【安価とコンマで】艦これ100レス劇場【艦これ劇場】

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320 :【97Ex2_2/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2014/12/26(金) 21:20:35.19 ID:LqPWl3cN0
提督は、先程までの如月とのやり取りを淡々と話した。

電はその間、何も言葉を発さなかった。

提督「最初はたぶん……僕に対する罪悪感で部屋に訪れたんだと思う」

提督「だけど。その後、僕を抱き締めてきたのには、理由があると思う」

提督「恐らく、如月は僕のことを愛してくれていて。きっと、すごくすごく好きで居てくれたんだと思う」

提督「ずっとそんな気持ちを抱えていたんだと思う」

提督「如月は何も言わなかったから、本当のことは分からない。でも、あの時の彼女の仕草で、そう感じ取ったんだ」

提督「如月は……ああすることで、僕への想いを断ち切ろうとしたんだと思う」

提督は、まるで夢でも見ているかのように、ぼんやりとした様子でぽつりぽつりと言葉を漏らす。

提督「それを分かってもなお……僕は、彼女の想いに応えることは出来ないんだ」

電「どうして……ですか?」

提督「僕にも、好きな人が居るんだ。だから……如月の想いを察することは出来ても、応えるわけにはいかなかった」

提督は、ベッドに身体を横たえる。枕に顔を埋める。

提督「……如月を傷つけてしまって、しかも、多分もうこの先どうすることも出来ないんだな、って」

提督(如月……今は、部屋で一人で泣いているんだろうな……。なんとなくだけど、そんな気がする)

提督「あそこで僕が、如月を引き止めていたなら、きっと如月の心を救ってあげられたんだと思う」

提督「でも、僕はそれをやらなかったんだ。彼女の痛みを知っているからなおさら……自分の気持ちに嘘はつきたくなかった」

提督「自分の気持ちに嘘をついて接しても、余計に彼女を傷つけてしまうだろうから」

提督「だから……彼女を受け入れることは出来なかった」

提督「それってすごく哀しいことなんだと思う。でも、仕方ないことだとも思う」

提督「仕方ないことなんだろうけど……やるせない」

・・・・

電(司令官と如月は……似た者同士なのかもしれませんね)

電(だから、お互いの痛みが分かるのかもしれない)

電(如月はあんなふうに飄々としていても、辛い気持ちや寂しい気持ちはずっと我慢してる……)

電(司令官もきっとそうなのでしょう……)

提督「情緒不安定なのかな……情けないところ見せてごめん」

提督「ごめん。やっぱり僕、疲れてるみたいだ」

提督はベッドから身を起こすと、少し困ったような、力ない笑顔で電に微笑む。

電(司令官、そんな顔しないで欲しいのです)

電(そんな顔をして……私の遠くへ離そうとしないで欲しいのです)

電「司令官……。今夜は、電がずっとお傍に居ます」

電は、ギュッと拳を握って、目を瞑る。それから深呼吸して、何かを思い切ったように強く言い放つ。

電「私は! 司令官さんと違って、頭も悪いし失敗ばかりで……」

電「司令官さんの辛い気持ちも、哀しい気持ちも、少しも楽にしてあげられないかもしれない」

電「でも……でも、司令官さんには、笑っていて欲しいのです。だから……」

電の言葉が詰まったタイミングで提督が話を切り出す。

提督「ありがとう、電」

提督「(心配かけてしまったか……やはり如月のことは、話すべきじゃなかったな)」
321 :【97Ex2_3/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2014/12/26(金) 21:21:39.37 ID:LqPWl3cN0
提督「少し、甘ったれていたのかも……突然のことで、精神的に動揺していたんだ」

提督「そうだな……このやるせなさも、乗り越えていかなきゃいけないね」

提督「僕は君たちの提督だ。……強くならなきゃ」

提督「心配かけてごめん。僕の為を思ってくれて言ったんだろう。ありがとう」

提督「もう、大丈夫だから」

提督は電の頭を撫でようとする。

が、その手は払いのけられ、提督はベッドに押し倒される。

提督「!?」

電「何勝手に自己完結させようとしてるんですかァ!」

電「全然大丈夫なんかじゃないのですッ!」

電「司令官は! ずっと私に隠してきたのです!」

電「辛いと思ったことも! 哀しいと思ったことも! 皆一人で背負い込んできたのです!」

電「司令官は強くなんかならなくていい! 辛い気持ちを押し殺す必要なんてないのです!」

電「情けなくてもいいから、みっともなくてもいいからぁ!」

電「司令官には……私が、居ますからっ……!」

荒い呼吸を整える電。しかし、感情が昂ぶっているせいか頬が紅潮している。

電の今まで見せたことのない態度に、提督は固唾を飲む。

絞り出すかのように、言葉を発する電。

電「教えて欲しいのです。私に、全部。……」

電「司令官さんの苦しみも、全部、知りたいのです……」

今にも泣き出しそうな潤んだ目で提督を見つめる、電。

提督は、その目を真剣な眼差しで見つめ返し、……唇を重ねた。

・・・・

提督を強く強く抱き締める電。

堪え切れなくなった電の目の端から、ぽろりぽろりと零れ落ちる涙。提督の頬を伝う。

それは、ほんの僅かな時間の出来事だった。

しかし、二人にとっては永遠の意味を持つ出来事だった。
322 :【97Ex2_4/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2014/12/26(金) 21:22:08.54 ID:LqPWl3cN0
唇が離れる。

電は、力が抜けたように、へなへなと提督の上に倒れ込む。

左腕で電の背中を包み込むようにぎゅっと抱く提督。

提督「両の手で抱きしめられないのが、残念だな……」

電「……ぐす。どうして、私、なんですか……?」

電「嬉しい、けど、わたし、司令官に避けられてると思って、えぐ……」

提督「そう勘違いさせてしまったなら、すまないね。僕は電のこと、好きだよ」

提督「本当に、ごめん。そっか……辛い思いをさせてたのかな」

電「うぅん。司令官と一緒に過ごしていて、辛かったことなんて一度だって無いですよ……?」

電「ひっぐ……いつも、幸せでした」

はにかみながら笑う電。

提督「避けていたわけじゃないんだ」

提督「ただ……本当は、ずっとはぐらかすつもりでいたんだ。ずっと嘘をついていているつもりだったんだ」

提督「誰か一人を選ばなきゃいけないって、僕にとっては辛くて……それならいっそ、誰にも興味が無い振りをして、独りぼっちになれば良いのかなって」

提督「そんなずるいことを考えていたんだ。全てが終わったら……自分の気持ちと向き合おうって思ってたのに、逃げようとしたんだ」

提督「でも、他の皆には薄々感づかれてみたい。それが君だとまでは分からなかったみたいだけど、僕にも好きな人が居るって事を」

提督「……みんな、色んな事を一緒に乗り越えてきた仲だもんね、隠し通せるわけ無かったんだ」

提督「僕は…………電。君のことが好きだ。気づかないふりをして自分を誤魔化してきたけど、もう、抑えられないみたい」

提督「……君を、誰よりも愛おしく感じるんだ。電……んっ」

不意に唇を塞がれる提督。

電「嬉しいです……司令官……」

電「嬉しい……嬉しい……」

啄ばむように、何度も何度も提督の口を塞ぐ電。

電「んっ……ふっ……ふふ」

電「しあわせ、なのです……」

二人は抱き合ったまま眠りに落ちていった。
323 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/26(金) 21:24:18.37 ID:LqPWl3cN0
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[[電についてのアレコレ]]
トリを飾るのはもちろん電。いやぁ……やってくれましたね。

・作者目線での苦労
電はわりと人気の高いキャラで、それなりに読む側も目が肥えてるようなので、ちゃんとした電が描けてるかわりと不安でした。
ちゃんとした電って何だよって話ですが。いや、期待に沿えてるかなあ、とか、キャラから外れてないかなあ、とかそういうのですよ。
わりとそこいら辺は問題ないようで今更ホッとしています。なんだかんだ魅力的に書けてたなら良かったなあと思います。
作者的にはわりと自信が無かっただったので、投票で電に票が集まったのはわりと衝撃受けてました。

電は……なんだかんだ一番苦労したかもしれません。
第一に、好感度ですかね。アレで一人だけガンガン突出していくもんなんで、かなり困りましたね。
別に*2のボーナスを無くしてしまえば良かったんですけど。あるいは別の子にボーナスを付け替えるか。
ただ、提督の立場から考えると秘書艦を変える必要性って無いし、無理に秘書艦を別の子に変えるためのイベントを起こそうっていう発想も沸かなかったので、結局そのままでした。
結果として一人だけ好感度がガンガン上がっていき、かなり動かし辛いキャラになってしまった……。
中盤以降はもう好感度とか知るかと吹っ切れて程々の頻度で登場するようになりますが。


・本題
上記の理由や他のキャラとの差別化に悩まされたキャラである電なのですが、どうやって彼女を動かしていったかというと、キャラクターの目線に立って思考し、描写することで対応しました。
このキャラならこの場面でこういうことを考えてこんな風に動くだろう、と推測しながら動かしています。
他のキャラも場面場面でそういう書き方をしていますが、電と提督は特にそういうことが多かったですね。
提督に関しては、お前作者の意図に反して勝手に動き過ぎって感じのことが多いんですけど。
キャラは薄いわりに「ここではこういうことをする」という思考ルーチンだけはわりと確立されてるキャラなので、結構振り回されることが多かったですネー。

話を電に戻しまして。
電は、結構自分に対して厳しい見方をしていますね。
ごく最初の方に提督に自分の理想を語っておきながら、後半では自分は何も出来なかった・何も変えることが出来なかったという旨の話をしています。
「自分を変えたい」とか「戦いが無くしたい」とか、そういう理想を抱いてはいるけれど、現実には自分ではどうすることも出来なくて……というのが彼女なりの苦悩なようです。
そうした葛藤は提督やかつての満潮なんかもしていたりするのですが……電の場合は特に悩みが大きいみたいですね。
本当は彼女だってしっかり成長しているんですけど、彼女の中では納得がいっていないようです。
というのも、彼女に最も身近な提督の場合、「皆を守りたい」とか「誰も悲しませたくない」とかそういう信念のもと行動していって、実際にそれが出来るぐらいに成長していますからね。
彼と比べると劣等感のようなものを感じてしまうんでしょう。
……彼も彼でアレですけど。結局提督は、本質的には他人に心を開いていないのかも。
自分一人で悩んで、自分一人で乗り越えて……だから、成長はしているけれど常にどこか孤独を抱えているっていう。
そんな提督の心の動きのようなものを察知して押し倒した電は中々良い仕事しましたね!(押し倒したといってもやらしいニュアンスじゃないからな!)
衝動的な行動ではありましたが、それが提督の心を動かしたのかなと。
電の本気の片鱗のようなものを作者は感じますね。



・再び話は逸れて 〜作者的場面解説
……これは作者の持論ですけど。
他人から感情をぶつけられると滅茶苦茶しんどいのですよ。その情が強ければ強いほど。ええと……分かりやすい話をすると、負の感情を吐露されて辛いと感じない人なんて居ませんよね。
人から死ねだの殺したいだの思われて平気で居られる人なんて、ある種の狂人ですからね。精神的に強者だとは思いますが……。
(まあ、そういう言葉を投げかけてきた相手を人間じゃなく虫ケラ程度にしか認識していなければ「あー虫がなんか言ってるなー」程度で済みますけど……それはそれで悲しい)正の感情ならばどうか、というと、実はこれも時と場合によるのですよね。
今回のお話の例だと、提督は如月の情愛を悟った時に、哀しみのような感情を抱いていますよね。
提督も如月に対して恋愛感情とまではいかないまでもとても大切に想っていたにも関わらず。
説明するまでも無いですが、提督が悲しくなった理由は、彼女の持っていたある種の“一つになりたい願望”に応えられないから、ですよね(やらしい意味じゃないからな!)。
ええと……他人からの自分に向けられる強い感情というのは、それが親愛であれ憎悪であれ、精神を強く揺さぶってきますよね、という話がしたいのでした。
ここで、如月の内面を知ってしまった提督は、これから決戦だというのに疲弊していますね。
そんな最中に電が部屋を訪れるのでした。
提督は、独り言のように自分の悩み、というか、彼の心の中にあるやるせなさについて口を滑らせています。

彼にしては珍しく精神的に参っていたのかもしれませんね。
で、電はそんな提督を見て、自分が本当にその役に相応しいか自信は無いけれど、貴方を苦しみや哀しみから救いたい……意味合い的にはそんな感じのことを言ってますね。
ただ、電にそう言われた時に提督は自分の取り留めのない空虚感を打ち明けてしまったことを後悔しています。
電を心配させてしまったと考えたからです(まあ確かに多少は心配してますけど……)。
そう思った提督は、すぐに立ち直り、自分を奮い立たせています。

先程も書いたように、自分一人で悩んで、自分一人で乗り越えようとしたわけですね。
しかし! 提督のその態度を見て電は激昂するわけですね。
辛いはずなのに誰に頼ろうともせず、独りで抱え込もうとする姿勢が気に食わなかったわけです。
まぁ……「貴方の為に傍に居ますから(=私に頼って下さいね)」って言われてんのに「大丈夫だから」って返しは野暮ったいというか無粋ですよね。
そこはお言葉に甘えろっつーの。
提督なりには気遣っているつもりみたいですけどかえって失礼ですよねこれ。電が怒りに近い感情を抱くのも無理はない。
(次のレスにつづく)
324 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/26(金) 21:26:10.05 ID:LqPWl3cN0
こういう態度に提督の本質があるのかなーと。
彼は確かに提督に相応しい存在と呼べるまでに成長してはいますし、艦娘たちに心から向き合っていますが、一方で自分の心の内は誰にも明かしていないわけです。
というか、彼が真剣な悩みを相談したのって満潮ぐらいですしね。
それだって満潮の方が半ば強引に提督の方に向かってきたから打ち明けただけで。
電や満潮だけでなく他の艦娘全員から彼の抱えているそういう精神的な苦しみを察されていて、その“精神的な”苦しみを皆心配しているのに、提督は誰にも打ち明けようとしない、と。
ただ、彼には彼なりの考えもあって。
答えの出る悩みは人に相談出来ても、答えのない悩みは打ち明けた所で聞いてる側はどうしようもないじゃないですか。
例えば、「上手くいくか不安」という悩みに対して、より「上手くいく方法」を一緒に考えてあげることは出来ても、「不安」そのものは当人以外にはどうにも出来ないですよね。
つまり、“精神的な”苦しみは他人が解決しようがないんですよ。
今回のケースでは提督は電に対して、「仕方ない」と割りきっているけれど「やるせない」という“精神的な”苦しみをうっかり打ち明けてしまったんですね。
そんなことをしても電を心配させるだけで何の意味もない、それなのに口を滑らせてしまった、と考えたから打ち明けた後で後悔したわけですよ。
そして、電の心配を取り払うべく自分自身の精神を向上させて「やるせなさ」を強引に克服しようとした……というわけだ。



・理性対感情
これまで通り提督がなんだかんだ精神的に成長して終わり……ならこのエピソードはここまで複雑にならないんですが。
上に書いた通り電は提督のそんな態度に黙っていられなかったわけで。
電は提督を押し倒した後に、自分の思いの丈をストレートにぶつけます。
提督の苦しみも悲しみも、たとえ何も解決出来なかったとしても受け止めたいと!
そう強く強く提督の心に訴えかけるわけですよ!
対する提督の行動は……!? ってな感じでしたよね。

これはちょっと理解出来ない行動かもしれません。
というか、作者だったらここでそれ!? ナンデ!? って思っちゃいます。
思っちゃいますけどあの提督はあの場面だとああいうことをするんです。
……ええと、かなり“感情的な”行動なので論理的に説明するのが作者でも難しいというかぶっちゃけ作者でさえよく分かってないんですけど。
一応、作者目線で提督の行動を論理的に分析しますね。

前述の通り提督は心のどこかで艦娘と距離を置いていて、その理由は心の内面の解決しようのない葛藤を打ち明けても無駄だと考えているからでした。
一方電は、なんだお前それがどうしたと。
たとえ無駄だろうがなんだろうが、私は貴方の心の深淵に触れたいし、その為なら私は貴方の痛みや悲しみでさえも受け止めたい、と言うわけですよ!

ここでもし提督が理性的な行動を取るとするならば考えうる選択肢は二つである。
・それでもなお電を拒み、苦しみを抱え続ける
・自分の抱えている漠然とした苦しみや悲しみを電に打ち明ける
もっと頭の働く人なら他の選択肢も浮かぶかもしれませんが作者はとりあえず二つしか浮かびませんでした。
で、結局そのどっちでもありませんでした。
なぜ提督は電に口付けをしたのか……。

うーん、作者もあんまり説明出来ないんだけどなぁ。
その、彼の過去の行動を振り返るに、言葉で説明したり出来ない時に、身体に触れるなどの行為で意図や気持ちを伝えていたことがあるじゃないですか。
今回もその一例……と言ってしまえば簡単なのですが、それも納得いく説明じゃないと思うので……。

電に押し倒されて想いを伝えられてなお、彼の胸中を想像してみますかね。
まず第一に動揺だ。心配をかけまいという振る舞いがかえって相手を不興を買ってしまったのなら戸惑うだろう。
で、第二に、電の言葉の分析をするに違いない。
彼女は今激しく興奮しているが、その原因は何か。
……自分のその心配をかけまいという態度が気に入らなかったのだと悟る。
また、自分の心の澱でさえも受け止めたいという彼女の強い想いを知る。
ひょっとしたら、そんな風に自分を募ってくれる彼女を愛おしいと思うのかもしれません。
というかキスするぐらいだしそう思ったのでしょう。
だから唇を重ねた、と。

んんんん〜、やっぱり作者的には納得いかないぞ……。
納得いかないのになんでそんな展開にしてそんな描写をしたんだっつー話ですが……でも、この提督なら絶対こういうことするよな! とは思うんですよ。
多分作者には理解出来ない「愛」的サムシングが彼を突き動かしたんでしょう。
まぁ、その。「本当ははぐらかすつもりだった/嘘をついているつもりだった」から察するに、電を愛してはいたけれどそれを打ち明けるつもりは無かったんでしょう。
提督の中で、電への想いを封じ込め続けることは精神的な苦しみの一つでしょうし、それを打ち明けることによって電の想いに応えた……って解釈が妥当かなぁ。
なんていうか、ある意味提督と電の二人だけの世界みたいな領域になってしまったので、もう作者には分からん。



ごめんなさい。電についてとか書いておきながら全然触れてませんでした。だって……前に一度書いてたやつが消えちゃったのが悪いんだし……。
一つだけ電に関する後悔は、朝潮と仲直りするエピソードが尺の都合で書けなかったことですかね。
電が朝潮に対して、提督のことを何も分かっていないと叱咤していますが、あの後で自分も朝潮の苦しみを分かってあげられなかったんだなって反省してたりします。
そこのところ描写したかったなぁ……今となっては過ぎてしまったのでアレですがねー。

エンディングを添い遂げるヒロインとして相応しく描けたかどうかは分かりませんが、ここまで提督に精神的に喰らいついたのは電だけですね。
そういう意味ではトゥルーエンド? ……ですかねぇ。
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……色々となげーよ馬鹿! とセルフツッコミ。
エクストライベントを自重なしで悪用するとこうなるということじゃ。
とりあえず前編おしまい。
明日の投下でエンディングです。
325 :【98/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/27(土) 21:30:17.68 ID:l7+8oZPc0
朝潮「いよいよですね……」

水平線の彼方から陽光がちらつく。

満潮「本当に行くの? 昼になってからでも良いんじゃない?」

提督「いや、これ以上長居するのは良くない。……僕の心情的に」

皐月「感傷的だねぇ」

如月「男は過去に生きて女は未来に生きるのよ」ニヤケ顔の如月

提督「……違いないね。だが!」

提督「今僕が見るべきは『現在』だ。過去の想いを繋ぎ、未来を切り拓くためにもッ!」

提督「これから僕たちに襲い来るであろう脅威を打ち破る! その為に皆、力を貸して欲しい」

電「……暁の水平線に、勝利を刻むのです!」

提督(それ僕が言いたかったんだけどなー)

・・・・

磯波「今の所は順調ですね。敵も見かけませんし」

提督「そうでなきゃ困るよ……まだ目を凝らせば僕たちの鎮守府が見えるぐらいの距離だよ?」

間宮に背負われている提督。

提督「鎮守府内のありったけの物資や装備、資料を運んでるわけだから、航行速度は普段の半分ぐらいなのかな」

提督「昼戦では機動力が売りの水雷戦隊だけど、その機動力さえ今は削がれている状態だからね……。命あっての物種だから敵が来たらある程度海に捨てるのも考えてるけど、なるべくなら運びきりたい」

提督「あと、僕のことはともかく、今後も美味しい晩御飯を食べられる日々が続いて欲しいなら間宮さんは最優先で守るように」

間宮「向こうの鎮守府に着いたら腕によりをかけてご馳走するので、頑張って下さいね」

皐月「よしっ、こうしちゃいられない! 全速前進!」キラキラ

航行速度を上昇させる艦娘たち。

提督(たった一言で皆を戦意高揚状態にさせるとは……。逆立ちしてもこの人には勝てないな……)

提督(それにしても……寒い! 早朝よりは幾分かマシになったが、潮風が突き刺さるように冷たい)

提督(そのくせ、腕を無くした方の肩が灼けるように熱い。血液が全部そこに持ってかれてるみたいだ……)

提督(意識を保っていられるかどうか怪しいぞ……)

・・・・

満潮「背後に敵影! ……と言っても、こっちに向かって来ているわけじゃないみたい。離れていくわ」

満潮「その数……あー、まともにやり合ったら勝てそうにないわね。数え切れないわ、100隻超えてるんじゃないの」双眼鏡を覗く満潮

満潮「戦艦が多いわね。幸い空母の類は少ないから、索敵機がここまで来る心配は無さそう。全艦私たちの鎮守府の方へ向かってるわ」

提督「“今のところは”無事でいられそうだね。それにしても、まさかここまで早く奇襲してくるとはね……朝のうちに抜錨していなかったらと思うとゾッとするよ」

提督(遠くで砲音が聞こえる……。敵の奇襲がもっと遅ければ、せめてあと数日ぐらい待ってくれていたのなら、あの鎮守府も守るつもりだったんだけど……そんなに待ってくれるほど優しい相手では無いか)

朝潮「司令官。後ろから追手が来る恐れはありますか?」先頭を進む朝潮、一瞬提督の方を振り返る

提督「いや敵の偵察範囲から外れている現時点では問題ない。無理して速度を上げなくてもいいよ。新しい鎮守府にいち早く着くことは大事だが、それさえ出来れば万事上手くいくというわけではないからね」

提督「なるだけ戦力を温存しておきたい。総力戦になるだろうから。……あっちに向かった連中とは後々交戦することになるだろうけど、しばらく時間稼ぎ出来ると思うから心配要らない」

提督「僕らの居た鎮守府は確かにボロい鎮守府ではあったけど、仮にも艦娘を収容している施設だからね。生半可な砲撃で破壊出来るほどヤワな建造物じゃないよ。完全に破壊するには時間がかかるだろう」

磯波「でも、あそこに私たちが居ないことを敵に気づかれたらまずいですよね……」

提督「その通り。だからある程度策は練っておいた。……もし僕たちがまだあの鎮守府に居たとしたらどうする? 正面から戦っても勝ち目は無いし逃げ場も無い。ならば最も安全な場所で敵を各個撃破しつつ味方の増援を待つよね」

提督「だから、『鎮守府内でも堅牢な場所のどこかに逃げた』という設定のもと色々と罠を仕掛けておいた(北方棲鬼を撃退したあの後、夕張に色々と聞いておいたのが活きたかな……)」

提督「敵が鎮守府に上陸して僕たちを捜すようなことをしても、それなりに時間は稼げると思う」

提督(とりあえず一つ目の障壁はギリギリ回避出来たといえるだろう。問題はこの先だ……)
326 :【99/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/27(土) 21:59:47.92 ID:l7+8oZPc0
朝潮「いよいよですね……」

