利根「提督よ、お主なかなか暇そうじゃの?」 金剛「…………」 二隻目

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411 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/02(木) 10:02:57.65 ID:4Y1+l+d4o
今回はここまでです。また一週間後くらいにきますね。

この後、第六駆逐隊の三人がどうなるかは想像するまでもないですね。
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/02(木) 15:27:05.91 ID:oAzYd+7Do
乙です
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/02(木) 22:27:58.88 ID:1kFL59wZ0

414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/10(金) 14:23:14.14 ID:i8UWGWzWO
一週間すぎたがまだか
415 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/12(日) 01:06:10.10 ID:dCKzIXvTo
提督「──とまあ、今言ったように暁たちは空母棲姫たちと打ち解けたと言って良いだろう」

金剛「やっぱりデスね。あの二人ならばすぐに仲良くなれると思いまシタ」

提督「そして、お前もすぐに皆の中に溶け込めるだろう」

金剛「それは……どうデスかね? 皆さんにとって、私はやっぱり──」

提督「大丈夫だ。初めこそ動揺されるだろうが、すぐに受け入れてくれるさ。瑞鶴と響の時もそうだった。心配する事はないぞ」ポンポン

金剛「……ハイっ」ニコ

利根「うむうむ。そうじゃぞ」ニコニコ

利根(──うむ。良い雰囲気じゃのう。やはり提督はこの笑顔が一番じゃ。きっと、この笑顔を引き出せるのは金剛だけじゃろうなぁ)

利根(いや……『金剛』だから、なのかのう? 金剛であり『金剛』でもあるから、この笑顔に出来るのじゃろうか)

利根「うーむ」

金剛「? どうシタですか、利根?」

利根「なんだか今日は眠くなるのが早くてのう。すまぬが、我輩は先に寝るのじゃ。眠気には逆らえぬ」スッ

提督「……ふむ」

金剛「珍しいデスね?」

利根「こういう事もあるじゃろうて。──では、おやすみなのじゃー」

利根(しっかりと堪能しておくのじゃぞ、提督よ)ニヤ

ガチャ──パタン

金剛「グッナ……もう行ってしまいまシタ。なんだか今日の利根、不思議な感じでシタね?」

提督(……あいつめ、変な気を回したな)

提督「まったく……」

金剛「?」
416 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/12(日) 01:06:42.60 ID:dCKzIXvTo
提督「まあ、あいつが深読みをしたという所だ」

金剛「深読み、デスか?」

金剛「──あ、なるほど」

提督「教えて貰ったのか」

金剛「ハイ。けど、本当にシスターは皆さんの事をよく分かっているデスね。私にはどういう事なのか検討もつかなかったデス」

提督「何年も一緒に居るから分かる事だ。そうでなかったら分からないのが普通だろう?」

金剛「……………………」

提督「うん?」

金剛「ぁ……い、いえ。なんでもないデス」

提督「……そうか」

提督(……下田の仲間達の事を、よく分かっていなかったのだろうか)

金剛「! ……あ、あの…………」

提督「どうした?」

金剛「私が何を考えていたのか、分かってしまったデスか……?」

提督「いや、分からんよ。出来るのは憶測くらいだ」

金剛「……なんだか、テートクならば私の考えていた事を言い当てそうデス」

提督「さて、それは分からんな」

金剛「…………? えっと、それはどういう…………あぅ……分かりまシタ……」

提督「……金剛、この子に何かを吹き込んでいるな?」

金剛「……………………テートクはこういう時に頑固になるから、何を考えていたのかも教えてくれなくなると言っていまシタ」

提督「…………」フイッ

金剛(顔を背けた……という事は、当たっているのデスかね?)

提督「ところで話は変わるが、明日の準備は出来ているか?」

金剛「正式に私が在籍するお話デスね。ハイ。ちゃんと頭の中でイメージトレーニングも出来ていマス」

提督「よろしい。ならば、最終確認として私と会話をしてみよう。明日の予行演習だ。──金剛、これからよろしく頼む」

金剛「ハイ。こちらこそよろしくデス」ペコ

提督「……ふむ。硬いな」

金剛「あう……硬いデスか」

提督「そうだな。硬い。もっと素直に自分を曝け出して構わんのだぞ?」

金剛「それは失礼のような……」

提督「……ふうむ。ならば──」

金剛「えっと、それでしタラ──」

提督「────────」

金剛「────? ────────!」

…………………………………………。
417 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/12(日) 01:07:13.32 ID:dCKzIXvTo
利根「…………」ボー

利根「……綺麗な月じゃのう。星々も自己主張するかのように強く輝いていて良い夜空じゃ」

利根「…………」モグモグ

利根「うむ。うむうむ! ヲ級に空母棲姫め、また腕を上げおったな? 美味い饅頭なのじゃ。……まあ我輩一人じゃから、ちと寂しいがの」

利根「うーむ。誰かを呼んでみるかの? 筑摩……はまだ鎮守府に居らなんだな。まったく。一体いつになったらこの鎮守府にやってくるのじゃ。姉不幸者め」

利根「まず駆逐艦の皆はもう寝ておるじゃろうなぁ。軽巡の者もそろそろ寝る頃のはずじゃ。重巡は……たしか今日、軽空母の皆と酒を飲み交わしておるんじゃったか。我輩は酒が飲めぬから邪魔をする訳にもいかぬな」

利根「となると戦艦や空母の者たちじゃな」

利根「加賀や赤城はどうじゃろうか? ……無理じゃな。会話が続かずに饅頭を食い尽くされるだけじゃ。飛龍と蒼龍も今日は何か予定があると話をしておったのう。鶴姉妹は……なんだか寝ておりそうじゃから止めておくかの」

利根「戦艦は……正直、金剛型の三人とは特別仲が良いという訳でもないからのう……。簡単に話をする程度じゃし。それに、四人ではこの饅頭の量は少な過ぎる」

利根「という事で残るは長門じゃな。……む。いかん。長門の部屋はどこじゃったかの……?」

利根「……うーむ。仕方が無い。今日は一人で居る事にするかのう。流石にヲ級と空母棲姫の二人を呼ぶ訳にはいかぬしのう」

川内「──あれ? 利根さん?」

利根「うん?」クルッ

川内「やっぱり利根さんだー! どうしたの、こんな夜に? 夜戦?」

利根「どこに敵が見えるというのじゃ、どこに。そういう川内こそこんな夜にどうしたのじゃ? また夜戦病でも発症したのかの?」

川内「さ、流石にそれはもう無いかな。もう提督に吊るされたくないから……」

利根「クックッ。この鎮守府で一番吊るされておるからのう。──まあ、なんじゃ。これも何かの縁。一緒に饅頭でも食わぬか?」

川内「え、お饅頭!? 良いの!? やったー!」チョコン

利根「うむ。月を肴に饅頭を食べておったのじゃが、そろそろ一人は寂しくなってのう」

川内「あれ、提督と一緒じゃなかったの?」

利根「提督はちと用事があってのう。邪魔をせぬよう抜け出したのじゃ」
418 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/12(日) 01:07:38.80 ID:dCKzIXvTo
川内「ふーん? 提督も忙しいよねー。あ、いっただきまーす!」パク

利根「どうじゃ? 塩味のある饅頭も美味いものじゃろう」

川内「本当だ、おいしー!! これ利根さんが作ったの?」

利根「我輩は料理なぞ出来ぬよ。これはお裾分けしてもらったものなのじゃ」

川内「という事は間宮さん達かな? へぇー、お饅頭にお塩っていけるものなんだねー」モグモグ

利根「たしか、塩味で甘さが引き立つとか言うておったぞ。不思議な話じゃよのう」

川内「あ! それ聞いた事がある! 西瓜に塩を掛けるってやつだ!」

利根「それと同じじゃな。──ところで川内よ、こんな時間に外に出てどうしたのじゃ?」

川内「ん? やっぱ夜が恋しくなってさー。部屋の中だと静かにしないといけないから外に出てきたんだー」モグモグ

利根「なるほどのう。本当に川内は夜が好きじゃなぁ」

川内「そりゃもうね! だって夜だよ! こう、血沸き肉躍るって言えば良いのかな? そんな感じだよ!」

利根「……やはり夜戦病が発症したのではないのか?」

川内「いやいや、本当にただ歩き回ってるだけだよ。前みたいに騒いだり海へ出ようとしたりしないって」

利根「クックッ。あの時の提督と川内の様子はまだ憶えておるぞ。あれは辛かったじゃろうなぁ」

川内「そ、その話はやめよ? ね? あの時の提督を思い出したくないからさ……?」ビクビク

利根「さて、それはどうしようかのう?」ニヤ

川内「利根さんも提督みたいにイヂワルしないで!? ……ん?」チラ

利根「む?」チラ

利根(ぬ……あれはヲ級と空母棲──あ、気付いて隠れたか)

川内「……ね、ねえ利根さん。今何か見えなかった?」

利根「うん? 何かって何じゃ?」
419 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/12(日) 01:08:08.05 ID:dCKzIXvTo
川内「いや、ほら……さっき誰かがあそこに……」

利根「何を言うておるのじゃ川内よ。夜戦病の中毒症状で見えない敵でも見たのかの?」

川内「いやいやいやいや!! 絶対に誰か居たって! こっち見てたってば!!」

利根「じゃが、今は居らぬのじゃろ?」

川内「そ、そうだけどさぁ……。もし敵とかだったら危ないよ」

利根「深海棲艦がこんな所に居る訳なかろうて。それに、深海棲艦ならば一瞬見ただけでも深海棲艦と分かるじゃろう?」

川内「あ、それもそっか。……うーん。でも、なんだか敵っぽく見えたんだよね」

利根「ほれ川内。饅頭じゃ」スッ

川内「え? えーっと……あむ」パク

利根「食って少し落ち着くが良いぞ。それに、もし敵ならば我輩が見逃しておらん」

川内「うーん……? まあ、利根さんがそう言うのなら……」モグモグ

利根「ところで川内よ、お主は星の事が分かるか?」

川内「星? ……全然わかんない」

利根「では、提督から聞いた星の話をしてやろう。北極星というのは知っておるか?」

川内「えっと、確か常に北にある星だっけ?」

利根「うむ。そんなものじゃ。その北極星じゃが、実は我輩たちが見ている北極星は四百年前の姿らしいぞ」

川内「四百……? えーっと、どういう事?」

利根「北極星の光が地球へ届くまで四百年の時間が掛かるという話じゃ。つまり、北極星が今この瞬間に消えて無くなっても、地球では四百年後まで北極星が見えておるという事なのじゃ」

川内「……え!? 光ってあの光だよね!? パッて光ってパッて消える光だよね!? あれって一瞬で向こう側に届くんじゃないの!?」

利根「どうやら光にも速さがあるらしいのじゃ。なんでも、一秒で地球を七周半するらしいぞ」

川内「七周半!? って、そんなに速いのに四百年も掛かるってどれだけ遠いの!?」
420 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/12(日) 01:09:55.85 ID:dCKzIXvTo
利根「途方もない遠さじゃなぁ。前に教えて貰ったが、何千兆キロだとか言っておったのう」

川内「うっわー……もうすっごく遠いってくらいしか分からないや……」

利根「ちなみに一番近所の銀河は何千京キロだそうじゃ」

川内「京って兆の一つ上だったよね!? なにその遠さ!?」

利根「他にも色々と聞いたぞー。そんな遠くからやってくる星の光でも影が出来るとか──」

川内「新月の夜って真っ暗で何も見えないのに、影って──」

利根「それが、綺麗な空気の場所じゃと──」

川内「見てみたいなぁ──」

利根「そして──」

川内「うんうん! ────!」

利根「────」

川内「────!」

…………………………………………。

ヲ級「危なかったね、姫」

空母棲姫「油断していたわ……。これからはもっと気を付けましょうか」

ヲ級「はーい。私も、もっと気を付けるね」

空母棲姫「ええ。後で利根にお礼を言いましょう。逸らかしてくれたみたいだもの」

ヲ級「うん! 次は、あのお饅頭よりも、もっと美味しいの、作る!」

空母棲姫「きっと利根も喜んでくれるわ」

……………………
…………
……
421 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/12(日) 01:11:02.50 ID:dCKzIXvTo
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ますね。

