【安価とコンマで】艦これ100レス劇場【艦これ劇場】

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299 :【96/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/07(日) 00:42:32.82 ID:mU/i97FX0
提督「ッ!」 タッタッタッ

レ級に駆け寄る提督。先刻までと違い、痛みも恐怖も意に介していない様子で、その瞳は怒りに燃えていた。

レ級「気でも狂ったか? 人間ごときに何が出来る?」

この時、レ級は提督が激情に流されて自分に殴りかかろうとしていると考えていた。だが、レ級の予想に反して提督は冷静だった。怒りこそすれ、彼の今までの人生の中で最も精神的に沈着でいた。

提督は、腕の千切れた方の肩を突き出して、その肩をわざと刺激して血を噴出させ、レ級の視界を塞ぐ。

次に提督は瞬時にピストルを取り出してレ級の口の中に銃口を突っ込む。躊躇いなく引き金を引く提督。ターン、と乾いた音が部屋に響く。

レ級「ガッ、ゲホッ……ゴホッ……!(馬鹿な、隙を突かれただと!? 人間相手に!?)」

口から血を吐くレ級。提督はうずくまっているレ級の目の前に立って見下ろす。

レ級「良い気になるなよ人間が……! この程度で死んじまうほどヤワにはできてない!」

提督は、レ級が態勢を立て直してもなおその場から離れる素振りを見せず、直立不動のままレ級を睨む。

レ級(なんだこいつ……なぜ逃げない? なぜ突っ立っている!? この状況で何故動こうとしない……?)

提督はこの時、レ級をいかに挑発し、正常な判断力を失わせるかの一点に集中していた。そしてその狙いは功を奏する。

レ級「クソ……人間のくせに、舐めた真似を! 痛ぶりながら殺してやる……」

提督の顔に手を伸ばすレ級。その手は提督の左目へ向かっていく。

提督(痛くない、痛くない……! 恐れるな、少しでも恐れを前に出すな……)

提督の左目に指を突き刺すレ級。目の周りの皮膚に指めり込んでいく。だが提督は一言も声を上げることをしなかった。

レ級(なんだこいつ……なんだこいつは……? なぜこっちを見据えたままでいられる!?)

提督はレ級の一瞬の動揺を見逃さなかった。お返しと言わんばかりにレ級の目に向けて弾丸を放つ。

レ級「があああああああああああッ!! ぐッ……ぐォッ」

提督(もう同じ手は通用しないだろう。一旦距離を置くッ!)

レ級「クソッ! クソッ! もういい、殺してやる! 今すぐにだ!!」

提督(もう回復しただと……! クッ、逃げる隙も無い!)

提督に猛烈な勢いで飛びかかるレ級。殺意を剥き出しにしたレ級が提督の首を手で貫こうとする。

皐月「させるかよッ!!」 レ級と提督の間に割って入る皐月

腰に携えていた白い鞘から刀を抜き、レ級を切りつける皐月。

皐月「司令官! 逃げてくれ。ボクなら心配いらない! ……今のボクは誰にも負けないさ。それよりも早く手当てを!」

無言で頷き如月のもとへ駆け寄る提督。両手に抱えて運ぼうとしたが、右手が無いことに気づき、仕方なく如月を引きずりながら部屋の外に出て行く。

レ級「逃がすか!」

レ級は提督を追おうとするが、仁王立ちの皐月に行く先を塞がれる。

皐月「悪いけど……今日のボク、すっげー機嫌悪いよ……」ゴゴゴ……

・・・・

提督「皐月! 無事か!?」

レ級「ぐぐぐぐグググググ……殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!!」ブオンッ!

皐月「そんなッ! 攻撃がッ! 当たるかよッ!」ダンッ! ダンッ! ズバァッ!

レ級が距離を置くと砲撃を放ち、レ級が距離を詰めると刀で斬りつける皐月。

レ級(まずい……増援か……! クソッ! この場で全員殺してや)

レ級、提督と目が合う。自分よりも痛手を、それも命を失いかねないほどの重傷を負っているにも関わらず、冷静に、冷徹にこちらを見据えている提督に対して、レ級はこの時生まれて初めて恐怖を感じた。

レ級(腕を千切られ目を潰されてるってのに、なんなんだこいつは……なんなんだこいつの狂気じみた執着は……!)

提督「満潮は皐月の援護を。電と磯波はここから二手に別れて逃走経路の遮断を。念のため朝潮は僕の傍に居てくれ」

レ級(……既に損傷著しい。武装も無い状態では、この不利な状況を覆すのは難しいか!)
300 :【97/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/07(日) 00:44:37.93 ID:mU/i97FX0
提督「どうした? 何を逃げ回っている。僕はここに居るぞ」

満潮「もっとも、私が指一本触れさせないけどね!」バシュッと勢いよく放った魚雷がレ級に的中する

レ級(ッ! グググ……こいつら、油断ならない! ダメだ、逃げなくては! こんな所で殺されるわけにはいかないッ!)

レ級「ォオオオオ!!!!」 鋼鉄の壁を殴り壊し、鎮守府の外へ逃走するレ級。

朝潮「追撃しますか?」

提督「いや、いい。この後、一旦皆を集めてくれ。この鎮守府にいる者全てだ」

・・・・

提督「さっき逃げたあのレ級……間違いなく僕たちを攻撃してくるだろう。奴なら他の深海棲艦を率いてこの鎮守府を襲撃してくるぐらいのことはするだろう」

提督「そして、そうなった時に、僕たちにはどうすることも出来ない。戦力差に圧倒的な開きがありすぎるからだ」

電「つまり……どうするのです?」

提督「逃げる」

皐月「なるほど」

満潮「なるほど、じゃないわよ! 逃げた先で奇襲に遭ったら意味がないわ。そもそもアテはあるの?」

提督「故南条中佐の鎮守府に向かう。あそこが一番近いからね」

提督「既に上に許可は取ってあって、中佐の保持していた全艦隊の指揮権を得ている。この作戦の話もしてあるから問題ない」

提督「……仮に僕らがここを離れていたことを敵に察知されても、中佐の艦隊であれば数日間は戦えるだろう。数日もあれば他の鎮守府からの支援艦隊が到着する」

提督「で、僕らを倒そうとノコノコと群がっている深海棲艦を、他の鎮守府から来た多勢の支援艦隊で深海棲艦を包囲、掃討……というのが僕たちが生き残る唯一の道だ」

如月「私たちの様子を見ていたあのレ級なら、司令官が何条中佐の鎮守府へ逃げる可能性は想像できるんじゃないかしら」

提督「そう、そこなんだ。最悪なのは、中佐の鎮守府に僕らが辿り着く前に察知され襲撃を受けること。そうなってしまったら……かなり厳しい事態になるだろう」

提督「あとは……とんでもない数の敵が押し寄せて故中佐の艦隊をもってしても御しきれない、ってのも怖いかな」

電「なるほど……。とにかく、敵に悟られる前に中佐の鎮守府へ辿り着くことが大事ですね。いつ出発するのです?」

提督「明日だ。敵の立場になってみれば、相手が何か思いつく前に潰しておくべきだと考えるだろう。特に、あのレ級は今回相当痛い目を見たはずだからね」

提督「腕を取られて目も抉られかけたが、奴に与えた精神的なダメージを考慮すればなかなか上手く動けたと思うよ。今回の僕はね」

提督「相手が完全に慢心しきっていたから、というのが大きいけれど。なんにせよ、勝てると思っていた相手に叩きのめされて、奴は相当苛立っているはずだ」

提督「どれだけ智謀に長けていて力を持っていようと、感情をむき出しにして怒ったり相手を舐めきったりしているようではたいした相手じゃないよ」

皐月「おっ、言うねえ」

提督「まぁ、たいした相手じゃないなんて言っている時点で僕も慢心してるっちゃしてるかもしれないけどね……。ただ、人間と深海棲艦の本質的な違い、みたいなものは感じたかな。上手くは言えないけど」

提督「今の僕なら、なんとか出来そうな気がする、かな。……たまにはちょっと強気な発言もしてみる」

如月「フフ、素敵よ司令官」

磯波「ところで……その腕や目は大丈夫なんですか? 提督」

提督「全然大丈夫じゃないはずだけど、今のところは感覚がおかしくなってるのかあまり痛みを感じないね」

提督「一応、腕の方は傷の部分を焼いて止血したし、目も眼球自体に損傷は無いらしいから。まぁ、良いんじゃないかな」

提督(生きていることが奇跡だったらしいし、どうやらすぐに大病院で本格的な手当てを受けないと死んでしまうらしいが……今は心配をかけるし黙っておこう)

磯波「せめて傷が治るまで待っても良いと思うのですが……」

提督「さっきも言った理由で、それは出来ないよ。それに、傷の痛みの感覚が戻ってきてまともに指揮が出来なくなるなんてみっともないことは避けたい」

理性的な話し方や冷静な思考とは対照的に、提督の身体は極度の興奮状態にあった。興奮によって生み出される脳内物質が、麻酔薬の代わりとして働いていたのだった。

朝潮「司令官……」

提督「そんな心配そうな顔で見ないで。大丈夫だよ」

提督「各員。十分に休息を取り明日に備えること! 必要なものは全て持ち出せるよう準備も頼む」
301 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2014/12/07(日) 01:05:13.77 ID:mU/i97FX0
突然の無告知投下。たった2レスですケド……。

では、ぼちぼち〆させていただくというわけで、提督が誰とくっつくか投票で決めたいと思います。
結局投票なんかい、って? まぁ良いじゃないか……。

各艦娘の好感度は今こんな感じです。
【好感度まとめ】
電 :70
皐月:50
磯波:54
如月:47
満潮:66
朝潮:53

/****************************/
今から12/08(月) 23:59:59.99まで、
『最終的に誰とエンディングを迎えるのかを決めるための投票』を開始します。
1IDにつき1回まで、選べるのは艦隊のうち1人だけでお願いします。
また、投票期間中についたレスの内、コンマがゾロ目だったレスの数だけエクストライベントが発生します。
/****************************/


///チラシの裏///
1IDにつき1回までなので実は今日投票して明日投票すれば2回投票できてしまうのは内緒。内緒とか言って書いちゃうのどうかと思うけど。
レスがつかなかったらどうしよう。そんときゃそん時で適当にやります(おい
というか更新滞ってて申し訳ない。今週はマジできつかったので書いてる余裕無かったっす。



以下は死ぬほどどうでもいい夢の話なので読まなくていいです。
自分用のメモ。

なぜか自分が女性になっていて、男性と二人で居るのですよ。
で、薄緑色に塗られた鉄の壁が広がる廊下を二人で走っているのですよ(研究所みたいな施設の中なのかな?)。どうも切迫した状況なようでした。
で、廊下を走り抜けた先の広間で、なんか突然触手めいた機械が出てきたのですよ。エロ同人みたいな!
一緒にいた男性は、その触手めいた機械にコード的なものを脳に挿されて、呻き声を上げ消滅してしまいました。
男性が消えた痕に、白く輝くクリスタル(ダイヤモンドに近い?)みたいなものが落ちていたんですが、そのクリスタルは機械に回収されてしまったんですね。
で、平面ホログラム映像的なものに映った機械のオペレーター的人物が、金を払うなら突然このクリスタルを返してやろう的な提案をしてきました。
そのあたりから突然夢の中の表現がやたらゲーム的になってきて、んで、夢の中の私はなんかよく分からないままそのクリスタルを3600円(円というかその世界での3600円に値する電子通貨的なものを)支払って手に入れました。
その後広間から奥に進むと突然『「全国ヤっちゃった連盟」に加入しました』的意味不明メッセージの通知とともに、幾名かの可愛らしいキャラクター(全員女性)の画像のカットイン的に表示され、その「全国ヤっちゃった連盟」の加盟者らしき人物の連絡先情報を手に入れました。
どうもその世界では、パートナー(私の場合は自分がさっきまで一緒にいた男性)を失うことはヤバいことらしく、そのことが他のキャラクター(?)に知れ渡ったようで、そのヤバいことやらかした者同士が生き抜いていくためのネットワークに組み込まれたっぽい。
そこいら辺で眠気から意識が覚醒してきて、「いや意味分からなさすぎてついていけないよ!?」ってなって起床しました。

夢って大概意味不明だよね。文字に起こすと余計に意味不明。一体なんのゲームだったんだアレ。
っていうか「全ヤ連(あまりにもアレなので略した)」ってお前、色々と最低すぎるだろ……。

ユング先生曰く、「夢の意味? ああ、大概欲求不満だよ欲求不満」ってことらしいですしこれもきっと私の欲求不満が生み出したカオスな幻想なのでしょう……。
まぁ今週しんどかったし変な夢見ても仕方ないか・・・・。
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/07(日) 01:11:51.98 ID:TwOQmaVzO
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/07(日) 01:48:39.22 ID:jY87euyHo
満潮
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/07(日) 03:13:36.69 ID:XJtC52Npo
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/07(日) 09:10:41.23 ID:bTP35dUmo
満潮
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/08(月) 22:12:03.58 ID:3PYUNoOwo
如月
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/08(月) 22:13:17.63 ID:chCpW8wtO
如月
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/08(月) 22:40:19.73 ID:5AfDeIacO
309 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2014/12/09(火) 19:55:28.24 ID:SoX8togh0
結果発表
電:3
如月:2
満潮:2

というわけで電ENDになります。なるっぽいです。むしろ飛ばしていきます(何
投票受付中にコンマ値がゾロ目だったレスが1つあったためエクストライベントが1回発生します。



///チラシの浦の戦い///
えっクリスマス仕様の龍驤改二ですって!? マジで!?
実の娘の誕生日と同じぐらい嬉しいし喜ばしいです。いや実の娘どころか実の嫁も居ないんですけど。
あとは時報が実装されたらもはやこの世に未練は無い……って感じです。いやさすがにそれは未練無さすぎるな。

あと、せっかく今年最後ですし5-5攻略に乗り出してます。
数回挑んだことはあったんですけど(空母2軽空母1ルート)、エリレビーム&ボス前で逸れる羅針盤でこりゃ敵わねーわと判断して諦めてました。
しかーし!今回は大型艦建造で手に入れた武蔵を実戦投入、各艦を三重キラ付けで支援艦隊も全員キラ付けと、わりと勝ちに行く感じでやってます。まぁこのぐらいやってやっとスタートラインってとこさね。

Bismarck dreiにするのに設計図二枚消費しちゃうんで設計図不足に陥ってるんすよね〜。
今月は5-5の勲章さえも貰っておきたいところです。
雲龍改用の設計図をゲットせにゃあならんのでね……。
ん?何?先に雲龍改にするのを優先させた方が良い?烈風(六〇一空)が手に入るから?
いや、んなこと分かってるけどBismarck手に入ったの嬉しかったんだからしょうがないじゃない。そりゃdreiにもしたくなるさ。
それとつい最近まで翔鶴が手に入らなかったので後回しになってましたのよ。
(瑞鶴翔鶴で艦隊組む任務をこなさないと雲龍関係の任務が出現しない)

とまあ相変わらずな艦これライフなのでした。
310 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/09(火) 20:45:59.05 ID:SoX8togh0
次回の投下で完結させる予定です(と言っても何日かに分ける可能性はありますが)。
あと、エクストライベントのエクストライベントの発生判定も置いておきますので例によってコンマ値によって発生したりしなかったりします。
>>+1(00〜70で発生)



次回完結……というわけで少し時間を稼がせてください。
場繋ぎってことで突然ですがメタ的視点でもろもろ語ります。
特に本編には関係しませんが、、裏話的要素は強いです。
『尺の都合』という単語が頻出しますが、これは尺が短すぎてエピソードを書けなかったのではなく、>>1の先見性の無さと文章力の低さによってエピソードを回収しきれなかったということを意味します。要は言い訳です。
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[[朝潮についてのアレコレ]]
というわけで最初に紹介するトップバッターは朝潮。いや、特に理由は無いけれど。
強いていうなら趣味。どうでもいい話ですが>>1は3-2攻略の際、朝潮を連れて行きました(そして、このお話に登場する駆逐艦の中では、朝潮ぐらいしかまともに育っていない>>1なのであった…)。
さて本編に関する言及。

・実はヤンデレにするつもりだった
さらっと衝撃の事実かもしれませんが、まぁちょくちょくそれに近い描写挟んでたし察した人も居るかもしれません。
最初は、頭は良いけどどこかズレてるみたいな適当な配役で考えてたんですけど(おい)、朝潮みたいな真面目な子が徐々に提督に依存していって自分を抑えきれなくなっていったら面白いなぁフフフとか企んでました。
結局そうはならなかったのは尺の都合が大きいですね。
一人にそこまでエピソードを割けなかったっていうのが大きいです。
あの真面目な朝潮が病むって相当ヤバい量の闇を書かなきゃいけなさそうですし……。
序盤から予めそういう流れで動かしておけばもうちょっと違ったんでしょうけど。



・さらに黒い話
背中の傷の話があるじゃないですか。
艦娘になる前に虐待されていたのかもしれない、っていう。
実はその虐待していた親を登場させる予定だったんですよね。
で、その親との邂逅時に記憶は無いものの無意識下でのトラウマが蘇り……っていう感じですね。まぁあるあるな奴です。
精神的に困窮している状態でも変わらず優しく接してくれる提督に対し強い慕情を抱き、そして彼に対する執着も次第に増していく……みたいな。あるあるだけど黒いね。
ちなみにその朝潮を虐待していた親というのは藤原大将ということにする予定でした。予定でしたがしませんでした。
尺の都合もありますし、なんかこうオリキャラを絡めて長々やるのはこっちのモチベもキツいし読んでる側も飽きそうだし……って理由です。
全ての物事に辻褄を合わせること自体は出来なくはないです一応。
ただ、それをやることによって失われるレス数・その失われたレス数でやれるであろう各艦娘とのエピソードを天秤にかけた結果、不要だな〜と思って削った話が多いです特にオリキャラ周り。
整合性よりは物語的な勢いを取ったのは英断かなと自分では思っています。
最初っからしっかりあれこれ練っておけばこんな風に右往左往せずには済んだんだろうけどね。



・このお話における朝潮
まず、朝潮というキャラの性質上、恋心を抱くようになるには相当時間がかかるんだろうな、というのが私の見解でした。
指輪渡しても作戦会議と勘違いするような子ですし。
どうやってそういう気持ちにさせようかなーと悩んだ末の↑二つの話なのですが、結局病むってほど病むこともなくデレることも終盤までなく。

作中では提督の次にあれこれ悩んでいたキャラだと思います。
彼女の悩みは根本的に『人の気持ちが分からない』ことに起因するものだったんじゃないかなー、とか作者的にはそう思ってます。
でも、本来の彼女は人の気持ちが分からない、なんて狭量な子じゃないはずなんですけどね。
過去のトラウマや艦娘としての気負いを抱えていて、彼女はそれらを重く受け止めてしまったんだと思います。
自分で自分を追い詰め続けた結果、人の心も自分の心も分からなくなってしまったんでしょう。多分。
提督は、そんな朝潮に対して真摯に向き合い続けて、ようやく話の終盤で彼女の心を開くことに成功しています。
いや微妙に彼上手くやれたかどうか自信なさげだったけど。でも彼の気持ちはちゃんと朝潮に届いてます。作者がそういうんだからそうなんじゃないの多分。
それからの朝潮は、その感情が敬意なのか愛情なのかは自分でも分からないけれど、提督とともに前を向いて成長していきたい、と考えているようです。

最初に会った時は立場上提督に対して敬意を払っていただけなのが、人間的に尊敬するようになった……ってのはわりと大きな変化かもしれませんね。
まぁ他の艦娘はもっと大きな感情の変化があったりしてますが……。
ただ、その変化の過程で彼女は自分を傷つけることをやめ、人を拒絶しなくなりました。これが彼女の一番の成長ですね。
真っ直ぐであるが故に自分を追い詰めてしまったけれど、真っ直ぐであるが故に間違いに気づいても立ち直れたんじゃないかなー。



序盤はパッとせず中盤は暗く、恋愛的な描写も少ないのでイマイチ華がない感じの配役にしてしまって作者的には惜しいことしたなと思ってます。
あとは、本来聡明な子なはずなのにあんまりそういう風に描く機会が無かったのが残念。いや、タイミングってあるじゃない?(という言い訳)
ただ、艦隊の中ではなんだかんだ一番精神的に成長した子なんじゃないかなーと思います。

艦隊の6人の中だと、一番もう一回なんかで書く機会があったら書きたい子ですね。
いや、書き直したいとかじゃなくて、次はもっと生き生きした朝潮を書けたらなーとね。
『主人公と最終的にイチャイチャできる関係にまで持っていかなければいけない』という自分の中での制約が無ければもっともっと自由に描けてたのかなーと思います。
これはこれでまぁ悪くないのかなーとも思ってますけど(どっちだよ)。
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こんな感じで本編のストックが書き終わるまで続けてきます。
まぁどれだけ知った風な事が書いてあっても所詮いち二次創作のいち解釈に過ぎないです。
自分なりに個々のキャラと向き合ってはいるつもりですが、だからと言ってそんなの1人の人間の薄っぺらい解釈に過ぎないってことです。
わざわざこんなクソ読み辛いスレにここまでついて来れてる人相手にわざわざ書くまでもないとは思うけど……書かねばならぬ気がしたから一応書いておく。

あ、あと上にも書きましたがエクストライベントのエクストライベントは>>+1です(00〜70で発生)。
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/10(水) 04:47:14.82 ID:A5BEvAufo
ぽい
312 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2014/12/10(水) 20:18:21.36 ID:f5lSrW6u0
>2014/12/10(水) 04:47:14.82
ということでエクストライベントのエクストライベントも発生です。
さすがにもうエクストライベントは打ち止めですです。
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[[如月についてのアレコレ]]
二番は誰にしようか迷いましたが如月で。
如月も良いキャラだよね〜。良いよね〜スレてるようで初心なの良いよね〜最高だよね〜アツいよね〜。

・ある種全ての元凶
全ての元凶と言っても、実は黒幕だった! とかそんな話じゃありません。メタ的な話。
設定がワチャワチャし始めた時期はちょうど序盤〜中盤の如月のエピソードあたりからです。
そして提督が艦娘たちとグイグイ親密になっていくようなエピソードが盛り込まれるのも大体如月の後からです。
――暗い過去に囚われて心を閉ざしてしまった少女。少年はそんな少女の秘密を知り、彼女の抱えてきた孤独に触れる。かくして物語の歯車は動き始める。
とか、ねぇ。ベタだけどこれだけで一冊本書けちゃうって感じじゃん。ずるいよね。
……設定に関しては後先考えず滅茶苦茶に突っ込んだので如月あんま関係ないんですけれども。
ただ、しばらくの間『如月のあのエピソードに負けないように』というプレッシャーが>>1の中でついて回ってました。
おかげでどんどん過激な方へ突っ走ることに……。



・純情ガール如月
如月のキャラ的に、艦娘の中で言えばわりと提督に媚びるタイプじゃないですか。
結構大胆……というかDMM的アプローチ(隠喩)してくるじゃないですか。
ただ、今回のスレの都合上、提督の初期ステータス不足によって、如月は好感度の伸びが低い設定でした。
その為、最初の方は提督のことなんて興味もない、ぐらいの感じに調整してました。
それに伴って、自分の心の中を明かさない、みたいなミステリアスなキャラにしようかなーというのが当初の目論見でした。
ただ、皮肉にも一番純情なキャラクターになったのではなかろうかと、振り返ってみてそう思います。
上記にも書いた例のエピソードで自分の過去を明かしてグッと距離を縮めるのですが、
グッと距離を縮めすぎて好感度以上に提督と仲睦まじい関係になりつつあって焦ったのをよく覚えています。
あんまり縮めすぎると彼女がぶっちぎりの一番になってしまうので、他の艦娘の好感度の底上げもしつつ、彼女の配役も変えていきました。

提督はほとんど如月の過去や心の闇を知ってしまったので、彼女に対して気兼ねなく接することが出来るのですよ。気心が知れている、ってやつですね。
だから、あのエピソードの後の二人は、冗談を言い合ったり、時折漫才のようなやり取りをしています。
ちょうど友達以上恋人未満、って感じですかね。いやあ青春だ(黙
ただ、如月は提督の心を知らなくて。
たとえば提督が朝潮に対して話した「自分の両親が死んだ時に思ったこと」なんて如月にとっては知りもしない話なんですよ。
(まぁそんなこと人にベラベラ喋るもんでもないけど)
普段は自分に対して冗談みたいなことしか言わないくせに、いざとなるとものすごく真剣な顔を見せる。
如月は提督のそういうところに強く心惹かれているようです。
でも、それって如月にだけ見せている一面じゃないんですよね。

