やはり俺の脳内選択肢が青春ラブコメを全力で邪魔しているのは間違っている。

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169 : ◆oUKRClYegEez :2016/01/17(日) 14:40:46.49 ID:Oi4lgRQu0
沙希「あ、比企谷」

八幡「おう、川崎か」

 2−Fの教室の前で、川崎さんと会った。

八幡「なぁ、相模を見なかったか?」

 単刀直入に八幡が聞く。

沙希「相模さん? そこの階段を上がっていったけど」

奏「本当⁉ ありがとう!」

 言うやいなや、俺は走り出す。

 そこの階段の上に行けば、材木座君の言っていた屋上だ。

八幡「ありがとよ、愛してるぜ川崎!」

沙希「なっ……⁉」

 少しあとからついてきた八幡が何と言ったのか、聞こえなかった。
170 : ◆oUKRClYegEez :2016/01/17(日) 14:41:30.04 ID:Oi4lgRQu0
 きいいぃぃ……ときしむドア(立ち入り禁止という紙があったが無視)をあけ、俺と八幡は屋上にでた。

 そこにいたのは――

八幡「相模」

 探し人だった。

南「なに?」

八幡「時間がない、用件だけ言うぞ。もうすぐエンディングセレモニーが始まる。実行委員長挨拶をしに体育館に戻れ」

南「どうして? 雪ノ下さんがいる。あの人が代わりにやればいいじゃん」

 言い争いが始まった。八幡に、少し焦りが見える。

八幡「お前の持ってる投票結果を発表しなきゃいけないんだ。早く戻れ」

南「どうして? じゃあ、この紙だけ持っていけばいいじゃん。どうせ私、最初の時みたいにつっかえるだろうし、それなら紙を持って雪ノ下さんや他の人がやった方がましじゃん」

 確かに。

八幡「お前が発表しなきゃ意味ないだろ、実行委員長なんだし――」

 そうだ、ミッション!

 『相模南に、文化祭を完遂させる』は、こういうことか!

 雪ノ下さんに頼ってはいけない、誰かに頼ってはいけない、ただの相模さんが、エンディングセレモニーを完遂しなければいけないのか!

隼人・女生徒A・B「「相模さん(南)!」」

 八幡の手が詰まってきたところで、隼人君が来てくれた。

 彼らの持つリア力には舌を巻く。

 隼人君がここにいるということは、隼人君たちのライブはもう終わっている。

 ……もう、時間はない。

隼人「さぁ、相模さん、みんな待ってるよ」

南「でも……うち……みんなに迷惑かけて……」

女生徒A「そんなのだれも気にしてないって」

女生徒B「そうそう!」

 八幡・俺のペアの時はてこでも動かなかった相模さんの態度がコロッと変わっている。

 リア充、恐るべし。

隼人「さ、戻ろう?」
171 : ◆oUKRClYegEez :2016/01/17(日) 14:42:56.78 ID:Oi4lgRQu0
南「ウチ、最低……」
172 : ◆oUKRClYegEez :2016/01/17(日) 14:43:23.45 ID:Oi4lgRQu0
 その瞬間。

 脳に激痛と文字が走った。

【選べ

 1、 比企谷八幡を犠牲にする

 2、 相模南を犠牲にする

 3、 甘草奏を犠牲にする            】
173 : ◆oUKRClYegEez :2016/01/17(日) 14:44:57.67 ID:Oi4lgRQu0
 八幡を犠牲――これは、八幡自身が自分を傷つけるやり方で、『奉仕部への』依頼、相模南の自立を含む文化祭の成功をさせる、ということだろう。

 相模南を犠牲――具体的なことはなにも思い浮かばないが、これはなぜか、俺の選択肢のミッションに関わってくる気がする。

 甘草奏、つまり俺を犠牲――一番堅実で、それでいて他人を傷つけない選択肢。

 これがあるだけ、この選択肢はありがたいと思う。

 だれも傷つけずに、問題は解決する。

 だから。

 なにもしなければ1番になっていたはずの現実は、俺が3を選択することで、かなり変わることになる。


八幡「ああ、ほんっとうに」

奏「うん、本当に最低だね」

八幡・隼人・南・A・B「「「「!?」」」」

 屋上にいる全員が息を飲むのがわかる。

 八幡でさえも、信じられないという目でこっちを見ている。

 ちったあ、俺にも任せろよ。

 もちろん、選んだのは3番だ。

 なんと言えばいいのか――なぜか、頭の中にすらすらと文章が浮かんできた。

 まるであらかじめ知っていたように。
174 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/01/17(日) 14:46:46.21 ID:Oi4lgRQu0
※ また火曜日に。
175 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/17(日) 15:16:12.17 ID:A9hJZ1ExO
乙です

奏無双クルー?
176 : ◆oUKRClYegEez :2016/01/19(火) 11:13:33.52 ID:WEbwYXfS0
奏「本当に最低だね。
  自分から言い出した文化祭実行委員長の仕事を、最後には自分でやめようとしてるんだから。何がしたいのか、全くわからない。かと思えば、今度は葉山君の言葉には軽〜くのっちゃってさ? はぁー、今までの俺たちの苦労は何だったんだって話。だって、俺たちが別に頑張らなくたって、文化祭は成功したんでしょ? 委員長がやらなくていいんだから、俺たちがやってもやらなくてもかわんないじゃん。
  相模さん、君、奉仕部に変わりたいって依頼したんだって? 君自身に変わる意思がないのなら、表面上だけ頑張ってきた俺たちって何なんだろうね? 君は聞いてない? 奉仕部はただのボランティア団体じゃない」
177 : ◆oUKRClYegEez :2016/01/19(火) 11:14:38.15 ID:WEbwYXfS0
 よくこんなに詭弁が自分の中から出て来るな、と思いつつも、続ける。

奏「君も知っての通り、世界は残酷で君になんか見向きもしない。オープニグセレモニーのことがチラついているのかもしれないけれど、誰にでも失敗はあるし、なんどでも繰り返してしまう。けど君は逃げようとしてる。葉山君の優しい言葉に甘えて、本当の友達と呼べないような友達に慰められて、君は、どこの誰より君自身から逃げようとしてる。」

 それは、俺が選択肢を持っているから、人一倍感じること。

 選択肢は、自分にうそをついてはだめだ。

 つらい。苦しい。いやだ。

 でも。ここで逃げたらダメなんだ!

奏「そうやってずっと逃げ続けてるんだ。君は友達がいるって思ってるけど、本当の友達なの? 友達じゃない、今もこうして糾弾してる俺たちが、一番先に君を見つけたんだ。誰も君を、本気で探そうとはしていなかったんじゃない? 君もホントは心のどこかでわかってるんじゃない? 君が思ってる友達の中で、自分はその程――」

隼人「そろそろ黙れよ」

 これが壁ドン! ただし俺が叫びたいことはキャー、でなく、がふっ、だ。

 葉山君、きついきつい……。
178 : ◆oUKRClYegEez :2016/01/19(火) 11:27:38.88 ID:WEbwYXfS0
 葉山君が俺を抑えている間に、相模さんたちグループは屋上から出て行った。おそらくは、エンディングセレモニーに向かったのだろう。

女生徒A「なに、あいつ? 転校生?」

女生徒B「何様よ、南泣かせて」

南「ううっ、ううっ……」

 女子が出て行ってから、葉山君は俺の壁ドン、もとい拘束を解いた。

隼人「まさか、お前も比企谷と同じことをするとは思わなかった。……すまない」

 何を返すこともできず、葉山君は去っていった。

八幡「奏」
179 : ◆oUKRClYegEez :2016/01/19(火) 11:28:20.22 ID:WEbwYXfS0
奏「……なに?」

 話せるくらいには、葉山君のダメージから復活してきた。

八幡「どうして、こんなことをした」

奏「どうしてって……。しなきゃ、八幡がしてただろ?」

八幡「それはそうだが……。学校内ですでにぼっちの俺と、転校したばかりでまだあまり人が定着していないお前とじゃ、傷つきの度合いが――」

奏「オープニグセレモニーでもう十分俺はアウトだよ。それに、それはお前が傷ついていい理由にはならない」

八幡「おまえだって――」

奏「終わったことだよ。それに、俺は俺が傷つくことには慣れてる」

 選択肢というもので。

八幡「……」

奏「いこう? もしかしたら、雪ノ下さんと由比ヶ浜さんたちのライブ、見えるかもしれない」
180 : ◆oUKRClYegEez :2016/01/19(火) 11:33:27.89 ID:WEbwYXfS0
 BGM・Bitter Bitter Sweet


