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P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2
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310 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/03(日) 22:49:04.73 ID:5d0dgUrZO
真「貴音、本当に一人でやるつもりなの?」
貴音「心配はいりません。わたくしは必ず勝ちます」
雪歩「四条さん……」
コトリマインド「さあ、行くわよ、貴音ちゃん……!」ゴゴゴ
貴音「………」
雪歩「小鳥さん、メガフレアを使う気だ……!」
真「メガフレア?」
雪歩「私がさっき小鳥さんと戦ってた時に受けた魔法なんだけど、このアダマンアーマーでも防げなかったすごい魔法なんだよ……!」
真(貴音、本当に勝算はあるのかい……?)
コトリマインド「右手にフレア……」ブゥン
コトリマインド「左手にフレア……」ブゥン
コトリマインド「併せて、メガフレアーー!!」バッ
貴音「………」
311 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/03(日) 22:50:13.83 ID:hlO9QPI3O
反射するのかな?
312 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/03(日) 22:55:37.62 ID:5d0dgUrZO
響「貴音っ……!」
美希「大丈夫だよ、響。この勝負、きっと貴音の勝ちなの」
響「美希、いつの間に起きたんだ!?」
貴音「………」バッ
貴音「小鳥嬢、あなたに教えて差し上げます。本物と付け焼き刃の違いを」ゴゴゴ
貴音(……あの子たちの想いは、今、この胸に!)
貴音「……メガフレア」バッ
コトリマインド「!!」
ゴゥゥ…ン…
ババババババババッ!!
ドゴオオォォオオ…ン!!
313 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/03(日) 23:03:12.64 ID:5d0dgUrZO
貴音「………」
貴音「…………く」ガクッ
響「貴音っ!」タタタ
やよい「貴音さんっ!」タタタ
響「大丈夫か!?」ガシッ
貴音「……すみません、大丈夫です。慣れない魔法を使ったので、その反動が少々大きかっただけです」
やよい「ぽーしょん、のんでください!」スッ
貴音「ありがとうございます、やよい」
あずさ「貴音ちゃん、すごかったわ……」
真「まさか同じ技であの小鳥さんに勝っちゃうなんてね」
貴音「いえ、決して同じではありません。小鳥嬢のそれは、ただの模倣ですから」
伊織「……それより、小鳥は?」
亜美「ピヨちゃんなら……」
真美「あそこだよ」スッ
コトリマインド「………」グッタリ
雪歩「こ、小鳥さん」
千早「……勝負はあったみたいね」
亜美「でも、ピヨちゃんへーきかな……」
真美「………」
真美「……真美、ピヨちゃん回復してくるっ!」ダッ
春香「待って、真美!」ガシッ
真美「はるるん! なんで止めるのさ!?」
春香「あれを見て」スッ
314 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/03(日) 23:09:50.42 ID:5d0dgUrZO
シャララーン! キラキラキラ…
コトリマインド「……う」ピクッ
P「………」
真美「兄ちゃん!?」
真美(いやしの杖、持ってきたんだ……)
P「音無さん、立てますか?」スッ
コトリマインド「ぷ、プロデューサー…さん……」
コトリマインド「なぜ……?」
P「仲間が傷付いていたら助ける。当たり前の事じゃないですか」ニコッ
コトリマインド「わ、私は、みんなにヒドい事をしたんですよ? みんなだけじゃない、この世界の人たちにも……」
P「何があろうと、あなたが俺たちの仲間だって事は変わりませんよ」
コトリマインド「プロデューサーさんっ!」ブワッ
コトリマインド(私……もう死んでもいいかも……)
315 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/03(日) 23:19:13.45 ID:5d0dgUrZO
P「……貴音、すごかったぞ。まさかお前がメガフレアを使うとは思わなかったな」ニコッ
貴音「あなた様……?」
P「みんな、すまん」ペコリ
春香「プロデューサーさん、どうして謝ったりするんですか……?」
P「……俺、音無さんと一緒に行く事にした」
亜美「えっ!?」
真美「に、兄ちゃん……?」
伊織「……な、何考えてんのよアンタ!? 正気なの!?」
P「ああ、俺は正常だよ」
コトリマインド「プロデューサーさん……?」
響「プロデューサー、なんで……?」
P「音無さんを真の意味で救えるのは、俺しかいないと思ったんだ」
真「……それ、どういう意味なんですか?」
雪歩「真の意味って……」
P「今はまだ言えない。でも、必ず音無さんは俺が救ってみせる。だから安心してくれ」
千早「……本気なんですね?」
P「……ああ」コクリ
P「みんな。……地下中心核で待ってる。また会おう」
P「……さ、音無さん、行きましょう」ダキッ
小鳥「すみません、プロデューサーさん」
スタスタ…
春香「プロデューサーさん……」
千早「………」
美希(ハニー……)
316 :
◆bjtPFp8neU
[sage]:2016/07/03(日) 23:26:19.53 ID:5d0dgUrZO
ここまでです
ようやく終わりが見えてきたかも
317 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/03(日) 23:28:03.08 ID:X/r7tupnO
次はいつきてくれますか?乙
318 :
◆bjtPFp8neU
[sage]:2016/07/03(日) 23:36:35.47 ID:5d0dgUrZO
すみません
次回はだいぶ先になると思います
7月中には、としか言えません
319 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/04(月) 00:11:00.89 ID:ofKF7ppLO
わかりました期待して待ってます
320 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/30(土) 00:41:09.92 ID:U2KwFw4WO
七月も明日で終わるぞ
321 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/07/30(土) 17:23:55.27 ID:cqJZ38jz0
ー 月の地下中心核 ー
小鳥「……お待ちしてました、プロデューサーさん!」
P「えっと……本物の音無さん、ですよね?」
小鳥「はいっ!」ニコッ
P(俺は月の民の館のクリスタルルームでみんなと別れ、音無さんの分身に導かれて月の地下中心核へとやってきた)
P(そこでようやく本物の音無さんと会うことができたわけだけど……)
小鳥「プロデューサーさん、どうかしましたか?」
P「ああ……いえ、なんでもないんです」
P(本物の音無さんは、クリスタルルームでのみんなとの戦いをここで『視て』いたらしい)
P(つまり、クリスタルルームに現れた音無さんの分身の行動も全て音無さん自身の意思だったわけだ)
P(やはり彼女は、最後までラスボスを演じきるつもりなんだ……)
小鳥「あのー、プロデューサーさん。本当にこちら側へ来ちゃって良かったんですか?」
P「今さら何を言ってるんですか。俺がそうしたいと思ったから来たんです」
P「それとも、もしかしてお邪魔でしたか?」
小鳥「お、お邪魔だなんてとんでもないっ! むしろ嬉しすぎて、私としてはひゃっほう! って感じなんですよぅ!」
P「………」
小鳥「あ……」
322 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/30(土) 17:27:36.23 ID:cqJZ38jz0
小鳥「う、嬉しいって言ってもあれですよ? 私の事を心配してくれてプロデューサーさんは優しいなーと」
P「良かった」ニコッ
小鳥「!」ドキッ
P「あなたの事が心配だったのは本当です。でも今はそれだけじゃなくて……」
P「……音無さん」ズイッ
小鳥「え? はっ、はいっ!」ドキドキ
小鳥(ぷ、プロデューサーさん、どうしちゃったの!? ち、近いんですけど!?)
小鳥(……はっ! もしや、ここに来てまさかの音無小鳥メインヒロインフラグが!?)
P「………」スッ
小鳥(プロデューサーさんの手が私の頭を、だ、抱いて……!)
小鳥(…………南無三っ!)ギュッ
P「……っと、取れました」
小鳥「…………えっ?」
P「ほら、髪に糸くずが付いていたみたいですね」
小鳥「………」
小鳥「はぁぁぁぁぁぁ……」ガクッ
P「ど、どうしました!?」
小鳥「い、いえ、なんでもないんですっ」
小鳥(何の罰ゲームかしら、今のは)
323 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/30(土) 17:30:18.92 ID:cqJZ38jz0
P「それにしても……ここが月の中心核ですか」キョロキョロ
小鳥「はい。今や私の家みたいなものなんですよ?」
P(月の中心核。ゲーム通りなら、確かここは地下12階に当たるはず)
P(床や柱、壁などは全部クリスタルのようにキラキラ輝く素材で出来ていて、とても神秘的な風景だ)
P(音無さんはここで生活してきたのか)
P(……ずっとひとりぼっちで、さみしくはなかったんだろうか)
クルーヤ「……コトリさん、お客さんですか?」
小鳥「あ、クルーヤさん!」
P「えっ……? く、クルーヤ……!?」
クルーヤ「おや、あなたは……。お久しぶりです。またお会いしましたね」ニコッ
P「な、なんであんたがここにいるんだ?」
クルーヤ「えーっと……まあ、いろいろありまして」
小鳥「あれ? プロデューサーさん、クルーヤさんとお知り合いなんですか?」
P「ええ、彼とは試練の山で一度」
小鳥「へぇ……」
小鳥(P×クルーヤか……アリかもしれないわね)
324 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/30(土) 17:33:08.83 ID:cqJZ38jz0
クルーヤ「それにしても、まさかハルカの婚約者がコトリさんの知り合いだったとは、世の中って狭いものですねー」
小鳥「……うん? 今なんて?」
P「な、なんでもないですよ!」
クルーヤ「ああ、コトリさんには言ってませんでしたね。彼はハルカと未来を誓い合った仲なんです」
小鳥「ええぇぇええええっ!!?」ガタッ
小鳥「どういう事なんですかプロデューサーさん!! ついにハーレムから脱却しちゃうんですか!?」ユサユサ
P「だ、だから誤解ですって! クルーヤもある事ない事言うのはやめてくれ!」
クルーヤ「うーん、僕としては二人の仲は大賛成なんだけどなー」
クルーヤ「……と、ジョークはここまでにして」
クルーヤ「なぜあなたがここに? あなたはハルカたちと行動を共にしていたはずではなかったんですか?」
P「………」
P「こっちにもいろいろ事情があってな。ま、お互い様ってところだ」
クルーヤ「……なるほど、分かりました。これ以上は追求しません」
P「そうしてくれると助かる」
ダークバハムート「……ほう、このような僻地に来客とは、珍しい事もあるものだ」
小鳥「バハムートさん、ちょうど良いところに! 紹介しますね、こちら私の同僚のプロデューサーさんです!」
ダークバハムート「………」
ダークバハムート(なんだ、この人間は……? 否、人間ではないのか……?)