提督は提督なりに真摯に艦娘たちと接しているつもりなのだろうけれど、その真摯さや平等さが如月にとってはとても苦しいようです。
本心では提督のことを愛していますからね。
ただ、その想いを提督に知られてしまったら、提督はもう如月に対して今までのように接することは出来なくなるでしょうし、そうなると提督を困らせてしまう。
ちょっと話を逸らして提督の話をすると、実際提督は異性への関心や興味といった欲求を抑圧しています。
自分が年齢的に十分に成熟していないことの自覚、地位が不安定でいつどんな目に遭うか分からないという危機感、
生死の淵で戦う艦娘たちと前線に出すらしないで指示を出すだけの自分という現実に対する負い目から、魅力的な艦娘たちを前にしても禁欲的だったのでした。
提督のそうした考えを聞いていた如月は、提督への想いを押し殺し続けてきました。
えと、ということにして甘い態度のわりに低い好感度を表してたんですね〜。
ただ、そういういじらしい描写をしてしまうと全体のパワーバランス(?)に影響が出るのと尺の圧迫が辛そうだったのでほとんど書いてないです。

物語終盤で如月がしれっと提督に想い人が居ないかを聞いてくるのは、その感情の抑制が効かなくなってしまったからです。
これ以上耐えるのは辛くて、本当は自分のことを見て欲しいけれど、
それが叶わないのならいっそ提督が自分以外の誰かとくっついてしまえば諦めがつくから……という、彼女なりの覚悟なようです。
その前に提督と朝潮が良い雰囲気になっていた、ってのも彼女の行動を後押ししたのでしょう。
結果的には提督に回答を聞くどころか邪魔が入ってしまって大変なことになってしまったのですが……。



如月に関してはそんな感じです。他の二次創作と比較してもここまで純情な如月はそんなに居ないんじゃないでしょうか。
自分的にはわりと如月っぽく描けたんじゃないかなーと思っています。自分で言うのもなんだけど。
ただ強いて言うのであれば、ああいうキャラなんだからもうちょっとやらしい話とかさせても良かったんじゃないかなとは思わなくはない。
作中の如月がピュアすぎるので以外に思われるかもしれませんが>>1的にはえっちい如月も好きですよ。あっまた余計なことを書いてしまった。
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え? こんなん書いててちゃんと本編書けてるのかって?
ま、ま〜……進んでるんじゃないかな、多分。
一応ぼちぼち進んでます。パーセンテージで言うと12%ぐらい(えぇ
313 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2014/12/11(木) 19:57:54.76 ID:y+qoJnKE0
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[[皐月についてのアレコレ]]
続いて皐月。
ドヤ顔かわいい系ですがアホの子だったりやたら自信過剰ってほどでもないという居そうであんまり居ないキャラ。
史実エピソード的にはわりと武勲艦だしねえ(>>1はあんまり史実詳しくないけど)。
このお話的にはわりと特殊な立ち位置のキャラになりました。

・スペック盛りすぎた
はい。駆逐の皮を被った軽巡みたいなことになってしまった……。
いやまぁ実際強くてニューゲームみたいな設定でごまかしてますけれども。
レ級と戦う時に白い鞘の刀を持ってたのは申し訳程度の史実要素です。
地上戦だし刀の方が良いって判断したんじゃないんすかね。
そのわりにその「強くてニューゲーム」の話はほとんど出てきませんでしたね。
というかほぼ全く触れてないっすね。
まぁ、蛇足かな〜とか思って書いてないです。尺にも限りがあるしね……。
このお話ではパッと出てすぐ退場してしまった長門ですが、実は皐月の過去の記憶と関係があったり……とか、そのぐらい。



・一番扱いが難しかったキャラ
扱いが難しいっていうとキャラそのものを否定しているニュアンスも含まれてるように思われるかもしれませんがそんなことは無いです。
ただ、「このストーリー上で周りのキャラと差別化し」「あの提督と絡ませて」「恋愛フラグを立たせる流れに持っていく」のが困難でした。
っていうか3つ目の「恋愛フラグを立たせる流れに持っていく」は断念したレベルで難しかったです。

差別化自体はわりと楽でしたけどね。
当初からあんまりこの子には闇を持たせたくないなーと思ってまして。
悲しい過去とか暗い感情とか似合わない気がするんですよ皐月には。
だから皐月の過去の描写は避けるつもりでした。
ただ、改二の実装が待たれる程度には武勲艦ですし、理由なく強いのもなんか妙だよなーとか余計なこと考えてみたり。
そんな感じの理由で能力値だけ引き継ぎみたいな設定になったんすよねー。かえって不自然だったかもなぁ……。

そういうわけで提督との関係は他の艦娘と違って、「現在」にクローズアップした関係にしていこうかなと思ったわけですよ。
思ったわけですが! 難しいんだなこれが。
日常においてはロマンチックな出来事が起こるなんて稀ですし、平時のやり取りはきっと他愛もないものなんですよこのお話においても。
だからその……他の艦娘と比べるとどうしても破壊力(?)が低くなってしまうんですよね。
たとえば提督と如月の間には「二人だけの秘密」がたくさんあるじゃないですか。
満潮なんかも後半でだいぶ提督にしか見せない表情をいっぱいするじゃないですか。
そういうのが無いんですよ日常では!
戦闘時は輝くんですが中盤ではわりと戦闘シーン的なものもあんまり無かったんで……。

あと、ですねぇ。この子わりとメンタル強いんですよね。
それがかえってイチャイチャさせる上では厄介なんですよ!
朝潮みたく他人を精神的に拒絶していたり、電みたいに自分と提督を比較して引け目を感じて切なくなったりしてないんですよ。
この話の中では欠点らしい欠点が無い子なので、作者的に難攻不落でした。いやマジで。


・唯一「フラグを折った」キャラ
上にも書いた通り、このお話の中での皐月は作者的に厄介でした。
強いてフラグを立てる道があるとするならば、対等の友人関係から次第にお互いを意識しだし……という最も現実的に起こりうる流れになるかなと思います。
が、この話の中では提督と艦娘という明確な上下が存在する関係なわけで、
皐月の方はそんなことを意識していなくても提督はどこかでいつもそのことを考えているわけですね。
なので、提督の心の垣根を取っ払わなければならぬ、と。
ただ、他の艦娘がぐいぐいとアプローチしていく中で、
何気ない日常の中で友人のような関係からお互いを意識するようになるほど心の距離が縮まるまでに一体何レスを使わねばならぬのだろう……。
そんなことを考えた結果、皐月に関しては唯一明確にフラグが立ってないキャラにしました。

『立たないフラグに、意味はあるんでしょうか……?』
というわけで「フラグが立たない」キャラとして定まった後の皐月について少し。
とりあえずエンディングを迎えるキャラではないので、若干フェードアウトさせてます。
とはいっても露骨に出番を減らしたりってのは無く、明確に“攻略対象のヒロイン”としての描写から“異性の友人”って描写にシフトしたって感じです。
ただ、そういう描写に変えたことによってかえって皐月らしさが表現出来たんじゃないかなと思ってます。
天真爛漫だけど子供っぽすぎるわけじゃない。
なんというか、こう、爽やかなキャラになったんじゃないかなーと。

あと、わりとこの子頭脳派よね(この作品の中では)。
特に意識したわけじゃないんだけど相当頭の切れるキャラみたいな立ち位置になってますね。なんでだろ。
なんていうか……アレ。
気がついたらスペックや立ち位置的に「よくある前作の主人公」みたいな感じになりました。
(一応書いておきますけどこのお話に前作なんてありませんからねファンタジーやメルヘンじゃあないんですから)



せっかくなので、皐月をヒロインに据えるならどんな提督が良いか考えてみたんですけど、
わりと変態じみてる、というか熱烈にアピールしてくるぐらいの提督が向いてるんじゃないでしょうか。
(本作の)あの提督はシャイなので、皐月に対して「かわいいね!」の一言も言えないんですよ多分。
(まぁ見た目の年齢的にほぼ同じぐらいだし仕方ないっちゃ仕方ないが)
皐月に対して「かわいいね!」は基本中の基本です。それぐらいかわいがってやらんでどうする。
ロリコ……じゃなかった、父性愛に満ち溢れてるタイプの提督になし崩し的に攻略されていくのが良いと思います。
だんだん自分でも何言ってるか分からなくなったのでこの辺で〆。
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314 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2014/12/15(月) 19:49:02.18 ID:z5JKjTrw0
オリョクルしながらプレゼント貰えるとか最高でち!
北か南に進めばろ号が消化でき、ボスマスに逸れればプレゼント……これはありがたい
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[[磯波についてのアレコレ]]
クリスマスボイスの追加された今激アツの磯波です。吹雪型は基本激アツですね。
そんな激アツ吹雪型の中でもトップクラスに激アツな磯波です。

・作者の用意した「正解」
うわいきなりなんて事書いちまったんだろう。というか、こんな事書いてしまって良いんだろうか。書かない方が良い気がするぞ。
でも読んでる側からすると、こういう話が面白いのかなと思って書いてみます。

後半に差し掛かる辺りまでは特に「正解」を定めずに、つまり敢えてメインヒロイン的存在を拵えず進んでいったわけですが、物語を終わらせるためには最終的に誰か一人を選ばなければならない。
そこで作者目線での白羽の矢が立ったのは磯波でした。ではその謎に迫っていきましょうか。



・実はエース級のキャラ
磯波に関しては序盤からかなり良い感じに提督にアピール出来てましたね。
料理が得意な設定は史実ネタとか関係なくなんかそういう感じがするなと思ってつけ足しただけですハイ。
磯波って朝ごはん作ってくれそうな気がするじゃん!? ……しない? あぁそう。
ごく最初の頃はちょっとお姉さん的立ち位置でしたね。
ただ、如月の話以降色々動き出してきてそれに伴って磯波のキャラも今のようなポジションに。

序盤〜中盤まで隙の無い動きで常に二番候補三番候補ぐらいのポジションを維持していたってという強者です。
二番候補三番候補というと大した事ないように思えるかもしれませんが、なんかしらエピソードをつければそのキャラの持つ相対的な重みも変動するわけで。
そんな重みの変動の激しい環境下でも常にある程度アピール出来ていた磯波は中々デキる子です。
しかもさほどエピソード的には本気を出していない(=まだまだグイグイ踏み込んで書こうと思えば書ける)のに既に十分他のキャラと渡り合えるぐらいの力を発揮してるので、作者目線だと結構驚異的な存在でした。

そのポテンシャルを危惧して一旦途中退場させてますハイ。
入れ替わりで登場したのが磯波IIですが……いくらフラグが立つ対象じゃないからってもうちょっとエピソードを割くべきだったなあとやや後悔。まぁ途中退場させるつもりだったし。
このお話は攻略対象外のキャラの扱いがぞんざい過ぎるよなー。
ちなみに磯波IIは作中では「二号(いそなみにごう)」と呼ばれているらしいです。
どっかに書いたと思ったらそんなことは無かったので今ここに書いときます。

で、後半再会を果たす二人です。磯波ちゃんしれっと告白してますね。うん。よくある。
っていうか終始こんな感じの距離感でしたね。
磯波は、奥手な性格のように見えてあの提督に対しては結構積極的なんですよね。
威圧的な提督、というか、普通に自分より年上でいかにも提督って感じの提督ならこんな風にはならなかったんでしょうけど。
あの提督の、微妙に頼りないけど真剣に頑張ってるところとかが磯波の琴線に触れたんじゃないですかね。
磯波は惚れ込んだら一途みたいな、都会に出てきた田舎娘的危うさがあるので、恋心を抱く対象が提督みたいな草食系をこじらせたみたいな人で良かったです(謎の親心)。

提督は提督で、あんまりアプローチされるとたじろいで身構えちゃうタイプだけど、磯波の場合それを上手く回避してスッと提督の間合いに入っているようなことが多いです。
作者目線でも磯波に関してはエピソードを書くのにほとんど苦労した記憶が無く、わりと扱い易いキャラでした。
ちょくちょく顔を出して要所要所でかっさらって行くのも中々やるなぁ、と。
あんまり目立たれても困る&他キャラのエピソードが忙しくて尺が足りなかったという理由で後半はちょっと出番控えめですけど。



・「正解」とは何なのかを考える
と、ここまで書くとやっぱり磯波がメインヒロインだったんや! って感じですね。
(勿論この子だけ贔屓したなんて事はなくて、「書いていたらこうなった」ってだけですけれど)
提督が誰とくっつくかの投票では、磯波が一番投票あるのかなと予想していました(しかし結果的にその予想は見当違いなものとなるのであった)。

ここから先は磯波の話からちょっと逸れます。最後の投票に参加してくださった方、ご協力ありがとうございます。
ええと、その方々は恐らく、投票したそのキャラが
・魅力的だった
・報われて欲しかった
・提督にとって相応しいと思った(または“提督が”そのキャラに相応しいと思った)
の3つの要素で判断したのかなと思います。
もちろんそのキャラが個人的に好きだったとかそういうのもも多いにあると思いますけどね。

磯波の場合は第一項・第三項は結構満たしてるかなーと自分では思ってるんですけど、第二項の要素は薄いんじゃないかなと。
で、投票結果から鑑みるに第二項が一番投票に影響した要素なのだろう、というのが作者的分析です。
いや……だって如月とか満潮とかさ……作者からしても報われて欲しいもん……うん。
と、ここから話は電についてに移るわけですが磯波から完全に逸れてしまうので一旦ここで区切ります。



読んでる人から見てどうだったかは分かりませんが作者的には一番自信のあるキャラでした。
一番自信があったからこそ出し惜しみしちゃったかなー、とも思いますが。
というわけで作者が投票するのであれば磯波に投票してました。なんだかんだお似合いな気がするしね、二人。

だが待って欲しい、こんなことを敢えて書くということは、だ。ということは、ですよ?
ここから先の(つまりEDまでの)電のエピソードでは作者的に自信のあった磯波や投票の多かった如月、満潮たちを超えるぐらい魅力的に書かなきゃならんわけで! ならんわけで!
「他の子も良いけど、やっぱり電と結ばれるべくして結ばれたな!」というところを魅せつけてやらにゃならんわけで! ならんわけで!
えぇ〜……やれるかなぁ……期待に応えられる自信が無い癖に妙に期待を煽る書き方するというマゾプレイ。
この後のわずか数レスで一体どうするつもりなんだお前は! と自問自答。
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今んとこ42%ぐらい進んでます。
そんだけしか進んでないのかって感じですけど実際そんだけしか進んでないからしょうがない。
315 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2014/12/18(木) 19:11:30.00 ID:wbB2ywX00
今週末あたりには投下でき……たらいいなあ。
現状の見通しだと無理っぽいけどこういうのは勢いに乗りさえすればサクサク進むので、なんとかこうビッグウェーブに乗りたいですね。
遅くとも来週中には〜と言っておきます。
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[[満潮についてのアレコレ]]
ツンデレと性格がキツいのはちょっと違うんじゃあないかなと思う今日この頃。
一般的にツンデレと呼ばれている艦娘たちの場合は素直になれないからツンツンしてるんじゃなくて(もちろんそれもあるにはあるけど)、
純粋に愛を知らなくて人間不信に陥ってるだけな気がしますね。
皆何だかんだ暗い過去を背負ってるしね……。
あーでも叢雲は普通にただのツンデレだと思います(ひどい言い様である)。

・ツンデ……ツンデレ、なのか?
上で書いたことをいきなりひっくり返すようでアレなのですが満潮はツンデレで行くつもりでした。
開始した当初は満潮に対する造詣が浅かったんだ……後でデレれば良いよねとか甘っちょろいこと考えてたんだ……。
しかし最終的にツンデレとしてもなんか妙な感じになってしまった……。
例えるなら、程よい辛さのカレーを作ろうとして、適当にスパイスとかぶっこんでたら途中でなんかちょっと辛いよなこれちょっと違うよなってなって、
林檎とか蜂蜜とか砂糖とか甘いものを手当たり次第に入れていったら結果的にケミカルX的ストレンジフルなものが出来ちゃったみたいな。
後半デレデレさせ過ぎたなあと後悔している。
いや、というよりはツンからデレの過程をもうちょっと書いておくべきだったんですねぇ。
……まあそんな作者的言い訳はつまらないから置いておいて。彼女の話をしましょうか。



・満潮孤独の青春
最初に結構キツい態度で当たってますがまあこれは予定調和というかキャラ的に仕方のないところですね。
前々から書いているように当初はわりとダメな感じの未熟な提督にする感じだったので、こうやってムチでビシバシしばいてくれる子は必要だなと。
ただ、例の如月の話以降提督のキャラが変わってしまったというか、もうそれまでの甘ったれみたいな感じじゃダメだなと思うのですよ。作者がじゃなくて提督がね。
それに伴って各キャラの立ち位置も変わっていったっていう感じですね。

満潮の場合は何かを抱えているけど、それを打ち明けるわけにはいかなくて……孤軍奮闘しているって感じですね。
最初のうちは提督のことを信頼するに値しないと思っていて、独りで自分の過去の清算をしようとしています。
ある程度提督が信頼出来るなと思えるようになってもその姿勢は変わらないままで。
一瞬自分の抱えているものを提督に話そうと迷ったりするけど結局突き放すような態度を取ってみたり。
跳ねっ返り娘に見えてどこかで人を恐れている部分があるのかもしれません。
(まあ過去の話から顧みるにロクな上官じゃなかったんだろうし彼女なりのトラウマもあるのかもしれない……)



・その心の闇に迫る
で、彼女なりに独自に行動していたらそれが仇となって提督にあれこれ打ち明けなければならない羽目になってしまうんですよね。
後から振り返ってみると多分その方が彼女にとっては幸せだったと思いますが。
なぜって、あそこで提督に打ち明けていなければ彼女独りで戦い続けていたでしょうし、そもそも提督に対して恋愛感情を抱くことも無かったでしょう。

様々な偶然が重なって彼女の殺害対象であった藤原大将は死に、(その後の展開はともかくとして)彼女の目的は結果的に果たされたわけですが……。
以前の彼女であれば、自分の手で決着をつけられなかったことを口惜しく思い、死に場所を捜し求めてたりしそうですね。
提督に恋に落ちるまでの満潮の心は、かつての自分の提督に対する憎悪やチップによる支配に対する復讐への執念で占められていましたから。
(例によって尺の都合でほとんど描写してないけど)彼女にとっては復讐だけが生き甲斐のような状態でした。

今でもなんだかんだその事については彼女なりに色々思うところがありそうですが……今の満潮はきっと大丈夫でしょう。
提督への恋心……もまぁそうですがあくまでそれは副次的に発生したもので、提督が彼女の辛さや苦しみを受け入れてあげたことが、彼女を大きく変えた要因でしょう。
彼女は艦娘になってからずっと孤独でして、誰とも心を通わすことなく十数年の時を過ごしています。
同じ艦隊の仲間に対しても、ある程度ビジネスライクな関係になることはあれど、大概皆沈んで居なくなってしまうのだから信用はすれど心を開くまでの関係になろうとは思わないんでしょうね。
提督の、愚直なぐらい真剣な姿勢や満潮という人格そのものを受け入れようとする温情を感じ取った時から、憎しみや不信によって止まっていた彼女の歯車は動き出したんでしょう。

ちょっと動き出しすぎ? な気もしなくはありませんが。
でも、意固地になって閉ざしてた心さえも開いてしまうような相手を前にして恋に落ちるな・愛情を抱くなというのも無理な話じゃないですかね。
きっと提督への愛を自覚してからの彼女の日々は、それまでと比べると彩りに満ち溢れたものなんでしょう。
ええと……その恋は結果として報われるものでは無いんですけれども。
ただ、恋なんて所詮恋で(?)、提督の想い人にはなれなかったということを知ってなお彼女は提督を愛することはやめないでしょうし、再び彼女の心が閉ざされることもないでしょう。



・お酒は二十歳になってから
作中の満潮が24歳という設定がポロッと出ましたが、身体年齢的には提督よりちょい上ぐらいなのでビール飲んじゃダメだと思います。
一応艦娘でも(人間と比べると速度が著しく遅くなるが)身体的に成長するという設定ですが……でもダメだと思います。
「酒ッ! 飲まずにはいられないッ!」な過去もあったんでしょうけど。
ちなみに、彼女がチップについて知っていたのは最初に配属されたのが物部元帥の艦隊だったからっていうことにしてます。
年齢的には彼女が10歳ぐらいの頃でしょうか。
まぁそれから十数年も暗い感情だけを抱えて生きてりゃグレるわな……。
意識を朦朧とさせて精神的苦痛をかき消すタイプの飲み方なので悪酔いします。ダメですね。



如月とは別の方向で暗い感じの過去を持ったキャラ、というか、悲惨さでは如月を上回ってそうですね。不幸なんて比べるものじゃないけれど。
そこんところ若干差別化に迷った記憶があります。
結果としては上手くいったんじゃないかなと思いますがどうなんでしょう。
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今週と来週を耐え抜けば休みだけど中々しんどいネー。あー、あと大掃除しなきゃ……。
316 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2014/12/25(木) 21:11:36.95 ID:X5Qa3Rg/0
突然ですが明日投下いきます。どっかしらで区切るので2日に渡っての投下になりますが。
電についてのアレコレを書いてたはずが消えててバックアップも残ってないという……。仕方ないのでそれも明日ってことで。
今日は疲れてるので明日に備えて力を溜めます(何
317 :【97Ex/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2014/12/26(金) 21:02:38.58 ID:LqPWl3cN0
自室で荷物をまとめている提督。

提督(必要な物は全部まとめた、と。これで僕の支度は終わったな。なんだか遠足みたいだな)

提督(そんな気楽なものじゃないけれど……)

提督「如月。居るんだろう? ……話、しようか」

如月「ごめんなさい」

如月の表情はいつになく暗く、目の端には涙を浮かべていた。

如月「私のせいで……そんなに傷ついてしまって……」

提督「良いんだ。君を守れた。僕も生きてる。それだけで十分だよ」

如月「私があの時司令官を呼んでいなければ、司令官はこんな目に遭わなくて済んだのにって考えたら……どう償っていいのか分からなくて」

提督(確かに如月の言う通り、彼女に呼ばれていなければ腕を失うことは無かっただろう)

提督(だが、僕はこのことを幸運だと考えている。彼女に呼び出されなければ、あれだけの脅威が潜伏していたこと。そして今まさにその脅威が動き出さんとしていたことを知れなかったからだ)

提督(如月に呼び出されていなければ、僕はあのレ級に先手を打たれて為す術なく殺されていただろう。かえって幸運だったと言うべきだ)

如月「ごめんなさい……うっ、うう」

提督(そんな話をした所で、彼女の心を晴らすことは出来ないだろうけど)

提督はハンカチを取り出して如月の涙を拭う。利き手でない左手なせいか動作がぎこちない。

提督「ねぇ、如月」

提督「僕は、君と出逢ったおかげで変われたんだ。君と会ったから、君と居たからここまで来れたんだ」

提督「初めて会った時のことを覚えているかな。君は僕のことなんて気にも留めないで、上の空だったよね」

提督「それからしばらくして、君がこれまでにどういう風に過ごしてきたかって話を聞いて。そう、あの工廠の奥の部屋で」

提督「僕はあの時、生まれて初めて心の底から誰かを救いたいって思ったんだ。救いたいなんて言葉は傲慢で、僕の独り善がりなのかもしれないけど……でも」

提督「僕は君の抱えていた悲しみから……君を救いたかった。君の眼に映るもの全てが、哀しみと空しさで埋め尽くされていくのに耐えられなかった」

提督(あの時の如月に対しての行動が、本当に彼女の心を救えたのかどうかは分からない。僕自身、上手くやれたのか今でも自信がない。だけど……そう)