雪乃・結衣「「見つめるーたび ドキドキしーちゃう♪
      君にもっと、近づきたいのー……」」

 会場は大盛り上がり。

 雪ノ下さん(姉)のドラムが全体のリズムをコントロールし。

 会長の正確なキーボードが音階を奏で。

 平塚先生のベースが荒々しく会場を沸かせ。

 雪ノ下さんと由比ヶ浜さんの声が軽やかに響く。

 文化祭のラストにふさわしいライブだった。
181 : ◆oUKRClYegEez :2016/01/19(火) 11:40:38.22 ID:WEbwYXfS0
 舞台裏。

女生徒A「おつかれ、南」

南「うえっ、えぐっ……」

女生徒B「あの転校生がなにもしなきゃよかったのにね。
     ドンマイ、南」

 近くで作業している俺にわざと聞こえるように喋る彼女ら。

 片づけ手伝えよ。

静「すまなかったな、比企谷、甘草」

八幡「いえ、どうってことないいっす」

 あのあと八幡には、屋上でのことは話さないように口止めした。

 彼女らは大げさに、俺のことをけなしまくった言い方で学校に広めるだろうが……かまわない。俺はそういうことをした。

 だから、八幡は先生にも屋上のことは話さない。

奏「はい、いやぁ、文化祭なんとか成功してよかったです」
182 : ◆oUKRClYegEez :2016/01/19(火) 12:07:11.19 ID:WEbwYXfS0
静「そうか。比企谷。甘草。」

 平塚先生は、ふっと、柔らかな笑顔になっていった。

静「準備の段階から、君たちの功績は大きかったように思う。最後もそうだ。
  しかしだな。他人を救うため、というのは、自分が傷ついていい理由にはならないよ」

八幡「いいセリフっすね。奏に先越されてなきゃ」

静「そうだろうそうだろ……へっ!? 甘草、先に言ってたのか……」

奏「ええと、はい、まぁ……」

静「うう……。まぁーあれだ! お疲れさま」

奏「お疲れさまでした」

八幡「奏、目上にお疲れ様でしたは失礼になるぞ。まぁ他にいい言葉が出てこないのは確かだが」

静「はは、こういう時は素直にお疲れさまって言えばいいさ」

八幡「あんた国語教師だろ……」
183 : ◆oUKRClYegEez :2016/01/19(火) 12:26:53.30 ID:WEbwYXfS0
 なんとなく、八幡の足が部室に向いていたので、俺も一緒に行った。

雪乃「あら、ヒキガエル君。それに甘草君。どうしたの?」

八幡「なぜ奏の名前は間違えず俺にはダイレクトに古傷えぐってくるんだ」

奏「雪ノ下さん、何してるの?」

雪乃「ふふ。……これ、進路希望調査
奏「俺たちも書くやつさっさと終わらせよう。八幡」

八幡「そうだな」

雪乃「なにかあるの?」

奏「文化祭のまとめ。俺たち記録係だから」

雪乃「そう。お疲れさま」
184 : ◆oUKRClYegEez :2016/01/19(火) 12:27:28.73 ID:WEbwYXfS0
奏「雪ノ下さんも。お疲れ」

八幡「おつか――」

結衣「やっはろー! ゆきのん、ヒッキー、奏君! 後夜祭に行こう!」

 部室のドアを勢いよく開けて、由比ヶ浜さんが入ってきた。

八幡「後夜祭?」

結衣「うん!」

雪乃「語感から察するに、前夜祭の逆バージョン、といったところかしら」

結衣「そう! それ!」

八幡「いかんぞ」

奏「俺も」

雪乃「私も」

結衣「なんでこんな時だけみんな意見あうし! 行こうよ〜」

八幡「俺が言ってもみんな気ぃつかって楽しめねえだろ」

雪乃「同じく」

奏「俺は……」

【選べ

 1、「小町ちゃんに早く帰って会いたいから、行かないよ!」

 2、「相模さんに会いたくないから行かないよ」        】
185 : ◆oUKRClYegEez :2016/01/19(火) 12:27:54.55 ID:WEbwYXfS0
 自分から言わないでほしいと言っておきながら2を選択するのはおかしいかな……

奏「小町ちゃんに早く帰って会いたいから、行かないよ!」

八幡「お、おう……小町も喜ぶな……」

結衣「シスコン……?」

雪乃「これはシスコンになるのかしら……。どちらかといえばロリコンのような……」

奏「と、とりあえず! 行かないからっ!」

結衣「ゆきのーん……」

雪乃「……わかったわ。行けばいいのでしょう?」

結衣「やったー! ヒッキーは?」

八幡「はぁ、俺は行かないと」

結衣「ヒッキーは?」

 怖

八幡「わかったよ」

結衣「奏くんは?」

奏「俺も行かなきゃだめ?」

結衣「うん!」

奏「わかった」

結衣「よーし! みんなで後夜祭にいこ―!」

 相模さんと会わなければ大丈夫……かなぁ……。
186 : ◆oUKRClYegEez :2016/01/19(火) 12:29:36.33 ID:WEbwYXfS0
 大変だったけど楽しかった文化祭。

 進まない選択肢の謎。

 これから……どうなることやら。
187 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/01/19(火) 12:34:59.79 ID:WEbwYXfS0
※祝・6巻完結!

 次からは7巻、修学旅行編ですが、書き溜め完全になくなった(今日のも最期の方、ぶっつけでかいてるやつ)ので、一週分休んで書き溜めます

 charlotteの方は書くので、見ていただければと。
188 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/19(火) 12:36:12.97 ID:spVPw6w3o
乙です
189 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/19(火) 20:44:58.40 ID:2taBsoFMO


選択肢で雰囲気ブチ壊すのかと思ってたら…まさかシリアス展開のままとは…
190 : [sage]:2016/01/20(水) 21:37:53.67 ID:SKVQLalSO
>>183訂正

雪乃「ふふ。……これ、進路希望調査票よ」

八幡「あぁ、あったなそんなの……」

奏「俺達もさっさと書くやつ終わらせよう、八幡」

八幡「そうだな」
191 : ◆oUKRClYegEez :2016/01/30(土) 13:30:10.69 ID:q51Ta/mT0
 文化祭は終わり、体育祭もつつがなく終わり、そして数週間が過ぎた。

 俺の悪評はそこそこ広まりはしたが、文化祭実行委員のぐだぐだは割と多くの人が知っていいたことと、葉山君たちのフォローで、なんとかいじめられる様なことには発展しなかった。

 未だに相模さんグループからは嫌われているものの、それは想定内だし、どころかむしろ、想定よりかなり甘かったくらいだ。

翔「っつーか、修学旅行か。……っべーなー」

 最近の話題は専ら、京都への修学旅行のことだ。

 やはり高校の修学旅行という青春イベントは、青春を謳歌するリア充らしい会話だ。

 俺には全く理解できない。やっべーなだけで会話を成立させてる彼らの脳はとてもすごいと思う。もはや脳科学研究会に出た方がいいレベル。

結衣「やっはろー」

 八幡の正面に立ち、声をかける由比ヶ浜さん。

八幡「おう」

結衣「今日、部活行くよね?」

八幡「ああ」

結衣「そっか。じゃ、また部室で。」

 そこで由比ヶ浜さんはちらり、と俺の方を見て。

 視線をそらした。

 あ、あれ!? もしかして照れてる⁉

 と思うはずもなく。

奏(ギクシャクするなぁ……)

 まぁ、十中八九、どころか十中十くらいは相模さんのことだろう。
192 : ◆oUKRClYegEez :2016/01/30(土) 17:06:34.33 ID:q51Ta/mT0
 いじめられる様なことはなくても、こういった「なんか接しづらい」という空気はある。

彩加「ねぇ、八幡」

 戸塚さん(くん?????)が八幡に話しかける。

彩加「今日のLHR、修学旅行の班決めなんだって。それでね? その……」

 なぜか戸塚さん(ほんとにくん????? すっげぇ顔赤らめてるんだけど)が、もじもじと口ごもる。

八幡「……じゃあ、一緒にするか?」

 八幡が察して続きを引き取る。

彩加「う……うん!」

八幡「それじゃあ、あと二人か……」

彩加「どうしよう?」

八幡「どっかの二人組とドッキングだろうな……」

彩加「あ、あのさ? 甘草くんは誘わないの?」

八幡「ああ……そうだな。後で聞いてみるわ」

彩加「え? 今聞けばいいじゃ?」

八幡「あいつにも、いろいろあんだよ」
193 : ◆oUKRClYegEez :2016/01/30(土) 17:15:17.73 ID:q51Ta/mT0
彩加「なにがあるの? ちょっと流れた噂なら、僕気にしてないよ?」

八幡「え? そうなのか?」

 え、そうなの?

