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男「……いよいよメラが使える様になるとか末期だな俺は」
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202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/02/05(木) 18:41:48.57 ID:WzEZ/mrLO
主任「これは逃げている最中に気づいたのだけど、まずエビルマージはいなかったんです」
主任「もしかしたら『何か』と戦って倒されたか……満足したか、とにかく戻ってくる事はありませんでした」
主任「それだけでなく、死神は魔法で生み出された氷の塊である壁を通り抜ける事が出来ないんです」
男「あ……! ならあのマンションのほぼ全体が氷に覆われていたのは……」
主任「私が死神達を閉じ込める為に、何時間もかけて『ヒャド』を撃ったからかな」
男「エビルマージかと……アイツならやれそうな実力はあった」
主任「そうなんですか?」
男「あとでエビルマージのwikiを見せるけど、かなり強いボスモンスタークラスの脅威はあるっすよ」
男「……次に見ても、もう近づくのも止めた方が良いと思います」
主任「……」コクン
主任「それで、私はそれをずっと続けてました」
主任「昼間は薄暗い所に現れるモンスターを倒して、ヒャドに慣れて……出来るなら襲われてる人も助けてました」
主任「『見えない人』にとっては、魔法も見えないらしくて街中でも小声で使えるから魔法は便利です」
主任「せめて、おかしな人だなんて言われないで済むから……」
203 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/02/05(木) 18:49:04.12 ID:WzEZ/mrLO
男「…………」
主任「これで、全部です」
主任「私の1ヶ月が今の短い話に籠められてます」
男「そう、ですか」
主任「敬語は使わなくて良いですよ男さん、落ち着いたら会社を辞めるつもりなんです」
男「えっ」
主任「……分かるんです、日に日にモンスターが人を襲う数が増えてる中で、私だけ生き地獄みたいな理不尽に苦悩させられてるのは意味があるって」
主任「誰も信じてくれない、独りの私にはそうやって考えるしか正気を保てなかったんです」
男「主任」
主任「はい?」
男「主任は俺なんかより……」
< 「嫌ぁぁああああああああああ!!!!」
男・主任「「!!」」
204 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/02/05(木) 18:55:34.81 ID:WzEZ/mrLO
女性「ひ、ひぃぃ……」ガタガタガタ…ッ
< ガチャッ!
男「今のは!?」
女性「っ、たすけて……たすけてぇぇえ……っ!!」ガシィ!
男「おわっ、落ち着いて! 何がおき……」
主任「男さん!!」バッ
< ガッ!!
男「!?」ドサァッ
────────── ヒュルンッ…………!!
主任「っ……!」
< ズバァッ…ッ
主任「ぁ……あ…………」ドサッ
男「主任 ──────!! 」
205 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/02/05(木) 19:11:14.28 ID:WzEZ/mrLO
……早朝の、様々なビジネスマンや会社員が慌ただしくホテルを後にする中で。
俺のいた位置に崩れ落ちる主任は、叫び声も出せずに、清潔感のある通路の中心に倒れ伏せたまま動かなかった。
切り裂かれた背中からは赤黒く染まりつつある白のカーディガンが見える。
救急車を、呼ばないと………………
───── 「貴方達、私を他のモンスターと一緒にしてないかしらぁ?」 ─────
男「……!!」
嘲笑う様に、そして僅かに怒気を含めた声色で、潰れた女の声が響き渡った。
俺の脇で震える女性は先程と何も変わらない、なら……。
男「モンスターか……ッ」
───── ヴォゥンッ ─────
俺の絞り出した様な言葉と同時に、黒い煙が突然通路の奥で噴き出した。
……否、煙とは全く違う。
その質感はまるで闇、そこから白い仮面の様な物が這い出していたのだ。
死神「あははははは!! 馬鹿な人間……あの氷に覆われた建物から私だけ抜け出て幾つかの氷を割ってある時点で雑魚な訳ないでしょぉおおお??」
早口で叫ぶ、その橙色の衣を纏った……大鎌を構える姿に、俺は目眩と少なくない恐怖心を覚えた。
『しにがみ』。
その名の通りの姿を持った、死神のモンスターだった。
206 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/02/05(木) 19:28:00.91 ID:WzEZ/mrLO
死神が動くよりも先に、俺は脇で震える女性を主任といた客室へ放り込む。
男「アンタは警察を呼んでくれ!! こっちの女性も……出来る限りの止血と、これを傷口に!」
突然の事に茫然としかける女性に怒鳴り付けると、即座に主任を女性に渡す。
そして、二枚の大きな新緑の葉を渡した。
まだ試した事はなかった、『やくそう』だった。
男「……」
< チャキッ
男(……鋼の剣まで通されたら厄介な事この上ないけど、多分それはない)
男(さっきの女性が主任にやくそうを使ってくれれば、まだ間に合う)
男(落ち着け、昨夜の醜態をまたここで晒せば今度こそ死ぬ)
男(落ち着け……落ち着
────────── ビュォッ!!
男「!!?」
通路を疾走する橙色の残像を見て、俺は咄嗟にその先に向けて鋼の剣を無闇に振り下ろした。
だが。
< ガギィンッ!!
死神【……シィィ………】ニタァ・・・
男「くっ……ッ!? こい、つ……!!」ギリギリギリ…ッ
鋼の剣という、現実ではかなりの質量を持っている上に切れ味を誇る、ゲームなんかでの序盤では上位の武器。
それを正面から押し込んでくる死神の膂力に俺は通路に膝を着きながら耐えるしかなかった。
化け物、明らかに本来の『しにがみ』のスペックではない気がした。
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/02/05(木) 21:13:10.92 ID:CufjwondO
アイテムって一般人に見え……る?
208 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/02/05(木) 22:02:59.51 ID:1YVDK70oO
待ちきれん乙
209 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/02/05(木) 22:09:25.23 ID:7QoBGuAUo
呪文は見えないけど、アイテムたちは見える?
210 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/02/05(木) 22:13:48.18 ID:5fKInzk3o
いや、鋼の剣とか見えてたら一大事じゃないかな
つーことは薬草も見えてなくて治療もされてない可能性がある
もしかしたら「意図的に巻き込んだ(傷つける、アイテムを触らせる等)場合その対象は見えるようになる」とかあるかもしれんが分からないね
211 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/02/06(金) 00:12:28.53 ID:6UwPlKXn0
時間経過でダメージ受けないからヘーキヘーキ
212 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/02/06(金) 00:27:54.34 ID:ikSS6eXz0
女性はモンスター見えてるんじゃ無かったのか
文盲だったわ
213 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/02/06(金) 09:29:46.24 ID:iNEOjO/8O
手渡したから見えてなくても重さがあればワンチャン
214 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/02/06(金) 19:59:13.83 ID:JcZlcnNbO
一度だけ、想像した事があった。
スライムの早さ、強さは人間を一撃で叩き伏せる位の力があった。
ならば、それ以上の強さを持つ他のモンスターはどれだけ強いのだろう、と。
その答えの僅か一片を見せてきたのが、一ヶ月前に遭遇したさまようよろいとホイミスライムだ。
奴等はただのレベル1の人間にとっては化け物といっていい。
なら。
ならどうなのだろう、もしもこの先でこの地球上に『もう少し強い魔物』が現れたなら。
それは生半可な装備や銃弾では倒せない……最悪のモンスターになるのではないのだろうか。
< ギャリンッ・・・!
