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やはり俺の脳内選択肢が青春ラブコメを全力で邪魔しているのは間違っている。
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469 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/06/11(日) 03:07:37.89 ID:+v4Z49jQ0
いつもありがとう楽しく読ませてもらってるよ
470 :
凪
◆oUKRClYegEez
:2017/06/23(金) 23:28:44.69 ID:AZEIuGdG0
奏「んっしょ……」
新旧生徒会の引きつぎ作業に、俺たち奉仕部が駆り出されていた。
城廻先輩が「ついでに〜お願いできないかな〜、力仕事もあって男手がほしいんだよ〜」と仰せられたので、手伝いに来た運びだ。
めぐり「ごめんね、思ったより私物が多くて……」
生徒会室は私物持ち込み可なのか。
いろはす「戸部先輩、冷蔵庫は向こうです」
翔「お、おー……」
新会長も冷蔵庫持ち込んでるし……。
471 :
凪
◆oUKRClYegEez
:2017/07/02(日) 22:24:07.23 ID:YAgl3y500
いろはす「よしっと、これで終わりですね」
八幡「お疲れ一色」
奏「お疲れ様―」
いろはす「はい! お二人ともありがとうございました」
翔「ふ〜。やっと俺も帰れる……」
いろはす「戸部先輩は部活あるじゃないですか」
翔「鬼かいろはすー……」
いろはす「葉山先輩に連れて来いって言われてるんで」
翔「わー、隼人君マジぱねえわ……」
472 :
凪
◆oUKRClYegEez
:2017/07/02(日) 22:31:26.48 ID:YAgl3y500
それから、部室へ向かう。
その道すがら、俺と八幡は他愛無いことを話した。
奏「なんとか、一件落着だね」
八幡「……ああ。助かった」
奏「……熱とかない? 八幡が素直に礼をするなんて珍しい」
八幡「俺だってお礼くらいする」
奏「まあ、礼には及ばないというか俺からもお礼しないと。ありがとう八幡」
八幡「ああ」
奏「そこは飲み込んじゃうんだね……」
話していると、部室はすぐに見えてくる。
ふんわりと漂う紅茶の香り。そして由比ヶ浜さんの楽し気な笑い声と、それに受け答えする雪ノ下さんの声。
これを、このまま。
ミッションのことを抜きにしても、この空間を守りたいと、そう思った。
473 :
凪
◆oUKRClYegEez
:2017/07/09(日) 01:08:30.58 ID:0cSwk2sy0
結衣「寒くなってきたねー」
雪乃「そうね」
【選べ
1、 上着を脱いで振り回す
2、 下着を脱いで振り回す 】
474 :
凪
◆oUKRClYegEez
:2017/07/09(日) 01:11:54.36 ID:0cSwk2sy0
話変わったと思ったらこれかよ! 少しは容赦ってもんをだな!
奏「イエェーイ! 今日も元気に回します!」
結衣「ねえ、それ寒くない?」
奏「……寒いです」
雪乃「いい加減やめてもらえるかしら。なぜかその言葉、集中を削がれるのよ」
奏「ごめんなさい」
これで今週三回目ともなると、さすがに皆さん慣れてこられる。
475 :
凪
◆oUKRClYegEez
[sage]:2017/07/22(土) 14:47:29.65 ID:EvK3879P0
保守レス
476 :
凪
◆oUKRClYegEez
[sage]:2017/07/29(土) 11:26:49.81 ID:f2EpMQ2/0
すみません、もう一週更新休みます
477 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/07/31(月) 07:45:02.02 ID:bkVUMnbgO
エエんやで
478 :
凪
◆oUKRClYegEez
:2017/08/06(日) 13:00:16.48 ID:UN7L6Rt40
いろはす「せんぱー…………えっ」
そんな奉仕部の戸を叩いて入ってきたのは、生徒会長いろはすこと一色いろはさん。
いろはす「…………なんで上着脱いで振り回してるんですか」
雪乃「なにか事情が」
奏「ないね!」
あることにされても後々面倒そうなので先に言う。
いろはす「……そうですか。まあ天草先輩はいつも通りですね。ところでセンパイ」
おう……冷たいぜ一色さん……。今の服装よりよっぽど寒い……。