水平線の彼方から陽光がちらつく。

満潮「本当に行くの? 昼になってからでも良いんじゃない?」

提督「いや、これ以上長居するのは良くない。……僕の心情的に」

皐月「感傷的だねぇ」

如月「男は過去に生きて女は未来に生きるのよ」ニヤケ顔の如月

提督「……違いないね。だが!」

提督「今僕が見るべきは『現在』だ。過去の想いを繋ぎ、未来を切り拓くためにもッ!」

提督「これから僕たちに襲い来るであろう脅威を打ち破る! その為に皆、力を貸して欲しい」

電「……暁の水平線に、勝利を刻むのです!」

提督(それ僕が言いたかったんだけどなー)

・・・・

磯波「今の所は順調ですね。敵も見かけませんし」

提督「そうでなきゃ困るよ……まだ目を凝らせば僕たちの鎮守府が見えるぐらいの距離だよ?」

間宮に背負われている提督。

提督「鎮守府内のありったけの物資や装備、資料を運んでるわけだから、航行速度は普段の半分ぐらいなのかな」

提督「昼戦では機動力が売りの水雷戦隊だけど、その機動力さえ今は削がれている状態だからね……。命あっての物種だから敵が来たらある程度海に捨てるのも考えてるけど、なるべくなら運びきりたい」

提督「あと、僕のことはともかく、今後も美味しい晩御飯を食べられる日々が続いて欲しいなら間宮さんは最優先で守るように」

間宮「向こうの鎮守府に着いたら腕によりをかけてご馳走するので、頑張って下さいね」

皐月「よしっ、こうしちゃいられない! 全速前進!」キラキラ

航行速度を上昇させる艦娘たち。

提督(たった一言で皆を戦意高揚状態にさせるとは……。逆立ちしてもこの人には勝てないな……)

提督(それにしても……寒い! 早朝よりは幾分かマシになったが、潮風が突き刺さるように冷たい)

提督(そのくせ、腕を無くした方の肩が灼けるように熱い。血液が全部そこに持ってかれてるみたいだ……)

提督(意識を保っていられるかどうか怪しいぞ……)

・・・・

満潮「背後に敵影! ……と言っても、こっちに向かって来ているわけじゃないみたい。離れていくわ」

満潮「その数……あー、まともにやり合ったら勝てそうにないわね。数え切れないわ、100隻超えてるんじゃないの」双眼鏡を覗く満潮

満潮「戦艦が多いわね。幸い空母の類は少ないから、索敵機がここまで来る心配は無さそう。全艦私たちの鎮守府の方へ向かってるわ」

提督「“今のところは”無事でいられそうだね。それにしても、まさかここまで早く奇襲してくるとはね……朝のうちに抜錨していなかったらと思うとゾッとするよ」

提督(遠くで砲音が聞こえる……。敵の奇襲がもっと遅ければ、せめてあと数日ぐらい待ってくれていたのなら、あの鎮守府も守るつもりだったんだけど……そんなに待ってくれるほど優しい相手では無いか)

朝潮「司令官。後ろから追手が来る恐れはありますか?」先頭を進む朝潮、一瞬提督の方を振り返る

提督「いや敵の偵察範囲から外れている現時点では問題ない。無理して速度を上げなくてもいいよ。新しい鎮守府にいち早く着くことは大事だが、それさえ出来れば万事上手くいくというわけではないからね」

提督「なるだけ戦力を温存しておきたい。総力戦になるだろうから。……あっちに向かった連中とは後々交戦することになるだろうけど、しばらく時間稼ぎ出来ると思うから心配要らない」

提督「僕らの居た鎮守府は確かにボロい鎮守府ではあったけど、仮にも艦娘を収容している施設だからね。生半可な砲撃で破壊出来るほどヤワな建造物じゃないよ。完全に破壊するには時間がかかるだろう」

磯波「でも、あそこに私たちが居ないことを敵に気づかれたらまずいですよね……」

提督「その通り。だからある程度策は練っておいた。……もし僕たちがまだあの鎮守府に居たとしたらどうする? 正面から戦っても勝ち目は無いし逃げ場も無い。ならば最も安全な場所で敵を各個撃破しつつ味方の増援を待つよね」

提督「だから、『鎮守府内でも堅牢な場所のどこかに逃げた』という設定のもと色々と罠を仕掛けておいた(北方棲鬼を撃退したあの後、夕張に色々と聞いておいたのが活きたかな……)」

提督「敵が鎮守府に上陸して僕たちを捜すようなことをしても、それなりに時間は稼げると思う」

提督(とりあえず一つ目の障壁はギリギリ回避出来たといえるだろう。問題はこの先だ……)
327 :【100/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/27(土) 22:36:06.23 ID:l7+8oZPc0
提督「なんとか、生きて鎮守府まで辿り着けたな……」

羽黒「し、司令官さん? ……ようこそ、新しい鎮守府へ。あっ、あのっ、私は今修理中で…………」服が破れている羽黒。中破状態のようだ

羽黒「見ないでえええええええぇぇぇぇ」提督の顔に手袋を投げつける

提督「ああ、歓迎ありがとう。今の状況を教えて欲しいな」後ろを向く提督

羽黒「今は、敵増援が次々にやって来るので、あの、皆代わる代わる入渠している状態です。ただ、陸奥さんが……」

提督「……彼女が撤退すると戦力が大幅に下がり艦隊の士気にも影響するから退くに退けない、というわけか」

羽黒「あのっ……で、でも。私たち、頑張りますからっ! 行ってきます!」再び戦場に向かっていく羽黒。提督が声をかける間もなく走り去っていった

提督(あれ、入渠は……?)

・・・・

那智「作戦完了だ、敵艦隊は壊走した。だが、こちらも被害が大きい。私は無事だが、他の連中が……」無線で提督に報告する那智

提督「分かった、よくやった! 後続があるかもしれないから、損傷の小さい艦は待機。他は帰投してくれ。……特に陸奥はよくやってくれた。しっかり休んでくれ」

提督「ほっと一息、か」胸を撫で下ろす提督

妙高「見事な首尾でしたね。お疲れ様です」

提督「ありがとう。でも、正念場はここからだ……。ね、電?」

電「はい、どこまでもお供します……ふふ」ニコリと不敵な笑みを浮かべる電

妙高「?」

・・・・

提督(各艦への補給が終わった、次の戦いへの準備も出来つつある。順調なはずだが、妙だ……静か過ぎる。僕が敵の立場なら、ここまで回復出来る時間を与えてやりなどしないが……)

提督「陸奥の修復にはまだかかりそうかな?」

如月「ええ、まだみたい。それにしても浮かない顔ね。不安なの?」間宮のアイスをシャクシャクと食べ進める如月

提督「ああ、ちょっと上手く行き過ぎてる気が……」

満潮「司令官、敵主力大隊がこっちに接近してる! あの中に司令官を襲った戦艦レ級も居るみたいだわ!」

皐月「司令官! さっきの敵艦隊の第二波だ! 指示お願い!」

磯波「提督! た、大変です! 敵の支援部隊と思しき艦隊がこちらに接近して来てます!」

見張りの艦から次々と敵艦隊発見の報告が届く。

提督「おいでなすった……! なるほど、こういうこと……全方位から強襲、ね。えげつないことをする」額に手を当て渋い表情をする提督

如月「ふふ、予想通りじゃない」急いでアイスを食べきり戦場へ向かう用意をする如月

提督「ううーむ。予想していたよりちょっと……いやかなり、ひょっとすると最悪なぐらい酷いが……。まぁ、ある意味作戦通りだ。僕がやるべき事に変わりはない」

提督「全艦出撃! 敵艦を各個撃破。ただし全戦力を以って真っ向勝負のような戦い方はダメだ。ヒット・アンド・アウェイ……というか、逃げながら戦うぐらいでいい」

足柄「ちょっとー! 何よそれ!? 右を向いても左を向いても敵だらけじゃない! こんなの暴れるなっていう方が無理よ!」足柄、無線越しに怒鳴る

提督「今はなるべくこちらの被害を少なく敵の数を確実に減らすことが大事だ(と言っても難しいだろうけど……)。僕に策があるので、しばらくは時間稼ぎをお願いしたい」

提督(ウォーモンガーだなぁ……士気が高いのは良いことだけれど……。重巡ともなると駆逐艦とは考え方がだいぶ異なるのか)

提督「さて、朝潮。君にはここに残ってもらう。負傷した艦は即座に退かせて入渠させるように。陸奥が回復するまではとにかく守勢に徹してくれ」

提督「夜が明けるまでに、敵の空母の数が減っていたら嬉しいかなあ……なんて」縄で提督の体を自分の艤装に結びつけている電。提督は片手に探照灯を抱えている。

朝潮「分かりました。……司令官、ご武運を!」提督に敬礼する朝潮

電「これでどれだけ激しく動いても海に落ちることは無いと思うのです。気休めにしかならないかもしれませんが、装備はタービンと艦本式缶を持っていくのです」

電「さぁ……司令官、行きましょう。少し気が早いけど……新婚旅行カッコカリ? なのです」

提督「はははっ……うん、確かに気が早いね。でも、……悪くない。君となら、どこまでも行けるかもしれないな」

執務室の窓から飛び降り、異形群がる百鬼夜行を突貫し、荒れ狂う海原を疾風迅雷の如く駆け抜けていく提督と電。

暗澹とした闇の中でも、二人の瞳の中には暁の水平線に昇る光が燦然と輝いていた。
328 :【ED_1】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/27(土) 22:37:10.60 ID:l7+8oZPc0
提督「……ん、んん」

満潮「おそよう。一週間ぶりのお目覚めね」

提督「一週間!? そうか、そんなに寝ていたか……」

満潮「当たり前じゃない。アンタ生死の境を彷徨ってたのよ?」

提督「おぉう、それは……。心配かけたね」

満潮「……いいわ。それより、どうしてあんな賭けに出たの? 何か確信があったとか?」

提督「あんな賭け? あぁ、電と敵陣に突っ込んで行った時のことか」

提督「確信と言うほどのものでもないが……」

提督「深海棲艦の行動原理は、地上の人間や艦娘への怒りであり、憎しみであり、悪意だ」

提督「たとえ知性を持っていようが、それは変わりない。残忍な深海棲艦なら、いかなる時でも冷徹だと思うかもしれないが、そうではない」

提督「レ級と対峙した時に、そう感じたんだ。奴が冷静だったなら僕はあの場面で三回ぐらい殺されていただろう」

提督「奴が僕を殺しそびれたのは、もちろん僕を人間だと侮り慢心していたのもあるけれど、それだけじゃない」

満潮「?」

提督「……冷静になんかなれないんだよ。感情のある生き物はね」

提督「皮肉にも、抱いている感情が強ければ強いほど冷静さを欠いてしまう」

提督「深海棲艦は憎悪に支配されている。この世の全てを滅ぼしてしまいたいほどに大きな憎しみに」

提督「今の僕は多分、奴らにとって最も大きな倒すべき敵に見えているんだろう」

提督「だから、敵の注意を惹けると思った。敵の動きを乱せると思った」

提督「それが予想以上に上手くいったようで、この鎮守府への集中攻撃を少し緩和することが出来た。それだけだよ」

満潮「確かに、司令官が海に出たおかげで敵の総攻撃は避けられたけど……。それにしたってやっぱり危険だったんじゃない?」

提督「そうだねぇ。……ひょっとすると僕も冷静じゃなかったのかもしれない」

提督「一応予め呼んでいた故大将の艦隊……武蔵たちが来るであろう方向に進んでいたから、その援軍と合流出来れば死なないで済むのかなーと思ってたんだ」

提督「道中でやられてた危険性は多いにあったけどね」

ベッドから身を起こす提督。

提督「電となら、どこまでも行ける気がしたんだよ。……やっぱりあの時は僕も冷静じゃなかったみたいだ」

満潮「ノロケてるの? はぁ……」

提督「あっ、いやそういうわけじゃないんだけどね」
329 :【ED_2】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/27(土) 22:40:48.61 ID:l7+8oZPc0
朝潮「司令官! 朝潮、お見舞いに上がりました!」

皐月「おぉー、司令官生きてるねぇ! 嬉しいなぁ」

提督「あぁ、ありがとう」

満潮「あら二人とも。電はまだなの?」

皐月「まだかかるみたいだよ……ぷぷっ」

満潮「何笑ってんのよ」

皐月「いや、なんでもない」

朝潮「それにしても……司令官、ご無事で何よりですっ!」

皐月「いやー皆心配したんだよー。特に電がさぁ……電が、ふふ」

朝潮「こら! 皐月……ふふっ」

提督「どうしたんだ二人とも」

皐月「いやなんでもないよ。……そういえば、司令官が出撃していた時の朝潮、凄かったんだよ?」

皐月「まるで司令官みたいに艦隊を上手く運用出来てたよ。陸奥が回復するまでは防戦しながらも敵艦隊を突き崩してさ」

皐月「ちょうど司令官が武蔵たちを連れてこっちに戻ってきたぐらいのタイミングで陸奥が回復したから、その後反撃に出てさ」

皐月「いやあ、あん時は爽快だったねぇ!」

提督「朝潮、ご苦労様だったね。他の皆もよくやってくれた」

朝潮「い、いえ……あの時は司令官に大任を任されて、少し舞い上がっていたというか……」

朝潮「結果として上手くいっただけで、あまり冷静でいられたかどうか……」

朝潮「それに、司令官を襲ったレ級だって逃してしまいましたし……まだまだです」

満潮「ふふっ」

朝潮「?」

満潮「“冷静じゃない”っていうのも、時には大事なのかもしれないわね。司令官」

満潮「貴方の言うように、人も艦娘も深海棲艦も、論理的な生き物じゃない」

満潮「でも、抱いた想いや願いが、運命を切り拓くこともあるのかもしれない……そう思ったのよ」

提督「そうかもしれないね」

満潮「貴方ならきっと、深海棲艦だっていつか……」

提督「あぁ。いつか、深海棲艦が……それが、人類の望む終末の具現だったとしても……」

提督「乗り越えてみせるさ」
330 :【ED_3】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/27(土) 22:56:14.24 ID:l7+8oZPc0
皐月「さて、そろそろかな……」

満潮「みたいね」

提督「?」

ガチャリと病室のドアが開き、ゾロゾロと人が入ってくる。

提督「うわっ、なんだこれは」

如月「なんだこれはとは失礼ね」

磯波「艦娘総出でお見舞いに……ということで」

夕張「私たちとはこれからの付き合いになるけど、よろしく頼むわね」

不知火「よろしくお願いします、新司令官。そして……“満潮”さん?」

満潮「あら? 面白い奴らが来たじゃない。よろしくね、“不知火”」

提督(知り合いなのかな……?)

摩耶「よ! 久しぶりだな」

川内「今の内にアピールして、たくさん夜戦で使ってもらえるようにしとかないと……」

那智「やれやれ……そっちの艦隊もこちらとさほど変わらんようだな。なぁ足柄?」

足柄「どうして皆私を猪武者みたいな扱いするのよ!? 私だってちゃんと考えながら戦ってるわ」

武蔵「しかしえらいごった煮だな……なんとも奇妙な組み合わせというか……ま、よろしく頼むぜ」

陸奥「元は別々の三つの鎮守府から艦娘が集まるとなればこうなるわよね……」

龍驤「さて、提督お待ちかね……大本命の登場やで!」

人の波をかき分けて、ウェディングドレス姿の電が提督の目の前に現れる。

提督「これは……一体……?」

如月「言うなれば……ケッコンカッコカリ、カリ?」

皐月「いやー、メイクの時は歌舞伎役者みたいになってたけどこれは悪くな……もがが」

朝潮「余計なこと言わないでください!」

電「二人とも! きっ、聞こえてるのですよ! ……恥ずかしいのです」

如月(自分で出来ると言ってたから任せてみたものの……)

磯波(夕張さんにメイク手伝ってもらって良かったですね)

電「あっ……あのう……司令官さん……どうですか? これ」

提督「綺麗だよ。綺麗だけど……どうしたの……?」

電「わっ、私も恥ずかしいからやめようって言ったんですけど! 言ったんですけど……うぅ」

満潮「祝福してあげるっていうんだから、素直に喜んだらどうなの?」

如月「顔膨らしちゃって」

満潮「膨らしてないってば!」
331 :【ED_4】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/27(土) 23:03:17.74 ID:l7+8oZPc0
皐月「まー、提督にとっても、皆にとっても、ある種節目になるしさ。これまでと、これからの」

皐月「二人の未来を! そして、これからの艦隊の明るい未来を祈って!」

提督「?」

電「?」

如月「……何してるの? 早くしなさいよ」

満潮「待ってるんだから、早く見せつけなさいよ」

提督「え? 何を」

如月「ウェディングドレスといったら誓いのキスに決まってるでしょうが」

朝潮「さぁ、司令官!」

提督「そんな、人前でなんて恥ずか」

チュッ

電「ふふ……この前のお返しです」

部屋に満ちる黄色い歓声。

皐月「いいねぇ……魅せるねぇ。さ! 二人の幸せな未来を祝福して、乾杯!」

那智「フフフ……良い肴だな。今夜ばかりは飲ませてもらおう」

夕張「え、えー!? 病院で飲酒はまずいんじゃないかしら」

龍驤「その点は問題あらへんで! この病院は今晩貸切や」

妙高「提督の快気祝いも兼ねてますからね。許可は取ってあります」

・・・・

提督「いやあ……大所帯になったねぇ……」

電「そうですねぇ」

提督「それにしても……」

電「?」

提督「前に、両腕が無いから君を抱き締められなくて残念だと言ったけど……」

提督「左腕はまだ残っていて良かったよ」

提督「こうして君と手を繋いでいられるからね」

提督「綺麗だよ、電」

電「あぅぅ……じゃあ、抱きしめる代わりに、キス……して欲しいのです」

提督「……。好きだよ、電」

唇を委ねる電に応える提督。

その情熱的な様に再び歓声が巻き起こる。

電「末永く……よろしくお願いします、司令官」





END
332 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/27(土) 23:20:35.57 ID:l7+8oZPc0
お疲れ様でした。後日談というかその後の顛末みたいなのも貼っておきます。

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提督:戦果を認められ、中将に昇進する。海軍内でも一躍エース的存在に。以後も数々の作戦を勝利へと導く。
故南条中佐・故藤原大将や三雲大差の艦隊の艦娘のほぼ全てを引き取り、大艦隊を担うようになる。
私生活に関してはほぼ電に頼りきりで、もはや電が居ないと生きていけないのではと艦娘達からは噂されている。

電:半ば提督の鎮守府公認の伴侶として認められるようになる。
だが、それも束の間の天下で、提督の才知や人柄に惹かれてアプローチしてくる新たに配属された艦娘に気が気でない様子。
現在はケッコンカッコカリのために練度を上げている(花嫁カッコカリ修行)。

皐月:これまで通り主要任務の最前線で活躍している。
また、作戦会議等に参加するなど、ブレーン的役割も果たすようになる。
提督をからかって遊ぶ時間が少し減ったのを残念に思っている。

磯波:前線での任務からは離れ、遠征任務や他の艦娘の整備、資源の管理などを担うようになる。
「提督のお茶汲み係になっちゃいましたね」と自嘲しているものの、その堅実な仕事ぶりは提督から評価されている。
提督の為に料理を作る役目は電に譲った……のだが二人とも忙しい時は彼女がその役を担うようだ。

如月:磯波同様主要な任務からは外れ、他の艦娘の補助的な立場で動き回ることが多くなった。
前線に出ない割にはなんだかんだ多くの艦娘と組んだりすることが為か、気がついたら様々な艦娘のことを把握している情報通のような立ち位置になっていた。
提督にも他の艦娘の様子をちょくちょく報告しているので、鎮守府のお局様的存在として他の艦娘からは恐れられている(当然本人はそれを不満に思っている)。

満潮:出撃の頻度は減ったが、主要な作戦には組み込まれるようだ。
艦隊に多くの艦娘が増えたことで、自分の居場所が無くなってしまうのではないかと危惧していたが案外そんなことはなかった。
不知火とは頻繁にキャットファイトを起こしていて表面的には険悪な関係に見えるが、互いに良きライバルだと認めている。

朝潮:皐月同様艦隊の頭脳として働いている。最近では、出撃には参加しないが作戦会議には参加するということも多いようだ。
最近では真面目すぎて堅物だった性格もじょじょに丸まって来て、人の話を適当に受け流したりするような高度なしたたかさを身につけた。
そして提督に甘えることも習得し始めた。月二回〜三回の頻度で提督にパフェを奢ってもらうのがささやかな彼女の楽しみである。
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なんだかんだ色々ありましたが完走出来ました。
安価やコンマに参加して下さった皆様方、このSSを読んでくださった皆様方に感謝の意を表したいと思います。
もちろん元ネタの艦隊これくしょんの運営やキャラそのものにもね。
楽しんでいただけたなら幸いです。

……この次やるかどうかは分かりませんが、やるとしたら告知します。
もうちょっと参加しやすく読みやすくな感じを心がけたいなあと思っています。
そもそも次をやるかどうか未定ですが……。>>1の暇度によりますが今んとこ微妙です。
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2014/12/31(水) 01:22:41.39 ID:AmckA6sT0
乙!
できればもう一周見てみたい、今度こそシリアス度低めのイチャイチャが見たい
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/01(木) 02:10:01.60 ID:3jViE4AkO
とりあえずシリアス判定を低くして、色々な能力を高くしないとな
335 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/08(木) 12:42:26.29 ID:eu6GtMjJO
お久しぶりです。明けました。
アニメが始まりこれから新規プレイヤーが増えるのかなーどうかなーって感じですね。

ぼちぼち第二部的なものをやろうかなと。
一応書いておきますが、第一部(これまでのお話)とは世界観的に一切関係ないです。
続編でもないしスターシステムとかでもないです。
首筋に星形のアザもないです。
基本的に設定とかキャラとか世界観とかは独立してます。

第一部とはあれこれシステムを変えてみたので、次のレスで詳細に説明いたします。
ついでに新規参入者向け(?)に引き継いだ要素についても要点だけ軽くおさらいします。
336 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/08(木) 12:43:27.54 ID:eu6GtMjJO
/* ルール説明 */
>>1が1レスずつ物語を投稿していきます。(名前欄にレス数のカウントが表記されます 例:1/100)
 レス数が100になったら物語はおしまいになります。また新たな設定とストーリーで100レス……ってのを>>1が飽きるまで続けていきます。
・物語が開始する前に、ヒロインとなる艦娘6人および提督のステータス、コメディ・シリアス判定を安価で決定します。



/* 経験値(EXP)システムの導入 */
これまでは艦娘との各エピソードの度に好感度が上昇していましたが、今回はそれを廃止して代わりに経験値というものを導入します。
といっても、呼称が変わっただけで中身は前回とほぼ同じです。

初めての方向けに要点だけ説明すると
・1レスごとに対象となる艦娘の経験値が上昇
・終盤で最も経験値の高かった艦娘とEDを迎えることになる
って感じです。

ただ、前回と違い上昇値や倍率が変動することはありません(詳しくは後述)。

(補足)
「好感度」という名前だとニアリーイコール提督への愛情値なわけですから、数値によってラブ度合を調整しなければならないのですよ。
各キャラの公平性を保つため敢えてメインヒロインを設けず進行させるため、終盤になれば皆満遍なくラブってきます。
恋愛シミュレーションゲーム的で面白いとは思うのですがゲームではなくただのテキストなんで最終的に解は一つしかないわけでー……。
分岐ルート差分とか作ればいいんだけど>>1が死んでしまうっていうかもうそれ一からギャルゲ作った方が早いという世界なのでー……。
そんな理由で「経験値」という呼称に変更しました。
経験値であって好感度ではないので、経験値が上がった所でさほどデレたりしないどころか最後までフラグさえ立たないかもしれません。
逆に経験値が低くても最初からデレデレだったりすることもあるかもしれません。
経験値が上がったところでメラゾーマが使えるようになったりすることは(多分)無いので悪しからず。
337 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/08(木) 13:03:13.31 ID:PV/Sdk+eO
/* スレッドの進行の仕方の大幅な変更 */
ここまでの話だと前回の仕組みをマイナーチェンジしたみたいな感じなのねと思うかもしれませんが少しジョーカーも切ってみたり。

