提督「劇をしたい」龍驤「あのさぁ、さっきからなんなの」

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1 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 21:48:38.57 ID:NPpYpUnM0
・艦これ 艦娘入手祈念

・龍驤
・鳳翔
・加賀
・翔鶴
・瑞鶴
・長門

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2 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 21:50:05.10 ID:NPpYpUnM0
提督「劇をしたいんだ」

龍驤「それはさっきから何回も聞いとるよ。なんでやりたいん?」

提督「俺の同期の提督がな、ビデオカメラを手に入れてさ」

龍驤「あのシャイな人のことか?」

提督「そう、そいつだ」

提督「そいつが鎮守府カレー大会の様子を撮影して送ってきたんだよ」

龍驤「あぁ、あれね。すっごい楽しそうやったなぁ」

龍驤「けど、ウチらの鎮守府でもカレー大会はやったやん。十分楽しかったと思うけど」

提督「そうじゃないんだ。あのビデオには一回もあいつの姿が写ってなかっただろ」

龍驤「そういえばそうやったな。それがどうしたん?」

提督「全部、最初っから最後まであいつが撮影してたんだよ……」

龍驤「はぁ? 審査も秘書艦にやらせて撮影やっとたんか?」

提督「そうだ」

提督「その上で、ビデオカメラを持ってない俺に向かって、ものすごく楽しかったって言ってきたんだ!」

龍驤「……」

提督「うらくらやましいよぉ、龍驤!」

龍驤「あー、はいはい。うらやましくて、悔しかったんやな」

龍驤「こんなことで大和男子(やまとおのこ)が泣くんやない」
3 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 21:52:11.93 ID:NPpYpUnM0
龍驤「大体、あそこの提督なら言えば貸してくれるんとちゃう?」

龍驤「ウチが借用申請書を書いとこか?」

提督「本当か! ありがとう龍驤、大好き!」

龍驤「はいはい、適当なこと言わんでもええから」

提督「……」

提督「いや、そこまですることはない」

提督「撮影そのものよりも、健全な鎮守府運営を示してきたことがうらやましかった」

龍驤「そうか? ウチらの鎮守府もけっこうええと思うけど」

提督「あぁ、良い方だと自負している。ただ身内が知っているだけでは足りないんだ。広報して民間にも伝える」

提督「これほどの戦力を保有していたとしても、我々は皇国の僕だということをな」

提督「我々の存在意義は皇国民の守護にあり!」

龍驤「……そうやな。時々キミはかっこええな」

提督「ふっ、惚れてくれ」

提督「まぁいいんだけどさ、結局なんで劇がやりたいん?」

提督「……」

提督「本を読んだんだ。とても、とても楽しい時間が過ごせてな」

龍驤「そういえば最近キミ、古典を読んでたな。桃とか竹から人が生まれたり……」

提督「あぁ、青猫と射撃王の日常や念を使う狩人とかな」

提督「書物だと俺が楽しめるだけだが、演劇ならみんなが楽しめるんじゃないかと思ってな」

龍驤「ほっほー、キミにしてはなかなかええこと言うな」

龍驤「大本営への申請書と地域への広報はウチがやっとくよ」

提督「頼むよ」
4 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 21:53:35.27 ID:NPpYpUnM0
龍驤「台本とかはいつ用意するん? かなり時間かかるやろ?」

提督「よくぞ聞いてくれた! この日のために書き溜めておいた!」

龍驤「おぉう? 近頃、キミからの指令が少なかったんは、それを用意しとったからか」

提督「そういうことだな」

龍驤「そんなんでこの鎮守府は大丈夫なんか?」

提督「それは安心してくれ。交渉式神を派遣してあるからな」

提督「制海域は概ね変化なしだ」

龍驤「は? え? うん、大丈夫ならええけど」

提督「これ台本、出演者も書いてあるから声をかけておいてくれ」

龍驤「ふんふん、なるほどなるほど。主役はーっと……」

龍驤「……瑞鶴かぁ」

提督「演目は狩人の話、主人公は元気な少年だからな」

提督「ぴったりだと思ったんだが、どうだ?」

龍驤「ええんとちゃう? キミにしてはよく考えてるで」

提督「俺にしては、は余計だろ」

龍驤「あははは、ごめんって」

提督「ちゃんと龍驤の役もあってな」

龍驤「後で見とくから説明はええよ」

提督「そうか? なら他の艦娘に台本を渡してきてくれ」

龍驤「了解ー」

提督「よろしく頼む」

提督「なぁ、龍驤」

龍驤「なぁに?」

提督「いや、何でもない」

龍驤「そう? じゃあ行ってくるね」

元気な声を出して、執務室を後にする。

提督「……全然伝わらないな」

嘆息して、引き出しの中にある黒い小箱と一枚の書類を眺める。


5 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 21:55:07.70 ID:NPpYpUnM0
――廊下――

龍驤「うーん、蟻の章をやるみたいやな」

龍驤「提督も思うところがあるんやろか。特に導入のところを選んどるやん」

龍驤「突然発生した脅威、対抗する戦力」

龍驤「ウチらの状況と似てるなぁ」

龍驤「あ、ウチは主人公の恩人役や。思ったよりええなぁ」

龍驤「けどな、高望みかもしれんけど」

龍驤「できればキミの脚本で、キミに選ばれて主人公がやりたかったわ」

龍驤「そりゃ無理か、あはははは……」
6 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 21:55:45.35 ID:NPpYpUnM0



艦隊が、「遠征」から帰投しました。



7 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 21:57:17.18 ID:NPpYpUnM0
龍驤「この時間の帰投は第六駆逐隊やな。台本渡しに行こか」



暁「艦隊が帰ってきたんだって。ふぅ」

龍驤「なんで他人事みたいなんや」

暁「あ、龍驤さん。第六駆逐隊、ただいま帰投しました」

龍驤「ご苦労さん、ほんま助かるで」

響「問題ない。これが第六駆逐隊の任務だからね」

龍驤「響はえらいなぁ」

暁「あっ……」

雷「雷のことも褒めていいんだからね」

電「電も撫でて欲しいのです」

暁「……」

龍驤「順番やでー」

龍驤「暁は一番お姉さんやから最後な」

暁「!」

暁「もちろんわかってるわよ。レディーなんだからちゃんと待てるわ。ほら、響。帽子を取らなきゃダメでしょ」

響「暁の言う通りだね。流石は私の姉さんだ」

8 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:01:19.71 ID:NPpYpUnM0
雷「遠征もいいけど、たまには出撃したいわね」

電「だめなのです、雷ちゃん。電たちに電たちのお仕事があるのです」

雷「でも〜」

龍驤「そうかそうか、雷は出撃したいんか」

龍驤「なら、ウチが提督に具申しとくわ」

「「本当!?」」

思わず龍驤の言葉に反応してしまう。

元来戦うために生まれた彼女たちである。

輸送任務の重要性を理解しつつも、やはり燻るものはあったのだ。

雷「旗艦は私がやるわ」

暁「何を言ってるの、旗艦は暁型一番艦の暁の役割よ」

電「喧嘩はだめなのです!」

響「ここはあえて私がやるというのはどうだろうか」

電「だから喧嘩はだめなのです! 喧嘩になるのならいっそ旗艦は……」

電「……電がやるのです」

4人が4人共、期待に胸をふくらませていることは明らかだった。

遠征帰りで、補給すら終わっていないにもかかわらず、彼女たちはキラキラしていた。

9 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:05:43.91 ID:NPpYpUnM0
龍驤「ええで、皆でゆっくり決め」

龍驤「けどあれやな」

龍驤「4人だけやといつもとあんま変わらんやろうから、随伴艦としてウチを入れてや」

その一言で熱気は霧散した。龍驤の、提督の親心がひしひしと伝わったからだ。

遠征の経路でも深海棲艦との衝突はある。それらははぐれの個体ばかりなので、追い払えばそれでおしまいだ。

こちらが先に発見すれば威嚇射撃で追い払う。

むこうが先であれば、威嚇射撃をされる。

ある意味、野生動物の縄張りと同じで無駄な争いは回避できている。

沈めたり沈められたりには、決して発展しない。

これが出撃となると話が変わる。艦娘である彼女たちは、当然それを知っていた。
10 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:07:14.92 ID:NPpYpUnM0
暁「そう、やっぱりそうなるわね」

響「大丈夫だよ、龍驤さん。私たちに出撃はまだ早いみたいだ」

響「それでいいかな、雷」

雷「えー? けど仕方ないよね」

電「もう少し練度を上げてからなのです」

龍驤の表情は柔らかいままで、特段口を挟み込むようなことはしなかった。

雷「あーあ、出撃はまだ先かぁ。けど、せめて演習はしたいわね」

暁「そうね」

電「龍驤さん、なんとかならないのですか?」

龍驤「なんとかなるでー。出撃やなくて演習でええの?」

「「おねがいします」」

龍驤「実は提督に言われとってな、前々から準備はしとったんや」

電「司令官さんが?」

龍驤「そうや、第六駆逐隊が出撃する前に演習をさせたいって言ってたで」

暁「そっかぁ、司令官が……」
11 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:08:42.66 ID:NPpYpUnM0
龍驤「単騎で相手してもらうように申請しとくよ。高練度の艦娘やから単騎でも手強いでー」