提督「あの時から僕は、君たちの提督として相応しい人間にならなきゃって、そう決めたんだ」

提督「誰にも悲しんで欲しくなかった。僕の無力で、君や他の艦隊の子を傷つけてはならない、悲しませたくないって、そう思ったんだ」

提督「空回りも多かったけど……でも、今の僕は自分の望むものになれたと思う」

提督「あのレ級に襲われた時、僕は死を確信した。軽蔑するかもしれないけど、あの時の僕は恐怖で足が動かなくなっていた。あまりの痛みに思考することさえ放棄しようとしていた」

提督「……奴が君を穢そうとした時、急に力が湧いてきたんだ。その力が怒りなのか覚悟なのかは分からない。気がつくと身体が動いていたんだ」

提督「腕を失ってなお、僕は君を守り抜くことが出来た。ちっぽけなただの人間が、深海棲艦相手に、立ち向かっていくことが出来たんだ」

提督「僕はこのことをとても誇りに感じる。僕は失った右腕以上に大きな物を得たんだ」

提督「大切な君を守ることが出来た、深海棲艦に自分一人で立ち向かうことが出来た……僕にとっては失った腕よりも遥かに価値のあることなんだ。だから君は気に病む必要なんかない」

提督「まだ時間はかかるだろうけど……深海棲艦との戦いも、きっと終わらせることが出来る。根拠は無いけど……今はそう確信している」
318 :【97Ex2/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2014/12/26(金) 21:03:45.73 ID:LqPWl3cN0
提督が話を終える頃には、如月はもう泣き止んでいた。

如月は、両手を後ろに組んで、モジモジと気恥ずかしげな様子で提督を見つめる。

如月「司令官。一つ、お願いがあるの」

如月はぴとっと提督に身を寄せ抱き締めると、胸に顔を埋めた。

如月「しばらく……私が満足するまで、このままで居させて?」

上目使いで提督を見上げる如月。提督は少しドギマギしながら無言で頷く。

提督が頷いたのを確認すると、如月は再び顔を埋める。

スウと深呼吸をするような音が聞こえる。安らかに眠っているかのような如月の吐息が聞こえる。

かと思えば、突然しゃくり上げたかのような震えが提督の身体を伝ってくる。

その間提督には如月の表情が分からなかった。泣いているのか、笑っているのか、分からなかった。

そんな振る舞いを数回繰り返す。如月が提督を抱き締める両腕の力は、未だに緩まらない。

・・・・

如月が、どういう意図でこんなことをしているのかは分からない。

提督「…………」

僕は言葉を発することが出来なかった。きっとこれは悲しいことなのだと悟ったから。

提督(如月はきっと……)

如月はきっと、今に至るまで僕への感情を押し殺してきたのだと感じ取った。

提督と艦娘という関係を逸脱することへの後ろめたさなのか、僕に想い人が居ると察しているからなのか、迷惑をかけたくないからなのか。何故かは分からない。

ただ、今の彼女は、僕のことを想っていて……恐らく、僕はその想いに応えることは出来ないのだろう。

そんな事を考えていたら、とても悲しい気持ちになってきた。

目頭が熱くなる。情けないところは見せられないから、僕以上に如月は悲しんでいるはずだから、と涙が零れないように天井を見上げる。

薄ぼんやりした電球の明かりがゆらゆらと揺れている。

ああ、明日の朝にはこの鎮守府を離れて、もう二度と戻ることは無いのだろう。

今までの思い出がどっと押し寄せて感情がこみ上げそうになったので、僕は平静を保つべく深く息を吸う。

如月「? どうしたの?」

提督「ううん、なんでもないんだ」

震え声にならないよう意識して声を出したら、かえって変な声になってしまう。

如月「ふふ、ヘンな司令官」

先ほどまでの泣き顔が嘘のようにけろりとした様子だ。

如月「……付き合ってくれてありがとう」

僕を抱きしめていた腕をぱっと離し、部屋を出ようとする如月。

去り際に如月が振り返る。

如月「司令官……ありがとう」

どこか納得したような、安らかな顔だった。
319 :【97Ex2_1/100】 >>318は97Ex_2の間違いです ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2014/12/26(金) 21:19:06.23 ID:LqPWl3cN0
提督(……)

ベッドに横たわり、放心状態でボーッとしている提督。

提督(寝た方が良いって分かってるのにな)

腕を失った右肩の鈍痛が、提督の眠気を削ぐ。

提督(やれやれ……しっかりしないと!)

提督は起き上がり明日の作戦のための資料を読み始める。

提督(何も起こらなければこんな資料は要らないんだがな……)

提督(これまでの経験から考えて、そう甘くは無いんだろうな。『不測の事態』を前もって予測し、対策を練っているぐらいじゃなきゃ)

提督「如月……」ボソリ

ハァ、と溜息をつく提督。

提督「頭が回らんな……」

コンコンとドアを叩く音がする。

提督「どうぞ」

電「司令官さん、お疲れ様です」ガチャッ

提督「別に疲れてないさ」

電「如月が司令官さんを呼んでいたって言ってたので来たのですが……」

提督「如月が……?」

電「?」

提督(如月は気づいたのだろうか……。しかし、仮に気づいたとしてどうしてこんなことをするんだ?)

提督「いや、なんでもない。用は無いから、もう部屋に戻っていい」

提督「明日も早いしね」

提督は上の空の様子で、まるで独り言を呟くような調子で声を発した。

電「司令官さん。電はここなのです……目を見て話して欲しいのです」

提督「ごめん……今はそっとしておいて欲しいかも」

提督「その、なんていうか、疲れてる」

電(目の下に隈が浮かんでるのです。昨日から一睡もしていないんでしょうか……?)

電「司令官さん、ちょっと待ってて欲しいのです!」タターッ

・・・・

電「司令官さん、お疲れのようですから。はい」

電「蜂蜜入りのホットミルクなのです」

提督「戻っていいって言ったんだけどな…………でも、ありがと」ズズッ

電「司令官さん……。何があったのか、ちょっとずつで良いから話してもらえませんか?」

提督「……電。如月は君にここに来るように言った時、どんな様子だった?」

電「? 普段通りでしたよ」

提督「そうかい(気丈だな……如月)」
320 :【97Ex2_2/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2014/12/26(金) 21:20:35.19 ID:LqPWl3cN0
提督は、先程までの如月とのやり取りを淡々と話した。

電はその間、何も言葉を発さなかった。

提督「最初はたぶん……僕に対する罪悪感で部屋に訪れたんだと思う」

提督「だけど。その後、僕を抱き締めてきたのには、理由があると思う」

提督「恐らく、如月は僕のことを愛してくれていて。きっと、すごくすごく好きで居てくれたんだと思う」

提督「ずっとそんな気持ちを抱えていたんだと思う」

提督「如月は何も言わなかったから、本当のことは分からない。でも、あの時の彼女の仕草で、そう感じ取ったんだ」

提督「如月は……ああすることで、僕への想いを断ち切ろうとしたんだと思う」

提督は、まるで夢でも見ているかのように、ぼんやりとした様子でぽつりぽつりと言葉を漏らす。

提督「それを分かってもなお……僕は、彼女の想いに応えることは出来ないんだ」

電「どうして……ですか?」

提督「僕にも、好きな人が居るんだ。だから……如月の想いを察することは出来ても、応えるわけにはいかなかった」

提督は、ベッドに身体を横たえる。枕に顔を埋める。

提督「……如月を傷つけてしまって、しかも、多分もうこの先どうすることも出来ないんだな、って」

提督(如月……今は、部屋で一人で泣いているんだろうな……。なんとなくだけど、そんな気がする)

提督「あそこで僕が、如月を引き止めていたなら、きっと如月の心を救ってあげられたんだと思う」

提督「でも、僕はそれをやらなかったんだ。彼女の痛みを知っているからなおさら……自分の気持ちに嘘はつきたくなかった」

提督「自分の気持ちに嘘をついて接しても、余計に彼女を傷つけてしまうだろうから」

提督「だから……彼女を受け入れることは出来なかった」

提督「それってすごく哀しいことなんだと思う。でも、仕方ないことだとも思う」

提督「仕方ないことなんだろうけど……やるせない」

・・・・

電(司令官と如月は……似た者同士なのかもしれませんね)

電(だから、お互いの痛みが分かるのかもしれない)

電(如月はあんなふうに飄々としていても、辛い気持ちや寂しい気持ちはずっと我慢してる……)

電(司令官もきっとそうなのでしょう……)

提督「情緒不安定なのかな……情けないところ見せてごめん」

提督「ごめん。やっぱり僕、疲れてるみたいだ」

提督はベッドから身を起こすと、少し困ったような、力ない笑顔で電に微笑む。

電(司令官、そんな顔しないで欲しいのです)

電(そんな顔をして……私の遠くへ離そうとしないで欲しいのです)

電「司令官……。今夜は、電がずっとお傍に居ます」

電は、ギュッと拳を握って、目を瞑る。それから深呼吸して、何かを思い切ったように強く言い放つ。

電「私は! 司令官さんと違って、頭も悪いし失敗ばかりで……」

電「司令官さんの辛い気持ちも、哀しい気持ちも、少しも楽にしてあげられないかもしれない」

電「でも……でも、司令官さんには、笑っていて欲しいのです。だから……」

電の言葉が詰まったタイミングで提督が話を切り出す。

提督「ありがとう、電」

提督「(心配かけてしまったか……やはり如月のことは、話すべきじゃなかったな)」
321 :【97Ex2_3/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2014/12/26(金) 21:21:39.37 ID:LqPWl3cN0
提督「少し、甘ったれていたのかも……突然のことで、精神的に動揺していたんだ」

提督「そうだな……このやるせなさも、乗り越えていかなきゃいけないね」

提督「僕は君たちの提督だ。……強くならなきゃ」

提督「心配かけてごめん。僕の為を思ってくれて言ったんだろう。ありがとう」

提督「もう、大丈夫だから」

提督は電の頭を撫でようとする。

が、その手は払いのけられ、提督はベッドに押し倒される。

提督「!?」

電「何勝手に自己完結させようとしてるんですかァ!」

電「全然大丈夫なんかじゃないのですッ!」

電「司令官は! ずっと私に隠してきたのです!」

電「辛いと思ったことも! 哀しいと思ったことも! 皆一人で背負い込んできたのです!」

電「司令官は強くなんかならなくていい! 辛い気持ちを押し殺す必要なんてないのです!」

電「情けなくてもいいから、みっともなくてもいいからぁ!」

電「司令官には……私が、居ますからっ……!」

荒い呼吸を整える電。しかし、感情が昂ぶっているせいか頬が紅潮している。

電の今まで見せたことのない態度に、提督は固唾を飲む。

絞り出すかのように、言葉を発する電。

電「教えて欲しいのです。私に、全部。……」

電「司令官さんの苦しみも、全部、知りたいのです……」

今にも泣き出しそうな潤んだ目で提督を見つめる、電。

提督は、その目を真剣な眼差しで見つめ返し、……唇を重ねた。

・・・・

提督を強く強く抱き締める電。

堪え切れなくなった電の目の端から、ぽろりぽろりと零れ落ちる涙。提督の頬を伝う。

それは、ほんの僅かな時間の出来事だった。

しかし、二人にとっては永遠の意味を持つ出来事だった。
322 :【97Ex2_4/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2014/12/26(金) 21:22:08.54 ID:LqPWl3cN0
唇が離れる。

電は、力が抜けたように、へなへなと提督の上に倒れ込む。

左腕で電の背中を包み込むようにぎゅっと抱く提督。

提督「両の手で抱きしめられないのが、残念だな……」

電「……ぐす。どうして、私、なんですか……?」

電「嬉しい、けど、わたし、司令官に避けられてると思って、えぐ……」

提督「そう勘違いさせてしまったなら、すまないね。僕は電のこと、好きだよ」

提督「本当に、ごめん。そっか……辛い思いをさせてたのかな」

電「うぅん。司令官と一緒に過ごしていて、辛かったことなんて一度だって無いですよ……?」

電「ひっぐ……いつも、幸せでした」

はにかみながら笑う電。

提督「避けていたわけじゃないんだ」

提督「ただ……本当は、ずっとはぐらかすつもりでいたんだ。ずっと嘘をついていているつもりだったんだ」

提督「誰か一人を選ばなきゃいけないって、僕にとっては辛くて……それならいっそ、誰にも興味が無い振りをして、独りぼっちになれば良いのかなって」

提督「そんなずるいことを考えていたんだ。全てが終わったら……自分の気持ちと向き合おうって思ってたのに、逃げようとしたんだ」

提督「でも、他の皆には薄々感づかれてみたい。それが君だとまでは分からなかったみたいだけど、僕にも好きな人が居るって事を」

提督「……みんな、色んな事を一緒に乗り越えてきた仲だもんね、隠し通せるわけ無かったんだ」

提督「僕は…………電。君のことが好きだ。気づかないふりをして自分を誤魔化してきたけど、もう、抑えられないみたい」

提督「……君を、誰よりも愛おしく感じるんだ。電……んっ」

不意に唇を塞がれる提督。

電「嬉しいです……司令官……」

電「嬉しい……嬉しい……」

啄ばむように、何度も何度も提督の口を塞ぐ電。

電「んっ……ふっ……ふふ」

電「しあわせ、なのです……」

二人は抱き合ったまま眠りに落ちていった。
323 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/26(金) 21:24:18.37 ID:LqPWl3cN0
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[[電についてのアレコレ]]
トリを飾るのはもちろん電。いやぁ……やってくれましたね。

・作者目線での苦労
電はわりと人気の高いキャラで、それなりに読む側も目が肥えてるようなので、ちゃんとした電が描けてるかわりと不安でした。
ちゃんとした電って何だよって話ですが。いや、期待に沿えてるかなあ、とか、キャラから外れてないかなあ、とかそういうのですよ。
わりとそこいら辺は問題ないようで今更ホッとしています。なんだかんだ魅力的に書けてたなら良かったなあと思います。
作者的にはわりと自信が無かっただったので、投票で電に票が集まったのはわりと衝撃受けてました。

電は……なんだかんだ一番苦労したかもしれません。
第一に、好感度ですかね。アレで一人だけガンガン突出していくもんなんで、かなり困りましたね。
別に*2のボーナスを無くしてしまえば良かったんですけど。あるいは別の子にボーナスを付け替えるか。
ただ、提督の立場から考えると秘書艦を変える必要性って無いし、無理に秘書艦を別の子に変えるためのイベントを起こそうっていう発想も沸かなかったので、結局そのままでした。
結果として一人だけ好感度がガンガン上がっていき、かなり動かし辛いキャラになってしまった……。
中盤以降はもう好感度とか知るかと吹っ切れて程々の頻度で登場するようになりますが。


・本題
上記の理由や他のキャラとの差別化に悩まされたキャラである電なのですが、どうやって彼女を動かしていったかというと、キャラクターの目線に立って思考し、描写することで対応しました。
このキャラならこの場面でこういうことを考えてこんな風に動くだろう、と推測しながら動かしています。
他のキャラも場面場面でそういう書き方をしていますが、電と提督は特にそういうことが多かったですね。
提督に関しては、お前作者の意図に反して勝手に動き過ぎって感じのことが多いんですけど。
キャラは薄いわりに「ここではこういうことをする」という思考ルーチンだけはわりと確立されてるキャラなので、結構振り回されることが多かったですネー。

話を電に戻しまして。
電は、結構自分に対して厳しい見方をしていますね。
ごく最初の方に提督に自分の理想を語っておきながら、後半では自分は何も出来なかった・何も変えることが出来なかったという旨の話をしています。
「自分を変えたい」とか「戦いが無くしたい」とか、そういう理想を抱いてはいるけれど、現実には自分ではどうすることも出来なくて……というのが彼女なりの苦悩なようです。
そうした葛藤は提督やかつての満潮なんかもしていたりするのですが……電の場合は特に悩みが大きいみたいですね。
本当は彼女だってしっかり成長しているんですけど、彼女の中では納得がいっていないようです。
というのも、彼女に最も身近な提督の場合、「皆を守りたい」とか「誰も悲しませたくない」とかそういう信念のもと行動していって、実際にそれが出来るぐらいに成長していますからね。
彼と比べると劣等感のようなものを感じてしまうんでしょう。
……彼も彼でアレですけど。結局提督は、本質的には他人に心を開いていないのかも。
自分一人で悩んで、自分一人で乗り越えて……だから、成長はしているけれど常にどこか孤独を抱えているっていう。
そんな提督の心の動きのようなものを察知して押し倒した電は中々良い仕事しましたね!(押し倒したといってもやらしいニュアンスじゃないからな!)
衝動的な行動ではありましたが、それが提督の心を動かしたのかなと。
電の本気の片鱗のようなものを作者は感じますね。



・再び話は逸れて 〜作者的場面解説
……これは作者の持論ですけど。
他人から感情をぶつけられると滅茶苦茶しんどいのですよ。その情が強ければ強いほど。ええと……分かりやすい話をすると、負の感情を吐露されて辛いと感じない人なんて居ませんよね。
人から死ねだの殺したいだの思われて平気で居られる人なんて、ある種の狂人ですからね。精神的に強者だとは思いますが……。
(まあ、そういう言葉を投げかけてきた相手を人間じゃなく虫ケラ程度にしか認識していなければ「あー虫がなんか言ってるなー」程度で済みますけど……それはそれで悲しい)正の感情ならばどうか、というと、実はこれも時と場合によるのですよね。
今回のお話の例だと、提督は如月の情愛を悟った時に、哀しみのような感情を抱いていますよね。
提督も如月に対して恋愛感情とまではいかないまでもとても大切に想っていたにも関わらず。
説明するまでも無いですが、提督が悲しくなった理由は、彼女の持っていたある種の“一つになりたい願望”に応えられないから、ですよね(やらしい意味じゃないからな!)。
ええと……他人からの自分に向けられる強い感情というのは、それが親愛であれ憎悪であれ、精神を強く揺さぶってきますよね、という話がしたいのでした。
ここで、如月の内面を知ってしまった提督は、これから決戦だというのに疲弊していますね。
そんな最中に電が部屋を訪れるのでした。
提督は、独り言のように自分の悩み、というか、彼の心の中にあるやるせなさについて口を滑らせています。

彼にしては珍しく精神的に参っていたのかもしれませんね。
で、電はそんな提督を見て、自分が本当にその役に相応しいか自信は無いけれど、貴方を苦しみや哀しみから救いたい……意味合い的にはそんな感じのことを言ってますね。
ただ、電にそう言われた時に提督は自分の取り留めのない空虚感を打ち明けてしまったことを後悔しています。
電を心配させてしまったと考えたからです(まあ確かに多少は心配してますけど……)。
そう思った提督は、すぐに立ち直り、自分を奮い立たせています。

先程も書いたように、自分一人で悩んで、自分一人で乗り越えようとしたわけですね。
しかし! 提督のその態度を見て電は激昂するわけですね。
辛いはずなのに誰に頼ろうともせず、独りで抱え込もうとする姿勢が気に食わなかったわけです。
まぁ……「貴方の為に傍に居ますから(=私に頼って下さいね)」って言われてんのに「大丈夫だから」って返しは野暮ったいというか無粋ですよね。
そこはお言葉に甘えろっつーの。
提督なりには気遣っているつもりみたいですけどかえって失礼ですよねこれ。電が怒りに近い感情を抱くのも無理はない。
(次のレスにつづく)
324 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/26(金) 21:26:10.05 ID:LqPWl3cN0
こういう態度に提督の本質があるのかなーと。
彼は確かに提督に相応しい存在と呼べるまでに成長してはいますし、艦娘たちに心から向き合っていますが、一方で自分の心の内は誰にも明かしていないわけです。
というか、彼が真剣な悩みを相談したのって満潮ぐらいですしね。
それだって満潮の方が半ば強引に提督の方に向かってきたから打ち明けただけで。
電や満潮だけでなく他の艦娘全員から彼の抱えているそういう精神的な苦しみを察されていて、その“精神的な”苦しみを皆心配しているのに、提督は誰にも打ち明けようとしない、と。
ただ、彼には彼なりの考えもあって。
答えの出る悩みは人に相談出来ても、答えのない悩みは打ち明けた所で聞いてる側はどうしようもないじゃないですか。
例えば、「上手くいくか不安」という悩みに対して、より「上手くいく方法」を一緒に考えてあげることは出来ても、「不安」そのものは当人以外にはどうにも出来ないですよね。
つまり、“精神的な”苦しみは他人が解決しようがないんですよ。
今回のケースでは提督は電に対して、「仕方ない」と割りきっているけれど「やるせない」という“精神的な”苦しみをうっかり打ち明けてしまったんですね。
そんなことをしても電を心配させるだけで何の意味もない、それなのに口を滑らせてしまった、と考えたから打ち明けた後で後悔したわけですよ。
そして、電の心配を取り払うべく自分自身の精神を向上させて「やるせなさ」を強引に克服しようとした……というわけだ。



・理性対感情
これまで通り提督がなんだかんだ精神的に成長して終わり……ならこのエピソードはここまで複雑にならないんですが。
上に書いた通り電は提督のそんな態度に黙っていられなかったわけで。
電は提督を押し倒した後に、自分の思いの丈をストレートにぶつけます。
提督の苦しみも悲しみも、たとえ何も解決出来なかったとしても受け止めたいと!
そう強く強く提督の心に訴えかけるわけですよ!
対する提督の行動は……!? ってな感じでしたよね。

これはちょっと理解出来ない行動かもしれません。
というか、作者だったらここでそれ!? ナンデ!? って思っちゃいます。
思っちゃいますけどあの提督はあの場面だとああいうことをするんです。
……ええと、かなり“感情的な”行動なので論理的に説明するのが作者でも難しいというかぶっちゃけ作者でさえよく分かってないんですけど。
一応、作者目線で提督の行動を論理的に分析しますね。

前述の通り提督は心のどこかで艦娘と距離を置いていて、その理由は心の内面の解決しようのない葛藤を打ち明けても無駄だと考えているからでした。
一方電は、なんだお前それがどうしたと。
たとえ無駄だろうがなんだろうが、私は貴方の心の深淵に触れたいし、その為なら私は貴方の痛みや悲しみでさえも受け止めたい、と言うわけですよ!

