…!
やよい「……ぅぅ……」
北斗「くそっ、魔法がきいてないのか!?」
シルフ「気をしっかり持ちなさい! 私のご主人なんでしょう!? マコト様と一緒に無事に青き星へ帰るんでしょう!?」ユサユサ
やよい「……ぁ……」グッタリ
579 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:57:00.77 ID:2zaNk/pmO
やよい(わたしのこたえ……まちがってたんでしょうか……)
やよい(どらごんさんには……とどかなかったんでしょうか……)
「ーー! ーーー!」
「ーーーー!」
やよい(……うぅ……さむいです……)
やよい(……わたし……死んじゃうのかな……)
「ーーーー! ーーー!」
「ーーー!」
やよい(みなさんの声が、とおくなって……)
やよい(…………は……さ…ん……)
やよい(……い…りちゃ……)
やよい(………………)
やよい(…………)
やよい(……)
やよい「」カチコチーン
580 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 22:00:48.21 ID:2zaNk/pmO
ー 月の地下渓谷 B8F ー
月の女神「……やあっ!」ブンッ
千早「ふっ!」ガキィン
千早「……はっ!」ビュッ
月の女神「おっと!」ヒョイッ
月の女神「やあぁぁあああっ!」
ブンブンブンブンッ!!
千早「!?」
千早「くっ!」
ガキィン! キィン! パキィン!
…スタッ
月の女神「……ふぅ」
月の女神「なかなかやるねー、私のぶん回しを防ぎきるなんて」
月の女神「うんうん、いいカンジ。もっともっと楽しもう!」
千早「………」ジリッ
月の女神(…………う〜ん)
581 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 22:02:10.56 ID:2zaNk/pmO
月の女神「ねえ、あなたの名前はなんていうの?」
千早「えっ?」
月の女神「ほら、まだ聞いてなかったからさ」
千早「はあ……」
千早(なんでいまさら名前を訊くの? というか魔物相手に名乗る必要なんてある?)
千早(まあ、訊かれたのに答えないのも失礼よね。名前くらいは……いいかしら)
千早「……如月千早、です」
月の女神「ふーん、チハヤっていうんだー。キレイな名前だね」
月の女神「私は月の女神。まあそう堅くならずに楽しくいこうよ!」ニコッ
582 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 22:04:10.77 ID:2zaNk/pmO
千早「何回も言ったけれど、私は別にあなたと馴れ合うつもりは……」
月の女神「えー、せっかくだから何事も楽しんだ方がいいと思うけどなー」
月の女神「おしゃべりもバトルも、楽しんだもの勝ちだよ?」
千早「おしゃべりはともかく、私にバトルを楽しむ趣味はないわ」
月の女神「ふーん……チハヤはマジメだねー」
月の女神「じゃあさ、趣味は? 好きな食べものは? 休みの日とか何してるの?」
千早「あの、私、あまり時間は無いのだけど。早くあなたを倒して仲間のところへ向かわないといけないの」
月の女神「ノリ悪いよチハヤー。せっかくこうして出会えたんだから少しくらいおしゃべりしようよー」
千早「…………はぁ」
千早「趣味は歌うこと。好きな食べものはソフトクリーム。オフの日は、美術館に行ったりすることもあるわ」
千早「……これで満足?」
月の女神「わぁ、なんか私の知らない言葉ばっかり!」
月の女神「ねえねえ、そふとくりーむってなーに? ビジュツカンって?」
千早(いちいち説明しなければならないのかしら……)
月の女神「わくわく」じーっ
千早(話さないと戦ってはくれなさそうね)
583 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 22:05:57.16 ID:2zaNk/pmO
千早「ソフトクリームというのは……そうね、甘くてふわふわで、食べるととても幸せな気持ちになれる、良いものよ」
月の女神「甘くてふわふわかぁ……。いいなぁ、私も食べてみたい!」
月の女神「それでそれで? ビジュツカンっていうのは?」
千早「絵画や彫刻などの美術品を展示している場所よ。そこでいろいろな作品を見て、アーティストとしての感性を磨いているの。そういうことが、歌の表現力を高めることにも繋がると思うから」
