千奈美「ようせいさんとおねえさん」

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287 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 03:49:05.40 ID:kBf/ArsI0

――――

愛結奈「やった、ワタシの勝ちィ!」

千奈美「ぐくくく。一本足りない……! 先攻有利を活かしたカタチになったわね……」

久美子「言っても、一番手は私だったんだけどな……」

愛結奈「ふふふ、次もクリケット? いいわよーワタシ二番手で」

千奈美「ノースコアクリケットやってみない? 1から20まで最初に埋めた人が勝ち。同ラウンドで追い付いたらサドンデスで決定ね」

久美子「賛成ー」

愛結奈「異議なし」
288 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 03:53:38.50 ID:kBf/ArsI0

――――

愛結奈「奢りで呑むお酒は美味しいわね!」

千奈美「くっ」

久美子「珍しく、負けたねー」

千奈美「家で練習できてなくって。トレーニングとか役作りとかあるのよ」

愛結奈「ドラマ用に声と身体作ってるって言ってたわね。どのくらいツメてるの?」

千奈美「稽古は多くて月に二回だけど、時間できたらジム行ってる。あとは中央の合同トレーニングね」

久美子「木場さんに見てもらえるんじゃないの?」

千奈美「それはそうだけど、時間あるときだけよ。店見るほうが優先に決まってるでしょ」

愛結奈「中央行くならジムもそっち使えばいいじゃない」

千奈美「学校帰りに寄ってるわよ。安いし」

289 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 03:55:22.47 ID:kBf/ArsI0

久美子「ファンに見付かるかもしれないから、じゃないんだ……」

千奈美「気付かれて困るほどの知名度なんて…… シンデレラだって何人いるのよ?」

愛結奈「気付かれるだけなら意外といるんじゃない? それでパニックになるような人は少なそうだけど」

久美子「少なくとも私は、大学以外のプライベートで声掛けられたことないわね」

千奈美「私もない」

愛結奈「ワタシもこっちだと気付かれたことないかなー。スカウトには声掛けられたこと何度かあるけど」

久美子「あるある! 『間に合ってます!』って答えちゃう」

千奈美「……それすら、ないんだけど」

愛結奈「千奈美、一人だとキビキビ動くからね。声掛ける隙がない上に、声掛けられたことに気付かなそう」

千奈美「えっ…… それはそれでひどくない?」
290 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 03:55:52.61 ID:kBf/ArsI0


――――

久美子「元アイドルの音楽教室で芸能界にコネがある、って触れ込みならそれなりに忙しくなりそうじゃない?」

千奈美「堅実、なのかしら」

愛結奈「アリだとは思うけど、それってまず維持できそうなコネが必要よね。音楽プロデューサーとか、大手局のディレクターとか、制作会社の営業とか?」

千奈美「現場の音響監督とか、作曲家の先生なんてのもあるわね」

久美子「そうなのよね……一応、大学の繋がりもあるし、マネージャーとも相談はしてる」

千奈美「……せっかく歌上手いんだから、コネ作るだけに腐心しないでよね」

愛結奈「でも、実績的にはアレよ。ピアニストの仕事、たまにやれてるんでしょ?」

久美子「それ、現役アイドルだから有り付けてるだけだと思うな…… 私より上手いのに、音楽関係の仕事就けなかった人いっぱいいるし」

愛結奈「そういうの、やったもん勝ちって言うの。若さと見た目で仕事が取れるなら取っときゃいいのよ、今しかないんだからさ」
291 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 03:56:26.84 ID:kBf/ArsI0

久美子「そういう愛結奈ちゃんの将来は?」

愛結奈「乗馬クラブ開設?」

千奈美「貴方も大概ロマンチストじゃない!?」

愛結奈「現実的じゃないのは解ってるわよ。だいたい馬飼うのって大変なんだから? 力仕事ばっかりだし土地も必要だし」

千奈美「土地ねぇ。古着屋のバイトじゃ、資金にはならないでしょう」

愛結奈「それ以前に、やらないと生活困るのよね。社長は、こっちに集中してくれたら仕事増やせるって言ってくれるけど」

久美子「それ、目途はついてるの?」

愛結奈「何の見込みもなく言ってる人だったら、今これだけ人ついてきてないでしょ。多分あるんじゃない?」

千奈美「専業、できるんだったらやったほうがいいんじゃないの? それだって『今しかない』んだから」
292 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 04:01:58.43 ID:kBf/ArsI0

久美子「千奈美ちゃんはダーツショップだっけ?」

千奈美「まぁ、ねえ。実際にやれそうな範囲なら、チェーン店のオーナーが関の山でしょうね。オリジナルのフライトとか商品にできたらいいかなぁ」

愛結奈「ホントにそれやりたい?」

千奈美「……帳面とにらめっこするよりは、歌ってたいかな」

久美子「現状、専業にいちばん近いのは千奈美ちゃんじゃないかしら」

千奈美「……制服着るのはともかく、掃除したり伝票切ったりするのが専業アイドルだと思うならね」

愛結奈「最近少し減らしたんでしょ? ドラマのお稽古とかボーカルレッスンとか。どう?」

久美子「そうよ、今度の仕事、歌もあるって言ってた。何、やっとオリジナル曲?」

千奈美「劇中歌だし、シンデレラの管轄じゃないから…… シングルカットとか単独配信とかはないと思うわ」
293 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 04:02:38.84 ID:kBf/ArsI0

――――

千奈美「今日はありがと」

愛結奈「楽しかったわよ。やっぱり、前もって言っておいてくれると集まり易いわね!」

久美子「私は急に呼び出されたんだけど?」

愛結奈「ワタシの独断で呼んだもの」

千奈美「そうなの?」

愛結奈「そうよ。……あ、呼んだ理由忘れるとこだった。礼子さんが、今度のレッスンの後呑むから空けておいてね、って」

久美子「今度? ビューティーアリュールの?」

愛結奈「そうそう。来月頭のね。千奈美もご指名よ」
294 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 04:03:32.99 ID:kBf/ArsI0

千奈美「ふぅん? プロデューサーのご指名なら勿論空けるけど。うちの店で深夜押さえればいいわね」

愛結奈「いや、お店は決めてるとかって。なんか行きたいところあるみたい。ま、奢りだろうしありがたく、ね」

久美子「反省会の延長には…… ならないか、高橋さんなら」

千奈美「それより絶対終電なくすコースじゃないのよ…… アヤに迎え来てもらえるかな……」

愛結奈「そういうことなんで、よろしくね。それじゃ、ワタシはこれで。まったねー」

久美子「ん、私も地下鉄だから。それじゃレッスンで」

千奈美「はーい、よろしくねー」
295 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 04:04:19.11 ID:kBf/ArsI0

――――

千奈美「ただいまー」

アヤ「あ。おかえり」

志保「おかえりなさい♪ お風呂沸いてるよ」

千奈美「助かるー。一緒に入る?」

アヤ「……」

千奈美「いや、ヒくの止めてよ」

アヤ「ヒいてるっていうか…… 珍しい冗談だなって」

千奈美「なんか、ノリで……?」

志保「む。千奈美ちゃん、機嫌よさそう」

千奈美「友人と会って遊べば、そりゃまあ?」

アヤ「志保、アタシたちは友人じゃないらしいよ」

志保「冷たい!」

千奈美「友人っていうか、ほぼ家族でしょ」

アヤ「……お、おう」

志保「暖かい……」
296 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 04:05:07.54 ID:kBf/ArsI0

――――

アヤ「千奈美ーぃ」

千奈美「んー?」

アヤ「アタシたち、明日本番だからもう寝るな」

千奈美「そうよね。お疲れ様」

アヤ「朝からいないから、洗濯と掃除はよろしく頼む」

千奈美「朝ごはんどうするの?」

アヤ「店で食べる。そっち一応休みだろ、寝てていいよ。メッセージか何か入れとく」

千奈美「わかった。大和さんと中央行く予定だから、適当に連絡するわね」

アヤ「任せる」

千奈美「はい、おやすみ。明日はしっかりね」

アヤ「おう。ありがとな、おやすみ」
297 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 04:07:36.09 ID:kBf/ArsI0

