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男「……いよいよメラが使える様になるとか末期だな俺は」
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710 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/21(日) 17:34:54.07 ID:ThdKOjR+O
乙
マホトーンって相手が呪文撃つ瞬間に先に唱えたら打ち消せるんじゃね?DQ1からあるけど……
711 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/21(日) 20:59:05.11 ID:wHX2HO5MO
すげえかっこいい
712 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/21(日) 23:22:59.70 ID:sh6qCUR5o
乙
>>710
いろんなDQ設定のマンガを見る限り、マホトーンは「相手の呪文の発動(もしくは詠唱)を阻害する呪文」なので、すでに完成している呪文は防げないっぽい。
そういうのができるのは「マホカンタ」「マホステ」かも。
713 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/02/22(月) 02:27:22.56 ID:/6oIunbf0
多分だけど
>>710
は「同じターンでもマホトーンを先に唱えて封じることができれば呪文を阻害できる」って言いたいんじゃないかな。見当違いだったら済まんけど
714 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/10(木) 10:30:20.26 ID:ao92uL5xO
まだかなー
715 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/20(日) 22:27:04.04 ID:7EORCLhcO
ここまでイッキ読みしてしまった
期待
716 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage-saga]:2016/03/23(水) 11:35:24.32 ID:boj4YWrco
< パキッ……ミシッ
地獄の騎士C【ク……カッ…………】
< ポワァ……ンッ
僅かに黒い煙と光の残滓を散らして、骸骨の騎士は消えていく。
後に残る強烈な氷の剣山は音を立てて冷気を漂わせていた。
男「……前よりも威力上がってないすか」
戦いの最中に切り落とされてしまったギターケースを拾い上げながら主任に声をかける。
肩で息をしている姿から、不安を覚えたからだ。
今の短時間で連続して『ヒャダルコ』を撃った主任の疲労はエビルマージに遭遇した影響か、著しい物があった。
……ギターケースは半ばから切断されてしまっていて使い物にならなさそうだ。
主任「何度も呪文を使っていると、何となく分かってくるんです」ザッ
主任「呪文は唱えれば発動出来ます、威力も多分……唱える時に感情を昂らせて……というか」
ゆっくりと、主任は顔を上げて俺を見た。
額から流れる汗に長い髪の毛がへばりついているのも意に介さない。
主任「……殺意、みたいなものを籠めると…少しだけ、少しだけ……呪文の通りが良くなる感じがするんです」
男「…………」ぞくっ
717 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage-saga]:2016/03/23(水) 11:36:08.76 ID:boj4YWrco
何か言おうとするも、言葉が出てこない。
この状況で余計な事に時間を使うわけにも行かない、そんな焦りが更にどうしたらいいのか分からなくさせた。
しかしいつの間にか……主任は俺の前に進み出ていた。
主任「……あれは、何が起きてるんでしょうね」
男「!」
男(光の柱……!? いや、あれって……ッ!!)
俺達は店員にエビルマージを頼み、森林公園に到着した。
居たのは二体の『じごくのきし』、主任と連携して戦闘をしていたが……
他のモンスター達とは違い、まるで見張りか門番の様に奴等は立っていた。
いや、間違いなくあれはゲームにおける見張り役のモンスターだろう。
つまり何者かを通さずに『何か』を成そうとしていたのだ。
それが今、俺と主任の眼前で空に向かって伸びている巨大な光の柱に違いない。
より正確には。
男(モンスター達が次々と消えて……その残滓が集合している……?)
718 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage-saga]:2016/03/23(水) 11:37:39.38 ID:boj4YWrco
恐らくは森林公園の中央、その上空に巨大な光の柱が突き立っていた。
或いは空に向かって伸びているのか。
俺と主任の目前で木々の隙間から見える異常な光景は、それまで見てきた魔法やモンスターによる異能現象とは違うことがそれだけで分かった。
チリチリと肌を撫でる、静電気の様な性質の風が吹く度に辺りを濃密な何かが漂っている事に気付く。
恐らくは……魔力か何かだ。
男(モンスターが次々と空へ浮き上がって……そのまま死んでるのか?)
男「主任……」
主任「行きましょう男さん」
男「!……エビルマージがいた、つまりあれの根元には俺達じゃどうにも出来ない奴等がいるかもしれない!」ガシッ
主任「っ、だから何ですか急に」
男「死ぬかも知れないんだぞ! なんでそんな簡単に行こうとしてるんだよアンタ!」
主任「落ち着いて下さい!!」バッ
俺の手を払い、主任の掌が眼前に翳された。
その手の向こうに見える眼には、少なからず籠った殺意が見えてしまう。
咄嗟に俺は飛び退いた。
男「……!!」
主任「…………」
719 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/23(水) 19:37:24.64 ID:SrP+UU+Q0
来たか
720 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/23(水) 23:15:34.05 ID:uYwPbMJMO
おつ!
きたか!
721 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/23(水) 23:43:59.68 ID:YrP1sNSho
乙
殺意か
722 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/29(火) 01:13:09.05 ID:EtpjZzZDo
保守
723 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/04/06(水) 04:22:26.97 ID:ueebhPaho
保守
724 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/04/16(土) 17:10:59.21 ID:XNzNXPO0o
保守
725 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/04/25(月) 00:12:24.17 ID:DknTvVx+0
あと一カ月か
726 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/05/04(水) 00:15:36.42 ID:G3390bIao
ほし
727 :
ID加速中
◆V9LlgfWZs2
:2016/05/07(土) 17:48:08.68 ID:2Rhxxw+y0
あ
728 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/05/17(火) 20:07:45.01 ID:IInPq3rbO
おいおいおいおい
いよいよ危ないじゃないか
早く来いよ
729 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/05/18(水) 23:53:49.47 ID:74YvOmpBo
主任「……私はモンスターを、あいつらを許せない」
主任「一匹残らず消し去ってやりたい、私はそんな思いで戦ってるんです! 生きるために見逃すなんて私は嫌だ!!」
男「何言って……」
主任「私はあのマンションに住んでいた人達を、いつも見ていた!」
飛び退いた俺に近付き、主任は俺の胸元を掴む。
主任「映画や漫画の中みたいに、都合良く殺されて良い人なんかいなかった! そんな人達じゃなかったんですよ!!」
< ガシィッ…!!
男「く……ッ」
男(主任の眼、本気だ……このままだとヤバいんじゃ……)
掴んで来た手を掴み返すも、俺の腕力でもまるでびくともしない。
我を見失った様に怒る主任の眼をもう一度覗く。
俺はその中に未だ揺るがない殺意を再確認した。
主任「貴方には分からない! あのコスプレした女にも分かりっこない!!」
主任「人が死ぬって事が、人がこの世界から消えるって事がどれだけ辛くて悲しくて取り返しのつかないことか! 貴方達には分からないんだ!!」
< ガバッ!
男「っ!」ドサッ
主任「……はぁ…ッ、はぁ…ッ」
主任「…………」
主任「男さんはここに残ってて下さい、私があの光の根元へ行きます」
730 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/05/18(水) 23:59:10.90 ID:74YvOmpBo
男「何言ってるんだよ……主任こそ落ち着けよ! アンタ一人なんて……」
主任「一人でも、誰かが行かなくちゃいけないんです」
主任「止められるかもしれないのに、ただ隠れて震えてるのはもう……嫌ッ!」
男「主任!!」
────────── シュタンッ・・・!