月の女神「えっと、よく分かんないけど、チハヤはあーてぃすとっていうのになりたいの? あいどるじゃなくて?」
千早「それは……」
千早「私にとって、アイドルというのはただの通過点に過ぎないから。いずれはアイドルを辞めて、ひとりの歌い手として活動していきたいと思っているの」
月の女神「あ、知ってる! 歌を歌うのは吟遊詩人っていうんでしょ? 青き星にいるって聞いたことあるよ!」
千早「吟遊詩人とは少し違うかもしれないけれど……」
月の女神「そっかぁ、チハヤは歌が好きなんだねー」
月の女神「なんか、チハヤのことを少し知ることができて嬉しいな!」ニコッ
千早(本当に嬉しそうな顔をするのね)
月の女神「……私ってさ、生まれてからずーっと月で過ごしてきたから、この月以外の世界のことは、なーんにも知らないんだぁ」
月の女神「それに、ここには私と同年代の子なんて全然いないし」
月の女神「だから、チハヤのお話が聞けて、私嬉しかったよ?」
月の女神「えへっ、ありがとう、チハヤ!」ニコッ
千早(……そんな顔をしないで)
千早(今から私はあなたを倒さなければならないのに……)
月の女神「ゴメンね、時間取らせちゃって。続き、しよ?」チャキッ
千早「………」チャキッ
584 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/12(日) 22:11:10.65 ID:2zaNk/pmO
遅くなってすみません
完結はさせます
でも、今回の遅れで一ヶ月ルールに抵触しちゃったんじゃないかと心配なんですが大丈夫ですかね…
585 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/12(日) 22:16:28.63 ID:udHWWKOsO
大丈夫、一ヶ月ルールはあくまで誰もレスしなかった場合自動でhtml化されるってのだからさ
誰かが保守ついでにレスすればされないよ
問題は二ヶ月ルールかな、二ヶ月たったら一分遅れだろうが依頼対象になるのが…
586 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/03/05(日) 07:48:20.82 ID:/Er29PHUO
支援
587 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/03/09(木) 20:19:22.82 ID:rmMzSg3nO
ー 月の地下渓谷 B9F ー
暗黒魔道士「……ファイガ」
ボオオオゥッ!!
美希「!」
美希「シェルっ!」バッ
ゴオオオ!! ボウッ!!
美希「きゃっ!」ヨロッ
美希「あつつ……」
美希「……むー、威力が強くてミキのシェルじゃ防ぎきれないの……」
暗黒魔道士「……サンダガ」
ズガガピシャァァン!!
美希「……おっとっ!」ヒョイッ
美希「……ふー、危なかったの……」
588 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 20:21:46.93 ID:rmMzSg3nO
暗黒魔道士「……まったく、この暗闇の中でここまでボクの魔法に対応するなんて流石だよ、ミキ」
暗黒魔道士「本当は見えているんじゃないのかい?」
美希「そんなことないの。こーんな真っ暗じゃ、ネコさんでもない限り見えないって思うな」
美希「あっ、もしかしてアンコクさんってネコさんなの?」
暗黒魔道士「ねこ……? なんだい、それは」
美希「えっ、知らないの? すっごくカワイイのに」
暗黒魔道士「知らない……。ボクは知らないことだらけだ」
暗黒魔道士「でも、それでいい。ボクには……この暗闇さえあれば十分だ」
暗黒魔道士「この暗黒がボクの全てで、ボクに力を与えてくれるんだ……!」ゴゴゴゴ
美希「ふーん、暗いところが好きだなんて変わってるんだねー」
暗黒魔道士「ミキ。いつまでも余裕でいられるとは思わないことだ。君は今確実に、死へと向かっている」
美希「………」
589 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 20:25:05.68 ID:rmMzSg3nO
美希「ミキもやられてばっかりじゃないよ。今度はこっちのターンなの!」
美希「……けがれなき天空の光よ、フジョウを照らし出せなの!」バッ
美希「ホーリー!」
キラキラキラ…!
暗黒魔道士「………」
…ドゴゴゴオオンッ!!
