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P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2
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110 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/03/18(金) 23:21:35.42 ID:Az1TjUeTO
春閣下「それでも私『たち』を連れ戻すつもりなら……」
春閣下「私『たち』の大切な想いを無視するっていうなら……ッ!」チャキッ
春閣下「……相手になるよ!」ゴゴゴゴ
千早「! ……すごい、殺気……!」
美希「春香……!」
P「やめろ! 味方同士で争う事ないだろ!?」
春閣下「ごめんなさい、プロデューサーさん。今は大人しくしていてくださいね?」スッ
…チュッ
…ボンッ!
P「!?」
千早「なっ……!?」
美希「ハニーに何をしたの!?」
春閣下「カエル状態を治すアイテムで『乙女のキッス』っていうものがあるんだけど、今のはそれの逆バージョン」
春閣下「あえて言うなら、『魔女のキッス』ってとこかな」
春閣下「まあ、二人に話してもわからないと思うけどね」
P「くそ……」
春閣下「プロデューサーさんにはべろちょろになってもらった。二人とも、これで心おきなく戦えるでしょ?」ニコッ
美希「……!」
千早「春香もプロデューサーも、返してもらうわ!」チャキッ
春閣下「ふふ、いいよ……」
春閣下「格の違いを見せつけてあげる!」
111 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/03/18(金) 23:24:00.39 ID:Az1TjUeTO
千早「……はっ!」タンッ
ビュンッ…!
春閣下「……おっと!」ガキィン
千早「……ふっ!」クルンッ
千早「……や!」バキッ
春閣下「きゃっ!?」ヨロッ
春閣下「っと……」
春閣下「ふうん、腕を上げたね、千早ちゃん。ファブール城で戦った時とは比べものにならないほどいい動きだよ」
千早「………」
春閣下「でもね、千早ちゃんは絶対に私『たち』には勝てない!」
シュンッ…
千早「!? ……き、消えた!?」
春閣下「……後ろだよっ!」
ドガッ!!
千早「ぐっ……ぅ……!」ヨロッ
美希「……千早さんを傷つけたら許さないの!」ギリッ
…ビュンッ!
春閣下「ふふっ♪ 」ヒョイッ
春閣下「見えてるよ、美希! 後ろからなんて卑怯だね」チラ
美希「………」
美希(予感はしてたけど、ミキの矢、よけられちゃった)
美希(やっぱりあの子、強い……。このままじゃミキ、千早さんの足手まといになっちゃうかも)
美希「………」
美希(……ううん、ハニーを取り戻すためにガンバらなきゃ!)グッ
千早「くっ!」ブンッ
春閣下「遅いよっ♪ 」ヒョイッ
春閣下「えいっ!」ブンッ
ドゴォ!!
千早「っ……!」ヨロッ
112 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/03/18(金) 23:25:57.18 ID:Az1TjUeTO
春閣下「確かに千早ちゃんは強くなった。でも、それは私『たち』も同じ」
春閣下「私『たち』の方が強い。……ううん、私『たち』の想いの方が強い。ただそれだけの事だよ」
春閣下「だから、悔しがる事なんてないんだよ!」ブンッ
美希「……ヘイスト!」
カタカタ…シャキーン!
千早「はっ!」タンッ
フワッ…
春閣下「くっ……逃げられた……」
美希「ケアルガ!」
シャララーン! キラキラキラ…
千早「……美希、助かったわ」
美希「あの子、強いの。2人で協力してやらなきゃ勝てないの」
千早「ええ。私が前に出るから、美希はサポートをお願い」
千早「必ず、春香とプロデューサーを取り戻しましょう」
美希「……うん、そうだね」
春閣下「そういえば美希は白魔道士だったね。……ちょっと厄介だなー」
P「春香、もうやめてくれ。今は仲間で争っている場合じゃないんだ!」
春閣下「……いいえ、それは無理です」
春閣下「これは、ある意味避けては通れない戦いですから」
P「避けては通れない戦い……? どういう意味だ?」
春閣下「私と美希、千早ちゃん。誰がプロデューサーさんに相応しいか。今、決着をつける時なんですよ」
P「な、何をバカな事を……」
春閣下「……さあ、美希。千早ちゃん。かかって来なよ!」
113 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/03/18(金) 23:27:53.61 ID:Az1TjUeTO
ー ??? ー
春香「………」
春香「……やめて」
春香「やめてよ、ヤミちゃん……!」
春香「なんで、こんな事……!」
『なんでって……そんなの決まってるでしょ? 私はプロデューサーさんが大好きだから』
『私とプロデューサーさんの邪魔をする存在は全部敵だもん。敵は排除する。そんなの当たり前の事じゃない』
春香「違う! 千早ちゃんも美希も敵なんかじゃないよ!」
春香「大切な……大切な仲間だよ!」
『……まったく。そんなだから「わたし」はいつまでたってもプロデューサーさんを手に入れられないんだよ?』
春香「え……?」
『「わたし」だって知ってるよね? 美希のプロデューサーさんに対する圧倒的なアピール』
『美希だけじゃない。あずささんや貴音さん、真美もきっとプロデューサーさんの事……』
『……ううん、たぶん765プロの全員がプロデューサーさんに対して少なからずそういう感情を持ってる』
『このままじゃプロデューサーさんを他の誰かに取られちゃうかもしれないんだよ? それでもいいの?』
春香「と、取られるって……私は、ただ……」
『ただ……何? 今のままの中途半端な距離で満足できるの?』
『恋愛と仲間ごっこが両立できるとでも思った?』
春香「な、仲間ごっこだなんて、そんな!」
春香「い、今はこんな事してる場合じゃないから……!」
『いずれ決着を着けなきゃいけないんだったら、いつやろうと変わらないよ』
『私は、自分の手でプロデューサーさんを手に入れる。後悔はしたくないから』
『ずっと、何もない意識の底で、プロデューサーさんに声をかける事すらできなかった「私」が……』
『やっと手にしたチャンスだから!』
『大丈夫。「私」がプロデューサーさんを手に入れるっていう事は、「わたし」もプロデューサーさんを手に入れるのと同じだから』
『私たちの想い、「私」が必ず叶えるから……見てて!』
春香「ま、待ってヤミちゃん! ……ヤミちゃん!」
春香「………」
春香「声が、しなくなっちゃった……」
114 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/03/18(金) 23:29:39.22 ID:Az1TjUeTO
春香(何もない意識の底……)
春香「『ここ』の事だよね、たぶん……」キョロキョロ
春香「………」
春香(……本当に何もない。何も見えない)
春香(暗いのか明るいのか、寒いのか暑いのかもわからない)
春香(ただ、わかる。見えないけど、ヤミちゃんが千早ちゃんや美希と戦っているのが、感じられる)
春香(前にヤミちゃんとここでお話した事があったよね、確か)
春香(そっか……)
春香(『ここ』は、私の意識の中なんだね……)
春香(この状況、どうにかしなきゃ)
春香(そのためには……考えるまでもない。ヤミちゃんを止めないと)
春香(でも……)
春香(ヤミちゃんは、ずっとこんなさみしいところにいたんだ)
春香(私には、プロデューサーさんやみんながいたけど、ヤミちゃんはずっとひとりぼっちだったんだ……)
春香(私の中の、闇)
春香(あの時私は、試練の山でヤミちゃんを切り捨てるべきだった……?)
春香(そうすれば、こんな事には……)
ーーいずれ決着を着けなきゃいけないんだったら、いつやろうと変わらないよ
ーー恋愛と仲間ごっこが両立できるとでも思った?
春香(……わからない)
春香(私は、どうすれば……)
春香(プロデューサーさん……)
115 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/03/18(金) 23:33:35.37 ID:Az1TjUeTO
ー ハミングウェイ一族の住処 ー
金竜「はっ!」
ビシュッ!!
亜美「うわわっ!?」ヨロッ
銀竜「もらった!」ブワッ
バキィ!!
亜美「あぅっ!」
ドサッ
金竜「お前のパートナーはどこかへ消えてしまったみたいだな」
銀竜「だからといって手加減はせぬぞ」
亜美「うぬぅ……」
亜美(くそー、ヤミるんはどっか行っちゃったし、亜美だけ2対1とかおかしいっしょ……)
亜美(こんな時に真美がいれば、ふたりがけでドッカーンってやっつけられるのになぁ……)
亜美(……ううん、何があったんだか知んないけど、急にお姉ちゃんぶりだした真美なんかカンケーないもんね!)
亜美(こーなったら、亜美が一人で編み出したとっておきの技を使うしか……)
金竜「死ねえっ!」
ビュッ…
亜美「わあん! そんなヒマないっぽいよー!!」
伊織「……ムラサメ、亜美を護りなさい!!」ヒュッ
ガキィン!!
亜美「いおりん!?」
金竜「……新手か!」
銀竜「刀一本で我らの攻撃を防いだだと……?」
亜美(ムラサメって、確か……)
116 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/03/18(金) 23:36:03.54 ID:Az1TjUeTO
ー 回想・トロイアの森 ー
伊織「…………はっ!」
ビュッ…ザシュッ!!
ズドオォ…ン
伊織「……イマイチね。もっと速く刀を振れるようにならないと」
真「……それだけ速ければ十分だと思うけどなぁ」
伊織「真……」
真「こんなところでひとりで修行? 相変わらず伊織はみんなの見えないところで頑張るよね」
伊織「べ、別にそんなんじゃないわよ」
真「今のが、居合……だっけ。ボク、初めて見たよ! すごいな、あんなに大きい樹が真っ二つだ」
伊織「それ、嫌味? あんたはひとりで巨大砲を破壊したくせによく言うわ、まったく」
真「ま、まあ、ボクの力と伊織の力はまた方向性が違うし……」
真「でも、伊織のその居合もずいぶん板についてきた感じじゃない?」
伊織「まだまだよ。こんな程度じゃこの妖刀マサムネの力を完璧に引き出せたとは言えないわ」
真「……そっか」ニコッ
伊織「……で、何か用なの?」
真「ああ、そうそう。すっかり忘れてたんだけど、伊織に渡したいものがあってね」
真「……はい、これ。伊織が使いなよ」チャキッ
伊織「あら、刀じゃない。どうしたのよそれ」
真「巨人を操ってた魔物を倒したら、くれたんだ。きっとお前たちの役に立つだろうって」
真「確か、妖刀ムラサメって言ってたかな? 妖刀っていうぐらいだから、きっとすごい刀なんじゃないかな?」
伊織「ふーん……」チャキッ
伊織「………」スッ
真「おお! カッコいい! すっごく様になってるよ伊織!」
伊織「にひひっ♪ 当たり前でしょ! このスーパー忍者アイドル伊織ちゃんに扱えない刀なんてないわよっ♪ 」
伊織(……にしても、なんだか威圧感のない刀ねぇ。マサムネほどの迫力は感じないわ)
伊織(そんなに強い刀ってわけじゃないのかしら……?)
伊織(……ん?)
伊織「ねえ、真……」
真「どうしたの?」
伊織「この刀……刃が無いんだけど」
真「……え?」
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/18(金) 23:39:45.67 ID:RdiKLreDO
??「光よ!」
118 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/03/18(金) 23:41:06.44 ID:Az1TjUeTO
ーーーーーー
ーーー
伊織(……こういう事だったのね)
伊織(刃を持たない刀。つまり、攻撃には向かない)
伊織(ムラサメは……守りの刀!)
銀竜「だが、我ら兄弟のコンビネーションに敵うかな?」
伊織「……亜美、前衛は私に任せなさい」チャキッ
亜美「………」
伊織「……亜美?」
亜美(どいつもこいつも強くなりやがってよぅ……)
亜美(でも、亜美だってトックンしたんだかんねっ!)
亜美(……コンビーフだかなんだかしんないけど、亜美はそんなもんに負けない!)
亜美(ふたりがけが使えなくても……ううん、真美がいなくてもちゃんと戦えるってこと、ショーメーしたる!)
亜美「いおりん、援護して!」
タタタタ…
伊織「ちょ、ちょっと亜美、待ちなさい!」
タタタタ…
119 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/03/18(金) 23:47:41.75 ID:Az1TjUeTO
月の女神「……えいっ!」ブンッ
律子「……ふっ!」
ガキィン!
月の女神「っ……!」ググッ
律子「……どうしたの? 千早と戦っていた時の余裕が見られないみたいだけど」ググッ
月の女神「……!」
律子「……はっ!」グイッ
月の女神「きゃあっ!」
ドサッ
律子「私を千早と同じに考えているのだとしたら、改めた方がいいわよ?」
律子「私は、千早のように甘くはないわ!」チャキッ
月の女神「………」
月の女神「…………ふふっ」
律子「?」
月の女神「あはははっ!」
月の女神「ワクワクするよ! 強いんだね、あいどるって!」
月の女神「もっと、もっと私に見せて。あなたの強さ!」チャキッ
律子(まだ力の差を認めてくれないのか……)
律子(プロデューサーや春香の事もあるし、早いところケリをつけないといけないわね)
律子「私たちにはやらなければならない事がある。あなたたちに構っている暇はないの」ゴゴゴ
ズズズ…!
月の女神「っ……!」ゾクッ
月の女神「な、何、これ……!?」
律子「悪いけど、少しだけ本気でいくわ!」チャキッ
律子「……暗黒剣ッ!!」バッ
ズゥゥゥ…ン…
ズババババババババッ!!!
120 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/03/18(金) 23:52:01.77 ID:Az1TjUeTO
ベヒーモス「!」
ベヒーモス「この闘気は……!」
真「これは、律子の……」
真(すごい……。ボクと戦った時とは比べものにならないくらいに、強い暗黒剣……!)
真(へへっ……。ボクだって強くなったつもりだったんだけどなぁ)
真(さすがだよ、律子……)
ベヒーモス「……ちっ!」ダッ
ドドドド…
真「えっ? ちょっと、どこに行くんだよっ!?」ダッ
タタタタ…
ベヒーモス(あの暗黒騎士はヤバいね。……そろそろ引いておくか)
月の女神「っ……はぁっ、はぁ……!」ヨロッ
律子「分かってもらえたかしら? あなたは私には敵わない。大人しく引きなさい」
月の女神「そんなの、イヤだよ!」
月の女神「私は、あいどるになるんだもん! あいどるになって、たくさん歌を歌ったりして……」
月の女神「うっ……」ガクン
ベヒーモス「……っと」ダキッ
ベヒーモス「どうやらここまでみたいだね」
律子「……あら、やっと引いてくれるのね?」
ベヒーモス「ああ。あんたらの事は大体分かった。……次は負けないよ」
律子「次は……?」
ベヒーモス「コトリ様は月の地下に広がる渓谷の最下層にいる。……つまり、地下渓谷が決戦の地ってワケだ」
ベヒーモス「本当の決着は、そこで着けようじゃないか」
律子(……なるほどね)
ベヒーモス「野郎共! 一旦引くよ!!」
真「待て! 逃げるのか!!」
律子「いいわ、行かせましょう」
真「律子、でも!」
律子「忘れたの? こっちだって態勢を立て直さなきゃいけないのは同じなのよ」
律子「貴音たちとも合流しなければならないし、プロデューサーや春香たちの事もある」
真「……そうだったね、ごめん」
121 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/03/18(金) 23:56:38.14 ID:Az1TjUeTO
ーーーーーー
ーーー
あずさ「……ケアルガ!」
シャララーン! キラキラキラ…
真「ふぅ……あずささん、ありがとうございます」
あずさ「いいえ〜」
雪歩「なんとか、追い払いましたね……」
真「でも、春香とプロデューサーを追いかけて美希と千早が……」
伊織「貴音たちともはぐれたままだしね……」
亜美「………」
真「……亜美、どうかしたの?」
亜美「う、ううん、別に」
真「そう? 何かあったら言いなよ?」
亜美「うん、ありがとね、まこちん」
亜美(あの魔物たち、兄弟っていうだけあって息ぴったしだったなー……)
亜美(兄弟かぁ……)
亜美(……ふん。真美とはケンカ中だもんね。それに、真美がいなくてもいおりんと亜美でどうにかなったし!)
