過去ログ - とあるバイセクシャルのチラ裏戦記5:30代の一歩
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◆ijxboO81y6
[sage]
2015/12/28(月) 07:38:59.84 ID:27XBWPdAO
・・・
「あらぁ!Cちゃんいらっしゃ〜い」
定食屋のおかみさん。Cがいつもここで「ご飯を食べさせてもらってる」って言ってた。タクシーの運転手さんらしき男性、新聞をひろげているおじいちゃん、カウンターと4人掛けのテーブルが数個あるだけの店内はのんびりとした空気がただよっていた。
「なに食べる?…口にあうかわからないけど…」ちょっとモジモジとそう言いながら卓上のメニューを見せてくれる。
「おすすめは?」
「いっつもコロッケ定食」
「本当に好きですねwwそれ以外は?」
「……記憶にない……」
コロッケ好きなのは分かったけれど揚げ物はそんなに得意じゃない。入り口のボードに書いてあった今日の煮魚定食は金目鯛。
「じゃぁ…煮魚定食」
「早いね!?」
「え?」
「いや決めるの早いなぁと思って」
「ふだん自分が作らないものがいいかなって…」
ルーが東京の魚は高くて選択肢が少ないとよくこぼしていたけれど、そのせいか煮魚は学生の私にとって遠いメニューだった。
Cは「そうなの?」という顔をしながら女将さんに声をかけて私の分も注文してくれた。ホームグラウンドのCは居心地が良さそうで、人見知りとか言ってたのに、あたりまえのように私のぶんまで注文してくれたりする。
『お魚県出身者には東京のお魚事情は厳しいんですって』という会話をしているうちに、コロッケ定食がやってきた。
ふわふわの千切りキャベツに、マカロニをマヨネーズで和えたのと、赤いトマトが 二切れ。パン粉の切っ先が香ばしく茶色に光るコロッケが二つ。立派に丸くて大きい。テーブルに置かれた瞬間にふわっと油の香りがする。
そして、すぐに煮魚定食。まさかの一尾まるごと。小ぶりなのに目だけはしっかり大きくて、とろっとした醤油色の煮汁にテラテラと赤い皮を光らせている。ふっくらした身の厚さを誇るように十字の切れ目が手裏剣のようにひらいてた。たったいま仕立てたのか湯気がきらきらと立ち昇る。
「里芋すき?おまけしといたよ」と女将さん。
「あ…ありがとうございます」
女将さんの勢いに借りてきた猫モードに入りそう。
「いただきます」とCに言って、さっそく金目の赤い皮に箸を入れた。大きな身の塊が気持ちよくほろっと外れ湯気が立つ。箸の先でそっと挟んでちょっとだけ煮汁につけて口に運ぶと、甘塩っぱい濃厚な煮汁と皮ぎしの脂が混じり合う。そして煮汁にひきたてられた上品な身の甘み。
(金目鯛ってこんなに美味しいんだ……)
煮汁の味が舌に残っているうちにご飯を食べたくて白いご飯に箸を伸ばす。……ご飯も美味しい。定食の保温したご飯が苦手だったけれどご飯が美味しいなんてすごい。ちょっと気持ちを落ち着けたくなってお味噌汁。どうやら魚のアラで出汁をとっているようで複雑な旨味が広がる。アオサかなにかの小さな海藻が爽やかなアクセントになる。結局またご飯に手がのびる。
「よく食べるなぁ」目を細めてCが笑う。
気のせいか孫を愛でるような目線だ。そんなに大食いキャラじゃないと思うのに。
「すみません…」
「うん、よく食べて美味しそうでいいよ」
「……だってホロっとほぐれて美味しいし、あと、ご飯とお味噌汁がすごく美味しい…」
一見すると学食の定食のようだったけど、だって美味しいんだもん……と思いつつ、Cが今"付き合ってる"という人妻さんは、きっと私と違って女の子らしく食が細くて注文するのに可愛らしく迷って相談できる人なんだろうなと、勝手に人物像を作り上げる。
さらに妄想ついでに高校生のころの恋愛談義が急によみがえる。
『男の人って本当に好きな人には昔の話とかしたがるんだって(キャッキャ』『えーそういえばなんかカレの小学校一緒にいった!(キャー』
……Cの昔の話を聞いていたさっきの時間は確かに幸せで思い出すとなんだか胸がちょっとキュッとする気がけれど。
(まぁCは男の人じゃないしね…)
一瞬だけ妄想ドライブ入った頭をきりかえて食事に集中する。問題は煮汁の旨味を吸っているであろう里芋をいつ食べるかだ。
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