やはり俺の脳内選択肢が青春ラブコメを全力で邪魔しているのは間違っている。

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

369 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/22(土) 22:56:42.09 ID:Ro6PrgTM0
 一色さんが八幡によって、その袖をぐいとつかむ。

陽乃「あの子は? 甘草くん」

奏「一年生の一色さんです。今ちょっと奉仕部に依頼してます」

陽乃「へー。どんな?」

奏「流石にそれは」

 この人は総武高のOGらしいから、『生徒会長にならないようにしてほしい』なんて依頼、知らない方がいい。

 知ったらやばいことになりそう、という思いもあるが。

いろはす「〜〜」

八幡「〜〜」

 お互いに葉山君たちに聞こえないようにするためか、小さい声で話すからこっちまで聞こえない。

いろはす「葉山先輩。私達とも一緒に遊びませんか?」

 八幡を解放した一色さんが葉山君に言った。


隼人「でも、二人ともまだ買い物あるんだろ?」

翔「だべ。いくべいろはすー」

 わー。空気読めねー戸部君。君この前恋愛がらみで告白しようとしてたのに他の人のことには無頓着なの?

 ……いやあるいは、気づいて葉山君に気をつかっているか。

いろはす「は〜い。ではまたー。先輩、また今度話聞かせてくださいね?」

 一色さんが別れ際に放った八幡への一言で、八幡が軽く震えるのが見えた。
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/23(日) 02:38:12.06 ID:5aQpf0fjo
乙です
371 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/29(土) 13:32:46.15 ID:LvrJ1EUV0
お店を出てから一行は、すぐ近くにあるカフェに入った。

陽乃「さ、行くよ甘草くん!」

奏「は、はい……」

 結局尾行ついでに買い物をした陽乃さんに荷物持ちにされ、俺は両手に荷物を抱えて陽乃さんについて行く。……あれ、俺なにしにここに来たんだっけ? そうだ、八幡の尾行じゃん……。
372 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/29(土) 13:33:40.34 ID:LvrJ1EUV0
 八幡たちがテーブルに着いた時、俺と陽乃さんは喫煙可能のカウンター席の隣同士に座った。

 陽乃さんが小さく八幡に向けて手を振り、八幡が陽乃さんを確認してその隣にいる荷物持ちを見た。

八幡「ぶっふぉ!?」

 コップに口をつけた状態だった。

かおり「ちょ、比企谷汚いしwwww」

隼人「どうした比企谷君? 大丈夫か?」

八幡「あ、ああ、悪い……ちょっと気管に入ってな」

 苦しいいいわけだな……。思いっきり吹いてたじゃないか……。

陽乃「く……は、はっ……! 比企谷君、面白すぎ……!」

 隣には大笑いをこらえている陽乃さん……。

奏「どうしてバレるようにしたんですか?」

陽乃「ん? 面白そうかなーって」

 だと思いました。
373 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/29(土) 13:37:20.57 ID:LvrJ1EUV0
 注文したコーヒーも飲み終わるころ(これも陽乃さんが出してくれた。本当にいいのか、俺?)、話題が尽きてきた女子がこんなことを話し始めた。

かおり「しかし、サイゼはないわー」

仲町「だねー」

かおり「ねー、隼人君はどう?」

隼人「俺もあんまり好きじゃないな」

かおり「だよねー!」

 あ、八幡がみるみるしぼんで……。

隼人「いや、俺が言っているのは君たちのことさ」
374 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/29(土) 13:38:00.92 ID:LvrJ1EUV0
かおり「え?」

隼人「来たか」

 葉山君が手を上げる、その視線の先には

八幡「……おまえら」

結衣「ヒッキー」

 制服姿の由比ヶ浜さんと雪ノ下さんがいた。

陽乃「わーお雪乃ちゃん。来るんだ」

 陽乃さんが少し意味深につぶやいた。

八幡「なんで……」

隼人「俺が呼んだんだ」
375 : ◆oUKRClYegEez :2016/10/29(土) 13:38:44.47 ID:LvrJ1EUV0
隼人「比企谷は君たちが思っている程度のやつじゃない。こんな素敵な人たちと親しくしている。表面だけ見て、勝手なことを言うのはやめてくれないかな」

 八幡の顔が、暗く、より暗くなっていく。

かおり「……ごめん、帰るね」

仲町「わ、わたしも……」

 二人が店から出ていく。お勘定はしろよ、と場違いなツッコミが脳裏をよぎる。

雪乃「生徒会選挙の打ちあわせ、と聞いていたのだけれど」

結衣「隼人君に会長に立候補してもらえないかなー、って……」

隼人「俺はただ、できることをやろうとしただけだよ」

【選べ
 1、雪ノ下陽乃の袖をつかむ

 2、雪ノ下陽乃の座っている椅子を引く      】
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/29(土) 16:15:18.39 ID:cmpBdRIfo
乙です
377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/29(土) 16:16:00.39 ID:cmpBdRIfo
2
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/29(土) 18:00:47.77 ID:l9mkAhnWO
これは2ですわ
379 : [sage]:2016/11/05(土) 06:46:07.71 ID:p8WxhfI6O
すみません、今週の更新は都合でおやすみです。
今日もこの時間にしか浮上できないです…m(_ _)m
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/05(土) 10:59:03.37 ID:C1UqjAJzo
待つ
381 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/11/12(土) 19:08:28.66 ID:d0h8h3xq0
※お待たせしました。
382 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/12(土) 19:08:58.04 ID:d0h8h3xq0
 ……雪ノ下さんにケンカを売れと。

 そういうことですかそうですか。

 まず、袖を引いた時。

 〜予想〜

陽乃「……ん? どうしたの甘草くん」

奏「あ、え、声大きくないですか陽乃さ……」

八幡「……奏」

 〜予想終了〜

 見つかって面倒なことになるって俺思うな!