これまではコンマによって追加でイベントが発生・安価で展開が変動、程度で基本的には>>1が適当に進行させていきました。
どの艦娘が登場してどんなエピソードになるか・どれぐらいレス数を割くかは>>1の独断で決めていきました……が。
今回はだいぶ仕様が変わります。
その仕様とは果たして!?
……あえてここでは伏せておきます。
キャラクターが決定してから発表といつことでここは一つ。

勿体ぶりたいわけじゃなく、ややこしいからです。
ややこしいけど面白くなるとは思います、実際にやってみなきゃ分からないところだけど。
前回よりTRPGっぽい感じになるかもです。
そもそも>>1はTRPGやったことないしこれをTRPGと言い張ろうものなら方々から十字砲火喰らいそうですが。
あくまで少し「っぽく」なるだけで実際には吟遊GMが全てを支配してるセッションみたいなぐらいのイメージだと吉。



そんなわけでキャラを安価で決めるところから始まるんだがしばしお待ちを。
昼の休憩が終わってしまったので……。
338 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/08(木) 13:05:20.20 ID:PV/Sdk+eO
っけね! 書いたつもりが忘れてた。
/* 各パラメータの見直し */
提督のステータスなどを最初にコンマで決定して、以後ちびちび上昇したりしなかったりがありましたが、今回はステータス値の変動は一切ありません。
初期値をコンマで決めてそれ以降はそのままです。
パラメータ変動が無い代わりに、ステータスはほとんどお話に影響しません。
シリアス・コメディ判定も同様で、これらのパラメータはわりと意味合いが軽くなりました。
あくまで主人公やその周りとの関係、世界観の初期設定を決めるためのダイスロールのようなものだと思ってもらえれば。
というわけで、これらについては中身自体は前回同様です。
……初めましての人やよく分からないという人は独特なルールによってお話の初期設定が決定される程度の認識で構いません。
(今回はさほど重要な数値として扱うつもりがないので特に説明しませんでしたが、その『独特なルール』ってのを知りてえんだって人は>>2,>>3を参照されたし)
339 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/08(木) 18:57:34.22 ID:ts4/fMgP0
>ただ、前回と違い上昇値や倍率が変動することはありません(詳しくは後述)。
後述してないじゃん!
ああまあ詳しい説明はキャラが決まってからってことで。
正月気分が抜けてなくてダメね。
とまあそんなことは置いといてキャラを決定するための安価をば。

/* 初期設定安価 */
一人目 >>+1(コンマで提督のステータス「勇気」が決定)
二人目 >>+2(コンマで提督のステータス「知性」が決定)
三人目 >>+3(コンマで提督のステータス「魅力」が決定)
四人目 >>+4(コンマで提督のステータス「仁徳」が決定)
五人目 >>+5(コンマで提督のステータス「幸運」が決定)
六人目 >>+6(コンマで「コメディ・シリアス判定」を決定)
※無効レスや被りが起こった場合は>>+1シフト

アレコレ小難しいこと書いたけれど物語に登場させたい艦娘の名前書けばいいだけです。
特に無ければ自分の好きな艦娘とかイチオシな艦娘の名前を書けば良いんじゃないかなイーノック。
あとは>>1が因果律と相談しながら物語を考えていきます。
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/08(木) 20:42:09.64 ID:y6FSHyYOO
雪風
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/01/08(木) 22:02:38.92 ID:lIQhdH+Ao
翔鶴
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/08(木) 23:32:08.04 ID:8S9pi2wB0
金剛
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/08(木) 23:54:38.21 ID:8S9pi2wB0
赤城 連続だめなら飛ばしてください
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/09(金) 00:39:36.11 ID:CosqNNPPo
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/09(金) 18:49:05.95 ID:hDI60x8Ro
足柄
346 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/01/09(金) 19:36:39.42 ID:kTJW9N7w0
さてこれで決定と言いたいところですが……同一IDからの連投は予想していませんでしたね。
これを許容してしまうと極論やろうと思えば何でも好き勝手やれてしまうので本来ならダメと言っているところですが……。
注意書きをしていなかった私が悪いですね。それに積極的にルールの穴を突いていこうという姿勢は評価したいです。

というわけで、ここは一つ賭けをしてみましょう。
最後についた>>345から3時間41分9秒(2015/01/08(木) 22時30分14秒まで)にキャラ決定のレスが来なければ>>343の通り。
しかしレスが付いた場合はそのキャラに決定します。

ちなみにこの3時間41分9秒という数値は>>340から>>345までに経過した時間÷6(小数点切り捨て)です。
次にレスが付くまでにかかるであろう平均時間と言うには乱暴すぎますがまぁとにかくそれを過ぎれば勝ちです。
よく分かんない! って人は自分の好きな艦娘の名前でも書けばいいと思うよ。

////チラシの裏////
何? ÷6するなら>>340から>>345までに経過した時間じゃなくて>>339から>>345までの時間だろうって?
計算し直すのめんどくさいから許して。
347 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/01/09(金) 19:50:00.66 ID:kTJW9N7w0
2015/01/09(金) 22時30分14秒、ね。ミスってはいけない部分をミスってしまった……。
あと、コンマの値はレスが付いたらそのレスの値を継承(「コメディ・シリアス判定」の値が決定。>>344より「仁徳」の値が11……って感じでシフト)、付かなかった場合は>>343(「仁徳」の値21に決定。以下レス通り)って感じです。
分かり辛いかもしれないけど要は結果が出たら>>1がまとめるだけだから理解しなくてもいいのよ。
というか暇つぶしのための娯楽程度のSSごときに脳のリソースは割かないのが吉ですぞ。
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/09(金) 20:01:51.80 ID:gqIKa7j4o
皐月
349 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/09(金) 20:38:18.04 ID:kTJW9N7w0
出揃ったようですね。

ヒロイン
雪風・翔鶴・金剛・響・足柄・皐月

提督ステータス
勇気:64(強気)
知性:92(神算鬼謀)
魅力:04(無)
仁徳:21(嫌われ者)
幸運:95(豪運)

コメディ・シリアス判定:80(ベリーハード)



前述の通り今回ステータスとかはあんまり重要じゃないよとは書いたから別にどうとでもなるけどなんだこいつは……。
本編の投下は後日ですが、次のレスで>>337ではぐらかした内容について説明します。
350 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/09(金) 21:04:00.68 ID:kTJW9N7w0
/* スレッドの進行 */
>>337ではぐらかした内容について説明!

基本的に5レスごとにシナリオが進行していきます。これを1フェイズとします。
奇数回のフェイズを『Phase A』、
偶数回のフェイズを『Phase B』とします。

『Phase A』ではレス安価で指名された艦娘が1レスにつき1人登場します。
登場した艦娘の経験値は+1上昇します。
また、安価レスのコンマ値がゾロ目だった場合はエクストライベントが発生します。
『エクストライベント』が発生すると、安価で指定された艦娘との話が1レス分追加で投下されます。
エクストライベントは100レスのカウント対象とはなりませんが、エクストライベントでも経験値が+1上昇します。

『Phase B』では付いたレスのコンマ値によって登場する艦娘が決定します。
Phase Bでは1レスにつき好感度が+2上昇しますが、エクストライベントは発生しません。
また、各レスにシチュエーションや起こる出来事を書いておくと
・Phase Aならエクストライベントが発生した場合
・Phase BならIDに3つ以上数字が入っていた場合
書いたレスの内容が概ね実現します。
ただしこれは任意なので無理に書く必要はありません。

Phase A→Phase B→Phase A→…とフェイズが進行していきます。
つまり1/100レス〜5/100レスがPhase Aで6/100〜10/100レスがPhase Bで…という感じです。
進行の例を次のレスに書いておくので、そちらを参考にすると分かりやすいかもしれません。

(補足)
各レスに出来事を書いておくと条件を満たしていた場合はその内容が実現すると書きましたが、以下の場合は申し訳ありませんがスルーします。
>>1の技術的、能力的に話に組み込むのが極めて困難な内容
>>1の心情的にどうしても描写することが出来ない内容
よほどのことがない限りスルーはしないと思います。
特に後者の理由でスルーはまず無いと思います(>>1的にはエログロ程度ならまあ別に・・・って感じですし)。
あくまであまりにも話の流れをぶっ壊しにかかるようならゴメンナサイしますっていう程度の予防線なんでさほど気にする必要はありません。
351 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/09(金) 21:06:15.85 ID:kTJW9N7w0
つまりどういうことだってばよな感じですがやってみれば分かると思います。ぶっちゃけ>>1もやってみないとよくわかんないし(オイ
とりあえず脳内イメージを皆さんと共有すべくサンプルのようなものを書いてみます。
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351 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/09(金) 23:01:01.01 ID:SureNusio
『Phase A』【1-5/100】
レス安価で登場する艦娘を決定します。
登場させたい艦娘の名前を1人分記名して下さい。
(雪風・翔鶴・金剛・響・足柄・皐月の中から一人)
>>+1-5

352 : VIPにかわりまして(ry [sage]:2015/01/09(金) 23:11:01.33 ID:1Morning1
雪風
↑コンマ値がゾロ目なのでエクストライベントが発生

353 : ry [sage]:2015/01/09(金) 23:21:01.01 ID:February2
翔鶴

354 : 略:2015/01/09(金) 23:31:01.01 ID:nanoDeath
金剛
提督がデートに誘う
↑コンマ値がゾロ目で無いので、出来事やシチュエーションを書いても実現せず

355 : 略:2015/01/09(金) 23:41:01.01 ID:High/Tide
足柄
大量のカツを揚げ提督に食べさせる
↑コンマ阿多いがゾロ目なのでエクストライベントが発生
 更に出来事を書いていたためその内容が実現する

356 : 略:2015/01/09(金) 23:51:01.01 ID:IsonoNami
皐月

357レス以降
・雪風のエピソードで2レス(通常+エクストライベントで2レス分)
・翔鶴のエピソードで1レス
・金剛のエピソードで1レス
・足柄のエピソードで2レス(通常+エクストライベントで2レス分。そして提督は死ぬほどカツを食べることになる)
・皐月のエピソードで1レス
といった感じで進行し『Phase B』へ。

363 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/10(土) 23:01:01.01 ID:SureNusio
『Phase B』【6-10/100】
レスのコンマ値で登場する艦娘を決定します。
00:>>1が独断で決定
01〜16:雪風
17〜33:翔鶴
34〜50:金剛
51〜65:響
66〜82:足柄
83〜99:皐月
>>+1-5

364 : 略:2015/01/10(土) 23:11:01.12 ID:BIG7isBIG
はい
↑コンマ値が01〜16の範囲内なので雪風に決定

365 : 略:2015/01/10(土) 23:21:01.86 ID:FlatSanta
はい
↑コンマ値が83〜99の範囲内なので皐月に決定

366 : 略:2015/01/10(土) 23:31:01.55 ID:Ochido000
提督に波紋の呼吸法を教える
↑コンマ値が51〜65の範囲内なので響に決定
 さらにIDに数字が3つ以上入っていたため書いた内容が実現する
 (ただし、「○○が」というキャラ名の指定をしてもその部分は無効になるので注意)

367 : 略:2015/01/10(土) 23:41:01.76 ID:tansu+88k
提督に告白する
↑コンマの値より足柄に決定
 ただしIDに数字が3つ以上入っていないため書いた内容は無視される

368 : 略:2015/01/10(土) 23:51:01.86 ID:ARAaraARA
はい
↑コンマの値より皐月に決定

359レス以降
・雪風のエピソードで1レス
・皐月のエピソードで2レス(>>365>>368
・響のエピソードで1レス(『Phase B』ではエクストライベントは発生しない。ただし提督は「仙道を学ばなければいかん。さもないと死ぬッ」)
・足柄のエピソードで1レス
と5レス進み再び『Phase A』へ……。
352 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/09(金) 21:13:46.69 ID:kTJW9N7w0
……ダメだよく分からんな。
っていうか波紋ってなんだよって感じですがサンプルなのであまり深く突っ込んではいけない。

まあ、安価を出したら『Phase A』では登場させたい艦娘の名前書いて、
『Phase B』では特に何も書かなくてもいいって感じですハイ。
あとは気が向いたらなんかシチュエーションとか書いてみるとかそんな感じ。
基本的に同一IDからの連投は無しでよろしくです。
1フェイズにつき1レスってな感じでお願い致します。

んー……ひとまずやってみましょうか。
そんなわけでッ!

----------------------------------------------------------------------

『Phase A』【1-5/100】
レス安価で登場する艦娘を決定します。
登場させたい艦娘の名前を1人分記名して下さい。
(雪風・翔鶴・金剛・響・足柄・皐月の中から一人)
>>+1-5
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/09(金) 21:15:03.58 ID:hDI60x8Ro
足柄
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/10(土) 03:23:23.61 ID:PeHUQbR5o
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/10(土) 18:58:40.72 ID:EiHO0VzAO
雪風
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/10(土) 19:56:54.90 ID:NQBvPhqOo
足柄
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/10(土) 19:58:20.74 ID:xmqHuIsHO
金剛
358 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/01/10(土) 20:50:55.20 ID:BndvBu5H0
と、そんなわけで
・足柄2レス/響1レス/雪風1レス/金剛1レス
で『Phase A』が進行していきます。
基本的にはレスの順番通りに進行しますがたまに前後するかもしれません。
……とは言っても、現状何も書けてないので投下はまだ先になります。



いやあそれにしても前回と比べると大分メジャーなキャラが多いですね。
もっと奇を衒ったのが来るだろうと身構えていたので意外でした。
なかなか面白くなりそうなチョイスで良いと思います。まぁ私が面白くせにゃならんのですけれども……。
投下はちょっと遅くなるかもしれませんがご容赦ください。
359 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/01/17(土) 00:32:38.12 ID:w9SzSr740
さて特に告知していませんがぼちぼちやっていこうかなと。

好感度という数値は廃止したけど前回の名残ということで初期ステータスによって各艦娘の初期デレ度が微妙に左右されたり。
能力値関連の話なんで、例によって今回ではあまり重要に扱いませんが……。

【各ヒロインの能力値による好感度補正】
雪風:魅力(マイナス補正)
翔鶴:仁徳(補正なし)
金剛:魅力(マイナス補正)
響 :知性(大幅プラス補正)
足柄:勇気(微プラス補正)
皐月:勇気(微プラス補正)

好感度の初期値というよりは相性度ぐらいの感じのニュアンスになりますかね。
ただ、今回は意図的に上記を無視してる感じのキャラがわりと居るんであんまり信用できない感じです。



それでは投下していきます〜。
360 :【1/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/17(土) 00:37:22.28 ID:w9SzSr740
執務室。星一つ出ていない天心を睨む、仮面を被った男。

提督「さてここからが勝負どころだな……」

バァン、と打撃音。ドアが蹴り開けられる。

足柄「大淀を秘書艦から外すって、どういうことですか!? 彼女はこの鎮守府で歴代の提督の秘書艦を務めてきたんですよ!」

提督「そう。死者が立て続けに三人も出ているこの鎮守府で、な」

足柄「彼女が信用出来ないと? それにしたって……着任して一日も経たない間に、だなんておかしいでしょう!」

提督「おかしいかおかしくないかは俺が決めることだ。提督の身近に居ながら三人も見殺しにしているような艦娘を傍に置いておきたくはないな」

足柄「秘書艦に適切か否かを判断するのは、貴方がここの執務に慣れてからでも遅くないでしょう。彼女以外の人間にこの鎮守府の秘書艦が務まるとは思いませんが!」

提督「秘書艦は……要らん。必要ない」

一瞬鳩が豆鉄砲を食らったような表情をした後、わなわなと震え出す足柄。

足柄「そんな変な見た目をしている時点で怪しい奴だとは思ってたけれど……ここまで訳のわからないことを言う人だとは思わなかったわ」

足柄「第一、何で仮面なんかで顔を隠してるのよ! 外しなさい! 外せ!」

提督の仮面を外そうとする足柄。その手をひょいひょいとかわし軽くあしらう提督。

足柄「もうアッタマ来たわ!」

提督に飛びかかる足柄。しかし提督にさっと身を反らされ転倒してしまう。

提督「おい、大丈夫か」

近づいてきた提督の足元に這い寄る足柄。脛に思いっ切り噛みつく。

提督「」プッツーン

噛まれている足を振りほどき、その勢いで足柄の顔面に蹴りを入れる提督。きゃん、と犬の鳴き声のような悲鳴をあげる足柄。

足柄「やった……わね……!」

態勢を持ち直しサマーソルトキックを放つ足柄。間一髪でかわす提督。

後方へ跳躍し距離を取る提督。両者睨み合ったままでいる。

足柄「……貴方、言ったわよね。秘書艦が要らないって」 提督に人差し指を突き立てながら言い放つ

提督「言った。秘書艦など必要ない」

足柄「正気なの!? 今まで秘書艦なしで執務をする提督なんて見た事も聞いた事も無いわ!」

足柄「それで貴方は、本当に提督としての責任を果たせるつもりなのかしら!?」

提督「見くびらないでもらおうか! 当然だ。提督としての最高の戦略を! 指揮を! 兵站を! 執務を! 完璧にこなしてみせるッ!」

足柄(こいつ……。なんて堂々と大それた言い切るの……)

足柄「……言ったわね! なら、実際にやってみせてもらうわ! 少しでも失敗しようものなら……覚悟してもらうわよ!」

提督「良いだろう。俺がこの鎮守府の提督として相応しくない失策をした場合はこの地位を降りてやろう。何なら誓約書を書いてやってもいいぞ」

スラスラと紙にサインし、足柄に誓約書を渡す提督。

誓約書の入った封筒を持ったまま、煮え切らない様子で部屋を出て行く足柄。

提督「やれやれ……ああいう手合いの相手は疲れるな。追い出すのに20分もかかってしまったか」

提督(一応殺気は感じなかったが、それでもあのままやり合っていたら最悪死んでいたかもしれん)

提督(……さすがに艦娘が相手ではな。適当な所で切り抜けることが出来て助かった)

提督「さて、見得を切った手前だ。さっとこなしてやるか」

・・・・

足柄「何よ……なんなのよアイツ! 屈辱だわ」

足柄「どうしてあんなに余裕綽々なのよ! うぅ〜……腹が立つ!」ガルル
361 :【2/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/17(土) 00:39:16.48 ID:w9SzSr740
提督(今のところはあの足柄に付け入る隙を与えないほど完璧に諸執務をこなせているが……これぐらいは出来て当然)

提督(だが日々のタスク達成度が100%なだけでは到底足りない。この先の戦略展開のためににもまずは地盤を固めることが肝要)

提督(ここは碌でもない噂に尽きない鎮守府だ。火のないところに煙は立たぬというしな……内情を調べてみる必要がありそうだ)

提督(しかし俺が直接動き回るのは危険過ぎるな。誰か一人でも信頼出来るような奴が居ると助かるんだが……)

鎮守府所属の艦の情報が書かれた書類に目を通す提督。

提督「信頼出来る、か。ふむ……」

・・・・

響「響だよ。司令官、どうかしたかい?」

提督「響。いや、Верный……と言うべきか」

提督「お前に任せたい重要な任務がある」

響「私の最後の名を知っているとは、物知りだね。その名前で呼ばれるのは数百年振りだよ」

提督(軍艦であった頃、ということか?)

響「内容を聞く前に、一つ質問がしたい。どうして顔も合わせた事のない私にそんな重要な任務を依頼するのかな?」

提督「理由は3つ。純粋に練度が高いこと・他所の泊地から配属されて日も浅く、私を殺そうとする可能性は低いと考えられること」

提督「そして……当時の言葉でВерныйは“信頼できる”、という意味だったか。遠い昔の国の言葉だから合っているかどうか不安なのだが」

響「合っているよ、司令官」

提督「自分の名に背くような真似はすまい。……そうだろう、ヴェールヌイ」

響「なるほど察しがついた。しかし狡い御仁だね。そう言われたら従うほかないよ」

響「私も、この鎮守府で起こった事件については聞いている。一時私もここに在籍していたことがあるんだが、一体何が変わってしまったのか……」

響「私が司令官の盾になるよ。この名に懸けて、ね」

提督「話が早いな。それからもう一つ。いや、どちらかといえばこちらが任務の本題だ」

提督「密偵を頼みたい。内情を知らなければ」

響「ふむ……私はさしずめ司令官の秘密警察というわけか」

提督「物騒な物言いだな。だが、有り体に言えばそうだ」

提督「一週間後の同じ時間にまた会おう。信頼しているぞ、ヴェールヌイ」

響「до свидания」

一礼して退室する響。

提督(ダスビダーニャ……。また会いましょう、か)

提督(奴は使えるな……)

・・・・

響(面妖な提督だと思っていたが……話してみるとなかなかどうして知的じゃないか。あれなら演習や海域攻略での冴えた指揮にも納得がいく)

響(それにしても……なぜ彼は仮面を被っているんだろうか)

響(そして、どうして執務室から出て来ないのだろうか。私の記憶が正しければ、彼は着任してからまだ一度も部屋の外を出ていないはず)

響(一体どうやって生活しているんだ……? 食事は? 風呂は? 睡眠は?)