彩加「だって、あの甘草君が噂みたいなことをするとは思えないもん。たまに変なことはするけど」

 教卓の上で豚の鳴きまねとかね。
194 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/01/30(土) 17:18:46.36 ID:q51Ta/mT0
※ のうコメとうとう最終巻でましたね。
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/30(土) 17:35:22.48 ID:VNfRFwHg0
おつ
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/30(土) 17:52:32.82 ID:LzmQidsao
乙です
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/01/30(土) 19:40:21.37 ID:xXj/UqNsO
198 : ◆oUKRClYegEez :2016/02/06(土) 13:09:24.84 ID:wAMJWKYA0
 部室にて。

結衣「もー、ヒッキー暗いし……」

八幡「そんなもんだろ、修学旅行なんて。もともと社会を勉強するために行ってるんだ、行きたくない場所でも着いていかなきゃならんことはこれから山ほどあるだろ。なら、この修学旅行で行き先を自分が決めず、他人が決定したルートで行くのも、立派な社会勉強の一つだろ」

雪乃「完全に否定できないのが辛いところね……」

結衣「ゆきのんまでっ! 甘草君は?」

奏「俺? 俺は、他の人と話し合って決めるかな。どうせ行くんならみんなで楽しみたいし」

八幡「リア充の考え方じゃねえか……」

雪乃「話し合う……?」

結衣「えっ!? 普通そうだよね!?」

奏「大丈夫だよ、俺たちはおかしくないから……」

結衣「だよねっ!」

雪乃「比企谷くん。もしかして私たちっておかしいのかしら?」

八幡「ああ、お前はかなりな」

奏「八幡……認めよう……?」

八幡「俺はお前に言われるとかなりおかしなかんじなんだが……」
199 : ◆oUKRClYegEez :2016/02/06(土) 15:19:08.56 ID:wAMJWKYA0
 とんとん。

 と、部室のドアがノックされた。

雪乃「どうぞ?」

 入ってきたのは、クラスのリア充筆頭、戸部君と葉山君だった。

結衣「やっはろー、めずらしいね、とべっちじゃん! どうしたの?」

翔「おおー、結衣―」

隼人「や」

八幡「葉山か」

八幡(とお調子者の戸部)

奏「………」

雪乃「何をしに来たのかしら? 用がないならかえっていただいて結構よ」

 固まった俺と八幡を横目に見ながら、雪ノ下さんが言った。

隼人「あ、いや、用ならあるよ。依頼をしたいんだ」

翔「あー、でもやっぱりぃ? ヒキタニくんとかぁ、転校生に頼めれないっていうかぁ」

隼人「戸部……それは失礼だろ」

雪乃「では、出て行ってくれるかしら?」

八幡「わかったよ……」

奏「じゃ、俺も」

 と、俺たちが部室から出ようとすると、

雪乃「どうしてあなたたちが出ていくの? 出ていくのは彼らの方よ。頼む側なのに礼儀の心得もない、そんな輩の依頼をどうして受けなければならないのかしら。さぁ、早く出て行って」
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/06(土) 17:18:27.85 ID:jMKN4Ym3O
201 : [sage]:2016/02/13(土) 21:55:44.16 ID:c210IW4tO
※すいません、更新明日にします
おやすみなさい
202 : ◆oUKRClYegEez :2016/02/14(日) 14:13:55.47 ID:T46KgeFo0
翔「おっ、おうぅ……」

 戸部君がなさけない声をだしていたけど、俺も彼の立場なら絶対同じ声を出してた自身がある……。

隼人「すまない、雪ノ下さん。ほら、戸部も。謝って」

翔「雪ノ下さんマジパネェわぁ……。ゴメンな、ヒキタニくん、甘草くん」

奏「あ、うん、いいよ。俺がひどいことしたのは事実だし」

八幡「……で、依頼は?」

結衣「珍しい、ヒッキーから聞いた!」

八幡「いや、面倒そうだからさっさと終わって帰ってくんねぇかなと思って」

結衣「うわぁ……」
203 : ◆oUKRClYegEez :2016/02/14(日) 14:15:02.27 ID:T46KgeFo0
隼人「戸部」

翔「うー……わかった……。まぁヒキタニ君には夏に言ってるしな……よし!」

 葉山君の一言で覚悟を決めたのか、ぐっと拳をつくる戸部君。

 ちらりと名前の聞こえた八幡を見ると、訳知り顔で「ふぅーん……」って顔をしていた。

翔「お、俺さ、海老名さんのこと結構いいな、って思ってて……」

結衣「うんうん!」

 由比ヶ浜さんが話に大きく乗っかる。やっぱ恋バナとか好きなのかな?

翔「で……まぁちょっと修旅で決めたい的なことなんだけど」

奏(わかった?)

と八幡に視線を送ると、

八幡(わからん、言っていることが理解できん)

 と返ってきたものの、しかし表情はどこか察したような顔だった。どっちだよ。

結衣「マジ!?」

 由比ヶ浜さんはキラッキラしてるけど、雪ノ下さんは首をかしげて、なんのことだかわからない、という風だ。

リア充とぼっちの違い……
204 : ◆oUKRClYegEez :2016/02/20(土) 16:04:16.84 ID:8pfba9I50
 そんな雪ノ下さんに由比ヶ浜さんが耳打ちして教え、八幡が改めてわかりやすく簡潔に言った。

八幡「つまり、修学旅行で海老名さんに告ってつきあいたいと、そういうことでいいのか」

翔「そうそうそんな感じ。さすがにフラれるとかきついわけ。ヒキタニくん話早くて助かるわー」

雪乃「悪いけれど、お役に立てそうもないわ……」

八幡「俺もだ……」

奏「えっ⁉ どうして?」

結衣「手伝ってあげないの⁉ ゆきのん」

雪乃「つきあうって、具体的にどうすることかわからないし……」

八幡「だな……」

【選べ

1、「手伝おうよー、とべっち可哀そうじゃん」

2、「八幡、とりあえず俺とつきあってみる?」

3、平塚先生と付き合う                         】

 急に選択肢来るな最近へこみがちだと思ったら!

 普通に考えれば1が正解なんだけど、今までとべっちだなんて読んだことないしなぁ……。

 2はホモ扱いされる。腐女子大歓喜。以上。

 3? 考えるまでもない。

奏「手伝おうよー、とべっち可哀そうじゃん」
205 : ◆oUKRClYegEez :2016/02/20(土) 16:39:54.63 ID:8pfba9I50
結衣「そうだよゆきのん、とべっち困ってるみたいだし」

選択肢は正解。


雪乃「……まぁ、そこまで言うのなら」

八幡「はぁ……やりますか」

翔「まじサンキュー、結衣も雪ノ下さんも」

 あ、あれ? 八幡と俺は?

