鳳翔「あゝ栄光の、空母機動部隊!」 【お題募集】

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663 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:06:22.51 ID:ZazPqgGp0

飛行場姫『目的は、ここを通って南方海域まで逃げることよ』

提督「逃げる? どういう意味だ」


飛行場姫『――私たちは特性として、根拠地になる陸地と滑走路が必要なんだけど』

提督「ああ、陸上型か」

飛行場姫『去年の夏の攻撃で、私の島が使い物にならなくなってね。北方海域にある、妹の島に厄介になってたんだけど』

飛行場姫『最近、海域を追われた子たちが私たちの島に逃げ込んでくるようになったのよ』


飛行場姫『奪われた海域を攻めてくれって、うるさく言うようになった。それが嫌になって、別の島を探しに行こうとしてるわけ』
664 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:07:29.91 ID:ZazPqgGp0

提督「太平洋を南下せずに、日本海を通っているのは……」

飛行場姫『単純に、迂回すればその子たちに見つかりにくいかと思っただけよ』


提督「深海棲艦にも、戦いを嫌う者がいたとはな」

飛行場姫『私たちは積極的に戦いたいわけじゃないわよ? 貴方たちが攻めてくるだけで』

飛行場姫『来るな来るなって言う子もいたでしょ。まあそれでも来るんだから、身を守るために戦うしかないわね』

提督「…………」


飛行場姫『要するに、いま北方海域は戦力が集中してるわ。この情報をどう使うかは貴方の自由』
665 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:08:39.46 ID:ZazPqgGp0

提督「そんなことを私に教えて、そちらにどんなメリットがあるんだ」

飛行場姫『ないわよ? 私たちはただ、ここを通って行きたいだけ』


飛行場姫『――だから戦おうとしないで、通してくれるとうれしいわ』

提督「事を構えたくないのはこちらも同じ。姫を3体も相手など、できれば避けたい」


飛行場姫『あら、戦意がないのは伝わった?』

提督「赤城が話を聞こうと思ったのは、そういうことなんだろう」

飛行場姫『信頼されてるのね、うらやましい』
666 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:12:09.57 ID:ZazPqgGp0

提督「――こっちからいくつか聞きたい」

飛行場姫『どーぞ。私たちが困らないことは答えてあげる』


提督「自然現象でないことは確認してるが、この霧は君たちの仕業か?」

飛行場姫『いいえ。私たちや練度の高い子なら、海域の天気を変えたりはできるけど、今回はしていない』


提督「この霧は、移動に都合がいいかと思ったんだが」

飛行場姫『おバカさん。天気を変えるのは戦うときだけよ』

飛行場姫『今はこっそり行きたいのに、電波障害起こしながら移動したら、近くに来てますって言いふらしてるようなもんじゃないの』

提督「……む……」
667 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:13:41.72 ID:ZazPqgGp0

飛行場姫『霧を出した子は他にいるってことね』

提督「そうだ、多分それに関連してると思うんだが」


提督「少し前に、艦隊と戦って空母を大破させなかったか? 舞鶴の艦隊なんだが」

飛行場姫『いいえ。あの子たちにも聞かれたけど、大破させたのは戦艦でしょ? 私の仲間は空母しかいないわよ』


提督「そうか。その戦艦級が、この海域にいる理由を知らないか」

飛行場姫『さっき言った、追われて逃げてきた連中だと思うわ』

飛行場姫『かなり遠くまで暴れたがってる、血気にはやった子もいたからね』
668 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:15:23.14 ID:ZazPqgGp0

飛行場姫『もしかしたら、その中に霧を出せるくらいの力を持った子もいたかもしれない』

提督「鳳翔を大破させる実力か……納得できるな」


飛行場姫『ああ、それから。この霧はもうすぐ晴れるわよ』

提督「そうなのか?」

飛行場姫『ええ。霧を見れば、実力の程度は大体わかる』

飛行場姫『1日ももたない霧なんて、私にくらべれば未熟もいいとこよ。うふふ』
669 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:17:57.14 ID:ZazPqgGp0

提督「……なるほど。知りたいことは大体わかった」

飛行場姫『あら、もういいの? こんなサービス滅多にしないんだけど』

提督「まあ、貴重な経験には間違いないな。わざわざ敵の情報を、敵の姫が流してくれるとは」


飛行場姫『私がウソをついていない保証はないわよ?』

提督「残念ながら、私はそれを証明できない」

提督「だから、ここを素通りしたいという、こっちに都合のいいことを信じさせてもらう」


飛行場姫『……ふーん』

飛行場姫『ま、話が通じないよりはマシね』

提督「ほめ言葉として受け取っておく」
670 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:19:37.64 ID:ZazPqgGp0

提督「――霧が出てるうちに、もう行ったらどうだ」

提督「他の鎮守府の艦隊に見つかっても、私はかばったりはしないぞ」

飛行場姫『言われなくても。――じゃあ、もう行くから』

提督「ああ」


飛行場姫『次は、もうちょっとゆっくりお話ししたいわ……なんてね』

提督「会いたくないと言っただろ。――以上だ」

飛行場姫『ハイハイ、じゃあねー』
671 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:20:40.40 ID:ZazPqgGp0

ヲ級Y「ヒリュウー! 次会ったらケッコンしてねェーー! 今度タキシード贈るからァーー!!」

飛龍「私がお婿さんかよ!! 嫌だよそんなの!!」


ヲ級H「じゃあね、次は戦場以外で会えるといいわね」

北方棲姫「マタネー」

ヲ級E「失礼いたしマス」


加賀「……また会う、ね。願っていいのかしらね」

飛龍「いいわけないでしょ! もー、頭がクラクラしてきた……」
672 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:21:51.04 ID:ZazPqgGp0