――――

志保「家族」

アヤ「同い年だけどな」

志保「……お姉ちゃん♪」

アヤ「二十日しか違わないだろ……」

志保「双子の姉かな?」

アヤ「千奈美とだって二ヶ月しか違わないんですがそれは」

志保「頼りにしてるんだよ?」

アヤ「……明日本番なんだからさ。寝るよ」

志保「はーい、お姉様♪」

アヤ「はいはい。洗濯機タイマー掛けたから寝室ー」
298 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 04:20:39.92 ID:kBf/ArsI0



千奈美(せめて寝室でやりなさいよなんでバスルームの近くでやるのよ聞こえるでしょ恥ずかしいなあもう)


千奈美(だいたい。双子って。どんなよ。別にアンタ達、顔は似てないでしょ)


千奈美(……)


千奈美(『目に見えるコトは似てない』『ぶつかる日もあるけど』)


千奈美(……友達だし、家族のつもりよ)


千奈美(『おそろいの場所を目指す』 ……のよね?)


299 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2014/12/14(日) 04:28:10.00 ID:kBf/ArsI0

ぴったり一ヶ月開いてた。
代々木に心を囚われていましたが、やっと取り戻してきました。

ちょっと環境変わったため遅筆をこじらせていますが、まだ生きてます。


レギュラーはアヤ志保千奈美です。
多分真奈美さんもレギュラーです。

ふわっとした設定はあるので、適当に出していきます。
リクエストを受けて書いたり、全然関係ない話を書いたりします。
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/12/14(日) 07:05:22.53 ID:xHH4IDlm0
おかえり。
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/14(日) 07:08:52.46 ID:wFjldQbHO
浪人生さんかな?受験近いなら無理しないでね
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/14(日) 07:12:07.48 ID:NYJBomLRo
おつおつ!
続きありがとう!
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/14(日) 11:28:00.67 ID:/qOEs982O
リアル大事に、やれる範囲でやってなー。
バイトと掛け持ちは夢を追う業界の悲哀だよなぁ。中の人でも食うのに困りかけた人がいるし。
こんな世界だと、実家を飛び出してきた勢はどうしてるんだろうか。フリルドスクエアの忍とか忍とか(ダイマ
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/14(日) 11:40:35.90 ID:r/VgOssCO
もしかして>>1自身が挫折した子である可能性
じっくりでええんやで。

ところで歌詞の引用もだけど、アイマスガールズのエピソードもちょいちょい挟んでる気がする。
そういうの好き。

>>303
忍はまずいですよ!
パンの耳に焼肉のタレつけて食べてそう…つらい…
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/14(日) 13:08:21.40 ID:fjvmoP8vo
ライブハウスでバイトしてると夢追人のバンドマン兼フリーターいっぱい見るからよくわかるわ

未成年組のメンバーだと事務所預かりの寮暮らしで適当にコンビニなりなんなりバイト斡旋されてそうだけどどうなんかな?
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/14(日) 13:27:19.33 ID:cO0h3p+7o
未成年を東京に1人で送り込んで
わざわざバイトさせる親は居らんやろ...
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/11(日) 23:01:49.54 ID:hiygIwBDO
308 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:08:10.07 ID:QNFtjt/70

――――

千奈美「……え」

アヤ「……」

志保「あっはは、まいっちゃうね……」

千奈美「ちょ、ちょっと待って、今ので出番終わり?」

アヤ「……そうだよな、これ」

志保「説明してたとこ、ざっくりカットされたね……」

千奈美「メニューの紹介とかパフェ盛り付けとか撮ってもらったんでしょう?」

志保「したよ?」

アヤ「リテイクもした」

千奈美「……メニュー紹介も自己紹介も、ワイプすらなし? テロップだけ?」

志保「……尺少し長いかな、とは言ってたけど。まさかのほぼ全切り〜♪」

アヤ「あ、実家からメール来た」

千奈美「そうよねぇ、あれじゃ説明も要求されるわね」

志保「私も釈明しておこう。電話してくる」

309 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:08:57.73 ID:QNFtjt/70

――――

アヤ「所長、びっくりするくらい優しかったな」

志保「アヤちゃん、まだショック?」

アヤ「んー、今はもうそんなに」

千奈美「え、私割とショックなんだけど」

アヤ「出てねぇじゃん」

千奈美「だからよ。アヤと志保が地上波で見られるなーって。うちの親も残念がってた」

志保「ひえぇ、期待を裏切ってしまった……」

アヤ「地上波か…… 次、いつになるかな…… 配信とかケーブル局とかならともかく、地上波じゃな」

千奈美「いや、そこはもぎ取りにいく心意気を見せなさいよ」

アヤ「ぐうの音も出ない」

志保「もぎ取った人の言葉は重い!」
310 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:10:01.10 ID:QNFtjt/70

――――

アヤ「はー。帰省か……」

志保「帰らないの? うちに来る?」

アヤ「無理だろ、木場さんがチケット持ってるんだぞ」

志保「両親に挨拶しに来てくれないの?」

千奈美「身元引受人?」

志保「結納?」

アヤ「ていうか、あの特番の体たらく見られた直後で、志保の親御さんになんて顔すればいいのさ」

千奈美「芸能側の仕事もないし店も閉めるのに、残ってどうするのよ……」

アヤ「……自主トレ?」
311 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:22:13.40 ID:QNFtjt/70

志保「せめて友だちと過ごすとかないの!」

アヤ「二人とも帰るだろ」

志保「私たち以外の友人を……」

アヤ「作る時間がない。……さておき、フジトモも帰るって言ってたし。大和先輩は、まあ」

千奈美「同郷だものね。あれでしょ、向こうで遊ぼうくらいの話に?」

アヤ「そうなんだよなあ」

志保「学校始まっちゃったらまた忙しくなるから、ちゃんと帰っておこうよ」

アヤ「……まあ、一応な」

千奈美「そんなに帰りたくないの?」

アヤ「うーん。そこまでじゃないんだけど。……今の状況イロイロ、ちくちく刺してくるからさあ」
312 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:23:41.02 ID:QNFtjt/70

千奈美「具体的に」

アヤ「……親と一緒に選んだ部屋、半年経たずに引っ越したこととか」

志保「あー」

アヤ「ルームシェアなんて本当に大丈夫なのか、とか。……父親がカタくて」

志保「そこは…… 私たちがどう言っても難しそうだね」

アヤ「あと、大学生のはずが、既に正社員扱いで働いてるとか。これは学校ちゃんと行ってるからほとんど言われないけど」

千奈美「そうねえ」

アヤ「んー…… まあ、そんなところ」

志保「うーん。……踏み込んだ言い方になるけど。仲悪いわけじゃないよね?」

アヤ「全然。だから、帰るしおせちも手伝うよ」

志保「……心配になってるだけ、だと思う」
313 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:24:14.60 ID:QNFtjt/70



アヤ(確かにな。心配にもなるさ、やっと出られた地上波で、出番ばっさり切られりゃ)



志保(……はっきり言わなくても、わかっちゃうんだろうな)


314 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:26:01.95 ID:QNFtjt/70

――――

千奈美「足代にお土産まで、本当によかったんですか?」

真奈美「帰って英気を養うことも大切さ。そもそも、君達の親御さんに、出来る限り毎年帰省させるように約束している」

志保「ふふっ、ありがとうございます。年明けには、お土産持って帰りますね♪」

真奈美「ああ、よろしく。それじゃあ、私たちも行こうか、アヤ」

アヤ「うーっす。それじゃ、また来年な」

千奈美「またね」

志保「淋しいよーアヤちゃーん。またねー」

アヤ「言ってろ。土産よろしくな」
315 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:26:58.24 ID:QNFtjt/70

