過去ログ - 【Fifth】幻想的な画像に設定足して世界作ろうず【Genesis】
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64:名無しのパー速民[sage]
2018/06/20(水) 20:21:37.50 ID:y4U7AypG0
兄の居る執務室へと入るなり、ノウンはヘル―シャに怒声を浴びせる。

「兄さん! 何で彼女を、クラミエールを処刑するのさ!
 穏健派の象徴である彼女を殺せば、彼女の無事と引き換えに大人しくしていたシンパが一斉に蜂起してしまう……そう言っていたのは兄さんじゃないか!」

地上の戦場を離脱し、ノウンは単身、彼女――クラミエールの元を訪ねるべく、首都ルークフォン新政府庁舎内にある兄ヘル―シャの執務室へと赴いていた。
最初、クラミエールの軟禁されている西の果ての大地『タルタロス』に向かったノウンだったが、そこでクラミエールら罪人が処刑の為、首都へと移送されたを聞き、
すぐさまここルークフォンへと駆けつけたのだった。

「……久しぶりだな我が弟、ノウンよ。元気そうで何よりだ。 しかし、戦線から勝手に離脱してまで遥々、兄の所へ馳せ参じたかと思えば、開口一番にそれか?」

怒りに満ちたノウンの言葉を聞いて、なお冷然とした態度を取る兄に対し、彼はクラミエールの処遇に対する釈明を求めた。

「あぁ、そうだ。 だがもうそんな事に気を使う必要はなくなった。 今や国内に居る穏健派のほとんどは、他の同胞たち同様に地上へと降りている。
 今クラミエールを始末しようと、実質的な抵抗なんてほとんどない。
  この悪化した戦況の中、何時までも反乱の芽を残していては、同胞らの結束に綻びが生じる」

元々、人前以外では表情に乏しいヘルーシャは更に表情を重く固く、統率者としての態度でノウンにそう言い放った。それが彼には我慢ならなかった。

「戦況を悪化させたのは兄さんじゃあないか! 動員できる兵力は限られていたのに、無理に戦線を広げるからこんな事になったんだ! もっと初期の段階で、地上の科学国を徹底的に破壊していれば、ここまで戦況が悪化する事は無かったのに……」
「そんなものは結果論だ。 後からなら何とでも言える机上の空論だ。 お前はそんな事を言う為に、戦線を放り出してまで私の所へ怒鳴り込みに来たのか? お前のその下らない行動の内に、何人同胞が死んでると思ってる」

椅子から立ち上がり反論するヘル―シャ。戦場で長い時間を過ごしたノウンにとって、戦友らを盾に自らの行いを追及される事は彼の喉を引き閉まらせたが、此処で引いては弁舌家の兄に押し負ける。
負けじとノウンは食い下がる。

「地上で戦ってる皆を殺してるのも、下らない事をしてるのも兄さんの方だ! 戦況の悪化で同胞たちから嫌われるのを恐れて、人気取りの為だけに彼女を殺そうだなんて、そんなのは間違ってる!」

ノウンは腰のホルスターから提げていた拳銃を引き抜き、敬愛する――いや、敬愛していた兄、ヘル―シャに突き付ける。
以前の自分なら兄に反抗するような事はしなかったし、する必要が無いくらいに兄は完璧な存在で、自分にとって目指すべき目標だった。
それ故にノウンにとって今、目の前に居るこの男の言動が失望のレンズを通して映し出される事にも、そうさせるヘル―シャにもまた、怒りが込み上げたのだ。
それを見たヘルーシャは一瞬、目を見張るがすぐに平静さを取り戻し、むしろ呆れたような表情さえ見せて、ノウンに対し半身の姿勢を取り、視線を窓の外に向ける。
溜息をつき、口を開く。

「お前……自分が何をしているか分かっているのか。 実の兄である俺に銃を向けるか。
  あの女の人心掌握術には脱帽するよ。 こうして我が弟までもをその毒牙に掛けるとは……聖女だなんてとんでもない。 なんという魔女か。
  これは、彼女には断頭台ではなく、火刑場がお似合いらしいな」

銃を持つノウンを前にして、顎に手を当てながら挑発するような言葉を放つヘルーシャ。そしてその言葉は、引き金を引くに十分な動機となった。
ノウンが銃の引き金を引き絞る動作に入る直前、ヘル―シャは懐に忍ばせた回転式拳銃を引き抜く。

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「兄さぁんっ!」
「青二才がッ!」
すかさずヘル―シャは懐から拳銃を取り出す。互いに向けられた銃口からは、ぱんという、乾いた炸裂音が鳴り、二人が居る部屋中に響き渡る。
銃口から立ち上る硝煙が二人の視界を霞めた。


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