響(謎は深まるばかりだ……)
362 :【3/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/17(土) 00:45:39.14 ID:w9SzSr740
一週間後、響は再び執務室を訪れた。

提督「ヴェールヌイ。人を連れて来いと言った覚えはないが」

響「連れてくるなと言われた覚えも無いからね」

提督「まあいい。お前が連れてきた人材なら、ひとまずは安心出来るだろう」

響(司令官は本当に私のことを信頼しているんだな)

提督「おい、何を固まっている」

雪風「ア……イエ……か、陽炎型駆逐艦8番艦、雪風です! どうぞ、宜しくお願い致しますっ!」

緊張しているのか声が上擦っている。

提督「そんなに大声で言わずとも分かっている。どうしたんだ」 少し不機嫌そうな声色

響「司令官、怖がらせないであげてくれないか。彼女はあがり症なんだ」

提督「やれやれ、妙なのを連れ込んできてくれたな……。心配するな、取って食いはせん」

雪風「アッ、ハイ……いえすみません。すごく怖い方だと聞いていたものでして……」

提督「せっかくなのでその噂、話してみてくれ。なに興味本位だ」

雪風「え、えぇー……。執務室に艦娘を監禁して暴力を振るうのが趣味だって言われていたり、実は深海棲艦と通じているスパイだって言われてたり……」

響「ふふふ。そうそう、全然執務室から出て来ないから実はロボットか何かじゃないかとも言われてるね」

渋い顔をする提督。

提督「まぁ、そんなことはどうでもいい。報告を」

雪風「あっ、はい! んしょっと……」 鞄から小型のノートパソコンを取り出し、映像を再生する

提督(なぜWacBookにMindows OSを導入しているのか気になる所だが黙っておこう)

雪風「あの……これ、です」 鎮守府の地図を取り出す

提督「ふむ。鎮守府敷地内の地下通路に、なぜか地図上に存在しない部屋がある……ということか」

雪風「はい。そっ、その! これだけならしれえに報告するほどでは無いのかもしれませんがッ! なんだか妙な予感がしたので……」

提督「……確かに気になるな。ヴェールヌイ、部屋の前に小型の監視カメラを設置してきてもらえるか。部屋の中が覗える位置が望ましい」

響「そう言われるだろうと思って既にやっておいたんだ。雪風、例のファイルを」

雪風「はい。部屋に入っていく艦娘を捉えた映像です」

・・・・

動画の内容は、地下通路内の一室に艦隊所属の軽巡洋艦龍田が部屋に入り、再び部屋の外に出る……というだけのシンプルなものだった。だが……

提督「部屋の中に緑色のものが大量にあったのが一瞬見えたな……。植物のようだが」

提督「人目につかない場所の、厳重に鍵がかけられた密室で育てる植物といえば……まぁ、そうなるな」

響「彼女を尋問するかい? 看過するわけにはいかないだろう」

提督「いや、共犯が居て何らかの方法でバレたことを伝達。共犯者は部屋の大麻を全て処分し別の植物に入れ替えておく……なんてことをする場合も考えられる」

提督「そして逆に提督に対し不当な拘束を受けたと証拠つきで言いふらして回り最終的に失脚まで追い込む。私が同じ立場ならそれくらいのことをする」

雪風(ひねくれ過ぎなのでは……)

雪風「もう少し裏を取ってから……ということでしょうか」

提督「関係者を全て洗い出してからだな、表向きに対処するのは」

提督「まずは、この龍田という艦娘の身辺調査を依頼したい」

提督(麻薬取引か……厄介なことになってきたな)
363 :【4/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/17(土) 00:51:31.57 ID:w9SzSr740
鎮守府内のとある会議室にて。

霞「ではヴェアヴォルフ第48回定例会……やるわよ」

――“ヴェアヴォルフ”。
この鎮守府では、第一艦隊から第四艦隊までが正式な艦隊ということになっているが、それ以外にもユニット(小隊)が組まれていて、時には主力艦隊を差し置いて出撃命令を受けることがある。
“ヴェアヴォルフ”もそのユニットの一つ。深海棲艦の支配海域へ少数で侵攻しゲリラ戦法的な電撃戦を行うのが主たる活動内容で、足柄・大淀・霞・清霜の4名で構成されている。

霞「いつまでヘコたれてんのよ! 」

大淀「ううっ……だってぇ〜……やっぱりショックですよぉ……。そりゃあ私にも責任の一端はありますけど……」

足柄「あの提督が悪いのよ! そうに決まってる!」

霞「過ぎたことを! グダグダと!」 両手で大淀と足柄にチョップをする

霞「いい? その件については前の会議で言った通りよ。確かに大淀の件は残念だけど、あの提督は実際に秘書艦が居なくても何も問題なく執務をこなせてる」

霞「指揮といい先見性といい、人間性以外に非の打ち所がないぐらい完璧だわ」

清霜「あの霞にここまで言わしめるなんて凄いねぇ。……かえって心配になるかも」

霞「アンタ人のことをなんだと思ってるのよ」

足柄「鬼教官」

大淀「というか鬼そのものなのでは……」

霞、両名に無言でチョップを放つ。

霞「……とにかく、この件に関してはこれ以上蒸し返さない。それより考えなきゃならないのは今後のことよ」

霞「ヴェアヴォルフの地位は以前と比べてかなり低下しているわ。これまでのように主力艦隊と同等の扱いを受けることはまず無いでしょうね」

大淀「そういえば最近、利根さんや熊野さんに避けられているような気がします……」

足柄「チッ、ドラム缶運びが偉そうに……!」

大規模な組織の中には、多かれ少なかれ階級や序列が存在する。それはこの鎮守府の中でも例外ではない。
武勲艦や主要作戦に参加した艦はその分手厚く補助を受け、鎮守府内での影響力も強めていく。
艦娘の世界は成果主義だ。古株だろうと結果を出せなくなれば容赦なく冷遇を受けるが、新参であっても作戦に貢献出来れば厚遇される。

霞「大淀が秘書艦を降ろされたことにより他の艦隊やユニットからの評価は低下。おまけにどこぞの馬鹿が提督に噛みついたせいで重要任務からも尽く解任」

足柄「馬鹿ってなによ! ……ただ、厳しい状況なのは否定出来ないわね」

清霜「全然任務が来ないのが致命的だよねぇー……暇だなー」

艦娘たちは提督から与えられた出撃命令などの任務を達成することで利益を得ている。
ヴェアヴォルフへの任務が激減したのは、大淀の失脚や足柄の行動だけが原因ではない。
ヴェアヴォルフは、『数撃てば当たる』を地で行く集団だった。
どれだけ面倒な作戦だろうが危険な作戦だろうが片っ端から出撃していき、失敗してもそれを取り返すほどの出撃を繰り返して地位を得てきた組織だった。
ところで、他の艦隊から任務を受託することは各鎮守府では日常的に行われていることである。これを任務ロンダリングと言う。
ヴェアヴォルフは他のユニットから、時には主力艦隊からも任務ロンダリングを受けて多くの利益を得ていた。
だが、この任務ロンダリングによって艦娘が艦娘を雇うという状態を危険視していた提督は、着任して早々に対策を打った。
個々の艦娘の能力および各ユニットや主力艦隊の実力を十分に把握し、その上で過不足ない任務を配分するようにしたのである。
この改革により各組織への負担が大幅に減ったため多くの艦娘たちは歓喜した。
その一方で、過剰に出される任務を肩代わりすることでより多くの利益を得る、ヴェアヴォルフのような者たちは割を食ったということである。
何気なく発した清霜の一言は、その事実を他の三名に気づかせるのに十分であった。

霞「……これまでのようなやり方だと、やっていけそうにないわね」

大淀「地道に任務をこなして、提督の信頼を得るところから……でしょうか。ハァ……」

清霜「幸い時間だけはたくさんあるし、今後についてじっくり考えてみたらどう? 司令官に認めてもらう方法をさ」

足柄「…………。私は反対よ! そんなちまっこいことやってられないわ!」 衝動的に立ち上がる

霞「じゃあどうするってのよ!? 何か案でもあるの?」

足柄「…………あ、あるわよ! あるわ! 次の会議までに良い報告を持ってきてあげるんだから! 期待して待ってるのね!!」

・・・・

足柄(あの提督の犬になるだなんて、絶対にゴメンだわ!)

足柄(霞がああ言うぐらいだから、頭の勝負で勝てる相手じゃなさそうだけど……)

足柄(でも……納得行かないわ。絶対出し抜いてやるんだから! ギャフンと言わせてやる!)
364 :【5/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/17(土) 00:54:43.94 ID:w9SzSr740
金剛と比叡が自室で何やら話し合っている。二人は主力第一艦隊所属の艦娘で、この鎮守府の中ではいわゆるエースだ。

金剛「ひええええええええええ」

比叡「何ですかお姉さま」 少し怪訝そうに

金剛「あの提督冷たすぎデース! 栄えある第一艦隊旗艦に対してあの態度はなんなんですカー!」

比叡「うーん、文字通りの鉄仮面ですからねぇ……。何かあったんですか?」

・・・・

金剛「ヘーイ! 提督ゥ! お話に来たネー!」

提督「執務室への不要な立ち入りは禁止したはずだ。処罰されたいのか?」

金剛「Oh……これは手厳しいネー! でも、そんなに根を詰めていてはダメですヨ? ワタシと一緒にTea Timeなんて」 座っている提督の隣に立ち、顔を近づける金剛

提督「よほど第一艦隊から異動されたいように見える」 隣の金剛に目もくれず淡々と書類仕事を処理していく提督

金剛「こっ、これはっ! スミマセン! 失礼しまシタ!」

提督「それから言っておく。俺はお前のように媚び諂う人間が大嫌いだ」 そそくさと部屋を出る金剛に追い打ちを言い浴びせる提督

・・・・

金剛「ということがあったんデース。取り付く島もないデース……」

比叡「まぁ〜あの提督ネクラそうですからねぇ。あんな提督は忘れて、たまには姉妹でティータイムなんてどうでしょうか。何なら榛名や霧島も呼んで……」

金剛「比叡? 人から愛されるにはまず自分からデース! 提督のことをそんな風に言ってはいけまセン」

金剛「それに! 榛名や霧島は信用ならないデース! 腹の中ではワタシの座を狙ってるに違いないデース!」

比叡(お姉さま……提督への愛はあれど、私たち姉妹への愛は欠片もないということですね……)

比叡(いや、お姉さまは提督に対しても愛情など抱いていない。ただ提督を利用して自分が良い思いをしたいというだけ……)

比叡(私はお姉さまの向上心や前向きさに惹かれていたのに、どうしてこうなってしまったのだろう。今や利害で動いているだけだ……己の野心のままに)

金剛「比叡? 比叡? 何ボーッとしてるデース」

金剛「紅茶が冷めますよ? 今の私には、比叡だけが信頼出来る友人なんですから……しっかりしてクダサーイ」

金剛「話し相手が居ないのは退屈ですからネー。ちゃんとResponseしてよネ?」

比叡「あっ、ハイ! すみません、お姉さま……」

・・・・

金剛「どうやったらあの提督のハートを射止められますかネー。このままだと榛名や霧島、他の艦娘に旗艦の地位を取られてしまいそうデース……」

比叡「お姉さま。寵を得ようとするよりも、まずは練度を上げられてはいかがかと。あの提督は実利主義です。戦果を上げれば評価してもらえるかと」

金剛「そんなまだるっこしいことやってもCost Performanceが悪すぎデース! そもそも練度を上げれば敵に勝てるなんて事自体幻想デース。今ドキの考え方じゃないデース」

金剛「もちろん最低限の練度は必要デスけど、ある一定のラインに達したら後はドングリの背比べデース! 戦果を上げるのに重要なのは第一にCondition。次に装備デース!」

金剛「詰まる所Quality of Lifeの向上が戦果へと繋がるのデース! 装備の強化も、モチベーションの維持にも、おカネは必要ですからね」

金剛「あとは場の空気を読んで上手くMVPを掻っ攫うSenseと敵から攻撃を受けない運デース」

金剛「比叡は戦い方がちょっと愚直すぎマース! 無傷の敵と殴り合うよりも、空母連中が傷めつけた相手や敵の親玉を叩く方がスマートデース」

比叡「すみません、お姉さま……」

金剛「戦果なんて上げて当然デース♪ でも、それだけじゃ足りないのデース……」

金剛「戦いでの報酬は安定していまセン。盤石な地位によって得られる不動の恩恵こそワタシの心に安寧をもたらすのデース」

金剛「そのためのBurning Loveデース! 提督のハートを掴むのは! このワタシデース! 必ずゲットデース! 絶対ゲットデース!」

比叡「でも……」

金剛「デモもシカシもカカシも無いデース! 良いですか比叡? 比叡は提督にツッケンドンすぎデース」

金剛「提督に愛想を尽かされたら事実上の失脚デース! 提督に愛されるのも、艦娘の戦略のうち、ですヨ?」

比叡「…………」
365 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/17(土) 00:59:35.23 ID:w9SzSr740
----------------------------------------------------------------------
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~5/100)
・足柄の経験値+2(現在値2)
・響の経験値+1(現在値1)
・雪風の経験値+1(現在値1)
・金剛の経験値+1(現在値1)
----------------------------------------------------------------------

////チラシの裏////
んなわけでここまでデース! 初っ端からやり過ぎた感が否めまセーン!
大丈夫なのかこの鎮守府。もうどこから突っ込んでいいのやら。

前回がピュアボーイミーツピュアガールな感じだった反動もあるけどこれはダーティすぎるな……。
でもシリアスにやるつもりでは書いてなくて、どちらかといえばドタバタコメディみたいな感じを考えてます。
というか、もう現時点でそこはかとなくネタ臭が漂い始めてませんかね。リアル系の皮を被ったスーパー系みたいな。
いやまぁしっとりした感じの……たとえば情死とかもやりたいなぁとか考えてたけどただでさえ少ない読み手が更に減りそうなので……。

今回は前回と違ってあんまりイチャイチャさせることを考えていないので、登場キャラが皆それなりにロックな感じです。いやパンク? ハードコア?
わりと>>1が書きたいように書いてる感じなので結構楽しいです、独り善がりにならないように気をつけたいところですが。
ただ、金剛はやり過ぎたかなと自分でも思います。
キャラ崩壊……かなぁ。だよねぇ……。こういう解釈も面白いかなーと思って書いてるけどひょっとしたら俗に言う作者はウケると思ったシリーズ的アレかも。
まあまだ始まったばかりですし、そこいら辺も含めて(?)今後に期待ということで。
366 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/17(土) 01:00:37.81 ID:w9SzSr740
さて次のフェイズへ移行いたします。
よくわからない方は>>351参照。

コンマ値で決定するだけなんで、ほげとかぴよとかそんな感じの適当なレスをするだけという簡単なお仕事です。
なんだったら適当にキーボードを叩きまくってストレス解消の場として使ってもらっても構いません。
http://ikura.2ch.net/test/read.cgi/hikky/1285389039/
あるいは何かシチュエーションを書いておくと実現したりしなかったりします(>>351参照)。

『Phase B』【6-10/100】
レスのコンマ値で登場する艦娘を決定します。
00:>>1が独断で決定
01〜16:雪風
17〜33:翔鶴
34〜50:金剛
51〜65:響
66〜82:足柄
83〜99:皐月
>>+1-5
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/17(土) 05:21:23.82 ID:dEamqbUDO
うん?
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/17(土) 08:33:18.69 ID:K2xtmhOco
デース!
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/17(土) 18:40:08.25 ID:g/7kJiZIo
うらー
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/17(土) 18:42:10.37 ID:lU2VOjepO
ぽい?
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/17(土) 21:28:46.01 ID:qorlXQGuO
でちー!
372 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/01/17(土) 23:47:52.55 ID:w9SzSr740
というわけで
・皐月1レス/足柄1レス/翔鶴1レス/金剛1レス/雪風1レス
で『Phase B』が進行していきます。Phase Bでは経験値+2上昇なのです。

投下はいつ頃になるか分かりませんがそんなに早いペースではやっていけないかなーという見通しです。
まあゆるいペースでやっていきます。
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/23(金) 23:12:18.61 ID:lWG8D5CAO
この金剛は新しいなwwww
374 :【6/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/27(火) 21:51:52.17 ID:Yq22Kgnx0
豪勢な食事を前に感動する皐月と文月。

ここは第四艦隊の会合室。部屋の中には新たに配属された皐月と文月の他に、暁・雷・電、そして旗艦の龍田が居る。
第四艦隊は第三から第一艦隊とは異なり、常設されている艦隊の中で唯一深海棲艦との交戦を主としない、特殊な立ち位置の艦隊だ。
第四艦隊の任務は専ら遠征である。他鎮守府への補助、離島や各防衛拠点への物資輸送のために方々へ繰り出される。

皐月「いやあ〜! 訓練生時代とは訳が違うなぁ! これが第四艦隊の食事かぁ!」

第一から第四艦隊のいずれにも配属されず、ユニットにも所属することが出来ない低練度な艦娘は、この鎮守府内では“訓練生”と呼ばれている。
この“訓練生”は実戦に参加することが許されておらず、鎮守府内での清掃などの雑務をこなしながら、修行の日々を送っている。
才覚さえあればすぐに訓練生を脱出することも出来るが、現実はそう甘くはない。
駆逐艦どころか重巡洋艦の訓練生すらいるこの鎮守府では、皐月や文月のように訓練生を脱していきなり常設の艦隊に配属されるということは稀有な出来事であった。

電「訓練生の頃はどんな感じだったのです?」

皐月「ボクも文月も成績で言えば普通ぐらいで、なんでここに配属されたかよく分からないんだよね」

文月「普通っていうか、皐月はわりと落ちこぼれだったよね〜」

皐月「言うなよお!」

暁「あら? 実戦登用の試験では二人ともトップの成績だったって聞いてるけど……意外なのね」

文月「実習の成績だけは良かったからねぇ〜皐月は〜」

皐月「文月もだろ! ボクを貶めようとしてない?」

龍田「二人とも仲がいいのね〜」

・・・・

談笑する一同。

皐月「配属された時は不安だったけど……居心地の良い艦隊みたいで良かったよ」

龍田「ふふっ、良かったわ〜。私たち仲良くやっていけそうね」

皐月「そういえば、第四艦隊は遠征任務をこなすっていうのは知ってるけど……なんで他の艦隊やユニットは遠征を滅多にやらないんだろう」

龍田「遠征では物資の受け渡しが主なミッションとなるんだけど〜、その主な受け渡し先は他の鎮守府や泊地なのよ〜?」

龍田「向こうの足りない資源を施して、逆にこっちの足りない資源を貰って補うの〜。貿易みたいなものと言えば分かりやすいかしら〜」

龍田「でもぉ、私たちは営利組織じゃないから〜……あんまり遠征にばかり艦は割けないのよね。よほど資源が欠乏している鎮守府以外は遠征に出せる艦娘の数が制限されているの」

皐月「縁の下の力持ちってわけだね!」

龍田「そうよ〜。それなのに他の艦隊の人は私たちのことを水上スケート隊だなんて揶揄するのよ? 酷いわよね〜」

鎮守府に常設されている艦隊所属の艦娘は破格の厚遇を受けている。それは第四艦隊とて例外ではない。
第四艦隊が手厚く補助されている理由は、多忙な遠征任務の対価とされている。
だが、命の危険に晒されることのほぼ無い安全海域を行き来しているだけの者たちをそこまで遇する必要は無いのでは、という声がこの鎮守府内では大きい。

雷「他の艦隊にどう思われようと、関係ないわよ! 私たちがこの鎮守府を支えているのよ?」

龍田「そうね〜。でも……皐月ちゃん文月ちゃん? 第二艦隊には警戒した方が良いわ。何か酷いことされそうになったら、すぐに言ってね?」 皐月と文月の方に顔を近づける

・・・・

皐月「いやあ、一人一つの部屋なんて考えられる? 相部屋じゃないんだよ!?」 自分専用の部屋に興奮する皐月

文月「皐月ー……浮かれすぎだよー……。あのさ、ヘンだと思わない?」

文月「ただの一遠征部隊にしては装備が高性能すぎるし、なんか妙に羽振りが良さすぎない?」

皐月「そりゃあ常設の艦隊だよ? 第一から第三艦隊に比べれば劣るだろうけど、それでも他の有象無象の小隊と比べたら一線を画す扱いされてもおかしくないんじゃない?」

文月「そうだけど……それにしてもちょっと変だなぁって思ったよー。それに、あの龍田さんもなんか怪しいよぉ」

皐月「そうかなぁ? 文月の場合、龍田さんと喋り方が似てるからって対抗意識みたいなのあるんじゃないの」

文月「無いよぉ失礼だなぁ……」

皐月「ま、龍田さんの言ってた第二艦隊ってのは気になるよね。第二艦隊旗艦の響ってのは暁さんたちの姉妹艦らしいけど……そこら辺はわりとセンシティブな話なのかも」

皐月「あんまり触れない方が良さそうだ。君子危うきに近寄らず、ってね」 キメ顔である

文月「うぅーん……?」

皐月「なんだよその微妙な反応は」
375 :【7/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/27(火) 21:52:22.44 ID:Yq22Kgnx0
執務室前廊下。

足柄(……偉そうなことを言ったわりに、前回の会議から全く進展が無いわ)

足柄(提督の動向さえ掴めればやりようはあると思ってたけど、噂通り執務室から全く出てくる気配が無いわね……)

足柄(もう3日も張り付いてるってのに全く出てこないだなんて思わなかったわ。……何か引きこもる為の備えがあると見ていいようね)

足柄(部屋に入れればいいけどその為の口実も無いし……。困ったわ、これじゃあ何も情報が得られない)

・・・・

それから数日後、足柄は響と雪風が執務室に出入りするのを確認した。

足柄「あの二人の後をつけてみれば、何か掴めるかもしれないわね……」

足柄(丸一週間もこんな刑事ドラマみたいなことをやってられるほど暇なのが悲しいわ……)

・・・・

足柄(とりあえず響の後を追ってみたけど……一体どこに向かっているのかしら?)

響「そこまでだ足柄。一体何の用かな? 何が目的で私の後をつけている?」

足柄「げえっ(背後を取られた! 全くそんな気配を感じなかったのに……)」

足柄「い、いやぁ〜……どこに行こうとしてるのかなーって気になって。こっちは第二艦隊の施設とは逆の方角じゃない?」

響と雪風は、共に第二艦隊所属の艦娘である。響はその旗艦を担っている。

響「私は司令官から命を受けている。しかし君にその内容を教えることは出来ない」

響「ここ一週間君が執務室前で不必要にうろうろしているという話を司令官から聞いているからね。少し警戒している」

響「そういうわけで話は以上だし、これ以上私の後をつけるようならしかるべき処分が待っているだろう。暇なのは分かるが持ち場に戻ってくれ」

足柄(たかが駆逐艦の分際で……! とはいえ、言い返せないわね。ここは引き返しましょう)

・・・・

足柄(いいわ、ここで腹を立ててもしょうがない。それに、私にはまだ手がある! まだよ!)

第二艦隊会合室前の廊下で、柱の影に隠れながら雪風の様子を伺う足柄。

雪風「足柄さん。何してるんですかぁ?」

足柄(バレたー!?)ガビーン

足柄「い、いや。貴方が今何をしようとしているのか気になってね〜(私、こういうの向いてないわね……)」

雪風「そうですか。今はしれえの歓迎会の準備をしている所です! 第二艦隊の皆でやろうってことになって」

足柄(???? あの提督の? あの提督が?)

足柄「というか……歓迎会って、あの提督はもう着任して一月ぐらい経ってるじゃない? 今更歓迎会なんて変じゃないかしら」

雪風「私もあんまり詳しいことは知らないですけど、翔鶴さんの提案でして」

足柄(あの提督の思惑が何か絡んでるわけでは無いようね)

雪風「それに、しれえはいつも一人で頑張っているので、少しでも労ってあげないと!」

足柄「なるほどー偉いわねぇ。提督頑張ってるもんねー」 無感情な棒読み

雪風「司令官が来てくれるのか不安だなぁ……あと榛名さんと霧島さんも」

足柄「?」

雪風「あっ、いえ! 何でもないです!」

・・・・

足柄「それにしても……一ヶ月も経った後に歓迎会だなんてやっぱり変よね。第二艦隊側に何か提督を利用しようという思惑があると考えた方が自然だわ」

足柄「全く話の流れが読めないけど、とにかくあの引きこもり仮面が執務室から出てくる可能性があるってのは情報を得るチャンスだわ!」

足柄「一体どんな話がされるのかしら!? 楽しみだわ!」

足柄(しかし……あの部屋に仕掛けておいた盗聴器は雪風にバレてないわよね?)
376 :【8/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/27(火) 21:53:59.11 ID:Yq22Kgnx0
執務室を訪ねる翔鶴。

翔鶴「失礼します、翔鶴です。提督にお話があって来ました」

翔鶴を意に介さず執務に集中している提督。

翔鶴「あの……いつも、ずっと執務室に一人で籠っておられるのですか?」

翔鶴「ほら、窓の外から雪が見えますよ? 提督も、たまにはお休みになられたら……」

提督「早く本題に入れ」 少し苛立っている様子の声色

翔鶴「すみません。余計なお世話でしたね……。第二艦隊の皆で提督の歓迎会を是非やりたいと思っているのです」

提督(なぜ旗艦のヴェールヌイでなく、こいつが話を持ちかけているんだ……?)

必ずしも艦隊での責任者イコール旗艦というわけではない。
しかし、この鎮守府では一般的に旗艦を務める艦娘がその艦隊を取りまとめていることがほとんどであった。
第二艦隊は、響を旗艦とし、その他に雪風・翔鶴・瑞鶴・榛名・霧島で構成されている艦隊である。

翔鶴「私たちの艦隊……それから他の艦隊でも、提督の歓迎祝いが出来ませんでしたから。これからお世話になる提督の為に、やらなくちゃって」

翔鶴「本当は提督が着任される前に準備しておくべきだったんでしょうけど、前任の提督が亡くなられてから鎮守府全体が慌ただしかったから……」

提督はこの申し出を敢えて快諾した。
心の内では翔鶴のことを訝しんでいたし、ひょっとすると自分を殺そうとしているのではないかと疑ってはいた。
しかし、自らの手を汚す方法で白昼堂々と自分に危害を加えるとは思えず、また、翔鶴が何かを企んでいようがそれを上回って逆に追い詰めてやるぐらいの腹積もりでいたのであったためである。

……もちろんこれは単なる提督の疑心暗鬼であり、翔鶴はただ純粋に善意で提督を誘っただけである。
響でなく翔鶴が執務室を訪れた理由も、響は提督から受けた第四艦隊への調査任務を遂行中であったためその代理として、という極めて単純な理由である。

・・・・

数日後。提督の歓迎会が行われ、一連のプログラムが終わったようだ。
提督はその間終始仏頂面をしていた(しかし口元以外が仮面に覆われているため誰からもそのことは悟られなかった)。

響「用心深い司令官が本当に来るとは思わなかったよ。少し嬉しいけどね」

提督(……ヴェールヌイや雪風が居るなら命の心配は要らなさそうだな。となると、何が目的だろうか?)