男「フゥ……ッ」ズザァッ
死神の大鎌は両刃ではなく、草刈り鎌でも見られる刈り取るタイプの片刃だ。
なら剣を滑らせて懐へ入り込めばいい。
警戒すべきはその早さと純粋な膂力のみ、こいつは魔法は使わない筈だ。
瞬時に踏み込み、刃を死神の空いた懐に叩き込む……
死神【ぁあアッははははハハァアハハハハハハハハ!!!!】ケタケタケタケタケタ
< フワッ……!
男「えっ…………」
死神の狂笑が響き渡った瞬間、俺の振り抜いた一閃は通路の空を斬っただけで終わってしまった。
何故なら、死神の体が床へ煙が溶け込むかのように沈んだからだ。
避けられた。
そう、あの一瞬で俺の剣速より速く避けられたのだ……。
215 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/02/07(土) 23:55:28.14 ID:hRZVLcWmO
おもしれぇぇえ
続きはよ
216 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/02/09(月) 22:45:04.88 ID:WDovWGAY0
これは期待
217 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/02/22(日) 12:51:33.91 ID:onvnu9bko
マダー
218 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/11(水) 14:12:21.12 ID:pT3oRk0Z0
保守
219 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/18(水) 08:18:00.08 ID:BbGbKC5LO
エタらないよね?
220 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/05(日) 16:56:36.54 ID:UK+tDgm80
保守
221 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/05(日) 22:32:54.29 ID:xm5MA5mVO
期待してるんやで
222 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/04/06(月) 10:54:04.05 ID:CcyZ7uVoo
────────── ッ ──────────
完全。
その一瞬で起きた動作は、完全に同時だった。
死神【シィィッ………!!?】
故に、死神は大鎌を空振りさせるに終わってしまう。
眼前で回避した男の動きを見て、僅かにその手を止めてしまったのだ。
それまで彼女が生きてきた『元の世界』では、決してなかった戦術がそこにあったのだから。
死神【………なんだその動きは】
< ヒュパッ
思わず唖然としながら呟いた死神を、俺は眼で追いながら『跳んだ』。
跳躍、反転、跳躍、跳躍、跳躍、反転、跳躍、反転、跳躍、跳躍。
三半規管が狂いそうになるのを必死に抑え、手に握る鋼の剣を最後の跳躍と同時に一閃させた。
男「おぉぉッ!!」
チッッ………!
死神【嘗めるなァッ!!】
男「ッ………!」ズサァァッ! ダンッッ
剣先が死神の橙色の衣を切り裂き、それに激昂した死神の振る大鎌の下を滑り潜った。
正直、その大鎌の動きは見えていない。
俺はそれに臆さず、鎌の軌道を読んで最も安全な位置を走り抜けただけだ。
そして、直後に俺は再び跳躍する。
狭い通路だからこそ、今の俺に出来る技。
天井、壁、床の全方向を足場とした、三次元機動。
全身を猫の様に使い、常に全力での移動速度を維持出来るのだ。
男(……クソ、やっぱり駄目だ……まともにこっちの一振りが当てられない)ダンッッ ダンッッ
男(だがこれならアイツの一撃も当たらない、全力で避けられる……!)
223 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/06(月) 11:56:34.63 ID:SPjA1VMyo
人間やめてるなー
224 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/07(火) 05:25:03.42 ID:DZvbS1MaO
なんだこれクッソ面白いんだけど
期待して待ってるよ。ペースゆっくりでも完結してくれー
225 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/28(火) 17:18:11.21 ID:r52JOKY30
保守
226 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/05/06(水) 07:36:10.20 ID:A2ITqgK1O
ほ
227 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/05/21(木) 00:24:56.20 ID:9bWEKbeF0
続きマダー?
228 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/05/28(木) 14:11:02.00 ID:eUG1FMvb0
ほ
229 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/06(土) 22:42:01.12 ID:HYsRIdDbo
────────── ギィンッ!!
剣と鎌が擦れ違い、火花が散る。
死神【シィィッ!! ちょこまかと……ッ】
瞬時に壁へ、そして床へ、上下の概念さえ忘れる様な機動に死神が激昂していた。
恐るべき膂力を振るい、大鎌が薙がれるも……その全てを俺の剣が弾いている。
純粋な力でさえ負けているのだ。
速度も、恐らく俺は劣っている。
覚えたばかりの『メラ』を撃っても、この死神には通用はしないだろう、際どいとはいえ俺でも多分避ける事は出来るのだから。
男(……とはいえ、このままこれを続けていても……っ!!)ダンッ!!……ダンッ!!
死神が橙の衣を翻して俺の機動を読みながらその先へ鎌を一閃させる。
徐々に迫って来る切っ先を跳躍で避けるも、決定的な一撃は与えられない。
そしてこの状態が続けばそう間もないうちに、俺は最悪の状況に陥る可能性があった。
そう、『三半規管』の酔いだ。
230 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/06(土) 22:53:21.34 ID:w47zEEHG0
キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!
231 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/06(土) 22:58:36.67 ID:J4JT8aEiO
待ってた乙
232 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/08(月) 06:01:48.51 ID:zfBYzSFmO
きたー
まってたー
233 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/14(日) 10:27:39.83 ID:zC2ZC1rvO
待ってたぜ
続きはよ!
234 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/17(水) 19:47:36.02 ID:z2btaUdPo
人が乗り物に酔う理由は様々な要因があるにせよ、根本に関わっているのは三半規管という身体の平衡感覚を担う器官だ。
乗り物に限った事では無い、人によってはその場で十回や二十回と『ゆっくり回る』だけでも酔う事がある。
俺が大学で一度書いた論文で触れた事があった、脳における『速度の』許容範囲。
────────── ダンッ!!
男(ッ!……足、が……っ!?)
……人はその三半規管を鍛える事が出来る。
それも俺はこの日常へ変わってからの一ヶ月間、ずっとパルクール等で体を慣らしていた。
高い所からの着地、急な高低の変化と一定以上の速度を越えた疾走。
超人的だと考えていた俺の肉体は、今や凄まじい三次元機動を実現出来るレベルに到達していた。
だが。
戦闘が始まり、時間にして約4分。
全身を使い衝撃を上手く足を通して逃がしていたのが、遂に着地に失敗したのだ。
男(何故……! 『まだ』酔ってるわけじゃ……)
ゾクッ……!
男「!!」バッ
死神【シィィイッッ!!】ユラァッ
瞬間、着地に失敗し足を止めてしまった俺を狙い響き渡る激昂の声。
衝撃を逃がし切れずに破壊した客室の扉の表面が水面の様に揺らぎ、その向こうから一筋の一閃が薙がれた。
────────── バズッッ!!
