【安価とコンマで】艦これ100レス劇場【艦これ劇場】

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738 :【31/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2016/07/11(月) 22:27:55.66 ID:du8xjrVn0
如月「むしろ、それだけ肝が据わっているから元帥に任命されたんじゃない? でも、ちょっと出てってもらうわね」

提督「元帥……?」

如月「ほらほら〜、花嫁の着替えが気になるのは分かるけど……我慢我慢」

朝潮「はな、よめ……?」

部屋に入ってきた陽炎と、その同期の艦娘である如月に部屋を追い出される提督。頭上に?マークが浮かんだまま廊下に立っていた。

・・・・

ラバウル泊地の中庭で、提督と朝潮の二人を多くの艦娘たちが囲んでいた。タキシードを着ている提督とウェディングドレスに身を包んだ朝潮。
二人の薬指にはきらりと光る銀色の指輪が嵌められていた。既に一渡りの儀礼は済ませた後だったため、くつろいでいた。
華燭灯る席に着く二人の前に艦娘の一人、五月雨がてけてけと駆け寄ってくる。

五月雨「二人とも素敵でしたよ〜! 緊張しなかったんですか? 随分堂々としてましたね」

提督「全くしなかったな。というか、いまいち現実感がなくってな……(指輪よりえげつないもん貰った後だしな……まさかカッコカリより先にこうなるとは思わなんだが)」

朝潮「そうですね……私にとってもまるで夢のようです(司令官に……キス、される日が来るなんて……)」

五月雨「さすがですね〜……。元帥を任される提督とその秘書艦ともなると、振る舞いもなんだか洗練されているように見えます!」

提督「いやァー、んなことねぇだろうよ……オレには荷が重過ぎるほどの大層な肩書きだ。この地位は実力で勝ち取ったもんじゃない、偶然みたいなもんさ。
オレ自身まだまだ至らないところだらけだ……だが、いつかはこの地位に真に相応しい提督になってみせる。だから、これからもよろしく頼むぜ、五月雨」

五月雨「うわぁ〜……やっぱり提督は立派ですね。憧れちゃいます。私も一生懸命頑張ります!」

五月雨が離れていくと、朝潮は机の下で不安そうに提督の手を握る。

朝潮「そうですよね……司令官はみんなに尊敬されて、慕われています。私は、本当にこんなことをしてしまっていいんでしょうか……。
大好きな司令官との正式な婚約を、艦隊の皆さんにも認めてもらって……この上なく幸せですが……。幸せすぎて、なんだか、少し怖いです……」

提督「幸せの“幸”って漢字、あるだろ? あれは象形文字なんだ、山や川みたいなもんだな。で、“幸”は手枷をかたどったものなんだ。
手枷って言えばどちらかといえばありがたくない物のはずだろう? なんで手枷で“幸せ”になるかっていうと、死刑ではないからなんだ」

提督「つまりな、“幸せ”ってやつの本質は、人と比べることにある。『死刑のあいつに比べたら、手枷のおれは運がいい』ってこと。
お前は確かに今、愛しているオレと結ばれて“幸せ”かもしれない。オレも“幸せ”だよ、こんなにオレのことを想ってくれるお前が隣にいるんだからな」

提督「けど、オレたちは幸せになるために結ばれたのか? 幸せになることが目的か? オレは違うと思う。
朝潮となら、どんな不幸も苦境も乗り越えて行けるような気がする。だからオレは朝潮と結婚してもいいって言ったんだ」

朝潮「しれぇ、かぁん……」

提督の胸元でぶわっと泣き出す朝潮。困惑しながらも朝潮の頭を撫でる提督。

・・・・

夜になって、提督と朝潮は泊地の屋上から星を見ていた。これまでのことを話し合っていた。

朝潮「昼は急に泣きついてすみませんでした……。けれど、ようやく私も“手枷”から解き放たれたような気がします。
司令官となら“幸せ”以上に価値のある何かを見つけられるような、そんな予感がしています」

提督「未来を恐れても仕方がないからな。前向きに行かないと……って。あの異世界で、心が折れかけてた時の夜に、朝潮に抱き締められて思ったのさ。
こんなにオレを想ってくれる人がいるなら、オレはまだ止まっちゃいられねえなって。オレも朝潮のお陰で成長してるみたいだ」

朝潮「なんだか、照れくさいですね……あっ」

朝潮の指差す方角は、ブルーホールがあった海の方だった。夜にも関わらず大きな虹がかかっている。

朝潮「そういえば……ブルーホールとは一体なんだったのでしょう。あの虹がかかっている場所にあったはずですが……。
こうして元の世界の泊地に戻ってきたのはいいけれど、私は司令官と結ばれて、そして司令官は今日から元帥になって……」

朝潮「結婚式が終わった後に司令官は元帥の就任式があったでしょう。その間にブルーホールのことを調べてみましたが……やはり記録にはありませんでした。
他の艦娘に聞いてもみな知らないそうで……でも、やっぱりこの世界は私たちの居た元の世界だって感覚があるんですよね……」

提督「これは、オカルトな妄想話だが……聞いてくれ。このパプアニューギニア一帯にはかつて、食人や魔女狩りといった風習が存在していた。
呪術によって人を支配する、なんてものもあったそうだ。そういう怨念や恐怖が、ああいう異世界へと繋がるブルーホールへとオレらを誘ったんじゃねえかな。
そして今、祝福の象徴として知られる虹が輝いている。祝福ってやつは、呪いと対になるものだが……。
オレたちが異世界の中で、悩み、苦しみ、葛藤し……そうして解決へと導いた。それは、この土地に渦巻いていた呪いに向き合うことだったのかもしれない」

提督「つまりあの異世界はほんとは異世界なんかじゃなくて、この世界の中で見た幻覚に近い何かだったんじゃないかなとか勝手に思ってる。
呪いを克服したから祝福へと転じ、オレにとっての願いであった“頂点へと上り詰めること”、朝潮にとっての願いであった“オレと結婚すること”が叶ったんじゃないか」

提督「まっ、全然辻褄合ってないけどな! けど、どうにもあのブルーホールは消滅しちまったようで多分もう調べようもない。オレはこんな感じの適当な解釈で片付けることにした」

朝潮「なんだか神話や伝承みたいですね……でも、ちょっとその説でいいかなって思いました。あの、ところで、司令官……」

虹を背に立つ朝潮、髪が煌いている。提督の目を見つめ、ぴょんと跳躍する。互いの唇が触れる。

朝潮「ふふふっ……」

提督「脈絡ねえな……けど、それでもいい。ムードや流れなんて気にするもんでもないな。お互いがお互いを愛しくなった時に、それを伝え合えるような関係がいい。こんな風に」

しゃがんで朝潮の唇を奪う提督。二人は抱き合い、夜を照らす虹の明かりに包まれていた。
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