翔鶴「提督、これからもよろしくお願いしますね」

提督「……ああ」

提督(おかしい。おかしすぎる。何も起こらないなんておかしい)

提督(何かの意図があるはずだ。私を動かそうとするその意図が……考えろ。考えろ)

提督「翔鶴……お前何か私に隠し事をしていないか?」

翔鶴「? 何のことでしょうか?」

提督(知らぬ存ぜぬとでも言いたげなとぼけ顔だな。まさかこいつ本当に歓迎会をやるためだけに俺を呼んだのではあるまいな……)

霧島「司令? 珈琲をお持ちしました。……おわっ」 前のめり転倒する霧島。

霧島「っ痛ぁ……司令にかからなくて良かった……」 と言った後に、キッと榛名の方を睨む。

榛名「ごめんなさい。転ばせようとしたつもりは無かったのですけど」 謝意はあれど、どこか釈然としない様子の榛名

霧島「すみません司令。珈琲、入れ直して来ますね」 榛名の詫びを無視し立ち上がる霧島。すれ違いざまに榛名の耳元で「卑怯者」と囁く。

他の者は誰も気づいていないようだったが、提督だけは見ていた。確かに霧島の足元を遮るように榛名の足が伸びていたのを。
だがそれは意識的に霧島を転ばせようとしているわけではない。霧島が前に進もうとした瞬間に邪魔にならないように足を引こうとしたからである。
また、霧島も榛名の足が自分の進路を遮っていることに転ぶ直前で気づき、進路を変えようと歩幅を変調しようとしたのを見逃さなかった。
何の事はない。たまたま二人が足を動かそうとしたタイミングで接触し、転んでしまっただけのことである。

提督「…………」

だが、提督は榛名の弁護をしなかった。二人の間に生じている溝を感じ取り、対立の様子を見ようとしたからである。
また、その様子を観察することによって確執の原因は何なのかを探ろうとしたからである。

提督(なるほど……翔鶴は遠回しに人事異動を促したかったというわけか? 俺の前で二人が対立している様子を見せ、どちらか一方を残しどちらか一方を外せと。そういうことか)

提督(確かに第二艦隊の戦果記録を辿ってみると、片一方が活躍している時はもう片方の戦果が揮わないことが多いな)

提督「見極めを委ねる……というわけか翔鶴(随分回りくどいやり方をするな……何か裏があるのかもしれない)」

翔鶴「え? え?(なにか、ややこしいことになっている気が……)」
377 :【9/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/27(火) 21:55:14.75 ID:Yq22Kgnx0
歓迎会が終わり執務室に戻った提督。ようやく一人きりになれた、と安堵の溜息をつく。
しかしその安息は一瞬にして破壊される。侵略者がやってきたのだ。

金剛「ヘーイ提督ゥ! 第一艦隊でも提督の歓迎会をしようと思うネー!」

ドンドンと執務室のドアを叩く金剛。しかし旗艦を外されるのは怖いらしく、執務室の中に入ってこようとはしない。

提督「最悪だ……」

第二艦隊は、榛名と霧島の水面下での確執はあれど組織力は高く、また、信頼を寄せている響や雪風が在籍しているため、提督にとっては最も扱い易い部類の艦隊であった。
一方で第一艦隊は、戦力こそ鎮守府内最強だが、各々がなまじ単騎でも敵を倒せてしまう力があるせいで連携が薄い艦隊だった。当然組織としてのまとまりなど無い。
提督は自らの日記の中で、第一艦隊について「カレーとラーメンとハンバーグとケーキとをミキサーでかき混ぜたような艦隊」と評している。

金剛「第一艦隊でも提督との親睦を深めたいと思いマース! 早く開けて欲しいデース! 皆待ってるデース!」

提督(第二艦隊で歓迎会を行ったという話を聞いて、強引に第一艦隊の連中を呼び出したのか? 緊急作戦会議などという名目で招集したのかもしれんな)

提督(何にせよ、奴が旗艦に居るのは前任の提督の人選ミスと言わざるを得ない。戦力だけは評価出来るが……奴に旗艦は任せられないな)

提督(とはいえ、これまでに一定の結果を出してきた実績ある集団だ。そこの頭をすげ替えるとなると大義名分が欲しくなるところだな……)

第一艦隊は、旗艦金剛と、比叡・Bismarck・飛龍・赤城・加賀で編成されている機動部隊だ。
個々の練度は極めて高く、また、戦況分析能力や判断力にも優れていて、名実ともに鎮守府最強の集団である(一切の連携がなく各々の個人プレーであることに目を瞑れば)。

・・・・

翌朝、提督宛に一通の手紙が届く。

拝啓 提督
金剛です。初春とはいえまだまだ寒い日が続きますね。
昨日は突然無茶なお誘いをしてしまってごめんなさい。
迷惑でしたよね。でも、私、提督に喜んでもらいたかったんです。
提督を想う気持ちが先行してしまって、軽率な行動を取ってしまいました。
今後は提督のご迷惑にならないように心がけますから、ばかな奴だと見放さないで下さいね。
私は提督の為なら、どんなに辛いことでも乗り越えていく所存ですから。

……前に私が執務室を訪れた時に、私のことを嫌いだと仰られましたね。
あれはとても悲しかったです。今でも思い出すと胸が苦しくなります。
提督は、私のように口煩い女性はお嫌いなのかもしれません。
ですが、私も本当はあのような振る舞いなどしたくはなく、周囲からそういうキャラクターであると認識されてしまっているからそれを演じているだけなのです。
まるでピエロみたいですよね……自分でも滑稽だとは思っているのですが。
もし、提督と二人っきりでご一緒できる機会があれば、本当の私のことを見て欲しいと思っています。
ありのままの私を知ってもらうかわりに、提督にも仮面の内の素顔を明かして欲しいな……なんて。
ごめんなさい、私ったら。こんなことを書いたらまたはしたない女だなんて思われちゃいますね。
でも、私が提督のことを強く想っているのは事実です。

以下も延々と文章が続く。

・・・・

長い時間が経過している。ようやく文章が途絶えた。

提督は、先程まで読み続けてきたびっちりと文字の詰まった20枚ほどの便箋を畳み、元の封筒の中にしまいこんだ。
そして、彼女を旗艦から外す以前に精神鑑定を受けさせねばならぬと心に決めた。

・・・・

金剛「ピンチはチャンス!」

比叡「なんですかお姉さま唐突に」

金剛「昨日は提督に怒られてしまいましたが、ここでワタシは一計案じまシタ!」

比叡(懲りないなぁ……)

金剛「ギャップ萌えデース! 提督にワタシのルァーブをしたためたLetterを送ったのデース! 男の人はヤマトナデシコが好きらしいですからネ!」

金剛「これであの提督もイチコロネー! Yeah!」

比叡「はぁ……ところでお姉さま。カレー冷めますよ?」

金剛「Oh! そういえば最近は比叡も料理の腕を上げましたネ! これなら人間が辛うじて食べられるレベルの味ですヨ! 一体隠し味に何を使ったんデスカー?」

比叡「まぁ〜、ちょっとは慣れましたからねー。隠し味はお姉さまへの愛です!」

金剛「これならあと100年ぐらい鍛えれば美味しいカレーが作れるようになりそうデース!」

比叡「手厳しいなぁ……」

赤城(不味い不味いと貶しながらもいつも食べているのは、彼女なりの姉妹愛なのでしょうか?) 二人の居る部屋の前を通りがかった赤城
378 :【10/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/27(火) 21:56:26.02 ID:Yq22Kgnx0
執務室の前に立ち、扉を叩く雪風。中に居る提督に呼びかけるも、返事はない。

雪風(無用な立ち入りは厳禁と言われても……これは司令にとっても大事な用件。それに、これだけ呼んでるのに返事が無いのはおかしいです! 鍵もかかっていないようだし……)

雪風「し・れ・え……?」 おずおずとドアを開ける

普段提督が座っているはずの席。だが今は空席になってしまっている。どうやら部屋の中に提督は居ないようだ。

雪風「司令はどこへ……? 執務室から外へ出て行ったなら誰かしらの目につくハズ……」

部屋の本棚の本の並びが普段と異なっていることに気づく。常人であれば気づかないような些細な違いだったが、この本棚のことは雪風の記憶の中で強く印象づけられていた。
本のラインナップが、『有人宇宙飛行の歴史』『アトランティスの謎』など明らかに趣味全開のものであったためである。

雪風「おかしいです……本の並びが違うし、ここに一冊あったはずの本が無い……」

雪風は“なんとなくそうした方が良いような気がする”という直感のもと、本を元の並びへ戻した。カチッという奇妙な機会音が鳴る。

雪風「こ、これは……!? 本棚が突然動き出しました!」

本棚と本棚の間に隙間が出来ている。その隙間の先には、明かりの灯っていない小部屋があるようだ。
鞄の中の懐中電灯を取り出し、明かりで室内を照らす。空洞で何も物が置かれていない。

雪風(足元に鉄の板のようなものが……? 見てくれはマンホールみたいですね)

鉄板を持ち上げると、螺旋階段が現れる。地底深くまで繋がっているようだ。

雪風(司令は一体何者なんでしょうか……。なんだってこんな仕掛けを作ったのでしょうか……とにかく行ってみましょう)

・・・・

螺旋階段を下ること数分。
大小様々なモニターがズラズラと並んでいる奇妙な部屋に辿り着く。
モニターは鎮守府内の監視カメラや鎮守府近海の映像を映しているようだった。

雪風(さすがに私室やトイレ、お風呂までは監視されてないみたいですね……)ホッ

提督「……あぁ。……………………そうか。悪い、一旦切るぞ」

雪風(物陰から司令の声がする……誰と話しているんでしょうか? あっ、こっちに気づいた!?)

提督「そこで何をしている!? 何者だ!」

敵意をむき出しにした荒々しい声に、思わず雪風は体をビクつかせる。

雪風「あっあっ……あの! 雪風です! 雪風ですッ!」

素っ頓狂な声で自分の名前を連呼する雪風。その間抜けた様子に脱力したのか警戒を解き雪風に近づいてくる提督。

提督「落ち着け。この部屋に入ってきたのがお前ならばまだ問題はない。だが、一体どうやってここに入ってきた?」

雪風「あっ! 執務室の扉の鍵が開いていて、本棚を調べてたら奥に部屋があって! あっ、そうだ! 司令に報告が」

提督(扉の鍵は閉めたはずだがな……。あの口うるさい似非外人が叩きまくったせいで建て付けが悪くなったのだろう。しかし本棚はどうやって?)

提督(平時の本の並びから気づいたわけか。しかし本棚内に設置されているテンキーへの暗証番号入力など、それだけじゃ開かないようになってるはずなんだが……そこまで知っている様子ではなさそうだ)

提督(適切な暗証番号が入力されたのか? あるいは誤作動か? 信じられないが……ここにこいつがいる以上そうとしか考えられない)

雪風の身には、こうした奇妙な偶然が重ねて起こることがある。なぜなら雪風だからである。

雪風「そう! しれえに報告があって! 大変なんです! これです! 盗聴器です!」

雪風「司令の歓迎会の後に部屋を掃除していたら見つけちゃって! あの部屋で歓迎会をやる前は無かったんです!!」

提督「……なるほど。ところでお前、なぜこの盗聴器を使用不可能な状態にせずそのままここに持ってきた? まだこれ動いてるし現在進行形で盗聴されてるんだが?」

雪風「あっ」

提督「…………」 

提督「とりあえず、この盗聴器の指紋を取るか」

提督「盗聴している者に告ぐ。近日中にお前を執務室に呼び出し尋問する。厳罰を覚悟せよ。また、この盗聴の内容を何者かに伝えた場合、お前の関係者も皆処罰対象にする」

ベキ、と盗聴器を握り潰す提督。青い顔の雪風。

提督「雪風。お前に悪意がないのは分かるが……以後気をつけたまえ」

提督(本当は軽く罰したいレベルのやらかしなんだが、ただでさえ少ない確実な味方を減らすと今後の危険が増すしな……。しかしこれは予想外だった……)
379 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/27(火) 21:58:42.04 ID:Yq22Kgnx0
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~10/100)
・皐月の経験値+2(現在値2)
・足柄の経験値+2(現在値4)
・翔鶴の経験値+2(現在値2)
・金剛の経験値+2(現在値3)
・雪風の経験値+2(現在値3)
----------------------------------------------------------------------

告知もなくいきなり本編を投下してみましたが特に深い意味はありません。
(強いて言うなら昨日あたりに告知しようと思ってたんだけど忘れて寝ちゃったとかそんな理由です)
投下してみると分かるこのワチャワチャ感! そういえばわちゃわちゃって関西弁なんですね。知らなかった。

『Phase B』では経験値の増加が+2なのが大きいですね。
コンマのご機嫌次第で登場キャラが決まるので偏るかなと思ってましたがいい具合に仕事してくれました。
各キャラのコンマ範囲の比率はわりと適当に決めてます。
>>366では各キャラ15〜17%でしたが次回以降もそんな感じで行く予定。

と、ここでまた次回に『Phase A』がやってくるという流れです。
登場させる艦娘をレス安価で決定するというわけですハイ。

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『Phase A』【11-15/100】
レス安価で登場する艦娘を決定します。
登場させたい艦娘の名前を1人分記名して下さい。
(雪風・翔鶴・金剛・響・足柄・皐月の中から一人)
>>+1-5

よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらいで流し読みするか>>351付近を参照下さい。
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380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/28(水) 18:24:23.86 ID:Y2SuwXwwo
足柄
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/28(水) 18:27:41.18 ID:Yc1ALLFA0
雪風
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/01/28(水) 18:39:32.27 ID:4M3u5wz00
翔鶴
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/28(水) 18:40:44.12 ID:UNm6pramo
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/28(水) 18:41:36.91 ID:Xsgo7Ak/o
皐月
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/28(水) 18:41:48.74 ID:EScD90oAO
足柄
386 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/01/28(水) 19:43:58.82 ID:+nB57div0
>>380->>384より
・足柄1レス/雪風1レス/翔鶴1レス/響1レス/皐月1レス
で『Phase A』が進行していきます。
来週頭ぐらいには投下出来たらいいなと思ってますけど微妙。



////悖らず、恥じず、チラシず////
イベント2月かー……もうすぐじゃん。うーん厳しいねえ(資源的に)。
一応年明けあたりから大型艦建造を封印して備蓄初めてるけど未だにボーキが25kぐらいしかないので辛い。
最近はあんまり時間取れなくてあ号すら消化できないという体たらく……(→だいたいClicker Heroesのせい)。
空母戦艦マシマシの連合艦隊決戦ゲーだったらわりとしんどいなぁ……。
改二駆逐揃ってきたし、水雷戦隊ベースのバケツ&練度ゲーならまだなんとかいけそう(やりたいとは言ってない)。
とりあえずイベント突入前に燃料70k/弾薬50k/ボーキ40kぐらい欲しいところ。
レアドロ堀りを考えるともっと欲しいけれど贅沢言ってられませんわね。
387 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/02/11(水) 14:19:56.36 ID:yuNPKC540
>来週頭ぐらいには投下出来たらいいなと思ってますけど
なーにが来週頭ぐらいにはじゃ。
すでにそう言い出してから二週間経過しておりますがリアルがリアルだったのでお許しを。
まぁイベントもあるわけだしね?
今週の金曜ぐらいには投下できるような気がしますと予告しておきます。

////チラシの裏////
甲→甲→乙→乙でE4突破。現在E5甲ゲージ削り中ですがいずれかの資源が20000切るかバケツが400切ったら乙にシフトします。
地力的には最初から乙に挑むのが賢い選択なんでしょうけど、どうせならどれだけ自分の艦隊と相手との間に絶望的な差があるかを味わってから退きたい所存。

今回イベントキツくないっすか!? いやトップランカーがひいひい言いながら突破してたE5甲はおいといて、そこに至るまでも結構エグい気がするっす。
エグいと言っても先人の方が歩んでこられた理不尽無理ゲー的エグさでなくて、常時14年夏E1のような感じ。やってやれないことはないがしんどいぐらいのエグさ。
資源が20万ぐらいあればキラ付けしなくてもゴリ押し突破出来るのでまた話は違ってくるんでしょうけどうーむ。

目ぼしいドロップと言えばE4の伊401、E5の磯風、朝霜ぐらいっすかね。いやでも今回掘り多分無理ぽ……。
乙とはいえもう一回空母棲鬼を殴りに行く体力ないですマジで。絶妙に硬くて腹立ちますねチクショウ。
MUSASHIを使えば倒せる(っていうかゲージ破壊ラストは武蔵使った)けど資源消費が怖いし……。
388 :【11/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/02/14(土) 09:07:47.14 ID:kmkYAStE0
鎮守府のとある会議室。ヴェアヴォルフの面々が座って話し合っている。

霞「足柄、会議に遅れるなんて関心しないわね。それで? 良い報告ってのを聞かせてもらうわよ」

清霜「顔面蒼白じゃない? 何かあったの?」 よろよろと会議室に入ってくる足柄を見て心配する清霜

足柄「終わった……もうダメだわ……。やっぱりああいうの向いてないんだわ……何があったかは言えないけど……明日で皆とはお別れよ……」

大淀「今更隠し事なんて! これまで辛いことも苦しいことも、一緒に乗り越えてきたじゃないですか」

霞「ハァ? 今までどんだけアンタが迷惑かけてきたと思ってんのよ!? 今になって何ふざけたこと抜かしてるわけ?」

霞「大方あのクズ提督に釘を刺されてるとかそんなだと思うけど、だったら話せる範囲だけ話せば良いじゃない。それに、アンタが処分されたらどうせ私たちだって後を辿るわ」

足柄「……言われてみればそれもそうね。じゃあ話すわ」

大淀(あっさり立ち直ったー!?)

・・・・

霞「盗聴って、アンタ馬鹿じゃないの!? しかもそれがバレたって……」

足柄「チャンスかなーと思ったのよ。だって、考えてみてよ? あの提督、ここに着任してから執務室から出た事なかったのよ? その謎が明らかになるかもしれないじゃない」

大淀「結局、その第二艦隊の歓迎会で提督について何か分かったんですか? ……ストレートに話すとまずいならある程度ぼかした表現で構いませんが」

足柄「いや、それが歓迎会“では”提督については何も分からなかったわ。第二艦隊の面々に何か聞かれても『黙秘させてもらう』とかそんなんばっかり」 提督の声をやや誇張気味に真似する足柄

清霜「盗聴器がバレちゃったのは、歓迎会中の出来事?」

足柄「いや、その後よ。歓迎会後に盗聴器をそのまま提督のところへ持ってかれちゃったのよ」

足柄「その時に提督が執務室からなぜ出て来ないかがなんとなく分かったわ。分かったのは良いけれど……盗聴器についていた私の指紋を採取されて呼び出し食らってるってのが現状ね」

霞「盗聴器ねぇ……歓迎会を終わった直後に回収出来なかったの?」

足柄「にゃ!? あ? あぁ、うん。歓迎会が終わった後すぐに清掃が始まって、取りに行く余裕が無かったのよ(……そういやあん時回収すること忘れてたわ)」

霞「何突然変な声出してるのよ。でも、清掃中に取りに行くことだって出来たじゃない? ちょっとその辺はっきりしないわね」

大淀「(あっこれ足柄さん回収忘れてたんじゃ……)そんなことより、提督に盗聴器がバレて呼び出されてるんですよね!? これからどうするか考えなきゃ!」

足柄「(大淀ナイスフォロー!)そ、そうよね。どうしたらいいかしら……」

清霜「処罰が下るのは避けられないと思うけど……直接会える機会がある以上、弁解のしようはあるかも?」

霞「なるほど……一つ思いついたわ。会議が終わった後、私の部屋に来なさい足柄。稽古をつけてあげる」

足柄が霞から受けた“稽古”とは、翌日に迫った提督から受けるであろう尋問のシミュレーションするというもので、その内容は過酷かつ熾烈を極めた。
後に足柄は、『あの後三日ほど霞の顔を直視出来なかった。正直PTSDになっていてもおかしくなかったと思う』と語っている。

・・・・

翌日の執務室にて。部屋の中には提督と雪風、そして足柄がいる。

足柄「まず、盗聴していたことをお詫び申し上げます。今回の騒動は私の一存で起こしたものであり、他の艦娘との関与はありません」

足柄「いかなる処分も甘んじてお受けする覚悟です。ですが……非礼は承知の上です。どうか私の言い分を聞いて頂きたく存じ上げます」

提督(盗聴するような奴が反省するとも思えないが……しかし見事な演技だ。かなり苦しい立場で弁解せざるを得ない状況のくせに少しの迷いも見られない)

足柄「私は、提督に不信感を抱いていました。いえ、今も抱いています。その主たる理由は、常に仮面を被っていて素顔を見せない、執務室から一切出ることがなく私たち艦娘への指示も全て書類で行っている、という点です」

足柄「この鎮守府で事件があったことは事実です。ですが、そこまで露出を避けるのには、危険から身を守るため以外にも何か理由があるはずと推測しています」

足柄「貴方の私たち艦娘に対する接し方を見て、私は疑念を抱かざるを得ませんでした。今回盗聴を行ったのも、貴方の真意を探るためです」

足柄「地下の施設に引きこもって、一体何をしておられるのでしょうか。貴方は何を目的に動いているのですか?」 丁寧な口調ではあるが、次第に語気が鋭くなっていく

提督「俺の目的は……深海棲艦を殲滅し、この馬鹿げた戦いに幕を下ろすことだ。それ以外に何があるという?」

足柄「お言葉ですが提督。私の目には貴方がそれ以外に別の思惑で動いているように見て取れます。きっと他の艦娘も同じように思っているはずです!」

足柄「……私は! そんな回りくどい話が聞きたいのではありません! 貴方が腹の中で何を考えているか! それを聞かなければ納得出来ません!」

提督「答える必要はないし、お前に納得してもらう必要もない。あくまで俺は規則に基いてお前を処罰するだけだ。……話はここで終わりだ。工廠へ向かい、その場の妖精の指示を仰げ」

提督(……このまま処分するには惜しい人材なのかもしれんのだがな。追い詰められている状況にも関わらず逆にこの俺を追求するとは大した奴だ)

提督(だが、俺の目的を話すと余計面倒が起こりそうだしな。それに、立場上ここで折れてやるわけにもいかん。残念だが……)
389 :【12/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/02/14(土) 09:09:02.74 ID:kmkYAStE0
雪風「ま、ま、ま、待って下さい! かっ、解体はあんまりだと! 思います、がっ!」 緊張のあまりイントネーションが愉快なことになっている雪風

一連の話を聞いていた雪風は思った。足柄の言っていることはもっともだ、艦娘たちがこの提督に対して疑念を抱いてもおかしなことではないと。
また、これまで第二艦隊は戦いの中でヴェアヴォルフに助けられたことがあり、それゆえに雪風は足柄の有用性も理解していた。
ここで彼女が鎮守府を去るのは提督にとっても自分たちにとってもマイナスである、と判断し、なけなしの勇気を振り絞って提督に異を唱えたのである!