いろはす「やばいですやばいです」
語尾が「よ」なら出川〇朗さんかな……。
結衣「とりあえず座ったら?」
由比ヶ浜さんが一色さんにそう声をかけた。
いろはす「すみませんありがとうございますー」
479 :
凪
◆oUKRClYegEez
[sage]:2017/08/10(木) 22:47:39.87 ID:TdXILsKo0
すみません今週もお休みします
480 :
凪
:2017/08/19(土) 15:11:48.88 ID:Hh2TRBQW0
いろはす「生徒会の仕事でー、クリスマスをすることになったんですよー」
八幡「は?」
結衣「ちょっとヒッキー静かに」
八幡「……え、今の俺が悪いの?」
まあ、話は最後までね……。
いろはす「海浜幕張高校ってとこの誘いで、平塚先生がやれって言うから……」
大変だね会長も。
雪乃「で、具体的に何をするのかしら?」
あら雪ノ下さん、ばっさりと切り込んでいきますね。
481 :
凪
:2017/08/26(土) 22:48:13.19 ID:oF5uxnsg0
いろはす「クリスマスイベントですよ。お年寄りや小さい子相手に、地域に貢献しよー的な」
あー、あるよねそういうの。
いろはす「それがなかなかうまくいかなくて。それでここに相談にきた次第でして……」
雪乃「どううまくいかないのかしら?」
いろはす「んー……なんというか、意識高い系の方々がわーっとやっててまとまらない? というかー」
八幡「他校とやってるんだから当然だろ……。というか一色に意識高い系と言われる奴らなのか……」
奏「なかなか濃いよね、その人たち」
いろはす「ちょっと。先輩たちの間で私の印象ってどうなってるんですかー」
どうなってるも何も……。
選べ
1、「生意気な後輩」
2、「やんちゃな後輩」
482 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/08/27(日) 04:07:44.94 ID:lkbiagorO
2
483 :
凪
:2017/09/03(日) 10:24:56.42 ID:ni2uGgWK0
奏「やんちゃな後輩」
八幡「パリピ」
結衣「いろはちゃんはかわいいよ!」
雪乃「責任の自覚が認められない」
いろはす「先輩方ひどいですね!! 私の見方は結衣先輩だけですよー」
一色さんは泣き顔を作って由比ヶ浜さんのところに行った。
雪乃「責任云々は、まぁ私たちが言える立場にないことはわかっているのだけれど」
484 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/03(日) 12:51:42.73 ID:PfkfZ2bVo
ライダー
485 :
凪
:2017/09/10(日) 19:14:12.02 ID:qTNdRwnL0
いろはす「話脱線してましたね……。それで、どーですかー?」
一色さんが改めて問うた。
雪乃「……どうかしら?」
結衣「いいんじゃないかな。手伝ってあげようよ!」
八幡「やめといた方がいいんじゃねえの。一色も最初から人に頼りにすんのはいいことじゃねえだろ」
それを聞いて思い出すのはつい最近のこと。
生徒会選挙を、バラバラになって解決しようと行動した。
ミッションのこともある。ここで別行動をするのは、あまりいいような気がしない。
奏「確かに頼りにしすぎるのも悪いけど、元はと言えば俺たちも一色さんが会長になることにはかかわってるわけだし。一色さん、これが初めての大きな生徒会活動だよね?」
いろはす「あ、はい。そうですね」
俺に振られることが意外だったのか、若干の間をおいて一色さんが答えた。
奏「手伝ってあげてもいいんじゃないかな?」
八幡「それで頼る癖がついたら?」
奏「手伝うのは今回だけ、ってことでどうかな? 依頼は達成できるし、一色さんがこれ以上頼るってこともない」
486 :
凪
:2017/09/17(日) 23:05:54.55 ID:hRqd5LWt0
いろはす「こ、今回だけですか……。願いを聞くのは一度だけ、みたいな」
雪乃「一度だけ、ではないわ。今回だけ、よ」
いろはす「えっと……?」
雪乃「今回手伝わなかったとしても、次はないわ。しっかり自立して動けるようになってもらわないと」
いろはす・奏「「厳しい!」」
487 :
凪
:2017/09/24(日) 22:01:07.06 ID:kThavuYf0
八幡「葉山はどうしたんだよ、葉山は。あいつに頼ればいいだろう」
いろはす「は、葉山先輩忙しそうだったので。ほら、部活もありますし」
俺たちも部活やってるんだけど……?
