【枯れても走ることを】能力者スレ【命と呼べ】
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372:名無しのパー速民[saga]
2019/10/24(木) 00:00:06.80 ID:RpVrsW260
【街中――噴水広場】
【天女の羽衣に触れてみたならきっとこんなふうな手触りなのだろうと思うような風が吹いていた、微かに薄く冷たく、けれどそのどれもが決して不快の要素を持ちえない】
【総括するに過ごしやすい夜であるのだろう。冬の寒さもまだ及ばぬ時節であるなら、いくらかの薄着に、それこそ天女の纏うような薄い羽織だけで十全に心地よく過ごすごとができたから】
【――だとして、夜も遅くなりゆく最中であるなら、通りはがらんと寂しげで、機械制御された噴水の煌めき、ざあ、ざあ、水飛沫の一つ二つまでもが余すことなく人工の光に飾られて】

――――――、へびさまも、座ったら? ずうっと立ってなんてないで。……。ほら――――、うん、じょうず。
……へびさまはでっかいんだから。女の子が座ってたら一緒に座った方がいいよ。……、そういうものなんだよ。ね? だから……。

【――――ざあざあと水音のさなかに紛れ込む声音は、声量如何よりも余程目立つ声をしているのだろう。ころり鈴の音を指先で転がすような冷たさと軽やかさ、透き通る金属質の響きを、肉声の端へ滲ませ】
【だれかにずっと話しかけているみたいだった。――人影は二つあった、一つは黒い髪、噴水の淵へ腰かけて。も一つは白い髪。その人影と曖昧な距離を保ったまま、影ばかりどこまでもどこまでも伸ばすように】
【やがて身体を傾け腕を伸ばした黒髪――少女のシルエットをしていた――が半ば無理矢理のように白髪――こちらはうんと髪と背の高い櫻の装い――を引っ張って、自分の隣に座らせて、然るに解決なのだろうか】

【だから/だから、しばらくの間、無音なのだろう。虫と噴水ばかりが生きているみたいだった、――けれどもかちりと動く時計の針の音、日付が変わると同時に演目を終えた噴水の、】
【ひときわ宙高く投げ出された水飛沫の悉くが落ちるのとほとんど等しい頃合い、呼吸を数度さしはさみ、それから瞬きをした、それだけの空白の後】

……へびさまは、さあ、昔のこと。覚えてる? 私がまだ十六歳とかだったころのこと。……。へびさま、まだ、身体とかなくって。あの頃……。
………………。………………、もう、そんな怖い顔、しなくていいんだよ。べつに、思い出しただけ……。――秋だったなあって思ったの、これぐらいの時期だった……でしょ。

それだけだよ、

【晴れた冬の夜空より余程余程冥い色をした毛先の少女だった、そのくせに夏の入道雲より余程白い肌をして、あどけなさを遺すかんばせは十全に少女と呼ばわるに適していた】
【光の角度と強さによって黒と赤とを曖昧に行き来する瞳は瞬くたびに気紛れを起こすから、――言葉のおしまい、連れの顔を覗き込むように顔を傾げた仕草のおしまいには、蠍の心臓より余程赤い色をしていて】
【チョコレートラテより甘い色したワンピースにミルクティーの色した薄いカーディガンを羽織っていた、ふわり膨らむスカートのシルエットから伸びる足先は少女らしくか細いのだとしても】
【かかとの高い靴を履いているのを見れば、ただただ少女と呼ぶには穢いものを踏んできたような風合いも纏っているのに違いなく。――だとしても、ぱたり揺らす爪先が幼くないとは誰も言えないのだろうけれど】
【十六ほどなのだと思われた。然るにこんな時間にうろつくには若すぎるものと思われた。――――傍らにて沈黙している幽霊のような白い人影、一方そちらは大人であるように見受けられたものの】
【腰より長く伸びた真っ白い毛先に隠しこむ顔も肌も透き通るように白い色、ましてや召し物まで白い櫻の装いともなれば。――。保護者というよりは、背後霊、――あるいは地縛霊みたいだ、なんて】

……。

【――だからまた沈黙が挟まった、然るにぼんやりと空を見上げて、瞬きの数も分からなくなったぐらいのころ、】

――――――――――――――――、へびさま、お星さま、きれいだよ。一緒に見ようよ、……。

【(それでも返事がなんにもないから、やはり沈黙、)】【だとしておかしなことに険悪さなんていうものはほんのひとかけらも介在しない空間にて】
【――誰か通りがかるなら、黒色と白色の人影と、それから、誰かに気づいて視線を向ける少女の、――――少し困ったような微苦笑、見ることになるのだろうか/なるのだろう】
【――――どうあれ、やっぱりどこまでも静かな夜だった。それ以上のなんにも要らないみたいに。だからきっとそんなはずないんだろう。停滞した世界と夜になんにも意味なんてないみたいに】

【然るにぴくりとも動かない、顔を上げようともしない同伴人に小さくない溜息を吐くんだった。その吐息はまだ白くならないから、冬までも少しだけ、時間はかかるらしい】


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