龍驤「けどな、そんな強敵を相手にして勝利をつかむことこそが重要や! 4人で頑張り」

暁「ちなみに誰が相手をしてくれるのかしら」

響「たしかにそれは気になるね」

電「いくら高練度の艦娘でも、一度に4人を相手取れる人は限られているのです」

雷「ならきっと川内さんね! あの人は昼夜連戦で、どんどん士気が上がるんだから!」

響「北上さんじゃないだろうか。酸素魚雷は駆逐艦の主兵装だけど、それを最も使いこなせるのは雷巡の彼女だからね。私達の先を行く人だよ」

暁「甘いわね! 2人はすっごく強いかもしれないけど、本当に強い艦娘は一人前のレディーじゃないといけないの。レディーかつ武闘派の艦娘といえば妙高さんよ!」

電「はわわっ! 3人共ものすごい人たちなのです! 電たち4人でも勝てないかも……」

雷「戦う前から何よ! 皆で力を合わせるのよ!」

電「!」

電「雷ちゃんの言うとおりなのです」

龍驤「うんうん、その意気や」

12 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:10:09.56 ID:NPpYpUnM0
響「それで、誰が演習の相手をしてくれるのかな」

期待の眼差しで龍驤に問いかけた。

軽巡の先輩だろうか、雷巡の先輩だろうか、それとも重巡の先輩だろうか。

先輩たちの演習を見学したときの高揚感は忘れられない。

ただの軍艦同士の衝突ではない。在りし日の魂の載せた艦娘同士の凌ぎ合いだ。

これほどまでに力強く、これほどまでに輝いているのかと。

龍驤の回答を待つ。
13 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:11:35.68 ID:NPpYpUnM0



龍驤「長門や」



14 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:12:33.61 ID:NPpYpUnM0
「「……え?」」

まったく、寸毫ほども予想していなかった。

超弩級戦艦長門型戦艦

そのネームシップ艦、長門

曰く、皇国の誇り

曰く、世界のビッグ7

曰く、鎮守府の守護神

あろうことか連合艦隊旗艦が、駆逐艦4盃の演習相手だ。

響「本当なの? 龍驤さん」

龍驤「ほんまやで、なんで嘘つかなあかんのや」

龍驤「しっかり準備しぃ、相手はあの長門やからな」

「「ありがとう!」」

龍驤「ええってええって。あとで感想聞かせてぇ」

龍驤「あ、ちょっち待って。これ配るの忘れとった」

響「これは?」

龍驤「劇の台本や。鎮守府で劇をやって、民間との交流を図るんやって」

電「とてもいいことなのです」

雷「私達に台本ってことは、出演するってことね! 主役は雷かしら!?」

龍驤「主役は瑞鶴やでー、ウチらは調査隊役やな」

雷「そっか、残念」

龍驤「ちゃんと台本を見といてな。ウチは他にも配ってくるわ」

龍驤が去った後に、台本を眺める。

響「この台本には、力を感じる」

暁「間違いないわね、主役は瑞鶴さんだけど……」

雷「司令官も本気なのね! 頑張らなくっちゃ!」

電「……司令官さん、よかったのです」

なんとなく、安心した空気が漂った。



15 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:13:46.24 ID:NPpYpUnM0
――廊下――

龍驤「瑞鶴はどこにおるんやろ、射撃訓練場かな?」

龍驤「長門にも演習の話をせんとあかんし、今日は忙しくなりそうやなぁ」

長門「なんだ? 私に用でもあったか?」

龍驤「あっ、長門みっけ。 何しとったんや?」

長門「うむ、少し比叡と話をだな。 それより何か用事か?」

龍驤「前に話した演習なんやけど、近日中にお願いしたいんやわ」

長門「ほう、とうとう覚悟が決まったのか。楽しみだな」

龍驤「あの子らに長門の本気は見せたりたいんやけど……」

長門「ふふ、いいだろう。主砲、副砲は外そう。三式弾、徹甲弾もなしだな」

長門「主兵装は12.7cm連装高角砲になってしまうが、まぁ仕方あるまい」

龍驤「ごめん……、お願いしといてあれやけど。あの3人の練度やと長門の通常兵装はだいぶ厳しいんや」

長門「なぁに、かまわないさ。私を頼ってくれているのだ、どのような条件だろうと期待に応えてみせよう」

長門「ビッグ7の力、侮るなよ」

龍驤「ありがと」

16 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:14:38.42 ID:NPpYpUnM0
長門「ただし」

長門「龍驤よ、今度は私の演習に付き合ってもらおう」

龍驤「い、いやや!」

長門「まぁ、そういうな。私も願いは聞いてやったろう、だったらお前にも応えて貰わんとな」

龍驤「長門との演習はめっちゃしんどいからいややー!」

言葉とは裏腹に、その顔は笑っていた。笑う、というよりは牙を剥いているようだった。

彼女もまた、皇国が誇る艦娘だ。

長門との戦闘、それを想像して湧き上がる何かがあるのだろう。

長門「はははは、そう喜ぶな。加賀にも声をかけておいてくれ。次は封殺してみせるとな」

龍驤「伝えとくよ」

長門「それより、龍驤。比叡から話を聞いたぞ」

長門「この鎮守府で劇をするんだってな」

龍驤「耳が早いな、その通りやで。けど台本には長門の役はないみたいやな」

長門「そうか、残念だな。まぁ、裏方で力仕事でもさせてもらうさ」

龍驤「力仕事なんか提督にやらせればええって。他のどこでもないこの鎮守府近海でやるんやで」

長門「それもそうだな」

17 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:17:59.80 ID:NPpYpUnM0
長門「ところで、比叡の奴がな。劇の日にドレスを着ることになったと言っていたぞ」

龍驤「それはええなぁ、比叡は美人やからな。和装も似合うけど、ドレスのが似合っとるよな」

長門「うむ、それには同感だ。いつだったかはさすがに見惚れてしまったな」

龍驤「けどなんでやろ? 劇で比叡の役はないで?」

長門「劇の役はないかもしれないが、当日、比叡は『御召艦』のようだな」

龍驤「はい?」

長門「どうも大元帥がいらっしゃるようだ」

龍驤「え? 何しに?」

長門「何って、劇を見に来るのだろう」

龍驤「こんな辺境の鎮守府まで、艦娘の演技を見にか? ありえんやろそれは」

長門「そうかもしれんが。比叡の準備を見るに決まったのは今日昨日ではなさそうだったぞ」

長門「まぁ、政はとんとわからんものでな。我々は祭を楽しむとしよう」

長門「ところで台本を見せてもらってもかまわないか?」

龍驤「別にええけど、大量に刷ったみたいやし」

長門「ふむ」

流し読みをした後に龍驤を眺め、そして笑った。

長門「なるほど、これは提督の決意表明なのかもしれないな」

長門「大元帥への表明であれば、それは何よりも重いものとなるだろうさ」

龍驤「そりゃそうやろうけど、わざわざ何を宣言するんや」

長門「そうだな、例えば」

長門「提督の伴侶とかどうだ」

龍驤「……笑えんでぇ、それ」

長門「笑う必要などないさ。ただ祝うのみだ」

長門「主人公の父親役に提督自身を据えているのだ。必然、それは意図的なものだろう」

長門「それに古典を演じる時は細部が変わるものだ。演出の解釈次第だからな」

長門「提督の役割は、主人公の父親というよりは、どうしても会いたい人物か?」

龍驤「……」

長門「ずいぶん思いきった催しだな。胸が熱くなる」

龍驤「まぁ、ええけど。演習の件、加賀に伝えてくるよ」

長門「あぁ、よろしく頼む」

小走りの龍驤を見送る。

長門「ふふっ、原典にない台詞の追加。これがすべてを物語っているではないか」

『提督、もう一目会ってから、ウチ壊れたかったよ……』

長門「錻(ブリキ)の星で、海底に沈んだ青猫は最期に一番大切な人間を想った。きっと我々艦娘も同じだろうさ」

長門「ただ……」

長門「提督は我々に轟沈を許すほど甘くはないがな」



18 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:19:12.36 ID:NPpYpUnM0
――射撃訓練場――

加賀「さすがね、赤城さん」

加賀 大前:○○○○ ○○✕○ ✕○○○

赤城「いえ、まだまだ微妙な調整が必要です」

赤城 中:○○○✕ ○○○○ ○○○○

翔鶴「一航戦の先輩を見習わなくちゃいけないわね、瑞鶴?」

翔鶴 落前:✕○○○ ○✕○○ ✕○○○

瑞鶴「翔鶴姉、加賀とはあんまり変わんないって」

瑞鶴 落:○○○○ ○○○○ ○✕✕✕

加賀「これだから五航戦は……」

瑞鶴「何よ、加賀! あんただって2本外してるじゃない!」

翔鶴「瑞鶴、先輩に失礼よ」

19 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:21:01.71 ID:NPpYpUnM0
加賀「あなたの考えていたことを当ててみましょうか」

加賀「三立目の一射まで皆中。見たか、一航戦!」

瑞鶴「うっ」

加賀「一本外しちゃった、けどまだ赤城さんと同じだし」

瑞鶴「うぅ」

加賀「二本外しちゃった、どうしよう加賀に並ばれちゃった」

瑞鶴「……」

加賀「その結果がこれよ」

瑞鶴「……けど翔鶴姉だって3本外してる」

加賀「もちろん、開幕即外すのは論外よ」

翔鶴「うぅ」

加賀「けどあなた、そこまで愚かなの? 中たった外したを問題にしていないでしょう」

加賀「中てられたものを、その性根が邪魔をしたということが問題なの」

加賀「そもそも……」

瑞鶴「もういいわよ! 蜻蛉回収してくる!」

翔鶴「まって、瑞鶴。私も行くわ」

加賀「……」

赤城「どうかしましたか?」

加賀「いえ、別に」

20 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:22:47.72 ID:NPpYpUnM0
龍驤「相変わらず加賀は厳しいなぁ」