 でもこれって椅子を引いた時でも同じような……?
383 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/11/12(土) 19:11:23.91 ID:d0h8h3xq0
※ごめんなさい修正です

 ……雪ノ下さんにケンカを売れと。

 そういうことですかそうですか。

 まず、袖を引いた時。

 〜予想〜

陽乃「……ん? どうしたの甘草くん」

奏「あ、え、声大きくないですか陽乃さ……」

隼人「……甘草くん」

結衣「奏君……と陽乃さん?」

雪乃「……」


 〜予想終了〜

 見つかって面倒なことになるって俺思うな!

 でもこれって椅子を引いた時でも同じような……?
384 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/12(土) 19:12:21.37 ID:d0h8h3xq0
 ――頭痛。

奏「痛っ……」

 どちらかを、選ばなきゃ。

 ……予想していない椅子引きをやってみようか。

 そう思って、俺は勢いよく陽乃さんの椅子を引いた。
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/12(土) 19:30:16.86 ID:KpaFe/CA0
ガタッ
386 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/12(土) 19:54:01.35 ID:d0h8h3xq0
 がっ(椅子を引いた音)

 どっ(陽乃さんが椅子を掴んで座ったまま引かれる音)

 しゅるっ(陽乃さんが勢いに乗って椅子を回る音)

陽乃「どうしたの?」

 バケモノ過ぎるよう……!?

 急に椅子を引いたら反応して座ったままでいるとか、人間の技じゃないと思う。完全な不意打ちだったのに……。

八幡「……これで、なにかやった気になってるのか」

隼人「君と同じことをしただけだよ」

八幡「……そうかよ」

 そう言い残すと八幡は、さっさと店を出て行ってしまった。

結衣「あ、ちょっと、ヒッキー!」

雪乃「用がないのなら、私も帰るわ」

隼人「……ああ、ありがとう」

 由比ヶ浜さんも雪ノ下さんも、八幡に続いて出て行ってしまった。
387 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/12(土) 19:58:48.99 ID:d0h8h3xq0
陽乃「で? どうしたの?」

奏「いえなんでもありませんすみません」

 あるといえばあるけれど、それは言えない。

陽乃「そう。……しっかし、隼人はやっぱりつまらないわね」

 葉山君に聞こえる声で陽乃さんが言った。

隼人「……陽乃さん。いたんですか」

 葉山君がこちらに来た。

陽乃「あ。あんたのテーブルの代金はあんたが払いなよ? 自分で誘った人たちでしょう?」

隼人「俺が誘ったわけじゃあないんだけど……。まあ俺だけ残ってるし、それが当然の義務だろうね」

 凄い。リア充すごい。
388 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/12(土) 20:10:19.50 ID:d0h8h3xq0
陽乃「飽きちゃった。私の尾行はここでおしまい。甘草くん、車呼ぶからそれまで荷物お願いできる?」

奏「はい、大丈夫です」


陽乃「ありがと。助かったわ」

奏「こちらこそ、全部払ってもらって申し訳ないです」

陽乃「いいのよ。そのかわり、今度もつきあってくれる?」

 今度があるのか。

奏「はい、その時は」

陽乃「ありがとう。じゃあ、お休み」

奏「おやすみなさい」

 そう言うと陽乃さんは、黒塗りの高級車に乗って行ってしまった。
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/13(日) 01:13:38.58 ID:2O/oRijeo
乙です
390 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/19(土) 22:03:23.68 ID:4rrWYfl10
 休日だ。

 八幡はぐうすかと惰眠をむさぼり、小町ちゃんは受験勉強をしている。

 そして、俺はというと……。

奏「はああぁぁぁ……」

 相手がいなくなったことで、ようやく息をついた。

 俺は、朝に選んでしまった選択肢――

【選べ
 1、雪ノ下陽乃に一日連れられる

 2、比企谷小町の邪魔をする

 3、比企谷八幡を連れていく       】

 で、3を選ぼうとしたらあまりにも「行きたくない」意思を突き付けられた(完全な寝たふり)ので、仕方なく1を選んだ。

 まあ……ちょうど後悔しているわけだが。
391 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/19(土) 22:04:28.44 ID:4rrWYfl10
 休日だ。

 八幡はぐうすかと惰眠をむさぼり、小町ちゃんは受験勉強をしている。

 そして、俺はというと……。

奏「はああぁぁぁ……」

 相手がいなくなったことで、ようやく息をついた。

 俺は、朝に選んでしまった選択肢――

【選べ
 1、雪ノ下陽乃に一日連れられる

 2、比企谷小町の邪魔をする

 3、比企谷八幡を連れていく       】

 で、3を選ぼうとしたらあまりにも「行きたくない」意思を突き付けられた(完全な寝たふり)ので、仕方なく1を選んだ。

 まあ……ちょうど後悔しているわけだが。
392 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/11/19(土) 22:05:16.07 ID:4rrWYfl10
※おっとやってしまった
すみません
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/19(土) 22:08:50.20 ID:NRHINyQaO
394 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/19(土) 22:08:53.93 ID:4rrWYfl10
 〜回想〜

 1を選んですぐ、本当にすぐ、家の前に黒塗りの高級車が止まった。

 ベルが鳴る。

陽乃「こんにちはー。奏君いるー?」

奏「陽乃さん!? ちょ、とりあえず朝ごはん食べてないんで待っ……というか事前に連絡してくださいよ!?」

 〜回想終わり〜
395 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/19(土) 22:52:10.94 ID:4rrWYfl10
 俺を連れ出した陽乃さんは、昨日とは別の場所で、昨日しなかった買い物をするらしかった。

