304: ◆b0/EDFEyC136[saga]
2024/10/14(月) 23:19:20.94 ID:Nw/DCeu30
――中京レース場、ダート1800m、G1"チャンピオンズカップ"
寒空のレース場に最高峰のダートウマ娘が集う。出走ウマ娘を見ても、ダートで名を挙げた強者ばかりのそのレースに……彼女は参加できるだけの実力があった。
『最後に確認をしよう』
今回のレースに逃げウマ娘はシルヴァーパピヨンしかいない。つまりパピヨンが今回のレース展開を操作すると言っても過言ではない。
キミの走りで後方のウマ娘はペースを変えるかもしれない、それによってスタミナをぐちゃぐちゃにかき混ぜて最後逃げ切れる――そんな作戦もありえたかもしれない。
が――しかし。
『……キミにはそんな作戦必要ないだろう』
ただただ脚を動かして、腕を振り、全力を出し切る。最後の最後まで気力を振り絞り、スタミナ全てを使い切って――駆け抜ける。それがシルヴァーパピヨンのレースだし。それ以外にシルヴァーパピヨンのレースは存在しない。
自分が憧れた走りがそれで、見惚れた走りはそれ以外にあり得なかった。
『パピヨン……?』
レース場控室でこうして確認をしているが、パピヨンからの返事が一つもない。何か不調かと不安になったが――どうやら問題はなさそうだった。
パピヨン「ん……ごめんお兄さん。ちょっと集中してた、ちゃんと話は聞いてたから大丈夫だよ」
――――目を瞑って、瞑想をしていたパピヨン。勝負服の背中にプリントされた溶けた銀色の蝶が、まるで彼女の滾る熱によって溶けてしまっている――そんな風に見えてしまう。
……膝下のダメージソックスも、ピンヒールブーツも、どんな意図でデザインしたのか分からない面積のインナーも、いつも身に着けているパピヨンマスクも、そして一枚のパーカーも。彼女を表すには十分すぎる勝負服だった。
――どんなに傷を負っても、どれだけ不安定な適性で、周囲をハラハラさせるその性格も、己の本質を隠す小さな仮面も、燃えるレースへの情熱も――全部全部、シルヴァーパピヨンというウマ娘の要素そのものだった。
……いや、多分考えすぎだと思う。パピヨンはそこまで考えてデザインしていないはずだ。
394Res/279.79 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20