赤城「あら、龍驤さん。道場に顔を出すなんて珍しいですね」

龍驤「赤城も相変わらずよう中てるなぁ。さすが一航戦の誇りや」

赤城「いえ、まだまだです。慢心はダメ」

龍驤「それでも加賀は厳しすぎんか? もうちょっち優しいしたればええのに」

加賀「……あの子たちにもう少し才覚がなければ、そうしてもいいのですが」

加賀「この鎮守府の戦力、深海棲艦の脅威を考えると、遊ばせるわけには行きません」

加賀「ふたりとも優秀な子たちですから」

赤城「ふふっ、さすがは加賀さんね」

龍驤「それをふたりに聞かせたればええのに」

加賀「それより龍驤さん、何か用かしら」

龍驤「あー、提督がこの鎮守府で劇をやるゆうててな。台本を渡しに来た」

赤城「劇への出演ですか。戦力増強にならなさそうなので断りましょう」

加賀「いや、提督からの命令ですよ。第一声がそれと言うのはさすがに」

龍驤「赤城……、前から思っとったけど、どんなメンタルしてるの?」

赤城「それはともかく。どんな内容です?」

龍驤「端的にいうと、突如発生した脅威に対抗戦力を送り込む話やな」

龍驤「赤城と加賀は、対抗戦力のトップと一緒に戦う役や」

赤城「上々ね」

21 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:25:53.45 ID:NPpYpUnM0
龍驤「それで主役は……」

龍驤「……主役は瑞鶴やな。提督は自信満々やった」

加賀「龍驤さん、あなた……」

瑞鶴「蜻蛉回収してきたわ。んー? 龍驤じゃない、何しに来たの?」

加賀「龍驤?」

翔鶴「瑞鶴!」

龍驤「ええって、ええって」

加賀「ですが」

龍驤「何も間違ってへん。四航戦、軽空母龍驤とはウチのことや」

瑞鶴「で、何しに来たのよ」

龍驤「台本渡しに来たんや。主役は瑞鶴! おめでとう!」

瑞鶴「主役は私? 本当に?」

龍驤「本当や」

瑞鶴「ふ、ふふふ。 見た、加賀? これが私の実力よ!」

加賀「戦闘に関係ないことを自慢しても締まらないわ。 私達は艦娘よ?」

瑞鶴「うぐっ。けど、どんな台本なんだろう。ちょっと見せてよ」

瑞鶴「ふんふん♪」

瑞鶴「……ふーん」

22 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:27:38.39 ID:NPpYpUnM0
龍驤「あんま嬉しそうやないな」

瑞鶴「まぁ、艦娘だしね。敵棲艦を打ち倒してこそでしょ」

龍驤「さっきとえらい変わり様やな。けど、提督は……大事なことを伝えたいから脚本書いたらしいで?」

瑞鶴「そのくらい見ればわかるわよ。これだけ露骨なら」

龍驤「それでも嬉しないんか」

瑞鶴「別にぃ、まぁ主役はちゃんとやるわよ」

瑞鶴「稽古の続きしなくちゃ」

加賀「次はもっと胴造りを意識しなさい。安定した艦体なら、艦載機もしっかり飛べるわ。それから……」

瑞鶴「あんたに稽古なんてつけてもらいたくないわよ! もう邪魔しないで」

龍驤「ふーん、加賀の稽古が嫌なんか」

瑞鶴「嫌よ! ずっと馬鹿にしてくるんだから!」

龍驤「そうかそうか。なら……」

23 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:28:52.22 ID:NPpYpUnM0



龍驤「ウチが稽古つけたる」



24 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:30:21.90 ID:NPpYpUnM0
明らかに瑞鶴の顔が青ざめた。それだけではなく、両の眼には溢れる寸前まで涙が溜まっていた。



瑞鶴「い、いえ。大丈夫です。その、私、龍驤先輩みたいに式神は使えませんので」

龍驤「心配ないでぇ、大戦前は鳳翔と一緒にどっちも訓練しとったからな」

瑞鶴「!?」

瞬きすらできない間に、龍驤は弓と弽(かけ)と襷(たすき)を召喚した。

退路は断たれた。

瑞鶴は姉妹艦に助けを求め、視線を送る。

翔鶴「加賀先輩、赤城先輩! 引き続き稽古よろしくお願いします!」

瑞鶴「翔鶴姉!」

赤城「いいですよ」

加賀「ええ、ですが……」

すでに涙を溢している翔鶴を責めるのは酷だろう。

緊急避難は法的にも認められているのだから。

龍驤「翔鶴はこのまま稽古を続けるみたいやな。じゃあウチらも稽古を始めよか」

もう瑞鶴は完全に泣いていた。

逃げられない、ニゲられない、ニゲラレナイ!

25 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:31:42.37 ID:NPpYpUnM0
加賀「あの、龍驤さん。まだ、台本を配らないといけないでしょう?」

龍驤「そうやな。けど、後は鳳翔のとこだけやから心配ないで」

加賀「その後は提督にも報告しなければいけないでしょう? その時間はあるのかしら」

龍驤「それもそうや、考えてなかった。ありがとう、加賀」

すでに弓具一式は式符に戻っていた。召喚時と同様、その瞬間を捉えることはできなかった。

加賀「いえ、あの子にも稽古の続きをさせたいので」

龍驤「そうや、伝え忘れとった。今度長門と演習するから加賀は予定にいれといてな」

加賀「わかったわ、次は完封すると伝えておいて」

龍驤「ごめんな、瑞鶴。稽古はまた今度な」

瑞鶴「また……、今度おねがいします」

龍驤は一礼をして道場を後にした。

26 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:33:49.92 ID:NPpYpUnM0
緊張の糸が切れ、ふたりは泣きじゃくる。九死に一生を得る、という言葉は妥当だろうか。

加賀「その、瑞鶴。今更言葉を改めろとは言わないけれど、せめて相手を選びなさい」

瑞鶴「はい……、加賀先輩」

瑞鶴「無礼な態度を取った瑞鶴にも稽古をつけて下さり、……ありがとうございます」

加賀「別に、あなたのためではないわ。この鎮守府のために、もっと戦力をつけてもらわないといけないから。ただ……」

加賀「さすがに、龍驤さんの稽古は同情します」

加賀「落ち着くまでは見取り稽古をしなさい」

瑞鶴「……はい」

加賀「……あの、しっかり鍛錬を積みなさい。あなた達はよくやっているのだから……いえ、なんでもないわ」

ふたりは耳を疑った。

すでに射位に立った加賀の表情を伺うことはできない。

それでも、加賀の耳が赤くなっていることだけはわかった。

赤城「……」

横目で五航戦の様子を確認する。

目元は真っ赤だったが、その表情は明らかに輝いていた。

赤城「……上々ね」



27 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/09(土) 22:40:05.59 ID:NPpYpUnM0
艦娘入手方法を調べたところ、ほしい艦娘の絵を描いたり、話を書いたりすればよいとありました。

絵は書けないので、話を書いてみました。

それなりに効果があったような気がします。

特に龍驤は話のプロットを書いた直後の建造で入手することが出来ました。

現状、入手したメンバーのレベル上げ中なので、しばらく入手祈念は延期です。

・龍驤 ✓
・鳳翔 ✓
・加賀
・翔鶴 ✓
・瑞鶴
・長門
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/05/09(土) 23:04:15.84 ID:OPSEggq50
http://i.imgur.com/i66JWn3.jpg
http://i.imgur.com/gB4BgeR.jpg
http://i.imgur.com/VMb00SE.jpg
虚言癖 国士舘 中退 ウンフェ 飲酒運転 うつ病 長谷川亮太 無能 イジメ キッズライク 誘拐 ガイジ なかよし学級 ハッセ 恒心 前科 ストーカー 犯罪 万引 逮捕 韓国人 性病 ラブライ豚 盗撮
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/09(土) 23:08:55.39 ID:BHvcg3uSo
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/05/10(日) 07:16:19.70 ID:TpYJuxVNO
龍驤ええで
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/14(木) 08:44:28.12 ID:yWbRBdOO0
だれも突っ込んでないけどビデオカメラを買った提督ってアニメ提督?
なんか妙に一致してんだけど
32 : ◆zqJl2dhSHw [saga]:2015/05/17(日) 16:52:09.09 ID:i6oUiyyq0
――居酒屋鳳翔――

隼鷹「海上護衛任務中にさ、スコールにぶち当たったわけ」

隼鷹「そしたら一緒に話をしてたチビちゃんたちが悲しそうな顔をすんのよ」

『おねえちゃん、傘させなくてびしょぬれになっちゃう』

鳳翔「あら、とても良い子ですね」

隼鷹「だろ? やっぱ客船に乗るような子らは育ちもいいんかね?」

隼鷹「別にあたしら艦娘だから雨くらいどうってことないじゃん? けどチビちゃんたちはそんなのわかんないんだよね〜」

鳳翔「そうかもしれませんね」

隼鷹「けどスコールはスコールだから外は危ないじゃん? 船内に戻って欲しかったけど、心配そうにずっとこっち見てるの」

隼鷹「せっかくの船旅で余計な心配なんてする必要ないって伝えようにも、そもそもあたしが艦娘ってことを理解してないわけ」

隼鷹「そこであたしはこう言ってやった」

『ひゃっはぁー! ちょうどいいタイミングで雨が降ってきたぜ〜。傘なんかいらないな!』

『なぜかって? 昨日、シャワーを浴びてなかったんだよね〜』

隼鷹「そしたらチビちゃんたち大爆笑。おねえちゃんのシャワーが終わったらタオルを渡してあげるねって船内にもどってくれたわけよ」
33 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/17(日) 16:53:35.54 ID:i6oUiyyq0
隼鷹「いや〜、これであたしも一安心。やっぱ船旅は安全に楽しんでもらいたいからね」

鳳翔「隼鷹さんと一緒だったら間違いなく楽しいですよ」

隼鷹「護衛だったけどさ、やっぱり船旅はいいもんだ」

隼鷹「鳳翔さん、霧島のお湯割り頂戴。なんだか今夜はゆっくりしたい気分だ」

鳳翔「はい、ゆっくりしていってください。お砂糖と肉桂も入れましょうか?」

隼鷹「ひゃはっはっは、トデーにはしなくていいって。鳳翔さんの作ってくれる肴も食べたいしね」

鳳翔「ふふっ、少し待ってくださいね」

龍驤「こんばんは、鳳翔ちょっとええか?」

鳳翔「あら龍驤、いらっしゃい。こんな時間に珍しいですね」

龍驤「まぁ、ちょっとな。あれ? 隼鷹やん、お帰り。遠征どうやった?」
34 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/17(日) 16:54:41.00 ID:i6oUiyyq0
隼鷹「……」