ここでもし提督が理性的な行動を取るとするならば考えうる選択肢は二つである。
・それでもなお電を拒み、苦しみを抱え続ける
・自分の抱えている漠然とした苦しみや悲しみを電に打ち明ける
もっと頭の働く人なら他の選択肢も浮かぶかもしれませんが作者はとりあえず二つしか浮かびませんでした。
で、結局そのどっちでもありませんでした。
なぜ提督は電に口付けをしたのか……。

うーん、作者もあんまり説明出来ないんだけどなぁ。
その、彼の過去の行動を振り返るに、言葉で説明したり出来ない時に、身体に触れるなどの行為で意図や気持ちを伝えていたことがあるじゃないですか。
今回もその一例……と言ってしまえば簡単なのですが、それも納得いく説明じゃないと思うので……。

電に押し倒されて想いを伝えられてなお、彼の胸中を想像してみますかね。
まず第一に動揺だ。心配をかけまいという振る舞いがかえって相手を不興を買ってしまったのなら戸惑うだろう。
で、第二に、電の言葉の分析をするに違いない。
彼女は今激しく興奮しているが、その原因は何か。
……自分のその心配をかけまいという態度が気に入らなかったのだと悟る。
また、自分の心の澱でさえも受け止めたいという彼女の強い想いを知る。
ひょっとしたら、そんな風に自分を募ってくれる彼女を愛おしいと思うのかもしれません。
というかキスするぐらいだしそう思ったのでしょう。
だから唇を重ねた、と。

んんんん〜、やっぱり作者的には納得いかないぞ……。
納得いかないのになんでそんな展開にしてそんな描写をしたんだっつー話ですが……でも、この提督なら絶対こういうことするよな! とは思うんですよ。
多分作者には理解出来ない「愛」的サムシングが彼を突き動かしたんでしょう。
まぁ、その。「本当ははぐらかすつもりだった/嘘をついているつもりだった」から察するに、電を愛してはいたけれどそれを打ち明けるつもりは無かったんでしょう。
提督の中で、電への想いを封じ込め続けることは精神的な苦しみの一つでしょうし、それを打ち明けることによって電の想いに応えた……って解釈が妥当かなぁ。
なんていうか、ある意味提督と電の二人だけの世界みたいな領域になってしまったので、もう作者には分からん。



ごめんなさい。電についてとか書いておきながら全然触れてませんでした。だって……前に一度書いてたやつが消えちゃったのが悪いんだし……。
一つだけ電に関する後悔は、朝潮と仲直りするエピソードが尺の都合で書けなかったことですかね。
電が朝潮に対して、提督のことを何も分かっていないと叱咤していますが、あの後で自分も朝潮の苦しみを分かってあげられなかったんだなって反省してたりします。
そこのところ描写したかったなぁ……今となっては過ぎてしまったのでアレですがねー。

エンディングを添い遂げるヒロインとして相応しく描けたかどうかは分かりませんが、ここまで提督に精神的に喰らいついたのは電だけですね。
そういう意味ではトゥルーエンド? ……ですかねぇ。
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……色々となげーよ馬鹿! とセルフツッコミ。
エクストライベントを自重なしで悪用するとこうなるということじゃ。
とりあえず前編おしまい。
明日の投下でエンディングです。
325 :【98/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/27(土) 21:30:17.68 ID:l7+8oZPc0
朝潮「いよいよですね……」

水平線の彼方から陽光がちらつく。

満潮「本当に行くの? 昼になってからでも良いんじゃない?」

提督「いや、これ以上長居するのは良くない。……僕の心情的に」

皐月「感傷的だねぇ」

如月「男は過去に生きて女は未来に生きるのよ」ニヤケ顔の如月

提督「……違いないね。だが!」

提督「今僕が見るべきは『現在』だ。過去の想いを繋ぎ、未来を切り拓くためにもッ!」

提督「これから僕たちに襲い来るであろう脅威を打ち破る! その為に皆、力を貸して欲しい」

電「……暁の水平線に、勝利を刻むのです!」

提督(それ僕が言いたかったんだけどなー)

・・・・

磯波「今の所は順調ですね。敵も見かけませんし」

提督「そうでなきゃ困るよ……まだ目を凝らせば僕たちの鎮守府が見えるぐらいの距離だよ?」

間宮に背負われている提督。

提督「鎮守府内のありったけの物資や装備、資料を運んでるわけだから、航行速度は普段の半分ぐらいなのかな」

提督「昼戦では機動力が売りの水雷戦隊だけど、その機動力さえ今は削がれている状態だからね……。命あっての物種だから敵が来たらある程度海に捨てるのも考えてるけど、なるべくなら運びきりたい」

提督「あと、僕のことはともかく、今後も美味しい晩御飯を食べられる日々が続いて欲しいなら間宮さんは最優先で守るように」

間宮「向こうの鎮守府に着いたら腕によりをかけてご馳走するので、頑張って下さいね」

皐月「よしっ、こうしちゃいられない! 全速前進!」キラキラ

航行速度を上昇させる艦娘たち。

提督(たった一言で皆を戦意高揚状態にさせるとは……。逆立ちしてもこの人には勝てないな……)

提督(それにしても……寒い! 早朝よりは幾分かマシになったが、潮風が突き刺さるように冷たい)

提督(そのくせ、腕を無くした方の肩が灼けるように熱い。血液が全部そこに持ってかれてるみたいだ……)

提督(意識を保っていられるかどうか怪しいぞ……)

・・・・

満潮「背後に敵影! ……と言っても、こっちに向かって来ているわけじゃないみたい。離れていくわ」

満潮「その数……あー、まともにやり合ったら勝てそうにないわね。数え切れないわ、100隻超えてるんじゃないの」双眼鏡を覗く満潮

満潮「戦艦が多いわね。幸い空母の類は少ないから、索敵機がここまで来る心配は無さそう。全艦私たちの鎮守府の方へ向かってるわ」

提督「“今のところは”無事でいられそうだね。それにしても、まさかここまで早く奇襲してくるとはね……朝のうちに抜錨していなかったらと思うとゾッとするよ」

提督(遠くで砲音が聞こえる……。敵の奇襲がもっと遅ければ、せめてあと数日ぐらい待ってくれていたのなら、あの鎮守府も守るつもりだったんだけど……そんなに待ってくれるほど優しい相手では無いか)

朝潮「司令官。後ろから追手が来る恐れはありますか?」先頭を進む朝潮、一瞬提督の方を振り返る

提督「いや敵の偵察範囲から外れている現時点では問題ない。無理して速度を上げなくてもいいよ。新しい鎮守府にいち早く着くことは大事だが、それさえ出来れば万事上手くいくというわけではないからね」

提督「なるだけ戦力を温存しておきたい。総力戦になるだろうから。……あっちに向かった連中とは後々交戦することになるだろうけど、しばらく時間稼ぎ出来ると思うから心配要らない」

提督「僕らの居た鎮守府は確かにボロい鎮守府ではあったけど、仮にも艦娘を収容している施設だからね。生半可な砲撃で破壊出来るほどヤワな建造物じゃないよ。完全に破壊するには時間がかかるだろう」

磯波「でも、あそこに私たちが居ないことを敵に気づかれたらまずいですよね……」

提督「その通り。だからある程度策は練っておいた。……もし僕たちがまだあの鎮守府に居たとしたらどうする? 正面から戦っても勝ち目は無いし逃げ場も無い。ならば最も安全な場所で敵を各個撃破しつつ味方の増援を待つよね」

提督「だから、『鎮守府内でも堅牢な場所のどこかに逃げた』という設定のもと色々と罠を仕掛けておいた(北方棲鬼を撃退したあの後、夕張に色々と聞いておいたのが活きたかな……)」

提督「敵が鎮守府に上陸して僕たちを捜すようなことをしても、それなりに時間は稼げると思う」

提督(とりあえず一つ目の障壁はギリギリ回避出来たといえるだろう。問題はこの先だ……)
326 :【99/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/27(土) 21:59:47.92 ID:l7+8oZPc0
朝潮「いよいよですね……」

水平線の彼方から陽光がちらつく。

満潮「本当に行くの? 昼になってからでも良いんじゃない?」

提督「いや、これ以上長居するのは良くない。……僕の心情的に」

皐月「感傷的だねぇ」

如月「男は過去に生きて女は未来に生きるのよ」ニヤケ顔の如月

提督「……違いないね。だが!」

提督「今僕が見るべきは『現在』だ。過去の想いを繋ぎ、未来を切り拓くためにもッ!」

提督「これから僕たちに襲い来るであろう脅威を打ち破る! その為に皆、力を貸して欲しい」

電「……暁の水平線に、勝利を刻むのです!」

提督(それ僕が言いたかったんだけどなー)

・・・・

磯波「今の所は順調ですね。敵も見かけませんし」

提督「そうでなきゃ困るよ……まだ目を凝らせば僕たちの鎮守府が見えるぐらいの距離だよ?」

間宮に背負われている提督。

提督「鎮守府内のありったけの物資や装備、資料を運んでるわけだから、航行速度は普段の半分ぐらいなのかな」

提督「昼戦では機動力が売りの水雷戦隊だけど、その機動力さえ今は削がれている状態だからね……。命あっての物種だから敵が来たらある程度海に捨てるのも考えてるけど、なるべくなら運びきりたい」

提督「あと、僕のことはともかく、今後も美味しい晩御飯を食べられる日々が続いて欲しいなら間宮さんは最優先で守るように」

間宮「向こうの鎮守府に着いたら腕によりをかけてご馳走するので、頑張って下さいね」

皐月「よしっ、こうしちゃいられない! 全速前進!」キラキラ

航行速度を上昇させる艦娘たち。

提督(たった一言で皆を戦意高揚状態にさせるとは……。逆立ちしてもこの人には勝てないな……)

提督(それにしても……寒い! 早朝よりは幾分かマシになったが、潮風が突き刺さるように冷たい)

提督(そのくせ、腕を無くした方の肩が灼けるように熱い。血液が全部そこに持ってかれてるみたいだ……)

提督(意識を保っていられるかどうか怪しいぞ……)

・・・・

満潮「背後に敵影! ……と言っても、こっちに向かって来ているわけじゃないみたい。離れていくわ」

満潮「その数……あー、まともにやり合ったら勝てそうにないわね。数え切れないわ、100隻超えてるんじゃないの」双眼鏡を覗く満潮

満潮「戦艦が多いわね。幸い空母の類は少ないから、索敵機がここまで来る心配は無さそう。全艦私たちの鎮守府の方へ向かってるわ」

提督「“今のところは”無事でいられそうだね。それにしても、まさかここまで早く奇襲してくるとはね……朝のうちに抜錨していなかったらと思うとゾッとするよ」

提督(遠くで砲音が聞こえる……。敵の奇襲がもっと遅ければ、せめてあと数日ぐらい待ってくれていたのなら、あの鎮守府も守るつもりだったんだけど……そんなに待ってくれるほど優しい相手では無いか)

朝潮「司令官。後ろから追手が来る恐れはありますか?」先頭を進む朝潮、一瞬提督の方を振り返る

提督「いや敵の偵察範囲から外れている現時点では問題ない。無理して速度を上げなくてもいいよ。新しい鎮守府にいち早く着くことは大事だが、それさえ出来れば万事上手くいくというわけではないからね」

提督「なるだけ戦力を温存しておきたい。総力戦になるだろうから。……あっちに向かった連中とは後々交戦することになるだろうけど、しばらく時間稼ぎ出来ると思うから心配要らない」

提督「僕らの居た鎮守府は確かにボロい鎮守府ではあったけど、仮にも艦娘を収容している施設だからね。生半可な砲撃で破壊出来るほどヤワな建造物じゃないよ。完全に破壊するには時間がかかるだろう」

磯波「でも、あそこに私たちが居ないことを敵に気づかれたらまずいですよね……」

提督「その通り。だからある程度策は練っておいた。……もし僕たちがまだあの鎮守府に居たとしたらどうする? 正面から戦っても勝ち目は無いし逃げ場も無い。ならば最も安全な場所で敵を各個撃破しつつ味方の増援を待つよね」

提督「だから、『鎮守府内でも堅牢な場所のどこかに逃げた』という設定のもと色々と罠を仕掛けておいた(北方棲鬼を撃退したあの後、夕張に色々と聞いておいたのが活きたかな……)」

提督「敵が鎮守府に上陸して僕たちを捜すようなことをしても、それなりに時間は稼げると思う」

提督(とりあえず一つ目の障壁はギリギリ回避出来たといえるだろう。問題はこの先だ……)
327 :【100/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/27(土) 22:36:06.23 ID:l7+8oZPc0
提督「なんとか、生きて鎮守府まで辿り着けたな……」

羽黒「し、司令官さん? ……ようこそ、新しい鎮守府へ。あっ、あのっ、私は今修理中で…………」服が破れている羽黒。中破状態のようだ

羽黒「見ないでえええええええぇぇぇぇ」提督の顔に手袋を投げつける

提督「ああ、歓迎ありがとう。今の状況を教えて欲しいな」後ろを向く提督

羽黒「今は、敵増援が次々にやって来るので、あの、皆代わる代わる入渠している状態です。ただ、陸奥さんが……」

提督「……彼女が撤退すると戦力が大幅に下がり艦隊の士気にも影響するから退くに退けない、というわけか」

羽黒「あのっ……で、でも。私たち、頑張りますからっ! 行ってきます!」再び戦場に向かっていく羽黒。提督が声をかける間もなく走り去っていった

提督(あれ、入渠は……?)

・・・・

那智「作戦完了だ、敵艦隊は壊走した。だが、こちらも被害が大きい。私は無事だが、他の連中が……」無線で提督に報告する那智

提督「分かった、よくやった! 後続があるかもしれないから、損傷の小さい艦は待機。他は帰投してくれ。……特に陸奥はよくやってくれた。しっかり休んでくれ」

提督「ほっと一息、か」胸を撫で下ろす提督

妙高「見事な首尾でしたね。お疲れ様です」

提督「ありがとう。でも、正念場はここからだ……。ね、電?」

電「はい、どこまでもお供します……ふふ」ニコリと不敵な笑みを浮かべる電

妙高「?」

・・・・

提督(各艦への補給が終わった、次の戦いへの準備も出来つつある。順調なはずだが、妙だ……静か過ぎる。僕が敵の立場なら、ここまで回復出来る時間を与えてやりなどしないが……)

提督「陸奥の修復にはまだかかりそうかな?」

如月「ええ、まだみたい。それにしても浮かない顔ね。不安なの?」間宮のアイスをシャクシャクと食べ進める如月

提督「ああ、ちょっと上手く行き過ぎてる気が……」

満潮「司令官、敵主力大隊がこっちに接近してる! あの中に司令官を襲った戦艦レ級も居るみたいだわ!」

皐月「司令官! さっきの敵艦隊の第二波だ! 指示お願い!」

磯波「提督! た、大変です! 敵の支援部隊と思しき艦隊がこちらに接近して来てます!」

見張りの艦から次々と敵艦隊発見の報告が届く。

提督「おいでなすった……! なるほど、こういうこと……全方位から強襲、ね。えげつないことをする」額に手を当て渋い表情をする提督

如月「ふふ、予想通りじゃない」急いでアイスを食べきり戦場へ向かう用意をする如月

提督「ううーむ。予想していたよりちょっと……いやかなり、ひょっとすると最悪なぐらい酷いが……。まぁ、ある意味作戦通りだ。僕がやるべき事に変わりはない」

提督「全艦出撃! 敵艦を各個撃破。ただし全戦力を以って真っ向勝負のような戦い方はダメだ。ヒット・アンド・アウェイ……というか、逃げながら戦うぐらいでいい」

足柄「ちょっとー! 何よそれ!? 右を向いても左を向いても敵だらけじゃない! こんなの暴れるなっていう方が無理よ!」足柄、無線越しに怒鳴る

提督「今はなるべくこちらの被害を少なく敵の数を確実に減らすことが大事だ(と言っても難しいだろうけど……)。僕に策があるので、しばらくは時間稼ぎをお願いしたい」

提督(ウォーモンガーだなぁ……士気が高いのは良いことだけれど……。重巡ともなると駆逐艦とは考え方がだいぶ異なるのか)

提督「さて、朝潮。君にはここに残ってもらう。負傷した艦は即座に退かせて入渠させるように。陸奥が回復するまではとにかく守勢に徹してくれ」

提督「夜が明けるまでに、敵の空母の数が減っていたら嬉しいかなあ……なんて」縄で提督の体を自分の艤装に結びつけている電。提督は片手に探照灯を抱えている。

朝潮「分かりました。……司令官、ご武運を!」提督に敬礼する朝潮

電「これでどれだけ激しく動いても海に落ちることは無いと思うのです。気休めにしかならないかもしれませんが、装備はタービンと艦本式缶を持っていくのです」

電「さぁ……司令官、行きましょう。少し気が早いけど……新婚旅行カッコカリ? なのです」

提督「はははっ……うん、確かに気が早いね。でも、……悪くない。君となら、どこまでも行けるかもしれないな」

執務室の窓から飛び降り、異形群がる百鬼夜行を突貫し、荒れ狂う海原を疾風迅雷の如く駆け抜けていく提督と電。

暗澹とした闇の中でも、二人の瞳の中には暁の水平線に昇る光が燦然と輝いていた。
328 :【ED_1】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/27(土) 22:37:10.60 ID:l7+8oZPc0
提督「……ん、んん」

満潮「おそよう。一週間ぶりのお目覚めね」

提督「一週間!? そうか、そんなに寝ていたか……」

満潮「当たり前じゃない。アンタ生死の境を彷徨ってたのよ?」

提督「おぉう、それは……。心配かけたね」

満潮「……いいわ。それより、どうしてあんな賭けに出たの? 何か確信があったとか?」

提督「あんな賭け? あぁ、電と敵陣に突っ込んで行った時のことか」

提督「確信と言うほどのものでもないが……」

提督「深海棲艦の行動原理は、地上の人間や艦娘への怒りであり、憎しみであり、悪意だ」

提督「たとえ知性を持っていようが、それは変わりない。残忍な深海棲艦なら、いかなる時でも冷徹だと思うかもしれないが、そうではない」

提督「レ級と対峙した時に、そう感じたんだ。奴が冷静だったなら僕はあの場面で三回ぐらい殺されていただろう」

提督「奴が僕を殺しそびれたのは、もちろん僕を人間だと侮り慢心していたのもあるけれど、それだけじゃない」

満潮「?」

提督「……冷静になんかなれないんだよ。感情のある生き物はね」

提督「皮肉にも、抱いている感情が強ければ強いほど冷静さを欠いてしまう」

提督「深海棲艦は憎悪に支配されている。この世の全てを滅ぼしてしまいたいほどに大きな憎しみに」

提督「今の僕は多分、奴らにとって最も大きな倒すべき敵に見えているんだろう」

提督「だから、敵の注意を惹けると思った。敵の動きを乱せると思った」

提督「それが予想以上に上手くいったようで、この鎮守府への集中攻撃を少し緩和することが出来た。それだけだよ」

満潮「確かに、司令官が海に出たおかげで敵の総攻撃は避けられたけど……。それにしたってやっぱり危険だったんじゃない?」

提督「そうだねぇ。……ひょっとすると僕も冷静じゃなかったのかもしれない」

提督「一応予め呼んでいた故大将の艦隊……武蔵たちが来るであろう方向に進んでいたから、その援軍と合流出来れば死なないで済むのかなーと思ってたんだ」

提督「道中でやられてた危険性は多いにあったけどね」

ベッドから身を起こす提督。

提督「電となら、どこまでも行ける気がしたんだよ。……やっぱりあの時は僕も冷静じゃなかったみたいだ」

満潮「ノロケてるの? はぁ……」

提督「あっ、いやそういうわけじゃないんだけどね」
329 :【ED_2】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/27(土) 22:40:48.61 ID:l7+8oZPc0
朝潮「司令官! 朝潮、お見舞いに上がりました!」

皐月「おぉー、司令官生きてるねぇ! 嬉しいなぁ」

提督「あぁ、ありがとう」

満潮「あら二人とも。電はまだなの?」

皐月「まだかかるみたいだよ……ぷぷっ」

満潮「何笑ってんのよ」

皐月「いや、なんでもない」

朝潮「それにしても……司令官、ご無事で何よりですっ!」

皐月「いやー皆心配したんだよー。特に電がさぁ……電が、ふふ」

朝潮「こら! 皐月……ふふっ」

提督「どうしたんだ二人とも」

皐月「いやなんでもないよ。……そういえば、司令官が出撃していた時の朝潮、凄かったんだよ?」

皐月「まるで司令官みたいに艦隊を上手く運用出来てたよ。陸奥が回復するまでは防戦しながらも敵艦隊を突き崩してさ」

皐月「ちょうど司令官が武蔵たちを連れてこっちに戻ってきたぐらいのタイミングで陸奥が回復したから、その後反撃に出てさ」

皐月「いやあ、あん時は爽快だったねぇ!」

提督「朝潮、ご苦労様だったね。他の皆もよくやってくれた」

朝潮「い、いえ……あの時は司令官に大任を任されて、少し舞い上がっていたというか……」

朝潮「結果として上手くいっただけで、あまり冷静でいられたかどうか……」

朝潮「それに、司令官を襲ったレ級だって逃してしまいましたし……まだまだです」

満潮「ふふっ」

朝潮「?」

満潮「“冷静じゃない”っていうのも、時には大事なのかもしれないわね。司令官」

満潮「貴方の言うように、人も艦娘も深海棲艦も、論理的な生き物じゃない」

満潮「でも、抱いた想いや願いが、運命を切り拓くこともあるのかもしれない……そう思ったのよ」

提督「そうかもしれないね」

満潮「貴方ならきっと、深海棲艦だっていつか……」

提督「あぁ。いつか、深海棲艦が……それが、人類の望む終末の具現だったとしても……」

提督「乗り越えてみせるさ」
330 :【ED_3】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/27(土) 22:56:14.24 ID:l7+8oZPc0
皐月「さて、そろそろかな……」

満潮「みたいね」

提督「?」

ガチャリと病室のドアが開き、ゾロゾロと人が入ってくる。

提督「うわっ、なんだこれは」

如月「なんだこれはとは失礼ね」

磯波「艦娘総出でお見舞いに……ということで」

夕張「私たちとはこれからの付き合いになるけど、よろしく頼むわね」

不知火「よろしくお願いします、新司令官。そして……“満潮”さん?」

満潮「あら? 面白い奴らが来たじゃない。よろしくね、“不知火”」

提督(知り合いなのかな……?)

摩耶「よ! 久しぶりだな」

川内「今の内にアピールして、たくさん夜戦で使ってもらえるようにしとかないと……」

那智「やれやれ……そっちの艦隊もこちらとさほど変わらんようだな。なぁ足柄?」

足柄「どうして皆私を猪武者みたいな扱いするのよ!? 私だってちゃんと考えながら戦ってるわ」

武蔵「しかしえらいごった煮だな……なんとも奇妙な組み合わせというか……ま、よろしく頼むぜ」

陸奥「元は別々の三つの鎮守府から艦娘が集まるとなればこうなるわよね……」

龍驤「さて、提督お待ちかね……大本命の登場やで!」

人の波をかき分けて、ウェディングドレス姿の電が提督の目の前に現れる。

提督「これは……一体……?」

如月「言うなれば……ケッコンカッコカリ、カリ?」

皐月「いやー、メイクの時は歌舞伎役者みたいになってたけどこれは悪くな……もがが」

朝潮「余計なこと言わないでください!」

電「二人とも! きっ、聞こえてるのですよ! ……恥ずかしいのです」

如月(自分で出来ると言ってたから任せてみたものの……)

磯波(夕張さんにメイク手伝ってもらって良かったですね)

電「あっ……あのう……司令官さん……どうですか? これ」

提督「綺麗だよ。綺麗だけど……どうしたの……?」

電「わっ、私も恥ずかしいからやめようって言ったんですけど! 言ったんですけど……うぅ」

満潮「祝福してあげるっていうんだから、素直に喜んだらどうなの?」

如月「顔膨らしちゃって」

満潮「膨らしてないってば!」
331 :【ED_4】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/27(土) 23:03:17.74 ID:l7+8oZPc0
皐月「まー、提督にとっても、皆にとっても、ある種節目になるしさ。これまでと、これからの」

皐月「二人の未来を! そして、これからの艦隊の明るい未来を祈って!」

提督「?」

電「?」

如月「……何してるの? 早くしなさいよ」

満潮「待ってるんだから、早く見せつけなさいよ」

提督「え? 何を」

如月「ウェディングドレスといったら誓いのキスに決まってるでしょうが」

朝潮「さぁ、司令官!」

提督「そんな、人前でなんて恥ずか」

チュッ

電「ふふ……この前のお返しです」

部屋に満ちる黄色い歓声。

皐月「いいねぇ……魅せるねぇ。さ! 二人の幸せな未来を祝福して、乾杯!」

那智「フフフ……良い肴だな。今夜ばかりは飲ませてもらおう」

夕張「え、えー!? 病院で飲酒はまずいんじゃないかしら」

龍驤「その点は問題あらへんで! この病院は今晩貸切や」

妙高「提督の快気祝いも兼ねてますからね。許可は取ってあります」

・・・・

提督「いやあ……大所帯になったねぇ……」

電「そうですねぇ」

提督「それにしても……」

電「?」

提督「前に、両腕が無いから君を抱き締められなくて残念だと言ったけど……」

提督「左腕はまだ残っていて良かったよ」

提督「こうして君と手を繋いでいられるからね」

提督「綺麗だよ、電」

電「あぅぅ……じゃあ、抱きしめる代わりに、キス……して欲しいのです」

提督「……。好きだよ、電」

唇を委ねる電に応える提督。

その情熱的な様に再び歓声が巻き起こる。

電「末永く……よろしくお願いします、司令官」





END
332 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2014/12/27(土) 23:20:35.57 ID:l7+8oZPc0
お疲れ様でした。後日談というかその後の顛末みたいなのも貼っておきます。

----------------------------------------------------------------------
提督:戦果を認められ、中将に昇進する。海軍内でも一躍エース的存在に。以後も数々の作戦を勝利へと導く。
故南条中佐・故藤原大将や三雲大差の艦隊の艦娘のほぼ全てを引き取り、大艦隊を担うようになる。
私生活に関してはほぼ電に頼りきりで、もはや電が居ないと生きていけないのではと艦娘達からは噂されている。