235 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/17(水) 20:13:00.34 ID:7B1fsE+E0
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
236 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/17(水) 20:58:15.05 ID:US1RjWQEO
きたーけどまたこれだけかよ
237 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/17(水) 23:53:55.14 ID:z2btaUdPo
ブレる視界。
右腕に走る激痛。
男「ぐぁあああああ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッッ!!!」
< ドサッ!! ズダンッ……!!
通路を直線に吹き飛ばされ、何度か床に叩きつけられた俺は遅れて喉から声を弾き出すしかなかった。
数瞬前、右腕に薙がれた鎌に気づいた俺は……漫画やアニメで見られる『自分から跳ぶ』というのをやってみた。
しかしその効果はまるで感じられない。
痛みが、混乱が、俺をそれまで支えていた気力さえ奪っていく。
男「ぉ、げほっゲホッ……ぉぇえッ……!」
< ビチャァァッ…
男「ぅぐ…ゲホッ……!」
男(なん、だ…? 頭が急に……ッ)
俺は知らなかった。
酔いとは、脳の処理が追い付かずそこで更に『嫌な匂い』『唐突な揺れ』『混乱』『痛み』等で引き起こされる事もある。
それまで抑え込み、死と隣り合わせの機動戦の中で限界に達していた俺の脳は、悲鳴を挙げたのだ。
反動は未だ止まる事なく視界を揺らし、吐き気を誘発している。
死神【随分手こずらせてくれたわねぇ、人間】
死神【実戦経験のある人間は殆どいない、私達を見る事も出来ない奴等だと聞いていたけど……】
死神【まぁ『依り代』は手に入れた、これで数日あればお前達は私達に支配される事になるわぁ】
男「な……何だそれ……?」
男「っ…」ヨロッ
黒い煙に包まれて、死神が通路の中央に降り立つ。
嘲笑い、俺への殺意を滲ませた深紅の眼光を揺らして語りかけてくる。
死神【こちらの世界の戦士にしてはレベルが低い、つまり奴等と会ったのよねぇ?】
死神【答えなさい人間、奴等は何処にいるのかしらぁ】
男「…………」
男(奴……等…?)
238 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/18(木) 11:59:08.83 ID:JcnEtcnwO
立ち上がるより速く、死神は俺へ鎌を振り下ろす事が出来る距離。
俺の眼前へ近づいてきた橙色の衣を纏う化け物が、その白い歪んだ仮面を更に歪ませる。
男「……俺は……何も知らない…本当に、分からないんだ」
揺れる視界を元に戻そうと歯を食い縛り、立ち上がった。
男「お前達こそ、一体何なんだ……! ゲームの中から出てきたのか!! 何が……何が目的なんだよてめぇら!!」
< ピクッ
死神【……ゲーム…だと…?】
口元に付いていた吐瀉物を拭い、右腕に視線を落とす。
激痛が吐き気を、そして次第に冷静さを俺に与えてくる。
今の状況で俺に出来る事を探し出す。
『ガラケーと違って明るいんだな』等と考えながら、俺は死神の意識を此方へ向けさせる為に言葉を探す。
余裕は、無い。
男(は、はは…………)
男「実戦経験が無い奴ばっか? そりゃそうだ、こっちゃ平和な現実なんだよ!」
男「魔王が指示してんのかどうか知らねえがふざけんじゃねぇぞ!!」
死神【……黙りなさい】
< ガッ!
男「ぅぎぃっ!?」
死神【何者だ……我等が『王』の存在を知っているとは、ただの戦士ではないな?】
死神【あの方を何処まで知っている、貴様……】ギロ…
239 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/18(木) 21:43:53.51 ID:apmAkkm2o
巨大な鎌を振り下ろした死神の気配が殺意とは別の物に変化した。
不味い……この位置では『見えない』。
何より再び右腕に突き立てられた刃が肉を抉り、骨に食い込むその痛みに意識さえ手放してしまいそうになった。
男「ぁ"ぁ"ぁ"……っ!! や、やめッ……ろぉおおおお!!!」ガチッ…!
死神【!】
カァンッ……!!
少なくない量の血が右腕を伝い、赤いカーペットの敷かれた通路を更に赤黒く染める中で。
俺は渾身の力で足元に転がっていた鋼の剣の剣先を踏み込んだ。
男(チャンスは、多分一度だけ……!!)ガバァッ!!
死神【なっ…これ程のダメージを受けながらまだ動けるのか?】
ギシッ……!
死神【ッッ!?】
俺との間で起き上がった剣を、驚愕の表情で見る死神。
同時に引き裂こうと動いた鎌を俺の右腕に着けられていた『豪傑の腕輪』で、瞬時に抑えつけたのだ。
そして、起き上がった剣の柄を逆手に掴んだ俺はそれを突き立てた。
血と胃酸で痛む喉を無視して、全力で叫んだ。
男「今だ主任 ────────ッッ!! 」
240 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/19(金) 00:48:04.23 ID:b+IV6Iqjo
おおおおおおおお!
241 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/19(金) 11:26:08.29 ID:4xAsps/3O
──────── バッ!!
主任「『ヒャダルコ』ッ!!」
死神【〜〜っ!!?】
背後の客室から飛び出した主任に、死神の紅い眼光が激しく揺らぐ。
刹那、主任の視線が俺に向くも……俺はそれに首を振って見せた。
彼女は俺が巻き込まれる様な呪文を撃つ気だと、何となく考えたからだ。
だがこのモンスターを仕留めるなら、『鋼の剣でコイツの衣を床に縫い付けている今』しかない。
俺の仮説に間違いはなかった。
死神の透過出来る壁とは違い、俺の振るう剣は透過できない。
奴の透過出来る特性ではこの拘束から抜け出す事は出来ないのだ。
ヒュォオオオオッッ・・・
主任の全力で叫んだ呪文と同時、俺と死神の頭上でサッカーボール大の結晶が形作られる。
橙色の衣を引き裂いてでも抜け出そうと、それまでとはまるで違う焦り様を見せる死神。
そこへ、更に追い撃ちをかける……!
男「『メラ』……っ」
ボォンッ!!
死神【ギ、ギャアアァッ……!! 貴ッ、様ァァア!!】
パキパキパキパキィィ……!!
手を翳す必要が無い事は、これで証明された。
そう俺が思った直後……瞬時に周囲の空気が光の結晶で溢れた。
俺は主任を
━━━━━━━ キィンッ!! バキバキバキバキィィッッッ!!! ━━━━━━━
242 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/19(金) 11:39:03.07 ID:4xAsps/3O
━━━━━━━━ 【何者かの視点】
< バキバキバキバキィィッッッ!!!