隼鷹「いや〜、めっちゃ大変だった。ちょっと聞けって」

龍驤「ええでぇ、隼鷹が大変ゆうのはよっぽどやからな。ヌ級でもでたんか?」

隼鷹「まあね」

隼鷹「話したいのは山々なんだけど、実はもうクタクタでさ。もう帰って寝るとこだったんだよね〜」

龍驤「そうか? いつでも聞くから無理せんといてな」

隼鷹「ありがと。鳳翔さん、ご馳走様。また来ます」

鳳翔「はい、また来てくださいね」

手をひらひらと振りながら、隼鷹は店を後にした。

龍驤「……」

龍驤「なあ、鳳翔」

鳳翔「どうかしましたか?」

龍驤「あとで隼鷹にお礼持ってきたいからなんか作って」

鳳翔「あら、何かありましたか?」

龍驤「いや、先付けの器しかないやん。来たばっかで帰らせてしまったみたいや」

鳳翔「……心配りができる人ですからね。あなたの様子に気がついたんでしょう」

龍驤「やっぱそうかぁ」
35 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/17(日) 16:58:31.68 ID:i6oUiyyq0
龍驤「まず、これ」

鳳翔「本? いえ、台本ですか」

龍驤「うん、提督がこの鎮守府で劇をするって。出演する艦娘に台本を渡しに歩いてる」

鳳翔「そうですか。内容は見ましたか?」

龍驤「見たよ。瑞鶴が主役で、提督を探しに行く話でね」

龍驤「長門の見立てだと、提督が大元帥に大切な報告をするためにこの催しをするみたい」

鳳翔「あの、龍驤? 話が見えないのだけど」

龍驤「どうも伴侶を決めるんだって」

鳳翔「あら! それはおめでたいですね。良かったじゃない」

龍驤「よくないよ。そうなったら提督の秘書艦じゃいられなくなるよ」

鳳翔「それはどういうことですか?」

龍驤「長いこと秘書艦をしてきたから、提督の性格はわかってるつもり」

鳳翔「まぁ、聞くだけは聞きます」
36 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/17(日) 17:02:42.86 ID:i6oUiyyq0
龍驤「まず、元気な子が好き」

元気な艦娘がそう述べる。

今はなぜかうじうじしているが。

鳳翔「あってると思います」

龍驤「あと、航空母艦を信頼している」

空母の艦娘がそう述べる。

鳳翔「えぇ、そのとおりですね」

龍驤「髪型がツインテールの子がいると目で追っている」

ツインテールの艦娘がそう述べる。

鳳翔「提督の様子を見ればそうなのでしょう」

龍驤「服は和装が好き」

狩衣を身につけた艦娘がそう述べる。

鳳翔「まぁ、そうでしょうね」

龍驤「これって瑞鶴じゃない」

鳳翔「そこはわかりません」

龍驤「その日が来たら、もうそばには居られないよね」

鳳翔「ちょっと台本見せてください」

文字通り眼に光を灯して、一呼吸の間に台本すべてを網羅した。

内容を確認した後、ひとまず安堵する。

少なくとも提督の意思は変わっておらず、一貫しているようだった。

それにも関わらず、なぜか龍驤は追い込まれていた。
37 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/17(日) 17:04:44.96 ID:i6oUiyyq0
鳳翔「あの、台本を受け取った時に提督は何か言っていましたか?」

龍驤「主役は瑞鶴がピッタリだと思った、かな」

条件で言えば龍驤も該当する筈だ。

その上で瑞鶴が選ばれたのであれば、たしかに憂慮したくなる気持ちもわからなくはない。

それだけで判断するのはまだ早計だろう。

鳳翔は続きを促す。

鳳翔「他には?」

龍驤「私に向かって惚れてくれ、とか」

鳳翔「はい? 他には?」

龍驤「大好き、とか」

龍驤「冗談がキツイよね……」

鳳翔「……」

鳳翔は生まれる前から航空母艦だった。

赤城や加賀のように生まれてから空母になったわけではない。

空母として生まれることが決まっていた、『始まりの正規空母』だ。

そのような歴史を背負っているからだろうか。

鳳翔は鍛錬に鍛錬を重ねた結果、他の空母が追随できない程の域に達している。

加えて、練習空母としての積み重ねがあらゆる艦載機の発艦を実現してきた。

それを支えるのは、鋭い『離れ』だった。

鍛え上げた勝手が龍驤の胸を射抜く。
38 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/17(日) 17:05:44.23 ID:i6oUiyyq0



鳳翔「なんでやねん!」


39 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/17(日) 17:07:54.57 ID:i6oUiyyq0
龍驤「なんや! どうしたんや、鳳翔!?」

鳳翔「元に戻りましたね」

龍驤「ウチなんか変やったか」

鳳翔「えぇ、変でしたよ」

鳳翔「一つ、確認したいのですけれど。いいですか?」

龍驤「ええよ、何でも聞いて」

鳳翔「もし、提督が瑞鶴さんを選んだとして。あなたは祝福できますか?」

龍驤「当然や。ウチが秘書艦やなくなっても、積み重ねた時間は本物やからな」

そこに、一切の躊躇はなかった。

龍驤「しばらくは泣くかもしれんけど……。別にええんや、そん時は鳳翔になぐさめてもらうから」

鳳翔「もちろんですよ。空母はみんな私の娘のようなものです」

鳳翔「けれど、龍驤? 姉妹艦の居ない私にとって、あなただけは唯一の姉妹だと思っています」

龍驤「嬉しいなぁ。ありがと、鳳翔姉」

鳳翔「今夜は飲みましょうか」

龍驤「ええヤツ開けてな♪」

鳳翔「提督にも秘密にしていたものを……」

勅令の光を持って秘蔵品を召喚する。隠し方としては最上級だろう。

加えて、龍驤から見ても惚れ惚れするような流麗さだった。

龍驤「ほっほー、メチルアルコールやん」

鳳翔「こればかりは艦娘しか楽しめませんからね。提督には内緒ですよ?」
40 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/17(日) 17:09:18.37 ID:i6oUiyyq0
水よりも透明な液体が盃を満たす。



鳳翔「何か乾杯の音頭をおねがいします」

龍驤「そうやなぁ、それじゃ……」



『この海の平和に』



41 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/17(日) 17:12:02.31 ID:i6oUiyyq0
会釈を交わして、盃を空にする。

メタノールの揮発が熱を奪うように、先ほどまで帯びていた不安も剥がされていった。

龍驤「……何を焦っとったんやろな。変わるものも変わらんものもあるのに」

鳳翔「受け取り方次第ですよ。私達がどう足掻いても、海がそこにあるのと同じです」

龍驤「凪いでも、荒れても、海は海……か」

龍驤「まぁ、ウチはウチにできることしかやれんからな」

鳳翔「そうですね」

鳳翔「間近に迫ってるお仕事はありませんか。何事も一個ずつ、ですよ」

龍驤「そうやなぁ。直近やと、長門との演習かな。ちょっち準備せんとアカンわ」

龍驤「妖精さんたちも呼ばんと。ひとりでどうにかできる相手やないからな」

鳳翔「あら、いいですね。飲みながら話しましょうか」

龍驤「搭乗員のみんな〜。宴会、宴会〜」

42 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/17(日) 17:13:51.16 ID:i6oUiyyq0
艤装から搭乗員妖精が現れる。

秩序ある彼らの振舞は、士気そして練度の高さを物語っていた。

熟練員「姐さん、出撃で?」

龍驤「ちゃうちゃう。今度演習があるから、その作戦会議や」

龍驤「後は、いつも世話になっとるから一緒に飲もうと思ってな」

熟練員「なるほど。あいわかりました」

熟練員「その前に一つ報告が。本日、彼が規定練度に達しました」

新米員「はっ! 自分も一緒に戦えるっす」

龍驤「あれ? その子はまだ入ってから日が浅いんちゃうの?」

新米員「はっ! これも熟練員殿による御指導の賜物っす!」

熟練員「余計な謙遜は不要だ。貴様の訓練に対する姿勢は目を見張るものがあった」

熟練員「姐さん、この通り優秀な奴です。是非とも早い段階で出撃の機会を与えてやってください」

龍驤「キミがそこまで褒めるんか……。鬼すら後ずさりする言われてるキミが」
43 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/17(日) 17:16:23.16 ID:i6oUiyyq0
龍驤「新米くんよろしくな」

新米員「恐縮です!」

龍驤「キミの初陣は次の演習で、相手は長門や! 楽しみやな」

新米員「はっ! 自分頑張るっす!」

龍驤「元気ええなぁ」

龍驤「そや、新米くんにこの役やらせてええか?」

熟練員「役とは、大元帥閣下がいらっしゃる日の劇のことですか」

龍驤「もう知れ渡ってるの? さすがに早すぎるやろ」

熟練員「青葉殿の搭乗員から聞きましたから」

龍驤「あー」
44 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/17(日) 17:21:05.35 ID:i6oUiyyq0
鳳翔「はい、妖精さん。これが台本ですよ」

熟練員「おぉ、御母堂。かたじけない」

熟練員「ふむ、ふむ」

熟練員「これは……。とうとう提督も覚悟を決めた、ということですな」

鳳翔「そうなんですよ。おめでたい場になるはずなので、全力で参りましょう」

熟練員「姐さんはいかがですか?」

龍驤「当然! 全力でその日を迎えるで〜」

鳳翔にこぼしていたさっきまでとは違い、嘘偽りない笑顔で答えることができた。

熟練員「これは重畳! 姐さんの覚悟、確かに受け取りました」

熟練員「これで我々も全力で戦えましょう」
45 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/17(日) 17:23:08.92 ID:i6oUiyyq0
新米員「自分も台本見たいっす!」