ダークバハムート(コトリをも凌ぐでたらめな生命力。奇妙ないでたち。そしてこの我が思考すらも読めぬとは)
ダークバハムート(クク……コトリの知り合いか。ぷろでゅうさぁ……只者ではなさそうだ)
325 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/30(土) 17:35:29.94 ID:cqJZ38jz0
P(これがバハムート……。貴音の友達……)
P(ここにいるって事は、敵……なんだろうな、きっと)
P(クルーヤの立ち位置もイマイチ分かりかねるが、きっとみんなの敵として立ちはだかるつもりだろう)
P(なぜ、あの子たちにはこうも試練が降りかかるのか)
P(だけど、俺はもう無力な自分を嘆くだけじゃない)
P(俺は見届けなければならない。この戦いの行く末を)
クルーヤ「さ、新しい仲間が増えたところで!」ドン
小鳥「親睦を深めましょうか!」ドン
P「もしかしてそれ、酒ですか?」
小鳥「はいっ」ニコッ
P「音無さん、みんなが頑張ってた時にまさかずっと酒飲んでいたんじゃないでしょうね?」
小鳥「そ、そんなわけないじゃないですかぁ! 今日はたまたまですよ、たまたま!」
P「本当かなぁ……」ジト
クルーヤ「ま、まあまあ、楽しく行きましょう、楽しくね?」
ダークバハムート「クク……ぷろでゅうさぁよ。そなたも用心しておいた方が良いぞ。この二人、酒を呑み出したら止まらぬからな」
P「はぁ……」
P(まあでも、どうやら音無さんは一人さみしくラスボスやってたってわけでもなさそうだ)
P(それが分かって良かったかもな)
326 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/30(土) 17:37:55.73 ID:cqJZ38jz0
ー 月の民の館 1F 図書室 ー
…ガチャ
千早「………」
真「千早」
千早「真……」
真「律子の具合は?」
千早「ぐっすり眠っているわ。春香と真美がついていてくれているし、今は二人に任せましょう」
真「うん……そうだね」
貴音「離してください、響!」
響「ちょっと貴音、落ち着いてよ!」
千早「……何かあったの?」
真「うん、なんていうか……」
真「プロデューサーが小鳥さんと一緒にいなくなった事で、みんな少し混乱しちゃってるみたいでさ」
千早「そう……」
貴音「ぷろでゅうさぁはわたくしが助けねば! ばはむーと殿の二の舞にさせてなるものですか!」
響「だから、それには律子が起きるのを待ってからじゃないとダメだって!」
貴音「律子嬢の事は皆に任せます。わたくしは一人でも行かねばなりません!」
やよい「た、貴音さん……」オロオロ
伊織「……あーもう、うるさいわね! 静かにしなさいよ!」
貴音「………」
伊織「不安なのはみんな同じなのよ! それに、アンタ一人が行ってもどうにもならないでしょうが!」
貴音「……それでも」
貴音「それでもわたくしは、もうこれ以上犠牲者を増やしたくはないのですっ……!」ウルッ
貴音「ぷろでゅうさぁまで失ってしまったら、わたくしは……!」ガクッ
亜美「うぅ、お姫ちん……」グスッ
伊織「私だって……今すぐにでもあいつを助けに行きたいわよ……!」ウルッ
あずさ「伊織ちゃん……」
雪歩「みんな……!」グスッ
美希「………」
327 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/30(土) 20:01:14.10 ID:cqJZ38jz0
美希「………」スクッ
真「……美希、どうしたの?」
美希「ミキ、ちょっと律子の様子見てくるね?」
真「え? でも、律子には春香と真美がついてるって千早が……」
美希「真クン、ミキだって白魔法使えるんだよ? 二人の足手まといにはならないって思うな」
真「そうだったね、ゴメン」
美希「真クンと千早さんは、みんなの事をお願い」
千早「美希……?」
美希「みーんな、ハニーがいなくなって心が弱くなっちゃってるカンジなの。だから、比較的冷静な真クンと千早さんがみんなをなだめてあげて?」
真「……別にボクも冷静ってわけじゃないんだけど、分かったよ」
千早「私にできるかどうか分からないけれど、やってみるわ」
美希「お願いね?」
スタスタ…
真「………」
真「ねえ、千早。美希はなんであんなに落ち着いているのかな」
真「失礼かもしれないけど、ボク、プロデューサーがいなくなって一番騒ぐのは美希だろうなって思ってた」
千早「………」
千早「私、この世界へ来てから比較的美希の近くにいる事が多かったのだけど」
千早「美希はこの世界へ来て、私たちの中で一番大きな成長をしたのかもしれない」
千早「あの子を見ていると、そう思えるのよ」
真「…………そっか」
真「じゃあ、ボクたちも負けていられないね」
千早「……そうね」
328 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/30(土) 20:20:07.09 ID:cqJZ38jz0
ー 月の民の館 2F 寝室 ー
律子「……zzz」
春香(お姉ちゃん……)
真美「………」
春香(一人で小鳥さんを迎え撃って、勇敢に戦って……)
春香(でも、結局小鳥さんの魔法で操られてしまって、みんなに刃を向ける事になってしまった)
春香(辛いだろうな……)
真美「……りっちゃん、真美たちのために休まずにずっとガンバってくれてたんだよね、きっと」
春香「うん……」
真美「ピヨちゃんとの戦いだって、真美たちがあぶない目に合わないようにって……」
春香「……今は、ゆっくり休ませてあげよう」
真美「そーだよね……」
…ガチャ
真美「……あれ、ミキミキ?」
美希「律子の具合はどう?」
真美「ケガとかは真美たちの魔法で治したし、今はぐっすり眠ってるよ。つかれがたまってたのかもしんないね」
美希「……そっか」
329 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/30(土) 20:22:36.75 ID:cqJZ38jz0
美希「………」
真美「………」
春香「………」
真美「……兄ちゃん、なんでピヨちゃんの方に行っちゃったのかな……?」
春香「………」
真美「まさか、兄ちゃんまで真美たちの敵になっちゃうってことじゃないよね?」
美希「ハニーはきっとそんなつもりじゃないと思うな」
真美「……じゃあ、どんなつもりだったの?」
美希「んー、そこまではミキも分からないの」
美希「でもね、ハニーが『任せろ』って言ったんだから、きっと正しいことだと思うの」
美希「ミキたちは、それを信じるべきじゃないかな?」
春香「………」
真美「でもさ、なんてゆーか……ここまで一緒だった兄ちゃんがいないのが、ちょびっとだけツラいってゆーか……」
美希「きっとみんなも真美とおんなじような気持ちだと思うの」
美希「不安で、さびしくって……それで、ちょっとだけイライラしてるカンジ?」
真美「………」
美希「だから、そんなみんなを元気付けるのは……」
美希「春香の役目だって、ミキ、思うな」
春香「えっ……?」
330 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/30(土) 20:24:56.99 ID:cqJZ38jz0
春香(たまに……)
美希「今までだって春香は、ずっとずっとみんなを元気にしてきたでしょ?」
春香(分からなくなってしまう)
美希「辛くって、苦しくって、どうしようもなくて。今までそんな場面になるたびに、春香は誰よりも自分を奮い立たせて」
春香(目の前にいるこの子は、本当に私より年下なんだろうかって)
美希「そんな春香なら、きっと今のみんなを導くことができる」
美希「……でしょ?」ニコッ
春香(普段の態度は素っ気ないけど、ふとした時に思いがけない言葉をくれる)
春香(……不思議だよね、美希って)
春香「……うん、わかった。私、やってみるよ!」
美希「あは☆ さすがは春香なの」ニコッ
真美「ガンバって、はるるん! 真美たちのリーダーだってとこ、バシーっと見せちゃってよ!」
春香「う、うん、あんまりプレッシャーかけないでね?」
美希「……そーいえば春香」
春香「なに?」
美希「ミキ、この前春香のこと助けてあげたから、これで貸しひとつだよね?」
春香「……あ、うん。助けてくれてありがとね、美希。私、すごく嬉しかったよ」
美希「どーしよっかなー。何おごってもらおっかなー?」
春香「あ、あんまり高いものじゃなければ……」
美希「あっ、いいこと思いついたの! これを機に、春香がハニーから手を引くっていうのはどうかな?」
春香「……ええぇええっ!? だ、ダメだよそれは!」アセアセ
真美「いやー、ナイスアイディアだと思うよ、真美は」ウンウン
春香「ちょっと、真美までー!」
美希「真美もハニーのこと狙ってるみたいだけど、ミキ、ハニーだけはゼッタイに譲れないからね!」ビシッ
真美「ぬう……さすがは強敵(とも)よな……」
331 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/30(土) 20:28:26.70 ID:cqJZ38jz0
ー 月の民の館 1F 図書室 ー
貴音「……そこをどいてください、伊織」
伊織「イヤよ。今のアンタを行かせられるわけないじゃない」
伊織「どうしても行くっていうなら……」
伊織「……私を倒してからにしなさい!」スッ
貴音「……!」
響「い、伊織……」
あずさ「……ちょっと落ち着きましょう、伊織ちゃんも貴音ちゃんも。焦って行動してもいいことなんてないと思うわ」
貴音「あずさ……」
貴音「なぜそのように落ち着いていられるのです? ぷろでゅうさぁが魔の手に落ちてしまったというのに」
亜美「ま、魔の手って……お姫ちん……」
貴音「彼女は律子嬢や雪歩、やよいを傷付けた。小鳥嬢を敵と見なすにはそれで充分では?」
貴音「それに、わたくしはこのげぇむを『そういった類のげぇむ』と認識しておりましたが」
あずさ「貴音ちゃん……」
貴音「……いいでしょう」
貴音「水瀬伊織……。あなたを倒して、わたくしはぷろでゅうさぁを助けに参ります!」ザッ
伊織「! ……小鳥の分身に勝ったからって調子に乗るんじゃないわよ……!」
伊織「アンタなんかに遅れは取らないわ!」
やよい「い、伊織ちゃんダメだよっ!」
伊織「いいえ、やよい。アンタは黙ってて」
伊織「頭に血が昇って周りが見えていないバカに、少しお灸を据えてあげなきゃ……!」スッ…
332 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/30(土) 20:31:19.57 ID:cqJZ38jz0
貴音「……覚悟」バッ
伊織「……来なさい!」バッ
亜美「ちょ、ちょっと二人とも……!」
雪歩「こ、こんなのおかしいよぅ……!」
貴音「……!」ボゥッ…
伊織「……!」ゴゥッ…
真「ーー待ったっ!!」ザッ
貴音「!?」
千早「水瀬さんも、そこまでよ」スッ
伊織「…………ふん」
響「千早……真……」
伊織「いきなり飛び出して来るなんて、どういうつもりよ」
貴音「あなた方まで邪魔をするつもりですか。真、千早……」
真「こんなところで暴れちゃダメだよ、貴音も伊織も」
伊織「………」
貴音「………」
真「らしくないじゃないか、二人とも。こんな思慮の浅い行動をするなんて」
伊織「……うるさいわね。私は間違ってないわよ! そこのバカが勝手な行動をしようとしたから……!」
千早「今は、仲間うちで争っている場合ではないわ」
伊織「………」
真「貴音。プロデューサーが心配なのは分かるけど、一人で小鳥さんのところへ行くなんて無茶だ」
真「それは君自身だって分かってるはずだよ?」
貴音「しかし……!」
真「ボクだって、本当は今すぐにでもプロデューサーのところへ駆けつけたいって思ってる」
真「でも、プロデューサーは何か考えがあるような事を言ってたから……」
真「だから今は、それを信じるしかないと思うんだ」
貴音「………」
333 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/30(土) 20:33:32.69 ID:cqJZ38jz0
貴音「くっ……」ガクッ
貴音「…………申し訳ありません。わたくしは過去の過ちに囚われ、ぷろでゅうさぁの意に背くような真似を……」
貴音「そればかりか、道を誤ったわたくしに手を差し伸べる友に、刃を向けてしまうとは……!」
伊織「………」
伊織「……私も悪かったわ」
伊織「ああでもしなきゃアンタは止まらないと思ったから」
貴音「申し訳ありません、伊織。全てはわたくしが……」
伊織「ううん、私も悪かったわ。……ごめんなさい」
真「どっちが悪いとかじゃないよ」
千早「ええ。二人のどちらの気持ちも分かるから……」
千早「……とにかく今は、みんなで律子が目を覚ますのを待ちましょう」
伊織「……そうね」
貴音「はい……」
やよい「えっと、えっと……これで伊織ちゃんも貴音さんも仲直り……ですよね?」
貴音「ええ」
やよい「うー、よかったですー」
響「はぁぁぁ……。何事もなくて良かったぞ……」
あずさ「真ちゃんと千早ちゃんのおかげね」
雪歩「でも、小鳥さんと戦わなきゃいけないっていう事実は変わらないんですよね……?」
亜美「だよね……」
一同「………」
334 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/30(土) 20:37:36.86 ID:cqJZ38jz0
春香「……大丈夫だよ、みんな」
真美「………」
美希「………」
響「春香たち、いつの間に……」
真美「りっちゃんはぐっすり眠っちゃったから」
美希「ミキたちも、春香のありがたいお話を聞こうってことになったの」
春香「ちょ、ちょっとミキ、変な言い方しないでよぅ……」
響「ありがたいお話って、どういうことだ?」
春香「えっと……」チラ
春香「貴音さん」
貴音「……はい」
春香「なぜ、小鳥さんは私たちに対してヒドいことをするんでしょうか?」
貴音「何故……? それは、小鳥嬢がこのげぇむの真の黒幕だからではないのですか?」
春香「はい、私もそう思います。小鳥さんはこのゲームのラスボスです。だから、ラスボスになりきってくれているんだと思います」
貴音「……? そのような分かり切った事を訊いて何の意味が?」
春香「私、思うんです。私たちがここまで来れたのは、小鳥さんのおかげもあるんじゃないかな……って」
一同「……?」
335 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/30(土) 20:40:30.50 ID:cqJZ38jz0
春香「今まで、本当に本当にいろんな事があったよね。嬉しい事も、悲しい事も」
春香「嬉しい事があるたびにみんなで笑って、悲しい事があるたびにみんなで泣いて……」
春香「そうして私たちは、ここまで来た」
春香「最近みんなの目を見てるとね、思うんだ。『ああ、すごく頼もしいな』って」
春香「それはたぶん、この世界でいろんな事を経験して一人ひとりが成長していってるからなんだよね」
春香「その成長は、もちろん本人の頑張りによるところが大きいって思うけど……」
春香「小鳥さんがラスボスの役をしっかり演じてくれているから……だから、私たちは強くなれたんじゃないかな?」
一同「………」
貴音「……しかし、それとこれとは話が別。小鳥嬢のした事は許される事ではありません」
伊織「私も同感よ。魔物との戦いで結果的に私たちは強くなったけど、あいつは仲間を平気で傷つけた。それは忘れてはならない事よ」
春香「………」
春香「……小鳥さんはさ、私たちに向かって何度か『みんなを楽しませるために』って言ってたよね?」
春香「それはきっと小鳥さんもプロデューサーさんと同じ気持ちって事なんじゃないかな?」
響「ピヨ子が、プロデューサーと同じ気持ち……?」
春香「みんな、思い出して。もともとこのゲームは、プロデューサーさんが『みんなで楽しめるように』って持ってきてくれたゲームだよ」
亜美「……そーいえばもうすっかり忘れてたけど、兄ちゃんが事務所にスーファミ持ってきたのが始まりだったんだよね」
春香「うん」
336 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/30(土) 20:43:38.82 ID:cqJZ38jz0
春香「いきなりゲームの中に入っちゃって、最初は右も左も分からなくて」
春香「でも、みんなで頑張って進んで、いろんなお友達もできて」
やよい「わたし、しばさんやらむさんたちとおともだちになれて、とってもうれしかったです!」
春香「そう。苦労もたくさんしたけど、嬉しい事もたくさんあった。この世界で、ここにいるみんなと、そしてこの世界の人たちと一緒に笑い合えて、私もすっごく嬉しかった」
春香「……でも、もし配役が違ったら、どうなってたかな?」
真「配役が違うって……今の自分の役と最初から違ったらって事?」
春香「うん。もっと言うと、『小鳥さん以外の誰かがラスボス役になってたら』どうなってただろう?」
春香「みんなは、考えた事あるかな?」
一同「………」
春香「私は、もし自分がみんなと敵同士の役だったら悲しいし、きっとどうしていいか分からなくなっちゃうと思う」
春香「もしかしたら、自暴自棄になって大変な事をしちゃうかも」
伊織「………」
春香「でも、小鳥さんはそれを完璧に演じてくれてる」
春香「もちろん、あの人の事だから自分自身が楽しんでるっていう部分もあるかもしれないけど」
貴音「………」
春香「小鳥さんの『みんなを楽しませる』っていう言葉、私は信じてるよ」
春香「だって、小鳥さんはいつも私たちの事を心配してくれていて、いつも私たちの知らないところで頑張ってくれている人だから」
春香「そんな小鳥さんと、そしてここにいるみんなと、私はこのゲームを最後まで楽しみたい」
春香「最後まで笑って、笑顔でこの世界とお別れしたいんだ」
春香「……みんなはどう?」
一同「………」
337 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/30(土) 20:48:21.32 ID:cqJZ38jz0
雪歩「…………あ、あのっ」
雪歩「私も、楽しみたい。魔物さんと戦ったりするのは恐いけど、私も、みんなともっと一緒にいたいって……そう、思う」
春香「雪歩……」
真「……そうだね」
真「元の世界に戻ったら、もうこんな不思議な体験は二度とできないんだよね」
真「それに、みんなには引かれちゃうかもしれないけど、ボク、小鳥さんと戦うのはちょっとだけ楽しみなんだ」
春香「真……」
亜美「……まこちんは相変わらずバトルマニアだねぇ」
亜美「でも、せっかくのゲームだし、ピヨちゃんもガンバってくれてることだし、亜美もまだまだカツヤクしたいし……」
亜美「モチロン亜美もみんなと一緒に行くよ!」
真美「だね。せっかく兄ちゃんが持ってきてくれたゲームなんだから、楽しんでやんないとだよねっ」
真美「あ、成長うんぬんに関しては真美も同感ってカンジだよ。みんなが強くなってるのを、真美もジッカンしてるよ!」
春香「亜美も真美も、たくましくなったよね」ニコッ
響「…………自分は」
春香「響ちゃん……」
響「自分、エン太郎とお別れする時、めちゃくちゃ悲しかった。ピヨ子はなんでこんなイジワルするんだろうって思った」
響「でも、春香の言う通りだ。もし自分がラスボス役だったとしたら、どうしていいか分かんなくてずっと泣いてたと思うぞ」
響「みんなと一緒だったから。自分にはみんながいるから。だから自分はあの時悲しみを乗り越えられたって思う」
響「……うん。今なら、ピヨ子は自分たちのためにラスボスを頑張ってくれてるんだって……」グスッ
響「だ、だから、自分もっ……!」ウルッ
春香「……うん、響ちゃんも一緒に行こう?」
338 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/30(土) 20:53:09.04 ID:cqJZ38jz0
千早「私も……」
千早「私も、みんなと一緒にいたい。たとえ残された時間はもう僅かだとしても、最後の瞬間まで、みんなと笑っていたい」
千早「……今なら、そう思える」
春香「千早ちゃん……!」
やよい「わたしたちだけじゃなくて、高木社長や黒井社長、じゅぴたーさんたちもいっしょですっ!」
春香「やよい……うん、そうだね!」
あずさ「……みんなが一緒なら、きっと何も恐いものはないわね」ニコッ
春香「はい、あずささん、もちろんです!」
伊織「…………はぁ。アンタの話はきれいごとなのよねぇ」
春香「えっ……」
伊織「アンタみたいに能天気な考え方ができる人間ばかりじゃないってことよ」
春香「うん…………そう、だよね」
伊織「……ま、でも、嫌いじゃないわ、そういうの。私も、小鳥に負けないくらいこの役を演じ切ってみせる!」
春香「伊織!」
伊織「春香。私たちはどこまでもアンタについて行くわ。だから、アンタは光になって私たちの道を照らしなさい!」
伊織「アンタが走り続ける限り、私たちもアンタの横を走るから」
春香「うん、任せてっ!」ガッ
春香「……っとっとと……うわあ!?」ヨロッ
ドンガラガッシャーン!!
