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P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2
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466 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/12(水) 20:58:24.34 ID:VsHkcvNIO
律子「はっ、はるふぁにひはや!?」モグモグ
春香「お、お姉ちゃん、食べながらしゃべらない方が……」
律子「ほ、ほれほはへはあいふ……ごほっ、ごほっ!」
春香「あーほら、ゆっくり飲み込んでくださいね?」サスサス
律子「ご、ごめ……」
貴音「春香と千早も食べますか?」スッ
美希「おいしーよ?」
千早「い、いえ、私は……」
春香「あはは、貴音さんも美希もマイペースだなぁ……」
律子「…………えー、ゴホン」
律子「見苦しいところを見せたわね、二人とも」
春香「いえ、気にしないでください」
千早「こんな時でも余裕がある、というのはいいことだと思うわ」
律子「そ、それについてはノーコメントで」
律子「それで、春香と千早はここへ来るまでに誰かに会った?」
千早「いえ、会ってないわね」
春香「私たち、ここまでずっと二人っきりでした!」
律子「ちなみに、私たち三人もこの階へ落とされてから誰にも会ってないわ」
律子「つまり、私たち以外のメンバーは他の階に落とされた可能性が高いわね」
467 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/12(水) 21:01:22.55 ID:VsHkcvNIO
律子「……貴音、ここは地下8階でいいのよね?」
貴音「はい。この地下渓谷は、地下7階までと地下8階以降でがらりと雰囲気が変わります」
貴音「おそらく中心核が近いせいでしょう」
春香「千早ちゃんの言った通りだったね」
千早「ええ。でも、もうすでに半分以上進んだことになるのね」
美希「この調子なら、楽チンなカンジで小鳥のところまで行けるね!」
律子「いえ、おそらくそうはならないと思うわ」
律子「私たちをここまで落としたのは親衛隊のリーダー格よ? たぶん、何か狙いがあるんだと思う」
美希「狙いって?」
律子「これは、あくまで推論だけど」
律子「地下1階、地下2階とそれぞれ一体ずつ親衛隊の魔物がいたわよね?」
春香「はい。今はあずささんと真が戦ってくれてますね」
律子「親衛隊の魔物は10体。それにバハムートを加えて、敵は全部で11体」
千早「……もしかして、ひと階層ごとにそれぞれ魔物が?」
律子「その可能性が高いと思うわ」
律子「あの親衛隊のリーダーの目的は、私たちの戦力を分散させることだったんじゃないかと思うの」
律子「だから、私たちが固まって戦えないように階下へ落としてバラけさせた」
春香「じゃあ、あずささんと真以外の他のみんなも、もう親衛隊と戦っているんでしょうか?」
律子「今はまだ遭遇してない子もいるかもしれないけど、いずれ戦うことになるでしょうね」
律子「一応言っておくけど、他のみんなを助けに戻るっていう選択肢もあるわ」
律子「一対一よりは複数で当たった方が有利に戦えるでしょうし」
春香「……いえ、それでもやっぱり私たちのやることは変わりません」
春香「ただまっすぐに小鳥さんのところへ進むだけです!」
千早「ここまで来て今さら迷っても仕方がないものね」
美希「ミキも、今から戻るのはどうかと思うな。だって小鳥とハニーが待ってるんだもん!」
貴音「進みましょう、律子嬢」
律子(たとえ自分ひとりになっても先に進む覚悟はあるか……)
律子(なんて、今のこの子たちには愚問ね、きっと)
律子「……いい? 何がなんでも小鳥さんのところへ辿り着くわよ!」
四人「……はいっ!!!」
468 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/12(水) 21:06:09.70 ID:VsHkcvNIO
ここまでです
亜美真美以外宝箱とか無視してますけど、仕様です
469 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/12(水) 21:12:58.79 ID:9nct6ngPO
小分けでゆっくり長く読めるのは嬉しい反面モヤモヤするから一気にガッと読みたいと思ってしまう
人間はワガママだね
470 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/10/15(土) 23:14:26.01 ID:qM3Qz1F6O
ー 月の地下渓谷 B4F 外側 ー
真美「う〜む……」
真美「真美は今、高性能な真美レーダーによって、発見! おいしそうな宝箱 じゅるるんっ したわけなんだケド……」
魔物1「………」ウロウロ
魔物2「………」ウロウロ
魔物3「………」ウロウロ
真美「魔物が守ってるっぽいね」
真美「さすがレアアイテム、カンタンにはもらえないかぁ」
真美「ここは真美のチョー必殺技で一気に蹴散らしちゃうか……」
真美「でも、なるべくMPはオンゾンしておきたいし……」
真美「魔法を使わずに、みんなと違ってか弱い乙女の真美がいかにこのジョーキョーを突破するか」
真美「さて、どうしたもんかねぇ」
真美「………」
真美「………」
真美「………」
真美「………」
真美「手段がなくはないんだよねぇ……」
真美「なくはない……けど」
真美「気が進まないなぁ……」
真美「………」
真美「……ちかたない、レア武器、ひいてはかわいい妹のためだもん」
真美「真美、やるよ!」
真美「…………よしっ」
471 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/15(土) 23:17:36.81 ID:qM3Qz1F6O
真美「はいちゅうもーく!!」パンパン
魔物たち「!?」ビクッ
真美「ちょっとそこの宝箱の中身がほしいんだけど、いいかな?」
魔物1「ガアア!」
魔物2「グルル!」
魔物3「ゴアア!」
真美「うんうん、いい面構えだ。やはり私の目にくるいはなかったようだ」
魔物1「ガアアアッ!」ガバッ
真美「……とか言ってたらきたー!」
真美「こっちだよっ!」ダッ
タタタタ…
魔物2「グルルルッ!」ブンッ
真美「……おっと!」ヒョイッ
真美「たあああ!」タタタタ
魔物3「ゴアアアッ!」ブンッ
真美「なんのっ!」ヒョイッ
真美「……奪取!」
ガパッ
真美「おー、あったあった」スッ
真美「じゃじゃーん! 真美はレア武器を手に入れた!」
472 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/10/15(土) 23:20:48.86 ID:qM3Qz1F6O
真美「さて……」チラッ
魔物1「ガアア……!」
魔物2「グルル……!」
魔物3「ゴアア……!」
真美(囲まれちゃった……)
真美「だがしかし、真美にはとっておきの切り札があるんだもんね!」
真美(ホンキで使いたくない切り札がね)
真美「くらえーー!!」
真美「うえ〜〜ん! 魔物がいぢめるよ〜〜!」グスン
魔物たち「!!?」
473 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/15(土) 23:23:21.18 ID:qM3Qz1F6O
真美「うわぁ〜ん! 真美、まだなんも悪いことしてないのに〜!」チラッ
魔物たち「……!」オロオロ
真美「ぐすっ……魔物なんかひびきんのカドに頭ぶつけてゴーヤになっちゃえばいいんだぁ〜!」ソロ〜リ
魔物たち「………」ズーン
真美「そんでゴーヤチャンプルーとしておいしくいただかれちゃえばいいんだぁ〜!」ソロ〜リ
魔物たち「………」ズズズーン
真美「………」
真美「ってわけで、バイバイキーン!」
タタタタ…
真美「……ふぅ、ここまで来ればもうへーきかな」
真美「あーはずかしかった……///」
真美「誰が見てるわけでもないけど、何回やってもなれないね、『うそなき』は」
真美(もう使わないよーにしとこ。このままじゃ真美のMPじゃなくてSP(羞恥ポイント)がカラになっちゃうYo……)
真美「お待ちかねのレア武器も手に入ったことだし、先へ進むよ!」
真美「とつげきぃ〜!」
タタタタ…
474 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/15(土) 23:28:41.10 ID:qM3Qz1F6O
ー 月の地下渓谷 B5F ー
響「えーっと……」キョロキョロ
響「ダメだ、この部屋にも下り階段はないみたいだ」
響「まだまだ他にたくさん部屋はあったし、地道に探すしかないかー」
…カチッ
響「…………ん? なんか踏んだ?」
ビーーッ!! ビーーッ!!
響「うぇっ!?」ビクッ
響「な、なになにこの音? なんなのさいったい!?」キョロキョロ
「……うふふっ、ようこそいらっしゃいました!」
響「えっ?」クルッ
プリンプリンセス「お会いできて光栄ですわ、あいどるさん!」
響「な……なんだこのなんともいえない物体は」
プリンプリンセス「まあ、ご挨拶ですわね」
プリンプリンセス「私はプリンプリンセス。コトリ様の親衛隊の一員にございます」
響「あ、そうだったんだ」
プリンプリンセス「残念ですが、貴女の足止めをさせて頂きますわっ!」
響(うーん……なんか迫力ないなぁ)
475 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/15(土) 23:30:53.95 ID:qM3Qz1F6O
プリンプリンセス「もしかして私を見くびっていらっしゃるのかしら? もしそうだとしたら考えを改めた方がよろしくてよ?」
響「あ、うん」
響(どう見ても強そうに見えないぞ。もしかしてハズレか?)
響「ま、自分もヒマってわけじゃないし、ジャマするっていうなら……」
ビュンッ…
プリンプリンセス「は、速い!」
響「悪いけど、速攻で終わらせるぞ」
プリンプリンセス「い、いつの間に背後に!?」
響「……っせい!!」ブンッ
…ポヨンッ
プリンプリンセス「あら? 今、何かしましたか?」
響「えっ、真直伝の正拳突きが効かない……!?」
プリンプリンセス「うふふっ、私に物理攻撃は効かなくてよ?」
…スタッ
響「……なるほど、ただのキモい物体ってわけじゃないんだな」
プリンプリンセス「見たところ貴女は魔道士ではないようですわね。さあ、どうするおつもりですの?」
響「確かに自分は魔法なんか使えない。でも残念だったな、プリ江」
プリンプリンセス「ぷ、プリ江!?」
響「自分、つい昨日すごい技を覚えたばっかりなんだぞ!」
響「さ、覚悟はいいか?」キュイィィン
プリンプリンセス「手が、光って……?」
響「くらえっ、ナンクル砲っ!!」バッ
…ドゴオオオオォォォオオンッ!!
476 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/15(土) 23:34:19.69 ID:qM3Qz1F6O
プリンプリンセス「な……なんですの、その身も蓋もない技は……」フラッ
プリンプリンセス「無念……ですわ……!」
…ドサッ
響「なーんだ、やっぱり見た目通り弱かったなー」
響「いや、もしかして自分が強くなりすぎたのかもな! なんたって自分、完璧だからな!」
響「よーし、この調子で親衛隊をどんどんやっつけるぞー!」
…カチッ
響「あっ、またなんか踏んだ」
ビーーッ!! ビーーッ!!
響「! また警報みたいな音だ!」
響「いったいどこで鳴ってるんだ……?」キョロキョロ
プリンプリンセスたち「うふふふふふ……」
ワラワラ…
響「………………えっ」
プリンプリンセスたち「さあ、私たちと一緒に踊りましょう!!!」
響「なんかたくさんいるけど……もしかしてこれ、自分ひとりで全部倒すのか?」
477 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/15(土) 23:38:07.87 ID:qM3Qz1F6O
ー 月の地下渓谷 B3F ー
ザクッ ザクッ
雪歩「……ふぅ」
雪歩「ククロさんに鍛えてもらったスコップでもけっこうしんどいなぁ」
雪歩「やっぱりここの地層は相当硬いんだね」
雪歩「でも、頑張らなきゃ!」グッ
ザクッ ザクッ
「……おーーい!!」
雪歩「ふぇっ!?」ビクッ
「ダメじゃないか、こんなところに穴なんて掘ったら」
…グイッ
雪歩「ひゃうっ!?」
…ドサッ
魔人兵「まったく……。こんな穴なんて掘ったら危ないだろう?」
雪歩(ま、魔物さんに引っ張り上げられちゃいましたぁ……)
魔人兵「君はどこの所属の兵器だい?」
雪歩「えっ……」
雪歩(へ、兵器……?)
魔人兵「今はあいどるたちが攻めて来てるからみんなピリピリしているんだ。こんな穴なんて空けたら他の魔物が落ちてしまうかもしれないだろう?」
雪歩「あの、えっと……」
雪歩(……あ、そっか。私、今はこんな格好してるから、きっと魔物さんと間違えられちゃったんだね)
雪歩(このまま何も言わなければ、戦わないで済みそう……かな)
478 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/15(土) 23:41:09.54 ID:qM3Qz1F6O
魔人兵「さ、君も早く持ち場へ戻って」
雪歩「………」
雪歩(…………違う)
魔人兵「おや、どうしたんだ?」
雪歩「……そんなの、ダメですぅ」
魔人兵「え? 何がダメなんだい?」
雪歩「みんなが戦ってるのに、私だけ逃げるのは……イヤですぅっ!」チャキッ
魔人兵「……まさか、君……」
雪歩「こ、こここここを、通してくださいませんか?」ビクビク
魔人兵「……驚いた。君みたいなあいどるもいたんだね」
魔人兵「なんだか親近感の湧く姿なんだけど、仕方ない」
…ガコンッ!
魔人兵「……敵なら、排除させてもらうよ」
雪歩「ひぅっ!」
魔人兵「……発射!」
ビュイイイインッ!!
雪歩「ひぃぃーー!!」
ドゴオオオオンッ!!