いろはす「じゃ、先輩方。このあと校門に集まって、それから一緒に行きましょう」
奏「え、今日から?」
いろはす「あんまり時間ないんですよ〜……」
八幡「……わかった、出る準備したら行く」
いろはす「はい。ではではー、よろしくです」
そう言って一色さんは奉仕部の部室を後にした。
488 :
凪
[sage]:2017/10/01(日) 21:20:51.04 ID:xJip8bGp0
保守レス
489 :
凪
:2017/10/07(土) 22:11:59.77 ID:SwRJbaPu0
いろはす「あ、すいません、お待たせしました〜」
八幡「他の役員は?」
いろはす「奉仕部の皆さんにちょっと頼んでみるって言って、先に行ってもらってます」
それでいいのか生徒会。黒白院先輩の「完璧な生徒会長」の印象が強すぎるのかな……。
490 :
凪
[sage]:2017/10/15(日) 22:24:44.27 ID:mP2qV9ep0
保守レス
491 :
凪
:2017/10/22(日) 10:18:56.19 ID:B02gqTem0
いろはす「ここですよー!」
学校を出てほどなくして着いたのは、とあるコミュニティセンターだった。
いろはす「それじゃ、私はちょっと買い物があるのでそこまで行ってきます」
そう言って一色さんが目を向けたのは、向かいのコンビニだった。
八幡「何を買うんだ?」
いろはす「会議してるときに飲むジュースとかです」
雪乃「……それはもしかして、生徒会の予算から出ているのかしら……?」
いろはす「む、向こうも飲むので折版ですよ!」
奏「重いだろうし、持とうか?」
【選べ
1、馬になって
2、ストーカーになって 】
492 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/27(金) 15:55:52.49 ID:pOm7yg8sO
2
493 :
凪
:2017/11/05(日) 21:55:58.58 ID:lAt/entk0
いろはす「あのー……。持っていただいてほんとにありがたいんですが、その数m空けてついて来るのやめてただけません?」
奏「きょ、今日たまたま気まぐれでそういうことしたいんだ」
いろはす「はあ……?」
494 :
凪
[sage]:2017/11/11(土) 22:39:31.97 ID:fOCF+VJ/0
すみません、明日更新で。
495 :
凪
:2017/11/13(月) 00:43:27.72 ID:MgPz41T40
会議一日目。……俺たちが参加したのが、という意味でなら。
もう、なんていうか聞くだけでお腹がいっぱいになってしまう内容だった。
とてもここに参加できるとは思えないなあ……。
玉縄「ロジカルシンキングで論理的に」
かおり「それある!」
海浜幕張の生徒A「ラショナルで合理的な考えも大切だね」
かおり「それある!」
聞いてるだけで疲れるのか、意識高い系の会話は……。
【選べ
1、 「お前たちのその幻想をぶち壊す!」
2、「イベントの企画? そんなもの、俺の頭の中にすべてできている」(とんとんと頭をさしながら) 】
496 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/13(月) 05:57:35.97 ID:BX8OkaCDO
1
497 :
凪
:2017/11/18(土) 22:48:16.09 ID:ilkksX3J0
両方ネタじゃねえか!