港湾棲姫「赤城サン」

赤城「はい?」

港湾棲姫「アノ、コレ。鳳翔サンに、渡していただけますカ?」

赤城「お母さんに? どういうことです」

港湾棲姫「お礼デス。以前ウチノほっぽが、お世話になりまシテ」

赤城「なんですって? お世話どころか、戦ったことしかないでしょう」

港湾棲姫「イエ、あるのデス――私も変装していまシタから、おそらく覚えていないでしょうガ」

赤城「……?」
673 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:22:39.25 ID:ZazPqgGp0

港湾棲姫「都合が悪ければ、私のことは隠して構いまセン。皆さんで召し上がってくだサイ」

赤城「た、食べ物ですか? 私たちとは食べられるものが違うんじゃ」

港湾棲姫「ただのスパイスですカラ。カレーにでも入れてくだサイ」

赤城「なぜスパイスなのですか?」

港湾棲姫「カレーが美味しいのはいいことデス」

赤城「……よくわかりませんが、それは同意します」
674 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:25:02.24 ID:ZazPqgGp0

飛行場姫「――ああ、最後にこれあげる。持ってくといいわ」

赤城「……? なんですか、これは」

飛行場姫「この付近まで迷い込んでる、水上打撃部隊の航路情報」

飛行場姫「さっき、私の飛行隊が見つけたの。戦艦が3隻くらい混ざってたわよ」

赤城「…………」


飛行場姫「ふふっ。貴女の考えてること、わかるわよ。なぜ仲間の情報を渡すのかって?」

飛行場姫「でもね、今の私の仲間は、こうして付いてきてくれるこの子たちだけ。裏切り者と言われても構わない」

飛行場姫「それだけの覚悟が、私にはある。そう思ってもらいたいわね」
675 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:27:08.45 ID:ZazPqgGp0

赤城「……そうですか。それについては、何も言いません」

飛行場姫「あら?」

赤城「貴女の目。仲間を想う気持ちに、嘘は見えませんから」

飛行場姫「そう……ウフフフ」

飛行場姫「もう少し、貴女みたいな子が増えてくれればねぇ」



飛行場姫「――では、ごきげんよう。忌々しき栄光の機動部隊の皆さん」

飛行場姫「次は、静かな海で会いましょう」
676 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:38:34.94 ID:ZazPqgGp0


赤城「…………」

加賀「行きましたか。狐につままれたような出来事でした」

飛龍「いっそ、本当に幻ならよかったのに。このままおとなしく忘れてくれないかな……」


赤城「――私たちも行きましょうか。この座標に向かってみましょう」

加賀「それが、お母さんをやった艦隊でしょうか」

飛龍「霧も薄くなってきたし、航空隊も出せるね」

赤城「ここから、もう見えるはずですが……あら、エンジンの音が」
677 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:39:18.59 ID:ZazPqgGp0

蒼龍「――改二改装の初陣だ、やっちゃいなさい2人とも!!」

翔鶴「了解! 五航戦の実力、その身に刻んであげます!」

瑞鶴「改装された本格正規空母の力、存分に魅せるわ! 翔鶴姉、やろう!」


―― ギャアアアア!!


瑞鶴「装甲空母になって、最初の獲物がflagshipル級とは気が利いてるじゃないの!」

翔鶴「瑞鶴、はしゃぎすぎないでね……ちゃんと止めてくださいね、蒼龍先輩!」

蒼龍「翔鶴もいつもよりテンション高いよ――しっかし、いい大物食いだね。うらやましい」
678 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:39:50.30 ID:ZazPqgGp0

赤城「翔鶴、瑞鶴……改装が終わりましたか」

飛龍「もう壊滅させちゃってる。なかなかやるじゃないの、うんうん!」


瑞鶴「――あ、おーい加賀さーん!!」

蒼龍「これで全員そろったね。よかったよかった」

翔鶴「無事に戻りました、先輩方」

瑞鶴「見て見て、これが全装甲甲板だよ。見るからに強固そうでしょ!?」

加賀「ええ、本当に。私の甲板よりも数倍は堅そうね」
679 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:40:36.97 ID:ZazPqgGp0

翔鶴「ある程度の爆撃なら、弾き返しちゃうそうですよ! これで潜水艦に気をつければ、まさに理想の――」

加賀「それは頼もしいわね。でも、カタログスペックを過信してはいけないわね」


加賀「――私の航空隊の急降下爆撃、何発耐えられるか試してあげてもよくてよ」

「「ひぃぃ」」

加賀「ふふっ」

蒼龍「あーあ。素直におめでとうでいいのに、もう」
680 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:41:30.81 ID:ZazPqgGp0

長門「――いたぞ、あそこだ!!」

飛龍「あれ、長門さんたち?」

蒼龍「提督が出した後詰の艦隊だよ。迎えにきてくれたの」


陸奥「もうっ、護衛つけずに出るなんて! 心配かけないでよ!」

扶桑「帰ったら提督に叱っていただきますからね!」

加賀「……一応、連絡機は飛ばしていましたが」

飛龍「まあ仕方ない。掃除当番くらいは覚悟しとこっと……」
681 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:42:09.81 ID:ZazPqgGp0

赤城「…………」

赤城「今回も皆、無事だった」


赤城「……装備は充実、後輩もよく育ってくれた」

赤城「何より、6人揃っている。あの戦争のときとは、違う」

赤城「けれど、今まで宿敵だった者たちとの、深海棲艦との意思疎通……」


赤城「私たちを取り巻く状況が、敵が、世界が」

赤城「色々なことが、変わる時期になってきたのか」
682 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:43:01.63 ID:ZazPqgGp0


