9:名無しNIPPER[sage saga]
2025/01/04(土) 21:07:10.63 ID:4VUIgo16o
「みぃちゃん? みぃちゃんだよね! やっぱりそうだ! 久しぶりっ!!」
花のような、太陽のような、妖精のような、そして天使のような、誰もが一瞬で虜になる笑顔。
あの子が笑うと、世界があの子だけになる。そのせいで何度も馬鹿な勘違いをした。
10年経っているはずなのに、何も変わっていなかった。
「あ、大丈夫? 立てる?」
そうやってあの子は手を差し伸べた。迂闊すぎて自分が嫌になる。ついその手を取ろうとしてしまった。
あの子で満たされた視界に自分の手が映りこんだ瞬間、この身体が、存在そのものが、酷く醜く穢れて見えた。
咄嗟に手を引っ込めて自分で立ち上がった。
「久しぶり。中学以来だっけ」
声の震えを押し殺して当たり障りのないことを言った。それだけであの子は本当に嬉しそうに笑う。世界が覆い尽くされていく。
「ねぇ、少し話さない? ほんの少しでいいから」
断る理由はいくらでも思いついた。それなのに言葉が出なかった。足がすくんだ。
私はまた、あの子の影の中にいた。
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