電:半ば提督の鎮守府公認の伴侶として認められるようになる。
だが、それも束の間の天下で、提督の才知や人柄に惹かれてアプローチしてくる新たに配属された艦娘に気が気でない様子。
現在はケッコンカッコカリのために練度を上げている(花嫁カッコカリ修行)。

皐月:これまで通り主要任務の最前線で活躍している。
また、作戦会議等に参加するなど、ブレーン的役割も果たすようになる。
提督をからかって遊ぶ時間が少し減ったのを残念に思っている。

磯波:前線での任務からは離れ、遠征任務や他の艦娘の整備、資源の管理などを担うようになる。
「提督のお茶汲み係になっちゃいましたね」と自嘲しているものの、その堅実な仕事ぶりは提督から評価されている。
提督の為に料理を作る役目は電に譲った……のだが二人とも忙しい時は彼女がその役を担うようだ。

如月:磯波同様主要な任務からは外れ、他の艦娘の補助的な立場で動き回ることが多くなった。
前線に出ない割にはなんだかんだ多くの艦娘と組んだりすることが為か、気がついたら様々な艦娘のことを把握している情報通のような立ち位置になっていた。
提督にも他の艦娘の様子をちょくちょく報告しているので、鎮守府のお局様的存在として他の艦娘からは恐れられている(当然本人はそれを不満に思っている)。

満潮:出撃の頻度は減ったが、主要な作戦には組み込まれるようだ。
艦隊に多くの艦娘が増えたことで、自分の居場所が無くなってしまうのではないかと危惧していたが案外そんなことはなかった。
不知火とは頻繁にキャットファイトを起こしていて表面的には険悪な関係に見えるが、互いに良きライバルだと認めている。

朝潮:皐月同様艦隊の頭脳として働いている。最近では、出撃には参加しないが作戦会議には参加するということも多いようだ。
最近では真面目すぎて堅物だった性格もじょじょに丸まって来て、人の話を適当に受け流したりするような高度なしたたかさを身につけた。
そして提督に甘えることも習得し始めた。月二回〜三回の頻度で提督にパフェを奢ってもらうのがささやかな彼女の楽しみである。
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なんだかんだ色々ありましたが完走出来ました。
安価やコンマに参加して下さった皆様方、このSSを読んでくださった皆様方に感謝の意を表したいと思います。
もちろん元ネタの艦隊これくしょんの運営やキャラそのものにもね。
楽しんでいただけたなら幸いです。

……この次やるかどうかは分かりませんが、やるとしたら告知します。
もうちょっと参加しやすく読みやすくな感じを心がけたいなあと思っています。
そもそも次をやるかどうか未定ですが……。>>1の暇度によりますが今んとこ微妙です。
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2014/12/31(水) 01:22:41.39 ID:AmckA6sT0
乙!
できればもう一周見てみたい、今度こそシリアス度低めのイチャイチャが見たい
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/01(木) 02:10:01.60 ID:3jViE4AkO
とりあえずシリアス判定を低くして、色々な能力を高くしないとな
335 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/08(木) 12:42:26.29 ID:eu6GtMjJO
お久しぶりです。明けました。
アニメが始まりこれから新規プレイヤーが増えるのかなーどうかなーって感じですね。

ぼちぼち第二部的なものをやろうかなと。
一応書いておきますが、第一部(これまでのお話)とは世界観的に一切関係ないです。
続編でもないしスターシステムとかでもないです。
首筋に星形のアザもないです。
基本的に設定とかキャラとか世界観とかは独立してます。

第一部とはあれこれシステムを変えてみたので、次のレスで詳細に説明いたします。
ついでに新規参入者向け(?)に引き継いだ要素についても要点だけ軽くおさらいします。
336 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/08(木) 12:43:27.54 ID:eu6GtMjJO
/* ルール説明 */
>>1が1レスずつ物語を投稿していきます。(名前欄にレス数のカウントが表記されます 例:1/100)
 レス数が100になったら物語はおしまいになります。また新たな設定とストーリーで100レス……ってのを>>1が飽きるまで続けていきます。
・物語が開始する前に、ヒロインとなる艦娘6人および提督のステータス、コメディ・シリアス判定を安価で決定します。



/* 経験値(EXP)システムの導入 */
これまでは艦娘との各エピソードの度に好感度が上昇していましたが、今回はそれを廃止して代わりに経験値というものを導入します。
といっても、呼称が変わっただけで中身は前回とほぼ同じです。

初めての方向けに要点だけ説明すると
・1レスごとに対象となる艦娘の経験値が上昇
・終盤で最も経験値の高かった艦娘とEDを迎えることになる
って感じです。

ただ、前回と違い上昇値や倍率が変動することはありません(詳しくは後述)。

(補足)
「好感度」という名前だとニアリーイコール提督への愛情値なわけですから、数値によってラブ度合を調整しなければならないのですよ。
各キャラの公平性を保つため敢えてメインヒロインを設けず進行させるため、終盤になれば皆満遍なくラブってきます。
恋愛シミュレーションゲーム的で面白いとは思うのですがゲームではなくただのテキストなんで最終的に解は一つしかないわけでー……。
分岐ルート差分とか作ればいいんだけど>>1が死んでしまうっていうかもうそれ一からギャルゲ作った方が早いという世界なのでー……。
そんな理由で「経験値」という呼称に変更しました。
経験値であって好感度ではないので、経験値が上がった所でさほどデレたりしないどころか最後までフラグさえ立たないかもしれません。
逆に経験値が低くても最初からデレデレだったりすることもあるかもしれません。
経験値が上がったところでメラゾーマが使えるようになったりすることは(多分)無いので悪しからず。
337 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/08(木) 13:03:13.31 ID:PV/Sdk+eO
/* スレッドの進行の仕方の大幅な変更 */
ここまでの話だと前回の仕組みをマイナーチェンジしたみたいな感じなのねと思うかもしれませんが少しジョーカーも切ってみたり。

これまではコンマによって追加でイベントが発生・安価で展開が変動、程度で基本的には>>1が適当に進行させていきました。
どの艦娘が登場してどんなエピソードになるか・どれぐらいレス数を割くかは>>1の独断で決めていきました……が。
今回はだいぶ仕様が変わります。
その仕様とは果たして!?
……あえてここでは伏せておきます。
キャラクターが決定してから発表といつことでここは一つ。

勿体ぶりたいわけじゃなく、ややこしいからです。
ややこしいけど面白くなるとは思います、実際にやってみなきゃ分からないところだけど。
前回よりTRPGっぽい感じになるかもです。
そもそも>>1はTRPGやったことないしこれをTRPGと言い張ろうものなら方々から十字砲火喰らいそうですが。
あくまで少し「っぽく」なるだけで実際には吟遊GMが全てを支配してるセッションみたいなぐらいのイメージだと吉。



そんなわけでキャラを安価で決めるところから始まるんだがしばしお待ちを。
昼の休憩が終わってしまったので……。
338 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/08(木) 13:05:20.20 ID:PV/Sdk+eO
っけね! 書いたつもりが忘れてた。
/* 各パラメータの見直し */
提督のステータスなどを最初にコンマで決定して、以後ちびちび上昇したりしなかったりがありましたが、今回はステータス値の変動は一切ありません。
初期値をコンマで決めてそれ以降はそのままです。
パラメータ変動が無い代わりに、ステータスはほとんどお話に影響しません。
シリアス・コメディ判定も同様で、これらのパラメータはわりと意味合いが軽くなりました。
あくまで主人公やその周りとの関係、世界観の初期設定を決めるためのダイスロールのようなものだと思ってもらえれば。
というわけで、これらについては中身自体は前回同様です。
……初めましての人やよく分からないという人は独特なルールによってお話の初期設定が決定される程度の認識で構いません。
(今回はさほど重要な数値として扱うつもりがないので特に説明しませんでしたが、その『独特なルール』ってのを知りてえんだって人は>>2,>>3を参照されたし)
339 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/08(木) 18:57:34.22 ID:ts4/fMgP0
>ただ、前回と違い上昇値や倍率が変動することはありません(詳しくは後述)。
後述してないじゃん!
ああまあ詳しい説明はキャラが決まってからってことで。
正月気分が抜けてなくてダメね。
とまあそんなことは置いといてキャラを決定するための安価をば。

/* 初期設定安価 */
一人目 >>+1(コンマで提督のステータス「勇気」が決定)
二人目 >>+2(コンマで提督のステータス「知性」が決定)
三人目 >>+3(コンマで提督のステータス「魅力」が決定)
四人目 >>+4(コンマで提督のステータス「仁徳」が決定)
五人目 >>+5(コンマで提督のステータス「幸運」が決定)
六人目 >>+6(コンマで「コメディ・シリアス判定」を決定)
※無効レスや被りが起こった場合は>>+1シフト

アレコレ小難しいこと書いたけれど物語に登場させたい艦娘の名前書けばいいだけです。
特に無ければ自分の好きな艦娘とかイチオシな艦娘の名前を書けば良いんじゃないかなイーノック。
あとは>>1が因果律と相談しながら物語を考えていきます。
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/08(木) 20:42:09.64 ID:y6FSHyYOO
雪風
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/01/08(木) 22:02:38.92 ID:lIQhdH+Ao
翔鶴
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/08(木) 23:32:08.04 ID:8S9pi2wB0
金剛
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/08(木) 23:54:38.21 ID:8S9pi2wB0
赤城 連続だめなら飛ばしてください
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/09(金) 00:39:36.11 ID:CosqNNPPo
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/09(金) 18:49:05.95 ID:hDI60x8Ro
足柄
346 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/01/09(金) 19:36:39.42 ID:kTJW9N7w0
さてこれで決定と言いたいところですが……同一IDからの連投は予想していませんでしたね。
これを許容してしまうと極論やろうと思えば何でも好き勝手やれてしまうので本来ならダメと言っているところですが……。
注意書きをしていなかった私が悪いですね。それに積極的にルールの穴を突いていこうという姿勢は評価したいです。

というわけで、ここは一つ賭けをしてみましょう。
最後についた>>345から3時間41分9秒(2015/01/08(木) 22時30分14秒まで)にキャラ決定のレスが来なければ>>343の通り。
しかしレスが付いた場合はそのキャラに決定します。

ちなみにこの3時間41分9秒という数値は>>340から>>345までに経過した時間÷6(小数点切り捨て)です。
次にレスが付くまでにかかるであろう平均時間と言うには乱暴すぎますがまぁとにかくそれを過ぎれば勝ちです。
よく分かんない! って人は自分の好きな艦娘の名前でも書けばいいと思うよ。

////チラシの裏////
何? ÷6するなら>>340から>>345までに経過した時間じゃなくて>>339から>>345までの時間だろうって?
計算し直すのめんどくさいから許して。
347 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/01/09(金) 19:50:00.66 ID:kTJW9N7w0
2015/01/09(金) 22時30分14秒、ね。ミスってはいけない部分をミスってしまった……。
あと、コンマの値はレスが付いたらそのレスの値を継承(「コメディ・シリアス判定」の値が決定。>>344より「仁徳」の値が11……って感じでシフト)、付かなかった場合は>>343(「仁徳」の値21に決定。以下レス通り)って感じです。
分かり辛いかもしれないけど要は結果が出たら>>1がまとめるだけだから理解しなくてもいいのよ。
というか暇つぶしのための娯楽程度のSSごときに脳のリソースは割かないのが吉ですぞ。
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/09(金) 20:01:51.80 ID:gqIKa7j4o
皐月
349 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/09(金) 20:38:18.04 ID:kTJW9N7w0
出揃ったようですね。

ヒロイン
雪風・翔鶴・金剛・響・足柄・皐月

提督ステータス
勇気:64(強気)
知性:92(神算鬼謀)
魅力:04(無)
仁徳:21(嫌われ者)
幸運:95(豪運)

コメディ・シリアス判定:80(ベリーハード)



前述の通り今回ステータスとかはあんまり重要じゃないよとは書いたから別にどうとでもなるけどなんだこいつは……。
本編の投下は後日ですが、次のレスで>>337ではぐらかした内容について説明します。
350 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/09(金) 21:04:00.68 ID:kTJW9N7w0
/* スレッドの進行 */
>>337ではぐらかした内容について説明!

基本的に5レスごとにシナリオが進行していきます。これを1フェイズとします。
奇数回のフェイズを『Phase A』、
偶数回のフェイズを『Phase B』とします。

『Phase A』ではレス安価で指名された艦娘が1レスにつき1人登場します。
登場した艦娘の経験値は+1上昇します。
また、安価レスのコンマ値がゾロ目だった場合はエクストライベントが発生します。
『エクストライベント』が発生すると、安価で指定された艦娘との話が1レス分追加で投下されます。
エクストライベントは100レスのカウント対象とはなりませんが、エクストライベントでも経験値が+1上昇します。

『Phase B』では付いたレスのコンマ値によって登場する艦娘が決定します。
Phase Bでは1レスにつき好感度が+2上昇しますが、エクストライベントは発生しません。
また、各レスにシチュエーションや起こる出来事を書いておくと
・Phase Aならエクストライベントが発生した場合
・Phase BならIDに3つ以上数字が入っていた場合
書いたレスの内容が概ね実現します。
ただしこれは任意なので無理に書く必要はありません。

Phase A→Phase B→Phase A→…とフェイズが進行していきます。
つまり1/100レス〜5/100レスがPhase Aで6/100〜10/100レスがPhase Bで…という感じです。
進行の例を次のレスに書いておくので、そちらを参考にすると分かりやすいかもしれません。

(補足)
各レスに出来事を書いておくと条件を満たしていた場合はその内容が実現すると書きましたが、以下の場合は申し訳ありませんがスルーします。
>>1の技術的、能力的に話に組み込むのが極めて困難な内容
>>1の心情的にどうしても描写することが出来ない内容
よほどのことがない限りスルーはしないと思います。
特に後者の理由でスルーはまず無いと思います(>>1的にはエログロ程度ならまあ別に・・・って感じですし)。
あくまであまりにも話の流れをぶっ壊しにかかるようならゴメンナサイしますっていう程度の予防線なんでさほど気にする必要はありません。
351 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/09(金) 21:06:15.85 ID:kTJW9N7w0
つまりどういうことだってばよな感じですがやってみれば分かると思います。ぶっちゃけ>>1もやってみないとよくわかんないし(オイ
とりあえず脳内イメージを皆さんと共有すべくサンプルのようなものを書いてみます。
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351 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/09(金) 23:01:01.01 ID:SureNusio
『Phase A』【1-5/100】
レス安価で登場する艦娘を決定します。
登場させたい艦娘の名前を1人分記名して下さい。
(雪風・翔鶴・金剛・響・足柄・皐月の中から一人)
>>+1-5

352 : VIPにかわりまして(ry [sage]:2015/01/09(金) 23:11:01.33 ID:1Morning1
雪風
↑コンマ値がゾロ目なのでエクストライベントが発生

353 : ry [sage]:2015/01/09(金) 23:21:01.01 ID:February2
翔鶴

354 : 略:2015/01/09(金) 23:31:01.01 ID:nanoDeath
金剛
提督がデートに誘う
↑コンマ値がゾロ目で無いので、出来事やシチュエーションを書いても実現せず

355 : 略:2015/01/09(金) 23:41:01.01 ID:High/Tide
足柄
大量のカツを揚げ提督に食べさせる
↑コンマ阿多いがゾロ目なのでエクストライベントが発生
 更に出来事を書いていたためその内容が実現する

356 : 略:2015/01/09(金) 23:51:01.01 ID:IsonoNami
皐月

357レス以降
・雪風のエピソードで2レス(通常+エクストライベントで2レス分)
・翔鶴のエピソードで1レス
・金剛のエピソードで1レス
・足柄のエピソードで2レス(通常+エクストライベントで2レス分。そして提督は死ぬほどカツを食べることになる)
・皐月のエピソードで1レス
といった感じで進行し『Phase B』へ。

363 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/10(土) 23:01:01.01 ID:SureNusio
『Phase B』【6-10/100】
レスのコンマ値で登場する艦娘を決定します。
00:>>1が独断で決定
01〜16:雪風
17〜33:翔鶴
34〜50:金剛
51〜65:響
66〜82:足柄
83〜99:皐月
>>+1-5

364 : 略:2015/01/10(土) 23:11:01.12 ID:BIG7isBIG
はい
↑コンマ値が01〜16の範囲内なので雪風に決定

365 : 略:2015/01/10(土) 23:21:01.86 ID:FlatSanta
はい
↑コンマ値が83〜99の範囲内なので皐月に決定

366 : 略:2015/01/10(土) 23:31:01.55 ID:Ochido000
提督に波紋の呼吸法を教える
↑コンマ値が51〜65の範囲内なので響に決定
 さらにIDに数字が3つ以上入っていたため書いた内容が実現する
 (ただし、「○○が」というキャラ名の指定をしてもその部分は無効になるので注意)

367 : 略:2015/01/10(土) 23:41:01.76 ID:tansu+88k
提督に告白する
↑コンマの値より足柄に決定
 ただしIDに数字が3つ以上入っていないため書いた内容は無視される

368 : 略:2015/01/10(土) 23:51:01.86 ID:ARAaraARA
はい
↑コンマの値より皐月に決定

359レス以降
・雪風のエピソードで1レス
・皐月のエピソードで2レス(>>365>>368
・響のエピソードで1レス(『Phase B』ではエクストライベントは発生しない。ただし提督は「仙道を学ばなければいかん。さもないと死ぬッ」)
・足柄のエピソードで1レス
と5レス進み再び『Phase A』へ……。
352 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/09(金) 21:13:46.69 ID:kTJW9N7w0
……ダメだよく分からんな。
っていうか波紋ってなんだよって感じですがサンプルなのであまり深く突っ込んではいけない。

まあ、安価を出したら『Phase A』では登場させたい艦娘の名前書いて、
『Phase B』では特に何も書かなくてもいいって感じですハイ。
あとは気が向いたらなんかシチュエーションとか書いてみるとかそんな感じ。
基本的に同一IDからの連投は無しでよろしくです。
1フェイズにつき1レスってな感じでお願い致します。

んー……ひとまずやってみましょうか。
そんなわけでッ!

----------------------------------------------------------------------

『Phase A』【1-5/100】
レス安価で登場する艦娘を決定します。
登場させたい艦娘の名前を1人分記名して下さい。
(雪風・翔鶴・金剛・響・足柄・皐月の中から一人)
>>+1-5
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/09(金) 21:15:03.58 ID:hDI60x8Ro
足柄
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/10(土) 03:23:23.61 ID:PeHUQbR5o
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/10(土) 18:58:40.72 ID:EiHO0VzAO
雪風
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/10(土) 19:56:54.90 ID:NQBvPhqOo
足柄
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/10(土) 19:58:20.74 ID:xmqHuIsHO
金剛
358 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/01/10(土) 20:50:55.20 ID:BndvBu5H0
と、そんなわけで
・足柄2レス/響1レス/雪風1レス/金剛1レス
で『Phase A』が進行していきます。
基本的にはレスの順番通りに進行しますがたまに前後するかもしれません。
……とは言っても、現状何も書けてないので投下はまだ先になります。



いやあそれにしても前回と比べると大分メジャーなキャラが多いですね。
もっと奇を衒ったのが来るだろうと身構えていたので意外でした。
なかなか面白くなりそうなチョイスで良いと思います。まぁ私が面白くせにゃならんのですけれども……。
投下はちょっと遅くなるかもしれませんがご容赦ください。
359 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/01/17(土) 00:32:38.12 ID:w9SzSr740
さて特に告知していませんがぼちぼちやっていこうかなと。

好感度という数値は廃止したけど前回の名残ということで初期ステータスによって各艦娘の初期デレ度が微妙に左右されたり。
能力値関連の話なんで、例によって今回ではあまり重要に扱いませんが……。

【各ヒロインの能力値による好感度補正】
雪風:魅力(マイナス補正)
翔鶴:仁徳(補正なし)
金剛:魅力(マイナス補正)
響 :知性(大幅プラス補正)
足柄:勇気(微プラス補正)
皐月:勇気(微プラス補正)

好感度の初期値というよりは相性度ぐらいの感じのニュアンスになりますかね。
ただ、今回は意図的に上記を無視してる感じのキャラがわりと居るんであんまり信用できない感じです。



それでは投下していきます〜。
360 :【1/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/17(土) 00:37:22.28 ID:w9SzSr740
執務室。星一つ出ていない天心を睨む、仮面を被った男。

提督「さてここからが勝負どころだな……」

バァン、と打撃音。ドアが蹴り開けられる。

足柄「大淀を秘書艦から外すって、どういうことですか!? 彼女はこの鎮守府で歴代の提督の秘書艦を務めてきたんですよ!」

提督「そう。死者が立て続けに三人も出ているこの鎮守府で、な」

足柄「彼女が信用出来ないと? それにしたって……着任して一日も経たない間に、だなんておかしいでしょう!」

提督「おかしいかおかしくないかは俺が決めることだ。提督の身近に居ながら三人も見殺しにしているような艦娘を傍に置いておきたくはないな」

足柄「秘書艦に適切か否かを判断するのは、貴方がここの執務に慣れてからでも遅くないでしょう。彼女以外の人間にこの鎮守府の秘書艦が務まるとは思いませんが!」

提督「秘書艦は……要らん。必要ない」

一瞬鳩が豆鉄砲を食らったような表情をした後、わなわなと震え出す足柄。

足柄「そんな変な見た目をしている時点で怪しい奴だとは思ってたけれど……ここまで訳のわからないことを言う人だとは思わなかったわ」

足柄「第一、何で仮面なんかで顔を隠してるのよ! 外しなさい! 外せ!」

提督の仮面を外そうとする足柄。その手をひょいひょいとかわし軽くあしらう提督。

足柄「もうアッタマ来たわ!」

提督に飛びかかる足柄。しかし提督にさっと身を反らされ転倒してしまう。

提督「おい、大丈夫か」

近づいてきた提督の足元に這い寄る足柄。脛に思いっ切り噛みつく。

提督「」プッツーン

噛まれている足を振りほどき、その勢いで足柄の顔面に蹴りを入れる提督。きゃん、と犬の鳴き声のような悲鳴をあげる足柄。

足柄「やった……わね……!」

態勢を持ち直しサマーソルトキックを放つ足柄。間一髪でかわす提督。

後方へ跳躍し距離を取る提督。両者睨み合ったままでいる。

足柄「……貴方、言ったわよね。秘書艦が要らないって」 提督に人差し指を突き立てながら言い放つ

提督「言った。秘書艦など必要ない」

足柄「正気なの!? 今まで秘書艦なしで執務をする提督なんて見た事も聞いた事も無いわ!」

足柄「それで貴方は、本当に提督としての責任を果たせるつもりなのかしら!?」

提督「見くびらないでもらおうか! 当然だ。提督としての最高の戦略を! 指揮を! 兵站を! 執務を! 完璧にこなしてみせるッ!」

足柄(こいつ……。なんて堂々と大それた言い切るの……)

足柄「……言ったわね! なら、実際にやってみせてもらうわ! 少しでも失敗しようものなら……覚悟してもらうわよ!」

提督「良いだろう。俺がこの鎮守府の提督として相応しくない失策をした場合はこの地位を降りてやろう。何なら誓約書を書いてやってもいいぞ」

スラスラと紙にサインし、足柄に誓約書を渡す提督。

誓約書の入った封筒を持ったまま、煮え切らない様子で部屋を出て行く足柄。

提督「やれやれ……ああいう手合いの相手は疲れるな。追い出すのに20分もかかってしまったか」

提督(一応殺気は感じなかったが、それでもあのままやり合っていたら最悪死んでいたかもしれん)

提督(……さすがに艦娘が相手ではな。適当な所で切り抜けることが出来て助かった)

提督「さて、見得を切った手前だ。さっとこなしてやるか」

・・・・

足柄「何よ……なんなのよアイツ! 屈辱だわ」

足柄「どうしてあんなに余裕綽々なのよ! うぅ〜……腹が立つ!」ガルル
361 :【2/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/17(土) 00:39:16.48 ID:w9SzSr740
提督(今のところはあの足柄に付け入る隙を与えないほど完璧に諸執務をこなせているが……これぐらいは出来て当然)

提督(だが日々のタスク達成度が100%なだけでは到底足りない。この先の戦略展開のためににもまずは地盤を固めることが肝要)

提督(ここは碌でもない噂に尽きない鎮守府だ。火のないところに煙は立たぬというしな……内情を調べてみる必要がありそうだ)

提督(しかし俺が直接動き回るのは危険過ぎるな。誰か一人でも信頼出来るような奴が居ると助かるんだが……)

鎮守府所属の艦の情報が書かれた書類に目を通す提督。

提督「信頼出来る、か。ふむ……」

・・・・

響「響だよ。司令官、どうかしたかい?」

提督「響。いや、Верный……と言うべきか」

提督「お前に任せたい重要な任務がある」

響「私の最後の名を知っているとは、物知りだね。その名前で呼ばれるのは数百年振りだよ」

提督(軍艦であった頃、ということか?)