赤城「……1人で考え込んではいけませんね。お母さんに教えられたことでした」


赤城「私には頼れるひとたちがいる」

赤城「共有することで、悩みは半減する。喜びは倍増していく」

赤城「――それが戦友であり、家族なのだから」



赤城「さあ皆さん、提督とお母さん、グラーフさんが待っていますよ」

赤城「――早く帰って、歓迎会の準備をしましょう!」
683 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:43:59.42 ID:ZazPqgGp0





鳳翔「う、ん……ん?」

提督「お? 目が覚めたか、鳳翔」

鳳翔「あの、どうしてまだドックに? 修復材は……」

提督「私が止めたんだよ。君を出撃させないために」


鳳翔「むう……そういった特別扱いは……」

提督「いいからゆっくり寝なさい。歓迎会は明日やるから」

鳳翔「そ、そうですよ。お料理の準備は?」

提督「みんなでやってるから心配ないよ」


提督「――なぜかグラーフも、自分の歓迎会の準備を手伝ってるけど」

鳳翔「あらあら。うふふ」
684 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:45:05.09 ID:ZazPqgGp0

提督「ところで、渡したいものっていうのは?」

鳳翔「ああ、そうですね。本当は手渡ししたかったのですが……」


鳳翔「冷蔵庫に、チョコレートを冷やしています。バレンタインのプレゼントです」

提督「冷やして……手作りか! ありがとうな」

鳳翔「きな粉と和三盆で、和風に。あとで感想を聞かせてください」

提督「あとで? いーや我慢できない」

鳳翔「えっ?」


提督「ここに持ってきて、すぐ食べる。ちょっと待っててくれ!」

鳳翔「あ……」


鳳翔「――ふふっ、可愛いひと」
685 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:47:42.30 ID:ZazPqgGp0


鳳翔「……大破、してしまいましたか」

鳳翔「こんなに長く入渠していたのは、どれくらいぶりでしょうか……」


鳳翔「娘たちが頼もしくなると、つい忘れがちですが」

鳳翔「艦娘として、軍人として、命の危険と隣り合わせ。これはいつまでも変わらないのですよね」


鳳翔「…………」


鳳翔「少し……そう、少しくらい」

鳳翔「わがままを聞いてもらっても、いいですよね」

鳳翔「お願いします――あなた」



第4話 終

686 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 02:52:57.38 ID:ZazPqgGp0

第4話、ここまでになります。毎回言っていますが、遅くなりましてすみません。
最後で赤城さんや鳳翔さんがシリアスっぽくなりましたが、安心してください。ただのアットホーム空母ドラマですよ!

今回は深海棲艦の設定を、相当好きにいじってしまいました。
かなり好みの分かれる展開かと思いますが、楽しんでもらえたらうれしいです。

>>604,641
リアルタイムでありがとうございます、うれしかったです!
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/25(木) 02:58:12.11 ID:bBK7BBgv0
688 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 03:12:28.70 ID:ZazPqgGp0

次の話ですが、第5話でずっと待っていただいてる「例のあのお題」をやります。
4月からは生活環境の激変が予想されますので、2月3月中には必ず終わらせます。

このお題で一区切りするのが一番いいかと自分では思っています。
SSなのに難しく考えすぎですが、このメンバーで書こうとすると軽く書けないんです……

第5話が終わった後、次スレに移動しようと思います。
頂いたお題はそちらで必ず拾います。
また短編形式だと更新が滞るし、1レス形式でたくさん書くのも面白そうだと思ってます。


とはいえ、鳳翔さんと6人娘で、仲良く過ごすのを書きたいのは全然変わらないんですけどね。


長くなりましたが要するに、これからもお付き合いいただけますと幸いです。
またよろしくお願いいたします。
689 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/25(木) 07:49:02.37 ID:lXjlgqG7O
乙です
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/25(木) 09:24:32.75 ID:jxeNNBF1o
おつん
深海棲艦と仲良く出来るようになるといいね
691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/28(日) 00:48:36.80 ID:Vrg5Gkjco
乙です。ひさしぶりの更新待ってた甲斐があった!
692 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/03/06(日) 15:32:26.47 ID:PpGPaSuw0

ホワイトデーお返しボイスが来た……だと……
今年の運営様はすごいぞーかっこいいぞー!!

3月11日楽しみですね! ボイスの内容を入れて書こうと思ってます。
他の子の短編もちょこちょこと上げていきたいですね。
693 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/06(日) 15:42:08.48 ID:xdrH+ocWo
あげてない人には聞こえないけどな
694 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/03/06(日) 15:55:47.55 ID:PpGPaSuw0

>>693
すみません、どういう意味でしょうか……?
695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/06(日) 17:20:42.78 ID:V13+vqcFO
>>694
多分気にする必要ないんじゃね?
696 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/03/31(木) 17:08:33.13 ID:JK9PiUL20


幕間10 〜異文化交流〜


Graf「長門、借りていた映画を返す。Danke schön」

長門「Bitte schön. どうだった?」

Graf「良かったよ。Japanの文化は実に興味深いな」

長門「映画なら理解しやすいだろうな。日本語は大丈夫だったか?」

Graf「実は、蒼龍と飛龍に解説してもらいながら見たんだ」

Graf「『勝ったのは我々ではなく、農民たちだ』の意味とか」

長門「うむ、名場面だな」

Graf「それから、我々にも共通する戦の作法など」

長門「作法?」

Graf「――日本の艦娘は、戦場では語尾に『ござ候』と付けなければならないのだろう?」

長門「全力で訂正しておくぞ……全く、からかいおって」
697 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/03/31(木) 17:11:37.64 ID:JK9PiUL20