亜美(………)
あずさ「律子さん、これからどうしますか?」
律子「そうですね……」
律子「私たちだけでも、このまま本来の目的地へ向かいましょう」
真「えっ? でも……」
伊織「はぐれた他のみんなはどうする つもりよ?」
律子「大切なのは、体制を立て直す事よ」
律子「他のみんなを探すにしても、月に詳しい貴音がいない状態で下手に動くのは危険だわ」
律子「かと言って魔導船に戻るわけにはいかないし……」
律子「だったら、このまま予定通り進むのがベストだと思ったの」
あずさ「そうですね。迷子になってしまっても大変ですからね〜」
真「……わかった、律子の言う通りにするよ」
律子「ありがとう」
律子「ところで雪歩、確か真美にに連絡手段を渡したって言ってたわよね?」
雪歩「あ、はい。ちょっと待っててくださいね」
雪歩「ええと……みんな、聞こえるかなっ!?」
伊織「ゆ、雪歩?」
122 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/03/19(土) 00:00:15.10 ID:n9lL02cGO
ー バハムートの住処 ー
真美「ケアルガ!」
シャララーン! キラキラキラ…
真美「……はい、これでよし!」
真美「どんなケガでも真美にお任せだよ!」
女の子「ありがとう、マミちゃん!」
男の子「……あ、ありがとな」
真美「んっふっふ〜♪ このくらいお安いゴヨーだよ〜」
やよい「2人とも、おかゆ作ったから、ちゃんと食べてね?」
女の子「わあ、ご飯まで用意してもらえるなんて!」
男の子「ふーん。お前、気がきくんだな」
やよい「えへへっ♪ つらくても、ごはんをいっぱい食べればきっと元気が出るよ!」ニコッ
男の子「お、おう……///」
貴音「すみません、二人とも。助けに来るのが遅くなってしまって」
女の子「そ、そんな! 私はタカネちゃんにまた会えて嬉しかったよ!」
男の子「そうだよ! タカネ、ちゃんと約束を守ってくれたしな!」
貴音「そう言って頂けるとこちらも嬉しいですね」ニコッ
男の子「へへっ」
女の子「ふふっ♪ 」
貴音「この屋敷……ずっと二人で護っていたのですね……」
男の子「ああ。もうここにはいないけど、ここはバハムート様のお屋敷だからな」
女の子「うん。私たちとバハムート様の思い出がたくさんつまってるお屋敷だから」
貴音「二人とも……」
123 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/03/19(土) 00:04:10.90 ID:n9lL02cGO
響「ホントいい子たちだなー……」ジーン
やよい「子どもだけで生活してるなんて、えらいです!」
真美「でも、バハムートがいないのはイタいよねー。せっかくの最強の召喚獣なのに……」
響「最強の召喚獣? もしかして、黒井社長や高木社長よりも強いのか?」
やよい「でも、高木社長も黒井社長も、ばばーん!! ってかんじですっごく強かったよ?」
真美「んー、まぁそりゃ社長も黒ぴょんも強いけど」
真美「バハムートの一番の強みは、『強い上に属性がない』ってとこなんだよ」
やよい「ぞくせいがない?」
真美「そ。魔物の中には、火とか雷とか、属性のある攻撃を吸収しちゃうヤツがいるんだよー」
真美「そーゆー魔物と戦う時は、無属性の攻撃じゃないとダメージを与えらんないから、属性のない召喚獣ってキチョーなんだよね」
やよい「うー……火もかみなりもだめで、ぞくせいがないこうげきが……???」
響「やよい、大丈夫か?」
やよい「す、すみません、わたし、頭がこんがらがっちゃって……」
響(かわいい)
響「でもさ、真美。属性を吸収しちゃう魔物なんてそうそういないんでしょ?」
真美「うん。数えるくらいしかいないよ」
響「だったらなんくるないさー! やよいだってすごく強くなったもんな!」
やよい「はい! がんばります!」
真美(真美のキオクが正しければ、さっき戦った青いドラゴン……)
真美(あいつが確か全属性吸収だった気がするんだよね)
真美(あいつらとはまた戦う事になるって言ってたから、あの青いドラゴンと出会ったら気をつけないとだね)
真美(……あ、そういや無属性の召喚獣っていえば、あまとうたちと社長がいたじゃんね。すっかり忘れてたよ)
真美(あまとうたちにもこの先ガンバってもらわないとだねー)
124 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/03/19(土) 00:09:20.31 ID:n9lL02cGO
男の子「……ところでさ。オレたち、タカネに伝えなきゃいけない事があるんだ」
女の子「………」
貴音「伝えなければいけない事……。はて、何でしょうか」
男の子「さっき襲ってきた魔物が言ってたんだ」
男の子「…………バハムート様が、闇に堕ちたって」
貴音「!!」
貴音(ばはむーと殿が……闇に堕ちた……?)
貴音「つまり、どういう事なのですか!?」
男の子「ど、どういう事も何も、言葉の通りだよ。バハムート様は、コトリの手下になったらしいんだ」
貴音(小鳥嬢の手下に……つまり、わたくしたちの敵となった……?)
女の子「ごめんね、タカネちゃん。こんな事になって、私たちもなんて言えばいいか……」
貴音(……いえ、わたくしの思慮が浅はかだっただけで、今思えばこの可能性もあり得たはずなのですね)
貴音(……最悪の可能性ではありますが)
貴音(ばはむーと殿が生きていらっしゃった事は嬉しいですが……)
貴音(ばはむーと殿がわたくしたちの目の前に立ちはだかった時、わたくしは、ばはむーと殿と戦えるのでしょうか……)
男の子「……タカネ、タカネ!」
貴音「っ……は、はい」
貴音「すみません、少し動揺してしまって……」
女の子「……タカネちゃんは、悪くないよ」
男の子「バハムート様は……強い」
貴音「……そう、でしょうね」
女の子「……でも、バハムート様を越えなければ世界が救われないなら……」
貴音(ばはむーと殿を越えなければ、世界は救われない……)
貴音「ならば……戦いは、避けられない」
男の子「うん、その通りだ。きっとバハムート様も、世界が救われる事を望んでる」
貴音「………」
女の子「……タカネちゃん」
女の子「もし、タカネちゃんがバハムート様と戦う意志があるなら……」
貴音「……あるなら?」
男の子「オレたち、タカネの力になりたいんだ」
貴音「……どういう、事です?」
125 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/03/19(土) 00:14:46.32 ID:n9lL02cGO
『……みんな、聞こえるかな!?』
響「あれ、今、声が……」
やよい「今のって、雪歩さんの声ですよね?」
真美「あーゴメン、忘れてた。真美、ひそひ草持ってきたんだったよ」スッ
やよい「ひそひそー?」
響「あー、その草かー! 懐かしいなー」
やよい「マミ、どういうこと?」
真美「えーっと、つまり……」
『私たちはこれから、丘の上にある神殿を目指しますぅ』
『真美ちゃんたちも落ち着いたら来てくださいね。そこで落ち合いましょう』
真美「……ってゆー事なんだよ」
響「この草は不思議な草なんだ。遠く離れた雪歩の声を、この草に届けてくれるんだぞ!」
やよい「わあ、すごいですねー! はなれていてもお話ができるなんて!」
やよい「えーっと、しんでんってあそこに行けばいいんですよねっ!」スッ
真美「そだね! さあ、ついにラスダンだよ。みんな、しまってこー!」
やよい・響「おー!!」
126 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/03/19(土) 00:18:29.11 ID:n9lL02cGO
響「じゃ、そろそろ行くか?」
真美「そだね。あんましここに長居しても、りっちゃんたちを待たせちゃうかもしんないし」
やよい「貴音さんにも声をかけましょう!」
響「うん!」
響「おーい、貴音ー! そろそろ出発するぞー!」
貴音「すみません、皆は先に向かってください」
響「え? なんで?」
貴音「少し、用事が出来ました」
やよい「用事ってなんですか?」
貴音「………」
貴音「わがままを言って申し訳ないと思っています。しかし、今やらねばならない事なのです」
真美「お姫ちん……?」
貴音「さあ、響、やよい、真美。行ってください」
響「………」
響「わかった。行こう、みんな」
真美「……なんだかわかんないけど、あんましムチャしたらダメだよ?」
貴音「ええ」ニコッ
やよい「わたしたち、待ってますからね?」
貴音「はい、必ず追いつきます」
男の子「……行ったな」
貴音「……そうですね」
女の子「タカネちゃん、心の準備はいい?」
貴音「はい。……ばはむーと殿を越えねば小鳥嬢と会えないというのなら……」
貴音「わたくしは、必ず越えてみせます……!」
男の子「……よし」
女の子「私たちの想いも、タカネちゃんに託すよ!」
男の子・女の子「はああぁぁぁぁああああ!!」ゴゴゴゴ
貴音「! ……これは……まさか……!」
127 :
◆bjtPFp8neU
[sage]:2016/03/19(土) 00:21:13.11 ID:n9lL02cGO
つづく
余談……というか補足ですが、マサムネはアイテムとして使うとヘイスト、ムラサメはプロテスの効果があるそうです
128 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/19(土) 00:33:16.77 ID:qDSvVJdDO
なん…だと…知らんかった
129 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 08:24:03.34 ID:Gx17QCPmO
ー 月の地下中心核 ー
ベヒーモス「……帰ったよ、コトリ様!」
小鳥「お帰りなさーい♪ みんな、お疲れ様ー」
リルマーダー「オイラは疲れてねーけどな!」
小鳥「あら、元気ねぇ」
小鳥「それよりどうだった? あの子たちは」
リルマーダー「うーん、逃げてばっかりでまともに戦えなかったなー」
魔人兵「なんていうか、すごく速かったですね」
暗黒魔道士「………」コクコク
プリンプリンセス「無念にも、わたくしの歌が通用しませんでしたわ……」シュン
金竜「在らぬ所から斬撃が飛んでくるのだ」
銀竜「それに、魔法を同時に複数撃つ者もいたぞ」
レッドドラゴン「オレが闘り合ったヤツなんて、ゾンビだったぜ……」
ブルードラゴン「中には少し骨のある者もおるようじゃったの」
月の女神「……強かった。あんなに強い人、私、今まで見た事なかった」
ベヒーモス「ああ……強かったね」
小鳥「良かったぁ。ファーストコンタクトは上々ってとこかしらねー」
小鳥「それじゃ、みんなは時間まで少し休んでいてね。あの子たちが来るまでにはもう少しかかりそうだし」
魔物たち「はーい!!!」
ゾロゾロ…
130 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 08:26:55.58 ID:Gx17QCPmO
小鳥「……さて、私もみんなに挨拶して来ようかな」
ダークバハムート「コトリよ。挨拶と言っても、そなたはこの中心核に封印されている身。一体どのようにしてあいどるたちに会いに行くと言うのだ?」
クルーヤ「……もしかして、精神波ですか?」
小鳥「まあ、その応用ですね。この月の範囲内くらいなら、実体を持った念を飛ばす事もできそうなので」
ダークバハムート「なるほど、この月はそなたの庭も同然という事か」
クルーヤ「ホント便利な身体ですねー」
小鳥「実際に試すのは初めてなんですけどねー」
小鳥「………」ゴゴゴ
小鳥「一本でも人参……二足でもサンダル……」
小鳥「……三艘でも、ピヨット!!」カッ
ジュワッ…
モクモク…
??「……うふ♪ 成功ですね〜」
ダークバハムート「ほう……」
クルーヤ「本当に分身した……。すごいなぁ」
小鳥「まあ、ラスボスですからね」
小鳥「うーん、そうね。あなたの名前は……『コトリマインド』にしましょう♪ 」
コトリマインド「わあ、我ながらセンスある名前ね〜。あ、だったらもう一体分身を作ってコトリブレスとか……」
小鳥「そうしたいのはやまやまなんだけど、尺の問題もあるのよね〜」
コトリマインド「それじゃ仕方ないわねぇ。ちょっと残念だけど」
ダークバハムート「姿形だけでなく、中身もコトリそのままのようだな」
クルーヤ「うーん、そうみたいだね」
クルーヤ「……ところでコトリさん、これって詠唱の必要ありました?」
小鳥「あ、えーと……少しでも雰囲気を出そうかなーって……」
クルーヤ「やっぱり適当だったんですね……」
131 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 09:26:33.65 ID:Gx17QCPmO
ー 月の地下通路 ー
スタスタ…
真美「……けっきょく、バハムートの家からここまでの道すがら、魔物と戦いまくりんぐなんですケド……」
真美「うえー、早くどっかで休みたいよー」
やよい「真美、あと少しだからがんばろ?」
真美「やよいっち……」
やよい「はい、わたしのぽーしょん分けてあげるよ」スッ
真美「かたじけない……」ゴクゴク
真美「……ふー」
真美「……ねえやよいっち。前から聞きたかった事があるんだけどさ」
やよい「どうしたの? あらたまって」
真美「んーとね……ズバリ、究極の姉とは何?」
やよい「きゅうきょくの姉……?」
真美「うん。真美は究極でスーパーなお姉ちゃんを目指しているのだよ」エッヘン
真美「そんで、ウチで一番のお姉ちゃんといえばやよいっちでしょ? だから、真美もやよいっちにあやかりたいなーと」
やよい「そんな、わたしなんて全然だよー」
やよい「それに、お姉ちゃんって言ったら千早さんとかあずささんとか……あと、貴音さんにも妹さんがいるらしいし」
真美「いやー、千早お姉ちゃんはなんかスパルタっぽいし、あずさお姉ちゃんは天然さんだし……」
真美「お姫ちんにいたっては、学んでも実践できなそうだし……」
真美「やよいっちはさ、兄弟をまとめる上で気をつけてる事とかある?」
やよい「気をつけてること……うーん……」
やよい「……うーんと、えーっと……」
やよい「……うー……」
真美「ご、ゴメンね? そんなシンケンに悩まないでよー。コーガクのタメにって程度だから」
132 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 09:29:18.63 ID:Gx17QCPmO
真美「例えばさ、妹たちが悪いコトしたらちゃんとしかるとかさ?」
やよい「んー、悪いことはしかるのは大切だけど、あんまりやりすぎるのもよくないかなーって」
やよい「それよりも大切なのは、みんなで仲良くハッピーな気持ちでいれるってことだとわたしは思う」
真美「なるほど、みんなでハッピーかぁ。やよいっちらしいねー」
やよい「ちゃーんと愛を持って向き合えば、亜美も分かってくれるよ、きっと」
真美「へ?」
やよい「ケンカ、してるんでしょ? 亜美と。あんまり長引かせないで、すぐに仲直りしないとね」
真美「むー、ケンカっていうか……まあ、ケンカなのかな。やよいっちにはバレバレだったのね」
真美「……うん、ありがとね、やよいっち。真美、ちゃんと愛を持って亜美と向き合うよ」
やよい「うん!」ニコッ
真美「ところで……」チラ
響「………」
133 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 09:34:05.07 ID:Gx17QCPmO
真美「なーに一人でしんみりしてんの!」ダキッ
響「うひゃあっ!?」ビクッ
真美「いつまでお姫ちんのこと考えてんのさ、ひびきん」
真美「お姫ちんラヴなのは分かるけど、あんましお姫ちんのことばっか考えてるとそのうちお姫ちんになっちゃうよ?」
響「えっ……? そ、そんなワケないでしょ!」
響「……まあ、貴音の事を考えてたのは確かなんだけどなー」
真美「あ、やっぱり」
響「貴音は今、どんな気持ちなのかなって」
真美「お姫ちんの気持ち?」
やよい「ばはむーとさん……でしたよね。貴音さんのおともだちで、敵さんになっちゃったって……」
響「うん……」
響「ここのところ貴音の様子がおかしかったのは、もしかしたらそのバハムートってヤツが関係してるのかもって思ってさ」
真美「おやおやぁ? ひびきんひょっとしてヤキモチですかな?」
響「ち、違うぞ! 自分はただ、貴音がそこまで気にかけるってどんなヤツなのか気になって!」
やよい「もう、真美! からかっちゃダメだよ?」
真美「あはは、ごめんね」