2、よりは……1を選んだ方が面倒にならなくて済むか? ……いや俺は何を考えているんだ。どっちも結局面倒だろ……。
奏「お前たちのその幻想をぶち壊す!」
玉縄「は?」
海浜幕張の生徒A「は???」
498 :
凪
:2017/12/02(土) 23:35:54.40 ID:Yihjs7B50
雪乃「甘草くん。とりあえず座ってくれるかしら。邪魔なのだけれど」
奏「あ、はいごめんなさい」
素で謝っていた。秒で。
だって背中を一瞬、凍りついたかと思うほどの視線が貫いたから……。
雪乃「せっかく立ったのだし、とりあえずあなたたちにも。さきほどから中身のない会話を続けるばかりで、具体的な内容が全く決まっていないように思えるのだけれど、違うかしら? 仮にもやると決めたことなら、どうやって決めるかよりも何をやるかを重点的に話し合うべきではなくて? それに、あなたたちの会話に一色さんが混ざっていたかしら? 仲間内だけの仲良しごっこなら他の場所でやってちょうだい。高校生の生徒会の会議だとは思えないわ。……あなた」
総武の生徒会役員A「はいっ」
あ、今ビクッてした。同じ視線向けられたんだな……。同情するよ。
雪乃「クリスマス会の日程は?」
役員A「あ、あと一ヶ月と少しです」
雪乃「……決まっている内容は?」
玉縄「それはだね――」
雪乃「あなたには聞いていないわ」
玉縄「っ」
あ、向こうの会長さんも少しビクッてなった。
役員A「会場に使う場所、それと予算……でしょうか」
雪乃「……はあ。予算なんて大前提、一か月前ともなれば参加していただく各所にお願いや告知を始めていなければならない時期よ。何もかも遅いわ。部外者の私がとやかく言うつもりはないけれど、あなたたち、ちょっとは自覚あるのかしら?」
あの、すみません。すっっっっごくとやかく言ってると思うのは俺だけでしょうか。
499 :
凪
:2017/12/23(土) 23:52:58.17 ID:3Fc34ll60
その後、メンタルをボロボロにされた海浜幕張の生徒たちは、話の流れをあまりよく理解していない一人を除いて帰ってしまった。
かおり「お疲れー」
生徒B「お、つかれー……」
残った一人は他の人を見送った後、俺たちに話しかけてきた。
かおり「比企谷じゃん! うーわ久しぶりー!」
八幡「……おう」
雪乃「比企谷くん?」
八幡「中学の時の同級生だ」
500 :
凪
:2017/12/31(日) 22:24:32.75 ID:QLSv32Uz0
雪乃「どこかで……」
八幡「もう覚えてないのかよ……」
雪乃「人の脳には、不必要な記憶と必要な記憶を分ける機能があるのよ」
つまり雪ノ下さんにとって折本さんの情報は不必要、と……。
まあ、あの時は陽乃さんもいたから、どちらかというとそっちに気を取られていたんだろうけど。
かおり「え、っと、改めて。折本かおりです。クリスマスパーティー、一緒に頑張ろう! じゃ、私も帰るから」
海浜幕張の生徒でただ一人だけ、俺たちに挨拶していった折本さんの背中を、誰も声をかけず見送っていた。
……俺たちの間に流れた空気に、いろは会長がおどおどしていたことは、俺だけが気づいた。だからどう、というわけでもないけれど。
501 :
凪
:2018/01/07(日) 15:35:23.02 ID:HyXKpmxv0
いろはす「あの……」
翌日、一色さんが部室にやってきた。
雪ノ下さんに「今回だけと言ったでしょう? もうこれ以上関わる必要はないわ」と圧力をかけられ、今日も行く気だった俺・八幡・由比ヶ浜さんはおとなしく部室で暖を取っていた。
いろはす「ここの席失礼しますねー」
一色さんが座ったのは、いつも依頼者に座ってもらう椅子。
雪ノ下さんが無言でスッと出した紅茶にほっと一息ついてから、一色さんは話し始めた。
いろはす「大変なことになりました」
雪乃「手伝わないわよ。愚痴ならそこの二人が聞くから、そっちを向いてくれるかしら?」
いろはす「相談、というか依頼ですよう!」
502 :
凪
:2018/01/14(日) 21:23:36.03 ID:Em6pIGNZ0
雪乃「……」
八幡「……で? なんだ。部長の意向だし、愚痴くらいなら聞いてやる」
いろはす「だから依頼ですってば! 今回は解決してほしいとかじゃなく、単に人員が少なすぎるので手伝ってほしいってことなんですけど」
奏「人員が少ない?」
昨日の今日で、いったい何があったのだろう。
いろはす「昨日SNSで連絡があって……。要約すると『やっぱりそれぞれの学校で行う方がいいよね!』だそうです」