俺が止める間も無く、主任は跳躍し森林公園の中へと姿を消してしまう。
恐らく『ピオリム』を唱えたのだろう、たった一度の跳躍で凄まじい速度を出して行ったのだ。
対する俺は…………
俺は?
男「……どうしろっていうんだよ」
主任の様子は普通じゃない。
先程までの冷静さが消えていた。
魔力切れか、或いはそれほどの琴線に触れたのか。
いずれにせよ放っておけば彼女は間違いなく殺される。
最初の威勢は何処へ消えたのか、自分でも呆れ返る。
俺はあの空へ伸びる巨大な光の下へ向かうことを何より恐れていた。
怖いのだ。
恐ろしいのだ。
男「畜生…………」
彼女の速さなら直ぐにあそこへ辿り着くだろう。
残された時間は無いのは分かっている、分かっているんだ。
…………それでも、俺は暫くの間何も出来ずにその場に立ち尽くし迷っていた。
731 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/05/19(木) 00:02:29.97 ID:aw0yPgO8o
━━━━━━━━ 【数分前……店員達】
< ボヒュッッ…!!
エビルマージ「『ヒャダイン』ッ!」
キィィンッ
『マヒャド』を弾いて無効化し、返す刃でエビルマージに向けて放った一撃はビルごと破壊した。
そう店員は認識していた。
しかし粉塵から飛び出た緑衣の魔導師を見た瞬間、それは早計だったことを知る。
店員(魔術師タイプのモンスターなら或いは……と思ったけど、駄目か)ズザァッ
ブラッドソード「動きが速いわねアイツ」
< 「来てるぞ」
ガシャァアンッ!!
店員の仲間が反応するが先か後か、大気を切り裂いて殺到してきた氷柱の一本が粉砕される。
横薙ぎの一閃。
金髪のウィッグが背後で衝撃波に吹き飛ばされて何処かへ行ってしまうのを、店員は半ば舌打ちしながら傍目に見ていた。
店員「八魔将ってお金落としてくれますかね」
< 「急になんだ」
店員「あのウィッグ高いんですよ、アホ毛再現してる特注品なんで」
< 「……」
────────── ドッッ・・・ドドドドドドドォォッ!!
732 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/05/19(木) 00:03:44.38 ID:aw0yPgO8o
一瞬の間を空けて鳴り続ける轟音。
殺到してくる氷柱が店員の居た位置を正確に、逃げ場の無いように、アスファルトを貫き土砂を巻き上げている。
しかし巻き上がったのは礫と雨に濡れた土砂のみ。
エビルマージ「……!!」
緑衣の魔導師は見た。
レベルの高い、優れた戦士や盗賊の類である者達でさえ成し得ない身軽さと瞬発力。
それを爆発させ、女騎士らしき姿の店員が飛来した氷柱を次々とかわしながら虚空へと身を躍らせた……その一部始終を。
幾度か身を捻り回転しながら店員は数十メートル離れた一軒家の屋根に降り立った。
ガシャッ!
店員「……ふぅ」
店員「避けるのが精一杯とは言え、『負ける相手』ではなさそうですね」
ブラッドソード「油断は禁物よセイバー」
店員「分かってますよ」
土砂で微かに汚れた頬を籠手で拭いながら、店員はブラッドソードを構える。
そして、まるで唱える様に彼女は呟いた。
店員「……あれが主任さんの怨敵ですし、ね」
733 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/05/19(木) 00:05:30.71 ID:aw0yPgO8o
< ビリビリッ……!!
直後、店員の握る剣が僅かに瞬く。
真紅の刃が蒼白に染まったかのように、ほんの僅かなその一瞬だけ発光したのだ。
一瞬だけ見せたその現象はまさしく『雷光』 ────────
店員「二割減るけど、後は任せたよ『リリィ』、『オルタ』、『クラーク』」
店員「これで仕留めます」キィンッ
< バチバチバチィイッッ!!
───────── 稲妻を纏うかの如く、蒼白の電光を放出しながら剣を逆手に持ち替える。
店員の足が屋根瓦を踏み砕き、瞬時に雨空へと身を躍らせた。
ドゥッッ・・・!!
エビルマージ「ヌゥ……!?」
緑衣の奥でエビルマージが声を漏らす。
そこへ、
店員「 ───────ッッ 」ブンッ!!
一気に距離を詰めた店員が大きく振り被って雷光を迸らせる!
エビルマージはその光を見て即座に技の正体に見当をつける。
エビルマージ「『稲妻斬り』……異世界の人間如きが魔法剣を振るえるか」
距離を詰めた所で、未だ両者には十数メートルの間がある。
それを無視して店員は振り被り、そしてエビルマージは距離を詰められるより先に呪文を発動させる!
734 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/05/19(木) 00:08:43.40 ID:aw0yPgO8o
ギュィインッ!!
大気を渦巻く力は、果たして『どちら』の物だったのかは分からない。
都市を覆い尽くせる災害を一点に集束したかのように、その場所に破壊がもたらされたのだから。
エビルマージ【『マヒャド』ッ!】キィンッッ
無駄な口を開く事はしない。
如何に力量差のある相手だろうと、その愚かな行為が、一瞬の隙が強者をも殺す事をエビルマージは理解していたからだ。
棒立ちで魔法を撃つ事もしない。
緑衣から伸びる手から魔力を放出して後方へ跳躍し、店員から距離を取りながらの『マヒャド』だ。
────────── 地面から突き立つ一本の氷の塔は店員の視界を塞ぎ。
────────── 上空から降り注ぐ氷塊は高層ビルの崩落よりも凶悪に、店員を捉える。
────────── 貫き穿つ為の氷柱とは違い、触れただけで凍てつく冷気を纏った質量攻撃である。
一瞬で繰り出される氷結系最上位の呪文は、最強の魔導師によって更に攻撃魔法として磨かれ殺到する……!
735 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/05/19(木) 00:10:27.48 ID:aw0yPgO8o
ガシャァアアンッッ!!
ドドドドッッ……!!
轟音を周囲に響かせて、店員を狙った氷塊が次々と住宅街を破壊し凍り付かせていく。
雨によって湿った空気が一気に冷えた中、緑衣の魔導師は冷気漂う氷山を見る。
今ので仕留められるほど弱く無い相手故に、追撃の呪文を密かに唱えながら。
─────── ボヒュッ・・・!
< ズドォォッ!!
エビルマージ「……?」
ブシュァアッ!!
エビルマージ「ッ……な、んだと………!!」
エビルマージの目には捉えられなかった。
一瞬、氷山の一部が弾けて閃光が走った事しか認識できずにいたのだ。
…………爆撃を受けた様に巻き上がる粉塵の中から投擲された『剣』によって左腕を落とされ、血飛沫を上げるまでは。
736 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/05/19(木) 00:32:18.56 ID:qTChlXyho
復活してた!
