「『須賀京太郎』とは、あなたのそうぞう上の存在に過ぎないのではないでしょうか」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/26(土) 00:22:36.93 ID:j1NV0rNZo


今朝、起きて、アルバムを開いた。

手は震えていたけれど、その時は確かに、わずかにでも希望があった。

あったと、信じたい。



しかし、開いて、そこにあるものを見た時。

浮かんだのは「やっぱり」という言葉だった。

淡い希望は打ち砕かれて、昨日から今日は何も変わらない。

199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/26(土) 00:38:03.13 ID:j1NV0rNZo


今日ここに来たのは、単に「約束したのだから行かなければ」という観念があっただけだった。

期待も希望も、特にあったわけではない。

断りの電話を入れるには、時間が迫りすぎていたということもある。

悪く言えば、私は惰性で今ここに座っていた。

200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/26(土) 00:39:21.40 ID:j1NV0rNZo



そんな私の内情を知ってか知らずか──きっと知らないだろう──部長は脚組みを解き、私をすっと見る。



「咲。答え難いことは答えなくていい、と言いたいところだけど、場合が場合だしね。出来る限り、詳しく聞かせて欲しいかな」



始まった。

ぼんやりと、そう思った。

201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/26(土) 00:40:17.53 ID:j1NV0rNZo


いったい何をするのだろう。

尋問みたいなことをされるのだろうか。

みたいなことを、と言っても実際にはどのようなものかは知らないのだけど。

それとも、私が言ったことを、端から端まで理論建てて否定していくのだろうか。

京ちゃんの存在を主張している私が、どれだけ間違っているのか、それをきっと教えてくれるのだ。

いや、もしかしたら私自身の何もかもを否定されるのかもしれない。

私はきっと、この世界でただ一人オカシイ人間なのだから、何から何まで否定されても可笑しくは無い。

202 :駄目だ限界なので寝る。年内にこの部分だけでも終わらせたいけど休みないからなぁ [saga]:2015/12/26(土) 00:42:52.90 ID:j1NV0rNZo



「じゃあまずは……そうね、コレをはっきりさせておくべきね」








「咲にとって、京ちゃんってどういう存在だったの?」

203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 00:55:02.91 ID:x/pHQZQRo
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 02:58:46.98 ID:VlZq9URzo
乙です
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 07:18:43.05 ID:ufBMySCSO
おはよう
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 09:30:41.21 ID:EUUY61I7o
乙かな?
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 10:11:45.24 ID:9IAlJMJf0

他に京ちゃんを覚えてる人っているのかな
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 17:48:54.63 ID:EbZaP2FN0
>>207
嫁田とハギヨシさんぐらいか?
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/28(月) 02:08:54.47 ID:Tz+HW32Po
>>208
そんな描写あったか?
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/28(月) 03:01:05.67 ID:zXL/JvOPo
ない
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/28(月) 16:48:00.13 ID:IzGMCjOro
個人的な願望妄想を事実みたいに言うのは良くないぞ
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/29(火) 16:59:18.49 ID:Bh19fMQuO
クラスで聞いてダメだった時点で嫁田はないだろ
ハギヨシは判断材料ないが覚えてないと考えた方が自然
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/29(火) 18:05:18.51 ID:D2+q1Kp7o
現時点での可能性としてならオカ持ち(or魔物)ならワンチャンあるかもしれんが向こうがまず京太郎自体を知らないという
とりあえず鹿児島行こうぜ
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/29(火) 23:30:50.96 ID:TOdXQww70
そういえば鹿児島の某巫女は某所で世界線移動ネタが持ちネタになってたな...
215 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/07(木) 23:51:51.38 ID:ZsOYZilUo



部長が京ちゃんと呼んでいる。

不思議な感覚。



それにしても。

なんだか、普通の質問だ。

好奇心を滲ませた瞳を向けてくる部長を、無感動に見る。


皆も私をじっと見ていて、私の答えを待っている。

私にとっての京ちゃんって、なんだろう。

ぼんやりと考えて、言葉にしてみる。





「……京ちゃんは、……家族、みたいな感じでした」

216 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/07(木) 23:53:03.24 ID:ZsOYZilUo