次から金剛さんの正式な鎮守府在籍と、そして……
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 01:42:17.05 ID:v2JCNuFAO
終わってからでいいから利根のハッピーエンド見たくなった
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 06:11:17.75 ID:Agq5TNNY0
もうすでにハッピーエンドやったような
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 06:58:14.94 ID:3J6x9XGj0
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 08:17:39.99 ID:bXVche6P0
長門が釣られるのか
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 08:18:10.49 ID:+iEjBKkwO
利根に指輪を渡したことあったような…
427 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/22(水) 10:01:34.02 ID:2mtgqGRLo
今夜か明日に更新する予定です。遅くなってごめんよ。
梅雨の時期は色々な意味でしんどい……。雨なのに暑くて湿度がけたたましく高いのは地獄。
皆さんもバテないよう注意して下さいませ。
428 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/23(木) 21:19:06.74 ID:QDsZQ4q2o
提督「──本日の任務は以上だ。加えて、この鎮守府に新しくやってきた艦娘を紹介する。……入ってきてくれ」

比叡「ッ──!!」

榛名「────────」

霧島「…………」

金剛「英国で生まれた、帰国子女の金剛デース! よろし……」

全員「……………………」

金剛「…………く……」

金剛(……やっぱり、こうなりマスよね)

金剛「えーと、私、どこかおかしかったデス?」チラ

提督「いや、どこもおかしくはない」

長門(……こうなるのも無理はないだろう)

比叡「……司令、一つよろしいですか」

提督「……許可する」

比叡「嫌な予感はしていましたけど、これは一体どういう事ですか?」

提督「……………………」

比叡「……………………」

飛龍(……あれ? なんだか……?)

利根(提督も辛そうじゃな……)

提督「……見ての通りだ」

比叡「…………………………………………」

榛名「…………」ハラハラ

霧島(大丈夫かしら……)
429 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/23(木) 21:19:33.43 ID:QDsZQ4q2o
金剛「……比叡?」

比叡「っ!」ハッ

比叡「……いえ、ごめんなさい。司令が何も考えていない訳なんてないのに……」

提督「辛い思いをさせてすまない……」

比叡「…………」

金剛(……えっと、一応ひっそりとしておく方が良いデスよね?)

提督「そして金剛。来て早々に見苦しい姿を見せてしまった」

金剛「! ノープロブレム! 気にしないで下サーイ!」

提督「ありがたい。──そして、金剛に鎮守府の案内を誰かに任せようと思っている。希望者は居るか?」

加賀「私がします」スッ

提督「そうか。加賀ならば分かりやすく教えられるだろう。頼む」

加賀「ええ、お任せ下さい」

提督「ああ。……比叡」

比叡「……はい」

提督「この後、提督室へ来るように。……ちゃんと説明をする」

比叡「…………はい」

提督「以上だ。何か質問のある者は居るか?」

響「司令官、比叡さんにする説明を私達が聞いても良いのかな」スッ

提督「比叡にだけは聞かせる言葉もあるから、一緒にというのは諦めてくれ。その後ならば聞きたい者だけに教える。比叡が拒否しなければ比叡から聞いて貰っても構わない」

響「うん、分かったよ」

提督「……………………さて、他に質問のある者は居ないようだな。解散」

…………………………………………。
430 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/23(木) 21:20:03.97 ID:QDsZQ4q2o
コンコンコン──

榛名「はい、どうぞ」

ガチャ──パタン

金剛「……ただいまデース、マイシスターズ!」

霧島「! おかえりなさい、金剛お姉様」

榛名「おかえりなさいませ。加賀さんの案内は終わったのですか?」

金剛「イエス! とっても分かりやすい説明でシタ! ──ところで、比叡はまだ戻っていないデスか?」

霧島「まだですね。……比叡にだけするお話とは、一体なんでしょうか」

榛名「どういうお話なのでしょうか……」

金剛「…………」

金剛(こういう時は、どう声を掛ければ良いのでショウ……)

コンコンコン──ガチャ──パタン

比叡「ただい──! おかえりなさいませ、お姉様」

金剛「比叡こそおかえりデース!」

霧島「……司令とのお話は、どうだったの?」

比叡「司令に泣かされました」

金剛「!? ど、どういう事デスか比叡!?」オロオロ

比叡「あ、えっとですね……司令がどうして金剛お姉さまを再び受け入れたのかを聞いて、その後に私の頭を優しく撫でてくれたんです。それでなんだか涙が出てきて、司令に泣き顔を見られてしまいました」

金剛「そうだったのデスね、どういう事なのかと思ってビックリしたデス……」ホッ

三人「!」

榛名(……少しだけですが『金剛お姉様』と違います。私の知っている『金剛お姉様』は、苦笑いでもこんなにも弱々しい笑顔ではなかったはずです)

霧島(まったく同じという訳ではないようですね。……別の『金剛お姉様』……ですか。なんだか、妙な気分です……)

比叡(…………)
431 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/23(木) 21:20:30.42 ID:QDsZQ4q2o
金剛「? どうかしまシタか、三人とも?」

榛名「い、いえ……榛名は大丈夫です」

霧島「答えになっていないわよ、榛名」

榛名「ええと、それは……」

金剛(──やっぱり、ここの榛名も大人しい子のようデスね。ただ、向こうの榛名と違って目が据わっていないからか、なんだか普通の大人しい子に見えるデス)

霧島「もう……。『大丈夫です』って口癖は直すようにと司令からも言われているでしょう?」

榛名「うぅ……」

比叡「…………」

金剛「まあまあ霧島。榛名もきっと、つい出てしまっただけデスよ。ネ、榛名?」

榛名「……はい」コクン

金剛「ゆっくりと直していきまショウ。出来ないなんて事は無いはずネ」ナデ

榛名「……はい!」

霧島(……ふむ。『金剛お姉様』よりも少し甘いようですね。……ですが、それと同時に優しさももっと柔らかく感じます)

比叡「……………………」

金剛「? 比叡?」

比叡「!! は、はい! なんでしょうか」

金剛「いえ、ボーっとしていたようでシタので……。疲れているデス?」

比叡「…………かも、しれないです。もしかしたら、司令に泣かされたから疲れてしまったのかもしれません」

金剛「……もし良かったら、テートクがどんな話をしていたのかを聞いても良いデスか?」

比叡「それは……」チラ

霧島「……私は聞きたいと思っています。司令が何を思っているのか、どう想って受け入れたのかを知りたいです」
432 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/23(木) 21:20:59.97 ID:QDsZQ4q2o
榛名「私も、知りたいです。どういう理由なのか、とても気になっています」

比叡「……分かりました。司令もこうなるのを予想していたでしょうし、どんな話をしていたのかを話しますね」

比叡(ただ……金剛お姉様が別の鎮守府の捨てられた艦娘とかそういう部分は言わないようにしないと……)チラ

金剛(確認をするような目……。きっと、比叡は口裏合わせの準備はオーケーなのかと聞いているのでショウね。大丈夫デス。私はテートクの事をほとんど知らない、ここへ来たばかりの『金剛』と思って話しマス)

金剛「私の準備はオーケーです。比叡、話してくれマスか?」

比叡「はい。──司令はウェーク島で何年も三人の事を考えながら暮らしていて、とある事に気付いたそうなんです。『今の自分を、三人が見たらどう思うか』と。それで────────」

霧島(…………ああ……その言葉は金剛お姉様が言いそうな言葉ですね)

榛名(だから提督は戻ってきて、そしてこちらの金剛お姉様を受け入れたのですね)

比叡「その時に言った事なんだけれど、私達も気を付けないといけないと思います。司令ならば私達を沈ませないと妄信してはいけないと。総司令部からの伝達でも毎月、何人もの艦娘が────────」

金剛『……ええ。私達も、その事をすっかりと忘れてしまっていまシタ。比叡と同じく、心のどこかで安心していたのでショウね』

金剛(! 起きていたのデスか?)

金剛『今さっき起きたばっかりデース。──どうデスか、私の自慢のシスターズは?』

金剛(良い子たちデス。本当、こうして見ると姉妹というのはこれがノーマリティだと思えマス)

金剛『ノーマリティかどうかは分かりまセンが、この子達はこれが普通デス。仲良くして下サイね、マイシスター?』

金剛(──ハイッ! マイシスター!)

比叡「──って、あれ? お姉様、話聞いてますか……?」

金剛「……ソーリィ。ちょっと感傷的になってて聞いてなかったデス」

比叡「もー……」

……………………
…………
……
433 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/23(木) 21:21:45.48 ID:QDsZQ4q2o
レ級「──さぁて、そろそろ準備とか良いんじゃないかな、大佐クン?」

大佐「その前に戦力の方を聞かせろ。集まった深海棲艦の数はどれくらいなんだ?」

レ級「ざっと七百ってところかなぁ? まっ、あの鎮守府の十倍くらいは居るんじゃない?」

大佐「十倍か。くっ……くくくっ……如何に奴が優秀でも、これだけの戦力差があるなら余裕だ!」

大佐「くく……感謝してやるレ級。お前のおかげで奴をブッ潰す事が出来そうだ」

レ級「これだけ戦力を用意したんだからさぁ、ちゃーんとこっちの計画も忘れないでよぉ? じゃないと……ゴミムシらしく地べたを這いずり回るだろうからさっ」ニヤァ

大佐「分かってる分かってる。あの鎮守府に裏切り者の深海棲艦が居るんだろ? そいつはちゃーんと逃がさないようにすっからよ」

レ級「じゃあ聞くけど、陸に逃げられそうになったらどうするのかな?」

大佐「奴の鎮守府にプレゼントを送っておいた。それを奴が読めば、陸へ逃げようとしないだろうよ」

レ級「へぇ……? じゃあそっちは任せよう!」

大佐「お前こそ艦隊の指揮をミスすんじゃねえぞ」

レ級「だーいじょうぶだって! ……あの蝙蝠どもは殺さなければならんからな」

大佐「…………!」ゾワッ

レ級「そんじゃ! 強襲する日程を決めよう! なんだったら今からでも──」

瑞鳳「──あ、提督……こんな所に居た、の……で……ッ!?」ヒョコ

レ級「って……あーらら。見付かっちゃった」

大佐「ちっ……面倒な……」

瑞鳳「ぇ……え……? し、深海……棲艦が……な、なんで……?」カタカタ

レ級「はーい動かないでねぇ。ついでに喋らないように」ジャキッ

瑞鳳「っ!」ビクッ

レ級「うぅーん、良い子だ。……でさぁ? 今ここで起きている事は全部忘れてくんない? ロケットスタートを決めようとしたのに邪魔をされるのは御免だからさぁ?」
434 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/23(木) 21:22:12.58 ID:QDsZQ4q2o
瑞鳳(で、でも、それって……)チラ

大佐「…………」

瑞鳳(提督……どういう事なの……? 助けて……助けて……っ!)カタカタ

大佐「良い事を考えた。レ級、強襲する日はこいつを徹底的に口止めしてからにしよう」

瑞鳳「────ぇ……?」

レ級「ううん? 何する気なのかな?」

大佐「こいつは色々と具合が良いから処分するのは勿体無い。だから絶対にこの事を漏らさないよう、その身に教え込ませるんだよ。そう……色々な手段を使って、なぁ?」ニヤ

瑞鳳「……………………う……そ……」ペタン

レ級「へぇ……随分と高尚な趣味を持っているんだねぇ。お姉さんドン引きしちゃうかも」ニヤ

大佐「口をそんな楽しそうに歪ませていたら説得力の欠片も無いな」

レ級「あ、バレた? ギャハハハハ!」

瑞鳳(提督が……深海棲艦と……)

大佐「じゃあ……早速『教育』するかぁ」グイッ

瑞鳳「ぁ……」

大佐「運が悪かったなぁ瑞鳳。大丈夫だって。絶対にこの事を言えないようにするだけだからよぉ」ニヤァ

瑞鳳「ヒッ──!」

……………………
…………
……
435 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/23(木) 21:24:15.22 ID:QDsZQ4q2o
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ると思います。