339 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/31(日) 13:06:07.67 ID:uFHmjAGF0
伊織「ったく、なんでこのタイミングで転ぶのよ……」
真「でも、春香らしいじゃないか」ニコッ
亜美「ですな。これがないとはるるんってカンジがしないよねー」
春香「うぅ……せっかくかっこ良く決めようと思ったのに……」
貴音「……春香」スッ
春香「あ、貴音さん。ありがとうございます!」ギュッ
貴音「過去の自分に囚われるのは、もうやめる事にしました。わたくしも、残りの時間を皆と笑って過ごしたい」
春香「貴音さん……」
貴音「……共に連れて行って頂けますか?」
春香「もちろんですっ!」ニコッ
貴音「ありがとうございます、春香」ニコッ
美希「うんうん、やっぱり春香に任せたミキの目に狂いはなかったの!」
春香「美希……」
春香「ありがとう、美希」
美希「ミキ、お礼を言われるようなこと、してないよ?」
春香「ううん、美希のおかげだよ。美希が私を頼ってくれたから……だから」
美希「春香。そーゆーのは、全部うまくいってからにするの」
春香「うん……そうだね」
美希(……でも、さっきの春香、ちょっとカッコよかったな)
美希(やっぱり春香がリーダーなんだなって思ったの)
美希(ミキのライバルで、親友で……大切な、仲間)
美希(負けないよ、春香。ミキ、春香よりもっともっとキラキラしてみせるからね!)
340 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/31(日) 13:10:20.55 ID:uFHmjAGF0
律子「……良かったわよ、春香。今の演説」
春香「お姉ちゃん!」
亜美・真美「りっちゃん!!」
あずさ「律子さん、もういいんですか?」
律子「はい、ご迷惑をおかけしました」ペコリ
あずさ「いえ、そんな」
律子「………」
律子「みんな、もう覚悟は出来ているのね?」
伊織「何を今さら。覚悟なんてとうの昔にできてるわよっ」
貴音「ええ。もう、迷う事など何もありません」
あずさ「春香ちゃんに勇気を貰いましたからね〜」ニコッ
亜美「亜美のホンキ、ピヨちゃんに見せてあげるんだから!」
真美「そうそう、ピヨちゃんには真美たちを敵に回したことをコウカイしてもらわないとねー!」
真「どこまでやれるか分からないけど、ボクもやれるだけやってみるよ」
雪歩「わ、私も、足手まといにならないように頑張りますぅ!」
響「自分も、みんなと一緒に戦うぞ!」
やよい「最後まで、はりきって行きましょうっ!」
千早「私たちはもう大丈夫。……だって、最初から不安に思う必要などなかったのだから」
美希「律子…さんも、ミキたちと一緒だよ?」
律子「……ありがとう、美希」ニコッ
真「で、律子。どうする? さっそく小鳥さんのところへ乗り込むかい?」
律子「いいえ。あなたたちは戦いを終えたばかり。だから、今夜はしっかり休んで出発は明日にしましょう」
真「うん、分かった」
341 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/31(日) 13:15:16.98 ID:uFHmjAGF0
ーーーーーー
ーーー
律子「……『音無さんを真の意味で救えるのは俺しかいない』? 本当にプロデューサーはそんな事を言ったの?」
春香「はい。きっとプロデューサーさんには何か考えがあるんだと思います」
律子「どういう意味なのかしら」
真美「んー、たとえば、兄ちゃんの持ってるいやしの杖でピヨちゃんがケガしたら治す、とか?」
律子「それはどうかしらね……。あの杖ってそこまでの回復力はないんでしょ?」
春香「そうですね。確か回復量はケアルより少し多いくらいだったかな?」
律子「いくらプロデューサーが無敵だからって、ケアルラにも満たない回復量じゃ追いつかないでしょう」
伊織「ま、こっちは13人もいるんだし、立て続けに攻撃したら確実に向こうの回復は間に合わないでしょうね」
真美「それもそっか」
千早「だったら、物理的にではなく精神的に音無さんを助けるという事かしら」
真「つまり……プロデューサーが小鳥さんの心の支えになるって事?」
千早「ええ」
千早「いくら音無さんがこの世界を楽しんでいるとはいえ、最終的には一対十三の戦いになる」
千早「その状況を見兼ねてプロデューサーは音無さんの心の支えになろうと決意した」
律子「……なるほど、あり得るわね」
律子「とにかく、プロデューサーや小鳥さんの真意が分かった以上、私たちも二人の期待に応えた戦いを見せないといけないわね」
春香「そうですねっ!」
342 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/31(日) 13:19:27.62 ID:uFHmjAGF0
伊織「でも、小鳥の前に親衛隊とかいうヤツらが待ち構えてるわよ? その辺りはどうするのよ」
響「……強かったよね、あいつら」
雪歩「うぅ……怖いけど、やるしかないんだよね……」
律子「ああ、そこらへんはあまり心配していないわ」
伊織「えっ?」
律子「厄介ではある。けれど、あなたたちだって決して負けてない」
律子「この中の誰ひとり欠ける事なく小鳥さんのところへたどり着ける。私はそう確信しているの」
春香「お姉ちゃん……!」
真「へへっ、そう言われたらやるしかないよね!」
伊織「律子にしては珍しいわね。精神論に流されるなんて」
律子「あら、ちゃんとした論理的根拠が必要かしら? あなたたちは強い。それだけで証明にならない?」
伊織「……ぜんっぜん論理的じゃないわよ、それ」
あずさ「うふふっ♪ 」
亜美「まーまー、むずかしいコトはいいじゃん。ほら、よく『どんより正午』ってゆーっしょ?」
律子「論より証拠ね」
伊織「……そうね。やらなきゃ結果が出ないのは確かよね」
343 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/31(日) 13:23:36.29 ID:uFHmjAGF0
貴音「律子嬢。一つだけお願いがあるのですが」
律子「どうしたの? 改まって」
貴音「親衛隊と共に、恐ろしく強い竜の神がわたくしたちの前に立ちはだかるでしょう」
貴音「その方の事は、わたくしに任せて頂きたいのです」
律子「竜の神……」
やよい「貴音さん、それって……」
響「もしかして、バハムートってヤツの事か?」
貴音「……はい」コクリ
律子「貴音の知り合いなの?」
貴音「……わたくしの越えねばならない、壁です」
律子「………」
律子「あなたにもいろいろ事情があるみたいね」
律子「本当は全員で当たった方が安全なんでしょうけど……」
律子「……わかったわ。そのバハムートっていう竜のことは貴音、あなたに任せるわ」
貴音「ありがとうございます」
千早「律子、そろそろ休んだ方がいいんじゃないかしら。明日ここを発つんでしょう?」
律子「そうね。じゃあ、とりあえずご飯にしましょうか」
やよい「はい! じゃあわたしが……」
真美「ーー待ったッ!!」
真美「ここは真美にまかせてもらおうか……!」ゴゴゴ
一同「…………えっ!?」
344 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/31(日) 13:39:49.19 ID:uFHmjAGF0
ー 月の民の館 キッチン ー
伊織「…………で、なんで私まで巻き込まれなきゃいけないのよ」
真美「しょーがないじゃん。やよいっちやあずさお姉ちゃんはしょっちゅうゴハン作ってくれてるから頼みづらいし、お姫ちんは料理させたらキケンぽいし、亜美はしっちゃかめっちゃかにしそうだし……」
真美「火の魔法使える手頃な人がいおりんしかいなかったんだもん」
真美「あと、イガイに料理できそうなまこちん」
伊織「消去法で選ばれたのがイラッと来るわね……」
真「ねえ、早く作っちゃおうよ。きっとみんな待ってるよ?」
伊織「わかってるわよそんなこと。ていうかアンタ、料理なんかできるの?」
真「うーん、出来なくはないと思うけど……。ここには魚とかないんだよね」
真美「なんで魚?」
伊織「仕方ないわね、やっぱりここはこの伊織ちゃんが先導していくしかないみたいね」
真美「いよっ、さすがいおりん! 料理作らせたら『見た目はアレだけどすごくおいしい』って言われるだけあるねぇ!」
伊織「それ、褒めてないでしょ!?」
真「ねぇ、早くやろうよー。ボク、お腹ペコペコだよー」
伊織「うっさい! わかってるわよバカ!」
真「なんですぐにバカとか言うんだよ! 先にバカって言った方がバカなんだからね!」
伊織「じゃあ何度でも言ってあげるわよ! バカバカバカバカバカバカバカ……」
真「言い過ぎだよ!」
真美(人選ミスったね、こりゃ)
345 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/31(日) 13:48:50.49 ID:uFHmjAGF0
ー 月の民の館 1F 図書室 ー
亜美「……で、真美さんや」
亜美「このぐちゃぐちゃの茶色いカタマリは何かね?」
真美「今は昔、まだこの世界に文明も発達していなかった頃……。人はそれをたまごやきと呼んでいたという……」
律子「つまり、卵焼きを作ろうとして失敗したわけね」
響「じゃあ、この……ええと、なんかいろいろ入ったちゃんこみたいなのはなんだ?」
真「おじや!」
響「ふ、ふーん……ずいぶん具沢山なんだな。具が大きすぎて煮物みたくなってるぞ……」
春香「で、でも、なんか個性的でおいしそうだよね! ほら、この肉野菜炒めとか」
伊織「それはカルパッチョよ」
春香「えっ?」
伊織「カルパッチョ」
春香「あ、うん……」
千早(大丈夫かしら)
律子「……まあ、とりあえず冷めないうちにいただきましょうか」
一同「いただきまーーす!!!」
346 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/31(日) 13:49:34.59 ID:9IYDAl/0O
これクリアして現実に戻った場合、はるるんは癖でしばらく律子をお姉ちゃん呼びしそうだな
それにしても、いくら小鳥さんが強いとはいえ数の暴力だよな…
347 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/31(日) 13:51:41.46 ID:uFHmjAGF0
春香「………」
雪歩「食べないの? 春香ちゃん」
春香「ゆ、雪歩こそ」
雪歩「えっと……うん、食べるよ。せっかく真ちゃんたちが作ってくれたんだもん」
雪歩「……あむっ」パクッ
雪歩「もぐもぐ……」
雪歩「あ……これ、結構おいしいかも」
春香「ホント? じゃあ私も……」パクッ
春香「…………ん、ホントだ。おいしい、このおじや!」
真「そ、そう? へへ、苦労して作った甲斐があったよ」
美希「もぐもぐ……」
美希「……あれ、このたまごやき、中に何か入ってる?」
真美「さすがはミキミキ、よくぞ気づいてくれたね!」
真美「このたまごやきの中には、さまざまなアイテムを入れてあるのだよ!」
響「アイテムって……ねえ、入れたのは食べられるモノなんだよね?」
真美「もちろんだよー。どくけしにー、乙女のキッスにー、うちでのこづちにー……」
響「……ちょっと待て。うちでのこづちって?」
真美「ああそうそう、そーいや月の民ぴょんに金のりんごとかソーマのしずくとかもらったから、それも入れてみたんだよー」
亜美「さすがは我が姉。空腹を満たすだけじゃなくて、ステータス異常に耐性をつけてさらにステータスアップも図ろうって作戦だね!」
真美「もっちろん! これぞ一石三鳥さくせんなのだ!」
美希「ふーん……なんか、新食感ってカンジなの」
響「大丈夫なのかなぁ……」
348 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/31(日) 13:54:33.01 ID:uFHmjAGF0
千早「モグモグ……」
伊織「どう? おいしい?」
千早「……ええ、とてもおいしいわ。ちょっと見た目からは想像できない味だけど」
伊織「ぐっ……」
あずさ「うふふ、見た目なんて気にしなくても大丈夫よ〜? この冷しゃぶ、本当においしいから」
伊織「カルパッチョね」
あずさ「そ、そうだったわね〜」
やよい「えへへっ、見た目はかわってるけど、伊織ちゃんたちのお料理とってもおいしいよ!」
伊織「そ、そう?ありがと、やよい」
真美「うーん、みんなおいしいって言ってくれるんだけど、なんだかなー」
伊織「私たちじゃ力不足だったって事を認めるしかないみたいね……」
真「そうかな? おいしいって言ってくれてるんだから別にいいんじゃない?」
伊織「私が納得できないのよ。このスーパー忍者アイドル伊織ちゃんの作る料理は、見た目も、味も、全てがパーフェクトでなければならないの!」
真「こだわるなぁ」
真美「んでも、マズイものができなくてよかったよね」
真「うん。やよいや響、あずささんの凄さが身に染みて分かったよ」
貴音「ふふ、真に重要なのはそこに込められた想い」モグモグ
貴音「相手を想って作ったものならば、どのような料理であろうとご馳走になり得ますよ」モグモグ
伊織「アンタ、ものを食べながらよくそんなセリフが言えるわね……」
349 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/31(日) 13:58:43.65 ID:uFHmjAGF0
ーーーーーー
ーーー
律子「…………さて」
律子「食事もお風呂も終わってあとはもう寝るだけだけど、その前にもう一度みんなに確認しておきたいの」
春香「確認……ですか?」
律子「ええ」
律子「私たちは明日、地下渓谷に潜る。小鳥さんに会うために」
律子「夕食前のみんなの話を聞いてみんなの覚悟は分かったわ」
律子「でも、もう一度各々よく考えて欲しいの。小鳥さんと戦うっていう事の意味を」
一同「………」
律子「私からの話は以上よ。さ、ゆっくり休みましょう」
一同「はーーーい」
350 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/31(日) 14:10:49.53 ID:uFHmjAGF0
ー 月の地下中心核 ー
P「ところで音無さん。最後の戦いについて何か考えているんですか?」
小鳥「え?」
P「ほら、音無さんには親衛隊がいるじゃないですか? その魔物たちをどう使うのかなーと」
小鳥「うふふ、気になります?」
P「もちろんですよ。まあ、直接戦うのは俺じゃなくてあの子たちなわけですけど」
小鳥「そうですねぇ……。ついに私のアイドルたちとプロデューサーさんのアイドルたちが戦う時が来たんですね……」
P「えっ? 音無さんのアイドル?」
小鳥「あっ……ええと、気にしないでください。深い意味はありませんので」
小鳥「私が考えたのは、よくあるパターンです。あの子たちそれぞれに持ち場を決めて、春香ちゃんたちを迎え撃ってもらうんですよ」
P「なるほど。確かにラスダンとかでよくあるパターンですね」
P「で、配置はもう決まっているんですか?」