479 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/15(土) 23:44:15.23 ID:qM3Qz1F6O
魔人兵「……さて、ビームじゃ大したダメージにはならないと思うけど」
魔人兵「どうかな……」
モクモク…
雪歩「……うぅ……」
魔人兵「……おや?」
雪歩「す、すみません、全然効かないですぅ」
魔人兵「……無傷、か。相当いい装甲を付けているみたいだね」
魔人兵「だが、オレの武器はビーム砲だけじゃない。君のその堅牢な守りを崩していみせようじゃないか」
ウィーン…ガシャン!
雪歩「っ……!」チャキッ
魔人兵(……武器を構えた? 随分頼りなさそうな武器だけど、いったいどんな武器なんだろう)
魔人兵「……発射!」
チュドドドドッ!!
ヒューー…
ドドドドドドッ!!
480 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/15(土) 23:45:58.49 ID:qM3Qz1F6O
魔人兵「よし、今度こそダメージがあっただろう」
モクモク…
魔人兵「……って、いない……?」キョロキョロ
ズズ…
…ザバァッ!
魔人兵「!」
魔人兵(いつの間に地中に……!)
雪歩「えいっ!」ブンッ
ガキィン!!
雪歩「うう……か、硬い……!」
魔人兵「なんだ、ただ殴打するだけの原始的な武器か。そんな武器じゃオレに傷一つ付けられないよ?」
魔人兵「……それっ!」ブンッ
ドゴォ!!
雪歩「あぅ……!」ヨロッ
雪歩「……い、痛くないですぅ!」ザッ
魔人兵「ふむ……」
魔人兵(この子……)
雪歩(この魔物さん……)
雪歩・魔人兵(とにかく硬い……!)
魔人兵「どうやらこの戦いは、どちらが相手の装甲を破ることができるかの争いになりそうだね」
雪歩「ま……負けませんですぅっ!」グッ
481 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/15(土) 23:50:26.59 ID:qM3Qz1F6O
ー 月の地下渓谷 B4F 内部 ー
亜美「……ふーむ、扉がいっぱいあるね」
亜美「でも、確かこの階にアイテムがあるのはこの辺りじゃなかった気がするんだよねー」
亜美「もっと奥の方かな?」
スタスタ…
亜美「…………うん?」ピタッ
亜美「なんだろアレ。いっこだけメッチャゴージャスに飾りつけられた扉がある……」
タタタタ…
亜美「えっと……『あいどる御一行様歓迎! 宴会場はこちら。ご馳走あります』って書いてあるね」
亜美「……明らかにおかしいっしょコレ。亜美たちがカンゲイされてるワケないじゃん」
亜美「ゼッタイ魔物だよね、これ書いたの。あからさまなワナすぎるよ」
亜美「いくら亜美だってこんな子どもだましには引っかかんないんだかんねっ」
亜美「さーて、レアアイテムレアアイテムっと……」
スタスタ…
…ピタ
亜美(…………んでも、宴会ってぱーちーだよね)
亜美(ごちそーってことは、おいしい料理とかお菓子とか出てくるのかなぁ)
亜美(お菓子かぁ……)
亜美(よく考えたら亜美たち、この世界に来てからずっとお菓子食べてないよね)
亜美「………」
亜美「………」
亜美「………」
亜美「………………ゴクリ」
亜美「ちょっとだけ、チラッと中をのぞくだけならヘーキかな?」
482 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/15(土) 23:53:57.63 ID:qM3Qz1F6O
天使亜美『なに言ってんのさー。さっき自分でワナって言ってたじゃん! みすみす自分からワナにはまりに行くとかあり得ないっしょ!』
悪魔亜美『いやいや〜、先っちょだけならだいじょーぶかもよ? サッと行ってお菓子だけ取ってくればいーじゃん』
天使亜美『だーかーらー、ワナなんだからお菓子なんかあるワケないっしょ?』
悪魔亜美『……ホントだったらどーすんの?』
天使亜美『えっ……』
悪魔亜美『お菓子、ホントにあったらどーする? 可能性はゼロじゃないよね?』
天使亜美『し、しかしですな……』
悪魔亜美『せっかくのチャンスをのがすのですかな? 甘ーいお菓子、食べたくないの?』
天使亜美『……ゴクリ』
悪魔亜美『さあさあ』
天使亜美『………』
悪魔亜美『殿、ご決断を!』
天使亜美『…………ええい、お菓子に罪はない! 皆の者、出陣じゃあ!』
悪魔亜美『んっふっふ〜♪ お主、分かっておるのう!』
亜美「………」
亜美(……今、全亜美会議で可決されちゃったね)
亜美「いざ行かん! 甘ーいお菓子を求めて!」
…ガチャ
483 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/15(土) 23:57:17.81 ID:qM3Qz1F6O
金竜「…………馬鹿め、掛かりおったな!」
亜美「うあうあー! やっぱりワナだったー!」
金竜「食らえい!」
ビュンッ!!
亜美「おわあっ!?」ダッ
銀竜「破っ!」
ビュンッ!!
ドガッ!!
亜美「ぎゃんっ!」
ドサッ
銀竜「……本当にこの様な罠に掛かるとは、あいどるとは意外と阿呆なのだな」
亜美「うぅ……ヒドいよ! ひきょーものー!」
金竜「戦いとは常に非情なものである!」
銀竜「いや、兄者よ。先刻の戦いで騙された仕返しをしただけではないのか?」
金竜「こ、こら銀竜、その事をバラすでないっ!」アセアセ
亜美「あー、金ぴょん、あのことまだ根にもってたんだねー」
銀竜「兄者は単純だからな。すぐに騙されてしまうのだ」
金竜「ともかく、これで借りは返したぞ」
亜美「うん、わかったー」
金竜「……それでは、ここからは本物の宴を始めるとするか」ゴゴゴ
亜美「!」
銀竜「こんな幼子相手に二人がかりとは気が引けるが、お前の実力は既に知ってる」
銀竜「手加減はせぬぞっ!」ゴゴゴ
484 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/15(土) 23:59:37.32 ID:qM3Qz1F6O
亜美「……ふーん、そっか」ザッ
亜美「金ぴょんも銀ぴょんも、そんなに亜美にやられたいんだねー……」
亜美「いいよ、やろっか」
亜美「コーカイさせてあげるよ、亜美にケンカ売ったコト!」バッ
金竜「あいどる、滅してくれる!」ボゥ
金竜「稲妻よ!」
ズガガピシャァァン!!
亜美「うわっ!」ヒョイッ
銀竜「ふんっ!」
ビュンッ!!
バシィン!!
亜美「ぐえっ!」ヨロッ
銀竜「……どうした、あいどるよ」
金竜「貴様の力、見せてみよ!」
亜美「……ちかたないなぁ」ザッ
亜美「右手にファイガ……」ボッ
亜美「左手にファイガ……」ボッ
銀竜「……来たな!」
金竜「その技は既に対策済みだ! 行くぞ銀竜!」
銀竜「応!」
スゥゥーー…
金竜「例え魔法を複数放とうと、距離を取れば直線軌道の魔法など避けることは容易い!」
亜美「……誰が直線軌道なんて言ったのさ?」ニヤリ
金竜「えっ」
亜美「 合 体 !!」
ボウッ!!
亜美「メッされるのは金ぴょんたちの方だよ!」
亜美「……鳳凰の羽ばたきひとつでねっ!」
銀竜「な、なんだこれは……!? 炎が鳥の形を成しているだと……!?」
亜美「くらえぃ! 鳳翼天翔ーーーーッ!!」
ゴオオオオォォオオッ!!
485 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/16(日) 00:11:58.04 ID:YvXj+c6MO
ー 月の地下渓谷 B8F ー
スタスタ…
美希「ねえ、ミキ考えたんだけど」
律子「何を?」
美希「律子…さん、さっき『ひと階層ごとに魔物がいる』って言ったよね?」
律子「ええ。だからきっとこの階にも魔物がいると思うわ」
美希「ここが地下8階でしょ? だから、あと9、10、11……小鳥のところに着くまでに4体の魔物を倒せばいいってことだよね?」
律子「そうだけど、それがどうかしたの?」
美希「残りの魔物が4体でミキたちは5人いるから、ひとりずつ魔物の相手をしていけば、誰かひとりは小鳥のところまで行けるの!」
春香「確かに……美希の言う通りだね」
千早「それに、時間効率を考えるといい方法にも思えるわね」
貴音「………」
律子「本音を言えば、小鳥さんと戦うのはみんな揃ってからにしたい。でも、今の状況じゃそうも言っていられないかもしれないわね」
「……きほーんてきにはいっぽんぎーだけっど♪」
「ときとばあいでうっつっりーぎなっの
♪」
…ピタッ
律子「…………歌?」
春香「ねえ、今聴こえた歌って……」
美希「うん。『わたしはアイドル』なの」
律子「ってことは、他にもこの階に落ちてきた子がいるのかしら」
貴音「いえ、そうではないと思います」
千早「今の、ウチの誰とも違う声だったわ」
春香「じゃあ、いったい誰が歌ってるんだろう?」
美希「そんなの、魔物しかいないの」
律子「そりゃ、私たちじゃなかったら魔物でしょうけど」
律子「でも、なんで魔物がウチの歌を?」
貴音「小鳥嬢が教えた以外に考えられませんね」
貴音「何故彼女が魔物に歌を教えたのか、その理由は定かではありませんが」
律子「何か意図があるのかしら」
美希「小鳥、プロデューサーになりたかったのかな?」
律子「うーん……」
千早「………」
春香「……千早ちゃん、どうかしたの?」
千早「……もしかしたら私、さっきの歌声の主を知っているかもしれない」
春香「えっ?」
千早「行きましょうみんな。行けば分かるわ、きっと」
律子「……そうね。議論するよりも実際に見た方が早そう」
貴音「この地下8階からは最下層までほぼ一本道です。迷うこともないでしょう」
スタスタ…
486 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/16(日) 00:20:09.63 ID:YvXj+c6MO
月の女神「きっとわーたしがいちばんっ♪ でもあなーたーもそこそこかもっ♪」
月の女神「でもわったーしーとくーらべーるからっ♪ ちょっとぶ、がわーるいのよー♪」
千早(……やっぱりあの子だったのね)
春香「本当に魔物が歌ってる! しかも上手!」
律子「確かに、そこらへんの素人よりかは上手いかもね」
美希「でも、ミキたちの方がもっとかわいく歌えるよ?」
貴音「その前に、あいどるであるわたくしたちと魔物とを比べるのがそもそもの間違いだと思いますが」
月の女神「……待ってたよ、あいどるの人たち!」ニコッ
春香「わぁ……! なんか、魔物って思えないくらい可愛いなぁ」
律子「確かに、パッと見は魔物には見えないわね」
美希「ううん、そんなことないの。ミキたちの方がゼッタイかわいいの!」
貴音「あの、ですから魔物と張り合うのはどうかと……」
千早「………」
月の女神「一生懸命れっすんしたつもりなんだけど、やっぱり本物のあいどるの評価は厳しいなぁ……」
律子「一応訊いておくわ。ここを通してもらえないかしら?」
月の女神「えっとね、あなたは通っていいよ? あとリボンの人も。きっとおじさんが待ってると思うし」
律子「えっ、いいの? ダメもとで言っただけなのに」
春香「あの子、意外に平和主義なんでしょうかね?」
律子「こないだの戦いを見る限り、そうは思えないけど……」
律子「っていうかおじさんって誰?」
春香「さあ……?」
月の女神「あ、そうだ。そこの銀髪の人は、たぶん先生の相手の人だよね? だから早く行ってあげて?」
貴音「………」
貴音(先生、とはもしや……)
月の女神「そうだなぁ、私の相手は……」
月の女神「うん、やっぱりあなただね!」スッ
千早「………」
千早「……みんな、後で必ず追いつくわ」チャキッ
春香「千早ちゃんっ……!」
美希「千早さん……。千早さんなら、大丈夫だよね?」
千早「ええ、もちろんよ」
月の女神「へぇ、
自信たっぷりだねー。あれから腕を上げたのかな?」
千早「それは、あなた自身で確かめてみたら?」
487 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/16(日) 00:22:51.87 ID:YvXj+c6MO
律子「千早……」
貴音「千早、何があるか分かりません。用心してください」
千早「はい」
美希「ミキたち、先に行って待ってるの。遅刻しちゃダメだよ?」
千早「ええ」
春香「千早ちゃん……」
春香「私、千早ちゃんのことが大好きだよっ!!」
千早「ええ、ありが……えっ?」
貴音「なんと……」
美希「いきなりの告白なの」
律子「春香、そういうフラグっぽいことをこのタイミングで言わないのっ!」
春香「あっ……そ、そういうつもりじゃなかったんですけど……」
春香「でも、なんだか今言わなきゃいけないような気がして」
千早「……///」カァァ
美希「……あーあ、さっきまでキリッとしててカッコいい千早さんだったのに、春香のせいでふにゃふにゃの千早さんになっちゃったの」
春香「ご、ごめんね千早ちゃん」
千早「あ、あの、私は別に気にしてないから……じゃなくて、とても気にしてて春香の気持ちはすごく嬉しい……でもなくて……」
千早(ああ……ダメ……。頬が緩む……///)
月の女神「私、知ってるよ。そういうふうに女の子同士でイチャイチャするのって『ゆり』っていうんだよね?」
月の女神「えへへ、コトリ様から教えてもらったんだー!」
貴音「……だ、そうですが」
律子「あの人は……魔物にまで余計な情報を……!」ゴゴゴ
律子「とにかく千早、ここは任せたわ」
千早「え、ええ」
律子「みんな、行くわよ! ほら、春香も!」グイッ
春香「千早ちゃ〜ん! 離れててもずっと大好きだよ〜〜!!」ズルズル
律子「うるさいっ!」ビシッ
月の女神「……あなた、とっても愛されてるんだね?」
千早「そ……そうね」
488 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/16(日) 00:27:19.62 ID:YvXj+c6MO
ー 月の地下渓谷 B9Fへの階段 ー
ザッ ザッ
春香「……えーっと、次が地下9階段でしたっけ?」
貴音「ええ。この地下渓谷も残すは四分の一ですね」
春香「そっか、もうそんなに来たんですね。……早いなぁ」
美希「四分の一……かぁ」
春香「美希? どうかしたの?」
美希「あは☆ 早く小鳥に会いたいのー!」
律子「呑気ねぇ……。その前に親衛隊をおそらくあと三体は倒さなきゃいけないのよ?」
貴音「………」
美希「……分かってるの。でも、もう終わっちゃうんだね」
春香「美希……」
春香「……よしっ。みんな、気合い入れて行こうっ!」グッ
律子「それはいいけど春香、あんまりはしゃぐと転ぶわよ?」
春香「えへへっ♪ 大丈夫ですよ!」
春香「こう見えて私、この世界へ来てからまだ83回しか転んでないんですよっ?」
律子「えっと……それってすごいの?」
美希「いまいちピンとこないの」
貴音「わたくしたちがこの世界へ来て二ヶ月ほど経ったと仮定すると、だいたい一日一回強……ですか」
貴音「あまり変わり映えのない数字に思えますが」
春香「うぅ……元の世界よりも一日平均0.2回くらい少ないのに……。みんなヒドい……」
春香「と、とにかく頑張るぞー!」ズルッ
春香「ってうあーーーー!!」ゴロゴロ
…どんがらがっしゃーん!!