奏「えーっと、それってつまり……」
いろはす「海浜幕張高校が、主催だったはずのクリスマスパーティーが、各校で開催になっちゃったんですよ!」
なっちゃったって。
503 :
凪
:2018/01/20(土) 23:22:13.65 ID:r/8Wa9gr0
雪乃「……どういうことなのかしら」
雪ノ下さんが頭痛をこらえるようにこめかみを抑えながら行った。
いろはす「そちらには優秀なスタッフがいるようだから、別に僕たちがいなくともなんとかなるだろう! 幸運を祈るグッドラック! だそうです」
八幡「そもそも合同でやること前提のイベントじゃないのかよ……」
いろはす「そうなんですよ! しかも向こうからの誘いなのにうちも続けることになってるんですっ!」
奏「会長権限でやめられないの?」
いろはす「この学校には生徒会長よりも権限のある人はいくらでもいるんですよ。例えば平塚先生とか」
あー……。
504 :
凪
:2018/02/03(土) 22:40:09.37 ID:TlBG9dnF0
静「私からも説明しよう」
八幡「……平塚先生」
ガラッと戸を開けて入ってきた平塚先生が話し始めた。
静「といっても、私も詳しいことは知らない。向こうが突然断ってきた理由とかな。とりあえず今の時点で確実なのは、スタッフ側の人数が足りないということだ」
八幡「中止にする線は?」
静「残念なことにないぞ比企谷。海浜幕張側が既に、近隣の小学校と幼稚園にお誘いをかけている」
八幡「なら向こうがやれば――」
静「そういうわけにもいかないんだ。簡単に承諾をもらえるとは思っていなかったらしくてな。どうやら複数の幼稚園や小学校に声をかけたそうだ。で、結果的に参加者が非常に多い事態になっている。まさか今から中止にはできんだろう。向こうの予定もある」
奏「……キャンセルは、強行開催よりはいいのでは?」
無理なことと可能なことはどうしたって出てくる。それが青春だとか人生だとか仕事だとか言われてしまえばそれまでなのだが、ぎりぎり引き返せるところにいるなら引き返すべき案件だと思う。
静「……上の方から、高校生にとっても小さい子にとっても有意義なイベントだと認識されてしまっていてな」
……引き返せないらしい。どうするんだよまったく……。
【選べ
1、諦めきれずに床を転げまわって駄々をこねる
2、「それじゃあ、ブレインストーミングを始めようか!」
3、諦めて結婚する 】
505 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/08(木) 11:55:24.04 ID:bVrfk/F3O
2かな
506 :
凪
:2018/02/10(土) 17:32:58.41 ID:UaIpxUsY0
結婚は……諦めてくれ……っ! ごめんなさい……!
奏「それじゃあ、ブレインストーミングを始めようか!」
平塚先生以外からすごい目で見られてしまった。これでゾクゾクする趣味はないんだ……。
静「生憎、やることはおおよそ決まっている。というか、限られた予算でできることを消去法で決めた。必要なものは、当日及び準備におけるスタッフだ。今のままでは、イベントの開催が非常に困難だ。つまり、私の評価がだな……」
結衣「平塚先生の評価はともかく、このままイベントがなくなっちゃったりしたら、楽しみにしてた子たちがかわいそうだよ! 手伝おうよ、ゆきのん!」
平塚先生の涙は見なかったことにされた。
雪乃「由比ヶ浜さん、近い……。でも、そもそも手伝わないという話で……」
奏「先生。これは奉仕部としてでなく、個々に頼んだ方がいいのでは?」
静「……ああすまない。まともなことを言ったんだな」
先生の俺に対する評価がひどい!
静「どういうことだ?」
奏「雪ノ下さんは奉仕部として手伝うことをためらっている、ってことでいい?」
雪乃「まあ、一色さんに頼られ続けるわけにはいかないもの。ここはそういう部活よ」
奏「なら、さ。奉仕部としてでなく、総武高校の一生徒として、学校のイベントを手伝う、っていうのならどう? 足りないのは開催運営側だけど、メインじゃなくて手足になるスタッフなんだから」
雪乃「……手足?」
奏「こ、構成メンバーの一人!」
手足は嫌らしい。
507 :
凪
:2018/02/17(土) 10:08:06.00 ID:wmwHju3a0
結衣「ゆきのん……。ゆきのんと一緒だと心強いんだけどな……」
由比ヶ浜さんの上目づかい! 雪ノ下さんに効果は抜群だ!