737 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/05/19(木) 02:47:26.77 ID:aw0yPgO8o
──────── ヒュォオオオ・・・
< パキパキパキッ……カシャンッ……
店員「外れちゃった、か」
< 「セイバー、傷は……」
店員「油断はしていなかったんですけどね、肩の感覚が鈍いです」パキッ…
< 「凍っている様だ、傷は私がどうにかしよう」
店員「……」コクン
氷山が建物の瓦礫ごと凍らせている横で、店員は膝を着き息を切らせていた。
表情こそ平然としてはいるものの、初撃の呪文がどういったものか見る前に無効化した事が災いしてしまった。
店員とて未だ見たことの無かった最上位系の呪文。
圧倒的質量を生み出す事も出来れば、特異的に触れた箇所を凍らす効果も付与出来る。
それを知らずにカウンターを狙った結果、思わぬ魔法を撃たれてしまった。
だが、それでも店員は即座にマヒャドから逃れての一撃を加える事に成功しているのは間違いなかった。
店員「エクスカリバーが何処まで『時間を稼ぐ』かは分からないし、このまま追撃します」バッ!
氷山が目の前に次々と突き立つ最中に、店員は氷の層が脆い位置を見極め、手に持つブラッドソードを投擲したのだ。
『他の剣』を使って、同じく稲妻を纏いそれで電磁加速させて撃ち放ったのである。
738 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/05/19(木) 07:43:11.58 ID:hLBy9sPNO
来てた!
かっこいいね
739 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/05/19(木) 18:52:00.43 ID:aw0yPgO8o
ギュルルルッ!!
深紅の両手剣が激しく回転しながら、突き刺さっていたビルの壁面から離れる。
ブラッドソードはそのままの勢いで不意打ちに怯んでいたエビルマージに向かい、一直線に飛び出していく……!
エビルマージ「チィ……! 魔剣の類を持ち合わせていたか!」キィンッ
背後から高速で回転し向かって来るブラッドソードに気付いたエビルマージが、右手に魔力を集中させて迎え撃つ。
────────── ヒュィンッッ!
ブラッドソード「お生憎様、魔剣は魔剣でも『魔物剣』なのよねぇ!」
エビルマージ「ッ、貴様……『ブラッドソード』か」
魔力を集中させて撃った光弾を難なく回避し、ブラッドソードはエビルマージと交差する。
吹き飛ばされた左腕は傷口が既に凍らされ止血されていた。
ブラッドソード(一瞬よ、一瞬だけコイツを足止め出来れば……!)
ブラッドソード「行くわよ!!」
───────── ギュオオ ッ!!
風を切り裂くかの如く、縦横無尽に剣閃を走らせ乱舞を繰り出す。
ブラッドソードは、彼女は軌道を読ませる事を許さない。
魔剣の姿をした魔物である以上、その弱点は剣筋を読まれてしまう事にあるからだ。
今、エビルマージに対して繰り出された乱舞は正しく彼女の全力の攻撃だった。
その一瞬で行使された凄まじい剣舞は、仮に相手がトロル系の巨人だったとしても打ち倒しただろう。
パキパキパキッ……ガガガッッ!! ─────────
エビルマージ「『ヒャド』、『ヒャダルコ』、『ヒャド』」
< ビキビキッ! ギシィッ・・・!!
それを。
上位の呪文すら使わずに、緑衣の魔導師は止めた。
740 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/05/19(木) 19:15:33.69 ID:aw0yPgO8o
ブラッドソード「がッ……ぐぅぅっ……!!」ビキィッ
ブラッドソード(こ、これ程だなんて……なんて魔力の強さ……!)
刀身を上下から氷塊に挟み込まれ、動きを止めた所に次々と叩き込まれる重く冷たい一撃。
片腕を落とされ、窮地に立たされているとは思えない冷静な動作だったのだ。
加えて初歩的な呪文に籠められた恐るべき魔力は、鉄をバターの様に切る事の出来るブラッドソードさえヒビが入る程に強力な物だった。
ブラッドソードは全身を打たれて意識が遠退いていく。
ブラッドソード(……でも、これで……)
遠ざかる意識の向こうで、彼女は異世界で出会った友人を思い出す。
知る中で間違いなく最強の人間。
店員「ブラッドソード!!」
< ガシィッ!
エビルマージ「く、無傷だと……!?」
好きなキャラクターのコスプレを愛する変人ではあるが、その才能は底が知れない。
ブラッドソードに不安は無い、どれだけ強大な相手であろうと必ず店員ならば勝利すると分かっていたのだから。
店員の持つ才能は、剣術や身のこなしではない。
彼女は、自分に再現が可能ならばそれを見ただけで物にする事が出来る。
店員「……お返しですッ」キィィン…ッ
【『マヒャド』】
エビルマージ「〜〜!!?」
741 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/05/19(木) 20:23:14.51 ID:vbG5ZGDKo
どーゆーシステムなんだろ
742 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/05/19(木) 23:57:07.88 ID:lpgkbj2ro
来てた
待ってました
743 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/05/25(水) 23:41:12.94 ID:2aerLLsVO
こい
744 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/05/31(火) 17:09:08.88 ID:N5cyTFBso
こい
745 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/06(月) 21:57:07.88 ID:2UQGjTRRo
7
746 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/12(日) 03:11:04.23 ID:XrFee9/wo
メガロ!
747 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/24(金) 18:28:23.82 ID:oMkxNZD9o
メがラブ!
748 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/12(火) 01:45:37.50 ID:AMoFUj9t0
カカロン!バルバルー!クシャラミ!ドメディ!
何故だ!何故召喚できんのだ!
時間がないぞ!!!
749 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/07/17(日) 13:23:01.93 ID:ealKhtGPo
────────── ドォォオオンッッ!!