小鳥「いえ、それはあの子たち自身に任せているので。今頃はみんなで話し合ってるんじゃないかなぁ」
P「ふーん……」
351 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/31(日) 14:15:55.18 ID:uFHmjAGF0
ー 月の地下渓谷 B10F ー
クルーヤ「……というわけで、クジを用意しました。覚悟が決まった子から引いてね」
リルマーダー「よーしっ! んじゃまずはオイラが……」
レッドドラゴン「待て待て。ここは特攻隊長であるオレ様がだな」
リルマーダー「特攻隊長はオイラだかんな!」
レッドドラゴン「なんだとこのクソチビ!」
ベヒーモス「こらこらこら、ケンカするんじゃないよ」
プリンプリンセス「そうですわ。たかがクジ引きではありませんか」
月の女神「でも、これで誰がどの階を守るか決まるんだよね?」
レッドドラゴン「そうだぜ。だから重要なんだ。こーいうのは一番最初に引いた方がいい階をゲットできるに決まってんだよ」
プリンプリンセス「理解に苦しみますわねぇ……。所詮は運ではありませんか」
リルマーダー「運なんかじゃねーよ! 選ばれし者は、選ばれし運命を背負ってるんだ。このオレ様みたいにな!」
リルマーダー「だから一番にクジを引くのはこのオレ様だっ!」
ブルードラゴン「……いや、その理屈だとそなたはどの順番で引いても結果は変わらないはずなのではないか?」
リルマーダー「あっ……そっか」
金竜「しかし、地下1階を引き当てることが出来れば確実にあいどる共と戦えるのも事実。彼女たちは上から降りてくるのだからな」
銀竜「うむ。下の階へ行くほどあいどる共との遭遇率は下がるわけだな!」
レッドドラゴン「地下1階はオレ様が引き当ててやんぜ!」
リルマーダー「いいや、オイラだっ!」
金竜「否、我である!」
月の女神「うーん……だったら私も上の方の階がいいなぁ」
ワイワイガヤガヤ…
ベヒーモス「………」
352 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/31(日) 14:18:11.85 ID:uFHmjAGF0
クルーヤ「クジを引く順番で揉めるとか、これじゃいつまで経ってもそれぞれの持ち場が決まらないなぁ……」
ベヒーモス「すまないね、クルーヤ。これでも親衛隊結成当初よりはケンカも減ったんだが……」
クルーヤ「うん。それは見ていてなんとなく分かるよ」ニコッ
ベヒーモス「……とはいえ、これじゃ話が進まないのも事実」チラ
レッドドラゴン「一番はオレ様だ!」
リルマーダー「いいやオイラだっ!」
金竜「いや我が!」
ギャーギャー…
ベヒーモス「……仕方ないね」
ベヒーモス「野郎共、静かにしないか!!」
ベヒーモス「ここはリーダー権限でアタイがクジを引く順番を決めさせてもらうよっ!」
リルマーダー「ちぇっ」
レッドドラゴン「マジかよ……」
月の女神「でもベヒーモスちゃん、どーやって順番を決めるの?」
ベヒーモス「五十音順だ」
レッドドラゴン「あ? なんだそれ?」
プリンプリンセス「読んで字の如く、ですわ。名前の頭文字が五十音順で早い方からクジを引いていくんですのよ?」
リルマーダー「じゃあ、一番は……」
魔人兵「あ行で始まる名前の人だから……」
ベヒーモス「一番手はお前だ、暗黒魔道士」
暗黒魔道士「……っ!」ビクッ
353 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/07/31(日) 14:21:20.60 ID:uFHmjAGF0
クルーヤ「…………で、みんなにクジを引いてもらったわけだけど」
レッドドラゴン「っしゃああああ!! 見たかこのヤロー! オレ様が地下1階だせっ!!」
リルマーダー「くそぅ……なんでオイラがこんなに深い階なんだよぅ……」
プリンプリンセス「わたくしの持ち場は地下5階ですわね。ちょうど良かったですわ!」
月の女神(私は地下7階かぁ……。誰か私のところまでたどり着いてくれるといいなぁ)
ブルードラゴン(これで後は時を待つのみ、か)
金竜「我が弟よ、地下4階とはなかなかではないか?」
銀竜「うむ。流石は兄者!」
魔人兵「とにかく、コトリ様のためにも頑張らないとな!」
暗黒魔道士「………」
ベヒーモス「これでそれぞれの守護階は決まった。あとはそれぞれがめいっぱい暴れるだけだ」
ベヒーモス「気合い入れな! 野郎共!!」
魔物たち「おおおーー!!!」
クルーヤ「ふふ、なんだかんだ言ってまとまってるよね、この子たち」
クルーヤ「さてと、僕もそろそろ自分の持ち場へ行かないと」
クルーヤ「ーーっ!」ピクッ
ダークバハムート「………」ゴゴゴ
クルーヤ(……おお恐)
クルーヤ(こっちも気合い入ってるなぁ。よっぽど嬉しいんだね、タカネちゃんと戦えることが)
クルーヤ(これは僕も負けていられないな)
354 :
◆bjtPFp8neU
[sage]:2016/07/31(日) 14:23:59.29 ID:uFHmjAGF0
ここまでです
次回はやっとラスダン突入…のはずです
355 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/31(日) 14:45:02.14 ID:xBnvoDkRO
乙ー次回は早めに来てくれるのをアイドル育成しながら待ってる
356 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/25(木) 20:58:24.68 ID:PBS/ypTGO
まだか?もうすぐ一ヶ月やで
357 :
◆bjtPFp8neU
[sage]:2016/08/28(日) 17:42:57.39 ID:VRt3rZWL0
>>353
で月の女神が「地下7階」と言ってますが地下8階の間違いです
358 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/08/28(日) 17:45:14.11 ID:VRt3rZWL0
ー トロイアの町 パブ『迷宮』 ー
黒井「…………なに? 月へ向かう手段がないだと?」
北斗「予想のつかない展開になっているのではっきりとは言えませんが、すでにやよいちゃんたちが魔導船で月へと渡ってしまっているので、それ以外に方法はないかと……」
高木「つまり、我々は置いてきぼりを食ってしまったのか」
黒井「……ちっ、765プロめ。この私をのけ者にしおって!」
翔太「まあまあ黒ちゃん、今さら言っても仕方ないでしょ。やよいちゃんが僕らを召喚してくれれば、やよいちゃんのために戦えるんだからさー」
黒井「そもそも、なぜ私が高槻やよいにいちいち呼び出されなければならないのだ! 私は召使いなどではないのだぞ!」
翔太「いや、もともとそーいう契約だったし、黒ちゃんも結構ノリノリで戦ってたじゃん……」
黒井「まったく、この世界は間違っている! 何もかも!」
高木「はは……まあ、ここは実際には存在するはずのない世界だからねぇ……」
冬馬「……見苦しいぜ、黒井のおっさん」
黒井「なに……!?」
冬馬「翔太の言う通り、俺たちは高槻と契約を交わしたんだ。ルールは守るのが大人だろ?」
冬馬「あんたは俺たちの王だ」
冬馬「王だったら王らしく、いつもみたいに余裕ぶって構えてればいいじゃねえか」
黒井「む……」
冬馬「それに、黒井のおっさんは高槻の最終兵器でもあるんだ。……切り札ってヤツだな」
冬馬「だからきっと高槻も出し惜しみなんてしないと思うぜ?」
黒井「………」
黒井「…………フン、分かったような口を聞きおって」
黒井「だがお前の言う事も一理ある。私に頼らなければ事務員一人も倒せない765プロめ、せいぜいこの王に泣きつくがいい!」
黒井「クックック……!」
359 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/08/28(日) 17:49:25.96 ID:VRt3rZWL0
北斗(……冬馬。お前、なかなか黒井社長のコントロールが上手くなってきたな)
冬馬(まあな。伊達に長い時間を一緒にやって来てねーよ)
翔太(ま、御し易いのは冬馬君も同じだけどね〜)
冬馬(お前は一言余計だこのやろ)
「…………それは、本当ですか!?」
冬馬「…………あん?」チラッ
トロア「このような時勢にミシディアへ戻られるなど……。しかもお一人でなんて危険です!」
長老「世界を背負って戦うあの子らのために、この老いぼれのできることなど一つしかないからのぅ」
長老「……もう、決めたことじゃ。ワシは祈りの館へ入る」
トロア「し、しかし……!」
冬馬「……なんだあの爺さんは」
翔太「うーん……セリフから察するに、重要なキャラっぽい気もするよねー」
冬馬「まあ、俺たちにゃカンケーねぇか」
北斗「………」
冬馬「……おい北斗。どうかしたのか?」
北斗「……冬馬。俺たちのやるべきことが見つかったかもしれない」
冬馬「…………え?」
360 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 17:53:35.51 ID:VRt3rZWL0
ー ミシディアの村 ー
長老「……すまんの、二人とも。ジジイのわがままに付き合わせてしまって」
技師1「いえ、とんでもないです!」
技師2「飛空艇の操縦は我々の仕事ですから」
技師1「それに……」
技師1「オレたちも親方たちのことはずっと心配してました。気持ち的には長老さんと一緒です」
技師1「ですから、その……オレたちも共に祈ります!」
長老「気持ちは嬉しいが、そなたらにはそなたらの務めがある。そなたらはトロイアへ戻るんじゃ」
技師2「長老さん、しかし……!」
長老「祈りの館へ篭るとなれば、長い時間自由がきかないことになる」
長老「ファルコン号を動かすことの出来るそなたらがいなくなってしまっては、アン殿をはじめとするトロイアの人々に迷惑がかかってしまうじゃろう」
技師1「………」
長老「なに、ワシのことは心配するでない。それよりも、アン殿を手伝ってやってほしいんじゃ」
技師2「……分かりました。でも、定期的に様子は見に来ます」
技師1「あと、何か必要な物資があったら、なんなりと言ってください!」
長老「……ありがとう」ニコッ
ババババババ…
技師1「それでは長老殿、お体に気をつけて!」
技師2「また……来ます!」
長老「うむ」
361 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 17:58:43.33 ID:VRt3rZWL0
長老「……さて」クルッ
長老(村は相変わらずひどい光景じゃ。バロンの者が攻めて来た時とは比べものにならんほどの……)
長老(皆……すまんの。しばらく待たせてしまって)
長老(祈りの館へ入る前に、まずは形だけでも弔いを済まさねば)
スタスタ…
ザッ… ザッ…
長老「………」ザクッ
翔太「……ねえ、こっそりついて来たはいいけど、あのおじいさん、何かはじめちゃったみたいだよ?」
冬馬「穴掘ってるみたいだけど……いったいなんのために掘ってんだ?」
北斗「……きっと、死者の為の墓なんだろう」
冬馬「死者……?」
翔太「それってもしかして、魔物にやられちゃった人たちの?」
北斗「おそらくな」
高木「酷いものだ。村ひとつ丸ごと滅んでしまうとは」
黒井(……これが力無き者の末路、か。惨めだな)
黒井「………」
362 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 18:01:04.20 ID:VRt3rZWL0
黒井「……北斗、どうするつもりだ。あの老人を追うと言ったのはお前なのだぞ」
北斗「まずはあの人と接触しようと思ったのですが……。すみません、機会を逸したみたいです」
翔太「……確かに、今はちょっと声かけづらいよね」
黒井「……仕方がない、ほんの少しだけ時間をやろう」
翔太「えっ? 黒ちゃん本気?」
黒井「私とて鬼ではない。無様なあの老人に後悔する時間くらいはくれてやる」
北斗「社長……」
翔太「へぇ〜、黒ちゃんいいとこあるじゃん! 僕、見直しちゃったよ!」
黒井「……フン」プイッ
高木「ふふ……」ニコッ
高木「…………ん?」チラッ
冬馬「………」
高木「鬼ヶ島君、どうかしたのかい?」
冬馬「いや……」
冬馬「この村ってさ、こないだ会った月から来たっていう魔物に滅ぼされたんだよな?」
高木「……!」
冬馬「俺、あの時はとっさに魔物を助けちまったけどさ。……もしかしてこの世界の人間のためにならねー事をしたんじゃないかって……」
翔太「冬馬君……」
北斗「冬馬……」
黒井「………」
363 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 18:04:35.65 ID:VRt3rZWL0
黒井「だからなんだというのだ?」
冬馬「……黒井のおっさん……?」
黒井「いっとき魔物の味方をしてしまった。だから敵対関係にある人間とは接触できない」
黒井「……そう言いたいのか?」
冬馬「いや、そうは言わねえけど……。俺たちがした事は正しい事だったのか、って分からなくなっちまってよ」
黒井「くだらん。この世界にいちいち感情移入してどうする」
黒井「そんな事を考える暇があるなら、次に高槻やよいに召喚された時のために作戦でも考えておくのだな!」
冬馬「………」
高木「鬼ヶ島君。『正しい事』の定義なんて人の価値観次第だ。それこそ人の数だけ正義がある」
高木「誰かの正義と自分の正義が矛盾することは度々あるだろう」
高木「だが、我々はお互いに歩み寄ることができる。歩み寄り、価値観を近づけることができる」
高木「君の尊い価値観を理解してくれる者は、きっと現れるだろう」
冬馬「………」
黒井「……それはただの妥協だがな」
高木「む……」
翔太「もうっ! 黒ちゃんは一言余計だよー」
黒井「冬馬。私はお前のように後悔などしたりしない。後悔とは、弱者のすることだからな」
冬馬「………」
高木「鬼ヶ島君、君はまだ若い。悩む事もあるだろうが、悩んだ事は必ず君の力になる」
高木「だから、たくさん悩むといい」
黒井「高木、お前は何も分かっていない」ゴゴゴ
高木「分かっていないのはお前だ、黒井」ゴゴゴ
翔太「ちょ、ちょっと二人とも、こんなところでケンカはダメだってば!」
長老「……ワシの村で暴れんでくれんかのぅ。召喚獣たちよ」
黒井「!」
高木「!」
翔太「……ほ〜ら怒られた」
364 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 18:08:08.51 ID:VRt3rZWL0
長老「……幻獣が揃ってこんな廃村に何用じゃ?」
翔太「おじいさん、僕たちの事知ってるの?」
長老「もちろんじゃよ。アスラにオーディン、そして幻獣王リヴァイアサン」
長老「まさかこの様な豪華な面子に会う事になるとはな」
長老「お主ら、トロイアからずっとワシを追って来たのじゃろう?」
高木「おや、気づいておられたのか。なかなか鋭い勘をお持ちのようだ」
長老「ワシとて月の民の端くれ。気配を読む事ぐらいは出来る」
長老「じゃが、この村は見ての通りすでに滅んでおる。幻獣であるお前さんたちの求めるものなど何も無いと思うのじゃがのぅ」