そろそろ日常パートが終わる頃。そんでもって大佐のアレコレを色々と考え中。
さあて、どう動かそうかなぁ。
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/23(木) 22:03:48.64 ID:xNZY9N10o
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/23(木) 23:42:38.64 ID:9LdwmTMwo
乙です
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/24(金) 04:18:02.59 ID:j19+4e1y0


まさか卵焼きの代わりに無理やり目玉焼きを作らされるとは...
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/26(日) 17:21:35.35 ID:/XEM9xoa0
夜戦の特訓か
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/26(日) 17:44:53.87 ID:ZAJejRGHO
孕まされるのかな?
441 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/02(土) 03:26:55.88 ID:/ahWj/2No
ヲ級「こっんだってひょー♪ こっんだってひょー♪」ペタペタ

空母棲姫「ああほら、右側が高くなっているわよ。献立表は皆が見る物なんだから綺麗に張りましょう?」

ヲ級「!! ホントだ! 姫、ありがと!」ニパー

空母棲姫「……本当にこの子ったら。ほら、貼り終えたのだから食堂へ戻るわよ」ナデナデ

ヲ級「はーいっ」ニコニコ

天龍「──ん? おお、姫にヲ級じゃねえか。何してんだ、こんな所で」

ヲ級「てんりゅー! 献立表、張りに来てた!」

天龍「お、マジか! んじゃあ早速チェックしねえとな!」トコトコ

龍田「天龍ちゃんったら本当にご飯が好きよね〜」スタスタ

天龍「なーに言ってんだよ龍田! 飯が嫌いな奴なんて」

ヲ級「居ない!」

天龍「なー?」ニカッ

ヲ級「ねー♪」ニパー

空母棲姫「……いつの間にこんなに仲良くなったのかしら」

天龍「ん? いやー、こいつって人懐っこいだろ? ちょっと遊んだらこうなったぜ」

ヲ級「てんりゅー、優しい!」

空母棲姫「そうなのね。良かったわ」ニコ

龍田「貴女も、だ〜いぶ馴染んできたみたいね〜」ニコニコ

空母棲姫「段々と肩肘を張るのが馬鹿らしくなってきたの」

空母棲姫「そして……全員がお前のように警戒をしてくれると、私も自分の立場を忘れずに済むのだがな」

龍田「あらあらぁ〜。何の事かしら〜?」

空母棲姫「では、私もとぼけるとしましょうか」

龍田「それが良いわよ〜。……私は貴女から残り香が消えるまで、このままだもの」

空母棲姫「……残り香?」

龍田「さあね〜? これ以上は言えないわ〜」

空母棲姫「…………?」

空母棲姫(残り香……? 一体なんの話だ? ……………………今朝、潜ったせいで磯臭いのでしょうか……? いえ、お風呂はしっかりと頂いていますし……)

龍田「…………」ニコニコ

空母棲姫(……提督と同じくらい読めないわね、この艦娘は)

…………………………………………。
442 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/02(土) 03:27:22.09 ID:/ahWj/2No
提督「──さて……執務が終わってしまった」

利根「終わったのじゃー!」

飛龍「量が少ないですからね。……本当、私達は待機していて大丈夫なのでしょうか。こう何日も待機ばかりですと不安で仕方がありません」

提督「安全に関しては、よっぽどの事でもない限り問題無いだろう。だが、こうも一部の遠征と演習以外やる事がないと暇を持て余してしまう。それをどうしようか」

利根「我輩にとってはそっちの方が問題じゃぞ」

提督「まったくだ。鎮守府内の大掃除でもしようかと本気で思っているくらいだぞ」

コンコンコン──

提督「む? 入れ」

ガチャ──パタン

金剛「失礼しマス」

提督「金剛か。どうした?」

金剛「空母棲姫とヲ級からのお届け物デース。チーズを練りこんだタルトだそうデスよ。おやつにして下サイと言っていたデス」

利根「おお! 新作か! 丁度執務も終わった事じゃし、お茶にしようぞ! ……──って、うん? 当の二人は居らぬのか?」

金剛「夕飯を腕によりを掛けて作ると張り切っていまして、手が離せなかったみたいデス。間宮と伊良湖も忙しそうにしていまシタ」

利根「ほほう。何か良い事でもあったのかのう?」

金剛「どうなのでショウかね……?」

飛龍「そういえば今朝方、空母棲姫さんとヲ級ちゃんが張り切って海へ出ていましたけれど、何か関係があるんですかね?」

提督(なるほど、そういう事か)

利根「む。何やら一人だけ理解したようじゃぞ」

提督「何の事やら」

飛龍「……これは完全に分かっていますね」
443 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/02(土) 03:27:57.19 ID:/ahWj/2No
金剛「テートク、どういう事なのデスか?」

提督「さて、どういう事なんだろうな」

飛龍「金剛さん、提督はこうなったらテコでも動きませんよ。なにせ、頑固者ですから」チラ

金剛「むぅ……」

利根「ほー、これは珍しいのう。金剛が不満そうな顔をしておる」

飛龍「本当です。初めて見たかもしれませんね」

金剛「!! ご、ごめんなさい……」

提督「何を謝っているんだ。むしろ良い事だと思ったぞ」

金剛「…………? あの……どういう事デスか……?」

提督「金剛は自分を抑え過ぎている所があった。ならば、不満を露に出来るほど心を開き始めてくれているという事だろう?」

金剛「…………」パチクリ

利根「ほほう。これは言っている言葉の意味は分かるが理解が追いついていないようじゃのう」

金剛「…………」

提督「……そんなに予想外だったのか? ほら、深呼吸だ。まずは吸って」

金剛「……すぅ」

提督「そのまま吸い続けて」

金剛「…………!」

提督「まだまだ」

金剛「…………!」プルプル

提督「…………」

金剛「…………!!」プルプルプル

飛龍「あ、あの……?」
444 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/02(土) 03:28:23.60 ID:/ahWj/2No
提督「よし、吐いて良いぞ」

金剛「はぁぁ……! …………うぅ……テートク、酷いデス……」

提督「すまない。──少しは落ち着いたか?」

金剛(あ……本当デス。なぜか冷静になっているデス)

金剛「そういう事だったのデスね。ありがとうございマス」ペコ

利根(……人というものは思考が麻痺すると言われた事を忠実に行うんじゃなぁ)

提督「しかし、そんなになるまで意外だったのか?」

金剛「……今まではそんな事は出来ませんでシタので。なので混乱してしまいまシタ。でも、もう大丈夫デス」

金剛「──だって、テートクですから」ニコ

提督「そう思ってくれて嬉しいぞ」ポンポン

金剛「うぅー……また……」

提督「諦めろ。こればっかりは譲らんぞ」

金剛「この間までは少し遠慮して下さっていたノニ……」

提督「嫌か?」

金剛「……その問い掛けは卑怯デス」フイッ

利根「卑怯じゃな」

飛龍「えーっと……」

提督「どうやら私に味方は居ないようだ……」

利根「いやぁ。流石にそれで庇うのは無理があるぞ?」

提督「…………」

金剛「えっと、その……」

提督「…………」
445 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/02(土) 03:28:54.34 ID:/ahWj/2No
金剛「……………………たまになら、良いデス……よ?」

利根「ほれ、金剛が折れてしまったではないか」

提督「ではそれに甘えるとしよう」

利根「まったく……」

金剛「ええと……あの、私は紅茶を淹れてきますね?」スッ

提督「頼む」

金剛「ハイ! 任せて下サーイ!」

飛龍「……それにしても、タルトを作ったお二人は何を作っているんでしょうかね?」

利根「気になるよのう。……一人だけ気付いておるのはズルいのじゃ」チラ

提督「違っているという可能性もあるんだぞ?」

利根「ならば言ってくれても良いではないかー」

提督「合っている可能性もあるからな」

飛龍「では、お茶の時間はお二人が何を作っているのかを予想してみましょう」

利根「うむ! 提督よ、お主と同じ結論だった場合は同じじゃと言うのじゃぞ?」

提督「同じ結論だった場合はな」

利根「絶対に当ててみせるぞー!!」

…………………………………………。
446 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/02(土) 03:29:25.01 ID:/ahWj/2No
金剛「……………………たまになら、良いデス……よ?」

利根「ほれ、金剛が折れてしまったではないか」

提督「ではそれに甘えるとしよう」

利根「まったく……」

金剛「ええと……あの、私は紅茶を淹れてきますね?」スッ

提督「頼む」

金剛「ハイ! 任せて下サーイ!」

飛龍「……それにしても、タルトを作ったお二人は何を作っているんでしょうかね?」

利根「気になるよのう。……一人だけ気付いておるのはズルいのじゃ」チラ

提督「違っているという可能性もあるんだぞ?」

利根「ならば言ってくれても良いではないかー」

提督「合っている可能性もあるからな」

飛龍「では、お茶の時間はお二人が何を作っているのかを予想してみましょう」

利根「うむ! 提督よ、お主と同じ結論だった場合は同じじゃと言うのじゃぞ?」

提督「同じ結論だった場合はな」

利根「絶対に当ててみせるぞー!!」

…………………………………………。
447 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/02(土) 03:33:09.44 ID:/ahWj/2No
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ます。

最後、二重投稿になってしまった。ちくせう。
さて、エンディングまでの道のりもある程度纏まってきました。あと少しでこの物語も終わりを迎えそうです。もしレスに余裕があったら希望を聞いてからショートショートな物を書くかも。その時になったら募集か安価を掛けると思います。
もうしばしお付き合い下さいませ。
448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/02(土) 06:24:06.34 ID:kUmjfPkIO
そーいやながもん釣られたっけ
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/02(土) 08:50:25.99 ID:6drt9+nn0
おつ
450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/02(土) 08:55:45.28 ID:a6KY4nfJo
乙です
451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/02(土) 16:26:27.39 ID:xT7lbctPO
残り香で自身の体臭を気にしちゃう姫が可愛い
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/03(日) 00:23:49.77 ID:If9vMrbtO
づほはどーなったんだろ…。
453 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [sage saga]:2016/07/15(金) 01:33:49.41 ID:jXYkrDnKo
もうちょっとだけお待ち下さい。あと数日以内で投稿します。遅れてごめんよ。
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/15(金) 15:38:00.90 ID:MgZv5er20
りょ
455 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/19(火) 01:14:49.09 ID:FYyqU5wUo
天龍「うおおおおっ!!! なんだこれ!? なんだこれ!!?」キラキラ

島風「海の食べ物がいっぱーい!!」キラキラ

比叡「ひえぇー……」

川内「良いじゃーん!! 良いよね、こういうの! 好きだなぁ!」キラキラ

赤城「あれは……鯛……!? アワビにサザエ……!! 鮪やカツオまで……!!!」キラン

加賀「素晴らしいです」キラキラ

間宮「今日はいつも頑張って下さっている皆さんへの労いとして、私たち四人が腕を振るってみました。食材の調達は空母棲姫さんとヲ級ちゃんの二人です」

ヲ級「いっぱい、獲ってきた!」

空母棲姫「生態系を壊さない程度にしていますので連続ではできませんが、たまになら出来ると思います」

川内「おおー!!」キラキラ

那珂「川内ちゃんが夜戦以外でこんなに目を輝かせるのも珍しいねー」

神通「気持ちは分かりますよ」ワクワク

那珂(あ、神通ちゃんも楽しみにしてる)

利根「──ふむ。当たったようじゃ」

飛龍「提督の予想って本当に当たりますよね」ワクワク

提督「二人に海へ出る許可を出したのは私だからな」

利根「なんじゃ。それでは最初から知っておったのではないか」

提督「魚を取りに行きたいから海へ出る許可が欲しい、としか言われておらんよ。後の事は全て想像だ」

利根「それがあるのと無いのとでは大違いじゃろうに」

提督「さて、早速夕食としようか」

利根「あ、逃げおったな。──まあ、我輩もそんな事より早く食べたいのじゃ!」トコトコ

提督「そうだな。海産物は新鮮な内に食べるのが一番だ」
456 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/19(火) 01:15:19.91 ID:FYyqU5wUo
川内「ほらー! 提督も早く席に着いて着いて! 早くご飯にしようよー!」

