【ゆるゆりSS】きもちに寄り添う数秒間
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14:名無しNIPPER[sage saga]
2024/09/07(土) 23:02:18.74 ID:49voo3/L0
「見つかりましたの? いい本」
「ううん。でも、向日葵のと一緒でいいよ」
「だめですわ。ちゃんと自分が読みたい本にしないと」
「向日葵が読んでるものを私も読みたいの!」
「えっ……?」
「……だって、それなら写せるじゃん!」
「……そんなのダメに決まってるでしょう」

 向日葵に小突かれ、花子に「しーっ」と静かにするようたしなめられ、櫻子は別の棚へと歩き出した。
 咄嗟に出てきた言葉だったが、向日葵が読んでいる本を読みたいというのはあながち嘘ではなかった。向日葵がどういうものに興味があって、どういうものが好きなのか、ちゃんと知りたいという気持ちが、今日図書館に行こうと誘われた今朝のあのときから、ずっと自分の中にあったのだ。
 もっとも、それを正面から伝えることは、恥ずかしくてできそうにないが。



 図書館からの帰り道、コンビニに寄ってアイスが買いたいという櫻子の提案で、みんなで自宅付近のコンビニに立ち寄った。
 アイスの棚の前で楓を抱っこしてどれがいいか選んでもらっているとき、とあるアイスが櫻子の目に入った。
 少し前に学校で向日葵が友達と話しているときに、これが好きだと話題に上がっていたものだ。
 自分はその会話に参加していたわけではなかったのだが、近くの席から耳を傾けていたときに聞いて、「そうだったんだ」と心に留めた記憶がある。
 櫻子はひょいっとそのアイスをとり、向日葵の前に突き出した。

「向日葵はこれ?」
「あら、どうして私がそれ好きだって知ってたんですの?」
「べつに。なんとなく」
「ええ、じゃあそれにしますわ」

 すぐ隣で「楓が話したんですの?」「ううん、楓も知らなかったの」と話す声を聞きながら、櫻子は自分のアイスを選ぶ。友達との会話を盗み聞きしていたとは、気恥ずかしくて言えなかった。

「あっそうだ、じゃあ向日葵も私のやつ選んでよ!」
「えっ?」
「私が好きなやつ、向日葵なら知ってるでしょ?」
「あなたが好きなの……パプコ?」
「ぶっぶー、ちがいまーす」
「うそ、櫻子はパプコ大好きだし。この前ふたついっぺんに食べてるとこを撫子おねえちゃんに見られて、しばらく『パプ子』って呼ばれてたし」
「ちがうの! 大好きだけど、今日はその気分じゃないのー!」
「全然わかりませんわ」

 勘の悪い向日葵に、アイス棚のアイスを指さして最近の個人的アイスランキングベスト3を直々にレクチャーする櫻子。
 自分は向日葵の好きそうなものはどれか、アンテナをしっかり立てて把握しようとしているのに、向日葵が全然鈍いままなのが少しだけ悔しかった。


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