Graf「甘えついでに、お願いがあるんだ」

Graf「――私に、日本食の特訓をしてくれないか?」

長門「特訓とは?」

Graf「決まりごとや箸の使い方などだ。横須賀ではパンが多くてね」

長門「なるほど、外国とは違うだろうな。私でよければ」

Graf「よろしく頼むよ」


長門「だが、どうして急に特訓を? 焦ることはないと思うが」

Graf「……これを見てくれ。鳳翔が買ってくれた私の箸だ」

長門「……子供用の矯正箸か」

Graf「早く卒業したいんだよ!」

長門「よ、よくわかった」
698 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/03/31(木) 17:19:56.14 ID:JK9PiUL20

長門「まずは朝ご飯からいこう。定番といえば白飯に味噌汁、焼き魚――」

長門「それと納豆」

Graf「さらばだ」

長門「待て待て、なぜ逃げる」

Graf「放せ長門! 私に日本食は無理とわかった!!」

長門「納豆の何がダメなんだ?」

Graf「全てだ!!」

長門「それは困ったな。日本食は発酵の文化だぞ」

Graf「いきなりハードルが高すぎるだろう」

長門「発酵はお前の国にもあるんだぞ、キャベツのなんとか……」

Graf「ザワークラウトは糸を引いたりなどせぬ!!」
699 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/03/31(木) 17:21:14.42 ID:JK9PiUL20

Graf「今まではご飯といっしょに、なんとか食べていたのだが」

長門「納豆が食べられないという者は少なくない。無理をする必要はないぞ」

Graf「残さず食べるのが日本の美と聞いた」

長門「確かにそうかもしれないがな」


Graf「このままでは、空母寮でみんなと楽しく食事ができぬ」

長門「正直に食べられないと言ったらどうかな?」

Graf「鳳翔が笑顔で勧めてくるのだ、断れるわけなかろう!!」

長門「……うむ。気持ちはわかる」
700 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/03/31(木) 17:24:17.50 ID:JK9PiUL20

Graf「どこかに、ネバネバと糸を引かず、独特のにおいがせず、なんとも言えない味がしない納豆はないか」

長門「それはすでに納豆ではない何かだ」

Graf「理解しがたい。あんな手間をかけてまで豆を腐らせるとは」

長門「元は大豆を解毒するために加熱して、わらに巻いておいたら偶然できたとも言われているな」

Graf「まったく神秘の国だ。なんだかわからないものを食べるのだからな!」

長門「多かれ少なかれ、どこの国にもあると思うぞ」


Graf「このままではこの国で暮らしてゆけぬ。なんとかしてくれ」

長門「そこまで重く考えるなよ……」
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/31(木) 17:24:19.11 ID:4Cw8T0b5o
非常によくわかる
702 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/03/31(木) 17:29:01.82 ID:JK9PiUL20

長門「いや、待て。目的は納豆を食べることじゃなく、作法を身につけることだろう」

Graf「む……そうだったな」

長門「納豆についてはいろいろ食べ方があるから、赤城にでも聞いてみてくれ。しらすとか生卵とか……」

Graf「ナマタマゴ!? Japanは卵を生で食べるのか!?」

長門「……異文化交流は難しいな」


長門「ほら落ち着け。箸の持ち方からいくぞ、まず1本目を鉛筆のようにだな」

Graf「エンピーツとはなんぞや」

長門「……なら、あれだ。クーゲルシュライバーのように――」
703 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/03/31(木) 17:31:23.19 ID:JK9PiUL20



Graf「な、な、長門、ナガト!!」

長門「どうした、そんなに慌てて」

Graf「大変だ、鳳翔がおかしくなった!!」

長門「なんだと?」

Graf「昨日、日本の魚料理をリクエストしたら――」


鳳翔『はい! 今日とれたてのお魚で作った、お刺身盛り合わせですよー』

Graf『』


Graf「――生のサカナの切り身を料理と言って出してきたのだ!!」

長門「……刺身は日本の文化なのだなあ」

704 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/03/31(木) 17:35:34.82 ID:JK9PiUL20

>3月中に必ず終わry

終わりませんでしたorz
すみませんがもう少しかかります、またお願いいたします。

>>701
お付き合いありがとうございます!
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/31(木) 17:48:08.67 ID:4Cw8T0b5o

和食美味しいけど世界からみればかなり独特なんかなぁ
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/31(木) 21:45:05.10 ID:j9t8co+h0
カルパッチョとかあるやん<生魚
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/31(木) 22:06:31.81 ID:9hElt/KJO
イタリアでは生の牛肉でカルパッチョ作ってたのを、日本人が魔改造して生魚で作り始めたんだぞ
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/31(木) 22:17:21.56 ID:bJRy7VSjO
カルパッチョはドイツじゃなくてイタリア料理ですぜ

>>707
もともとは肉の薄切りだったのね、知らんかった
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/31(木) 22:26:10.51 ID:jb9flWG/o
乙です
710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/20(水) 05:48:51.01 ID:tEGlxQtO0
乙です〜いやあ、鳳翔さんのバレンタインとホワイトデーボイス素晴らしかったですね
あんなに乙女でキュートなボイスが来るとは…最高の一言につきます

確かここまで限定ボイスやグラ無かったのは鳳翔さんが青葉と並んで最長記録だったかな…?
711 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/23(土) 02:51:15.97 ID:us0jfFLk0
うわああああああああああ三周年ボイスも来てたああああああああああああ
夢かな!俺は夢を見てるんじゃないかな!?
712 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/04/23(土) 03:18:45.60 ID:LmxDFPS10


幕間11 〜Let's Sing Together〜


瑞鶴「今日はみんなでカラオケよ。提督さん、忘れてないわよね」

提督「大丈夫大丈夫。ちゃんと予約してある」


翔鶴「――あら。提督、お電話ですよ」

提督「おう、ありがとう……はい、もしもし」

提督「――おー、佐世保か。久しぶりだな」

提督「珍しいじゃないか、そっちからかけてくるなんて」


瑞鶴「佐世保の提督さん? なかなか会わないわよね」

翔鶴「提督と呉さんの同期の方ね、お忙しくて会う機会もないみたいだけど……」
713 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/04/23(土) 03:19:52.17 ID:LmxDFPS10