横から新米員妖精が台本を覗きこむ。

熟練員「貴様はこの役を賜った。龍驤の搭乗員に恥じぬ活躍を期待する!」

新米員「はっ! 全身全霊を持ってお受けします!」

龍驤「ほんま、元気ええなぁ」

龍驤「けど、劇の前に長門との演習やな。まずは作戦会議や」

龍驤「これは総力戦になるからな。搭乗員一丸となって臨もうと思う」

「「是非もなし」」

熟練員、新米員だけでなく、操舵員、射撃員、割烹員……全搭乗員の声が重なった。

龍驤「けど、その前に皆で飲もう!」

歓声が上がるとともに宴が始まり、そのまま夜は更けていった。
46 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/17(日) 17:37:46.44 ID:i6oUiyyq0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
入手したメンバーのレベル上げに勤しんでいたところ、霧島がやって来ました。

おかげさまで金剛型四姉妹がそろい、第4艦隊が開放されました。

資材が少し豊かになったので戦艦レシピを回したところ、長門がやって来ました。

続きを書かざるをえませんでした。

・龍驤 ✓
・鳳翔 ✓
・翔鶴 ✓
・長門 ✓

・加賀
・瑞鶴

当初目的以外に何人かやって来ました。
・蒼龍 ✓
・飛龍 ✓
・大淀 ✓
・三隈 ✓
・鈴谷 ✓
・熊野 ✓
・雪風 ✓
・時津風 ✓

何かができそうな予感がします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/19(火) 22:38:19.87 ID:OREGQSz50
乙ー

もうしばらくしたら>>1も大型の闇に飲みこまれていくんだな……
48 : ◆zqJl2dhSHw [saga]:2015/05/31(日) 18:18:08.94 ID:x4E4doG/0
――執務室――

提督「テングサをありがとうございました。近隣の工場で早速加工作業が始まり、今回も品質がよいと喜んでいました」

提督「あと、タ級便の方に間宮羊羹を渡しておきます。皆さんで召し上がってください」

提督「ご安心ください。特使には護衛式符を配備させていただきました」

提督「演劇の日にはよろしくお願いします」

提督「はい、はい。では、失礼します」

交渉式神との同期を切断した。

提督といえど、この提督だからこそ、交渉の重要性を理解していた。

武力行使では双方の消耗が激しく、粗利換算で不利な交渉条件すら下回ることが多い。

交渉不利よりも益がでない、そんな事のために提督は艦娘と近隣住民の命を賭けようとしなかった。
49 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/31(日) 18:19:44.01 ID:x4E4doG/0

次の式符に意識を載せようとした時に、ノックの音が響いた。

電「電なのです」

提督「入ってくれ」

電「第六駆逐隊、遠征終了しました」

提督「どうもありがとう。いつも本当に助かっている」

提督「ところで暁はどうした? 旗艦はあいつだったと思うんだけど」

提督「あと何か困ったことでもあったか? 帰投予定時刻から半日くらいたっているけど」

電「ごめんなさい、司令官さん。 帰ってすぐに龍驤さんと話をしていて、演習に出させて貰えると聞いたのです」

提督「うむ、出撃前に演習をさせてやりたいと言う話はずいぶん前から決めていた」

電「それを聞いてすごくうれしくなっちゃって、そのまま訓練に出ちゃったのです」

電「そして3人とも疲れて果てて寝ちゃったので、電が報告に来たのです」

提督「電さんがたしなめられなかったのか……。もっと早くに演習させてやったほうが良かったかな」

50 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/31(日) 18:22:05.35 ID:x4E4doG/0
電「司令官さん」

提督「どうした?」

電「呼び方が戻ってます。電のことは電と呼べば良いのです」

提督「むっ、すまない。龍驤と鳳翔のことは普通に呼べるようになったんだけどな」

提督「電と執務室で2人きりだと、ついこうなってしまうな」

電「ずいぶん長い期間、2人しか居なかったからしかたないのです」

提督「そう言ってくれて助かるよ。今もそうだけど、本当に世話になった」

電「大丈夫なのです。新任提督は必ず初期艦と二人三脚から始まるのですから」

提督「ありがとう、電さん」

電「司令官さん、また戻っているのです」

提督「おや、またやってしまったな」

気心が知れた者同士、2人は自然と笑みをこぼす。

51 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/31(日) 18:24:44.16 ID:x4E4doG/0
提督「ところで龍驤が帰ってこないんだが、何か知らないか? 台本を配ってもらっているんだが」

電「それならきっと鳳翔さんのところなのです。内容が内容なので鳳翔さんに相談したかったんですよ、きっと」

提督「……役が嫌だったのだろうか? 困ったな、そうなるとは全く予測していなかった」

電「なんでそうなるのです。 あれだけ露骨な依怙贔屓をすれば龍驤さんだって恥ずかしくなっちゃいます」

電「瑞鶴さんが台本見たら怒っちゃいますよ、主人公のはずが何故か龍驤さん中心の演出なのですから」

提督「それは確かに申し訳なくも思っている」

提督「けどな、龍驤には全然伝わらないんだぞ? なら全力を持って伝えるために、場を用意するのは当然じゃないのか?」

電「そこまではいいのです。けど、そのために大元帥まで召喚するのはやり過ぎです」

提督「俺が知る限り最も信用できる人間を呼ぶ必要があると思った。鎮守府の人間だけでやって、万が一、全員総出のドッキリだと勘違いされたらどうするんだ」

電「うぅ、否定しきれないのです」

提督「そもそも、俺の思いはなぜ龍驤に伝わっていない? だんだん不安になってきたぞ」

電「その、龍驤さんは控えめな艦娘ですから。司令官さんから信頼されていることも好意を寄せられていることも自覚はしているはずなのです。けど、司令官さんのたったひとりに選ばれるとはきっと思ってないのです」

提督「何故だ?」

52 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/31(日) 18:26:13.05 ID:x4E4doG/0
電「あまり艦種については触れたくないですが、龍驤さんは軽空母の分類なのです」

提督「うむ、そうだな。それが何かあるのか」

電「戦力として、正規空母には勝てない、だから提督は時間が経てば加賀さんや瑞鶴さんを頼るだろう、と龍驤さんは思っているのです」

提督「……待て、なぜそうなる?」

電「電に聞かないでください。事実とは関係なく、龍驤さんはそう思っちゃっているのです」

提督「艦載機を繰り出しながら、高角砲で対空防御をしつつ、高速機動を持って連装砲をぶち込むようなやつだぞ?」

電「はい、その通りなのです」

提督「この鎮守府だと、戦果も断トツなんだぞ?」

電「みんな知っているのです」

提督「それなのになんでに自信が無いんだよ……」

電「だから控えめだからです。言い方を変えれば慢心をしないのですが、やらた自己評価が低いのです」

53 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/31(日) 18:28:03.61 ID:x4E4doG/0
電「あと容姿についても、触れたくはないのですが、龍驤さんは電たち駆逐艦並なのです」

提督「うむ、電たちは充実した戦力を余計な物を省いて搭載している。その上機動力があるから、はっきり言って外見も機能も美しいな。駆逐艦並という評価は誇らしいことじゃないか」

電「司令官さんにそう思われていたとは……、少し恥ずかしいのです」

電「けど、そうではないのです。『艦』としてより『娘』としての話です」

電「控えめだから、戦艦や重巡には勝てない、だから提督は時間が経てば長門さんや妙高さんを選ぶだろう、と龍驤さんは思っているのです」

提督「……待て、どういうことだ?」

電「電も言いたくないのです。事実は重いのです」

提督「納得いかねぇ」

電「けど、これが龍驤さんの自己評価なのです。だからこそ、ただ一人の艦娘として、司令官さんに選ばれるとは思っていないのです」

54 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/31(日) 18:30:16.34 ID:x4E4doG/0
提督「……なればこそ、正式な場を用意した上で、俺は龍驤に伝えるしかないではないか」

提督「完全に、主観的に見ても、客観的に見てもたったひとつ、疑い様がないように伝えるしかないではないか」

電「……あれ? その通りなのです」

提督「大元帥には御台覧いただく、龍驤には出演してもらう、俺は伝えるべきことを伝える」

提督「大丈夫だ電、安心してくれ。何も変わらない。俺は俺にできることをする、いつだってそうしてきた」

電「……そうですね」

電「万が一、いえ、億が一、まだ足りないのです……」

電「仮に京が一ですけど、龍驤さんが司令官さんの想いに応えてくれなかったら、諦めますか?」

提督「諦めるわけなかろう。これだけは誰の意思にも依らず、俺から生まれた、俺だけの想いだぞ?」

提督「それをどうして諦めることができるんだ」

電「……電は司令官さんの初期艦になれたことが誇らしいのです」

提督「俺も電のお陰でまともな司令になれたと思っている」

電「電を司令官さんの元に送り込んでくれた大元帥に感謝なのです」

提督「ああ」

55 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/31(日) 18:32:49.44 ID:x4E4doG/0
電「ところで、司令官さん。多分その日はおめでたい日になるので、前祝いに飲みませんか」

