【咲 -Saki- SS】 大学編 - いちご味 - ちゃちゃのん「おかえりなさい」

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302 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/24(木) 18:21:39.22 ID:AHtRTqY30



―――あの一年前の七夕の夜



屋根の上、視界の端で見た胡桃ちゃんは、あの時 何とゆーとったんじゃろう。



胡桃ちゃんの誕生日の夜、きっとあの日は二人にとって 特別なものだったはず。



あのバレンタインの日の、胡桃ちゃんの気持ちを想う。




貴方と胡桃ちゃん―――



二人の過ごした、私の知らない たくさんの時間――――






今なら、いくら恋に鈍い 私にだって―――流石に分かるんじゃ。



胡桃ちゃんは、きっと貴方のことが大好きなんじゃ。



そして、きっと貴方も、そんな胡桃ちゃんのことを――――






ちゃちゃのんは――――今、とってもズルいことをしているんじゃろうね。



303 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/24(木) 18:23:42.33 ID:AHtRTqY30




ちゃちゃのん「ヒロちゃん……////」ドキドキ


洋榎「ちゃちゃ……?」ドキドキ


洋榎「お、おぃっ!?」////





唇と唇が触れ合うほどに、大好きな貴女と近づくけれど…



きっと貴方の心が、私の心と触れ合うことは ないじゃろぅ。





ちゃちゃのんは、きっと周回遅れのスタートだったんじゃ。



ちゃちゃのんは、もぅ充分過ぎるほどの幸せ もらったけぇ…



もぅ、胡桃ちゃんにお返しせんと……








ありがとう、ヒロちゃん―――大好きじゃったよ……






サヨナラ―――




ちゃちゃのんの、初恋の王子さま―――





幸せな想い出、いっぱいいっぱい ありがとな――――




304 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/24(木) 18:35:49.91 ID:AHtRTqY30






パシャッ



ピトッ…


洋榎「へっ、指……?」ポカーーン


フレデリック「グ〜〜ドッ!! 最後のキスシーンは実に迫真だったね!!」


ロッキー「撮影は、これで終了……」ボソッ







ちゃちゃのん「恋人の魔法は… もぅ解けてしもぅたみたいじゃね…」



ちゃちゃのん「続きは… ヒロちゃんが一番大切な時のために、とっておいての……」





ちゃちゃのん「―――どうも、ありがとの……」ポロポロ



洋榎「ちゃちゃ、自分 何で泣いとるんや…?」




ちゃちゃのん「ちゃちゃのん、まだもぅちょっと仕事で残るけぇ。 今日はホンに、ありがとう……」


洋榎「あ、あぁ……」



305 :ケイ@今にも落ちてきそうな空の下で [saga]:2015/12/24(木) 18:45:54.28 ID:AHtRTqY30




ちゃちゃのん「今日はちゃちゃのんの無理、聞いてもらってありがとうございました…」ペコリ


フレデリック「いやいや、恋人役の変更くらいお安い御用だけどさ…」


フレデリック「本当に、これで良かったの―――?」


ちゃちゃのん「」コクリッ




ロッキー「…………アッシュ」ボソッ









ポツ… ポツポツ…



ちゃちゃのん「雨…? 予報は一日晴れ言うとったのに…」




ちゃちゃのん「6月の空は、ホンに気まぐれで 嘘つきじゃ……」







この日 ちゃちゃのんは、自分の気持ちにウソを付くと決めたんじゃ――――







306 :ケイ@今にも落ちてきそうな空の下で [saga]:2015/12/24(木) 18:50:20.93 ID:AHtRTqY30




中学の頃―――



ちゃちゃのんは、鹿老渡を離れ呉に住んどった。



大好きだった婆っちゃをなくし、悲嘆にくれとったちゃちゃのんを元気づけてくれた人。



それが、あの幼い日に夢見たアイドルさんじゃった。




それは偶然、耳にしたラジオの放送。



鹿老渡では聞けんかったラジオ番組に、あの人が出とると知った。





それまで別世界のお姫さまのように思っとった人が…



ちょっぴりドジで色々悩みもする、ちゃちゃのんと同じ普通の女の子なんじゃと知った。



彼女に抱いとった憧れは、やがて親しみへと変わり…



改めて、ちゃちゃのんのアイドルとしての目標となっていった――――



307 :ケイ@今にも落ちてきそうな空の下で [saga]:2015/12/24(木) 18:52:23.35 ID:AHtRTqY30




ある日、ちゃちゃのんは自分の今の境遇や悩みを



手紙にしたため、彼女のやっとったラジオ番組に投稿してみた。



程なくして、番組内で彼女がそれを読み上げ、真剣にお返事してくれた。





それが彼女の仕事じゃから…



それはそうなんじゃろうが、彼女のその真剣なお返事がただ純粋に嬉しくて…



彼女が悲嘆にくれとったちゃちゃのんに、元気を与えてくれたのは紛れもない事実なんじゃ。





ホンの少しの希望や喜び、幸せな思い出があれば―――




人は絶望せず、生きてゆけるモンだと知ったんじゃ――――





308 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/25(金) 21:01:00.27 ID:dLJn8/xx0




【胡桃の部屋】


胡桃「最近、ちゃちゃちゃん あんまり顔出さないよね…」ズズッ

洋榎「仕事も軌道に載ってきとるみたいやし、ゼミとか色々忙しいんやろ。 最近、メール送っても何や素っ気ないねん…」ブスゥ

胡桃「あんた、最近 お昼からよく飲むね。 身体に良くないよ…」

洋榎「ええやん、別に。 いいんちょはウチのオカンかっちゅうねん!!」ゴクゴクッ



ブブッ ブブブーーー

胡桃「あ、塞からメール…?」

洋榎「何や、これからこっち来るんか?」





胡桃「ちゃちゃちゃんが、倒れたって―――」


洋榎「んなっ――!?」ゴトッ









【某大阪の病院】



洋榎「ちゃちゃのヤツが倒れたって、ホンマなん?」ダダッ


塞「あっ、胡桃と洋榎。 うん… ゼミ休んでるって聞いて、 確認とったら―――」



塞「過労で、仕事中に倒れたんだって―――」





309 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/25(金) 21:04:32.48 ID:dLJn8/xx0



【病室】


ちゃちゃのん「あっ、ヒロちゃんと、胡桃ちゃんまで―――」

洋榎「おまっ、大丈夫なんか!?」

ちゃちゃのん「えへへ、みんな大袈裟じゃよ。 ちょっと疲れたまって、ふらついて倒れただけなんじゃよ…」

塞「過労で亡くなる人だっているんだから、甘く見ちゃ駄目だよ」

胡桃「そうだよ。 特にちゃちゃちゃんは、いつも仕事と大学でロクに休んでないんだから…」



ちゃちゃのん「仕事にも穴を空けてもうて、ホンに申しわけないことしたんじゃ…」ウゥッ

塞「またそんなこと言って… せっかくの機会なんだし、こういう時くらい何も考えずにゆっくり休みなよ!!」ポンポン

ちゃちゃのん「う、うん… 塞ちゃん、どうもありがとの…」




ちゃちゃのん「胡桃ちゃんとヒロちゃんも、わざわざ来てもらって申しわけなかったんじゃ…」

洋榎「―――こんアホんだら、倒れたんなら何でウチに連絡せんかったんや!!」


ちゃちゃのん「じゃ、じゃって… ここ病院じゃし、ケータイのバッテリーも…」

塞「洋榎… いくら個室でも、ここ病院だから……」シーー



洋榎「いや、スマン… 自分があんま水くさいんで、つい怒鳴ってもうたわ…」


洋榎「ウチら、仲間やんか………」チッ

胡桃「クスッ、確かにコイツのいう通りかもね…」

塞「うん、連絡くらいはして欲しかったね♪」


ちゃちゃのん「みんな、ゴメンの… 心配かけたくのぅて……////」シーツニモグリ




塞「ま、とりあえず大丈夫そうだし。 今日はこれで帰らせてもらうね」

胡桃「ちゃちゃちゃん、しっかり養生しなさいよ」バイバイ

ちゃちゃのん「うん。 せーちゃんや哩ちゃんたちにも、宜しく伝えといてな……」バイバイ


310 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/25(金) 21:09:04.76 ID:dLJn8/xx0




???「元姫松の洋榎さんに、元宮守のお二人さんですかー」コッコッ


???「どーやら いちごちゃんには、ええお友達おるみたいやねーー♪」




ちゃちゃのん「あ、憩(けい)先生―――」

憩「先生なんてイヤですよーぅ。 ウチは単なる医学生として―――」

憩「この病院でお手伝いさせて貰っとるだけなんやから、いつも通り 呼んで下さいー」


ちゃちゃのん「あ、うん… 憩ちゃん、ありがとな。 この個室も、憩ちゃんが融通してくれたそうじゃね…」

憩「お気になさらずー♪ この方がウチにとっても、都合良かっただけですからー♪」ウフフ

憩「それじゃ、今日の診察を始めちゃいますよーぅ」


ちゃちゃのん「う、うん……////」




憩「は〜い、それじゃー 高校時代より大きく実った、そのお胸をぺろーんと出しちゃって下さいねー♪」

ちゃちゃのん「うぅっ、じゃからそういうセクハラ発言はヤメるんじゃ……///」モジモジ


憩「だって〜、いちごちゃんの反応があんま可愛ええから〜 ウチ、クセんなってもうたわー♪」ニッコリ



荒川 憩(あらかわ けい)
311 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/25(金) 21:12:15.81 ID:dLJn8/xx0



憩「ん〜 まだ少し熱っぽいみたいやねー 過労は色んな病気を引き起こすから、気をつけなアカンよ〜」ペタペタ サワサワ

ちゃちゃのん「とりあえず、自宅療養じゃ 駄目だったんじゃろか?」ウヒャッ

憩「そう言って、いちごちゃん絶対休まないやろ〜〜 だから、ダメですよーぅ」ペタペタ モミモミ

ちゃちゃのん「ちょーっ!? もーええじゃろ〜〜っ////」バッ

憩「むー そうやって反抗的だと、退院遅くしますよーぅ」

ちゃちゃのん「うぅっ、横暴じゃ…」ウルウル

ちゃちゃのん「…………」




ちゃちゃのん「のぅ、憩ちゃん……///」

憩「何ですかー?」




ちゃちゃのん「その、昨日ゆーとった話って… 本当なんじゃろか?」




憩「麻雀は――――大学でヤメる言う、アレですか……?」



312 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/25(金) 23:46:38.27 ID:dLJn8/xx0




ちゃちゃのん「うん。 インターハイで、個人2位の実力ある憩ちゃんなら…」


ちゃちゃのん「きっとプロでも実業団でも、やってけるはずじゃろ……」

憩「…………」



ちゃちゃのん「憩ちゃんは、プロになる力もないちゃちゃのんとは違うじゃろ。 それなのに―――」

憩「いちごちゃんなら、きっとプロや実業団からのお誘いだってあると思いますよーー」


ちゃちゃのん「それは、客寄せパンダとしてじゃろう……」



ちゃちゃのん「ちゃちゃのんはアイドルじゃし、それが間違っちょるとは思っとらんけぇ…」

ちゃちゃのん「そうやって食らいついていって、そっから実力つけてくゆーのも一つの道じゃと思う―――」


ちゃちゃのん「でも、ちゃちゃのんは……」キュッ




なでなで

ちゃちゃのん「憩、ちゃん…?」フェッ


憩「将来んこと、色々と悩んどるみたいやねーー」ナデナデ




憩「アレはいちごちゃんが高校2年のことやったかな。 麻雀強くなりたい言うて、ウチんとこに教わりに来たことあったなー」


憩「年下のウチに必死に頼み込んで、ホンマ真っ直ぐで 一生懸命な人やなー思いました〜〜」

ちゃちゃのん「あ、あん時は… ホンにお世話んなったんじゃ……///」



憩「でもなー その何に対しても一生懸命過ぎるトコ、いちごちゃんの悪いクセなのかもしれんよーー」


ちゃちゃのん「そ、そうじゃろか……?」


313 :ちゃちゃのんと憩さんの旧友設定は、やきうスレを元ネタにしてます [saga]:2015/12/25(金) 23:50:19.08 ID:dLJn8/xx0



憩「ウチな、人の生命を救えるお医者さんになることが、子どもん頃からの夢やってん?」

ちゃちゃのん「憩ちゃんらしい、とってもええ夢じゃと思うよ……」



憩「これは医者だけに限った話やない思うんやけど、夢を叶える言うのはとっても大変なことだと思いますーぅ」

ちゃちゃのん「そうじゃろうね……」



憩「せやから、ウチはここできっちり麻雀を捨てよ思いました―――」


ちゃちゃのん「麻雀を、捨てる……」






憩「まだまだ戦いたい相手もいます。 未練がない言えば、きっと嘘になる思いますー」



憩「せやけど、本当にウチにとって一番大事なモノが何かと考えた時―――」


憩「そんことでだけは、後になって絶対に後悔はしたくないなーって思いましたーー」


ちゃちゃのん「憩ちゃんは、お医者さんの夢を選んだんじゃね……」





憩「もしかしたら ウチはいちごちゃんよりも、ちょっといい加減なのかもしれませんね―――」


憩「大切なモノ全部を掴むには、ウチの手は小さすぎると―――やってみる前に、見切りをつけてしまったんですよー」クスッ


ちゃちゃのん「そ、そんなことないんじゃ!! 憩ちゃんは、ちゃちゃのんの憧れるとっても凄い人なんじゃ!!」



憩「年下のウチに、何のてらいもなくそんなことが言えてまう。 そういう純粋さも、いちごちゃんの魅力やねー」ナデナデ

ちゃちゃのん「うぅっ、子ども扱いせんでよぅ……///」

憩「あはは、コレは失礼しましたー♪」



314 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/25(金) 23:53:22.17 ID:dLJn8/xx0



憩「それじゃー 今日の診察はこれでシマイやでー」バイバイ

ちゃちゃのん「け、憩ちゃん―――!?」

憩「―――?」


ちゃちゃのん「その、自分如きが何をって… 笑われてまいそうじゃけど……」フルフル




ちゃちゃのん「―――ちゃちゃのんと、麻雀で真剣勝負して貰えんじゃろか!!」

憩「…………」





憩「―――ええですよ」


ちゃちゃのん「ほ、本当け?」



憩「でも、それは今じゃ〜ないですね〜〜」

ちゃちゃのん「ほぇっ!?」


憩「当たり前じゃないですか〜 過労で入院してきた人と、そんなこと出来ませんよーー」フフッ

ちゃちゃのん「ほ、ホンなら……?」



憩「いちごちゃんの、退院の日―――そこでお相手させてもらいますよーーぅ」

ちゃちゃのん「憩ちゃん、ありがと〜の!!」ペコリン






正直 あの憩ちゃんを相手に、ちゃちゃのんの麻雀が通用するとは思わんし…



憩ちゃんとの対局で、ちゃちゃのんの悩みが解決するわけでもないじゃろう。



それでも勝負を申し込まにゃぁ、おれんかったんじゃ。



ただ純粋に、今の憩ちゃんと本気で麻雀してみたい―――ちゃちゃのん、そう思ったんじゃ。



315 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 20:05:51.15 ID:4cxibNJK0