死神【…………ッ……ッッ……】パキパキ……
死神【さ、最後の……最期で、『アンタ』に出会すとはねぇ……ッ】パキッ……
死神【あの方に頂いた……っ、『闇』が薄れるから、なるべく使いたくなかった虎の子の呪文……『ラリホー』……】パキッ……
死神【『マホトーン』を使われるとは予想外だったわ……く、ヒヒ……】シュォォオ……
死神【……でも、もう遅い……この戦争は私達の勝利よ…………】シュォォオ……
死神【…………この世界の人間と手を組めないお前達なんて、もう怖くはない……ヒヒァ……恐怖しろ、絶望しろ……狂え、そして死ね……ッッ】
死神【我等が『大魔王』はこの世界で復活するのだから……!!】
────────── ポワァ・・・ン……ッ
「…………」
「……、…………」ボソボソ…
男「……」ジュゥゥ…ッ
「……」
「お疲れ様でした、戦士様方」
< スタスタ……
243 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/19(金) 11:50:17.04 ID:4xAsps/3O
────────── 「……ぁ…れ…?」
────────── 「俺……何してたん…だっけ……」
「……お疲れ様でした…戦士様方」
────────── 「……あ?」
(…………綺麗……な、女の子……?)
(でも、あの耳って……髪色も……もしかして…………妖せ…)
< 「男さん! 男さん!!」
ユサユサッ!
< 「しっかり……! あぁ、血が……『ヒャダルコ』のダメージが『何故か奇跡的に殆どないけど』……右腕からの出血が……!」
(……えー…と、誰だっけか…………)
< 「ごめんなさい、ごめんなさい……! 私、自分に『ホイミ』使って『ヒャダルコ』使ったから、もうMPが……っ」
< 「ぁぁあ……! ぁぁあぁ、だれか! だれか来て!! お願い誰かぁ!」
(……あー…………思い出した)
(この人、あれだ……上司だ…………)
244 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/19(金) 18:34:56.77 ID:sfDmuCtSo
一月の訓練で大金星だな
死戦とボス級の経験はデカイ
245 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/20(土) 10:31:03.09 ID:bmjM/cxqO
乙!
246 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/21(日) 01:09:09.53 ID:09n7vBCtO
愛してる乙
247 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/21(日) 22:02:29.61 ID:9o7l4vE+O
男「……主…任」
主任「男さん!? 良かった気がつい…」
男「…いや……死にそうだ…やばい…」
主任「え……」
男「…………」
男(目がやばい……黒いチカチカが走って……耳が……)
男(なんか足とかガクガクしてるし…………はは、本格的に死ぬかも……)
主任「待って、待って下さい……っ、メラが使えるから、つ、使えるから……っ」
主任「えと、ぁ……あ……」
男(……せっかく綺麗な顔が、台無しだな……ぐ!?)ビキィッ
< ガクガクッ……ガクンッ
主任「!!」
主任(ショック症状が……っ、このままだと本当に死んでしまう……!)
主任「ほ、『ホイミ』!」バッ
男「ぁ…ゥア……ッ」ガクガクッ
主任(だめ……やっぱりMPが足りない、んだと思う……どうしたら、どうしたら……!!)
< 「……その人に、今みたいにしたら…さっきの……魔法、使えば助かるの…?」
主任「……!」
女性「やり方……こうです……か? 『ホイミ』……って」
248 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/22(月) 07:32:19.09 ID:EEvsmogsO
< シーン……
主任(MPが足りてない、のかな…?)
主任(それとも……!)
主任「イメージを、この人の傷を温かいタオルで覆うイメージをして下さい……!」
女性「え……ぇ…?」
主任「焦らないで下さい! ゆっくり傷口に当てるつもりで……!」
女性「…………」
女性「『ホイミ』」
< ポゥ……
男(……あったか……ぃ……)ジュゥゥ…
主任「っ! やった!!」
女性「傷が…治ってる……本当に魔法使えちゃった……」
249 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/22(月) 20:05:24.89 ID:+UXLMnlnO
主任「聴こえますか男さん……まだ、痛い所はありますか…?」
男「ぅ……く、はは……っ」ググッ…
男「なるほど……体力が回復しないけど『HPは回復する』ってこんな感じ…か」ググッ…
主任「大丈夫…?」
男「……全身が痛いっす、傷口なんて無いのに……まるで切り開いた傷を指で無理やり閉じている様な…………」
< ピンコーン♪
< ガー
警備員「君達! 大丈夫か!?」
警備員B「女性と男性が怪我をしています!」
警備員C「おいまずいぞ!」
男(……ホテルの警備員か、どう言い訳するかな)
主任「気を付けて! 『見えないアレ』がこの辺りにいます!!」
男「ちょ、主任……?」
主任「早くエレベーターを開けて戻って下さい!! 早く!!」
警備員B「見えないアレって、テレビのか!?」
警備員C「きっと、この間俺を襲ったやつだ……ひぃぃっ」
警備員「おいバカ野郎! エレベーターを閉じるんじゃねえ!!」
< 「うわぁあ!!」
< ガー
250 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/22(月) 20:28:23.34 ID:+UXLMnlnO
男「…………」
女性「………」
主任「今の世の中なら、『見えない存在が分かる位置』から逃げるのは当然ですよ」
主任「ましてや私達が全員血塗れでは誰でも逃げます」
男「……逞しいな主任」
主任「この歳であの営業課の主任をやるなら、こうでないと」
男「はぁ」
主任「しかし妙ですね…? 警備員が来たということは、監視カメラでもあるんでしょうかここ」
男「有り得なくないな、ってかそれだと俺ヤバくね…? 銃刀法違反だろこれ……」
主任「それなのですが男さん」
男「?」
主任「……私達がモンスターから得たアイテムは、『見える人』以外には触れても何をしても見えません」
男「!?」
主任「よくて男さんが通路を縦横無尽に暴れてる映像しか見えません」
男「!?」
251 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/22(月) 21:34:36.99 ID:9XLPTode0
シュールやん…
まあ見えないアレを振り払おうとしてたって言えばええな
252 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/22(月) 21:48:32.14 ID:zdCSfr92O
そうすると、超人的な動きをしていたのは、見えないアレに振り回されてたって事にするか
253 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/22(月) 22:13:09.47 ID:s305MR790
www
254 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/22(月) 22:26:23.94 ID:kG+DK8EjO
乙ーーーーー!ー
255 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/23(火) 07:29:12.25 ID:pTJz+cqdO
主任「……とりあえず私と男さんは、本格的に警察を呼ばれる前にここを出ましょうか」
男「でもこの人は? 魔法が使えたならもしかして見えるんじゃ」
女性「……見え、る?」
主任「さっきの彼が戦っていた相手が、見えていましたか」
女性「あの黄色い……死神…?」
男(見えてる!?)
主任(よく考えてみれば、最初の悲鳴がモンスターを見てしまったからなのだとすれば有り得ますね)
主任(……でも、それだと私を手当てしていた時のこの女性の行動が説明つかない……)
主任「まぁ……彼女は彼女で、客室に荷物やこのあとの予定があると思いますし」
男「……」
男「じゃあ、その、なんと言えばいいか……」
女性「……そうですね」
男「ありがとう、貴女がいなかったら俺は死んでました」
女性「私もですから、頭を下げないで下さい! こんな事が起こるなんて……魔法? みたいなの使った今も信じられなくて……」
男「…………」
主任「エレベーターが一階からこっちに上がってきてますね、警察かも」
男「うわ、非常階段で出る?」
主任「そうしましょうか」
256 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/23(火) 07:37:48.35 ID:pTJz+cqdO
< ピーポォーピーポォー
< 「退いて下さい! ここは封鎖します! 下がってー!! 」
< 「輸送車がもうじき到着するぞぐずぐずするなぁ!」
< 「警視庁の捜査官は機動隊の方々に『水』をかけろ! 急げ!」
< ウゥゥゥ……! ウゥゥゥ……!