提督「どうしたんだ、何か事件でもあったか」

提督「――なにぃ、一式陸攻ができた!?」

提督「待て、もう少し詳しく……そっちの工廠で!?」

提督「偶然なのか? レシピを知りたい、いや――」

提督「み、見たい!! わかったすぐ行く!!」


翔鶴「えっ」

瑞鶴「えっ」
714 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/04/23(土) 03:22:21.35 ID:LmxDFPS10

提督「すまん、ちょっと長崎まで行ってくる」

翔鶴「と、突然どうしたんですか!?」

提督「航空戦力の新兵器ときたら、見ないわけにはいかん!」

瑞鶴「今から!? 向こう着いたら真夜中だよ!!」

提督「艦隊の強化のためだ。少しでも君たちが楽になるなら、こんなもの苦でもない」

翔鶴「提督ー!!」

瑞鶴「こんな時にかっこいいこと言ってる場合!?」

提督「鳳翔によろしく言っといてくれ。頼んだぞ!!」

―― バタァン!!


瑞鶴「――そもそも陸上機じゃない!! 空母じゃ飛ばせないわよ!!」

翔鶴「いや、私たちのカタパルトならあるいは……ムリかしら」
715 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/04/23(土) 03:24:21.64 ID:LmxDFPS10

蒼龍「はーい、お待たせー。……あれ、提督は?」

瑞鶴「長崎旅行よ」

飛龍「どういうこっちゃ」

翔鶴「新しい航空機が開発されたそうで。お母さんによろしくと言付かってます」

鳳翔「おひとりで、ですか? 残念ですね……」

赤城「ぶー。せっかくみんなで行こうと楽しみでしたのに」
716 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/04/23(土) 03:25:33.29 ID:LmxDFPS10

加賀「ならお土産を頼みましょう。レモンステーキに佐世保バーガー、ちゃんぽん、角煮まんじゅう」

瑞鶴「できたてがおいしいのばっかりじゃん」

赤城「なら、海軍ビーフシチューに佐世保豆乳、クールソフトも」

翔鶴「そんなのよくご存じですね……」

赤城「あっ、もちろんお母さんのシチューが一番好きですよ!」

鳳翔「あら、ありがとう。うふふ」
717 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/04/23(土) 03:26:18.47 ID:LmxDFPS10

翔鶴「じゃあ、さっそく出発しましょう」

瑞鶴「翔鶴姉、提督さんにくっついて行けばデートだったんじゃ……」

翔鶴「…………」

翔鶴「あー!! 提督のセリフに感激して棒立ちしてたわ!!」

瑞鶴「まあ、さすがに2人で泊りがけは止めるけどね」

翔鶴「どっちの味方なの瑞鶴……」


蒼龍「そういえばグラーフさんは?」

赤城「長門さんといっしょに映画館だそうです。共通の趣味が見つかったようで」

加賀「歓迎会以来、あまり話せていませんね。今度は正規空母の会で映画上映でもやりましょうか」
718 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/04/23(土) 03:30:06.62 ID:LmxDFPS10

飛龍「さー、着いた着いたっと」

赤城「さっそく注文しましょう、3時間しかありませんからね」

加賀「これはドリンクバーね。食べ放題メニューはどれかしら」

翔鶴「いや、カラオケで食べ放題はさすがにないかと……」


鳳翔「……ここが、からおけぼっくすですね」

瑞鶴「お母さん、最近はあんまり来たことないわよね」

蒼龍「あ、そっか。ちょっとわかりづらいよね」

鳳翔「ふふふ、それはどうでしょうか」
719 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/04/23(土) 03:30:45.75 ID:LmxDFPS10

鳳翔「1曲につき100円入れたりとか、あの分厚い本を探したりとか、そういう反応を期待してたなら残念でしたね」

瑞鶴「おおっ、ということは?」

鳳翔「ちゃんと予習してきました。使うのは、このパネルの機械!」

蒼龍「お母さんすごいっ! じゃあ、さっそく曲を探そう」

鳳翔「まかせておきなさい――ええと」ピッピッ

鳳翔「…………」ピッピッピッピッ


鳳翔「動かないわ、故障ですね」

瑞鶴「いや……あのテレビの下の機械に向けて、スタートを押すのよ」
720 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/04/23(土) 03:31:11.62 ID:LmxDFPS10

飛龍「1曲目誰から行くー?」

翔鶴「せっかくですから、お母さんからどうですか?」

鳳翔「ええっ、私? でも」

蒼龍「いいじゃない、ひさしぶりに聞きたいなぁ」

鳳翔「そ、そうですか? それじゃ……」


鳳翔「―― こんなこといいな できたらいいな あんなゆめこんなゆめ ――」


「「「かーわーいーいー!!」」」
721 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/04/23(土) 03:32:44.97 ID:LmxDFPS10


翔鶴「―― あの日僕の心は 音もなく崩れ去った ――」

瑞鶴「―― 壊れて叫んでも 消し去れない記憶と ――」

加賀「機械では一度に注文できないのね……赤城さん、電話を」

赤城「もしもーし。ええと、ピザ20枚にたこ焼き30人前、スパゲッティを10皿と――」

飛龍「ええいこのテンプレの権化どもめ!!」

蒼龍「食う前に歌え!! ほら没収!!」

「「ああー」」

蒼龍「まったくもう。いくら提督の支払いだからって、見境なしはダメだよ」

飛龍「あ、それは前回と変わらないのね……」



提督「――はっ、くしゅ!」

提督「な、なんだ? 急にふところが寒くなってきた……」
722 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/04/23(土) 03:33:42.89 ID:LmxDFPS10