【そして―――退院の日】



ちゃちゃのん「はぁ〜 数日間じゃったが、こんなにのんびり過ごしたのは ホンに久しぶりじゃったのぅ…」



憩「いちごちゃーん、おはようございます〜 今日も楽しい楽しい 診察のお時間ですよーぅ♪」ワキワキ

ちゃちゃのん「ひぃぃっ、ちゃちゃのんはちっとも楽しくないんじゃよ〜〜!!」ウルウル


憩「はぁ〜〜 いちごちゃん遊びも今日でシマイや思うと、何や寂しいですねー」

ちゃちゃのん「―――ちゃちゃのんもな、憩ちゃんと色んなお話出来て楽しかったんじゃ……///」




???「」ジーー

???「」ブツブツ


ちゃちゃのん「おょっ…? トビラのトコから、誰かが覗いとるんじゃが…」

憩「まったく もー 気の早い人たちですねーー」

ちゃちゃのん「だ、誰……?」ドキドキ



憩「今日、対局するって約束してたでしょー♪ 流石に二人じゃ、麻雀出来ませんからね〜」

憩「ウチの患者さん、もとい… ウチの友達に声かけといたんですよーぅ」ニコニコ

ちゃちゃのん「それって、もしかして――!?」


憩「皆さ〜ん、そないなトコで覗き見してるくらいなら、さっさと入って下さいよーぅ」


316 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 20:10:33.86 ID:4cxibNJK0



ガラ ガラ ガラッ


利仙「九州赤山の『藤原 利仙(りせ)』です。 お久しぶりですね、佐々野さん」ニコッ


もこ「」ブツブツブツ



藍子「知ってる思うけど、このブツブツ言ってんのが 愛知の星こと東海王者『対木 もこ』ね…」


藍子「―――でもって、アタシが静岡一位の『百鬼 藍子(なきり らんこ)』だよ♪」ヤホッ


絃「愛知の星は関係ないでしょう、藍子さん。 あ、私は一応 千葉MVPの『霜崎 絃(いと)』です。 いちごさん、お久しぶりです」ペコッ



ちゃちゃのん「わぁ〜〜 みんな久しぶりじゃね〜〜♪」


憩「ふふっ、あの時のメンバーに声をかけたらみんな集まっちゃいましたー」


藍子「アタシたち今でも荒川には色々世話になってるし、久しぶりにいちごにも会いたかったからね♪」



317 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 20:13:51.28 ID:4cxibNJK0



利仙「何でも佐々野さんは、今では立派なアイドルさんになられたとか…?」フフッ

ちゃちゃのん「あ、うん… まだまだ駆け出しの、新米アイドルじゃけどね…////」エヘヘッ

もこ「」ブツブツブツ


利仙「あら、もこさんがサインを欲しいと仰っていますわ。 佐々野さん、もし宜しければ…」シキシ スッ

もこ「(―――言ってない!?)」ブツブツブツ


ちゃちゃのん「うん、ええよ♪ えっと、お名前は『もこちゃんへ――』で ええじゃろか…?」キュポンッ

利仙「あ、『りせちゃん LOVE(ハート)』で お願いしますわ―――」ニコニコ


ちゃちゃのん「う、うん…(もこちゃんへのサインなんじゃ…?)」スラスラッ



藍子「リセのヤツは相変わらずなんだな…」ヒソヒソ

絃「ええ、相変わらずの『いちごさん LOVE』みたいですね…」ヒソヒソ

絃「イベントには変装して、毎回参加されているようですし―――」

絃「先日行われた大学祭のゲリラライブにも、お手製のいちごちゃんグッズを身につけて駆けつけたとか」ヒソヒソ

藍子「素直にファンだって、言っちゃえば良いのに…」ヒソヒソ

絃「霧島山幽境に住む清浄な天女のイメージもありますし、それは照れくさいのでしょう…」ヒソヒソ


318 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 20:15:52.14 ID:4cxibNJK0


利仙「―――そもそもりせと言うのは、もこさんの出世名の一つなのですわ」

利仙「でも私の名と被るので、普段はあまり使われていないようなのです…」ニコニコ

もこ「(―――違う!?)」ブツブツブツ



ちゃちゃのん「ほう、ほぅ、そうなんじゃね。 ちゃちゃのん、ちっとも知らんかったんじゃ…」フムフム

利仙(あぁ、私のこんなしょーもない嘘を間に受けて…)


利仙(いちごちゃんはマヌケでおバカさんなトコロも、また たまらなく愛らしいですわぁ……)ハァハァ

もこ「(―――コイツは…)」ブツブツブツ




憩「―――それでは、そろそろ対局開始といきましょうかー?」

絃「ここにいるメンバーは6人、対局には二人多いようですが…?」

利仙「私、今回は皆様の対局を見させて頂きますので… 後は佐々野さんと、憩さん以外が交代で入られては如何です?」

もこ「」ブツブツブツ

藍子「『了〜〜解!!』だってさ…」

ちゃちゃのん「流石、親友じゃね… もこちゃんの言葉、藍子ちゃんもしっかり聞き取れるんじゃの…」



319 :麻雀の点数 本当にテキトウなので、宇宙麻雀くらいに思っといて下さい [saga]:2015/12/26(土) 20:18:37.88 ID:4cxibNJK0




ジャラ ジャラ ジャラ ジャラ…


ちゃちゃのん「ほんじゃ、対局開始じゃね…」


憩「宜しくですよーーぅ」


もこ「」ブツブツブツ


藍子「にしても、本来なら医学生5年目からの臨床実習を2年目で何故かしてたり―――」

藍子「病院の個室を手配して患者と麻雀したり、荒川YBJ先生は本当に不良医師だよね〜〜♪」ニヤニヤ


憩「ナキリさん、うるさいですよー ウチは優良学生だから、特別なんですよーぅ」ニッコリ


もこ「(―――憩について、あまり深く調べてはいけない……)」ブツブツブツ





絃「それで利仙さんは、いちごさんのベッドで何をされているのですか?」ジッ


利仙「私、先程から少々体調が優れませんので、こちらで横にならせてもらっておりますの…」スンスン ゴロゴロ


320 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 20:22:15.03 ID:4cxibNJK0



ちゃちゃのん(うぅ… 憩ちゃんはもとより、みんなちゃちゃのんよりも格上じゃ…)ゴクッ

憩「宜しくですよーーぅ」ニコッ

藍子(荒川 憩、相変わらず底の知れないヤツ…)タンッ


もこ「(憩のヤツも、この場にいるヤツ全員ぶっ潰す……)」グゴゴゴゴゴ…



ちゃちゃのん(うぅ… 全身総毛立つような、凄いプレッシャーじゃ…)ゾゾゾッ


ちゃちゃのん(頭痛と悪寒を感じる。 それに何だか、身体も重く感じるんじゃ―――)

ちゃちゃのん(能力者の持つ場に与える影響力いうヤツにゃぁ、相変わらず慣れんのぅ……)フルフル


ちゃちゃのん(この感じは嫌じゃ、早くこの場から逃げたいんじゃ……)タンッ




憩(モコちゃんの対局時に於ける暴力的な精神的変調と干渉力、明らかに以前よりも強まって来てますねぇ―――)


憩(これは能力者耐性の低い いちごちゃんには、ちょっと酷だったかもしれませんねー)チラッ


ちゃちゃのん「」フルフル…




もこ「(―――ツモ!! 4100・8100)」バンッ

藍子「ちっ、ヤられたか…」


321 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 20:25:05.99 ID:4cxibNJK0



藍子「ロン、3900〜♪」パララッ

もこ「」ブツブツブツ




ズズズズ…


ちゃちゃのん(怖い、怖い、怖い、怖いんじゃ―――)フルフル



ちゃちゃのん(そんでも―――ちゃちゃのんだって、ちっとは成長しちょるんじゃ!!)グッ




ちゃちゃのん(ちゃちゃのんじゃって、ここは逃げずに攻めるんじゃ!!)タンッ

憩「ロン、8000ですよーぅ」パララッ

ちゃちゃのん「あぅ…」



ちゃちゃのん(ちゃちゃのんの一人へこみ、やっぱり憩ちゃんたちは強いんじゃ…)クッ


憩「…………」





憩(高校で始めて出会った頃よりも、いちごちゃんは確かに成長してますよー)


憩(本来 いちごちゃんの持ち味は、堅実な読みと生来の臆病さから来る 鉄壁の防御…)


憩(例えは悪いですけど、小動物特有の第六感。 危険地帯に踏み込まないためのレーダーが人より優れとる―――)


322 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 20:29:43.13 ID:4cxibNJK0



憩(……でも彼女は、自分のそういうトコを激しく嫌っとる)

憩(だから、いちごちゃんは ここぞって時に、強引な手に走る傾向がある―――)



憩(高い手を狙いにいく時に伴う、振り込んでまうかもしれんいう不安や恐怖―――)

憩(それを打ち消そうと、彼女は恐怖という感覚を遮断する。 そうやって、彼女本来の臆病な性質を意識の外に追いやってまう―――)


憩(―――それが臆病な彼女が知らず知らずのうちに身に付けた、攻めに転じる際に用いる方法であり武器…)





憩(だから攻めに転じた時の彼女には、本来 備わっとるはずの第六感・危険察知の直感が働かない―――)


憩(これだったら きっと大丈夫。 大丈夫なはず。 大丈夫であって欲しい…)

憩(そういう根拠のない希望的観測に走るから、危機を察して引き返すいう選択も出来なくなる……)



憩(勝利のため、時には多少の強引な攻めも必要ですよー)

憩(せやけど選択肢の狭まったその不用意な攻めじゃ、自分の手だって相手に読まれやすくなっちゃいますよね―――)




憩「ロン、6400!!」パララ

ちゃちゃのん「あぅ あぅ…」フルフル




憩(いちごちゃんの攻め―――)


憩(それは一見、恐怖を乗り越えたかのようにも見えますけどーー)



憩(クスッ… いちごちゃん。 それは本当の意味での、恐怖の克服じゃ〜 ないんやで―――)


323 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 20:33:28.57 ID:4cxibNJK0



利仙「あぁ、いちごちゃん頑張って… でもその悔しさで、今にも泣き出しそうなお顔もまた素敵ですわぁ…////」ハラハラ ゾクゾク

絃「もぅ、どっちなのよ… でも実際、三人の能力者相手に 非能力者のいちごさんじゃ厳しいですよね…」


利仙「―――能力者と非能力者ですか。 麻雀の強さがそういうので決まるようになったのは、一体いつ頃からなんでしょうね…」

絃「それは、やっぱり小鍛治プロたちの頃からじゃないんですか?」




利仙「ここ最近のプロ麻雀界は、能力者による非能力者狩りの歴史とも言えますわ…」


利仙「特別な能力を持たない方でも、その能力を研究し柔軟に対応された方たちは 今でも何とか頑張られていますが…」



利仙「古い麻雀に固執した老人たちの多くが、能力者たちの前にその地位を奪われていきましたね」

絃「それって、確か荒川さんが話されていた―――」




利仙「今のままだと、あと10年で麻雀界から非能力者は駆逐される―――」


利仙「もしくは―――」




利仙「あ〜〜 いちごちゃん!? そんな今にも泣きそうな顔なさらないで下さい、私が応援していますから!!」アァッ


利仙「いちごちゃんの悲しみは、ファンみんなの悲しみ!? 私がいちごちゃんの分まで泣いて差し上げますわ〜〜!!」ポロポロ

絃「おいっ……」


324 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 22:30:53.05 ID:4cxibNJK0



オオーイ オイオイ…


藍子「何だか、外野がうっさいな〜〜」ポリポリ

もこ「」ブツブツブツ

憩「ふふっ、楽しそうですねーー」タンッ


ちゃちゃのん(くっ… ちゃちゃのんの麻雀じゃ、やっぱり全然 通用しないんじゃ…)




絃「あ〜〜 結局、いちごさんの一人焼き鳥でしたか…」

利仙「うぅっ、いちごちゃん……」ポロポロ




ちゃちゃのん「も、もぅ一戦 お願いします!!」ギュッ

憩「いいですよーぅ」ニコッ


藍子「絃、そんじゃ交代しよっか…」

絃「了解です♪」スッ





ジャラ ジャラ ジャラ ジャラ…


ちゃちゃのん(憩ちゃんたちのチカラに、翻弄されとったらダメじゃ…)


ちゃちゃのん(憩ちゃんたちのチカラを見極めて、そこに活路を見出すんじゃ……)タンッ


325 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 22:33:53.27 ID:4cxibNJK0



絃「ツモです」パララッ

憩「霜崎さん、なかなかやりますねー」フフッ

ちゃちゃのん「うぅっ…」ウルウル


ちゃちゃのん(くっ、泣いたらダメじゃ… 今は対局に集中せんと…)グッ


ちゃちゃのん(ここで出しきらんかったら、きっとまた後悔するんじゃ…)



ちゃちゃのん(ちゃちゃのんは、一人でもやれるってことを―――証明するんじゃ!!)