陽乃「奏君、これどうかな?」

奏「え、えと、似合ってますよ」

陽乃「んー。もっと捻ったというか、バリエーションつけてくれないかなー。こっちも面白くないじゃん?」

 だんだんと寒くなってくるこの時期。陽乃さんは冬服を現在試着中。

俺はその荷物持ち兼感想を言う役。

奏「でも陽乃さん綺麗だから、何着ても似合ってるじゃないですか」

陽乃「そう? ありがとう。でもそれも聞き飽きたって言えば聞き飽きたのよねー……」

 それはそれですg

【選べ
 1、「服がかわいそうですよねー。どれ着ても似合ってるから、どれも陽乃さんの特別にはならない」

 2、「あ、じゃあ。陽乃さんすっごいブサイクですよね」

 3、一輪車を漕ぎながらソフトクリームを食べる     】
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/19(土) 22:55:32.56 ID:KgqGfqxco
1
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/20(日) 20:06:32.82 ID:9GtPMMSA0
むしろ2で
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/20(日) 23:09:15.15 ID:wZacOj61O
これは3ですわ
399 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/26(土) 18:57:02.63 ID:8XZeUB7N0
 1も2も選びにくい。

 2つとも陽乃さんを傷つけることになる。たぶん。

 なら、俺の選ぶ選択肢は一つ、なんだが……冬にソフトクリームなんて売っているとはとても思えない。

 物理的に不可能な選択肢が出ることなんて……、いや何回かあったか?

 となると、上二つから選ぶしかないわけで。

陽乃「どう? 似合ってる?」

 さっき似合ってるって俺言ったじゃないですか。

 頭痛が催促してくる中、そんなことを思いながら俺は1を選択した。

 会話の流れ的に。

奏「服がかわいそうですよねー。どれ着ても似合ってるから、どれも陽乃さんの特別にはならない」
400 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/26(土) 18:57:36.98 ID:8XZeUB7N0
陽乃「ほうほう?」

 陽乃さんがこっちを興味深そうに見てくる。

 ……え、いや、自分の意思じゃないことに対して続けなきゃいけないのかな……。

奏「陽乃さん何着ても似合うから、だから特別な思い入れのできるような服って、ないような気がして」

陽乃「奏君にはそういうのある?」

奏「服……は特には……」

陽乃「男子だもんねー」

 陽乃さんは軽快に笑う。

陽乃「服以外だったら?」

奏「それは、まぁ……」

 謳歌や、ふらのや、ショコラ。真っ先にその三人が浮かぶ。

陽乃「そうかー。確かに、私にはないかもねー」
401 : ◆oUKRClYegEez :2016/11/26(土) 18:58:07.99 ID:8XZeUB7N0
陽乃「昔からだいたいのことはできたし、人はわたしから近づかずとも向こうから来るし」

 口調には一切の含みがない。本心でそう思っているのだろう。客観的に見ても、それは事実だ。

陽乃「だからこそ、対等に見ようとして歯向かってくる雪乃ちゃんや、寄ってこない比企谷くんを面白いと感じるのかも」

 もちろん君も。と陽乃さんは付け足す。

陽乃「特別……ね。雪乃ちゃんにとって私は特別なんだろうけど……私にとっての雪乃ちゃんって、なんだろう?」

奏「俺に振らないでくださいよ」

 返答に困る。

陽乃「そうだね。ごめん」

 陽乃さんはぱっとそう謝った。

陽乃「特別なものは、大切にしなきゃ」
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/29(火) 14:31:05.36 ID:eOaOh90f0
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/29(火) 16:10:05.21 ID:Qkfv35Y/o
乙です
404 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/03(土) 15:14:48.59 ID:8l/OkrBZ0
 俺にとって大切なもの。

 ショコラ。謳歌。ふらの。

 誰も優劣なんてつけがたい、俺の大切な人たち。

 こんな俺に好意を寄せてくれている女の子。

 でもいつかは、一人を選ばなければ。

 それが、彼女たちや俺にとって辛いことでも。
405 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/03(土) 15:15:32.44 ID:8l/OkrBZ0
陽乃「ねえ――奏君はさ、どこから来たの?」

 ――そうだ。俺はここじゃないところから来た。

奏「遠いところですよ、たぶん」

 彼女たちに答えるために。まずは帰らなければ。

陽乃「ふーん……」

 Prrrrrrrrrrrr

奏「あ、すみません……」

 俺のポケットでスマホが鳴った。

陽乃「いいよ気にしなくて〜」

 陽乃さんがひらひらと手を振って出るように言った。

奏「ありがとうございます。……もしもし?」

チャラ神『……つながった! 一週間お店行かなかった甲斐があった!』

 電話の主は、あの神様だった。
406 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/03(土) 15:16:49.48 ID:8l/OkrBZ0
奏「神様の世界にキャバクラあるのかよ」

 ツッコまずにはいられない。

チャラ神『そこは一旦おいといて! 実は、次のミッション次第で元の場所に帰れるんだよ!』

奏「……は? また唐突な」

 見ている人たちが怒りそうな超展k――もとい、急展開で。

チャラ神『前に君のことをアマノカミノソラウになんとか連絡しようとしたんだ。君の世界に目撃情報があったから、使者を送って。そうしたら、彼女の方でもイレギュラーが発生していたみたいで……。選択肢が、彼女の手を離れて暴走しているらしい』

奏「暴走……」

 これまたラノベの後付け設定みたいな……。

チャラ神『元はと言えば彼女の力である選択肢で君はそこに飛ばされている。だから、同じようにミッションで条件を満たし、彼女の力で戻ってこられるはずなんだ』
407 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/03(土) 15:17:22.43 ID:8l/OkrBZ0
チャラ神『もしミッションに失敗すれば、今度は戻って来られなくなる。でも今回のミッションには挑戦しないっていう選択肢がある』