広域に撒き散らされる破壊の音。
それは巨大な氷山を上空から高速で同じ質量をもって砕いた音。
店員が半ば強引に唱えて振り下ろした魔法は、周囲に強烈な冷気と共に衝撃波を発生させた。
その中心部に居たのは店員ではなく、緑衣の魔導師である。
エビルマージ「馬……鹿な、何故……異世界の人間がマヒャドを…………」
その姿は凄惨なものとなっていた。
下半身は凍り付き…ローブごと砕け散っており、何らかの魔法で防いだらしくも未だに凍結の侵食は止められずにいた。
驚愕の表情は文字通り凍り付いている。
店員「……確か、エビルマージ……でしたか」ガシャッ
エビルマージ「……ヌゥ…ッ!!」
眼前に降り立つ店員を、凍り付くエビルマージは見上げた。
店員「貴方達の目的は何ですか、今、世界で何を起こそうとしてるんです?」
店員「答えなければ……」
冷気の籠った瞳で、店員はエビルマージに掌を向ける。
それが意味するのは生か死か。
生かす気が有るかどうかを問う余裕も無ければ、力も残っていなかったエビルマージは沈黙するしか無かった。
750 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/17(日) 16:11:30.86 ID:Zyb4Toh2O
まってた
751 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/17(日) 16:16:34.03 ID:9SWjr4C7o
おつおつ
752 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/17(日) 17:08:33.50 ID:OrbhuiK3o
復活しててうれしい
乙
753 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/18(月) 00:22:50.70 ID:SHpFA4hTo
復活乙
巨大な氷塊を落下させる魔法、どこかで見たな……と思ったらネギまか。
確か質量攻撃だけじゃなく、砕けた氷の潜熱を利用して大規模な冷却範囲を作るんだったか。
754 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/07/29(金) 08:09:40.69 ID:WOGyWRdtO
ほし
755 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/08(月) 23:35:51.51 ID:8rR6XZtLo
ほし
756 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/23(火) 07:48:42.94 ID:sIlHeufWo
まだか
757 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/26(金) 17:48:51.64 ID:mGaPwQ/+o
エビルマージ「…………」
店員「……?」
数瞬の沈黙。
ふと、店員はエビルマージが緑衣の中で何かを呟いた事に気付いた。
エビルマージ「……それで勝ったつもりか」
エビルマージ「意識が抜けていないのだな……く、く……」
店員「……」
店員「意識、とは?」
瀕死の筈なのに、突如笑い始めたエビルマージに店員は問い掛けた。
何が余裕を生ませているのか。
それとも、決定的に何かエビルマージは店員達とは別の視点を持っているのか。
そう考えた瞬間、店員は次のエビルマージが放った言葉に硬直する事になる。
エビルマージ「””これはゲームで遊んでいるのではないぞ?””」
758 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/26(金) 18:35:18.42 ID:mGaPwQ/+o
店員「……」
< 「……セイバー?」
周囲から聴こえてくる仲間の声が、上手く店員の耳に入ってこなかった。
彼女は恐ろしい程の目眩を覚えていた。
決して有り得ないとすら思っていた事が目の前で起きている。
現実に存在する筈のない幻想が侵食してくる感覚。
今、店員という人間は初めて不確かで曖昧な気配に狼狽えていた。
店員「それは……どういう意味ですか」ザッ…
エビルマージ「この『ニホン』以外の国にも何人もいた……くく、我々を『ゲーム』から出てきたキャラクターだとな」
店員「まさか本当に……!?」
エビルマージ「くく……くははッ……そんなわけがないだろうに、お前達異世界の人間はそうして根本的に間違えてきた……」
エビルマージ「認めよう! ハハハハッ!! あれは、あの『ドラゴンクエスト』は我々の世界の全てを見事に描いている! これ以上ないほどの奇跡だとな!!」
エビルマージ「だがゲームのつもりで戦っている貴様らでは我々に勝てるわけがないだろう!! 嘗めるなよ人間、これは『命』と『未来』を奪い合う闘争……戦争なのだッ!!」
< キィィィインッッ!!
エビルマージが鮮血の混ざる冷気を散らして吼えた瞬間、店員の全身が魔法の気配を察知する……!
< 「これは……!」
店員「ッ、しまっ ─────── 」
何らかの魔法が襲ってくる事に気付くも、間に合わないと悟った彼女は衝撃に備えて構える事しか出来なかった。
759 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/27(土) 00:23:37.47 ID:usO9YgGAO
うおお乙
760 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/27(土) 01:44:32.95 ID:uGE1Alt4o
それは、店員が身構えた刹那に動いた者の思考。
(『ブレードガード』で防ぐには数が多い、更にブラッドソードがほぼ戦闘不能)
(ここがセイバーの限界だな)
一定のレベルを越えた者の思考速度は凄まじい回転と反応を見せる。
同時に、店員を中心に二重の渦が冷気を巻き上げた。
パガァンッッ!!
────── 片や、身構える店員を八方向から挟むように突き上がる氷の刃。
ドゥッ・・・ンッ!!
────── 片や、白銀の軌跡のみを残して店員を抱えて跳躍する者。
それらは、エビルマージを押し潰していた氷山に亀裂が入る程の衝撃波であった。
ただ質量を生み出し弾く、叩きつける、突き上げるのみならず。
店員を襲った氷の刃は……その特性から如何に自在に形を変えて凶悪な武器となるのかを物語る。
そう、数十メートルの距離を取ってから、自身の立っていた位置を切り裂いた氷の刃を見て理解した。
店員の視線が魔法を撃った者を捉えて。
< スタッ……
店員「……これは、どういう事ですか…………何故、他に……!?」
シュルルルルッッ……
ここに来て初めて危機感に満ちた声をあげた店員を補足するように、彼女の『身に纏っていた白のドレス』が宙に飛翔した。
今まで消されていた気配と、変えていた姿形が露となる。
シルバーマント「『八魔将』を名乗るからには、ただの魔導師ではなかったという事だろう」
シルバーマント「そうだろう? エビルマージ」
エビルマージB「…………」
エビルマージC「…………」
761 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/27(土) 07:26:30.46 ID:/gbQVfsAO
乙
ヤバい状況だね。
ザオリク使える奴が大量に出るとは…
マホトーンかマホカンタ使えないとキツいな。
762 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/27(土) 10:23:46.77 ID:uGE1Alt4o
多少の余裕はあったとはいえ、それでもブラッドソードが戦闘不能になる必要があった程の相手。
その実力に狂いはなく、店員が聞かされていた『八魔将』の名に値する脅威だった。
しかし。
エビルマージは『一人ではなかった』。
エビルマージD「まさか儀式場を邪魔されない為に配置した『私』が敗北するとは、些かこちら側の人間を嘗めていたか」ザッ…
エビルマージB「それだけではない、幾つかの報告にあった未知のモンスター……先の『ヒャダイン』を回避したのを見るに相当の熟練者だ」
緑衣から放たれる重圧感と耳に残る低い声。
エビルマージC「エレメント系か……いや、純粋なエレメント系とは違い性質は亡霊に属する者に近い」
エビルマージC「呪文も扱えるとして、さて……『私達』を相手にどこまで堪えられるかな?」
嘲笑するかに見えて、その実、決して警戒を怠らずに能力を考察する。
店員が見ている新たな緑衣の魔導師は、確かに一人一人が先程まで戦っていたエビルマージと同一の存在だった。
仕草から、その視線の動きに至るまでが同じ。
僅かに後退りする店員を引き止めたのは白銀のマントのみで浮遊する、仲間のモンスターだった。
シルバーマント「あれの戦い方がいまいち支援型に見えていたが、なるほどこういったタイプのモンスターか」
店員「リリィ……ここは撤退しよう」
シルバーマント「駄目だ」
店員「……何故?」
リリィと呼ばれたモンスターは、虚空から同じく白銀の剣を取り出す。
シルバーマント「男と主任、あの二人ではエビルマージ一人にすら勝てないだろうな」チャキッ
シルバーマント「であれば私とセイバーがやるべきことは見えている」
店員「…………」
シルバーマント「私の力を全く借りずに、あくまでも自身の限界と向き合って戦ってきたお前なら分かるはずだ」
シルバーマント「ここで、お前はエビルマージと戦うべきなのだ」
シルバーマント「ブラッドソードの奴がお前を買っているのも、セイバー……いや、店員、お前が特別だからだ」
シルバーマント「見せつけてみろ、私に、そしてお前が憎んできた『出来ないこと』に」
シルバーマント「逃げずに戦い続けてきたお前の強さを奴等の脳髄に切り込んでやれ」
店員「…………」
763 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/27(土) 11:46:20.63 ID:uGE1Alt4o
────────── ッ・・・ォォン
男「……っ!」
遠くから聴こえてきた轟音に、それまで雨の音を聞いていた体が反応する。
俺は、主任を追いかける事が出来ずに何をしているのだろう。
男「ぁぁぁ……あああああっ!!!」
男「どうしろってんだよ!! どうすりゃいいんだよ!!」
分かっている、分かっているのに、ここに来て俺は壊れてしまった。
思えば最初から俺は英雄願望や主任のような復讐の為に戦っていたのではない。
俺は、全てをゲームとして見てきていた。
だってその筈だ、これはドラゴンクエストだ。
スライムと戦った。
ドラキーと戦った。
さまようよろいとも、ホイミスライムとも戦った。
どのモンスターも、化け物だったし、どの戦いも痛かったし苦しかった、何度も心臓が止まるかと思った。
死ぬ事が怖くて、死なないように慎重にレベル上げをしていた。
改めて旧作から新作に至るまでのドラゴンクエストシリーズを調べた。
改めてゲームをプレイした。
俺は、『ずっと自分ではない者として生きていた』。
男「お、俺は……っ、俺はぁ!!」
俺は、『ずっと一人で戦っていた』。
男「糞ォ……くそぉ……ッ!!」ガクッ
なのに、どうしたらいいのだろうか。
いつの間にか独りで居た部屋から、見知らぬ部屋に連れ込まれた。
そんな中で俺は何を為せば良いのだろう?