真美「んでも、友達と戦うかぁ……。お姫ちんもつらいよね……」
響「大丈夫、貴音ならきっと何だって乗り越えられるさー。だって、貴音はすっごく強いもん」
やよい「そうです! 貴音さんはとってもたよりになります!」
真美「うん。お姫ちんに関しては心配いらないっしょ」
真美(っていうか、今ですら素でメテオとか使われてて真美たちの立場がないのに、これ以上強くなられたら真美たちの出番が……うーん)
134 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 09:39:14.75 ID:Gx17QCPmO
響「……でもさ、よく考えたら自分たちも友達と戦う事になるんだよね」
やよい「……えっ?」
響「ほら、プロデューサーが言ってたでしょ? ピヨ子を倒さないと元の世界に帰れないって」
やよい「そ、そうなんですか!?」ガーン
やよい「わたし、小鳥さんに会ったらこのゲームは終わりなんだとばっかり思ってましたー」
真美「やよいっち、やっぱりちゃんと分かってなかったんだね」
やよい「……あの、わたしたち、小鳥さんとたたかわないとダメなんですか……?」
響「……分からない」
やよい「……う?」
響「自分も正直まだよく分からないんだ。ピヨ子の考えも、どんな顔でピヨ子に会えばいいのかも」
響「ピヨ子の事だから、いつもの悪ふざけみたいなノリなのかもしれないし、でも、もしかしたら……」
真美「………」
やよい「………」
響「……って、なんだか暗くなっちゃったな。こんな顔してたら、律子たちが心配しちゃうかも」
やよい「うー、わたし、みなさんに心配かけちゃうのはいやです」
真美「だいじょーぶ、きっとなんとかなるよ!」
真美「ほら、よく言うっしょ? 信じる者は足元すくわれるって!」
響「いや、それ、信じる意味がないんじゃ……」
真美「とにかく、元気出して行こうよって事!」
響「うん……そうだな。ここで悩んでても答えは出そうにないし……」
響「よーし、じゃあ景気付けに、誰が一番にあの館までたどり着けるか競争だ!」ビシッ
やよい「うっうー! 負けませんよっ!」ピョン
真美「ちょ、ちょっと待った! ひびきんとやよいっちに勝てるわけないじゃんかー!」
響「行っくぞー!」ダッ
タタタタ…
やよい「真美、おいて行っちゃうよ!」ダッ
タタタタ…
真美「うわーん! 待ってよー!」
タタタタ…
真美(……ホントのホントにもうすぐピヨちゃんと戦うんだよね、真美たち)
真美(どんな顔で会えばいいのか、かぁ……)
真美(いつも通り楽しくってカンジにはいかないのかな)
真美(真美、暗いのはやだなー)
135 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 10:37:27.91 ID:Gx17QCPmO
ー 月の民の館 入口 ー
律子「……着いたわね。ここでいいのよね、亜美?」
亜美「うん。確かこの建物の奥にクリスタルルームがあって、そこから月の地下にワープするんだよー」
雪歩(月の地下、かぁ……)
真「へえ、月にもクリスタルがあるんだね」
律子「……ちょっと待って。まさかここへ来てまたクリスタルを集めなきゃいけないなんて事はないわよね?」
亜美「へーきだよ。ゲームでは月のクリスタルは最初からそろってたから集める必要なんてなかったよ?」
律子「そう……ならいいんだけど」
あずさ「ようやく小鳥さんに会えるのね〜」
伊織「そう簡単にはいかないわよ。その前に親衛隊とかいうヤツらが待ち伏せしてるって言ってたじゃない」
真「ボクらの邪魔をするっていうなら、倒して進むだけさ!」
雪歩「……あの、律子さん。とりあえず中へ入りませんか?」
律子「そうね。こうして入口でたむろしているわけにもいかないし」
律子「それじゃ、ちょっと声をかけてみましょうか」
律子「こんにちはーー! 誰かいますかーー!!」
シーーン…
136 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 10:40:02.36 ID:Gx17QCPmO
真「……返事がないね。留守なのかな?」
伊織「魔物たちにやられちゃったのかもしれないわね」
亜美「ハミングウェイの洞窟にも誰もいなかったし、もう月には人はいないのかなぁ……」
伊織「わからないけど、その可能性もあり得るわ」
あずさ「ん〜……」
あずさ「月の魔物さんたちには、小鳥さんが指示を出しているのよね?」
伊織「おそらくそうだろうけど、それがどうかしたの?」
あずさ「私、小鳥さんがそんなひどい事するとは思えないのよねぇ」
伊織「あずさ……」
あずさ「小鳥さんは誰かを殺したりするような人じゃない。それは伊織ちゃんも分かっているでしょう?」
伊織「……アンタ、自分が一回死んだ事忘れたの? あれはあのアホ事務員が律子を操ってやった事なのよ!?」ガシッ
真「ちょっと伊織……!」
律子「伊織……」
あずさ「……いいえ、伊織ちゃん」スッ
あずさ「あの時はね、律子さんを止めるために私がプロデューサーさんの忠告を無視してメテオを使ってしまったから……」
あずさ「正確には小鳥さんのせいじゃないのよ」
伊織「でも、その遠因を作ったのは小鳥でしょ!? 私、許せないわ!」
亜美「いおりん……」
真「まあまあ、少し落ち着こうよ」
雪歩「そ、そうだよ。とりあえず一息ついた方がいいと思いますぅ」
伊織「………」
律子「……止むを得ないわね。勝手に入らせてもらいましょう」
137 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 10:44:38.10 ID:Gx17QCPmO
ー 月の民の館 ー
…ギィ
律子「………」キョロキョロ
律子「……静かね。やっぱり誰もいないのかしら」
亜美「んじゃ、みんなが来るまで休ませてもらおーよ」
真「!」
真「……待って。多分、誰かがいる」
律子「えっ?」
亜美「マジで?」
真「正確にはわからないけど、なんとなく気配がするんだ」
あずさ「やっぱり、月の民さんは生きているのよ〜」
伊織「分からないわよ。魔物かもしれないじゃない」
律子「どちらにしても、油断しない方がいいわね」
スタスタ…
ガチャ…
律子「ここは……」キョロキョロ
律子「図書室かしら。本棚がたくさんあるわ」
あずさ「本当ですねぇ」
あずさ「あら……?」スッ
あずさ「これは……魔法の本ね」ペラペラ
あずさ「ファイアやブリザドにサンダー……あっちには白魔法の本もありますねぇ」
雪歩「………」ペラッ
雪歩「……こっちには、月の事、地球の事について書いてある本がたくさんありますぅ」
律子「……ふむ。何か情報を得るにはここは使えるかもね」
真「マンガとかは……あるわけないか」
伊織「アンタね……そんなの当たり前じゃない」
亜美「本とかはいいから、亜美は休みたいよー」
律子「……よし、それじゃここでみんなを待たせてもらいましょう」
ガタッ!
月の民「……魔物め! 成敗してくれるッス!」ブンッ
雪歩「ひっ!?」ビクッ
138 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 10:50:36.96 ID:Gx17QCPmO
真「……はっ!」ガシッ
月の民「は……速い……!?」
真「……あれ、人間……?」
月の民「え……魔物じゃない……?」
律子「……すみません、勝手にお邪魔してしまって」
月の民「いやぁ、こっちこそいきなり襲いかかってごめんなさいッス。自分、てっきりまた魔物かと……」
月の民「それで、あんたたちはいったい……?」
真「ボクたち、地球からやって来たんです」
月の民「ちきゅう? ……あ、もしかして青き星の事ッスか?」
月の民「あれ……? って事はもしかしてあんたたち、タカネ様の……」
亜美「亜美たちはお姫ちんの友達だよん」
月の民「おひめちん?」
律子「話がややこしくなるから亜美は少し黙ってて」
亜美「ぶー」
律子「私たちは貴音の友人で、魔導船で地球……じゃなかった、青き星から貴音と共に来たんです」
月の民「おお、そうだったんスね! ついにタカネ様が戻って来た! これで勝てるッス!」
月の民「それで、タカネ様はどこに?」
律子「それが、魔物と戦っている時にはぐれてしまって……」
律子「でも、ここを待ち合わせ場所にしているので、貴音もそのうちここへやって来ると思います」
月の民「そうッスか……」
月の民「っと、そうだ、申し遅れたッス。自分は月の民。この館でタカネ様に仕えている者ッス。よろしくッス!」ペコリ
律子「秋月律子です。よろしく」
月の民「ここは元々タカネ様の館なので、あんたたちの好きに使ってもらって構わないッス。光の戦士たちに協力するのは我々月の民の使命でもあるッスから」
律子「光の戦士……?」
月の民「世界が闇に侵された時、清らかな心を持つ、光に導かれた戦士たちが闇を晴らすだろう……」
月の民「この月に伝わる伝承ッス」
月の民「あんたたちは、光に選ばれし戦士たちなんス。タカネ様の友達なら間違いないッス!」
真「光の戦士かぁ……それっぽくなってきたなぁ」
月の民「あんたたちは、コトリを倒しに地下渓谷へ行くんスよね?」
律子「えっ? いや、まあ……」
伊織「……そうよ。私たちは、小鳥を倒しに行くつもり」
律子「伊織……」
月の民「この世界の事、どうかよろしくお願いするッス!」ペコリ
139 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 11:00:57.18 ID:Gx17QCPmO
ー 月の民の館 図書室 ー
亜美「うー、ミキミキじゃないけど、ちょっとつかれたかも〜」グデー
雪歩「律子さん、みんなが集まるまでは休んでいてもいいですよね?」
律子「そうね。何か行動を起こすにしても、みんな揃ってからの方がいいわね」
雪歩「亜美ちゃん、少し寝てなよ。私、後で起こしてあげるから」
亜美「ホント? 助かるよ〜……」ムニャムニャ
律子「みんな、少し休みましょ。幸いここにはベッドもあるみたいだし、自由に使っていいって言われてるしね」
真「ボクはいいよ。そんなに疲れてるってわけじゃないし」
律子「ダメよ。ちゃんと休みなさい。これから最後の戦いが控えているんだから。真、あなたはウチのエースなのよ?」
真「……ちぇ、ボクに勝ったクセに、エースだなんて言ってくれるなぁ」
律子「まったく……まだファブール城での事を根に持ってたのね。あの時は結局うやむやになったでしょう? だからノーカンよ」
真「ボクとしては納得いかないんだけど……分かったよ、律子の言う通り、ちゃんと休むよ」
律子「分かればよろしい」
律子「……さてと」スクッ
伊織「律子。アンタは休まないの?」
律子「ええ、ちょっとね」
140 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 11:03:43.19 ID:Gx17QCPmO
雪歩「………」ペラッ
雪歩「………」ペラッ
雪歩「……ふぅ」パタン
真「雪歩、何か面白い事でも書いてあった?」
雪歩「真ちゃん……」
雪歩「うん。小鳥さんについて少しだけ分かったかも」
雪歩「小鳥さんは月の民の一人で、大昔にすっごい悪い事をしちゃったっていう設定みたい」
雪歩「それで、今は他の月の民さんたちの力で月の地下深いところに封印されてるんだって」
真「そっか……だからボクたちに会いに来れないのかな」
雪歩「うん。小鳥さんはきっと、地下から動けないんじゃないかな」
真「……ま、どのみちボクたちから会いに行くから、問題はないけどね」
雪歩「……ねえ、真ちゃん?」
真「ん? なに?」
雪歩「私たち、あと少しで元の世界に帰れるんだよね?」
真「雪歩……」
真「もちろんだよ。みんな揃って小鳥さんに会いに行って、ゲームをクリアして終わりだ」
真「少しさみしい気もするけど、早く帰ってアイドル活動再開しないとね」
雪歩「そう……だよね。何も心配する事はないんだよね」
真「……さ、雪歩も少し休みなよ」
雪歩「うん……」
雪歩(……さっきの伊織ちゃんの言葉)
雪歩(方便かもしれないけど、伊織ちゃんは『小鳥さんを倒す』ってはっきりと言った)
雪歩(私たちは、どうすれば元の世界へ帰れるのかをプロデューサーから聞いてるけど……)
雪歩(やっぱり元の世界へ帰るためには、小鳥さんと戦わなくちゃならないのかな……)
141 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 11:05:45.65 ID:Gx17QCPmO
あずさ「………」ペラッ
あずさ「………」ペラッ
あずさ(……う〜ん、メテオって思ったよりもすごい魔法だったのね〜)
あずさ(やっぱり、あの時の私に使いこなすのは早かったのかしら〜)
あずさ(……でも、きっと小鳥さんは……)
伊織「……あずさ」
あずさ「伊織ちゃん? どうしたの? 律子さんの言う通り休める時に休んだ方が……」
伊織「私、やっぱり納得いかないわ」
あずさ「納得いかないって……もしかして、さっきの話かしら?」
伊織「ええ。……小鳥が直接手を下していないにしろ、あずさ、アンタが命を落とした事に小鳥が関係しているのは確かよ」
伊織「それについて、アンタはいったいどう考えているの?」
あずさ「……そうね……」パタン
あずさ「私も、少しは物語に貢献できたかなって」
伊織「……どういう事?」
あずさ「ほら、私ってかなり鈍臭いでしょう? でも、あの時は私なりに真剣にやったつもりなのよ」
あずさ「だから、私でもちゃんと役を演じられたかなって」
あずさ「うふふ、まさか死んでしまうとは思わなかったんだけど……」
伊織「役ってアンタ……」
あずさ「小鳥さんも、ちゃんと自分に与えられた役を演じているわ」
あずさ「だから、小鳥さんの為に、私もできる事は頑張るつもりよ?」
伊織「………」
伊織「アンタは……それでいいの?」
あずさ「……ええ。私は、こうしてみんなでいられれば幸せだから」
あずさ「伊織ちゃん、私の事を考えてくれてありがとう」ニコッ
伊織「……アンタの為じゃないわ。私自身が納得いかないってだけよ」
あずさ「それでも、嬉しかったわ♪ 」ダキッ
伊織「ちょ、あずさ、離しなさいよ!」
あずさ「伊織ちゃんはいつもみんなの事を考えてくれてるから、私、すごく感謝してるの」
伊織「そんなの……」
伊織(……あずさ、アンタの方が何倍もみんなの事を考えてるわよ)
伊織(損な役回りになってまで、小鳥の事を気遣えるなんて……)
伊織(……敵わないわね、やっぱり)
142 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 11:07:26.77 ID:Gx17QCPmO
律子「………」ペラッ
律子「………」ペラッ
律子「………」ペラッ
律子「………」パタン
律子「……ふぅ」
律子(光の戦士……)
律子(暗黒騎士である私が、この世界の闇を振り払う存在になれるのかしら……)
律子(そういうのは、あの子たちに任せておいた方がいいのかも)
律子(それよりも……)
律子(失われた魔法、メテオ……か)
律子(小鳥さんに言われて、あずささんに覚えてもらったけど……)
律子(あの魔法が無ければ、あずささんがあんな目に逢う事は無かったのかもしれない)
律子(私があずささんを行かせなければ……)
律子(………)
律子(小鳥さんと戦う事を、あの子たちはどう捉えているのかしら)
律子(最後の戦いは、みんなにとってきっと辛い戦いになるのは間違いないわ)
律子(何にせよ、私も今のままじゃいられない。あずささんだけに辛い思いをさせる訳にはいかない)
律子(私も覚えよう。……メテオを)
143 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 11:10:05.52 ID:Gx17QCPmO
亜美「……zzz」
ーー♪ …
ーー♪ …
亜美「……んん……」
ーー♪ …
ーー♪ …
亜美「……だれー……? うるさくて寝れないよー……」ムニャムニャ
ーー♪ …
亜美「………」ムクッ
亜美「もー……目が覚めちった」
亜美「みんなは……」キョロキョロ
真「……zzz」
雪歩「……zzz」
あずさ「……zzz」
伊織「……zzz」
亜美「……みんな寝ちゃってるね。起こさないでおこっと」
亜美「あれ、りっちゃんがいない? トイレかなぁ」
亜美「ま、いいや。亜美はさっき聴こえたメンヨーな歌声の主を探さないとね」
亜美「確か、2階の方から聴こえてきたよね」
スタスタ…
144 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 11:13:54.83 ID:Gx17QCPmO
ー 月・巨大クレーター ー
千早「はあああっ!」ブンッ
キィンッ!