奏「脳内選択肢が消えなくなるってことは?」

チャラ神『ない。その時にはミッションの話自体がなかったことになる』

奏「うーん……」

チャラ神『悩むのはわかる。でも早くしてくれ。この回線もいつまで持つかわからない』

奏「わかった。やるよ」

 彼女たちを、いつまでも待たせておくわけにはいかない。

チャラ神『わかっ……。……ールで……。幸……のってる!』

 そこで電話は切れ、かわりにメールの着信が来た。

〈ミッション
 クリスマスでの決別を防ぐ〉

 誰かと誰かが、決別することが決定しているみたいなミッションだな……。

 『幸運を祈ってる』か……キャバクラの神様にそんなこと言われても、ありがたみなんて全くない。
408 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/10(土) 16:39:45.70 ID:jYraYuME0
奏「おまたせしてすみません」

陽乃「いいよいいよ〜」

 謝ると(まあ形の上のものだけど)陽乃さんは手を振って許してくれた。

陽乃「で、誰からの電話? 故郷の彼女とか?」

奏「まさか。厄介ごとを持ち込むおっさんでした」

陽乃「はははっ! その割には長いような気もしたけど?」

奏「そうですか?」

 勘が鋭い。

陽乃「まあいいや。次のお店行こうか」

 手には、さっきの店の紙袋があった。
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/10(土) 17:37:42.89 ID:z+QCISU8o
乙です
410 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/10(土) 19:11:25.99 ID:jYraYuME0
陽乃「今日はありがと」

奏「いえ、この程度ならいつでも」

陽乃「雪乃ちゃんは……選挙、どうするのかな」

奏「……?」

陽乃「生徒会選挙。雪乃ちゃんは、今まで姉である私を追いかけてきた。でも、文化祭の実行委員長にはならなかった。私がなったのに」

奏「……」

陽乃「彼と会って、雪乃ちゃんは変わったよ。あるいはあの女の子か、その両方か」

奏「俺には、変わったようには見えませんけど」

陽乃「そう? まあ君は昔の雪乃ちゃんを知らないしね。でもだからこそ。中心に近い位置にいながら、決して中心足りえない君に、頼みたいんだよ」

奏「傷つきますね……。……でも、おせっかいじゃ……」

陽乃「かもしれない。だから、もし雪乃ちゃんが行き場をなくしてしまうようなことがあったら……。もし比企谷君たちと仲たがいしちゃったときは、君が間に入ってくれないかな?」

奏「酷い役目ですね」

陽乃「お願い」

 今日初めて見る、軽い冗談を言っていた時とは全く違う目。

 真剣そのものの顔だった。

奏「……わかりました」

陽乃「私は、大切なものの扱い方を間違えたみたいだから」
411 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/10(土) 19:13:07.19 ID:jYraYuME0
奏「違います」

陽乃「え?」

奏「そう考えることが間違っているんです」

 俺は、自分の選んだ選択肢を後悔したことはない。

 もちろん、嫌なことはたくさんあった。

 でも、俺が傷つくことで他の誰かが笑ったままなら、それでいいと思うんだ。

奏「だから、今までの自分を後悔しないでください。それが嫌なら、後悔したいのなら、これからを変えてこれからを努力してください」

陽乃「……うん。そうするよ」

 最後に陽乃さんは、ふわりと微笑んだ。
412 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/17(土) 17:19:53.39 ID:nmgck8ud0
静「……比企谷。あとで職員室にこい」

 月曜日。

 重たい教室の雰囲気の中、チャイムの後の平塚先生の言葉で4時間目の授業は終わり、昼休みになった。

 俺は八幡が平塚先生について教室を出ていったのを確認してから、この空気を作っている一人に話しかけた。

奏「葉山くん。ちょっといい?」
413 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/17(土) 18:52:41.06 ID:nmgck8ud0
隼人「どうした?」

奏「教室……なんか重たいよね」

隼人「……そうだな」

奏「葉山くん。俺は金曜日、君をつけてた」

隼人「陽乃さんから話は聞いた。……陽乃さん、随分と君を気に入っていたよ」

奏「そう?」

隼人「ああ。それに、何か今までとは違う雰囲気になってた」

 ……どうしてだろ?

奏「葉山くん。雪ノ下さん、由比ヶ浜さんから連絡あった?」

隼人「どうして?」

奏「あ……いや、なんでもないよ」

 ミッションのことを気にしすぎたか……。まだクリスマスにはしばらくあるのに。

隼人「二人をあの場に連れてきたこと、間違いだったとは思ってないよ」
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/19(月) 01:43:35.82 ID:BXazvas1o
乙です
415 : ◆oUKRClYegEez :2016/12/24(土) 20:28:25.57 ID:Z9u4TiK80
奏「え?」

隼人「比企谷君は自分の力で彼女たちの信用を勝ち取った。それなのに、彼のことを何も知らないでこの間の彼女たちは彼のことを馬鹿にしていた。俺には、それが許せなかった」

 ――ああ。だからか。

 八幡が、葉山君と友達になれないのは。

 八幡は、自分を犠牲にすることを厭わず、依頼を解決しようとする。それがどんな形であれ、本人たちの意向が叶うならそれでいい、という考え方。

 葉山くんは、自分たちの今の関係を崩したくないから、自分がそうでありたいと思ったことをそのままにしておいたい、という考え方。

 つまるところ――彼らは同族嫌悪なんだ。

 立場の違い故、異なるやり方で。しかし同じところを目指す彼らは、「ああはなりたくない」と思うと同時に、お互いのやり方に憧れて、そして同族嫌悪する。

奏「……そう」

 ここでもし、葉山君に「八幡に頼まれた?」と聞けば、十中八九「違う」と返ってくるだろう。

 八幡がそうであるように――彼もまた、自分の信念をしっかりと持っているから、悪びれなんてするはずがない。
416 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2017/01/01(日) 12:10:59.32 ID:iRQ7Z3iM0
明けましておめでとうございます。
更新遅れてすみません
417 : ◆oUKRClYegEez :2017/01/01(日) 12:14:00.09 ID:iRQ7Z3iM0
奏「ごめん、変なこと聞いた」

