過去ログ - 【Fifth】幻想的な画像に設定足して世界作ろうず【Genesis】
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名無しのパー速民
[sage]
2018/08/06(月) 19:14:25.75 ID:rRX7Odsf0
階段を登り切ると、そこにはクラミエールがいた。
断頭台の傍には、彼女の罪状を読み上げるべく待機していた裁判官の男もいたが、もはやノウンの目には彼女以外映っていなかった。
裁判官が逃げ出すと、断頭台の置かれた壇上には正真正銘ノウンとクラミエールの二人しかいなくなる。
広場は今や混乱の坩堝にある。
全てを察したわけでは無いが、ノウンもこの状況に便乗すべく、クラミエールの手を取る。
彼女に嵌められた手枷を銃で破壊し、自由の身とすると一言。
「さぁ、行こう」
「行くって、どこへ」
当然の疑問を述べるクラミエールにノウンは彼女の手を取りながら答える。
「地上さ。 空にいればいずれ捕まる。 地上も今は戦争中だけど、そう遠くない内に僕達の敗けで終わる。
戦火が遠退けば地上も平和になるし、何よりウラノス群の全てを合わせても足りないくらいに広いんだ。 地上で隠れ住めば安全さ」
彼はクラミエールに逃走先を伝える。
この混乱に乗じれば、自分がここまで乗って来た戦空機の格納庫まで向かう事も難しくはないだろう。
地上にさえ降りられれば追手を振り切れるし、空中戦なら負ける気がしない。
しかし、ノウンは自らの耳を疑う台詞を他でもないクラミエールから聞く事になる。
「待って下さい。 彼らを置いては行けません。 彼らは私の為に命の危険を冒してまで戦ってくれています。 それなのに、私だけ逃げるわけには参りません」
「……は? いや、なら尚の事逃げないと。 ここに留まってちゃ、それこそ貴女の信徒の思いを無碍にする事になるじゃないか」
予想外の返答に一瞬面喰ってしまったが、ノウンは真っ当と思える反論を述べて、再度クラミエールを連れ出そうとする。
だがそれでも、目の前の女性の信念は揺るがなかった。
そればかりかノウンに対し、思いも掛けない要求をする。
「ノウンさん、私を助けようと思うなら、どうか共に戦っては下さいませんか。 私はただ守られるしか出来ないか弱い女ではありません」
「でも……分かった」
彼女の瞳から滲み出る強い想いに押され、ノウンはしばし考えた後、クラミエールの願いを聞き入れる。
しかし、このまま留まれば危険な状況にある事は以前、変わらない。
「 でもどうする? 貴女の信徒が奇襲を掛けたおかげで今は有利だけど、向こうの援軍が到着すれば前後から挟み撃ちの形になって一気に形勢が不利になってしまう。 それに……」
現在、広場はノウンとクラミエールのいる断頭台を中心に、衛兵、信徒、巻き込まれた市民の順に円を成すように位置している。
信徒らは装備の差から攻めあぐねており、騒ぎを聞きつけた衛兵が援軍に駆け付ければ、形成は逆転するだろう。
だが、広場の周囲には未だ逃げ惑う市民が大勢取り残されている。
逃げ場を失った市民が『行軍を阻害する障害』と判断されたり、暴徒の一派と誤認されれば、恐らく衛兵は信徒と市民の一切の区別なく発砲するだろう。
そうなればこの一帯は間違いなく血の海に染まる。
救世広場での惨劇が『赤の広場』の名と共に市民の間で後世まで語り継がれるような事態は避けねばならない。
そんな未来を憂慮するノウンに対し、クラミエールは一つの決意を胸に告げる。
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