雪乃「……」
効果は抜群。でも、まだ決めかねている。
必要なのはあと一押し。
それは――
八幡「……俺はもともと動くつもりだった。一色を会長にしたのは俺だしな。わかりやすく一生徒としてって名目ができたから、動きやすい。生徒会長の一色を、生徒会を助けるんじゃなく、一生徒として作り上げることに参加する。……まあ俺たちにとっては苦手分野だが、それを言ったら総武祭実行委員だってそうだしな。雪ノ下。お前がいると、俺もやりやすい」
八幡の言葉だった。
そこにはメインの仕事を任せて裏方にまわれるとか、できるだけ仕事をサボりたいという意思がなかったわけではないだろうけど、それでも一押しになった。
雪乃「……わかったわ。私も協力しましょう」
結衣「ゆきのーん! ありがとう!」
雪乃「だから由比ヶ浜さん、近い……」
508 :
凪
:2018/02/25(日) 12:14:41.97 ID:ldzWIq2m0
静「さて。そうと決まればさっそく始めてもらおう。一色、資料を」
いろはす「もってきますね〜」
ぱたぱたと一色さんが部室を出ていった。
静「……すまないな。手伝ってもらえることを感謝しよう」
八幡「なんか平塚先生に感謝されると変な気がしますね。……ア、アイアンクローはやめて、体罰ですよ」
静「君が訴えなければ何もないことになる」
八幡「ええー……。でもまあ、一番『奉仕』部って名前に則した依頼じゃないですかね。学校と地域に奉仕するわけでしょう?」
静「ある意味ではそうなんだが……。ん、待て。比企谷お前、それは自分から働くということか?」
八幡「はっ? いやそんな……」
静「冗談だ」
509 :
凪
:2018/03/03(土) 12:14:54.49 ID:PWI2A0Lb0
一色さんが資料を持ってきて、おおまかな役割を確認した。
奏「けっこうしっかり配分されちゃったね……」
帰り道。俺と八幡は並んで帰っていた。
八幡「ったく、余計なことを……」
笑ってはいない。
でも、どこかほっとしたような表情だった。
このどこかぬるま湯のような関係が続くことを、果たして望んでいいのだろうか。
それでも、今はまだ……。そのぬるま湯を望んでいる俺が、俺たちがいた。
510 :
凪
:2018/03/11(日) 14:25:29.31 ID:7FOdsJ2h0
生徒「各所への、変更に関するお知らせとお詫びの文書、送り届け終わりました! 来ていない返事は2件、確認した返事は了承のみです!」
雪乃「そう。了承いただけて良かったわ。報告次」
いろはす「はい。次は私から。再調整したスタッフの当日の仕事の割り当てが終わりました。表にまとめましたので、改めて全員自分の役割を確認しておいてください」
雪乃「聞いていたものはこれで全てね。他に報告は?」
会議の場に使っている教室が、完全に無音になる。
雪乃「では、これで今日のミーティングを終わります。一日おつかれさまでした」
その一言を待ってました! と言わんばかりに、生徒たちから声が上がった。
静「お疲れ、雪ノ下」
雪乃「お疲れ様です、平塚先生。私は一色さんの用意したミーティングの流れの原稿と、今日報告のある人のリストを見て進行をしているだけですから、そう難しくはありません。……当然、最初言われていた以上の仕事であるという認識はしていますが」
静「そこは、まあ、なんだ……許してほしい。実際、雪ノ下が前に出るだけで生徒たちの真面目さが一気に高まったからな」
雪乃「本当は、一色さんが作らないといけないものですけれど」
いろはす「あ、あははー……。そこはまあ、いずれということで……」
511 :
凪
:2018/03/24(土) 13:30:56.74 ID:BWZliUXS0
静「甘草」
昇降口で平塚先生に声をかけられた。
静「少しいいか。いや、別にまた今度でもいいんだが」
靴は履いていたけれど、特に急いで帰る用事もない。
奏「大丈夫です」
512 :
凪
:2018/03/31(土) 22:00:16.40 ID:yHHjEa7+0
静「三人の様子はどうだ?」
奏「三人とは、八幡、雪ノ下さん、由比ヶ浜さんのことでいいですか?」