暗黒魔道士「……残念だったね」
美希「…………えっ?」
暗黒魔道士「暗闇でもボクからは君の行動は手に取るように分かる」
暗黒魔道士「君の詠唱をじっくり見てそれを躱すなんて、今のボクにとってはとても簡単なことなんだ」
美希「む〜、ちょっとくらい当たってくれてもいいのに〜」
暗黒魔道士「君の光はボクには届かない」
暗黒魔道士「君はその輝きを失い、闇に飲み込まれてしまうんだ」
590 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 20:27:04.73 ID:rmMzSg3nO
暗黒魔道士「……バイオ」
ブニューン
美希「!」ダッ
タタタタ
美希「そんな方向に撃っても当たらないの!」
暗黒魔道士「ブリザガ」
コォォ…!
美希「……こっちなの!」ダッ
シャキィィン!!
美希「うん、なんとなく真っ暗にも慣れてきたってカンジ」
美希「じゃあ、次はミキの番だよ!」
暗黒魔道士「残念だけど君のターンは回ってこない」
暗黒魔道士「……トルネド」
ビュオオオッ!!
美希「なんでー!? アンコクさんばっかりズルいのー!」
美希「にゃーーーーっ!?」フワッ
…ドサッ
591 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 20:28:39.43 ID:rmMzSg3nO
美希「うぅ、いたた……」
暗黒魔道士「言っただろう、ミキ。君という天才でも敵わないものがあるということを教えてあげるって」
美希「………」
美希(こんなのおかしいの。ミキがひとつのことをする間にアンコクさんは2回も3回も魔法を使えるなんて)
美希(絶対に何かズルしてるって思うな!)
暗黒魔道士「考えても無駄だよ。おそらく君にはたどり着くことはできない」
暗黒魔道士「何も見えないまま、何も分からないまま君はここでボクに負けるんだ」
美希(何か……何かきっとあるはずなの。アンコクさんが何回も続けて魔法を使える理由……)
592 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 20:30:42.24 ID:rmMzSg3nO
ー 月の地下渓谷 B10F ー
ダークバハムート「………」ゴゴゴゴ
貴音「………」ゴゴゴゴ
貴音(……動けない……)
貴音(ばはむーと殿の闘気にあてられている、というのもありますが……)
貴音(何より不気味なのは、一見ばはむーと殿は隙だらけのように見受けられるということ)
貴音(『遠慮なく撃って来い』と言わんばかりの挑発)
貴音(かといって安易に動けば、その瞬間にあの方の鋭い爪がわたくしの体を引き裂く光景が容易に想像できます)
貴音(あの方の強さをわたくしは知らない)
貴音(知らないはずなのに、解る)
貴音(こうして対峙しただけで理解してしまう)
貴音(神を前にして、いかに己が無力なのかを)
ダークバハムート「……どうした、タカネよ。そうして立っているだけでは我は倒せぬぞ?」
貴音「……承知しております」
ダークバハムート「為すべきことを理解していても、恐怖に縛られて動けない……」
ダークバハムート「不便なものだな、心とは」
貴音「………」
ダークバハムート「ククッ……!」
593 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 20:33:05.64 ID:rmMzSg3nO
貴音(ともかく、こうしていても仕方がないのは事実。ここは……)
貴音「………」ザッ
ダークバハムート「……漸く一歩」
ダークバハムート「その一歩を踏み出すのにどれだけ時間を要したのだ?」
貴音「っ……!」ゾクッ
貴音(あの方にほんの一歩近づくだけで、少しずつ精神が削られていくのが分かります)
貴音(よもやこれまで禍々しい闘気とは……)
ダークバハムート「……だが、そう悲観したものでもないぞ? タカネよ」
ダークバハムート「大抵の者は我の殺気を感じたと同時に逃げ出すであろう。動くことすらままならずに気を失う者もいるやもしれぬ」
ダークバハムート「その我の殺気に僅かとはいえ近づいたのだ、誇りに思うがいい」
貴音「……はい」
貴音(しかし……)
ダークバハムート「……それだけでは、足りぬ」ユラ…
ーーフッ…
貴音「!!」
594 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 20:37:02.46 ID:rmMzSg3nO
貴音(消えた!? いえ、考えられない速さで……!)