冬馬「………」
黒井「……おい、北斗」
高木「ここは伊集院君の判断に任せるよ」
北斗「はい、分かりました」
北斗「……長老さん。俺たちも祈りの館へ入れてもらえませんか?」
長老「………」
長老「なぜ、お主らのような幻獣が? 詳しい話を聞かせてもらえるかの」
北斗「はい」
365 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 18:10:42.65 ID:VRt3rZWL0
ーーーーーー
ーーー
長老「……そうか。お主らもまた、ハルカたちの仲間じゃったのか」
北斗「はい。もう月へ行く手段はありませんが、あなたの力をお借りすれば俺たちの『想い』を彼女たちへ届ける事ができると思ったんです」
長老「ふむ……」
長老「お主らの気持ちは分かった。本当ならワシひとりで祈るつもりじゃったが……」
長老「こうしてここにお主らが訪れたのも、何かの縁じゃろう。共に来るがよい」
北斗「はい、ありがとうございます」
長老「少し待っていてくれ。すぐにやることを終わらせてくる」
スタスタ…
冬馬「……なあ、じいさん、待ってくれ」
長老「……ん?」クルッ
冬馬「何人分の墓を作るつもりか知らねえけど、あんたひとりじゃ大変だろ? 俺にも手伝わせてもらえないか?」
長老「………」
長老「不思議じゃな、お主は。幻獣が召喚士でもないワシの為に力を貸すなど」
長老「ありがとう。ならば、頼んでも良いかの?」
冬馬「おうっ!」
366 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 18:14:59.53 ID:VRt3rZWL0
ー 地下水脈 ー
カイナッツォ「……と、いうわけなのだ」
オクトマンモス「ふーん、人間と魔物が和解かぁ。オレの知らない間にいろいろあったんだなー」
カイナッツォ「今後人間を見かけても襲わぬようにな」
オクトマンモス「カイナッツォの旦那が言うんじゃ従わないわけにはいかねーな」
オクトマンモス「よし、ここいらの魔物にはオレから伝えておくぜ!」
カイナッツォ「うむ、さすがは私の部下。もの分かりが早くて助かる」
オクトマンモス「じゃあ、オレはまたダラダラと寝て過ごすからよ。じゃあな、旦那!」
ズズ…
カイナッツォ「……まったく、ぐうたらな奴だ」
ー アントリオンの巣 ー
アントリオン「……えっ、マジかよ! じゃあ、バトルとかもダメなのか?」
スカルミリョーネ「……だ、ダメ。人間を傷付けることにな…る……」
アントリオン「ちぇー。オレ様の唯一の楽しみだったのによー」
スカルミリョーネ「……ひ、ヒマな時にオレが相手になってやるか…ら……」
アントリオン「ホントだぞ! 絶対だかんな!?」
スカルミリョーネ「……ぞ、ゾンビ、嘘つかな…い……」
スカルミリョーネ「……ちゃ、ちゃんとみんなに知らせておくんだ…ぞ……?」
アントリオン「……了解」
アントリオン「ところでスカルミリョーネ様、砂漠の光、持ってくか?」
スカルミリョーネ「……い、いらな…い……」
367 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 18:17:03.98 ID:VRt3rZWL0
ー バロンの町 ー
マグ「バルバリシア様……!」
ドグ「お会いしとうございました……!」
ラグ「こうして再びその美しいお姿を拝見する事ができて、我らは感激にございますっ!」
バルバリシア「良かった、無事だったのね、三人とも」
バルバリシア「ところで、こんな場所でいったい何をしていたの?」
マグ「それが……。ゾットの塔の爆発から命からがら逃げ出したのは良かったのですが……」
ドグ「目が覚めると、見知らぬ土地に横たわっておりまして……」
ラグ「歩けど歩けど仲間の魔物や人間すらも見つからず、途方に暮れていたのです……」
バルバリシア「大変だったのねぇ、あなたたちも」
バルバリシア「ま、この町にもう人間はいないみたいだし、ここを根城にするのもいいんじゃないかしら?」
マグ「いえ、せっかくこうして再び出会えたのです。我らもバルバリシア様と共に行きます!」
バルバリシア「その前に、他の魔物たちに伝えてもらいたいのよ」
バルバリシア「もう人間と争う事はない、って」
ドグ「……それは、本当なのですか? ルビカンテ様ともあろうお方が人間と手を結ぶなど、にわかには信じられませぬ……」
バルバリシア「ひと昔前のあいつならそうだったかもね。でも、あいつは変わったわ」
ラグ「そうなのですか?」
バルバリシア「ええ。これからは魔物も人間も争いの無い、新しい時代が来るわよ」
バルバリシア「全てが終わったら、どこかいいところを見つけてみんなで暮らしましょう」
マグ「……分かりました。それを楽しみに、私たちは言いつけを果たして来るとします」
マグ「行くぞ、ドグ、ラグ!」
ドグ・ラグ「はっ!!」
タタタタ…
バルバリシア「……新しい時代、か」
バルバリシア「その前に、ミキたちに頑張ってもらわないとね」
バルバリシア「……さて、あいつはしっかりやっているかしら」
368 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 18:26:22.58 ID:VRt3rZWL0
ー バブイルの塔 1F ー
…ザッ
ルビカンテ「……酷い有様だな。崩れていないのが不思議なくらいだ」
ルビカンテ「ここももうアジトとしては使えまいな」
ルビカンテ(あれだけ激しい戦いがあった後だ。それも仕方ない、か)
「…………ルビカンテ様」
ルビカンテ「……生きていたか、ルゲイエよ」
ルゲイエボーグ「はっ。このルゲイエ、こうしてルビカンテ様に再びお会いできるのを待ちわびておりましたぞ!」
ルビカンテ「…………そうか」
ルビカンテ「このバブイルの魔物はどれだけ残っている?」
ルゲイエボーグ「数は半分程に減ってしまいましたが、戦力として使えそうな者もまだおりますじゃ」
ルゲイエボーグ「人間を攻めるのですかな?」
ルビカンテ「いや、人間とは和平を結んだ。もう憎しみ合う事もないだろう」
ルゲイエボーグ「なんと……」
ルビカンテ「残っている者たちに伝えてくれ。これからは平和に生きるのだと」
ルゲイエボーグ「それが、ルビカンテ様のお望みとあらば」
ルビカンテ「頼んだぞ」クルッ
スタスタ…
369 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 18:28:55.75 ID:VRt3rZWL0
ルゲイエボーグ(……なーんて素直に従うと思うなよ? この木偶がぁ!)
ルゲイエボーグ「……死ねぇ、ルビカンテっ!」ブンッ
…ザシュッ!!
ルビカンテ「! ……ルゲイエ、貴様……」
ルゲイエボーグ「お前さえいなければ、ワシは四天王になっていたんじゃあ!」
ドゴォ!! ズバァ!!
ルゲイエボーグ「お前のせいで、お前のせいでっ!!」
バキッ!! グシャァ!!
ルゲイエボーグ「っ……はぁ、はぁっ……」
ルゲイエボーグ「ど、どうじゃ、思い知ったか!」
ルビカンテ「………」
ルビカンテ「……やはり、お前だけは生かしておけんようだな」
ルゲイエボーグ「なっ……!? ワシの攻撃が効いてないだと……!?」
ルビカンテ「私利私欲の為にしか動かないお前は、弱い」
ルビカンテ「オレは本当の強さというものをあいどるたちから学んだ」
スタスタ…
ルゲイエボーグ「ひっ、く、来るなっ!」ズサッ
ルビカンテ「お前がイオリにした事を、今度はオレがお前にしてやろう」ポキポキッ
ルゲイエボーグ「お、お助けぇ〜〜!!」
ドカバキベキグシャ!!
ルゲイエボーグ「」
ルビカンテ「……地獄で反省するんだな、ルゲイエよ」
370 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 18:32:38.70 ID:VRt3rZWL0
ー 深夜 月の民の館の外 ー
亜美「……ちぇすとぉ!!」
ゴオオオオォォ!!
ドサッ
魔物1「」
亜美「もいっちょ!!」
ゴオオオオオ!!
ドサッ
魔物2「」
亜美「ラストっ!!」
ゴオオオオォオオ!!
ドサッ
魔物3「」
亜美「…………ふぃ〜」
真美「おつかれ亜美ー。ほい、エーテル」スッ
亜美「さんきゅ、真美」
亜美「んく、んく……」
真美「なかなか板に付いてきたカンジじゃない? 亜美の『れんぞくま』も」
亜美「……いや、まだまだっしょ。亜美ひとりじゃ使える魔法は限られてるし、お姫ちんやミキミキの火力には届いてないよ、きっと」
亜美「それに連続じゃなくていちおー同時に出してるんだよ? 真美だって同じっしょ?」
真美「おっと、こりゃしっけい」
真美「でも、火力が足りないからなん個も同時に魔法出して撃ってるんだよね?」
真美「それでもまだあの二人にかなわないって、ツラいねー」
亜美「だって……ミキミキは最初っからホーリー使えたみたいだし、はるるん助けに行った時なんかはアルテマ使ったっぽいし……」
真美「ねー。それを聞いた時は真美もチョーびっくりしたよー」
亜美「お姫ちんはお姫ちんでいつの間にかメガフレアとか覚えてるし……」
亜美「もうね、くやしいを通り越して笑いが出てくるよね……」ズーン
真美「ま、まあホラ、あの二人はいろいろとキカクガイだからさ」
亜美「でもさー、ウチらの中でキッスイの黒魔道士は亜美だけなんだよ? やよいっちの火力にはかなわなくても、せめてミキミキやお姫ちんの火力には追いつきたいよー……」
亜美「……あーあ、亜美も二人みたいにすんごい魔法が使えるよーにならないかなぁ」
真美「たいへんだねぇ、黒魔道士も」
貴音「…………精が出ますね、亜美、真美。このような夜更けに」
亜美・真美「……お姫ちん?」
371 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 18:37:58.44 ID:VRt3rZWL0
亜美「どったの? こんな時間に」
真美「お姫ちんもしゅぎょー?」
貴音「いえ、そうではありません」
貴音「明日、わたくしたちは中心核を目指してここを発ちますが、その前にこの光景をしっかりと目に焼き付けておこうと思いまして」
亜美「この光景って、月の?」
貴音「ええ」
真美「そーいえばお姫ちんって、いっつも月を見てたよね」
貴音「わたくしにとって月とは、無くてはならないものですから」
真美「ふーん……」
貴音「……時に亜美」
亜美「……ほぇ?」
貴音「何やら自分の魔法の威力に自信が持てないようですね?」
亜美「…………まあ、ね」
亜美「てか、お姫ちんのせいでもあるんだよ?」
貴音「……なんと、そうでしたか。それは申し訳ない事をしてしまいました」
亜美「いや、マジにあやまらないでよ……。なんか自分がミジメに思えてきたよー……」
真美「亜美……」ナデナデ
貴音「………」
貴音「亜美。もう少し自分に自信をお持ちなさい」
亜美「えっ……」
貴音「わたくしが保証します。あなたのその力は決して誰にも引けを取ってはいません」
亜美「………」
亜美「うーん……お姫ちんが言うと、なーんかホントっぽく聞こえるんだよねぇ」
貴音「……はて? わたくしは真実を申し上げているつもりですが?」
亜美「……ホント、その自信はどこからくるんだろ」
貴音「ふふ……」ニコッ
372 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 18:42:00.27 ID:VRt3rZWL0
貴音「では、僭越ながら、わたくしから一つ助言を差し上げます」
貴音「亜美。あなたはわたくしや美希に魔力が劣っていると思い込んで焦っている……」
亜美「………」
貴音「ですが、それは大きな間違いです」
亜美「……え、なんで? だってお姫ちんもミキミキも、亜美が使えない魔法とか使えるじゃん」
貴音「……例え話をしましょう」
貴音「白魔道士である美希は『けあるが』や『へいすと』、『ほーりー』などが得意ですね」
亜美「あと、アルテマもね」ムスー
貴音「片や、同じ白魔道士の真美は『れびてと』や『ぷろてす』、『しぇる』、『ぶりんく』などを好んで使用します」
真美「……ん、そーいやミキミキってあんましサポート魔法使わないんだね」
貴音「ええ。全く使用しない、という訳でもないと思いますが、美希は回復や攻撃、真美は自身の強化や仲間のさぽーとが得意なのだと感じました」
真美「へー……真美、そんなのゼンゼン気にしてなかったよー」
亜美「……んじゃあ、他のみんなは?」
貴音「そうですね。あずさは特に『てれぽ』の魔法が得意なようです」
真美「あれは、得意ってゆーのかなぁ……」
貴音「わたくし自身は白黒併せて大体の魔法を使う事ができますが、それでもその中で得手不得手というものがあります」
貴音「『ぶりざど』系の魔法は得意ですが、『さんだぁ』系の魔法はあずさに、『ふぁいあ』系の魔法は亜美に威力で劣るでしょう」
亜美「えっ、そーなの?」
真美「知らなかった……。しょーげきのジジツってカンジ」
貴音「それに、『とーど』や『ぶれいく』の魔法を使えるのも亜美、あなただけです」
貴音「それ以外にも、あなたには魔法を同時に複数発動するという特技も持っています」
373 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 18:45:21.46 ID:VRt3rZWL0
真美「……あれ? なんか、お姫ちんの話を聞いてたら亜美がそこまでダメダメってカンジはしなくなってきたよ?」
貴音「魔法というものも一つの個性。使用者によってその力は様々な形に変化します」
貴音「つまり、わたくしにはわたくしの、美希には美希の……」
貴音「そして、亜美には亜美だけの戦い方というものが必ずあるはずなのです」
貴音「それはもちろん真美、あなたにも同じ事が言えるでしょう」
真美「………」
貴音「他人を真似するのではなく、あなた方にしか出来ない自分だけの戦い方を見出してください。二人の柔軟な発想力ならば、きっとそれを見つけることが出来ると信じていますよ」
亜美「………」
真美「お姫ちん……」
亜美(亜美だけの戦い方、かぁ……)
亜美(……そーだね。誰かのマネして強くなっても、きっとイミないよね)
亜美「……ありがとね、お姫ちん」
亜美「亜美、自分がどーすればいいかがなんとなくわかった気がするよ!」ニコッ
貴音「……共に精進致しましょう、亜美、真美」ニコッ
真美「うーむ……。さすがお姫ちんってカンジだね。カユいところに手が届くっていうか」
亜美「あ、そんじゃあお姫ちんはマゴの手ってコトだね!」
真美「おお、そーだね! マゴの手ちんだね!」
貴音「あ、あの……それは果たして褒め言葉なのでしょうか?」
真美「……っと、そうだ」
真美「そーいえば真美、ピヨちゃんと戦うに当たってお姫ちんに言っておかなきゃいけないことがあるんだった」
貴音「わたくしに……ですか?」
真美「うん。すっごく大切な話なんだよ」
貴音「……分かりました。拝聴致しましょう」
374 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 18:49:02.71 ID:VRt3rZWL0
ー 月の民の館付近の丘 ー
真「…………せいっ!」バッ
…ドガアアァァアアン!!