隼人「いや、気にするなよ。まあ、あの空気は何とかしないといけないと思うけど」

奏「付き合ってくれてありがとう」

隼人「いや。俺も話せてよかったよ」

 そう言って俺たちは別れた。
418 : ◆oUKRClYegEez :2017/01/01(日) 12:14:42.55 ID:iRQ7Z3iM0
 放課後。

 さっさと教室を出ていった八幡と、それを慌てて追いかける由比ヶ浜さんを横目に俺も荷物をカバンに詰め、部室に向かう。

奏「こんにちは」

 部室が開いていることを確認しながらドアを開けた。中には、雪ノ下さんだけがいた。

雪乃「あら、甘草くん。部活は自由参加なのに、一体どうしたの?」

奏「……あ」

 すっかり忘れてた。

 だから八幡と由比ヶ浜さんがいないんだな。

奏「すっかり忘れてた。雪ノ下さんはどうして部活に?」

雪乃「私は、生徒会選挙のことで城廻先輩に相談しようと思って。……でも、そうね。先にあなたに相談しようかしら」

 雪ノ下さんは俺に椅子に座るよう促し、紙コップと紅茶の準備を始めた。
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/01(日) 20:16:23.07 ID:awpUG/uYo
乙です
420 : ◆oUKRClYegEez :2017/01/07(土) 15:33:34.18 ID:e1fpQld00
奏「相談って?」

 お茶を飲んで一息入れてから、俺は雪ノ下さんに尋ねた。

雪乃「私、生徒会長に立候補するべきかしら?」

奏「どうして?」

雪乃「一色さんの依頼を達成するには、それが一番手っ取り早いからよ」

 一色さんの依頼は信任選挙で悪い結果は出したくないけど会長にはなりたくない、というもの。

 あるいは、

雪乃「私が相手で選挙に負けるというのなら、彼女のメンツも保たれるでしょう?」

 誰もが納得するような、「この人が相手なら仕方ない」という負け方をすること。

 他の人、例えば俺なんかが立候補すると、誰もが納得するどころか一色さんに負けることすらあるだろう。

 でも、雪ノ下さんならそんなこともないのかもしれない。

奏「雪ノ下さんは、それで大丈夫なの?」
421 : ◆oUKRClYegEez :2017/01/07(土) 15:34:52.51 ID:e1fpQld00
雪乃「どういうこと?」

奏「文化祭の時も雪乃さんは仕事を多く抱えすぎて倒れてる。あの時とは違うんだろうけど……それでも、雪ノ下さんの性格というか、特性というか、できることを自分一人でしようとするところは、簡単に変わるものでもないよね」

雪乃「あなたが私を押し倒そうとしたときのことね」

奏「それは本当にごめんなさい」

 脳内選択肢のせいだから……。

【選べ

 1、雪ノ下雪乃を押し倒す

 2、雪ノ下雪乃を突き倒す 】
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/07(土) 18:28:05.97 ID:oCnQfaXNo
1
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/08(日) 09:49:10.66 ID:YAT/FdHoO

424 : ◆oUKRClYegEez :2017/01/14(土) 17:18:12.68 ID:3fVOm7Qq0
 あああああ……。フラグ立ててしまった……。

 前に雪ノ下さんのマンションの部屋で似たような選択肢が出た時は、雪ノ下さんが俺を投げ飛ばして拘束したんだったっけ……。もうずいぶんと前のように思える。

 って、そんなことじゃなくて。

 これ、どっちを選んでもあの時と同じようなことになる気がする。

 突き倒すのと押し倒す……どっちが悪いだろうか。

 どっちもいいわけないから、「どっちがいいか」なんて考え方はしない。

 まず、押し倒す方。

 長く密着する。つまり、雪ノ下さんが技をかけやすい。以上。

 次に突き倒す方。

 触れる時間が短い分、技はかけにくいだろうけど……椅子に座っている雪ノ下さんは、こけたりすると危ないだろう。

 なら……。
425 : ◆oUKRClYegEez :2017/01/14(土) 17:18:52.51 ID:3fVOm7Qq0
奏「雪ノ下さん」

 俺は立ち上がり、雪ノ下さんの座っている近くに行く。

雪乃「なにかしら」

奏「えっと……ごめんっ」

 謝りながら、雪ノ下さんを押し倒した。
426 : ◆oUKRClYegEez :2017/01/21(土) 22:28:53.97 ID:rk9WrJwV0
雪乃「……なにかしら」

奏「……え?」

 雪ノ下さんはそれはもう嫌そうな顔をしていたが……でも、俺に押し倒されていた。

 そして――

奏「いだだだだだだ!?」

 指の関節を極められていた。

 もう一度雪ノ下さんが聞いてきた。

雪乃「なにをしているのかしら?」

奏「いででででごめんなさいどきますごめんなさいっ」
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/22(日) 10:50:15.05 ID:S0mIQTAjo
乙です
428 : ◆oUKRClYegEez :2017/01/28(土) 10:06:35.26 ID:rLQYm3GN0
雪乃「甘草くん……懲りないわね」

奏「ごめんなさい」

 説明したいけど、選択肢のことは説明できない。

雪乃「で、押し倒してまであなたが言いたかったことはなにかしら?」

 あ、そういう風に解釈してくれたんだ。

奏「え、えと、それは……」

雪乃「ごまかさずにはっきり言って」

奏「雪ノ下さんに、生徒会長に立候補してほしくない」
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/30(月) 19:26:31.00 ID:2lu5tYde0
430 : ◆oUKRClYegEez :2017/02/04(土) 18:59:28.86 ID:OIc1yYja0
雪乃「それは、どうして?」

 どうして、だろうか。

 ミッションがあるから?