律子「……あーあ、言わんこっちゃない」
貴音「注意を受けて即転ぶとは、最早職人の領域ですね」
律子「あの子の体幹ってどうなってるのかしら。ホント謎だわ」
美希「……ねえ、それより貴音?」
貴音「どうしました、美希」
美希「次の階ってあんなに真っ暗なの?」スッ
貴音「真っ暗……?」チラッ
貴音「……ふむ、確かに真っ暗ですね」
貴音「以前は暗闇に包まれた階などなかったはずですが……」
律子「……嫌な予感がするわ。春香を追いかけましょう」
ザッ ザッ
489 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/16(日) 00:32:34.51 ID:YvXj+c6MO
ー 月の地下渓谷 B9F ー
律子「何よこれ……? 本当に何も見えないじゃない!」キョロキョロ
美希「夜みたいに真っ暗だねー……。今までは普通に明るかったのに、なんで?」
貴音「親衛隊、とやらの仕業でしょうか」
律子「春香ーー!! どこーー!!」
「…………こ、ここにいますよ〜」
律子「っていっても、こう真っ暗じゃ全然位置が分からないわね」
律子「声を頼りにそっちへ向かうから、そこを動かないのよー?」
「わ、わかりました〜……」
スタスタ…
律子「……ふぅ、とりあえず無事で良かったわ」
春香「うぅ……面目ないです……」シュン
貴音「春香、どこか怪我は無いですか?」
春香「あ、ありがとうございます。でも平気ですっ」
律子「焦る気持ちも分かるけど、あなたはもう少し落ち着きなさい」
春香「はい……。足元には十分注意してるつもりだったんですけど、何かにつまづいちゃって」
律子「何かって、さっきの階段に何かが落ちてたの?」
春香「直接見てないから分かりませんけど、石か何かだと思います」
美希「それってもしかして、コレ?」スッ
春香「えーっと……ごめん美希。真っ暗でなんにも見えないや」
美希「あ、そっか」
美希「これ……ミキ、今石ころを持ってるんだけどね? 春香が転んだあとに落ちてたの」
律子「じゃあ、春香はそれにつまづいたのね」
律子「でも美希、なんで石ころなんか持ってきたのよ?」
美希「うん。見たことない石ころだったから持ってきたんだよ?」
美希「真っ黒でキレイで、アクセとかにしたらイイカンジかもって」
貴音「………」
貴音「……何やらその石からは面妖なえねるぎぃを感じます」
美希「え? そうなの?」
律子「貴音がそう言うなら、何か重要なアイテムだったりするのかしら」
貴音「わたくしでは判断出来ませんが、真美か亜美に見せれば何か分かるかもしれません」
美希「そっか。じゃあ、大事に持っていくことにするね?」ゴソゴソ
律子「春香のおかげで思わぬ収穫があったわね」
春香「うーん……素直に喜べないなぁ……」
490 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/16(日) 00:37:57.07 ID:YvXj+c6MO
春香「……それにしても、本当にどこを見ても真っ暗ですねー」キョロキョロ
律子「困ったわね、まさかこんな罠を仕掛けてくるなんて……。これじゃ親衛隊がどこにいるか分からないわ」
貴音「ふぁいあを灯り代わりに進みますか?」
律子「うーん、でも、いくらファイアとはいえずっと出しっぱなしじゃかなり魔力を消費しちゃうでしょ? なるべく万全の状態で戦いに臨まないと」
律子「特に貴音、あなたの相手は相当強いんでしょう?」
貴音「……はい」
美希「ねえ、とりあえず進もうよ」
春香「進むっていっても、前どころか自分の足すら見えないのに、どうやって?」
美希「んー……カン、かな?」
スタスタ…
律子「あっ、ちょっと美希、一人で勝手に……」
美希「大丈夫なの。みんなミキの声について来て!」スタスタ
春香「やっぱりすごいなぁ、美希は。こんな場面でも相変わらずっていうか」
貴音「美希の勘ならば信頼出来ます。ここは言う通りにした方が良いのでは?」
律子「……仕方ない、十分気をつけて進みましょう」
スタスタ…
491 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/16(日) 00:41:29.49 ID:YvXj+c6MO
美希「えーっと……」じーっ
美希「……こっち!」
スタスタ…
美希(……あと四分の一……)
美希(ホントに、もうすぐ終わっちゃうんだね)
美希(ミキ的には、みんなと過ごせてとっても楽しかったの。なんだか夢みたいで……)
美希(こんなステキな夢なら、まだ覚めなくてもいいかな、なんて……)
春香「……待って、美希」
美希「……春香? どうしたの? コワくなっちゃった?」
春香「うん、正直怖いけど……でもそうじゃなくって」
春香「手、つないで行こう? そうすればみんな離ればなれにならなくてすむでしょう?」
美希「あ……」
春香「……ね?」
492 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/16(日) 00:44:28.86 ID:YvXj+c6MO
美希「………」
美希(春香は……)
春香「美希? どうしたの?」
美希(春香は、いつもミキの欲しい言葉をくれる)
春香「おーい、美希ってばー」
美希(いつもミキのしてほしいことをしてくれる)
美希「……うん、聞こえてるの。しょうがないから、つないであげてもいいよ?」
春香「えへへ、ありがとう、美希!」
美希「えっと、春香はここらへんにいるのかなー?」スッ
…ムニュッ
春香「ひゃあっ!? ちょ、ちょっと美希、どこ触ってるのよーう!!」モジモジ
美希「あは☆ ワザとなの」
春香「ワザとなの!?」
美希(……大好きだよ、春香。こちらこそいつもありがとうなの)
律子「……まったく、魔物がいつ襲ってくるかも分からない状況でよく騒げるわね、二人とも」
貴音「ふふっ、それもまた心強いことです」
春香「いや、今のは美希がヘンなとこ触るのがいけないんですよぅ……」
春香「……コホン。それじゃ、気をとりなおして……」
春香「……美希」スッ
美希「はいなの」ギュッ
美希「……貴音」スッ
貴音「ええ、ここに」ギュッ
貴音「……律子嬢」スッ
律子「はいはい」ギュッ
春香「……みんなちゃーんと手をつなぎましたね? それじゃ、改めて出発しましょう!」
493 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/16(日) 00:48:12.78 ID:YvXj+c6MO
スタスタ…
春香「……なんか、こうしてみんなで手をつないでると、小学校とか幼稚園に戻った気がしますね!」
律子「もう、恥ずかしいからそういうことは言わないの」
貴音「しかし、互いの姿が見えぬ暗闇の中でも、こうしていれば不安な気持ちなど何処かへ行ってしまいます」
貴音「流石は春香ですね」ニコッ
春香「そ、そんなことないですよぅ」
美希「……ううん、貴音の言う通りなの」
美希「この手の温かさが、みんながここにいるんだってちゃーんと教えてくれるから」
春香「美希……」
春香「人の温もりって、偉大だよね……」
美希「……また、みんなで会えるよね?」
美希「みんなバラバラになっちゃったけど、また笑って会えるよね?」
春香「……うん、もちろんだよ!」ニコッ
美希「……えへへっ」ニコッ
ヒュゥゥ…
律子(……ん?)
貴音(風……?)
ヒュゥゥゥ…
貴音(……いえ、これは……)
美希(何かがミキたちの方に向かってきてる……!)
494 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/16(日) 00:51:27.35 ID:YvXj+c6MO
美希「……シェルっ!」バッ
ポワ…
春香「えっ、な、何?」
律子「何か来るわ! みんな、衝撃に備えて!」
…ビュオオオオッ!!
春香「わああっ!?」ヨロッ
律子「春香っ!」
貴音「……ぶりざが」バッ
コオオォ…シャキィィンッ!!
貴音「………」
貴音「……逃げられてしまいましたか」
美希「でも貴音、惜しかったの」
律子「やっぱりこの暗闇でも私たちの位置は向こうに筒抜けなのね」
春香「そ、そうですね」
春香(魔物の攻撃だったんだね。全然分からなかったよ……)
春香(この三人、レベル高いよぉ……)
律子「この真っ暗闇の中、姿の見えない敵を相手に戦えっていうの……?」
美希「律子…さん、ここはミキがやるの」
律子「美希、でも……」
美希「さっきの子が言ってたよね。貴音も春香も律子…さんも、この先に待ってる相手がいるんでしょ?」
美希「だったら、ここはミキがやるしかないって思うな」
春香「美希……」
貴音「………」
495 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/16(日) 00:53:20.62 ID:ZZKuEnVgO
こうなるとやっぱクルーヤは律子が相手して春香が…
496 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/16(日) 00:55:05.85 ID:YvXj+c6MO
…ビュオオオオッ!!
美希「! ……次の攻撃が来るの!」
美希「ミキが少しの間だけ辺りを照らすから、みんな走って!」
律子「分かったわ。……美希、気をつけて!」
美希「あはっ☆ ミキ、ホンキ出したらすごいんだよ?」
律子「……ええ、そうね!」ニコッ
貴音「美希、この階の魔物はおそらく魔道士です。魔力を吸い取る『あすぴる』という魔法には注意してください」
美希「魔力を吸い取る……? そういう魔法もあるんだね。わかった、気をつけるの」
春香「美希!」ギュッ
美希「春香、ありがとうなの。ミキ、春香にたくさん元気もらえたの!」
美希「春香のおかげで、ミキ、ガンバれるの!」ゴゴゴ
美希「……それじゃみんな、行くよ!」
美希「……ホーリー!!」バッ
キラキラキラ…
春香「……まぶしいっ!」
春香(……なんて言ってる場合じゃないよね! お姉ちゃんも貴音さんも視力はそんなに良くなかったはず)
春香(ここは私が道を見極めなきゃ!)