雪歩「わぁ……山が一つなくなっちゃった……!」
雪歩「やっぱりすごいね、真ちゃん」
…スタッ
真「そんなことないさ。気の流れを上手く操ることができれば、こんなの誰にだってできるんだ」
真「特に、今までずっとボクの修行に付き合ってくれていた雪歩なら、もう気の流れっていうものを理解しているはずだよ?」
雪歩「で、でも私、まだよく分からなくて……」
真「……うーん」
真「……いいかい雪歩。気っていうのは誰だって自分の体の中に持っているものなんだ」
真「大切なのは、どうやってそれを外へ出してやるか」
雪歩「体の外へ……?」
真「うん。頭で考えるんじゃなくて、感じるんだ。自分の中に揺らいでいるエネルギーを解放するイメージを思い描くんだよ」
雪歩「自分の中の、エネルギー……」
真「そのエネルギーを……」ユラ…
真「…………拳に込めて、撃つッ!!」ブンッ
ドゴオオオオォォオン!!!
真「……まあ、雪歩にはアダマンアーマーと伝説のスコップがあるし、あんまり必要ないのかもしれないけどね」
雪歩「……ううん、そんなことないよ。真ちゃん、私に教えて!」
真「……へへ、分かったよ」ニコッ
真「ただ、明日にはもう出発だ。時間的に教えてあげられるのは簡単な事だけになっちゃうけど、それでもいいかな?」
雪歩「よ、よろしくお願いします、師匠!」
真「し、師匠?」
真「……ま、まぁいいや。それじゃ、もう一度ボクの動作をよーく見ててね?」スッ
雪歩「お、押忍っ!」
375 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 18:52:10.00 ID:VRt3rZWL0
ー 深夜 月の民の館 1F 図書室 ー
やよい「………」
やよい「………」
やよい「………」
やよい「………」
やよい「………」
やよい「……………うー」
伊織「…………やよい、眠れないの?」
やよい「あ、伊織ちゃん……。ごめんね、起こしちゃった?」
伊織「ううん。ちょうど私も眠れなかったところよ」
やよい「そっかぁ……」
伊織「………」
やよい「………」
伊織「……考え事でもしてたの?」
やよい「……うん」
伊織「………」
やよい「………」
やよい「えっとね……」
やよい「ちょっと、小鳥さんのことを考えてたんだ」
伊織「…………そう」
やよい「わたし、あんまりよくわからないままここまできて、今までずーっとおかしいなー、なんでだろーって思ってたことがあって……」
やよい「でも、春香さんが『小鳥さんのおかげでわたしたちが成長できた』って言ったときに、思ったの」
やよい「小鳥さんは、やっぱり小鳥さんでいてくれたんだなーって」
伊織「………」
やよい「だから、わたしもちゃーんと小鳥さんにお礼をしなきゃって思って」
やよい「わたしも最後までしっかりわたしの役をえんじて、小鳥さんを……」
伊織「……やよい」
376 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 18:54:43.87 ID:VRt3rZWL0
伊織「アンタの決意は分かったわ。だから、無理しなくてもいいの」
やよい「えっ? わたし、ムリなんかしてないよ?」
伊織「嘘よ。……だったらなんでアンタは泣いているの?」
やよい「わ、わたしっ……こ、これは泣いてるんじゃなくて……!」ゴシゴシ
伊織「………」
伊織「……お願いよ、やよい」ダキッ
やよい「い、伊織ちゃん……?」
伊織「私の前では無理しないで。本当のあなたを見せて」
やよい「っ……ううっ……!」ポロポロ
やよい「伊織ちゃん……わたしっ……!」
やよい「ほんとうは、小鳥さんと戦いたくないよっ……!」ポロポロ
伊織「やよいっ……!」ギュッ
やよい「ほんとうは、ごわぐでっ……かなしくてっ……えぅ……!」ポロポロ
伊織「ええ……そうね……」ナデナデ
伊織(『自分の役を最後まで演じきる』。春香の言葉は確かに聞こえはいいけれど、小鳥との戦いをそういう風には考えられない子だってもちろんいる)
伊織(やよい……。アンタはどこまでも優しいから、割り切ることができないのね……)
伊織(でも、だからこそアンタは今より強くなれる。やよいなら、その優しさを強さに変えることだってできるわ)
伊織(乗り越えるのよ。……それはアンタが自分の力で越えなければならない、壁なんだから)
やよい「……ぅうううぅぅうううぁああん……!!」
377 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 18:57:46.78 ID:VRt3rZWL0
ー 深夜 月の民の館 B1F クリスタルルーム ー
律子「………」
律子(春香のおかげで、あの子たちも小鳥さんと戦う覚悟を持つ事ができた)
律子(でも、それはきっとみんながいるから。自分は一人じゃないって思う気持ちから来るもの)
律子(地下渓谷ではどんな戦いになるか分からない)
律子(もし、一人になってしまった時。誰からも助けてもらえなくなった時)
律子(その時にこそ、あの子たちの真価が試される事になる)
律子(それにしても、プロデューサー殿の言葉が気になるわね)
律子(小鳥さんを真の意味で助ける……。心の支えになるっていうのは確かにそれっぽく聞こえるけど、イマイチしっくりこない)
律子(プロデューサー殿には何か別の思惑がある。……そう思えて仕方がないのよね)
美希「……あれ、律子…さん?」
律子「美希……」
律子「……眠れないの? 早く寝ないと明日に響くわよ?」
美希「えーっとね、寝すぎて寝れなくなっちゃったの」
律子「あのねぇ……。明日起きなかったら置いて行っちゃうわよ?」
美希「それはへーきなの。ミキ、こー見えて自分の睡眠時間はちゃーんと調整できるんだよ?」
律子「……本当に大丈夫なんでしょうねぇ?」
美希「あ、ヒドいの! 律子…さん、ミキのこと信じてないんだ」
律子「そういうわけじゃないけど……」
美希「………」
律子「………」
…キラーン!
美希「……キレイだね、クリスタルって。見てるとなんだか不思議な気持ちになってくるの」
律子「そうね……」
378 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:00:17.21 ID:VRt3rZWL0
律子「……美希、あなたに訊きたいことがあるんだけど」
美希「なーに?」
律子「その……プロデューサーがいなくなってさみしくないの?」
律子「あなたっていつもプロデューサーにベッタリだったし、どうしてそんなに落ち着いているのかなって気になってね」
美希「んー…………」
美希「じゃあ、律子…さんは?」
律子「えっ?」
美希「ハニーがいなくて、さみしい?」
律子「えっ…と……」
律子「……そりゃあ、誰にも相談せずにいきなりいなくなったのはどうかと思うけど……」
律子「まあ、どこにいるのかは分かっている訳だし、小鳥さんのお守をしてもらってると思えばいいし」
律子「……それに、彼には彼なりの考えがあるみたいだし」
美希「そう!」
美希「ハニーにはハニーの考えがあるんだよ」
美希「ミキも、ハニーがどうするつもりなのかまでは分からないけど」
美希「……でもね、『信じて』ってハニーが言った以上、ミキはそれを信じて、自分にできることをガンバるだけなの」
美希「だから、ミキもさみしがってるだけじゃダメって思ったんだよ?」
律子「………」
律子「強いわね、美希は」
美希「? ……別に特別なことじゃないと思うな」
律子「いいえ、特別よ」
律子「仲間の言葉を信じるのはとても大切な事だけど、簡単じゃないわ」
律子「心のどこかで不安を抱いてしまう。疑心暗鬼に陥ってしまう」
律子「ただ真っ直ぐにそれができるのは、美希、あなたが本当に純粋に強い人間だからよ」
美希「……ミキはよく分からないけど、律子…さんが言うなら、そうなのかな」
…キラーン!
379 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:02:59.58 ID:VRt3rZWL0
律子「……ねえ、美希。あなたは不安に感じない? 小鳥さんと戦うことを」
律子「春香はああ言ったけど、仲間と戦うというのはやっぱりそう簡単に割り切れる事じゃないわ」
律子「それに、小鳥さんはどうやら本当に本気みたいだし……」
美希「……あは☆ なんだかおかしいの」
律子「えっ……」
美希「これじゃ、いつもと逆だね」
律子「逆? ……どういう意味?」
美希「だっていつもは、分からない事をミキたちから質問することが多いのに、今日の律子…さん、ミキに質問してばっかりだよ?」
律子「あ…………」
律子(そうか…………そうだったのね)
美希「みんな、難しく考えすぎなの」
美希「小鳥と戦うことになったからって、別にミキたちのカンケイが変わっちゃうってわけじゃないでしょ?」
律子(質問ばかりするのは、不安の裏返し)
律子(みんなの事を心配しつつも、その実は……)
美希「戦って、小鳥を倒して、それで元の世界に帰って。でも、元の世界に帰っても小鳥は小鳥だし、ミキはミキだよ?」
美希「それはこの世界にいても同じだって思うな」
律子(私自身が一番、小鳥さんと戦う事に不安を……いえ、恐怖を抱いている)
美希「戦う過程で痛い思いや苦しい思いもするかもしれないけど、それはみんな同じなの」
美希「ミキ的には、全部終わって元の世界に戻ればまたみんなで楽しく過ごせるって思うなっ」ニコッ
律子「美希……」
律子(……ここがクリスタルルームだからそう思うのかしら)
律子(今は、目の前のこの子が眩しくて仕方ない)
380 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:05:13.47 ID:VRt3rZWL0
美希「えっと、こーいうのなんて言うんだっけ? 喉元過ぎれば……」
律子「……熱さ忘れる、ね」
美希「あは☆ さすが律子!」
律子「さん、でしょ?」
美希「むー……ごめんなさいなの」
律子(喉元過ぎれば……か)
律子(私は美希みたいには考えられない。でも、この子たちの強さには、本当に勇気をもらえるわ)
律子(私も、もっとしっかりしないとね)
美希「ミキね、地球の……ばろん、っていう国でみんなで集まった時に、誓ったの」
美希「ハニーと離ればなれになっても、もうゼッタイに弱音は吐かないって」
美希「だから、もう何があっても恐くないよ。どんな壁だってきっと乗り越えてみせる!」
律子「………」
律子「……はぁ……」
律子「やっぱり大物だわ、あんたは」
美希「そう?」
律子「さ、そろそろ戻りましょう。眠れないって言っても、横になって目を閉じてるだけでも体は休まるから」
美希「あ、じゃあじゃあ、今夜はミキと一緒に寝る?」
律子「そうね、たまにはそれもいいかもしれないわね」ニコッ
美希「えへへ、やったぁ!」
381 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:07:40.59 ID:VRt3rZWL0
ー 月の民の館付近の洞窟 ー
響「……はっ!」ブンッ
ドゴッ!
ドサッ
魔物1「」
響「…………ふぅ」
響「……えーと、これで何体目だっけ。50体までは数えてたんだけどなー」
響「なんか、魔物を倒しすぎて気持ち悪くなってきたかも……」
響「でも、まだまだだぞ。こんなのじゃ全然足りない」
響(みんな、最初の頃に比べてすっごく強くなってる)
響(それぞれに得意な分野があって、それをちゃんと自分で理解してて)
響(今のみんななら、きっと魔物なんかに負けたりしないって確信できるぞ)
魔物2「グギャァー!」
響「………」
響「……たぁーーっ!」ブンッ
ドゴォ!
ドサッ
魔物2「」
響(……でも、じゃあ、自分は?)
響(体術では真に敵わないし、伊織や千早みたく得意な武器があるわけでもない)
響(それに、自分は魔法も使えない)
響(エン太郎もファル子もいない今の自分に、何がある? 何ができる?)