――――

真奈美「忙しくなければ車でも良かったんだがね」

アヤ「アタシは飛行機のほうがいいですよ。だいたい、車じゃ丸一日かかるんじゃ?」

真奈美「そうだな、後ろフラットにすれば交代で寝られるから、だいたい16時間くらいか?」

アヤ「八時間一人で運転するのは嫌だな……」

真奈美「西海岸なら普通だぞ」

アヤ「……ニューヨークって東海岸ですよね?」

真奈美「拠点はそうだったが、そこそこ周ったよ」

アヤ「じゃあ、西海岸の八時間ドライブは?」

真奈美「二回……かな?」

アヤ「リアルに少ない」

真奈美「楽しいぞ。でかい車で、ただ舗装してあるだけのだだっ広い道を、スピード見ないで飛ばすんだ」

アヤ「どのくらい飛ばすんです?」

真奈美「約500キロを三時間程度じゃないか? 詳しくは覚えてない」

アヤ「怖!!?」

真奈美「ま、しばらくはあっちで運転することもないだろうさ。安全運転に勤めるよ」
316 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:28:56.99 ID:QNFtjt/70

――――

志保「名古屋ついたらちょっと寄り道しない?」

千奈美「お茶くらいならね」

志保「はーい。休み結構長いよね、予定空いてるなら、栄とか行こうよ」

千奈美「初売りとか? 親族の集まりがどうなるか次第だけど、行ってもいいわよ」

志保「じゃあ、その辺のチェックも兼ねて、コーヒーでもいただきましょ♪」

千奈美「そうしましょ。乗ったらちょっと寝るわ」

志保「私も少し休むね。アラームつけておくから」

千奈美「うっ、トラウマが……」

志保「米原を出ますと、次は、京都に停まります」

千奈美「寝過ごし……!」
317 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:31:57.04 ID:QNFtjt/70

――――

アヤ「はい、お茶とケーキ」

  「ん。……よう帰らしたな。忙しかとやろ」

アヤ「忙しかけど、所長がちゃんとスケジュール組んでくれてるから」

  「……学校はちゃんと行っとぉと」

アヤ「うん。大丈夫。成績表も見ただろ」

  「大学出ても、アイドル続けよるとか」

アヤ「……多分」

  「お前ももうハタチやけん。将来ば、ちゃんと考えんばぞ」

アヤ「考え……っ。……うん」

  「お母さんと婆ちゃんのおせち作っとると、手伝って来んね」

アヤ「行ってくる」
318 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:32:55.87 ID:QNFtjt/70

――――

アヤ「筑前煮となます終わり」

  「はーい。じゃ、残りはお母さんがやるから、お茶……いや、コーヒーにしようか」

アヤ「アタシ淹れるよ」

  「おっ、プロの業?」

アヤ「プレッシャー! 普通にドリップでいいか」

  「おばあちゃんにも一口淹れてあげてね」

アヤ「はいよ。……部屋の荷物、少し東京に運ぼうかな」

  「お人形? 乾燥剤取り替えればいいっていうから、お母さんやってるわよ」

アヤ「帰ってくること、減ると思うから。向こうでトランクルーム…… 小さい貸倉庫をさ、借りようと思って」

  「気にしなくていいのに。いつ帰って来てもいいんだからね」

アヤ「……うん」
319 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:33:25.72 ID:QNFtjt/70

――――

   「お爺ちゃんがね、最近ちょっと」

千奈美「……どこか悪いの?」

   「逆よ。元気も元気。部屋見た? 超でかいテレビとスピーカー買ったのよ。映画とかアイドル番組とか見てる」

千奈美「は」

   「あと、パソコンも新調してた。千奈美のインタビュー記事、プリントして綴じてたわ」

千奈美「ジョギングも続けてるんでしょ? 元気ね…… 集まったらまた何かやってーって言われるのかな」

   「おねシン歌って踊ってれば、満足すると思うけど」

千奈美「そういうのってだいたい『もっと!』ってなるやつよね……」

   「まあまあ。お爺ちゃん孝行しておきなさいな」

千奈美「体のいいこと言うんだから。ま、いいけど」

   「レコーダーの使い方も一生懸命調べてたわ。春には使いこなさなきゃ、って張り切ってる」

千奈美「ぼちぼち80でしょ!? よくやるなあ」

   「千奈美だって、にやにやしちゃって」

千奈美「そりゃ、嬉しいに決まってるわよ」
320 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:35:35.25 ID:QNFtjt/70

   「お仕事と大学、両方で続けられそう?」

千奈美「続ける。……練習生の間、毎週東京に送り出してくれたこと、無駄にしたくないし」

   「そっかぁ」

千奈美「お金は、少しずつ返すから」

   「え、大丈夫よ」

千奈美「でも、半年間ほぼ毎週新幹線乗せてもらって、今の大学の学費だってあるし、向こうで暮らし始めたときの支度金も」

   「学費は、四年で出てくれたらいいわよ。それ以上は貸しにするけど」

千奈美「うぅ」

   「支度金っていうのは、一人暮らしの費用?」

千奈美「そう。安くなかったんだな、ってのは実感したから」
321 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:42:01.83 ID:QNFtjt/70

   「もう一年以上経ったし、貴方もアイドルとして仕事貰えてきたみたいだから白状するけど…… 木場さんから返してもらってるから」

千奈美「は」

   「『折角お選びになった物件から、こちらの都合で引越していただくようなものですから、お詫びも兼ねて』って。まぁ、お釣りが出るくらいはね」

千奈美「……」

   「ポンと大金はたいて高いマンションに住まわせるくらいには、貴方に期待してるんでしょう」

千奈美「……聴いてなかった」

   「まあ、そのうち気付いたんじゃない? しっかりやりなさいね」

千奈美「じゃあ、レッスンの新幹線代は?」

   「……千奈美の子供の頃のお年玉とかお祝い金とかの貯金、結構あったのよねぇ」

千奈美「えっ……ひどくない……?」
322 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:42:50.46 ID:QNFtjt/70

――――

志保「♪〜」

  「コーヒー淹れてもらうのも久しぶりね〜♪」

志保「パパ、淹れてくれないの?」

  「淹れる度に『しーちゃんのコーヒーのほうが美味しい。さみしい』って言うから最近やらせてない」

志保「パパ……」

  「またライブとか舞台とかあるようだったら、チケット送ってあげて」

志保「はい♪ ……電話でも言ったけど、この前は、ごめんね。テレビ、ちゃんと映れなかった」

  「謝ることなんてないのよ。人いっぱいだったものね、そういうこともあるって」

志保「パパが、がっかりしただろうなぁって」

  「大丈夫。少しだけだったけど、可愛かったわ♪」

志保「ママは心配しないんだね」

  「しーちゃんが元気ならそれでいいのよ」
323 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:44:20.40 ID:QNFtjt/70

――――

   「姉ちゃん、ちょっとこれ」

真奈美「ん、どうした」

   「こんなメール来た」

真奈美「ふむ」

   「何て返す?」

真奈美「明日行く。出る前に私から連絡する」

   「そしたら、姉ちゃんのメルアドあっちに送っとこうか」

真奈美「よろしく」
324 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:44:51.09 ID:QNFtjt/70

――――

千奈美「はぁい」

志保『おつかれー』

千奈美「はいはい。で、いつこっちに出て来るの?」

志保『元日と二日のどっちかがいいな。三日に親戚の集まりだから』

千奈美「じゃあ二日の午前でいい? 午後うちに寄ってくれたら、帰り送るわ」

志保『それでいいよー♪ ……あ、サイレントウインドだ』

千奈美「ん、シンデレラチャンネル?」

志保『ううん、『ミュータミ』。シンデレラのカウントダウンライブの特集してた』

千奈美「そっか、一部中継あるんだっけ」

志保『バックダンサーのオファーなかったね』

千奈美「そうね。別に私たち、バックダンサーが本業じゃないし」

志保『そうだねー……』

千奈美「……」

志保『……うぅむ、やっぱり歌上手い』

千奈美「そりゃまあ、そうよ」
325 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:47:11.00 ID:QNFtjt/70