空母棲姫「後は提督だけですよ」

提督「分かった分かった。すぐに座る」スタスタ

提督「──さて、全員居るようだ。間宮、伊良湖、空母棲姫にヲ級も席に着いてくれ」

間宮「え? 私達もですか?」

提督「ああ。これだけ豪勢な夕食なんだ。今日は全員が一緒に楽しもう。もし食べる順番があるのならば食べながら教えてくれるか?」

伊良湖「…………」チラ

空母棲姫「諦めましょう。提督は頑固なので折れてくれないわ。──それに」

川内「…………!!」ワクワク

赤城「…………」ソワソワ

加賀「…………」ヂー

空母棲姫「一秒でも速く食べたがっている子が居るのだから、そうしましょう?」

間宮「もう……。ご飯は各自でよそって頂きますよ?」

全員「はーい!」

間宮「では、五つある羽釜にちゃんと列で並んでよそって下さいね。勿論、喧嘩はメッですよ」ニコ

天龍「おっしゃあ!!! 天龍様が一番だぁ!!」ダッ

島風「おっそーい!」ヒョイッ

天龍「あっ!? ちっくしょ!!」

島風「へへーん! 私には誰も追いつけないんだからねー!」

加賀「頂きました」スッ

赤城「一番近い羽釜でしたので、楽で良かったですね」ニコニコ
457 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/19(火) 01:15:56.05 ID:FYyqU5wUo
長門「本当、皆して元気だな」スタスタ

響「長門さんはゆっくり後ろに並ぶんだね」

長門「急ぐ必要もあるまい。余裕を持つのは大事だぞ」

暁(レディだ……!!)

雷「暁が何を考えているのか丸分かりね!」

電「なのです」

川内「まだかなーまだかなー」ヒョコ

神通「姉さん、列から乱れないで下さい」

川内「だってー。気になるしー」

熊野「あまり列から乱れすぎると、提督から叱られますわよ」

川内「!!!」サッ

鈴谷「あっははー! やっぱり提督が怖いんじゃーん!」

川内「……そういう鈴谷さんは怖くないの?」

鈴谷「……ごめん。怖い、怒らせたくない……」ビクッ

川内「だよねー……」

加賀「鯛のお吸い物が最高です」ズズー

赤城「お刺身もぷりぷりとしていて赤身もトロも何もかも美味しいですねっ」モグモグモグ

那珂「はやっ!? もう食べてる!!?」

川内「おぉーい!! 早くご飯を取らないと全部無くなっちゃうよー!!」

天龍「うおおおおおおおおッッ!!! 急いで飯をつぐぞおおおおおお!!」

伊良湖「み、みなさーん! そんなに急がなくても大丈夫ですからぁー!!」
458 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/19(火) 01:16:22.46 ID:FYyqU5wUo
飛龍「ふふ。皆さん、本当に元気ですよね」ニコニコ

利根「まったくじゃのう」ニマッ

金剛「アハ。見ているだけで楽しくなるデス。──はい、テートクの分デスよ」ニコ

提督「む? ついでによそってくれたのか。ありがたい」

金剛「いえいえー」ニコニコ

比叡「お姉様ー!! どこですかー!!?」

金剛「あ、比叡が呼んでいますので行ってきマス。──今行くデース!」タタッ

蒼龍「飛龍も負けていられないわよー。そのまま提督と一緒に食べてきなさい。今は皆、ご飯に夢中だからさ?」

飛龍「えっ!? え、えーっと……………………うん……」テレ

蒼龍「もう本っ当に可愛いなぁ飛龍はー! 頑張っておいでー!」

空母棲姫「それにしても……今日は一段と騒がしいわね。海の食べ物でこんなにも変わるだなんて思わなかったわ」

ヲ級「魚! 貝! 焼いたり、煮たり、刺身、美味しい!!」

空母棲姫「ええ、本当にね。これだけ喜んでくれると、作った甲斐があったというものです」ニコ

提督「良い顔だ。似合っているぞ」

空母棲姫「……恥ずかしいです」フイッ

ヲ級「姫、素直に、なってきてる!」ニコニコ

空母棲姫「……私をからかう口は、この口かしら?」ツネー

ヲ級「えふぇふぇー」ニコニコ

空母棲姫「でも……良い気分ですね。とても胸の奥が温かくなります」

ヲ級「うん!」

提督「ああ、本当に良い喧騒だ。ここは元気と希望が満ち溢れている」

ヲ級「提督も、笑ってて、良い顔!」

提督「お前もだぞ」ナデナデ

ヲ級「えへー」ニコニコ

提督(……願わくば、こういう時間が続いて欲しいものだ)

…………………………………………。
459 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/19(火) 01:16:48.95 ID:FYyqU5wUo
川内「いやぁー。堪能したねぇー」キラキラ

神通「とても良かったです」ホクホク

那珂「二人ともすっごく良い笑顔だよー」ニコニコ

川内「そういう那珂も満面の笑みでしょー?」

那珂「あんなの美味しくない訳ないじゃん! もう那珂ちゃん、体重の事を忘れて食べちゃいそうだったよ!」

神通「あら。食べたら食べた分だけ訓練をすれば消費されますよ」

川内「おっそろしい事を言わないでよ……。流石にあれだけ食べた後だとキツいってー……」

神通「けれど、本当に美味しかったですよね。私は鯛のお吸い物が一番良かったです」

川内「私は蛸の刺身かな? あの歯応えと引き締まった味は最高だったなぁ」

那珂「天ぷらが一番だったけど、油物だから那珂ちゃんは控えめにしなきゃだったのが辛かったよー! カロリー高いのに、あの味は反則だって!!」

川内「あ、確かに天ぷらも美味しかったね! 赤城さんなんて目ぇキラキラさせてたし!」

那珂「赤城さんは美味しいものなら何でもキラキラさせてるじゃん!?」

川内「いやまあ、そうなんだけどさ。なんだか特に天ぷらを気に入ってなかった?」

神通「言われてみるとそうでしたね。天ぷらを手に取ってからしばらくは天ぷらを口にしていました」

川内「ほーんと、今日のご飯は美味しかったねー」

那珂「またあったら良いよねー」

神通「生態系は壊さない程度に……と仰っていましたから、次はいつになるかは分かりませんね」

川内「だねー。で、ところでさー。二人は空母棲姫さんとヲ級ちゃんの二人をどう思ってる?」

神通「……難しい質問ですね」

那珂「そう? 那珂ちゃんはもう仲間の一人かなって思ってるよ」

川内「やっぱり? 私もそんな感じかな。ヲ級ちゃんなんて人懐っこいし、空母棲姫さんなんてお母さんみたいだしさ」
460 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/19(火) 01:17:15.23 ID:FYyqU5wUo
神通「それは……そうですけれど……」

川内「神通は何か不安要素があるの?」

神通「……ええ。いつか、私達が深海棲艦と戦うのを躊躇う日が来るのでは──という不安があります」

川内「んー……。あるのかなぁ、そういうのって」

神通「姉さんは、そうはならないと仰るのですか?」

川内「だってさ、なんだかあの二人だけは別じゃん? 上手く説明は出来ないんだけど、敵って感じがほとんどしないっていうか……むしろ、私達とあんまり変わらないっていうか……?」

那珂「あ、それ分かる! 隣に居ても怖くないよね!」

神通「ですが……」

川内「たしかに神通の言ってる事も分かるよ。けど、不思議じゃない?」

神通「不思議、ですか?」

川内「うん。深海棲艦ってさ、一目で『敵』って分かるよね? だけど、あの二人は敵って感じがほとんどしない。これって、何かがあるって思わない?」

神通「何か……」

那珂「例えばどんなの?」

川内「まあそれは分かんないんだけどさ……」

那珂「分からずに言ってたの!? 何かあるって那珂ちゃん思っちゃったよ!!」

川内「だって本当に感覚なんだからさー」

神通(……本当、あの二人には何があるのでしょうか)

……………………
…………
……
461 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/19(火) 01:18:06.34 ID:FYyqU5wUo
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ると思います。
次はづほ達の様子を描くかも。予定は未定。
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/19(火) 02:05:53.78 ID:ACnjWv5AO

腹減った…
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/19(火) 04:37:11.40 ID:4Bn8BW9u0
姫に秋刀魚漁頼もう!
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/19(火) 06:37:24.49 ID:C5LfMKm/o
乙です
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/19(火) 09:57:51.23 ID:/DaEwAP1O
月に三回くらいなら大丈夫だと思いたい
466 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/23(土) 00:56:32.40 ID:2Rmk4WMMo
ちょっとだけ内容がエグいかもしれないので、耐性の無い方は次の行間が埋まっている1レスを読み飛ばす事を推奨します。内容的には『づほがグロ的にもエロ的にも酷い目にあった』ってものです。
ちなみにエロ描写は欠片もありません。

以上、注意文でした。
467 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/23(土) 00:57:06.91 ID:2Rmk4WMMo
 ──誰も助けは来ない部屋で、私は床をボーっと眺めていた。
 いや、眺める他ないと言った方が正しいのかもしれない。なにせ私は今、手に鎖を巻かれて逃げられないようにされている。それに……これから起こる事への準備として、体力は欠片も使いたくなかった。
 急造された地下の一室──。天井にぶら下がった何個かの電球と床に放り置かれたいくつかの『道具』の数々、そして壁や床に残った夥しい血の跡。それが、今の私の世界。
 今まで辛い事なんて沢山あった。無理難題な指示を必死にこなそうとして疲れ切った身体を無理矢理に動かし、たまに提督の情欲を受け止めるのが前の私の日常だった。提督が使えないと言った子には轟沈命令を出す事さえあった。
『もうこんな毎日はヤダ……』
 泣きそうになりながらそう思っていた私だけど、今はこう言える。そんな毎日の方が遥かに良かった──と。
 だって、肉を削がれる事も無ければお腹に大穴を空けられる事も無いんだから。泣き喚けば喜ばれ、無反応でいようとすれば悲鳴をあげさせるような事をされる。
 そして、四肢を千切られて悲鳴で喉が潰ようと、頭を強く殴られて視力を失っても終わる事なんて無い。私は艦娘であり、生きてさえいれば高速修復材で大抵の状態であれば、その場で直ってしまう。背骨は竜骨みたいなものだから傷つける訳にはいかないと言っていたから、それ以外の事はされるのだろう。
 そんな生活が、少なくとも一週間は続いている。時間の感覚がもう無くなってしまっているから正確じゃないけれど、それでも一週間以上は経っていると思う。
 初日は首を絞めた状態のまま何度も何度も殴られた。意識が薄れてほとんど何も考えられなくなったのが最後だったと思う。
 二日目も同じだったけれど、反応が悪くなったと言って釘を身体に打ち込まれた。お腹に十数本くらい打ち込まれた時に吐血したら、提督とレ級は満足そうな顔をしていたっけ……。
 三日目は骨を折られた。指や腕、足の骨を余す所なく折って、私の悲鳴を楽しんでた。変に折られて骨が皮膚を突き破った時は心底痛かった。身体の内側から壊されているような感覚で、自分の足が有り得ない曲がり方をして、千切れたような痛みが全身を襲ってきた。ここから、私は死ぬ方が良いと思い出した。
 次の日は、出来るだけ二人の興味が無くなるように努めた。出来る限り反応をしないようにすれば、さっさと殺してくれると思ったからだ。──それは、甘い考えだったと今は思う。反応しないのならば反応するようにされる。当然の事だ。今までのやり方でダメだったら、別のアプローチをするに決まっている。それを、私は分かっていなかった。
 用意されたのは、何百キロあるのか分からない真っ赤に燃える鉄の塊。流石に奥歯がガチガチと鳴って、自分が今までで一番怖がっているのが分かった。提督が私を床に押し倒し、右腕を真っ直ぐ伸ばすようにと命令した。もちろん腕は震えていて、身体は腕を伸ばすのを拒否していた。何をされるのか分かっているからこそ、身体が恐怖で固まっていた。
 提督はそんな私の腕を取って、まるでエスコートでもするかのように優しく伸ばさせてきた。その状態で動くな──と命令された私は、覚悟する他無かった。
 提督が離れ、レ級が赤い鉄の塊を私の右腕に落とす。骨が砕けて肉を内側から裂き、鉄の重みで潰された肉はその熱で焼かれる事となった。
 我慢なんて出来る訳もなく、私は悲鳴と共に残った腕で鉄の塊をどかそうとした。左手が焼けて激痛が走ったので、ほとんど反射的に手を離した。その間も私の右腕は焼かれ続け、嫌な臭いが部屋に充満していたと思う。
 結局、私は痛みで失神した。起きた時には身体がなんともなっていなかったから夢かと思ったけれど、肉の焦げた臭いが現実だと教えてくれる。そして……次もまた、焼けた鉄が用意されていたっけ。
 ただ違ったのは、痛みで悲鳴をあげる私を見ながら劣情を解消してきた事だろうか。
 今日は、どうなるんだろう……。

