360:名無しのパー速民[saga]
2019/10/18(金) 00:24:38.37 ID:TqWBAtmw0
>>359
「――――――あれは都会、だから」「もっと田舎のほう」「だけど、雪が降ってて」「――夜景の光がぼやけてるのは、嫌いだった」
「そこは好きかなぁ、」「あとは――日焼けしないから」「日焼けしたくなかったら、住むといいんじゃない?」「吸血鬼だったとしても、私はまずいから、食べないほうがいいよ」
「――、ええ、」「公務員って、……」「そんな風にしてて、なれるんだ」
――――あれは都会だからもっと綺麗であるらしい。それよりもっと田舎の方は、冬になると雪に閉ざされて大変なことになるんだって。……それでも、大変なところから遠目に見る都会の灯は、ひどく美しいのだと言って。
降り頻る雪に明るさが反射して、空までぼおっと明るくなる。それをなんとなく眺めているのが好きだった。――そんな外はとてつもなく寒いから、防寒具をたっくさん着こんで、けれどもその価値はあった気がする。
そしてひらひら揺らした指先の意味合いは如何ほどのものだったか。――おいしくないからって理由で辞退してみせた眼差しが、細められるのにも時間は要らないのだろう。至極失礼なことを述べた鈴の音の音。
「警察……」「ああ……」「ご苦労様です」
証拠として差し出される警察手帳を見て、――思いっきりじとり伏せられた眼差しは何かを諒解していた。曖昧な溜息を吐いて見やった視線を戻すに、
まあまず悪いことなんてしてなくたって警察の人間と話すが楽しくないのは仕方がないのだろう。怪しむ目は一点何しに話しかけてきたかっていうみたいに――いや、ずっとこんな目だった気がしてきた。
然るに余程挙動不審になった、なんてわけもないのだろう。相手が覚えてさえいれば、彼女は風の国のUTの関係者であるとまで思い出せるはずだった。忘れていたら――まあ、こんな時間に出歩くにしてはいくら年若い女である。
それを言い出したら相手もそうなのだろうけど。――国家の後ろ盾がなくうろつく以上は彼女のほうが不審度合いは高いものだろうか、なんて?
「――なら、」「よかった」
――――――――そんな顔がほころぶのは、相手があんまりに彼女の言葉を信じたからだろうか。ごく一瞬だけぱちり瞬くような空白があって、けれどその直後には莞爾と柔らかに緩んでいる。
誰しも自分の意見が認められぬとなると悲しい顔をするものだ。――――――――――――――――――――――いっしゅんの間、
「なんで?」
急に解せぬって顔をするのだから非道い話だ。(だけれども、いきなり天使と言われてこの程度で済むなら彼女は十分に偉いのだとも思われた)
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