< ピーポォーピーポォー……!
男「……凄い騒ぎだな」
主任「き、機動隊って……もしかして男さん立て籠りだと思われてたりして……」
男「ありえそうで笑えねぇえ……」
主任「冗談ですよ」
男「でもありえそうで笑えねぇえ……」
257 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/23(火) 19:02:49.09 ID:nfFT69itO
一気に来た!
水かけるって事は事態に気付いてる奴らもチラホラ居るのかね
258 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/23(火) 22:21:10.52 ID:pTJz+cqdO
コツッコツッ……
スタスタ……
男「そう言えば会社、どうすっかな」
主任「休みの連絡を入れたらどうかな」
男「携帯、主任のヒャダルコでぶっ壊れたみたいですわこれ」カチカチ
主任「え」
男「……本格的に買い直しかなぁ、これ」
男「っと、あれ……ッ」グラッ
主任「!」
< ガシッ
男「…………頭が、揺れてる」
主任(顔色が悪い…? まださっきの戦いの疲労が出てるのかも)
主任「男さん、何処かで休みませんか?」
男「……」
主任「男さん?」
男「ホテルは懲り懲りっすね」
主任「ちょ、何を言うんですか!」
男「あはは……じゃあ、あの……つまんないもんしかないっすけどさ」
男「俺の家、行かないか…?」
259 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/23(火) 23:22:02.59 ID:zO4ZN0tO0
キターーーーーーーーーーーーーーーーーーー
260 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/24(水) 01:35:47.78 ID:RHwqUBCSo
【自宅】
男「そこが主任に貸す寝室、寝室出て右の突き当たりがトイレね」
主任「一人で一軒家に住んでるの?」
男「いや、妹と暮らしてたよ」
主任「妹さんは?」
男「四年前に事故で亡くなったんだ、両親と一緒に」
主任「……悪いことを聞いちゃったね」
男「気にしないでいいっすよ、知らないんだから仕方ない」
男「んで、トイレ横のがバスルーム」
主任「……」
男「えーと……や、やましい事は無いよ」
主任「借りて良いですか?」
男「どうぞ………」
261 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/24(水) 07:22:39.44 ID:RHwqUBCSo
< ザァァア……
男(……タオル置いとくか)バサッ
男(女性、それも主任をこの家に泊めるなんてなぁ……人生ってわかんねーや)
男(……っ…)ヨロッ
< ドサァッ! ピッ
男「いってー……さっきから定期的に頭がぐわんぐわんする……」
< 『……機動隊が出動し、一時騒然となり…………』
< 『監視カメラのこの異常な映像から、男性の身元を調査中』
< 『なお現場にいた女性は現在警察が保護しており、詳しい状況を聞いているとの事です』
男「これ……やっぱりホテルかぁ……やべぇな、仕事クビどころか捕まるんじゃ……」
男(他のチャンネル見んのこええな)ピッ
< 『臨時ニュースです、本日都内のホテルで信じられない事が起きました』
< 『今からお見せする映像は、ホテルの宿泊客がスマホで録画したものです、CGは使われていません』
男(…………え?)
262 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/24(水) 07:49:30.52 ID:RHwqUBCSo
……いつからだったのだろうか。
RPG『ドラゴンクエスト』の世界を半ば楽しむ程度の認識だったのは。
戦う事で強くなれる、その考えと知識がそうさせたのかもしれない。
そして何より俺は自分は頭がおかしいと思っていた。
だが。
< 【ぁあアッははははハハァアハハハハハハハハ!!!!】ケタケタケタケタケタ
< ビュッッ!! ダンッッガガガガガガダダダッガガガガッッッッ
< 「ぐっ、ぉおおおおおおお!!!」ダダダダッッ
男(な、んだ…………これ………………)ズルッ…
< 【嘗めるなァッ!!】
< 「ッ……!」ズサァァッ! ダンッ!!
< ガギィンッッ ドゴォッ!! ダダダダダダガガガガガガガガガガッッッッ
< ダァンッッッ!!!
< ビュッッ!!
< 「ひ、ひぃいっ!?」ガタガタゴトゴトッ!
< 『最後にアップで映った黄色の死神を見た撮影者の男性は、身の危険を感じてベランダから通報したそうです』
< 『この信じられない光景を撮影した男性は、「女性の悲鳴が聴こえたので通路を覗くと別の女性が黄色の衣を着た仮面の女に鎌で切りつけられていた」と証言しており』
< 『現場に残された多量の血痕から他の女性の存在は明らかであり、この映像の後にどうなったかを男性から聴取しているとの事です』
< 『繰り返しますが、今の映像にCGは使われていません』
< 『彼は何者なのか、また彼が見えない何かを振って応戦していたこの尋常ではない壁を高速ですり抜け、男性に襲い掛かっている女性らしき人物』
< 『一体何が起きていたのでしょうか』
男(…………は…は、ははは……)ドサッ
男(何で、何でだ……)
男(何で見えている……モンスターが何で他の人達にも見えてるんだ!?)
263 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/24(水) 08:06:41.33 ID:RHwqUBCSo
< ガチャッ
主任「シャツまで貸してもらってすいません」
主任「……男さん?」
男「…………」
主任「どうかしたんですか? 大丈夫…?」
男「主任……ニュース見てくれ」
主任「ニュース、ですか」ピッ
< 『……で、男性を襲ったこの人間らしき存在はもしかしたら今世界で起きている見えざる事象を……』
主任「これ……!!」
男「見えて……る」
男「あのホテルで会った女性が特別な訳じゃなかった、『あのモンスターが特別だったんだ』」
主任「見えない人達にも……見える、モンスター……?」
男「……」
主任「でもっ、これで私達は世間の人に受け入れて貰えます! 男さんも私も、見えるモンスターの数が多い程度でしかないんです!」
男「…………」
男(もし他の人達もモンスターが見えるようになって)
男(モンスターの存在が、もしも一般的な認識になったら)
男(俺が見殺しにした事は……罪になるんじゃないか…?)
264 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/24(水) 08:40:34.08 ID:RHwqUBCSo
俺は忘れていた。
初めてスライムに襲われた時に感じた恐怖を、混乱を。
あの痛みから感じた『本物』を。
ゲームを意識するより先に、俺が信じた現実。
そう、現実にゲームのキャラクターは出てこない。
これはゲームではない事を、俺はきっとこの世界で一番早く知っていたのだ。
テレビの中で何度も繰り返される映像は、俺がその現実に居る事を世界が認識を急がせている様に見える。
何より。
何度も聴こえてくる『死神』の笑い声は、まるで俺の苦悩する姿を嘲笑っている風に聴こえた。
俺は崩れ落ちながら確信していた。
もう、俺は戻れないのだと。
265 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/24(水) 08:46:36.87 ID:WH7hmJOa0
ふうむ…
266 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/24(水) 09:14:53.12 ID:RHwqUBCSo
─────【二週間後】─────
────【イギリス:ロンドン……ウェストミンスター大聖堂】────
父親「うわああぁあああっ!!」ブシュゥッ!!