――――

アヤ「お邪魔しまーす」

亜季「はい、スリッパ」

アヤ「ん。……この年の瀬に良かったの?」

亜季「両親は二人で食事に行かして、兄は妹の保護者兼財布にされとる。一人でプラモ作るのも飽きたばい」

アヤ「道場は……掃除終わったから閉まってるか」

亜季「やね。四日の餅つきは顔出したかけど」

アヤ「いつ東京戻る?」

亜季「六日に撮影あるけん、五日の昼に帰ってジム行くばい。千奈美さんから聞いとろう」

アヤ「じゃあ、それまでには博多弁抜かないと」

亜季「貝の砂抜きみたいな……」

アヤ「部屋に閉じ込めて標準語の番組見せる、とかそういう感じ?」

亜季「一晩置いとくと、吐き出された訛りが床に散らばっとぉとね」

アヤ「吐き出したのを飲み込まないように、換気と掃除が要る」
326 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:48:07.00 ID:QNFtjt/70

――――

亜季「アヤはほとんど訛り出らんね」

アヤ「ちょっとだけかな。母さんがこっち地元じゃないし」

亜季「ウチは帰ったらすぐ出よるばい」

アヤ「それでよくアイドルやりよる」

亜季「だからこんな言葉遣いになるのであります」

アヤ「普通に標準語は?」

亜季「んんっ…… あんまり自然に出て来ない、んだよね」

アヤ「練習せんの?」

亜季「ラジオで、軍人喋り? が定着したから、今更普通に喋ると、キャラが迷走しそう」

アヤ「厄介だなあ」

亜季「んんっ…… まあ、お陰様で専らアクションの仕事が定着しております」

アヤ「モデラー系アイドルとか言ってなかった?」
327 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:50:18.56 ID:QNFtjt/70

亜季「本ッッッ当にデビュー当時だけでありますな。というか、そっち方面がコケたからアクションに絞っているのです」

アヤ「世知辛いなぁ。でもツイッターじゃ好評じゃん、プラモ」

亜季「プラモデル関係の仕事が来ないものかと、事務所に振るための下積みであります」

アヤ「でもまあ、アイドルで食えそうな目途、立ってきた?」

亜季「……新卒で働くとは諦めたけん。食えなかったら路頭ば迷う」

アヤ「そこそこ稼いでるんだから、単位揃えて休学にしたら?」

亜季「それは結局、アイドルと普通の仕事のどっちを選ぶかを先延ばしにするだけですな。今しかできないからアイドルを選ぶのでしょう」

アヤ「将来は?」

亜季「なるようになればいいのであります。歓声を受ける喜びを知った以上、そう簡単にはやめられないものです」

アヤ「それは…… わかる、けどさ。応援してもらえるのって、笑ってもらえるのって、すげー嬉しい」
328 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:50:49.54 ID:QNFtjt/70

亜季「アイドルになること、ひいてはエンターテインメントに身を置くことは、一種の沼でありますよ。……受け売りですがね」

アヤ「……アタシは、どうなるんだろ」

亜季「どうなったって、友人とは変わらんばい。もう良かやろ。食わんね」

アヤ「いただきまーす。うおー、やっぱモツすきうめー」

亜季「いただきます。……あれ、二人で食事って、東京いるときもあんまりせんやった?」

アヤ「アタシが一人暮らしほとんどしてないもんな。アタシが東京出て半年で、今のとこに引っ越しちゃった」

亜季「一緒に暮らしとっと、ホイホイ遊びに出るわけにもいかんっちゃろ」

アヤ「そうだなあ、お陰で彼氏も作れない」

亜季「欲しかと?」

アヤ「いや、別に」
329 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:51:29.66 ID:QNFtjt/70

――――

アヤ「ただい…… 何してんの」

志保「おかえりなさい♪ それと、あけましておめでとうございます♪」

アヤ「あけましておめでとうございます。今年もよろしく。……で、テーブルどかして何してたの」

志保「そうそう、そうだよね。んーと、ステップの練習」

アヤ「急に、なんでまた」

志保「千奈美ちゃんと初売り行った帰りにね、そのままお邪魔したんだけど」

アヤ「言ってたな」

志保「親戚の皆さんもいらっしゃってて。千奈美ちゃんとおねシン歌ったの」

アヤ「えっ。……大丈夫だった?」

志保「大丈夫、って?」

アヤ「アタシもだけど、志保のこともアイドルって知ってる人いなくないか?」
330 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:52:45.82 ID:QNFtjt/70

志保「そもそも、千奈美ちゃんがシンデレラガールズって知らない親戚さんもいたよ」

アヤ「まあ、アウェーなのはだいたいいつものことだけど」

志保「そうそう。それに、千奈美ちゃんのご家族は私のことも知ってくれてるから、大丈夫♪」

アヤ「お疲れ様。で、それがどうして練習に?」

志保「千奈美ちゃんのほうが上手だったから。横に立つと、わかっちゃう」

アヤ「あー……」

志保「だから、せいいっぱい、ね」

アヤ「……『小さな 一歩だけど』?」

志保「そうそう! 『キミがいるから』!」

アヤ「アタシもやる。ここじゃ音響いて迷惑だし、店のフロア使おう」
331 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/01/25(日) 01:57:42.21 ID:QNFtjt/70

――――

生きてます。
主に2ndライブとアニメの影響で遅筆がますますこじれましたが、生きてます。

レギュラーはアヤ志保千奈美です。
多分真奈美さんもレギュラーです。

もう折り返したものだと信じたい。
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/25(日) 02:07:49.54 ID:Lt71V2C8o
あけましておめでとうございますww
折り返しということは徐々に収束していく感じかな?
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/25(日) 03:51:19.72 ID:tufvSx9po
アニメ終わる頃には完結かな?
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/25(日) 20:54:47.58 ID:jlVL3ml0O
まあ無理せず
楽しみにはしてるけど、書かなきゃいけないわけじゃないんだしさ
楽しみにはしてるけど!
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/26(月) 01:39:18.98 ID:TndTZ/ano
おつかれーおかえりー

編集でカットは悲しいな…
それぞれ家族の態度の違いじわっと来るわー
そしてしーちゃんぐうかわ
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/24(火) 01:29:47.49 ID:8lwAavI9o
337 : ◆S0mvz1PntgQY [sage saga]:2015/03/10(火) 01:19:57.04 ID:tpknAHk60
――――

真奈美「連絡。今日からバレンタインのサービスを始めるから、ミニサイズのブラウニーを忘れずに提供すること。私からも言うが、バイトの子にもよろしく」

志保「出した数、伝票ベースでいいんですよね」

真奈美「クローズしてから、サービスとメニューでそれぞれいくつ出たか記録する。今日は、私が多分一日中ここにいるから、やっておこう」

千奈美「分かりました」

真奈美「それと、ディナーに予約が二件。あとはクローズ後にジューシーの高橋さんが来る」

アヤ「礼子さん?」

真奈美「私と呑みたいだけらしいから、構わなくていいぞ。というわけで今日は恐らく上に泊まる」

志保「分かりました。でも、ちゃんと休んでくださいね」

真奈美「そうだな。明日の朝はよろしく。それから、来月のプロジェクト側の仕事。私と千奈美が、最初の定休日に仮歌収録。その次の定休日に、その曲の振付サンプル動画撮影」

千奈美「はい」
338 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:22:00.27 ID:tpknAHk60