「……後ろだ」ブォンッ
貴音「! っ……ぶりんく!」バッ
ズシャアッ!!
ダークバハムート「………」
ダークバハムート「…………ふむ。幻影、か」ザシュッ
貴音「っ……はあっ、はあっ……!」ドクンドクン
ダークバハムート「今のは悪くなかったぞ。最良の判断であろう」
ダークバハムート「タカネ、お前は生き延びた」
貴音「っ……!」
貴音(一つ選択を間違えば、即ち、死……!)
ダークバハムート「今更何を抜けたことを。神に刃を向けるとはそういうことだ」
貴音「そう、ですね……」
貴音「!?」
貴音「ばはむーと殿……まさか、先ほどからわたくしの思考を……?」
ダークバハムート「これはすまぬ。申してなかったか」
ダークバハムート「我にはお前の心の声が聴こえる」
ダークバハムート「美しく気高き者が恐怖に怯える声、というのも悪くはないな……」
ダークバハムート「……ククッ!」
貴音「く……!」
貴音(ここにいるのは、もう以前のあの方ではない)
貴音(闇に堕ちた魔の者……)
貴音(……邪神、だーくばはむーと……!)
595 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 20:40:55.15 ID:rmMzSg3nO
ー 月の地下渓谷 B11F ー
律子「はあああっ!!」
ブンッ!! ビュンッ!! ブォンッ!!
クルーヤ「ふっふっふ!」ヒョイヒョイ
律子「く……!」ブンッ
クルーヤ「おっと」ヒョイッ
春香「お、お姉ちゃんの剣が……全部かわされてる……!?」
クルーヤ「良い剣捌きだ、リツコ。君は強い」
律子「……完全に見切っておいてよく言うわよ、まったく……」
クルーヤ「いやいや、本当だってば。剣で君に敵う者はもうこの世にはいないんじゃないかなぁ、きっと」
律子「お世辞はいいです。もう理解しましたから」
クルーヤ「え?」
律子「全力でいかないとあなたには勝てない、って……!」ゴゴゴゴ
クルーヤ「……ほー」
春香「あれって確か……!」
律子「……赦されざる者の頭上に星砕け、降りそそげ!」バッ
律子「……メテオッ!!」
ヒュー… ヒューー…
ヒューー… ヒュー… ヒュー…
ドゴゴゴゴゴゴゴッ!!!
596 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 20:44:25.56 ID:rmMzSg3nO
律子「………」
春香「お姉ちゃんっ!」タタタタ
律子「春香……」
律子「あなたはそこで見ていて。ここは私がやるわ」
春香「で、でもっ! あの人は私たちのお父さんなんですよ!」
律子「…………ふぅ」
律子「いい? 春香、よく聞いて」
律子「あなたがあの人にお世話になったのは知っているし、設定上私たちの父親だということも一応理解したつもり」
春香「だったら!」
律子「私たちはこの世界の人間ではないのよ」
春香「! そ、それは、分かってます……けど……」
律子「小鳥さんを倒さないと元の世界へ帰れない。アイドル活動だって再開できないの」
春香「………」
律子「あの人がわざわざプロデューサーに扮して私たちに近づいたのはなんのため? 小鳥さんの元へ行かせまいと私たちの足止めをするために違いないわ」
律子「それにおそらく、あの人を倒さない限りこの階は突破できない」
春香「う……」
……ザッ
クルーヤ「……うーん、まあ概ねリツコの言うとおりかな?」
律子「!」
春香「お、お父さん!」
597 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 20:47:42.63 ID:rmMzSg3nO
律子「あんまり期待してなかったけど、やっぱりピンピンしてるわね……」
律子「メテオって最強の魔法じゃなかったの……?」
クルーヤ「最強の魔法には違いないよ。それに僕にだってまったくダメージがなかったわけじゃないさ」
クルーヤ「……ただ、リツコにはメテオを使う心構えがまだ出来ていない」
クルーヤ「その威力を完全に引き出せてはいないんだ」
律子「心構え……? どういうこと?」
クルーヤ「うーん、そうだなぁ……」ポリポリ
クルーヤ「ヒント1、『メテオは封印されし魔法である』」
律子「えっ?」
クルーヤ「ヒント2、『光あるところに闇あり。その逆もまた然り』」
春香「お父さん……?」
クルーヤ「ヒント3、『天より降りそそぎし隕石、赦されざる者を討ち滅ぼす』」
律子「………」
春香「えっと、なぞなぞ……ですか?」
クルーヤ「まあ、そんなところかな?」
598 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 20:51:57.11 ID:rmMzSg3nO
律子(メテオの真の力……? あの図書館の蔵書にはそんなこと一言も書いてなかったわよ?)