 コツン──。

「……ああ…………」

 休憩は終わりらしい。また、今日も痛みに耐える時間がやってきた。
 できれば、痛くも苦しくもないのが良いな……。

……………………
…………
……
468 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/23(土) 00:57:35.33 ID:2Rmk4WMMo
利根「暇じゃぁ……」

飛龍「お仕事も終わっちゃいましたしね……。それにしても、下田の審査っていつまで続くのでしょうか」

提督「審査はあと一週間もあれば終わるはずだ。そろそろ事が起きるだろうから覚悟しておけ」

利根「む? どういう事なのじゃ?」

提督「下田から機密文書が送られてきていてな」スッ

──我、如何ナル時モ総司令部ヘの連絡可──

飛龍「……えーっと…………? なんですか、これ?」

提督「簡単に言えば脅迫状だ」

利根「……これのどこが脅迫なのじゃ?」

提督「字面だけでは分からないが、今朝の偵察で分かった事がある。向こうはこちらに空母棲姫とヲ級が居ると確信している──そう見て間違いないだろう」

飛龍「何かあったんですか?」

提督「──レ級が居た」

二人「!!」

提督「あの鎮守府には、私達の因縁の相手であるレ級が居る。こちらが相手に気付かれないよう索敵できているように、向こうも気付かれないように索敵している可能性が充分にあるだろう」

提督「それを踏まえてこの文書の意味を読み取るならば『おかしな行動を見せれば、総司令部へ即座に横須賀は危険分子だと報告する』という事だ」

飛龍「でも、それって向こうも同じじゃないですか? 向こうもレ級を置いていますし」

提督「条件が違う。向こうは出撃が自由に出来るが、こっちは出来ない。総司令部から視察が来たという理由で同じように海へ逃げても、空母棲姫とヲ級は下田によって沈められてしまうだろう。そんな事、私には出来ん」

利根「むう……では、どうすれば良いのじゃ?」

提督「正直に言って、詰みに近い。打破をしたいのならば見付からないようにこの鎮守府を抜けて下田に潜入して暗殺するか、馬鹿正直に相手するしかない」

飛龍「暗殺なんて無茶ですから、相手をしなければならないという事ですか……」

提督「ああ……。まず間違いなく使ってくる駒は深海棲艦のみだ。向こうは痛手ゼロというのが腹立たしい」
469 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/23(土) 00:58:02.19 ID:2Rmk4WMMo
利根「…………む? そもそも、どうして下田はここを狙うのじゃ?」

提督「そこは分からんから予想しか出来ないが、私怨があるのかもしれんぞ」

利根「私怨……? どうしてまた」

提督「この間の演習の時、長門をアッサリとこちらへ移籍させた事が引っ掛かっている。向こうからすれば、アッサリと言う事を聞いている長門が面白くないはずだ」

飛龍「そんな事で……」

提督「後で下田の事を知っている四人にも聞いてみる。……私の予想が外れていて、レ級も空母棲姫たちと同じく良い意味で協力しているのならば良いのだが」

利根「夢物語じゃのう……」

提督「ああ……」

飛龍「……空は、こんなにも蒼くて平和なのに」

提督「所詮、人間の本当の敵はまた別の人間という事だ。深海棲艦を相手にするよりもずっと性質が悪い」

利根「……どうして、同じ種族で争わねばならんのじゃろうなぁ」

提督「人間がそれだけ汚れているという事だろう……。私もまた、その内の一人だ」

飛龍「提督が、ですか……?」

提督「私も、だ。私にとって絶対に許せない事をしていれば、私は障害の全てを排除して目的を達成するだろう」

利根「まあ、どうせ提督の事じゃ。その時は我輩たちも許せぬような内容なのじゃろうな」

提督「さあな。そればっかりはどうなるか分からん」

利根「道を踏み外しそうになったら、しっかりと戻してやるからの」

飛龍「それは、提督の艦娘にしか出来ない事ですからね」

提督「ああ。頼りにしているぞ、二人とも」

…………………………………………。
470 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/23(土) 00:58:31.27 ID:2Rmk4WMMo
瑞鳳「ぁ…………ぅ……」ビクンッ

下田提督「ふぅー……スッキリした」

レ級「あーあー。こんなにしちゃって……可哀想に」

下田提督「今回、肉体的に壊したのはお前だろうが」

レ級「そうだけど、精神的に壊したのは君じゃないかなぁ?」

下田提督「そもそも可哀想だなんて欠片も思っていないだろ。流石に手足を挽き肉にするとは思わなかったぞ俺は」

レ級「平然と見ている所か、この状態で犯した癖に……。もしかして、私よりも残虐なんじゃない?」

下田提督「さあなぁ? ま、楽しんだ事は楽しんだんだ。そろそろ、あの鎮守府を壊しに掛かろうか」

レ級「おっ! 良いね良いねぇ! 私もそろそろ頃合いだと思っていたんだよねぇ!」

下田提督「ククク。とことんお前とは気が合う」

レ級「そうだねぇ。もうさ、艦娘じゃなくて深海棲艦の提督になっちゃえば良いんじゃない?」

下田提督「自由に艦娘を犯せなくなるだろ。却下だ」

レ級「ギャハハハハ!! そんな理由で提督やってるなんてねぇ! 本当、面白い人間だわ!」

レ級「んじゃまあ、楽しく殺して殺されよっかぁ!!」

…………………………………………。
471 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/07/23(土) 00:59:27.48 ID:2Rmk4WMMo
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ると思います。

づほにフラグ立ったかも。
472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/23(土) 01:28:50.99 ID:47KnygmWO

見てるとお腹減ってくるよな
473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/23(土) 01:44:08.36 ID:+UaOzbnTO
肉の焼ける匂い(語弊)
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/23(土) 02:06:00.11 ID:uj45brZx0

さてハンバーグでも作るか
475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/23(土) 08:01:02.28 ID:IUmTD4zwo
乙です
476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/23(土) 18:31:43.91 ID:iidycyQUO


コメントが訓練されてる…?
477 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/02(火) 10:01:24.01 ID:Hk1ZnPxgo
コンコンコン──

提督「入れ」

ガチャ──パタン

金剛「こんばんはデス」

提督「金剛か。そっちから来るとは珍しいな。どうした?」

金剛「変な話しデスが……なんだか会いたくなっちゃいまシテ」

提督「……そうか」

金剛「呆れちゃいまシタか……?」

提督「いや、少し意外だっただけだ。だが、本当に珍しい。ただ会いたくなっただけとは」

金剛「迷惑だったら言って下サイね?」

提督「迷惑なものか。気が向いたらいつでも来て良いぞ」

金剛「! ありがとうございマス!」

利根(……のう、飛龍よ。これはもうアレじゃよな?)ヒソ

飛龍(そうっぽいですよね。良い事……なんでしょうか? 提督のお気持ち次第だとは思うんですけれど……)ヒソ

利根(ちなみにじゃが、我輩は受け入れる準備は出来ておるぞ)ヒソ

飛龍(!! ……強いなぁ、利根さん)

提督(一体どんな内緒話をしているのやら……)チラ

提督「さて、三人ともここに居るだけでは暇だろう。特定のメンバーを集めて小さなお茶会でも開くか? 少し聞きたい事もある」

金剛「聞きたい事デスか?」

提督「ああ。それは全員が集まってから話そう。少し待っていてくれ。瑞鶴と響、そして長門を呼んでくる」スッ

金剛「……なるほど。──では、私はお茶を用意しマスね」

提督「ああ。頼んだ」

…………………………………………。
478 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/02(火) 10:01:50.04 ID:Hk1ZnPxgo
瑞鶴「──それで、下田鎮守府に何があったの? あ、この紅茶も美味しい」チビチビ

提督「ほう、察しが良いな」

瑞鶴「この面子よ? もう何かがあったっていうのは分かるわ」

長門「そうだな。とうとうあの愚か者が首にでもなったか?」

響「……むしろ、嫌な予感がするんだけど」

提督「その通りだ。下田鎮守府でレ級を確認した」

四人「!!!」

長門「待て!! なんだそれは!? 一体どういう事なんだ!!」バンッ

提督「言葉通りの意味だ」

響「……つまり、あの人は深海棲艦と手を組んだって事で良いのかな」

提督「状況的に見てそう考えても良いだろう。レ級の話は聞いているが、とてもこちら側に協力をするような奴だとは思えん」

金剛「……………………」

瑞鶴「……やっぱり、辛い?」

金剛「……ハイ」

長門(深く関わった者だからなのか、それとも未練が残っているからなのか……。金剛の事だ。恐らく前者だろう。……心優しいのか、それとも私がドライなだけなのか)

響「それで司令官、私達に何か聞きたい事があるのかな」

提督「ああ。下田の提督が深海棲艦と組む理由を考えて欲しいんだ。恐らくレ級から下田の提督へ誘いがあったと思うのだが、それを受け入れた理由がいまいち不明瞭だ」

瑞鶴「……ん? 考えるのは良いんだけどさ、提督さんはそれを聞いてどうするの?」

提督「対応を変えなければならない。脅されているのか、それとも率先してやっているのか……。もし脅されているのならば、いずれ艦娘を相手にする事も考えなければならない」

響「率先してやっていても同じじゃないのかな?」

提督「それは無いだろう。艦娘を使ってしまえば足が付く。そうすると後で総司令部に言い訳が出来なくなってしまう」
479 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/02(火) 10:02:19.65 ID:Hk1ZnPxgo
瑞鶴「なるほどね……。それで、受け入れたっていうより……たぶん自分から進んでやっていると思うわよ」

響「そうだね」

長門「間違いなくそうだな」

提督「……金剛もそう思うか?」

金剛「…………」コクン

提督「そうか……。では、どうして自ら進んでやっていると思った?」

瑞鶴「だって、なんか妬んでいそうだもん」

響「うん」

長門「ああ。間違いなくそうだろうな」

提督「ふむ……。妬むというのは私に対してだよな?」

瑞鶴「そうね。こっちに演習に来た時に、なんかそんな感じがしたし。提督さんを妬んで襲ってくるっていうのは考えられるわね」

提督「そうか。……しかし、妬みだけでこんなリスクの高い行動に出るのか?」

金剛「……あの方は、自分の思い通りにいかないと周りが見えなくなってしまいマスから」

提督「ふむ……では、本当に感情に任せた行動なのか」

長門「充分に有り得る……というよりも、それ以外に思いつかんな。あの愚か者は後先を考えない」

提督「ならば、基本的に向こうは我々に危害を加えるべく動いているという前提で対応しよう。ただ……そうではないという意思が見えた場合は救出するぞ」

瑞鶴「救出ねぇ……。なんだかすっごく不思議な感じ」

提督「不満か?」

瑞鶴「不満っていうか……似合ってない? あの人の場合は自業自得っていう感じが強くて……」

提督「……変わるものだな、瑞鶴」

瑞鶴「そこは艦娘も人も同じなのかもね。……まあそれに今は私、提督さんの色に染められちゃってるし?」

瑞鶴「……でも、本当はちょっと自己嫌悪してるんだけどね」
480 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/02(火) 10:03:01.27 ID:Hk1ZnPxgo
提督「……すまなかった」

瑞鶴「良いわよ良いわよ。たぶん、私もどこかで吐き出したかったんだと思う。むしろ、言わせてくれてありがとね」

提督「……そうか」

長門「…………それで、これからどうするのだ?」

提督「鎮守府内全員に招集を掛けて近い内に大規模な戦闘がある可能性を連絡する。幸い、装備は充実しているから後は心構えだけだろう」

飛龍「……………………」

飛龍(でも、なんだか嫌な予感がするんですよね……。なんだろう、この嫌な感じ……)

利根「防衛戦は好きではないのう……。海と違っていくらでも物資はあるが……こう、なんとも言えぬ感覚が──」

ドンドンドンッ──ガチャッ!