真奈美「それとは別に、千奈美は月初にビューティーアリュールのレッスン。私はフェスの稽古が残り一回で、第一金曜にリハ、その後の土日に本番」

アヤ「はーい」

真奈美「アヤと志保は第二週にイベントのアシスタント。土曜日に横浜と渋谷、日曜に越谷とさいたま」

志保「わかりました♪」

真奈美「開始前のフライヤーと終了後の記念品配布、それと前説の予定。資料は郵送したとのことだから、受け取った人は私に言うように」

アヤ「了解です」

真奈美「最後に全員。今月の店内ライブのソロ曲を決めること。今回はレッスン時間少ないから、新しい曲は避けてくれ。以上だ。何かあるかな。……それでは、今日もよろしく」

  「「「よろしくお願いします」」」

339 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:23:35.77 ID:tpknAHk60

――――

アヤ「仮歌、振付サンプル、アシスタント」

志保「ドラマのエキストラ、バックダンサー、コーラス」

アヤ「トークイベントの司会」

志保「3Dモデルのモーションキャプチャ」

アヤ「それ面白かった」

志保「私、ダンスでしか撮ったことなーい。アヤちゃんはゲームの撮ってたよね」

アヤ「アイドルらしい仕事とは、何か」

志保「顔と名前が出ればいいんじゃないかな?」

アヤ「今挙げたやつだと、どっちかしか出ないじゃん……」

志保「そうかも」
340 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:24:08.26 ID:tpknAHk60

アヤ「ライブとか、グラビアとかかなぁ。やっぱり」

志保「合同ライブとかフェスとかなら、時々呼んでもらえてるよ?」

アヤ「じゃあ、アタシと志保だけでやるって言って、どのくらいのハコだよ」

志保「毎月の店内ライブなら、立ち見出ることもあるもん」

アヤ「やっと、な。それだって、基本的には4人揃ってるしお土産もつけてる」

志保「つまり、私たち二人で、お店使わずに……?」

アヤ「そう。アタシたちだけで、外で。どのくらい呼べるか」

志保「ファンレターとか差し入れとかくれる人が、ひのふの……」

アヤ「店内ライブ常連さんが一致してるのが、いち、にー……」

志保「……」

アヤ「……」
341 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:24:41.27 ID:tpknAHk60

志保「い、いいんです! ファンレターもらうなんて、普通の生活してたら得られない経験だよ? 数じゃないよ!」

アヤ「売れてるかどうかは、数だろ」

志保「……ここ、嫌?」

アヤ「それは…… 楽しいけど。みんな盛り上がってくれるし」

志保「私は楽しいよ、ファンの人たちと直接話せるのもここだけだから。大事にしたい」

アヤ「でも、もう一年半やってる」

志保「そうだね」

アヤ「……これから、増やせるのかな」

志保「月二回とか」

アヤ「外でやろうとかは考え…… いや、費用がなあ……」

志保「実際には、外だとスタッフ手配する必要あるから、途端に大変になるって」

アヤ「今だって、警備は最低限だし、段取りもお客さんの厚意に甘えてる」

志保「……所長がどう考えてるかは、わからないけどね」
342 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:25:09.93 ID:tpknAHk60

――――

志保「バレンタインパフェ二つ出まーす、これでオーダー消化♪」

真奈美「私が出してくる」

志保「お願いします♪」

千奈美「山越えたかな。アヤ、手空いたら炭酸ちょうだい」

アヤ「ほい」

千奈美「ありがと。レモネード作るけど飲む?」

アヤ「飲む。木場さんの分も作っといてよ」
343 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:25:35.53 ID:tpknAHk60

千奈美「はーい。今フロアどのくらい?」

アヤ「三組。コースのお客様は全部終わり。一組はさっき出した二名様。一組はいつものファンの人たち」

志保「追加ありそう?」

アヤ「もうボトル空いてるしデザートも終わったから多分…… はい! お会計ですね。それと月末のチケット。はい、かしこまりました」

志保「ありがとうございました♪ ……わっ、お土産ですか! いつもありがとうございます、嬉しいです♪」

千奈美「私、見送ってくる。ついでに外の様子見てくるわ」

志保「気を付けてね」
344 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:26:16.83 ID:tpknAHk60

――――

真奈美「はい、お疲れ様。コーヒー淹れてきたぞ。お土産、何だったんだい」

千奈美「チョコみたいですよ。ヘンリ……る、ルークス?」

志保「それフランス語だよ。アンリって読むの。どこかで見たなあ……」

真奈美「仏語の講義で出てきたのかい」

志保「それもそうですけど。学校じゃないですね…… そうだ、デパ地下で見たんだ。高級チョコのブランド」

アヤ「へーっ。千奈美のファンの人だったよな」

千奈美「そうね。……高いんでしょ?」

志保「確か2000円か3000円くらいだったよ」

アヤ「生々しい……」

千奈美「ありがたくいただきましょ」
345 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:26:54.72 ID:tpknAHk60

志保「あんまりありがたそうじゃない……?」

千奈美「いや、嬉しいわよ。でも、不思議だな、って」

真奈美「何がだい」

千奈美「プレゼントって、だいたい手紙ついてるじゃないですか」

真奈美「そうだな。あぁ、今のも中身チェックしたから読んでいいぞ」

千奈美「はい、ありがとうございます。……プレゼントも嬉しいんですけど、手紙はより嬉しいんですよね」

アヤ「そりゃ、市販品と違って、一回こっきりだからな」

志保「そのために手間掛けてくれてると思えば、嬉しくもなるよね」

真奈美「……私から言うことは無さそうだな。さ、掃除だけしたら帰っていいぞ。キッチンは私がクローズしておく」

アヤ「挨拶くらいしたかったんですけど、また来るの夜中なんですかね」

真奈美「早くて23時は過ぎると言っていたな。……食洗機だけ動かしたら、私はひと休みするよ」

千奈美「……ぱーっと片付けて帰りましょうか」

志保「賛成」
346 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:27:45.63 ID:tpknAHk60

――――

礼子「二人っきりなのは、いつぶり?」

真奈美「日本に帰ってきてからは、初めてじゃないですか」

礼子「ニューヨークが懐かしいわねぇ」

真奈美「仕事ばかりでしたがね」

礼子「もう懲り懲り、って顔」

真奈美「そうですか? 仮歌もコーチングも続けますよ。テキーラ、どれにします」

礼子「ゴールド何か入ってるなら、それで」
347 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:28:56.75 ID:tpknAHk60

真奈美「どうぞ。ライム足りなかったら自分で切ってください」

礼子「なーに、酔っ払いに刃物使わせるの?」

真奈美「……わかりましたよ」

礼子「かんぱーい。……ゴーストシンガーはもういい?」

真奈美「……そっちは懲り懲りです。あんなことで、こんなに稼いだのが間違いなんです」

礼子「それでも、アルバム二枚は作ったんでしょ」

真奈美「投げ出したら、いちばん泥かぶるのは私を紹介した礼子さんじゃないですか」

礼子「ありがと」

真奈美「人真似で歌うのは面白かったですし、技術にもなりましたが」
348 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:30:44.48 ID:tpknAHk60

――――

礼子「サングリータ足りない」

真奈美「はいはい、ただいま。どうぞ、自分で注いでください」

礼子「態度悪くない?」

真奈美「私の客ではあっても、店の客ではないでしょう」

礼子「アヤたちにクレームつけよう」

真奈美「叩き出しますよ」

礼子「むぇー(`3´)」

真奈美「可愛くないです」

礼子「似てるでしょ?」

真奈美「似てますけど、可愛くないです」
349 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:33:16.59 ID:tpknAHk60

――――

真奈美「はい、ワカモーレとコロナ。……ペース早くないですか?」

礼子「まだ三杯目よ。これでしばらく粘ればいいでしょ」

真奈美「分かっているでしょうし、構いませんがね」

礼子「それに、社長はケチケチしないものよ」

真奈美「パソコンくらいしか設備投資の必要がないそっちと、一緒にしないでください」

礼子「よく言うー! ちょいちょいイベント入れて儲けてるの知ってるんだからね」

真奈美「そりゃあ、アイドルプロデュースの店なんですから。ニーズに合わせますよ」
350 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:33:59.25 ID:tpknAHk60