響(……みんなの足手まといにだけは、絶対になりたくないぞ)グッ
「……ーー♪ 」
響「……あれ、この声……」
382 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:09:39.30 ID:VRt3rZWL0
…ザッ
響「……千早?」
千早「……我那覇さん? どうしたの? こんな夜遅くに」
響「それはこっちのセリフだぞ。……こんなところで歌の練習?」
千早「なんだか落ち着かなくて。眠れないから、歌えば少しは気が楽になるかも、って思って」
響「そっか。やっぱり千早も落ち着かないのかー……」
千早「我那覇さんも眠れないの?」
響「自分は……」
響「自信が持てないんだ」
響「自分、真みたいに強くないし、魔法が使えるってわけでもないし……」
響「この先ちゃんとみんなについて行けるのかな……って」
千早「……珍しいわね。そんなに弱気な我那覇さんは初めて見たわ」
響「そりゃ、自分だって自信をなくすことくらいあるよ」
響「こないだ戦った親衛隊の魔物たちはすっごく強くて、自分は攻撃をよけることで精一杯でさ」
千早「………」
響「よく考えたら自分、今までみんなほど魔物と戦って来なかったんだ」
響「エン太郎やファル子、それにまど香。飛空艇のことだったら、誰にも負けない自信はあるつもりだけど……」
千早「……ええと、ごめんなさい。まど香って誰の事だったかしら?」
響「も〜、まど香は魔導船の名前だぞ。千早、忘れちゃったのか?」
千早(いつの間に決まったのかしら)
383 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:11:41.60 ID:VRt3rZWL0
千早「……まあ、それはともかく」
千早「我那覇さんは、魔物との戦いにおいて自分に秀でているものがないから悩んでいるのね?」
響「うん……」
千早「そうね……。だったら、発想を変えてみてはどうかしら」
響「発想を変えるって?」
千早「あなたの得意分野ーーつまり、飛空艇で戦うの」
響「えっ、でも、ファル子は地球に置いてきたし、まど香も今は近くにいないし……」
響「……エン太郎は、ずっとずっと遠くに行っちゃったし……」
千早「遠くにいるのなら、地球にいた頃みたいに呼びかけるのよ」
響「いや、宇宙を越えられるのはまど香だけだぞ?」
響「それに、エン太郎はもう……」
千早「………」
千早「……私ね、今だから言うけれど、最初はあなたとエン太郎の仲を疑っていたのよ」
千早「飛空艇なんてどれも同じじゃないか、たかが乗り物と人間が心を交わす事なんて本当に出来るのか、って」
響「ちょ、ちょっと千早、いきなり何を言い出すんだ?」
千早「……でも、あなたたちの絆は決して偽物なんかではなかった」
千早「エン太郎を操縦している時の我那覇さんは本当に楽しそうだったし、一度カイポではぐれてしまった時だって、エン太郎はちゃんとあなたの元へ戻って来た」
千早「それに……私はその場にいたわけじゃないけれど、最後の最後までエン太郎は命がけであなたを守り抜いた」
千早「その話を聞いた時、私、心の奥底が震えるような気持ちになったの」
響「………」
千早「だから、エン太郎がもうこの世にはいないとしても、遠く離ればなれになってしまったとしても……」
千早「きっと、心の深いところで我那覇さんと繋がっているんじゃないかしら」
千早「姿は見えなくても、遠い空で見守っていてくれている……」
千早「そう思う……いえ、そう信じたいの」
響「千早……」
千早(……なんて、まるで私自身に言い聞かせているみたい)
千早(なんだか自分が滑稽ね)
響「!」
千早「……我那覇さん、どうしたの?」
響「……魔物だ!」
384 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:16:34.37 ID:VRt3rZWL0
魔物3「グルル……!」
千早「……!」チャキッ
響「千早、ここは自分に任せて」
千早「でも……」
響「自分、試してみようと思うんだ。千早が言ったみたいに」
千早「えっ?」
響「行くぞっ!」ダッ
タタタタ…
魔物3「ガアア!」ブンッ
響「……っと」ヒョイッ
響「そんな攻撃、食らわないぞ!」
魔物3「グアアア!」ダッ
響「………」
響(千早の言う通りだ。自分には自分の得意分野がある)
響(……エン太郎)
響(お願い、力を貸してっ……!)
魔物3「グアアアッ!」ブンッ
千早「我那覇さんっ!」
385 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:17:34.01 ID:VRt3rZWL0
ゴオオ…
響「……これが、自分の戦い方だぁっ!!」
響「ナンクル砲っ!!」バッ
ズドオオオオンッ!!
千早「!」
…ドサッ
魔物3「」
響「…………よしっ!」
千早「我那覇さん、今のは?」
響「ナンクル砲は、飛空艇の砲撃。エン太郎の武器だったんだ」
響「きっと、天国からエン太郎が自分に力を貸してくれたんだ」
千早「そう……」
響「ありがとね、千早。千早のおかげで自分なりの戦い方を確立できたぞ!」
千早「いえ、お礼を言われることではないわ」
千早「その力は、きっと我那覇さんとエン太郎の絆の証だと思うから」
響「うん……そうだな!」
響(……ありがとう、エン太郎)
響(自分、頑張るからな。天国でちゃーんと見ててよねっ!)
386 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:19:09.71 ID:VRt3rZWL0
ー 月の民の館 屋上 ー
キラキラ…
春香「はぁ……」
春香「宇宙ってホントにキレイだなぁ……」ボーッ
春香「数えきれないくらいたくさんの星が瞬いていて……」
春香「……ふふっ、まるでサイリウムみたい」
春香(……こうして悠然とした宇宙を見上げていると、なんだか不思議な気持ちになる)
春香(ゲームの世界へ飛ばされて、いろんな場所を旅して、慣れない武器を持って魔物と戦って)
春香(普通のアイドルだった私たちは、今まで知らなかったことを知ったり、考えもしなかったことについて考えさせられたり)
『……お前たちアイドルが、物語を紡ぐんだ』
春香「………」
春香(プロデューサーさん、私たちはしっかりできているんでしょうか?)
春香(この物語は、ちゃんとハッピーエンドへと向かっているんでしょうか?)
春香(演劇やドラマのお仕事みたいに……ううん、今までやってきたどのお仕事よりもリアルで、現実味に溢れていて)
春香(ここは本当ならあり得るはずのない世界だから、今まで起こったことは全部夢なんだよって言われても、信じられないかもしれません)
春香(私たちの向かう先には、いったい何が待っているんでしょうか……)
あずさ「…………春香ちゃん?」
春香「……あれっ? あずささん?」
あずさ「もしかして春香ちゃんも眠れないの?」
春香「えっと、はい。最後の戦いの前で、少し緊張してるのかもしれませんね」
あずさ「うふふ♪ その割にはずいぶん落ち着いて見えるわよ?」
春香「そ、そうですか?」
あずさ「ええ」ニコッ
あずさ「なんだか春香ちゃんがいつもよりも大人っぽく感じられるわ〜」
春香「そう、ですか……。えへへ、嬉しいなぁ」ニコッ
387 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:22:11.38 ID:VRt3rZWL0
あずさ「……綺麗な空ね」
春香「そうですねぇ……。家に持って帰りたいくらいです」
あずさ「もしもこの宇宙を家に持って帰ることができたら、プラネタリウムは必要なくなっちゃうわね〜」
春香「ふふっ、ホントですねっ!」
あずさ「………」
春香「………」
春香「……あの、あずささん?」
あずさ「……なぁに?」
春香「あずささんって、今は……腕とか再生したりとか、回復魔法が効かなかったりとか……」
春香「なんていうか、その……」
あずさ「えーっと、ゾンビっていうことかしら?」
春香「す、すみません、変な事言って」
あずさ「いいのよ、気にしないで? もうだいぶこの体にも慣れたし」
あずさ「スーさんが私のために分けてくれた命ですもの。私、とても大切に思っているのよ?」
春香「………」
春香「あずささん。私、あずささんに謝らないとです」
あずさ「あら、それはどうして?」
春香「今日、みんなの前で私は、自分の役を最後まで演じきりたいって言いました」
春香「でも、私たちの中で一番大変な役を与えられたのは、あずささんだったんですよね」
春香「それなのに私、あずささんの事も考えずに軽はずみな事を……」
あずさ「……そうねぇ」
あずさ「私も、まさか自分が死を体験するなんて思ってもみなかったけど……」
あずさ「うふふ。でも、これも貴重な体験よね?」
春香「……なんでそんなに軽く話せるんですか? あずささん、怖くなかったんですか……?」
あずさ「う〜ん……」
388 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:27:05.47 ID:VRt3rZWL0
あずさ「……少し前に、ドラマの撮影で知り合いになった役者の方がいてね」
春香「えっ……?」
あずさ「その方が仰っていたの。『自分には主人公を張る器はない。でも、脇役として主人公を引き立てることならできる。だから、自分は自分にしかできないやり方でドラマを良くしていきたい』って」
あずさ「その方の言葉を聞いて私、思ったのよ。ああ、そういう考え方もあるんだなぁ、って」
春香「あ、あの……?」
あずさ「私ね、今までお仕事で与えられた役に対して特に疑問を持ったりしたことはなかったんだけど、その方の言葉を聞いてから、少しだけ考え方が変わったわ」
あずさ「主人公だけが主人公じゃない、どんな脇役にだってちゃんとした意味があるって」
あずさ「それからは私、どんなお仕事でも楽しくって。……ううん、楽しくやらなきゃ損よねって思えるようになったのよ」
春香「あずささん……何の話を?」
あずさ「私が一度死んだことも、きっと物語を盛り上げる何かしらの意味があった」
あずさ「……物語を盛り上げるのは、役者の務めよ?」ニコッ
春香「あずさ…さん……」
389 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:28:13.34 ID:VRt3rZWL0
あずさ「さあ、春香ちゃん。終わった事は忘れて、今は前を向きましょう?」
あずさ「主人公の春香ちゃんが後ろを振り返っていては、物語が先に進まないわ」
あずさ「春香ちゃんには、この物語を終わらせる使命があるんだから」
春香「………」
あずさ「…………ねっ?」
春香「……はい、分かりました。私、もう絶対に後ろを向いたりしません!」グッ
あずさ「うふふ♪ それでこそ春香ちゃんよ」ニコッ
春香「あの……ちなみにあずささんって、スーさんのこと、ちょっと気になったりしてるんですか?」
あずさ「あらあら……」
あずさ「スーさんは私にとっていいお友達よ? でも、私の運命の人は別にいるのかなって思っているわ〜」
春香「で、ですよね。……あはは、私ったら何言ってるんだろ」
あずさ「うふふ、心配しなくても、春香ちゃんの大切な人を横取りなんかしないわよ〜?」
春香「えっ!? い、いやいや、何を言ってるんですか! プロデューサーさんの事は今は関係な……」
春香「…………あっ」
あずさ「春香ちゃんは本当に楽しいわね〜」ニコニコ
春香「も、もう! からかわないでくださいっ」カァァ
390 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:30:29.98 ID:VRt3rZWL0
ー 翌日 月の民の館 1F 図書室 ー
月の民「……もう、行かれるッスか」
貴音「ええ」
貴音「あなたには本当にお世話になりました。わたくしのいない間この館を守ってくださったり、快く皆を迎え入れていただいたり……」
貴音「それに、このようなお弁当まで頂いて……感謝してもし足りません」ズッシリ
響「……ていうか、貴音のお弁当だけ大きすぎだよね。自分たちの3倍くらいあるぞ」ヒソヒソ
春香「それは仕方ないんじゃないかな。月の民さんもさすがにもう貴音さんが食いしん坊だっていう事実に気づいてると思うし……」ヒソヒソ
月の民「自分、信じてるッス。タカネ様やみなさんがきっとこの世界に光をもたらしてくれるって」
月の民「だから……きっと、無事でまた……!」
貴音「……はい、約束します。誰も欠けることなく、無事に帰ってくると」ニコッ
月の民「タカネ様っ……!」ウルッ
貴音「……それで、相談なのですが、もう少しお弁当の量を増やしていただけないかと思うのですが……」
月の民「……えっ?」
律子「……感動の旅立ちのワンシーンが台無しね」
伊織「ま、予想はできたけどね」
貴音「……それでは、行って参ります」ペコリ
月の民「はい! 行ってらっしゃいッス! 自分、ここでみなさんのご無事を祈っているッス!」
貴音(……思えば、わたくしがこの世界へ来て途方に暮れていた時、最初に声を掛けてくれたのがこの方でした)
貴音(わたくしたちは、本当にたくさんの方の想いを託されています)
貴音(これは最早、わたくしたちだけの戦いではありません)
貴音(げぇむの世界を救う戦いでもあるのです)
391 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:33:29.93 ID:VRt3rZWL0
ー 月の民の館 B1F クリスタルルーム ー
律子「……さて。みんな、準備はいい?」
響「いつでもいいぞ!」
春香「準備万端ですよ、準備万端!」
千早「行きましょう、律子。プロデューサーと音無さんが待っているわ」
律子「……よし」
律子「ここには、全部で13のクリスタルがある」チラッ
律子「各自クリスタルの前に立って、クリスタルに向かって祈るのよ」
律子「想いを受けたクリスタルは、きっと私たちに応えてくれるわ!」
アイドルたち「……はいっ!!!」
春香「えっと……」
春香(……お願いします、クリスタルさん。私たちをどうか地下渓谷へ連れて行ってくださいっ……!)
春香「っ……!」ギュッ
……
…………チカッ
春香「……わっ、プロデューサーさんにもらったクリスタルの首飾りが、光ってる……!」
…パァァーー!
真「……春香の前にあるクリスタルも赤く光った!」
貴音「まるで、クリスタルが首飾りの輝きに共鳴しているかのようですね……」
雪歩「プロデューサー、もしかしてこの事も想定してたのかな?」
伊織「もしそうだとしたら、あいつにしてはなかなかいい仕事したわね」
千早(……よし、私も……)
千早(私にできるのは、前に進む事だけ。みんなと同じ方向を向いて、ただ一つの結末へ向かって)
千早(そこへ辿り着く為に必要な道は、自分の力で切り開くっ……!)
千早「……っ!」グッ
…パァァーー!!
392 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:44:45.65 ID:VRt3rZWL0
亜美「おおぉ! 今度は千早お姉ちゃんのクリスタルが青く光ったよー!」
真美「やるね、二人とも!」
やよい「春香さんも千早さんもさすがですっ!」
亜美「真美、亜美たちもいくよっ!」
真美「りょーかいっ!」ビシッ
亜美(……いでよ、クリスタル!)
真美(そして、真美たちの願いをかなえたまえー!)
…パァァーー!!