奏「具体的には何をすればいいの?」

翔「や、だからさー、俺が告んじゃん? そのサポート的なこと?」

 小さく、

結衣「ひゃー」

 と言っているのが聞こえたけれど…

八幡「思いのたけはわかった。逆に言うと思いの丈しかわからなかった」

 うん。具体的にって聞いたのになにひとつ具体的なことは言ってない。

八幡「けどな戸部、言っちゃなんだがそれって結構リスキーなんじゃないか?」
206 : ◆oUKRClYegEez :2016/02/27(土) 14:08:09.91 ID:9R08Iizx0
結衣「リスキー?」

雪乃「リスク。危険を被る可能性のこと」

結衣「それくらいわかるしっ! ゆきのん酷い!」

奏「どういうリスク?」

八幡「そうだな。海老名さんに告白するだろ? んで振られるだろ?」

結衣「そこ確定してるんだっ?」

八幡「それだけじゃない。告白した次の日からそのことがクラス中に知れ渡って、噂される。それを偶然耳にしてしまい、ちょっぴり傷つくリスクがある」

雪乃「比企谷君……」

結衣「またヒッキーの実話じゃん……」

奏「そうなの? 由比ヶ浜さん」

八幡「おい、そこでなぜ本人でなく由比ヶ浜に聞く」

奏「いや、だって……八幡より由比ヶ浜さんに聞いた方が他の話も聞けるかなと……」

八幡「……」
207 : ◆oUKRClYegEez :2016/02/27(土) 14:08:50.52 ID:9R08Iizx0
八幡「リスクならまだあるぞ。親しい人に告ったらその後の人間関係がだな」

 親しい人に。親しいと思っている人に告白するリスク、か。

 なぜだか、少し懐かしく寂しい気分になる。

隼人「その辺はうまくやるよ」

八幡「……そうか」

 葉山君の言葉に、八幡は口をつぐんだ。

隼人「それじゃあ、俺部活あるから、あとは頼むな。戸部も、遅れんなよ」

翔「おー」
208 : ◆oUKRClYegEez :2016/03/05(土) 14:29:11.52 ID:NbPcwOQo0
翔「っつーわけで、バシッとよろしく」

雪乃「よろしくと言われても……なにをしたらいいのかしら?」

奏「……この中でそういう経験のある人は?」

八幡「俺のは役に立たんだろ。失敗談だしな」

雪乃「私もないわ」

 自然と由比ヶ浜さんに視線が集まるが、

結衣「わ、私もないよ!」

奏「じゃ、どうするの」

雪乃「……とりあえず戸部君のアピールポイントを探してみましょう」

翔「……隼人君と友達?」

結衣「さっそく人頼みだし……」

 中々に案は出な

結衣「甘草君、何かある?」

奏「いや。俺はまだ戸部君のことそんなに知らないし……」

 rrrrrrrrrr

翔「おっとやべ、先輩来るらしいから俺部活いくわ。それじゃ、オナシャス!」

結衣「いってらっしゃーい」
209 : ◆oUKRClYegEez :2016/03/05(土) 14:29:46.37 ID:NbPcwOQo0
 翌日。2−Fでは、ホームルームでの修学旅行のグループ決めがされている。

 八幡は依頼のため葉山君・戸部君、あらかじめ約束してた戸塚君(さん?)とグループを作っている。

 雪ノ下さんは別のクラス。ここでの話に直接は関わらない。八幡のグループに関して意見はしたけれど。

 そして俺は。

静「どうせ余りなんだ、自由にしていいぞ。望ましいのはどこかのグループを5人にしていれてもらうことだがな。お前にとってもそれがいいだろう。3人グループを増やすより私も手間が省ける。比企谷たちのグループに入るか?」

 と言われていたので、

奏「じゃ、それでお願いします」

 八幡・戸塚・戸部・葉山君グループになった。
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/11(金) 00:13:47.73 ID:zQKyr8HJo
乙です
211 : ◆oUKRClYegEez :2016/03/13(日) 10:25:12.51 ID:eHnmJNe60
 いよいよ明日に出発、という日。

 奉仕部の部室に集まって、最期の打ち合わせをする。

 由比ヶ浜さんが大量の雑誌を持ち込んで

結衣「じゃあ、はじめよう!」

奏「戸部くんのデートプランかぁ……」

結衣「どこがいいかなぁ……」

雪乃「行くときはまだ紅葉の季節だし、そういうところがいいでしょうね」

八幡「具体的には?」

雪乃「嵐山や東福寺かしら」

八幡「詳しいな……」

雪乃「調べたもの」

 とんとん。

 ドアをノックする音が聞こえた。

結衣・奏「どうぞー」

「失礼しまう」

 入ってきたのは、クラスのトップカースト、三浦さんと海老名さんだった。
212 : :2016/03/18(金) 18:22:05.80 ID:I40kOBz+O
>>211 修正
入ってきたのは、クラスのトップカーストの1人、海老名さんだった。
213 : [sage]:2016/03/26(土) 17:28:35.34 ID:pvn0UEoD0

 先週更新休んですみません(汗)
214 : :2016/03/26(土) 17:33:10.04 ID:pvn0UEoD0
結衣「姫菜じゃん、やっはろー!」

姫菜「はろはろ〜」

奏「や、やっはろー」

姫菜「腐腐、奏くんもはろはろ〜」

 海老名さんの笑い方がちょっと不気味なのは気にしない。

雪乃「お久しぶりね。適当にかけて」

 椅子に腰かけ、雪ノ下さんが出した紅茶を飲み、一息ついた海老名さんは真剣みを帯びた表情で話し始めた。

姫菜「ちょっと、とべっちのことで相談なんだけど……」

結衣「と、とべっち⁉ なになに⁉」

 あからさまに動揺してどうするの由比ヶ浜さん……

 海老名さんはカッと目を開き、エキサイトしてこう言った。

姫菜「とべっち、最近隼人君やヒキタニくんと仲良くしすぎてるっぽくて、大岡君と大和くんがフラストレーションッ! 私はもっとただれた関係が見たいのに! これじゃ三角関係がだいなしだよっ!」

 ……と、エコーがかかりそうな言い方で海老名さんは吼えた。

 てかこの人、腐ってたのか。
215 : :2016/03/26(土) 17:34:31.83 ID:pvn0UEoD0
結衣「でも、ほら。大岡君も大和くんも、男子同士でいろいろあるんじゃないかなー?」

姫菜「男同士の関係……やだ結衣。はしたない」

結衣「あたし、変なこといった!?」

八幡「いや、大丈夫だ」

奏「わぁ……」

 ふと、海老名さんは微笑んだ。

 エキサイトしているときの表情から、ふっと、その腐った部分が抜け落ちたような笑顔で。

姫菜「でも、今までと違うことは確かだよ。違ったままでいるのはいやなんだ。今まで通り仲良くやりたいもん。
   ってことで、ヒキタニくん。修学旅行でも、おいしいの期待してるから」

八幡「おい……」

 八幡には悪いけど、心底俺の名前が呼ばれなくってよかったって思った。

姫菜「甘草くんも入ってくれたら、よりただれていいけどね? 腐腐腐……」

 訂正。やっぱよくない。

 そして、海老名さんは椅子から立ち上がり、教室の出口へと向かった。

姫菜「ヒキタニくん。よろしくね?」

 去り際に、そう言い残して。
216 : :2016/03/26(土) 17:36:22.14 ID:pvn0UEoD0
 家に着いてから、八幡の部屋がやけに騒がしかった。

 なんだかんだで、修学旅行に浮かれているんだろうか。

小町「奏さん、奏さん!」

 階段を下りると、小町ちゃんが話しかけてきた。

 流石に一か月も居候していると、俺の呼び方も下の名前になった。

 「甘草」より「奏」の方がみじかくて言いやすいらしい。

 俺をはじめて「奏さん」呼びした時の比企谷さん(八幡パパ)の形相が、未だに軽くトラウマになっていることは、今はおいておいて。

奏「どうしたの?」

 ちなみに、比企谷さん、今でも小町ちゃんの「奏さん」を聞くたびにちょっとピクって反応してるのが怖い。

小町「いやぁ〜、ごみいちゃんよりしっかりしてそうな奏さんにちょっと頼みごとがありまして」

奏「なに?」

小町「せっかく京都にいくんですから、お土産買ってきてほしいんですよ〜。ごみいちゃんだと別の買ってきたりとかしそうで」

奏「流石にそれはないんじゃないかなぁ……?」

 他ならぬ小町ちゃんの頼みを、シスコン八幡が遂行しないはずがない。

小町「ということで、この紙を渡しておきます!」

 第三位・生八つ橋

 第二位・よーじ屋のあぶらとり紙(ママンの分も)

 第一位・発表はCMの後で!