大淀「提督! 大変です!!」

提督「敵か」スッ

大淀「え──? は、はい!! 深海棲艦の軍勢が近くに来ています!」

提督「数はどれほどだ」

大淀「暗いので断定できませんが……最低でも五百は居るようです」

利根「五百じゃと!? 一人で七人相手にしなければならぬではないか!!」

提督「大淀、電信室で鎮守府内全域に緊急出撃命令を出せ。全員、兵装を確認した上で外へ出すんだ。そして周辺の灯台を全て使い、海へ向けて照らせ。この夜の中ではまともに戦えん」

大淀「畏まりました。……提督、ご無理だけはなさらないようお願いします」

提督「勿論だ。行け、大淀」

大淀「ハイッ!!」

タタタタッ──!

利根「では、我輩たちも行くとするかの。事は一刻を争う」スッ

提督「ああ。そうしよう」

金剛(……覚悟を、決めまショウ)グッ

…………………………………………。
481 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/02(火) 10:04:48.39 ID:Hk1ZnPxgo
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ます。

さて、終わりが見えてきた。あともうちょっとや。このスレで終わる……はず。
482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/02(火) 10:45:00.91 ID:VYnD3Q3NO
永く続けてもええんじゃよ
むしろ続けてください
483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/02(火) 21:06:53.95 ID:WndggI4T0
おつです
484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/03(水) 00:45:04.19 ID:e4nSwaAmO
このスレで終わる(物語が終わるとは言ってない)
485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/03(水) 02:57:04.03 ID:7tcJKXjLo
乙です
486 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/12(金) 18:42:44.73 ID:gSxcb4P/o
下田提督『レ級……レ級、聞こえているか?』

レ級「はいはーい。どしたのテイトクさん?」

下田提督『我々にとってお待ちかねの戦争の夜だ……が、再確認するが、準備は万全だな?』

レ級「も、そりゃバッチリと! 装備も頭数も上々。しかも相手は鎮守府で身動きが取れないのに、こっちは自由に動ける……まあ、まさか海で攻城作戦をするとは思わなかったけどねぇ」

下田提督『相手は篭城するしかない。それを抉じ開け、大穴を空け、入り込んで破壊し尽くすのが今回の作戦だ。その作戦は何も問題無く進んでいるか?』

レ級「そうだねぇ……なんか灯台が光ってこっちを照らし始めたけどさ、壊しちゃって良い? アレ」

下田提督『破壊しろ。徹底的にだ。二度と使わせるな』

レ級「艦載機も見えるけど、どうしよう?」

下田提督『落とせ。マリアナの七面鳥のように』

レ級「その奥に居る艦娘は?」

下田提督『沈めろ。潜水艦は深海へ招待しろ』

レ級「で、最後にある鎮守府は?」

下田提督『爆破しろ!! 当然だ、不愉快極まる。欠片も残すな』

下田提督『目に付いた物は片端から壊し、目に付いた艦娘は片端から屠れ。存分に壊し存分に殺し存分に沈めろ。お前の目的の深海棲艦は自由だ。好きにすると良い』

レ級「まったく酷いもんだねぇ……仲間を売って仲間を甚振って仲間を殺そうとするなんてね」

下田提督『甚振るっていうのは瑞鳳の事か? アレはお前も壊しにいっていたじゃないか』

レ級「いやいや! 私には自分で自分の指を切り落とさせるなんて思い付きもしませんよぉ! ──あの時の表情は最高だったぁ……」

下田提督『ああ。途中で顔が絶望に染まって私に助けを求めなくなったのも良かっ──』

レ級「──おっとおっとぉ! そろそろ空中戦が始まるから、また随時指示を出してねぇ!! ……さあ、地獄の蓋を開けに行こうか」

下田提督『蓋などと言わず、地獄そのものを作ってしまえ。お前達は地獄の創造人だ。地獄を作り上げ、その地獄に奴らを引き摺り込み、その地獄で奴らに絶望を与える存在だ』

レ級「良いねぇ、ホント……。私よりもずっと深海棲艦しているよ。……あーあー! えっとぉ! 深海棲艦の諸君! 作戦を通達するから耳かっぽじって聞いてねぇ!!」

レ級「まずは陽動部隊が先遣隊として急行しよっかぁ! 付かず離れずの位置で戦って、ジリジリと後退しよう! 敵が誘いに乗ってきたら本隊の私達と一緒に殲滅!! 間違っても突出したりしないように! あいつらはこれまで以上に要注意しなくちゃいけないらしいからさ!」

レ級「さあ……無意味に殺して殺される戦いを始めよっかぁ!! ギャハハハハハァ──!!!」

…………………………………………。
487 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/12(金) 18:43:20.76 ID:gSxcb4P/o
大淀「!! 提督、緊急連絡が入りました。周辺に設置してあった灯台の一つが敵の砲撃により破壊されたとの事です」

提督「やはり長くは保たないか。戦線より下がった艦娘に照明弾を撃たせるとしよう。本当は吊光投弾が良いのだが、制空権が劣勢の状況では使えん」

大淀「はい、そうしましょう。撤退した中で射撃精度が一番高い五十鈴さんと名取さんに任せてよろしいですか?」

提督「いや、天龍と龍田に任せよう。早々に撤退してしまって悔しがっているはずだ。二人ならば射撃精度も充分にあるし、連携も取りやすいだろう」

大淀「分かりました。──妖精さん、船着場で待機している天龍さんと龍田さんに指示書を送ってもらって良いですか? ついでに、救護妖精さんとヲ級ちゃんに医療道具が足りない物があるか聞いてきて下さい」スッ

妖精「はーい。分かったなのー」テテテ

提督「……しかし、戦局が動かんな」

大淀「そうですね……。ですが、突いて下さいと言わんばかりの隙を提督は罠だと仰いましたけど、どういう事なのですか?」

提督「どう考えてもおかしいからだ。今までの深海棲艦はこんな統率された動きをしてきていない。ならば、何かがあると考えるべきだろう。そうだな……例えば、あれを抜けた先には潜水艦部隊が待ち構えているとか……な。もしくは島の影に敵の本隊が隠れているという可能性もある。その場合は私達の敗北が決定する所か、私の大事な子達が沈んでしまう。そんな事を、私は認めん」

大淀「なるほど……。確かにそうなってしまうと背筋が凍ってしまいます。……そして、私達を気遣って下さって、ありがとうございます」

提督「礼は言うな。それがこの鎮守府での当たり前の事であり、当然の事なんだ」

大淀「はい。やっぱり、ありがとうございますね。……それで提督、話を元に戻しますが、おかしくありませんか?」

提督「おかしい?」

大淀「はい。先ほど提督が仰ったように、どうして今回の深海棲艦はこんなにも統率されているのでしょうか? まるで、何者かが裏で指示をしているような動きです。ですが……もしそうであるのならば、一体誰がそんな事をしているのでしょうか……」

提督「……………………」

大淀「……提督?」

提督「……空母棲姫のようなタイプなのかもしれんぞ。あいつならば指揮を執っていてもおかしくないだろう?」

大淀「それはそうですが……もう一つ二つ分からない事があります。──まず一つは、なぜこの鎮守府を狙ってきたのか、という事です。これではまるで、何か目的があるかのような……」

提督「さてな……。そればっかりは分からない。本当に何か目的があるのか、それとも衝動的にやっている事なのか……。私にはあの二人以外の深海棲艦の考える事は分からんよ」

大淀「そうですよね……。では、もう一つの疑問です。提督、どうして逃げないのですか? 数の差は七倍以上。しかも統率が取れている……。状況は圧倒的に不利です。どう考えても提督ならば撤退をご指示なさる劣勢です。なのに、どうして今回はそうなさらないのですか?」

提督「…………………………………………」

大淀「……分かりました。言えない理由があるのですね」

提督「すまない……」
488 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/12(金) 18:44:06.42 ID:gSxcb4P/o
大淀「いえ、大きな事情がある事を教えて頂けただけでも充分です。私は……いえ、私達は提督を信じていますから」

提督「本当、私では勿体無いくらいに良い子達を持ったよ、私は」ナデ

大淀「ふふっ。──さて、提督。提督はこの状況をどう防衛しますか?」

提督「まずはこの現状を維持させる。動くのは空母棲姫の偵察報告を聞いてからだ」

大淀「そういえば先程、偵察を命じていましたよね。ですが……その、大丈夫なのですか?」

提督「どうだろうか。理由は不明だが艦載機運用に支障が出ているらしい。前にも動きが重いと言っていた事から、あの艦載機に何か問題があるのかもしれんな」

大淀「いえ、私が言いたいのはそういう事ではなく……」

提督「ふむ、そっちか。安心しろ。空母棲姫は確かに深海棲艦だが、私達に害を与えてはこないよ。私が保証する」

大淀「……信頼しているんですね」

提督「ああ。この短い間でさえ何度も助けられた。あいつが居なければ、私はこの場所に居ないだろうというくらいにな。それに、あいつは私を信頼してくれている。ならば私も信頼で返すべきだろう」

大淀「……本当、深海棲艦って何なのでしょうか」

提督「さあ、な……」

コンコンコン──

提督「空母棲姫か。入れ」

ガチャ──パタン

空母棲姫「艦載機を発艦してきたわ。まずはどの情報が欲しい?」

提督「そうだな。敵の陣形の状態と大まかな艦種の偏りを教えてくれ」

空母棲姫「鶴翼なのに、中央の数が少なくされているわ。アレは罠ね。奥の方に本隊らしき艦隊が隠れているのが見えたから、突っ込むと負けてしまうわね。艦種の偏りは……そうね、端に戦艦で中央に駆逐と軽巡が偏っているような印象かしら。ただ、ほとんど変わりはないわ」

提督「やはり奥に伏兵が居たか。本隊の戦力はどうだ?」

空母棲姫「正直、厄介ね。戦艦を中心とした水雷戦隊の塊よ。空母も多く控えていて、制空権争いも勝つ見込みは少ないでしょうね」

提督「……ふむ。なるほど。相手は私達を警戒し過ぎているか」

空母棲姫「ええ。そんな雰囲気がするわ。だからこそこうやって罠を仕掛けているのでしょうね」

大淀「凄い……。こんな夜にそんな詳細が分かるなんて……」

空母棲姫「……まあ、私は深海棲艦だからな。そんな事よりも、どうするのかしら? このまま放っていては、いずれ相手が痺れを切らして突貫してくるわよ」
489 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/12(金) 18:44:42.10 ID:gSxcb4P/o
提督「そうだな。正直、詰みに近い」

空母棲姫「嘘を吐いているのくらいは分かるわよ?」

大淀「!」

空母棲姫「貴方の事だもの。どうせ、今のように艦娘を過保護に扱うのではなく、駒として扱えば勝機も見えてくるのでしょう?」

提督「…………」

大淀「駒……なるほど、確かに駒として扱えば……ですが、それは……」チラ

提督「ああ。私の方針ではない。……だが、方法が無い事も無い。」

大淀「どのような方法ですか?」

提督「そうだな……。賭けにはなるが、この状況ならば或いは……」

提督「……………………決めた。奇襲を仕掛けるぞ」

空母棲姫「奇襲……? この状況でどうやってですか?」

提督「前線の人数を少なくして戦線を下げる。その間に海岸線を伝って、敵陣の真横から攻撃する」

大淀「……前線が崩壊してしまいませんか?」

提督「だからこその賭けになり、駒として扱う事となる。……上手くいけば誰一人欠ける事無く相手を殲滅する事も可能だろうが、上手くいかなければこちらは全滅するだろう。……今の所、これが一番安全かもしれん」