何がしたかったのだろう。
男「もう……俺は……」
764 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/27(土) 21:04:01.88 ID:uGE1Alt4o
━━━━━━━━ 【同時刻……主任】
< キィン……キィン……
主任「…………」
主任(……あれは何をしてるの?)
主任(見たことの無いモンスターばかり……それも凄い数、彼等があの光の柱に入って消えていく)
主任(阻止すべきなのかしら……)スッ
< パキッ
主任(っ! しまった……)チラッ
ラゴンヌ【グゥルルルル……ッ】ピクンッ
< 「どうした」
ラゴンヌ【…………】
主任「……!! ……!!」バッ
主任(息を、止めないと……今ここで戦闘になったら……!)
765 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/27(土) 21:19:38.04 ID:uGE1Alt4o
< 「何をしているのだ、早くしろ」
< 「まさか……我が王の命に背く気か」
ラゴンヌ【ッ……クゥン……】フルフルッ
< 「それでいい、お前達は此度の戦いにて最大の要となるのだ」
< 「私では意味がないのでな」
主任(……?)スッ
主任(…………アイツ、は……!)
エビルマージ「ラゴンヌを始めとして、残りの『指揮官』は全員入水しろ」
エビルマージ「既に此方側の国々で計画は始動している、この『ニホン』も今日をもって陥落するのだ」
エビルマージ「さぁ、今こそ儀式の時、行け戦士達よ!!」
< 【【「【 グルゥオオオオオオオオオオオオッ!!!! 】」】】
主任(儀式? 計画? ……日本が、これで終わる?)
主任(それに、なんであそこにエビルマージが……!? 店員さん、彼女は……!)
主任(彼女までアイツに殺られたの? 待って、男さんは……私が置いて来てしまった彼は……)
主任「…………ッ」ギリッ
766 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/28(日) 02:31:18.18 ID:eRud64qJo
おつおつ きててうれしい
767 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/28(日) 18:38:35.91 ID:4IAMM1UTo
エビルマージ「……ほう、確かに此処へ汚いネズミが入らぬよう配置していた『私』が敗れたのは知っていたが」
────────── ヒュンッ
パシッ!!
エビルマージ「毒の塗り方も知らぬようなこちら側の人間に突破を許すとはな、『私』も少々驕りが過ぎていたかな?」
エビルマージは多くのモンスター達が光の柱へ入っていく中、木々の隙間から飛来した小刀を振り返りもせず、素手で掴み取る。
そして間髪入れずに小刀を放り投げると、上下から氷塊が生み出されて粉々にそれを砕いてしまう。
緑衣の中から視線を背後の森林に向け、その先の木陰にいた人間の女を見た。
長い黒髪は乱れ、前に垂れて表情は見えないが、女の全身から伝わる気配は認識出来ていた。
そこにあるのは殺意。
エビルマージ「仲間も無しによくもここへ姿を現せたものだ」
エビルマージ「それでどうするのだ? ナイフを投擲して終わりか?」
パキパキパキッ……!!
エビルマージ「儀式を続けろ、あの人間は私が『観客』に仕上げてやる」
周囲のモンスター達がエビルマージの様子に一瞬気をとられるも、その言葉で光に包まれては消えていく。
その光景に、左右に氷塊を生み出したエビルマージを主任は睨み付けた。
主任「…………」ザッ…ザッ…
主任「『ピオリム』、『スカラ』」キィンッ
全身を光の膜で包み主任はついに森林を抜けてエビルマージに向かっていく。
その手にはベルトから引き抜いた新たなナイフが握られていた。
768 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/28(日) 21:00:05.53 ID:4IAMM1UTo
エビルマージ(あれで『私』を倒したとは考え難い、他の地区から集まった他の『私』が敵を消している頃の筈)
エビルマージ「……まぁ良い、あの女にはこの儀式による絶望を直に味わえばいい」
エビルマージ「それこそが我が王の意思なのだから」
補助呪文を唱えて近付いてくる主任を捉えて、エビルマージの左右に浮いていた氷塊が動き出す。
主任「『ヒャダルコ』ォォッ!!」
ザザァッ……!!
攻撃に移ろうとする事を予感した主任が、即座に咆哮した。
─────── キィンッ!!
エビルマージ「ほう、『ヒャダルコ』を唱えられるとは我等の知識を扱える者か」
天を仰ぎ見たエビルマージは静かに感心を示す。
エビルマージ「だが所詮は使うだけが限界の凡人よな……?」
空気中の水分が微かに震え、エビルマージの頭上にサッカーボール大の氷結晶が生み出される。
直後に襲うのは無数の氷の刃が爆発的に辺りを満たすのみ。
それを、エビルマージは ” 知っていた ”
769 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/29(月) 03:31:05.47 ID:+QtCciIvO
乙
770 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/29(月) 06:10:03.78 ID:UQ6UXNVuo
< バキィッ……
ガシャァアッ!!
エビルマージ「『ヒャド』」ズザァッ
主任の『ヒャダルコ』による魔法を緑衣の魔導師は涼しげに一蹴する。
その際に使った呪文は氷結系最下位の『ヒャド』。
左右に浮いていた氷塊がエビルマージの居た位置を細い氷柱を無数に広げる事で、『ヒャダルコ』による刃を全て防いだのだ。
< ダッ!!
主任「『バギ』ィッ!!」
防がれる事を予想していた主任の手がタクトを振るように薙がれる。
エビルマージ「『ヒャド』」
指先の軌跡に合わせて発生する風の刃が突風を撒き散らしてエビルマージを捉えた。
しかし、そこに割り込む形でエビルマージの前に氷の壁が地中から突き出た。
───────── ガシャンッ!!
相殺である。
主任の放った『バギ』では傷一つ付けられず、エビルマージに氷壁の破片を散らす事しかできない。
だが粉砕された氷壁の向こうから飛び出したのは。
エビルマージ「……!」
主任「うぁぁぁぁッ!!」バッ……!
ビュッッ!!