春香「えっと……」キョロキョロ
春香「…………見えた!」
春香「お姉ちゃん、貴音さん、こっちですっ!」
タタタタ…
美希「みんな……また後で会おうね……!」
497 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/16(日) 00:59:50.38 ID:YvXj+c6MO
ここまでです
次も早く来れたら…いいな
498 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/16(日) 03:40:07.65 ID:loP07ALkO
乙
499 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/16(日) 05:22:47.59 ID:OoE/Sz7wO
おつ
500 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/10/28(金) 19:54:51.71 ID:lU/e7KMhO
美希「………」
美希「………………さて、と」
美希「ねえ、そこにいるんでしょ?」
「………」
美希「ミキが相手になるの。だからもうエンリョしなくてもいーよ?」
「………」
美希「……もー、ムシしちゃヤなの。人の話を聞かないのはイケナイんだよ? 律子が言ってたもん」
「……君は、怖くないの?」
美希「……あは☆ やっとしゃべってくれたの」
美希「あのね? ミキ、今すっごい震えてるんだよ? 真っ暗だからわからないかもしれないけど」
「その言葉は信じられないな」
「君はこの暗闇の中でもただ一人行動に迷いが無かった。とても暗闇に怯えているようには見えない」
美希「……えっとね、ミキがコワいのは真っ暗だからじゃないよ?」
美希「ミキが本当にコワいと思ってるのはーー」
501 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 19:57:35.61 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B9F 階段 ー
ザッ ザッ
春香「……とうとう三人になっちゃいましたね」
律子「そうね。でも、ここまで来たらあとはもうとにかく突っ走るしかないわ」
貴音「ええ。……皆の為にも」
春香「そうですね!」グッ
貴音「……それより春香、気づいていましたか?」
春香「へっ? 何をですか?」
貴音「先ほどの美希の手、僅かに震えていました」
春香「………」
律子「美希の手が?」
貴音「はい、四人で手を繋いだ時の事です。真っ暗でしたので表情までは分かりませんでしたが」
律子「うーん……でも、あの子に限って今さら怖気づいたってことはないでしょう?」
貴音「ええ、先ほどの美希の行動を鑑みるに、それはあり得ないと思います。戦いを恐れている者があの様に積極的に動けるとは思えません」
律子「じゃあ、美希はいったい何に怯えてるっていうの?」
春香「………」
502 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:00:29.00 ID:lU/e7KMhO
春香「……美希が怖いと思っているのは、みんなに会えなくなる事なんじゃないかって思います」
律子「えっ?」
春香「このゲームが終わって元の世界へ帰ったら、私たちには忙しい日々が待ってますよね?」
春香「そうなるとまたみんなすれ違いの生活が始まって、今みたいに全員が一度に揃う事は難しくなってくる……」
春香「もしかしたら美希は、それを不安に思ったんじゃないかなって」
貴音「……なるほど、この世界での楽しかった記憶が美希の心に迷いを生じさせていると?」
春香「はい……」
春香「でもその気持ちは、私も少なからず持ってます」
春香「もしかしたら他のみんなも……貴音さんやお姉ちゃんもそういう風に思ったことがあるんじゃないですか?」
貴音「………」
律子「………」
律子「……でも、だからっていつまでも元の世界に帰らないわけにはいかないわ。あの子だってそれは分かっているはずよ?」
『……ミキ、春香にたくさん元気もらえたの!』
春香「………」
春香「……きっと大丈夫だと思います、美希なら」
春香「あの子は多分もう、自分で答えを見つけているから」
貴音「………」
律子「………」
律子「……ま、例え美希が駄々をこねたとしても首に縄付けてでも連れ帰るけどね」ニコッ
春香「あ、あはは……」
貴音「ふふっ、美希の膨れた顔が目に浮かぶようです」ニコッ
律子「……さて、進みましょう。早いところ最下層で化け物退治しないといけないし」
春香「お、お姉ちゃん……そんなこと言ったら小鳥さん、泣いちゃいますよ?」
スタスタ…
503 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:03:56.36 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B9F ー
美希(夢の世界はいつだってミキに優しいけど、いつまでも夢の中にばっかりいられないの)
美希(現実に戻ったらまたみんなとなかなか会えなくなっちゃうかもしれないけど、それでもみんなで目指したい、叶えたい夢があるから)
美希(だから、ミキはーー)
美希「……ゴメンなさいなの」
美希「ミキ、あなたのこと、倒すね?」
「……やっぱり思った通りだ」
「君はボクの一番嫌いなタイプ。才能に恵まれていて、大抵の事は苦労せずに出来てしまう」
「だからなんでも出来る自分に自信を持っているし、限られた事しか出来ない自分以外をどこか見下している」
「それは君の言動や行動によく顕れているよ」
美希「えー? ミキ、そんなにヤな子じゃないよ?」
「……教えてあげる。君という天才でも太刀打ちできないものがあるってことを」ゴゴゴ
美希「君じゃなくてミキなの」
「……えっ」
美希「ミキの名前は星井美希。ちゃーんと覚えてね?」
「ミキ……か。ボクは暗黒魔道士。名前の通り、暗闇でその真価を発揮する」
暗黒魔道士「ミキ。光の射さないこの闇の中で、君は満足に戦えるかい?」
美希「……わかんない。けど、ミキ、ガンバるの」
美希「みんなとの約束だから!」ゴゴゴ
504 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:09:14.64 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B6F ー
…ビュンッ!!
ガキィン!!
リルマーダー「……っとお!」
リルマーダー「へへ、軽いぜっ!」ブンッ
伊織「ちっ……!」ダッ
…スタッ
伊織「………」チャキッ
リルマーダー「オイラはリルマーダー。泣く子も黙るゴブリン族の王だ! 誰もオイラに勝てやしねえ!」
伊織「王……? アンタが?」
リルマーダー「なあなあ、お前はなんて名前なんだ? せっかくだから殺す前に名前くらい覚えておいてやるよ!」
伊織「……ふん、アンタなんかに名乗る名前はないわ」
伊織「だって……」ユラ…
…ビュンッ!
リルマーダー「!」
伊織「アンタはすぐにこの私にやられる事になるものねっ」チャキッ
リルマーダー(……こいつ、一瞬で距離を詰めて来やがった!)
伊織「はあっ!」ブンッ
ザシュッ!!
リルマーダー「ぐっ……!」ヨロッ
伊織「……ふっ!」ブンッ
リルマーダー「うおっと!」ヒョイッ
伊織「!」
伊織(二撃目は躱された……。まあまあやるようね)
伊織「なら、これはどうかしら?」ボゥッ
伊織「……火遁っ!!」バッ
ゴオオオオォォォオオ!!
リルマーダー「そんなのオイラにゃ効かねえぜっ!!」タタタ
リルマーダー「そりゃっ!!」ブンッ
伊織「!」
ザシュッ!!
伊織「……ち……!」ザッ
505 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:12:43.30 ID:lU/e7KMhO
リルマーダー「お前、人間にしてはなかなかやるじゃねーか。オイラに傷をつけるなんてよ」
リルマーダー「けど、お前の攻撃は速さはあるみたいだけどパワーが足りないぞ? 一撃が軽いぜっ!」
伊織「………」
伊織「……そう。だったら受け止めてみなさい」スチャ
リルマーダー(刀を収めた……? 何をするつもりだ?)
伊織「………」ジリッ
リルマーダー(さっきみたいに忍術を使うつもりか?)
リルマーダー「……ま、いいや。来ないんだったらこっちから行ってやるっ!」ダッ
伊織「っ!」ピクッ
リルマーダー「食らえー!! サンダ……」
リルマーダー「……がふっ!?」ヨロッ
リルマーダー「ぐっ……な、なんで……? 今、何をしたんだ……?」
伊織「別に、普通に刀を振っただけよ?」
リルマーダー「ウソつけ! 今、お前動いてなかっただろ!」ビシッ
伊織「……ああ、アンタには見えてなかったのね。私の太刀が」
伊織「にひひっ♪ ちょっと速すぎちゃったかしら?」
リルマーダー(こいつ……!)
伊織「アンタを見てると、なぜかイラッとするのよね」
リルマーダー「………」
リルマーダー「……そうかよ。だったら……」
リルマーダー「全力で殺してやるよ、王の力でな……!」ゴゴゴ
伊織「………」チャキッ
506 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:16:11.07 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B7F ー
ブルードラゴン「……さあ、答えを述べよ、小さき召喚士よ」ブォンッ
ブオオッ…!
やよい「はわわっ!」ダッ
ゴロン
ドゴオオンッ!!
やよい「わわ……じめんにあながあいちゃってますー!」
ブルードラゴン「……ふんっ!」ブォンッ
ドガアッ!!
やよい「あぅ……!」ヨロッ
やよい「っ……いふりとさんっ!」バッ
イフリート「……ぬおおおおっ!! 地獄の火炎んんうううっ!!」
ゴオオオオォォォオオ!!
ブルードラゴン「……炎などワシには効かぬ」
やよい「……らむさんっ!」バッ
ラムウ「……裁きの雷!」
ズガガガガドゴオオオオンッ!!
ブルードラゴン「……無駄じゃ、召喚士よ。お前の攻撃はワシには通じぬ」
ブルードラゴン「ふぬっ!」ブンッ
バキィッ!!
やよい「うあっ……!」
…ドサッ
やよい「……うぅ……いたいです……」ヨロッ
507 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:19:35.33 ID:lU/e7KMhO
ブルードラゴン「そうじゃ。生に痛みはつきもの。生きている限り様々な苦しみに耐えなければならない」
ブルードラゴン「生きる苦しみ全てから開放するのは……」
ブルードラゴン「……………死、だ」
やよい「!」
ブルードラゴン「痛み、悩み、悲しみ、苦しみ……。あらゆる苦痛からの開放とは、即ち死ぬことなのじゃ」
ブルードラゴン「そう、真の安らぎとは、『死』」
ブルードラゴン「召喚士よ。お前はワシに安らぎをもたらす者か?」
やよい「あぅ……あ、あの、それってつまり……」
ブルードラゴン「……むんっ」ブンッ
やよい「! ……しばさんっ!」バッ
シヴァ「……永久氷壁」
コオオォ……シャキーーンッ!!
バキッ!!
ブルードラゴン「氷の壁……ワシに攻撃が通じないと知って召喚獣を防御に使ったか」
ブルードラゴン「おもしろき娘じゃ」
ブルードラゴン「既に理解したと思うが、ワシの身体は属性を跳ね除ける」
ブルードラゴン「そのような呪われた身体ゆえ、ワシは長く生きすぎた。家族も友も、全てを失ってなお、苦痛にさらされ続けておる」
ブルードラゴン「もう、疲れたのじゃ」
ブルードラゴン「……さあ、お前の手でワシを永遠の眠りへ就かせておくれ」
やよい「そ、そんなっ……!」
ブルードラゴン「……それが出来ぬと言うのならば、お前に用は無い」
ブルードラゴン「ワシがお前に永遠の安らぎを与えてやろう」ゴゴゴ
やよい「うぅ……」
やよい(ころすのも死んじゃうのもいやです……)
やよい(みんなでもとの世界にかえるって、やくそくしたもんっ)
やよい(でも、あのどらごんさんはころしてほしいって……)
やよい(……ど、どうしよう……!)
やよい(…………)
508 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:26:49.46 ID:lU/e7KMhO
ブルードラゴン「ワシを殺すか、それともワシに殺されるか。お前の選択肢は二つに一つじゃ」
ブルー「……いや、お前の召喚魔法がワシに通じぬ限り、お前に死を逃れる術は無い」
やよい「………」
やよい「……っ!」グッ
やよい「うー……!」ゴゴゴ
ブルードラゴン「無駄と知っても抗うか……」
ブルードラゴン「悲しきことじゃ」ブンッ
やよい(火もかみなりもだめなら……)
やよい「うっうーーーー!!」バッ
…ガシッ!!
ブルードラゴン「……ぬ?」
冬馬「……高槻をいじめる奴は、俺が許さねぇ……!」ゴゴゴ
ブルードラゴン「!」
冬馬「くらいやがれ! 超究武神破斬ッッ!!」
ドゴゴゴゴゴゴッ!!
北斗「……例によって今回もただ殴ってるだけだな」
翔太「あれ? 冬馬君ってドラクエ派じゃなかったっけ?」
509 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:29:56.27 ID:lU/e7KMhO
冬馬「見たか化け物! 俺たちがついてる限り高槻は無敵だぜっ!」ビシッ
北斗「やよいちゃん、回復してあげるよ。……ケアルダ!」
シャララーン! キラキラキラ…!
やよい「ありがとうございますっ!」
ブルードラゴン「……ぬぅ……無属性の召喚魔法か……。今のは効いたわ……」
ブルードラゴン「生に対する執着、これも生きものの性か……」
やよい「……あのっ!」
やよい「わたし、ころすのも死んじゃうのもりょうほういやですっ!」
やよい「それに、死んだら楽になるっていう考え方もなんかちがうと思います!」
ブルードラゴン「……お前は知らぬのだ。何も出来ずに家族が死んでゆくのを見届ける辛さを。傷つき倒れた仲間に何もしてやれぬ無力さを」
ブルードラゴン「……自分だけが生き残る、虚しさを」
やよい「えっと……」
やよい「それは、どらごんさんの言うとおりだと思います」
やよい「わたしの家族はまだまだ元気だし、仲間……みなさんもすごくやさしいですし……」
やよい「……でも!」
やよい「安らぎが死ぬことっていうのは、なんかちがうと思いますっ!」
やよい「安らぎって、もっともっと身近にあるものなんじゃないかなーって!」
ブルードラゴン「……ならば示してみせよ。お前の言う安らぎを……!」ゴゴゴ
やよい「はいっ、がんばりますっ!!」グッ
510 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:39:27.72 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B8F ー
…キィン!! ガキィン!!
バキッ!! ドガッ!!
ブワッ…
…スタッ
千早「………」
月の女神「……へぇ、さっきの言葉はウソじゃなかったんだね?」
月の女神「あなた、こないだ戦った時よりいい動きしてるよ!」
千早(確かに、身体が軽い……)
千早(不思議ね、何をしたっていうわけではないのに)
千早(私、いつもよりもリラックスしてる……)
千早(別れ際の春香の告白騒動があったからかしら)
千早(……春香には感謝しなきゃいけないわね)
千早「私は、みんなとの約束を果たさなければならない」
千早「……あなたを倒して、先へ進ませてもらうわ」チャキッ
月の女神「……じゃあ、私は……」
月の女神「教えてもらうよ。あいどるってなんなのかを!」チャキッ
千早「!」
511 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:41:45.44 ID:lU/e7KMhO
月の女神「……はあっ!」ダッ
ガキィン!!
千早「くっ……!」ググッ
千早(相変わらずの腕力ね……。今にも押し返されそう)
千早(それに……)
月の女神「はっ!」タンッ
クルンッ
月の女神「……えいっ!」ブンッ
ザシュッ!!
千早「うっ……!」ヨロッ
月の女神「やっ!」ブンッ
キィンッ!!