礼子「あっちで稼いだ分、いくら残ってるの?」

真奈美「オフィスの開業資金に使ってからは、あまり手を付けないようにしてます」

礼子「ケチくさいことしてるんだから」

真奈美「若い女の子の人生預かるんです、備えは必要でしょう」

礼子「よく言う」

真奈美「今日は随分突っかかりますね」

礼子「……あーた、あの子たちどうしたいのよ」

真奈美「どう、とは」
351 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:34:34.98 ID:tpknAHk60

礼子「所属は真奈美も含めて四人よね。芸能の仕事で、いちばん売り上げ出てるの誰?」

真奈美「……"All alike"ですよ。イベントの助っ人が主な仕事ですから」

礼子「似たり寄ったり、ねぇ。歌唱指導だのイベントマネージメントだの、裏方を含めたら真奈美?」

真奈美「そこは、まあ。本当なら、裏方以外は全部あの子たちに回したいです」

礼子「でも、あの子たちには任せられない?」

真奈美「……そういうわけでは。ただ、私に来たオファーに対して……」

礼子「代わりに推薦できるほどの実力が、あの子たちにないって?」

真奈美「端的に言えば、そうです」
352 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:35:37.81 ID:tpknAHk60

礼子「そんなのゴリ押ししなさいよ。『シンデレラガールズのメンバー使いたいだけだったら、こっちでも対応できるから充分だろぃ』ってさ」

真奈美「そんな無茶苦茶な」

礼子「的外れなとこ推したら共倒れだけど、多少のズレなんてフィットさせてくわよ」

真奈美「無理をさせても……」

礼子「アンタねー。あの子たちだってプロの端くれだし、営業や現場はもっとキャリアのあるプロよ?」

真奈美「……む」

礼子「あんた、こないだフェス呼ばれてたわね。千奈美は今撮影だっけ?」

真奈美「はい。枠は小さいですが2クールです」

礼子「そうね。その仕事は次に繋がるの? 夢の続きを用意できるの?」
353 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:37:39.26 ID:tpknAHk60

真奈美「……ドラマのプロデューサーには、気にかけてもらっているようですが」

礼子「ふぅん。で、後の二人は。川島の冠番組の特枠、コケたんでしょ」

真奈美「少しは出ましたよ」

礼子「あの子たちを主役にする気あるの?」

真奈美「そういう聴き方されれば、答えはひとつです」

礼子「"Yes, of course"って? じゃあ、見込みはどうなの。主役にしてやれる見込みは」

真奈美「……」

礼子「中央にぶら下がってる仕事拾って渡すだけで、そう簡単に成長しないんだからね」
354 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:38:09.74 ID:tpknAHk60

――――

アヤ「おはよーございまーっす。お、キッチン片付いてる」

志保「んん、フロアも片付けてあるよ」

アヤ「……でもこのヒール、礼子さんのだな」

志保「やっぱり泊まったんだ」

アヤ「様子見てくる。ダメそうだったら着替えだけ持ってくる」

志保「はぁい♪ 仕込み始めてるね」
355 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:38:35.54 ID:tpknAHk60

――――

アヤ「……こりゃ、ダメかな。制服だけ失礼して……」

礼子「……ぅ。……アヤ?」

アヤ「ありゃ、おはようございます。大丈夫ですから、寝てていいですよ」

礼子「おはよ……まだ7時前か。んー…… もうちょっと寝るけど、一回シャワー浴びるわ」

アヤ「何か飲んだり食べたりします?」

礼子「ミネラルウォーター置いてるから平気よ」

アヤ「そすか、それじゃごゆっくり」
356 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:40:08.80 ID:tpknAHk60

礼子「……ね、アヤ」

アヤ「はい?」

礼子「今、楽しい?」

アヤ「そりゃまあ、続けてるわけですし」

礼子「……」

アヤ「……な、なんですか」

礼子「いや、今はいいわ。眠くてしんどいし。お仕事頑張って」

アヤ「は、はぁ」

礼子「はぁい。おやすみ」

アヤ「……あの、礼子さん」

礼子「ぅん?」

アヤ「……辛いと思ったことは、ないですよ」
357 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/03/10(火) 01:42:54.86 ID:tpknAHk60
――――

昔は私も無課金だったが、上位に軍曹が来てしまってな。

レギュラーはアヤ志保千奈美です。
多分真奈美さんもレギュラーです。
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/10(火) 02:32:35.85 ID:ESlMTX/1o
軍曹て割と最近だなw

ワシも昔は無課金だったが、日菜子が(ry
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/10(火) 10:01:34.20 ID:bMGzNIgMO
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/10(火) 11:32:40.02 ID:kAWeihJqO
礼子さん、ごり押ししてるのか…
361 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/04/08(水) 03:16:11.26 ID:d9i1CcnU0

伊吹「んじゃ、XX年組初の呑み会を祝して! かんぱーい!」

「「「かんぱーい」」」

朋「椿ちゃん、日本酒なんて呑むの?」

椿「ゆっくり、ですけどね」

伊吹「適当にやればいいよ、アタシもサワー二杯で終わるつもりだし」

千奈美「えっ」

アヤ「えっ」

志保「えっ」

朋「あんたたちがおかしい」

伊吹「アタシたちまだハタチだよ? ていうかさ、アヤたちが酒慣れ過ぎなんじゃない?」

千奈美「余裕よ、余裕」
362 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/04/08(水) 03:16:50.78 ID:d9i1CcnU0

朋「XX年組っていうけど、あたし小松さんとプライベートで会うの初めてだよね?」

伊吹「多分。あんまり合同トレーニングも一緒にならないよね」

アヤ「そうな。来てないけど新田美波さんとか鷺沢文香さんとかも同年だけど、接点ないな」

朋「あの辺もかー、そういえば。売れ過ぎてて全然同い年の感覚じゃないわ!」

伊吹「正直、グラジオラス組来なかったらさみしいことになってたよね」

アヤ「そりゃ、三人じゃ格好つかねーなぁ。つーか、どの範囲に声かけたんだ?」

伊吹「櫂は予定合わず。あとは、まあ、ほら…… さっき言ってた人たちよ」

朋「新田美波さんとか」

伊吹「そうそう。あと鷺沢さんのサイレントウィンドとか、宮本フレちゃんとか。その辺アタシ話したことないし、声かけていいレベルじゃなくない?」

千奈美「文香と音葉なら、たまにメールしてるわよ? たまにね」

伊吹「え! すッごい! 藤居さんは?」

朋「サイレントウィンドの二人なら千奈美たちと一緒に仕事で会ったことはあるけど。話した記憶はないわね! 話せる感じしなかったし」

アヤ「まー、キャラ作り殆どなしにアレだったからなー」
363 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/04/08(水) 03:17:22.63 ID:d9i1CcnU0

朋「で、新田さんとかフレちゃんさんか。仕事すら一緒してる人いるかどうかわかんないわね。椿ちゃんもない?」

椿「ないです。二人とも寮生でもないので、プライベートも接点ないですね」

志保「グラジオラスから離れられない私は、もちろんありません♪」

朋「これは……実在していないかもしれない?」

伊吹「おーいっ! テレビで見てるじゃーん!」

朋「あたしたちにとっちゃテレビ番組なんて幻よ!」

椿「そ、そこまでは……」

志保「テレビ番組もピンキリだけど、キー局ゴールデン、とか言われちゃうと、さすがに幻かな?」

朋「志保ちゃんたちが出たやつ、実際幻になっちゃったもんね」

志保「……」

アヤ「朋さー、お前割と軽率に刺すよね?」

朋「うわっごめん、そんなに!?」

364 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/04/08(水) 03:18:15.32 ID:d9i1CcnU0