翔鶴「――やったー!! 97点よ!!」

瑞鶴「ふふーん。これで五航戦にオファー殺到、間違いなしね!」

赤城「…………」

加賀「…………」


赤城「―― お揃いね私達 これでお揃いね あぁ幸せ ――」(翔鶴ガン見)

加賀「―― 貴方の白い衣装も 今は鮮やかな深紅 ――」(瑞鶴ガン見)


翔鶴「」ガタガタ

瑞鶴「」ガタガタ

鳳翔「こら、点数ぐらいで威圧なんてしちゃダメよ」

蒼龍「ここだけ見ると、ただの大人げない先輩だよね……」

飛龍「しかも、満点取っちゃうあたりが特にね。さすが一航戦は格が違った」
723 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/04/23(土) 03:34:36.59 ID:LmxDFPS10

鳳翔「――実は私、最近のらぶそんぐを覚えてきたんです」

飛龍「おおっ! 提督うらやましがるだろうなー、聞かせて聞かせて」

鳳翔「そ、それじゃあ。ちょっと恥ずかしいですけど……」


鳳翔「―― 恋しくて愛しくて止まらない せめてこの心は 君のもとへ ――」


飛龍「…………」

飛龍(失恋ソングだこれー!?)


鳳翔「どうかしら。あの人喜んでくれるかしら?」

飛龍「い、いや、うん。とりあえず可愛いのは間違いない、かな……」
724 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/04/23(土) 03:42:16.49 ID:LmxDFPS10

短いですが今回は陸上機楽しみ編。PC使える時間が限られているので、5話までのつなぎで……
5話は今月末から来月頭の予定です。

もはやレスが保守みたいになって、本当申し訳ありませんorz


>>710
乙女鳳翔さんは可愛いですね……
腕によりかけちゃうお花見鳳翔さんもすごくよかったです。

>>711
来ましたねー! たまたま今日はPCさわれたので、3周年を祝えてよかったです。
あんなの聞いたらこれからも頑張らざるをえない……
725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/23(土) 04:31:38.96 ID:aZM0NgaSo
乙っした。

提督、最後は撃たれてしまうん?
一航戦の曲的にw
726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/23(土) 09:37:37.65 ID:hDcpui9Po
乙です
727 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/23(土) 12:29:28.22 ID:x3xUHWfRo
スレ立て一周年ですな
728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/24(日) 01:53:41.68 ID:YpihkdgL0
乙。更新待ってたぜ
729 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/03(火) 13:07:17.29 ID:6i4HxPpsO
更新乙です〜

艦これACの鳳翔マジでヤバイくらいかわいかったですよ
鳳翔さんのかわいさが世に知れ渡ってしまった…
730 :ID加速中 ◆V9LlgfWZs2 :2016/05/07(土) 17:49:05.27 ID:2Rhxxw+y0
731 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 13:43:26.63 ID:WGRw6AjgO
ほしゅ
732 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/06/06(月) 01:38:52.89 ID:ihB5mKIT0


幕間12


よく、同じ夢を見ていた。

あの人のおかげで、遠くなっていた記憶。


皆で笑って、泣いて、競い合って、精進を重ねてきたあの子たちが。

生まれたときから、私が成長を見守ってきたあの子たちが。


失われてゆく。

目の前で苦しむ愛しい子たちに、しかし私は何もできない。
733 :【厳重注意:LOSTセリフを一部使っています】  ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/06/06(月) 01:41:49.76 ID:ihB5mKIT0

冷たい水。

―― 無事ならいいの……先に逝って……待って――


燃え盛る炎。

―― 飛行甲板の火――ないね……ごめん――


動かぬ躰。

―― ごめんなさい――処分……して――


最後の、写真。

―― 沈むの――月を肴に一杯――



「――――あぁああああっ!!」
734 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/06/06(月) 01:42:51.77 ID:ihB5mKIT0

鳳翔「!!」

鳳翔「――はっ、はっ……」

鳳翔「ふぅ……また、同じ夢」

鳳翔(この夢は久しぶりね。最近は見なくなっていたのに)

鳳翔(最後に見たのは……ちょうど1年前、あたりだったかしら)

鳳翔(そうだった。夢を見て、あの人が助けてくれたのよね)
735 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/06/06(月) 01:43:27.28 ID:ihB5mKIT0

鳳翔(――そうだ。あの人を起こしちゃったかも)

鳳翔「ご、ごめんなさい。大きい声をだして……あら」

鳳翔「……あなた?」

鳳翔「あなたっ!! どこですか!?」

提督「――鳳翔」

鳳翔「!!」

提督「ごめんよ、1人にして……大丈夫だ、ちゃんといるよ」

鳳翔「あなた……」
736 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/06/06(月) 01:43:59.36 ID:ihB5mKIT0

鳳翔「ど、こへ行かれていたのですか?」

提督「汗をかいてたようだから、手ぬぐいと水差しを持ってきた。ほら」

鳳翔「あ、ありがとうございます……んっ」

鳳翔「――ふぅ。安心しました、目が覚めたら隣にいないから」

提督「ごめんごめん」


提督(安心したのはこっちだよ。また目が覚めなくなるんじゃないかと……)
737 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/06/06(月) 01:45:24.08 ID:ihB5mKIT0

鳳翔「それにしても、水差しまで持ってきてくださったんですね。用意がいいというか」

提督「……少し、心配だったから」

提督「夏が近づくこの時期は、不安定になる子もいるし」

提督「特に今日は70年前の、あの作戦の日だからね。注意するのは当たり前だろ」

鳳翔「ご、ごめんなさい。ご迷惑を」

提督「そんなもの気にするな。支えていくと決めたんだから」

鳳翔「ありがとう、ございます」
738 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/06/06(月) 01:46:05.23 ID:ihB5mKIT0