春閣下「ふっ!」ガキィン
美希「えいっ!」ギリッ
ビュッ…
春閣下「ふふっ」ヒョイッ
春閣下「はっ!」ドゴッ
千早「っ……く!」ヨロッ
美希「千早さん!」ダッ
春閣下「回復はさせないよ!」チャキッ
美希「わっ!」
美希(……速いの!)
春閣下「ふっ!」ドゴッ
美希「う……」ヨロッ
ドサッ
春閣下「はぁーあ……ダメだよ二人とも。全然ダメ。私の動きに全然ついて来れてないじゃない」
春閣下「そんなんじゃプロデューサーさんは手に入れられないよー?」
千早「くっ……」ヨロッ
美希「ケアルラ!」
シャララーン! キラキラキラ…
美希「千早さん、へーき?」
美希「……ゴメンね。ケアルガが使えればいいんだけど……あの子の動きが速くて、詠唱してるスキを与えてくれないの」
千早「私なら大丈夫。美希こそ、あまり無理はしないで」
美希「二人がかりでもあの子を止められないなんて……とんだ誤算だったの」
145 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 11:15:50.76 ID:Gx17QCPmO
千早「……大丈夫、心配はいらないわ。勝機は必ずあるから」
美希「本当?」
千早「ここまで戦っていて分かったけれど、あの子はやっぱり春香だった」
美希「……どういう事なの?」
千早「ヤミさん自体は春香の別人格かもしれないけど、根本は春香と同じという事よ」
千早「そこを攻めれば、おそらく……」
千早「ここは窪みが多くて足場が悪いわ。ヤミさんを平地へおびき出しましょう」
美希「……何か作戦があるんだね? 分かったの。千早さんに任せるね!」
春閣下「相談は終わったかなー? もう攻撃しちゃっていーい?」
千早「行くわよ、美希」
美希「うん!」
タタタタ…
春閣下「……ってこらー! なんで逃げるのよー!? それじゃ勝負にならないでしょうがー!」プンスカ
春閣下「もー!」
タタタタ…
P(千早と美希、全然歯が立たないみたいだけど、どうするつもりだ?)
P(千早に何か策があるみたいだったが……)
P(二人とも……なんとか春香を頼むぞ……)
146 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 11:35:00.39 ID:Gx17QCPmO
ー 月・平地 ー
美希「……ねえ千早さん、とりあえず平らな場所に来たけど、これからどうすればいいの?」
千早「ここでヤミさんを迎え撃つわ」ザッ
美希「ここで? ……確かにさっきの穴ぼこだらけのところよりは動きやすいって思うけど、それはあの子にとっても同じ事じゃないの?」
千早「さっきも言った通り、ヤミさんは人格以外は春香本人と何も変わらないのよ」
千早「……おそらく、癖も」
美希「クセ? …………あ!」
千早「チャンスは必ず訪れる。この平地なら」
美希「さすが千早さんなの! 大好きな春香の事なら何でも分かっちゃうんだね?」
千早「そ、そういう訳じゃ……///」
美希「あは☆ 照れる千早さんもかわいいの♪ 」
千早「も、もう……こんな時にからかわないで」
千早「! ……来たわ!」
タタタタ…
春閣下「……待ちなさーーい!!」
春閣下「美希と千早ちゃんを倒して、私がプロデューサーさんに一番相応しいって事、証明するんだからー!」
千早「私が引きつける。美希は隙を突いてちょうだい」
美希「分かったの!」コクリ
千早「ヤミさん、望み通り相手になるわ!」
タタタタ…
春閣下「ふふっ、そう来なくっちゃ!」チャキッ
春閣下「……はっ!」ブンッ
千早「くっ……!」ダッ
ブワッ…
春閣下「えいっ!」ブンッ
千早「……ふっ!」ゴロン
…スタ
春閣下「また千早ちゃんが私を引きつけて、美希に隙を突かせる作戦?」
春閣下「それはさっき無駄だって教えてあげたはずなんだけどなー」
千早「……本当にそうかしら?」
春閣下「えっ……?」
千早「……こっちよ!」ダッ
タタタタ…
147 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 11:36:57.63 ID:Gx17QCPmO
春閣下「また逃げるつもり!? ズルいよ千早ちゃん!」
春閣下「逃がさないんだから!」
春閣下「……あっ」ズルッ
春閣下「うわわっ……!」
どんがらがっしゃーん!
千早「! ……美希、今よ!」
美希「了解なの!」ギリッ
美希「……えいっ!」
ビュッ…!
ドスッ!
春閣下「っ……ぐ……!」
千早「はっ!」タンッ
フワッ…
ヒュー…ドガッ!!
春閣下「あ……ぅ……」ヨロッ
…スタッ
千早「………」
美希「千早さん、やったの!」
千早「あなたが春香の分身である以上、何もないところで転ぶその癖はついて回るのよ」
千早「その隙を逃す私たちではないわ」
P(千早たち、うまく一矢を報いたみたいだが……多分それだけじゃ勝てないぞ)
P(闇春香は……強い)
148 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 11:41:02.05 ID:Gx17QCPmO
春閣下「……そっか、なるほどね。そう来たかぁ……」スクッ
春閣下「でも、まさかこれで勝ったつもりになってないよね?」
千早(……分かってる。ヤミさんには最大の技がまだ残っているもの)
千早(それをどうにかしないと、私たちに勝ち目はない……)
春閣下「なんだかんだ言って千早ちゃんも、ちゃーんと白黒付けるのがお望みみたいだし……」
春閣下「そんなに見たいなら見せてあげるよ、私のとっておきの技……!」チャキッ
春閣下「……!」ゴゴゴ
千早(……来る!)
千早(月の魔物ですら一撃で倒した暗黒剣。どうやって凌ぐか……)
美希「………」
美希「……千早さん、力を貸して」
千早「美希……?」
美希「あの子の技、なんていうか、すっごく禍々しいの」
千早「そうね。暗黒剣っていうぐらいだから……」
美希「ミキね、その暗黒に勝てるのは、きっとキラキラの光だって思うな」
千早「光……」
美希「ミキの全力のキラキラ魔法であの暗黒に対抗してみるの」
美希「だから千早さん、千早さんのキラキラも、ミキに貸して?」
千早「キラキラ……そうか、ホーリーね。分かったわ」
美希「……!」ゴゴゴ
千早(ホーリーランス……お願い、力を貸して……!)ゴゴゴ
149 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/04/16(土) 11:43:50.67 ID:Gx17QCPmO
春閣下「ホーリーか……」
春閣下「ふふ……二人のその光すら、私の闇に取り込んであげるよ!」
春閣下「そして、最後にプロデューサーさんの隣にいるのは……」
春閣下「絶対に、私なんだから!」
春閣下「……暗黒剣ッッ!!」
ズオオオォォオオ…!
美希「ハニーが誰を選ぶかなんてミキには分からない。でも、春香だけは……」
千早「……絶対に、返してもらうらわ!」
美希・千早「……ダブルホーリー!!!」
キラキラキラ…
…ゴゴゴゴゴゴ
ドゴオオォォオオオオン…!!
150 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 19:57:22.92 ID:Gx17QCPmO
ー 月の民の館 クリスタルルーム ー
律子「ーー!」ピクッ
律子「今何か、ものすごい力が……」
律子「美希と千早、大丈夫かしら……。みんなが集まったら何人かで捜索に出ないといけないわね」
律子「ひい、ふう、みい……」
律子「……全部で13個もあるのね、月のクリスタルは。台座が全て埋まっているって事は、数が揃ってるって事でいいのよね?」
律子「このクリスタルが月の地下へ連れて行ってくれるのかな」
律子「………」
律子(ついにここまで来た。色々あったけど、あとは最後の戦いを残すのみ)
律子(長かったような、短かったような……いや、長かったわね)
律子(……でも、最後の戦いの前に、一つだけやる事がある)
律子(それは、絶対に避けては通れない事)
律子(それを避けて最後の戦いに臨んだら、私たちはきっと……)
律子(……崩壊してしまうから)
「……たのもー!!」
「たのもーだぞ!!」
「たのもーですー!!」
律子「あら……ふふ、ようやく到着したみたいね」
151 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 20:01:42.27 ID:Gx17QCPmO
ー 月の民の館 ホール ー
月の民「……えーと、あんたたちもタカネ様の仲間ッスか?」
やよい「はい!」
響「もちろんだぞ!」
真美「ふっ……ヤツとは兄弟の盃を交わした仲なんだぜ……」
響「君は貴音の友達なの?」
月の民「はいッス。自分、タカネ様に仕えてる月の民ッス!」
響「そっか。よろしくなー!」
やよい「よろしくおねがいしまーす!」ガルーン
月の民「それにしても、肝心のタカネ様はまだ来ないんスかねー」
真美「あ、お姫ちんならたぶん後で来るよ。今はバハムートちんのとこでお話ししてるYo」
月の民「ああ……バハムート様のところッスか……」
律子「待ってたわよ、三人とも」
響「律子!」
やよい「律子さん!」
真美「りっちゃん、あのね、お姫ちんは……」
律子「ええ、聞いてたわ。ここは貴音のホームグラウンドなんだし、色々あるのね、きっと」
律子「それより、あなたたちも少し休みなさい。疲れたでしょう?」
真美「ふー、よーやく休めるよ〜」
やよい「律子さん、勝手に使ってだいじょーぶなんですか?」
律子「ええ。ここは貴音の家だそうだし」
響「そっか。じゃあ問題ないな!」
律子「……あの、月の民さん?」
月の民「はい、何ッスか?」
律子「月のクリスタルについて、少し訊きたい事があるんですけど」
152 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 20:05:04.06 ID:Gx17QCPmO
ー 月の大神殿 図書室 ー
雪歩「……ん……」
雪歩「……あれ……」ムクッ
雪歩「……そっか、私……」
雪歩(いつの間にか寝ちゃってたんだ。みんなも……)
響「……zzz」
やよい「……zzz」
真美「……zzz」
雪歩(あ……響ちゃんにやよいちゃん、真美ちゃんもいるみたい)
雪歩(良かったぁ、無事で)
雪歩(……あれ? でも、四条さんがいない……?)