771 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/29(月) 06:34:11.69 ID:UQ6UXNVuo
主任は一つ、エビルマージを誤解していた。
それまでの彼女にとって、エビルマージというモンスターは自分よりも遥かに呪文に長けていて、恐るべき強さだと認識していた。
その上に油断もしない。
主任の使える魔法の悉くを撃ち落とし、余裕を持って撃破しようとするだろう。
そこまでは彼女の認識で間違いなかったのだ。
その先である。
「遅い」
主任「っ!?」
< ガシィッ
既に疲弊し、魔力が尽きかけた彼女は全力で魔法を撃つことでエビルマージの視界を奪う。
その隙に彼女は接近戦を挑もうとしていたのだ。
ステータスは調べていた、エビルマージの近接戦となった場合の能力は恐らくレベル10程度の戦士のパラメーターらしいと。
故に主任はエビルマージを捉えてそこへ一撃を加えた。
それこそが間違い。
主任(は、離れない……引き剥がせない!?)
< ミシミシミシ……ッ
魔法使いのイメージと、ネット上にある『あくまで解析されただけのデータ』。
そんな物で八魔将の一人を量った事が、そもそもの間違いだったのだ。
エビルマージは『弱くない』。
ドゴッ!!
主任「げ……ッぁ、うぁ……ッ……」グラッ……!
772 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/29(月) 06:57:15.33 ID:UQ6UXNVuo
ドサァッ!
エビルマージ「ふむ、私を相手に接近戦で挑む発想は買ってやろう」ザッ…ザッ…
エビルマージ「だが貴様では力不足だったな?」
呪文すら使わずに魔力を溜めて至近距離で撃っただけ、その光弾だけで主任の意識が途絶えようとしていた。
主任「ぐぅ……ッ、げほっ! ガフッ! ……え、エビルマージ!」
< チャキッ
それでも、主任はナイフを手放す事なくその切っ先を向けた。
エビルマージ「ふ……なら」
緑衣の中から伝わる嘲笑。
エビルマージ「『メラミ』」
直後。
主任の眼前で 太陽が弾けた 。
ギュボォッ・・・!!
主任「ぇ ッ ッ
────────── ドッッ…… ゴォォオッ!!
自身の出した悲鳴が耳に届かない程の爆発と、全身を殴られたような激痛、そして浮遊感。
津波に飲まれたかのように投げ出され転がっていく彼女が止まった時、既にその意識は切れていた。
773 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/29(月) 11:28:05.01 ID:M14w85d3o
己の力を過信しすぎたな
774 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/29(月) 13:54:41.55 ID:hkcruBCFo
更新きてた
775 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/29(月) 23:07:13.89 ID:xyYEVhRmO
乙
776 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/30(火) 01:18:09.08 ID:6JFLvN2lo
━━━━━━━━ 【其処に居た者】
男「もう……俺は…………」
「大丈夫だよ」
男「……俺は、大丈夫……?」
「大丈夫」
「ほら、ゆっくり……深く息を吸って……」
男「…………すー……」
「ゆっくり吐いて……」
「そうだ、雨降ってるんだから空を見上げて深呼吸したほうが良いよ」
「君は ”いつも” 追い詰められた時、自分が〜とか、それに対して理由が〜とか、考え過ぎだよ」
男「…………」
「ね、人を助ける時に頭で考えながら助けようとしてない?」
「男くんは何でも頭で考えてから行動しようとする」
「一ヶ月以上前、ホテルで女の人を助けたよね? あの時は何も考えずに動けてたじゃない」
「あれで良いんだよ」
男「……だけど、俺は主任のような戦う理由なんて……」
「ほら、直ぐ理由を探しちゃう」
男「……!」
「確かに君は最初の一ヶ月は色々な人を見殺しにしたかもしれないね」
「きっと一人くらいは君が手を引けば助かったかもしれない」
「でもね、きっとその結末は酷い事になってたの」
「だから私が君の心に干渉した」
「全部私のせいなんだよ、男くん」
男「…………」スッ
男「君は……誰だ…………」
──────────・・・
男(……誰も、いない……)
男「…………」
777 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/30(火) 03:16:05.38 ID:6JFLvN2lo
───── 体が、冷たい…… ─────
───── 手足の感覚が無い……? ─────
主任「…………ぅ……ぁ、ああぁ……!!」ビクッ
主任「やだ……何これ、体が氷の中に……や、やだ……動かない……!?」ググッ……
< 「動かぬ方が身のためだぞ? 人間の女よ」
主任「……っ、エビルマー…ジ!」
エビルマージ「貴様には特別席を作ってやったのだ、そこでこの儀式を見届けるがいい」
主任「殺してやる!! 絶対に、皆の仇を……ッ! あぁあぁあああ!! 体が、動かない、なんでなんでなんで……!!」グググ……
エビルマージ「威勢が良いな、そして何より貴様のような怒りと憎しみに満ちた人間は実に我が王の好みでもある」
エビルマージ「くく……さぁいよいよだ、『門』はこれで最後の鍵が解かれる事になる」
エビルマージ「今日この日によって、世界は我が王の物となるのだ! さぁ、今こそ此処に!」バッ!
──────── カッッ!!
主任(エビルマージが、自分から光の中に……!?)
778 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/30(火) 03:20:55.07 ID:2KPq6CygO
まだ続いてたんだなこのスレ…
779 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/30(火) 03:22:45.57 ID:6JFLvN2lo
━━━━━━━━ 【数多くの力を持った者達よ】 ━━━━━━━━
━━━━━━━━ 【異界にて血を流し倒れた者達よ】 ━━━━━━━━
━━━━━━━━ 【そして、『それを知った』人間達よ】 ━━━━━━━━
━━━━━━━━ 【我等を率いるは死の果てを夢に見し真の絶望を知る者】 ━━━━━━━━
━━━━━━━━ 【闇の奥深くに飲まれた者】 ━━━━━━━━
━━━━━━ 【我が王、そしてかつて我等を生んだ『ゾーマ』の二つの名の下に完全なる顕現を果たせ】 ━━━━━━
━━━━━━━━ 【来たれ、『八魔将』ども……!!】 ━━━━━━━━
780 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/30(火) 03:38:59.61 ID:6JFLvN2lo
【アメリカ・ニューヨーク】
兵士「軍曹! ビル上空にあった球体、さっきから光ってたと思ったら……空に『穴』が!!」
軍曹「援軍はまだなのか……こっちゃ、戦車歩兵全滅、支援無しであのフロストマンと戦ってるってのに!」
軍曹「『エビルマージ』なんてふざけた名前しやがって!! アメリカ陸軍の力を見せてやるぜあのやろう!」
中佐「それ以前の問題だ……」
軍曹「は?」
中佐「あれを見ろ……」
兵士「……」ガシャッ
軍曹「な……」
軍曹「なんだ、ありゃ…………」
781 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/30(火) 08:27:35.56 ID:6JFLvN2lo
【イギリス・ロンドン】
魔物使い「……なるほど、あれが魔王軍最高幹部にして最強戦力かね」
魔物使い「どう思う、スラリン」
スラリン「ボク達のいた世界のモンスターじゃないと思う」
魔物使い「そうなのかい」
スラリン「『アイツ』はね、本体の親玉だけならボク一匹で大丈夫だと思う」
スラリン「けど、どう見ても『アイツ』は単騎の強さが売りじゃないよ」
魔物使い「だろうね」
魔物使い(まだレベルの低い女児殿と父親殿には避難して貰ったが、数の不利を覆すには必要だったか)
魔物使い(だが)
< ザッ……
魔物使い「貴方の出番の様です」
魔物使い「『サマルトリア王子』」
サマル王子「ああ、後方支援は任せたよ」
魔物使い「イギリス王室の方々は何か言っていましたか?」
サマル王子「いつも通りだよ、『頼む』ってね」
サマル王子「勿論、答えは『はい』さ」ニッ
782 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/30(火) 08:49:24.16 ID:6JFLvN2lo
【エジプト・カイロ】
エビルマージ「ば、馬鹿な……何故ここに貴様等がいる! こちら側に来るには力が大きすぎる筈だ!」
< 「そうですね、確かに今の私や他の『王子達』も力が半減しています」
< 「でもそれだけですから、その程度なら私達は必ず貴方達を倒して見せる」
エビルマージ「おのれおのれェッ……!! だが果たしてそうかな? 既に儀式は完成しているのだからなぁ!」
< 「!」
< 「『衣の残滓』……? 何故、あんなに広がって……」
エビルマージ「『マヒャド』ォッ!!」
< 「『イオナズン』」キィンッ
━━━━━━━━ ドドドドドドドォォオオオッッ・・・!!!