反応はない。

その眼差しは真剣だったり、楽しそうだったりと違いはあるけど、一様に言葉の続きを促している。



私は話す。


「中学生のときからの付き合いで、私が困っているときには、いつも助けてくれました」


217 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/07(木) 23:58:54.78 ID:ZsOYZilUo



京ちゃんにはからかわれることも多いけど、助けてほしいと思ったときにはいつも助けてくれた。


迷子になれば見つけてくれたし、寂しい時にはそばに居てくれた。


中学からの付き合いで、男の子なのに、いつの間にか一番一緒にいる時間が長くなっていた。


喧嘩は……どうだろう。


今思えば、何かあった時には私が一方的に怒っていただけの気がする。


恋愛感情は、正直よくわからない。


ハンドボールをやってた時とかは、正直カッコ良いと思ったこともあるけれど。


218 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/08(金) 00:03:56.94 ID:NbROBsPlo


「えー、じゃあ恋人じゃないのね」


部長が大げさにがっかりとしたように言う。


「キスとかもしたことないの?」

「ありませんよ、そんな……」

「手を繋いだりとかは?」

「えぇと、お正月とかの人が凄かったときには、少し」


流れで答えて、なんでこんなことを答えているのだろう、と意識が僅かにはっきりする。

顔が熱くなってきた。


「じゃあ、裸を見ちゃったり見ら」

「悪乗りしすぎじゃ」


ぱこ、と丸まったメニューが部長の額に当たり音を立てる。

渋谷先輩に叩かれて、あう、と部長がのけぞった。

219 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/08(金) 00:11:41.26 ID:NbROBsPlo


「でも、彼氏じゃなかったって分かって少し安心したじぇ」


優希ちゃんが、ズズズとオレンジジュースをストローで啜る。


「咲ちゃんに彼氏が居るって知ったら、ちょっと咲ちゃんのイメージを改めなきゃいけないとこだったじぇ」

「そうじゃのう、後輩に先を越されてたかと少し心配に思うたわ」

「あら、まこはそういうの興味あるの?」

「そりゃまあ、華の女子高校生じゃしの」

「でも、ずっと仲の良い男の子が居るっていうのは少し羨ましいですね」

「和がそう言うのは意外ね」

「のどちゃんは意外と乙女なのだ」

「意外とってどういう意味ですか」

220 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/08(金) 00:17:10.42 ID:NbROBsPlo


わいわいと、皆が喋り出す。

あまりの空気の違いに、呆気にとられていると、部長が私に言う。


「麻雀部ではどうだったの?」

「どう、というのは」

「男の子一人でしょ? 色々大変そうじゃない?」

「そうじゃのう、ちょっと想像できんな」

「京ちゃんはそういうの気にしてませんでしたよ、というより部内では誰も男子女子を気にしてなかったような……」

「男女のあーんなことやこんなことは?」

「なかったですよ……」

「えー、こーんな可愛い女の子に囲まれたハーレムなのに何にもなし?」

「自分で言うか」


もちろんまこも含まれてるわよ、と妙に自慢気な顔で部長が言う。

染谷先輩ははいはい、と生返事。

221 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/08(金) 00:22:15.25 ID:jSe63SJMo
渋谷先輩……たかみー?
222 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/08(金) 00:22:51.64 ID:jSe63SJMo
直ってたか
忘れて
223 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/08(金) 00:24:47.15 ID:NbROBsPlo


「しかし唯一の男手じゃ。久がコキ使ったりしとったんじゃありゃーせんか?」

「いえ、まあ……」


やっぱりのう、と染谷先輩は部長をじろりと見る。

部長は神妙な顔をして頷く。


「その私はきっと、私の偽物ね。だって私には覚えがないもの」

「あんたなぁ……」


呆れた顔で染谷先輩はため息をつく。

不思議だった。

酷い言い分なはずなのに、昨日と同じ『覚えてない』のはずなのに、心はざわめかない。


「でも、京ちゃんも率先してそういうことをしてましたから」


実際、京ちゃんは人に頼られることが性に合っていたみたいだった。

文句を言ったり渋ったりしながらも、人のために何かをすることが多くて、本人は母さんのせいだな、と笑っていた。

京香さんはああ見えて、家事以外はけっこうな、その……ポンコツ、だったりする。

224 :>>221 全然気づかんかった……ワハハの読み間違い並に直したい……各自修正してくれい…… [saga]:2016/01/08(金) 00:37:37.46 ID:NbROBsPlo