雪歩(何かあったのかな。三人が起きたら訊いてみないと)
雪歩「あ、そうだ私……亜美ちゃんに起こしてあげるからって言って……」キョロキョロ
雪歩「ど、どうしよう、亜美ちゃんがいないよぅ!」
伊織「……もう、何かあったの……?」ムクッ
雪歩「あ、伊織ちゃん、ゴメンね、起こしちゃって」
伊織「それはいいけど、雪歩、今何か喚いてなかった?」
雪歩「それが、さっき起きたら亜美ちゃんがいなくて……」
伊織「どうせトイレとかじゃないの? 慌てる事じゃないわよ」
雪歩「……私、亜美ちゃんを探しに行かなきゃ!」グッ
伊織「そう。じゃ、私はもう少し寝させてもらうわ」ゴロン
雪歩「ま、待って伊織ちゃんっ!」ギュッ
伊織「な、何よ?」
雪歩「ひとりじゃ怖いからついて来てくれないかな……?」ウルウル
伊織「………………はぁ」
153 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 20:07:12.35 ID:Gx17QCPmO
ー 月の民の館 2F ー
スタスタ…
伊織「ったく、なんで私が……」
雪歩「ご、ゴメンね。でも、ひとりじゃどうしても怖くて……」ブルブル
伊織「仕方ないわねぇ……」
ーー♪ …
伊織「……ん? 今何か聞こえなかった?」
雪歩「ふぇっ!?」ビクッ
ーー♪ …
伊織「……ほら、また」
雪歩「た、確かに……」ビクビク
ーー♪ …
伊織「これは……歌?」
雪歩「ま、まさか……」
雪歩「志し半ばでこの世を去った吟遊詩人の幽霊とかなんじゃ……!」
伊織「ば、バカね、考えすぎよ。幽霊なんているはず……」
伊織「……あるわね。よく考えたらそういう世界だったわ、ここって」
雪歩「どうしよう伊織ちゃん! 亜美ちゃんが! 亜美ちゃんがっ!」ユサユサ
伊織「だ、大丈夫よ! あの亜美が幽霊なんかに遅れを取るわけがないわ」クラクラ
雪歩「で、でも!」
伊織「もう、いいから落ち着きなさい!」ギュッ
雪歩「ひぅっ!」ビクッ
伊織「雪歩。アンタは心配性すぎるのよ。ここまで戦い抜いてきた亜美が簡単にやられる訳ないでしょ?」
雪歩「うぅ……そ、そうだよね。亜美ちゃん、すごく強くなったもんね」
伊織「とにかく、歌はあの部屋から聴こえてくるみたいね」スッ
伊織「……いい、開けるわよ?」
雪歩「う……うんっ!」ゴクリ
…ガチャ
154 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 20:10:19.33 ID:Gx17QCPmO
ー 月の民の館 2F ゲストルーム ー
ハミングウェイ1「フンフフーン♪ 」
ハミングウェイ2「フンフフーン♪ 」
ハミングウェイ3「フンフフーン♪ 」
ハミングウェイ4「フンフフーン♪ 」
ハミングウェイ5「フンフフーン♪ 」
亜美「んっふっふ〜♪ 」
ハミングウェイ6「ンッフッフー♪ 」
ハミングウェイ7「ンッフッフー♪ 」
ハミングウェイ8「ンッフッフー♪ 」
ハミングウェイ9「ンッフッフー♪ 」
ハミングウェイ10「ンッフッフー♪ 」
伊織「」
雪歩「」
亜美「……あ、いおりんにゆきぴょん! おはー」
155 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 20:15:31.44 ID:Gx17QCPmO
伊織「……とりあえず、突っ込みたいところはたくさんあるけど……」
伊織「アンタは馴染みすぎよ! 一瞬このヘンテコなヤツらの一員かと思ったわよ!」ビシッ
亜美「おおう、さすがいおりん、ナイスツッコミ……」
伊織「いったい何やってたのよアンタは」
亜美「何って……ボーカルレッスン……かな?」
雪歩「うぅ、良かったぁ、亜美ちゃんが無事で……」
伊織「……まったく、幽霊の正体がこんなアホらしい集団だったなんて、ビクビクしてた自分がバカみたいよ」プンスカ
雪歩「あれ、でも……。この人たちって確か、親衛隊の魔物さんたちにやられちゃったはずじゃ……?」
伊織「あ……そういえばそう言ってたわね。まさか、本当に幽霊?」
ネミングウェイ「幽霊じゃないぞ。オレたちはちゃんと生きてる」
伊織「あら? ちゃんと話せるヤツもいたのね」
156 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 20:17:58.05 ID:Gx17QCPmO
亜美「このおっちゃんはネミングウェイって言って、人の名前を勝手に変えるのがお仕事なんだよー」
ネミングウェイ「おい、勝手には変えねーよ!」
伊織「どうでもいいわよ、そんな情報」
ネミングウェイ「お前冷たいな!?」
雪歩「ゴメンね亜美ちゃん、私、亜美ちゃんの事起こしてあげるって言ったのに……」
亜美「そんなのゼンゼン気にしないでよー。ゆきぴょんも疲れてたんだしさ!」
雪歩「亜美ちゃん……」
伊織「……さて、さっさと戻るわよ。あんまりバラバラになると律子が苦労するし」
亜美「そだねー」
ネミングウェイ「ちょ、ちょっと待てよ。あんたたち、もっと他に用事はないのか? 例えば、名前を変更するとか」
伊織「しないわよ」
雪歩「しないですぅ」
亜美「しないっぽいね」
ネミングウェイ「あ、ちょっと待」
バタン
157 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 20:21:50.17 ID:Gx17QCPmO
ー 月・平地 ー
春閣下「……はぁ、はぁっ……!」ヨロッ
春閣下「私に全力を出させるなんて、さすが美希と千早ちゃんだね……」
P「千早! 美希!」
春閣下「無駄ですよ、プロデューサーさん。私の全力の暗黒剣を受けて立ち上がる事なんて……」
美希「……はぁ、はぁ……」ヨロッ
春閣下「…………美希!」
P「美希! 良かった!」
春閣下「……しぶといね。白魔道士のクセにそんな体力があったなんて……」
美希「……千早さんのおかげなの。千早さんが、ミキをかばってくれたから……」
千早「………」グッタリ
春閣下「……そっか、千早ちゃんが……」
P「千早! ……美希、回復魔法でなんとかならないのか!?」
美希「ゴメンね、ハニー。さっきのホーリーで魔力を使い果たしちゃったの……」
P「そんな……。じゃあ、俺の身体の中に、べろちょろに回復アイテムが入ってるから、それで……!」
春閣下「ダメですよ。そんな事はさせられません」ギュッ
P「闇春香、もうやめてくれ! こんな事をしても、俺はお前に気持ちが動く事はない!」
春閣下「……さすがに今の言葉はグサリときましたね」
春閣下「でも、言ったじゃないですか。私になびかないなら、なびかせるまで」
春閣下「……どんなに時間をかけても」
P「……!」
158 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 20:28:23.07 ID:Gx17QCPmO
美希「無駄だよ、ハニー。その子はね、きっと恐れてるの」
美希「ミキたちがゲームをクリアして、元の世界へ帰っちゃうのを」
P「……それはどういう事だ?」
美希「ミキね、こんな春香、このゲームの世界へ来て初めて見たの。それって、『この春香はゲームの世界限定の存在』って事だよね?」
美希「だから、ミキたちが……春香が元の世界へ戻ったら、その子はきっと存在自体が消えちゃうと思うの」
春閣下「……そうだよ。だから、私は邪魔をする。『わたし』を元の世界へなんて帰らせないし、プロデューサーさんもずっと一緒!」
P「……そう、だったのか……」
春閣下「私の知らないところで勝手に生まれさせられて、勝手に誰かの影の存在にさせられて……」
春閣下「……勝手に、好きな人も決められて」
春閣下「私には、何一つ自由はなかった。自分で選んで手にしたものなんて、何一つなかったんだよ!」
美希「………」
春閣下「……だからね、恨む事にしたの。美希も、千早ちゃんも、みんなも……全てを」
春閣下「知ってる? 暗黒剣ってね、負の力で威力が増幅するんだよ?」
美希「!」
春閣下「全てを恨む私の感情は……暗黒剣を、さらに暗黒剣足らしめるッ!!」グッ
ズズズ…
159 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 20:34:03.20 ID:Gx17QCPmO
P「そんな……さらに威力が……!?」
春閣下「……これが、暗黒剣の最終形です。恨み、悲しみ、絶望……あらゆる負の感情が、私から溢れ出しているんです」ゴゴゴ
P「……!」
春閣下「さあ、どうする、美希? 今逃げ出せば、命だけは助かるかもよ?」ゴゴゴ
美希「……逃げるなんて選択肢は、今のミキにはないの」
春閣下「そっか。……じゃあ、死ぬといいよ!」チャキッ
P「美希っ!」
美希「死ぬ……?」
美希「そんな選択肢も、最初から持ち合わせてないのッ!」
美希「……!」グッ
春閣下「ただの非力な白魔道士のあなたが、空っぽの魔力で何をするつもり?」
春閣下「大人しく負けを認めなさい!」
P「やめろ!」
春閣下「……暗黒剣ッ!!」
ズオオオォォオオ…!!
美希(あの子の言う通り、ミキの魔力はもう空っぽだし、弓矢で暗黒剣を防げるわけがないの)
美希(……このままじゃ、ハニーも千早さんも……)
美希(……春香も救えない)
美希(あの時の力。あれさえあれば……)
美希(あの時、貴音ややよいを助けたっていう、あの力さえあれば……!)
美希(お願い、ミキに力を貸して欲しいのーー!)
パアアァーー!!
春閣下「……なに!? 光が……!」
P「美希!」
160 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 20:37:55.98 ID:Gx17QCPmO
シュウゥゥ…
覚醒美希「……虚栄の闇を払い……」スッ
覚醒美希「真実なる姿現せ……」ゴゴゴ
春閣下「……何、この魔力……!? 美希、もう魔力はゼロだったはずなのに……!?」
P「あれは、美希……なのか……?」
覚醒美希「……あるがままにッ!」カッ
覚醒美希「…………アルテマッ!!」
ゴオオオォォオ!!
キラキラキラ…!
春閣下「なんで!? なんで魔法が使えるのッ!?」
春閣下「……でも、私の暗黒剣が負ける訳がないッ!!」グッ
ズオオオォォオオ!!
覚醒美希「……ううん、あなたは負けるよ。だって、光は……」グッ
覚醒美希「……必ず、闇を照らし出すから!」
キラキラキラ…!!
春閣下「そんな……そんな光は、絶対に認めないッ!! 私の闇は……誰にも……!!」
ズオオオォォオオ!!
ズガアアアァァアアン…!!
161 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 20:41:38.53 ID:Gx17QCPmO
覚醒美希「……く……」ヨロッ
覚醒美希「……まさか、アルテマで相殺するのがやっとだなんて……」チラ
春閣下「………」
覚醒美希「それだけ根が深い闇……って事なんだね」
覚醒美希「……そうだ、ハニーは!」
タタタタ…
覚醒美希「ハニー、しっかりして!」
P「美希…か? 大丈夫、俺はダメージなんてないよ」
覚醒美希「あ……そっか。ハニーだけはこの世界に干渉されないんだっけ」
P「ああ。……それより千早は?」
覚醒美希「さっきケアルガをかけておいたからへーきだよ」
P「そうか……。あとは、春香か……」チラ
春閣下「………」
P「春香も変身したりしたからもう驚かないけど、お前、美希……なんだよな?」
覚醒美希「うん、そうだよ」
P「なんか髪が短くなってるし、雰囲気が大人っぽくなったな」
覚醒美希「えへへ、短い髪も似合うでしょ?」
P「……ああ、すごく似合ってる」
覚醒美希「『あの』春香は春香の別人格らしいけど、『この』ミキはミキと同一人格。言ってみれば夢を見てる状態ってカンジなの」
P「夢を?」
覚醒美希「うん。だから、元のミキに戻ったら、『この』ミキでの出来事はぜーんぶ覚えてないんだ」
P「そうなのか……」
162 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 20:45:55.55 ID:Gx17QCPmO
覚醒美希「ねえ、ハニー。どうせ覚えてないから、今言うね?」
P「ん?」
覚醒美希「あの子が言ってた事……春香や千早さん、美希にとって……ううん、765プロのみんなにとってハニーがとても大切な人って話だけど、あれはホントだよ」
P「………」
覚醒美希「それで、誰がハニーと結ばれるかでミキたちがケンカになっちゃうってあの子は言ってたけど……ミキは、そんな事ないって思うな」
P「え……?」
覚醒美希「765プロには仲間の幸せを祝福できない子なんていないし、みんながみんなの幸せを望む子ばかりなの」
P「……うん、美希の言う通りだ」
覚醒美希「だからね? ハニーは自分の気持ちに正直になって欲しいの。誰か一人しか選ばれなくても、そんな事でミキたちの絆は壊れたりしないし、ハニーが正直になってくれない方がミキたちにとっては悲しい事だから」
P「美希……」
覚醒美希「……本音は、ミキを選んで欲しいなって思ってるんだけどね」
P「………」
覚醒美希「忘れないで。ミキたちはずっとずっと、おばあちゃんになっても仲間だから。その絆は、何者にも壊せない……壊させない」
P「……ありがとう、美希」
覚醒美希「んーん。これでハニーの中のミキのシンショーもアップかな? あは☆」
P「ふふ、まったく……」
覚醒美希「!」
覚醒美希「……まだだったの!」キッ
P「え?」
163 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 20:52:25.48 ID:Gx17QCPmO
春閣下「……こんなの……認めない……!」ヨロッ
春閣下「私が……負けるなんて、あり得ない……ッ!」
P「闇春香……」
覚醒美希「さすがは春香なの。しぶとさは誰にも負けてないってカンジ」
春閣下「もう一度……今度こそ、美希、あなたを倒す! 完璧な暗黒剣で!」チャキッ
P「もうやめろ、闇春香!」
春閣下「やめません……! 私には、これしか道はないから……!」
春閣下「……暗黒剣ッ!!」
ズオオオオオ!!
覚醒美希「………」
覚醒美希「……ホーリー!」
キラキラキラ…
ドドドドドドドッ!!
春閣下「そ、そんな……! 私の暗黒剣がホーリーなんかに相殺されるなんて……!」
覚醒美希「気づいてないの? あなたの暗黒剣、さっきよりだいぶ威力が落ちてたの」
春閣下「くっ……!」
春閣下「それなら、勝つまで何度でもやってやる……!」
千早「……待って! ヤミさん、もうやめましょう!」
164 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 20:56:30.05 ID:Gx17QCPmO
覚醒美希「千早さん!?」
P「千早……もう平気なのか!?」
千早「はい。美希のおかげです」
覚醒美希「無理しちゃダメだよ、千早さん!」
千早「いいえ、私だけ寝ている訳にはいかないわ」
千早「……ヤミさん、あなたは春香がこの世界へ来てから、ずっと春香と一緒にいたのよね?」
春閣下「……急に何? 時間を稼いだって状況は何も変わらないよ」
千早「時間稼ぎではないわ。これは忠告よ」
千早「最初からずっと春香と一緒にいたあなたが、覚えていないはずがない。この世界へ来て一番最初に魔物と戦った時の、プロデューサーの言葉」
春閣下「……!」
覚醒美希「……何の事?」
P「……もしかして……」
千早「『春香の能力は、体力をだいぶ消費するから』という助言」
千早「あれだけ暗黒剣を何度も使ったんだもの。あなたはもう、立っているだけでやっとなはずよ」
春閣下「………」
165 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 21:00:27.67 ID:Gx17QCPmO
千早「これ以上暗黒剣を使ったら、春香の身体そのものが危ないわ」
覚醒美希「そうなの?」
P「……多分、千早の言う通りだ」
春閣下「…………ふふっ。千早ちゃんは物覚えがいいね」
春閣下「でも、千早ちゃんのおかげで分かったよ。……あなたたち二人に勝てる方法が」
春閣下「プロデューサーさんをこっちに渡して。そうしないと、私は暗黒剣を使う」チャキッ
春閣下「美希も千早ちゃんも、『わたし』の身体は大事でしょ?」
覚醒美希「そんな、ズルいの!」
P「闇春香が春香と一心同体である限り、こちらに勝ち目は無いのか……!」
千早「………」
千早「二人とも、諦めるのはまだ早いわ。今のこの状況をなんとかできる人物が、一人だけいる」
春閣下「何を言ってるの!? 今さら援軍でも呼ぶつもり? そんな時間はないし、『わたし』を人質に取っている以上、『私』の勝ちはもう揺るがないッ!」
覚醒美希「! ……そうだったね。千早さんの言う通り。今の今まですっかり忘れてたの」
P「そうだな。……ここは、彼女に頑張ってもらうしかない」
千早「はい。精一杯呼びかければ、必ず声は届くはずです」
春閣下「な、何をするつもりなの……!?」
166 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 21:02:51.55 ID:Gx17QCPmO
ー ??? ー
春香「………」
春香「………」
春香「…………何を考えてるんだろ、私。みんなと争うなんてあり得ないよ」
春香「そりゃ、プロデューサーさんの事を諦めるのは辛いけど……」
春香「うー、でもなー。ここまではっきりと好きになった人は初めてだし……」
春香「それに、き、キスもしちゃったし……あまつさえ、裸も見られちゃってるし……」
春香「……///」ボンッ
春香「……ああもう! 邪な想像が頭から離れなくなっちゃったよぅ!」ブンブン
春香「はぁ……」
春香「私がこうしている間にも、千早ちゃんと美希が戦ってくれてるっていうのに……」
春香「……ううん、二人だけじゃないよね。雪歩に真、真美、亜美……」
春香「あずささん、伊織、やよい、響ちゃん、貴音さん……」
春香「律子……お姉ちゃん」
春香「プロデューサーさんや高木社長、黒井社長、ジュピターさんたち」
春香「それから…………小鳥さん」
春香「みんなと、絶対に元の世界へ帰らなきゃ」
春香「私ひとりがこんなところでもたついているわけにはいかないよね!」グッ
春香「よーし、帰るぞー!」
春香「………」
春香「………」
春香「………」
春香「………」
春香「………」
春香「…………どうやってここから出ればいいんだろ?」
167 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 21:05:23.27 ID:Gx17QCPmO
春香「そもそも、出口ってあるのかなぁ」
春香「周りには何も見えないし……」
春香「ここでは私自身に実体がないみたいだしなぁ……」
春香「む〜……」
『………………か』
春香「……ん?」
『…………はる……』
春香「声が……!」
『…………はるか……!』
春香「私を……呼んでる……!」
『……春香、戻って来て!』
春香「この声は、千早ちゃん!」
『……春香、早く帰って来ないとハニーはもらっちゃうの!』
春香「美希……!」
『春香! 聞こえるか! 俺たちはお前を待ってる! お前のいるべき場所で、ずっと待っているぞ!』
春香「プロデューサーさんっ……!」
春香「戻らなきゃ! ……私の場所へ」
春香「私の、帰る場所へ!」
春香(何をどうすればいいのか分からないけど……)
春香(とにかく、声のする方へ)
春香(みんなの声のする方へ……!)