静「ああ。お前から見て、どう思う?」
平塚先生の用件は、三人について俺がどう思うかだった。
奏「表面上はやり取りできているかと思います」
事実、クリスマス会の準備は順調に進んでいる。奉仕部だけの話ではもちろんないけれど、それでも彼らの間にわかりやすい溝はない。
静「表面上は、か」
奏「はい」
でも、おそらく誰だって経験したことのある壁が、確かにあった。
必要があれば話すし、協力だってする。
でも、どこか冷めたような関係。仲間ごっこを見ているような気分になる。
513 :
凪
:2018/04/20(金) 18:33:49.62 ID:+H9xiQVN0
静「ここからは独り言だから気にするな。溝ができるほど関りを持てたのだと言うべきか、それともまだ他人を排斥しようとしているのか。難しいところだな。どう動くか、それとも動かないのかすら、大人で、教師の立場の私からすれば難しい」
奏「……」
独り言と言いながら、しっかりと俺に聞かせている平塚先生の意図は、よくわかる。
静「こんなことを考えるべきではないと思っているのだがな。それでも思ってしまう……。仲間たちで、彼らの間で解決はしないものか、と」
その仲間に、俺は入っているのだろうか。
単に動けるコマとして、俺のことを利用したいんじゃないのか……。
静「さて! 甘草」
奏「はい」
どうやら、独り言は終わったらしい。
静「おまえが抱えている葛藤が何なのか、私にはわからない」
――ハッとした。
俺は、葛藤していたのか?
静「動かなければなにも変わらない、なんていうのは幻想だからな。時間が過ぎると解決することもあるが、そうでないこともある。重い問題なら特に、な。だから、今後悔しないように最善を尽くせ。独身の私みたいに……ぅっ……後悔、するなよ」
そういうだけ言って、平塚先生は歩いていった。
514 :
凪
:2018/05/17(木) 21:33:59.88 ID:Ib2J+Kgr0
問題が山積みで、開催すら一時危ぶまれていたクリスマスパー−ティーも、参加する小学生たちの協力もあったりして、なんとか進んでいった。
12月の寒空の下、街に地域住民の方々に向けてのパーティーのポスターを貼っていく。
かじかんだ指先に息を吹きかけ、和らぐことのない凍てつきをごまかしていた。ショコラやふらのや謳歌は、風邪なんかひいていたりしないだろうか。
奏「……」
ミッションの期限まで、あと一週間を切っていた。このまま何事もなければ、それで終わり。晴れて俺は元の生活に戻る。
問題は、この現状維持がいつまで続くのか……。
515 :
凪
:2018/06/10(日) 17:13:07.86 ID:zDTNS4tN0
八幡「奏」
ポスターもあと一枚というところで、近くを同じようにまわっていた八幡と遭遇した。
奏「あ、八幡。ポスター張りどう?」
八幡「おおかた終わった。あと数枚だな。そこの自販機で何か飲もうと思ってな。マッカン見えたし」
奏「寒いからね。俺も一息つこうかな」
八幡「ちなみにお前は? 残り何枚だ?」
奏「ラス1」
八幡「……お、おう」
516 :
凪
:2018/07/28(土) 22:20:33.05 ID:i/CXddmh0
自販機に温められた缶を手の中で転がしながら、俺は八幡と談笑いながら帰り道を歩いた。
ポスターを貼るのはすぐ終わった。というか、ふとした拍子に八幡と帰ることが増えてきた気がする。帰る場所は同じなんだから、タイミングが合えば一緒に還るのは当然と言えば当然なんだけど。
このポスターを町の人に見てもらって、高校生が企画したイベントに来てもらい、地域の人たちとの交流をする。半ば押し付けられてしまったようなこの企画も、なんとか体裁ができてきた。ポスターを貼る許可をもらったりすることも交流の一つだった。
奏「そういえば八幡、よくポスター貼らせてもらう許可とれたよね」
八幡「俺ができないのはパリピみたいな日常会話だ、馬鹿にするな」
奏「自慢じゃないなぁ……」
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