 いや、生徒会選挙は、彼女たちの決別に直接関係はしないだろう。

 もっとも、俺は何が原因で決別するかなんてまったくわからないけど。

奏「雪ノ下さんに無理してほしくないから、かな」
431 : ◆oUKRClYegEez :2017/02/04(土) 19:00:01.66 ID:OIc1yYja0
雪乃「……続けて?」

奏「と言われても……偽らざる本音なんだけど」

 いくら雪ノ下さんが優秀だとしても、いや実際優秀なんだけど、それでも女の子に無理はしてほしくないというか。

奏「前の学校で、俺が仲いい人たちがさ」

 ……まあ、実際には世界すら違う? らしいけどさ。

奏「自分勝手に気ままに、楽しくやってたからさ。仕事もするにはするけど、みんなで分担してさ」

 雪ノ下さんは無言で促す。

奏「でも、雪ノ下さんは違う。どうしても、たぶん、一人で抱え込んでしまうんだ。信頼をおく人ができても、いやきっとその人にこそ、頼らないんだと思う。たぶん、雪ノ下さんはそういう人だよ」

雪乃「たぶん、が多いわね」

奏「仕方ないよ。まだ会ってそう時間も経ってない」
432 : ◆oUKRClYegEez :2017/02/04(土) 19:08:34.70 ID:OIc1yYja0
雪乃「まあ、確かにそうね」

奏「でも、たぶんをつけていても、俺はほぼ確信に近い思いだよ」

雪乃「……時間、経っていないのに、ど」

奏「わかるよ。これでも結構、個性豊かな人たちと仲いいんだ」

 雪平ふらの。遊王子謳歌。ショコラ。他、生徒会の人たちやお断り5の人たち。

 個性豊かな、俺の知っている人たち。

奏「経験値、じゃないかもしれないけど、俺なりに、理解しているはずだよ」

 それはきっと八幡や、由比ヶ浜さんや、平塚先生も。

 だからこそのこの奉仕部で、生徒会になって雪ノ下さんがたとえ体を崩さずに仕事ができたとしても、いままでの奉仕部はたぶん、消えてしまうから。

奏「だから、俺は雪ノ下さんに立候補してほしくない」
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/04(土) 21:03:34.17 ID:sGSnL1a50
いきなり人を押し倒した奴の話を真面目に聞いてあげる人間の鑑
434 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2017/02/04(土) 21:54:10.83 ID:OIc1yYja0
>>433
に、二回目だから(震え声)
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/05(日) 11:03:36.52 ID:6nVAi4URo
乙です
436 : ◆oUKRClYegEez :2017/02/11(土) 18:28:53.42 ID:v+y7baiA0
雪乃「……まだ理由が薄いわね」

奏「…………」

【選べ

 1、「雪ノ下さんともっと話したいから……かな」

 2、「生徒会で時間を取られるようになったら、雪ノ下さんを攻略できないじゃないか」  】
437 : ◆oUKRClYegEez :2017/02/11(土) 20:21:26.94 ID:v+y7baiA0
 なぜ二つとも口説くような文言なのか。

 『理由』になってないわけじゃあないけど……違う気がする……。

奏「雪ノ下さんともっと話したいから、かな」

雪乃「たとえばどのような?」

奏「……世界平和?」

雪乃「比企谷君と同じような思考回路ね」

 クスリと雪ノ下さんは笑った。

雪乃「一生の?」

奏「……少なくとも、八幡と由比ヶ浜さんに相談してからにしてほしい。俺なんかより、あの人たちの方が雪ノ下さんのことを知ってるから」

 一生のお願い、と言わせたかったのかな……。

雪乃「……わかったわ。明日、二人に聞いてみることにするわ」
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/12(日) 00:55:27.68 ID:FKIX/GzOo
2
439 : ◆oUKRClYegEez :2017/02/18(土) 13:42:27.53 ID:1/d0bfd50
結衣「な、なにかな」

奏「今日、奉仕部の部室に来てほしいんだ」

結衣「どうして?」

奏「雪ノ下さんが、話があるって」

結衣「ふーん……。ゆきのん、どうしてメールとかで教えてくれなかったんだろう……」

奏「もし雪ノ下さんから連絡来てたら、どうしてた?」

結衣「それはもちろん、すぐになんの話か聞いて……」

奏「でしょ? あくまで、雪ノ下さんは部室で話したがってた。でも由比ヶ浜さんに尋ねられたら、自分で話してしまうかもしれないって言ってた」

結衣「……。じゃあ、どうして奏くんには言ったのかな」

奏「昨日、部活が休みになったことすっかり忘れててさ……。で、たまたまそういう話を聞いて、だったら伝えるって請け負ったんだ」

結衣「ヒッキーには?」

奏「家で言ってる」
440 : ◆oUKRClYegEez :2017/02/18(土) 13:42:54.66 ID:1/d0bfd50
 と由比ヶ浜さんに言ったものの、実を言うと八幡から「行く」という言質をとってない。

 俺は言ったけど、八幡は乗り気じゃない返事だったし、放課後逃げようとしたら捕まえて引きずってでも連れて行こうと思っている。
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/19(日) 02:06:02.74 ID:+Rb/pRc2o
乙です
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/02/20(月) 06:31:17.90 ID:q1JmlTJB0
オイラー乙ゥ〜
443 : ◆oUKRClYegEez :2017/02/25(土) 17:21:52.66 ID:twr3JhCv0
奏「八幡」

 授業が終わってするっと帰ろうとしている八幡を取る。

八幡「なんだよ」

奏「奉仕部、行くよ。昨日言ったでしょ……。雪ノ下さんから招集かかったって」

八幡「その雪ノ下が自由参加にしたんだろうが」

奏「雪ノ下さんだって前言撤回くらいするさ」

八幡「行かないと言ったら?」

奏「平塚先生を呼ぶ。結婚してくれるっていう若い男性がいるって」

八幡「やめろよ……。本当に食いついてきそうだろ……」
444 : ◆oUKRClYegEez :2017/02/25(土) 17:23:04.30 ID:twr3JhCv0
奏「連れてきたよー」