千早「く……!」ギリッ
千早(なんて軽やかな動き……。まるで踊るような……)
月の女神「私は、あいどるになりたい」
月の女神「あいどるはキラキラ輝いていてとても楽しいものだって、コトリ様に教えてもらったから」
月の女神「……だから、あなたを倒して私があいどるになるッ!!」
千早「………」
千早(これも音無さんの作戦か何かなのかしら)
千早(魔物がアイドルになりたいだなんて……)
千早(……ううん、多分、人間も魔物も関係ない)
千早(何かに対して憧れる気持ちは、きっとみんなが持っているもの)
千早(でも、だからってこの子に付き合う必要はない。私には果たさなければならない約束があるのだから)
千早「悪いけど、あなたの願望には興味はない。無理やりにでも道を開けてもらうわ!」チャキッ
月の女神「えへっ、たくさん遊ぼう!!」チャキッ
512 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:47:36.19 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B10F ー
春香「……これは……!」ゾクッ
ビリッ…
春香(空気が震えてる……)
春香(この階全体にまんべんなく張り巡らされた殺気……)
春香(まるで、私たちを誘ってるみたい……)
春香「お姉ちゃん……」
律子「ええ……ものすごいわね、これは」
律子「さっきの階とは真逆ね。完全に私たちを挑発してるわ」
律子「……いえ、私たちじゃなくて……」チラッ
律子「この闘気の主は、貴音、あなたを待っているのね」
貴音「………」
春香「貴音さん……」
貴音「……覚悟は出来ております」
貴音「ですから、どうかわたくしの事は心配なさらずに」
春香「………」
春香「……それでも」ギュッ
貴音「春香……?」
春香「貴音さんがどんな想いで戦うのか、私には想像もつきません」
春香「だから、せめて……」
春香「私のパワーを貴音さんに分けてあげます。使ってくださいっ!」ギュッ
貴音「………」
春香「………」
貴音「………」
春香「………」
貴音「………」
貴音「……あの」
春香「あ、えっと、私……」
513 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:50:40.54 ID:lU/e7KMhO
春香「こうして手を握れば、少しでも力を分けてあげられるかなー、なんて……」
春香「あ、あはは……。こんなの、気休めにもなりませんよね……」シュン
貴音「……いえ、ありがとうございます」
貴音「春香、あなたのぱわぁ、確かに貰い受けました」ニコッ
春香「貴音さん!」パァァ
律子「……そういう事なら、私のパワーもあなたに分けてあげなきゃね」ギュッ
貴音「律子嬢……」
律子「この殺気、ここまで出会ったどの魔物よりも確実に格上だわ」
律子「こんな時になんて言葉をかけたらいいのか分からないけど……」
律子「貴音、自分を信じて。あなたならきっと……」
貴音「………」
貴音「わたくしは本当に幸せ者です。こうして一生懸命わたくしの事を想ってくれる友がいるのですから」ニコッ
春香「貴音さん……!」
律子「……しっかりね、貴音!」
「…………よくぞここまで辿り着いた」
三人「!!」
514 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:53:19.47 ID:lU/e7KMhO
…ザッ
ダークバハムート「光の戦士……いや、あいどるたちよ」
律子「あれが、バハムート……」
春香「貴音さんのお友達で……」
貴音「幻獣神……幻獣たちの頂点に立たれるお方です……!」
ダークバハムート「………」ゴゴゴ
貴音「律子嬢、春香、二人は先へ」
貴音「宜しいですね? ばはむーと殿」
ダークバハムート「無論だ。そこの二人にはこの先で試練が待っている」
ダークバハムート「行くがよい、娘たちよ」
春香「貴音さん……」
貴音「もう言葉は要りません。……さ、早く」
春香「……はいっ」コクリ
タタタタ…
…ピタッ
春香「あの、バハムートさん!」
ダークバハムート「……なんだ、娘よ」
春香「貴音さんのこと、よろしくお願いしますっ!」ペコリ
タタタタ…
ダークバハムート「ククッ……!」
515 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 20:59:21.68 ID:lU/e7KMhO
ダークバハムート「さて……漸く二人きりになる事ができたな、タカネよ」
ダークバハムート「会いたかったぞ……!」
貴音「ばはむーと殿……」
貴音(わたくしもずっとお会いしとうございました)
貴音(……ですが、同時にお会いするのが怖くもありました)
貴音「……お久しぶりでございます」ペコリ
ダークバハムート「うむ。お前が変わらず健在で安心したぞ」
貴音「ありがとうございます」
貴音「ばはむーと殿は……」
貴音(……黒き闘気を纏った体躯、おぞましい程鋭く伸びた爪や牙、闇夜の如き漆黒の翼……)
貴音(あの頃の光に満ち溢れた眼差しはもうありません)
貴音(……ばはむーと殿は、大きく変わられてしまったようです)
ダークバハムート「……そう怯えるな。久々の再会なのだ、もっと嬉しそうな顔を見せよ」
貴音「っ……そう、ですね」
貴音「あの、ばはむーと殿」
ダークバハムート「……なんだ?」
貴音「もう、戻られるおつもりはないのですか?」
ダークバハムート「……要領の得ぬ問いだな。それは、我の住処へ、か?」
ダークバハムート「それとも、光に、か?」
貴音「……その両方です」
ダークバハムート「タカネ。まさかお前程の者が理解出来ぬ訳ではなかろう?」
ダークバハムート「『こう』なってしまっては、我の力を以ってしてももはや以前の身体には戻れぬ」
ダークバハムート「それに、単なる眷族の為にわざわざ住処へ戻ってやる義理もない」
ダークバハムート「答えは両方とも否だ」
貴音「………」
貴音(やはり、取り返しのつかないところまで来ていたのですね)
貴音(……戦うしか道は無いのでしょう)
516 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/28(金) 21:02:09.27 ID:lU/e7KMhO
ダークバハムート「それよりも、我の言いつけ通り青き星から光の戦士たちを連れて来たようだな」
ダークバハムート「よくやった。褒めてつかわす」
貴音「……何故、ですか?」
ダークバハムート「む? ……何故、とはどういう事だ?」
貴音「闇へ堕ちたご自分がいずれ光の戦士に倒されると分かっていて、何故わたくしを褒めてくださるのですか?」
貴音「わたくしには、ばはむーと殿の真意は測りかねます」
ダークバハムート「……随分と自信があるようだな。この我を倒すのはあくまで前提、という事か」
貴音「! ……す、すみません、過ぎた事を……」
ダークバハムート「ククッ……良い。それ程の気概が無ければ我を倒してコトリの元へは行けぬ」
ダークバハムート「……否。お前をコトリの元へなど行かせぬ」ゴゴゴ
貴音「!」
貴音(なんと、おぞましい闘気……!)
ダークバハムート「お前は……永久に我のものになるのだ……!」
ゴオオオオッ!!
貴音(……戻ることなどできない)
貴音(散々後悔し、迷いもしましたが……)
貴音「わたくしは引きません、ばはむーと殿」スッ
貴音「貴方を倒し、その先の光を手に入れますっ……!」ゴゴゴ
ダークバハムート「……見せてみよ、お前の力!」
517 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/28(金) 23:43:09.78 ID:Vq+5ACzLO
久々の寝落ちか?
518 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:00:22.66 ID:kgLR5JNJO
ー 月の地下渓谷 B11F ー
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
春香「……誰もいませんね」
律子「……そうね」
519 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:02:26.90 ID:kgLR5JNJO
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
春香「……何も、起こりませんね」
律子「……そうね」
520 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:04:11.75 ID:kgLR5JNJO
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
スタスタ…
春香「………」
律子「………」
…ピタッ
春香「………………」
春香「……………………おかしい!」
521 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:13:49.15 ID:kgLR5JNJO
春香「絶対におかしいですよこれ! 進んでも進んでもずーーっと同じ景色だし、魔物なんてぜーんぜん出てこないし……」
春香「お姉ちゃん、私たちもしかして騙されてるんじゃないですか?」
律子「……あら、春香にしては察しがいいわね」
律子「貴音がいないから断言出来ないけれど、ここまで進んでも下り階段が見つからないのは、きっと罠なんでしょうね」
春香「や、やっぱり!」
春香「ど、どうしましょうお姉ちゃん!」
律子「うーん……さっきから考えてはいるんだけど、結局こういう場合って魔物を見つけないと進めないってパターンだと思うのよ」
春香「じゃあ、まずはこの階を守ってる魔物を探さないといけないんですね」
律子「ええ。でも……」チラッ
春香「……もう、結構進んできましたよね、私たち」
律子「そうね。ここまで進んでも何も無いとなると、このまま先へ進むべきか、いったん戻るべきか……」
「…………おおーーい!!」
春香「……えっ?」クルッ
律子「! あれは……」
522 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:22:56.99 ID:kgLR5JNJO
タタタタ…
P「……はぁっ、はぁっ……!」
P「……よ、良かった、やっと知ってるやつに会えた……」
春香「プロデューサーさん!?」
律子「プロデューサー殿!」
春香「なんでここにプロデューサーさんが? 小鳥さんと一緒じゃなかったんですか?」
P「いやあ、中心核までの道で小鳥さんとはぐれてしまってな」
P「はは……面目ない」ポリポリ
春香「えっ、じゃあもしかして私たちが来るまでずっと迷ってたんですか?」
P「ああ。なぜかこの階には下へ降りる階段が見つからないんだよ。魔物の罠かもしれないんだ」
律子「丁度私たちもこれはきっと罠だ、って話をしていたところです」
P「そうだったのか」
P「それで、今は二人だけか? 他のみんなはどうしたんだ?」
春香「みんなは、親衛隊の魔物と戦ってくれています。だから私たちも早く先へ進まないと」
P「そうか……そうだな」
律子「ところで、プロデューサーはなんで私たちの後ろから現れたんです?」
律子「私たちが来るよりももっと前からこの階にいたんですよね?」
春香「あ……言われてみれば、私たち誰ともすれ違ってないのにおかしいですね」
春香「貴音さんの話だと、この階は一本道らしいですし……」
P「それは……」
523 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:26:33.21 ID:kgLR5JNJO
P「うーん、口で説明するよりも実際に見た方が早いかもな」
P「春香、すまないがちょっとこの先へひとっ走り行ってきてくれないか?」
春香「先へ……ですか?」
P「うん。ずっとまっすぐ進んでくれればいいんだ」
春香「えっと……はい、分かりました」
春香「じゃあ、行ってきます!」
タタタタ…
律子「……なるほど、プロデューサーが何をやろうとしているのかがなんとなく分かりました」
P「そうか。流石は律子だな」
律子「また面倒くさそうな罠ですね」
P「俺ひとりじゃどうしていいか分からなくてな。二人が来てくれて助かったよ」
律子「ちなみに、この階を守っている魔物に心当たりは?」
P「すまん、分からないんだ」
律子「……ま、仕方ないですね」
タタタタ…
律子「……あ、来ましたね」
P「ああ」
524 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:29:40.32 ID:kgLR5JNJO
春香「……はぁ、はぁっ……!」
春香「……あれっ? なんでここにプロデューサーさんとお姉ちゃんが……?」
P「俺たちはさっきからここを動いていない。春香は元の場所に戻ってきたんだよ」
春香「えっ? でも私、プロデューサーさんに言われた通りずーっとまっすぐ走ったつもりなんですけど……」
律子「春香、多分これはループする罠よ」
春香「ループ?」
律子「何らかの方法で空間が捻じ曲げられて、入り口と出口が繋がってしまっている」
律子「先へ進んだつもりでも、元の場所へ戻ってきてしまうようになっているんじゃないかしら」
春香「なるほど……だから今までも進んでも進んでもずっと同じ景色だったんですね!」
春香「でも、どうしましょう? これじゃ小鳥さんのところまで行けませんよ」
P「魔物を見つけさえすればなんとかなると思うんだけどなぁ……」
律子「………」
P「……仕方ない、どうすればいいか知恵を出し合おう」
春香「そうですね。三人で考えればきっと何か方法が見つかるはずです!」
P「……というわけで、律子、頼んだぞ」
律子「はい?」
春香「お姉ちゃんが頼りなんです!」ギュッ
律子「二人揃って丸投げとか、文殊の知恵はどこへ行ったんですか……」
律子「……まったく、仕方ないわねぇ」
525 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:33:38.17 ID:kgLR5JNJO
律子「じゃあ、二人のお望み通り私の考えを話すけどいいかしら?」
P「もちろん!」
春香「もう何か思いついたんですか? さっすがお姉ちゃん!」
律子「まあ、考えって言っても魔物がどこにいるかについての考察だけなんだけどね」
P「充分だよ。いやあ、律子は頼りになるなあ!」
春香「それで、魔物はどこにいるんですか?」
律子「その前に……」
律子「春香、今までの会話で何か気づかない?」
春香「えっ? 何がです?」
律子「私たち三人のここまでの会話の中に、明らかにおかしい点があったわ」
春香「えっと……」
春香「……す、すみません、全然わかんないです……」
律子「あなたって結構鈍感なのねぇ。私は真っ先に気づいたっていうのに」
春香「もう、焦らさないでくださいよぅ!」
P「そうだぞ、律子。事態は一刻を争うんだ」
律子「……分かりました。じゃあ言いますけど……」
律子「……あなた、プロデューサーじゃありませんよね?」
P「えっ……?」
526 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:38:31.44 ID:kgLR5JNJO