「麻雀は強かったんですか?」

「ううん、高校から始めたって言ってたし、普通の初心者だったよ」

「ありゃ、意外じゃの」

「私も咲ちゃんの昔なじみって聞いて強そうなイメージだったじぇ」

「……ちゃんと、教えてあげたりしてたのかしら」


部長が少し声量を落とす。

この点は、流石に心配になったらしい。


「最近はインターハイとかもありましたし、ちょっと放置でしたけど……」

「そう……」

「でも、本人はそんなに気にしてませんでしたね」

「? やる気が無かったとかか?」

「やる気がなかったとはちょっと違うかな」


優希ちゃんの言葉に、少し考える。


「部活は真面目にやってたし、でも、何だろ……競技としての麻雀には重きを置いてなかった、のかな」


負ければ悔しがっていたし、ネット麻雀で勉強したりもしてたけど、なんというかそこを重要視していなかった気がする。


「目当ての子でも居たのかしら」

「あはは……」


否定出来ないので、曖昧に笑う。


「まあ、空いた時間に教えたりしてましたよ。そもそも打てるようになるまで教えてもらったのが麻雀部だったそうですし」

「そう」


私の言葉で、部長も少しは安心したみたいだ。


225 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/08(金) 01:00:01.73 ID:NbROBsPlo


「なーなー咲ちゃん、そのきょーちゃんは1年だったんだろ? 私はどうだったんだ?」

「優希ちゃんとは仲が良かったよ、いつもじゃれてるみたいで」

「そうですよね、私達とは同級生だったんですよね。私はどんな感じだったんでしょうか」

「和ちゃんは……普通?だったかな」


京ちゃんが好意を抱いていた、というのは言わないほうが良いだろう、多分。


「普通……ですか」


和ちゃんは少し複雑そうな表情。

ごめん和ちゃん、でも和ちゃんは本当に普通に接してたし……。


「私は私は?」

「部長は……姉御と舎弟?」

「えー」

「ちなみにわしは?」

「染谷先輩は良い先輩後輩でしたよ」


なんかまこだけ扱い良くない?と言う部長に、再び染谷先輩が呆れた顔をしてワイワイと盛り上がる。

226 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/08(金) 01:08:00.94 ID:NbROBsPlo


「じゃあねえ、次は──」



「……あの、これは何なんでしょうか」



「?」

「だって、私は話を聞きたいって言われてきたんですよ?」

「だから、話を聞いてるんじゃない」

「そうじゃなくて……」


あまりにも、空気が違いすぎた。


昨日はまるで、得体のしれないものの話をしていたようだったのに。


227 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/08(金) 01:09:14.28 ID:NbROBsPlo



「……昨日ね、皆で話したのよ」

「話した?」

「咲が帰った後にね」


部長が静かな笑顔で言う。


「咲が、なんであんなことを言い出したのかって」

228 :中途半端だけどここまでで [saga]:2016/01/08(金) 01:14:35.36 ID:NbROBsPlo



「同じ学校にもう一人生徒が居た。麻雀部に、もう一人の部員が居た。 私に──もう一人後輩が居た」


染谷先輩が続ける。


「正直、突拍子もない話での。記憶に無い人間が、仲間に居たはずと言われたんじゃ。まあ、ちょっと信じがたいのう」

「でも、咲ちゃんが嘘をついてないことくらい、私達にも分かったじぇ」


まんじょーいっちだったじぇ、と言う優希ちゃんの後に、だから、と和ちゃんが続く。


「だから、皆で決めたんです。咲さんの話を聞こうって」





皆が、私をまっすぐに見ている。

皆を見渡して、部長と目があったところで、部長が笑う。



「まあ、そういうことよ」
229 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/08(金) 01:19:22.64 ID:jSe63SJMo
乙でー
230 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/08(金) 01:20:48.69 ID:LdmYdzkYO
乙です
231 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/08(金) 08:22:23.72 ID:YdDq9Y3bO
あけおめ
232 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/08(金) 11:09:06.33 ID:DY2O9Hg3o
舞ってた
233 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/08(金) 17:01:29.18 ID:Edc59ffko
乙です
234 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/09(土) 07:31:14.65 ID:0vP6kVdSO
おつ
解決してほしいな
235 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/14(木) 23:11:02.72 ID:vs5sEIMK0
追いついた
これが本当の非実在青少年ってやつか…
236 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 19:28:05.63 ID:FpEpUavGo