志保「くすん。アヤちゃーん、朋ちゃんがいじめるよー」

アヤ「あー、はいはい。アヒージョお食べ」

志保「『こんばんは! ぼく、エリンギです! オイルで煮られて、とっても美味しいよ!』 もぐもぐ」

朋「意外と似てる」

椿「志保ちゃん、酔ってる……?」

アヤ「酔ってることは酔ってる、と思うけど……」

朋「その二人がベタベタしてんのは平常運転」

志保「むぐぐぐー!」

アヤ「飲み込んでから話そう」

志保「んく。……朋ちゃんがいじめるよー!!」
365 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/04/08(水) 03:18:46.39 ID:d9i1CcnU0

伊吹「久しぶりに見たけど、仲良いの通り越してない?」

志保「家ではダーリン、ハニー、と呼び合う仲です♪」

アヤ「ん゛、ん゛っ、げほっ、げほげほげほ」

朋「え、ガチなの……?」

アヤ「げっほ……ち、違うからな?」

志保「家族だから似たようなものだよ」

椿「ま、まあ、その…… よほど仲がいいか干渉しないタイプでないと、一緒に住むのは難しいですよ」

朋「寮だとどんな感じ? お風呂と食堂一緒なんでしょ?」

椿「そうですねぇ。そこはやっぱりグループありますよね」

アヤ「学校みてーだな……」

千奈美「中高生ばっかりならそんなもんでしょ」
366 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/04/08(水) 03:19:41.51 ID:d9i1CcnU0

椿「あんまり仕事関係なく仲良しグループ作られてますけど、たまにグループ内で一緒の仕事とかあると、ちょっとヒヤヒヤする……」

志保「うまくいけばいいけど、ミスとかいざこざとか持ち帰られちゃうと大変?」

椿「そうなんですよね。だから『喧嘩するなら周りから見えないところでやれ』みたいなルールもできてて」

朋「へー。あたしどっちかっていうとミスする側だから、身につまされるー」

アヤ「軽いな! ホントかよ!」

朋「ほんとだよー。ねーねー、あんたたちはどのくらい喧嘩するの?」

千奈美「……もう殆どしないわよね?」

アヤ「最初のほうに、アタシと千奈美がちょっとしたことあるけど。あとは所長様様、志保様様だなー。超フォローされてる」

志保「へっ?」

アヤ「感謝してるよ、いつもな」

朋「っかー! いちゃいちゃするなら見えないところでやってよ!」

アヤ「えっ、ひどくない……?」

伊吹「振っといてそれ!? 自分から振っておいて!?」
367 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/04/08(水) 03:20:13.57 ID:d9i1CcnU0

アヤ「そーいや伊吹さぁ、寮入るかもーって話。どうしたの?」

伊吹「いったん止めた。フツーに通えるし。都内の仕事がもっと増えたら、また考えるかな」

千奈美「先行きは?」

伊吹「今やってる情報番組のアシスタントが、来期も続投あーんど枠増加」

朋「凄いじゃない! おめでとー!」

伊吹「ローカルの帯番だけどね、週一だったのが週三に。おかげで地元からはますます離れられない!」

千奈美「へぇ。一人で三日出るの?」

伊吹「今期までは五人が日替わりで一人ずつ。来期からは四人の中から二人がローテーション」
368 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/04/08(水) 03:20:58.65 ID:d9i1CcnU0

朋「そっかー、一人蹴落としたのねー」

伊吹「アタシは何もしてない!? 降ろされたんじゃなくて降りた、とは言ってた。グラビア行きたかったらしいけど……まあ、詳しいことはわかんない」

アヤ「その子、シンデレラガールズ?」

伊吹「違うよ、その番組じゃアタシだけ。その仕事もガールズ関係ないとこで受かったし」

志保「伊吹ちゃん、結構外の仕事多いよね?」

伊吹「むしろ芸能活動だけなのアタシだけじゃない? 実家暮らしだから生きていけるけど」

志保「それもそうだね…… そうだ、椿ちゃん内定もらったって聞いたよ」

椿「プロジェクトからの斡旋で、撮影所の契約社員です。これで大学も普通に卒業できる……」

アヤ「おめでとー。……朋、大丈夫か?」
369 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/04/08(水) 03:21:31.08 ID:d9i1CcnU0

朋「あああああ…… あたし卒業したらどうしよう…… 仕送り断たれる…… アルバイトしかないか……」

千奈美「一旦実家帰ってもいいんじゃない?」

朋「嫌よ!! アイドル続けられるかもわかんない上に、舞台立てなくなる!!」

伊吹「お、好きなんだ」

朋「好きよ。劇団に入ったのは大学入ってからだけど、最高に楽しい」

椿「劇団に入ってから、シンデレラガールズになったんですよね?」

朋「順番はそうね。実際には、団員にシンデレラガールズが欲しくて、あたしを勧誘したみたい」

アヤ「高校で演劇やってたんだっけ」

朋「そうよ。高校で入った占いサークルに演劇部員がいて、そのままずるずる。最終的には占いサークル自体が演劇部に吸収された形みたいになってた」

伊吹「じゃ、演劇が面白くなったから大学でも続けよう、って?」

朋「なんだけど、大学の演劇サークルがもう全然ダメで! その中で唯一マトモな先輩が劇団員で勧誘してきた、と」

千奈美「それ、一歩間違ったらマルチとか自己啓発とかじゃないの!」

朋「……あっ!? あたしツイてた!?」
370 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/04/08(水) 03:23:02.82 ID:d9i1CcnU0

椿「みんな苦労してるんですよねぇ」

朋「椿ちゃんは?」

椿「……私は、ほら。アイドルでもあるけど、まず学生ですから。……このまま、撮影関係の仕事にシフトするのかな……」

志保「もったいないよ?」

椿「卒業まで、あと一年以上だから。まだ考えていられますよ。……撮影技術で身を立てるのか、アイドルにしがみつけるのか。でもこの二つなら、どっちにしろ、幸せかなって」

朋「あたしは選ぶまでもないなあ。とにかく舞台やりたいし、アイドルも続ける。……親は怒るのかな……」

アヤ「そりゃ、安心はしねーだろ」

朋「……軽々しく刺すのはお互い様じゃない?」

千奈美「でも、そうよね。今しかできないことをやる。そういう道を選ぶ行為って、きっと価値のあることよ」

椿「今しかできない……」
371 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/04/08(水) 03:23:33.08 ID:d9i1CcnU0

伊吹「思うにさ」

千奈美「何」

伊吹「アタシたちって、オーディション受かったじゃない」

朋「そうね。あたしは事務所推薦枠だけど」

千奈美「っていうか一般公募で受けたのが私と椿だけよ。回は違うけど」

椿「みんな推薦枠なんですね」

伊吹「それそれ。オーディションの倍率、どのくらいなんだろう」

千奈美「うーん。一般は書類と写真で一次選考して、二次が歌、朗読、面談……だっけ?」

椿「確かそうです。一次は解りませんけど、二次は、私のときは200くらいでしたかね。大会議室だった気がします」
372 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/04/08(水) 03:25:44.31 ID:d9i1CcnU0

伊吹「で、数人しか合格してない?」

椿「はい。補欠合格を含めても一割足らずで…… その中でもちゃんとシンデレラガールズとして事務所に入れてデビューできたのが、さらに半分、みたいな感じですよ」

伊吹「つまり、数百、数千、もしかしたらもっとたくさんの破れた夢の上に、アンタたちは立ってるわけだよね」

千奈美「……」

アヤ「事務所推薦のアタシたちも、変わらないけどな」

朋「そっか、スカウトされる幸運だって、そのたくさんの夢敗れた人たちは持ってなかったもの、なのよね」

伊吹「……あのさ。親元で暮らしてるアタシに言えた義理じゃないかもしれないけど」
373 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/04/08(水) 03:28:24.75 ID:d9i1CcnU0

伊吹「やり切りたいよ。走り切りたい。アタシたちの今は、他の誰かの夢なんだよ」

朋「……やるよ。やるよね?」

椿「はい。しがみつくとかじゃなくて……頑張りたい、ですね」

千奈美「いいじゃないの、やりましょ」

アヤ「環境だけならいちばん恵まれてるはずだもんな、アタシたち」

志保「Zzzzzzzz」

伊吹「うわぁ」

アヤ「うわぁ」

――――

4月8日は桐野アヤの誕生日です。

レギュラーはアヤ志保千奈美です。
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/08(水) 03:33:19.75 ID:0R6c52m4o
おひさ!
俺もアヤ書こうかなあ
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/08(水) 08:58:13.29 ID:pA3IjVtKO
生きとったんかワレェ!
アヤおめ!