奏「第一位は?」

小町「奏さんやお兄ちゃんの、楽しかった思い出です」

奏「うん……」

 修学旅行で選択肢さえでなければ、大丈夫なんだけど……

【選べ

 1、「楽しかった思い出? へへ、どんなことでもいいのか?」
 2、「いまここで思い出をつくろうぜ」              】
217 : :2016/03/26(土) 17:37:49.96 ID:pvn0UEoD0
 おい。

 伏線回収はいらないって何度……というか、早えよ。

奏「楽しかった思い出? へへ、どんなことでもいいのか?」

小町「はい! 笑い方が不気味ですね奏さん……どんな思いで作るつもりですか……」

【選べ

 1、「話せないようなことだよ……へっへへ」

 2、「今ここで実践してみるかい?」

 3、「話せないようなことだよ……実践してみるかい?」    】

 ミックスしてんじゃねえか!

 しかも最近でてなかったからって流石にですぎだろ選択肢!

奏「話せないようなことだよ……へっへへ」

小町「……甘草さんがそういう人だとは思いませんでした」

 誤解……だよっ……!

奏「いや、ちが、誤解――」

 呼び方も甘草さんに戻ってるし!

小町「わかってますって。この一か月ほどわたしに全く手を出していないどころかそういったイベントが全く発生していない時点で、甘草さんのことは信用に値すると思ってますから。 ……ちょっとだけ寂しい気もしますが」

奏「なにか、言った?」

小町「いえ、何も。甘草さん、このカメラ渡しておきますので、しっかりお兄ちゃんを監視してくださいね」

奏「……監視って」

小町「言葉の綾ですよ。楽しんできてくださいね?」

 そういうと小町ちゃんはふんふーん♪ と鼻歌を歌いながら洗面所へときえていった。

 呼び方が「奏さん」になるのは、修学旅行から帰ってきてからのことになる。
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/27(日) 07:57:20.36 ID:wjPcbWXAO
クスった
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/27(日) 09:55:26.08 ID:nJ39dPs+0
乙です
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/27(日) 11:39:43.72 ID:KdVBa4yCO
やっぱ選択肢は重要
221 : ◆oUKRClYegEez :2016/04/02(土) 17:41:51.92 ID:yloBeb5p0
 とうとう、出発日になってしまった。

 比企谷さんが八幡に「これで酒買ってこい」と渡したお金は、俺が「今未成年はお使いでもお酒買えないことになってるんですよ」と言って、比企谷さんに渡した。

 八幡は無念そうな顔をしていた……。こいつ、知っててもらおうとしたな?

 最寄駅から駅に行く。

 時間には余裕をもって家を出たのだが、

【選べ

1、 駅で乗らないホームのベンチに一分座る

2、 切符の購入に手間取る

3、 電車に乗る前にホームでブレイクダンス     】

 という選択肢が出て、1を選択。

 珍しく朝にマックスコーヒーを飲まずぼーっとしていた八幡と共に、乗る電車とは別ホームのベンチに一分(頭痛が止むまで)座り、それから本来行くべきホームに行ったので、かなりのロスが生じてしまった。

 だから、乗るときには結構ぎりぎりになってしまった。
222 : ◆oUKRClYegEez :2016/04/09(土) 17:42:42.34 ID:RDIWyv/c0
 それからしばらく乗り、乗り換えも急いで(これは特に何かあったわけじゃない)すると、電車の中に見知った顔があった。

 川崎さん、だったかな。

 蒼っぽい黒髪(アニメではほぼ蒼)をポニーテールにした、キツそうだけど実はそうでもなさそうなクラスメイトの女子。

奏「おはよう、川崎さん」

 俺の方を完全に無視し、八幡の方はちらりと顔を向けただけで、それから視線をそらしていた。

 ただ、八幡から避けた顔が、やや赤くなっているのを、やや斜めから俺は見た。

 文化祭が終わったあたりからこの調子だ。どうしたんだろう?

 そのまま東京駅に着くまで(選択肢も)無言を通し切り、ものすごい人ごみの中、新幹線のホームを目指す。

 新幹線口には見知った総武高の面々が。

義輝「八幡!」

 八幡は呼ばれた方を向き、面倒くさげになにか話している。というか、あしらってる?

彩加「八幡!」

八幡「戸塚! おはよう」

 さきほどとは打って変わって明るく返す八幡。材木……くんかわいそう。
223 : ◆oUKRClYegEez :2016/04/09(土) 17:59:18.75 ID:RDIWyv/c0
 新幹線に乗り込み、座席を決める。

 海老名さんがなにやらエキサイトしかけていたが、とりあえず無視。

 で、結局こうなった。

   葉山  戸部   川崎
窓               廊下
   三浦 由比ヶ浜 海老名

 戸塚君(さん? 未だに……)は八幡について行っているし、俺もついて行こう。

【選べ

1、 廊下の真ん中でブレイクダンス

2、 廊下の真ん中でリンボーダンス

 3、戸塚彩加の膝の上に乗車      】

 最近選択肢はブレイクダンスにハマっているのだろうか。

 流石に新幹線の廊下ではスペースがないし、選べない。

 戸塚君の膝の上……戸塚君軽そうだから、痛いだろうな……。


 リンボーダンスをして、周囲により引かれました。まる。
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/09(土) 18:03:52.51 ID:RDIWyv/c0
 ……いつの間にか寝ていたよう。

 八幡と戸塚君は仲良く頭を少しぶつけて寝ている。

 ……なにも知らない人から見たら、恋人同士に見えないこともないかもしれない。

結衣「……もう、三人とも寝すぎだよ」

 廊下を挟んで反対側、由比ヶ浜さんがいつの間にか座っていて、くすりと笑っていた。

奏「ははは……。朝早かったからね……」

 苦笑して返す。

 ふと、由比ヶ浜さんの方を見る。

 由比ヶ浜さんの視線が注がれるのは――

奏「由比ヶ浜さん……八幡のこと、好きなの?」

結衣「えっ⁉ えっ⁉ なんで⁉」

 試しに聞いてみると、あからさまに動揺した。ちょっと面白かった。

奏「視線の先がずーっと八幡の方むいてるからさ。もしかしたらそーなのかなーと思って」

 先ほどの反応で確信をもったけど、それは内緒。

結衣「うーん……。話さない?」

奏「もちろん」

 たとえ選択肢で出ても、絶対にその選択肢を選ばないことをここで誓える。

【選べ

1、 小声で「もちろん、言いふらすよ」

2、 大声で「ねぇー、由比ヶ浜さん実は八幡のことー!」  】

奏「もちろん、言いふらすよ」

 大声で言ったら取り返しのつかないことになりそうだし、他のお客さんに迷惑だ。高校生が大勢喋ってるなかで今更だとは思うけど。

結衣「冗談だよね?」

 すっごく真剣な顔をして由比ヶ浜さんが聞いてくる。

 正直ちょっと怖かった。

奏「当たり前だろ」

 そう答えると。

結衣「……奏君。冗談でも、言わない方がいいよ、女の子にとっては」
225 : ◆oUKRClYegEez :2016/04/09(土) 18:04:32.16 ID:RDIWyv/c0
 その通り、だとは思う。

 本当に――この選択肢が恨めしい。

奏「……ごめん」

結衣「うん」

奏「……そろそろ富士山とか見えないかな?」

結衣「あー、かもね」

奏「八幡たち、起こしてみたら?」

結衣「え、なんで?」

奏「アピール?」

結衣「だから、、なんでっ⁉」

奏「俺は寝たふりしてるから」

結衣「ちょっとひどいし⁉」

奏「頑張ってね♪」

 俺は仲直りの代わり、と言ってはなんだけど、由比ヶ浜さんの応援をちょっとすることにした。

 まだ到着までかなり時間がある。八幡を起こしてから、本当にまた寝ようかな?
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/09(土) 18:14:48.68 ID:e0fbVukPO
京豚は害悪
227 : ◆oUKRClYegEez :2016/04/16(土) 22:40:52.61 ID:GODqwd1U0
結衣「わぁ、ちょっと寒いね」

 新幹線でちょっとしたアピールをした由比ヶ浜さんが、新幹線を降りてバスへ向かう途中で言った。

 確かに、関東と比べると京都は寒いだろう。

 雪ノ下さんがちらりと見えたが、きっちりと上着を持ってきていた。準備良すぎだろ。

 八幡と顔を見合わせつつぶるっと震えると、身が引き締まった気がした。魚的な意味でなく。

 ――さぁ、依頼の始まりだ。
228 : ◆oUKRClYegEez :2016/04/23(土) 16:49:10.69 ID:Ja1p4IpZ0
 最初は清水寺に行った。