雪乃「……本当に連れてこられたのね……」

結衣「やっはろー」

八幡「……」

奏「やっはろー」

 無言で椅子に座る八幡を俺含む三人は横目で見ながら、挨拶を交わした。

八幡「それで、話って?」
445 : ◆oUKRClYegEez :2017/03/04(土) 22:12:01.81 ID:IFyOdzSE0
奏「雪ノ下さん」

雪乃「……ええ、そうね。集まってもらったのは、私の相談を聞いてもらうためよ」

結衣「ゆきのんの?」

雪乃「ええ。……私、生徒会長に立候補しようと思うの」

八幡「どうしてだ?」

雪乃「あなただってわかっているでしょう。一色さんを傷つけないように会長にしないためには、これしかないって」

八幡「それは最悪応援演説で……」

結衣「それはダメだって結論つけたよね?」

八幡「……」
446 : ◆oUKRClYegEez :2017/03/11(土) 12:34:38.61 ID:I1TkvR3G0
結衣「私、ずっと考えていたんだけど……。私が、立候補したらいいと思う」

八幡「……」

 知ってたな。

雪乃「それは――」

奏「当選は、できると思う。でも、それじゃあ雪ノ下さんが立候補することとかわらない」

八幡「……ああ」

 八幡だって、わかってないはずない。

 二人のどちらかが欠けても、奉仕部は成り立たなくなる。

 八幡も、たぶんそう。

 ……じゃあ、俺はどうなのだろう。

 俺は――。
447 : ◆oUKRClYegEez :2017/03/18(土) 12:32:59.60 ID:iE2K0pGf0
 ……もしかして、俺だけは。

 この奉仕部において、「例え欠けても奉仕部が成り立つ存在」なんじゃないのか?

 なら、俺が。会長に立候補すればいい。たったそれだけのことが、どうして今まで思いつかなかったのだろう?

 俺が、本来はこの学校にいてはいけない存在だからか?

 そうだとしても、今だけは――!

奏「俺が、立候補するよ」
448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/20(月) 15:05:13.58 ID:+BpvOuNh0
こんな変態が当選できるわけないだろ!いい加減にしろ!
449 : ◆oUKRClYegEez :2017/03/25(土) 21:20:08.66 ID:DBqd1WW+0
八幡「……お前が立候補しても、勝てる見込みはないだろ」

 そうでしたー!

 学園祭の件はそこそこ知れ渡ってて、かといってその悪い印象を挽回するようなこともしていない。

 そもそもの問題、俺は一色さんの「対等な敵」足り得ない。

雪乃「……」

結衣「……」

 二人は黙ってしまい、八幡はため息をついた。

 なにもそこまで飽きれなくてもいいじゃないか。
450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 23:58:02.21 ID:5Dw/ncTw0
(当選は)駄目みたいですね…(達観)
451 : ◆oUKRClYegEez :2017/04/01(土) 19:37:20.47 ID:NzErZ20v0
 しかし……。そもそもが無理難題なんだよなぁ。

 一色さんを傷つけない方法で、一色さん一人しか候補者のいない選挙で一色さんを負けさせる。

 方法として、今考えていたのは「一色さん一人の候補者」という状況を変えて、奉仕部の誰かが立候補するというもの。

 でもそれだと、どうしても今の奉仕部がなくなってしまう気がしてならない……。

 一色さんを傷つける、というのは一色さんが可哀そうだし、そもそもそれは大前提だ。

 なら、どうす……ん?

 一色さんを、負けさせる?

 一色さんが傷つかないのなら、それを大前提とするのなら、一色さんを勝たせるもしくは負けさせることはさして重要じゃあないのか?

 一色さんをその気にさせられれば、そもそもこの依頼自体が消えるんじゃ……?
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/01(土) 21:44:32.95 ID:8PJ1bVvs0
そうだよ(便乗)
453 : ◆oUKRClYegEez :2017/04/08(土) 13:45:39.88 ID:rvHs98oj0
奏「俺に、ちょっと考えがある」

八幡「……」

 八幡は何かつかみかけている。そんな表情だった。

結衣「どんな考え?」

奏「ちょっと口では説明しづらいかな。でも、誰も傷つかないことは確かだよ。俺も含めて」

 自己犠牲の方法ではないことを強調した。
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 17:19:06.03 ID:we/kIXTx0
選択肢「駄目です」
455 : ◆oUKRClYegEez :2017/04/15(土) 22:29:27.17 ID:NIJaoKwn0
 家に帰って、八幡と二人で話し始めた。

奏「八幡が考えているのは?」

八幡「俺は一色をその気にさせるだけでいいと思ってる。やる気にさせるなにか、が大事なんだが……」

奏「俺も同じ考えだ」

八幡「これは詐欺まがいかもしれねえが……」
456 : ◆oUKRClYegEez :2017/04/15(土) 22:35:41.12 ID:NIJaoKwn0
奏「そんなのはだめだよ」

 八幡からの『やり方』の説明を聞いて、真っ向から反対した。

八幡「どうして……」

奏「いつか一色さんがその話を聞いた時に、後悔してしまうかもしれないから」

八幡「じゃあ、他に案があるのかよ」

奏「八幡のやり方を聞いて、完全にできたよ。署名活動だ。選挙前投票をしよう」
457 : ◆oUKRClYegEez :2017/04/22(土) 13:46:17.85 ID:Fu7v2gFK0
八幡「選挙前投票……」

奏「うん。俺たちの方で何人か許可をもらって、誰がいいかに署名する形で投票してもらう。一色さんのところに名前が多くなれば、それを見て一色さんはやる気になってくれるかなって」