エビルマージ「が……ハッ…………」
< ドサッ
< 「……」
< (全身がピリピリする)
< (恐らくは魔王軍の最高戦力、『八魔将』ですね)
< (私一人でどうにか出来るとは思えないけど、大丈夫……)
< (きっと、『彼』が何とかしてくれる)
783 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/30(火) 14:17:40.93 ID:6JFLvN2lo
─────── 空が割れる光景を見たことのある者が、いったいどれだけ居るだろうか。
天高く伸びる光の柱。
見る者全てが畏怖を、或いは荘厳な光景に感動すら覚えていた。
その光が何を糧として輝いているのかも知らずに。
キィイイイイッ
建物に隠れていた者、布団に潜っていた者、モンスターと戦っていた者。
何処にいようと、耳を塞ごうと、誰もがその金属を引き裂く様な音を聞いていた。
当然、中には何事かと外を見る者が現れる。
そして誰もが皆、自分の目を疑うことになるのだ。
主任(光の柱の頂点が黒くなって……っ!? そこから空が割れて……!?)
眼前で眩い極光を放つ柱と、その遥か上空で曇り空に塗られる異物感に、主任は息を飲む事しか出来ないでいた。
何か恐ろしい事が起きているのは間違いないのに、何も出来ず見ているだけしか出来ない。
主任は冷たくなっていく身体を必死に動かそうとしながら唇を噛み締める。
そして、その時。
何かが音も無く大気を激しく揺さぶって、闇に裂かれた天空から飛び出した。
784 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/30(火) 14:41:34.70 ID:6JFLvN2lo
ビュッッ・・・ゥゥゥンッ ━━━━━━━━
━━━━━━━━ ズンッ・・・!!!
降り立った巨大な岩山、主任の目に映ったのはそんな馬鹿げた光景だった。
数十メートルの距離が開いていたにも関わらず、天空から降ってきたその巨体を中心に土砂の津波が周囲を巻き込み吹き飛ばしていく。
その衝撃波によって、主任を拘束していた氷の結晶が粉砕される。
しかし、彼女の華奢な肉体も周囲の樹木や土砂と同じく、為す術も無く投げ出されてしまう。
主任「きゃぁぁあっ!!」
手足の感覚が未だ重度の凍傷により麻痺していたせいで、受け身を取ることもできず数回に渡って全身を打ち付けながら森林公園の出入口近くまで吹き飛ばされてしまった。
凄まじい衝撃波による破壊の波は森林公園の樹木をほぼ全て薙ぎ倒していた。
785 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/30(火) 15:09:47.61 ID:6JFLvN2lo
< ゴゴゴゴォ・・・ォォ・・・
地響きが雨の降る街に響き渡る。
衝撃波は既に止んでいたが、何かが降り立った位置を中心に広がって倒れていった樹木がまだ転がっていたのだ。
< ズズッ……ドシャッ
その土砂と枝葉に埋まった小さな丘の中から、髪も服も血と泥に塗れた主任が這い出てくる。
主任「はー……はー…………」
主任(途中から訳も分からずに『ホイミ』を連続で唱えたのに、身体中が痛い……)
主任(……さっきのは、何? 空から、なにが……)ググッ…
ズンッ
ズンッッ……
不意に、それは背後から聴こえてきた。
主任「…………」
主任「……え」
見上げるまでもない。
振り向くまでもない。
うっすらと自身を覆う巨大な影のシルエットで分かってしまったのだ。
そして、彼女は間抜けな声を漏らして背後へと首を回した。
ダークトロル「何だ、まだ生きているじゃないか」
786 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/30(火) 16:32:26.08 ID:6JFLvN2lo
主任「……っ…、っ……」
初めてだった。
かつて、二ヶ月前に彼女は人生初めての『死』を間近に感じた時。
あの時は自身を守る事とエビルマージが見せた信じ難い非日常を受け止めるので精一杯だった。
そんな主任は今、まさにそれを遥かに上回る恐怖に直面していた。
耳元で鳴り響く「ひゅー……ひゅー」という音が、自身の喉から鳴っているものとは気付かない程に。
ダークトロル「その臭い、『アークマージ』の奴の魔法かァ?」
ダークトロル「グフハハハ!! 確か下位種の『エビルマージ』だった筈だろォ! やはりその程度かこちら側の奴等ってのァよ!!」
ジェット機の轟音に匹敵する程の声で笑う巨人。
そう、主任の目の前に居たのは決して敵わないと理解出来る程の巨体。
その体格、体長、約二十メートル以上。
”” 全身が黒く変色した、深緑の肉体 ””
彼女はそれを一度だけ目にしている。
エビルマージを調べていれば、当然の如く目にする同作品における最強のモンスター達。
その中に、確かに居たのだ。
『ボストロール』『トロルキング』『トロルボンバー』、いずれも超える最強種。
主任「ダーク……トロ…ル……」
787 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/30(火) 16:45:16.04 ID:6JFLvN2lo
(動けない……)
主任「……ヒュー……」
(モンスターは全て根絶やしにしてみせる)
(そう、私はあの夜に約束したのに)
主任「ヒュー……」
(無理だ)
(私は死にたくない、死にたくないよ)
(いやだよ、助けて)
主任「は、は……ははは…………」ポロポロ…
ダークトロル「……戦う意志も無いムシケラか、つまらんなァ」
< ズシッ……
(逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ)
主任「はは…は……戦わなきゃ、たおさな……きゃ……」
(無理だよ逃げなきゃ死んじゃう、あの時に見た『あの人達』みたいな死に方はいやだよ)
主任「ひ、ヒャダルコ……」
(もう魔力もないのに、勝てるわけない)
(手が、せまってきてる……よ……)
主任「っ……! わあぁぁぁっ!!!」ガバッ
788 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/30(火) 17:32:04.15 ID:6JFLvN2lo
───────── 【『兜割り』】!! ─────────
ドゥンッッ!!