168 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 21:09:11.83 ID:Gx17QCPmO
ー 月・平地 ー
春閣下「……いやだ……やだ……!」ガシッ
P「どうしたんだ? 闇春香の様子が……」
覚醒美希「戻って来るよ、春香が」
千早「………」グッ
覚醒美希「……春香なら、絶対に戻って来る!」
春閣下「あ…ああ……!」フラッ
…パアアァァーー!!
P「光が……!」
闇春香「……はぁ、はぁ……!」ガクッ
P「……見たところ、何も変化はないみたいだけど……」
覚醒美希「ううん。よく見るとあの子、存在が薄くなってるカンジがするの」
千早「そう言われてみれば、確かに……」
「……千早ちゃん、美希。……プロデューサーさん」
三人「!!」
春香「天海春香、ただいま戻りましたっ!」
169 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 21:13:00.29 ID:Gx17QCPmO
千早「春香!」
覚醒美希「……もう、遅いの!」
P「待ってたぞ、春香!」
春香「えへへ……すみません、ご迷惑をおかけしちゃって」
千早「良かった……! 本当に、良かった……!」ダキッ
春香「千早ちゃん……」
覚醒美希「春香は千早さんにたくさん感謝しないとね。千早さんがいなかったら、春香はここへ帰って来れなかったかもしれないんだから」
春香「うん……そうだね」
春香「……って、あれ? 美希、髪が……!」
覚醒美希「もう、今はそんな事はどうでもいいの! まだだよ、春香。まだ全部終わったわけじゃないんだから」
春香「……分かってる」
千早「春香……」ギュッ
春香「大丈夫。ここは私に任せて」ニコッ
170 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 21:15:51.63 ID:Gx17QCPmO
闇春香「……あと少しだったのに……。もう少しで、プロデューサーさんが私『たち』のものになるはずだったのに……」
闇春香「なんで……? なんで邪魔するの……?」
春香「……こんな方法で誰かを自分のものにしても、その人の心は手に入れられないよ」
闇春香「それでもっ! ……『私』には、こうするしか方法はなかった……!」
闇春香「いずれ消えゆく存在である私には、手段なんて選んでる時間はなかった!」
春香「ヤミちゃん……」
闇春香「……そうだ。全ては『わたし』から始まったんだよね」
春香「……!」
闇春香「私がこんなに苦しいのは……私が生まれたのは……」
闇春香「『わたし』が、この世界へ来たから」
春香「………」
闇春香「私だって、何も恨みたくはなかった! 『わたし』みたいにみんなに囲まれて幸せでいたかった!」
闇春香「……でも、ダメだった。だって私は、闇だから」
闇春香「だったら、もう終わりにしよう」チャキッ
春香「!」
闇春香「闇は闇らしく、全てを憎んで恨んで、妬んで……!」
闇春香「『わたし』を殺して、『私』も死ぬ……!」ゴゴゴ
覚醒美希「あの子、また暗黒剣を使うつもりなの! あんな状態で使ったら……」
千早「……無事では済まないわね」
P「………」
171 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 21:21:17.12 ID:RWf558iQO
闇春香「ねえ、『わたし』? 『私』の想い、全部受け止めてくれる……?」
春香「………」
春香「……受け止めるよ。それが、私がヤミちゃんを苦しめた咎だって言うなら」
…カランッ
覚醒美希「春香、剣を捨てたの……!」
P「徒手空拳で暗黒剣を受け切るつもりか……!?」
千早「春香……!」ギュッ
春香「ヤミちゃん、私が暗黒剣を完全に受け切ったら、一つだけ約束してほしいんだ」
闇春香「そんな事は万に一つも無いと思うけど……いいよ。言ってみなよ」
春香「私があなたの暗黒剣を完全に受け切ったら、ヤミちゃんは……」
春香「……ちゃんと心からの笑顔を私たちに見せる事!」ビシッ
闇春香「…………は?」
春香「だって、暗黒剣は負の感情なんだよね? それを全部吐き出したら、ヤミちゃんはきっと楽になれるんじゃないかな?」
春香「楽になって心から笑うヤミちゃんを、私、見たいんだ!」ニコッ
闇春香「!」
春香「それに……」
春香「ヤミちゃんは私と同じ顔なんだから、きっと可愛いと思うよ? ……なーんて」
闇春香「ば……バカじゃないの!?」カァァ
春香「あ、今の表情、ちょっと可愛かった」
闇春香「っ……本気で殺すからね!」
闇春香「はあああああっ……!」
闇春香「……暗黒剣ッ!!」
ズオオオオオ……!
春香「! ……すごい……禍々しい闘気……! これが……ヤミちゃんの……!」
春香(私のせいで、こんな……ごめんね。辛い思いをたくさんさせて、ごめんね)
春香(……ちゃんと全て受け止めるよ、ヤミちゃん。だから……)
春香(……約束、絶対に忘れないでね……!)
ドゴオオオオオォォオオン…!!
172 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 21:26:27.01 ID:RWf558iQO
闇春香「っ……はぁ、はぁっ……!」ガクッ
千早「ヤミさん……もうほとんど力は残っていないはずなのに、すごい技だったわ……」
覚醒美希「それより、春香は?」
P「……あそこだ」
春香「………」
覚醒美希「春香! ……まさか……」
千早「……いいえ、春香は立つわ」
P「春香……!」
春香「っ……!」ピクッ
闇春香「まだ、息があるの……? 私の、全身全霊を込めたのに……」
春香「……約束…したからね……」ググッ
春香「みんなで……帰るって……!」ヨロッ
闇春香「く……!」
春香「それに……」
春香「見せてくれるって……言ったでしょ……?」
春香「ヤミちゃんの、笑顔を……!」ザッ
闇春香「……完敗、だね」
春香「……って言っても、私も立ってるのがやっとだけど……」フラフラ
闇春香「それは、想いの力だよ」
闇春香「『わたし』の想いの方が『私』よりも強かった。……ただ、それだけなんだよ」
173 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 21:29:28.70 ID:RWf558iQO
闇春香「あはは……笑うしかないね、もう」
春香「ふふ……やっと笑ってくれたね?」
春香「でも、もっといい笑顔ができるはずだよ」
春香「だって、私は知ってるもん。プロデューサーさんと二人っきりの時の、とっても幸せそうなヤミちゃんの表情を」
闇春香「………」
千早「春香っ!」
タタタタ…
千早「平気? 私に捕まって」ガシッ
覚醒美希「ケアルガ!」
シャララーン! キラキラキラ…
春香「ありがとう、千早ちゃん、美希」
P「まったく、無茶しやがって……」
春香「えへへ、すみません……」
闇春香「……羨ましかった」
春香「え……?」
闇春香「みんながいて、プロデューサーさんがいて……」
闇春香「全てを持っている『わたし』が、『私』は羨ましかった」
闇春香「でも、私は闇だから。『わたし』の影の存在だから」
闇春香「こんな私なんて、誰もいらないだろうから」
春香「そんな事……!」
千早「そんな事ないわ!」
闇春香「……千早…ちゃん……」
174 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 21:33:13.43 ID:RWf558iQO
千早「あなたのその力に、私たちはこれまでたくさん助けられてきた」
千早「私たちがここまで来れたのは、あなたの存在に依るところが大きいと私は思ってる」
覚醒美希「うーん、そだね。確かにバブイルの塔とかでもお世話になったらしいし」
千早「改めてお礼を言わせてもらうわ。……ありがとう、ヤミさん」
覚醒美希「ミキも一応言っておくね。ありがとうなの」
春香「私も、双子の姉妹ができたみたいで嬉しかったよ! だから、ありがとう!」
闇春香「みんな……」
P「闇春香。俺も君にはとても感謝してる。ここまで来れたのももちろんそうだけど、春香がここまで強くなれたのは、きっと君のおかげだから」
P「どういう想いで君がここまで戦ってきたにしろ、君はもう、立派な俺たちの仲間だ!」
闇春香「プロデューサー…さんっ……!」
闇春香「じゃあ、私とずっと一緒にいてくれますか!」
春香「や、ヤミちゃん!?」
覚醒美希「それはダメなの!」
P「……ごめん。それだけはできないんだ」
闇春香「……分かってますよ」
闇春香「でも、それでも……」ポロ
闇春香「みんなの言葉、すごく嬉しいっ……!」ポロポロ
覚醒美希「………」
千早「ヤミさん……」
175 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 21:36:31.31 ID:RWf558iQO
闇春香「うぅ……っ!」ウルッ
春香「ほらほら、ダメだよ泣いちゃ。可愛い顔が台無しだよ?」
覚醒美希「自分と同じ顔を可愛いって言う春香は、ちょっとあざといって思うな」
春香「い、今のはそんなつもりじゃないよぅ!」
千早「いえ、美希の言う通りかもしれないわね」
P「ああ、否定はできないな」
春香「もうっ! 千早ちゃんとプロデューサーさんまで!」プンスカ
闇春香「……ふふっ、あはははっ!」
闇春香「まったく、これが私の分身だなんてね?」ニコッ
春香「あ……ヤミちゃん可愛い! ね、みんなも見たよね? ヤミちゃんの笑顔!」
P「だから……」
覚醒美希「気持ちは分かるけど、言えば言うほどドツボにはまってる気がするの」
春香「う〜、そういうつもりじゃないのにぃ〜!」
千早「……よしよし」ナデナデ
闇春香「私からも……ありがとう」
春香「ヤミちゃん……」
闇春香「『わたし』の言った通りかもしれないね」
闇春香「さっきの暗黒剣で嫌な気持ちが全部出て行っちゃった感じがして、今はすごく気分がいいんだ」
春香「……そっか」ニコッ
闇春香「だから、ここでお別れだね」
春香「えっ……?」
176 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 21:40:28.67 ID:RWf558iQO
闇春香「私は、闇だから。嫌な気持ち、暗い気持ちが存在しないって事は、すでに私が存在する意味はないから」
春香「そんな……せっかく仲良くなれたのに……!」
闇春香「分かっててやってたんだと思ったけど……そうじゃなかったんだね」
闇春香「……とにかく」
闇春香「頑張ってね、春香。最後の戦いは、きっとあなたが思ってるよりも苦しい戦いになると思う」
春香「……えへへ、やっと名前で呼んでくれたね?」
闇春香「……もう、そんな事はいいでしょ? 今は最後の戦いに備えて……」
春香「うん、分かってるよ。どんなに辛くても、苦しくても、必ずみんなで乗り越えてみせる」
春香「だって私たち、アイドルだもん!」
闇春香「……良かった。それを聞いて安心したよ」ニコッ
春香「あっ、また笑顔になった! ねえみんな、見たよね?」
千早「……春香」
覚醒美希「……もう、行っちゃったみたいなの」
春香「えっ?」クルッ
春香「ヤミ…ちゃん……?」キョロキョロ
P「……きっと、笑顔で別れたかったのかもな」
P「暗黒騎士は今、ようやくその役目を全うしたんだよ」
春香「………」
春香「…………グスッ」
ーー頑張ってね。春香たちなら、きっと……
春香「……!」
春香(……さよなら、ヤミちゃん)
春香(もうひとりの、私)
177 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 21:46:59.52 ID:RWf558iQO
ー 月の民の館への道 ー
千早「……はっ!」
ヒュー…ドスッ!
魔物「」
千早「……ふぅ」
春香「千早ちゃんお疲れ様。回復してあげるね」
春香「……ケアルラ!」
シャララーン! キラキラキラ…
千早「……ありがとう、春香」
春香「ううん、私の方こそ千早ちゃんだけに戦わせてゴメンね?」
千早「何言ってるのよ。春香には美希を背負ってもらっているんだから、私が道を切り開くのは当然でしょう?」
春香「えへへ、そっか」
美希「……zzz」
千早「……美希、あの後ちゃんと元に戻ったわね」
春香「そうだねー。こっちに帰って来たら美希の髪が短くなっててびっくりしちゃったけど、何だったんだろう?」
美希「……zzz」
P「……よく分からないけど、夢を見ているのと同じ状態だったらしいぞ」
千早「夢……ですか?」
P「ああ。本人が言ってたから間違いないんじゃないかな」
P「春香の多重人格とは違う、とも言ってたな」
春香「じゃあ、あの時の美希も今のこの美希も、同一人物って事ですか?」
P「そういう事らしい」
P「でも美希、すごかったんだぞ? 闇春香の全力の暗黒剣と互角以上だったんだから」
春香「そうそう! なんかすごい魔法を使ってたし」
千早「……私は、結局あまり役に立てませんでしたね」
P「そんな事はない。あの時千早が身を呈して美希を庇ったから、活路が開けたんだよ」
春香「そうだよ! 千早ちゃん、カッコ良かったよ?」
千早「そう言ってもらえるとありがたいけど……」
178 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 21:50:55.17 ID:RWf558iQO
春香「…………あれ? そういえば、私たちってヤミちゃんにプロデューサーさんを好きな事、バラされちゃったよね……?」
千早「は、春香!」
春香「あっ……」
P「その話を今ぶり返すのか……」
春香「す、すみません……///」
P「いや、いいけどさ」
千早「……あの、プロデューサー!」
P「な、なんだ?」
千早「私は、プロデューサーの事を尊敬していますが、そ、その、他にやましい感情は抱いてないというか、特に男性として意識しているつもりはないというか!」
P「分かった、分かったから落ち着こうな」
春香「千早ちゃん……嘘がヘタだねぇ」
千早「というか、春香はなんでそんなに余裕があるの? 自分の気持ちをバラされたというのに」
春香「うーん……私も恥ずかしいけど、少しだけ肩の荷が降りた気もするかなぁ」
千早「なんて言うか、春香らしい、呑気な考え方ね」
春香「それにね? 正直、今はまだよく分からないなって思うんだ」
春香「どれだけ私たちがプロデューサーさんのことを好きでも、プロデューサーさんが誰を選ぶのかなんて分からない。もしかしたら私たちの中の誰も選ばれない可能性だってあるし」
千早「……確かに、それはそうね」
春香「もちろん、選ばれなかった時の事を考えると、私だって胸がキュッて締め付けられる思いになるよ?」
春香「でも、多分それはまだまだ先の事。今は、こうしてみんなでいられる時間を楽しみたいなって」
千早「……そうね。私も、今すぐにどうなりたいって思っているわけでもないし」
千早「きっと、765プロのみんなも同じ想いよね」
春香「うん、きっとそうだよ!」
P「……君たち、本人を目の前にしてよくそういう話ができるね」
春香「もう、プロデューサーさん、盗み聞きですかー?」
P「いや、さっきまで普通に会話してただろ……」
千早「ふふ、べろちょろだとどうも存在感が薄くなってしまいますね」
P「不本意だけどな」
179 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/04/16(土) 21:53:39.66 ID:RWf558iQO
P「あ、そういえば……さっきの春香のセリフと少しだけ関連するんだけどさ」
P「765プロで絆を一番大切に思っているのは、もしかしたら美希かもしれないな」
春香「美希が……ですか?」
P「『ミキたちはずっとずっと、おばあちゃんになっても仲間だよ。その絆は、何者にも壊せない……壊させない』ってさ」
千早「美希が、そんな事を……」
春香「美希……」
美希「……おにぎり……」ムニャムニャ
P「普段は飄々としてるところがあるけど、美希も胸の内に熱いものを持っているんだなって思ったよ」
春香「……美希が起きたら、助けに来てくれてありがとうって伝えなきゃ」
千早「それと、お疲れ様ともね」
美希「……zzz」
P「……さ、急ごう。きっとみんな待ってる」
春香・千早「はい!」
スタスタ…
180 :
◆bjtPFp8neU
[sage]:2016/04/16(土) 21:55:45.16 ID:RWf558iQO
次回へつづく
着々と終わりへ近づいているような、そうでもないような…
181 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/04/16(土) 22:04:01.24 ID:B2D85skDO
乙!コトリット(小鳥分身)がどこで出るのか気になる
182 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/04/17(日) 19:39:24.31 ID:H8zI1sOwO
もうちょっとだけ続くんじゃよ?