「正直ね、落ち着いてから、少し後悔したのよ。結論だけを急ぎすぎたんじゃないかって」


部長が恥ずかしげに首に手を当てる。


「何も急ぐことは無いのに、答えだけを突き付けてしまった。咲だって、嘘をついてる訳じゃない、それは分かったはずなのに」

「これは結論ではなくて、結論までの過程こそが大切なことだと気づくのに、少し時間がかかってしまったの」


237 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 19:29:37.20 ID:FpEpUavGo


「ごめんなさい、咲さん」


部長の後を継ぐように、和ちゃんが言う。


「私達は嘘をついていない、それは本当のことです」

「でも、だからといって咲さんが嘘をついていることにして良いはずが無かったんです」





「昨日の今日で、手のひらを返しているように思われるかもしれませんが……力にならせてもらえませんか?」




和ちゃんの言葉に、染谷先輩が頭を掻く。


「ただ、言っとくがのう。その『京ちゃん』の存在を、わしらが信じたわけじゃないことは言うとくぞ」






「わしらが信じとるのは、ただ咲のことだけじゃ」









それは、今の自分にはあまりにも綺麗な言葉だった。

238 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sagasage]:2016/01/16(土) 19:56:42.69 ID:PSf5QnmPO
まあこれは咲さんのお話だけどこの状況での京ちゃんサイドを考えても面白いよね
ない訳じゃない世界線移動じゃなかった場合の奮闘劇みたいな
239 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/16(土) 20:16:58.25 ID:HQKfN02SO
<●><●>
240 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/16(土) 20:56:09.41 ID:z+sf/GTEo
なんかすごく悲しい
241 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/16(土) 21:05:39.11 ID:v+1oVdFzO
優しいルートには違いないけど一歩間違えばこれ部員全員狂気ルート突っ込むな(フラグ)
242 :寝落ちってたのよー [saga]:2016/01/16(土) 21:28:59.58 ID:FpEpUavGo


「もしかしたら、咲ちゃんだけじゃ分からないことが分かるかもしれないじぇ!」

「昨日も、色々話したのよ? 咲だけ異世界人説は和が全力否定してたけど」

「そんなオカルトありえません。真面目に考えてください」

「真面目なんだけどねえ」



あまりにも、眩しかった。






──私は、諦めてしまったから。





「なんで」

なんで、今更。








私が諦めてしまった後に。



繋ぎ止めようとするの。

243 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 21:29:51.70 ID:FpEpUavGo






「無理ですよ」





244 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 21:31:25.22 ID:FpEpUavGo

「あら、わからないじゃない」

「だって、ぜんぜん違う。私の知っている世界と、この世界は違うことだらけ」

「どこまで同じでどこから違うのかも分からない」



「それこそ、本当に異世界に来たみたいに」



「教えて下さい」

「私は、インターハイに出れたんですか? そもそもいつ麻雀部に入ったんですか?」

「私が麻雀部に入ったきっかけは? 出会ったとき、私は私だった? お姉ちゃんとは仲直り出来たの? 私は、どうして清澄高校に入ったの?」



本当に異世界の住人であれば、良かったのに。

そうすれば、私はただ戻る術を探せば良いだけなのに。



「──教えて、ください」


245 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 21:32:58.65 ID:FpEpUavGo


そんな私に皆は顔を見合わせ、



「咲と会ったのは、わしが一番最後だったかのう。第一印象は本を探してる文学少女って感じじゃったが」

「咲ちゃんは出会った時から咲ちゃんだったじぇ」

「私の時はまた小さい子がいるわねぇって感じだったかしら。その後すぐに凄いの来た!って思ったけど」

「私は……正直、その、最初はちょっと嫌でした。麻雀は好きじゃないって言われたり……」

「のどちゃんも強く当たったりしててお互い様だった気もするじぇ。そーいえば、怒って帰っちゃったとかあったなー」

「それは、その……若気の至りというか……」

「たった半年前じゃろうが」




私に、応える。

246 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 21:37:03.85 ID:FpEpUavGo