藍子「こりゃ、今回もいちごは駄目そうだね。 スッゴイ涙目だよ…」カワイソ

利仙「そうでしょうか……」

藍子「ん…?」




利仙「あの泣き虫で弱虫な いちごちゃんが、これだけへこまされても まだ歯を食いしばって涙を堪えてますわ…」


利仙「そりゃ、あの嗜虐心を誘うキュートな泣き顔と、ショックで脱力した あの考慮出来てない姿も とても素晴らしいのですが…///」クネクネ

藍子「いや、そういうの良いからさぁ…」



利仙「チカラの差を見せつけられても、まだいちごちゃんは諦めてないんですわ」

藍子「ほぉ〜〜♪」


326 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 22:37:25.93 ID:4cxibNJK0



ちゃちゃのん(うぅ… コレは、何だかとてもイヤな感じがするんじゃ…)スッ タンッ


憩(あらら… 攻めの姿勢に入ったいちごちゃんが引くなんて、これはちょっと珍しいですねー)

憩(振り込むかもっていう恐怖に耐えながら、あくまでも冷静に打って来とんのやねー)


憩(見た感じあまり変わったようには、見えへんかったけど…)



憩(これも今の友達さんのおかげなんやろか…)


憩(いちごちゃん、麻雀以上に心の方も―――)


憩(ホンのちょっとずつやけど、成長してきとるんやね―――)フフッ





ちゃちゃのん「つ、ツモッ!! 2000、4000じゃ!!」パララッ

憩「ありゃ、これはヤられましたねーー」




利仙「きゃーーー!! いちごちゃ〜〜ん、よく頑張りましたわ〜〜〜!!」ダーーーーッ

ちゃちゃのん「えっ!?」クルッ

利仙「藍子さん、病院で黄色い声援とか… いささか、はしたないですわよ…」グリグリ

藍子「えっ、アタシか〜〜!?」




もこ「」ブツブツブツ

絃「ここに来て、憩さんから満貫の親っ被りとはなかなかやりますね…」



憩(……今のは能力者を想定した打ち筋。 いちごちゃん、だいぶ研究の方もしとったみたいやね…)


憩(フフ、そうでなくっちゃ 面白くないですもんねー)ワクワク



憩(ああ、やっぱり…)


憩(麻雀って楽しいんやなーー♪)ゾクゾク


327 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 22:41:37.44 ID:4cxibNJK0




ちゃちゃのん「のぅ、憩ちゃん―――」


憩「―――?」



ちゃちゃのん「やっぱり麻雀って、楽しいのぅ♪」エヘヘッ



憩「実はウチも、そう思っとったトコですよーーぅ♪」ニコッ






憩(他の人の二倍も三倍努力して―――)


憩(よぅやっと頑張っとるって分かって貰えるような、そんな不器用で要領の悪い女の子…)


憩(いつだって一所懸命なのに、行き先 間違えてばっかりで なかなか前に進めんのやけど―――)





憩「いちごちゃんは、初めて会った頃とちっとも変わってないんやなー」クスッ



ちゃちゃのん「あぅぅ… やっぱりちゃちゃのんは、進歩なしじゃろかぁ〜〜」ウルウル





憩(悲しい時に泣き、嬉しい時に笑う―――)




憩(そんなどこまでも真っ直ぐな いちごちゃんだから、ついつい応援したくなってしまうんですよーー)



328 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 22:46:30.16 ID:4cxibNJK0



憩「―――それで、まだ続けられますかー?」

ちゃちゃのん「う、うん… 宜しく頼むんじゃ…」


もこ「」ブツブツブツ

藍子「お、今度はアタシと、もこが交代みたいだね…」ヨシッ





ジャラ ジャラ ジャラ ジャラ…


もこ「(―――利仙、前にいちごが能力者じゃないかって言ってたよね?)」ブツブツブツ

利仙「ええ、真偽のほどは定かではありませんが… 少なくとも私は今でも、そうだと思っておりますわ」


もこ「(でも彼女からは、何のプレッシャーも感じない。 現に憩だって―――)」ブツブツブツ

利仙「そうですわね… おそらく彼女自身には何の力もないし、自覚すら出来てはいないのでしょう…」




利仙「でも、ファンである私はこう思うのです。 いちごちゃん、彼女自身が空っぽの聖杯なのではないかと―――」


利仙「自身に向けられた周囲の感情を空の杯に注ぎ込み、それを自らの輝きへと変換する―――」


利仙「彼女は―――そういう精神感応系の能力者なのではないでしょうか…」


もこ「(―――何それ?)」ブツブツブツ





利仙「要するに―――いちごちゃんは、私たちの応援を力に変える《アルティメット・アイドルパワー》の持ち主なのですわ〜〜!!」キラキラッ


もこ「(―――うわぁ〜 痛い人がいる……)」ブツブツブツ


利仙「貴女にだけは、言われたくはありませんわ……」クッ


329 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 22:53:42.97 ID:4cxibNJK0



利仙「人よりも無垢で繊細な天使のような少女は、周囲からの好奇の視線を鋭敏に感じすぎてしまうもの…」アァ…


利仙「その受け止め方すら分からない少女にとって、それは時に重荷であり、心を引き裂く刃でもあったはず……」ギュッ



利仙「そうして心も翼も傷ついて、外部との繋がりを絶った孤独な殻の少女―――」


利仙「そんな少女が自らの内にまで響く声、とても暖かな想いのカケラによって 再び羽ばたけることを知ったのですわ―――」ラララーー


もこ「(―――いや、だからそれはただの痛いファンの妄想だよね……)」ブツブツブツ




利仙「妄想でもなんでも構いませんわ〜 私たちファンの声援が力になる―――そう思わせてくれる何かが、彼女には確かにあるのですわ…」



利仙「そして彼女の最大の魅力は、チカラとした輝きを 私たちファンに幸せというカタチで与えて下さるトコロなんですのよ!!」キラキラキラッ


もこ「(―――だから、それはただのアイドルとファンの関係なんじゃないの……)」ブツブツブツ






ちゃちゃのん(さっきから向こうで、何の話をしちょるんじゃろぅ…?)タンッ

憩「ロンですよーーぅ」パララッ


ちゃちゃのん(あぅぅ、つい集中 乱してもうたんじゃ…)ガックシ




もこ「(―――やっぱり、気のせいなんじゃ……)」ブツブツブツ


利仙「そ、そんなことはありませんわ。 くぅぅっ、ここでは満足な応援も出来ませんわ……」



330 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 22:57:27.50 ID:4cxibNJK0




数時間後―――



ちゃちゃのん「どうも、ありがとうございました…」ハァハァ


憩「おつかれさまでしたー」フゥ


もこ「(―――もぅ、無理……)」ブツブツブツ


藍子「うぷっ、チカラの使いすぎで 吐きそう…」ゼェゼェ


憩「能力も万能じゃないんやから、使いすぎはアカンですよーぅ」



ちゃちゃのん(何でじゃろぅ… 誰かが応援してくれとるような気がして、途中から身体が軽くなった気がするんじゃ…)ハテナ





絃「流石に荒川さんは圧倒的でしたけど、それでもいちごさん 途中からだいぶ調子を上げてきてましたね…」


利仙「うぅっ、いちごちゃん… 本当によく頑張ったね……」ポロポロ


331 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 22:59:37.52 ID:4cxibNJK0



ちゃちゃのん「みんな、今日はどうもありがとの」ペコリン


絃「こちらこそ、楽しかったですよ」


もこ「」ブツブツブツ


藍子「もこも楽しかったってさ♪」




利仙「まったく、佐々野さんはまだまだですわね。 仕方ないので、今度 私が個人的にご指導して差し上げますわ…///」ブツブツ

ちゃちゃのん「えへへ、どうもありがとなんじゃ…」


利仙「そ、それでは… しょうがないので、メアド交換でもしておきましょうか…///」フンッ

ちゃちゃのん「うん… リセちゃん、どうもありがとの〜〜♪」ポチポチ ポチット




藍子「素直に大ファンだって、言えば良いのに…」シシッ

絃「そういう利仙さんも、私は可愛いと思いますよ♪」フフッ


もこ「(利仙、嬉しそう…)」ブツブツブツ




利仙(いちごちゃんのメアドゲットですわ〜〜〜♪)ニヘラーー



332 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 23:13:52.44 ID:4cxibNJK0



憩「いちごちゃん、この後 迎えが…?」

ちゃちゃのん「うん。 夕方にヒロちゃんが、来てくれるゆーとったんじゃ…」


憩「それじゃ、それまでの時間―――ちょっとお散歩でもせーへんかー?」

ちゃちゃのん「うん、ええよ…」コクッ




憩「いちごちゃんは確か、ゼミで現代能力者麻雀に関する運命論や流れの存在証明、確率干渉なんかについての勉強してましたよねー?」

ちゃちゃのん「ん、知っとったんじゃね…///」

憩「まぁ、ウチも自分らのチカラが何なのか〜とか、そういうの随分と調べてきましたからー」



憩「それってやっぱり、能力者麻雀の対策や研究のためだったんですかー?」

ちゃちゃのん「んー ま〜単純に興味あったちゅうのもあるんじゃけど…」



ちゃちゃのん「能力を持たん人たちは、こっから先 どうなるんじゃろうなって―――?」


憩「…………」

333 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 23:16:51.70 ID:4cxibNJK0



ちゃちゃのん「憩ちゃんは、やっぱり能力者は非能力者よりも優れとるって思う…?」


憩「うーん、それはまた難しい質問ですねーー」




憩「ま〜 ある側面では優れてると言えますけど、だからと言って全てにおいて優れてるってわけじゃーないですよねーー」


憩「勉強の出来る子、運動の出来る子、麻雀の上手な子、優しい子、元気な子、そういう個性の一つみたいなモノだと思いますけど…」




憩「でも、世の中にはそれを上位人類だとか、ニュータイプ言って もてはやす人たちもいますよねー」


ちゃちゃのん「その力の有無で人の価値が決まってまうのは、やっぱりイヤじゃよね…」



憩「ウチもそう思いますー でも これまでだって、足の速い人や頭の良い人。そういう持って生まれた才能で、人は評価されて来たわけですよね…」


ちゃちゃのん「それが自分の才能と思って受け入れる。 そういえば、浩子ちゃんもそんなことゆーとったのぅ…」


憩「船久保さんですかー あの人はとても頭の良い人やさかい… 世の不条理とかそういうもんが、昔からよく見えてたんでしょうねー」





憩「さっきいちごちゃんは、能力を持たざる者がこれから先どうなるか―――言うてましたけど…」


憩「それは―――能力を持つ側にしたって、同じじゃないですかーー」

ちゃちゃのん「―――?」


334 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 23:21:42.29 ID:4cxibNJK0



憩「さっき一緒に麻雀しとった、リセさんやモコちゃん達…」


憩「あの子らとウチが どうして以前から親交あったんか、考えたことありますか―――?」

ちゃちゃのん「そりゃ、お友達だからじゃ―――?」


憩「そうですねー 確かに友達なんですけど、あの子たちはウチの患者さんでもあるんですよーーぅ」


ちゃちゃのん「えっと、ドコか悪いんじゃろか…?」




憩「能力の反動による後遺症、チカラの制御方法、メンタル面でのケア、その他もろもろ…」


憩「ウチはそういう能力者にしか分からない、身体的・精神的な悩みの相談役なんですわー」


憩「特にモコちゃんは能力の影響が強い分 チカラの制御が難しいみたいで、精神的 変調なんかが心配なんですよー」


ちゃちゃのん「そ、そうだったんじゃ…」



ちゃちゃのん「だったら、あんなにチカラを使わせてしまって良かったんじゃろか…?」

憩「アレはアレで彼女たちにとっては、良いリハビリにもなってますからねー」


憩「単純にチカラを恐れて遠ざけるんやなく、それと向き合って生きていくこと…」


憩「そういうバランス感覚が、何よりも大切なんですよ―――」


335 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/26(土) 23:24:49.02 ID:4cxibNJK0



憩「能力者はまだまだ未知な部分も多く、とても不安定な存在です―――」



憩「せやから、ウチはお医者さんになって―――同じ能力者である彼女たちの力になりたい思ってるんですよーーぅ」


ちゃちゃのん「それで、憩ちゃんはお医者さん一本に―――?」





憩「……大切な人たちの生き死ににも、直接 関わるお仕事ですからねー」


憩「それくらいの覚悟で挑まんと―――」





憩「ウチは、きっと後になって後悔するやろーなって―――そう思うんですよーーぅ」



ちゃちゃのん「……憩ちゃんは、やっぱり凄いんじゃ」


憩「あはは、そうやろかーー」



ちゃちゃのん(憩ちゃんの覚悟… それはちゃちゃのんのとは、まるで質の違うモノなんじゃ――――)


336 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/27(日) 00:14:31.10 ID:+8Dcb3YX0




憩「それと、もう一つ―――」

ちゃちゃのん「ん―――?」



憩「いちごちゃんのお友達の塞さんや哩さん、漫さんたちにも、一応 気をつけるよう伝えておいて下さい―――」


ちゃちゃのん「えっと、何に―――?」



憩「ウチらの能力は、何も麻雀だけに限られたものではないですよねー」

ちゃちゃのん「それってゆーと…?」




憩「ま〜 代表的なのが、一巡先を見ることが出来るいう園城寺 怜(とき)さんの未来視。 アレは麻雀以外にも色々と応用が利くそうやねー」

憩「他にも妹尾(せのお)さんのラックは、あらゆる幸運を呼び寄せるとも言われとりますー」


憩「この手の能力の発現は競技麻雀だけに限らず、ここ数年 様々な分野で見つかり始めとりますよねー」



憩「そんなものを、科学者たちが黙って見過ごしておくと思いますか―――?」

ちゃちゃのん「えっ…」ゾッ





憩「―――流石にこの国ではまだ表面化もされてませんし、強引な手段もなされてはいないようですけど…」


憩「治療と称した、合法的な研究は既に進んでますーー」



憩「他所の国では、人体実験やら人為的な非能力者の能力開発なんかも行われとるとか……」

ちゃちゃのん「えぇぇぇっ…」ゾゾゾッ



337 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/27(日) 00:18:02.79 ID:+8Dcb3YX0



憩「とりあえず現在 園城寺さんや妹尾さんは能力者保護に務める龍門渕の監視下にあるので、安全は確保されとるようですけど…」


憩「とりあえず そういう如何わしい研究機関には、気をつけるよう伝えといて下さいー」

ちゃちゃのん「うぅっ… 分かったんじゃ……」フルフル




憩「それと―――」

ちゃちゃのん「ま、まだあるんか!?」ビクッ




憩「現在 各国で能力者と非能力者の確執が、水面下で広がりつつあるようですよーぅ」


憩「中にはどちらか一方の根絶を唱える声まであるようで、実際にそういう過激なテロを警戒した動きも見られとるようですねー」

ちゃちゃのん「そういえば、何度かそういう警察の人とか見かけたんじゃ…」





憩「そして、それは麻雀の世界でも同じこと―――」


憩「そのうち麻雀界も能力者と非能力者リーグで、完全に分断されるかもっちゅー話も出始めとるみたいですよー」

ちゃちゃのん「そ、そんな話まで…」ヒェェッ


憩「ま〜 実際問題、能力自体が完全に実証されとるわけではないので、まだ先の話や思うんですけどねー」





憩「ただ、これから先―――世界はこの手の問題で、大きく荒れる思いますよーーぅ」

ちゃちゃのん「」ゴクッ





憩「あ、一応… この辺のことは、まだ内密にしておいて下さいねー」


ちゃちゃのん「な、何でちゃちゃのんに、こんな話をしてくれたんじゃ…?」




憩「う〜〜ん、どうしてでしょうねー」


憩「ただ いちごちゃんには、しっかりと考えたうえで 将来のことを決めて欲しい―――」


憩「……そう思ったのかもしれませんねーー」ニコッ


338 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/27(日) 00:20:15.57 ID:+8Dcb3YX0