響「内容を聞く前に、一つ質問がしたい。どうして顔も合わせた事のない私にそんな重要な任務を依頼するのかな?」

提督「理由は3つ。純粋に練度が高いこと・他所の泊地から配属されて日も浅く、私を殺そうとする可能性は低いと考えられること」

提督「そして……当時の言葉でВерныйは“信頼できる”、という意味だったか。遠い昔の国の言葉だから合っているかどうか不安なのだが」

響「合っているよ、司令官」

提督「自分の名に背くような真似はすまい。……そうだろう、ヴェールヌイ」

響「なるほど察しがついた。しかし狡い御仁だね。そう言われたら従うほかないよ」

響「私も、この鎮守府で起こった事件については聞いている。一時私もここに在籍していたことがあるんだが、一体何が変わってしまったのか……」

響「私が司令官の盾になるよ。この名に懸けて、ね」

提督「話が早いな。それからもう一つ。いや、どちらかといえばこちらが任務の本題だ」

提督「密偵を頼みたい。内情を知らなければ」

響「ふむ……私はさしずめ司令官の秘密警察というわけか」

提督「物騒な物言いだな。だが、有り体に言えばそうだ」

提督「一週間後の同じ時間にまた会おう。信頼しているぞ、ヴェールヌイ」

響「до свидания」

一礼して退室する響。

提督(ダスビダーニャ……。また会いましょう、か)

提督(奴は使えるな……)

・・・・

響(面妖な提督だと思っていたが……話してみるとなかなかどうして知的じゃないか。あれなら演習や海域攻略での冴えた指揮にも納得がいく)

響(それにしても……なぜ彼は仮面を被っているんだろうか)

響(そして、どうして執務室から出て来ないのだろうか。私の記憶が正しければ、彼は着任してからまだ一度も部屋の外を出ていないはず)

響(一体どうやって生活しているんだ……? 食事は? 風呂は? 睡眠は?)

響(謎は深まるばかりだ……)
362 :【3/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/17(土) 00:45:39.14 ID:w9SzSr740
一週間後、響は再び執務室を訪れた。

提督「ヴェールヌイ。人を連れて来いと言った覚えはないが」

響「連れてくるなと言われた覚えも無いからね」

提督「まあいい。お前が連れてきた人材なら、ひとまずは安心出来るだろう」

響(司令官は本当に私のことを信頼しているんだな)

提督「おい、何を固まっている」

雪風「ア……イエ……か、陽炎型駆逐艦8番艦、雪風です! どうぞ、宜しくお願い致しますっ!」

緊張しているのか声が上擦っている。

提督「そんなに大声で言わずとも分かっている。どうしたんだ」 少し不機嫌そうな声色

響「司令官、怖がらせないであげてくれないか。彼女はあがり症なんだ」

提督「やれやれ、妙なのを連れ込んできてくれたな……。心配するな、取って食いはせん」

雪風「アッ、ハイ……いえすみません。すごく怖い方だと聞いていたものでして……」

提督「せっかくなのでその噂、話してみてくれ。なに興味本位だ」

雪風「え、えぇー……。執務室に艦娘を監禁して暴力を振るうのが趣味だって言われていたり、実は深海棲艦と通じているスパイだって言われてたり……」

響「ふふふ。そうそう、全然執務室から出て来ないから実はロボットか何かじゃないかとも言われてるね」

渋い顔をする提督。

提督「まぁ、そんなことはどうでもいい。報告を」

雪風「あっ、はい! んしょっと……」 鞄から小型のノートパソコンを取り出し、映像を再生する

提督(なぜWacBookにMindows OSを導入しているのか気になる所だが黙っておこう)

雪風「あの……これ、です」 鎮守府の地図を取り出す

提督「ふむ。鎮守府敷地内の地下通路に、なぜか地図上に存在しない部屋がある……ということか」

雪風「はい。そっ、その! これだけならしれえに報告するほどでは無いのかもしれませんがッ! なんだか妙な予感がしたので……」

提督「……確かに気になるな。ヴェールヌイ、部屋の前に小型の監視カメラを設置してきてもらえるか。部屋の中が覗える位置が望ましい」

響「そう言われるだろうと思って既にやっておいたんだ。雪風、例のファイルを」

雪風「はい。部屋に入っていく艦娘を捉えた映像です」

・・・・

動画の内容は、地下通路内の一室に艦隊所属の軽巡洋艦龍田が部屋に入り、再び部屋の外に出る……というだけのシンプルなものだった。だが……

提督「部屋の中に緑色のものが大量にあったのが一瞬見えたな……。植物のようだが」

提督「人目につかない場所の、厳重に鍵がかけられた密室で育てる植物といえば……まぁ、そうなるな」

響「彼女を尋問するかい? 看過するわけにはいかないだろう」

提督「いや、共犯が居て何らかの方法でバレたことを伝達。共犯者は部屋の大麻を全て処分し別の植物に入れ替えておく……なんてことをする場合も考えられる」

提督「そして逆に提督に対し不当な拘束を受けたと証拠つきで言いふらして回り最終的に失脚まで追い込む。私が同じ立場ならそれくらいのことをする」

雪風(ひねくれ過ぎなのでは……)

雪風「もう少し裏を取ってから……ということでしょうか」

提督「関係者を全て洗い出してからだな、表向きに対処するのは」

提督「まずは、この龍田という艦娘の身辺調査を依頼したい」

提督(麻薬取引か……厄介なことになってきたな)
363 :【4/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/17(土) 00:51:31.57 ID:w9SzSr740
鎮守府内のとある会議室にて。

霞「ではヴェアヴォルフ第48回定例会……やるわよ」

――“ヴェアヴォルフ”。
この鎮守府では、第一艦隊から第四艦隊までが正式な艦隊ということになっているが、それ以外にもユニット(小隊)が組まれていて、時には主力艦隊を差し置いて出撃命令を受けることがある。
“ヴェアヴォルフ”もそのユニットの一つ。深海棲艦の支配海域へ少数で侵攻しゲリラ戦法的な電撃戦を行うのが主たる活動内容で、足柄・大淀・霞・清霜の4名で構成されている。

霞「いつまでヘコたれてんのよ! 」

大淀「ううっ……だってぇ〜……やっぱりショックですよぉ……。そりゃあ私にも責任の一端はありますけど……」

足柄「あの提督が悪いのよ! そうに決まってる!」

霞「過ぎたことを! グダグダと!」 両手で大淀と足柄にチョップをする

霞「いい? その件については前の会議で言った通りよ。確かに大淀の件は残念だけど、あの提督は実際に秘書艦が居なくても何も問題なく執務をこなせてる」

霞「指揮といい先見性といい、人間性以外に非の打ち所がないぐらい完璧だわ」

清霜「あの霞にここまで言わしめるなんて凄いねぇ。……かえって心配になるかも」

霞「アンタ人のことをなんだと思ってるのよ」

足柄「鬼教官」

大淀「というか鬼そのものなのでは……」

霞、両名に無言でチョップを放つ。

霞「……とにかく、この件に関してはこれ以上蒸し返さない。それより考えなきゃならないのは今後のことよ」

霞「ヴェアヴォルフの地位は以前と比べてかなり低下しているわ。これまでのように主力艦隊と同等の扱いを受けることはまず無いでしょうね」

大淀「そういえば最近、利根さんや熊野さんに避けられているような気がします……」

足柄「チッ、ドラム缶運びが偉そうに……!」

大規模な組織の中には、多かれ少なかれ階級や序列が存在する。それはこの鎮守府の中でも例外ではない。
武勲艦や主要作戦に参加した艦はその分手厚く補助を受け、鎮守府内での影響力も強めていく。
艦娘の世界は成果主義だ。古株だろうと結果を出せなくなれば容赦なく冷遇を受けるが、新参であっても作戦に貢献出来れば厚遇される。

霞「大淀が秘書艦を降ろされたことにより他の艦隊やユニットからの評価は低下。おまけにどこぞの馬鹿が提督に噛みついたせいで重要任務からも尽く解任」

足柄「馬鹿ってなによ! ……ただ、厳しい状況なのは否定出来ないわね」

清霜「全然任務が来ないのが致命的だよねぇー……暇だなー」

艦娘たちは提督から与えられた出撃命令などの任務を達成することで利益を得ている。
ヴェアヴォルフへの任務が激減したのは、大淀の失脚や足柄の行動だけが原因ではない。
ヴェアヴォルフは、『数撃てば当たる』を地で行く集団だった。
どれだけ面倒な作戦だろうが危険な作戦だろうが片っ端から出撃していき、失敗してもそれを取り返すほどの出撃を繰り返して地位を得てきた組織だった。
ところで、他の艦隊から任務を受託することは各鎮守府では日常的に行われていることである。これを任務ロンダリングと言う。
ヴェアヴォルフは他のユニットから、時には主力艦隊からも任務ロンダリングを受けて多くの利益を得ていた。
だが、この任務ロンダリングによって艦娘が艦娘を雇うという状態を危険視していた提督は、着任して早々に対策を打った。
個々の艦娘の能力および各ユニットや主力艦隊の実力を十分に把握し、その上で過不足ない任務を配分するようにしたのである。
この改革により各組織への負担が大幅に減ったため多くの艦娘たちは歓喜した。
その一方で、過剰に出される任務を肩代わりすることでより多くの利益を得る、ヴェアヴォルフのような者たちは割を食ったということである。
何気なく発した清霜の一言は、その事実を他の三名に気づかせるのに十分であった。

霞「……これまでのようなやり方だと、やっていけそうにないわね」

大淀「地道に任務をこなして、提督の信頼を得るところから……でしょうか。ハァ……」

清霜「幸い時間だけはたくさんあるし、今後についてじっくり考えてみたらどう? 司令官に認めてもらう方法をさ」

足柄「…………。私は反対よ! そんなちまっこいことやってられないわ!」 衝動的に立ち上がる

霞「じゃあどうするってのよ!? 何か案でもあるの?」

足柄「…………あ、あるわよ! あるわ! 次の会議までに良い報告を持ってきてあげるんだから! 期待して待ってるのね!!」

・・・・

足柄(あの提督の犬になるだなんて、絶対にゴメンだわ!)

足柄(霞がああ言うぐらいだから、頭の勝負で勝てる相手じゃなさそうだけど……)

足柄(でも……納得行かないわ。絶対出し抜いてやるんだから! ギャフンと言わせてやる!)
364 :【5/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/17(土) 00:54:43.94 ID:w9SzSr740
金剛と比叡が自室で何やら話し合っている。二人は主力第一艦隊所属の艦娘で、この鎮守府の中ではいわゆるエースだ。

金剛「ひええええええええええ」

比叡「何ですかお姉さま」 少し怪訝そうに

金剛「あの提督冷たすぎデース! 栄えある第一艦隊旗艦に対してあの態度はなんなんですカー!」

比叡「うーん、文字通りの鉄仮面ですからねぇ……。何かあったんですか?」

・・・・

金剛「ヘーイ! 提督ゥ! お話に来たネー!」

提督「執務室への不要な立ち入りは禁止したはずだ。処罰されたいのか?」

金剛「Oh……これは手厳しいネー! でも、そんなに根を詰めていてはダメですヨ? ワタシと一緒にTea Timeなんて」 座っている提督の隣に立ち、顔を近づける金剛

提督「よほど第一艦隊から異動されたいように見える」 隣の金剛に目もくれず淡々と書類仕事を処理していく提督

金剛「こっ、これはっ! スミマセン! 失礼しまシタ!」

提督「それから言っておく。俺はお前のように媚び諂う人間が大嫌いだ」 そそくさと部屋を出る金剛に追い打ちを言い浴びせる提督

・・・・

金剛「ということがあったんデース。取り付く島もないデース……」

比叡「まぁ〜あの提督ネクラそうですからねぇ。あんな提督は忘れて、たまには姉妹でティータイムなんてどうでしょうか。何なら榛名や霧島も呼んで……」

金剛「比叡? 人から愛されるにはまず自分からデース! 提督のことをそんな風に言ってはいけまセン」

金剛「それに! 榛名や霧島は信用ならないデース! 腹の中ではワタシの座を狙ってるに違いないデース!」

比叡(お姉さま……提督への愛はあれど、私たち姉妹への愛は欠片もないということですね……)

比叡(いや、お姉さまは提督に対しても愛情など抱いていない。ただ提督を利用して自分が良い思いをしたいというだけ……)

比叡(私はお姉さまの向上心や前向きさに惹かれていたのに、どうしてこうなってしまったのだろう。今や利害で動いているだけだ……己の野心のままに)

金剛「比叡? 比叡? 何ボーッとしてるデース」

金剛「紅茶が冷めますよ? 今の私には、比叡だけが信頼出来る友人なんですから……しっかりしてクダサーイ」

金剛「話し相手が居ないのは退屈ですからネー。ちゃんとResponseしてよネ?」

比叡「あっ、ハイ! すみません、お姉さま……」

・・・・

金剛「どうやったらあの提督のハートを射止められますかネー。このままだと榛名や霧島、他の艦娘に旗艦の地位を取られてしまいそうデース……」

比叡「お姉さま。寵を得ようとするよりも、まずは練度を上げられてはいかがかと。あの提督は実利主義です。戦果を上げれば評価してもらえるかと」

金剛「そんなまだるっこしいことやってもCost Performanceが悪すぎデース! そもそも練度を上げれば敵に勝てるなんて事自体幻想デース。今ドキの考え方じゃないデース」

金剛「もちろん最低限の練度は必要デスけど、ある一定のラインに達したら後はドングリの背比べデース! 戦果を上げるのに重要なのは第一にCondition。次に装備デース!」

金剛「詰まる所Quality of Lifeの向上が戦果へと繋がるのデース! 装備の強化も、モチベーションの維持にも、おカネは必要ですからね」

金剛「あとは場の空気を読んで上手くMVPを掻っ攫うSenseと敵から攻撃を受けない運デース」

金剛「比叡は戦い方がちょっと愚直すぎマース! 無傷の敵と殴り合うよりも、空母連中が傷めつけた相手や敵の親玉を叩く方がスマートデース」

比叡「すみません、お姉さま……」

金剛「戦果なんて上げて当然デース♪ でも、それだけじゃ足りないのデース……」

金剛「戦いでの報酬は安定していまセン。盤石な地位によって得られる不動の恩恵こそワタシの心に安寧をもたらすのデース」

金剛「そのためのBurning Loveデース! 提督のハートを掴むのは! このワタシデース! 必ずゲットデース! 絶対ゲットデース!」

比叡「でも……」

金剛「デモもシカシもカカシも無いデース! 良いですか比叡? 比叡は提督にツッケンドンすぎデース」

金剛「提督に愛想を尽かされたら事実上の失脚デース! 提督に愛されるのも、艦娘の戦略のうち、ですヨ?」

比叡「…………」
365 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/17(土) 00:59:35.23 ID:w9SzSr740
----------------------------------------------------------------------
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~5/100)
・足柄の経験値+2(現在値2)
・響の経験値+1(現在値1)
・雪風の経験値+1(現在値1)
・金剛の経験値+1(現在値1)
----------------------------------------------------------------------

////チラシの裏////
んなわけでここまでデース! 初っ端からやり過ぎた感が否めまセーン!
大丈夫なのかこの鎮守府。もうどこから突っ込んでいいのやら。

前回がピュアボーイミーツピュアガールな感じだった反動もあるけどこれはダーティすぎるな……。
でもシリアスにやるつもりでは書いてなくて、どちらかといえばドタバタコメディみたいな感じを考えてます。
というか、もう現時点でそこはかとなくネタ臭が漂い始めてませんかね。リアル系の皮を被ったスーパー系みたいな。
いやまぁしっとりした感じの……たとえば情死とかもやりたいなぁとか考えてたけどただでさえ少ない読み手が更に減りそうなので……。

今回は前回と違ってあんまりイチャイチャさせることを考えていないので、登場キャラが皆それなりにロックな感じです。いやパンク? ハードコア?
わりと>>1が書きたいように書いてる感じなので結構楽しいです、独り善がりにならないように気をつけたいところですが。
ただ、金剛はやり過ぎたかなと自分でも思います。
キャラ崩壊……かなぁ。だよねぇ……。こういう解釈も面白いかなーと思って書いてるけどひょっとしたら俗に言う作者はウケると思ったシリーズ的アレかも。
まあまだ始まったばかりですし、そこいら辺も含めて(?)今後に期待ということで。
366 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/17(土) 01:00:37.81 ID:w9SzSr740
さて次のフェイズへ移行いたします。
よくわからない方は>>351参照。

コンマ値で決定するだけなんで、ほげとかぴよとかそんな感じの適当なレスをするだけという簡単なお仕事です。
なんだったら適当にキーボードを叩きまくってストレス解消の場として使ってもらっても構いません。
http://ikura.2ch.net/test/read.cgi/hikky/1285389039/
あるいは何かシチュエーションを書いておくと実現したりしなかったりします(>>351参照)。

『Phase B』【6-10/100】
レスのコンマ値で登場する艦娘を決定します。
00:>>1が独断で決定
01〜16:雪風
17〜33:翔鶴
34〜50:金剛
51〜65:響
66〜82:足柄
83〜99:皐月
>>+1-5
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/17(土) 05:21:23.82 ID:dEamqbUDO
うん?
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/17(土) 08:33:18.69 ID:K2xtmhOco
デース!
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/17(土) 18:40:08.25 ID:g/7kJiZIo
うらー
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/17(土) 18:42:10.37 ID:lU2VOjepO
ぽい?
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/17(土) 21:28:46.01 ID:qorlXQGuO
でちー!
372 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/01/17(土) 23:47:52.55 ID:w9SzSr740
というわけで
・皐月1レス/足柄1レス/翔鶴1レス/金剛1レス/雪風1レス
で『Phase B』が進行していきます。Phase Bでは経験値+2上昇なのです。

投下はいつ頃になるか分かりませんがそんなに早いペースではやっていけないかなーという見通しです。
まあゆるいペースでやっていきます。
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/23(金) 23:12:18.61 ID:lWG8D5CAO
この金剛は新しいなwwww
374 :【6/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/27(火) 21:51:52.17 ID:Yq22Kgnx0
豪勢な食事を前に感動する皐月と文月。

ここは第四艦隊の会合室。部屋の中には新たに配属された皐月と文月の他に、暁・雷・電、そして旗艦の龍田が居る。
第四艦隊は第三から第一艦隊とは異なり、常設されている艦隊の中で唯一深海棲艦との交戦を主としない、特殊な立ち位置の艦隊だ。
第四艦隊の任務は専ら遠征である。他鎮守府への補助、離島や各防衛拠点への物資輸送のために方々へ繰り出される。

皐月「いやあ〜! 訓練生時代とは訳が違うなぁ! これが第四艦隊の食事かぁ!」

第一から第四艦隊のいずれにも配属されず、ユニットにも所属することが出来ない低練度な艦娘は、この鎮守府内では“訓練生”と呼ばれている。
この“訓練生”は実戦に参加することが許されておらず、鎮守府内での清掃などの雑務をこなしながら、修行の日々を送っている。
才覚さえあればすぐに訓練生を脱出することも出来るが、現実はそう甘くはない。
駆逐艦どころか重巡洋艦の訓練生すらいるこの鎮守府では、皐月や文月のように訓練生を脱していきなり常設の艦隊に配属されるということは稀有な出来事であった。

電「訓練生の頃はどんな感じだったのです?」

皐月「ボクも文月も成績で言えば普通ぐらいで、なんでここに配属されたかよく分からないんだよね」

文月「普通っていうか、皐月はわりと落ちこぼれだったよね〜」

皐月「言うなよお!」

暁「あら? 実戦登用の試験では二人ともトップの成績だったって聞いてるけど……意外なのね」

文月「実習の成績だけは良かったからねぇ〜皐月は〜」

皐月「文月もだろ! ボクを貶めようとしてない?」

龍田「二人とも仲がいいのね〜」

・・・・

談笑する一同。

皐月「配属された時は不安だったけど……居心地の良い艦隊みたいで良かったよ」

龍田「ふふっ、良かったわ〜。私たち仲良くやっていけそうね」

皐月「そういえば、第四艦隊は遠征任務をこなすっていうのは知ってるけど……なんで他の艦隊やユニットは遠征を滅多にやらないんだろう」

龍田「遠征では物資の受け渡しが主なミッションとなるんだけど〜、その主な受け渡し先は他の鎮守府や泊地なのよ〜?」

龍田「向こうの足りない資源を施して、逆にこっちの足りない資源を貰って補うの〜。貿易みたいなものと言えば分かりやすいかしら〜」

龍田「でもぉ、私たちは営利組織じゃないから〜……あんまり遠征にばかり艦は割けないのよね。よほど資源が欠乏している鎮守府以外は遠征に出せる艦娘の数が制限されているの」

皐月「縁の下の力持ちってわけだね!」

龍田「そうよ〜。それなのに他の艦隊の人は私たちのことを水上スケート隊だなんて揶揄するのよ? 酷いわよね〜」

鎮守府に常設されている艦隊所属の艦娘は破格の厚遇を受けている。それは第四艦隊とて例外ではない。
第四艦隊が手厚く補助されている理由は、多忙な遠征任務の対価とされている。
だが、命の危険に晒されることのほぼ無い安全海域を行き来しているだけの者たちをそこまで遇する必要は無いのでは、という声がこの鎮守府内では大きい。

雷「他の艦隊にどう思われようと、関係ないわよ! 私たちがこの鎮守府を支えているのよ?」

龍田「そうね〜。でも……皐月ちゃん文月ちゃん? 第二艦隊には警戒した方が良いわ。何か酷いことされそうになったら、すぐに言ってね?」 皐月と文月の方に顔を近づける

・・・・

皐月「いやあ、一人一つの部屋なんて考えられる? 相部屋じゃないんだよ!?」 自分専用の部屋に興奮する皐月

文月「皐月ー……浮かれすぎだよー……。あのさ、ヘンだと思わない?」

文月「ただの一遠征部隊にしては装備が高性能すぎるし、なんか妙に羽振りが良さすぎない?」

皐月「そりゃあ常設の艦隊だよ? 第一から第三艦隊に比べれば劣るだろうけど、それでも他の有象無象の小隊と比べたら一線を画す扱いされてもおかしくないんじゃない?」

文月「そうだけど……それにしてもちょっと変だなぁって思ったよー。それに、あの龍田さんもなんか怪しいよぉ」

皐月「そうかなぁ? 文月の場合、龍田さんと喋り方が似てるからって対抗意識みたいなのあるんじゃないの」

文月「無いよぉ失礼だなぁ……」

皐月「ま、龍田さんの言ってた第二艦隊ってのは気になるよね。第二艦隊旗艦の響ってのは暁さんたちの姉妹艦らしいけど……そこら辺はわりとセンシティブな話なのかも」

皐月「あんまり触れない方が良さそうだ。君子危うきに近寄らず、ってね」 キメ顔である

文月「うぅーん……?」

皐月「なんだよその微妙な反応は」
375 :【7/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/27(火) 21:52:22.44 ID:Yq22Kgnx0
執務室前廊下。

足柄(……偉そうなことを言ったわりに、前回の会議から全く進展が無いわ)

足柄(提督の動向さえ掴めればやりようはあると思ってたけど、噂通り執務室から全く出てくる気配が無いわね……)

足柄(もう3日も張り付いてるってのに全く出てこないだなんて思わなかったわ。……何か引きこもる為の備えがあると見ていいようね)

足柄(部屋に入れればいいけどその為の口実も無いし……。困ったわ、これじゃあ何も情報が得られない)

・・・・

それから数日後、足柄は響と雪風が執務室に出入りするのを確認した。

足柄「あの二人の後をつけてみれば、何か掴めるかもしれないわね……」

足柄(丸一週間もこんな刑事ドラマみたいなことをやってられるほど暇なのが悲しいわ……)

・・・・

足柄(とりあえず響の後を追ってみたけど……一体どこに向かっているのかしら?)

