暇なおっさんのSS図書別館
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9:焼けたのは勿論あの人(笑)[sage]
2022/07/20(水) 22:32:57.08 ID:GSa3xBPDO
73: 里奈・7 [sage] 2021/04/20(火) 18:50:07 ID:98Q7dT0k

(え…?)
それは当然な里奈の反応と思い。そして今まで絶対的上位とした存在だった相手と
その立場の位置、高さが確かに入れ替わった瞬間でもあった―
「そ、それは…やっぱり咲さんの事を信じてるからね」
「あんな事を言った社長の娘と、まんまと逃げおおせた奴等をか?!」
暴徒の男の言うことは、確かに彩水の事を知らずに、外側からただ今の状況を見た者
からすれば当然な感想と言えた。
「彼女は羽月社長本人でもないし!咲さんはただ彩水さんの身を案じて同行しただけよ!」

里奈は若干怒り、怒鳴り気味に男に言い返す。ただ(念押し)は忘れなかった。

―接吻。
「な?!…」
「…こうやって、女の身体なんていつ如何なる時も(弱い立場)にあるんだから」
「お、おう…」

男の中での心の混迷は、ここに極まったと言ってよかった。
(一度は怒りに我を忘れ、相手の生死も問わずに物理的にも引き裂こうとしていたのに…何故
「この女は俺にここまでできる」んだよ?!)

《―生き延びたいからよ》

(?!)

男は「誰かの声」を確かに聞いた。いや思い出していた。
それは、いつか「教師になる」という自分の夢を追いかけて実際に叶えた「姉」の声を。

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76: 里奈・8 [sage] 2021/04/20(火) 19:18:47 ID:98Q7dT0k

「本当にアイツらは、ただ自分達可愛さでいち早く島から逃げただけ、じゃないんだな?」
「しつこいわね〜そうだって言ったでしょ?なら、この島が沈没し終わるまで
あの車内で私とS〇Xし続ける?」
「わ、分かった…もう言わない」
(アレ?もしかしてそこまでしても良かったのか、俺?)
二人はお互いの今の状況を話し、やむを得ずとした「呉越同舟」的な流れでの同行中であった。
(まさか男の人に「泣かれる」なんて…むしろ泣きたいのはこっちなんだけど)
里奈は自身に襲いかかってきた暴徒の一人と道中を共にする事を一瞬躊躇ったが、
他に今は「頼れる足」(島の地理に明るい)がいないとした事に思い当たり、
害意が抜けてる今なら、一時的に彼を味方にしてもいいか、と危険ではあっても背に腹は変えられないとした楽観論で
車から出て、あの二人の行方を追いかける事を彼に申し出た。
その際、里奈は彼の顔から流れた一滴の「滴」に気づいたのだ。
(誰だって死たくはない…よね)
そして自らが背負った「十字架」を意識したのも、この時だった―

「足が…挟まって……抜け…」

里奈の中の記憶の中で。

一人の女性が焼け上がっていた。
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