提督「……よければどんな夢か、話してもらえるかな」

提督「吐き出して、楽になることもあるだろうし」

提督「私も、できる限りのことをしてあげたいし……もちろん、辛ければ話さなくていいんだけど」

鳳翔「いえ、大丈夫ですよ。こちらからお願いしたいです」

提督「無理、してないか?」

鳳翔「いいえ。私も、あなたに聞いておいてほしい」


鳳翔「――ただ、手を握っていてもらえますか?」

提督「もちろん」
739 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/06/06(月) 01:48:06.61 ID:ihB5mKIT0

鳳翔「お察しのとおり、MI作戦の夢を見ていたんです」

鳳翔「あの戦争での記憶と、この躰を与えられてからの記憶が混ざった、不可思議な夢なのですが」


鳳翔「それでも、結果はいつも同じ」

鳳翔「私は、先を進むあの子たちを必死で追いかけて――そして、追いつけない」

鳳翔「次々と、躰が燃えていく。傾いでいく……沈んでいく」


鳳翔「あの子たちに、私は必死で手を伸ばすのですが」

鳳翔「でも、届かない。すぐそこにいるのに、助けられない」


鳳翔「――そして、私だけがひとり残される」
740 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/06/06(月) 01:49:00.00 ID:ihB5mKIT0

鳳翔「私は、海の底を知りませんからね」

鳳翔「夢の中の、想像の恐怖というものが……あの子たちに比べて大きいのかもしれません」


鳳翔「――勝手ですよね、私。まだ、決戦は終わっていないのに」

鳳翔「残った子たちや、護るべき人たち……もしかしたら、軍艦としての使命も」

鳳翔「それよりも自分の気持ちを優先して、あの子たちのところへ行こうとしていたんです」

鳳翔「他のことを、全部投げ捨てて……」
741 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/06/06(月) 01:49:57.81 ID:ihB5mKIT0

提督「――勝手なものか」

鳳翔「え?」

提督「親が、自分の子を愛しいと思って何が悪い」

提督「少なくとも、今ここにいる君が、その気持ちを否定することなんてないよ」

鳳翔「あなた……」

提督「誰が何と言おうと、私はそう思うから。もっと頼ってくれていいんだからね」


鳳翔「……ふふ」

鳳翔「ありがとうございます。楽になりました」

提督「ならよかった――さあ、もう布団に戻ろう」

鳳翔「はい」
742 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/06/06(月) 01:51:11.93 ID:ihB5mKIT0

鳳翔(――ああ、やっぱり。あなたは本当に優しい)

鳳翔(ずっと苦しんできた記憶から解放してくれるのは、きっとあなたなのでしょうね)


鳳翔(――でも、だからこそ。すこし、わがままを聞いてほしいんです)

鳳翔(わたしと、あの子たちを、守ってくれるという約束)

鳳翔(……それをずっと続けたいという、私のわがまま……)


鳳翔(やはり、例の計画を急がなくては)

鳳翔(――喜んでくれると、いいのですが)
743 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/06/06(月) 02:01:03.01 ID:ihB5mKIT0

まずは1か月以上更新しなかったことをお詫びします。すみませんでした!
5月は定時で帰れたのが3回とかちょっちおかしくないですかね……社会人の方々はどうやって時間作って書いてるんでしょう

第5話は書き進めています。今日のだけ何か空気感違いますが、次回からはまたラブコメっていきます。
何回謝ったか知れませんが、もう少しだけ! お待ちいただけると幸いです。

イベントはいかがでしたでしょうか。
私はE5甲の途中で力尽きました、アイオワはムリでしたorz
……これからヨークタウン級が出て来たらヲ級の設定どうしよう。


>>727
ホントだ……何事もなく過ぎてしまいましたね。
長く付き合っていただいてる方、本当にありがとうございます。

>>729
空母レシピでの初建造が見事に鳳翔さんでした。やったぜ!
3Dで頬を赤らめてのシンコン3択、ヤバかったです。あれは死にます
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/06(月) 09:59:11.27 ID:6xo9yIRwo
乙です
745 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/06(月) 11:14:51.41 ID:U0ciOcXGo
746 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/08(水) 20:06:11.44 ID:u8vzj65J0
乙おつ

アクィラが実装されて日本機動部隊とアクィラで全く印象が異なる俳優阿部寛というのも・・・
747 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/03(日) 23:44:05.88 ID:Vftd7/BpO
748 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/27(水) 19:47:40.23 ID:G9z3Pf4J0
おい>>746
749 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/08/01(月) 01:40:50.21 ID:doOtmwzp0

テスト
750 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/08/01(月) 01:42:22.83 ID:doOtmwzp0


第5話 〜落花流水〜


赤城「呉の提督さんがお越しに?」

提督「うん。またE海域の時期だし、お互いの確認にね。ここに1泊する」

瑞鶴「1泊? 短い出張ね」

提督「あいつの報告は、簡潔なうえに的確でな……時間がかからないんだ」

赤城「提督と同い年の方でしたよね。学校の同期で」

提督「うん、そう。結局、最後まで成績は勝てなかったよ」

瑞鶴「へー。すごいのね、呉さんって」

提督「……航空論で負けたことはないけどな」

赤城(ちょっとムキになっちゃう提督もかわいい)
751 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/08/01(月) 01:46:11.83 ID:doOtmwzp0