提督「罪は罪だからな……。こいつに関連する者も全員処分しようと思っていたがそれは取りやめとする。……これが俺なりの最大限の譲歩であり情状酌量だ」

雪風「情状酌量ってこ、とは! ししし司令も、艦娘から疑念を持たれてる状況は、り、理解しているはずです! わ! 私も! しれえの真意が知りたいです!」

雪風「……あ、足柄さんの話を聞いて。私も、司令のことが気になりました。あ、あの、ここで足柄さんを解体したら、私も、提督のことが疑わしくなっちゃうかな、って……」

提督(……そうきたか。ここで突っぱねることは簡単だが、この先雪風が使えなくなると今後相当やり辛くなるんだよな……)

提督(今ようやく第二艦隊の面々をまともに扱えるようになるところまで漕ぎ着けたわけだ。言い方は悪いが、信用して使える駒が増えつつある状況というわけであり……)

提督(雪風に不信を抱かれたら他の第二艦隊の連中にも伝播してしまうだろう。そしたらまた響以外に頼る術を失う。ようやく鎮守府の内情が見え始めたこの状況で最初に出戻りはかなり痛い)

提督(ふむ、ならば……だ。少し試してみるか)

提督「良いだろう、雪風。ここでお前に見限られるのはこちらとしても辛い。……賭けをしようか」

提督「俺がこの先何をするつもりかを言い当てることが出来たなら足柄を不問にしてやる」

提督「ただし! チャンスは一度きり。惜しかろうがなんだろうが少しでも間違っていたならそれで終い。また、言い当てることが出来た場合はお前にも足柄にも俺の真の目的の為の協力をしてもらう」

雪風「の、望むところです! や、やりますっ! やりますとも!(考えなきゃ。考えろ……)」

しれえの真の目的は何か? 多分、“深海棲艦を滅ぼした後”のことをしれえは考えているのでは?
そうだ! ……ヒントは本棚にあるかも。

提督(ふむ、やはりそこを見て考えるよな。さて気づけるか……? 案外難しくないと思うが) 雪風の視線の先を追う提督

ええと、本棚にある本のタイトルは、と……。上段から順に……なになに?
『長生きするメダカの飼い方』『Artificial Intelligence "ELIZA"』『“どこでも”出来る! 簡単お料理教室』『有人宇宙飛行の歴史』一見普通に見えてヤバそうな本と普通にヤバそうな本がごちゃ混ぜですね……。
中段は……『禅の極意』『グラディヴィウス 攻略本』『恐るべきオーディオオカルトの世界』『まちづくりシミュレーション』『長生きの秘訣・呼吸健康法』『LISPプログラミング入門』『おいしいベトナムコーヒー』余計に意味が分からない……。
下段『アトランティスの謎』『深海生物図鑑』『地球の中心に関する考察』『「海の民」とは何者か?』『ヴォイニッチ手稿』『架空兵器は実現するか』うん……。

雪風(無理だこれー!?)ガビーン

れれれ、冷静になりましょう。前回本の配置が異なっていた時、欠けていた本を探しましょう。それが答えかも……『折り紙の折り方 基本から発展まで』絶対関係なさそう! というか、中段はわりと中身がバラバラで何の推測もつかないですね……。
でも、司令はきっと本棚の中の本を何のカテゴリ分けもせず無秩序に置いたりはしないですよね……性格的に。一番目につきやすい中段はミスリードを誘うためのフェイクかも。
下段は……かなりこじつけな推理ですけど、ひょっとしてひょっとすると深海棲艦に関連する本で分類しているのかもしれません。
なんとなく上段が怪しいような。人工知能、メダカ、料理、宇宙……ダメださっぱり分からない。

……もし私が言い当てることが出来たら、その司令の目的に協力してもらうってことは。一人の力では出来ないようなことですよね。かつ、深海棲艦を滅ぼした後に考えるようなこと……。
そういえば、遠い昔に宇宙でメダカの産卵に成功したことがあるとか、本で読んだ記憶があります。これって隣にある有人宇宙飛行に結びつくかも?
Artificial Intelligenceは……よく分からないですけどAIってやつですよね多分。これも宇宙開発が進んでいた時代は研究されてたとか……。料理の本も、“どこでも”なんて強調されてるのが妙に気になりますね……。となると……?

雪風「しれえの目的は……!」

宇宙に行くこと……? いや待て。しれえは宇宙に行っただけで満足するような人でしょうか? 違う。宇宙に行って何か……?
となると、中段の本とも話が繋がってくるのかも。衣服・音楽・ゲーム・インテリア……果ては折り紙まで、ありとあらゆる文化や生活に関する本で合致している。これが正解……かな!?

雪風「しれえは……! 宇宙に行って、どこかの星に移住するつもりなのではないでしょうか!?」

足柄「ちょっバカ何言って」 この世の終わりを目の当たりにしたかのような顔をする足柄

提督「正解だ、雪風。よく分かったな(“どこかの星”でぼかしたのは……見逃すか)」 雪風の方に手を伸ばし、かたく握手をする

足柄「!?!?!?!?!?!?」 目を白黒させて混乱している

提督「なぜ俺が今までこのことを話さなかったか理解頂けただろうか、足柄。お前たちには話す必要がないし、話した所で何の意味もない」

足柄「え? え? ……正気? 本気でそんなこと言ってるの?」

提督「当ッ然ッだ! 俺にとっては深海棲艦の殲滅など前哨戦に過ぎないッ!」

提督「……賭けは賭けだからな。お前の罪は不問としよう。知ってしまったからには協力してもらうぞ」

足柄にも手を差し出す提督。戸惑いながらも手を握る足柄。

足柄「ワケわかんないわ……」 放心状態で呟く

足柄(ワケわかんないけど……とにかく、良し? とした方がいいのかしらねこれは)

提督「足柄、雪風。今はまだその時では無いが……お前たち二人には、後にミッションを課す、俺の目的のため動いてもらうぞ」

雪風「はいッ! しれえッ!」 ビシッと敬礼
390 :【13/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/02/14(土) 09:09:49.29 ID:kmkYAStE0
第四艦隊の会合室。暁・雷・電がくつろいでいる。

響「やれやれ……やっと捕まったね。久しぶりに話でもしようと思っていたというのに、まるで私を避けているみたいに居なくなるもんだから苦労したよ」

雷「もう、そんなわけないじゃない。姉妹なんだから」

響「姉妹“艦”だろう? 私たちは本当の姉妹じゃない」

暁「そんな言い方しなくてもいいじゃない!」

電「そ、そんなことより……!」 険悪な雰囲気を遮るように電が声を発する

電「この鎮守府に戻ってきてから、すごいですよね……第二艦隊の旗艦だなんて。訓練生の頃は私たちと一緒だったのに……もう手が届かない存在になっちゃったのです」

その言葉を聞いた刹那顔をしかめ険しい表情をする響。しかしすぐに普段の無表情に戻る。

響「いいか? 私は君たちと世間話するために来たわけじゃない」

響「私は提督の命により、第四艦隊について調査している。つまり君たちに尋問する権利があるというわけだ」

響「単刀直入に聞こう。どこまで龍田と関わっている? 遠征で物資や燃料以外に“何を”運んでいる?」

雷「な、何を急に……私たちは普通に遠征しているだけよ」

響「そういう話を聞いているんじゃないんだよ。第四艦隊が秘密裏に麻薬の取引をしているなんて噂が流れているのを知らないのか?」

暁「しっ、知らないわよ! そんなこと! そんなこと、してないし……」

響「そうか。鎮守府内では結構な噂になっているんだけどね」

誰も口を開こうとしない。響の発する静かな怒気が少しずつ増していく。

響「物分かりが悪くて困るな。今話せば見逃してやると言っているんだ」

なおも沈黙。

響「……そう。ならそれもいい。私と龍田と、天秤にかけてそうなるようであればもう十分だ」

響「……覚悟しておくように。一切情はかけないよ」

部屋を出ようとする響に対し、暁が言葉を放つ。

暁「ッ……! 私たちを置いて……一人でどこかに行っていたくせにッ! 今更なんなの!? 偉そうに!」

暁「良いわよね響は! 練度も高くなって第二艦隊の旗艦も任されて! 提督にも気に入られて!」

暁「自慢しにでも来たの? 私はこんなに力があるんだぞって、えばりに来ただけじゃない!」

響「чёрт побери……!」

暁を突き飛ばし、殴りかかろうとする響。慌てて止めに入ろうとする雷と電。

雷「! 今のあんたが殴ったら、暁が死んじゃうじゃない!」

電「姉妹同士でこんなこと、やめて欲しいのです!」

声に気づき、静止する響。暁の襟首を放して、何も言わずに部屋を去っていく。

・・・・

バン! と腹いせに壁を殴る響。

瑞鶴「どうしたの? 随分荒れてるじゃない。珍しいわね」

響「そういうこともある」

瑞鶴「提督さんから直接指示を受けてるんでしょ? 大丈夫なの?」

響「ああ。いや、勘違いしないで欲しいのだが、司令官に対して腹を立てたわけではない」

響「ま……これで形振り構わなくて良くなった。かえって幸運と考えるべきか」

瑞鶴「……よく分かんないけど、あまり根を詰めすぎないでね」
391 :【14/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/02/14(土) 09:13:22.32 ID:kmkYAStE0
響と暁たちとのやり取りを別室から聞いていた皐月と文月。

皐月「文月……凄いことになってたね」

文月「修羅場ってやつだねぇ……って皐月? どこ行くの?」 部屋を出てどこかに行こうとする皐月を静止する文月

皐月「遠征用の物資が保管されている資材庫に行って、荷物の中身を確認しにいく」

皐月「自分が麻薬を運んでるのかもしれないだなんて疑念を持ちながら艦隊の他の皆と一緒に過ごせる自信、ある?」

文月(皐月はヘンなところ真面目よね〜……)

文月「う〜ん……ヤな予感がするけどなぁ……」

・・・・

皐月「いやーこれだけ箱やドラム缶があると壮観だね」 資材庫に積まれている木箱の中身を物色する皐月

文月「……小包とかは封を開けちゃダメだよぉ? クビになっちゃうから」

皐月「分かってるって。元通りの状態に出来るものしか調べないよ」

皐月「……?(ネジやクズ鉄が大量に……、こんなもの何に使うんだろう。弾薬や燃料の他にも、食糧、本、嗜好品……なんでもあるんだな)」

・・・・

文月「何も見つからなかったねぇー。……もう帰ろうよぉー」

皐月「こっちも特に何も無かったなぁ。ただの噂だったのかもしれないね」

龍田「あ〜ら二人とも。何か探し物?」 ドラム缶を背負って入ってきた龍田

皐月「いっ、いえっ! ちょっと遠征用の物資の確認をしようかな〜……って」

龍田「そうなの〜殊勝なのね。でも、それは私がすることだから貴方たちは気にしなくていいのよ?」

皐月「すみません、入って日が浅いもんで……へへへ」

龍田「謝ることは無いわ〜。それより二人とも、今日は二人に見せたいものがあるの〜……。この後ちょっと良いかしら?」

文月「え、えっとぉー……(断らなきゃ……!)」

皐月「はい、分かりました」

文月(皐月!? これ絶対やばいやつだと思うよぉ〜!?)ヒソヒソ

皐月(文月は心配性だなぁ。さっき調べて何もやましいところは無いって分かっただろ?)ヒソヒソ

文月(……嫌な予感しかしないよぉ〜)

・・・・

二人が案内されたのは地下通路の一室だった。
皐月たちの目に映ったのは、コンクリートの壁にもたれかかり、床に足と腕を伸ばしている女性の姿だった。
紺色の髪をしていて、眼帯をつけている。背中には艤装を背負っているようだ。
部屋の中を見渡すと、他にも二人の艦娘と思しき女性が、うつ伏せに倒れている。
二人の顔から血の気が失せていく。

文月「なんですか……これ……」

龍田「轟沈した艦娘よ。……正確には、轟沈するはずだった艦娘」

龍田「着底しかけていた艦娘を、陸まで曳航したの。でも、助からなかった。入渠させて傷は治ったけれど、再び動き出すことは無かったの」

龍田「私は、ね……それでも諦めていないの。だって、死んだ人間なら、身体が腐って朽ちていくはずでしょう?」

龍田「でも、ここに居る子たちは自ずから動かないという点を除けば轟沈する直前と何ら変わっていない。生きているのよ」

龍田「私は、この子たちが再び動き出せるようになって欲しいの……」

皐月「……どうして、ボクたちをここに連れてきたんですか?」

龍田「私は……他の誰に何と思われていようと、第四艦隊のことを家族と思っているから。貴方たちのことも、勿論そう」

龍田「だから、私のことも知っておいて欲しいし……出来ることなら私の理想に協力して欲しいわね〜」

龍田「それだけ。貴方達が私に不信感を抱いているというのであればそれでも構わないけれど、ちょっと悲しいわ〜。泣いちゃうかも〜」

皐月と文月には、龍田が善なのか悪なのか、本心ではどう考えているかが分からなかった。
いずれにせよ、とんでもない食わせ者には違いないのだろう、ということだけは認識していた。
392 :【15/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/02/14(土) 09:14:42.22 ID:kmkYAStE0
レストランで食事をしている提督・翔鶴・瑞鶴。
鎮守府内にはこのような艦娘専用(厳密には鎮守府内で働く職員らも含まれる)の娯楽施設や商業施設が設置されている。

提督(……前回の歓迎会が、無目的で行われたものだったとはな……。人事異動を暗に勧めているとか少しでも考えた俺が馬鹿だったようだ)

提督(利害以外の理由で動く人間の思考ルーチンはわからん……。ま、いくつか気になることはある。せっかくだから話を聞いてみるか)

瑞鶴「提督さん、悩み事? 歓迎会の話をしたあたりから、急に黙っちゃって」

提督「……いや、最近響の様子が妙でな。何か気づいたことはないか?」

瑞鶴「あー、なんか第四艦隊の人達とやり合ってたみたい。詳しくは知らないけど……第四艦隊の面子の中には響の姉妹艦も居るみたいだし」

提督「暁、雷、電の三名だな(彼女たちもクロ……なのだろうか。だとしたら響には酷な依頼をしてしまったかもしれん。雪風あたりに尋問させるべきだったか……いや、アイツじゃ無理か)」

提督「戦場での様子はどうだ? ……疲労を訴えていたり、不調だったりしてはいないか?」

翔鶴「戦場では普段通りですね。別段問題ないように思えますが……」

提督「そうか。ならば問題ない。精神的な不調が影響して沈まれては困る(……とはいえ、ヴェールヌイのことは心配だな。後で話をしてみるか)」

瑞鶴「てーとくさん、意外とメンタル的な部分気にかけてるんだね。そういう感情的な部分は全部切り捨ててる人かと思ったけど」

提督「精神面での不調も馬鹿にできたものではないぞ。現に第二艦隊の榛名と霧島は個人的な対立によって双方の戦果に悪影響を及ぼしているではないか」

翔鶴「確かにそうですねぇ……。あの二人はちょっと心配です。二人とも悪い人ではないのですけれど……」

瑞鶴「提督さんの歓迎会の時も、なんか水面下で揉めてたっぽいしねぇ……。っていうか、前はあんなに仲悪くなかったよね。どうしてああなっちゃったんだろ」

提督(……子供の喧嘩じゃあるまいし、仕事なのだから割り切って欲しいものなのだが。とはいえ、何かしら事情はあるんだろうな)

加賀「あら五航戦と……提督? 珍しいですね」

提督「あぁ、加賀か。もし良かったら相席どうだ?」

加賀「そうね。赤城さんも今は居ないし……そうするわ」

・・・・

提督「第一艦隊の様子はどうだ? ま、報告書から粗方の想像はつくが」

加賀「連携を意識した途端、皆総崩れになるわね。それぞれが単騎で敵と当たることが多かった経験が邪魔して、一丸になって敵を倒すというイメージが難しいみたい」

加賀「私や赤城さん、飛龍と、空母の方は比較的足並みが揃うようになってきたけれど……戦艦の人たちとは反りが合わないわね」

瑞鶴「そんなことでは後輩に抜かれるのも時間の問題ですねぇ〜」

加賀「五航戦は口先に見合った実力さえあれば文句ないのだけれど。問題はそんな事を言える資格が無いぐらいに練度がお粗末なことね」

提督「やめんか。……第一艦隊の戦艦と反りが合わないと言っていたな、加賀。原因は金剛だろう?」

加賀「ええ。……ハッキリ言ってあの人とはうまくやっていけないわ。他の人もそう思っているんじゃないかしら」

提督「個で最強であっても、全体の足を引っ張るようであれば集団戦では使えんな。……奴曰く『“精神的不調”で上手くいっていない』ようだが」

提督「……近いうちに、第一・第二艦隊の大規模な再編を行うつもりだ。これまでのような出来合いの艦隊編成ではなく“来るべき深海棲艦との最後決戦”を想定した編成だ」

提督「いかに第一艦隊のお前たちが個での戦いに絶対の自信があろうと、深海棲艦の力はそれさえも上回る。練度も経験も上回るほどの圧倒的な性能でお前たちの前に立ち塞がるだろう」

提督「そうした脅威を打ち払うためには高度な連携が不可欠となる。それを肝に銘じておくように」

加賀「ええ……承知しました」

提督「不確定な情報が多いため今話せることは僅かだが……正規空母であるお前たちの活躍には期待している。修練を怠らぬように」

・・・・

空母用の訓練場。矢を射る翔鶴と、その様子を見ている加賀。

加賀「翔鶴。……迷いが見えるわ。一射絶命よ、忘れたの? 放った一本の矢に全てを懸ける気概でなくては、正規空母は務まらないわ」

翔鶴「どうしても、最後の戦い、というもののイメージが沸かなくて……」 構えを解く翔鶴

加賀「そうね、私も同じだわ。でも、あの提督は冗談であんなことを言うような方ではないはずよ。……覚悟と勝算を持って、本気で言っているのでしょう」

翔鶴「戦いが終わったら、私たちはどうなるんでしょうか。どうすればいいんでしょうか」

加賀「……一射絶命。私が今の貴方に言えるのはそれだけね。全ての迷いを捨て去り、己自らが真善美を体現する存在となった時、究極の一射は完成する……」

加賀「その境地に辿り着いた時、全てが分かると思うわ。私も、赤城さんでさえも、未だその片鱗しか見えていないけれど……ね」
393 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/02/14(土) 09:36:51.63 ID:kmkYAStE0
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獲得経験値(~15/100)
・足柄の経験値+1(現在値5)
・雪風の経験値+1(現在値4)
・響の経験値+1(現在値2)
・皐月の経験値+1(現在値3)
・翔鶴の経験値+1(現在値3)
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投下めっちゃ遅れてしまいました。楽しみに待ってくれてた方が居たら申し訳ありませんと謝っておきます(居るの?)。
原則としてレス順番の通りに進めるけどそんなに拘りないからPhase Aで「次はこのキャラの出番があると作者的にやりやすいんだろうなー」「上のレスでこうだからー……」とか気を遣わなくて大丈夫です。
ということを示すべくちょっとレスの順番から変えてみたり。

っていうかまーたエターナりそうな展開運びしやがって……相変わらず味付けが濃すぎて人によっては拒否反応を起こしそうな感じですが今更すぎますね。
最近リアルがアレすぎるのでわりとマジでエターナ率が上昇してるかもです。
まあ失踪したらしたでしょうがないよねということで……。

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『Phase B』【16-20/100】
レスのコンマ値で登場する艦娘を決定します。
00〜16:雪風
17〜33:翔鶴
34〜50:金剛
51〜67:響
68〜83:足柄
84〜99:皐月
>>+1-5

よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらいで流し読みするか>>351付近を参照下さい。
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394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/14(土) 10:23:24.58 ID:WNRXkQUAO
足柄さん来い
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/14(土) 22:39:54.30 ID:Rft0d+POo
ぽい
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/17(火) 21:38:46.73 ID:MfwNGZJbo
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/18(水) 10:59:07.29 ID:S/9IDHevo
ぽぽい
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/18(水) 21:12:59.49 ID:U2kJ1KBEo
おう
399 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/02/18(水) 21:58:27.38 ID:TZcYd6us0
>>394->>399より
・響1レス/翔鶴2レス/足柄1レス/金剛1レス
で『Phase B』が進行していきます。

////チラシ裏////
朝の光眩しくて……ウェイッカァァァァァ!

E5甲突破しました。まあE3E4は乙なのでモグリみたいなもんですけど。
弾薬20000切ったしこれでダメだったら乙あるいは丙にシフトするかーと思っていた矢先に夜戦カットインの嵐が起こってなんとか抜けれました。
ラストダンス試行回数は数えてないけど20回ぐらいなんで、比較的運は良い方らしいです。
ただ、連合艦隊+支援二艦隊の計24隻三重キラキラ維持状態で10回ぐらいボス仕留められなかったを考慮すると資源消費がマシだっただけで時間的コストはかなり費やしてます(あと体力と精神力)。
途中から心折れたのでF12キーでcond値確認しながらキラ付けしてました。いやホント戦艦水鬼は帰ってくれ……。

今回のイベントのMVPはビスマルクですねー。実戦投入は初めてだったんですけど強いっすねこの子。
旗艦に据えるとコンスタントにカットインぶっ放してくれるのでなかなか有用です。
とりあえずたくさん褒めておきます。

今後の堀りのターゲットは舞風・能代・伊401ですが間に合うか微妙ですね(朝霜はついさっき出た)。
特に伊401はここで手に入れておきたい所なんですけれども。
磯風? いやね、すまんな浜風。道中ならまだしも最終形態のあの布陣で磯風ドロップまでS勝利を取り続けるっていうのはね、うちの艦隊の地力だと宝くじの2等に当選するぐらいの豪運が必要なんだよ……。
本土強襲されて守れなかったってわりともうその時点でゲームオーバーな気はしなくもない。※

※磯風の初登場は14夏E6報酬。14夏E6はAL/MI作戦進行中に敵艦隊が本土に迫ってきたので迎撃せよという旨の作戦である。E
400 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/02/18(水) 22:12:21.36 ID:TZcYd6us0
あ、>>394->>398でしたね。あと謎のEは気にしてはいけないのである。
来週のどこかで投下するつもりです〜と大変アバウトな告知をしておきます。
401 :【16/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/03/01(日) 23:26:15.46 ID:6xb+D3Qx0
自室で瑞鶴と雑談している翔鶴。

瑞鶴「しょーかくねぇ聞いてー、こないだの戦果を加賀さんに自慢したら『それくらいで調子に乗らないように』って言われてさー」

瑞鶴「戦場が違うとはいえ、その時の加賀さんよりも戦果を上げてたのに『調子に乗らないように』って偉そうじゃない!?」

翔鶴「加賀さんは私たちの指導役なのだから、そんな風に言ってはいけませんよ瑞鶴。私たちの今の強さも加賀さんから教わったものを受け継いだからです」

瑞鶴「それはそうだけどさぁー……いいじゃんたまには愚痴っても。ところで、翔鶴姉も最近調子良いよね? 敵艦を一度に二隻に沈めたりさぁ」

翔鶴「私は未熟者だから、その場その場で最善手を尽くそうとしているだけよ。でも、それが良いのかもしれないわね」

赤城「正射必中……正しき射は自分を裏切らない。殊勝な心がけね、翔鶴」 部屋の外から声かける赤城

翔鶴「赤城さん。どうされたんですか?」 扉を開け赤城を招き入れる翔鶴

赤城「二航戦の子たちに稽古をつけてあげていたら、小腹が空いてしまって……これからどこかに食べに行こうかなと。もし良かったらお二人もどうですか? 奢りますよ」 ニコリと微笑む赤城

瑞鶴「おおっ、行きます行きます! やっぱりケチな加賀さんとは違うなー、自分から呼び出しておいていつも割り勘だもん」

・・・・

鎮守府内のラーメン屋。赤城の丼には山盛りのモヤシが盛られている。

瑞鶴「ええっ……これで小腹……?」

赤城「見た目は多いように見えますけど、麺の量をだいぶ減らしてもらっているのでさほど胃への負担は少ないんですよ」

赤城「加賀さんは洒落たお店じゃないと行きたがらないし、二航戦の子たちにも飽きたと言われてしまったのでお二人を誘ったんですよ」

翔鶴「第一艦隊の他の方とは行かないんですか?」

赤城「うーん、皆高級レストランやお寿司屋さんの方が好きみたいなので、誘い辛いですね。私はこういうお店の方が通いやすくて好きなのですけれど」

赤城「そういえば、加賀さんの指導はどう?」

瑞鶴「なんだかなんだ教え方も分かりやすいし、実力“は”尊敬していますねー」

翔鶴「あら、瑞鶴が加賀さんを褒めるなんて雪でも降るんじゃないかしら」

赤城「うふふ。二人がメキメキと力をつけているから、最近は何を課題に与えていいのか悩むって言ってたわよ。吸収が早いって」

瑞鶴「えぇ……口を開けば小言とイチャモンしか言わないあの人が?」

加賀「尊敬する赤城さんの前でこの私を侮辱しましたね。頭に来ました」

瑞鶴「げげっ! うわわわっ! 翔鶴ねえ助けて!」 突如現れた加賀に後ろから襟首を掴まれて引きづられていく瑞鶴

加賀「教育的指導が必要ですね……長幼の序をその身に叩き込んであげますから覚悟しなさい」

瑞鶴「死ぬーっ! 焼き鳥屋に殺されるーっ!」 ズルズル……

赤城(何をしに来たんでしょうか……)