律子(……そういえば、貴音もメテオを使えたはずよね)
律子(生前あずささんが使ったメテオも、相当の威力だった)
律子(今の私のそれとは比べものにならないくらいの)
律子(もしかして……)
律子(私が魔道士ではないから真の力とやらを発揮できないとか?)
律子(だとしたら、どうしようもないじゃない……)
クルーヤ「悩むのは必要なことだ。悩んで悩んで、人は強くなる」
クルーヤ(……さて、どうしようかな。僕の目的のためには二人に剣を取ってもらわないといけないんだけど……)チラッ
春香「うぅ……」
クルーヤ(リツコがやる気満々なのはいいとして、問題はハルカか)
クルーヤ「………」
クルーヤ(……あの子は優しい子だ)
クルーヤ(多少スパルタになっちゃうけど、ハルカをやる気にさせるには、たぶん……)
599 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 20:55:07.88 ID:rmMzSg3nO
クルーヤ「……よし、それじゃあそろそろお父さんの方からも行かせてもらおうかなっ?」チャキッ
律子「!」
クルーヤ「……大気満たす力震え……」
…ヴヴヴ…!!
春香「これは……!」
クルーヤ「我が腕をして閃光とならん……」
律子「……来るっ……!」チャキッ
クルーヤ「ーー無双、稲妻突き」ブォンッ
律子(速……!)
律子(ガードが間に合わなーー!)
ーーキィン!!
律子「………………え?」
600 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 20:58:46.78 ID:rmMzSg3nO
春香「……間に合って、良かった……!」チャキッ
律子「春香……!」
春香「いくらお父さんでも、私の大事なお姉ちゃんを傷つけることは許せませんっ!!」
律子「春香、あなた……」
律子「私を守ってくれたのね。……ありがとう」
春香「お礼なんてそんな……。私のたった一人のお姉ちゃんですから!」ニコッ
律子(……今の技に反応出来なかった……)
律子(みんな私のことを強いって言うけれど、私には何かが足りないような気がする)
律子(根本的な何かが……)
クルーヤ(僕が授けた技とはいえ、反応したのか、閃光の速度に……)
クルーヤ(試練の山で会った時とは本当に見違えるようだよ、ハルカ)
クルーヤ(新たな世界。それを創るのは君たちだ、ハルカ、リツコ)
クルーヤ「よーし! それじゃあお父さんが少し稽古を付けてあげよう!」
春香「受けて立ちますっ!」チャキッ
律子「やるしかないわね……!」チャキッ
601 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 21:02:03.05 ID:rmMzSg3nO
ー 月の地下渓谷 B3F ー
魔人兵「……発射!!」コオォ
雪歩「ひぃぃ〜〜っ!!」タタタタ
ズドドドドドドドオオンッ!!
魔人兵「ん、今度はあっちか」チャキッ
魔人兵「……発射っ!!」コオォ
雪歩「こ、怖いですぅ〜〜!!」タタタタ
ドドドドドドカアアン!!
魔人兵「逃さないぞ!」チャキッ
魔人兵「そりゃっ!」コオォ
雪歩「うええぇぇぇぇんっ!!」タタタタ
ズドオンッ!! ドゴオンッ!! ドガアアアンッ!!!