「インターハイはまあ、昨日の祝勝会で言わずもがなでしょう」

「おねえさんとは仲直りしたって咲ちゃんが自分で言ってたじぇ」

「挨拶もしたしのう、アレで実は仲直りしてなかったのなら驚きじゃ」



言葉が痛い。

関わるのを止めて欲しくて、皆を遠ざけようとして吐いた言葉が飲み込まれていく。

247 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 21:40:44.50 ID:FpEpUavGo


「咲が麻雀部に入ったのは勧誘期間が過ぎてしばらくしてからだったかのう」

「私が図書館で誘ったのよね。咲が清澄を選んだ理由って聞いたことある?」

「そういえばありませんね」


それでも、やっぱり希望に至らない。

どころか、私の納得を深くする。





諦めるための納得を。

248 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 21:42:08.45 ID:FpEpUavGo




「──やっぱり、無理ですよ」


「聞けば聞くほど、私の知ってる世界なのに」


「ただ、京ちゃんだけが消えている」



執拗に、徹底的に。

まるで、何かの意思が京ちゃんだけを消そうとしているかのように。

249 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 21:43:52.61 ID:FpEpUavGo


「ねえ和ちゃん、優希ちゃん、覚えてないの?」


「私をここに連れてきたのは、京ちゃんだよ?」


「なのに、なんで?」


「部長が私を?」


「私が、知ってる世界でも、図書館で部長に誘われたけど」


「それは、京ちゃんが私を連れてきたからで、だから部長が私を麻雀部に誘ったんだよ?」


「なのに、京ちゃんではなく部長が──」


250 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 21:45:10.81 ID:FpEpUavGo






「──────」




251 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 21:46:00.93 ID:FpEpUavGo




「────部長」


「部長はなんで」






「なんで私を誘ったんですか?」
252 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 22:10:51.90 ID:FpEpUavGo



「……やっぱり、強かったっていうのが一番の理由かしら」

「強かった、から」

「ええ。プラマイゼロを見せられて、夢を見ないなんて方が無理な話でしょう」

「でも、部長」


253 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 22:11:21.99 ID:FpEpUavGo



「どこで、私が強いなんてことを知ったんですか?」

「え?」



254 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 22:15:27.53 ID:FpEpUavGo


「ええと……んん? あ、そうそう、部室で和と優希とゲストが打ってたのを見たのよ」

「さっき言ったでしょう、ゲストに小さい子が居るなって思って、その打ち方に驚いたのよ」

「じゃあ、麻雀部に連れてきたのは部長じゃないんですね?」

「そうね」




「ねえ、和ちゃん優希ちゃん」

「私が、なんで麻雀部に居たか覚えてる?」



「……確か私は咲ちゃんが来たとこを見てないからのどちゃんが答えるじぇ」

「え? ええと……普通に、麻雀を打ちに来たのでは?」

255 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 22:20:56.99 ID:FpEpUavGo






 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「私は麻雀がキライだったのに?」




256 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 22:27:35.29 ID:FpEpUavGo


広い室内が、しんとなる。


「和ちゃん、言ってたよね」


「私が、麻雀好きじゃなかったって」

「それは……」

「間違いじゃないよ、和ちゃんには控えめに言ったけど、私はあの時確かに麻雀がキライだったから」



             ・ ・ ・ ・ ・  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「でも、じゃあ、なんで私は麻雀部で麻雀を打っていたの?」

257 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 22:29:15.64 ID:FpEpUavGo


「……待ってください、ちょっと、待って……」

「和か、優希が誘うたんじゃないんか?」

「私も、のどちゃんもあの時が初顔合わせだった……はずだじょ」

「え、ちょっと待って、和も優希も覚えてないの?」

「部長」

258 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 22:31:44.24 ID:FpEpUavGo