女児「パパー!」
父親「来るなぁ!! 逃げろ、早く逃げろぉお!!」
シルバーデビル【ギキキキ、逃げたらお前のパパ殺しちゃうよぉ…?】メキメキッ……
父親「ぎぃぃぃいいいい……っっ!!!??」
女児「パパー! パパー!!」
シルバーデビル【ギキキキ……ギキキキ……!】
シルバーデビル【『死神』の野郎が見つけた依り代が馴染むぜ、だが顕現位置が違うのはどういうこった?】
父親「ば、化け物めぇ……!」
シルバーデビル【ハン、てめぇら人間はもうおしまいだぜ】
シルバーデビル【余興だ……パパの前でガキごと街を吹き飛ばしてやるよ!】キィィンッ
父親「な、何を……っ」
シルバーデビル【……『イオラ』……】キィィンッ
────────── カッ……!!
< ボォンッッ!!
シルバーデビル【!?】ピタァッ
267 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/24(水) 09:30:00.38 ID:RHwqUBCSo
────────── 「スラリン、スラきちで追撃」
────────── 「スラベエはスクルトを、ホイミンは彼等にべホイミを」
スライム…?「行くよスラきち!」ぴょーんっ
スライム…?B「おう!」ぴょーんっ
──────── 【『スラ・ストライク』ッ!!】 ────────
< ヒュッッ……ズドドォッ!!
シルバーデビル【ご、ごふァッ……!? てめぇ……ら、まさか……】ヨロッ
スライム…?C「皆をまもるよ! 『スクルト』!」
< キィィンッ
ホイミスライム…?「『べホイミ』っ、大丈夫……?」
父親「な、何が起きてるんだ…? 折れていた腕が治っていく……おお、神よ」
ホイミスライム…?「……」
シルバーデビル【くそがぁ!! 『イオ』!】キィィンッ
スライム…?「させない! 『スラ・ストライク』ッ!!」
< ズドォッ!!
シルバーデビル【ッッ……カハァ……!!】ドシャァアッ
────────── ポワァ・・・ン……ッ
268 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/24(水) 10:41:10.98 ID:26y/yp1WO
父親「はぁ……はぁ……、恐ろしい化け物だった……」
女児「パパ! こわかったよぉ……!」
父親「ああよかった、お前が無事で……」
女児「あの子たちなーに?」
父親「……ん? 何の事だ」
スライム…?B「あの娘見えてんのかー?」
スライム…?「そうみたい」
「……シルバーデビルの魔法による干渉の影響は受けていない筈だね」
「となると、漸く見つけたのかもしれないな」
< スタスタ……
「お怪我はありませんか、異国のお嬢さん」
女児「ほら! パパを助けてくれた人だよ!」
父親「な、何を言ってるんだ女児、何もいないよ」
女児「え? いるよ、ほら! 髪の毛が真っ赤だよ!」
「……見えているのか、僕が」
269 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/24(水) 10:55:05.02 ID:26y/yp1WO
女児「お兄ちゃん、触っていーい?」
「……」
「ああ、構わないよ」
女児「パパー! ほら、手!」ぐいっ
父親「Oh……」
< さわっ……
父親「なっ!?」ビクッ
「なるほど、子供らしい発想とはいえ説得力がある」
「これで僕の存在がやっとこの世界の人間に知られた訳だ」
「『こちらに来て四ヶ月経った』が、仲間と連絡を取れる日も近いな」
女児「?」
「ありがとうお嬢さん」
「実は私はお嬢さん達には見えない、特別な人なんだ」
女児「妖精さんみたいに?」
「そうだね、彼等と違うのは子供のように澄んだ心の持ち主でも私達を見ることが出来ず声が聞こえない」
「今はね」
女児「そうなんだぁ」
父親「女児、いったい誰と話をしてるんだ…?」
女児「妖精のお兄ちゃん!」
父親「!?」
270 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/24(水) 10:58:21.52 ID:qgAzaS8YO
魔法を受けるとDQ世界とチャンネルが合うのか、見えるようになるのかな?
で、男や女児のように先天的に見える人間もいると……
海外ではドラクエの知名度低いらしいしどうなるのかな?
1〜4がdragon warriorでそれ以降はdragon questになるんだっけかな。
271 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/24(水) 11:51:12.18 ID:26y/yp1WO
父親「よ、妖精だって? そんなまさか……」
女児「でも悪いおっきいお猿さんやっつけて助けてくれたよ」
父親「……」
「お嬢さん、私達を見える人間は僅かしかいない」
「そしてお嬢さんしか今は私の言うことが聞こえないんだ、助けて欲しい」
女児「いいよ! 今度は私が助けてあげるの!」
父親「は? え?」
「君のお父さんと話がしたいんだ、私の言うことをゆっくりとでいいから伝えて欲しい」
女児「うん!」
女児「パパ、今から妖精のお兄ちゃんの言うことを伝えるね!」
父親「うむ……」
魔物使い「はじめまして父上殿、私は『ムーンブルク国兵団』遊撃隊の、名は魔物使いと申します」
女児「はじめましてパパ、私はむーんぶるくこくへいだん ゆうげきたいの 、なわ まものつかいともうします」
父親「……」
父親(まずいな聞いたことがない……ネットで調べても出てこないかもしれないが、後で調べるか……)
父親「私はこの子の父親だが、助けてくれてありがとう……助かったよ」
魔物使い「お気になさらず、私は貴方にお願いがあります」
女児「おきにならさず、私はあなたにお願いがあります!」フンス
父親「な、なんですか……?」
魔物使い「共に世界を救うため、手を貸して頂きたい」
272 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/24(水) 12:52:00.91 ID:26y/yp1WO
【アメリカ・ホワイトハウス】
大統領「将軍、ではその日本に居るのかね……」
将軍「情報提供者である『彼等』の話では、連絡を取れる仲間の魔法での探索により一点の方向を指していたそうです」
大統領「それが日本か……ヒーローはまさかサムライではないだろうな」
将軍「そこは何とも言えませんが、『彼等』の話では似ているとのことです」
将軍「日本のテレビゲーム『ドラゴンクエスト』、まさか今の世界に蔓延しつつある化け物どもがゲームの中から出てきているとは思いませんな」
大統領「しかし彼等は異世界として我々のこの世界を認識し、そしてゲームではない場所から確かに来ている」
大統領「将軍、日本政府に等しく情報を」
大統領「そして彼を呼んでくれ」
将軍「ええ……」
将軍「『堀井雄二』ですね」
273 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/24(水) 13:36:34.99 ID:26y/yp1WO
【日本】
部長「辞表、確かに受理しました」
男「今までお世話になりました」
部長「君の事は大学生の時から知っていたが真面目に仕事してくれる良い社員だったよ」
男「そうですか?」
部長「まぁね、主任くんに続いて君もいなくなったら寂しくなるな」
部長「主任くんの所へ君が訪ねて、そして翌日に『マンション殺人』が起きてから君ら二人は会社へ来なくなった」
部長「一体何があったのかな」
男「それは……言えません」
部長「ふむ、そうかね」
男(……人事部、部長…………)
男(アンタ何者だ)
部長「? どうかしたか」
< ォォォォオオオオオオオ……!!