八幡「そう簡単にいくのか?」

 確かに、そもそも一色さんに署名が集まらないといけない。

 でもまあ、だからこその署名という形だ。

奏「他の人に、自分が誰に入れたかわかる形なのが署名だよ。この人を応援するっていう街角アンケートで、実名を出す感じ」

八幡「ああ……?」

奏「一色さんの立候補に必要だった30人の署名。その人たちは一色さんに入れざるを得ないだろうし、それに葉山君にも頼むつもりだよ」

八幡「葉山に?」

奏「大衆心理で、一色さんに入れてもらう。葉山君の名前が一番上にあるのなら、みんなそこに入れたくならないかな?」
458 : ◆oUKRClYegEez :2017/04/29(土) 17:33:17.61 ID:OvoQUz210
八幡「そもそもの問題として、あいつがやってくれると思うか?」

奏「俺ならともかく、八幡ならいけると思う。卑怯かもしれないけれど、修学旅行のことをチラつかせれば」

八幡「お前な……」

奏「葉山君も、言ってたじゃないか。八幡にだけは頼りたくなかったって。俺は葉山君がどうしてそんなことを言ったのかは知らないけれど、ここで恩を返してもらえば、それでおあいこになる」

八幡「できれば恩はとっておきたいんだが」

奏「今使うべきでしょ……」

 塾講師みたいな言い方になっちゃったじゃないか。
459 : ◆oUKRClYegEez :2017/05/06(土) 10:59:22.53 ID:9n/6kzYp0
 翌日。

 葉山君に聞いてみると。

隼人「……」

 渋られた。

八幡「俺だってお前に頼みたくなんてねえよ」

 それはあるいは、修学旅行の時の再現だったかもしれない。

 ただ――

【選べ
 1、スカートをはいた状態で逆立ちしながらお願いする

 2、生まれたままの姿で土下座をしながらお願いする       】

 こんなものさえ出ていなければ。
460 : ◆oUKRClYegEez :2017/05/06(土) 11:03:46.26 ID:9n/6kzYp0
奏「頼むよ葉山君!」

隼人「……」

 可哀そうな人を見る目だった。

 突然ズボンがスカートに変わるという超常現象の後、逆立ちをしてお願いを始めれば誰だって引く。俺だって以前、その状態で「レッツ真理」された時は引いた。

隼人「わかったから、逆立ちを止めてくれないか……。周りの視線が痛いんだ」

 たぶんその痛い視線は葉山君には向けられていないのだが、それでも承諾を得ることができた。そのことにほっとする。

奏「ありがとう葉山君!」

隼人「頼む。やめてくれないか」

奏「ごめん、もう少し無理そう」

 葉山君の懇願が、周囲の視線が、何より俺の普段鍛えていない両腕が痛いのだが、選択肢が引き起こす頭痛の方が痛かった。やめるなよ、と。
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/08(月) 15:10:47.32 ID:7QBKn9MK0
 可哀そうな人を見る目だった。

実際可哀そうな人だからしょうがない
462 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2017/05/13(土) 07:09:07.43 ID:T2E98pP60
すみません、一週飛ばします
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/14(日) 03:13:19.23 ID:yJEDDnpa0
仕方ないね(レ)
464 : ◆oUKRClYegEez :2017/05/20(土) 19:26:22.22 ID:CcNvjSRa0
 そこからの話は早かった。

 最初は葉山くん、それからクラスの人、一色さんの立候補に必要な30人をつきとめ(というかつきとめていた雪ノ下さんに聞いて)署名をしてもらった。

 学校裏サイトに署名を集めていることを載せると、そこそこの反響があった。

 だれもあまり注目していないイベントではあるものの、聞いたこともない事前投票という話に、みんな少し興味を持ってくれたようだった。

 そこまでが、初日の動き。

 次の日には葉山君にも紙を渡して、署名を集めてもらった。

 葉山君は苦い顔をしていたけれど、三日目に裏まで署名で埋まった紙を渡してくれた。

 裏サイトを見ている生徒も、協力をしてくれた。

 城廻先輩に

めぐり「甘草くん。なにか選挙のことでやってるんだって?」

 と言われ、急ぎすぎたことを一瞬後悔もしたが、

めぐり「まあ今まできいたことがないってことはたぶん校則にもないから、まあ平塚先生にばれないようにだけ気を付けてね」

 とふんわりと忠告されただけだったので、安堵した。
465 : ◆oUKRClYegEez :2017/05/27(土) 10:19:02.39 ID:DgZ+achp0
いろはす「ところでせんぱーい。これってなんのリストですかー」

八幡「事前投票を俺たちがやってたのは知ってるか?」

いろはす「はいー。二年の先輩がおかしなことしてるって噂になってました」

八幡「これは、お前に入れるって言った人の署名だ。お前が会長でいいって言う人が、これだけの数いる」

いろはす「……。……一番上、葉山先輩じゃないですか」

いろはす「……わかりました。ちょっと、頑張ってみます」

結衣「やったー!」

奏「一色さんの依頼は蹴ったみたいなものだし、選挙のこと、手伝わせてもらえないかな」

いろはす「ちょっ、みなさんどこに――外か!」

雪乃「ええ、部室の外で聞かせてもらったわ」

結衣「新会長いろはすの誕生だね!」

雪乃「流石に気が早いわ由比ヶ浜さん……」
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/28(日) 03:12:34.00 ID:25mfhIFa0
いろはす「はいー。二年の先輩がおかしなことしてるって噂になってました」

おかしな先輩とか…奏さんのことかな?
467 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2017/06/03(土) 15:56:56.83 ID:t8my5Gke0
すみません、今日の更新はお休みします。
468 : ◆oUKRClYegEez :2017/06/10(土) 23:22:25.86 ID:TogJi3w90
いろはす「私が生徒会長になった暁には――」

 壇上で一色さんが演説を滞りなく続けている。

 雪ノ下さんと原稿を考え、雪ノ下さんの厳しい指導の下練習を重ねて一色さんに、生徒から「一年生会長だ」などという不安の声は出なかった。
257.75 KB Speed:0.1   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)