響「そこまでだ足柄。一体何の用かな? 何が目的で私の後をつけている?」

足柄「げえっ(背後を取られた! 全くそんな気配を感じなかったのに……)」

足柄「い、いやぁ〜……どこに行こうとしてるのかなーって気になって。こっちは第二艦隊の施設とは逆の方角じゃない?」

響と雪風は、共に第二艦隊所属の艦娘である。響はその旗艦を担っている。

響「私は司令官から命を受けている。しかし君にその内容を教えることは出来ない」

響「ここ一週間君が執務室前で不必要にうろうろしているという話を司令官から聞いているからね。少し警戒している」

響「そういうわけで話は以上だし、これ以上私の後をつけるようならしかるべき処分が待っているだろう。暇なのは分かるが持ち場に戻ってくれ」

足柄(たかが駆逐艦の分際で……! とはいえ、言い返せないわね。ここは引き返しましょう)

・・・・

足柄(いいわ、ここで腹を立ててもしょうがない。それに、私にはまだ手がある! まだよ!)

第二艦隊会合室前の廊下で、柱の影に隠れながら雪風の様子を伺う足柄。

雪風「足柄さん。何してるんですかぁ?」

足柄(バレたー!?)ガビーン

足柄「い、いや。貴方が今何をしようとしているのか気になってね〜(私、こういうの向いてないわね……)」

雪風「そうですか。今はしれえの歓迎会の準備をしている所です! 第二艦隊の皆でやろうってことになって」

足柄(???? あの提督の? あの提督が?)

足柄「というか……歓迎会って、あの提督はもう着任して一月ぐらい経ってるじゃない? 今更歓迎会なんて変じゃないかしら」

雪風「私もあんまり詳しいことは知らないですけど、翔鶴さんの提案でして」

足柄(あの提督の思惑が何か絡んでるわけでは無いようね)

雪風「それに、しれえはいつも一人で頑張っているので、少しでも労ってあげないと!」

足柄「なるほどー偉いわねぇ。提督頑張ってるもんねー」 無感情な棒読み

雪風「司令官が来てくれるのか不安だなぁ……あと榛名さんと霧島さんも」

足柄「?」

雪風「あっ、いえ! 何でもないです!」

・・・・

足柄「それにしても……一ヶ月も経った後に歓迎会だなんてやっぱり変よね。第二艦隊側に何か提督を利用しようという思惑があると考えた方が自然だわ」

足柄「全く話の流れが読めないけど、とにかくあの引きこもり仮面が執務室から出てくる可能性があるってのは情報を得るチャンスだわ!」

足柄「一体どんな話がされるのかしら!? 楽しみだわ!」

足柄(しかし……あの部屋に仕掛けておいた盗聴器は雪風にバレてないわよね?)
376 :【8/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/27(火) 21:53:59.11 ID:Yq22Kgnx0
執務室を訪ねる翔鶴。

翔鶴「失礼します、翔鶴です。提督にお話があって来ました」

翔鶴を意に介さず執務に集中している提督。

翔鶴「あの……いつも、ずっと執務室に一人で籠っておられるのですか?」

翔鶴「ほら、窓の外から雪が見えますよ? 提督も、たまにはお休みになられたら……」

提督「早く本題に入れ」 少し苛立っている様子の声色

翔鶴「すみません。余計なお世話でしたね……。第二艦隊の皆で提督の歓迎会を是非やりたいと思っているのです」

提督(なぜ旗艦のヴェールヌイでなく、こいつが話を持ちかけているんだ……?)

必ずしも艦隊での責任者イコール旗艦というわけではない。
しかし、この鎮守府では一般的に旗艦を務める艦娘がその艦隊を取りまとめていることがほとんどであった。
第二艦隊は、響を旗艦とし、その他に雪風・翔鶴・瑞鶴・榛名・霧島で構成されている艦隊である。

翔鶴「私たちの艦隊……それから他の艦隊でも、提督の歓迎祝いが出来ませんでしたから。これからお世話になる提督の為に、やらなくちゃって」

翔鶴「本当は提督が着任される前に準備しておくべきだったんでしょうけど、前任の提督が亡くなられてから鎮守府全体が慌ただしかったから……」

提督はこの申し出を敢えて快諾した。
心の内では翔鶴のことを訝しんでいたし、ひょっとすると自分を殺そうとしているのではないかと疑ってはいた。
しかし、自らの手を汚す方法で白昼堂々と自分に危害を加えるとは思えず、また、翔鶴が何かを企んでいようがそれを上回って逆に追い詰めてやるぐらいの腹積もりでいたのであったためである。

……もちろんこれは単なる提督の疑心暗鬼であり、翔鶴はただ純粋に善意で提督を誘っただけである。
響でなく翔鶴が執務室を訪れた理由も、響は提督から受けた第四艦隊への調査任務を遂行中であったためその代理として、という極めて単純な理由である。

・・・・

数日後。提督の歓迎会が行われ、一連のプログラムが終わったようだ。
提督はその間終始仏頂面をしていた(しかし口元以外が仮面に覆われているため誰からもそのことは悟られなかった)。

響「用心深い司令官が本当に来るとは思わなかったよ。少し嬉しいけどね」

提督(……ヴェールヌイや雪風が居るなら命の心配は要らなさそうだな。となると、何が目的だろうか?)

翔鶴「提督、これからもよろしくお願いしますね」

提督「……ああ」

提督(おかしい。おかしすぎる。何も起こらないなんておかしい)

提督(何かの意図があるはずだ。私を動かそうとするその意図が……考えろ。考えろ)

提督「翔鶴……お前何か私に隠し事をしていないか?」

翔鶴「? 何のことでしょうか?」

提督(知らぬ存ぜぬとでも言いたげなとぼけ顔だな。まさかこいつ本当に歓迎会をやるためだけに俺を呼んだのではあるまいな……)

霧島「司令? 珈琲をお持ちしました。……おわっ」 前のめり転倒する霧島。

霧島「っ痛ぁ……司令にかからなくて良かった……」 と言った後に、キッと榛名の方を睨む。

榛名「ごめんなさい。転ばせようとしたつもりは無かったのですけど」 謝意はあれど、どこか釈然としない様子の榛名

霧島「すみません司令。珈琲、入れ直して来ますね」 榛名の詫びを無視し立ち上がる霧島。すれ違いざまに榛名の耳元で「卑怯者」と囁く。

他の者は誰も気づいていないようだったが、提督だけは見ていた。確かに霧島の足元を遮るように榛名の足が伸びていたのを。
だがそれは意識的に霧島を転ばせようとしているわけではない。霧島が前に進もうとした瞬間に邪魔にならないように足を引こうとしたからである。
また、霧島も榛名の足が自分の進路を遮っていることに転ぶ直前で気づき、進路を変えようと歩幅を変調しようとしたのを見逃さなかった。
何の事はない。たまたま二人が足を動かそうとしたタイミングで接触し、転んでしまっただけのことである。

提督「…………」

だが、提督は榛名の弁護をしなかった。二人の間に生じている溝を感じ取り、対立の様子を見ようとしたからである。
また、その様子を観察することによって確執の原因は何なのかを探ろうとしたからである。

提督(なるほど……翔鶴は遠回しに人事異動を促したかったというわけか? 俺の前で二人が対立している様子を見せ、どちらか一方を残しどちらか一方を外せと。そういうことか)

提督(確かに第二艦隊の戦果記録を辿ってみると、片一方が活躍している時はもう片方の戦果が揮わないことが多いな)

提督「見極めを委ねる……というわけか翔鶴(随分回りくどいやり方をするな……何か裏があるのかもしれない)」

翔鶴「え? え?(なにか、ややこしいことになっている気が……)」
377 :【9/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/27(火) 21:55:14.75 ID:Yq22Kgnx0
歓迎会が終わり執務室に戻った提督。ようやく一人きりになれた、と安堵の溜息をつく。
しかしその安息は一瞬にして破壊される。侵略者がやってきたのだ。

金剛「ヘーイ提督ゥ! 第一艦隊でも提督の歓迎会をしようと思うネー!」

ドンドンと執務室のドアを叩く金剛。しかし旗艦を外されるのは怖いらしく、執務室の中に入ってこようとはしない。

提督「最悪だ……」

第二艦隊は、榛名と霧島の水面下での確執はあれど組織力は高く、また、信頼を寄せている響や雪風が在籍しているため、提督にとっては最も扱い易い部類の艦隊であった。
一方で第一艦隊は、戦力こそ鎮守府内最強だが、各々がなまじ単騎でも敵を倒せてしまう力があるせいで連携が薄い艦隊だった。当然組織としてのまとまりなど無い。
提督は自らの日記の中で、第一艦隊について「カレーとラーメンとハンバーグとケーキとをミキサーでかき混ぜたような艦隊」と評している。

金剛「第一艦隊でも提督との親睦を深めたいと思いマース! 早く開けて欲しいデース! 皆待ってるデース!」

提督(第二艦隊で歓迎会を行ったという話を聞いて、強引に第一艦隊の連中を呼び出したのか? 緊急作戦会議などという名目で招集したのかもしれんな)

提督(何にせよ、奴が旗艦に居るのは前任の提督の人選ミスと言わざるを得ない。戦力だけは評価出来るが……奴に旗艦は任せられないな)

提督(とはいえ、これまでに一定の結果を出してきた実績ある集団だ。そこの頭をすげ替えるとなると大義名分が欲しくなるところだな……)

第一艦隊は、旗艦金剛と、比叡・Bismarck・飛龍・赤城・加賀で編成されている機動部隊だ。
個々の練度は極めて高く、また、戦況分析能力や判断力にも優れていて、名実ともに鎮守府最強の集団である(一切の連携がなく各々の個人プレーであることに目を瞑れば)。

・・・・

翌朝、提督宛に一通の手紙が届く。

拝啓 提督
金剛です。初春とはいえまだまだ寒い日が続きますね。
昨日は突然無茶なお誘いをしてしまってごめんなさい。
迷惑でしたよね。でも、私、提督に喜んでもらいたかったんです。
提督を想う気持ちが先行してしまって、軽率な行動を取ってしまいました。
今後は提督のご迷惑にならないように心がけますから、ばかな奴だと見放さないで下さいね。
私は提督の為なら、どんなに辛いことでも乗り越えていく所存ですから。

……前に私が執務室を訪れた時に、私のことを嫌いだと仰られましたね。
あれはとても悲しかったです。今でも思い出すと胸が苦しくなります。
提督は、私のように口煩い女性はお嫌いなのかもしれません。
ですが、私も本当はあのような振る舞いなどしたくはなく、周囲からそういうキャラクターであると認識されてしまっているからそれを演じているだけなのです。
まるでピエロみたいですよね……自分でも滑稽だとは思っているのですが。
もし、提督と二人っきりでご一緒できる機会があれば、本当の私のことを見て欲しいと思っています。
ありのままの私を知ってもらうかわりに、提督にも仮面の内の素顔を明かして欲しいな……なんて。
ごめんなさい、私ったら。こんなことを書いたらまたはしたない女だなんて思われちゃいますね。
でも、私が提督のことを強く想っているのは事実です。

以下も延々と文章が続く。

・・・・

長い時間が経過している。ようやく文章が途絶えた。

提督は、先程まで読み続けてきたびっちりと文字の詰まった20枚ほどの便箋を畳み、元の封筒の中にしまいこんだ。
そして、彼女を旗艦から外す以前に精神鑑定を受けさせねばならぬと心に決めた。

・・・・

金剛「ピンチはチャンス!」

比叡「なんですかお姉さま唐突に」

金剛「昨日は提督に怒られてしまいましたが、ここでワタシは一計案じまシタ!」

比叡(懲りないなぁ……)

金剛「ギャップ萌えデース! 提督にワタシのルァーブをしたためたLetterを送ったのデース! 男の人はヤマトナデシコが好きらしいですからネ!」

金剛「これであの提督もイチコロネー! Yeah!」

比叡「はぁ……ところでお姉さま。カレー冷めますよ?」

金剛「Oh! そういえば最近は比叡も料理の腕を上げましたネ! これなら人間が辛うじて食べられるレベルの味ですヨ! 一体隠し味に何を使ったんデスカー?」

比叡「まぁ〜、ちょっとは慣れましたからねー。隠し味はお姉さまへの愛です!」

金剛「これならあと100年ぐらい鍛えれば美味しいカレーが作れるようになりそうデース!」

比叡「手厳しいなぁ……」

赤城(不味い不味いと貶しながらもいつも食べているのは、彼女なりの姉妹愛なのでしょうか?) 二人の居る部屋の前を通りがかった赤城
378 :【10/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/27(火) 21:56:26.02 ID:Yq22Kgnx0
執務室の前に立ち、扉を叩く雪風。中に居る提督に呼びかけるも、返事はない。

雪風(無用な立ち入りは厳禁と言われても……これは司令にとっても大事な用件。それに、これだけ呼んでるのに返事が無いのはおかしいです! 鍵もかかっていないようだし……)

雪風「し・れ・え……?」 おずおずとドアを開ける

普段提督が座っているはずの席。だが今は空席になってしまっている。どうやら部屋の中に提督は居ないようだ。

雪風「司令はどこへ……? 執務室から外へ出て行ったなら誰かしらの目につくハズ……」

部屋の本棚の本の並びが普段と異なっていることに気づく。常人であれば気づかないような些細な違いだったが、この本棚のことは雪風の記憶の中で強く印象づけられていた。
本のラインナップが、『有人宇宙飛行の歴史』『アトランティスの謎』など明らかに趣味全開のものであったためである。

雪風「おかしいです……本の並びが違うし、ここに一冊あったはずの本が無い……」

雪風は“なんとなくそうした方が良いような気がする”という直感のもと、本を元の並びへ戻した。カチッという奇妙な機会音が鳴る。

雪風「こ、これは……!? 本棚が突然動き出しました!」

本棚と本棚の間に隙間が出来ている。その隙間の先には、明かりの灯っていない小部屋があるようだ。
鞄の中の懐中電灯を取り出し、明かりで室内を照らす。空洞で何も物が置かれていない。

雪風(足元に鉄の板のようなものが……? 見てくれはマンホールみたいですね)

鉄板を持ち上げると、螺旋階段が現れる。地底深くまで繋がっているようだ。

雪風(司令は一体何者なんでしょうか……。なんだってこんな仕掛けを作ったのでしょうか……とにかく行ってみましょう)

・・・・

螺旋階段を下ること数分。
大小様々なモニターがズラズラと並んでいる奇妙な部屋に辿り着く。
モニターは鎮守府内の監視カメラや鎮守府近海の映像を映しているようだった。

雪風(さすがに私室やトイレ、お風呂までは監視されてないみたいですね……)ホッ

提督「……あぁ。……………………そうか。悪い、一旦切るぞ」

雪風(物陰から司令の声がする……誰と話しているんでしょうか? あっ、こっちに気づいた!?)

提督「そこで何をしている!? 何者だ!」

敵意をむき出しにした荒々しい声に、思わず雪風は体をビクつかせる。

雪風「あっあっ……あの! 雪風です! 雪風ですッ!」

素っ頓狂な声で自分の名前を連呼する雪風。その間抜けた様子に脱力したのか警戒を解き雪風に近づいてくる提督。

提督「落ち着け。この部屋に入ってきたのがお前ならばまだ問題はない。だが、一体どうやってここに入ってきた?」

雪風「あっ! 執務室の扉の鍵が開いていて、本棚を調べてたら奥に部屋があって! あっ、そうだ! 司令に報告が」

提督(扉の鍵は閉めたはずだがな……。あの口うるさい似非外人が叩きまくったせいで建て付けが悪くなったのだろう。しかし本棚はどうやって?)

提督(平時の本の並びから気づいたわけか。しかし本棚内に設置されているテンキーへの暗証番号入力など、それだけじゃ開かないようになってるはずなんだが……そこまで知っている様子ではなさそうだ)

提督(適切な暗証番号が入力されたのか? あるいは誤作動か? 信じられないが……ここにこいつがいる以上そうとしか考えられない)

雪風の身には、こうした奇妙な偶然が重ねて起こることがある。なぜなら雪風だからである。

雪風「そう! しれえに報告があって! 大変なんです! これです! 盗聴器です!」

雪風「司令の歓迎会の後に部屋を掃除していたら見つけちゃって! あの部屋で歓迎会をやる前は無かったんです!!」

提督「……なるほど。ところでお前、なぜこの盗聴器を使用不可能な状態にせずそのままここに持ってきた? まだこれ動いてるし現在進行形で盗聴されてるんだが?」

雪風「あっ」

提督「…………」 

提督「とりあえず、この盗聴器の指紋を取るか」

提督「盗聴している者に告ぐ。近日中にお前を執務室に呼び出し尋問する。厳罰を覚悟せよ。また、この盗聴の内容を何者かに伝えた場合、お前の関係者も皆処罰対象にする」

ベキ、と盗聴器を握り潰す提督。青い顔の雪風。

提督「雪風。お前に悪意がないのは分かるが……以後気をつけたまえ」

提督(本当は軽く罰したいレベルのやらかしなんだが、ただでさえ少ない確実な味方を減らすと今後の危険が増すしな……。しかしこれは予想外だった……)
379 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/01/27(火) 21:58:42.04 ID:Yq22Kgnx0
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~10/100)
・皐月の経験値+2(現在値2)
・足柄の経験値+2(現在値4)
・翔鶴の経験値+2(現在値2)
・金剛の経験値+2(現在値3)
・雪風の経験値+2(現在値3)
----------------------------------------------------------------------

告知もなくいきなり本編を投下してみましたが特に深い意味はありません。
(強いて言うなら昨日あたりに告知しようと思ってたんだけど忘れて寝ちゃったとかそんな理由です)
投下してみると分かるこのワチャワチャ感! そういえばわちゃわちゃって関西弁なんですね。知らなかった。

『Phase B』では経験値の増加が+2なのが大きいですね。
コンマのご機嫌次第で登場キャラが決まるので偏るかなと思ってましたがいい具合に仕事してくれました。
各キャラのコンマ範囲の比率はわりと適当に決めてます。
>>366では各キャラ15〜17%でしたが次回以降もそんな感じで行く予定。

と、ここでまた次回に『Phase A』がやってくるという流れです。
登場させる艦娘をレス安価で決定するというわけですハイ。

----------------------------------------------------------------------
『Phase A』【11-15/100】
レス安価で登場する艦娘を決定します。
登場させたい艦娘の名前を1人分記名して下さい。
(雪風・翔鶴・金剛・響・足柄・皐月の中から一人)
>>+1-5

よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらいで流し読みするか>>351付近を参照下さい。
----------------------------------------------------------------------
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/28(水) 18:24:23.86 ID:Y2SuwXwwo
足柄
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/28(水) 18:27:41.18 ID:Yc1ALLFA0
雪風
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/01/28(水) 18:39:32.27 ID:4M3u5wz00
翔鶴
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/28(水) 18:40:44.12 ID:UNm6pramo
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/28(水) 18:41:36.91 ID:Xsgo7Ak/o
皐月
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/28(水) 18:41:48.74 ID:EScD90oAO
足柄
386 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/01/28(水) 19:43:58.82 ID:+nB57div0
>>380->>384より
・足柄1レス/雪風1レス/翔鶴1レス/響1レス/皐月1レス
で『Phase A』が進行していきます。
来週頭ぐらいには投下出来たらいいなと思ってますけど微妙。



////悖らず、恥じず、チラシず////
イベント2月かー……もうすぐじゃん。うーん厳しいねえ(資源的に)。
一応年明けあたりから大型艦建造を封印して備蓄初めてるけど未だにボーキが25kぐらいしかないので辛い。
最近はあんまり時間取れなくてあ号すら消化できないという体たらく……(→だいたいClicker Heroesのせい)。
空母戦艦マシマシの連合艦隊決戦ゲーだったらわりとしんどいなぁ……。
改二駆逐揃ってきたし、水雷戦隊ベースのバケツ&練度ゲーならまだなんとかいけそう(やりたいとは言ってない)。
とりあえずイベント突入前に燃料70k/弾薬50k/ボーキ40kぐらい欲しいところ。
レアドロ堀りを考えるともっと欲しいけれど贅沢言ってられませんわね。
387 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/02/11(水) 14:19:56.36 ID:yuNPKC540
>来週頭ぐらいには投下出来たらいいなと思ってますけど
なーにが来週頭ぐらいにはじゃ。
すでにそう言い出してから二週間経過しておりますがリアルがリアルだったのでお許しを。
まぁイベントもあるわけだしね?
今週の金曜ぐらいには投下できるような気がしますと予告しておきます。

////チラシの裏////
甲→甲→乙→乙でE4突破。現在E5甲ゲージ削り中ですがいずれかの資源が20000切るかバケツが400切ったら乙にシフトします。
地力的には最初から乙に挑むのが賢い選択なんでしょうけど、どうせならどれだけ自分の艦隊と相手との間に絶望的な差があるかを味わってから退きたい所存。

今回イベントキツくないっすか!? いやトップランカーがひいひい言いながら突破してたE5甲はおいといて、そこに至るまでも結構エグい気がするっす。
エグいと言っても先人の方が歩んでこられた理不尽無理ゲー的エグさでなくて、常時14年夏E1のような感じ。やってやれないことはないがしんどいぐらいのエグさ。
資源が20万ぐらいあればキラ付けしなくてもゴリ押し突破出来るのでまた話は違ってくるんでしょうけどうーむ。

目ぼしいドロップと言えばE4の伊401、E5の磯風、朝霜ぐらいっすかね。いやでも今回掘り多分無理ぽ……。
乙とはいえもう一回空母棲鬼を殴りに行く体力ないですマジで。絶妙に硬くて腹立ちますねチクショウ。
MUSASHIを使えば倒せる(っていうかゲージ破壊ラストは武蔵使った)けど資源消費が怖いし……。
388 :【11/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/02/14(土) 09:07:47.14 ID:kmkYAStE0
鎮守府のとある会議室。ヴェアヴォルフの面々が座って話し合っている。

霞「足柄、会議に遅れるなんて関心しないわね。それで? 良い報告ってのを聞かせてもらうわよ」

清霜「顔面蒼白じゃない? 何かあったの?」 よろよろと会議室に入ってくる足柄を見て心配する清霜

足柄「終わった……もうダメだわ……。やっぱりああいうの向いてないんだわ……何があったかは言えないけど……明日で皆とはお別れよ……」

大淀「今更隠し事なんて! これまで辛いことも苦しいことも、一緒に乗り越えてきたじゃないですか」

霞「ハァ? 今までどんだけアンタが迷惑かけてきたと思ってんのよ!? 今になって何ふざけたこと抜かしてるわけ?」

霞「大方あのクズ提督に釘を刺されてるとかそんなだと思うけど、だったら話せる範囲だけ話せば良いじゃない。それに、アンタが処分されたらどうせ私たちだって後を辿るわ」

足柄「……言われてみればそれもそうね。じゃあ話すわ」

大淀(あっさり立ち直ったー!?)