ですねわかります。
183 :
◆bjtPFp8neU
[saga sage]:2016/05/08(日) 18:58:59.87 ID:hf/TX9CKO
ー 月の民の館 図書室 ー
真「え? まだ到着していないメンバーの捜索に?」
律子「ええ。さすがにそろそろ合流しておかないと」
律子「現時点でこの館にいないのは、貴音、千早、美希、春香、そしてプロデューサーの五人。貴音はまあ、場所は分かっているだろうからいいとして」
伊織「問題は、春香とプロデューサーに、それを追いかけていった美希と千早ね」
伊織「あの時の春香はちょっと面倒な状態だったし、早めに回収しておくに越した事はないわね」
律子「そういう訳で、二、三人でひとっ走り迎えに行って来てもらいたいの」
真「それはいいけど、誰が行くの?」
あずさ「あら、それなら私が行きましょうか〜?」
律子「あ……えーと……」
真「いや……」
あずさ「……そうですよね、私じゃミイラ取りがミイラになるのが目に見えてますよね……」シュン
律子「そ、そういう意味じゃないんですけど……」
真「そ、そうですよあずささん! あずささんはホラ、みんなの面倒をみててもらいたいなって!」
184 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/05/08(日) 19:05:31.04 ID:hf/TX9CKO
伊織「……別にあずさでもいいんじゃないの? 一人で行くわけじゃないんでしょ?」
律子「それはまあ、そうだけど……」
伊織「だったら決まりね。捜索は私とあずさで行くわ」
真「伊織……?」
あずさ「あの、伊織ちゃん……自分で言うのもなんだけど、私と一緒でいいの?」
伊織「……あのね。仲間が心配だから探しに行く事の何が悪いっていうのよ」
伊織「そういう事でいいわよね、律子?」
律子「……ええ、いいわ」
伊織「さ、そうと決まったら出発しましょ」スクッ
あずさ「は〜い」
真「……待って。ボクも行くよ」
真「ちょうど今日の分のトレーニングも兼ねてさ」
あずさ「あらあら、真ちゃんがいれば頼りになるわね〜」
伊織「……ま、いいけど」
律子「頼んだわよ、あなたたち」
185 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/05/09(月) 06:31:27.39 ID:ATnSiA3eO
ー 月の民の館への道 ー
真「確か、千早たちはあっちの方へ向かったんだよね?」スッ
伊織「ええ。館とは逆の方向だから、合流するのに少し時間がかかるかもしれないわ」
真「大丈夫かな」
伊織「……何がよ?」
真「ほら、あの春香の分身みたいな子がプロデューサーをさらっていったじゃないか」
真「あの子、なんだかボクたちにあまり好意的じゃなかったみたいだからさ」
あずさ「……きっとなんとかしてくれるわ、千早ちゃんと美希ちゃんなら」
真「そう……ですよね」
魔物1「ガルル…!」
魔物2「ウガー!」
魔物3「グルギャァ!」
伊織「……っと、お客さんみたいね」
真「よし、ボクに任せて!」
真「……よっ!」ドゴッ
魔物1「」ドサッ
あずさ「あらまあ……一撃ねぇ」
真「まだ来ます!」
魔物2「ウガー!!」ブンッ
伊織「………」
真「伊織!」
あずさ「伊織ちゃんっ」
伊織「……心配いらないわ。もう行ったから」スチャ
魔物2「?! ……アェ……?」
スパ…ドサッ
魔物2「」
真「うわ……魔物が真っ二つだ……」
あずさ「伊織ちゃん、いつの間に? 全然分からなかったわ〜」
伊織「にひひっ♪ この伊織ちゃんの疾さには、誰もついて来る事なんでできないわよっ」
186 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/05/09(月) 06:34:43.40 ID:ATnSiA3eO
伊織「それはともかく、あと一体はあずさ、アンタの獲物よ」
あずさ「うふふ♪ 私も少しはいいところを見せないとね」
魔物3「グルギャァ!」ガバッ
あずさ「あらあら……」
あずさ「テレポ!」
…シュンッ
魔物3「グギャ?」キョロキョロ
伊織「あずさが、消えた……?」
真「確かあれは瞬間移動の魔法だったはず……」
あずさ「時を知る精霊よ……」スッ
あずさ「因果司る神の手から我を隠したまえ……」
あずさ「……ストップ!」バッ
ピキーン!
魔物3「」ピタッ
伊織「へぇ……」
真(あれって確か……アガルトのお婆さんが使ってた魔法だっけ)
真(すごいなぁ。今さらだけど魔道士の戦いってまるで手品みたいだ)
あずさ「うふふ、成功して良かったわ〜」
伊織「どうでもいいけど、とどめは刺さないの?」
あずさ「動けないなら何もできないでしょう? 追い打ちをかけるような事はあんまりしたくないのよ」
真「ははっ、あずささんらしいや」
伊織「今回は雑魚だったからいいものの、あの親衛隊とかいうヤツらにはそんな甘い考えは通用しないわよ? きっと」
あずさ「……その時は、私もしっかりやらないとね」
真「さ、進みましょう!」
スタスタ…
187 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/05/09(月) 06:56:44.57 ID:ATnSiA3eO
スタスタ…
伊織「………」
真「………」
あずさ「………」
伊織「……そうだわ」ピタ
真「……どうしたんだよ、急に立ち止まって」
伊織「いい機会だから、アンタの考えも一応聞いておこうと思って」
真「何のこと?」
伊織「真。アンタは……小鳥と戦う事についてどう考えてる?」
あずさ「伊織ちゃん……」
真「………」
伊織「今までずっと有耶無耶だったけど、私たち、もうごまかしの効かないところまで来ているわ」
伊織「普通のゲームみたいにただ戦って倒してはい終わり。それじゃ済まない事なのよ」
真「……うん、そうだね」
伊織「その様子だと、何も考えていない訳じゃないみたいね」
真「まあ、ね」
伊織「……ま、アンタにはアンタの考えがあるのならそれでいいわ」
伊織「でも、肝心な時にウチのエースが日和って最悪の事態になるのは勘弁してよね?」
真「もう、伊織までエースだなんて……」
あずさ「真ちゃん。真ちゃんは誰が何と言おうと私たちのエースよ? だから、自信を持って?」
真「あずささん……ありがとうございます」
あずさ「もちろん、真ちゃんだけじゃなくて伊織ちゃんも、律子さんや春香ちゃんたちも……」
あずさ「み〜んなウチのエースだから、きっと心配はいらないわね〜」ニコニコ
伊織「エースの意味が無いじゃないのよ、それ……」
真「………」
真(もうごまかしの効かないところまで来てる、か。確かに伊織の言う通りだ)
真(もう少し……あと少しだけ時間がほしい。そうすれば、きっとボクも覚悟ができるから……)
真「………」グッ
188 :
◆bjtPFp8neU
[sage saga]:2016/05/09(月) 06:59:35.91 ID:ATnSiA3eO
スタスタ…
伊織「……それにしても遠いわね。私たちってもう月一周分くらいは歩いているんじゃないかしら」
伊織「ゴツゴツしててやたら足元は悪いし……」
真「自分から申し出た割にはやけに弱気だなぁ。らしくないじゃないか」
伊織「別にいいでしょ。仲間に弱い部分を見せる事を、私は悪い事だとは思わないわ」
真「……ふーん。変わったね、伊織」
伊織「成長したって言いなさいよね!」
真「はいはい」
あずさ「うふふ♪ 」
あずさ「……そうだわ。今は少しでも距離を稼いだ方がいいわよね?」
真「それはそうですね。春香たちを早く見つけるに越した事はないと思います」
あずさ「それじゃ、ここは私に任せてもらえないかしら?」
伊織「何か策があるっていうの?」
真「もしかして、さっきのテレポって魔法ですか?」
あずさ「ええ♪ 」ニコッ
伊織「確かに、瞬間移動なら大分時間を短縮できるでしょうけど……アンタ、大丈夫なの?」
あずさ「千早ちゃんたちが向かったあっちの方へ行けばいいのよね?」スッ
真「……あずささん、そっちは逆の方向です」
あずさ「あ、あら、私ったら……///」
伊織「……本当に大丈夫なの?」
あずさ「何となく大丈夫な気がするわ〜」
あずさ「さ、二人とも私に掴まって?」スッ
伊織・真(……うーん、不安……)
189 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 19:57:45.49 ID:/DBTa6rJO
ー 月の民の館 執務室 ー
月の民「……それで、クリスタルについて何を知りたいんスか?」
律子「まずは、クリスタルとは何なのか。何か不思議な力を秘めているっていうのは私も分かっているけど、詳しい事は何も知らないの」
律子「だから、あなたが知っている事を教えてもらえたらと思って」
月の民「分かったッス。他ならぬタカネ様のお友達の頼みならば断る道理は無いッスから」
律子「ありがとう。助かるわ」
月の民「じゃあ、まずは……」
月の民「前提として、クリスタルはこの世界に無くてはならないもの、という事を理解してくださいッス」
月の民「古い書物によれば、クリスタルが無いと世界は崩壊してしまうらしいッスから」
律子「重要なものだとは感じていたけど、そこまでなのね」
月の民「ええ。世界にとってクリスタルは、人間の身体でいえば心臓に当たる部分らしいッス」
月の民「で、クリスタルとは何かっていうと……」
律子「何かっていうと……?」
月の民「……実は、自分もよく分かってないッス……」
律子「……あ、そうですか……」
月の民「し、仕方ないんスよ!? 人間が生まれるずっと前から存在してるらしいし、文献にも詳しい事は何も書いて無いんスから!」
律子「はいはい、分かりましたから」
190 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 20:00:02.28 ID:/DBTa6rJO
月の民「その代わり、クリスタルにまつわる不思議な力が我々月の民の研究によって解明されつつあるんス」
律子「ふむ……詳しく」
月の民「リツコさんは、『精神波』ってご存知ッスか?」
律子「ええ、まあ。確か、強い思念をエネルギーに換えて離れた場所へ物理的に飛ばす技……だったわよね?」
月の民「概ね正解ッス。まあ、月の民なら知ってて当然ッスね」
律子「え? どういう事?」
月の民「リツコさんからは我々と同じ匂いがするッス。あなたはきっと青き星に移り住んだ月の民の子孫なんスね」
律子「ふーん……」
律子「……あ、もしかしてその、『青き星へ移り住んだ月の民』って、クルーヤっていう人じゃないかしら?」
月の民「よくその名前を知ってるッスね。確かにクルーヤさんは昔、魔導船で青き星へ渡ったッスけど」
律子「私、どうやら娘らしいんです。そのクルーヤっていう人の」
月の民「おお、そうだったんスか! 言われてみれば、確かに面影があるッスねー」
191 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 20:05:40.67 ID:/DBTa6rJO
月の民「……っと、話が逸れたので戻すッス」
月の民「ここまでの研究で、クリスタルに『あるもの』を注入する事で莫大なエネルギーが生まれる事が分かっているッス」
律子「莫大なエネルギー……」
月の民「エネルギーは様々な事に使えるッス。物理的に機械や物を動かす事も出来るし、魔道士の魔法力の様な目に見えない力を高めたりもできるッスよ」
律子(月の魔物たちが次元エレベータを動かしたのも、きっとそのエネルギーのおかげなのね)
律子「……それで、そのエネルギーを生み出すために必要な『あるもの』っていうのは?」
月の民「それが精神波ッス。『想いの力』と言い換えてもいいッスね」
月の民「クリスタルは、人の想いに応えてエネルギーを生み出す不思議な石。今のところ分かっているのはそこまでッス」
律子(……そういえば、魔導船の動力も想いの力だった。クリスタル……人の想い……か)
律子「じゃあ、例えばだけど、クリスタルの力で地下渓谷へ行く事は出来る?」
月の民「もちろん! クリスタルは万能選手ッスから、そんな事は簡単ッス」
月の民「強く願えば、必ず想いは届くはずッス!」
律子「強く願えば……ね。ありがとう、勉強になったわ」
192 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 20:07:51.25 ID:/DBTa6rJO
月の民「……あの、リツコさん?」
律子「何かしら?」
月の民「あなたも、光の戦士なんスよね?」
律子「……どういう意味ですか?」
月の民「気を悪くしないで欲しいんスけど、リツコさんからは負の力を感じるッス」
月の民「それは多分、リツコさんが暗黒騎士だからだと思うんスけど……」
律子「……安心して。私はもう、悪役は降りたから」
月の民「いえ、そうじゃなくて……」
律子「?」
月の民「コトリほどの邪悪に、闇の力は……」
月の民「……なんでもないッス。忘れてください」
律子「え、ええ……」
月の民「ガンバってくださいね! 自分、何も役に立てないッスけど、せめて皆さんのご無事を祈ってるッス!」
律子「いえ、私たちはもう充分あなたに助けられてますから」ニコッ
193 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 20:12:24.28 ID:/DBTa6rJO
ー 月の民の館 クリスタルルーム ー
律子(……精神波……想いの力……)
律子(とりあえず、クリスタルの仕組みはだいたい理解した。これで後は……)
キラーン!
律子(……後は、それぞれの覚悟を決めるだけ)
律子(小鳥さんと会ったら、おそらく戦う事になる)
律子(その戦いに中途半端な気持ちで臨んだら、きっと私たちは元の世界へは帰れない)
律子(あの子たちの背中を押してあげるのは、私の役目ね)
律子(でも、本当は戦う以外の方法があればそれが一番なのよね)
律子(それが見つかれば苦労はしないんだけど……)
律子「……さてと、そろそろ私もみんなのところへ戻らないと」
「……あら、それはちょっと待って貰えませんか? ……律子さん?」
律子「えっ……!?」クルッ
194 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 20:19:31.95 ID:/DBTa6rJO
コトリマインド「きゃー! 本当に律子さんだー! うわぁ、律子さんってスーツだけじゃなくて鎧も似合いますねぇ! うふふ、この分だと他のみんなに会うのも楽しみだわぁ♪ 」
律子「こ……小鳥さん!?」
律子「なんで? 地下渓谷からは出られないはずじゃ……?」
コトリマインド「もちろんそうですよ? ただし、本体は……ですけどね」ニコッ
律子「本体……? じゃあ、あなたは小鳥さんの分身か何かだとでも言うの?」
コトリマインド「ズバリ、その通りです! 私の事は、コトリマインドと呼んでくださいね?」
律子(これからみんなで乗り込もうって時に、なんてタイミング……)
律子(っていうか、あまりに普通過ぎてどう対応していいか分からない)
律子(……ひとまず、様子を見るしかないわね)
コトリマインド「そんなに恐い顔しないでくださいよぅ。せっかくこうして久々に対面できたっていうのに」
律子「あ……ごめんなさい。そうですね」
コトリマインド「でもまあ、それも仕方ないのかな。手紙でコンタクトを取ってはいましたけど、こうして会うのは、この世界では初めてですもんね?」
195 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 20:23:44.12 ID:/DBTa6rJO
律子(……そうだわ。私は小鳥さんの手足となり悪を演じていた)
律子(でも、今は違う。貴音によって自分を取り戻す事ができたから)
律子(言ってみれば、小鳥さんを裏切った形になる)
律子(その事を、小鳥さんはどう考えているの……?)