提督「奇襲に回す数は九隻だ。金剛型の四人、大井、北上、川内型の三人で敵左翼を攻撃する。敵もまさか陸から移動して真横から殴られるとは思うまい。そこで混乱を起こさせて九人に注意が向いた所で強襲し、敵左翼を殲滅する。先制は軽巡五人の魚雷を一斉発射。魚雷到達と同時に全員で砲撃開始。……問題点があれば言ってくれ」

大淀「やはり前線が崩壊してしまう危険性が極めて高いです。火力の低下が著しくありませんか?」

空母棲姫「いえ、その点に関してはまだどうにかなるでしょうね。相手は異様なほど警戒をしてます。本来ならば陣形さえしっかりしていれば数の暴力で落とせる数なのに、そうしてこないというのは明らかに警戒のし過ぎで削り殺そうとしている状況よ。前線自体は崩壊しないはず。むしろ陸に注意がいかないかと心配してしまうわ」

大淀「それでしたら、工廠で保管している艦載機の半分を使って多少でも爆撃を仕掛けるのはどうでしょうか? 少しでも注意を逸らす為には良いかと。」

提督「そうだな。それが良い。だが、艦載機……いや、戦闘機は全て使うぞ」

大淀「全て……ですか?」

提督「ああ。第一次攻撃部隊はほぼ全ての戦闘機を使い、もし作戦が成功したならば、そのまま第二攻撃部隊と連携を取って敵の本隊を叩きに行く」

大淀「いくら全ての戦闘機を出すとしても、敵の艦載機の数も多いので制空権が取れるとは思えないのですが……何か考えでも?」

提督「出す戦闘機の七割を爆装させて爆撃機と錯覚させる。迎撃しようと昇ってきた敵機を殲滅するという作戦だ」

空母棲姫「なるほどね。大量の爆撃機が来れば慌てて昇って迎撃しようとするわ。でも実際は戦闘機だから、昇ってきたばかりで遅い飛行の相手が勝てる訳もない……そうすれば制空権を取れる訳ね。どんなに悪くても優勢にはなるでしょう」

提督「そういう事だ。どうだ?」
490 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/12(金) 18:45:10.84 ID:gSxcb4P/o
大淀「……賛成します。そうでなければ、私達に待っている未来は全滅です!」

空母棲姫「今言っていた方法で制空権を取って追い払うというのはダメなのかしら」

提督「今の状態で制空権だけを取っても、自棄を起こされて全軍突撃なんてされてはマズい。やるならば相手の戦力を大幅に削ってからだ。それならば勝機がハッキリと見えてくる」

空母棲姫「そういう事でしたか。それならば私も賛成します」

提督「では、作戦を通達しよう」カチッ

提督「……全艦娘に指示を与える。まず──」

────────────

下田提督「奇襲を受けただと!? そんな馬鹿な!! どこからだ!?」

レ級『陸からだな……。奴ら、艦娘を陸で移動させて横殴りしてきたようだ。左翼は全滅。反射的に反応したこちらも陣形を崩して烏合の衆となり、先遣隊の八割が壊滅した』

下田提督「ちっ……! 敵の被害は!!」

レ級『大破が十数隻といった所か。残念ながら撃沈には至っていない』

下田提督「くそ!! こうなれば数で押し潰すぞ!! 艦載機を全機発艦して空から絨毯爆撃しろ!!!」

レ級『……了解した』

────────────

空母棲姫「敵、艦載機を大量投入! 如何なされますか?」

提督「防空体制だ。防空射撃後に戦闘機で迎撃だ。大淀、大破した艦娘には『逃げる事だけに集中して、必ず母港へ帰投せよ』と、もう一度強く後押ししろ。これは思ったよりも楽に進むぞ」

大淀「はい!!」

────────────

レ級『航空隊が壊滅した』

下田提督「どういう事だ!? いくらなんでも壊滅するなどおかしいだろ!」

レ級『防空射撃による荒削りの後、戦闘機部隊によって壊滅された。……恐ろしい奴だ。先ほどの爆撃機に偽装していた戦闘機をまだ隠し持っていたとは』

下田提督「くっ……!! そうとなれば、捨て身で攻撃させろ!! こっちは何隻かがあいつの母港の近くまでいければ勝ちなんだ!! 潜水艦部隊には敵戦艦を狙うようにしろ!」

レ級『……そうだな。そうしよう』

────────────
491 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/12(金) 18:46:27.26 ID:gSxcb4P/o
大淀「敵本隊が高速で接近! ソナーに大量の感あり!!」

提督「戦線を下げろ! 引き撃ち体制!! 爆雷、広範囲投下!! 空母は航空支援爆撃用意!!」

大淀「ダメです! 敵艦処理しきれません!!」

提督「直掩機のみ残し、全艦載機は雷撃爆撃装備!! 敵中核、狙え! 水雷戦隊、前方の敵のみ集中迎撃!! 目標、大破以外の敵艦のみ!」

空母棲姫「長門、比叡、夕立、大破! 長門のみ依然として戦闘中!」

提督「長門、命令だ下がれ!!」

長門『バカを言え!! こちらの味方艦隊は金剛と軽巡と駆逐艦のみで──!』

提督「下がれ!! 比叡、夕立、長門を牽引しろ!」

長門『だがっ……!!』

空母棲姫「榛名、霧島、直に戦線へ復帰!」

提督「榛名、霧島が戦線へ復帰する!! だから下がれ!!」

長門『……了解、した』

提督「後で吊るす。覚悟しておけ。──榛名、霧島! 三人の掩護を!! 必ず逃がせ!!」

────────────

レ級『……状況は劣勢。さあ、どうする』

下田提督「ちっ……!! 数の暴力で勝てるはずが……!!」ガンッ

レ級『…………なあ、テイトクさん』

下田提督「なんだ!!」

レ級『あいつら、さっき面白い事をしていたよねぇ? 陸から奇襲するってさぁ』

下田提督「それがどうし──いや、ほう……なるほど」ニヤ

レ級『ついでにあの瑞鳳って艦娘さ、もう自分の意志すらあやふやになってるから剣と盾には丁度良いんじゃないかなぁ?』ニヤ

下田提督「くっ……くくくくっ……! ならば、瑞鳳の命令の為に私も横須賀へ向かおう。あいつらが勝利を手にして、油断しきった所で満身の力を籠めて叩き付けてやる」

レ級『アハハハハハァァッ!! 良いじゃん! 最っ高な作戦だよぉ!!』

下田提督「くくく……覚悟しておけよ、横須賀の連中め……!」

…………………………………………。
492 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/12(金) 18:48:00.59 ID:gSxcb4P/o
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ると思います。

づほが可哀想になってきた。
493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/12(金) 21:21:19.94 ID:J3TiaBQg0
乙 姫が有能すぎる
494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/12(金) 21:26:11.36 ID:0RKveEmKo
乙です
495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/13(土) 15:35:17.51 ID:TYfr1RjIO
づほ…、かわいそう(いいぞもっとやれ!)
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/14(日) 02:22:51.68 ID:kY1CWSEAO
外道としては秀でていても、格上相手には通じないし、他ルートの意趣返しになってるのが凄すぎるww
497 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/25(木) 21:51:50.74 ID:+KnFEa/ao
空母棲姫「──利根戦隊の左舷方向に居る深海棲艦が最後よ。それで殲滅完了ね」

提督「利根戦隊、左舷に敵が見えるはずだ。それで全てが終わる」

利根『了解した! ──艦隊、左舷方向の敵を叩くぞ! 索敵、始めー!』

提督「利根艦隊を除く全ての艦娘は哨戒しつつ鎮守府へ帰投しろ。大破した艦娘は利根艦隊の帰投を問わず入渠して構わない。……皆、よく頑張ってくれた」

提督「……空母棲姫、周辺の状態はどうだ」

空母棲姫「……だいぶ静かになったわ。利根の向かっている敵を除けば、いずれ沈む敵がいくつか見えるくらいね」

提督「…………そうか」

空母棲姫「何か気になる事でもあって?」

提督「私はまだ、あのレ級を仕留めたという報告を聞いていない」

大淀「そういえば確かに……」

空母棲姫「……ごめんなさい。見逃してしまっていたわ」

提督「いや、責めている訳ではない。あんな状態で常に監視する方が無理だ。むしろ、お前は良くやってくれていただろう? お前が居て、常に状況を教えてくれていたからこそ私達は誰一人として失う事無く生き抜けたんだ」

空母棲姫「ですが……」

提督「納得しなければ、納得するまで続けるぞ」

空母棲姫「もう……」

大淀(……困ってはいますが、嫌ではなさそうですね)

提督「さて、空母棲姫にはすまないが、レ級の捜索をしてくれ。嫌な予感がする」

空母棲姫「分かりました。…………ん?」

提督「どうした?」

空母棲姫「いえ……なんだかやけに艦載機の操作が重くて……」

大淀「疲れが出てきたのでしょうか……? 先ほどまでずっと戦場の状況報告をしていらっしゃっていましたし」
498 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/25(木) 21:52:26.17 ID:+KnFEa/ao
空母棲姫「確かに疲れはありますが……それにしても妙な感覚です。今まで手に持っていた物が、まるで霧になっていっているような……」

提督「……空母棲姫、ここで作戦を休止する。まずは休憩を取れ」

空母棲姫「いえ、それには及びません。疲れとは言っても多少です。……こんな感覚は今まで初めてなので、もう少し調べておきましょう。何が原因でこのような症状が出ているのかを究明する必要もあります」

提督「……………………大淀、間宮のアイスクリームの手配を。五分くらいは休憩を与えたい」

空母棲姫「その五分すら今では貴重よ。他の策が欲しいわ」

提督「ならばヲ級と交代だ。ヲ級も夜目が……いや、確かヲ級はあの艦載機が使えなかったか」

空母棲姫「ええ。意識の連結が出来ないと言っていました。この鎮守府でこの艦載機を使えるのは私だけです」

提督「……やはり作戦を休止だ。お前に何かがあってからでは遅い」

空母棲姫「……………………」

提督「……空母棲姫?」

空母棲姫「待って。今、鎮守府の近くで何かが動いたわ」

提督「敵か?」

空母棲姫「──いえ、艦娘ですね。確かあれは……瑞鳳という子だったでしょうか。ボロボロの状態です」

大淀「瑞鳳……? この鎮守府には居ないはずですが……」

提督「……キナ臭いな」

大淀「え?」

提督「空母棲姫。瑞鳳が現れたのはどこからだ?」

空母棲姫「南西の方角ですね。海ではないわ」

提督「どんな様子だ?」

空母棲姫「心ここに在らず……かしら。歩くのも辛そうよ」

提督(……南西の方向には下田鎮守府がある。そして、歩くのも辛そうにしている、と……。私の思い過ごしか……?)