憩「ま〜 ホンマは今 話したこと、その全てがウチの妄想の産物かもしれませんけどね〜」フフッ

ちゃちゃのん「ほぇっ…?」



憩「まー 今はまだ話 半分くらいで受け取っておいて下さ〜〜い」ホナ、マタナー

ちゃちゃのん「あ、憩ちゃん―――」



憩「ん―――?」

ちゃちゃのん「今年の大会―――その、頑張ってな…」


憩「ふふ… それは今年が最後になる、セーラさんにでも言ってあげて下さいーー♪」





憩「ウチは――――強いですからねー」スッ


ちゃちゃのん「それ、憩ちゃんのいつもの決めポーズじゃね…」エヘヘッ





憩「それじゃ、いちごちゃん。 またなーー」フフッ


ちゃちゃのん「うん… 憩ちゃん、ホンに色々とありがとうの―――」フリフリ



339 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 荒川病院編 [saga]:2015/12/27(日) 00:24:53.76 ID:+8Dcb3YX0




ちゃちゃのん「はぁ… それにしてもまるで雲を掴むような、全く現実味のない話じゃったのぅ…」


ちゃちゃのん「いつもみたいに、また憩ちゃんにからかわれたんじゃろか… それとも―――」





オーーーーーーイ


ちゃちゃのん「あ、ヒロちゃんじゃ…」

洋榎「おぅ、もう元気になったんか〜?」ツカツカ

ちゃちゃのん「あ、う、うん……」コクッ



洋榎「さっき離れてったナース服って、もしかして荒川か…?」

ちゃちゃのん「うん、今はこの病院でお手伝いとかしとるんじゃって…」


ちゃちゃのん「せっかくだし、声でもかけてく?」




洋榎「―――いや、ま〜 今日はええわ…」


洋榎「荷物くらい持ったるさかい、はよ よこし」ヒョイッ


ちゃちゃのん「あ、うん… ヒロちゃん、ありがとな……」ヒョコヒョコ







正直、今のちゃちゃのんにゃぁ―――世界の動きとか、そんな難しいことはよぅ分からんよ。



ただ目の前におる大切な人たちが 幸せであってくれたなら、それでええと思うんじゃ。



でもそんな当たり前の幸せを願う、みんなの想いが…



争いや対立を産んどるんだとしたら……





それはとっても悲しいことだって、ちゃちゃのん 思うんじゃ――――




340 :ケイ@駄文 [sage saga]:2015/12/27(日) 00:29:34.19 ID:+8Dcb3YX0



今回の荒川病院編ですが…


これを入れると、どうしても最終的に消化不良になる部分が出るうえに、ラブコメものとして重くなるし


全体の整合性や世界観の統一感を損なうかな〜と思ったんで、入れるかどうか結構悩んだトコでした。



でも、ま〜 思いついたネタは何でも詰め込もうが当初からのコンセプトだったので、とりあえずぶち込ませて頂きました。


自分としてはこの辺の話は番外編の部分と考え、マクロの中のミクロな世界こそが このちゃちゃのんの物語だと考えてます。


例え来るのが明るい未来でも、暗い未来でも―――自分に出来ることなんて泣いたり笑ったり、今を精一杯に生きることだけ。


ちゃちゃのんは英雄でも魔王さんでもなく、そういうごく普通の女の子なので……




尚 今回の利仙さんのキャラや、ちゃちゃのんの能力の一部は


【咲SS】淡「ここが白糸台高校麻雀部かー!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1392028470/


を参考にさせて貰ったんですけど、このいちごちゃんLOVEな利仙さんが凄く面白くて好きなキャラです(笑)


341 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/27(日) 23:14:41.81 ID:+8Dcb3YX0






女「鹿老渡高校に行く―――? ほいじゃが、あそこは…」


ちゃちゃのん「お母さん、お願いじゃよ……」






中学を卒業し―――



ちゃちゃのんは、お母さんの反対を押し切って鹿老渡高校へ進学した。



呉を離れ、今度は自分の意思で―――



ちゃちゃのんは、もぅ一度 婆っちゃと過ごした鹿老渡に帰って来たんじゃ。






???「あれ… アンタ、もしかして…」


ちゃちゃのん「ほぇ……?」



快活な長女さん「あ〜〜 やっぱりちゃちゃのんじゃ〜!? うっわぁ〜 久しぶりじゃね〜〜♪」



ちゃちゃのん「あ、あ、あ、アンタはーーー!?」




そこで再会したのは、小学生の夏休み一緒に遊んだ あの三姉妹の長女さんじゃった―――


342 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/27(日) 23:17:16.51 ID:+8Dcb3YX0



快活な長女さん「しっかし、自分 相っ変わらず可愛ええのぅ〜〜」


快活な長女さん「中学でも、絶対モテモテやったろ〜〜♪」ウリウリィィィィッ


ちゃちゃのん「え、えっ… そ、そんなこと、ないんじゃよぅ〜〜///」アセアセッ





ちゃちゃのん「で、でも、何でわざわざ鹿老渡に…?」


快活な長女さん「ん―――? 何でて、約束したじゃろ……」


ちゃちゃのん「――――!?」





快活な長女さん「また… 一緒に遊ぼうなって――――」シシシッ



343 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/27(日) 23:21:28.14 ID:+8Dcb3YX0



ちゃちゃのん「そ、そんな理由で… ちゃちゃのん、おるかも分からんかったのに?」


快活な長女さん「ん、ま〜〜 本当はそれが半分なんやけどな……」


ちゃちゃのん「半分……?」



快活な長女さん「もぅ半分は爺さんが過ごした、この鹿老渡高校にも興味があったんじゃ…」ポリポリ


ちゃちゃのん「あ―――」


快活な長女さん「ん、何じゃ―――?」




ちゃちゃのんと、同じ理由じゃった―――



婆っちゃたちの思い出いっぱい詰まった この鹿老渡高校に、ちゃちゃのんは入りたかったんじゃ――――






???「あらあら、私もお仲間に入れて下さいませんか…」


快活な長女さん「お、お、お〜〜 アンタは!?」


ちゃちゃのん「ゆ、幽霊少女さんじゃ―――!?」アワワッ


物静かな女の子「幽霊じゃありませんから、私 ちゃんと生きてますから!!」モー


一同「「アハハ……」」クスクスッ



病気療養で来とったあの子は、今ではすっかり元気になって この鹿老渡に入学してきたらしい。





物静かな女の子「私… 今度こそ、しっかり蛍を見ますわよ〜〜」


快活な長女さん「あはは、今度 みんなで一緒に探しに行こうよ♪」


ちゃちゃのん「それは楽しみじゃね〜〜♪」



344 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/27(日) 23:35:01.83 ID:+8Dcb3YX0




ちゃちゃのん「生徒の数も少ないし、やっぱり麻雀部はもぅないんじゃね…」ガッカリ


物静かな女の子「はぁ、残念ですわね…」



快活な長女さん「なんじゃ、なんじゃ、そない湿気た顔して… 無いんなら、また作ればええだけじゃろ!!」


ちゃちゃのん「ふぇっ、じゃって… ちゃちゃのんたち3人だけじゃ―――?」




快活な長女さん「来年にゃぁ、ウチの双子の妹も入ってくる予定じゃけぇ―――メンバーなら、きっと集まるはずじゃ!!」ドンッ


ちゃちゃのん「そ、そんじゃぁ……」



快活な長女さん「来年にゃぁ、鹿老渡高校麻雀部の復活じゃ!!」ピース


ちゃちゃのん「婆っちゃが… 部長さんだった、麻雀部が……」ウルウル


物静かな女の子「くすくす、いちごさんったら… また、おもひでぽろぽろしてますわ〜〜」ウフフッ


ちゃちゃのん「そ、そんなん… しとらんけぇ……」ゴシゴシ




快活な長女さん「とりあえず空き教室はたくさんあるし、埃かぶった雀卓も見つけたし―――」ヨッシャッ


物静かな女の子「来年の本格始動に向けて、今から準備開始ですわね〜〜」パチパチパチパチ


ちゃちゃのん「おっ、お〜〜〜」グッ






婆っちゃと過ごしたあの古い母屋で、ゴロリと横になる。



い草の懐かしい香りが、ちゃちゃのんの心を穏やかな気持ちにしてくれた。




ちゃちゃのん「婆っちゃ… ちゃちゃのん、いっぱいいっぱい頑張るけぇ…」



ちゃちゃのん「ちゃちゃのん達の頑張り、しっかり見とっての――――」



345 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/27(日) 23:38:48.97 ID:+8Dcb3YX0




陽気な妹ちゃん「わ〜〜い、またツモったんじゃ〜〜〜!!」パララッ


しっかりものの妹ちゃん「くぅ〜〜 相変わらずバカヅキじゃのぅ…」チィッ


ちゃちゃのん「妹ちゃん、前から強かったけど。 また更に強くなったのぅ…」ホェー


快活な長女さん「まったく… コイツにゃぁアタシらに見えん、何かが見えとるんじゃろか…」



陽気な妹ちゃん「へへっ… 凄く調子ええ時は牌が光り出して、話しかけたりしてくるんじゃよ〜〜」


物静かな女の子「えぇっ、そんなことってあるんでしょうか!?」


しっかりものの妹ちゃん「またバカなこと言って… アンタ、何かヤバイ遊びでもやってないでしょうね〜〜」


陽気な妹ちゃん「ヤバイ遊びって何じゃ〜〜 そんなんしとらんわ〜〜!!」ホッホーーーイッ







快活な長女さん「そんで部長の件なんじゃが―――アタシはちゃちゃのんが ええ思うんじゃが、どうじゃろか?」


ちゃちゃのん「えぇっ、リーダーじゃったら ちゃちゃのんなんかよりも―――」



物静かな女の子「いちごさんは私たちの麻雀のお師匠さまですし、異議なしですわ」ウフフ


陽気な妹ちゃん「ちゃちゃのんは、鹿老渡のアイドルじゃもんね〜〜♪」ワーイ


しっかりものの妹ちゃん「アタシは、このバカじゃなければ 誰でもええと思うんじゃ…」フンッ




ちゃちゃのん「み、みんな… どうもありがとの…」ペコリン


快活な長女さん「だから、イチイチ泣かない〜〜!!」カッカッカ


ちゃちゃのん「ま、まだ 泣いちょらんわ〜〜〜///」ウルウル


一同「「ワハハハハーー」」



346 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/28(月) 17:42:31.16 ID:WxbcNbUq0




ちゃちゃのん「はぁ… 練習試合、勝てんかったのぅ…」トボトボ


陽気な妹ちゃん「負けちゃったけど、ボクはとっても楽しかったんじゃ〜〜」


物静かな女の子「先鋒の妹さんが作ってくれたリードを、守りきれませんでしたわね〜〜」


ちゃちゃのん「次鋒のちゃちゃのんが、ドジってもうたからじゃ……」ウゥッ


しっかりものの妹ちゃん「別にちゃちゃのん一人のせいじゃないでしょ…」


快活な長女さん「うん、アタシも大将戦で挽回出来なかったわけだしね…」




ちゃちゃのん(みんながちゃちゃのんを麻雀のお師匠ゆーてくれとるが、ちゃちゃのん 今じゃ妹ちゃんよりも弱いんじゃ…)


ちゃちゃのん(もっともっと頑張って麻雀 強うならんと、県大会にも勝てないんじゃ…)


ちゃちゃのん(ちゃちゃのん―――お飾りの部長さんにゃぁ、なりたくないんじゃ……)







憩「え、ウチに麻雀の稽古をつけて欲しい―――?」


ちゃちゃのん「お、お願いするんじゃ。 ウチの近くにゃぁ、満足に麻雀 教えてくれっ人もおらんし…」


ちゃちゃのん「そんで色々探しちょったら、憩ちゃんはこの辺では敵なしじゃって聞いたけぇ―――」ペコリッ



憩「ほな、時々で良ければ ええですけどー ただ同じ麻雀仲間としてのアドバイスってことでもええやろかー?」


ちゃちゃのん「どうも、ありがとなんじゃ!!」パァァ…






憩「今度はウチの友達にも声掛けときますから、部員さんたちも是非 呼んであげて下さいねー」ホナナー


ちゃちゃのん「うん、どうもありがとなー」フリフリ


347 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/28(月) 17:50:34.16 ID:WxbcNbUq0




祝・鹿老渡高校 第70回 全国高等学校 麻雀選手権大会出場――――!!





陽気な妹ちゃん「うわっ、すっげ〜〜〜!! ちゃちゃのん、デカデカと雑誌で特集されちょるよ〜〜〜!!」


快活な長女さん「やっぱ全国大会効果は凄いのぅ〜〜♪ ほんで、ちゃちゃのんは何で靴を持っとるんじゃーー?」カカッ


ちゃちゃのん「えと、カメラマンさんからの要望で……////」テレッ


物静かな女の子「このカメラマンさん、なかなか出来ますわね……」ムムッ




しっかりものの妹ちゃん「でもあの全国制覇の宮永照よりも、大きく特集されちょるなんて… ビックリじゃねぇ〜〜」


物静かな女の子「いちごさんの この凶悪なまでの愛らしさをもってすれば、これくらいは当然ですわ〜〜♪」ウフフッ


快活な長女さん「アンタ、そんなキャラだったっけ……?」





ちゃちゃのん「でも、何じゃか 申しわけないんじゃ……」ボソッ


快活な長女さん「ん―――?」



ちゃちゃのん「これも全部、みんなで頑張った結果なのに―――ちゃちゃのん一人が、こんなに注目されてもうて…」


陽気な妹ちゃん「ヒヒヒ……ッ」


しっかりものの妹ちゃん「まったく、もぅ…」フゥッ


物静かな女の子「やれやれ、ですわね……」クスッ




快活な長女さん「ええか… これはアンタだから、注目されてんの―――」



快活な長女さん「アイドル目指してんでしょ、だったらもっと自分に自信持ちなさいっての!!」ポフッ


ちゃちゃのん「う、うん―――///」ドキドキ



348 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/28(月) 18:17:05.28 ID:WxbcNbUq0




快活な長女さん「アタシらも三年で、今年が最後の全国じゃのぅ…」ゴクッ


物静かな女の子「フフッ、そうですわね〜〜」


陽気な妹ちゃん「ボク、頑張っちゃうよ〜〜〜!!」


しっかりものの妹ちゃん「今年はきっと、去年よりもたくさん注目される……」ドキドキ




ちゃちゃのん「この鹿老渡高校を全国にアピールする、最大のチャンスじゃね―――」グッ







婆っちゃたちの、思い出いっぱい詰まった鹿老渡高校。



その数年後の廃校は、ちゃちゃのんたちが入学する前から既に決まっていた。



それでも ちゃちゃのんたちの頑張りで、何かが変えられるかもしれんと―――



そう思いたかったんじゃ。





そう思って――――あの時、ちゃちゃのんたちは戦っとったんじゃ。




349 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/28(月) 18:19:11.46 ID:WxbcNbUq0