・・・・

霞「盗聴って、アンタ馬鹿じゃないの!? しかもそれがバレたって……」

足柄「チャンスかなーと思ったのよ。だって、考えてみてよ? あの提督、ここに着任してから執務室から出た事なかったのよ? その謎が明らかになるかもしれないじゃない」

大淀「結局、その第二艦隊の歓迎会で提督について何か分かったんですか? ……ストレートに話すとまずいならある程度ぼかした表現で構いませんが」

足柄「いや、それが歓迎会“では”提督については何も分からなかったわ。第二艦隊の面々に何か聞かれても『黙秘させてもらう』とかそんなんばっかり」 提督の声をやや誇張気味に真似する足柄

清霜「盗聴器がバレちゃったのは、歓迎会中の出来事?」

足柄「いや、その後よ。歓迎会後に盗聴器をそのまま提督のところへ持ってかれちゃったのよ」

足柄「その時に提督が執務室からなぜ出て来ないかがなんとなく分かったわ。分かったのは良いけれど……盗聴器についていた私の指紋を採取されて呼び出し食らってるってのが現状ね」

霞「盗聴器ねぇ……歓迎会を終わった直後に回収出来なかったの?」

足柄「にゃ!? あ? あぁ、うん。歓迎会が終わった後すぐに清掃が始まって、取りに行く余裕が無かったのよ(……そういやあん時回収すること忘れてたわ)」

霞「何突然変な声出してるのよ。でも、清掃中に取りに行くことだって出来たじゃない? ちょっとその辺はっきりしないわね」

大淀「(あっこれ足柄さん回収忘れてたんじゃ……)そんなことより、提督に盗聴器がバレて呼び出されてるんですよね!? これからどうするか考えなきゃ!」

足柄「(大淀ナイスフォロー!)そ、そうよね。どうしたらいいかしら……」

清霜「処罰が下るのは避けられないと思うけど……直接会える機会がある以上、弁解のしようはあるかも?」

霞「なるほど……一つ思いついたわ。会議が終わった後、私の部屋に来なさい足柄。稽古をつけてあげる」

足柄が霞から受けた“稽古”とは、翌日に迫った提督から受けるであろう尋問のシミュレーションするというもので、その内容は過酷かつ熾烈を極めた。
後に足柄は、『あの後三日ほど霞の顔を直視出来なかった。正直PTSDになっていてもおかしくなかったと思う』と語っている。

・・・・

翌日の執務室にて。部屋の中には提督と雪風、そして足柄がいる。

足柄「まず、盗聴していたことをお詫び申し上げます。今回の騒動は私の一存で起こしたものであり、他の艦娘との関与はありません」

足柄「いかなる処分も甘んじてお受けする覚悟です。ですが……非礼は承知の上です。どうか私の言い分を聞いて頂きたく存じ上げます」

提督(盗聴するような奴が反省するとも思えないが……しかし見事な演技だ。かなり苦しい立場で弁解せざるを得ない状況のくせに少しの迷いも見られない)

足柄「私は、提督に不信感を抱いていました。いえ、今も抱いています。その主たる理由は、常に仮面を被っていて素顔を見せない、執務室から一切出ることがなく私たち艦娘への指示も全て書類で行っている、という点です」

足柄「この鎮守府で事件があったことは事実です。ですが、そこまで露出を避けるのには、危険から身を守るため以外にも何か理由があるはずと推測しています」

足柄「貴方の私たち艦娘に対する接し方を見て、私は疑念を抱かざるを得ませんでした。今回盗聴を行ったのも、貴方の真意を探るためです」

足柄「地下の施設に引きこもって、一体何をしておられるのでしょうか。貴方は何を目的に動いているのですか?」 丁寧な口調ではあるが、次第に語気が鋭くなっていく

提督「俺の目的は……深海棲艦を殲滅し、この馬鹿げた戦いに幕を下ろすことだ。それ以外に何があるという?」

足柄「お言葉ですが提督。私の目には貴方がそれ以外に別の思惑で動いているように見て取れます。きっと他の艦娘も同じように思っているはずです!」

足柄「……私は! そんな回りくどい話が聞きたいのではありません! 貴方が腹の中で何を考えているか! それを聞かなければ納得出来ません!」

提督「答える必要はないし、お前に納得してもらう必要もない。あくまで俺は規則に基いてお前を処罰するだけだ。……話はここで終わりだ。工廠へ向かい、その場の妖精の指示を仰げ」

提督(……このまま処分するには惜しい人材なのかもしれんのだがな。追い詰められている状況にも関わらず逆にこの俺を追求するとは大した奴だ)

提督(だが、俺の目的を話すと余計面倒が起こりそうだしな。それに、立場上ここで折れてやるわけにもいかん。残念だが……)
389 :【12/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/02/14(土) 09:09:02.74 ID:kmkYAStE0
雪風「ま、ま、ま、待って下さい! かっ、解体はあんまりだと! 思います、がっ!」 緊張のあまりイントネーションが愉快なことになっている雪風

一連の話を聞いていた雪風は思った。足柄の言っていることはもっともだ、艦娘たちがこの提督に対して疑念を抱いてもおかしなことではないと。
また、これまで第二艦隊は戦いの中でヴェアヴォルフに助けられたことがあり、それゆえに雪風は足柄の有用性も理解していた。
ここで彼女が鎮守府を去るのは提督にとっても自分たちにとってもマイナスである、と判断し、なけなしの勇気を振り絞って提督に異を唱えたのである!

提督「罪は罪だからな……。こいつに関連する者も全員処分しようと思っていたがそれは取りやめとする。……これが俺なりの最大限の譲歩であり情状酌量だ」

雪風「情状酌量ってこ、とは! ししし司令も、艦娘から疑念を持たれてる状況は、り、理解しているはずです! わ! 私も! しれえの真意が知りたいです!」

雪風「……あ、足柄さんの話を聞いて。私も、司令のことが気になりました。あ、あの、ここで足柄さんを解体したら、私も、提督のことが疑わしくなっちゃうかな、って……」

提督(……そうきたか。ここで突っぱねることは簡単だが、この先雪風が使えなくなると今後相当やり辛くなるんだよな……)

提督(今ようやく第二艦隊の面々をまともに扱えるようになるところまで漕ぎ着けたわけだ。言い方は悪いが、信用して使える駒が増えつつある状況というわけであり……)

提督(雪風に不信を抱かれたら他の第二艦隊の連中にも伝播してしまうだろう。そしたらまた響以外に頼る術を失う。ようやく鎮守府の内情が見え始めたこの状況で最初に出戻りはかなり痛い)

提督(ふむ、ならば……だ。少し試してみるか)

提督「良いだろう、雪風。ここでお前に見限られるのはこちらとしても辛い。……賭けをしようか」

提督「俺がこの先何をするつもりかを言い当てることが出来たなら足柄を不問にしてやる」

提督「ただし! チャンスは一度きり。惜しかろうがなんだろうが少しでも間違っていたならそれで終い。また、言い当てることが出来た場合はお前にも足柄にも俺の真の目的の為の協力をしてもらう」

雪風「の、望むところです! や、やりますっ! やりますとも!(考えなきゃ。考えろ……)」

しれえの真の目的は何か? 多分、“深海棲艦を滅ぼした後”のことをしれえは考えているのでは?
そうだ! ……ヒントは本棚にあるかも。

提督(ふむ、やはりそこを見て考えるよな。さて気づけるか……? 案外難しくないと思うが) 雪風の視線の先を追う提督

ええと、本棚にある本のタイトルは、と……。上段から順に……なになに?
『長生きするメダカの飼い方』『Artificial Intelligence "ELIZA"』『“どこでも”出来る! 簡単お料理教室』『有人宇宙飛行の歴史』一見普通に見えてヤバそうな本と普通にヤバそうな本がごちゃ混ぜですね……。
中段は……『禅の極意』『グラディヴィウス 攻略本』『恐るべきオーディオオカルトの世界』『まちづくりシミュレーション』『長生きの秘訣・呼吸健康法』『LISPプログラミング入門』『おいしいベトナムコーヒー』余計に意味が分からない……。
下段『アトランティスの謎』『深海生物図鑑』『地球の中心に関する考察』『「海の民」とは何者か?』『ヴォイニッチ手稿』『架空兵器は実現するか』うん……。

雪風(無理だこれー!?)ガビーン

れれれ、冷静になりましょう。前回本の配置が異なっていた時、欠けていた本を探しましょう。それが答えかも……『折り紙の折り方 基本から発展まで』絶対関係なさそう! というか、中段はわりと中身がバラバラで何の推測もつかないですね……。
でも、司令はきっと本棚の中の本を何のカテゴリ分けもせず無秩序に置いたりはしないですよね……性格的に。一番目につきやすい中段はミスリードを誘うためのフェイクかも。
下段は……かなりこじつけな推理ですけど、ひょっとしてひょっとすると深海棲艦に関連する本で分類しているのかもしれません。
なんとなく上段が怪しいような。人工知能、メダカ、料理、宇宙……ダメださっぱり分からない。

……もし私が言い当てることが出来たら、その司令の目的に協力してもらうってことは。一人の力では出来ないようなことですよね。かつ、深海棲艦を滅ぼした後に考えるようなこと……。
そういえば、遠い昔に宇宙でメダカの産卵に成功したことがあるとか、本で読んだ記憶があります。これって隣にある有人宇宙飛行に結びつくかも?
Artificial Intelligenceは……よく分からないですけどAIってやつですよね多分。これも宇宙開発が進んでいた時代は研究されてたとか……。料理の本も、“どこでも”なんて強調されてるのが妙に気になりますね……。となると……?

雪風「しれえの目的は……!」

宇宙に行くこと……? いや待て。しれえは宇宙に行っただけで満足するような人でしょうか? 違う。宇宙に行って何か……?
となると、中段の本とも話が繋がってくるのかも。衣服・音楽・ゲーム・インテリア……果ては折り紙まで、ありとあらゆる文化や生活に関する本で合致している。これが正解……かな!?

雪風「しれえは……! 宇宙に行って、どこかの星に移住するつもりなのではないでしょうか!?」

足柄「ちょっバカ何言って」 この世の終わりを目の当たりにしたかのような顔をする足柄

提督「正解だ、雪風。よく分かったな(“どこかの星”でぼかしたのは……見逃すか)」 雪風の方に手を伸ばし、かたく握手をする

足柄「!?!?!?!?!?!?」 目を白黒させて混乱している

提督「なぜ俺が今までこのことを話さなかったか理解頂けただろうか、足柄。お前たちには話す必要がないし、話した所で何の意味もない」

足柄「え? え? ……正気? 本気でそんなこと言ってるの?」

提督「当ッ然ッだ! 俺にとっては深海棲艦の殲滅など前哨戦に過ぎないッ!」

提督「……賭けは賭けだからな。お前の罪は不問としよう。知ってしまったからには協力してもらうぞ」

足柄にも手を差し出す提督。戸惑いながらも手を握る足柄。

足柄「ワケわかんないわ……」 放心状態で呟く

足柄(ワケわかんないけど……とにかく、良し? とした方がいいのかしらねこれは)

提督「足柄、雪風。今はまだその時では無いが……お前たち二人には、後にミッションを課す、俺の目的のため動いてもらうぞ」

雪風「はいッ! しれえッ!」 ビシッと敬礼
390 :【13/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/02/14(土) 09:09:49.29 ID:kmkYAStE0
第四艦隊の会合室。暁・雷・電がくつろいでいる。

響「やれやれ……やっと捕まったね。久しぶりに話でもしようと思っていたというのに、まるで私を避けているみたいに居なくなるもんだから苦労したよ」

雷「もう、そんなわけないじゃない。姉妹なんだから」

響「姉妹“艦”だろう? 私たちは本当の姉妹じゃない」

暁「そんな言い方しなくてもいいじゃない!」

電「そ、そんなことより……!」 険悪な雰囲気を遮るように電が声を発する

電「この鎮守府に戻ってきてから、すごいですよね……第二艦隊の旗艦だなんて。訓練生の頃は私たちと一緒だったのに……もう手が届かない存在になっちゃったのです」

その言葉を聞いた刹那顔をしかめ険しい表情をする響。しかしすぐに普段の無表情に戻る。

響「いいか? 私は君たちと世間話するために来たわけじゃない」

響「私は提督の命により、第四艦隊について調査している。つまり君たちに尋問する権利があるというわけだ」

響「単刀直入に聞こう。どこまで龍田と関わっている? 遠征で物資や燃料以外に“何を”運んでいる?」

雷「な、何を急に……私たちは普通に遠征しているだけよ」

響「そういう話を聞いているんじゃないんだよ。第四艦隊が秘密裏に麻薬の取引をしているなんて噂が流れているのを知らないのか?」

暁「しっ、知らないわよ! そんなこと! そんなこと、してないし……」

響「そうか。鎮守府内では結構な噂になっているんだけどね」

誰も口を開こうとしない。響の発する静かな怒気が少しずつ増していく。

響「物分かりが悪くて困るな。今話せば見逃してやると言っているんだ」

なおも沈黙。

響「……そう。ならそれもいい。私と龍田と、天秤にかけてそうなるようであればもう十分だ」

響「……覚悟しておくように。一切情はかけないよ」

部屋を出ようとする響に対し、暁が言葉を放つ。

暁「ッ……! 私たちを置いて……一人でどこかに行っていたくせにッ! 今更なんなの!? 偉そうに!」

暁「良いわよね響は! 練度も高くなって第二艦隊の旗艦も任されて! 提督にも気に入られて!」

暁「自慢しにでも来たの? 私はこんなに力があるんだぞって、えばりに来ただけじゃない!」

響「чёрт побери……!」

暁を突き飛ばし、殴りかかろうとする響。慌てて止めに入ろうとする雷と電。

雷「! 今のあんたが殴ったら、暁が死んじゃうじゃない!」

電「姉妹同士でこんなこと、やめて欲しいのです!」

声に気づき、静止する響。暁の襟首を放して、何も言わずに部屋を去っていく。

・・・・

バン! と腹いせに壁を殴る響。

瑞鶴「どうしたの? 随分荒れてるじゃない。珍しいわね」

響「そういうこともある」

瑞鶴「提督さんから直接指示を受けてるんでしょ? 大丈夫なの?」

響「ああ。いや、勘違いしないで欲しいのだが、司令官に対して腹を立てたわけではない」

響「ま……これで形振り構わなくて良くなった。かえって幸運と考えるべきか」

瑞鶴「……よく分かんないけど、あまり根を詰めすぎないでね」
391 :【14/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/02/14(土) 09:13:22.32 ID:kmkYAStE0
響と暁たちとのやり取りを別室から聞いていた皐月と文月。

皐月「文月……凄いことになってたね」

文月「修羅場ってやつだねぇ……って皐月? どこ行くの?」 部屋を出てどこかに行こうとする皐月を静止する文月

皐月「遠征用の物資が保管されている資材庫に行って、荷物の中身を確認しにいく」

皐月「自分が麻薬を運んでるのかもしれないだなんて疑念を持ちながら艦隊の他の皆と一緒に過ごせる自信、ある?」

文月(皐月はヘンなところ真面目よね〜……)

文月「う〜ん……ヤな予感がするけどなぁ……」

・・・・

皐月「いやーこれだけ箱やドラム缶があると壮観だね」 資材庫に積まれている木箱の中身を物色する皐月

文月「……小包とかは封を開けちゃダメだよぉ? クビになっちゃうから」

皐月「分かってるって。元通りの状態に出来るものしか調べないよ」

皐月「……?(ネジやクズ鉄が大量に……、こんなもの何に使うんだろう。弾薬や燃料の他にも、食糧、本、嗜好品……なんでもあるんだな)」

・・・・

文月「何も見つからなかったねぇー。……もう帰ろうよぉー」

皐月「こっちも特に何も無かったなぁ。ただの噂だったのかもしれないね」

龍田「あ〜ら二人とも。何か探し物?」 ドラム缶を背負って入ってきた龍田

皐月「いっ、いえっ! ちょっと遠征用の物資の確認をしようかな〜……って」

龍田「そうなの〜殊勝なのね。でも、それは私がすることだから貴方たちは気にしなくていいのよ?」

皐月「すみません、入って日が浅いもんで……へへへ」

龍田「謝ることは無いわ〜。それより二人とも、今日は二人に見せたいものがあるの〜……。この後ちょっと良いかしら?」

文月「え、えっとぉー……(断らなきゃ……!)」

皐月「はい、分かりました」

文月(皐月!? これ絶対やばいやつだと思うよぉ〜!?)ヒソヒソ

皐月(文月は心配性だなぁ。さっき調べて何もやましいところは無いって分かっただろ?)ヒソヒソ

文月(……嫌な予感しかしないよぉ〜)

・・・・

二人が案内されたのは地下通路の一室だった。
皐月たちの目に映ったのは、コンクリートの壁にもたれかかり、床に足と腕を伸ばしている女性の姿だった。
紺色の髪をしていて、眼帯をつけている。背中には艤装を背負っているようだ。
部屋の中を見渡すと、他にも二人の艦娘と思しき女性が、うつ伏せに倒れている。
二人の顔から血の気が失せていく。

文月「なんですか……これ……」

龍田「轟沈した艦娘よ。……正確には、轟沈するはずだった艦娘」

龍田「着底しかけていた艦娘を、陸まで曳航したの。でも、助からなかった。入渠させて傷は治ったけれど、再び動き出すことは無かったの」

龍田「私は、ね……それでも諦めていないの。だって、死んだ人間なら、身体が腐って朽ちていくはずでしょう?」

龍田「でも、ここに居る子たちは自ずから動かないという点を除けば轟沈する直前と何ら変わっていない。生きているのよ」

龍田「私は、この子たちが再び動き出せるようになって欲しいの……」

皐月「……どうして、ボクたちをここに連れてきたんですか?」

龍田「私は……他の誰に何と思われていようと、第四艦隊のことを家族と思っているから。貴方たちのことも、勿論そう」

龍田「だから、私のことも知っておいて欲しいし……出来ることなら私の理想に協力して欲しいわね〜」

龍田「それだけ。貴方達が私に不信感を抱いているというのであればそれでも構わないけれど、ちょっと悲しいわ〜。泣いちゃうかも〜」

皐月と文月には、龍田が善なのか悪なのか、本心ではどう考えているかが分からなかった。
いずれにせよ、とんでもない食わせ者には違いないのだろう、ということだけは認識していた。
392 :【15/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/02/14(土) 09:14:42.22 ID:kmkYAStE0
レストランで食事をしている提督・翔鶴・瑞鶴。
鎮守府内にはこのような艦娘専用(厳密には鎮守府内で働く職員らも含まれる)の娯楽施設や商業施設が設置されている。

提督(……前回の歓迎会が、無目的で行われたものだったとはな……。人事異動を暗に勧めているとか少しでも考えた俺が馬鹿だったようだ)

提督(利害以外の理由で動く人間の思考ルーチンはわからん……。ま、いくつか気になることはある。せっかくだから話を聞いてみるか)

瑞鶴「提督さん、悩み事? 歓迎会の話をしたあたりから、急に黙っちゃって」

提督「……いや、最近響の様子が妙でな。何か気づいたことはないか?」

瑞鶴「あー、なんか第四艦隊の人達とやり合ってたみたい。詳しくは知らないけど……第四艦隊の面子の中には響の姉妹艦も居るみたいだし」

提督「暁、雷、電の三名だな(彼女たちもクロ……なのだろうか。だとしたら響には酷な依頼をしてしまったかもしれん。雪風あたりに尋問させるべきだったか……いや、アイツじゃ無理か)」

提督「戦場での様子はどうだ? ……疲労を訴えていたり、不調だったりしてはいないか?」

翔鶴「戦場では普段通りですね。別段問題ないように思えますが……」

提督「そうか。ならば問題ない。精神的な不調が影響して沈まれては困る(……とはいえ、ヴェールヌイのことは心配だな。後で話をしてみるか)」

瑞鶴「てーとくさん、意外とメンタル的な部分気にかけてるんだね。そういう感情的な部分は全部切り捨ててる人かと思ったけど」

提督「精神面での不調も馬鹿にできたものではないぞ。現に第二艦隊の榛名と霧島は個人的な対立によって双方の戦果に悪影響を及ぼしているではないか」

翔鶴「確かにそうですねぇ……。あの二人はちょっと心配です。二人とも悪い人ではないのですけれど……」

瑞鶴「提督さんの歓迎会の時も、なんか水面下で揉めてたっぽいしねぇ……。っていうか、前はあんなに仲悪くなかったよね。どうしてああなっちゃったんだろ」

提督(……子供の喧嘩じゃあるまいし、仕事なのだから割り切って欲しいものなのだが。とはいえ、何かしら事情はあるんだろうな)

加賀「あら五航戦と……提督? 珍しいですね」

提督「あぁ、加賀か。もし良かったら相席どうだ?」

加賀「そうね。赤城さんも今は居ないし……そうするわ」

・・・・

提督「第一艦隊の様子はどうだ? ま、報告書から粗方の想像はつくが」

加賀「連携を意識した途端、皆総崩れになるわね。それぞれが単騎で敵と当たることが多かった経験が邪魔して、一丸になって敵を倒すというイメージが難しいみたい」

加賀「私や赤城さん、飛龍と、空母の方は比較的足並みが揃うようになってきたけれど……戦艦の人たちとは反りが合わないわね」

瑞鶴「そんなことでは後輩に抜かれるのも時間の問題ですねぇ〜」

加賀「五航戦は口先に見合った実力さえあれば文句ないのだけれど。問題はそんな事を言える資格が無いぐらいに練度がお粗末なことね」

提督「やめんか。……第一艦隊の戦艦と反りが合わないと言っていたな、加賀。原因は金剛だろう?」

加賀「ええ。……ハッキリ言ってあの人とはうまくやっていけないわ。他の人もそう思っているんじゃないかしら」

提督「個で最強であっても、全体の足を引っ張るようであれば集団戦では使えんな。……奴曰く『“精神的不調”で上手くいっていない』ようだが」

提督「……近いうちに、第一・第二艦隊の大規模な再編を行うつもりだ。これまでのような出来合いの艦隊編成ではなく“来るべき深海棲艦との最後決戦”を想定した編成だ」

提督「いかに第一艦隊のお前たちが個での戦いに絶対の自信があろうと、深海棲艦の力はそれさえも上回る。練度も経験も上回るほどの圧倒的な性能でお前たちの前に立ち塞がるだろう」

提督「そうした脅威を打ち払うためには高度な連携が不可欠となる。それを肝に銘じておくように」

加賀「ええ……承知しました」

提督「不確定な情報が多いため今話せることは僅かだが……正規空母であるお前たちの活躍には期待している。修練を怠らぬように」

・・・・

空母用の訓練場。矢を射る翔鶴と、その様子を見ている加賀。

加賀「翔鶴。……迷いが見えるわ。一射絶命よ、忘れたの? 放った一本の矢に全てを懸ける気概でなくては、正規空母は務まらないわ」

翔鶴「どうしても、最後の戦い、というもののイメージが沸かなくて……」 構えを解く翔鶴

加賀「そうね、私も同じだわ。でも、あの提督は冗談であんなことを言うような方ではないはずよ。……覚悟と勝算を持って、本気で言っているのでしょう」

翔鶴「戦いが終わったら、私たちはどうなるんでしょうか。どうすればいいんでしょうか」

加賀「……一射絶命。私が今の貴方に言えるのはそれだけね。全ての迷いを捨て去り、己自らが真善美を体現する存在となった時、究極の一射は完成する……」

加賀「その境地に辿り着いた時、全てが分かると思うわ。私も、赤城さんでさえも、未だその片鱗しか見えていないけれど……ね」
393 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/02/14(土) 09:36:51.63 ID:kmkYAStE0
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~15/100)
・足柄の経験値+1(現在値5)
・雪風の経験値+1(現在値4)
・響の経験値+1(現在値2)
・皐月の経験値+1(現在値3)
・翔鶴の経験値+1(現在値3)
----------------------------------------------------------------------

投下めっちゃ遅れてしまいました。楽しみに待ってくれてた方が居たら申し訳ありませんと謝っておきます(居るの?)。
原則としてレス順番の通りに進めるけどそんなに拘りないからPhase Aで「次はこのキャラの出番があると作者的にやりやすいんだろうなー」「上のレスでこうだからー……」とか気を遣わなくて大丈夫です。
ということを示すべくちょっとレスの順番から変えてみたり。

っていうかまーたエターナりそうな展開運びしやがって……相変わらず味付けが濃すぎて人によっては拒否反応を起こしそうな感じですが今更すぎますね。
最近リアルがアレすぎるのでわりとマジでエターナ率が上昇してるかもです。
まあ失踪したらしたでしょうがないよねということで……。

----------------------------------------------------------------------
『Phase B』【16-20/100】
レスのコンマ値で登場する艦娘を決定します。
00〜16:雪風
17〜33:翔鶴
34〜50:金剛
51〜67:響
68〜83:足柄
84〜99:皐月
>>+1-5

よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらいで流し読みするか>>351付近を参照下さい。
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394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/14(土) 10:23:24.58 ID:WNRXkQUAO
足柄さん来い
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/14(土) 22:39:54.30 ID:Rft0d+POo
ぽい
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/17(火) 21:38:46.73 ID:MfwNGZJbo
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/18(水) 10:59:07.29 ID:S/9IDHevo
ぽぽい
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/18(水) 21:12:59.49 ID:U2kJ1KBEo
おう
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