提督「そうだといいがな。鳳翔のところに行くか?」

電「今日は行っちゃ駄目なのです! 代わりにここでやりましょう」

提督「そうか、ならどれがいいかな?」

日本酒とウヰスキーの棚へ足を運ぶ。

電「いえ、司令官さん。今日はこれがいいのです」

隠し持っていた瓶を取り出す。

「ほう、メチルアルコールか」

電「はい、艦娘といえばこれなのです!」

提督「……この鎮守府を訪問してくれる人間に、まさかこれを出したりしてないだろうな?」

電「当然なのです。電たちは皇国の守護者なのです、なぜ護るべき対象に危害を加えるのですか」

提督「そうか、ならいいんだ」

電「けど、龍驤さんには内緒にして欲しいのです。電は危険物取扱者の資格を持っていないので、メタノールの取り扱いで余計な心配をかけたくないのです」

提督「ふふっ、そうだな。って俺も持ってねぇよ」

電「では1本どうぞ」

2本持っていた瓶の片方を渡す。

提督「ありがとう」

電「何か乾杯の音頭をおねがいします」

提督「そうだな、では……」



『この海の平和に』



瓶を打ち鳴らし、一気に飲み干した。

56 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/05/31(日) 18:39:26.00 ID:x4E4doG/0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
5月29日に龍驤の練度が限界突破しました。

・龍驤 ✓ ○
・鳳翔 ✓
・翔鶴 ✓
・瑞鶴 ✓
・長門 ✓


・加賀

そして加賀がでないので、もうしばらく話を書かないといけないようです。

プロット
・第六駆逐隊VS長門の演習
・加賀・龍驤VS長門の演習前日 第六駆逐隊と長門
・加賀・龍驤VS長門の演習当日朝 加賀と瑞鶴
・加賀・龍驤VS長門の演習本編
・劇本編
・劇終了後の章の授与
・ケッコンカッコカリ
・第一航空戦隊ソウリュウ編成の演習
・入渠
・我、夜戦に突入す!

長いので、途中で加賀が出て欲しいです。

>>30 やはりそうですよね。私は史実を調べていて気に入りました。
>>31 そのつもりです。アニメ本編と同様、この話には登場しませんが。
>>47 やはりいつか飲み込まれてしまうのでしょうか。開始3ヶ月目ですが、怖くて1度も引けていません。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/01(月) 22:40:26.96 ID:OuRXlfr4o


数百リットルのメタノールを飲む電か、胸が(分)厚くなるな
58 : ◆zqJl2dhSHw [saga]:2015/06/07(日) 23:53:06.89 ID:62GOWKxc0
――居酒屋鳳翔――

龍驤『眼が、ずきずきするでぇ……」

朝の光がまぶし過ぎたわけではなく、昨夜の宴会が原因だった。

眼が潰れる程よく効くメタノール。

艦娘だからこそ飲めるし、気分も高揚するが、翌朝のダメージまではコントロールできなかった。

龍驤『今何時やろ?」

壁掛時計を確認すると、短針が9時の位置を示していた。

59 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/07(日) 23:55:11.86 ID:62GOWKxc0
>>58 差し替え

――居酒屋鳳翔――

龍驤「眼が、ずきずきするでぇ……」

朝の光がまぶし過ぎたわけではなく、昨夜の宴会が原因だった。

眼が潰れる程よく効くメタノール。

艦娘だからこそ飲めるし、気分も高揚するが、翌朝のダメージまではコントロールできなかった。

龍驤「今何時やろ?」

壁掛時計を確認すると、短針が9時の位置を示していた。

龍驤「……」

龍驤「あっかーん! ちょっちピンチすぎや〜!」

周囲を見渡すと、諸肌に脱いだ鳳翔とそれを中心に見事な輪形陣を組んだ妖精が眠っていた。

龍驤「……なんなの? これ?」

こめかみを抑えつつ、徐々に昨夜の様子を思い出していく。

――――――
―――


60 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/07(日) 23:57:02.99 ID:62GOWKxc0
鳳翔『龍驤〜、飲んでますか? 盃が空ですよ』

龍驤『注いでくれるの? ありがと。ってその瓶からもう空やんか』

鳳翔『あら、私としたことが。ふふふ』

龍驤『そんな酔うなんて珍しいなぁ。あとなんで鳳翔が2人いるの?』

鳳翔『あなたも酔いすぎですよ』

鳳翔『ところで、龍驤は提督のどんなところが好きなんですかぁ?』

龍驤『う〜ん? そうやなぁ、具体的に何かあったわけやないけど。秘書艦としてずーっと一緒に過ごしてたやろ?』

龍驤『気がついたらこうなってたなぁ』

普段であれば決して言わないであろうこの言葉。

今、意外なほど滑らかに口から出てきた。

61 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/07(日) 23:58:29.09 ID:62GOWKxc0
龍驤『あとは、堂々としていても控えめなとこかなぁ』

龍驤『あれだけ、戦闘指揮に民間交流に奮迅してるのに、成果を誇示しようともせんしな』

龍驤『謙虚っていうんかな? なんかそういうとこもええよな』

龍驤『それから……』

堰をきったように延々と話し続ける龍驤。

話を聞いている間に鳳翔の顔がにやけてくる。

龍驤のことはわかっていた。

わかっていたが、やはり本人の口から出る言葉には情感がこもっている。

龍驤の盃に何度も注ぎながら、言葉を促す。

こういったことは貯めこまずに吐き出したほうがよい。

鳳翔は年長者としてそれを知っていた。

盃が空くたびに龍驤に注ぐ。ついでに、自分の盃も満たしながら話を聴き続けた。

62 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/07(日) 23:59:58.93 ID:62GOWKxc0
鳳翔『ふふふ、いいですねぇ。素敵です』

鳳翔『そんな龍驤のために、お姉さん一つ芸をしてあげます』

龍驤『ほっほー、ウチはちょっち採点厳しいよ?』

鳳翔『望むところです。本邦初公開ですよ? これを逃したら次の宴会まで見られませんからね?』

新米『熟練殿! 母様が! 急いでください』

龍驤と鳳翔の妖精たちもわらわらと寄ってくる。

龍驤の搭乗員は期待に満ちた眼をしていた。

かたや、鳳翔の搭乗員は自信にあふれた表情をしていた。

鳳翔『行きます! これは、演習ではなくて宴会よっ!』
63 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/08(月) 00:02:06.92 ID:ipErHBFK0



鳳翔『私が祥鳳です!』



64 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/08(月) 00:04:10.16 ID:ipErHBFK0
見惚れるほど見事な、倒立だった。

妖精たちの哄笑が響く中、龍驤だけが即座に反応した。

龍驤『鳳翔! 湯文字、湯文字!』

鳳翔『構いません! ここからが本番です!』

鳳翔『これが……』

鳳翔『祥鳳改ですっ!』

右手一本で艦体を支えながら、左舷側の肌脱ぎを行う。

支えが半分になったにも関わらず、ジャイロスタビライザーで制御したかのような安定感だった。

これにはさすがの龍驤も笑ってしまう。

あの鳳翔がここまで体を張った芸を見せるなどと、どうすれば予想できただろうか?

65 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/08(月) 00:07:24.57 ID:ipErHBFK0
鳳翔『まだですよ! このまま終わるわけには参りませんっ!』

鳳翔『そしてこれが……』

鳳翔『祥鳳改二です!』

爆笑の渦に包まれ、手や床を叩いて鳳翔を評した。

湯文字が見えることも躊躇せず逆立ちになり、諸肌を脱いだ鳳翔。

ダメージコントロールが得意な彼女は、中破したところでこれほどの状況にはならない。

つまり、この光景の貴重さ、姿勢制御の見事さ、実施者が鳳翔という意外さが相まって、笑いを誘うことに成功したのだった。
66 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/08(月) 00:09:04.18 ID:ipErHBFK0
鳳翔『ふぅ、さすがにふらふらします。私が無茶をしては、ダメですね』

大仕事を終えた後、チェイサー代わりの焼酎を口にする。

龍驤『あぁー、ええもん見せてもらった。次の宴会大賞はいただきやな』

鳳翔『えぇ、これ位の事をしなくては「ビッグ7・七変化」にはかなわないですからね』

龍驤『あれは凄過ぎやろ。那珂と「初恋!水雷戦隊」をデュエットやからなぁ』

鳳翔『いつもの長門さんからは想像できない、いい笑顔で歌っていましたからね』

鳳翔『その「ぎゃっぷ」が受賞につながったんでしょうね』

龍驤『……ビッグ7は侮れんな』

鳳翔『祥鳳さんにもお願いして一緒に逆立ちをしてもらったほうがいいかも知れませんね』

龍驤『それもええなぁ』

67 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/08(月) 00:11:04.87 ID:ipErHBFK0
鳳翔『そろそろ私は少し仮眠をいただきますね。もういい時間ですけど、あとかたつけは明日になりそうです』

龍驤『ならウチもそうするよ。5時には執務室やから、4時位に起きてかたつけを手伝うよ』

鳳翔『ふふ、ありがとうございます。では一旦おやすみなさい』

龍驤『おやすみ。鳳翔、今日はありがとな……』

鳳翔『いいんですよ。おめでたいことも悩み事も皆で共有したいですから……』

この居酒屋は、鎮守府最古参の2人が床で仮眠を取る面白空間と化した。

――――――
―――

68 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/08(月) 00:12:34.81 ID:ipErHBFK0
龍驤「いやぁ、なんやようわからんけど。昨日はおもろかったなぁ」

思い出したはしから順番に忘れていく。

酒の力を借りて、吐き出したことも忘れていく。

夢と同じように頭の中が整理されたようだった。

残ったものは楽しい時間を過ごしたという感覚だけだ。

龍驤「って、余韻に浸ってる場合やないで!」

龍驤「一旦寮に戻らんと……。あと、隼鷹にお土産もってかな」

あたりを見渡して、あらかた料理を食べ尽くしたことに気がつく。

龍驤「なんか、なんかないんか」

龍驤「……これや」

龍驤「鳳翔〜、昨日の分とこれはつけといて〜」

小声で伝えて、塊を2つ持って店を後にする。

69 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/08(月) 00:13:38.94 ID:ipErHBFK0
――軽空母寮――

