【ゆるゆりSS】きもちに寄り添う数秒間
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9:名無しNIPPER[sage saga]
2024/09/07(土) 22:54:15.85 ID:49voo3/L0
「あーあ、今年の夏休みはいっぱい夏らしいことしたいなー」
「今してるし」
「これもそうだけど、もっといっぱい! ちゃんとしたプールも行きたいし、海も行きたいし、キャンプも行きたいし〜」
「そんなに遊んでばっかりだと、またひま姉に勉強しろって怒られるよ?」
『その通りですわ』
「わーっ!」

 先ほど撫子が出ていった玄関の方面から突然向日葵が現れ、櫻子は驚いてチェアから飛び上がり、そのまま体勢を崩してプールにじゃぽんと膝をついた。まだ水着に着替えていなかったのに、ショートパンツの裾が濡れてしまう。

「ひま姉、どうしたの?」
「撫子さんからちょうど今メッセージが来たんですわ。『うちの庭に来てみて』って」
「び、びっくりした……」
「もう少し水溜まったら、楓も呼んであげてほしいし」
「そうですわね。声かけておきますわ」

 櫻子は浅く張り始めた水に膝をつけたまま、先ほどまで自分が座っていたチェアにすらりと腰掛ける向日葵を恨めしそうに見上げた。白いワンピースが青い空に映えてとてもよく似合っていた。
 手元のホースからは今もプール内に溜める水が勢いよく出ている。ふとこれを向日葵の方に向けて水をかけたい衝動に駆られそうになったが、

(う……)

 とっさに目を閉じて6秒を数えようとし、ものの2秒ほどでホースを持ち上げようとしていた手から力を抜いた。

 向日葵が着ているこの服はまだ見たことがない。きっと新しいものなのだろう。それを濡らしたらとんでもなく怒られるような気がしたので、大人しく踏みとどまった。逆にホースが暴れないようにしっかりと押さえておくことにした。

「それで、何を話してたんですの?」
「櫻子が、夏休み何して遊ぶかってことばっかり考えてるから、勉強もしないとひま姉に叱られるって言ってたところだし」
「さすが花子ちゃん。よくわかってますわね」
「でも勉強ばっかりでもつまんないでしょ! せっかくの夏休みなんだから!」
「まあ、そうですけど」

 柔らかな表情の向日葵を見て、櫻子はふと昨日のことを思い出した。ちなつやあかりと一緒に勉強しながら、四人で遊ぶ予定をいくつか立てたのだが、向日葵はあまりその会話に入らず、決まったことを笑顔で聞き入れているだけだった。

 向日葵は、してみたいこととかないのだろうか。

 いつもいつも、自分がこうしたいああしたいと向日葵に一方的に伝えて、それに付き合ってもらっていることが多いので、向日葵の予定に合わせて何かをしたことがない。あっても夕飯の買い物に付き合うとかで、それは櫻子の基準で言えば「遊び」とはいえないものだった。


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