 これは全体での強制イベントで、集合写真なんかを撮った。

 俺は端っこで、八幡は他の人に隠れるスタイルで各々やり過ごした。クラスで浮いている者同士、考えることは似たようなものだ。

 その後だ。

結衣「ヒッキー、甘草君」

八幡「どうした」

結衣「ちょっと面白そうなこと見つけたから行ってみようよ」

八幡「面倒だ」

奏「列ちゃんと並んでおかないと。由比ヶ浜さん」

結衣「甘草くん最近ヒッキーみたいだし……。仕事のこと、忘れたの?」

奏「いや?」

八幡「観光のときくらい仕事忘れて集中したいです……」

 今度は違った。

結衣「早く! 行こ!」

 行った先の胎内めぐりで、二人組がつくれなかった俺は出口のところで待っていた。

 ぼっちで待っている間に、「今度ショコラたちと来てみたいな」と思ったりした。
229 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/04/23(土) 16:50:30.86 ID:Ja1p4IpZ0
 ※超かたつむり更新すみません
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/23(土) 18:40:10.15 ID:ZWEfmiqXo
期待
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/23(土) 20:38:08.20 ID:JginFfOzO
乙乙
のんびり行こうぜ
232 : ◆oUKRClYegEez :2016/04/23(土) 22:53:30.93 ID:Ja1p4IpZ0
 みんなと合流した後、列に並びなおして清水寺の有名な本殿に入った。

 俺たちのような修学旅行生だけでなく、一般の観光客もいてごった返している。

奏「すげぇ人……」

 嫌になるくらいに人が多い。

 そんな中でも、由比ヶ浜さんがアピール(とは言えないか)をしているのが見えた。

結衣「ヒッキー、写真一緒に撮ろうよ」

八幡「別にいいけどよ……」

 思い出づくりかー、いいなぁ。

【選べ

 1、大声で牛の鳴きまねをして思い出を作る

 2、集合写真に変顔で写り、思い出にする。

 3、清水の舞台から飛び降りる       】
233 : ◆oUKRClYegEez :2016/04/30(土) 14:32:44.22 ID:03twstmO0
 社会的に死ぬか物理的に死ぬかの選択を強要されてる……っ!?

 いや、運が良ければ清水の舞台から飛び降りても死なないのか……? いや、こんな思考がアウトか……。フラグみたいだ……。

 集合写真写真は形に残ってしまう……。あとあとからいじられるネタになるだろう。

 その点では牛の鳴きまねも同じだけど、あれは記録には残らないはず……!

奏「ンモォ〜ウ」

 頭痛。

 まだやるのか!?

奏「モ、モォ〜ウ」

 突如牛の鳴きまねを始めた俺の周りに、やじ馬が集まり始める。

 そして、あ、ちょっとやめて! その可能性は考慮してなかった! スマホで動画撮るのはやめてよ観光客の皆さん!

 自分の意志でやってるんじゃないんだから! ある意味自分の意志だけど……仕方なくだから!

奏「モォ〜ウ……」

 そんな心の叫びが通じるはずもなく、結局SNSで拡散されている俺の鳴きまねを、由比ヶ浜さんが拾って後から見せてくれた。……結構俺うまいじゃん、と思ったのは現実逃避だ。




八幡「災難だったな……」

奏「ほんとだよ……」

ホテルへと向かう途中、完全にうなだれた俺を八幡が慰めてくれた。
234 : ◆oUKRClYegEez :2016/04/30(土) 15:47:32.83 ID:03twstmO0
八幡「じゃ、買ってくるわ」

彩加「いってらっしゃい」

 八幡がゲームの罰ゲームで飲み物を買いに行ったあと、俺はなんとなく、謳歌に電話してみることにした。

奏「俺も、ちょっと外出てくる」

彩加「うん、いってらっしゃい」

義輝「うむ。存分に外の風にあたってくるがいい」

奏「はは、ありがとう」

 ちょっと苦笑いしつつ部屋を出る。
235 : ◆oUKRClYegEez :2016/04/30(土) 15:56:04.26 ID:03twstmO0
 そして、携帯電話で電話をかけ始めた。

 prrrrr……

 prrrrr……

『おかけになった番号は、現在使われておりません。……』

 え……?

 それから二階ほど試してみたが、全て同じ結果だった。

奏(電話変えたのかな?)

 そう思い、今度はショコラ……家にかけてみる。

 prrrrr……

 prrrrr……

 『おかけになった番号は……』

奏(あ、そういえばそうか)

 俺、引っ越ししたんだった。

 ならばと思い、今度はふらのに電話する。

 prrrrr……

 prrrrr……
236 : ◆oUKRClYegEez :2016/04/30(土) 15:56:41.31 ID:03twstmO0
     『おかけになった番号は、現在使われておりません。』
237 : ◆oUKRClYegEez :2016/04/30(土) 16:04:09.85 ID:03twstmO0
 え……?

 どうして、誰にも電話がつながらない……?

 そこで、迷惑かもしれないと思いながら、総武高じゃない人の電話を片っ端からかけていく。

『おかけになった番号は、現在使われておりません。』

『おかけになった番号は、現在使われておりません。』

『おかけになった番号は、現在使われておりません。』

『おかけになった番号は……』

 っ!

 どうして――誰にもつながらない!?

 他の人はともかく、チャラ神にも通じないなんて――何かが、絶対におかしい。

 電話に出ないのならまだわかる気もする。けど――神が、担当である俺に言わずに番号を変えるなんてこと、ありえるのか!?



 そして、気づいた。

 気づいてしまった。

 どうして俺は、今の今まで。

 この一か月ほど。

 あれほど仲のよかった人に、電話せず、されなかったのだろう?
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/30(土) 16:04:31.02 ID:f8yNg0LSO
終わり?
239 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/04/30(土) 16:05:07.89 ID:03twstmO0
※ 迷走してきました。今日はここまで。
240 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/04/30(土) 16:09:19.37 ID:03twstmO0
 >>238
ssは続きますよ
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/30(土) 23:08:39.67 ID:AoK+4t+sO
乙です
いよいよ物語が動き始めたー
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/30(土) 23:37:50.07 ID:h2mmkVyQo
乙です
243 : :2016/05/07(土) 19:30:18.93 ID:UQvx4Ufc0
そこまで考えて、あと少しでおかしくなりそうになった時ーー俺の意識は、途切れた。



奏「んあ……」

目が覚めると、そこはホテルの自分の部屋だった。

静「ああ、起きたか」

見ると、平塚先生が隣で京都の観光雑誌を読んでいた。俺を見ると部屋の畳に置いた。

外は明るく、曇ってはいるが既に日が昇っていることはわかった。

奏「すみません……俺、どれくらい寝てました?」

静「昨日私が夜に見つけてから今までだから……ちょうど12時間ってところか。よく寝たな」

奏「そうですか……」

静「今日も観光……したかったな……恋愛や結婚のご利益あるところ……調べてたのにな……」

付箋がびっしり貼ってある雑誌を恨めしげに見る先生を見て、凄く可哀想に思った。誰か、もう貰ってあげなよ………
244 : :2016/05/07(土) 20:39:38.35 ID:UQvx4Ufc0
静「君は目覚めたんだが、今日の予定はパスして、ゆっくり寝ていたまえ」

奏「……わかりました」

まぁ……当然か。

いきなり倒れたら、まぁ強制送還されないだけありがたいだろう。

静「明後日から、また参加すればいいさ。またちゃんと動けるように、しっかり休んでろよ」

奏「はい」

ゆっくり休むつもりだけど……あの事は考えないと……。
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/08(日) 00:21:35.23 ID:gC8vixNpo
乙です
246 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/05/12(木) 21:44:06.43 ID:33MnJtmI0
 修整
>>244
 いきなり倒れたのだから……まぁ、比企谷宅に強制送還されないだけ、ありがたいだろう。
247 : [sage]:2016/05/14(土) 14:30:52.34 ID:3GL1CB2yO
>>224 追加修正