602 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 21:07:00.89 ID:rmMzSg3nO
…ボロッ
魔人兵「……やれやれ、ちょっと周りを破壊しすぎたかな?」
魔人兵「でも、あの子が面白いほど逃げ回るもんだからつい……」
魔人兵「おーい、生きてるかーい!!」
雪歩「……うぅ……ぐすん……」
魔人兵「うーん……なんだか弱いものイジメみたいでかわいそうになってきたなぁ……」
魔人兵「でも、これも仕事だ。恨まないでくれよ?」ジャキッ
雪歩「ひうっ!?」ビクッ
雪歩(に、逃げ場……!)キョロキョロ
雪歩(……そんなの、もうないよね……。穴を掘って隠れるだけの地面も、盾になりそうな壁も……全部、壊されちゃった……)
雪歩(どうしよう……。アダマンアーマー無しであんな砲撃が当たっちゃったら、きっと私なんて粉々の木っ端微塵だよぅ……!)
雪歩(……ああ、このまま私、殺されちゃうのかな……)
雪歩(せっかく……せっかくみんなみたいに勇気が持てるようになったのに……)
雪歩(……けっきょく私は、アダマンアーマーに守られてないとなんにもできないダメダメさんなんですぅ……)
魔人兵「……さよなら、だ」ドゴォン!
ゴオオオオ…!!
雪歩(みんな、ごめんね……。私はもう……)
…ズドオオオオオンッ!!!
603 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 21:11:27.02 ID:rmMzSg3nO
雪歩「………」
雪歩「………」
雪歩「………」
雪歩「………」
雪歩「……ぅ……」ピクッ
雪歩「……わ、私……」
雪歩(……まだ……生きてる……?)
雪歩(さっきの砲撃が直撃しちゃったはずなのに……)
…チカッ
雪歩(? 胸元で何か光って……)
雪歩(あ……これ、地下渓谷へ来る前にプロデューサーが作ってくれたネックレスだ……)
…チカッ
雪歩(控えめだけど、不思議な光……)
雪歩(見てるとあったかくなってくるような……)
雪歩(……もしかして、私を守ってくれたの……?)
『…………もう、諦めてしまわれたのですか?』
雪歩(えっ……? ネックレスから声が……)
雪歩(でも、この声って……!)
604 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 21:14:58.20 ID:rmMzSg3nO
『何かに守られていないと敵に立ち向かうことすらできない……。私がお慕い申したユキホ様は、そんなに弱い方ではなかったはずですわ』
雪歩「あ……あのっ!」
『確かに、ここ最近のあなたは戦いに於いてずっと、魔物の攻撃をものともしない堅固な鎧に守られていました』
『……けれど、思い出してください』
『ファブール城での戦いの時も、磁力の洞窟での戦いの時も……』
『あなたは己の身ひとつで勇敢に敵に立ち向かっていったはずです』
雪歩「あっ……アンナさん……ですよね……?」グスッ
『………』
『どうか、本当の勇気を。……あなたは、本当はとても強いお方』
雪歩「アンナさん、私っ…………!」
『遠く離れた場所から、私はいつでもあなたを見守っていますわ……』
雪歩「ま、待って! 行かないでくださいぃぃ!」
雪歩「私……私っ……!」
雪歩「まだ、あなたに『ごめんなさい』も『ありがとう』も言えてないのに……!」
…ガシャアン!!
雪歩「!」
605 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 21:22:35.32 ID:rmMzSg3nO
魔人兵「へぇ、今度こそ直撃したと思っていたけど、まだ息があるのか。なかなかタフなんだなぁ」
雪歩「………」
雪歩(本当の、勇気……)ギュッ
雪歩「っ……!」スクッ
魔人兵「……ん?」
雪歩「……!」チャキッ
魔人兵「……おや、反撃する気になったのかい?」
雪歩「私は本当に、ひんそ〜でダメダメで……」
雪歩「でも、そんな私にも大切な人たちがいて……」
……ザッ
雪歩「その人の想いに、私は応えたいっ……こんなところで終わりたくないですぅっ!」グッ
魔人兵(……表情が、変わった……?)