うーん、この若々しくていい話を時々ぶつけてくるスタイル
嫌いじゃないわ
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/09(木) 01:54:09.88 ID:YMlmom/ao
うっかり泣くだろうが…
377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/09(木) 16:30:04.18 ID:B1LPP1CsO
タイトル詐欺(誉め言葉)なんだよなぁ

なるほど、この中だといぶきちだけ関東(茨城)だから実家住まいが可能なのね
378 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/05/05(火) 03:01:22.84 ID:TSJjxUNy0
真奈美「一つ目、ここの拍が取り難い気がするが……まあこのまま出そう。二つ目はBメロが浮いてる」

千奈美「……くっ」

真奈美「サビが仲間を意識しているのに、Bメロは孤独を肯定するような内容に読める」

千奈美「AメロとBメロの連続性は気にしたつもりなんですけれど……」

真奈美「なら、展開する方向が上手くいってないんだ。これはサビ有りきなんだろう?」

千奈美「そう……ですね」

真奈美「それなら、サビにフィットさせていかないと。シフト終わったら少し相談しよう」

千奈美「はい…… ライブ感、ってよくわからないんですよね。今更ですけど」
379 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/05/05(火) 03:02:58.52 ID:TSJjxUNy0
真奈美「うーむ。レトリックを求め過ぎてるんじゃないかな」

千奈美「言葉を飾り過ぎ?」

真奈美「もっとストレートに書いてみたまえ。テンション上がってる状態で耳に入っても、歌詞が理解できるくらいに、簡単な言葉でいい」

千奈美「その上で、掛詞になったり韻を踏んだり……」

真奈美「そこはまあ、そうだ。三年以上勉強してたんだからな」

千奈美「むむっ。がんばりまーす」

真奈美「ん。曲はOKが出てアレンジャーに発注が行ったそうだから、来週には戻るんじゃないかな。もう少しだ」
380 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/05/05(火) 03:12:16.84 ID:TSJjxUNy0
千奈美「分かりました。……三つ目は?」

真奈美「三つ目か。それは、えー…… ちょっと、その……空回ってる。ダサい、というか……」

千奈美「」

真奈美「一定層に媚び過ぎだな。何でもカタカナにしたらキャッチーなわけじゃないし、リズム感のために小難しい単語や日頃使われない言い回しを詰め込むのは、それこそ生きた歌詞じゃない」

千奈美「……くっ!」

真奈美「こういうのも、需要はあるだろうが…… キミ達に歌わせたくはない。初のオリジナルでこれをやったら、戻れなくなる」

千奈美「……歌詞を三パターンは大変です。見てもらえることは凄くありがたいですけど」

真奈美「まあ、三つ目は今回の企画とは別口で添削してもらうよ」
381 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/05/05(火) 03:12:53.59 ID:TSJjxUNy0

――――

志保「お茶出すついでに覗いてきたけど、大変そうだった」

アヤ「だな。……作詞作曲かー」

志保「所長、やったことあるのかな?」

アヤ「ちゃんとしたのはない、って言ってた」

志保「それで教えるんだ……」

アヤ「教えるっていっても、具体的にどうしろって言ってないし?」

志保「言われてみれば、外れてるところを指摘してる、って感じだったかな」

アヤ「ほらあれだよ、前に木場さんが審査の仕事やってた歌詞のコン…… コン……?」
382 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/05/05(火) 03:13:28.77 ID:TSJjxUNy0

志保「コンコン。おきつねさんどすえー」

アヤ「ちげーよ!」

志保「コンペティション?」

アヤ「それ。一次審査くらいだったらできるんだろ」

志保「なーるほど。こんこん」

アヤ「だいたいさ、作詞作曲までやってるプロデューサーがどれだけいるよ?」

志保「こんこーん。確かにー」

アヤ「いつまでキツネなの」

志保「お店に和風の小物飾って、制服は袴にエプロン、キツネのお面ってどうかな♪」

アヤ「どうかな♪ って言われても…… 可愛いけどさ……」
383 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/05/05(火) 03:14:13.89 ID:TSJjxUNy0

――――

アヤ「まあ、そんな話をだな。次の企画にどうか、って」

千奈美「キツネはどっちかっていうとアヤでしょ。志保は……タヌキ?」

志保「えっ、ちょっ…… それディスってない!? それ!?」

千奈美「褒めてる褒めてる。垂れ目だし、お尻大きいし」

志保「わーい、褒め…… 褒めてる? 褒めてるのかなぁー?」

アヤ「雑! じゃあ千奈美はどうなんだよ、動物」

千奈美「……ジャッカル?」

志保「……オオカミみたいなやつ?」

千奈美「……さあ?」
384 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/05/05(火) 03:15:59.87 ID:TSJjxUNy0

アヤ「お前さぁ、お前適当言ったろ!!?」

千奈美「とりあえず出すだけ出しておけば? 私は犬とか狼とかでいいわよ」

アヤ「適当だなぁー!?」

千奈美「いやもう、ホントに全然余裕ないもの」

志保「作詞?」

千奈美「作詞。やー、勉強してたときの書き溜めなんてね。数年経ったら使えないもんだわ」

アヤ「はー。大変だなァ」

千奈美「やり切りたいから、ちょっと負担かけるかもだけど」

志保「大丈夫だよ。支えるくらいしか手伝えないんだから、そこは頼って!」
385 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/05/05(火) 03:16:45.36 ID:TSJjxUNy0

――――

志保「お疲れ様です♪ コーヒーお持ちしましたよ。合同アルバム、どんな感じですか?」

真奈美「ありがとう。……わからん」

志保「えっ」

真奈美「結局、私がディレクションすることになりそうだ」

志保「アルバムのプロデューサー、この間お会いしましたよね?」

真奈美「ミニアルバム四枚、ユニットにして20組同時進行だ。コンセプトを共有するだけでも一仕事だろうさ」

志保「確か、どういう組み合わせで収録するかも決まってないって」

真奈美「選抜投票のことがある。現状である程度は予想がつくよ。……それとなく聴いたしな」

志保「あー、選抜……」
386 : ◆S0mvz1PntgQY [saga]:2015/05/05(火) 03:17:22.06 ID:TSJjxUNy0

真奈美「ニュージェネや142's、双葉杏みたいな、単独で出しても6ケタ見えるようなのがいるんだ。……わざわざ潰し合いにはしないだろ」

志保「う。……あの、出来レースだったりします?」

真奈美「……不正はまず有り得ないぞ。今回みたいに複数の事務所での共同作業となると、根回しは厳しい」

志保「でも、売れっ子を分けるんだから…… ある程度結果が見える組み合わせになります、よね」

真奈美「そこはなぁ。未来ある若い子を本気で潰し合わせたって、誰も得しないさ」

志保「……うーん。勝てないのが分かってても、やる……」

真奈美「数万枚は売れる、聴いてもらえるんだ。チャンスには違いない。それに、選抜枠7つのうち二つ三つくらいは、正直読み切れてない。プロモート次第かな」

志保「その中に、千奈美ちゃんが滑り込めるように?」
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