春香「プロデューサーさんが、プロデューサーさんじゃない……?」
春香「ど、どういう事なんですか?」
律子「そのままの意味よ。そこにいる人はプロデューサーじゃない別の誰かってこと」
律子「もっと言うと、この階を守っている魔物じゃないかと思っているわ」
春香「ええっ!?」
春香「で、でも、どこからどう見てもプロデューサーさんだと思うんですけど……」チラッ
P「律子、今は冗談言ってる場合じゃないんだ。お前も分かっているだろ?」
律子「……ふーん、あくまでシラを切るつもりですか」
P「そもそも、何を根拠に俺を魔物だなんて言うんだよ?」
律子「根拠……根拠ねぇ……」
律子「もちろんあります。あなたがプロデューサーじゃないっていう根拠は」
律子「でないとこんなこと言い出したりしませんって」
P「………」
春香「……あの、お姉ちゃん。本物のプロデューサーさんじゃない根拠って何なんですか?」
律子「ええ、今から説明するわ」
律子「あなたがプロデューサーではないのではと思ったのは、会話の中に三つの違和感を感じたからです」
P「………」
527 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:41:03.68 ID:kgLR5JNJO
律子「まず一つ目。あなたは小鳥さんとはぐれたって言ってましたけど、じゃあなんで小鳥さんは迎えに来ないんですか?」
P「それは……」
P「分からない。小鳥さんにも何か事情があったんじゃないか?」
律子「苦しい言い訳ですね。この地下渓谷は小鳥さんの庭のようなものらしいじゃないですか。それなのにあなたを迎えに来れない事情ってどんな事情なんでしょう?」
P「それが分からないからここにいるんじゃないか」
P「律子、お前はいつから仲間を疑ったりするようになったんだ?」
律子「………」
春香「あ、あの、二人ともケンカはダメですよ?」
律子「……ま、いいです。じゃあ二つ目の違和感」
律子「あなたは私たちよりも先にこの階の罠について知っていたみたいですけど、それはどうやって知ったんですか?」
P「? それは重要なことなのか?」
律子「重要です」
律子「この階の罠は、さっき判明した通り『無限ループの罠』です」
律子「でも、それって一人で気づけることですか?」
春香「どういうことですか?」
律子「私たちはさっき春香を使った実験でこの階の罠を知った」
律子「そして、その実験を提案したのはこの人。つまり、この人は私たちが来る前からこの階の罠を知っていたことになるわ」
春香「はい、そうなりますね」
P「………」
律子「でも、じゃあこの人はどうやって罠の内容に気づいたの?」
律子「さっきの実験みたいに先へ進む人とその場に留まる人に別れれば無限ループだと気づけるけど、果たして一人の時にその事実に気づくことができるかしら?」
春香「……確かに、一人だとさっきみたいな実験は出来ないし……」
P「そんなの簡単だよ。石か何かで壁に印を付けて、しばらく進んで同じ印が見つかれば無限ループしているってことだ。これくらいは誰でも思いつくことだと思うぞ?」
春香「あっ、なるほど」
律子「……ふむ」
528 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:54:26.22 ID:kgLR5JNJO
律子「……じゃあ、三つ目の違和感です」
律子「今までの二つの違和感は、あなたが本物のプロデューサーではないのでは? という疑念を私に抱かせるにすぎない、言わば取っ掛かりのようなもの」
律子「証拠と言うには不十分です」
律子「……が、三つ目の違和感は、それだけであなたが別人であるという証拠になり得る確定的なものです」
P「………」
春香「……!」ゴクリ
律子「……プロデューサー殿、あなたは……」
律子「いつから小鳥さんのことを下の名前で呼ぶようになったんですか?」
P「えっ……?」
春香「あっ……」
春香「そうですよ! 確かにプロデューサーさんはいつも『音無さん』って呼んでます!」
春香「『小鳥さん』って名前で呼んでるのは、聞いたことないです」チラッ
P「………」
律子「あなた、誰ですか?」
P「………」
律子「魔物なんでしょう? 姿を現しなさい!」
P「………」
P「…………いやあ、参った。これは調査不足だったなぁ」
スゥーー…
「……大正解。ボクはプロデューサーさんじゃないよ」
春香「……あ、あなたは……!」
529 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:56:06.03 ID:kgLR5JNJO
クルーヤ「……ハルカ、久しぶりだね。見違えたよ」ニコッ
春香「お父さんっ!」
律子「お父さん……?」
律子(じゃあ、この人が私の……)
クルーヤ「リツコ、見事だった。ボクの幻影を見破るなんて」
クルーヤ「とても賢く成長してくれたんだね。父親として鼻が高いよ!」ニコッ
律子「………」
クルーヤ「……それと、辛い思いをさせてすまない」
クルーヤ「君がコトリさんに操られて青き星を滅ぼそうとしていたのは知っていたんだ」
クルーヤ「でも、ボクはもうこの世の存在ではない。だから、世界に干渉して君を助けるわけにはいかなかった」
律子「………」
春香「お父さん……」
530 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/29(土) 07:58:31.80 ID:kgLR5JNJO
律子「終わったことはもういいです。私はこうして春香と共にここにいるんですから」
律子「あなたがこの世の存在ではないっていうのも、特に興味は無いですし」
春香「お、お姉ちゃん?」
クルーヤ「………」
律子「それより、この世界へ干渉するのが禁じられているっていうならなぜあなたはここにいるんです?」
律子「禁忌を犯してまで私たちの邪魔がしたかったっていうんですか?」
クルーヤ「………」
春香「お、お姉ちゃん、それはさすがに言いすぎじゃ?」
律子「……ごめんね、春香。この人はあなたにとっては父親かもしれないけど、私にとっては目的の邪魔をしようとしているただの敵でしかないわ」
春香「!」
クルーヤ「……はは、嫌われちゃったなぁ……」
クルーヤ「父親らしいことなんて何一つ出来なかったクセに今さらのこのこと君の前に現れるなんて、虫が良すぎるよな」
春香「お父さん、でもそれは」
律子「私たち、急いでいるんです。ここを通してもらえません?」チャキッ
クルーヤ「……ふむ」
春香「お姉ちゃん、ダメですっ! お父さんは敵じゃありません!」
律子「……いいえ」
律子「こうして私たちの前に立ちはだかっている以上、今まで出会ってきた魔物たちと同じ、排除すべき敵だわ」
春香「そ、そんな!」
クルーヤ「………」
クルーヤ「……自分のいる位置を知っておくのも大事なことだ。いいよ、かかっておいで、リツコ」ニコッ
律子「っ! ……はぁぁぁあああっ!!」
タタタタ…
春香「お姉ちゃんっ!!」
531 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/29(土) 07:59:47.51 ID:kgLR5JNJO
ここまでです
寝落ちしました
532 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/29(土) 15:51:21.17 ID:l1trogsLO
ドンマイ
533 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/26(土) 17:32:26.24 ID:zWOiNkMA0
もうすぐ1ヶ月
534 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/11/29(火) 18:04:30.29 ID:17JM/YY8O
ー 月の地下中心核 ー
『……はああああっ!!』
『バキッ!! ドガッ!!』
『ドゴオオオン!!』
P「………」
小鳥「………」
小鳥「みんな、頑張ってますね」
P「はい。もう物語も最終局面ですからね。それぞれが持てる力の全てで戦いに臨んでいると思いますよ」
小鳥「………」
P「……音無さん?」
小鳥「は、はい、何でしょう?」
P「なんだかぼーっとしてましたけど、大丈夫ですか?」
小鳥「大丈夫、です」
P「無理はしないでくださいね?」
小鳥「………」
P「あっ……」
P「すみません。音無さんはもう覚悟を決めているんですよね。それなのに俺……」
小鳥「……ありがとうございます、プロデューサーさん」
小鳥「でも心配いりませんよ。私は一人でも戦えますから」ニコッ
P「………」
小鳥「それに、みんなと戦うのが楽しみな気持ちもあるのも確かです」
小鳥「みんながどれだけ強くなったのか。それに対して私はどこまでやれるのか。ちゃんとみんなを楽しませることができるのか」
小鳥「長い間待ってた出番がようやく巡ってきたんですもの。私、張り切っちゃいますからねっ!」
P「音無さん……」
535 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/11/29(火) 18:12:03.86 ID:17JM/YY8O
P「あの、俺……」
P「この物語が今までゲームの通りに進まなかったのは、俺っていう不純物がこの世界に混ざってしまったからだとずっと思っていました」
P「でも、違ったんです」
P「この世界に呼ばれたみんなは、勝手が分からないながらも試行錯誤してそれぞれが思う通りに行動した」
P「その結果が今なんです」
P「本当は俺の存在なんて関係なくて、本来の筋書きなんかも関係なくて」
P「最初からみんなの想いが同じ方向を向いていた。……ただ、それだけだったんですよ」
小鳥「プロデューサーさん……?」
P「正直、ここまで俺がみんなの役に立てたかどうかは分かりません」
P「でも、俺はあなたも含めて全員のことを応援しています」
小鳥「っ……!」
P「一緒に戦うことはできないけど、ちゃんと最後まで見届けたい」
P「だから、何もしてあげられませんけど、せめて音無さんの側にいたいって思っています」
小鳥「……ありがとうございます、プロデューサーさん」ニコッ
小鳥(あなたがこの世界へ来てくれて、本当に良かったです……)
小鳥「……あの、ところでプロデューサーさん?」
P「はい、何です音無さん?」
小鳥「えっと……」
小鳥(せっかく二人っきりなんだし、もう少しお近づきになりたいなー……なーんて)
小鳥「あ、あの」
小鳥「えっと、その……できれば、名前で……」
P「? 名前がどうしたんです?」
小鳥「……や、やっぱりなんでもないです」
P「?」
小鳥(……ダメ、言えないわ。私のこともみんなみたいに名前で呼んでほしいだなんて)
小鳥(あーあ……私ってなんて弱い女なんだろう)
536 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/28(水) 03:40:28.34 ID:ec0dlTo5O
1レスしかないからあれから続き来るかと1日1回は確認してるが来ないのな
537 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/30(金) 13:14:55.13 ID:QA3BFH4EO
すみません、いろいろ忙しくてこんな時期になっちゃいました
まだ待っててくれてる人がいるかはわかりませんが今日の夜投下します
538 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/12/30(金) 23:58:32.92 ID:4gchaJZ2O
ー 月の地下渓谷 B5F ー
プリンプリンセスたち「うふふふふ……!」ワラワラ
響「……ほんっとに、倒しても倒しても湧いてくるなぁ」
響「ま、でも、ラストダンジョンの敵があっさり倒せたら確かに物足りないもんな」
響「よーし、こうなったら全部倒してやるさー!」
響「いっくぞー!!」ダッ
ビュンッ…!
響「……ナンクル砲っ!!」バッ
ドゴオオオンッ!!
…ドサッ
プリンプリンセス1「」
響「もういっちょ!!」バッ
ドゴオオオンッ!!
プリンプリンセス2「」
プリンプリンセス3「っ! させませんわっ!」ダッ
響「ふふーん! 遅いぞっ!」ヒョイッ
響「……はっ!!」バッ
ドゴオオオン!!
響「い!!」バッ
ドゴオオオン!!
響「さー!!」バッ
ドゴオオオン!!
響「いっ!!」バッ
ドドドド…!!
ドゴオオオンッ!!!
ドサドサドサッ!!
プリンプリンセス3「」
プリンプリンセス4「」
プリンプリンセス5「」
プリンプリンセス6「」
プリンプリンセス7「」
プリンプリンセス8「」
539 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:01:39.73 ID:1Hr7ym9uO
…スタッ
響「……よし、半分以上は減らしたかな」
響「えへへ、自分、確実に強くなってるぞ!」
プリンプリンセス9「ちぃ……! すばしっこい……!」
プリンプリンセス10「それに、あの人間業とは思えない砲撃が厄介ですわね……」
プリンプリンセス11「ですが、今度はこちらのターンですわよ!」
プリンプリンセス12「覚悟なさいっ!」
響「余裕余裕! どんな攻撃だって避けてやるさー!」タンッ タンッ
プリンプリンセス12「いきますわよっ! ……王女の歌!!」
プリンプリンセスたち「ラララ〜〜♪」
響「えっ…………歌?」
ーー♪…
響「なーんだ、どんなすごい攻撃がくるかって期待して損したなー」
ーー♪…
響「そんな攻撃、痛くもかゆくもないぞ!」
ーー♪…
響「それじゃ、そろそろ反撃させてもらうからな!」ビシッ
ーードクンッ
響(!? ……な、なんだ?)
響(今、何か……)
響(……あ、あれ!? 身体が動かない……!)グッ
540 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:04:15.89 ID:1Hr7ym9uO
プリンプリンセス9「うふふっ♪ 思うように身動きが取れないでしょう?」
プリンプリンセス10「『王女の歌』を聴いた者は自由と意思を奪われ……」
プリンプリンセス11「死が訪れるまで、ダンスドールとして永遠に踊り続けるのです!」
プリンプリンセス12「形勢逆転、ですわねっ!」
響(う、うそ……でしょ……!)グッ
響(死ぬまでずっとって……!)ググッ
響(……あ……ダメだ、身体が、勝手……に……)
響「うがあああっ!!」タッ
タタンッ
響(うぅ……どうしよう……)
響(このままじゃホントに死ぬまで踊り続けることになっちゃうぞ……)
響(自分、ダンスは大好きだけど、踊り死になんて絶対にいやだっ……!)
響「っ……!」キュッ キュッ
プリンプリンセスたち「ラララ〜〜♪」
プリンプリンセス9(さあ、舞踏会の始まりですわよ!)
プリンプリンセス10(このドールは果たしていつまで耐えられるのでしょうね)
プリンプリンセス11(でも、焦ることはありませんわ)
プリンプリンセス12(だって、パーティは死ぬまで終わらないのですから!)
541 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:08:06.22 ID:1Hr7ym9uO
ー 月の地下渓谷 B2F ー
ベヒーモス「うおおおおっ!!」
ドドドドッ!!