一回戦の相手は――



岐阜の斐太商業―――



石川の鞍月高校――――



そして南大阪からは、あの全国屈指の名門・姫松高校――――





ちゃちゃのん「ちゃちゃのんの相手は、あの不動のエース言われとる愛宕 洋榎さんじゃな―――」



ちゃちゃのん「それでも、ちゃちゃのんたちは… こんなトコで負けるわけにゃぁ、いかんのじゃ――――」





「まもなくインターハイ1回戦―――」



「第7試合から、第9試合が始まります!!」


ワァァァァッ…



350 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/29(火) 18:21:40.42 ID:eJBrp6KN0





ザザザーーーン…


洋榎「うーみーーーー!!」イヤッホーイ

胡桃「何気にこのメンツで海来るのって、初めてだね〜」

塞「あれ、沖縄に行ったんじゃ…?」

哩「その話はやめろ…」


ちゃちゃのん「みんな、何じゃか久しぶりじゃよね…」エヘヘッ

胡桃「ちゃちゃちゃん あれから結構経つけど、体調の方はもぅスッカリ大丈夫なの?」

ちゃちゃのん「うん、元気 元気♪ 最近はまたゼミと仕事漬けの毎日じゃよ〜〜」

塞「もぅ、ちゃんと休養とらなきゃ駄目だよー」



洋榎「それんしても 海なんて久しぶりやから、一人で水着コーナー入り浸ってもーたわ」カッカッカ

絹恵「言うてくれたら、付き合ったのに」バイーンッ

洋榎「絹はいっぱい持っとるやん…」ストーン


ちゃちゃのん「ちゃちゃのんも、いっぱい持っちょるよ〜〜」ポヨンポヨン

漫「私も買いましたよ。 去年のでいいかと思ったけど、胸きつかったんでー」ドカーンッ

洋榎「………」ゲシゲシ

漫「あたー!?」

漫「ちょ、小キック連発 やめて下さいよ!!」

胡桃「……」ゲシゲシ

漫「先生まで!?」

胡桃「私なんてインハイ後の夏の水着、普通に着れるのに!!」

塞(胡桃なら、きっと小学生の頃のでも…)


351 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/29(火) 18:30:15.49 ID:eJBrp6KN0




洋榎「ま〜 何にせよ、今日は泳ぐでーー!!」


一同「「おーーーーーっ!!」」





  ク  ラ  ゲ  っ  !  !





洋榎「ちょ、一面クラゲやないかぃ!!」

ちゃちゃのん「ほわわっ、ふあふあじゃ〜〜〜」

哩「まぁ、もう9月だしな…」

セーラ「試験終わった8月頭は、サークル組は合宿やらで忙しかってん。 しゃーなしやな…」カカッ

ちゃちゃのん「まっとうなサークル所属のせーちゃんや絹ちゃんは、8月半ばは大会じゃったしのぅ…」



塞「下旬は私達が岩手に帰ってたもんねぇ〜」

洋榎「くそっ! 岩手についてきゃ良かったで!!」

塞「いや、連れてかないから―――」

胡桃「恥かかされちゃう…///」


セーラ「自分らの故郷ってアレなんやろ、行ったが最後 もぅ戻れない的な―――」

塞「どこのサイレントヒルよ…」

352 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/29(火) 18:32:07.58 ID:eJBrp6KN0



ちゃちゃのん「ちゃちゃのんはせーちゃんの水着見て、ちょっと安心したんじゃ…」

セーラ「男モノかもしれん、思ったんかー?」カカッ

ちゃちゃのん「ま、ま〜の…」


セーラ「俺はそうしよ思ったんやけど、浩子に張っ倒されたわ〜」カッカッカ

塞「当たり前でしょ、アンタ捕まるからね……」



セーラ「永水の副将とか、龍門渕のマジシャンのはええんか?」

塞「あ、あれはま〜 何て言うの… この国って、何故かあ〜いう人種の治外法権が認められてる的なとこあるし―――)ボソ

ちゃちゃのん「あ〜いう人種……?」

哩「合法ロリ、言いたいんちゃうか?」

塞「そんなストレートに…」



洋榎「じゃ〜 いいんちょなら、全然イケるやん!!」

胡桃「いや、別にしたくないから!?」

セーラ「せやねん、何で自分だけ そないケレン味ないかっこしとるんや?」ダメヤン

胡桃「いや、別に私 ノーマルだし。 ていうか、何その そうじゃなきゃイケない的な反応―――!?」


353 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/29(火) 18:34:08.91 ID:eJBrp6KN0



胡桃「ま、泳げないなら 砂場で遊べばいいか…」ペタペタ

ちゃちゃのん「胡桃ちゃん―――」

胡桃「何よ…?」ペタペタ

ちゃちゃのん「お遊戯しちょるみたいで、可愛いんじゃ〜〜!!」ダキツキー


胡桃「うっさいわよ、このバカ!!」ゲシゲシ





セーラ「ほんじゃ、バレーでもしようや、バレー!!」ポーーン

塞「トヨネがいたら負けないんだけどねぇ」

絹恵「運動なら任せてー」ブンブンッ

セーラ「あと一人誰かーー!!」

塞「胡桃、組まない?」

胡桃「私にバレーを勧めるとは、塞も随分と非道になったね…」チンマリ

塞「わ、悪かったわよ……」



胡桃「哩ちゃん、入ったら?」

哩「ん―――?」

胡桃「ボールびしばし当たるし、好きそうだから…」

哩「ちょっとばかし、私に対するイメージの修正を図ろうか―――」

胡桃「違うの?」

哩「違う…」


哩「大体、残り一人しか入れないのに、恋人をおいていくわけないだろう…」ギュッ

胡桃「公言してから、腹立つくらいイチャつくようになったよね…」シネバイイノニ…


354 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/29(火) 18:37:10.52 ID:eJBrp6KN0



セーラ「足引っ張ったら、おでこに乳の文字を―――」

漫「末原先輩方式ですか!?」

セーラ「焼印するで〜〜」カカッ

漫「違う、もっと禍々しい別の何か方式やった!?」コッワ



絹恵「私のキャッチング技術、見とってな〜」グッグッ

塞「ちゃんと、弾き返してね!?」

絹恵「私のキャッチング技術―――」

塞「キャッチしたらダメだからね!?」



洋榎「あー くっそ、出遅れたわ〜〜」

胡桃「審判でもやる?」

洋榎「ルール分からん…」

ちゃちゃのん「あ、じゃあ ちゃちゃのんが審判やるんじゃ…」トトッ



ちゃちゃのん「これでもアイドルビーチバレー大会で、今年は2回戦まで進出したんじゃよ!!」フフン

洋榎「微妙やなー」

胡桃「パッとしないね…」

ちゃちゃのん「えぇっ、チハちゃんと頑張って、去年よりも成績上がったんじゃよ!?」ガーーン

哩(インハイじゃ宮守は、そのパッとしない成績だったような…)

355 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/29(火) 18:39:29.86 ID:eJBrp6KN0



ホイミ ベホイミ ベホマラー…


洋榎「しっかし、見事にクラゲまみれやなー」

胡桃「泳ぐのは無理そうだね…」


洋榎「バイトとデビ子は?」

胡桃「あっちで砂風呂してるよ」

洋榎「お、楽しそうやなー」


胡桃「……まあ、楽しそうではあったよ」

胡桃「凄い愉悦の目で、姫ちゃんがじわじわと哩ちゃん埋めてたし…」

洋榎「ふーん。 ウチもどっさりかけたろかな」

胡桃「やめた方がいいんじゃないかなあ、完全に二人の世界だったし」





洋榎「とりあえず、海に来たからには泳がんとな!!」

洋榎「クッローーーーール!」ザババババ

胡桃「砂の上を泳いでるっ!?」


洋榎「このへん柔らかいから、軽く潜れるでー!」ザババババ



バチコーーーン!!

ブクブクブク…


セーラ「すまんすまん、ボールこっち飛んでこーへんかった?」タタッ

胡桃「飛んできて、代わりにスイマーが吹っ飛んだ…」

セーラ「は―――?」


356 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/29(火) 18:41:34.02 ID:eJBrp6KN0



塞「ボール見つかった?」

セーラ「何や、洋榎のヤツに直撃したらしいわ」カッカッカ

漫「もぅ、何マーズアタックかましとるんですか〜〜」



セーラ「ヨッシャ、今度こそ決めたるでーー!!」

塞「次こそ塞ぐ!!」

絹恵「ペナルティーエリア外からのシュートなら、私に任したって下さい!!」

塞「だからすぐキャッチングしようとしないの!?」


ちゃちゃのん(ヒロちゃん、大丈夫だったんじゃろか―――?)



バッチーーーンッ!!

ドギュルルルーーーーーッ!!

ちゃちゃのん「うっひゃーー!?」ビックゥッ


塞「ちゃちゃのん、ボンヤリしてると危ないよ〜」

ちゃちゃのん「あっ、うん。 ゴメンの…」

ちゃちゃのん「…………」



ちゃちゃのん「えっと、今ので点数、忘れてまったんじゃ…」タハハッ

塞「え〜〜〜」

セーラ「ま〜 そんなん、だいたいでええねん!!」カカッ



漫「あ、今度はウチが審判しますから、ちゃちゃさんも参加したって下さいよ」

ちゃちゃのん「あ、うん…」ドキドキ

セーラ「いちごか、ま〜 丁度ええハンデやな」

ちゃちゃのん「いきなり おみそ扱いされたんじゃ!?」

357 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/29(火) 18:49:18.76 ID:eJBrp6KN0



セーラ「パスやでー」ポーーン

ちゃちゃのん「よし、ちゃちゃのんアタックじゃ!!」タタッ


ズルッ ドベッ

ちゃちゃのん「ふぎゃっ!?」

セーラ「ギャハハ、何で自分 ワカメで転けとんねん!! やっぱ、いちごはウンチやなーー」ゲラゲラ

ちゃちゃのん「うぅ〜 その言い方はヤメるんじゃ〜〜!!」





絹恵「臼沢さん!!」

塞「よっし!!」タタッ


セーラ「いちご、ブロックやで!!」

ちゃちゃのん「う、うん…」ピョンコ


バンッ

ちゃちゃのん「うぎゃっ!?」

セーラ「おぉっ、ナイス顔面ブロック!!」

絹恵「石崎さん、ナイスガッツやで〜〜!!」



塞「えと、ちゃちゃのん ゴメン…」



漫「水挿すようですけど、点数入ってますからね……」


358 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/29(火) 19:08:04.43 ID:eJBrp6KN0



セーラ「サーブと見せかけて〜 ドッチボールやーー!!」ズギューーン


バチーンッ

セーラ「なんやて!?」



絹恵「この程度のボール、片手で充分やで〜〜」シュゥゥゥゥ…

塞「絹ちゃん、凄っ!! 何か、手から煙とか出てるよ!?」



絹恵「ウチ渾身のタイガーラブショット、くらえーーーッ!!」グワッ



ドッギャーーーーン!!


塞「いや、蹴っちゃ駄目でしょ!?」






漫「―――今ので、ボール粉砕されたでーーー」


ちゃちゃのん「もぅ、メチャクチャじゃ…」




セーラ「ボールのうなってもぅたし、何や遊べそうなもんでも探してくるか…」


漫「あ、ほんならウチらも行きますよ〜〜」


359 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/30(水) 02:55:08.61 ID:FV9p5Qlh0




ザザザーーン


ちゃちゃのん(あっちにおるんは、ヒロちゃんと胡桃ちゃん―――?)


塞「あの二人、あっちで何を話してるんだろうね…」

ちゃちゃのん「あっ、塞ちゃん…」




ちゃちゃのん「そういえば塞ちゃんと胡桃ちゃん、しばらく岩手に帰っちょったんじゃよね…」

塞「うん、お正月にも帰省はしてるけど、久しぶりに宮守のみんなと色々お喋りした……」



塞「シロのことは、前にもちょっと話したっけ?」

ちゃちゃのん「マヨヒガの白望(しろみ)さん? 確か東京の麻雀名門校 龍門谷大学で、麻雀部の部長さん頑張ちょるって―――」



塞「うん、そうだったんだけど… シロのヤツ―――」

塞「今年の春先に未成年部員の飲酒事件があって、部は夏までの活動休止。 そのことに責任感じて、引責退部したんだって…」


ちゃちゃのん「それは、白望さん 落ち込んどったじゃろうね…」


360 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/30(水) 02:59:12.36 ID:FV9p5Qlh0



塞「うん… 確かに暫くは、それで落ち込んでたらしいんだけど―――」


塞「今年新しく入った一年の子の頑張りに触発されたのか、最近はだいぶ元気とり戻したって…」

ちゃちゃのん「そっかぁ、それは良かったんじゃ…♪」




塞「ま… 相変わらずのものぐさで『ダルぃ』とか言って、ロクにお風呂にも入らないから―――」

塞「周囲から『シラミ』とか、アダ名付けられちゃってるみたいなんだけど…」フフッ

ちゃちゃのん「女の子にシラミっちゅうアダ名は、あんまりなんじゃ…」



塞「あとこの前 大学の友達との旅行で、フランスにあるギュスターヴ・モローの美術館に行って―――」

塞「モローの螺旋階段とか、何とかっていう多翼祭壇画を見られたとか―――珍しく、ちょっと興奮気味に語ってたなぁ」クスッ


ちゃちゃのん「白望さん、芸術学部ゆーとったもんね。 ちゃちゃのんも綺麗な絵画とか、そういうのは大好きじゃよ♪」




塞「本当は私たちと一緒にって 関西方面の芸術科も受けたんだけど、こっちの方は落ちちゃったのよね」

ちゃちゃのん「ほんじゃぁ、もしかしたら白望さんが ここにおったかもしれんのじゃね…」


塞「まぁ、シロはシロで今の大学生活 楽しくやってるみたいだし、こういうのを縁って言うんでしょうね……」

ちゃちゃのん「うん、そうかもしれんのぅ―――」



塞「エイスリンは相変わらずちょっと不思議ちゃんだったけど、日本語の方は随分上手になってたなぁ―――」


361 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/30(水) 03:01:17.40 ID:FV9p5Qlh0




