【枯れても走ることを】能力者スレ【命と呼べ】
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296:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋)[sage saga]
2019/06/02(日) 20:11:54.28 ID:wAfs/MtC0
【工場跡地】

【罅割れたコンクリートの灰色が視界をジャックするような建造物の群像】
【崩落した箇所からは錆びた鉄骨が歪に曲がり突き出し、何とも知らぬ廃液が滴る】
【咽び泣くように続く数日来の霧雨と、折からの茹だるような気温が不快指数を否応無しに上げ】

……、 けほっ

【崩落した屋根の下、月光と薄く降り掛かる雨とを浴びて片隅に蹲る、一人の青年の姿があった】
【整然とした黒羽織の和装に身を包み、肩口で切り揃えた白髪に黒い彼岸花を挿した彼は】
【足許の瓦礫を草履の足で蹴り払い、傍らの錆び付いた機械を支えに覚束なく立ち上がろうとする】

【年の頃は二十代後半、吊り目がちな葡萄色の双眸に目許の泣き黒子が映える、如何にも気の強そうな顔立ち】
【細い身体の線と白い肌は、百七十後半の背丈がなければ或いは女と見紛うこともあったろうもの】

クソが……、畜生 何処や此処、

【男は荒い口調と存外低い声で忌々しげに吐き捨て、苛立ちの強い視線で周囲を見回し】


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