瑞鶴「――ところで赤城さん、今日はみんなでご飯行くんでしょ」

赤城「グラーフさんも入ったことですし、久しぶりに正規空母の会を……と、思ったんですが」

提督「ああ、全然かまわないよ。向こうも秘書艦だけだし」

赤城「よろしいんですか? 空母がいなくなっちゃいますが」

提督「鳳翔がいるし、話す内容は決まってるから。みんなには改めて周知するよ」

瑞鶴「お母さんに任せちゃって大丈夫か。早めに帰ればいいわね」

提督「いいんだ、ゆっくり楽しんでおいで。費用は持ってあげるから」
752 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/08/01(月) 01:48:42.22 ID:doOtmwzp0

赤城「ほ、本当ですか!?」

提督「グラーフもここに来てくれることになったんだし、お祝いも兼ねて」

赤城「いや、うーん……しかし……」

瑞鶴「あのー、大丈夫なの提督さん? 給料日前でしょ」

提督「大丈夫だよ、さすがに居酒屋の会計ぐらい」

赤城「あのお店、お酒の料金は別なんです」

提督「飲み放題じゃないのか?」

瑞鶴「それだと質が悪くなるからって、加賀さんと蒼龍さんがわざわざお店を探してくれたのよ」

赤城「お料理はコースですが、お酒は別料金なぶん全国の銘酒が飲めるんだそうです」
753 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/08/01(月) 01:49:30.10 ID:doOtmwzp0

提督「へぇ。この時世で、しっかりした経営してる店だな」

瑞鶴「まー、無理しないでよ提督さん。これまでもパーティとか景品とか、私たちのカラオケとかで出費してたでしょ」

赤城「あう。さすがにカラオケで頼んだ料理は、今度払いますから……」

提督「――いや」

提督「やっぱり私が持つよ。お金気にしたら、気持ちよく飲めないだろうしな」

瑞鶴「え、本気なの? 正規空母はウワバミぞろいだよ」

提督「いいんだ。上げて落とすのも嫌だから」
754 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/08/01(月) 01:50:19.94 ID:doOtmwzp0

赤城「そんなの気にしませんのに」

提督「他の子が遠慮するかもしれないから、私が持つことは内緒な。――はい、これ」

赤城「お財布、お預かりします」

提督「足りなかったら私の身分証を使ってね」

瑞鶴「そこまでするとは、覚悟してるわね」

提督「いざとなれば店を買い取ればよし」

瑞鶴「いやどこまで覚悟しちゃうのよ」
755 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/08/01(月) 01:52:33.76 ID:doOtmwzp0

申し訳ありませんが続きは明日。
その時に色々書かせていただきます。
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/01(月) 01:55:36.77 ID:V0CGY1O+o
乙です
757 : ◆GoPzFNH1CI [sage]:2016/08/03(水) 06:51:20.08 ID:lPCyZ1b8O

申し訳ありません、規制とやらでPCから全然書き込めません……
本日夜にもう一度試してみます
758 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/03(水) 07:13:24.38 ID:C4IUSYFmo
夏は暴れまくってるのがいるから巻き込まれも多いしね
759 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/08/09(火) 00:53:41.20 ID:GzlUWDB1O

赤城「――と、いうわけで。本日一八〇〇から始めますので、遅れないよう集合してくださいね」

瑞鶴「代金はとりあえず赤城さんに払ってもらって、後日集めることになったわ」

翔鶴「赤城先輩が全員ぶんを? 7人で割るのが早いんじゃないでしょうか」

加賀「割り勘になったら、おそらく貴女が一番損をするわよ」

瑞鶴「翔鶴姉、そんなにお酒強くないもんね」

翔鶴「う……では、お言葉に甘えます」

加賀「赤城さん、給料日前では?」

赤城「大丈夫! 鎮守府のお姉さんとして、それくらいのたくわえはあります」エヘンプイ!

赤城(払ってくれるのは提督ですけど!)
760 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/08/09(火) 00:54:31.72 ID:GzlUWDB1O

蒼龍「グラーフが参加するのは初めてだよね」

Graf「ああ。この鎮守府の、空母の強さの秘密を学ばせてもらおう」

Graf「クウボノカイ、楽しみだな!」

蒼龍(……ほとんど、ただの飲み会だってことは黙っててあげよ)


飛龍「あー、私ちょっと遅れていっていいかな? 工廠に、艤装の整備お願いしててさ」

赤城「そうですか、場所はわかりますよね?」

飛龍「大丈夫大丈夫。なるはやで行くから、ごめんねー」
761 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/08/09(火) 00:55:16.34 ID:GzlUWDB1O





呉「――おう。来てやったぞ」

榛名「て、提督! あいさつでそんな態度は」

提督「……相変わらずだな、お前は」

鳳翔「ようこそいらっしゃいました。呉さん、榛名さん」

呉「出張とはいえ、ひさびさの京都旅行なんだ。しっかりホストしろや」

提督「なら少しはゲストらしい態度をとれよ!」

鳳翔「宿舎へご案内いたします。こちらへどうぞ」

榛名「お世話になります、鳳翔さん」


鳳翔「――あの、呉さん。例のものは」

呉「ああ、持ってきてるよ。夕方でいいだろ」

鳳翔「はい!」
762 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/08/09(火) 00:58:53.74 ID:GzlUWDB1O

提督「長旅だったろう。会議は明日にするか?」

呉「いや、むしろ今日やっつけたい。そんなにかからないからな」

提督「お前が良いならいいんだが」

呉「そもそも、わざわざ出張するほどの内容でもねえんだよ。作戦書を送れば済む」

提督「それでも口頭で聞きたいよ。お前の報告文は簡潔すぎるからな……」

呉「うちの艦隊はそれで結果を出してくれる。細を穿っても柔軟性がなくなるだけだ」

提督「大雑把すぎも問題だろう、次のE海域は――」

呉「わかったわかった。だからちゃんと来てやっただろうが」

提督「本当にわかってるのか」

呉「さっさと終わらせるぞ。明日は榛名と観光だからな」

提督「本当にわかってるのか!?」
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