雪歩「私は…………『もう』、負けませんっ!!」
魔人兵「何があったのか知らないけど、恐怖に立ち向かおうとするその心構えは立派だ」
魔人兵「でも、君に不利な戦況は変わらない」
魔人兵「どう覆すつもりなのかな?」
雪歩(恐怖に立ち向かうのは、自分。いつだって自分との戦いなんだ……)
雪歩(私は、私にできることをやるだけ……)
606 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 21:26:14.38 ID:rmMzSg3nO
魔人兵(なんだろう……。今のあの子は何かをやってくれそうな……)
魔人兵(そんな予感がする)
魔人兵(雇われの身として仕事を完璧にこなさなければならない立場なのに、なぜこうもわくわくしてしまうんだろう……)
魔人兵「……オレの砲撃、かわせるものならかわしてみなよ……!」ジャキッ
魔人兵「……発射っ!!」
ズドドドドドドドッ
雪歩(アンナさん、私、やりますっ……!)チャキッ
キラキラ…!
魔人兵(さっきと同じ……また妙な力をスコップに纏わせた……)
魔人兵(それも、さっきの数倍の輝きだ……!)
雪歩「えーーーーいっ!!」ブンッ
ブォンッ!!
…ズドドドドドドドドッ!!!
魔人兵「! 砲撃の軌道を、スコップ一本で逸らしたのか……!」
…ドガアアアンッ!!!
607 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 21:30:32.62 ID:rmMzSg3nO
雪歩「はぁ、はぁっ……」
『……いいかい雪歩。気っていうのは誰だって自分の体の中に持っているものなんだ』
『大切なのは、どうやってそれを外へ出してやるか』
雪歩(真ちゃん……ううん、お師さん……!)
『頭で考えるんじゃなくて、感じるんだ。自分の中に揺らいでいるエネルギーを解放するイメージを思い描くんだよ』
雪歩「……そのエネルギーを……」チャキッ
雪歩「………………スコップに込めて、撃つッ!!」ブンッ
キラキラ…!
ゴオオオオオオオオッ!!
魔人兵「こ、これは……!」
ドゴオオオオオオオオンッッ!!!
608 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 21:34:06.47 ID:rmMzSg3nO
魔人兵「………」
魔人兵「…………くっ」ボロッ
魔人兵(……オレの装甲が、破られた……!?)
魔人兵(今の、ベヒーモスのヤツがこないだ会得した衝撃波に似ていた……)
魔人兵(だが、威力は彼女のそれの比じゃない……)
魔人兵(オレの最大兵器、波動砲にも匹敵する……!)
雪歩「……はぁ、はぁ、はぁっ……!」
雪歩「……な、なんとか、一矢報いましたぁ……!」
魔人兵(一矢報いた? 冗談じゃない……)
魔人兵(オレに残された装甲を合わせて考えても、今ので互角……いや)
魔人兵(あの子のスコップを包むオーラの力は未知数だ)
魔人兵(これはひょっとすると……)
雪歩「……!」チャキッ
魔人兵(かなり危険な状況だ……)
魔人兵(……なのに、「見てみたい」と思ってしまっている自分がいる)
魔人兵(あの子の……あいどるの底力ってやつを……!)
609 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/03/09(木) 21:37:14.60 ID:rmMzSg3nO
ー 月の地下渓谷 B2F ー
ベヒーモス「うおおおおっ!!」ブンッ
ドゴオオオンッ!!
真「うりゃあああっ!!」ブンッ
ドゴオオオンッ!!
ベヒーモス「……ふんっ!」ブワッ
バキィッ!!
真「ぐっ!?」ヨロッ
ベヒーモス「……そらっ!!」ビュッ
真「……っとと!」ザッ
真「虎煌拳ッ!」
ゴオオオオッ!!
ベヒーモス「ちっ……!」バシッ
ズドオオンッ!!
真「やあああああっ!」タタタタ
タンッ…
真「……雷煌拳ッ!!」バリッ
ズガガガガッ!!
ベヒーモス「ぐぅ……っ!」ヨロッ
真「幻影……!」
ベヒーモス「甘いっ!」ガシッ
ベヒーモス「うらっ!」ブンッ
真「うわああぁっ!?」
ヒューー…
クルンッ スタッ
真「…………はぁ、はぁ、危なかった……」
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