静「明日から、また参加すればいいさ。



明後日じゃないですね
248 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/14(土) 22:27:43.18 ID:wvmG+it60
 とりあえず、紙に書いて整理してみよう。

 えっと、紙……紙……そうだ、なにも書いてない修学旅行の栞のメモ翌欄。

 栞は回収されるから、後で消しておかないと……

・晴光学園の人や家族とは連絡を取ることが不可能。

・チャラ神とも連絡不可に。

・ミッションもここのろころなし。選択肢が現れるため、警戒は必要。

・ここに来る過程の記憶が曖昧。


 こんなところか。

 しかし……どうしてこうなった。
249 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/14(土) 22:28:08.51 ID:wvmG+it60
 また、寝てしまってたみたいだ。

 もう夕方か……今日も、夕飯食って寝るか。
250 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/14(土) 22:29:00.22 ID:wvmG+it60
 昨日早く寝たこともあって、かなり早い時間に起きた。

 部屋を出ると、そこには既に由比ヶ浜さんが。

奏「あ、おはよう」

結衣「おはよ、甘草くん。ヒッキー待ってるんだけど……」

奏「……奉仕部のこと? それともなんか個人的な用? なんなら起こしてくるけど」

 すると由比ヶ浜さんは顔を赤く染め、動揺しているのがあきらかな感じで言った。

結衣「ぜ、全然!? 個人的な用、とかじゃなくって……ほ、奉仕部のことでちょっと準備しなきゃなーって思って、朝ごはんキャンセルしたしそのことも言わなきゃなーって……」

 慌てて話す由比ヶ浜さんに言う。

奏「俺も奉仕部なんだし……その話聞いてもいい?」

結衣「あ……甘草くんが奉仕部だってこと忘れてた……」

奏「そ、そう……」

 傷つきました。ええ、とても。

奏「えっと、じゃあ、俺も朝飯キャンセルしてくるから……それから集合でもいい? 八幡、まだしばらく起きないと思うよ」

結衣「あ、うん、わかった。……ごめんね?」

 かるく両手を合わせて上目遣い。

 凄いね、並みの男ならまず惚れる。

 でも俺には……いるからな。片思い。

奏「いいよ、気にしてない。じゃ」

結衣「うん、じゃ」

 軽く俺は手を振って、エレベーターホールに向か――

【選べ

1、女子の階に降りて先生に見つかる

2、外に出て京都の朝の街を全力ダッシュ      】


 流石に1はないだろうと思いつつ……でも、一日ほぼまったく動いてない体にはきっつい選択肢だな、2は……。
251 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/14(土) 22:29:38.51 ID:wvmG+it60
 俺は朝食をキャンセルしたものの、お冷を何杯かもらう羽目になった。
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/14(土) 22:38:49.39 ID:ewjOjUQbo
乙です
253 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/21(土) 16:47:01.64 ID:tYKSPM800
 おしゃれなカフェで雪ノ下さんと合流し、朝食をとった後、伏見稲荷の階段を登る。

奏「ふぅ……」

 朝にちょっと運動したおかげで疲れがあるかと思ったけど……逆にいい運動になったみたいだ。かなり長くつらい階段も、それほど辛くない。明日以降の筋肉痛が怖いけれど。

 少しのぼったところで休憩(雪ノ下さんの体力の限界)し、そこで八幡があきらめて(主に雪ノ下さんのおもんばかって)下りることにした。

結衣「甘草くん、元気だね……」

 いつも元気な由比ヶ浜さんがやや疲れ越えで言う。

奏「……そうでもないよ?」

 11月だというのに、軽く額には汗をかいている。

 昼頃になるにつれて増えてきた観光客による人口密度のせいもあるかもしれない。

雪乃「ふぅ……」

 雪ノ下さんがため息をつく。

 八幡がそんな雪ノ下さんを見て『へっ』と笑うのが見えた。

 いや、君が疲れている雪ノ下さんを見てにやっとしたのはわかったけれど、笑いの擬音が『へっ』なのをちょっと自覚してほしいな。周りの観光客の方ひいてるじゃないか。俺も正直ちょっと引いてる。
254 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/21(土) 16:59:21.37 ID:tYKSPM800
 東福寺に行くと、そこには葉山君たちリア充グループがいた。

 写真を撮っているらしい葉山君がフラッシュと一緒に輝いて見える。すげぇ……。

葉山「や」

 葉山君が八幡と雪ノ下さんを見て軽く挨拶する。

 由比ヶ浜さんはもはや挨拶がいらない仲(流石リア充)、俺とは挨拶しない仲。

 由比ヶ浜さんのリア充スキルで、かねてから計画していた同行計画を自然なものにした。恐るべきリア充。

 雪ノ下さんと三浦さんが火花を散らす中、

姫菜「ヒキタニくん」

 海老名さんが八幡を呼んでどこかに行く。

 かなりの人ごみを、八幡のぼっちスキル(本人談)さながらにすり抜けていく。

 八幡はその後を追いかけていくけれど……俺は呼ばれていないから行かない方がいいだろう。

【選べ

1、 比企谷八幡の邪魔をする

 2、甘草奏の邪魔をする             】
255 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/21(土) 17:00:11.68 ID:tYKSPM800
 訳のわからない選択肢唐突にでたな!

 八幡の邪魔をしたくない、とはおもうけど……俺の邪魔をするってどういうことだ?

 とりあえず2を選択すると、俺は頭痛に見舞われた。

 思わず一歩よろめくと、少し軽減される。その先にはきれいに人ごみをすり抜けているぼっちの姿が。

 もしかして……『ついて行かない』俺の意志を邪魔しろと? ついて行けと?
256 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/21(土) 17:00:55.16 ID:tYKSPM800
姫菜「相談、忘れてないよね?

姫菜「どうどう? メンズたちの仲は? 睦まじい?」

八幡「……仲はいいんじゃないか? 夜とか麻雀してるし」

 そこかよ。てか八幡参加してたっけ?

姫菜「それだと私が見れないしおいしくないし!」

 見たいんだ……

八幡「まぁ俺たちも嵐山行くし、その時に……」

姫菜「よろしくね」

 海老名さんの顔は見えなかったが……「よろしくね」だけが、なぜか別の意味に聞こえた。
257 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/28(土) 19:02:45.26 ID:k1TJ7jmQ0
 今日は二レスで。明日もうちょっと続けようと思います
258 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/28(土) 19:03:24.13 ID:k1TJ7jmQ0
 さて、ここは北野天満宮。

 学業の神様こと菅原道真を祭った神社だ。

 小町ちゃんの高校合格祈願に、八幡の希望で寄った。まぁ、俺もちゃんと横で同じ絵馬描いてるあたり、人のことは言えないんだけど……。

八幡「……待たせて悪いな」

奏「待っててくれてありがとう」

 俺と八幡が雪ノ下さん・由比ヶ浜さんのところに戻る。

雪乃「では、行きましょうか」

 次は、嵐山。
259 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/28(土) 19:04:18.02 ID:k1TJ7jmQ0
 ……なぜか変なところで来る選択肢の頭痛『甘草奏の邪魔をする』で、八幡たちの少し後を追うようにして行く。

結衣「甘草くんどうしたの? 急にいなくなっちゃって……」

 正確にはストーカーに近い感じで後ろをついて行っていますよ、ええ。

八幡「まぁ、あいつにはあいつなりの事情があるんだろ」



結衣「あ、あれおいしそー!」

 多くの店が軒を連ねる通りで、由比ヶ浜さんが食欲を刺激され、何かいろいろと買ってるみたいだ。

雪乃「夕食、入らなくなるわよ……」

結衣「あ……。どうしよう、ゆきのん」

雪乃「はぁ……わかったわよ」

 多くの人の喧騒であまり詳しくは聞こえてこないんだけど……由比ヶ浜さんの持っているものを口に入れた。

雪乃「あなたも手伝いなさい」

 雪ノ下さんにジトっと睨まれて、八幡も由比ヶ浜さんから肉まんらしきもの(手で半分に割ってるから間接キスじゃない)を受け取り、食べる。

 由比ヶ浜さんが次に出した揚げ物も、八幡は同じように食べる。それを見て、由比ヶ浜さんが笑う。

 八幡のやつ、はたから見れば普通にリア充やってるんだけどな。
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/29(日) 08:54:59.32 ID:Us+D768Ko
乙です
261 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/29(日) 18:16:44.35 ID:UvbGVtmI0
 竹林の道で会話する。