「部長はさっき、私が打っていたのを見たと言ってましたよね」


「和ちゃんと、優希ちゃんと、私と──あと一人は?」

「あと一人……ゲストの子じゃあ」

「何年生か、どんな子だったか。覚えてますか?」

「あれ、えーと、ちょっと待って。ええと……え? あれ?」

259 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 22:35:39.64 ID:FpEpUavGo


「……どういうことじゃ」


染谷先輩が、呆然と呟く。


「誰も……誰も、覚えてないんか?」


「……ぁああ」

「咲!? どうした、大丈夫か!?」

260 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 22:37:48.16 ID:FpEpUavGo



──京ちゃんの。



「咲さん?」

「咲ちゃん!?」

「咲、泣いてるの?」



──京ちゃんの欠片を。









───やっと、見つけた。


261 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage saga]:2016/01/16(土) 22:40:33.87 ID:FpEpUavGo
というわけで待て次号!

……ようやく半分くらい?
262 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/16(土) 22:46:03.98 ID:SJ5Vt6hO0

いよいよ楽しくなってきた
263 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/16(土) 22:46:36.50 ID:HQKfN02SO
おつ!
漸くここまで来たかー
でもまだ入り口を見つけたくらいという考え方もできるし難しい
264 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/16(土) 22:48:44.24 ID:XmnkEZzko

咲ちゃんが異世界に来てるわけじゃないのか?
265 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/16(土) 22:53:19.55 ID:AuKuT9Vk0
正直咲ちゃんのイマジナリーフレンド、または物凄い性質の悪いドッキリとかって可能性も考えてたから、そんなんではなさそうでよかった。
どっちも別ベクトルで後味が悪いからなぁ。
SFチックな展開になってきたけど、どういう方向に進むんだろうか。
266 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/16(土) 23:10:20.19 ID:z+sf/GTEo
ワクワクしてきた
267 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/16(土) 23:13:54.97 ID:lUxPgh690
ぶっちゃけアラフォーどもが黒幕で、某スレみたいにアラフォーどもに逆レイプされてたりして...
268 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 02:18:37.18 ID:FJo5MUUDo
乙!
加速してきたね!
続きが楽しみだ
269 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 04:39:43.01 ID:ZVNOrMbqo
前も出てたけど虹の見方思い出すなあ
270 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 10:48:39.38 ID:yS0yLJ+o0
ONEぽいと思った俺は古いのだろうか
271 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 10:49:05.84 ID:aab2LhjRo
乙です
272 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 12:52:02.95 ID:scOzsNiIo
こうやって矛盾点を徐々に突いていくのはやっぱ痺れるな
273 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 18:58:34.43 ID:QE24juTZo
>>270
俺も思った
本編もそうだし、あの頃はそのSSも多かったしな
274 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 19:44:17.67 ID:ezhhKAlto
三つ編み原村さんの「嫌です」と、スケッチブックまほは違和感ないかも。
275 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/18(月) 21:56:32.12 ID:2gv2FeKHO
絶望先生思い出した
276 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/18(月) 22:59:19.03 ID:QQkzikRVo
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/31(日) 09:33:25.82 ID:a3WjVfg8o
待ってます
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:20:09.11 ID:jaVggvmMo
話が動くところまで書けるか分からないけどとりあえず進める

しかし予想外に見てくれてる人が居るんな……
嬉しいけど、予防線を張りたい衝動もあったりなかったり
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:21:34.20 ID:jaVggvmMo






「お帰り。早かったな」


家に帰ると、お父さんが受話器を耳に当てていた。


「ただいま」


ぼんやりとしたまま、私も挨拶を返す。







その日は、結局話し合いの体をなさず、うやむやの内に解散となった。


誰も彼もが混乱して、収拾がつかなくなっていた。


部長が解散、と言った声に、疲弊がわずかに見えたのは気のせいじゃなかったと思う。




私は、安堵と同時に押し寄せてきた急激な疲れが頭を靄がからせて、熱に浮かされたようにゆらゆらと揺れる。
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:23:17.39 ID:jaVggvmMo




分かってる。


京ちゃんの存在が証明されたのではないということくらい。


ここから何をすれば良いのかも分かっていないことくらい。


それでも、何処にもなかった手掛かりの欠片がようやく見つかった。


京ちゃんの存在に関わりがあるとしか思えない事象を、ようやく見つけたのだ。


今少し、この安堵に身を委ねていたかった。


281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/31(日) 21:29:05.89 ID:6MeBiFiTo
来たか良かった
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:31:06.03 ID:jaVggvmMo