男(……やっぱり、か)
男「いえ、調子が悪いのでこのまま帰ります」
男「お疲れ様でした」
部長「ああ、お疲れさん」
274 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/24(水) 18:52:48.15 ID:1sgSh3khO
ふぉぉお乙
275 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/24(水) 18:58:09.14 ID:vQg6lTsyo
乙
276 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/24(水) 23:42:38.70 ID:RHwqUBCSo
< 「お疲れ様でした男さん」
< 「お疲れ様ーっ」
< 「今度飲み会行こうなー」
男「……」スタスタ
男(……主任が俺と同じく『見える人間』だと分かった、あの二日間)
男(あの後、警察が来たが軽い質問とホテルに関してだけ聞かれて終わった)
男(ただ……主任が1日以上空けた事で、主任が戦い続けていたあのマンションのヒャドが溶けてしまった)
男(……結果は最悪、日本中を本気で恐怖させる殺人事件の出来上がりだ)
男(マンション内の住民はほぼ全員が惨殺、主任が閉じ込めていた死神系のモンスターも街に解放されていた)
男(それを俺と主任がこの二週間近く倒し続けて、やっとこの地域のモンスターは大体狩り尽くしたわけだ)
男(……んで、ついでに辞表‥)
< 「男くん」
男「……」ピタッ
女「あの、ちょっといい……?」
男「女さん…?」
277 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/25(木) 00:20:22.40 ID:D/OYinTAo
< ガチャッ……バタンッ
男(屋上に連れ出されるとは思って無かったなぁ、なんだろ)
女「あのね…? まずちょっと聞きたいんだけど」
男「はい?」
女「男くんってさ、私の事気になってたりするのかな」
男「……んぇぅぇ?」
女「なにいまの」
男「ええ、いやいやいや」
男「異性としてでなら、多少は意識はしますけど特に恋愛感情は……」
女「はぁ? いや、そこまでは聞いてないんだけどね……まいっか」
女「実は今日の夜頼みたい事あるの、いい?」
男「?」
278 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/25(木) 09:35:23.22 ID:2KsnVIBAO
乙です。
まさかスライムもりもりまで出るとは。
279 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/25(木) 14:10:49.04 ID:dZ5P+hsQO
ブオーンが出ないだけまだましだよな あれ出たらもうゴジラの世界だが
280 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/25(木) 20:03:29.08 ID:79DOkp2nO
主任「女さんのボディーガード、ですか?」
男「そうなんすよね、女さんここ二週間近く誰かが仕事帰りに自宅近くの駅からストーカーされてるみたいで」
男「いきなり俺に話をしたのも、時期的に俺が怪しいと思ってたみたいでさ……」
主任「……あはは」
男「はー、仕方ないと言えば仕方ないにしてもここ最近は警察沙汰ばっかで疲れたよ」
主任「そうですね……私が『ここ』にいたせいで余計に迷惑をかけちゃいましたし」
男「ん、それはいいっすよもう」
主任「ありがとう男くん、少し早いけど女さんの退勤に合わせてもう夕食にしちゃう?」
男「お願いします、ええ、お願いします」
男(……この二週間で大きく変わった事はただ一つ)
男(わたくし男めは主任嬢と只今同棲生活をしております)
281 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/25(木) 21:13:26.92 ID:D/OYinTAo
男(今度の週末にお互いに何か適当な昼間の仕事を探すついでに、俺の携帯買いに行くのと映画を観に行く)
男(それはいいけどさ、半分は俺の意図もある)
男(ただ、まさかあれから一緒に住むことになるとはな……)
< 「今夜はパエリアにしますね、サフラン買ってきたので」
男(……『マンション殺人』事件で、ホテルの監視カメラに映っていた俺とマンション内のカメラに手摺から飛び降りた俺が同一だと分かった時)
男(マンション内の住人でもある主任が事件後俺と共に行動して、ましてやあの日から一時的に同棲していた事で何日か聴取された)
男(結果は『それまでの関連性の無さ』と『殺人が起きたのが一ヶ月も前』だったから、他にも理由はありそうだがとりあえず俺は見逃して貰った訳だ)
男(ただ主任はあのマンションに住めなくなった)
男(それが精神的なものからか、それとも警察から何か話をされたのかは知らない)
男(……少なくとも主任が、誰かに何処に住んでいるか知られていない今の方が俺は安全だと思ってる)
男(あの人事部の部長は人間じゃないからだ)
282 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/26(金) 09:24:55.72 ID:VMRfZU6nO
乙!
名作の予感
283 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/26(金) 21:45:44.69 ID:cYpnXNjjO
< ジャラッ
男(信仰する神は関係なく、『教会』のメダルやコインなら何でもいいんだったな)
男(主任が俺を人間か魔物かを試すのに使った方法、それが『聖水』だった)
男(聖水の作成方法は簡単だ)
男(水に教会のコインを沈める、もしくは教会の水道から拝借するだけ)
男(笑ってしまう程に簡単だが、効果は今の世界では絶大な意味を持つ)
男(モンスター……例えばスライムやドラキーにかければ、それだけで即死するからだ)
男(当然、その位に弱いモンスターなら即死させる水を飲ませたら、モンスターならばやはり即死、殺せなくとも正体を現す事になる)
男(俺はこの方法を聞いてから、直ぐに会社にいる部長に試した)
男(あの男が飲もうとしていたコーヒーに聖水を少し混ぜた)
男(結果は、奴が一瞬だけ姿を見せただけで終わった)
男(あのシルエット、全身に蟲が這う様な感覚……『モシャスナイト』なのは明らかだった)
284 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/26(金) 22:05:14.91 ID:cYpnXNjjO
男(本当に僅かな一瞬とはいえ、姿を現した)
男(そしてその正体を見れたのは本当に幸運だったかもしれない)
男(今の俺では勝てるか分からない、ましてや『いつから部長になっていたのか』分からない以上、これからはもう関わらない方が良い)
男(……もし俺が最初に怪しんだ通りの理由で会社へ潜入し成り済まし続けているなら)
男(『敵』に俺や主任の事を知られる訳にはいかない)
男(あのモシャスナイト、もし『主任が見える人間だと分かったから』部長に成り済ましていたのなら)
男(目的は……主任を孤立させる事だった)
< 「少ししたら出来上がるよ」
男「ありがとうございます」
主任「難しい顔をしていたように見えたけど、大丈夫?」
男「俺は問題ないっす」
主任「そう? 無理しないで下さいね」
285 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/27(土) 21:37:05.62 ID:fMvFdDnDo
むこうも単独犯ではなくて、奴等との繋がりを警戒して
孤立させてから始末させるつもりだったって事か
286 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/06/30(火) 12:04:23.25 ID:OtD+U/w60
あれ?これわりと人間側が詰んでないか…?