ザザザーーーン


塞「―――熊倉先生 病気療養中で、あんまり良くないみたいなんだ…」


ちゃちゃのん「―――そっかぁ、早く元気になってくれるとええのぅ…」


塞「あっちに残ったトヨネ一人に任せちゃって、何だか少し申しわけないって思っちゃった…」




塞「私たちもそろそろ本気で就活のこと考え始めなきゃいけない時期だし、大学4年間なんて本当にあっという間だよね…」


ちゃちゃのん「うん、ホンにあっちゅう間じゃのぅ…」




塞「就職のこととか 考えてなかったわけじゃないけど、大学卒業したら 一度あっちに帰ろっかなぁ……」


ちゃちゃのん「…………」



塞「胡桃は―――あの子は卒業した後のこと、どう考えてんだろ……」


362 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/30(水) 03:04:44.44 ID:FV9p5Qlh0



ちゃちゃのん「胡桃ちゃんのトコにゃぁ、今もよぅ泊まっちょるの―――?」


塞「ん、うん… 最近はゼミも忙しいし、なかなか入り浸りってわけにもいかないんだけど―――」



塞「掃除とか洗濯の手伝いしたり、一緒にご飯食べたり、一緒に映画を見たりはしてるかな…」


ちゃちゃのん「相変わらず、仲良しさんじゃのぅ…」




塞「まぁ、そうしてる時間が私にとっては自然っていうか… 落ち着く時間だから……」



塞「胡桃といるとさ、何か 明日も頑張ろーーって気にさせてくれるっていうの? 」


塞「まぁ、そんな感じ―――」タハハ


ちゃちゃのん「ホンに、仲良しさんじゃね―――」クスッ



363 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/30(水) 03:08:45.21 ID:FV9p5Qlh0




塞「でも、胡桃に恋人とか出来たら―――きっと、そういう時間もなくなるんだろうね…」


ちゃちゃのん「それは、寂しいのぅ…」



塞「ま… それはそうなんだけど…」


塞「いくら姉妹みたいなもんでも、いつかはそういう日が来るって 分かってるからさ……」




塞「その時は、ちゃんとお祝いするよ――――」



ちゃちゃのん「塞ちゃん……」






塞「そういうちゃちゃのんは、たまには広島に帰ってるの?」


ちゃちゃのん「えと、仕事も忙しいし… 最近はなかなか帰れとらんのぅ―――」アセッ



塞「――――そっか」


塞「でも帰るとこあるんなら、たまには帰って 元気な顔の一つでも見せてあげなきゃ駄目だよ」


ちゃちゃのん「う、うん……」





ザザザーーーン



呉に住んどるお父さんとお母さんとは良好じゃけど…



何だか昔のお父さんに申しわけない気がして、ちょっと疎遠になりがちじゃった。




鹿老渡高校のみんなは、あの後も変わらず優しかったけど…



卒業以降、ちゃちゃのんは何となくみんなと会えずにおった――――



364 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/30(水) 19:21:39.71 ID:FV9p5Qlh0



ザザザーーーン


洋榎「と、いうわけで、バーベキューやで!!」

塞「海辺のバーベキューか、なかなか素敵かもね」

セーラ「温泉やなかったけど、風呂も気持ち良かったでー!」フハァーー


洋榎「旅館の人のご好意で、焼き台借りられたでー!!」

哩「ちなみに食材は持参するルールだそうだ」

胡桃「え!?」


塞「誰か何か持ってきた!?」

ちゃちゃのん「よ、酔い止めのキャンディくらいしか……」アゥ

セーラ「フリスクあるでー」シャッシャッ

胡桃(あ、これはダメなやつだ…)



絹恵「バイク借りて、私 スーパー行ってこようか?」

塞「ここ来る途中にスーパー見かけた?」

絹恵「……」




洋榎「くらげって食えるんかな?」

胡桃「!?」

哩「まだ調理した経験はないな―――」

胡桃「まさか、食べる気!?」

ちゃちゃのん「目が本気(マジ)じゃ!?」

セーラ「うにくらげとか中華くらげはイケルんやし、何とかなるんちゃう?」

ちゃちゃのん「やめといた方が、ええと思うんじゃが…」



哩「安心しろ、毒見はかって出てやる」

洋榎「当然やろ」

胡桃(それさえもプレイなのかと思えてくる…)


365 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/30(水) 19:24:15.90 ID:FV9p5Qlh0



洋榎「そうや、この後 定番の肝試しでもせーへん?」

胡桃「え〜〜〜」

セーラ「えーでー そんじゃ、旅館の人にそれっぽい場所でも聞いとくか?」

塞「ていうか、もぅお盆シーズンでもないよね」



カタカタ カタカタ

絹恵「いちごさんが、そこで思いっきり震えとんでーー」

漫「ちゃちゃさんは相変わらずのヘタレっぷりやな〜〜」ケラケラ




ジュー ジュー ジュー

哩「調理、完了ばい―――」フゥ

洋榎「おっ、何や焼きゼリーみたいでイケそうなんちゃう?」

セーラ「ほな哩先生、毒見の方は頼んまっせ〜〜♪」カッカッカ




ぷるぷるぷる〜

哩「――――」ゴクリ

塞「やっぱやめといた方が良いんじゃ?」





姫子「はぁ、何だかお腹すいてきたばい…」ボソ


哩「覚悟完了―――!!」クワッ



ガツガツ ごっくん


哩「―――完・食!!」フハァ




セーラ「おぉっ、流石は哩先生!! そこにシビレる―――」


塞「―――憧れはしないわよ…」



366 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/30(水) 19:29:56.71 ID:FV9p5Qlh0



洋榎「とりあえず即効性の何かはなさそうやし、ウチらも食うでーー!!」

セーラ「お… コリコリ食感で、なかなかイケるんとちゃう!?」クチャクチャ


胡桃「はぁ、仕方ないか… とりあえずお醤油でもつけて―――」チュル…

塞「まぁ、胡桃たちも食べるんなら……」



ちゃちゃのん「うぅ……」

洋榎「何やちゃちゃ、自分もしっかり味わっといた方がええで!!」カッカッカ


ちゃちゃのん「えとっ、ちゃちゃのんは… ダイエットしとるし、別にええんじゃ…」ビクビク

洋榎「まぁ、モノは試しやで。 こんにゃくゼリー思って食っとけて〜〜♪」ズズィッ

セーラ「そうやで、人生は何ごとも挑戦やで〜〜〜♪」ホレホレッ


ちゃちゃのん「―――うぅ〜〜 や、ヤメるんじゃ〜〜〜!?」






その後 みんなで体調崩して、ちゃちゃのんたちの一泊二日の旅行は終わったんじゃ――――







哩「私の調理は 完璧だったはずばい―――」


胡桃「あ、そこは自信持ってるんだ…」



367 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/30(水) 21:09:11.83 ID:FV9p5Qlh0




瑞原 はやりの〜〜〜♪



サラマンダーより ずっとはや〜〜〜〜い☆





♪〜 チャチャチャチャッチャッチャ チャチャチャチャーーーーン☆



はやり「はーややー!! 良い子のみんなーー! こ〜〜んばんはーーーっ!! みんなのアイドル☆瑞原はやりだよ〜〜〜♪」キュピーーン

ハッヤリーーン!! ハヤーーッ!! ハヤヤーーッ!! ハイノオネーーサーーン!!


はやり「今日は公開生放送ということで〜 とっても素敵なゲストさんをお呼びしていま〜〜すっ☆」ダレダロー

ダレダローー?


はやり「ヒントはね〜 最近 関西の方で地味〜〜に人気を上げてきている、若手のアイドルさんなんだって〜〜」ダレカナーー

ダレカナーー?


はやり「あっ… でも17歳のはやりよりは、ちょっぴりお姉ちゃんなんだけどね〜〜〜」テヘッ

ワハハハハ… ムリスンナーーー


はやり「今、(31)とか(39)とか言ったのは誰かな〜〜 そんな悪い子は〜 撲殺しちゃう〜〜ぞっ☆」ピピルピルピルピピルピーー

ワハハハハハハハ


はやり「はやや〜〜 そろそろゲストさんが来る頃だと思うんだけど、どうしたのかな〜〜〜?」キョロキョロ

タムラウシローー!!




ちゃちゃのん「―――ど、どうも、初めまして… ちゃ、ちゃちゃのんなんじゃ…」ドギマギ

チャッチャノーーン!! イチゴチャーーン!! アイシテマスワーーー!!




瑞原 はやり(17)
368 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/30(水) 21:18:50.48 ID:FV9p5Qlh0



はやり「は〜〜い、というわけで〜〜♪ 今日のゲストさんは、はやりと同じアイドル雀士としても知られる 佐々野いちごちゃんだよ〜〜☆」パンパカパーーン


ちゃちゃのん「きょ、今日は、よ、ヨロシク、お願いしましゅ!!」カチコチ


はやり「あっれれ〜〜? いちごちゃん、もしかしてスッゴい緊張してる〜〜☆」



ちゃちゃのん「ひゃい!? あ、憧れの大先輩、牌のお姉さんのはやりさんの番組に出して貰えるなんて、思っても見なかったけぇ…」アセアセッ

チャチャノン ガンバッテーー


はやり「いちごちゃんのその飾らない広島弁って、とっても可愛いよね〜〜♪」


ちゃちゃのん「そ、そうじゃろか…? じゃったら、ええんじゃが……///」テレテレ




はやり「いちごちゃんは高校生の時に、インハイにも出たくらい麻雀が得意だけど―――」


はやり「将来的にはプロだったり、牌のお姉さんを目指す気はあるのかな〜〜?」


ちゃちゃのん「ふぇっ!? ちゃちゃのんそこまで麻雀強いわけでもないし、牌のお姉さんなんておそれ多いんじゃ……」アワワ…


はやり「うん♪ それはそうかもしれないね〜〜〜〜☆」


ちゃちゃのん「あぅっ!?」

ワハハハ ハヤリンキビシーー


369 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/30(水) 21:29:32.74 ID:FV9p5Qlh0



はやり「さてさて、それではお次は〜 いちごちゃんへの今日の はややーな質問コーナーだよ〜〜〜☆」キャルルーーン

ちゃちゃのん「は、はい!! ちゃちゃのん、頑張るけぇ!!」ドキドキ



はやり「ラジオの前のみんなも、いちごちゃんと一緒に想像力を働かせてね〜〜〜♪」ジャンッ




はやり「今 いちごちゃんは、地上数十メートルのビルとビルの間に架けられた鉄骨を 不安定な状態で渡っています―――」

ちゃちゃのん「ほぇ……?」



はやり「鉄骨の上、前を歩む知人の石田さんを突き落とさなければ―――いちごちゃんは後ろから来る他の人に突き落とされてしまいます…」


はやり「さ〜 こんな時、いちごちゃんなら どうしますか〜〜〜☆」ハヤヤーー


チッチッチッチッ…

ちゃちゃのん「―――えっと、何じゃろ この質問…? そんなん、分からんよぅ……」アワワッ


はやり「はやや〜 時間切れ〜 哀れ、いちごちゃんは奈落の底へと突き落とされてしまいました〜〜〜」ブッブーー


ちゃちゃのん「えっ―――!?」ガーーン

チャチャノン ドンマーーイ


370 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/30(水) 21:31:19.80 ID:FV9p5Qlh0



はやり「それでは〜 いちごちゃんが、もしどちらかとお付き合いするとしたら―――」


はやり「アカギ似のクロサワと、クロサワ似のアカギ―――どちらとお付き合いしますか〜〜〜☆」ハヤヤーー


チッチッチッチッ…

ちゃちゃのん「えっと、誰じゃ―――?」



はやり「はやや〜 時間切れだよ〜〜〜」ブッブーー


はやり「もぅ〜 いちごちゃん、全然遅いよ〜〜 そんなんじゃ、はやりみたいな素敵なアイドルにはなれないぞ〜〜☆」


ちゃちゃのん「はぅぅっ―――!?」






♪〜 チャチャチャチャッチャッチャ チャチャチャチャーーーーン☆


ザザ… ザザザ……



洋榎「―――何やねん、この番組…」キッツ…

哩「はやりんはあ〜見えて、泥臭いギャンブル漫画とか大好きやからな…」キュッキュッ


胡桃「これが噂に聞く、芸能界の新人いびりってヤツかな」

哩「いや、ラジオのはやりんは大体こんなやで。 全く悪気とかはないはずばい…」

哩「弄られて輝くタイプは徹底的に弄り倒す、それがプロのMCいうもんやろ…」キュッキュッ


胡桃「あれ、もしかしてファン?」

哩「嫌いじゃないばい……///」キュッキュッ


洋榎「あ、おかわり…」ゴトッ

胡桃「あんた、まだ飲むの…」


371 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/30(水) 21:34:13.56 ID:FV9p5Qlh0




はやり「いちごちゃん、今日はどうもお疲れさま〜〜♪」

ちゃちゃのん「は、はやりさん。 きょ、今日はどうもありがとうございました!!」ペコリン




はやり「いちごちゃん、何だか凄く緊張してたみたいだけど… 大丈夫だった?」

ちゃちゃのん「うぅ、色々とご迷惑おかけしてしまって、本当にお恥ずかしい限りなんじゃ…」


はやり「あはは、はやりは別に良いよ♪ ファンの子たちも楽しんでくれてたし、きっと今日はアレが正解だったんだよっ☆」

ちゃちゃのん「えと……」



はやり「アイドルってファンの子たちに楽しんで貰ったり、勇気付けてあげたり、夢を見て貰うための存在でしょー」

はやり「そのためのやり方っていうのも、当然 一つじゃないと思うんだ―――」


はやり「はやりたちを笑ってもらうことで、会場のみんなが元気になってくれるんなら それもきっと正解なんだよ〜〜」




はやり「だからいちごちゃんも、恥ずかしいとか、自分には出来ないなんて、怖がってちゃ駄目だよっ☆」

ちゃちゃのん「は、はい!! ちゃちゃのんも、もっともっと頑張るんじゃ!!」



はやり「うん、うん、その調子♪ やっぱり素直な子って素敵だよね―――」


はやり「お胸のサイズも、はやりはいちごちゃんくらいがアイドルとして最高だと思うんだ〜〜☆」

ちゃちゃのん「えぇっ!? ちゃちゃのんは、はやりさんが羨ましいんじゃ!?」



はやり「でも無理はしちゃダメだぞ☆ いちごちゃん、この前 撮影の時に倒れたっていうじゃない」

ちゃちゃのん「は、はぃ……」


はやり「現場の人たちに迷惑かけちゃうのもそうだけど、やっぱりファンの子たちを心配させちゃいけないからね〜〜」



はやり「アイドルは―――常にアイドルたれってねっ☆」テヘッ



372 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/30(水) 21:38:57.21 ID:FV9p5Qlh0




ピリリリリリリ……

オオサカユキノ デンシャガ ハッシャイタシマス……




ちゃちゃのん(やっぱりはやりさんはとっても優しくて素敵な、凄いアイドルさんじゃったのぅ…)


ちゃちゃのん(自分がどう見られたいかとかより、ファンの子たちに楽しんで貰うことを 何よりも大切に思っちょるんじゃ…)


ちゃちゃのん(きっとはやりさんは、大切な人たちの笑顔のためにアイドルしとるんじゃろうね―――)


ちゃちゃのん(そういうトコ、やっぱりあの人に似とるんじゃ―――)





ブブッ ブブブーーー


ちゃちゃのん(哩ちゃんからメール…?)