龍驤「隼鷹、おはようさん」

隼鷹「はい、おはよー。朝帰りなんて珍しいな」

龍驤「ちょっと鳳翔とこで宴会になってな」

隼鷹「なんだよ〜、それなら誘ってくれたらよかったのにさ〜」

龍驤「ごめん、ごめん。お礼代わりにお土産持ってきたで許してぇ」

隼鷹「お礼って何のことかな〜? まっ、せっかくだから貰っておくけどね」

龍驤「はい、どうぞ」

隼鷹「……何これ?」

龍驤「生ハムとメロン。あれ? 前に食べたいって言っとらんかった?」

隼鷹「うむ、龍驤よ。生ハムメロンとは生ハムとメロンという素材のことではなく、料理名なのだよ」

龍驤「そうなんか? 知らんかったな」

隼鷹「気持ちだけ受け取っておくよ。今度鳳翔さんに作ってもらおうぜ〜」

龍驤「そうやな」

70 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/08(月) 00:15:01.75 ID:ipErHBFK0
龍驤「ところで今日の任務はどうしたん? まだ寮に居るなんて珍しいんとちゃう?」

隼鷹「何言ってんのさ。放送聞いただろ?」

『本日は秘書艦が体調不良のため、休暇日とする。繰り返す、本日は秘書艦が体調不良のため、休暇日とする』

『外出申請は俺のところに直接持ってきてくれ、以上だ』

隼鷹「うひゃあ! まさか、龍驤が無断欠勤だったとはね。そっちこそ珍しいじゃん」

龍驤「早う行かんと!」

隼鷹「まぁまぁ、待てって」

隼鷹「理由はどうあれ、休日に女が男のところに行くんだ。身なりは整えないとね〜」

71 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/08(月) 00:16:38.44 ID:ipErHBFK0
龍驤「けど、急がんと!」

隼鷹「龍驤」

隼鷹「親しき中にも礼儀ありって言葉があってな、お前そんな状態のまま提督に会うつもりなのか?」

隼鷹「髪は乱れてる、顔も洗っていない、服も着替えていない。そんな様でいいのか?」

隼鷹「これじゃ百年の恋だって冷めちゃうね〜。ひゃっはっはっは」

龍驤「……そんでも早う行かんと」

隼鷹「30分だけ待てって。湯浴みはできないけど、清拭してやるし、髪も梳いてやんよ」

隼鷹「そんくらいの時間は待たせといても大丈夫だって。お湯取ってくるから、髪を解いて服脱いでまってなよ〜?」

あれよあれよという間に話が決まってしまった。

言葉こそ砕けているが、隼鷹は意外な程、礼儀作法に明るい。

それは部屋を見渡せばすぐに納得できる。

遠征や出撃で時間がない中でも、きちんと整えられているのだから。

龍驤はおとなしく指示に従った。

72 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/08(月) 00:18:36.67 ID:ipErHBFK0
バイザーを外し、髪を解き、服を脱ぐ。

姿見で自分を眺め嘆息する。

贔屓目に見ても駆逐艦並だった。

駆逐艦で平均値を取れば、おそらくそれを下回るだろう。

龍驤「こればっかりはしかたないな〜」

変えられない事実はとっくの昔に受け入れた。鏡に映る艦娘はそんな表情をしていた。

隼鷹「おまたせ〜。ちゃっちゃかやっちゃおうぜ〜」

龍驤「頼むわ」

隼鷹「ほい、顔を拭くようの手ぬぐい。拭き終わったら、これ齧ってて」

ミントの葉とオリーブの実を手渡された。

隼鷹「口は大事だからね〜。機会は突然やってくるもんさ」

龍驤の背中を拭いながらそう語る。

機会とは何のことかはわからなかったが、頷いておいた。

顔に触れた熱めの温度が目を覚まさせる。

隼鷹「清拭おっしまーい。次は髪を梳くから服を着とけよ〜」

いつの間にか新しい服が用意されていた。まったくもって抜かりない。

73 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/08(月) 00:19:40.40 ID:ipErHBFK0
隼鷹「すんすんす〜ん♪ や〜すんすんすんす〜ん♪」

龍驤の髪にブラシを通す。BGM代わりに聞こえてくる、隼鷹の鼻歌が小気味良かった。

龍驤「それってなんなの?」

隼鷹「ん〜? 知らね。大昔の歌なんじゃね〜?」

龍驤「なんか意味があんのかな?」

隼鷹「さぁ?」

隼鷹「『風が吹けば悩みも吹き飛ぶ、お日様が輝けば心も熱くなる』」

隼鷹「『今日も元気に生きようぜ!』」

龍驤「おぉ、ええなぁ」

隼鷹「こんなのどうよ?」

龍驤「自分で考えたんかい!」

隼鷹「何でもいいじゃん。自分で自分の自由を奪うなって」

龍驤「その台詞は、かっこええな」

隼鷹「だろ? 意外と私、やるからねぇ」

74 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/08(月) 00:21:48.32 ID:ipErHBFK0
隼鷹「はい、できた。鏡見なよ」

目は覚め、唇はしっとりとしていた。

髪はいつもより艶が出ていた上、ご自慢の尻尾さえ機嫌がよさそうに見えた。

龍驤「おぉ、すっごい綺麗や。ありがと♪」

隼鷹「いいってことよ」

龍驤「あれ? 髪紐2つ余ってるんやけど。これどうやって留めたん?」

隼鷹「ん〜? 髪を編みこんで留めたんだけど?」

龍驤「……ほんますごいわ」

隼鷹「あとは、ハンカチ。 少しだけフラグレンスを付けといたから」

隼鷹「よっし! 準備もできたし、行って来い!」

龍驤「ほんまにありがとう。行ってきます!」

隼鷹「あとな、龍驤」

龍驤「なぁに?」

隼鷹「それ、解くのは簡単だけど、多分自力じゃ留め直せないぜ〜?」

龍驤「ウチじゃさすがに無理やわ」

隼鷹「帰ってきたら一緒に風呂に行こうぜ、ひひっ」

龍驤「うん? わかったでぇ〜」

何度も隼鷹に礼をしたあとに、部屋を去っていった。

慌てた様子ではあったが、その表情は少し自信を感じさせるものだった。

隼鷹「……さてさて、どんな髪型で帰ってくるかな?」

鳳翔が内面を隼鷹が外面を気に掛けたのだから、何もなければ嘘というものだろう。

隼鷹は本当に楽しそうな顔で笑っていた。

75 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/08(月) 00:26:19.05 ID:ipErHBFK0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・龍驤 ✓ ○
・鳳翔 ✓
・翔鶴 ✓
・瑞鶴 ✓
・長門 ✓


・加賀

加賀がでないうえに、話も加賀まで進まないです。

しかし、いつかやってきた大淀のお陰で、龍驤の対空カットインが見られて楽しいです。

プロット
・第六駆逐隊VS長門の演習
・加賀・龍驤VS長門の演習前日 第六駆逐隊と長門
・加賀・龍驤VS長門の演習当日朝 加賀と瑞鶴
・加賀・龍驤VS長門の演習本編
・劇本編
・劇終了後の章の授与
・ケッコンカッコカリ
・第一航空戦隊ソウリュウ編成の演習
・入渠
・我、夜戦に突入す!



>>57 特攻隊の訓練生だった人に話を聞いたんですけども、燃料用アルコールを隠れて飲んでいたと言ってました。

純メタノールか、燃料用アルコールみたいにエタノール:メタノール混合なのかはわかりませんが。

ちなみに、その人は訓練生のまま終戦を迎えることができて、特攻しなくて済みました。

命あっての物種と言うものです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/08(月) 13:09:29.69 ID:/PNyonGsO
闇市記とかでもメチルは爆弾酒って名前で出てくるな
77 : ◆zqJl2dhSHw [saga]:2015/06/21(日) 19:52:35.09 ID:60EahTQj0
――執務室――

龍驤「龍驤、参りました」

提督「入ってくれ」

提督の机、周囲の床には大量の紐が編み込まれ、伸びていた。

その長さから想像すると、最低12時間は待っていたことがわかる。

龍驤「○九五〇を持って、劇に出演する艦娘への台本配布任務を完了したことを報告します」

提督「報告ご苦労。本日は休暇日とした、この後は自由に過ごしてくれ」

龍驤「了解」

78 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/21(日) 19:53:40.03 ID:60EahTQj0
龍驤「なぁ、キミ」

提督「どうした?」

龍驤「キミはウチが遅なったことを咎めんのは分かってる。けど、あえて言わせてもらうで」

龍驤「遅なってごめん」

提督「かまわんぞ? お前が思っている通り俺は咎めもしないし、怒りもしない」

提督「お前が俺のことを知ってくれているように、俺もお前のことはちゃんと知ってるからな」

提督「朝は呼びつけはしなかったが、呼べば必ず来てくれたんだろう?」

龍驤「それは当然や。たとえ機関部が全損しても、海底に沈んどっても……」

龍驤「ウチは必ずキミのところに帰ってくる」

提督「うむ」

79 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/21(日) 19:55:42.52 ID:60EahTQj0
提督「ところで、龍驤よ。劇の本当の目的なんだが……」

龍驤「大元帥に、大事なことを宣言するんやろ?」

提督「……何故わかった?」

龍驤「キミがウチのことを知ってくれてるように、ウチも君のことはちゃーんと知ってるんやで?」

龍驤「どんだけ一緒に戦ってきたと思ってんの」

提督「それはそうかもしれないが、一回でも気がついた素振りは見せなかったじゃないか」

龍驤「いや、任務中やったやろ?」

提督「……しまった。そうだったのか。確かにそうだったな」

提督「はっ!? 今日は任務がないじゃないか!」

龍驤「まぁ、キミが休みにしたからな」

提督「……こほん。龍驤よ、聞いてほしいことがある。俺は……」

提督「むぐっ?」

龍驤が笑みを見せ、その人差し指で提督の口を閉じた。
80 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/21(日) 19:56:51.72 ID:60EahTQj0
龍驤「ここでウチに言うてどうすんの。大元帥を証人にしてまで伝えたい大事なことなんやろ?」