真「はああああっ!!」ガシッ
ベヒーモス「……ふふっ……! アタイと力比べとは、面白い……!」ジリッ
真「へへっ……!」ググッ
ズザザッ…
ベヒーモス「……どうしたんだい? 本気を出すんじゃなかったのかい?」ズズッ
真「……くぅ〜……!」ググッ
真「さすがに純粋な力比べじゃ勝ち目は薄いか……!」
真「……それだったら!」タンッ
…フワッ
ベヒーモス「なっ!? あの態勢から跳んだだと!?」
真「……飛燕、龍神脚!!」
ビュンッ…
ズドオオンッ!!
ベヒーモス「……なんて蹴りだ……! だが、狙いは外れだ!」ダッ
…スタッ
真「……飛燕……」クルッ
真「旋風脚っ!!」
ブオッ…
ドゴォ!! バキィ!!
ベヒーモス「ぐっ……!」ザッ
真「……雷煌拳っ!!」バリッ
ズガガガガッ!!
ベヒーモス「……ぬぅ……!」ヨロッ
542 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:11:32.53 ID:1Hr7ym9uO
…スタッ
真「……ふぅ」
ベヒーモス「………」
真「君はさっき『最後に勝敗を分けるのは圧倒的なパワーだ』って言ったよね?」
真「ボクの故郷には、柔よく剛を制すって言葉があるんだ」
真「君の馬力は確かに滅茶苦茶だけど、普段から響の身のこなしを見ているボクには、君の動きが速いとは感じられない」
ベヒーモス「………」
真「ボクの動きに、ついて来られるかな?」タンッ
ベヒーモス「!」
…ビュンッ!
ベヒーモス「……ふっ!」ダッ
真「……遅いっ!」
…シュタッ
真「……暫烈拳っ!!」
ドゴゴゴゴ…!
真「……破っ!!」ブンッ
ドゴォッ!!
ベヒーモス「っ……ぐ……」ザッ
543 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:14:23.04 ID:1Hr7ym9uO
真「へへっ! どう? 確かに戦いにはパワーも重要だけど、身のこなしだってもちろん無くてはならない要素だ」
真「ボクは、バランスが大切だって思うんだ」
ベヒーモス「……ふふっ」
ベヒーモス「このアタイの身体に傷を付けられる人間なんて今までいなかった」
ベヒーモス「あんたの技は本当に大したもんだよ」
ベヒーモス「……だが、それが全力なのかい?」
真「!」
ベヒーモス「身のこなし……か」
…ザッ
真(ん……? また突進かな?)
真(あいつの突進スピードはもう分かった。響ほどは速く動けないけど、あれくらいボクだって躱せる!)
…ジリッ
ベヒーモス「…………はっ!!」ダッ
ブワッ…
真「えっ、跳ん……!?」
ベヒーモス「はあっ!!」ブンッ
ブオオオオッ!!
真「! 空中から衝撃波!!」
真(予想外で反応が遅れた! 避けられない!)
真「くそっ」グッ
ドゴオオオオオオンッ!!
真「……くっ……!」
ベヒーモス「ふんっ!!」ブンッ
ザシュッ!!
真「うあっ!!」ヨロッ
…ザッ
ベヒーモス「はあっ!!」ブンッ
真「っ……!」タンッ
クルンッ…スタッ
544 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:17:44.79 ID:1Hr7ym9uO
ベヒーモス「何も突進だけがアタイの武器じゃない」
ベヒーモス「この爪も角も、そこいらの剣や槍なんかに遅れは取らないように鍛えてある」
真(……まさかあんな巨体であんなに軽やかに跳ぶなんて思ってなかった)
真(油断しちゃったなぁ)
真(「柔よく剛を制す」なんて偉そうに言った自分が恥ずかしいよ……)
真「でも、確実に以前戦った時より成長してるよね? 君も修行したのかい?」
ベヒーモス「この動きは、コトリ様の『だんすれっすん』で身につけたのさ」
真「だ、ダンスレッスン?」
ベヒーモス「ああ。あいどるには必要不可欠なものなんだろう?」
真「そ、それはまあ、そうだけど……」
真(よく分からないけど、小鳥さんはやっぱりただボクたちを待ってるだけじゃなかったってことか)
真(これもボクたちを楽しませるために考えたこと……なのかな?)
真(……へへっ。小鳥さん、超えてみせますよ。あなたが用意した試練!)
ベヒーモス「さあ、見せてやるよ。れっすんで鍛えたアタイの実力を!」
真「……望むところだっ!」グッ
545 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:23:04.85 ID:1Hr7ym9uO
ー 月の地下渓谷 B4F 内部 ー
…ゴオオオォォォオオッ!!
銀竜「……く……!」
金竜「……ぬぅ……!」
亜美「よしっ!」グッ
亜美「んっふっふ〜! どうよ、亜美の『鳳翼天翔』は! びっくりしたっしょ?」
金竜「……炎を不死鳥に変えるとは、見事なり……!」
金竜「だが、貴様が不死鳥で戦うというのならば、我は天翔ける竜となりて貴様を喰らってやろうぞ!」
銀竜「しかし兄者、我らは既に竜であるぞ!」
金竜「む、そうであったな!」
亜美(天然さんかな?)
銀竜「しかし……」
銀竜「形が変わったとはいえ、先程の技の中身はファイガ二発分に変わりはない。我ら兄弟が耐えられぬ威力ではないぞ!」
亜美「ん……なかなかスルドイじゃん」
亜美「確かに銀ぴょんの言うとおりだよ。ファイガ二発じゃちょっとハデさが足りなかったかもしんないね」
亜美「だったら……」ザッ
亜美「……もうワンランク上、いっとく?」ニヤリ
銀竜「……なに?」
金竜「更に上だと……?」
546 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:26:42.52 ID:1Hr7ym9uO
亜美「ねえ、その前にちょっとエーテル飲んでもいい?」
銀竜「魔力を回復させるのか。……兄者、どうする?」
金竜「ここで叩いても面白くあるまい。あやつの技を全て受けきった上で倒す。その方が箔が付くというものだ」
銀竜「流石は兄者、格の違いを見せつけるのだな!」
銀竜「……ということだ。子供よ、好きにするが良い」
亜美「んもー、子供じゃなくて亜美だよ! でもオッケーしてくれてありがと!」
亜美「えーっと……」ゴソゴソ
亜美(……あれっ? エーテルもうこれだけしかないじゃん。いつの間に使ったんだっけ?)
亜美(これじゃあと三回……ううん、二回くらいで勝負を決めないとダメっぽいよ)
亜美「んく、んく……」
亜美「……ふぅ。MP回復かんりょー!」
亜美「そんじゃ行っくよー!」
金竜「来い!」
亜美「……ブリザガ!」パリッ…
銀竜「今度は冷気か……!」
亜美「………………×3!!」パリパリパリッ
金竜「! 今度は三つ同時に!」
亜美「マイナス二百……えーと何度だっけ? 忘れたけど、接待零度の世界、タイケンさせてあげるよ!」
亜美「くらえー!! オーロラ・エクスキューションッ!!」バッ
キラキラキラ…
金竜「……冷気が、輝いて……! これが接待零度とやらか!」
銀竜「兄者、絶対零度だ!」
コオオォォ…!!
パリパリッ…シャキィィンッ!!
547 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:32:55.58 ID:1Hr7ym9uO
亜美「……ふぃ〜、同時に三つはちょっとしんどかったかも」
亜美「でも……」チラッ
銀竜「」
亜美「銀ぴょんはカチンコチンだね。これで一体ゲキハ!」
亜美「あとは金ぴょんを倒すだけっぽいよ!」
…ビュンッ!! ドガッ!!
亜美「ぐえっ!?」ヨロッ
ドサッ
金竜「……あまり舐めてもらっては困るな。我らとてコトリ親衛隊の端くれ、この程度の子供騙しでやられはせぬっ!」
亜美「な、なんでピンピンしてんのさー!? まさか亜美のオーロラ・エクスキューション、全然効かなかったの?」
金竜「……我が弟が盾になったのだ」チラッ
金竜「……行くぞ!」フワッ
亜美「ぐぬぬ〜! ひきょーだよ〜!」
金竜「! 卑怯……だと?」ピタッ
548 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:35:51.63 ID:1Hr7ym9uO
亜美「そーだよひきょー者ー! 弟を盾にするなんてカワイソーじゃんか!」
亜美「兄としてはずかしくないのかー!」ビシッ
金竜「ぬ……! た、戦いに情など無用なのだ! それがたとえ血を分けた弟であってもな」
亜美「そんなのおかしーよ!」
亜美「亜美にもきょうだいはいるけど、チョー仲良しだもん」
亜美「たまにケンカしちゃったりもするけど、すぐに仲直りするし」
亜美「もしも亜美がピンチになったとしても、真美を盾にして亜美だけ生きのびるなんてことだけは……ゼッタイにしない。したくない!」
亜美「だって、それがきょうだいの絆ってやつだと思うから!」
金竜「ぐ……ぬぅ……!」
金竜「銀竜……我は……」
亜美「……よし、今がチャンス!」
亜美「サンダガ! ……×3」バリバリバリッ
金竜「あっ、貴様、ズルいぞ!」
亜美「我が光速の拳、受けてみよ!」
亜美「ライトニング・プラズマーー!!」
…キラーンッ!
ズガガガガッ…!
金竜「ぬおおおおーーっ!!」
ドゴオオオォォォオオンッ!!
549 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:39:32.98 ID:1Hr7ym9uO
ー 月の地下渓谷 B3F ー
雪歩「えいっ! えいっ!」ブンッ
バキッ! ガキィン!
魔人兵「無駄だよ。君の得物ではこの装甲を貫くことはできない」
魔人兵「せめてオレのような兵器が無ければね」
魔人兵「……はっ!」
ガコンッ!
キュイィィン…ドゴオオオンッ!!
雪歩「ひぅっ!」
雪歩「……っ、ぜ、全然平気ですぅ!」
魔人兵「うーん……」
魔人兵「ビーム砲もレーザーもミサイルも全て通じない、か」
魔人兵「決め手を打てないのはこちらも同じみたいだね」
魔人兵「君の鎧がこれほどまでに堅牢だとは思わなかったよ」
雪歩「そ、そうです! アダマンアーマーはどんな攻撃だって防いじゃうんですぅ!」
雪歩(……小鳥さんの『メガフレア』だけは防げなかったけど)
雪歩(でも、それはきっと小鳥さんがものすごく強いから、だよね?)
雪歩(だから大丈夫なはず。今はなんとかしてあの魔物さんの装甲を破壊する方法を考えないと)
…パラッ
魔人兵「……うん?」
魔人兵(今の……)
550 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:42:55.30 ID:1Hr7ym9uO
雪歩「い、行きますぅ!」チャキッ
タタタタ…
魔人兵「また懲りずにスコップで殴打か。無駄だっていうのに」
雪歩「はああああっ!」
キラッ…!
魔人兵「! なんだ? スコップが光って……」
雪歩「……えーーいっ!!」ブンッ
バキィンッ!!
ポロッ…
魔人兵「……げっ、オレの装甲に傷が……」
雪歩「……や、やりましたぁ!」グッ
雪歩(成功して良かったぁ……『気』をスコップに纏わせる技)
雪歩(真ちゃんから『気』のことについて少しだけ教えてもらってたけど、実際にちゃんと理論を理解して実践するのは初めてのことだったもんね)
雪歩(これも、ククロさんに鍛えてもらったスコップと真ちゃんの教えがあったからこそだよ)
雪歩(ありがとう、二人とも)
魔人兵「先手を取られちゃったか。この戦い、君が一歩リードってところだね」
雪歩「えへへ……」
魔人兵「でも、喜ぶのはまだ早いんじゃないかな? こちらの装甲に傷が付いたとはいえ、ほんの少し欠けただけだ。かすり傷に過ぎない」
魔人兵(それに引き換え……)チラッ
雪歩「そ、そうでした……。でも、この調子で行っちゃいますぅ!」
魔人兵(気づいていないのか? 自分の鎧にも傷が付いているってことに)
魔人兵(あの傷に合わせてオレの最大の砲撃を加えれば、おそらく……)
魔人兵(……よし、試してみるか)
551 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:47:02.27 ID:1Hr7ym9uO
魔人兵「悪いね、ちょっとだけ本気を出してみることにするよ」
ウイィィン…ガコンッ!
雪歩「!」
雪歩(すごく大きな砲台が……)
雪歩(な、なんだろう、なにか嫌な予感がする……)
雪歩(気をつけなきゃ!)グッ
魔人兵「さあ、行くぞ!」
雪歩「っ!」ビクッ
魔人兵「……っと、その前に」チャキッ
キュイィィン…ドゴオオオンッ!!
雪歩「えっ!? じ、地面が……!」
魔人兵「君は穴掘りが得意みたいだからね。地中に逃げられないように少々地面を抉らせてもらったよ」
雪歩「そ、そんなぁ……」
雪歩(で、でも、大丈夫だよね、きっと。だってアダマンアーマーは今までずっと私を守ってくれたもん)
魔人兵「さて、それじゃ今度こそ」
ゴオオオォォ…
雪歩「あわわわわ……! な、なんだかものすごいエネルギーが集まってますぅ!」
魔人兵「これで君の装甲を突破出来なかったら……オレの負けでいい」
魔人兵「…………波動砲!!」
ゴオオオォォ…
雪歩「ひぃっ!」
………………カッ!!
ドゴオオオオォォォオオォオンッ…!!!