・・・・

赤城「……第一艦隊と第二艦隊の再編があるそうね」

翔鶴「先輩も気になりますか?」

赤城「ええ。長らく変動の無かった第一・第二艦隊の大規模な人事異動、それも空母機動部隊を主軸とした決戦用の艦隊…………」

赤城「いよいよ、と言うべきか、ようやく、と言うべきか……」

翔鶴「先輩は前代の提督の時から空母部隊の重要性を主張しておられましたよね?」

赤城「ええ。これまでこの鎮守府では、激戦区でも問題なく戦える空母が私と加賀さんだけでした。でも、今は二航戦の飛龍・蒼龍、それに貴方たちが居るわ」

翔鶴「先輩に認めて頂けるなんて……恐縮です」

赤城「貴方たち二人もここ数年で十分な力をつけたと思うわ。でも、それにかまけていてはダメよ」

赤城「二航戦の二人の練度は、今や私と加賀さんに匹敵……いや、ひょっとするとそれ以上かもしれないわ。貴方も上を目指して精進することね」

翔鶴「ええ。当然です」 毅然とした態度で言い放つ翔鶴

赤城(おっとりした子だと思っていたけれど……意外にも精神的な『餓え』を秘めた眼をしているわね。私や加賀さんのことさえも通過点としか見なしていないような、そんな眼……)

赤城(彼女ならあるいは……)
402 :【17/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/03/01(日) 23:39:13.07 ID:6xb+D3Qx0
執務室。提督に第四艦隊に関する調査結果を報告する響。

提督「……早かったな」

響「いや、これでも時間がかかってしまった方だ。少し手間取った」

自分の作った資料を提督に手渡す響。

響「見てもらえば分かると思うけど、その資料には例の一件に関与している者のリスト及びその根拠を書き記している。一部は写真に収めることが出来たものもある」

響「関与した人間の全てを洗い出すことは出来なかったけど、これで粗方一網打尽に出来るとは思う」

自信ありげな口ぶりの響。

提督「ご苦労だった。いよいよ打って出る時が来たようだな」

提督「……話は変わるがヴェールヌイ。調子はどうだ?」

響「いいや、特に変わりないよ。問題ない」

提督「そうか。いや、最近妙に上の空だったので心配していたのだ」

響「……」

提督「姉妹のことが気になるか?」

響「気にならないと言えば、嘘になる。だが……その資料にも書いてある通り、処断しないわけにはいかない」

響「今となってはもはや他人さ」

提督「そうか。……今のお前の居場所はどこにある? 誰の為に生きている? 何の為に生きている?」

響「? どうしたんだい司令官。禅問答でもする気かい」

提督「いや、お前はかつての姉妹と今の地位とを天秤にかけた上でこちら側に傾いたわけだろう。その理由が気になるだけだ」

響「まるで私が第四艦隊の側に着くと思っていたような言い方は少し気に障るな」

提督「そうではない。むしろ、お前のことは信頼している。信じていなければこんな依頼などするものか」

提督「だが……。いや、よそう。妙な事を聞いたな。すまなかった」

提督「俺にも兄弟が居るんでな。お前を見て少し感傷的になっただけだ。気にするな」

響「私は、自分を信じてくれる者の為に応えたい。司令官が私を信じてくれるというのであれば、私もその期待を裏切るわけにはいかない」

響「……少し、個人的な話をすると。私は姉妹たちのことを軽蔑している」

響「私は自分の力でこの高みまで昇り詰めてきた。貴方に全幅の信頼を寄せられるほどの“私”になることが出来た」

響「私は自分の理想を貫き通したからだ。試練を乗り越えてきたからだ。あの姉妹たちと一緒に居た頃に思い描いてきた理想を現実に変えるまで戦ったからだ」

響「勿論、まだ完全に実現出来たわけじゃない。けれど、私は決して自分自身を裏切らなかった」

響「だからこそ欺瞞が許せない。口で理想を語りながらもそれを実現しようともしない弱さが許せない」

響「……それがかつて各々の望みを語り、それを果たそうと誓い合った仲だったとしても。いや、だからこそ、だ。ましてや私利で悪事に走るなど失望甚だしいさ」

提督(苛烈だな……だが、なかなかどうして芯の強い奴じゃないか。気に入った)

響「すまない。熱くなりすぎたようだ。少し頭を冷やしてくる」

・・・・

数日後。響の提出した資料を元に、麻薬取引に関与した者の一斉取締を行った提督。

提督「さて……一連の関係者を一層、被疑者及び関係者の拘束も済んだ。残るは龍田ら第四艦隊の面々のみ。もはや袋の鼠だな」

響「司令官自ら出向くとはどういう風の吹き回しだい?」

提督「俺が直接方をつけた……というポーズが必要だ。政治的にな」

提督「人が人の上に立つには、下々の者を自分の思惑通りに動かそうという意志・その野望を成し遂げるに十分な器量……そして部下の支持が必要だ」

提督「支持を得るには、財や権利などの何かしらの利益を提供する、人間的な魅力やカリスマ性で心酔させる……いくつかの方法がある」

提督「俺は自分自身を勇と知は満たすが仁は備わっていない、と客観視している。また、ここに居る艦娘全てを従わせるだけの財や幸福を用意することは出来ない」

提督「だがこんな所で二の足を踏んでいるわけにもいかない。とまで言えばもう分かるな? 清廉潔白である様を示せば、今出回っている俺に対するよからぬ噂も払拭出来るだろう。行くぞ!」
403 :【18/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/03/01(日) 23:39:50.34 ID:6xb+D3Qx0
鎮守府の地下道。堅牢な鉄扉の鍵を打ち壊し、大麻が栽培されている部屋に突入する提督と響。

提督「命数尽きたな。観念しろ!」

暁「龍田さん! ここは私たちが食い止めるから……逃げてっ!」

加古「あーあーあーあー……面倒なことになっちゃったねーこりゃあ」

提督(この鎮守府に不在籍の艦娘……他所からの侵入者か……!)

加古「っと、そう怖い顔しないで欲しいね。こっちも仕事なんで、なっ! と」 砲撃を壁に放ち、逃走する加古と龍田。

雷「響……悪いけど、ここから先には行かせないわよ!」

響「クッ……逃してたまるか! お前たちに構っている暇はない、蹴散らしてやる」

提督「ヴェールヌイよ。心配要らん、これも予測の範囲内だ。お前はここで交戦し、この者たちの身柄を確保しろ。……殺すなよ」

身を翻し部屋を出て行く提督。パチンと指を鳴らし、高らかに叫ぶ。

提督「さて生中継をご覧の諸君! かの艦娘、龍田はあろうことか違法薬物の取引をし、不当な利益を得ていたこの鎮守府の大敵である!」

提督「特例だ! 奴を捕捉し、俺の前に連れてきた者には褒美を遣わすッ!」

・・・・

足柄(突然『すぐに出撃出来る準備をしておけ』だなんて訳の分からない命令が来たと思ったら……こういうことね!)

足柄「待ちなさァーい! その首、置いてけぇぇ〜ッ!!」 全速力で駆け寄る足柄

加古「ええっ!? もう追手が来てんじゃん! これマジに逃げないとヤバいって!?」

龍田「今手が離せないのよ〜……ちょっと時間を稼いで頂戴〜?」 穏やかな口調とは裏腹に激しい剣幕でスマートフォンを操作する龍田

加古「ちょっと! 本気で言ってんのそれ!?」

足柄「久しぶりの出撃だからね! たっくさん暴れさせてもらうわよッッッ!」 龍田たちの方向へ容赦なく砲撃する足柄

加古「(うげげ……力の差がありすぎるよこりゃ……)本当にちょっとの時間しか稼げないかんねっ!? 知らないよッ!?」 足柄に気圧されつつも反撃する加古

・・・・

足柄「さあ観念するのね! ここで私に大人しく捕まるか! 海に沈んで深海棲艦のお仲間になるか! 私はどっちでも構わないわよ!」

加古「ぃてててて……ちょっとこりゃ洒落にならないよマジで……(これ以上損傷すると逃げながら戦うのは不可能……遠くからも追手が来ているみたいだし、ここで撤収しないともうどうにもならんね……)」

龍田「うふふ、ありがとね〜。加古ちゃんはもう帰っていいわよ〜?」 加古の後方へ下がり、槍を構え足柄と対峙する龍田

龍田「……こんな所で私と心中したくはないでしょう? 行きなさいッ!」

加古「スマン龍田。達者でねっ!」

足柄「あっ、ちょっと待ちなさいよッ!」 足柄が逃げる加古を追おうとするや否や、自分が今まで逃げてきた鎮守府の方向に逆走する龍田

龍田「鬼さんこちら〜♪」

足柄「ちィッ! ……手負いのあの重巡を大破まで追い込んで鎮守府まで運ぶのは簡単……でも、それは目の前のアイツを倒してから!」

全速力で龍田を猛追する足柄。砲の嵐をうまく避けながら逃走を続ける。

龍田(ここまで来れば安心かしら) 突然ピタリと立ち止まる龍田

足柄「突然航行をやめた……? 一体何を」

龍田「もはやここまでねぇ〜……降参です〜」 ポケットから白旗を取り出し、わざとらしくそれを振ってみせる

足柄「は?」

龍田「もうこれ以上逃げ回っても私に勝ち目はないわ。鎮守府まで連れてってもらえるかしら?」

足柄(……なるほど。最初からこうするつもりだったというわけね。ここからだともうあの重巡を追うのは恐らく困難。……してやられたわッ!)

・・・・

提督「ご苦労だったな足柄。大儀である」

足柄「芝居がかった口調はやめてください。それに、もう一隻の方は取り逃してしまったし……はっきり言って、試合に勝って勝負に負けた気分だわ」

提督「いや、迅速な対応、見事であったぞ。約束通り褒美を遣わそう(……まだ映像中継で撮られているからあまりぶっちゃけた話は出来んのだ。この場はお前を立ててやるから素直に応じておけ)」 小声で足柄に囁く
404 :【19/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/03/01(日) 23:40:21.55 ID:6xb+D3Qx0
提督「……これにて決着というわけか。撮影ご苦労雪風。足柄よ、後ほど話があるが……今は一先ず休んでもらって構わない」

提督「さて……俺は奴の尋問へ向かうとするか」

鎮守府内の軍事刑務所取調室。龍田に問いかける提督。

提督「ご機嫌いかがかな。色々と聞かねばならぬことは多いが。目的は何だ?」

龍田「あらぁ〜そんな凄まれても答えると思」

提督「獄卒よ、拷問用の道具は不要だ。こいつから差し押さえた薬物を持って来い。自白剤代わりに使わせてもらうとしよう」

龍田「ヒッ! ……じょ、冗談よ〜」 あからさまに脅えた表情を見せる龍田

提督「こっちは冗談で言ったつもりは無いんだがな。いやな、俺はお前のことを心底軽蔑をしてはいるが、能力に関しては大したものだと思っているぞ。今まで誰にも気づかれず麻薬の元締めをしていたとはな」

提督「疑問なのは、なぜこの鎮守府内で“仲介者”が存在しなかったのか、だ。この鎮守府内の薬物所持者は皆、『お前から買った』と言っている。
大麻を栽培し、薬物を取引していたようなお前が、なぜ直接買い主とやり取りしていたのか……そこが気になる。
管理と監視の厳しい艦娘相手に売っていなかったのは賢明だろうが、それでも自分の働く職員や整備員相手に自分の顔を晒して売っていたというのが不自然だ」

龍田「仲介が居た方が危険だと思ったからよ〜? それに、この鎮守府内での稼ぎはオマケのようなもの。大事にならない程度のどうしようもない相手にしか売ってないわ」

提督(ふむ、さしてこいつの味方はいないらしいな……)

提督「なるほど。これは俺の推測だが、主な取引先は大陸の連中だな?」

龍田「そうよ〜? 既に深海棲艦に荒らし尽くされ国としての体も成していない、無法地帯でなら何をしても問題無いでしょう?」

提督「やはり、か。今まで発覚しなかったのもそのせいだな。ところで……」

トゥルルルルル ピッ

提督「むむ、すまない今は取り込み中なんだが……何? 分かった。……いや、俺が行った方が良いだろう」 電話に応じる提督

提督「やってくれたな。……獄卒、俺が戻ってくるまでコイツを決して逃がすな。良いな?」 憎憎しげに龍田を睨んだ後、部屋から出て行く

・・・・

響「司令官、緊急事態だ」 執務室前の廊下で提督を待っていた響

提督「分かっている。……にしても、今の時代に海賊とはな。時代錯誤も甚だしい」

提督「大方龍田の仕業なのは分かってはいるが……、よりにもよってこの国で最強の兵器である艦娘が在籍している場である鎮守府を狙うというのは一体どういう腹積もりなんだろうな」

提督「ヴェールヌイ、雪風を連れ不審船の船員を取り締まれ。相手は人間だ、お前達が本気を出したらミンチになりかねないので加減はしろ」

提督「上陸した賊は……翔鶴! 良いところに来たな。こいつに何とかしてもらう」

翔鶴「え? え?」

翔鶴「鎮守府内で索敵なんて……初めてなんですけど」

提督「プロは仕事を選ばんものだ。何とかして見せろ」

翔鶴「え? えぇ〜……? やってみますけど」 んな無茶な、とでも言いたげな表情をする翔鶴

・・・・

翔鶴「武装した人間が……100名超! その多くが資材庫に向かっています!」

提督「資材庫……アレが狙いか。騒ぎのあった今ならば……とでも思っているのだろうが! バカどもに引導を渡してやろう! 行くぞ翔鶴ッ!」

翔鶴「提督自ら行くんですか!? 危険です!」

提督「そう思うならお前が俺を守ればよかろう。なに心配するな、賊にくれてやるほどこの命、安くはない」

翔鶴「?!」

翔鶴(というか、命を狙われる危険があるかもしれないからという理由で今まで執務室から出てこなかったのでは……?)

・・・・

資材庫に押し寄せ、略奪を行っている海賊の群れに向かって一喝する提督。

提督「愚か者どもめがッ!!!!」

海賊A「なんだァてめぇは? ……あァ? ゲゲッ、艦娘が居るじゃねえか!?」

海賊B「ヒィッ!? もう艦娘が来ちまったのか!? 撤収だ、撤収」
405 :【20/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/03/01(日) 23:40:48.94 ID:6xb+D3Qx0
提督「我こそはこの佐世保鎮守府の全権を担う提督であるッ! 狼藉者どもめに鉄槌を与えに来たッ!」 堂々たる様子で海賊たちに言い放つ提督。

提督以外のその場に居た人間の頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。

海賊C「か、艦娘が居ようがコイツをとっちめちまえば関係ねえだろ! やっちまえ!」

海賊D「そっ、そうだそうだ、人質にすればこいつらも手を出せねえ! やっちまえ!」

提督「翔鶴! 後は任せたぞ!」 翔鶴の方を向いて親指を突きたてる提督。既に海賊に囲まれつつある

・・・・

比叡「金剛お姉さま? 何を見ておられるのですか?」

無言で海賊の群れを指す金剛。

比叡「あれは……! 一体何の騒ぎですか!? お姉様!」

金剛「分かりませんが、パイレーツがこの鎮守府にアターックを仕掛けてきたみたいデース」

金剛「恐らくはさっき放送のあった龍田の一件と関係してるんでしょうガ……。なんでテートクがあの群れの中に飛び込んで行くデース!? 理解不能すぎマース!!」

比叡「お姉様!? 冷静に分析してないで私たちも助けに行った方が良いのではないでしょうか?」

金剛「Oh! それもそうデスネ! ファイヤー!!」

窓をぶち破って資材庫前に群がる人ごみ目掛けて砲を放つ金剛。

提督「加減しろ! 莫迦が!」 取り押えられて簀巻き状態になっている提督

翔鶴「て、提督……そんなこと言ってる場合じゃないと思います!」 弓を奪われ同じく簀巻き状態にされている翔鶴

金剛「威嚇射撃だから問題ありまセーン! サァ、金剛型一番艦! 金剛がお相手シマース!」

海賊A「戦艦だと!? まずい! ずらかるぞ」

金剛「もう遅いデース!」 ダブルラリアットで海賊の群れを猛進し次々に伸していく金剛

比叡「この比叡! 悪党を逃がしはしません!」 逃げようととした海賊に鉄拳制裁を加えていく比叡

提督「もしもし? 了解。では、後は他の者に任せておけ。ヴェールヌイは例の地下の部屋へ、雪風は龍田の部屋へ向かってくれ。いや念のためだ、それから、雪風は……」 騒ぎに紛れて平然と響たちと連絡を取る提督

翔鶴(なんかいつの間に縄ほどいてる!?)

・・・・

提督「やれやれ……加減しろと言ったのに。これから尋問しなければならんのに声も出せなくなるほどのトラウマを植えつけてどうするんだ」

金剛「Sorryテートクゥー! でも、決めるところはビシッと決めないとダメデース!」

提督「まぁ確かにそうではあるが……。ところで金剛よ、お前、きちんと精神鑑定は受けたんだろうな?」

金剛「ダァカァラァー! ワタシはいたって心身ともに健全って言ってるデース!?」

提督「ふむ、それは残念だ。……それはそうと、ここから先は真面目な話。例の“不調”はまだ続くのか?」

金剛「ハイ。でも、やっぱりワタシ、人と合わせて動くのが苦手みたいデス……」

提督「そうか。では次回の編成では第一艦隊を外れてもらう」

金剛「!? ちょ、ちょっと待って欲しいデース! もう少しだけ猶予を! 頑張るから見捨てないで欲しいデース!?」

提督「……金剛。今のお前が第一艦隊の旗艦であり続けることに何の意味がある? 結果を出せない者が高い地位に居座り続けていることを正しいと思うか?」

金剛「そ、それは……。でも、今までとはやり方が違うから……」

提督「そうだな。従来の戦い方であればお前は一番活躍していた。だが、それは今の俺のやり方とは異なる。そして今の俺のやり方の方が総合的に見て被害を抑え結果を出すことが出来ている。
どちらに順応すべきかは自ずと答えが出ることよな?」

返事は無いが、奥歯を噛み締めながら屈辱に満ちた顔をしている金剛。

提督「金剛……お前が第一艦隊の旗艦であることに拘泥する理由はなんだ? 地位か? 羨望か? 実利か?」

金剛「ワタシは……ナンバーワンであり続けたいデース……。そうでなければ……そうでなければ、幸せになれないデース」

提督「……お前にどんな過去があったかは知らんし興味もないが、とにかく第一艦隊からは外れてもらう。が“ナンバーワン”とやらにはなれるかもしれん。お前の働き次第では、な」

提督「お前の力は、集団の中では発揮されないのかもしれないが、俺はお前の能力を買っている。だからお前にはこれまでとは全く異なる任を与える」

提督「もう俺にくだらん媚を売るのはよせ。ただ結果のみで応えろ。お前の働きに俺は応じるだけだ」
406 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/03/01(日) 23:50:34.59 ID:6xb+D3Qx0
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獲得経験値(~20/100)
・響の経験値+2(現在値4)
・翔鶴の経験値+4(現在値7)
・足柄の経験値+2(現在値7)
・金剛の経験値+2(現在値5)
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今週中とか言ってどうせまた遅れるんでしょムードが漂ってましたが……滑り込みました。極道入稿ならぬ極道投下。
いやまあモチベとか体力とかリアルとか色々あるし仕方ないわよね。
仕方ないけど仕方ないとか言ってたらいつまで経っても仕方ないままなのが人生の仕方ないところだ。
次回……は、投下できそうになったらまた告知するです。つまり未定。

////チラシの裏////
大鳳!!!!!!!!!出たの!!!!!!!大鳳!!!!!!!タウイタウイの!!!!!!!大鳳!!!!!!!!
残るは大和だけです。大型卒業すれば精神的に楽になるし、イベントでも資源消費を恐れずキラ付け無しの突貫プレイが出来るようになるので、なんとか揃えたいところだが……そう甘くないのが大型建造。
あと菱餅出ねえ! 全然出ねえ! 間に合う気しねえ! でも3-3粘着してたら舞風出たのはラッキー! だがもう資源がねえ!

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『Phase A』【21-25/100】
レス安価で登場する艦娘を決定します。
登場させたい艦娘の名前を1人分記名して下さい。
(雪風・翔鶴・金剛・響・足柄・皐月の中から一人)
>>+1-5

よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらいで流し読みするか>>351付近を参照下さい。
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407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/02(月) 00:45:32.31 ID:CrCeGd7po
乙です
皐月
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/03(火) 00:02:03.71 ID:2tgd7hPVo
乙 足柄
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/03(火) 00:28:30.46 ID:G+s580BAo
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/04(水) 01:21:54.72 ID:27bA1YNY0
乙 響
411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/04(水) 04:39:09.98 ID:v+aqEA1so
雪風
412 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/03/04(水) 12:21:31.56 ID:5+QqwhszO
>>407->>411より
・皐月1レス/足柄1レス/響2レス/雪風1レス
で『Phase A』が進行していきます。
そういえばPhase Aではまだゾロ目出てませんね。
若干エクストライベントの存在を自分で忘れかけてました。

何かシチュエーションを書いておくと〜みたいなことを前に書いておきましたが、アレはアレです。
ネタを出してもらうことを期待しているわけではなく、作者さえも抗えないデウス・エクス・マキナが起こりうる“余地がある”、ということに意味があるんです。
実際その機械仕掛けご都合ゴッドが動くかどうかは問題ではなく、『作者の意図していないことが発生するという可能性もある』ってしておいた方が面白そう! ってだけです。

……さすがにそこまでスケールのデカい何かが飛んでくることは無いと思ってますし、「ここちょっと塩味欲しいな」とかそんな感覚で書いてもらって構いません。
そもそも書いた所でゾロ目出さなきゃいけないとかそんなんなんで実現性薄いですしね。
えらく大袈裟に書いたけど思惑はだいたいそんな感じなのです。



////チラシっぽい////
最近艦これで初めて元帥になりました。600位とか初めてでビビりました。
月末には大将〜中将になってるでしょうが。翌日には1000位になってましたしね。
だいたい菱餅のせい。あと3個……。

これ、5月になったら柏餅が特定海域でドロップしますとか無いよね? ね? いやマジで。
しかしそうなってしまうと一番可哀想な思いをするのはほっぽちゃんなのである。
クリスマスでは三式弾をプレゼントされ、雛祭りでは健やかな成長を祈って三式弾を供えられ、……なんとも不憫である(でも倒す)。
413 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/03/12(木) 22:42:32.68 ID:YHgi9Mtj0
また日が開いてしまいました。ノってる時はちゃちゃっと書けるんですけどねー。常にそうってわけじゃないし人生色々あるから仕方ないよねーと自己弁護。
次回の投下は明日を予定しております。普段通りなら多分21時頃になるでしょう。



////Chillaxing////
菱餅狩りも終わり何気なく大型艦建造してたら伊401が出てきました。冬イベで結局ゲット出来なかったので思わぬ僥倖。
残るは能代・大和・磯風ですね。いよいよこれくしょん作業もラストスパートといった感じです。
縁が無いのかやたら能代は出てきませんね。磯風は次以降のイベントに期待するとして……うちの鎮守府的にはラスボスは大和ですかね。
お前さえ倒せば俺はこの世の苦しみ(大型艦建造)から解放されるのだっ……!