伊織「………」
伊織(……さあ、このスーパー忍者アイドル伊織ちゃんのために、しっかり輝きなさいっ!)
…パァァーー!!
伊織「……よしっ」
伊織「やよいは大丈夫かしら……」チラッ
やよい「……!」グッ
…パァァーー!!
伊織(……問題はないみたいね)
伊織(前に進むことができたのね、やよい)
393 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:46:56.68 ID:VRt3rZWL0
律子「赤、青、黄色、桃色に橙……」
律子「順調みたいね」
あずさ「律子さ〜ん♪ 」フリフリ
…パァァーー!!
雪歩「わ、私たちもなんとか……」
…パァァーー!!
真「準備できたよ!」
…パァァーー!!
律子「……これで9人分。あとは……」チラッ
貴音「モグモグ……」
…パァァーー!!
美希「……あふぅ」
…パァァーー!!
響「うぎゃー! 二人とも、大事な場面なんだからちゃんとやるさー!」
…パァァーー!!
律子「……これで12人。残りは私だけか」
律子「……よし!」グッ
律子(お願い、クリスタル。私たちを導いて……!)
……
…………
……シーーン
律子「あれっ……な、なんで?」
394 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:49:09.09 ID:VRt3rZWL0
真「律子のクリスタルだけ光らない……?」
響「なんでなんだ……?」
伊織「……とにかくもう一度よ、律子!」
律子「え、ええ!」
律子(クリスタル……私の願いを聞き届けてっ……!)
律子「……っ!」グッ
……
…………
……シーーン……
律子(……また、ダメ……。いったい何がいけないっていうの?)
雪歩「ど、どうしちゃったんでしょう……?」
あずさ「律子さん……」
やよい「ううっ……律子さん、がんばってくださいっ……!」グッ
美希「律子…さん、もう一回やってみるの!」
律子「………」コクリ
395 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:50:16.89 ID:VRt3rZWL0
律子(……こんなところで止まっている暇はないの。私たちには会わなければならない人がいる)
律子(お願いだから、言うことを聞いて……!)
……
…………
……シーーン……
千早「また……光らない? なぜ、律子のだけ……」
亜美「……ねえ、真美」
真美「うん……。もしかしたら、クリスタルはゲーム通り、暗黒騎士には使えないんじゃ……」
千早「そんな……。それじゃ、どうすればいいの?」
亜美「わかんない。でも、これって全部のクリスタルを光らせなきゃダメなんだよね?」
真美「もし、このままりっちゃんのだけ光らなかったら……」
千早(律子……)
春香「………」
396 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:53:19.99 ID:VRt3rZWL0
律子(私はやっぱり、小鳥さんの言っていた『ゴルベーザ』って人と同じ運命を辿るというの……?)
律子(それが私の運命だっていうなら私はどうなってもいい。でも、せめてあの子たちだけは……)
……ギュッ
律子「えっ……?」クルッ
春香「私も一緒です。一緒に祈りましょう、お姉ちゃん!」
律子「春香……」
律子「…………わかったわ!」
律子(お願いします……!)
律子・春香(私たちを、地下渓谷へ連れて行ってくださいっ……!)
……
…………
………………
……パァァーー!!
響「……やった! 緑色に光ったぞ!」
亜美「ナイスはるるん、さっすが妹!」
伊織「これで全員分よね?」
真美「うん。そしてたぶん、クリスタルの光が集まったところが……」チラッ
…………カッ!!
真「なんだ? 部屋の中央の床が……!」
貴音「ええ、一際激しく輝いております……!」
やよい「はわっ! まぶしーですー!!」ギュッ
パァァーーーーッ!!
397 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:55:53.15 ID:VRt3rZWL0
千早「……凄まじい光だったわね」
雪歩「うん……。私たちの光が、全部あの床に集まって……」
美希「色とりどりで、すっごくキラキラだったの!」
亜美「これで道ができたよ!」
真「道って……あの床が?」
亜美「あそこがワープゾーンになってるんだよー」
伊織「ってことは、あのワープを抜けた先が……」
あずさ「地下渓谷、ということなのね〜」
真美「あとは、勇気だけっぽいよ!」
律子「ありがとう、春香。あなたのおかげで道が開けたわ」
春香「いいえ、どういたしまして」ニコッ
律子「………」
春香「……お姉ちゃん、気にしてるんですか? クリスタルが輝かなかった事」
律子「……昨日、小鳥さんの分身に言われた事をちょっと思い出しちゃって……」
律子「今まで暗黒騎士として闇に手を染めていた私じゃ、やっぱりダメなのかもって……」
春香「そんなことありませんっ!」
春香「お姉ちゃんが何者だろうと、お姉ちゃんは私のお姉ちゃんです」
春香「それに、お姉ちゃんにはみんながついてます!」
春香「だから、不安に思う必要なんてないんです!」
律子「春香……」
律子「ふふっ。なんか、あなたにお姉ちゃんって呼ばれるのにも慣れてきたわね」
律子(まるで、本物の妹みたいな……)
律子(……って、ただのゲームの設定よ。深く考えちゃダメ、私)ブンブン
398 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/08/28(日) 19:57:12.60 ID:VRt3rZWL0
律子「……それじゃ、先へ進みましょうか」
あずさ「あの〜、ちょっとだけ待ってもらえませんか〜?」
律子「あずささん……どうしたんです?」
あずさ「いえ、こういう時は、みんなの気持ちを一つにしてからの方がいいんじゃないかな〜って思って」
あずさ「……ねっ、春香ちゃん?」
春香「みんなの気持ちを……? あっ!」
真「そうだね。戦いの前にひとつ気合入れておくのもいいかもね!」
美希「あは☆ なんだかライブが始まる前みたいにわくわくするの!」
やよい「うっうー! わたしも、めらめら〜ってもえてきましたー!」
律子「それじゃ春香、号令かけてもらえる?」
春香「はいっ!」
…スッ
春香「ついにここまで来たね」
春香「……長い長い旅だった」
春香「でも、ここまで来たらあとはひたすら前に進むだけだよ」
春香「私たちの旅、私たちの手で決着をつけよう!」
一同「……!」コクリ
春香「いくよっ……!」スゥー
春香「765プローーーー!!」
春香「ファイトぉぉーーーーっ!!!」
一同「おおーーーーーーッッ!!!!」
399 :
◆bjtPFp8neU
[sage]:2016/08/28(日) 20:00:36.73 ID:VRt3rZWL0
ここまでです
次回こそ本当にラスダン突入です
400 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/28(日) 22:36:43.07 ID:ZSOF9AT/O
おつん、やっぱFFWは名作だってはっきりわかんだね
401 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/22(木) 13:16:31.39 ID:CTmoysOA0
ほ
402 :
♯はるるん
[sage saga]:2016/09/23(金) 01:17:20.40 ID:97jAJlAtO
ー 月の中心核 ー
P「……それで音無さん、バハムートが音無さんに味方しているっていうのは、まあ洗脳ってことで理解できるんですけど」
小鳥「ゴクゴク……」
P「クルーヤはなぜ音無さん側にいるんです? 彼はこのままだと自分の娘たちと戦うことになるんですよ?」
小鳥「……ぷはぁ!」
小鳥「も〜う、そんなのしりませんよぅ〜。しりたいんだったらほんにんにちょくせつきけばいいじゃないれすかぁ〜」ヒック
P「いや、本人に訊いても答えてくれなかったから……ってああもう、バッカスの酒のビンが倒れちゃってるじゃないですか」
P「まったく……」フキフキ
小鳥「……どーせわたしはわるものですよー」ゴクゴク
P(俺がここへ来てからというもの、飲んでいる音無さんしか見ていない気がする)
P(こんなんで本当にラスボスが務まるのだろうか。ちょっと不安だ)
小鳥「……ふぅ」
小鳥「プロデューサーさん、私を悪役にしておけばぜーんぶ丸く収まるって思ってるんでしょう?」
P「い、いや、そんなことは思っていませんよ。音無さん、飲み過ぎじゃないですか?」
小鳥「……ふんだ」
403 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/23(金) 01:22:23.39 ID:97jAJlAtO
トリの付け方忘れた…
というか書き溜めはできているんですが新しいスマホが使いにくくて四苦八苦しています
もう残りはそんなにないのでトリップは付けずに行きます
404 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/09/23(金) 01:35:09.78 ID:97jAJlAtO
…コトッ
小鳥「……わたしだって……」
小鳥「私だって、本当は正義の味方がやりたかったです」
P「えっ……」
小鳥「……ひっく」
小鳥「そりゃあ、私は聖人君子なんかじゃありませんよ?」
小鳥「朝起きて身体がダルかったりすれば『あー、仕事行くのしんどいなー』とか思いますし、たまーにアイドルのみんなの若さに嫉妬しちゃう時もありますし……」
小鳥「律子さんのお説教を無心で聞き流したり、なかなか有給をくれない社長にムカッとする時だってあります」
小鳥「でも私、こう言ったら驚かれるかもしれませんけど、みんなの事、本当はは大好きなんです」
P「………」
小鳥「私だってこんな役、イヤなんです」
小鳥「こんな風に……みんなを苦しめて……」ウルッ
小鳥「みんなを傷つけたりヒドいことしたりなんてもう、イヤなんですよぅっ!」
P「音無さん……」
小鳥「もう……やだ……」
小鳥「はやく、かえりたいよぅ……!」ポロポロ
P「音無さんっ……!」ダキッ
小鳥「ううっ……!」グスッ
小鳥「わたしをなまえでよんでくれないプロデューサーさんなんて……きらいですっ」プイッ
小鳥「……うぅぅううあああぁぁんっ……!」ポロポロ
405 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/09/23(金) 01:42:36.33 ID:97jAJlAtO
P(俺は……勘違いをしていた)
P(『音無さんならきっとラスボスをどこか楽しんでやっているんじゃないか』)
P(そう軽く考えていた)
P(でも、誰だってこんな嫌われ役よりは、仲間たちと手を取り合って光に満ちた道を進む方がいいに決まってる)
P(この人は、優しいから)
P(いつでもみんなを陰から支えてくれる、優しい人だから)
P(きっと、ずっと一人で抱え込んでいたんだろう)
P「……大丈夫、俺があなたの側にいます」ギュッ
小鳥「うええぇぇええっ……ううっ!」
小鳥「…………うぇっぷ」
P「………」
406 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/09/23(金) 01:45:24.74 ID:97jAJlAtO
ー 月の地下中心核 コトリの部屋 ー
小鳥「……zzz」
407 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/09/23(金) 01:55:19.63 ID:97jAJlAtO
ー 月の地下中心核 コトリの部屋 ー
小鳥「……zzz」
小鳥「……zzz」
小鳥「……zzz」
小鳥「……うーん……プロデューサーさ〜ん……」
小鳥「……zzz」
小鳥「……zzz」
小鳥「……zzz」
小鳥「……もう、違いますよぅ……。高木社長が攻めの方が絶対にステキですってばぁ……」ムニャムニャ
小鳥「……zzz」
小鳥「…………zzz」
小鳥「………………zzz」
小鳥「………………はっ!」ガバッ
小鳥「……あれ、私、どうしてたんだっけ……」
小鳥「えっと確か、あの子たちが自分の持ち場について、クルーヤさんやバハムートさんも行っちゃって……」
小鳥「それから……プロデューサーさんと二人きりで飲んで……」
小鳥「うぅ……頭がガンガンするわ……」
小鳥「水でも飲もうっと」スクッ
小鳥「…………あっ」
P「……zzz」
408 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/09/23(金) 02:07:09.84 ID:97jAJlAtO
小鳥(プロデューサーさんが私のベッドにもたれかかるようにして寝てる……)
小鳥(そういえば、自分でベッドに移動した記憶がないって事は、プロデューサーさんが私の事を運んでくれたのよね、きっと)
小鳥(飲んでいる時の記憶がさっぱり抜け落ちちゃってるけど、私、またプロデューサーさんにたくさん迷惑をかけちゃったのかなぁ)
小鳥(すみません、プロデューサーさん。迷惑かさるのはもうこれっきりにしますから)
P「……音無…さん……」
小鳥「ひょへっ!?」ビクッ
P「……だいじょうぶ……です……」
小鳥「えっ……」
P「……みんなまとめて……トップアイドル……音無さんも……」ムニャムニャ
小鳥「……なぁんだ、寝言ね。びっくりしたぁ……」
小鳥「ふふっ、プロデューサーさんったら私までトップアイドルにするつもりなのかしら」
P「……zzz」
小鳥(プロデューサーさんの寝顔、かわいいなぁ)
小鳥(私はともかく、みんなをトップアイドルにするには早く元の世界へ帰らないと)
小鳥(でも、その前にやる事がある)
小鳥(避けては通れない必須イベントがあるわ)
小鳥(さあ、小鳥。一世一代の大舞台よ!)
409 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/09/23(金) 18:47:40.86 ID:5Q4MvESvO
ー 月の地下渓谷 B1F ー
…ザッ
春香「……ここが、月の地下渓谷……」キョロキョロ
春香「広ーい……! しかもすごい眺め! ねえ見て、千早ちゃん!」
千早「……そうね。神秘的というか、不思議な雰囲気が漂っているわね」
真「なんか、言葉を忘れちゃうくらい絶景だなぁ!」
春香「ホントだよね!」
亜美「なんてったってラスダンだからねー。プログラマーの人とか、チョー気合い入れてグラフィック作ったんだよ、きっと!」
響「いや、それってゲームの中の話でしょ? 今自分たちがいるのは本当のゲームの世界なんだから、ゲームの世界の話をされても……」
響「……ってあれ? 亜美の言ってるのが合ってるのか? なんかよく分からなくなってきたぞ」
あずさ「でも、地下っていう割にはそれなりに明るいのねぇ。私、もっと真っ暗なのかと思っていたんだけど〜」
伊織「もしかして、この見たことない壁や地面が自発的に光っているのかしら」
律子「他に光源らしきものは見当たらないし、そうかもしれないわね。この調子なら暗闇で視界が遮られるってことはなさそう」
貴音「ここ、地下渓谷は、月に空いたとても巨大な空洞です。そこかしこに崖があり、最下層まではかなりの深さもあります」
貴音「誤って谷底へ落ちてしまわぬよう、用心して進むべきでしょう」
真美「ちなみに、いちばん下は地下12階だよー」
雪歩「そんなに深いんだ……」
美希「落ちたらきっとぺしゃんこなの」
やよい「うぅ、なるべく下を見ないようにしなきゃ……」
春香「やよい、頑張ろ!」
やよい「はいっ!」グッ
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