287 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/06/30(火) 21:24:56.56 ID:IamPxsz+O
男「……強いて言えば」
主任「?」
男「よく聖水の事を思い出したな、って思って」ジャラッ
主任「ああ、最初の頃は私……スライムにも勝てなかったから……」
男「女性だもんなぁ」
主任「それもあるし、流石に包丁やバットを振り回してたら危ない人でしょう?」
男「ま、まぁそっすね……」グサッ
主任「かといって人目のつかない所はモンスターの数が多くて、やっぱり危ないし……」
主任「だから私、聖水とかあったらなーって考えてね?」
主任「『ヴァンヘルシング』って映画を知っています?」
男「洋画かな?……パイレーツオブカリビアンとかなら見てるけど」
主任「ヴァンパイアハンターのお話なんですが、その中で教会の水道から出る水を聖水と言ってるのが有ったんです」
男「……もしかして、それで?」
主任「うん、試しに近くの教会でペットボトル一本の水を採らせて貰ったら、それだけでモンスターが寄り付かなくなったの」
主任「勿論、少量を撒いても効果は有ったし、モンスターにかけてもダメージが有ったから本当に助かったの」
288 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/01(水) 00:52:41.08 ID:THFqJwhio
この事件の後、水道施設に教会が併設される事となり
大規模な癒着と教会権力が新たな問題になるのであった
289 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/01(水) 23:01:02.23 ID:sZ2O/7Mo0
自然の水をろ過し聖水化させる装置が開発され大ヒット。飲みやすくさらっとした飲みごたえが聖水ブームを巻き起こした
290 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/04(土) 00:42:48.21 ID:ghfQrHeKO
なんだか動物愛護団体がモンスターを[
ピーーー
]なと騒ぎそうな気がするなぁ
嫌だなぁ、なぁんか怖いなぁ
291 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/07/04(土) 21:57:52.81 ID:NQ79qc9DO
主任「大変だったんだよ、コインをたまたま助けた人に貰って、それをたまたま水に落としたら光ったりしたんですから」
男「光ったんすか…?」
主任「うん、それも驚く事に水面だけでしたからあの時は余計にびっくり」
男「なるほど」
主任「うん」
男「……」
男「この二週間忙しくて言えなかったけど、ありがとうございました主任」
主任「急にどうしたの」
男「死神と戦った時に、俺がピンチだったのを助けてくれたじゃないっすか」
主任「あれは……助けてあげられたのかな」
男「俺にとっては間違いなく助けて貰ったんですよ」
男「それにほら、最後のヒャダルコとかも……まさか客室から出てきた主任がスマホで指示を出すとも思わなかったし」
主任「あはは……」
男「あれはちょっとピンチとはいえ笑いそうになった」
292 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/06(月) 07:41:28.92 ID:8hlxMoFao
乙
293 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/07(火) 00:21:11.28 ID:ltq968xKo
乙!
294 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/07(火) 16:03:16.57 ID:cRyNKopmo
熱くて読み直したけどまた読んじゃった
295 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/07/07(火) 20:10:08.86 ID:/UlVBuqfO
男「スマホが文章ズームとか出来るって知らなかったし、んでもって指示内容が『一瞬だけ時間を稼いで』だもんな」
男「ヒャドでいいから直ぐに助けて欲しかったかも?」
主任「感覚的に、ヒャドを二回……ヒャダルコを一発撃ったらMPが切れる気がしたの」
男「あ、そういえばwikiで調べたらドラクエのMPは『マジックパワー』らしいっすな」
主任「魔力ってことかな、感覚だけで言えば精神力って感じだけれど」
男「メラを何回撃てば実感出来るかな…?」
主任「余り経験はしなくていいと思いますよ? 目眩がして、集中力が無くなって感情的になりやすくなるので」
男「……マジか」
主任「さてと、そろそろパエリア出来上がるので待っててくださいね」スッ
男「うっす」
男(ニュースでも見るか)
男(まだ俺の映像出てんだろうけど、こればっかりはなぁ……)ピッ
< 『次のニュースは、午前に起きた大変可愛らしい珍事件です』
< 『赤ちゃんがベビーカーから落ちたかと思いきや、突然走り寄ってきた大型犬が赤ちゃんを見事背中で……』
男(……どのチャンネルも俺の事、もしくは世界の何処かでモンスターの被害を受けた事か、或いは平和な日常を映してるな)ピッピッ
男(ま、これはこれで気が楽か)ピッ
< 『……頃、アメリカのネバダ州ラスベガスの大型カジノで保管していた…』
< 「男さーん、ちょっと手伝ってくれますか?」
男「ん、りょーかい」
< 『……強奪された金品等から合わせて被害総額は予想されるもので数十億を越えており、現在強奪した犯人達を追跡しているとの事です』
< 『しかし複数の犯人達は全員「緑の装束で全身を隠しており」、監視カメラの全てが凍結されていた事で依然として新たな手掛かりが無く、重傷を負ったカジノの警備員の男性の証言しかない様です』
296 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[age]:2015/07/08(水) 14:07:52.16 ID:csV16xuSO
あ
297 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/08(水) 21:10:07.23 ID:WYZXcphUo
乙
298 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/07/11(土) 09:34:35.93 ID:JiLCuhNTO
〜 【二時間後……】 〜
男「ご馳走さまでしたっと」
主任「そろそろ女さんが退勤する頃だし、先に彼女の自宅近くの駅へ向かいましょうか」
男「まだメールは来てないっすよ」
主任「夜だし、彼女の話では相手がはっきりと人間か見てないのでしょう?」
男「あ……」
主任「そう、ここ二週間といえば遂に私達以外の人にも見えるモンスターが現れた後なの」
主任「だから念の為に私達二人で様子を見ておきたいなって」
男「りょーかい、それなら先に行くので正解っすな」
主任「それじゃ準備しましょっか」
男「んじゃ俺は薬草でも二枚ほど……」
< prrrr……
男「お、家の電話か」スタスタ
男「はい」ガチャッ
主任「さてと、私は私で聖水と例のアイテムをポーチに入れて、と」ゴソゴソ
男「ああ、お袋か! 久しぶりだなぁ、妹や親父は元気にしてんのか?」
主任「…………」ピタッ
299 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/07/11(土) 09:46:25.43 ID:JiLCuhNTO
主任(今……何を言って…?)
男「会社? あー、うん……そうなんだよ、てか何で知ってるんだ」
男「部長が連絡したのか」
男「いや、別に何もないよ」
男「最近物騒だろ? 外に出ない仕事でも見つけようかと思ってさ」
男「はは……妹は相変わらずだなぁ、お袋は調子どうなんだよ」
主任(…………)
主任(きっとこの間のはからかってたって事なんだよね、質が悪いなぁ……)ゴソゴソ
男「そうだな、また今度一緒に海外に行きたいなぁ……もうバミューダ島の沖には行きたくねえけど!」あはは
男「四年前は『事故になる前に親切な人達に助けられた』だけなんだからな!」
300 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/11(土) 11:13:37.37 ID:mykwhmDDO
いいね
301 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/11(土) 11:49:20.64 ID:35z3oKfo0
天涯孤独じゃ…?
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