552 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:49:43.48 ID:1Hr7ym9uO
雪歩「………」
雪歩「……うぅ……」
雪歩「けほっ、けほっ……」
雪歩「わ、私……! そ、そうだ、アダマンアーマー!」ゴソゴソ
雪歩「……ほっ、良かったぁ。壊れてないみたい」
魔人兵「……果たして本当にそうかな?」
雪歩「えっ」
…パキッ
雪歩「あ、あれ……?」
パキパキッ…
雪歩「う、ウソ……」
パキパキパキッ…
…………バキィンッ!!
ボロボロ…
雪歩「そ、そんな、アダマンアーマーが……」
雪歩(壊されちゃいましたぁ……)
魔人兵「君は気付かなかったようだけど、オレと戦う前から君の鎧にはすでに傷が付いていた」
魔人兵「よほど強力な攻撃を受けたんだろうね。大きなヒビが入っていたよ」
雪歩「そ、そうだったんですか……?」
雪歩(全然気付かなかったよぅ……)
雪歩(も、もしかして、昨日小鳥さんのメガフレアを受けちゃったからかな……?)
魔人兵「この戦い、どうやらこちらの勝ちが見えてきたようだ」
魔人兵「あいどるの真の実力とやらを見てみたかった気もするけど、まあ、それはコトリ様の過大評価だったのかもしれないしな」
魔人兵「……あとは、仕事を遂行するだけだ」
ウィーン…ガコンッ!
魔人兵「可哀想だけど、覚悟を決めてもらうよ?」
雪歩「ど、ど、どうしようっ……!」ビクビク
553 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:54:04.72 ID:1Hr7ym9uO
ー 月の地下渓谷 B1F ー
レッドドラゴン「熱線っ!!」
ドゴオオンッ!!
…シュンッ
あずさ「ブリザガ〜」
コオォォ…シャキーン!!
レッドドラゴン「うおっ!? 後ろかよ!」カチコチーン
レッドドラゴン「……んのやろっ!!」メキメキ
…パリンッ!
あずさ「あ、あらあら……強引に氷を割ってしまうなんて……」
レッドドラゴン「うりゃっ!!」ブンッ
あずさ「きゃっ……」ヨロッ
レッドドラゴン「もらったァ!!」ブンッ
ドゴォン!!
レッドドラゴン「………」
レッドドラゴン「……ちっ、またテレポで逃げやがったな」
あずさ「……ふぅ、危なかったわ〜」
あずさ(あの魔物さんはとても熱いから、きっと氷が弱点だと思うのだけど〜)
あずさ(ブリザガもあまり効果が無いみたい)
あずさ(やっぱり『あの魔法』を使わないと勝てないような気がするわ〜)
あずさ(う〜ん、でも……詠唱呪文どころか名前すら思い出せないのよねぇ)
あずさ(確かそんなに長い名前ではなかったような気がしたんだけど……)
あずさ(少し落ち着いて考えてみましょう。そうすれば必ず思い出せるわ、きっと)
554 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 00:56:39.58 ID:1Hr7ym9uO
あずさ(え〜っと、最初の文字は〜)
あずさ(そう、確か『メ』だったかしら〜?)
あずさ(メ、メ……)
あずさ(……メガネ?)
あずさ(……何か違うわねぇ)
あずさ(メ、メ……)
あずさ(……メザシ?)
あずさ(お酒のおつまみに良さそうだけど、これでもない気がするわ〜)
あずさ(メ、メ……)
あずさ(…………メオト?)
あずさ(………)
あずさ(う〜ん? 少しだけ近いような……)
あずさ(でも……)
あずさ(うふふ、なんだかいい響きねぇ♪)
あずさ(私もいつかはステキな人と……)
…ッドゴオオオン!!!
あずさ「きゃっ……!」ヨロッ
レッドドラゴン「よそ見してんじゃねーぞコラァ! 戦う気あんのかよ!」
あずさ「そ、そうだったわ。今は戦いの最中なのよね」
…ニョキニョキッ
555 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 01:00:06.88 ID:1Hr7ym9uO
レッドドラゴン「……へっ、何事もなかったかのように再生しやがる……」
レッドドラゴン「だが、そんな戦い方がいつまでも続けられると思うなよな!」
レッドドラゴン「あんたが魔道士で魔法を主体として戦う限り、いつかは魔力の底が見えてくるんだ」
あずさ(……確かにそうよね。このまま移動のたびにテレポを使い続けても、魔力の消耗が激しいわ)
レッドドラゴン「なるべく魔力を節約しつつ、さっき撃ちそこなった魔法を思い出す」
レッドドラゴン「あんたはそう考えるんだろうなあ?」
あずさ(あらあら、バレバレなのねぇ)
あずさ(というか、あの魔物さんはなんとなく考えるよりも先に手が出るタイプかなって思っていたけど……結構頭が回るみたいね)
レッドドラゴン「……おい、あんた今失礼なこと考えなかったか?」
あずさ「き、気のせいですよ〜」
レッドドラゴン「……とにかく、忘れた魔法を思い出すんならさっさとしろよな!」
レッドドラゴン「オレ様はそこまで気の長い方でもねえ」
レッドドラゴン「早く思い出さねえと、消しちまうぞ!」
あずさ「それは困りますね〜」
あずさ(あまり悠長に構えていられないかもしれないわね)
あずさ(なるべく早めに思い出さないと)
556 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 01:03:05.00 ID:1Hr7ym9uO
レッドドラゴン「そんじゃバトル再開すんぞ!」
レッドドラゴン「うおおおお!」
レッドドラゴン「……熱線っ!」
ゴオオオオッ…!
あずさ「!」
あずさ(あれをテレポ無しで反射神経で避けるのは、私じゃほぼ無理だわ)
あずさ(だったら肉を斬らせて……)
…ドゴオオオンッ!!
あずさ「ううっ……」ヨロッ
レッドドラゴン「……お? 避けない? 瞬間移動はもうやめたのか?」
レッドドラゴン「だったら畳み掛けてやんぜっ!!」
ドドドドドド…
あずさ「……スロウ!」
カタカタ…シュルンッ!
レッドドラゴン「ぬおっ!」ノロ〜
あずさ「……バイオ!」
ブニューン!!
レッドドラゴン「痛ってえ!! クソっ!」
あずさ(意外に状態異常の魔法が効くみたい。これならテレポ無しでもなんとか戦えそうね)
…ニョキニョキ
レッドドラゴン「やってくれんじゃねーか! さすがはオレ様がライバルと認めただけはあるな!」
あずさ「あらあら、それは光栄です♪」ニコッ
レッドドラゴン「!」ドキッ
レッドドラゴン「……ちっ、だからって手加減なんかしねーからな!」
557 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 01:06:37.34 ID:1Hr7ym9uO
ドゴォン! ドカァン!
あずさ(……そもそも、なぜ私は忘れてしまったのかしら)
あずさ(試練の山で確かに覚えて、一度使ったことだってあるっていうのに)
あずさ(……命と引き換えに、だけれども)
あずさ(やっぱり私、トラウマになってしまっているの?)
あずさ(命を落とす原因となった魔法だから……?)
レッドドラゴン「……なあ、あんた」
あずさ「はい、あの、私、あずさっていいます〜」
レッドドラゴン「……アズサ。ひとつ気になったことがあんだけどよ」
あずさ「はい、なんでしょう?」
レッドドラゴン「あんた、本当にゾンビなのか?」
あずさ「え〜と……たぶん」
あずさ「私、実は一度死んでいるんです。その時にゾンビのお友達が助けてくれて、それで……」
レッドドラゴン「……ふーん。転生ってやつか? でも、それにしちゃ全然ゾンビらしく見えねーんだよな」
あずさ「あの〜、それはどういうことですか?」
レッドドラゴン「ゾンビってのはよ、もっとこう、腐ってて体も崩れかけててグチャ味噌で……」
レッドドラゴン「うまく言えねーけど、あんたみてーにキレイなゾンビなんて今まで見たことねーんだよ」
あずさ「あ、あら〜……キレイだなんてそんな〜……///」
レッドドラゴン「あっ……///」
レッドドラゴン「い、今のは違うぞ! 別にあんたが美人でオレ様の好みのタイプだとかそういうつもりで言ったんじゃねーからなっ!!」
あずさ「うふふ♪」ニッコリ
レッドドラゴン「くそぉ……余計なことを言っちまったぜ……」
レッドドラゴン「と、とにかくだ! 勝負は勝負、きっちりカタは付けるからなっ!」ビシッ
あずさ「は〜い♪」ルンルン
558 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/31(土) 01:29:50.02 ID:VHqd7W40O
金竜銀竜の漫才が面白いな
559 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/01/26(木) 19:41:26.81 ID:3PjUUPrA0
まだか
560 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/02/09(木) 21:49:24.19 ID:dryvj0/kO
二ヶ月たっちまうぞ
561 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/02/12(日) 21:00:13.55 ID:2zaNk/pmO
ー 月の地下渓谷 B6F ー
伊織「……ふっ!」ブンッ
ザシュッ!!
リルマーダー「ぐっ……このっ! サンダガっ!!」
ズガガガピシャーン!!
伊織「……遅い!」
伊織「はっ!」ブンッ
ズバッ!!
リルマーダー「ちくしょう……!」ヨロッ
伊織「あら? どうしたのかしら? 私の動きについて来れないみたいだけど」
伊織「私に見せてくれるんじゃなかった? 『王の力』ってやつを」
リルマーダー「………」
リルマーダー「けっ、わかってるよ。今から見せてやる。後悔すんじゃねーぞ!」
リルマーダー「……!」ゴゴゴ
伊織「!」
伊織(空気が変わった……)
伊織(魔力を集中させているってことは、アイツの『王の力』とやらは魔法なのかしら)
伊織(ま、どんな魔法でも当たらなきゃいいことよね)
562 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:02:04.62 ID:2zaNk/pmO
リルマーダー「……汝、真理の囁きにのみ耳を傾けよ」
リルマーダー「万物姿形隠すこと、あたはず!」
リルマーダー「…………ライブラ!」バッ
伊織「!」
伊織(……聞いたことない魔法ね。とにかく魔法が発動するより速く射程圏外へ!)
ダッ…
ピピピッ…
ピコーン!
伊織「……なっ!?」ピタッ
伊織「なによこれ……どういうこと?」
『リルマーダー
7650/12000 弱点:雷』
伊織(アイツの頭の上に文字が……)
563 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:04:29.33 ID:2zaNk/pmO
リルマーダー「げっ、間違えた! これじゃオイラの情報が筒抜けじゃねーか!」
伊織(対象の情報を知る魔法……ってところかしら? そういうのもあるのね)
伊織(アイツはそれを間違えて自分に使ったってこと? 間抜けにもほどがあるわ)
伊織(ま、なんにせよ重要なのは、『アイツの弱点が雷』って部分)
リルマーダー「今度こそっ! ライブラっ!」バッ
ピピピッ…
伊織「! 今度は私に!」
伊織「ちっ!」ダッ
タタタタ
リルマーダー「ムダだぜ! どうやってもライブラからは逃げられやしねー!」
…ピコーン!
『イオリ
誕生日:5月5日 血液型:AB 星座:牡牛座
身長:153cm 体重:40kg
スリーサイズ:B77 W54 H79
趣味:海外旅行、食べ歩き』
伊織「」
564 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:08:14.65 ID:2zaNk/pmO
伊織「こっ……!」
伊織「この変態! de変態! EL変態! 変態大人ー!」カァァ
伊織「なに乙女の秘密を勝手に暴いてくれてんのよっ!」ビシッ
リルマーダー「へー、お前イオリっていうのかー。……変な名前」
伊織「うっさい!! アンタほどじゃないわよこのエロガキっ!!」
リルマーダー「なんだよー、イオリだってガキじゃんかー。B77ってあんまり大っきくないよな?」
ズガガガガーーンッ!!
リルマーダー「ぐええぇっ!?」ヨロッ
伊織「……アンタ、私を怒らせたわね……!」バリッ
伊織「もう手加減なんてしてあげないんだからっ!」
リルマーダー「ちょ、ちょっと待」
伊織「問答無用! 雷迅っ!!」バッ
ズガガドゴオオオォォオオンッ!!
リルマーダー「いぎゃああーー!!」
565 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/02/12(日) 21:10:32.91 ID:2zaNk/pmO
伊織「……ったく、なんでこの世界は変態ばっかりなのよ! これじゃ現実と大して変わらないじゃない!」
伊織「ま、これでアイツも立ち上がれないでしょ。二回も弱点を突いたんだし」チラッ
リルマーダー「」
伊織「バカバカしい戦いだったわ。さっさとやよいを追いかけないと」クルッ
スタスタ
リルマーダー「……待てよ……。オイラまだ参ったって言ってないぞ……」ヨロッ
伊織「……しぶといわね。さっさとやられちゃいなさいよ!」
伊織「雷迅っ!」バッ
ズガガドゴオオオォォオオンッ!!
リルマーダー「ぐああああっ!!」
リルマーダー「……ぐっ……」フラッ
伊織「ま、まだ倒れないの? アンタの弱点は雷のはずじゃない!」
リルマーダー「……ああ、そうだぜ。確かにオイラの弱点は雷だ」
リルマーダー「でも……」
リルマーダー「同時に雷はオイラの得意とする属性でもあるっ……!」バリッ
リルマーダー「うあぁぁああああっ!!」バリバリッ
伊織「!」
伊織(ウソ……! アイツ、まさか帯電してる……?)
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