提督(それに、金剛や瑞鶴、響と同じように逃げてきたのかもしれないのか……)
499 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/25(木) 21:52:54.19 ID:+KnFEa/ao
提督「……逃げ出してきた可能性もあるな」

空母棲姫「下田鎮守府からですか?」

提督「ああ。もしかしたら、下田の提督に異議を申し立てて暴行されたのかもしれん」

大淀「逃げ出してきたって……そんな事、あるのでしょうか。艦娘が提督から離れるだなんて……」

提督「通常では考えられんが、あの鎮守府は悪い意味で常識が通じん。何があってもおかしくない。実際に長門の件もある」

大淀「では、介抱しましょう! 逃げ出してきたのであれば、助けてあげるべきです!」

提督「それは少し待ってくれ。──空母棲姫、瑞鳳の来た方角を詳しく調べてくれ。何か居るか?」

空母棲姫「……いえ、何も見えないわ。せいぜい野良猫が瑞鳳を警戒して見ているくらいね」

提督「ふむ……。ならば助けるぞ。大淀、後の事は頼む」スッ

大淀「はい。お任せ下さい」ピシッ

提督「そして、空母棲姫は休め」

空母棲姫「……それは…………」

提督「……命令だ。休みなさい。お前は充分すぎるくらい働いてくれたんだ。身体を壊してしまえば元も子も無いぞ?」ナデ

空母棲姫(……最近、こうやって撫でられるのが心地良くなってきました)

空母棲姫「……もう。分かったわ。艦載機を工廠へ戻しま──!?」

提督「どうした?」

空母棲姫「……そんな。一体どうして……?」

大淀「何かあったのですか?」

空母棲姫「……艦載機との連結が消えました」

提督「墜とされたのか?」

空母棲姫「いえ、そうではありません。完全に操縦が出来なくなりました……。どんなに頑張っても、意識の再接続が出来ません……」
500 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/25(木) 21:53:21.29 ID:+KnFEa/ao
大淀「やはり、無理をし過ぎたのでは……」

空母棲姫「……そう、なのでしょうか。こんな事、今までどんなに疲れていても無かったのですが……」

提督「一度、救護妖精に診て貰え。何か分かるかもしれんぞ」

空母棲姫「……そうします」スッ

大淀「それにしても……随分と落ち込んでいますね。どうしてですか?」

空母棲姫「…………私の数少ない提督に出来る事が、一つ無くなったからです……。私はそれ以外だと、家事の他は何も出来ないのに……」トコ

大淀(ああ……提督の言っていた事が今ならば分かります。この人は、確かに信用できます)

提督「家事だけとは言うが、その家事も大変なものだろう。何も気に病む必要は無いぞ」

空母棲姫「ごめんなさい……それは出来そうにないわ……。少し休んでから救護妖精へ訪ねます……」

カチャ……パタン……

大淀「……相当に堪えてますね」

提督「ああ……。今はそっとしておいてやろう。──私はその間に瑞鳳を救助する。何か異変があれば、お前の判断で皆に指示を出してくれ」

大淀「……………………」

提督「……大淀?」

大淀「提督、お一人で行かれるのですか?」

提督「ああ。みんな疲れ切っているだろう。そんな状態の子達へ更に仕事を増やす訳にはいかん。それに、話を通すならば私の方が適している」

大淀「なるほど。畏まりました。皆の事は私にお任せ下さいませ」

提督「ああ。頼んだぞ」

…………………………………………。
501 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/25(木) 21:53:48.82 ID:+KnFEa/ao
提督(さて……下田への方向はこっちだが……)キョロ

瑞鳳「…………」フラ

提督(居た。……本当に焦燥してしまっているな。まるで亡者のようだ)

提督「そこに居る艦娘。こんな所でどうした?」

瑞鳳「…………!」

提督「…………」

瑞鳳「…………」ボー

提督「……大丈夫か?」

瑞鳳「……………………は、い……」

提督(大丈夫ではないようだ……。運ぶとするか)

提督「こっちに横須賀鎮守府がある。そこでゆっくりと休もうか」

瑞鳳「…………」

提督(……あの島で会った時の金剛を思い出すな。やはり、下田から逃げ出してきたのだろうか)

提督「ほら、こっちへおいで」

瑞鳳「…………」フラフラ

提督「…………」

瑞鳳「……貴方が……横須賀の、ていと、く……さん?」

提督「ああ」

瑞鳳「……良かった」フラ

ギュゥ……

提督「……む?」

瑞鳳「──捕まえました」グイッ

提督「なっ!?」

ドサッ──!
502 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/25(木) 21:54:16.22 ID:+KnFEa/ao
提督「捕まえただと……!? まさか──!!」

下田提督「そのまさかだよ」ザリッ

レ級「ハハハハァ! 上手くいったもんだ!」

提督「……なるほど。この子は囮だったという訳か」

下田提督「そういう事だ。慈悲深く仲間想いと評価されている貴様の事だ。疲れた艦娘は休ませておいて、貴様一人で来ると思ったよ」

提督「……よく索敵から逃れてここまで近付けたものだ」

下田提督「お前の所の深海棲艦が偵察機を飛ばしているのは分かっていたからな。充分に注意と警戒をして隠れながら来させて貰った。山の中を歩くのは疲れたぞ」

提督(ちっ……だから上空からは見えなかったのか……。いや、それよりも時間を稼ぐ事を考えよう。長時間戻らなかったら、誰かが異変に気付いてくれるはずだ)

提督「……この子の状態が普通ではないが、何をしたんだ」

下田提督「ただ従順になるよう躾けてやっただけだ。非常に楽しませて貰ったがなぁ」

レ級「内臓を直接掴まれる苦しみって喉が潰れるまで叫ぶほどらしいよぉ! 痛みで身体中が痙攣していてさぁ? 油ぶっかけて身体に火を点けても苦しむのが最初だけになるくらい気力も無くなってたねぇ」

下田提督「だが潰すのはどうなんだ? 殺してしまったのかと思ったぞ」

レ級「だーいじょうぶだって! ほら、あの高速修復材っていうの? 背骨以外の大抵の怪我なら全快させてくれるらしいじゃん? まっ! 流石に片肺をぐちゃぐちゃにした時はやり過ぎちゃったと思ったけど。ギャハハハハ!!」

提督(……惨い事を。身体を壊され、そして元通りに直され……それの繰り返しをされたのか)

提督「私をどうするつもりだ。さっき言ったように相当警戒するくらいだ。何か目的があるんだろう」

下田提督「ああ、それだけどさ……アンタ、目の前で自分の大切な子が苦しむ姿ってどう思う?」

提督「……………………」

下田提督「貴様には、助けを求める貴様の艦娘が好き勝手にされる所を見せてあげたいんだ。当初の予定はどんどん沈めて精神を磨耗させた状態でやるつもりだったんだが、よくよく考えたら一人一人を丁寧に殺してあげた方が苦しいだろ?」

提督「…………」

下田提督「ちっ……何か言ったらどうだ? あ?」ガッ

提督「……さあな。案外、眉を顰めるくらいかもしれんぞ」
503 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/25(木) 21:54:42.70 ID:+KnFEa/ao
下田提督「ほーん……? じゃあ、ちょっと動くな。レ級、こいつが動いたら腕を吹き飛ばして良いぞ」

レ級「あいよ」ジャキッ

下田提督「瑞鳳、お前の腰帯を使ってこいつを縛り上げろ。縛られ慣れたお前なら、逃げられない縛り方も知ってるだろ」

瑞鳳「はい……提督……」

シュル……ギュゥゥ……!

下田提督「仰向けに寝転がして、その上に座れ」

提督(なんだ……? 何をする気だ……?)

下田提督「瑞鳳、これが分かるな? いつも通りにやるんだ」ポイ

チャリッ──

提督(短刀……)

瑞鳳「……は、い」スッ

提督「…………」

瑞鳳「…………!!」ザクッ

提督「!!!」

提督(自分で自分の足を刺した……!? 何をしているんだこの子は!!)

瑞鳳「っ、ぁ……! い……っ!」ザクッ

瑞鳳「ぅあ……、は……っぐ…………!!」ザクッザクッ

瑞鳳「あ゙ッ……っう……ギ……っ……! ん、うぅ……!!」ズグッズシュッズリュッ

瑞鳳「あ…………ぁ、ぅ……」グジュ

提督「…………ッ」

提督(自分の肉がぐちゃぐちゃになるまでメッタ刺しにするとは……。これが『いつも通り』だと……?)
504 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/25(木) 21:55:09.28 ID:+KnFEa/ao
下田提督「どうだ、瑞鳳? 今、どんな気分だ?」

瑞鳳「き、もち……良い、で……す……」ニコ

下田提督「そうかそうか。お前はそれが『大好き』だからなぁ」

提督(……こんなに痛みを堪え、消え入りそうな声で、無理矢理に言わせられているのか……この子は)

提督(…………私の服に染みたこの子の血が、生温かい……。この温かみの分だけ、この子は死に向かっている……)

レ級「んー、ちょーっと物足りないなぁ」グチャ

瑞鳳「ッッあァアア!!?」

提督「っ!!」

レ級「そうだ! その表情だ!! うーん、良い表情だぁ。苦痛に歪んだ端麗な容姿……最高だねぇ。赤く滴る肉も手触りが良いし、ホント最高だよ、君ぃ!」グジュッミチッ

瑞鳳「ああッ!!? ギ、いァ……ッ!! ひ、ぅッ……ぐぅッ……!!」

提督「……………………!」

レ級「あれあれぇ? どうしたのかなぁ? 他人の艦娘ですらそんなに険しい表情になるんだ?」

下田提督「くっふふははははッッ! こんな調子だったら、貴様の艦娘に同じ事をさせた時はどうなるんだろうなぁ! ハハハハ……楽しみだ……!」

提督(……狂人どもめ)

…………………………………………。
505 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/25(木) 21:55:37.89 ID:+KnFEa/ao
金剛『──テートク?』

金剛「え?」

比叡「? どうかしましたか、金剛お姉様?」

金剛「あ、いえ。何でもないデース」

榛名「お身体が優れないのでしたら、すぐに救護妖精さんの所へ行きましょう?」

霧島「あれだけの戦闘の後です。こうして休んでいるとはいえ、身体は大事にして下さいね、金剛お姉様」

金剛「……ハイ。ありがとうございマ──」フラッ

三人「!!」

金剛「っ?」

金剛(……勝手に入れ替わった? ナゼ? ……シスター、聞こえますか?)

金剛『ハ、ハイ。いきなりでビックリしたデス。デモ、私もナゼ急に入れ替わったのか分からないデス……』

金剛(……この事は後で考えまショウ。今は、テートクの所へ行くべきデス)スッ

比叡「……金剛、お姉様?」

金剛「……ごめんなさい。少し、やらなければならない事が出来ました」タッ

比叡「!!」

榛名「あ……! ……行ってしまいました」

霧島「…………今の喋り方は……」

榛名「はい……。偶然、でしょうか……」

比叡(あの喋り方は……私の知っている……)

…………………………………………。
506 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/25(木) 21:56:04.36 ID:+KnFEa/ao
利根「…………」

響「? どうしたんだい、利根さん?」

利根「……胸騒ぎがするぞ」

雷「敵艦、撃沈したわ……。もうヘトヘト……」

暁「最後に残ってるのが戦艦だったなんて聞いてないわよ……」

利根「…………」ジー

電「……あの、利根さん?」

利根「すまぬ。我輩はやる事が出来たのじゃ。各自、帰投して良いぞ」ザァッ

雷「え? ……利根さんが艦隊を放置して持ち場を離れるなんて、初めてじゃないかしら」

電「なのです……。何かあったのでしょうか……?」

暁「とりあえず戻りましょ……。燃料も弾薬も気力も無くなっちゃった……」

響「……………………」

暁「? 響、どうしたの?」

響「ごめん。私は利根さんについて行くよ。先に帰ってて」ザァッ

電「あ……。どうしちゃったのでしょうか……」

雷「分からないわ……。でも、帰って報告をしなくちゃ」

暁「もう……。戦闘毎の無線周波数を知ってるのは旗艦だけなのに……自分の足で報告するなんて疲れちゃうわ……」

電「き、きっと何か重要な事があったのです」

暁「だったら説明してくれたって良いのに……」

雷「何があったのかしら……」

…………………………………………。
507 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/08/25(木) 21:56:45.33 ID:+KnFEa/ao
今回はここまでです。また一週間後くらい……? に来ますね。

遅くなってごめんよ。ちょっとキリがある程度良い所までやってたらこんなに掛かっちゃった。
508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/25(木) 22:23:00.29 ID:9lc7SLvuo
おっつー
509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/25(木) 22:42:51.06 ID:zBmVInxao
乙です
510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/25(木) 23:47:41.87 ID:d36eqY2O0

ずほ...
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