お前いつもゲームの話ばかりだなと言われそうですが実際艦これしかやってないような人生なのでしょうがない。いやそんなことはないです。
艦これに限らずゲームは好きなんですが、ただなんかこう昔好きだったゲームとかもわざわざ引っ張り出してやったり新しいハード買って遊んだりするのもなー……とか。
妙ちくりんなジャンルの音楽聴いたり漫画も結構読んだりしてたんですけど最近はそうでもない感じですね。
ヤバイぞ! この手の話はだんだん暗い気分になっていく罠だ。やめやめ。
無趣味な人間になりつつあると自嘲してられるうちはまだマシだけど本当にそうなってしまったら鬱の二歩手前ぐらいでわりとアレなんですよね。あるいは悟りの境地か。
いっそマニ車を回しまくって徳を積んで解脱するのもいいかもしれない。よくねえよ!?
414 :【21/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/03/13(金) 21:41:37.63 ID:lrMYVIKO0
深夜の軍事刑務所……龍田らと同様に収容されて牢屋の中に居る皐月に話しかける提督。

提督「直接会うのは二度目になるな。訓練生の頃の面接試験以来か」

皐月「はっ、はいっ! 司令官」

牢の中ではすることもないので不貞寝していた皐月であったが、提督が来たことに気づくや否や姿勢を正し敬礼をする皐月。

提督「こんな牢の中に閉じ込めてすまなかったな。文月ともども明日の朝には釈放してやる」

提督「第四艦隊に入って日の浅いお前たちがこの一件に噛んでるとは思えん。そもそも第四艦隊の動きが怪しいということはハナから分かっていた上でお前たちを配属させたのだしな」

皐月「? ……でもボク、あ! いえ、私、何も司令官の役に立って居ませんが」

提督「前に会った時も言ったが、無理に一人称を直さんでもいい。不自然に畏まった態度を取られるぐらいなら敬語も必要ない。尋問しているわけではないのだから、あまり俺を恐れるな」

提督「お前たち二人を第四艦隊に回したのは、龍田の信頼をそれなりに得られる見込みが高く、かつ、懐柔され奴の手駒にならなそうだったからだ。つまり、毒にも薬にもならないというわけだな」

皐月(否定出来ないけど失礼だ……)

提督「龍田について何か分かったことは無いか? 奴の真の目的が知りたい」

提督「常設の艦隊に所属しているのであれば、まず金には困らないはず。だのになぜ奴は例の取引に手を出したのか……そこには私利私欲を超えた何かの理由があるはずだ、と睨んでいる」

提督「……何か知っている顔だな。やはりお前たちを選んで正解だったようだ」

・・・・

皐月「あの人は……どうやってそれを実現するつもりかは分からないけど、轟沈するはずだった艦娘を蘇らせようとしているみたいだ。その為にお金も必要だったんだと思う」

かつて龍田・文月と訪れた一室で見た出来事を話す皐月。

提督「なるほど、力尽きた艦娘は修復剤を使っても傷が治るだけなのか……知らなんだ。艦として死んだから意識が戻る事はなく、人として生きているから身体が腐ることもない、というわけか」

皐月「……うん。あの時の様子からして、機能を停止した艦娘の復活……それがあの人の本心なんだと思う」

提督「どんな手を使ってでも、というわけか。……なるほどなるほど。フフフ、フフ、ハハハハ」

提督「良いだろう。全容は見えた、そしてそのゴールもだ」

皐月「?(突然高笑いしだした……一体どうしたんだ)」

提督「ご苦労だったな皐月。お前は十分に役に立った」

高笑いしながら部屋を出る提督。

皐月(一体なんだったんだ……)

・・・・

数日後。再び取調室で顔を会わせる提督と龍田。

提督「海賊をけしかけるなんて考えたな。“菱餅”で煽ったか?」

提督「その顔、図星のようだな。港町や島を襲って生計を立てている荒くれどもといえど所詮生身の人間。数百人集まったところで駆逐艦一隻にも勝てやしない」

提督「大本営、政府、その他研究機関……その中でもごく限られた人間にしかその真価は分からない。いや、ひょっとすると連中でさえ分かっていないのかもしれないな。
見た目はちゃちいが『オーパーツ』『聖遺物』『神器』……そんな風に呼ばれてる代物だ。当然裏のルートで捌けば莫大な金になる」

提督がポケットから“菱餅”を取り出す。
底面が菱形の四角柱、桃色・白色・緑色と三層に色の分かれているその姿はまさに実物の菱餅と見紛わんばかりである。しかしこれは当然単なる菱餅であるはずがない。
現代の科学ではその謎が完全には解明されていないため、ロストテクノロジー、あるいは、深海棲艦が独自に発明した物質と噂されている。
その実態は謎に包まれているが、この“菱餅”や“菱餅”と同様の性質を持つ、“プレゼント”(立方体の箱のような形状をしている)・“チョコレート”(柱体で面の形がハートに似ている、茶褐色の物質)は深海棲艦が極稀に所持している。
これらの稀少なアイテムを原料に、艦娘の装備をより強力にする為に必要な消耗品である“ネジ”(『改修資材』と呼ばれている)などが生成される。
その為、深海棲艦を倒し“菱餅”などを得た提督は報酬と引き換えにそれらを大本営に渡すことが暗黙のルールとなっている。
大本営は提督から得た“菱餅”などをもとに、軍備を強化する為の“ネジ”や“指輪”を作り、提督も大本営からその恩恵を授かる……いわゆるwin-winの関係である。

提督「だからあの海賊共はリスクを犯してでも“これ”を盗みに来た。迷いなく資材庫に向かったんで実に分かりやすかった、混乱に乗じようが大した相手ではなかったな」

提督「残念だったな龍田。“この前お前が確認しに来た時は”あったのにな。……どうやら監視カメラの台数が増えていたのには気づけなかったようだな」

龍田「でも〜海賊さんの財布が潤っても……それが私に何か影響があるんでしょうかぁ〜?」

提督「では今回見事な働きをしてくれた雪風に引導を渡してもらうとしよう。雪風、例の資料を!」

部屋に入ってきた雪風。龍田の部屋にある、彼女の自前のパソコン画面を撮影した紙を机の上に並べる。垂れてきた冷や汗をハンカチで拭いだす龍田。

提督「お前の部屋に、海賊の頭領と思しき人物が訪れていた。お前の代わりに送金しようとしているところを捕えておいたよ。お前の同士に今まで稼いだ金を送るつもりだったんだろ」
415 :【22/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/03/13(金) 21:46:32.36 ID:lrMYVIKO0
提督「雪風が気を利かせてキーボードの手元まで撮影していたからな。人力キーロギングさせてもらった」

提督「お前が薬物の取引をしているならば、それによって得た金がどこかにあるはずだ。だが、この鎮守府内には保管されていないようだった。ならばどこかに預金しているに違いないと睨んだのだ」

提督「Googolなどといった検索エンジンが辿り着けないインターネット上のウェブサイト郡を“深海Web”と言う。が、検索エンジンが辿り着けまいが、WWW上に存在していて公開されているページであるのならば、辿り着けないことはない。
俺は違法性のある“深海Web”上のサイトを片っ端から漁り、色々と趣向を凝らしてみて何とかうちの鎮守府に関係ありそうな記述のあったページおよび掲示板のスレッドを発見した。が、ここで暗礁に乗り上げた」

提督「その理由はお前もご存知の“Toroia”だ。ウェブのどこかしらにアクセスすればIPアドレス……すなわち足跡が残る。ウェブ上で金や薬のやり取りをしていたなら(手間ではあるが)サーバに問い合わせれば解決するのだが……。
無数のプロキシサーバを経由……つまり、中継となる代理サーバを経由してやり取りをすれば発信元の特定は困難になる。調べたところで代理サーバのそのまた代理の代理の代理の代理のIPアドレスしか出てこないわけだからな。
たとえこの鎮守府に関係のある人物が違法性のあるやり取りをしているのを察知しようが、その書き込み主は誰なのかを特定することが難しい、というわけなのだ」

提督「が、お前がまんまとこの鎮守府に海賊を呼び寄せたことによって、お前のパソコンにログインすることが出来た。おかげでお前の“DMMマネー”も全額差し押さえることが出来た。お前に関連してた連中を洗い出すことも出来る」

“DMMマネー”――“Digital Mass Mate Money”の略称である。現代においては最も普及している仮想通貨のことである。P2P方式を利用していることなどが特徴に挙げられる。

提督「お前のパソコンにログインしてからの工程は雪風が上手くやってくれたさ。聞きたいか?」

龍田「……もう結構よ。いいわ、私の負け、なのねぇ……。せめて足掻こうと思ったけれど、それすらもうまく行かないのねぇ〜……」

龍田「またしても、“死神”に邪魔されてしまったのねぇ〜……」 憎々しげに雪風を睨みつける龍田。途端に震え出し、扉の近くまで下がる雪風

龍田「ふふっ、“死神”のくせに私が怖いのかしらぁ〜……? 面白いわね〜……」

雪風「死神じゃ……ありません……!」 震え声での抗議

龍田「ふふっ、あの時はお互い別の鎮守府だったけどぉ〜……前線で戦った事もない天龍ちゃんたちを囮にして逃げ帰ったのを今でも覚えてるわぁ〜」

雪風「あっ、あれは撤退命令が出たから……! それに、あの場で私にはどうすることも……」

龍田「そんなことは承知の上よ? 承知の上で言ってるの。そうであっても、どうあっても私にとって貴方たちは仇。許しはしないわ。
天龍ちゃんや私たちを使い捨てにした大湊の提督も、それを見殺しにした単冠湾の提督……ひいてはその命令で動いていた貴方や響も。全員許しはしない。私は貴方たちを許さない」

提督(過去に何やら悶着があったようだが……どうも色々と事情があったらしいな) 雪風の方に手を向け、こちらへ来るようクイクイッとジェスチャーする

提督「横から失礼。ほほう、こいつが“死神”か。そうかそうか。そうかそうか。いや……なるほどなるほど」

いやらしい笑みを浮かべる提督。龍田に気圧されて震えている雪風を胸元に引き寄せ、ワシャワシャと乱暴に頭を撫でる。

提督「こいつが“死神”に見えるならその考えは改めた方が良いだろう。ナリはちんちくりんだが……こいつは“幸運の女神”そのものだ。それもお前にとっての、な」

提督「獄卒! 隣室で待機している“奴”を連れてこい」

獄卒が扉を開けると、かつての龍田の同胞であった天龍が現れる。

龍田「嘘……天龍、ちゃん? 皆……!」

天龍「へへっ、随分遅くなっちまったが。お前に会いに、あの世から舞い戻ってきたぜ……っと、そんなカッコいいこと言えるような最期じゃなかったけどな」

抱き合う龍田と天龍。天龍の胸の中で涙を零す龍田。肩を叩きなだめる天龍。

天龍「アンタが何者なのかは分からないし、どうやって海に沈んだはずの俺をここに連れてきたのかも分からない。……が、とにかく礼を言うぜ」

提督「詳しい話は後でしてやる。これにて終幕だ。雪風が居なければこうはいかなかっただろう。感謝するんだな」

・・・・

軍事刑務所近くにある公園。ベンチに座り、フゥ、と溜息をつく提督。隣には雪風が座っている。

提督「……にしても今回は幸運だった。
まず、何かが起こる前にお前が鎮守府内で麻薬が取引されていることを察知してくれたこと。龍田に察される前に関係者の絞込みと諸々の対策が出来たこと。
追い詰められた龍田が何かしらの騒動を起こしたのは想定済みだったが、それをかえってプラスの方向に利用出来たこと……特に龍田の真の狙いを皐月から聞き出せたことが大きいな。
それから、俺とお前で“兄さん”を呼び寄せることが出来たこと。“兄さん”が万事上手くやってくれたこと……挙げればキリがないな」

提督「連日徹夜に付き合わせてすまなかった。俺一人ではどうしても時間がかかり過ぎたからな……」 ングッ……ゴクッ

べコン、とコーンポタージュ缶の飲み口下部を凹ませる提督。雪風はその様子を不思議そうに見つめている。

提督「凹ませたのが気になるか? こうやると中のコーンが出て来やすいのだよ」

雪風「いえ。しれえはコーヒーが好きじゃなかったでしたっけ?」

提督「缶コーヒーは好かん。……そうだ、雪風。お前の分もあるぞ。ま、自販機で当たりが出ただけなのだがな」

提督がポケットから紙パックのジュースを取り出す。『どろり濃厚 ピーチ味』と書かれている。

提督「駄賃というには安すぎるが……ひとまず乾杯だ」

雪風「ゴクッ、ンヴッ!? うーん……おいしくない……」 渋い表情でジュースを見つめる

提督「……そうか」
416 :【23/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/03/13(金) 22:02:00.78 ID:lrMYVIKO0
執務室を訪れる響。

提督「響か。何用だ?」

響「いや、用は無いんだが……ダメかい?」

提督「……そうか」

提督はそれ以上何も言わず、部屋に備えつけの冷蔵庫の中身を物色し始める。

響「司令官、珍しく機嫌が良いね?」

提督「なぜそう思った? ……事実、吉事があったのは確かだが」

響「用もなく部屋に入ってきた私を拒もうとしないし、声色が普段よりも優しかったからね。顔が見えない分、そういう所で司令官の内心を探っているわけだ」

提督「やれやれ……。ま、お前相手なら拒む理由が無いからな」 ポットから二人分のカップに珈琲を注いでいる

提督「飲むか?」

響「ありがとう。いただくよ……ンンン゛ン゛ッ!?」 顔をしかめる響

響「司令官……これは本当にコーヒーかい? 何が入っているんだ?」

提督「カップの1/4から3/1程度のコンデンスミルクを混ぜた珈琲……いわゆるベトナムコーヒーというものだな。前にブラックよりは砂糖とミルクを加えた方が好きと言っていたので淹れてみたのだが」

響「コーヒーにこんな過剰な甘さは求めてないよ司令官……」

提督「ふむ。俺はこれはこれで好きなのだがな。俺のブラックと替えるか?」

響「あぁ。頼む……これはちょっと……」

・・・・

提督「……」ズゾゾゾ

響(普通に飲んでる……)

響「そういえば、吉事があったと言っていたけど。何があったんだい?」

提督「うむ。……久しぶりに兄と会ってな」

響「どんなお兄さんなんだい?」

提督「俺がこの世で唯一尊敬している存在だ。恐らく、知で彼に並び立つ者は居ないだろう。俺の師であり、理想であり、生きる理由だ」

響「司令官にそこまで言わしめるとはね……興味が湧いてきたな。この鎮守府の近くに居るのかい? 私も会ってみたいものだな」

提督「近くというか……ここに居るぞ。今は寝てるがね」

・・・・

響「おっと……長話しすぎたかな。そろそろおいとましなきゃだね。それじゃ」

提督「待て」

響「?」

提督「姉妹が気になるのだろう。だから訊きに来た。違うのか?」

響「気にならないと言えば嘘になるが……」

響「私とて罪人に情を抱くほど愚かではないさ」

提督「そうか。……俺は今から奴らに会いに行こうと思う。お前はどうする? ついて来るか?」

言葉を発しないの響。提督は椅子から立ち上がり、彼女に手を差し伸べる。

提督「今生の別れになるかもしれないぞ」

力なく腕を延ばす響の手を握る。

提督「……行くぞ、ヴェールヌイ」
417 :【24/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/03/13(金) 22:16:28.45 ID:lrMYVIKO0
軍事刑務所内、牢屋前。

提督「俺の話は後で良い。また後で来る」 その場を立ち去る提督

響「……分かった」

・・・・

響が目の前に現れると、少し怯えた様子を見せる暁たち。なるべく刺激しないよう穏やかな口調で話しかける響。

響「やぁ。……なに、この間のように叩きのめしに来たわけじゃないから安心して欲しい。最後に顔でも見ておこうと思っただけだ」

響「一つだけ気になっていたことがあってね。どうしてあの時に龍田を逃がす為に私の前に立ち塞がったんだい?」

響「私が本気を出せば、たとえ三人がかりであっても君たちを仕留めるのなんて造作も無い……そのぐらい分かっていただろう。それとも、裏切ったら龍田に殺されると言われていたのか?」

暁「違うわ。私は自らの意志で貴方の足止めをした」

響「たかが時間稼ぎの為に自分を犠牲にする覚悟があったと? あまり合理的とは思えないんだが……」

暁「響から見たらそうかもしれないわね。……でも、ここで龍田さんに死んで欲しくないって、そう思ったの。それだけよ」

どこか釈然とした様子で話す暁。

雷「響は知らないでしょうけど……龍田さん、本当は良い人なのよ? そりゃあ、やり方は間違っていたかもしれないけど……あの人は自分の為にお金を使ったことが無いのよ?」

雷「いつだって誰かの為に動いてた……自分を捨ててまで、私たちを守ってくれていた……。私はあの人を尊敬しているわ」

響「“良い人”というのは君たちの主観だろう。麻薬を売り捌き利益を得ていた時点でそれは許されない行為だ。得た金の目的や使い方がどうあれ関係ないだろう」

電「そうですね……。ひょっとすると最初から間違っていたのかもしれないのです」

暁「でもね響。あの人は……弱くて、貧しくて、誰にも相手にされなかった私たちに手を差し伸べてくれた」

暁「才能が認められて途中で別の鎮守府に行った響は、知らないかもしれないけど。訓練生を卒業したあの後、私たちは、色んな酷い経験をしたの」

暁「当然よね。だって、私たちは所詮役に立たない子供だもの。生きるか死ぬかの戦場で、引鉄も退けず右往左往することしか出来ないんだもの……邪険に扱われて当然よ」

電「艦娘を辞めたいと思ったこともあったのです。でも、当時の司令官に話しても相手にしてもらえなくて……」

雷「昔、四人で、将来の夢を話したわよね。艦娘になりたてで、まだ訓練生だった頃に。皆それぞれ内容は違ったけど……本質的には『誰かに必要とされる人間になる』って事だったと思うの」

雷「艦娘だもの、当たり前よね。皆に頼られるぐらい、皆を救えるぐらい、皆を導けるぐらいに強くなりたい……そうよね」

暁「響。誇りに思いなさい。私たちでは成し得なかったことを、貴方はやり遂げたのだから。この鎮守府で貴方の名を聞けば、その実力と才覚を疑う艦娘は居ないはず」

暁「私たちは……そうね。強くないから、龍田さんに弱みにつけ込まれたのかもしれないわね。あの時はどん底で、本当に辛かったから」

暁「本当は、第四艦隊のメンバーに選ばれるほどの実力なんて無かったの。龍田さんのおかげで、毎日楽しく、子供のように遊んで暮らせていたから、忘れていたけれど」

暁「私たちは、結局のところ龍田さんが居なければ何も出来ないわけで……。情けない話だけど、艦娘失格なのかもしれないわ」

暁「でも、響。貴方は違うから。貴方なら、私たちが不甲斐なかった分まで活躍してくれるはず」

雷「こうなってしまった以上、もう私たちはこれまでだからね。私たちの分まで、頑張ってよね! 応援してるわ!」

・・・・

牢室前で待機していた提督に話が済んだことを伝えに来た響。

提督「もう良いのか?」

響「ああ」

提督「顔色が悪いぞ。大丈夫か?」

響「……吐き気がする。それだけだ」

響「ただ、吐き気がする」

そう言い残して、響はどこかへ歩いて行ってしまった。

提督(ひどく思い詰めた表情をしていたな……)

提督は、暁たちの居る牢へ向かった。
418 :【25/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/03/13(金) 22:18:43.98 ID:lrMYVIKO0
大講堂。ここを提督が訪れるのは初めてであり、提督が全艦娘の前にその姿を現したのも初めての出来事である。

登壇すると何の挨拶もせず唐突に本題を話し始める提督。

提督「時間は15分。それ以上取らせはせん」

提督「諸氏らの活躍により、現在確認されている深海棲艦の出現拠点は残すところあと二つとなった」

提督「しかし、敵の攻勢は未だ精強であり、状況は予断を許さない。理由としては、他の海域から落ち延びた深海棲艦が残る二地点に集結しているためだ。
また、純粋にその二点の深海棲艦の勢力が質・量ともに最大規模である、ということも挙げられる」

提督「裏を返せば、この二大拠点を滅ぼすことによってこの国の制海権・制空権の全てを奪還することが出来るということ」

提督「よってここに、AL/MI作戦を発令する」

それまで静寂に包まれていた講堂内が、一気にどよめき始める。
"MI"の名を聞いて震え上がる者、勇み奮い立つ者、晴れ舞台を前に浮足立つ者……様々であった。
それぞれの胸中は異なっていたが、皆一様に提督の一言一句に集中していた。

提督「我々は呉鎮守府・ショートランド泊地・トラック泊地……その他泊地や基地所属の者たちと共に、MI島海域に巣食う百鬼夜行を叩く」

提督「なお、大湊警備府や単冠湾泊地、幌筵泊地、それから横須賀鎮守府の一部の戦力は北方AL海域へ進み敵の拠点を破壊。余力があれば陽動に回ってもらい、我々本隊の支援艦隊として働いてもらう予定だ」

提督「ではこれより第一艦隊から第四艦隊までの人事を発表する」

提督「第一艦隊旗艦、赤城! ビスマルク! 榛名! 加賀! 飛龍! 蒼龍!」

提督「第二艦隊旗艦、響! 雪風! 大淀! ……」

・・・・

提督「以上だ。質問のある者と人事に不満のある者は昼過ぎに執務室に来い。また、足柄はここに残れ。話がある」

比叡(お姉様……どの艦隊にも選ばれなかったせいか茫然自失に!? この世の終わりのような生気の抜けた顔でぶつぶつと何やら呟いている!)

比叡(あ、あれは……私には英語が分からないからその意味を理解することは出来ないが、恐らく呪詛めいた何かに違いない! 英語知らなくて良かった!)

・・・・

提督「来たか。お前を新たな艦隊に配属しようと思っている」

足柄「何を言ってるんですか? さっき第一艦隊から第四艦隊までの発表をしていたじゃないですか。一体どうしたんですか?」

提督「第零艦隊“アノーニュムス”だ。お前には俺の切り札として動いてもらう」

足柄「第零艦隊って……? 詳しい説明をしてもらえますよね」

提督「今回の作戦に乗じてちょっとしたジョーカーを切ろうと思ってな。だが、他の鎮守府の連中にこれを知られるわけにはいかない。あくまで秘密裡にやる必要がある。それゆえに“無名艦隊”ということだ」

提督「お前と、それから金剛・比叡・皐月・文月。暫定だが面子はこんな感じだ。と言っても、全員お互い話したこともないような奴らだとは思うが……」

足柄「あっ、あの!? 話が全く読めないんですけど!? 大体、今まで私が所属していたヴェアヴォルフはどうなるんですか!?」

提督「ヴェアヴォルフは解散だ。その為に大淀を第二、霞と清霜を第三艦隊に配属したのだ。
……実際、認めたくは無いがヴェアヴォルフの連中は使える。ヴェアヴォルフ以外にアコギなやり方をしていたユニットは全て解散しているのだよ。
俺が潰した例もあれば、自然に解散した例、他のユニットに統合された例……様々ではあるが」

提督「制度の変更。他艦隊やユニットからの冷遇。取り巻く環境が日に日に悪化していく中で組織としての体裁を保ち続けていたということを評価したい。個々の戦闘能力も高いしな。
あそこの連中ほど窮地に強い連中もそうおるまい。常設の艦隊に配属しても問題ないだろう」

提督「以前艦娘全員が見ているあの場面で龍田を追わせたのは、お前とお前の属していたヴェアヴォルフの地位を向上させてやるためだ。お前の活躍以後はそれなりに艦隊内での風当たりも和らいだだろう」

足柄「もう既に外堀から埋められていたと……。それは分かりましたけど、具体的には何を企んでいるんです?」

提督「ワープ」

足柄「えっ」

・・・・

提督「……ということだ。今はまだ出来ないが。今度実演してみせよう。それで信じてもらえるだろうしな。少し準備に時間がかかる」

足柄「本気で言ってるのかしら」

提督「この先お前の力を頼ることが多くなるだろう、よろしく頼むぞ」

足柄(常々思うけど、この人ワケわからなすぎるわ……。でも、これまでと違って近づく口実は出来たし、少し分析してみようかしら)

足柄(あと、ヴェアヴォルフの他の皆をお祝いしなきゃね。私はともかく、他の皆のことはなんだかんだ上手く取り計らってくれたみたいだし……)
419 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/03/13(金) 22:32:19.71 ID:lrMYVIKO0
本日 is ここまで。ホワイトデーボイスを聞いて魂を浄化する作業をしていたら若干投下が遅れた。足柄と白露は犠牲になったのだ……。
右に左にブレまくってしかも中途半端なところで途切れた感もありますがまあそれは次ということで。
今回わりとフリーダムすぎたな感が半端ないけど誰かに頼まれて書いてるわけでもお金貰ってるわけでもないしまあいっか。いいよね。
回によって過激さに差はあれど終始こんな感じでぶっこみ続けていく予定。あまりやり過ぎても胃もたれ起こすのでそこら辺の按配は気をつけたいところですが。
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