825: ◆OX0aJKbZO.0H[saga]
2024/07/07(日) 00:32:22.80 ID:5wtNQhHU0
マンティ「――あ、パ、パピヨンさん……!ど、どうかしましたか?」
パピヨン「実は忘れ物しちゃって取りに来たんだ〜ごめんね、いきなり来ちゃって」
病室にはもうマンティしかいなくて、トレーナーさんの姿はなかった。アタシ的には嬉しいけど、何処行っちゃったんだろ……。
……不思議そうな顔をしているマンティ。その眼もとは、隠せないくらい真っ赤だった。トレーナーさんが戻ってくるかどうかも分からない、ほんとさっさと帰らないと……。
パピヨン「ん、あったあった……」
マンティ「…………」
忘れ物は見つかった、だからもう帰った方が良い。アタシはただの……友達だ。ブラックマンティスの同期で、同じレースも走った、ただそれだけの。
さっきのアタシみたいに、トレーナーさんが外で待ってるかもしれない!本当は大事な話があるのにアタシがいるせいで話せない……そう、きっとそう!だから、早く帰らないと――。
マンティ「……じ、実は私。ずっと……パピヨンさんに、憧れてたんです」
パピヨン「へっ?」
いきなりマンティが話し始める。どしたの突然、と思わなくもないけど……え、アタシに憧れ?
マンティ「私がこの学園に来たのは……お家の期待に応えるためなんです。私がもし結果を出せば、それだけでお家の威厳に繋がりますから」
――――期待に応えるために走る。期待、という言葉はアタシには――とても聞き覚えのあるものだった。
マンティ「入学した時はもうすぐに走るのも辞めちゃいそうなほど、辛くて……でもそんなとき、パピヨンさんの走りを見たんです。最初の模擬レースで楽しそうに先頭を往く、貴女の走りを」
とても気持ちよさそうに走るその姿を見て、私は――思い出しました。初めて走り始めたときに感じた風の気持ちよさを。
――そうだ、私は、この風が好きで走り始めたんだって。
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