龍驤「やったら、その時まで待たんと失礼って言うもんやで?」

龍驤「焦ることなんかないって、ちゃんとその時は来るんやからな」

提督「そうか、そうだったのか」

龍驤「そうやで〜」

「「あはははは」」

提督「……あぁ、龍驤。とても素敵だ」

龍驤「ウチのこと褒めてくれるん? ありがと♪」

81 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/21(日) 19:58:59.33 ID:60EahTQj0
提督「ところで、その髪はすごいな。どうなってるんだ?」

龍驤「すごいやろ? 隼鷹に編んで貰ったんやで?」

龍驤「理由はあれやけど、休日やからな。少しくらいはめかすよ」

提督「そうか、そうだな」

提督「……」

龍驤「ウチの髪さわりたいん? しかたないなー、少しだけならええよ?」

提督「本当か? ありがとう、龍驤! 大す……」

提督「いや、これは言うまい。今はその時ではないよな」

提督「あぁ、後いくつ寝ればその日がくるんだろうな」

82 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/21(日) 20:01:22.22 ID:60EahTQj0
龍驤「さっきから何言うてんの。触らんのならもうバイザーつけるで?」

提督「ちょっと待ってくれ」

提督「これはすごいな。素敵だ、よく似合っている」

龍驤「そうやろ、そうやろ?」

提督「これってどうなってるんだ?」

龍驤「気ぃつけて。簡単に解ける言うてたから……遅かったか」

提督「……すまん」

龍驤「別にええよ。ちゃーんと目的は果たしたからな」

龍驤「キミが夜なべした組紐一本ちょうだい? それで留めとくよ」

提督「それはいいんだが、俺が髪を編んでもいいか?」

龍驤「できるの?」

提督「左の房を見ながらならなんとか。せっかく似合ってたんだ」

龍驤「それじゃ、お願いしよかな」

提督「うむ、任されよう」

龍驤「……こんな日は後何日続くんかなぁ」

提督「何か言ったか?」

龍驤「何も言うてへんで」

――――――
―――

83 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/21(日) 20:02:52.88 ID:60EahTQj0
――駆逐寮――

雷「龍驤さん、大丈夫かしら? 寝込んでないかしら?」

電「まぁ、大丈夫なのです。多分」

響「けど、司令が任務を中断するくらいだ。さすがに心配してしまうよ」

電「それも大丈夫なのです。多分」

雷「なによ! 電は龍驤さんのこと心配じゃないの?」

電「龍驤さんを心配するより、長門さんとの演習を心配したほうがいいのです」

暁「なんか冷たくない?」

電「じゃあ、少し執務室を覗いてくるのです」

暁「へ? 軽空母寮じゃないの?」

電「少し待ってて」

――――――
―――
84 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/21(日) 20:04:35.89 ID:60EahTQj0
――執務室――

電「……失礼します」

小さな声でノックもせず、静かに扉を開ける。

龍驤「……」

椅子に座った龍驤は目を閉じ、船を漕いでいた。

その後ろで髪を結っていた提督はおそらく電が来ることを予想していたのだろう。

声を出さずにテーブルの上を指さした。

『間宮券』

互いに目礼のみ交わして話はおしまい。この沈黙で十分に伝わった。

電「……失礼しました」

入った時と同じように足音すら出さずに部屋を後にした。

――――――
―――
85 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/21(日) 20:05:55.74 ID:60EahTQj0
雷「どうだった? 司令は困ってなかった?」

電「司令官さんは龍驤さんと一緒にいたのです」

雷「あっ、そういうことだったの。ごめんね、電」

響「これは、心配する必要はないようだね」

顔を赤くして、2人は電に謝罪をした。

暁「さすが私達の司令ね! 龍驤さんの看病をしてたのね!」

「「え?」」

響「いや、うん。そうだね、さすが暁だ。人を思いやれる素敵なレディーだよ」

暁「当然よ! 暁は一人前のレディーなんだから」

86 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/21(日) 20:09:14.32 ID:60EahTQj0
暁「司令をお手伝いして龍驤さんに早く良くなってもらわなくちゃ」

響「これは司令に任せたほうがいいんじゃないかな」

暁「なんでよ」

響「この鎮守府では休むことも任務だからね。もしかすると今日は、長門さんとの演習に備えるための時間なのかも知れない」

暁「そう言われるとそんな気もしてきたわね。龍驤さんのことは司令に任せて私達は作戦を練りましょう」

雷「ねぇ、暁。やっぱり旗艦は私のほうがいい気がするんだけど」

暁「何よ! ジャンケンで正々堂々と決めたじゃない」

電「蒸し返す前に間宮さんのところに移動しましょう。提督のところから券を貰ってきたのです」

雷「なら一番早く着いた人が旗艦ね! よーい、ドン!」

暁「ちょっと! 勝手に決めないでよね」

響「……今度こそ勝つ!」

――――――
――
87 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/21(日) 20:11:15.96 ID:60EahTQj0
――廊下――

暁「あ、北上さん。こんにちは!」

北上「むっ、駆逐艦。まぁ、こんにちは。廊下は走るんじゃないよ〜」

暁「ごめんなさい、けどこれは勝負なんです!」

北上「なんなの一体」

88 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/21(日) 20:13:17.08 ID:60EahTQj0
響「北上さん、こんにちは」

北上「また駆逐艦。はいはい、こんにちは。埃たつから走るのやめてよね」

響「ごめんなさい。けど、今負けると旗艦になれないんだ」

北上「う〜ん、なんなのこれ?」

89 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/21(日) 20:13:47.63 ID:60EahTQj0
雷「北上さん! こんにちは!」

北上「げっ、また駆逐艦。けどまぁこんにちは。先にふたりいっちゃったよ〜?」

雷「なんで止めてくれなかったんですか! このままだと雷は旗艦になれないんだから!」

北上「えぇ〜? そんなの知らないよ……」

90 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/21(日) 20:15:11.40 ID:60EahTQj0
北上「あぁ、やっぱり駆逐艦はうざいなぁ」

北上「うわっ、また来た。今日は厄日だなぁ」

北上「こんにちは、電。3人は走っていったけど、アンタは行かなくていいの?」

電「どうも、北上さん。こんにちはなのです」

北上「あれって一体何なの? ちゃんと躾けておきなよ〜」

電「ごめんなさい。演習の旗艦を決める競争をしているのです」

北上「あぁ、長門さんとの演習ってやつ? はしゃぐのも無理ないか」

電「そうだ、北上さん。演習の作戦会議に参加して欲しいのです」

北上「えぇ〜、やだよ」

電「そこをなんとか」

91 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/21(日) 20:17:03.44 ID:60EahTQj0
北上「やだよ〜。この鎮守府は大井っちがいないからね。あんまり頑張ってもね〜」

北上「大井っちだけじゃないよ? 球磨姉も多摩姉も、木曽もいないんだよ」

北上「なんか張り合いがないねぇ」

電「……司令に具申しますか? もっと建造に力を入れればきっと」

北上「いいや、いらない。別に目的を履き違えてるわけじゃないんだよ」

北上「むやみに数を増やさないのは逆にいいことだしね〜」

北上「それにさ、球磨型で初めに来ちゃったのが私だからしかたないよ」

北上「このスーパー北上さまを目の前にして、提督が戦力不足なんて語れるわけないんだから」

電「その通りなのです」

92 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/21(日) 20:19:26.82 ID:60EahTQj0
北上「……駆逐艦に何言ってんだろう。情けないなぁ、もう。こんなの見られたら、大井っちが大笑いするよ。ったく……」

電「話は戻しますけど、作戦会議に参加して欲しいのです」

北上「ほんとぐいぐいくるね〜。そんなの電がやればいいじゃん」

電「電ができるのは、単艦の鍛錬についてだけなのです。第六駆逐隊として闘うために、作戦会議参加をお願いしたいのです」

北上「あーもう、わかったよ。行けばいいんでしょ、行けば」

電「ありがとう」

北上「ったく、なんでこうなるかね?」

電「軽巡洋艦は駆逐艦を導くものなのですから」

北上「今は重雷装巡洋艦だよ〜。覚えないのはもう諦めたけどさ〜」

電「北上さんと一緒に出撃したのは、北上さんの練度上げに随伴していた時だけでしたから」

北上「まぁ、あの時はありがとね」

93 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/21(日) 20:21:18.26 ID:60EahTQj0
――間宮――

暁「どう考えても、暁が一番ってことよね!」

雷「もう少しだったのに!」

響「まぁ、これは仕方ないね」

電「仕方ないのです」

北上「3人とも反省文書き終わった? じゃあ作戦会議を始めるよ〜」

「「お願いします」」

94 : ◆zqJl2dhSHw [sage saga]:2015/06/21(日) 20:22:50.45 ID:60EahTQj0
北上「と言ってもやることは決まってるから。長門さんの砲撃をよけながら雷撃戦に持ち込む」

北上「以上」

暁「え、これだけ? 他に何かないの?」

北上「ないよ。駆逐艦の主砲じゃ長門型の装甲を抜くのは無理だからね〜」

雷「長門さんってそんなに強いの?」

北上「はっきり言って今回の演習を組んだ理由を提督に問いたいくらいだね」

北上「長門さんの通常装備だと、そうだね〜」

北上「昼戦で2盃轟沈。残り2盃で雷撃を当てたとしても、長門さんなら小破、いやギリギリ中破だね〜」

北上「さらに夜戦で1盃轟沈。最後の1盃がなんとか頑張ったら、中破、ギリギリ大破に追い込める、かな?」

北上「ちなみに昼戦の主砲は多分貫通しないから、長門さんへのダメージにはならないね〜」

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