「ああ、咲が帰って来た」


私の名前が出たことに反応して、お父さんを見る。

それに気づいて、お父さんは受話器を指す。


「かーさん」


ああ、お母さんか。

インターハイの間に、お父さん達にも色々あったらしい。

私がこちらに帰ってくるまでに数度、お父さんとお母さんが連絡を取っていたとお姉ちゃんから聞いている。


そうか、お母さんと話してるのか。

ぼんやりとしたまま、自分の部屋に足を向けて──
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:33:50.72 ID:jaVggvmMo




「──お父さんっ」

「うおっ!?」


私が飛びつくように声を掛けると、お父さんはビクリと肩を跳ねる。


「びびったじゃねーか、まだ居たのか。どーし」

「お姉ちゃん居るっ!?」

「……かーさんなら今繋がってるけど」

「いまは、おかーさんじゃなくてっ」


284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:38:12.06 ID:jaVggvmMo



お父さんが受話機越しに二言三言声を交わした後、私に渡す。

受話機を耳に当てる。


「お姉ちゃん?」

「……お母さん、泣いてたよ」


あぁ。

間違いない、お姉ちゃんの声だ。

それだけのことにとてつもない安心を感じる。


そして、言葉の意味が思考に届く。


「えぇっ、ちが、私はそういうつもりじゃ」

「うそ」


笑いを含んだ声が、受話機から届く。


「え」

「泣いてないよ、ちょっと拗ねてたけどね」

「っ、もう!」

「ふふ」


からかいの言葉にむくれて見せるも、そうした応対のひとつひとつが嬉しい。

285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:43:39.54 ID:jaVggvmMo



宮永照。


高校麻雀界のトップを行く白糸台高校、そのエース。


それが、私のお姉ちゃん。




私とお姉ちゃんは、とある事情があって長く絶縁状態になっていた。

仲直りしたのはつい最近のことで、インターハイに出ることがなければ、きっとそれも無し得なかっただろう。



「久しぶり……でもないか。2日ぶりだね、咲」



まだ2日なんだ。


もう数日が過ぎたかのような感覚だった。

286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:46:28.36 ID:jaVggvmMo


「お姉ちゃん」

「?」

「会えないかな」

「2日前に会ったばかりだけど?」

「それでも、聞いてほしいことがあるの」


お姉ちゃんに聞いてほしかった。

数年間、音信不通で、空白の方が多くなっている今でも。

多分、私が最も信頼しているのはお姉ちゃんだ。



会いたい、話を聞いてほしい。

笑われるだろうか。

お姉ちゃんも、私が変だと思うだろうか。




───それでも。

287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:50:10.80 ID:jaVggvmMo


「……咲たちのおかげで」

「?」

「今は、毎日ミーティングや猛特訓でスケジュールが埋まっている」

「そっか……」


288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 21:50:53.67 ID:jaVggvmMo





「だから、私は行けないけど」



「咲が来るなら、話を聞いてあげる」



289 :しばし中断 [saga]:2016/01/31(日) 21:51:45.97 ID:jaVggvmMo



「──うん! 行く、行くよ!」

「そう」




静かだけど、お姉ちゃんが微笑んでいるのが分かった。


290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/31(日) 22:04:28.88 ID:6MeBiFiTo
一旦乙です
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/31(日) 23:29:25.28 ID:a3WjVfg8o

てるーいいね
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/31(日) 23:56:56.44 ID:jaVggvmMo
ちと無理ぽいのでまた後日ということで
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/31(日) 23:58:28.05 ID:rSBTbhu9o
おつー
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/01(月) 00:45:31.21 ID:P+oIgX2Ao
乙乙
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/01(月) 01:39:26.37 ID:Dpg1h3lto
おつおつー
このあとどうなるのか楽しみすぎる!
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/01(月) 06:05:29.11 ID:U1zsDbzvo
乙です
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/01(月) 07:06:45.54 ID:z3vWJJqSO

照は覚えてくれてるんかな
260.18 KB Speed:0.2   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)