ちゃちゃのん(クリスマスの前後に、みんなで集まってパーティーするんか…)


ちゃちゃのん(そういえば、最近 みんなと会えとらんのぅ―――)


ちゃちゃのん(せーちゃんは、今度の大会でいよいよ引退じゃな…)





ちゃちゃのん(ヒロちゃんと胡桃ちゃん、二人はクリスマスの夜 どうするんじゃろぅ……)




ちゃちゃのん(うぅん、ちゃちゃのんにゃぁ――――関係ないことじゃろ……)フルフル



373 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 01:15:06.17 ID:nkC/WCO50




ワイワイ ガヤガヤ


胡桃「わぁ、凄い人」キョロキョロ

洋榎「そら、関西リーグ優勝かかった大一番やからなぁ」

塞「優勝か準優勝で、東西頂上決戦だっけ?」

ちゃちゃのん「今年勝ったら、ウチは12年ぶりなんじゃって〜〜」

漫「詳しいですね」


ちゃちゃのん「もらったパンフに書いとったんじゃ〜〜」ホレホレ

漫「いいなぁ、皆さんはバス付きの応援ツアーですもんねぇ」

哩「こっちは自費での応援だからな…」

絹恵「はは… まぁ、私たちは学校ちゃいますしね」


漫「ていうか、ウチのとこはそもそも今日まで残れなかったし…」

漫「ヒメちゃんトコも今日出とるそうですけど、多分勝てないくらいの差がついてますね…」



洋榎「絹ンとこは、まだ十分圏内やろ?」

絹恵「ええよー、どうせ私はガッコじゃ麻雀してへんし。 知り合いも麻雀部にはおらんし―――」

絹恵「こっち側にいるのもバレへんやろうし、今日はこっちで応援するわ」

絹恵「知らない同じ大学の人より、セーラさん応援したいしなぁ!!」



ちゃちゃのん(さっき憩ちゃんトコ行ったけど、部の人と打合せしとって話せんかったな…)

ちゃちゃのん(今日 応援するんはせーちゃんじゃけど、また後で声でも掛けに行こうかの―――)



374 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 01:16:59.23 ID:nkC/WCO50




洋榎「お!」

胡桃「あ!?」

絹恵「!?」

漫「これっ……!!」


ちゃちゃのん「おおおおおおお!!」

哩「……ふっ」

洋榎「か、勝ったああああああああああああああ!!」

胡桃「す、すごい! 関西リーグ優勝!!」

塞「これ、東西戦でもいけるかもね!!」


ワァァァァァーーーーーーーッ





洋榎「お、セーラの奴、インタビューあるみたいやで!!」

塞「部長じゃないみたいだけど、エースではあるしね」

胡桃「デジカメ デジカメ―――」

ちゃちゃのん「あ… ちゃちゃのん動画撮っとくけぇ、写真頼んでもええ?」

胡桃「オッケー、後で交換しようね!」


375 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 01:19:15.60 ID:nkC/WCO50



パシャ パシャ パシャッ


セーラ「えー…… 高校時代からの悲願で、一度も成せへんかった優勝―――」


セーラ「それをついに今日、成すことが出来ました!!」


胡桃「思ったより、まともに受け答え出来てるね…」





セーラ「見とるかぁ、浩子ーーー!! 俺はやったでーーーーー!!!」ブイッ キィィィーーーーン



塞「うわ、はっずーー///」


洋榎「でもええなぁ、ああやって叫べる相手がおるって…」

胡桃「……ほんとにねぇ」


哩「………」ニヤニヤ

胡桃「うわぁ、渾身の羨ましいだろって顔」グヌヌ

洋榎「ホンマ、殴りたいわーーー」



ちゃちゃのん(せーちゃん、とっても幸せそうじゃ。 ホンに良かったのぅ……)ホロリッ



376 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 01:21:50.16 ID:nkC/WCO50



洋榎「しっかしあれやな… セーラがガッツリ削ったから、今日試合ない ゆーこんとこが総合3位か」

洋榎「ちょっくら、祝辞述べてくるわー」

漫「あ、私も!!」



胡桃「そーいえば… 姫松の他の人とは、あんまり会ったことってないなぁ」

塞「まあ、どこまで行っても友達の友達って感じだろうしねぇ…」

胡桃「友達の友達でも、頻繁に会えたら友達にもなるんだけどね」

哩「じゃ〜 今度のクリスマスに連れてきてもらうか?」



哩「結構大きな会場も取れたし、友人連れて皆で集まって交流を広げりゃええ」

胡桃「おお、まともな提案」

哩「人脈は広げておきたいばいね」



哩「佐々野のヤツに頼めば知り合いのアイドルの子とか、もしかしたら連れてきてくれるかもしれんぞ…」

胡桃「あるかもだけど、ちゃちゃちゃん そういうの苦手そうだよね」


塞「そういえば、ちゃちゃのんもどっか行っちゃったね……?」


377 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 01:28:04.60 ID:nkC/WCO50



ちゃちゃのん「憩ちゃん、4年連続の東西戦進出 おめでとなんじゃ―――」

憩「あ、いちごちゃん。 うん、おおきにな〜〜♪」




ちゃちゃのん「さっき、ヒロちゃんおった?」

憩「あはは… 2位おめでとやで、2位おめでとやでって、2位を連呼されてまいましたわーー」ハハッ

ちゃちゃのん「そりゃまた… ゴメンの、ヒロちゃん無神経じゃけぇ…」


憩「まー 本当のことやさかい、別にええんやけどねーー」





憩「にしても、今日のセーラさんはホンマ強かったな〜〜」

ちゃちゃのん「うん、役も高いし、何かいつもより聴牌スピードまで速かったんじゃ…」



憩「きっとアレが、セーラさんの持つ強さの一つなんでしょうねー」

ちゃちゃのん「せーちゃんも能力者ってことじゃろか?」



憩「アレはウチらが呼ぶ、能力とはまた別のモンやろなーー」

ちゃちゃのん「それって―――?」





憩「確固たる信念を持つ者には、大事なところで牌が応えてくれる――――」




憩「強靭な意志のチカラがツキを呼ぶこともある、そういう古くからある精神論に近いものかもしれませんねー」



378 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 01:32:35.82 ID:nkC/WCO50



ちゃちゃのん「えと、それって能力とどう違うんじゃ?」


憩「ウチら能力者のチカラは場の流れや確率とか、ある限定的な事象に直接干渉する イビツなチカラや思います―――」



憩「対して、さっきセーラさんが見せたアレは―――」

憩「非能力者ゆえか、もっと自然的な…… 全体に対して働きかけるようなもん やったんやないやろか―――」




憩「患部を直接切ったりして治療する、外科的な西洋医学と―――」

憩「人の本来持つ自然治癒力により全体を治療する、調和型の東洋医学とでも言えば分かり易いんでしょうかねー?」


ちゃちゃのん「ほぇ〜〜 なるほどの〜〜〜」




憩「そしてそういうんは、一度ハマるとそうそう崩せるもんやないですから とっても怖いんですよーーぅ」

ちゃちゃのん「憩ちゃんでも、怖いって思うくらいなんじゃね〜〜」



憩「ま〜 ウチらの能力と違って、自由に発動出来たりするようなもんやないですけどねーー」

ちゃちゃのん「そうじゃのぅ… あまりそれに頼るわけにもイカンよね…」



379 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 01:35:11.67 ID:nkC/WCO50



憩「なんにせよ… これでセーラさんは、プロなり実業団なりに行けるでしょうねーー」


ちゃちゃのん「せーちゃん、卒業後も麻雀一本で行くゆーとったし 嬉しい限りじゃね♪」





憩「それで洋榎さんの方は、卒業後はどうするとか言うてましたか―――?」


ちゃちゃのん「ヒロちゃん―――たぶん、今もプロを目指しちょるはずじゃけど……」


憩「そうですか――――」


ちゃちゃのん「――――?」




ちゃちゃのん「ヒロちゃんが、どうかしたんじゃろか?」


憩「これはウチの勝手な想像なんやけどーー」





憩「――――たぶん今の洋榎さんじゃ、プロは無理やと思いますよーーぅ」



380 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 01:39:39.53 ID:nkC/WCO50




ちゃちゃのん「ヒロちゃんじゃ、プロにゃぁ なれん―――?」ドキッ


憩「ま〜 それがウチが彼女の周囲の人から、話を聞いてみての率直な感想ですよーーぅ」



憩「大学に進学してからの洋榎さん、麻雀部もヤメて友達との対局しかやっとらんのでしょう?」

ちゃちゃのん「そ、それはま〜 そうじゃけど… それは今のうちに麻雀以外の人生経験も、たくさん積んでおこう思ってのことみたいじゃし…」


ちゃちゃのん「それに今でもヒロちゃん、哩ちゃんやせーちゃん相手でも 決して引けは取っちょらんよ―――」


憩「それは麻雀ヤメてリザベーションも抜きの哩さんと、公式戦でないセーラさん相手での話ですよねー」




憩「仮に今日のセーラさんとやって、いちごちゃんは今の洋榎さんが勝てたと思いますかーー?」


ちゃちゃのん「そ、それは… たぶん、無理じゃろうね……」グッ





憩「洋榎さん、あの人は高校時代―――あまりに負けなさすぎましたかね…」


ちゃちゃのん「確かに… ヒロちゃんは全国大会でも、常にプラスの成績を残しちょったけぇ…」


憩「それが防御を得意とする彼女の強みでもあり、自信の源にもなっとるんやと思います……」



憩「麻雀いう競技は同卓の4人で点数を競い合うもんやけど、そこに持ち点共有の団体戦いう要素も加わると―――」

憩「必ずしも不安定な一位上がりよりも、安定した2位のプラス収支の方が大事になるいうこともありますよねーー」

ちゃちゃのん「それは、ま〜 そうじゃろうね…」




憩「一位上がりこそ出来んかったけど 今回も自分はプラスやし、負けたんは他の人がへこみ過ぎたせいやと―――」


憩「個人戦の時でも、彼女はそうやって納得してまうクセがあったんやないかなーー」


ちゃちゃのん「……確かに、そういうトコあるかもしれんのぅ」


381 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 01:44:00.63 ID:nkC/WCO50



憩「全国でも常にプラスの成績だった彼女のことを、一部の人たちは非能力者最強とか呼んどるようやけど―――」



憩「その自尊心やプライドゆえか… 彼女は知らず知らずのうちに―――」

憩「分の悪い能力者との対局を無難に流し、プラスで終えようとする傾向があります…」


憩「せやけど、プロの世界では誰もがトップクラス。 それら全てを無難に流すわけにはいきませんー」




憩「そもそも彼女本来の持ち味は、自由にして天衣無縫な 対局相手すらも惹きつけてまう楽しい麻雀―――」


憩「それが失われてしまっては、仮にプロになれたとしても―――今より上は目指せんやろなーー」

ちゃちゃのん「…………」




憩「もしかしたら大学で麻雀を続けんかったのも、今の自分のメッキを剥がされるのが 怖い思ったからかもしれませんよーぅ」クスッ

ちゃちゃのん「そ、そんな!? ヒロちゃんは、そんな弱い人じゃないんじゃ!!」



憩「ま〜 そうなのかもしれへんけど。 ともかく彼女は、高校時代に自分の中で一つの完成形を作ってしまったんやろな」




憩「彼女はまだ完成するには早すぎる―――ウチはそんだけの才能と可能性が、あの人にはある思ってますよって―――」フフッ


ちゃちゃのん「憩ちゃん……」



382 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 01:46:25.24 ID:nkC/WCO50



憩「せやから… 今の彼女が更に進化するには、そのプライドを一度粉みじんに粉砕する必要があるんやないかなーー?」ニッコリ


ちゃちゃのん「そ、それは―――」




憩「ただ流石のウチでも、洋榎さんクラスの人を一人で完膚無きまでにヘコますんは ちょっと厳しい思いますんで―――」


憩「そのうち洋榎さん潰すのに最適な人たち見つけて遊びに行きますよって、楽しみにしとって下さいねーー♪」アハハ


ちゃちゃのん「あはは……(憩ちゃんの笑顔は、時々 怖いんじゃ……)」フルフル





麻雀部員「憩さ〜ん、そろそろ集合の時間みたいですよ〜〜」


憩「あ、すぐ行きますよーーーぅ」






憩「あの人には――――セーラさんと一緒に、将来 非能力者の柱になって貰いたい思ってますからねーー」ボソッ




憩「それじゃ いちごちゃん、またなーー♪」バイバイ


ちゃちゃのん「あ、うん… またの―――」フリフリ




383 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 02:12:17.07 ID:nkC/WCO50




そして、あのクリスマスイブがやってきた―――




「むしろイブこそサークル単位のイベントはない」ゆーことで、結局 パーティーはイブの日になったらしい。


恋人とクリスマスの夜を過ごしたいっちゅう人への配慮からか、昼前に集合して夜の11時を解散時間にしたそうじゃ。





ワイワイ ガヤガヤ


フナQ「よっ、久しぶりやなぁ〜♪」ウィィーー

ちゃちゃのん「あ、浩子ちゃん。 お久しぶりじゃね…」


フナQ「なんや自分、相変わらずジュースなんか飲んで ショボくれたツラしとんな〜〜」ヒック

ちゃちゃのん「浩子ちゃんは、随分と楽しく呑んどるみたいじゃのぅ…」


フナQ「そらそうやろ、イブやでイブ!! 恋人たちと、星の鼓動は愛やで!!」



フナQ「ちなみにウチは、戸田尚伸センセの惑星(ほし)をつぐ者派やねん♪ 」カカッ


フナQ「岸センセの恐竜大紀行と、てんぎゃんなんかもええな〜〜〜」ウヒャヒャッ


ちゃちゃのん「ははは……」ナンノ ハナシジャロウ?



384 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 02:15:25.68 ID:nkC/WCO50



フナQ「て言うか、自分… この前のセーラからのウチへの愛の告白、ちゃんと聞いとったんやろな〜〜♪」エイドリアーーン!!


ちゃちゃのん「う、うん… とっても情熱的じゃったのぅ…」ハハッ




オーーイ ヒロコーーー ドコイッタンヤーーー?