 ……今は選択肢の効果は出ていない。

結衣「すごいね、ここ……」

奏「足元、灯篭があるんだね」

雪乃「夜になるとライトアップされるそうよ」

 すると先行していた由比ヶ浜さんがはっと後ろを振り返り、

結衣「ここだ! ここがいいよ!」

 と大きな声をあげた。

八幡「何が」

 かな〜り冷たいトーンの八幡に、照れながら由比ヶ浜さんが言う。

結衣「告られる……なら」

八幡「なぜに受動態……」

 ……俺は軽く苦笑して空を見る。

 ――今夜は晴れそうだ。

 ただ、風は秋らしい冷たいものだった。



 夕食の後、みんなで部屋に集まっていた。戸部君の挙動がおかしい。それはもう。恋してるなーって感じの挙動のおかしさだ。

翔「っあー、やっべ……緊張してきた」

 『してきた』じゃなくて『してる』でしょ、という野暮なツッコミはしない。

彩加「なんかこっちまで緊張するね」

 戸塚さ……くんが緊張気につぶやいた。

 というか、本当に一瞬この人が男子部屋にいるのにどきっとするんだけど……今更だけど。

 と、不意に葉山君が戸部くんに一言二言かけて部屋から出ていく。

 それについて行く八幡が気になって、気づいた時にはその後を追いかけていた。
262 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/29(日) 18:17:30.16 ID:UvbGVtmI0
八幡「やけに非協力的だな」

 川辺で会話する二人の声が聞こえる。

隼人「そうかな?」

 いつものイケメンスマイルで受け答える葉山君。

でも、そこには俺でもわかるくらいの暗さがあった。

隼人「そういうつもりはなかったんだけどな」

八幡「じゃ、どういうつもりなんだ?」

隼人「……俺は今が気に入ってるんだよ」

 行かない方がいいか、と思いつつ、今回の依頼に関する件なのはわかったので、どうしても抑えきれず、

奏「続き、俺も聞いてもいいかな?」
263 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/29(日) 18:18:15.99 ID:UvbGVtmI0
 いつもの俺なら絶対にしない。

 でも、隠れて聞いてる方がよっぽど悪いと思うから。

 ――なにか、取り返しのつかないことになるような気がして。

 葉山君と八幡が驚いたように俺を見る。

 葉山君は一瞬驚いたような顔をして、

隼人「別に、いいよ?」

 と言った。

 そして、俺と八幡の方を(自然な動きで)向き直って、続けた。

隼人「戸部も、姫菜も、一緒にいる時間がいいんだ。だから、」

 しかし、そこまで言ったところで、八幡が止めた。

八幡「……それで壊れる関係なら、それまでだったってことだろ」

奏「……っ!」

 言いたい。なにか言い返したい。

 選択肢の頭痛はきていない。でも、文化祭のときに、まさにぶっ壊すことをした俺は……そんなこと言えない。俺が壊した責任を――感じているから。

隼人「そうかもしれない。でも……失ったものは戻らない」

八幡「勝手な言い分だな。お前の都合でしかない」

 葉山君のそんな言葉を、八幡が一蹴する。

隼人「ならっ! ……きみはどうなんだ。君たちは。君たちなら、どうする」

 ……八幡も、俺と同じようなことをしたことがあるのだろうか。

 あの屋上では、そんな雰囲気があったから、という理由で八幡を押しのけ、俺が壊したけど……。

八幡「俺の話なんてどうでもいいだろ」

奏「……俺が、意見できることじゃない」

 壊した立場の人間が……守る側の気持ちなんて。

 わかっているから、葉山君にそれを提示したらいけない。

隼人「……これはただの、俺のわがままなんだ」

 葉山君が、寂しげに笑う。

 わかった。

 彼は……『依頼できない依頼』をしている。

 俺の勘違いかもしれないけど……彼は、『今』を失いたくないと言った。

 つまりは……。

八幡「見くびるなよ葉山。俺は人の言うことを簡単に信じない」

奏「っ!」

 それも、わかった。

 八幡は……やるつもりだ。

 俺が、文化祭でやったことを。

 自己――犠牲を。

八幡「だから、お前のわがままも信じてやらない」

 葉山君が驚いた顔をする。

奏「八幡」

 俺は、気づけば呼んでいた。

八幡「……なんだよ」
264 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/05/29(日) 18:20:05.64 ID:UvbGVtmI0
 そろそろ7巻を完結させます。
 やけにレスが長いのは気にしないでください……。
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 00:02:36.38 ID:/XgpMnjgo
乙です
頑張って
266 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/04(土) 13:02:47.67 ID:5Z0R9HG40
奏「なにを……するつもり?」

 必死に捻り出した言葉がそれだった。

八幡「…………」

 何も答えない。答えるつもりもないだろう。

 でも、ここで止めなければ八幡は――

隼人「……君にだけは頼りたくなかったんだけどな」

 葉山君がうつむいて話す。

――違う、そうじゃない。

 この話を曖昧にしたら、取り返しのつかないことになる――!

奏「自己犠牲は、やめろよ」

 迷った挙句、ストレートな言い方しか思いつかなかった。

八幡「なんの話だ」

 完全に理解したうえで、八幡はわからないふりをしている。  そんな顔だった。

奏「俺も協力する、だから――」

 一人で抱え込むな。

八幡「例えお前の協力があったとしても、俺のすることは変わらねえ。それがこの現状、一番効率のいい方法だ」

奏「効率って……」

 否定したかった。

 でも、自己犠牲以外の他の方法を――そもそも八幡の考える具体的な方法すら――思いつかない俺は、別の案がない以上、彼を否定して納得させることができない。

八幡「それに……自己犠牲だなんて呼ばせねえ。これは俺だけができる、だから俺のするべきことだ」

奏「でもっ……!」

 それじゃあ――八幡が傷ついたままじゃないか。

八幡「葉山……戸部のとこ行かなくていいのか?」

俺との話を八幡が断ち切る。

隼人「さっき行ってきたばっかりだよ」

八幡「それもそうか」

隼人「というかそろそろ……海老名さんが来るのを待ってないと」

八幡「……先に行ってる」

 そう言うと八幡は……先に行ってしまった。
267 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/04(土) 13:08:55.41 ID:5Z0R9HG40
隼人「甘草くん」

 八幡が行ったあと、葉山君が話しかけてきた。

隼人「すまない。比企谷にあんな頼みをして……。でも、彼に頼るしか、俺は……」

 誰だって頼りたくないだろう。

 自分たちが傷つかないために……変わらないために、八幡を傷つけることになる。

 それも……彼は自分から傷つくから、謝っても『それでいいのか』と思ってしまう。

 彼は、だから俺に独白する。

 自分ではなにもできず行き場のない感情を持つしかなかった彼は、実際に行動に移すところまではした俺に向かって。

 ――自分の依頼はそのままに、彼も助けてはくれないか、と。

奏「気にするな。なんとかなる」

 俺自身、なんとかしたいんだ。

 言われなくとも、やるだけやってやる。

隼人「…………ああ」

 そこからなんとなく……戸部君の告白場所、竹林の道に向かった。
268 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/04(土) 13:16:47.66 ID:5Z0R9HG40
八幡「戸部」

 道の真ん中に立っている戸部くんに、一言二言声をかける八幡。

 俺たち(雪ノ下さん、由比ヶ浜さん、葉山君、あと名前忘れちゃったけど二人)は、道の反対側からくる海老名さんから見えないところに隠れている。

 たたっと八幡が戻って来る。

結衣「ヒッキー、いいとこあるじゃん」

 声が少し弾んでいる由比ヶ浜さん。

雪乃「どういう風の吹き回し?」

 やや驚いたように言う雪ノ下さん。

八幡「そういうんじゃないんだよまじで。このままだと戸部は……」

雪乃「そうかもしれないわね……」

結衣「そう、だね……」

八幡「一応、丸く収める方法はある」

結衣「どんな方法?」

雪乃「……まぁ、あなたに任せるわ」

 二人とも、何をするか感づいてはいないみたいだ。

 本当に、俺が――八幡を止めないと。
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