コトリマインド「……もう、いつまで黙っているんですか? なんか私が一方的に喋っててさみしいですよぉ〜」
律子(いつもの小鳥さん……のように見える。小鳥さんも悪を演じているだけなのかしら……)
律子(……とにかく、これは小鳥さんの真意を確かめるチャンスかもしれないわね)
律子(よし……)
律子「……あの、小鳥さん?」
コトリマインド「はい、なんです? 私の得意技ですか? 私の得意技はですねぇ……」
律子「そんな事は聞いてません。小鳥さん、あなたは何が目的なんですか?」
コトリマインド「………」
196 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 20:27:12.29 ID:/DBTa6rJO
律子「……話してくれませんか?」
コトリマインド「……話すも何も、前に律子さんに言ったはずですよ? 『みんなを楽しませる』のが私の目的だって」
律子「ごまかすのはやめてください! 小鳥さんだって知ってるんでしょう? 『私たちが元の世界へ帰る方法』を!」
律子「どうすればいいか、みんなで考えないと!」
律子「あの子たちは、苦労してここまで来ました。……あなたに会うために」
律子「みんな、小鳥さんの事が心配なんですよ!」
コトリマインド「……あーあ、律子さんには足りないみたいですね」
律子「……え?」
コトリマインド「私と本気で戦う『覚悟』が」
律子「っ……!」
197 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 20:29:24.60 ID:/DBTa6rJO
コトリマインド「もういいです。私、みんなと遊んできますから。いるんですよね? ここにみんなが」
律子「!」
律子(……ダメ、今小鳥さんをみんなのところへ行かせるわけにはいかない。だって、あの子たちもまだ覚悟ができてないもの……!)
律子(今の状態で小鳥さんをあの子たちに会わせるなんてできない)
律子(仕方ない、ここは私が食い止めるしか……!)
律子「……!」チャキッ
コトリマインド「……うふふ、やっとその気になってくれましたね? さあ、遊びましょう?」ゴゴゴ
律子「……言っておきますけど、私だって簡単にやられたりしませんからね」
律子「……はあああっ!」ダッ
コトリマインド「ああ……やっとここまで来たわ……! 長かった……本当に、長かった……!」
コトリマインド「楽しませてあげますよ、律子さんっ!」
…ガキィン!!
198 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 20:34:55.78 ID:/DBTa6rJO
律子「はあっ!」ブンッ
ザシュッ!!
コトリマインド「くぅ……!」
律子「……ファイガ!!」
ボオオォォオオオ!!
コトリマインド「熱っつ! 熱っつぅい!」ジタバタ
…スタッ
律子「………」
コトリマインド「ふーっ、ふーっ……あー熱かったぁ」
コトリマインド「ふふっ……なかなかやりますねぇ、律子さん。さすがゴルベーザ役ってところですかねー」
律子「まったく……よく言うわ」
律子「今の、全然効いてないんでしょう?」
コトリマインド「まったく効いてないって事はないですよ? ……ただ、私のHPは40000くらいありますからねぇ」
コトリマインド「今の律子さんの魔法と剣での攻撃、二つ合わせてもせいぜいダメージは1000程度ってところです。これがどういう事か分かります?」
律子「……つまり、今の攻撃を40回繰り返してやっと小鳥さんが倒れるかどうか、ってとこですか」
コトリマインド「正確にはちょっと違います。律子さんは私の反撃を考慮していないみたいですから」ニコッ
律子「!」
コトリマインド「今度は、こちらから行かせてもらいますね?」
律子「く……!」チャキッ
コトリマインド「うふふっ」ダッ
199 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 20:38:15.42 ID:/DBTa6rJO
ー 月の民の館 図書室 ー
真美「ふわぁ〜……」ノビッ
真美「ん〜……よく寝たな〜……」ゴシゴシ
やよい「真美おはよう。顔洗ってきたら? 寝ぐせもすごいよ?」
真美「あ、やよいっちセンパイおはー。うん、あとで行ってくるよー」
響「あれ……?」キョロキョロ
響「ねえ雪歩。ずいぶん人数が少ないみたいだけど、みんなどこに行ったんだ?」
雪歩「おはよう響ちゃん。えっとね、真ちゃんと伊織ちゃんとあずささんで春香ちゃんたちを迎えに行ったみたいだよ?」
亜美「亜美とゆきぴょんでお留守番だってさ。つまんないのー」
響「春香たちを迎えに行ったって……え? どういう事? 別々に行動してるのか?」
雪歩「……そっか、響ちゃんたちは知らないんだったね」
雪歩「こっちで何があったかを話すよ。だから、響ちゃんも教えてほしいな。四条さんがいない理由を」
響「……そーだったな。うん、わかったぞ」
200 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 20:41:32.91 ID:/DBTa6rJO
ーーーーーー
ーーー
雪歩「……そんな事があったんだね、四条さん……」
響「そっちもいろいろ大変だったみたいだな」
雪歩「春香ちゃんが、ちょっとね」
真美「はるるん、ついに殺意の波動に目覚めちゃったかぁ……」
亜美「ホントたいへんだったんだよ? ヤミるんは戦ってる亜美をひとり置いてどっか行っちゃうしさー」
真美「……亜美、ガンバったんだね」
亜美「……ふ、ふんっ! 亜美たちはケンカ中なんだかんね! 気安く話しかけないでよねっ!」
やよい「亜美? 仲良くしないと、めっ! だよ?」
真美「まあまあやよいっちセンパイ、ここは真美に任せて」
201 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 20:45:00.18 ID:/DBTa6rJO
真美「……亜美。真美ね、ちょっとの間だけど亜美がいなくてチョーさみしかったよ。だから、こーしてまたブジで会えて真美、うれしい!」ニコッ
亜美「!」
亜美「……っ」
真美「あの時はごめんね、亜美。真美、もー少し亜美のキモチ考えればよかったかも」
亜美「………」
亜美「…………も」
真美「うん?」
亜美「あ、亜美もまあ、ほんのちょびっとだけど、チョーさみしかった……かもね……///」
響「ほんのちょびっとだけ超さみしかったって、どういう意味なんだ……」
真美「えへへっ♪ 」ダキッ
亜美「わっ」
真美「んじゃ、仲直りねっ?」
亜美「むぅ……」
亜美「……ちかたないな。我々の任務にはどうやら君の力が必要なようだ。また、力を貸してくれるかね?」ニコッ
真美「オーケー、ボス!」ニコッ
202 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 20:49:00.19 ID:/DBTa6rJO
雪歩「良かったぁ、これで一件落着だね」ニコニコ
やよい「兄弟は仲良しが一番です!」ニコッ
響「うんうん、真美もなかなかお姉ちゃんらしくなってきたかもなー」
真美「んっふっふ〜、真美にはたよりになるセンパイがついてるかんねー」
亜美「センパイって?」
真美「モチロン、やよいっちセンパイに決まってるっしょ!」
やよい「えっ!? わ、わたし?」
響「なるほど、やよいなら納得だ」
やよい「あの、それよりも」
雪歩「どうかしたの? やよいちゃん」
やよい「さっきから律子さんがいないなーって」
雪歩「あ、そういえば……」
203 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 20:54:29.37 ID:/DBTa6rJO
ー 月の民の館 クリスタルルーム ー
コトリマインド「どっせーい!」
ドガッ!!
律子「……っく……ぅ……!」ヨロッ
律子(一撃一撃が重い……! 今まで戦ってきた魔物の比じゃないわ)
コトリマインド「ほらほら、のんびりしている暇はありませんよ? 律子さん」
ヒュッ…
ガキィン!!
律子「……っと!」ググッ
コトリマインド「わあ、いい反応♪ 」
コトリマインド「じゃあ、これはどうです?」ブゥン…
律子「……!」
律子(なんか……ヤバそう!)
コトリマインド「……フレア!」
ブゥン…
バババババババッ!!
律子「うあ……!」
…ドサッ!
コトリマインド「うーん、一方的過ぎるのも考えものよねぇ。やっぱりいくら律子さんが強くても、一人じゃ私には太刀打ちできないかぁ」
律子「……まったく……」ヨロッ
コトリマインド「あら……」
律子「本っ当に……こういう時は生き生きとしますね、あなたは……」ザッ
コトリマインド「生き生きするなって言う方が無理な話ですよぅ♪ だって私たち、ゲームの世界に来てるんですよ? こんな事、普通あり得ないです」
コトリマインド「せっかく不思議な体験をしてるんだから、楽しまないと♪ 」
律子「……行かせませんよ、みんなのところへは」キッ
律子「あなたは、私がここで食い止めるっ!」チャキッ
コトリマインド「……いい表情です、律子さん」
コトリマインド「さあ、もっと楽しみましょう!」
204 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 21:01:58.60 ID:/DBTa6rJO
ー 月の民の館 1F 廊下 ー
亜美「……おーい、りっちゃーーん!」
響「律子ぉーー! どこだーー!?」
やよい「律子さーーん!!」
真美「……りっちゃん、いないね」
響「どこ行ったんだ、律子……」
亜美「さっきまではいたんだけどね」
やよい「うー……ここってけっこう広いですし、もしかして迷子になっちゃったんでしょーか?」
雪歩「………」
雪歩「もっと奥に探しに行ってみよう。ひょっとしたら律子さん、私たちのために何かしてくれてるのかも」
響「……それ、律子ならあり得るかもね。今までも律子はいつも自分たちの影で頑張ってくれてたから」
真美「でも、ゆきぴょん。みんなを待ってなくていいの? 真美たちがいなかったら、あとから来たみんなが困っちゃうんじゃない?」
雪歩「あ、そっかぁ。うぅ、でも……」
やよい「あの、雪歩さん。二手にわかれたらどーですか? ここでみんなを待ってるチームと、律子さんをさがしに行くチームと」
雪歩「! ……そうだね、そうしよう」
205 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 21:05:31.77 ID:/DBTa6rJO
雪歩「じゃあ、私とやよいちゃんで律子さんを探しに行くから、響ちゃんは真美ちゃん、亜美ちゃんと一緒にここで待っててもらえるかな?」
響(ふーん……)
亜美「ええー? また亜美はお留守番なのー!?」
真美「亜美、しょーがないっしょ。今はゆきぴょんがイチバンお姉ちゃんなんだもん」
亜美「むぅ……」
響「亜美、雪歩の言うとおりにしよう。ここで揉めても話が進まないぞ」
亜美「……わかったよー」
雪歩「ごめんね、亜美ちゃん」
響「じゃあ、気をつけてな」
雪歩「うん。響ちゃんも、そっちはよろしくね?」
響「……へへ、今の雪歩、なんだか一味違うな!」ニコッ
雪歩「そ、そんなことないよぅ! 私なんか全然……///」
響「あ、そういうところはなかなか直らないんだな」
響「とにかく、律子のこと、よろしくな!」
雪歩「……うんっ」グッ
206 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 21:08:35.15 ID:/DBTa6rJO
ー 月の民の館 1F階段 ー
スタスタ…
雪歩「……やよいちゃん、ごめんね? 私なんかが勝手に決めちゃって……」
やよい「そんな、気にしないでください! わたし、雪歩さんといっしょに行動できてうれしいですから!」
雪歩「えへへ、そう言ってもらえると助かるよ」
やよい「それに、なんだか今日の雪歩さんは、とってもたのもしいです!」
雪歩「そ、そう、かな?」
やよい「はい!」ニコッ
雪歩「さっきはありがとう。やよいちゃんの助言がなかったら私、どうしていいか分からなかったかも」
やよい「えへへ、おやくに立ててよかったです!」
雪歩「……早く律子さんを見つけなきゃだね」
やよい「はい、ガンバりましょー!」
スタスタ…
207 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 21:12:21.71 ID:/DBTa6rJO
ー 月の民の館 図書室 ー
亜美「ぬぅ……」
亜美「ヒマヒマっしょ……」
響「まあまあ、こうやってみんなを待つのだって立派な仕事だぞ?」
亜美「そーかもしんないケドさー」
真美「……ねえひびきん。なんかさっきのゆきぴょんってオラオラってカンジだったよね?」
響「いや、オラオラって程じゃなかったと思うけど……」
響「……うん。でも、きっとさっき真美が言った通りだと思うぞ」
亜美「真美が言ったとおりって?」
響「今いるメンバーの中では雪歩が一番お姉さんでしょ? 雪歩なりに自分がしっかりしなきゃって思ったんじゃないか?」
亜美「ほーう」
真美「なるほど、ゆきぴょんもお姉ちゃんに目覚めた、と」
響「んー、真美のそれとは少し違うんじゃないか?」
響「でも、ああいう風にここ一番って時に自分を奮い立たせるのが雪歩なんだって自分は思う」
響「普段は大人しいから、そういうのが目立ち安いよね、雪歩って」
亜美「ひびきんって、何気にお姫ちんいがいの人のこともちゃんと見てるんだねー」
響「そんなの当たり前だぞ。みんな大切な仲間なんだから」
響(……雪歩が本当は強い子だっていうのは、あのダークエルフとかいう怪物と戦った時にもう分かってたからな)
響(成長したなぁ……雪歩。自分も負けていられないぞ!)
208 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 21:17:05.06 ID:/DBTa6rJO
ー ハミングウェイ一族の住処 ー
春香「……ふぅ、ようやく到着だね」
千早「結構な距離を移動してきたのね、私たち」
美希「……zzz」
P「二人ともお疲れ。すまないな、二人だけに苦労させて」
春香「いえ、気にしないでください」
千早「そうですよ。プロデューサーは私の胸でじっとしててくれればいいんです」ニコッ
P「もはやべろちょろでいる事に違和感を感じなくなってきたよ、俺自身」
千早「それにしても、なんだかとても静かね」
春香「そうだよねぇ。あれだけ大勢で激しい戦いをしてたっていうのに、変だよね……?」
P「もしかしてもう戦いは終わったのか?」
千早「その可能性もありますね」
春香「とにかく、中に入ってみようよ」
千早「そうね」
美希「……zzz」
…ガチャ
春香「ごめんくださーーい!!」
…シーーン
209 :
◆bjtPFp8neU
[saga]:2016/05/09(月) 21:19:36.69 ID:/DBTa6rJO
春香「……やっぱり誰もいないみたい」キョロキョロ
春香(洞窟の中は……)
春香(生々しい戦いの傷跡がそこかしこに……)
春香(……ん? あれは……)
スタスタ…
千早「……プロデューサー、これからどうしますか?」
P「すでに戦いが終わってここから移動したとなると……みんなは貴音たちが向かったバハムートの家へ行ったか……」
P「それとも、俺たちを探してくれているのかもしれない」
P「……いやでも、律子がついてたからな。律子なら『自分たちだけでも一旦目的地へ向かった方が合理的だ』とか考えそうでもある」
千早「いずれにせよ、私たちもすぐに移動すべきですね」
P「ああ、そうだな」
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