< ズザザァァッ……!
主任「…………っ」ガタガタガタ…ッ
主任「……?」ガタガタ…ッ
(まだ……生きてる……?)
(なんで、誰が助けてくれたの…………)
< 「……」
< 「すんません、遅れました主任」
主任「え……?」スッ…
男「追いかけるの、遅くなってすいません」
男「時間は俺が稼ぎます……どのくらい稼げるかは分かんないッスけど、主任が逃げる時間はどうにかするんで」チャキッ
主任「お……男さん、生きてたんですか……」
男「酷いなその反応、いやまぁさっきの爆風で死にかけはしましたけどね」
男「まあとりあえず……行ってくれ、主任」
主任「…でも………私」ポロポロ…
男「……ほんと、ごめん、すいませんでした」
男「後は任せろ」
789 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/31(水) 02:47:03.70 ID:z1EqKGVmO
乙
790 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/08/31(水) 10:39:35.79 ID:NtL6CiCjo
……突然の爆風によって巻き上がった土砂と樹木が殺到してきた時は、流石にそれまでの出来事を忘れて肝を冷やした。
ただ、おかげで頭の中がよりスッキリしたのも確かだった。
やるべき事も、その為に必要な物が何なのかも。
だから俺はこうして主任の前に立っている。
男「さて……」ギシッ
今日ほど手の中にある鋼の剣が頼り無いと思ったことは無い。
それこそ戦車とかミサイルが欲しい。
先程の爆風がこのボストロールらしきモンスターの仕業なら、まず勝ち目は無い。
そもそもの次元が違う。
まず第一に、さっき主任を庇う為に放った『兜割り』だ。
気配を探る様子も無く、倒壊した樹木の陰から一気に跳躍しての奇襲だったのだ、あれは。
それを何の冗談なのかガンダムみたいな巨体で瞬時に後方へ回避されてしまったのだ。
男(……話が違うぜ、おい)
男(じごくのよろいが嘘を言ったとして、そこにメリットは無い)
男(八魔将なんて如何にも低レベルじゃ勝てない相手の情報を偽ったって、意味無いだろうしな)
男(…………つまり、八魔将の存在を隠すだけじゃなく、対策すらされないようにしてやがったわけだ)
男(勇者対策か? にしても……トロル系ってのはこんなデカイのかよ……巨デブかと思ってたっての)
男(あの巨体で俺より速いとか……)
791 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/01(木) 00:10:29.29 ID:Nuup6NYHo
サイズ差で狙われ難いのがせめてもの利点か
792 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/01(木) 02:11:42.62 ID:1caPeOLgO
乙
793 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/01(木) 08:07:36.95 ID:7OaRX/6AO
乙
791はゲームやアニメの見過ぎだぞ。
サイズ差あるなら小さい方は大きい方より速く動けないと、攻撃範囲から脱出できない。
人間が蟻に攻撃しようとして、避けられるようなもんだぞ。
794 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/15(木) 08:41:18.49 ID:GJwfuElso
保守
795 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/16(金) 01:23:13.10 ID:h5qfoOlK0
どっかの16体の虚像ぐらいだったらワンチャンあったかもだけどなぁ。
トランザムしてるガンダムとなるとキツイか?
でも相手ガンダムみたいなやつなら、どうなんだろうか...w
796 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/17(土) 02:07:31.67 ID:yStdlPGTo
保守
797 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/01(土) 02:06:37.79 ID:xlXlMS8go
保守
798 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/12(水) 17:12:41.45 ID:oPHNvqyJo
ほ
799 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/14(金) 18:19:04.47 ID:j0xM/BZRo
ダークトロル「……お前、何者だァ」
< ズッ……ンッ
ダークトロル「ただの人間じゃ無いのは確かだ、てめえ……」
不意に、話し掛けてきたボストロールらしきモンスターを前に。
俺は思わず聞いてしまった。
男「もしかして見えてるのか、俺のレベルが……?」
ズンッッ……
ゴッッ!!!
───────── それが油断を誘う言葉だと気付くよりも先に、足元が揺らいだ。
男(マ…ジ……か……ッ!?)
反射的に全身を奮い立たせて右へ跳躍。
だが、それすら遅い。
黒い巨人が踏み込んできたと思った瞬間。
たったそれだけで、莫大な衝撃を撒き散らして俺の真横に巨体が飛んできたのだ。
────────── ズンッ・・・ゴゴゴゴォォッ!!
男「うぉおおおおぁぁあっ!!?」ブワァッ
男(速い、しかもただの体当たりがなんだこの威力……ッ!?)ドザァァッ…!
視界が二転三転と、地面とボストロールらしきモンスターを映しながら身体を打ち付ける。
頭に響くような鈍痛。
それを上回る化け物の脅威。
今このとき、俺は間違いなく追い詰められていた。
男(……けど、そこまで絶望的じゃない)
800 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/10/14(金) 20:35:46.82 ID:j0xM/BZRo
ギュッ……
────────── ォォオンッッ!!
横殴りの暴風が迫るのが分かった時、俺は体勢を立て直す。
そちらへ視線を向ける事は諦めて祈るように再び宙へ身を躍らせた。
< ゴォッッ!!
男「ッ……!! 全力で避けても、飛ばされっ……っ!」ブワァッ
周囲に倒されていた樹木と土砂が巻き上がり、それらに弾かれるように俺も吹き飛ばされてしまう。
だがこれで、確認したい事は確認出来た。
当たり前だと言われればそれまで。
しかし『無駄撃ち』が避けられるならば、この状況から逃走する事が容易になるのだから。
< ガツッ……!
ドサッ! ゴロゴロッ……ズサァッ…!
男「嘗めるなよ、ボストロールゥッ!!」バッ!
奴から受ける攻撃を悉く俺が回避できたのは、速さとは別に『大きいからこその出方』を予測出来たからに他ならない。
単純に考えれば見えてくる。
俺がこの八魔将から逃げ切るのに必要なのは ”” 視界から逃れる事 ”” が先決なのだ。
蹴るべき小石が視界から消えれば蹴るのを断念するように。
虫を踏み潰そうとして予期せぬ目潰しに会って見失うかのように。
男「『メラミ』ィィッ!!」
俺と巨人の八魔将の間に、十数メートルに伸びる業火の柱が立ち上る ────── !!
801 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/14(金) 21:39:40.48 ID:BKduNcBAO
続きだ!
待ってました!
802 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/14(金) 22:39:28.72 ID:Q3uWzGhYo
!
803 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/15(土) 09:11:48.47 ID:pkZ2Escpo
おつ!
804 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/10/17(月) 00:47:10.57 ID:IelBXUjk0
メラミが使えるようになるとか末期通り越してるんですけどなんて呼べばいいのか
おつ
805 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/03(木) 20:32:28.15 ID:9WFwGrNAO
保守
806 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/12(土) 14:20:10.64 ID:8boie14go
ほ
807 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/22(火) 17:04:03.76 ID:GLtQWC7P0
保守
808 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/02(金) 16:02:53.42 ID:eIpL/GFfO
早くしないと2ヶ月経っちゃうよ
809 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/12/10(土) 10:53:12.50 ID:FHqSIM9mO
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