フナQ「おっと、ダーリンからのお呼びが掛かったみたいや。 あの寂しがり屋さんが〜〜〜」カッカッカ


ちゃちゃのん「あ、浩子ちゃん。 そんじゃ、またの…」フリフリ


ちゃちゃのん「…………」




浩子ちゃんの他にも たくさんの友達の友達が集まり、会場はちょっとした社交パーティーみたいじゃ。



きっとこん中から、未来のプロ雀士になる人もたくさん出ることじゃろぅ。





そしてこの日は、ちゃちゃのんたちにとって―――



決して 忘れることの出来ん、思い出深い日となったんじゃ――――



385 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 22:30:17.36 ID:nkC/WCO50



ワイワイ ガヤガヤ


ちゃちゃのん「………美味しいんじゃ」ボソッ



哩ちゃんの手料理は暖かくて、とっても美味しかった。



きっと哩ちゃんは、素敵な料理人とお嫁さんになれるじゃろうね。



会場はとても盛り上がっとって、ベロベロに酔いつぶれて居眠りする人までいるようじゃ。



こういう会場の持つ熱気みたいなモンに当てられ、ちょっとのぼせそうになる。



ちゃちゃのん(外に出て、少し夜風にでも当たろうかの…)





ちゃちゃのん「ひゃ〜〜 今夜はいつにも増して、冷え込むのぅ…」ハァ


ちゃちゃのん「ありゃ、息が真っ白じゃ。 もしかしたら、雪でも降り出すかもしれんね…」



冬空の下の寒気が 上気した肌から熱を奪っていくのが感じられ、ええ気持ちじゃった。


386 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 22:32:44.65 ID:nkC/WCO50



ちゃちゃのん(…………)


ちゃちゃのん(何となく… あの場所に自分の居場所など、ないような気がしてしまう…)


ちゃちゃのん(ヒロちゃんたちと再会する以前によぅ感じとったこんな気持ちに、ちゃちゃのん 何で今更なっとるんじゃろぅ…?)




ちゃちゃのん「―――大阪の夜空は、やっぱり鹿老渡ほどロマンチックではないのぅ…」



そうやって暫くボンヤリしちょったら、視界の端によく知る二人がうつり込む。





あれは、ヒロちゃんと胡桃ちゃん。



いつになく真剣で、とても照れた様子のヒロちゃん。



前を歩くヒロちゃんと、静かにそれについていく 緊張した面持ちの胡桃ちゃん。




方向からして、二人は公園の方へと向かったみたいじゃ――――



387 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 22:36:58.01 ID:nkC/WCO50




ちゃちゃのん「ああ、今日が… そうなんじゃね―――」



何故じゃかそれを見ただけで、すんなりと納得出来てしまった。





ヒロちゃんと胡桃ちゃん。


最近も二人は、一緒にいることが多かったようじゃが…


まだ周囲からは、二人が正式に付き合い始めたゆー話は聞かされとらんかった。




もしかしたら、二人は既に―――とも思ったんじゃが…


塞ちゃんと哩ちゃんが、そのことに気付かんとも思えんし


何よりそうなった時に、ヒロちゃんたちが そのことをみんなに隠しておくとは思えんかった。


少なくとも、ちゃちゃのんたちの仲はそれくらいの信頼関係で成りたっとったはずじゃ。





ちゃちゃのん「これも… ちゃちゃのんの勝手な、希望的観測ゆーヤツなんじゃろか…」



そんな自嘲めいたことを思ってみたりもしたが、それはみんなに失礼じゃなと自己嫌悪する。






それに何となく、そうじゃないかと思っとったんじゃ。



だって、ちゃちゃのん―――今日一日、ずっとヒロちゃんのこと見とったけぇ……



388 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 22:39:50.89 ID:nkC/WCO50




今日は朝から、ヒロちゃんの様子がいつもと違って感じられた。



いつもこういう席では進んでお酒を口にするヒロちゃんが、今日はずっとソフトドリンクを飲んどった。


いつも通りハイテンションに振舞っとったけぇ、傍目で見ればそうと気付かんかもしれん。


ましてヒロちゃんは飲んでもあまり赤くならんけぇ、親しい者ほどいつも通り飲んどるって勘違いしてしまう。



それにカクテルかチューハイじゃ言わんばかりに、必要もないマドラーをソフトドリンク入ったコップにさしとった。


それでちゃちゃのんにも、何となく察しがついたんじゃ。




今日がヒロちゃんにとって、何か特別な日になるんじゃなって――――









――――恋人の魔法は… もぅ解けてしもぅたみたいじゃね…




ちゃちゃのん「ふふ、馬鹿じゃよね。 もぅあん時に、この気持ちも全部ウソにしたはずなのに…」



ちゃちゃのん「何でちゃちゃのん… 今でもヒロちゃんのこと、自然と目で追ったりしとるんじゃろぅ…」



ちゃちゃのん「はぁ… 未練がましいったらないんじゃ――――」



389 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 22:42:50.17 ID:nkC/WCO50




12月14日のちゃちゃのんの誕生日―――



今年はこのイブのパーティーもあったけぇ、特にみんなで何かしようゆー話もなかった。



去年の誕生日の夜は、ヒロちゃんにお祝いしてもらったんじゃったな。



たった一年前のことなのに、何だか随分と昔のことみたいに感じられるんじゃ。






あの頃は…



まだ何も考えずに仲良しの親友として、ヒロちゃんと接することが出来とった。



プレゼント品評会やったり、一緒にストロベリーミルクゆーカクテル飲んだり、一緒のお布団で寝たりもしたのぅ。



思い出すと恥ずかしさのあまり転げまわりたくなるような出来事も、今ではええ思い出じゃ。





ヒロちゃんたち、みんなと出会ってからの大学生活は―――ホンに楽しいことばかりじゃった。



390 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 22:45:54.13 ID:nkC/WCO50




ゴールデンウィークに、みんなと出かけた大阪観光。



ヒロちゃんと親友になれた、にゃんカフェバイトの夜。



初めてヒロちゃんちに行った七夕の夜に見た、大阪の星空。



ヒロちゃんと初めて二人でした、あの日のお買い物。



大晦日、みんなと一緒にお伊勢参りなんかもしたのぅ。



映画撮影やったり、ゲリラライブしたり、ドキドキがいっぱいじゃった。




あん時は きっとちゃちゃのんも、あのキラキラしたモンの中にいたんじゃよね。



何だか、ホンに随分と昔のことみたいに感じられるんじゃ――――



391 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 22:47:46.70 ID:nkC/WCO50




――正直 ウチはアンタの恋路とか、そういうのどうでもええねん



――ただ、何もせず… 何の答えも出さずに不戦敗とか、そういうのイっちゃんイヤやねん



――せやから、もし好きなヤツがおるんなら



――自分みたいのは無様な突撃かまして、盛大に玉砕でもしてまえばええねん……





ちゃちゃのん「アレ、なんでじゃろ……?」



不意に、いつの日だったか―――



浩子ちゃんに言われた言葉を思い出す。





ちゃちゃのんは―――



その答えゆーモンを―――ちゃんと出すことが出来たんじゃろか……?



392 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 22:49:58.14 ID:nkC/WCO50




――そんでヒロちゃん、この前の胡桃ちゃんとの誕生日デートは楽しかったん?


――ん、まぁ… そうやな、オモロかったで〜〜



――そうそう、この前ちゃちゃと行った雑貨屋。 いいんちょに教えたったら、気に入ったみたいやで!!





――何だか、ヒロちゃんデート慣れしちょるの…


――まぁ、いいんちょとは何度か来とるし……





――ほな、手、つないどこか〜


――こ、コドモ扱いしないでってばっ!!


――ウチら、こうやって手ぇ繋いでたら 恋人に見えたりするんやろか?





ちゃちゃのん「出せたとか、出せないじゃない―――」



ちゃちゃのん「答えなんて、もぅ 最初から出とったじゃろ――――」ギュッ



393 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 22:52:07.11 ID:nkC/WCO50



それにちゃちゃのんは―――



何もヒロちゃんを、自分のモノにしよう思ったわけじゃないんじゃ――――





――ちゃちゃのんは… 胡桃ちゃんのエスコート役は、てっきり塞ちゃんじゃと…



――就職のこととか 考えてなかったわけじゃないけど、大学卒業したら 一度あっちに帰ろっかなぁ……



――胡桃は―――あの子は卒業した後のこと、どう考えてんだろ……



――胡桃といるとさ、何か 明日も頑張ろーーって気にさせてくれるっていうの?



――でも、胡桃に恋人とか出来たら―――きっと、そういう時間もなくなるんだろうね…



――いくら姉妹みたいなもんでも、いつかはそういう日が来るって 分かってるからさ……



――その時は、ちゃんとお祝いするよ――――





そういえば、今日の塞ちゃんからは香水の香りがした。



普段 そういうのすることのない彼女じゃけぇ、少し気になっとった。


394 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 22:53:59.77 ID:nkC/WCO50




塞ちゃんにとっての胡桃ちゃん。



二人が親友として、姉妹として過ごしてきた時間。





塞ちゃんは―――



きっと胡桃ちゃんのことを―――




一人の女性として、愛しちょるんじゃと思う――――







塞ちゃんは今日、胡桃ちゃんに その想いを伝えるつもりだったんじゃろか―――?




それとも 今の二人の関係を壊さないため、このまま何もせんつもりなんじゃろか―――?



395 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 22:57:14.87 ID:nkC/WCO50




ちゃちゃのんは―――




ただ大切なモノ、守りたかったんじゃ―――




みんなと過ごした、あのキラキラとした時間を壊さないため―――








だからあの日、ウソをついた―――




みんなとの幸せな時間、失いたくなかったけぇ――――












「――――――ちゃちゃ」





その時、不意に私が耳にしたもの――――それは大好きだった、貴方の声。




396 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 23:00:24.84 ID:nkC/WCO50




ちゃちゃのん「――――ひ、ヒロちゃん………?」



初めは幻聴かとも思ったけど、確かに貴女はそこにいた。




洋榎「なんや自分、顔 真っ青やで!! それにメッチャ身体 冷えきっとるやないか!?」


ちゃちゃのん「そ、そうじゃろか……」




顔が真っ青―――?



身体が冷えきっちょる―――?



そう言われるまで、全く気が付きもしなかったんじゃ……





洋榎「すぐ何か買ってくるから、とりあえずウチのコートでも羽織って待っとけな」ファサッ


ちゃちゃのん「あ、うん……」




何でこの人はこんなトコにおって、私のことを心配してくれとるんじゃろう……?


397 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 23:04:25.23 ID:nkC/WCO50



タッタッタッタッ


洋榎「ほれ、あつあつの缶ジュースやで。 身体暖まるから、これでも飲んどき」ホイッ


ちゃちゃのん「あ、ありがと……」



カシュ カシュ…


洋榎「何や、指かじかんで開けられんのか? 相変わらず、すっとろいやっちゃな〜〜」カカッ


ちゃちゃのん「あぅ、そんなことは、ないんじゃ…///」



洋榎「ホレ、ウチが開けたるから ちょい寄越し」ヒョイ プシュッ


洋榎「ほいっ」


ちゃちゃのん「ん……」



コクコクッ

ちゃちゃのん「ふぁ… ぬくぬくじゃ…」


ちゃちゃのん「でも、おしるこて… ちょっと飲みにくいんじゃ…」


洋榎「ホットのいちごオレ、見つからんかったんや。 味覚がお子様の自分には、缶コーヒーは早いやろうしな♪」カッカッカ


ちゃちゃのん「むぅ… ミルクたっぷりなら、平気じゃもん!!」




最近、あまり二人きりで話してなかったけぇ―――



こういうヒロちゃんとの軽口が、何だかとても懐かしいものに感じられた。


398 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 23:07:11.57 ID:nkC/WCO50



洋榎「だいぶ落ち着いたみたいやな」


ちゃちゃのん「あ、このコート… ヒロちゃんだって、それじゃ寒いじゃろ…」


洋榎「え〜て、え〜て、もぅ少し貸しといたるわ」





洋榎「最近… こうやってサシで話す機会も、なかった気がするな…」


ちゃちゃのん「そ、そうじゃったかの…」



洋榎「……ゼミと仕事、相変わらず忙しいんか?」


ちゃちゃのん「う、うん……」コクリ






それは―――半分は本当で、半分はウソ。



ちゃちゃのん、ヒロちゃんのことを ずっと避けとった。




会えない時間はツラかったけど、会えばもっとツラくなると思ったけぇ――――



399 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 23:12:49.59 ID:nkC/WCO50



洋榎「………」


ちゃちゃのん「………」


洋榎「………」


ちゃちゃのん「ヒロちゃん……」


洋榎「ん………?」




ちゃちゃのん「……どうして、こんなところにおるん?」


洋榎「どうしてて、そりゃ―――」



洋榎「自分が会場のどこ探しても おらんかったから―――」





ちゃちゃのん「―――さっき、胡桃ちゃんと公園の方に行ったじゃろ…」


洋榎「あちゃ… アレ、見られとったんか…///」



洋榎「ちょっといいんちょと、大事な話しとってな……」


400 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 23:14:50.18 ID:nkC/WCO50




胡桃ちゃんと、大事な話―――



分かってはいても、ヒロちゃんの口から聞かされると やっぱりツラいのぅ―――





ちゃちゃのん「そ、そんなら―――」



ちゃちゃのん「いつまでもこんなトコにおらんで、早く戻らにゃぁ イカンじゃろ……」


洋榎「……………」





洋榎「今は、戻れん―――」


ちゃちゃのん「…………?」






そう言った、貴女は―――




何かを決意したような真剣な面持ちで、とつとつと言葉を紡ぎ始めた――――



401 :ケイ@3章「オレンジワルツ」 [saga]:2015/12/31(木) 23:17:41.30 ID:nkC/WCO50




洋榎「あのな、最初は別に… そんなんやなかったんやで…」


洋榎「ただの昔の知り合い。 その程度や思っとった…」



洋榎「せやけど…」


洋榎「久しぶりに会って話してみたら、すっごく楽しくて… 何や、気持ち浮かれてまってなぁ……」




洋榎「だから、ついつい 一緒に居るようになって…」


洋榎「出来ることなら、もっとずっと一緒にいたいって―――」


洋榎「そう思って、ウチの方から結構 声かけたりもしたんやで……」


ちゃちゃのん「…………」




洋榎「……初めは、コレもきっと友情の一種なんやろなって―――」


洋榎「そう思っとったんや……」





洋榎「セーラとフナQのヤツが… 前に一度、本気で別れそうになったことがあるんやけど―――」


ちゃちゃのん「…………」




それは以前に浩子ちゃんから聞いた、二人の話じゃった……



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